《Psy_Revival》 チャットログ:メイン


TOP
情報ログ
雑談ログ
観客席ログ

目次

・導入
・トレーラー
・OP1『遠雷-Rebirth-』
・OP2『宿縁-Detonator-』
・OP3『価値-A live-』
・OP4『介入者-Planner-』
・Scene1『交錯-Crossroad-』
・Scene2『侵略者-Domination-』
・Scene2『侵略者-Domination-(戦闘)』
・Scene2『侵略者-Domination-(戦闘後)』
・Scene3『』


・導入


* :
 ………………
 ………………

 ………………………………  

* :
       CCFOLIA
 

     Mobius Ring TRPG 

* :
▼\ゲームスタート\
  
   \オプション  \
  
     \言語    🌎\
   
       \ボイス   🌎\

         \DLC確認   \ 

* :
▼[1.データがありません]

 [2.データがありません]

 [3.データがありません]

 [4.データがありません]

 [5.データがありません] 

* :
  __________________
   
   このスロットで
    ゲームを始めてよろしいですか? 

      /   ▼はい    /
   
   /    いいえ    /
  __________________ 

* :
 ◇ ◆ ◇

 ▼プレイヤーデータをロードしています…。
 
 ◇ ◆ ◇

* :
◇ ◆ ◇

* :

 プレイヤーデータの読み込みが完了しました。

PC1:Unknown Aubade
PC2:Deus Ex Machina
PC3:Smaragd
PC4:Aghasura 

SYSTEM :
PC1:Unknown Aubade
PC2:Deus Ex Machina
PC3:Smaragd
▽PC4:Aghasura 

SYSTEM :
 パーソナルデータを確認しています...

SYSTEM :
NAME:Shara
M/F:FEMALE AGE:17 BLOOD TYPE:Unknown
WORKS/COVER:SNITCH/“BLAST HAND”

[CODE NAME:Aghasura]
BREED:CROSS 
SYNDROME:BRAM STOKER/OUROBOROS
DESCRIPT:QUESTER
IMPULSE:STARVATION
EROSION PERCENTAGE:36%

SYSTEM :
 ………………
 ……………… 

シャラ :
「出迎えゴクロー! オレ様はシャラ。
 コードネームは“アガースラ”、いーや、真の“ブラストハンド”──」

シャラ :
「は? ブラストハンドはどれが本家?
 オレだよっオレ! オレが真打! 過去作より新作のほうがつえェんだから!」

シャラ :
「……あ? 情報提供頼んだのにあねさんじゃねェのかって?
 イーんだよオレ様で。今回のハナシなら情報通なのはオレのほーなの」

シャラ :
「テキザイテキショっつゥヤツよ。
 オレもカネ周りとか、情報収集とか、あねさんが忙しいときにイサミの回収とかやってンだ」

シャラ :
「FHにはアイソ尽きたけど、UGNはウマ合わねェし?
 付き合うバカならイサミのがだいぶマシだろ。あいつ楽しいバカだかんな」

シャラ :
「…………。そんで、アレだろ?
 アンタが知りたいの。アダムカドモン支部の跡地とミスノサンゴの無事?」

シャラ :
「カネかけてガンバるな〜、グケイもカアサンも」

シャラ :
「オー。当たり。
 知ってンよ。でも会いにはいかないし会わせないっつっといて」

シャラ :
「会わせないっつか。
 返す方法もわかんねェし──」

『シャラ』 :

 ・・・・ ・・・・・・・・・・・
『ワタシが、そのつもりはないからな』

シャラ :
「───あっ」

シャラ :
「やっべ、クッソ! 勝手に口使うな!
 とにかくそんなだし、キホンゼンゼン会話成立しねェから! 話とか無駄なんで! ヤメたほーがイーよ!」

シャラ :
「ほかの情報はもう端末送ったから帰る! サヨナラ! バイバイ!」

おだまき :
というわけでおだまきです!
動かすPCは“アガースラ”シャラです。あらためてよろしくお願いします!

おだまき :
数年前に“ロード・オブ・アビス”によるUGN日本支部転覆から始まり、既存の国家組織をすべて破壊したFHによる統治が敷かれたステージ「エンドライン」からやってまいりました。
通常ステージでは死人で、PC「翠簾野珊瑚」が連れてる赤い蛇がこのシャラの成れの果てです。
エンドラインでは、いろいろあって逆に珊瑚が死に、こっちが生き残ってます。

おだまき :
【世界線共通】
1.先天的オーヴァードだったので親によって犯罪に活用された後、双子のお兄ちゃん共々FHセルへ売られる
2.お兄ちゃんと一緒にFHセルで活動
3.ウロボロス発見後、セルでの実験中に突然ウロボロスに覚醒し、暴走した結果お兄ちゃんを食べてしまう

【基本ステージのシャラ】
4.ジャームと判断されてUGN相手に捨て駒として使われ、UGNによって捕獲
5.珊瑚と同じウロボロスの保護施設に放り込まれる
6.ジャーム化。残存したレネゲイドの残りカスが珊瑚のシャドウバディになる

【エンドラインのシャラ】
4.アダムカドモン日本管理局支局に転属。ウロボロスだらけの蠱毒実験に放り込まれる
5.FHに捕獲されて生き延びていた珊瑚と偶然知り合いになる
6.珊瑚が死亡。合意の上で珊瑚を食ってパワーアップ。支局を壊滅させて逃亡
7.偶然ブラストハンドに合流 ←イマココ!

おだまき :
というかんじの経緯をたどってますが、まあたいして関係ないのでながしてください。

おだまき :
現在はFH相手にゲリラ戦を行う組織「ブラストハンド」に所属しています。バカどもの中にアホとして紛れてる感じですね。

おだまき :
性能については、珊瑚を物理的に食って得た各種能力値の上昇とかエフェクト適性の変化を、Dロイス「真実を知る者」で取得したAIDAで表現してます。

基本的な性能は無形コンセ範囲殴りマンです。
アフターライフ経由して買った〈交渉〉攻撃武器のカリギュラに重刃を乗せて振り回し、殺意の視線で範囲をしばき倒す性能に変更しました。
侵蝕が80乗ると後出しダメージブーストが可能です。

おだまき :
性格的にはにぎやかし担当です! 少年らしくかっこつけだけど世間にはわりとうとく、アホ言われるとすぐ信じ、中のキレてる人の指摘ですぐ気付いてキレるなどしたいです。あとブラコンです。お兄ちゃんも食い殺しちゃってるけど。

おだまき :
PC4らしく全方面に絡みに行こうと思います! THOとかあるけどがんばります! よろしくお願いします!

GM :
 よろしくね~!

GM :
 さて! というわけでPC4…。
 
 “アガースラ”、シャラくんのエントリーだ!

GM :
 周囲の卓で遊ばれている「基本ステージ」とは違うもうひとつの未来…。
『エンドライン』。ここでレジスタンス活動を行っている組織、ブラストハンドのメンバーさん!

GM :
 そうだな、ざっくりと説明するとだね…。

GM :
『エンドライン』はFHがUGNに勝利して、オーヴァードの存在が公表された社会!
 基本ステージから“概ね”4年前で分岐が起きたっぽいよ。(※公式で明言されたものではありません。注意してね!)

 一見すると未曽有の繁栄を遂げてレネゲイドスゴい! になっているけど、
 裏では人体実験も情報統制も反乱分子をZAPZAPするのも呼吸するように行われてる!
 公式NPCもあんな人やこんな人がだいぶ悲惨なことを書かれているよ!

GM :
 たとえば”ディアボロス”はこの世界線では『ミスとは無縁の完璧で優秀な、本物のエリート』。

 “ファルコンブレード”は“ダインスレイフ”として触れたら死ぬタイプの生き物になっているし、
 そんな彼を“シルクスパイダー”は仲間たちを多く殺した宿敵として憎んでいる……。
 
 これだけでも一例なんだ。ウソみたいでしょ?

GM :
 で、ブラストハンドはそこで活動しているゲリラ的組織!
 公式リプレイ『ストライク』にだいたいのことが書いてあるから、そっちを見てね。

 とりあえず久坂勇っていうスゴイツヨイオーヴァードがいて、
 彼以外が彼をサポートして、彼がえいやーって突っ込んで、終わったら彼とサポート要員がわーって帰るの。

GM :
 まあ、基本的にエンドライン世界はだいぶ「これ“““詰み”””だよね?」を感じる気風だけど…。
 何とかなると思っているから、どこかギリギリで続いているのかも! 知れないね。

GM :
 …ところで彼の名前、聞いたことある? まあ、丁寧に説明してもらったし、改めての話だけど。
 基本ステージにも全く同じ“ふたり”がいるよ。

 どっちがどっちを連れて歩いているのかが違う……イミがよくわからない?
 そのあたりは、きっと本人が語ってくれたことのほうが詳しいんじゃないかしら。

GM :
 彼にとっては、「エンドライン」の誰それと「基本ステージ」の誰それは、また違った新鮮さがあるはずだよ。
 良いも悪いもね。生き抜いた後の土産話にできるよう、くれぐれもゴジアイだよ、ゴジアイ!

GM :
 さて、それじゃビルドの解説に入るんだけど…。
 彼はステージ専用Dロイス『真実を知る者』を持ってきている!
 これは常備化[40]点以下のFHアイテムを一つ手に入れ、それを使用した判定のダイスを+2個するDロイスだ。

GM :
 それで選んだのは指定した能力二つのダイスを増やせるAIDA!
 そしてその究極系は『無形の影』による精神置換! 
 どの判定もこれとコンセントレイトで…。理論上は五分以上に持ち込める。

 しかし今回のPCたちは示し合わせたように社会のダイスが低めで、範囲攻撃も彼以外は持っていない!

GM :
 まあ、実は一人だけ例外的に埋め合わせる手段を持ち込んではいるようだけど…。

GM :
 そういう意味では彼はチームの尖りを補う能力を持ってきた、と言えるね。自分の攻撃力も『赫き重刃』を持ち込んできた辺りで十分だ。

GM :
 あと…どこかで言った気がするけど、敵がオーヴァードだからってキルリーダー持ってきてるのやっぱりニクいね。
 対抗種に謝ってほしいよね。

GM :
 なんて話はさておいて、総合的に見れば…。
 出来ることの多さで器用に立ち回れるつくりになっているワケだ!
 イージーエフェクトも以下同文! なんでもそつなく! そして、転んでも只では起きないところを期待しよう!

GM :
 そんな彼のHOは…。

SYSTEM :
HO④:Turning point of fate

 以下のHOは選択式となっている。選んだHOをPCが担当する。

SYSTEM :
β:Drifter
 シナリオロイス:“プランナー”都築京香 or ??? 推奨感情:○P有為/N脅威
 カヴァー/ワークス:任意/任意
 条件:『基本ステージ』の人物ではない

 先ず始めに断っておくと、あなたはこの世界の人間ではない。

 あなたはあなたの生きていた時代、世界から、
 ある人物の言葉に応じて『扉』を潜り、この世界にやって来た。
 理由は定かではないが、その人物…? の言葉は概ね要約すると次のようなものである。

「あなた方の生きている現在、そして過去と未来が、ふたりの欲望で壊れようとしております」

 あなたがその人物について分かることは、強大なレネゲイドの塊であるということだけ。
 そしてあなたが扉を潜った先で、あなたは『ゼノス』の盟主、“プランナー”都築京香と接触する。

 ※「???」はオープニングフェイズ以外では一切登場しない。

GM :
 彼はそのブラストハンドの一員として活動している時……。
 なぜかFHのプランナーからお願いをされるよ。おかしいね。彼女、敵なんだけどね。

GM :
 …ところで、そのプランナーと…シャラくんのシンドロームは……。
 すっっっっっっごく相性が悪いんだけどね………?

GM :
 …じゃあどういう経緯で会うのかって?

GM :
 ………………………。

GM :
 よろしくねえ!(力技で押し流す)

シャラ :

GM :
 

SYSTEM :
PC1:Unknown Aubade
PC2:Deus Ex Machina
▽PC3:Smaragd
PC4:Aghasura 

SYSTEM :
 パーソナルデータを確認しています...

SYSTEM :
NAME:NO NAME
M/F:MALE AGE:19 BLOOD TYPE:Unknown
WORKS/COVER:UGN AGENT/EMPTY

[CODE NAME:Smaragd]
BREED:CROSS 
SYNDROME:CUMAILA/EXILE
DESCRIPT:LOST NUMBER
IMPULSE:STRIFE
EROSION PERCENTAGE:43%

SYSTEM :
 ………………
 ……………… 

"礎石" :
「では率直に」

"礎石" :
       スマラグド
「コードネーム"礎石"。
 シンドロームはキュマイラとエグザイルのクロス。
 用途は防衛だ。攻手の損耗を抑え、継戦を支援する」

"礎石" :
「”私”は……いや、ここでは俺としておこう」

"礎石" :
「俺は体内に生命のストックを飼養している。概算でオーヴァード約8体分。無尽蔵を気取るには力不足だが、その真似事が今の生業だ」

"礎石" :
「俺は現在UGNの管理下にあり、彼らの保証を受けて活動している。いわば秩序の労役者だ」

"礎石" :
「たとえUGNがあなたの信用に足らず、あるいは俺がその名を背負うに値しないとしてもだ。現場の一作業員として、自らの職分を全うしよう」

"礎石" :
「では行こう。労働万歳」

"礎石" :
「冗談だよ」

メットライフ生命 :
こんばんは、ask2です。みんなのおかげで今日もガード屋ができます。いつもありがとう。

メットライフ生命 :
今回のメットは元FHの改造人間です。
遺伝子いじくり回して生まれたデザインベビーなので、先天性の改造人間と言えます。
言います、改造人間っていいよね。響きが。

メットライフ生命 :
19歳のお兄さんです。
礎石と書いてスマラグドと読ませる。
コードネームがイコールで本名の、非日常側に根差した人です。

メットライフ生命 :
こと戦闘においてはしぶといんですが、設計された寿命の4~7倍も長生きしているため、いつ事切れるか分からない状態です。
なので「人間らしく死ぬ」を目的に日々の労働に従事しています。
現場作業員系UGN。

メットライフ生命 :
アピールポイントは195cmの長躯です。
長い手足とスマートな胴体のバランス感が異形の怪人めいてcute……

メットライフ生命 :
シンドロームはキュマイラとエグザイルのクロスブリード!
最大HPを追加する《異形の刻印》とHPを回復する《鋼の肉体》《リングオブライフ》を取得しています。

メットライフ生命 :
つまり最大HPが239点で1ラウンドに8D10+9点回復するお兄さんです。
自己回復できると言ってもコストはかかる! 余裕あったら応急キットの買い占めにご協力いただけると幸いです!

メットライフ生命 :
担当予定の能力値は【肉体】! もともと高い素ステをD実験体とエンブレムで補強して、肉体判定のEEを積んできました。

メットライフ生命 :
うお~っがんばるぞ! よろしくお願いしまーす!

GM :
 よろしくお願いしま~す!

GM :
 さて! というわけでPC3…。
スマラグド
 “礎石”くんのエントリーだ!

GM :
 スマラグド、というのは、緑の宝石という意味を持つようなんだ。
 ここからは、PLがだいたい語ってくれた内容の焼き直しになるけど…。

GM :

 元FHチルドレン、生まれつきの戦闘用量産個体。
 任務ごとに真っ新になる彼は、ある時それがうまく働かなかったことで人格を得た。

 もちろん…それだけで抜け出せた、ってわけじゃない。
 ずいぶん一悶着があった後、彼は、彼という原石を磨かず使った石工のもとから抜け出して新しい銘を得たってわけ。
 その結果、後述するけど、戦い方にも変化があったみだいね。

GM :
 ちなみに彼と同じ時期に、その『量産個体』の一人が抜け出している。というか、一緒に抜け出している。
 それがきみのシナリオロイスだ。どういうコなのかについては…、うん。すぐにわかると思う。

GM :
 ビルドはキュマイラとエグザイルのクロスブリード!
 基本的ガード屋のデザイン………………。

GM :
 まあこの言葉で誤魔化せない数値があるね。上見て上。

GM :
 なに? HP=239って………ラスボス? 単純計算で5.975春日恭二なんだけど………?

GM :
 …というか回復コンボあるんだけど? 

GM :


 アキュラくん…ボク、彼をリザレクトさせられるかなあ!?
 リザレクトさせられるかなあ!?

* :
 

GM :
 さておき。肉体はなんと驚異の9dx! フィジカルはだいたいすべてを解決したりしなかったりする!

GM :
 そしてそのHPの原因は『適合体』と『濃縮体』なんて一つで十分なものをかみ合わせて、異形の刻印を底上げに底上げしたビルド!

 本当に…本当に、これと回復だけに振り切った潔いビルド構築になっているね。
 ガード自体は出来るようだけど、果たしてこれが「FSシーン」を中心にするシナリオ構成にどうかみ合うのか…。

GM :
 あと本当にリザレクトするのか。
 そんな彼のHOは…。

SYSTEM :
HO3:Irreconcilable
 シナリオロイス:”紅玉” 推奨感情:○P任意/N任意
 カヴァー/ワークス:任意/UGNエージェント(チルドレン)

 あなたは何らかの組織の構成員、またはエージェントである。
 なおUGNの場合であれば、チルドレン、支部長の何れか、
 FHの場合であればチルドレン、セルリーダーの何れかでも構わない。
 ただしどちらの場合でも「イリーガル」「マーセナリー」と言った、組織の外様にいるようなワークスは択べない。

 あなたは未だ明るみにはなっていないものの、世界的に発生する『停電』や電子機器の暴走事故………。
 その不可解な事件に関連付けられる黒幕が、
 何処の組織かも判明していない通称『刻知らずネイムレス』というグループなのだと突き止めることが出来た。
 彼らの拠点を突き止め、(シナリオロイス1)と共に潜入。首謀者の制圧のため動き出すが───?

GM :
 …ちなみにこのシナリオロイスは「組織」によって変わる構築になっていたよ。
 それなりに幅の広い、アドリブ重点! な枠ってコト。

GM :
 彼が選んだ組織で、彼は自分の本分を全うするわけだ。
 まさに秩序の護り手としてね。その働きにご注目だ!

SYSTEM :
PC1:Unknown Aubade
▽PC2:Deus Ex Machina
PC3:Smaragd
PC4:Aghasura 

SYSTEM :
 パーソナルデータを確認しています...

SYSTEM :
NAME:Kugetsu makina
M/F:FEMALE AGE:15 BLOOD TYPE:Unknown
WORKS/COVER:DETECTIVE/HACKER

[CODE NAME:Deus Ex Machina]
BREED:CROSS 
SYNDROME:BLACK DOG/MORPHEUS
DESCRIPT:ELECTRO HOUND
IMPULSE:DESTRUCTION
EROSION PERCENTAGE:31%

SYSTEM :
 ………………
 ……………… 

マキナ :

《構造体再構築、完了。
 R因子年代測定中……
 推定年代 西暦202X年》

マキナ :

《自己診断プログラム起動。
 チェックサム
 検査合計照合中……》

マキナ :

《意識レベルI-1。オーバークロック後の本人確認に入ります。
 強化人間「LU-N09-a」、自己証明を入力してください》

マキナ :
           データロスチェック
「はいはーい、いつもの情 報 復 唱ね。
 こほんっ」

マキナ :
「玖月マキナ。ただのマキナ。クソッタレの新暦生まれ、稼働時間は約15年。
 所属ベースはジョリーロジャーベース。
 職業はクロノスガーディアン……とか馬鹿正直に言うべきじゃないか。ま、刑事ってとこかな。このコートもそれ用のだし」

マキナ :
「経緯の方はぶっちゃけあんま覚えてない。記憶領域のセルフロックはきっちり効いてるね。
   プレイン
 この世界線じゃ国家解体戦争回りの話はNGだし。今回のミッションとは、別に関係ないだろうしね。
 むしろ関係があるとしたら……」

マキナ :
「……いや、それも後回しで。 
 とにかく今回のミッションは、ある男のオーバークロックの確認、及びにその標的と推測される推定レネゲイドビーイング『電子の妖精』の保護。
 協力関係者が見込めないレネゲイド拡散の黎明期に当たる点を考慮して、時空管理法の特例に基づいて単独での任務遂行となる……
 ってところかな」

マキナ :
《照合完了・パケットロス率0.00%。
 オーバークロック・全行程完了を確認。
 強化人間「LU-N09-a」、此度の無事と健闘を祈ります》

マキナ :
「……他人事みたいに言っちゃって。おまえも、これからキリキリ働いてもらうからね。
 さてと、それじゃあ──」

マキナ :
 ミッションスタート
「任務開始、だ」

海藻類 :
ということで"すべて世はこともなし/デウス・エクス・マキナ"PC2役の海藻類です。
色々話す前に、改めて立ち絵提供いただいたオオトリさんにこの場を借りて感謝の言葉を述べさせていただきます
追加差分も依頼中 楽しみです!皆もお楽しみに!!

海藻類 :
ちなみに再開の間にもSkebイラストが増えました。隙あらば自慢フェイズ

海藻類 :
 故あってクロノスガーディアンステージからやってきたサイボーグです。多分2,300年ぐらい先の世界線の娘です。
 今回は本来の仕様とも異なる「直接未来からやって事態を収めるために動く」タイムパトロールとして色々頑張ることになる予定です
 基本的に俺は面倒が嫌いなんだを地で行くキャラですが、なんだかんだで丸く収まるように体張ってくれるそんな感じの背伸び気味の15歳です。
 斜に構えたことをどれだけ言えるかはPLの課題の一つです

海藻類 :
 データ的には射撃アタッカーのピュアブラド……から、モルとのクロスブリードに!
 あれこれ捏ね回して瞬間火力にとがらせ、頑張れば隣のスレンダーマン兄貴を半分ぐらい削れる瞬間火力が出せるようになりました、一撃特化の大砲ビルドです。
 ……これだけやって半分ってマジ?

海藻類 :
 今回は前世で違法取得していたイリーガルモービルをオミットし、新型Dロイスをさっそく採用させていただき『電子の魔犬』を装備することになりました。
 今回からこのなんか経験点60点近くありそうなブチ壊れたDロイスを心臓部のEXレネゲイドリアクターの恩恵だとか何だとかホザきながら電子戦つよつよマンとしてふるまいたい所存です

海藻類 :
 そんな感じに今回は別ゲー感マシマシのPSO2辺りに居そうなキャスト娘でやらせていただきます
 こちらでも異世界ギャップで色々出来ればなと思っております、よろしくおねがいしやす!

GM :
 よろしゃす!

GM :
 さて! というわけでPC2…。
デウス・エクス・マキナ
 “凡て世はこともなし”、玖月 真綺那ちゃんのエントリーだ!

GM :
 ちなみにこのコードネームだからって後ろにチャートとかついたりしないよ。

GM :
 出自は彼女が…ほんのちょこ~っと話した通り。
 けっこうサイエンスでファンタジーで夢の欠乏しがちな未来から、
 時の渡り人にジョブチェンジして…クロノスガーディアンの実働要員だ。

GM :
 この組織、いろいろと曖昧なところも多いんだけど。

 まあ、要は…。
「ジャームの時空改変に対して現地の人間を通じて働きかけてなんやかんやしながら阻止する」組織だね。

GM :
 ちなみにこの“時空改変”自体、そもそも歴史にすら繋がりを持てないジャームじゃないと出来ないし…。
 それの阻止自体も、同じように“その時代か、その時代より過去の人”の意志なり行動じゃないとダメなんだけど…。
 
 現地徴用の難しい状況、時代で『武力』のアシストが必要な時に送られるのが彼女ってカンジだ。
 現地の人間の意志と実行であれば割と何とかなる!

GM :
 …あ。前も言ったけど、公式で違っても今回はボクが“そういうコト”にしているよ。
 もし違ったらゴメンね。これはTRPGだ(力技で押し流す)。

GM :
 ビルドについてだけど、ブラックドッグが誇る最新サプリメントの追加Dロイス…。
 インスピレーションとイリーガルモービルの合わせ技みたいな『電子の魔犬』を持っているみたいだ。
 前者は質問権、後者は…イリーガルモービルが持つ効果のひとつ「どこでも判定ダイス+4dx」だ。

GM :
 …お世話になったなあ、イリーガルモービル。
 あ、いやこっちの話。続けるね…。

GM :
 メイン武器がなんと『レールガン』! 威力は凄いけど欠点もなくはない。
 使用制限がついてるんだ。それもシーン1。少なくともシーン内の戦闘が長引くようなケースには向いてない。
 たぶんそのあたりは『RGカートリッジ』で補う仕組みのようだけど、その分の威力とコストの効率は大したモノだよ。

GM :
 ただ、ひょっとするとサイドアームはシナリオ中補う算段なのかもね。
 100%のエフェクトに、とっても、気になるやつがあるから…。 

GM :
 まあいいや。
 最後にそのHOを公開するよ。

SYSTEM :

HO2:Rules of Engagement
 シナリオロイス:??? 推奨感情:○P傾倒/N敵愾心 等
 カヴァー/ワークス:任意/UGNイリーガル、フリーランス等
【推奨】:シンドローム『ブラックドッグ』
【指定】:ライフパス/出自「天涯孤独」&経験「記憶喪失」、新規PCのみ使用可能

 あなたは世界規模で起きるこの事件の少し前から、奇妙な『電子の妖精』のうわさを耳にしていた。
 不思議な悪戯、あるいは幸運を齎すなどと噂に尾びれのついたそれを、どのような感情から追いかけたのかは定かではない。任務、好奇心………実際に遭遇した可能性すらあるだろうか。

 あなたは僅かな情報源を頼りに、その噂の真相を追いかける。
 そして辿り着いた病院は、PC1のいる病院だったが………?

SYSTEM :

 尚………あなたは人死や犠牲を許容していい性格ではない。その理由、尺度はお任せする。
 そのあなたはとある人物と強い因縁、ないし確執を持っている。
 因縁の内容はシナリオ前に、対象PLにのみ公開される。

GM :
 目的は当人が語った通りだ。
 追いかけているものもね。

GM :
 ………ただ、この世界のことはこの世界のオーヴァードが解決すればいいわけ。
 そうじゃない、つまり彼女が投入されるってことは、それ相応の理由があるんだ。

 …ひょっとすると、組織のりくつ以外にも…。

GM :
 コード通りに“解決”なるか! 乞うご期待というところだね。

SYSTEM :
▽PC1:Unknown Aubade
PC2:Deus Ex Machina
PC3:Smaragd
PC4:Aghasura 

SYSTEM :
 パーソナルデータを確認しています...

SYSTEM :
NAME:Tendou Lux
M/F:MALE AGE:14 BLOOD TYPE:
WORKS/COVER:RENEGADE BEING[D]/STUDENT

[CODE NAME:Unknown]
BREED:PURE 
SYNDROME:BLACK DOG
DESCRIPT:REINCARNATION
IMPULSE:STRIFE
EROSION PERCENTAGE:48%

SYSTEM :
 ………………
 ………………

天導 ルクス :
「ん~、おお……おぉ?あれっ、何か見られてる?気のせい?
 ん~……」

天導 ルクス :
「……まっ、いいや!オーケーオーケー!大体わかった!
 こほんこほん。え~……どもども!オレは天導ルクス!ども~」

天導 ルクス :
「好きなものはカッコいいもの!面白いもの!
 苦手なものは笑えないもの!面白くないコトっていうよりは、なんていうか……イヤな感じが勝つもの?我ながらふわっとしてるなあ」

天導 ルクス :
「で、ヒーロー志望!まで行くと言いすぎだけど、善いことして行きたいとかそういう志はある―――つもり。一応。一応ね!
 言うだけならタダ!的な。別に誰に聞かれてるわけでもないし?」

天導 ルクス :
「んで~。なんとオレ、秘密があります!
 こう……バチバチ!ズドーン!ってさ、雷を出せて……あっ、嘘じゃない!嘘じゃないから!嘘っぽいかなぁそうだな!
 でも今ってそういう“設定”で…… ……いやいや実際見てみりゃ信じるしかないよな。よーし、ムムム……」

天導 ルクス :
「…… ……」

天導 ルクス :
「あれ?……こういうとき見てる夢って大体、マンガ過ぎるとこまで行くと起きちゃうんだけど……。
 何か妙な見られてる感だけ続いてるっていうか……んん?」

天導 ルクス :
「ウーン、まいっかあ。そのうち起きるでしょ……」

覇王 :
覇王龍ズァークです。
覚醒してないヤツの自己紹介って何言えばいいか分からなくて凄いですね。皆どう考えてきてたんだ?と思って色んなログ覗きに行って凄いね……となって泣きながら帰ってきた過去を持つ次元の王でもあります。

覇王 :
諸々の諸々だった歴代PCを思考から除くと初PC1の初普通に元気そうな男児です。
初なのか?普通に元気そうな男児。まあ確かに振り返ってみると未成年って陰気陰気復讐死にかけとかでアレやね……

覇王 :
ド級のふわり手、ドふわん手なことしか言ってないのでザックリと技能解説などをします。
雷を……投げたり振ったり……します!信仰ビルドですね。

覇王 :
マジ話をするとブラックドッグのピュアブリードで転生者です。
集合知で得たフルオープンなどでパワーを上げて殴ることを生業としています。
組む前は情報がメカメカし過ぎるな……と思って思考の外に置こうと思っていたハードワイヤードが堂々と並びRCの固定値を盛ってくれている。
さりとてド特化とかでもなさそう。努力はしている!

覇王 :
精一杯なんかいい感じにガキになっていこうと思っています!!!!!!よろしくお願いします!!!

GM :
 よろしくおねがいしま~す!

GM :
 さて! というわけでPC1…。
 
 天導ルクスくんのエントリーだ!

GM :
 …あれ? コードネームないね…。
 と思った人もいるはず。そこは当然、彼はオーヴァードの世界には“これから”の人だ!

GM :
 夢の中で、会ったような…。だって?

 ところがどっこい、夢じゃありません…!
 現実です…! これが現実っ…!

GM :
 そんな彼だけど、生まれも育ちも特筆事項はそんな~にない。
 当たり前に生まれて、昨日に続く今日を生きている14歳だ!

 ………いや、親の事情で海外転々を特筆事項じゃないっていうのも凄いケドね?

GM :
 ちなみに性格面も尖りを感じない、普通のティーンエイジャーって感じ。
 特別な力があったらはしゃげる、小難しいことは後回し、日曜朝の某シリーズにも経験のあるタイプ!

GM :
 …彼自身に降りかかる事は、ひょっとしたら“嫌いなもの”カテゴリかもしれないけど。
 それを振り払う手段を持っていることは、幸いかもしれないし、更に不幸かもしれない。

 前者にするかしないかはキミ次第! 可能性、見落とさないようにね。

GM :
 で~…ビルド、なんだけど………。

GM :
 なに? 侵蝕基本値48って?

GM :
 気付いたらハードでワイヤードだのセカンドでブレインだの足しているみたい。
 ネェ少年だよね? もしかしてベルトとかつけてやけに渋い機械音声と一緒に変身シーンが入るタイプ?

GM :
 でも、RCブースターいっぱい積んで、ダイス数はそのセカンドブレインで補填!
 万が一近付かれた時用の雷の剣までセット。
 一見した感じは、侵蝕基本値の大きさを「1コンボの燃費の良さ」で打ち消すタイプの、長丁場馴れした人らしいRCアタッカーだ。 

GM :
 …なんだけど、経験点とレギュレーションの都合上それだけじゃ話が終わらない。
 セットアップの『フルオープン』で一気にダイスを+5~6d10! 上振れるか下振れるかでだいぶ印象は代わりそうだけど、ロマンに振ろうと思えば振れる、スイッチ切り替えのできるところがらしい構成だね。

GM :
 最後にそのHOを公開するよ。

GM :

SYSTEM :

HO1:Halfy
 シナリオロイス:ハーフィ 推奨感情:○P傾倒/N任意
 カヴァー/ワークス:任意/レネゲイドビーイングA~D
【指定】:シンドローム『ブラックドッグ』、Dロイス『転生者』

 あなたは不治の病の結果として死亡する。
 老若男女のいずれか、国籍は何処で経歴はどう………いずれを問わず。
 いずれだろうと関係はない。
 オーヴァードならば、何処かの事件や自らのレネゲイドによって死亡する。

 しかしあなたは、零と一の狭間にて蘇った。
 まるで夢物語みたいな電気の力を手にして。
 あなたは目を覚ます。その時には、世界はあなたの知らないものになっている。

 そんなあなたの前に現れた、とある少女がこう語る。
          ・・
『きみには世界を救う権利があるの』───。
 言葉の意味を知らされる暇もなく、終わりへ向かって歯車が動き出す。

GM :
 そんな彼だけど、OP中にその生涯を閉じる………。

 はずが、ご覧くださいDロイス。
 何かが起きるみたいだ。…そう、マンガみたいなことがね。

GM :
 マンガほど綺麗じゃないけど、だからって現実は悲観することばかりじゃない。
 頑張っていこう!

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
▼プレイヤーデータのロードが完了しました。

SYSTEM :
▼ステージデータのロードを開始します。

SYSTEM :
 ………………
 ………………

 

・トレーラー


* :
 20XX年現代、人知れず変貌した世界においても“それ”が持つ役割は変わらない。

 夜闇を払う不夜の城を、0と1の数字で構築された電子の海を。
 遍くモノを作り、また消費させるに至ったエネルギーを、電気と呼んで久しい。

* :
 目に見えぬ何処かでそれは飛び交い、生活圏を支える生命線となっている。

 人知れず変貌した世界においても、あるいは“それ”はレネゲイドという異物と共存を果たそうとする概念の一つかもしれない。

* :
 ………その智慧の光が強く濃くなればなるほど。
 影もまた強くなる。

* :
 結論から言うならば、これはその影と。

 影を悪用しようとした人間の、お話だ。

* :
 ………………
 ………………

───曰く。 :
 不可能を可能にすることに喜びがあるように。
 可能が不可能になることこそ、耐え難い苦痛がある。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

 

・OP1『遠雷-Rebirth-』


SYSTEM :
【Scene:遠雷-Rebirth-】

Scene Player:Lux
   Erosion:OFF

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ───天導ルクスの回想に曰く。
 はじめの『海外旅行』は、父親のほうの仕事が切っ掛けだった。

* :
「むこうについてもれんらくしてね!」

* :
「つぎもどってきたら○○せんしゅのサインもらってきてくんね!?」

* :
「いいなールクスくん、アメリカだって」

SYSTEM :
 海外旅行というには長い期間の、ほぼ転校と然して変わらない出立の日のこと。
 いくつか年の離れた上級生が“自分たちも近いうちに旅行に行く”みたいなことを言って、親近感で盛り上がったこともありつつ。

 殆どは当時のあなたと同じくらい能天気な台詞で。
 そうでないものは予想だにしていなかった友達の実質的な転校に寂しさをこみ上げさせるような台詞で。あなたを見送った。

SYSTEM :
 …親の事情の転勤と海外赴任は何度もある。
 なにしろ小学校の頃は特に多かった。

SYSTEM :
 あなたの父親は日本を代表する財閥グループ、神城の海外コーディネーター。
 派手好きで大げさ、あなたに『いつまでも明るく』という意味でなぜか海外の『光』の名をつけてきたとんでもない名付け親。

SYSTEM :
 母親は海外勤めが常の国境なき医師団。実家の話はなぜか禁句。
 やると決めたら突っ走る、ひょっとしたら、あなたの参考先。

 どちらも端的に言って、職場が日本の海向こうなのである。どういう経緯で巡り会い、どういう心持ちで家庭を成したのか。
 概ね運命的出会いだったと語るのは意外にも母親のほうだという。

SYSTEM :
 あなたにとって幸いだったのは、二人揃って家庭を忘れることが一切なかったことだが…。
 それでも、物心ついた頃から、あなたはよく飛行機の音を聞いた。違う国の言葉や文化も。
 馴れる頃には日本に逆戻り、ということもあったくらい。

SYSTEM :
 しかしルクス───天導ルクスの人生における美点と幸運は。
 現地で、話の合う人間に、接点を持つ切欠に、毎回のように出会えたことだった。

* :
“テンドウ…天…あ、知ってる知ってる その字ってソラとかテッペンの意味だろ?”

* :
“はいオレのほうが背ェデカいー! はい勝ちー!”

SYSTEM :
 到着した先、大人同士の“難しい話”から同じく蚊帳の外になっていた少年(のちに少女、しかも年上と判明)と些細なことでムキになったあと、
 やがてあなたが小学校を卒業するくらいまでは通じていた連絡を交わし合っていたり。

* :
“Hello、你好、Salut、Buongiorno、こんちはー…───”

* :
“あっ! 最後に反応した! 今日一番の驚き予備軍!
 ねえねえキミ、その手に持ってるやつ、そう、それそれ───”

SYSTEM :
 あちこち転々とする関係で“せめて”という意味合いで買ってもらったゲーム機が、
 同じように海外旅行に出ていたらしい、ちょっと年上のお喋りな学生との話題の切欠になったり。

* :
“………迷子? そう”

* :
“「そう」で終わりなのかって。逆に、僕に何を言ってほしかったんだ、君は”

* :
“…分かった、30分だけ付き合ってあげよう。
 …もう一声じゃないが。…意外と図太いなこいつ…”

SYSTEM :
 到着早々、物珍しさにちょっと逸れたあなたがたまたま考えなしに話しかけた相手が、態度のわりになんだかんだと助け船を出してくれるタイプで…。

SYSTEM :
 しかもよくよく聞いてみればその少年こそが実は迷子だったので…。

 数奇な保護者探し(相互)の末、最後に“今まで生きていて一番ヘンテコな一日だった”と誉め言葉(諸説)をもらったり。

SYSTEM :
 ロンドン旅行の偶さか“何かあったとき”をすり抜けて、その日から半年くらい鰻を避けるような鮮烈(オブラート)な出会いがあったり…。
 最初の小学校で言われていた「サイン貰ってきてほしい」を思い出して見に行ったベースボールの試合で、その友達と再会するなどしたり…。

SYSTEM :
 あなたの人生には、最低でも、赴任/転々とした先に、片手指以上の人間関係があった。

 日本に戻ってみれば見たで、童話の浦島太郎状態になりがちだけど。
 どこにでも行けるあなたの見上げる空は、毎回、色が違っていたし。
 見渡す人の姿も、同じように違っていた。

天導レイ :
“アメリカ何するモノぞ! 既にフライトも両手指!”

天導レイ :
“神城の、ひいてはこの天導レイの威風見せてくれよう!”

天導レイ :
“(任意の高笑い)”

天導ツムジ :
「と、元気に出向いたお父さんも…。
 もうちょっとシゴト安定してくるといいんだけどなー、とお母さん的には思うワケで」

SYSTEM :
 そんなあなたの人生のある一幕。
 アメリカに来るのはこれで二、いや確か三度目である。

 アメリカの…確かシカゴ。早速こちらのジュニアハイに馴染んでしばらくした頃。
 先週はそのスクールで出来た友達つながりでホームパーティの誘いを受け、そして今週は来週の予定を考え出す土日の昼下がり。
 お母さん/ツムジは、あなたを連れた買い物帰りに、満更でもない口ぶりでそう嘯いた。

天導 ルクス :
「ま~ま~、ずっと楽しいし悪くないんじゃない?
 お父さんもなんか……いつも通りに超元気だったわけだし。おかげでオレも超元気!」

 歩く親をちょっと追い抜き、振り返って両手を頭に添えながら言葉を返す。
 まあ実際、あのド元気な父が必要以上に沈んでるとことか想像できないし。お母さんだって、口ではこんな感じだけど態度がもう“しょうがないんだから~”ってな感じだ。

天導 ルクス :
 そりゃあ、そんな良い調子の親に挟まれていればこうも育つだろう。
 ……という自負がほんのりある。そんな感じの年頃だ。預けてもらえる買い物袋くらいは抱えておこう。

SYSTEM :
 ちなみに家庭ではだいぶ“お母さん”に大袈裟な態度を粉砕され…。
 こないだの休日昼に、キングで貧乏なやつを何度も擦り付けられ真っ白に燃え尽きた…。
 そんなあなたの父親だが、どんなことがあっても最長1時間、最短1分で復活する。

天導ツムジ :
「まあねー! それに、あれでお父さんかっこいい時はかっこいいんだから」

天導ツムジ :
「それでそれで、どうだった我が息子。パーティのお誘い感想は? いいカンジの子とトモダチなったじゃーん」

SYSTEM :
 ちなみに当人はそのご両親と、ドイツのほうにいるらしい共通の友人の話などしていてご満悦だったことを記しておく。
 持ち慣れた買い物袋の中身は今日の夕飯。日本とアメリカではレパートリーが違うと評判である。特にお菓子の類が。

天導 ルクス :
「あはぁ」

 ウーン直近の記憶があんな感じだからカッコいい時をイメージしようとしても変な図しか出てこないけど……。と。

天導 ルクス :
「我ながら楽しい友達と会えてラッキー、って感じ!
 パーティーとか言われるとそんな派手な……って勝手に一瞬思っちゃいはしたんだけども」

 “そういう感じ”の友だちとの出会い運というのは、専らあるほうだ。
 なんだろう。そういうのを引き寄せる感じの粒子とか実は出てるんだろうか。遺伝?

天導ツムジ :
「まー、ルクスの場合スタートで捕まえてくるコがけっこう変わってるしね。
 アメリカだとそういうのって珍しくもないんだけど、出会って半月ちょいだし」

天導ツムジ :
「うーん…遺伝かな!」

 思考を読んだわけでもなければ、どちらとも言わなかったが、おおむね考えていることは同じの母親の図であった

天導 ルクス :
「遺伝かあ~」

 まあまんざらでもない!の顔!

天導ツムジ :
「あ、そだ。お父さんのお仕事がひと段落したら、ちょっと気が早いけど、ルクスも誕生日よね。どっちで迎える?」

天導ツムジ :
「あたし的には、生まれ故郷で誕生日迎えなきゃいけないなんてルールないけどさ」

SYSTEM :
 仕事終わりは一か月後か、半年後だったか。まあ、ともかく。
 あなたが誕生日を外国で迎えたことは初めてでもない。

 気分としては旅行先で年替わりケーキ。だいたい、なじみのない天井と空に愛着が湧き始めたころだ。

SYSTEM :
 誕生日の迎え方は今のところそこからズレていなかったが、それでも幸いなのは…。
 どちらかが必ず誕生日にはいることだ。海外赴任の主要因は概ね父親だが、肝心の母も不定期に仕事を持ち込まれるタイプだったとか。

天導 ルクス :
「んぇ」

 ほんのりと間抜けな声を漏らして、う~んと考える素振り。
 考えてから、そこまで考えたとは思えない答えを出す。

天導 ルクス :
「まあ~、どこでも良いよ!
 あっいやどーでもいい的な意味じゃなくて!二人がいるならって」

 そりゃ祝ってくれる人が多いに越したことってないんだけど。
 ん?ちょっとハズいか?一瞬考えて、気にしなきゃセーフ、と居直る。

SYSTEM :
 買い物袋がぶつからないように距離を詰めたのち、わしゃわしゃとあなたの頭の上で動く手。

天導 ルクス :
ぬわーっ

天導ツムジ :
「アッハハハハ、そう来たか~!」

天導ツムジ :
「ま、その点は心配ナイナイ! 気にしなさんな!
 お母さんってば、突然呼ばれなきゃ大がかりなやつは暫くないしね。お父さんは、」

天導 ルクス :
「お父さんは~?」

天導ツムジ :
「この仕事が終わったら…ってやつ! だけど。
 アメリカの人ってけっこうグイグイくるからなあ~。日本人が控えめなだけなのかしらねえ」

天導ツムジ :
「まーでも何とかなるでしょ!
 そんなわけだから、ルクスもそれまで布団蹴り飛ばしたりお風呂出ても髪乾かさんままにしないよーに」

天導 ルクス :
「だっ…… ……だいじょぶだいじょぶ!
 そんなことしないしない!風邪とか絶対引かんから!」

 保障もしない。何故ならオレは……寝相の方はまあ、自覚してないから自認としては置いておくとして……。
 ドライヤーとかはサボってる気がするタイミングの方が多い……!確かに……!

天導ツムジ :
「ほんとか~? いま誤魔化しちゃるとか思ってない?」

天導 ルクス :
「べっべべ別に!
 ほらっそんな悪い子な目ぇしてないでしょ!オレ!」

天導ツムジ :
「強いて言うならあたしがちいちゃな頃の、親の言いつけに“わかってまーす”した時の目かなあ?」

天導ツムジ :
「まーわかった、そん時にまた聞くよ。
 明日できることは明日、今日できることは今日! ってね。お父さんも日曜久々にゆっくりするんだし」

天導ツムジ :
「ああ、スクールのほうはどう? そろそろそういう時期じゃない?」

SYSTEM :
 そういう時期とはすなわち中学生のころからありがちな例のアレ、学生諸君の関門だが。

 それとは別に、先週にはこんなことがあった。アメリカだと高校から大学でよく聞かれると評判で、別にジュニアハイでも珍しいわけじゃないことだ。

SYSTEM :
 …将来何になりたいのか。
 あなたはそのあたりの話に何と答えたっけ?

天導 ルクス :
 わっメチャメチャバレてる!じゃあこの感じも遺伝なんじゃないか?
 変な言い訳フェイズに入る前に、母の方から話題を転換してくれた。イヤ言い訳も何もないんだけど……。

天導 ルクス :
「フフフ、お母さんの子どもを舐めないでもらいた~い。
 オレ、結構やれる…… ……気がするよ!」

 なんてことを宣いながら、ふ、と脳裏に浮かんだのは―――所謂、将来の夢。未来へのなんたら。
 オレがなりたいもの。たしか、その手の話。

天導 ルクス :
 ……多分、そのときは両親のことを引き合いに出した回答をした。父のようになってもいい。母みたいに人を救ってもいい。どっちにしたって、人の為だ。
 冗談めかしく、誇らしく、そういった具合の答えを提出した気がする。

 ただ、真のところには『人助け』というよりもヒーロー願望のような志が転がっている。出した答えと、そう離れてはいない……と、思ってはいるけど子どもっぽすぎて大真面目には語れまい。

天導ツムジ :
「お、墓穴を掘ったなお母さんの子供よ」

天導 ルクス :
むむっ

天導ツムジ :
「なぜなら母さんってばね、実をゆーと行儀の良い学生さんじゃなかったワケ」

天導ツムジ :
「なんで実家に帰れない理由の半分がそこだったり…。まっ、だからどうってワケでもないけど! 
 やりたいもんが見つかった時に“ああしておけばよかった~”にならん程度にはやっときなさいよ~」

天導 ルクス :
「ええっ」

 ……行儀良い学生さんをやってるお母さん……は、確かにちょっと想像できないけども!
 出掛かった言葉は一旦呑み込む。墓穴掘りまくりになりそうだったから。

天導 ルクス :
「むむ、実感ある言葉!
 ……前向きに検討がうんぬんかんぬん……!」

天導ツムジ :
「我が息子ながらその辺の国会議員みたいなこと言いおって」

SYSTEM :
 なお、行儀いい学生のイメージがないなど、それもそのはず。
 お酒の入ったあなたのお父さんがこんなことを言っていた…。

天導レイ :
“目の前で”今やらなきゃ”がある、するとどうなるか?
 当時の母さんはブレーキがなくなる!”

天導レイ :
 “そうとも、出会いと切欠はまさに疾風怒濤だった! 一息吐く暇もない!
  人間台風とはこれでこそオレの、”

天導ツムジ :
“お父さーん”

天導レイ :
“あっすみません”

SYSTEM :
 他人任せじゃなくて自分からアクセル踏んで変わりたがるところは、あなたにもよく似てる…と。
 父親は当時のあなたの、二度目の転校直後、だれからも距離を置いていたが、心を開いてくれた友達との経緯を聞いてそんなことを言っていたからだ。

SYSTEM :
 あと、以降、あなたの中での父と母の力関係は平時では明確だったという。
 
 ………閑話休題。

天導ツムジ :
「ま、そのお母さんがかなえた夢もギャップが色々ありましたわけですが…。
 そこはいーや。後悔はしてないしね」

天導ツムジ :
「んじゃ、帰ろっか!」

天導 ルクス :
「ふーん、―――……」

 後悔してない、って辺りが自分の親ながらカッコいいな、と思う。
 “今やらなきゃ”を止めない、放っとけない、で此処まで来て……何となく、笑いが出た。悪くない気分だ。

天導 ルクス :
「はあい」

 快く返事をしつつ帰路につくことにした。こうやって、親の話を聴けるのは良いことだ。

SYSTEM :
 あなたがさり気なく入れるなどした、日本とはギャップのあれどもお気に入りのお菓子一品を除けば、概ね夕飯の材料と日用品の買い物袋を抱えながらのお返事に、“お母さん”は「よろしい!」と頷いた。

 そこまで珍しくもない一日の風景だ。

SYSTEM :
 超常の力を持つヒーローでも魔法を扱えるファンタジーの住民でもない自分に、これ以上のことは起きなかった。
 たまに起きた例外が、そういう学校内の小さな人間関係とか、ゆく先々の空模様の違いとか。

 あなたの非日常はせいぜいそれくらい。

SYSTEM :
 あなたの…おそらくは、今後も続くはずの。
 あとあと振り返ってみればつながりに満ちた人生だった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 …瞼を開ける。

SYSTEM :
 …麻酔の掛かったぼんやりとした頭で、どこか、他人事のようにその言葉が浮かんだ言葉があった。

SYSTEM :
 …思うにそれは。
 走馬灯だったのだ、と。

SYSTEM :
 ある日、原因不明の苦しみに襲われたあなたが。

 もっと小さいころのあなたが、何を思ったか石の上に乗り、滑り落ちて大けがしたとき以来に血相を変えた母と、仕事を丸ごと放り出して駆け付けてきた父に連れられて。
 何か普通の病院とは違うような気がした名前の病院に運ばれて、だいたい、一週間…。

SYSTEM :
 瞼を開けているのか、閉じているのか、それすらも分からない。
 奇妙な浮遊感の中。
 面会に来る家族に対して気丈にふるまってきたり、案外大丈夫な気がした時は病院の隣の人に好き勝手話していたりしたあなただったが…。

SYSTEM :
 なんとなく、直感することがあった。

 今日の夜は越えられない気がする。

天導 ルクス :
 ふと、目を開く。
 実際のところ、ちゃんと世界が見えているのか怪しい。
 昔のこと―――そんな、昔って程でもないはずのことが、脳裏に浮かんでは通り過ぎていく。

天導 ルクス :
 ……うん、なんだろう。分かんないなりに分かることがある。
 多分、ダメなんだ。此処から逆転して、元気になる―――とか、そんな妄想が、荒唐無稽過ぎると思うくらいには力なく消えていく。
 動けない間に鍛えた想像力ですら、眼前に迫った大きすぎる闇には敵いそうにないっぽい。

天導 ルクス :
 ……どうなってるんだ、これ。
 ちゃんと、言われた通りに健康的に過ごして―――生きて、こうなるもんなのかな?
 そんな、誰にも答えが出せなさそうな疑問が浮かんでは消える。なんだ、これ。参ってる?オレ。

SYSTEM :
 その答えが分かるなら、苦労はしなかった。

 症状に心当たりがありそうで最後まで絞り切れなかった様子のあなたの“お母さん”は、なまじ助からない時の人の顔をあれでもよく見てきた方だ。
 分かっているなら、きっとあなたを何に換えても助けただろう。

SYSTEM :
 …沈む最長時間を更新したあなたの父親も、その故が分かったら“そう”しただろう。

 例の話で病院に駆け込んだ時、役所仕事の看護師に、それ以降一生聞いたことのないような声で怒鳴ったとか、そういう話を聞いたことがあった。

SYSTEM :
 あなたの気丈さに付き合い続けたお母さんも、専門家でないから信じ続けたお父さんも。
 15の誕生日が未到のまま終わるあなた自身も、わかっているからといって「そう」と受け入れたものじゃあなかった。

SYSTEM :
   ・・
 ………なぜ、と。
 望みも半ばで闇の中に閉ざされるとき、
 誰もが同じことを抱くものだった。

天導 ルクス :
 なんか、なんだろうなあ。
 一生見たくなかったであろうものを、ここ一週間で見聞きした。
 所謂走馬灯の中にあった優しくて明るくて格好良い両親の姿が、等しく罅割れて頭の中に戻らない。戻せない。
 いや、オレのせいなんだけど。

天導 ルクス :
 マンガとか、物語なら此処から何かありそうだな、とか、有り得ない想像にも逃げる。
 ゴーストになって会いに~、とか、生まれ変わるためにあーだこーだする~、とか。
 でもそういうのって、大体良い子の特典な気がする。ならオレってアウトか、二人にあんな顔させちゃって。

天導 ルクス :
 ……ダメだな、全然ダメダメだ。
 逸らそうとすればするほどかなりイヤになるなこれ。

SYSTEM :
 あなた自身、なんとなく退屈な授業の時やぼんやりとした時に考えるような、この年頃の特権の話も。
 現実の壁がこれほど頑強では続きようがない。いや、そもそも普段から“そんなことはない”と地続きにはしていないのだ。

SYSTEM :
 天導ルクスの臨終を看取るものは多くなく。
 出迎えてくれる空の色に続きはない。
 それを助けてくれる、御伽噺のような姿もなかった。

SYSTEM :
 時に…人の死が充足で締めくくられることは。
 そう、多くはない。

 道半ばに倒れたものは猶のこと。
 その道程を長く設定し、抱えきれない夢を抱いたならば猶のことだ。

SYSTEM :
 …その価値も。その夢想も。
 こんなことが、あればいいのになと願う、素朴な願いも。
 未だ明日に思いを馳せられた少年の前向きさも。遺る価値を知るものはいない。

SYSTEM :
         ■■■
 だがそれでも、あなたは。

SYSTEM :
 その夢想を最期にふっと抱いたあなたは。
 ………消える間際に、はじける火花のような、一瞬の幻を見た気がした。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………………。

SYSTEM :
 そしてどれくらいの時間が経ったのか。
 なぜか、あなたの瞼は開いた。

SYSTEM :
 おかしなことだ。
 もし開いても真っ暗闇にしか見えないが、開いているという実感だけはある。

SYSTEM :
 天国だとか地獄だとか、そういうものに、あなたは心当たりがあっただろう。
 あるいは………。しかし、その“もしや”を、あなたはすぐさま否定した。
 どちらだとしても、14歳の歳月で蓄積された「天国」ないし「地獄」のイメージからは、あまりにもかけ離れていたからだ。

SYSTEM :
 テレビのチャンネルを切り替えるように。視界が様変わりする。
 目まぐるしく行き交う線と、どこか、サイエンスなほうのファンタジーを思い浮かべる高速で行き交う幾何学模様。

 その中心、あるいは、行き交う通路に。
 あなたは、立っていたからだ。

天導 ルクス :
 ふと、瞼が開かれた。
 いや、開かれたというには景色が悪い―――もとい、暗い。けど、その動作をしたという感覚だけは確かにある。
 あるいは闇に呑まれて、消え去る直前だとか、そういうことなのかもしれないとも思ったが……。

天導 ルクス :
 なんだ、これ。なんだこれ。なんだこれ!

 行き交う光を目で追いながら思わず声を漏らし掛ける。
 疑問ばかりがふつふつと湧いてくる。ワケの分からぬ交差点に、オレはいつの間に立っ―――あれっ、立ってる?

天導 ルクス :
 己の所在を確認するみたいにぺたぺたと触れながら、目だけはいくつもの線を追いかけていた。目が回りそうだ。

SYSTEM :
 触れた感覚は今までの自分と何ら変わらなかった。
 振り返ったころの、凡そ健康体で元気なあなた。
 ずっと意識の遠い感覚と寒気と諸々、そうした末期の感覚とは無縁の健常ぶりであった。───だが、なぜ?

SYSTEM :
 追いかけてゆく光に目が馴れてくるのもすぐだった。
                ・・
 それが、亜光速で常に動き続ける電気の流れだと気付くかもしれない(少なくともその余地はある)し…。
 単に眩い情報過多と割り切ってしまうかもしれないところだろうか。

SYSTEM :
 …ここはどこだろう? その答えの代わりに、鱗粉が舞い散った。

天導 ルクス :
 ……いや、ある。あるな。オレとしてのカタチが、此処には全部ある。
 それじゃあますますイミわかんないけど。

天導 ルクス :
「バチバチして、……光、…… ……電気?
 ああっ、もう、どーいう夢だこれ……!」

 声も出る、と分かるや否や漏れた素直な言葉が続く前に、粒子のようなものが視界に入った。
 粒子、というよりは……鱗粉?

SYSTEM :
 そう、鱗粉。
 ここまでSFめいた光景を見せられておきながら、突然「F」の部分だけが視界に入った。

 小さい頃渡ったイギリスで、ちょっとした脅かし代わりに聞いた妖精の話…。
 あれは日本でいうところの妖怪とか、そういう類のホラーとファンタジーの相の子らしく、当時の友達が冗談めかしてチェンジリングなる概念を話したことがある。

 その日のあなたがどういう感想を抱いたのかはともかくとして…。
 連想したのはそれだ。視線を持ち上げていくと、鱗粉を零した大本らしき光の塊が、ふと見える。

* :
“おいで”

SYSTEM :
 声を発したわけでも、そうと示すような動作を、妖精/そう形容しておく光の玉がしたわけでもない。
 ただ、あなたは、すぐに奥のほうにふよふよと言ってしまったものを見て、なぜだか、そう呼ばれているように感じた。

SYSTEM :
 …念のため言っておくと、振り返った先に何かがあるでもなかった。
 
 それでもそんな風に感じたのは…。
 光の玉のようなものが“呼ぶ”と感じたのは。ここに立ってみてから、自分が誰かに見られているような感覚があったからかもしれない。

天導 ルクス :
「―――呼んでる?のか?」

天導 ルクス :
 誰が。あの光の玉―――妖精が。
 誰を。多分、オレを。だって此処にはオレしかいないっぽいし。
 何で―――は、多分、今考えたってわかりっこないヤツだ。

天導 ルクス :
「あっ、ちょっ……待てったら!」

 考えてる間にも時間は前へ。ぼうっとしてると推定『妖精』は奥へ進んでいってしまう。
 今は……ただ、そうするしかないように思った。だから、追いかけてみる。

SYSTEM :
 誰が、誰を、何で?
 考えるには落ち着きのない場所と状況だったからか、少年/あなたの足取りは自然と早くなった。
 いくつか分かれ道や分岐路もあったが、普段の好奇心が働いたことも、恐らくはないだろう。

SYSTEM :
 もし………もしもそんなことがあったとした場合、その暫定妖精はその場で止まったり、まれにこちらをくるくると旋回し始めたりしていた。
 あなたの様子を思うに、そんなことは多分なかったかもしれないが。

SYSTEM :
 やがて光るラインが途切れる先にたどり着いたとき、あなたはここが行き止まりだと分かった。

SYSTEM :
 …そしてあなたを誘導した妖精は、鱗粉を撒きながら、その行き止まりで形をとってゆく。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈───…よかった、あなたは…〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈あなたは、消えずに居られたのね…〉

SYSTEM :
 そうしてあなたの視界に…。
 現実離れが、そのままそっくり映っていた。

SYSTEM :
 妖精が集まったその姿は、あなたと同じか少し上の年頃の少女で。
 妖精というよりは、蝶とか、そういう類の生き物を連想させる翅がついていた。

SYSTEM :
 ほ、と一息ついたそれが…。
 おそらくさっきの光の玉の正体だ。

天導 ルクス :
 急ぎ足で追い縋った先、終点と思しき場所に辿り着く。
 あんまり行く道を見ずに此処まで来てしまったが、この場所って行き止まりとかあるタイプだったんだ、と我ながら素朴な感想が思考を走り。

天導 ルクス :
「おっ、お化っ―――違っ、女の子……?!」

 光のかたまりは、少女のカタチへと変わった。
 お化け、などと言い掛けてしまったけど、どうにも様子が違うらしい。
 いやそもそもこの場がその手の雰囲気と違うのだから、お化けであってたまるものか。それならオレの方がお化けだろ。

天導 ルクス :
「誰っ、……ていうか、何か今怖いコト言わなかった……?」

 消えず、とかどうとか。言ってから、不躾ながら翅の方をちらちらと見る。

SYSTEM :
 …その少女は、あなたに対して“良かった”と言っておきながら。
 それきり黙して、ほんの少しの憂いを帯びながら、考え込むようになっていたが。
 あなたの言葉に気付くと、すぐに居住いを正した。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈お化け………
 わたしってお化けだったのかしら………〉

SYSTEM :
 訂正、ちょっとだけショックを受けていた。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈…あ! ごめんなさい。
 いきなりで驚かせたわよね…〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈はじめまして。私の…。そうよね、名前。
 ええと、ね………───〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈そうだ…ハーフィ。ハーフィと呼んでちょうだい〉

SYSTEM :
 理由はないが、ふしぎと分かる。
 Halfy
 ハーフィ/半分こなんて、いま考えた名前だった。
 彼女が下手なのか、あなたがよく”分かる”ほうだったのか。
 そして自覚はあるのか、困り眉の彼女はあなたの反応を見る前に速攻で話題をずらした。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈あなたのお名前は?〉

天導 ルクス :
「はえっ」

 何かほんのちょっと、ショックを受けているように見えた様子に申し訳なさを募らせている間に。
 何というか、非常に…… ……いかにも今考えた、みたいな雰囲気の名を名乗られた気がする。口を挟む前に、逆に質問が飛んできた。

天導 ルクス :
「えっ、あ~っと……ルクス。天導ルクスっていうんだけど……。
 ハーフィは此処の人……人?妖精さんなのか?」

 いや此処の人ってなんだ。そもそも此処が何だ。
 それに、あんな翅ある人とか見たことないのだ。ちょっと訂正しつつ、首を傾げる。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈ルクス。ルクスね。…うん、覚えたわ〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈ひとに名前を聞いて、ちゃんと答えてもらうのは…。
 うん、初めてじゃない気はするのだけど〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈ここでは初めてだから。
 きっと、忘れない。ありがとう〉

SYSTEM :
 躊躇なくあなたをファーストネームのほうで呼んだ彼女は、ここの人? という言葉にどう答えたものかを悩むように、目をつむって、うんうんと唸り考え出した。

 そうしている最中にぱたぱたと動く翅と、宙に浮いたあたり、あれは飾り物ではないらしい。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈どう言ったらいいのかしら…。
 ここが何処なのかは知っているけど…〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈物心ついてからはずっと此処よ。外のことは、本当に、たまにしか分からないの〉

天導 ルクス :
「ど、どういたしまして……?」

 名乗ってこんな感じの礼を言われるの、こっちは初めてかもなんだけど!
 今までの人生の例に漏れず、ちょっと独特な感じなだけなのかもしれない。こほん、と咳払い。

天導 ルクス :
「じゃあ、此処で育った?ってこと?
 っていうか、ここが何処なのか分かるんだ。……えっ、どこ?」

 しばし目で翅の動きを追っていたが、どうにも次々疑問が湧いてくる。
 よくは分からないが、ここから出た事はなさそうだし親―――親?親とか、ないのか?妖精って。失礼を言うとバツが悪いので、口には出さずにおく。

SYSTEM :
 育った、の部分には答え難いものがあったのか、彼女は少しばかり眉を下げて首を傾げたものの…。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈あの…ウソっぽく聞こえるかもしれないけど、覚えてないのよ。
 ここにいる前のこと。ほとんど、ね〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈でも…言ったでしょう? たまに外のことがわかる、って。
 だからこっちが、どういうところなのかはわかるの〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈…でも、普通に聞いていたらヘンな話でしょうし。わからなくなったら“ストップ!”って言ってちょうだいね。
 なんとなく、話すの久しぶりな気がして…〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈ここはね…。
 流れなの。電気の、流れ。
 どうしてここにいるのか、とか…そういうのは分からないけど。外のことがわかるとき、わたしはそういうものを伝っていけるから〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈それでね。本当に…たまに、ここに流れ着くコがいるの。
 間に合う時と、間に合わない時があって〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈間に合う時でも、大体は…そこに存在するかも分からない、ちいさなちいさなコで…
 みんな苦しそうで、そのうちいなくなってしまうのが殆どで…〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈…あなたはそういう感じじゃなかったから。つい、慌てちゃったのよ〉

SYSTEM :
 見れば…。先ほどの大きな光球とは比べ物にならない、小さな光をまとった蝶のような残りものが、彼女の周囲にはいた。
 電波だとか電流だとか、そういうものの流れの中が“ここ”だという彼女の言葉を鵜呑みにするならば、彼らはそこに流れ着いた名残だ。

SYSTEM :
 ………そして苦しそう、の答えも。
 薄っすらと心当たりはある。突っつけば、すこし濁した言葉の部分に答えも出るだろう。出したいと思うかは別として。

天導 ルクス :
「…… ……」

 外とかいう言い方とか、確かに変だなと思ってたけど。
 そしたら……ええっと、流れ?電気の?そういえば確かに、此処まで奔ってたラインに対してオレはそれに近い感想を感じてた。感じてて、それで。

天導 ルクス :
「……それは、…… ……」

 オレも、その、苦しそうで、消えていってしまう子たちと同じように。ここに来たことが、ちょっとした答えでもある気がする。
 胸の辺りに己の手を添えて軽く握った。……死んだから、ってやつ?

SYSTEM :
 言葉を濁し合った数刻。先に切り出したのは、表情と仕草を見かねた彼女のほうだ。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈うん。たぶん…。
 あなたは…。死んで、生き返ったの〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈…きっとどこかで瞼を閉じたあなたがいなくなっても。
 こうしてお話できるあなた、ここにいるあなたがいることを。生き返ったと呼ぶならそう〉

SYSTEM :
 仄かな暗さをまとった話題を続けたくなかったのか。
 ひとに“あなたは死んで生き返りました”と口にすることに、妙な居心地の悪さを感じていたのか。彼女は(やや無理矢理)閑話休題の空気に話を動かした。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈…ね。あなたはこれから、どうしたい?〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈なんでもは無理だけど…きっと、したいことはあるでしょう? わたし、その手伝いをするわ〉

天導 ルクス :
 死んでいないわけじゃない。死んだからここにいる。
 受け入れ難い事実と、意識が途絶える直前まで苦しみと共に得ていた悟りとが否定材料を用意できない。
 ……少女の様子を見て、ぶんぶんと首を振る。気まずくさせてどうする。

天導 ルクス :
 ので、素直に。彼女の話題転換に乗っかって空気を換えようと努力をしてみる。の、だが。

天導 ルクス :
「どうしたい、って言ってもなあ。
 そりゃ、未練とかいっぱいあるんだけど……」

 よく分かんないけど、出られるなら出たいとも思うけど。
 でもオレってちゃんと死んでるんだよな、と思うとそう言うのも良くなさそうだし。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈でも、未練は…“ああしたかった”は、あるんでしょう?〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈これ、わたしの気持ちの押し付けかもしれないんだけどね…〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈わたしは…たぶん、夢の叶わなかったほうで。“こうだったらいいな”って思ったことが、手に入らなかった方だった気はするの。
 だけど、それを聞いてくれて、笑わなかった人がいた…そんなことだけは覚えてるのよ〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈それで、あなたにも何か。
 せっかくこうやってお話できて、形を持てているなら…。
 何かを探し直してみるのも、いいんじゃないかって。思ってさ〉

SYSTEM :
 ひょっとすると、あるいは本当に消えていくものなら。
 なるべく未練のないようにと振る舞いたいだけなのかもしれないが。

 どうも、この記憶のあいまいな隣人さんは、あなたに前向きでいて欲しがっているようだった。

天導 ルクス :
「それは、まあ、…… ……」

 他の、同じようなものたちが最終的にいなくなったのなら。
 オレだってそうなるかもしれない、とか。確かに嫌な想像だ。けど、何というか……。

天導 ルクス :
「ハーフィって、なんか……なんというか、言い方合ってるか分かんないけど、いい子なんだな」

天導 ルクス :
「記憶曖昧でも、なんか……“出来なかった”側だったら、もーちょい他にイジワルしててもよさそうなんだけど。
 オレの妖精さんへのイメージがちょっと悪いだけかも、だったらゴメン!」

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈よ、妖精さん………。
 妖精さんなのかしら、わたし………〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈いえ、そう…かも…?〉

SYSTEM :
 自認と一緒に身体もふわふわとしていた。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈イジワル…は、考えたことないし。
 やっても、わたしが変わるわけじゃないものね。そう見えるなら…〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈覚えてることのおかげかしらね。
 ふふ、あなたのこと聞こうと思ったのに、わたしの話になっちゃった〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈…じゃ、あんまり思いつかないなら…。
 あちこち巡ってみましょ。
 たまに見えるだけじゃなくて、自分から外に出るやり方だって、探せばあるかもしれないわ〉

天導 ルクス :
「だってなんかパタパタしてるし?」

 言い出した方もふわふわとしていた。
 まあ、なんだろう。思えば、こんなよく分からないところでお話が出来てること自体が結構救いなのかもしれない。

天導 ルクス :
「……うう、ん。そだな、そうしよう!
 さっきは追っ掛けるのに必死だったのと全然混乱してたのでよく分かってなかったけど……」

天導 ルクス :
「結構動けそうだし!どうすりゃいいか分かんないときも、とりあえず動けば……何か、見つけられるかもしれないし」

 例えば。具体性に欠ける、オレの未練も。此処で果たせるもの、果たせないもの、いっぱい見えてくるかもだ。

SYSTEM :
 観察する限りの様子と、言葉の節々からしてみても、周囲に飛ぶ蝶と彼女が意思の疎通を取った素振りはない。
 あくまで一方的に、それに寄り添う(寄り添われている?)ようなものだ。

 話が出来ることを有難がっているのは、ひょっとするとお互い様だったのかもしれない。

SYSTEM :
 そしてあなたの幸いで、今までの旅行先で友達を作っていた経緯は。
 大抵、あなたの能動的な気持ちが切欠だった。“できるかも”すら考えなかったこと。

 また会えるかも、とか…。
 それとも、こんなファンタジーの塊のような場所に来たのだから、地続きにしていなかった何かが叶うかも、とか…。

SYSTEM :
 そういう何かが見つかるかもと、あなたは彼女の言葉に頷いた。
 その様子に、自分のことのようにハーフィが微笑む。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈ええ。夢を探す権利も、思い出す権利も…。
 あなたにはあるはずだわ。あってほしい〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈それに…〉

SYSTEM :
 その浮世離れと現実離れの相の子は。
 行き止まりから踵を返そうとする時、あなたに、奇妙なことを口にした。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈…どうか覚えておいてね〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈───きみには。
 世界を救う権利があるの〉

SYSTEM :
 あるいは、ここで生まれたあなたには、義務ではなく権利として“やりたいこと”を選ぶ余地があると語るようにも聞こえた、その言葉を。

 妙に大きなスケールで、彼女は励ましの言葉代わりに選んだ。

SYSTEM :
 なぜそういう言葉を選んだのか。どのくらいの大きさの話なのか。
 そこには、きっと答えないだろう。あるいは、答える術を持っていない。

天導 ルクス :
「ん。ありがと!」

 分からないなりに、励ましだと解釈した言葉に礼を述べる。
 けど、……なんとも、壮大過ぎることを言われてしまった気がする。

天導 ルクス :
 世界を救う、権利と来たか。
 ……分からない、けど。今は、頷いておく。

SYSTEM :
 ………その答えの意味を置いて、頷き。
 あなたが、意識のある昨日のように、今日を始めた。

 始めようとした、その時。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈───!〉

SYSTEM :
 少女の顔色が変わる。それは予感めいたものではなく…。
 あたりを作り出す光のライン。

 あなたには段々と分かってきただろうから、敢えて再び記すが…。
            ・・
 亜光速で常に動き続ける電気の流れが、急速にゆがみ、形を変えていた。

SYSTEM :
 それに気づいた少女は、あなたに負けず劣らずの細腕を、あなたをかばうように広げ…。
 赤く輝く、彗星のような煌めきに向かって、慎重に問いかけた。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈………誰!〉

SYSTEM :
 ………その答えはすぐに出た。
 あなたの前に、現れた男は…。

* :
『 …ほぉ。一挙両得とはこのことかもしれんな 』

* :
  サイバースプライト
『 “電子の妖精”がここで見つかるとは。
   物事などというのは存外に、執着しないほうが上手く行くということか 』

* :
『 だが…。それならばそれで、順序というものがある 』

SYSTEM :
 やがてあなたに、こう言ったからだ。

“雷人” :
『───わたしと共に来い。天導ルクス』

“雷人” :
『きみには世界に…“なぜ”を叩きつける義務がある』

“雷人” :
         ・・
『きみはわたしの…同志になれる』

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
 遠くで稲妻が落ちるような。目を逸らしようもなく、ただどうしても近くにいない男の冷たい声。

 あなたは、二度遠雷を耳にした。
 ひとつはピリオドを打つとき。そしてもうひとつはこの瞬間。

SYSTEM :
 遠雷の二つ目は、このすぐ後に。
 あなたに己の名を、こう名乗った。

SYSTEM :

   ニコラ・テスラ
 ──────“雷人”。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :
 シーンが終了したよ!
 ロイスの宣言はある?

天導 ルクス :
う~ん~ん~……一旦、ナシ!

GM :
 そうだね。この状況で取る相手の候補は…。
 きみの場合いないこともなかったけど…。

GM :
 まだ始まったばかり! 一旦は置いておこうか。

GM :
 それでは、“この後”何が起こるかは(だいぶ長い)CMのあとだ!

天導 ルクス :
悩んだけど、まあちょっとこう怖いというかなんというか……おっ、オーッ!

SYSTEM :
 ………………
 ………………

 

・OP2『宿縁-Detonator-』


SYSTEM :
【Scene:宿縁-Detonator-】

Scene Player:Machina
   Erosion:OFF

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
【オーバークロック案件、記録書】

 作戦番号:X350 
 実行年代:西暦20XX年
      デウス・エクス・マキナ
 作戦従事者:“凡て世はこともなし”

SYSTEM :
【概要】

SYSTEM :

 当時のランカスター分家、エレノア・ランカスターが、ピーターパンの手引きと思しき時空犯罪者によって標的とされる。
 これにより、時空改変の発生危険性が上昇。
 閉鎖的環境で生活するエレノアに対する現地徴用手段の乏しさ、およびエレノア自身がオーヴァードであることなどから、
 専属の『時渡り』をアシスタントとし、本人自身の手で時空改変を阻止させる亜種作戦コードを発令する。

 作戦には職員である“凡て世はこともなし”を派遣。
 20XX年代の出来事に関する記憶処理を行い、今オーバークロック案件へ投入する。

SYSTEM :
(付属資料には過去数度の任務と、その成功経緯が選抜根拠として記されている。)

SYSTEM :
【結果】

SYSTEM :

 ──────エレノア・ランカスター、未帰還。

SYSTEM :

 当時における時空犯罪者と幾度かの乱戦の経緯を経て、現地協力者の隙を突かれる形で、当時支部も完成していない南極へ誘拐。
 設営されていた基地施設で、“凡て世はこともなし”は、当時の改変関係者である“ピーターパン”の部下らを追い詰め、撃破する。
 しかしこの基地施設は敵手の自暴自棄と思わしき現象により崩壊。
 護衛対象であり、現地協力者であるエレノアの姿はついに見つからなかった。
 
 20XX年代、この『ランカスター分家』には少なからず結末の変化による歴史の変動が見受けられる。

SYSTEM :
(作戦時における撃破を確認した数名の時空犯罪者。
 その中にいるピーターパンと『特A級』の時空犯罪者にのみ、赤線が引かれていない。)

SYSTEM :
 ………、………。
 …………………。

SYSTEM :

 誤解なきように記しておくが。
 あなたに不手際と呼べる不手際はなかった。
 誰もが作戦記録から、そう結論付けている。

SYSTEM :

 唯一にして最大の手落ちは。
 ただ、この時空改変に対して、原則を守るため、より強引な手に出なかったクロノスガーディアンの方にあり。
 それを手落ちと言ってしまえば、行いの本分も意味も失われる。
 ならばそれ端的に言って、間が悪いというよりほかになかった。

SYSTEM :

 ………だがあなたは。
 そのさなかで、ひとつだけ知っている。
 エンドライン
 出来事の結末を。

* :
「………そんな………バカ、な」 

* :
「クソ………! クソォッ!
 なぜだ、なぜおまえが…!」 

* :
「オーヴァードとは何なんだ…。
 レネゲイドとは何なのだッ!」

* :
「神よ! 答えてくれッ!」

* :
「なぜ………そんなものが………。
 そんなものが、この世界になければならないんだ………」

SYSTEM :
 誰ぞの存在の痕跡を前に、ただ膝を突くより他にない、猛る者の姿。
 
 何度も摺り切った魂が、見出した光明を今失ったような慟哭。
 幽鬼のように立ち上がったそいつは、薄暗い光を目に宿して振り返る。

* :
「………キサマたちが…キサマが………」

* :
「キサマさえいなければッ!」

SYSTEM :
 ───それは端的に逆恨みか、八つ当たりとしか言いようがなく。
 ───だが彼の視点で言えば、絶望に対する正しき防衛反応だった。

SYSTEM :
 祈歌は響くことはなく。最早、その戦いに然したる意味もない。
 
 そこに機械仕掛けの超越者は二人いた。
 だが断じて。彼女も彼も、収拾のつかなくなった戦いの後始末を行える神様ではなかった。

* :
「神へ祈る間もなくここで死ね!
 “デウス・エクス・マキナ”──────ッ!」

SYSTEM :
 歴史の変化や失敗は、クロノスガーディアン全体として見たならば…。
 実のところはじめてではない。

SYSTEM :
 ただ、幾つもの成功と、名に恥じない“収拾”をつけてきたあなたにとって…。
 これが唯一の失敗。そして最初で最後の。
  つ め あ と
 致命的な結末だった。

SYSTEM :
 ………、………。
 …………………。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………クロノスガーディアン、ベース内部。
 複数あるベースのひとつ。別名、時空移動帆船ジョリー・ロジャーベース。

SYSTEM :
(※命名にはこのベースを管轄する人物、船長ジェームズ・フックの個人的趣味が含まれている)

SYSTEM :
 もとより慢性的人手不足が常の時空の守り手、予算よりも不足するのは適切な任務遂行能力の持ち主だ。
 
 なので、職員ひとりにつき個室ひとつ宛がうくらいワケのないことであり。
 あなたにも当然、一室として与えられていた部屋がある。

SYSTEM :
 あれからどの程度の時間が経ち。
 どの程度の任務が間に入ったか。

 いずれとて、相応の猶予が空いた。
 少なくとも最新の任務(記憶が正しければ聖杯探索の時代)における時間移動犯罪者の摘発が終わり、まとまりのある休暇に入って少しくらい。

SYSTEM :
 業務のない時のあなたは何をしているだろうか?

マキナ :
「はぁ~~~~~~~~~~」
 のびのびーと腕を伸ばして、ベッドの上に転がる。
 システムメンテナンスも完了、バイタルチェックも済み、やっと戻ってきた私の日常。
 何をするか、と言われると、それはトーゼン何もしない。
 何もせず横になる。ただ寝て過ごし時間を無為に過ごす、情報過多の社会にとって許されざる贅沢にどっぷりと漬かることで、文明社会のありがたみを全身で感じ取る。

マキナ :
 何もしないことの、なんと贅沢なことか!
 ボタン一つで飲み食い自由だとか、映像資料読み放題とか、そういうのは恵まれた人間の発想だ。
 ──中世暗黒時代、幻想の最後の分岐点と言われるような時代、大自然の息吹とやらをたらふく吸わされてきた身にはこのやわらかいベッドがあまりにいとおしいのです。

マキナ :
「そもそもさぁ、体の9割以上が被造物な私に、自然との共存とか言われてもピンと来ないっつの。
 人選ミスだよ人選ミス。こーゆーのはあの盾の子のが適任でしょうに」

マキナ :
《さる時代ではある程度非現実が許容されています。レプリケーターの運用を考えれば、キャプテンの選出はあながち間違いではないかと》

マキナ :
「うっさい。
 は~やだやだ、能力の適性だけで判断されちゃたまんないよ。なんでこんなどの時代にも行けるような機能つけちゃうかなぁ」

マキナ :
 もういいや。疲れたし、暫く横になっていたいし。
 扉施錠しとこ。システムメンテナンス中、起こしたものは宇宙管理法に従い銃殺刑に処す、と。

 手慣れた調子で空に指を躍らせて、扉に遠隔でロックを掛ける。

マキナ :
 もうしばらくは次の仕事、来ませんよーに……
 そう祈りながら大の字になってベッドに倒れる。

SYSTEM :
 端的に言って怠惰であったが、謂れある怠惰であった。
 業務のない時であれば“なんにもしない”は罷り通る。

SYSTEM :
 こと、こちらでは解析に解析され尽くしたありとあらゆる内容が、
 未知のベールのままに神秘というタグをつけられた当時において、
 天幕の下が上級三本指の旅の贅沢である。

 それはもうなんというか、精神的な充電時間であった。
 情報化社会の加速的な進化の最前線において、知性体の頭脳というものは二十四時間思考を回転させられるようにはできていない。
 尚も無理は嘘吐きとか言い出して道理を蹴飛ばそうとしたり、それ自体が欺瞞であると見抜かれるようなことは、何世紀か前から延々と繰り返された、余裕の有無で決まる鼬ごっこだったとか。

SYSTEM :
 そう、もうしばらくは次の仕事来ないようにと願ったところだが。
 あと五分だけ、の休暇はもう半ばを超えている頃であった。

 先手必勝の電子ドア施錠は事情を察知する職員だと時間稼ぎになるだろう。
 究極的に放送という形でバックスタブが決まるまでの間は確実に。

* :
「パイセーーーン! ちょっとーーー!!!」

SYSTEM :
 ところでその充電期間は三々七拍子のノックで破壊された。

SYSTEM :
 彼にもデリカシーがあったのでノックはドア越しであるが、
 ないものはあなたの「あと五分だけ」を汲む能力である。

マキナ :
 ……イラッ。

マキナ :
《ただいまシステムメンテナンス中です。
 御用の方は自動音声で応対いたします。
 なおこの通信には 1 秒 ごとに約 100 COM通信料が発生いたします》

マキナ :
 これでどうだ、安月給の下っ端君。帰れ帰れ。
 今はしばらく横になっていたいんだっつの。

* :
「わー電子音声だ!
 ダメなときだパイセンの…?」

* :
「………? ???」

* :
 ※脳が理解を拒んでいる時の表情

* :
 ※まあいっか、と後の自分に後悔させることを決めた時の表情

* :
「ウェンディさんと後輩見てない?
 このままだと後輩が法螺貝でウェディングロードを爆走しちゃってウワー! なことになっちゃう!」

* :
「あっそれとなんかあったような そうだ 
 船長がめずらしー顔してパイセンのこと呼んでてぇ…」

SYSTEM :
 安月給の下っ端は出血覚悟で鉄のガードを突破してきたが、理由は概ね前半にあった。
 そして恐らく後半にもあったのだが、その答えは時間差でやってきたのである。

SYSTEM :
《職員の呼び出しを致します》

SYSTEM :
 デウス・エクス・マキナ
《“凡て世はこともなし” 
 ベース基準座標、ブリーフィングルームにお越しください》

SYSTEM :
《追伸:F丸R香職員につきましては伝達の怠慢およびレポート提出の不備を断定 
 至急司令室にお越しください》

* :
 

SYSTEM :
 こちら末端職員の悲哀であった。
 ドア越しにいまそんな感じのポーズをとっているに違いない。

マキナ :
 ……下っ端君の惨状が目に浮かぶ。けどね、蹲って嘆きたいのはこっちの方なんだよ。

マキナ :
『……見てない。またいつもの与太に巻き込まれたってんなら、猶更関わりたくないし。
 お呼び出しだよ、ほらさっさと行った』

 億劫に体を起こして、片手間にインターホンから音声を飛ばしながら愛用の多環境適応コートに袖を通す。

マキナ :
「キャプテンの呼び出しってことは、まー任務だろうなあ。
 ……次は古代ギリシャとか言い出したら、非殺傷設定でしこたま撃ちまくってから出撃しよっと」

マキナ :
 手早く支度を済ませて部屋のハッチを開く。
 切り替え、切り替え。億劫だけど、仕事は仕事だ。

SYSTEM :
 ついあの瞬間まで大学生ぐらいの提出期限に間に合わなかった“終わり”の気配をまとっていた、20代に手をかけ始めるばかりの青年の声。
 それが「はーい」と「サンキュー」を混ぜて、どたどたと走り去っていく。

SYSTEM :
 概ねは想像通りだ。であれば、戻ってくるのはいつになるやら。
 首尾よく行かねば、月一つオーバークロック先で過ごすようなケースもあったところ。

SYSTEM :
 とはいえ、あなたの仕事のケースであれば、首尾よく行かないほうは稀だった。
 その役目がちょっと特殊だからである。

マキナ :
 相変わらずなんというか、スマートには程遠い奴。
 ……ただまあ、ああいう根明で異様にガッツのあるやつはウチの普通の仕事的にめちゃくちゃ重宝してるんだよね。

マキナ :
 ま、うちはべつにどたどた走っていくこともないし。流石に回り道はしないけど、だらだら向かうとするかな。

マキナ :
 部屋を出て、ハッチを閉める手前、振り返る。
 良く見える棚の上に立てかけた写真立てに、軽く手を振って一声。
「……じゃあね、エリー。
 ちょっと行ってくる」

SYSTEM :
 …………………。
 …………………。

SYSTEM :
 もとよりベースの職員は、その任務の特異性からさして多くない。
 行き交う最中、 基本的に聞こえる声と顔のバリエーションはさほどとない。
 全員分顔を合わせるには行き違いも多い。あなたにとっては、この時渡りの城はどのくらい馴染んだのやら。

SYSTEM :
  L-UN09-a
 玖月真綺那は戦闘機人である。

SYSTEM :
 その経歴は使い捨ての兵士に過ぎず。
 その生誕にどんな祝福があったのか定かでない。
 多くの未来を許したガイアの記憶のいずれかが辿るページの中で…。

 地球圏の向こう側に手の届き、重力の井戸から大海に漕ぎ出してなおも続くような紛争の一幕で生まれた量産品が彼女だった。
 …いや、量産品という言葉すら語弊というものがあったかもしれないが。

SYSTEM :
 這うことと壊すこと。その果てに終わること。出来ることはそれくらい。

 そのあなたはある時、生まれた時代を永久に後にして。
 生まれた時代の中心にある水の惑星と同じように時を過ごす機会を永遠に逸した。

SYSTEM :
 クロノスガーディアン。
 ・・・・
 時間移動を可能とした遥か未来において、これを用いた犯罪に対応するために結成、創設された組織の正規エージェント。

SYSTEM :
        デウス・エクス・マキナ
 コードネームを“凡て世はこともなし”。

 …それが。
 あなたが自分で臨んだ、あなたの名前だ。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ジョリー・ロジャーベースの中枢。
 時空間移動であるオーバークロックを行う基準座標には、その“ウェンディさん”がいた。

SYSTEM :
 オペレーター兼船長秘書。面倒見が良く気遣い屋で、ベースの数少ない構成員と大抵仲は良い。
 紀元前から2XXX年以降の服装まで、たいていの時代の服装はなんでも仕立てられる、仕上げられる手先の器用さを持ち、
 自身が直接現地のイリーガルと交渉するため、ベースのオーバークロック装置を起動して現場に出向くことも少なくない。

SYSTEM :
 ただし唯一にして最大の弱点は、事前の情報収集に限り……。
 時代と場所の特徴を冗談のような頻度で間違えることだった。

 …行き先の情報の古さがそうさせるのか、彼女がデジタル方向音痴なのか。
 永遠の謎である。今のところ矯正の目途はない。

『ウェンディ』 :
「あら! マキナちゃん」

『ウェンディ』 :
    デブリーフィング           ちょうし
「こないだの帰還報告から時間が経ちますけど、侵蝕率のほうはどうですか?
 前回のはちょっと、根の深いところまで切り込まれていたところの動員でしたし」

SYSTEM :
 なお、そこで呼び出しの張本人であるはずの“船長”の姿はなかった。
 考えられるのは入れ違いか、それともなければ“いつも”のフリークの血でも騒いだか。

 類は友を呼ぶというが、彼の趣味に変な理解を示す者も皆無ではなかったという。

マキナ :
 中枢、オーバークロックシステムの前で待ってると思いきや、顔を見せたのはその娘の方。与太に巻き込まれてたかと思ったけど。
「はぁいウェンディ。そっちの調子はもうヘーキ、メンテは済ませて除染済みだよ。
 まあ二度はやりたくないけどね、あんなの」

マキナ :
 とはいえ、近い無茶をやらされることにはなるんだろうね。なにせうちの仕事、うちの担当はそーいう現地徴用でどうにもならなくなりそうなケースでの動員が殆どだ。
「今度は何やらされるのやら。
 で、多分キャプテンからの呼び出しなんだけど、あのおっちゃんどこ? まだ来てないの?」

『ウェンディ』 :
「はい。前回のも、最終的には“何事もなく”でしたけど。
 はじめから何事もない、に越したことはないですからね」

『ウェンディ』 :
「そしたら私も、暢気にお茶したり、そろそろ誕生日のコの祝いに編み物とかしたり………? あら?」

SYSTEM :
 そこで彼女は漸く放送の主が最後という状態に気が付いたらしい。むう、と唇を尖らせる。

『ウェンディ』 :
「ついさっきまで別のコのオペレーティングだったので、呼び出した船長がご存じのはずなんですが…。
 ………いらっしゃいませんね。さては───」

SYSTEM :
 …その時であった。
 豪快な笑い声が彼方から聞こえる。意外と軽快な歩幅も。

SYSTEM :
 のちに判明するに曰く。

 あなたを放送で呼び出した張本人は、どうせ数分~十数分くらいの遅れがあるだろうと早めに呼び出し、そして席を一旦外した…。
 さてそこまでの読みは的中していたのだが、その際出会った部下と思わずムダ話(議題:17世紀頃のとある男のロマン)に没頭。

SYSTEM :
 時間に追われる側の立場が逆転したのである。
 ガタイのいい“大人”の代表は、開口一番にこう言った。

SYSTEM :
 厳密には、遠くからこのように。
 大きく響き渡るような声で、言った。

* :
「ハッハッハッハ! いやーすまんすまん!」

* :
「ついこの間のデブリーフィングでキャプテン・キッドの隠し財宝だなんて
 ロマンの塊でひと騒動したって小僧が言うもんだから!」

* :
「だが、見ろ! おれの時間感覚を!」

『キャプテン・フック』 :
「──────セーフだ!」

『ウェンディ』 :
「アウトです」

SYSTEM :
 男の名は前述のとおり。キャプテン・フック。
 先に言っておくが当事者ではない。

SYSTEM :
 その船長の名にあやかったファッションのようなものだ。
 21世紀の流行とその服装を思い込み、祭り好き派手好きお調子者でおまけに楽天家。 
 人望があるのは、その裏返しかもしれなかった。

SYSTEM :
(※BGMはイメージです。
  実際の人物、団体、出来事とは異なる場合があります。)

マキナ :
 ──富・名声・力、この世のすべてを手に入れた男 海賊王キャプテン・キッド。
 彼の死に際に放った一言は 人々を海へ駆り立てた!

 世はまさに……

「まさに時すでに時間切れ。言い訳は今ので十分?
 終わったなら気付けの一発喰らっとく?」

マキナ :
 左手のデバイスをすーーーっと翳す。翳したデバイスがわざとらしく音を立てて仕込んだ捕縛用スタンアンカーの発射口を覗かせた。
 こいつから放たれる電流が、チクタクワニの時計の音よりシャッキリ目覚めが期待できるのはお墨付きだ。

マキナ :

 ……で。このカブトムシとか捕まえてそうな、夢見る小学生をそのまんま大人にしたような、時の果てまでロマンを追い求めているおっさんは、悲しいことにうちの上司。
 キャプテンなんて呼び名は艦長とか、そういうニュアンスの筈だけどうちのベースにおいては専らこの海洋浪漫にかぶれてフックなんて名乗っちゃうようなおっちゃんのことを指す。

SYSTEM :
           ピーター・パン
 キャプテン・フック…永遠の少年に対する大人の象徴を名乗る彼がまこと大人だったのかと言われた場合、ある点でYESであり、ある点でNOだった。

 海賊かぶれのその容姿は、いつかに曰く「21世紀の流行りだ!」と断言して憚らないが、そのくせ左腕の義手は別段その拘りと関係はない。
 性格は───見て聞いて、ついでに勝って御覧のとおり。フック船長の天敵たる時計ワニは、大人を黙らせる暴力の象徴である。

『キャプテン・フック』 :
「まあ待て。待てマキナ。若い時分から神経質になっちゃいかん。
 オレもこの通り、おまえの到着が遅かろうと予定時刻を早めて、あの坊主に言伝し、余った時間をだな…」

『キャプテン・フック』 :
「それにしても、そうだ聞いてくれ。さっきの話の続きだ。
               モダンタイムズ
 今日はノーブルテザーの小僧が科学万能の時代でだな、」

『ウェンディ』 :
「船長」

『キャプテン・フック』 :
「むう、仕方がない。話はマキナの引き金5秒前のうちに区切るとするか。
 ちなみに───」

『キャプテン・フック』 :
「男キャプテン・フックに言い訳無用!
 二言と背中の傷はねェ!」

SYSTEM :
 堂々たる“すまん”の一言がその後に飛んだ。
 お調子者の楽天家。仲間の言うことはだいたい信じる彼が、どういう経緯で“ベース”を預かるようになったのかは定かでない。

 あと、実際に気付けの一発が飛んだ回数も定かでない。

マキナ :
「ゴクローサマ、ウェンディ」
 肩を竦めて嘆息。
 こんな具合にお調子者で楽天家、好奇心も旺盛、あり得ないことはあり得ない世の中の与太話を全部受け入れてしまう困ったおっちゃん。
 もっとも、見様によっちゃ適正があるとも言えなくもないけど。こういうのって与太じみてる話ほど意外に芯を食ってることあるからなぁ。平安時代に転生したガウェイン卿とか。

マキナ :
「潔さはよし。ウェンディに免じて今日は勘弁してやるとして……
 要件は?」

 そしてこのおっちゃんはふざけた格好とふざけた態度ではあるけど、ふざけた采配はしない。腐っても艦長/キャプテン、今回の呼び出しだって意味あってのことだろう。

 ……まあこのノリで与太映画観賞会に連行されたこともあったけどね。そん時はジャンプスケアで電気ショック飛ばしてスリルあふれる上映会にしてやったっけ。

SYSTEM :
「たまには映画で冒険するのも」「悪くねェ!」と、謎の威風を漂わせながら、ふざけたい半分、真面目半分に彼が(その辺からくじを引く感覚で)用意した、ツッコミどころ満載の最新の空飛ぶサメ映画。
 題してスペースジョーズDX3rd───上映会は即座にダイナミックでバイオレンスと化した。出来栄えは黙して語らずだ。

『キャプテン・フック』 :
               スタン
「おおよ、俺とあろうものが本当に麻痺って情けなくダウンで終わるワケにもいかねェ。
  ヒ マ
 そういう時なら小僧を通さず直接行くぜ」

『キャプテン・フック』 :
「そうだなウェンディ、このメンツなら分かるだろ?
            ・・・・・・
 概ね、ちょっと変わったいつものヤツってところよ」

SYSTEM :
 そもそもベース内放送で呼んだ時点で、実質的な回答はその二つだった。

 ちなみに、超手の込んだ悪戯をするときは彼は直接来る。 そして、本当に一線を越えたり“虫の居所が悪い”時にはしない。
 別に人心を読むようなわけでもないので、奇妙な幸運か、理屈ではない察しの良さだった。

SYSTEM :
 そしてそうでもない以上、彼の要件は…。

 当然、あなたが暫くはナシで頼みたかったような仕事に限られるワケで。

マキナ :
 だと思った。また暫く憩いのベッドから遠ざかりそう。
 ワンチャンないかという淡い期待は見事に打ち砕かれたところで、観念して続きを促す。

『キャプテン・フック』 :
「ワハハハ! そんなに嬉しいか!
 なぁに安心しろ、こいつが終われば次は21世紀のシフト? とかいうヤツみてェな無茶ぶりは暫くしねェよ。たぶん。おそらく、きっと」

『キャプテン・フック』 :
「で、だ。時空移動の確認は20XX年…」

『ウェンディ』 :
「そこは確約してください、キャプテン。それで…」

『ウェンディ』 :
「20XX年、というと………。過去世界においては最も多くページが割かれた時代ですね。
 起源種の発生を切欠にした20と数年は、特に激動と呼んで差し支えなかったそうです」

『キャプテン・フック』 :
「あァ、きっと名高い船長たちが居たに違いないぜ。
 おれという偉大な船長と渡り合うようなやつらがごまんとだ。このキャプテン・フックと!」

マキナ :
 ユビキタスネットワーク            プレイン
「通信の遍在化でロマンが駆逐され始めた時 代なんだけどね、実際は」

『キャプテン・フック』 :
「まさかよ、人の夢はそう簡単にゃ終わらねェ!
 良しも悪しも、だがな」

『キャプテン・フック』 :
「そして、その20XX年に時空移動が感知された。時空犯罪者のお出ましだ」

『キャプテン・フック』 :
「しかしこの時代、起きることはメチャクチャあったが…改変自体が起きたことはそこまでねェ」

『キャプテン・フック』 :
「新しい神になる! なんて“とんち”も、おまえの言う通り、SNSの全盛期にゃ乗せ方に工夫が要る。そんな『非効率』をジャームどもは我慢できねェ。

 個人の影響もある部分ではまァ増えたが、基本的には減った。だいたいのヤツには代わりがいて…。
 誰々を殺しますってしたところで都合良い展開にならねェ!」

『キャプテン・フック』 :
「何よりコイツが一番の問題だが…良くも悪くも現地の助けの得方が複雑すぎる。

 国一つ渡るにも手間だからな。おれたちにとっても困るが、理性がないだけで頭の回るジャーム諸君も同じくらいに困る…」

SYSTEM :
 先の話になるが、ページの一つを差し替えただけで幾つもの歴史が変わるパターンは然程ない。
               ・・
 大抵の場合、そのページの中で辻褄が合うように出来ているからだ。

SYSTEM :
 そしてその差し替えにも改変にも、たいていの場合、現地のオーヴァードの助けが必要となる。
 改変を望むものと、改変の当事者がセットでそれが成立する。対抗する意思も同様に。

SYSTEM :
 しかしその現地がこれほど、思惑と情報に交錯するのであれば、ジャームにとって…。
 望み通りの方向性に向かわせるための“一致する意思”を見つけ出すことも、
 ましてや起点となる人間を見つけることも至難の業である。人を隠すなら何とやらだ。

 もちろん、それ抜きでも改変が成立することはある。
 ジャームは歴史上に一切の接点を持てず、過去改変を上回る繋がりを持ち得ない為だ。

 だがそれでも、基本的には彼らは利用する他人を持つ。
         ・・・・
 …その候補が逆に多すぎるがために、目も付けられやすい20XX年。
 激動のコードウェル博士の時代は。改変の対象になったケースが、然程となかった。

マキナ :
 …………。
 激動と混沌、変革と革新。
 この時代を表す記号は、概ねそういう変化を示す単語で示される。
 二次大戦期から80年余の安定期が作り出した情報革命の網は、この時代には地球上を覆うまでに至ったという。

 人の意思が簡単に伝播する時代、国家解体戦争・都市国家樹立以前の最盛期。
             プレイン
 そしてあの事件が起きた、時 代。

SYSTEM :
 しかしその語り草は。
 逆説的に、その時代でこそ何が起きる、という主張だった。

『キャプテン・フック』 :
「この時代のその時期にゃ、ある事件が頻発してる。
              サイバースプライト
 その事件の中心にいるのが…“電子の妖精”ってのだ」

『キャプテン・フック』 :
「具体的にはだな…」

『ウェンディ』 :
「船長…結末まで喋っちゃダメですからね」

『キャプテン・フック』 :
「まァわかってる! あらすじだあらすじ。
 ぶっつけ本番の航海なんて誰もできねェ。出来んのは神さんだけよ」

マキナ :
「聞いちゃっても記憶野から飛ばせばいいだけとはいえ、あの処理だって余計な時間使うからね。
 ……それで、"電子の妖精"ねぇ」

『ウェンディ』 :
「“電子の妖精”、というのは…。
 ああ、21世紀の…コレですね」

SYSTEM :
 仔細を聞かされていなかったほうが、軽く情報を浚う。深部までに手を当てないような、文字通り“粗筋”を確認する素振り。

『ウェンディ』 :
「小さなオカルトのようなものですね。
 スマートフォン
 当時の携帯端末、ゲーム機、家電製品、コンピューター、発電施設。いろいろありますが…。
 共通するのは、電気の通り道の近くで何か必死に、まじめに打ち込んでいると、不思議と”ちょっとラッキー”なことがあった、と」

『ウェンディ』 :
「しかしそれと同時に、電子機器の暴走事故と過負荷による停電も、事実の確認から発生し始めています。
          サボタージュ
 これにかこつけた、人為的な事故も」

『キャプテン・フック』 :
「おし、そこまでだ。
 “妖精の気まぐれ”の真実は探してみろってな」

SYSTEM :
 事件の全貌を知れば知るほど、クロノスガーディアンの行動は制限される。
 …あなたの言うように、記憶処理を予めするとは言ってもだ。手間もかかるし、あなた自身の気の持ちようもある。

SYSTEM :
 …しかし、既にこの話の時点で…。
 結末がよほど、想定を覆す奇天烈なものでないならば、だが…。

SYSTEM :
 …介入の余地はない。必要性もない。
 その程度の事件、箇所と規模の多寡があるくらいで、どこでだって起きている。

 ささやかな幸運を齎す現象を突き止めて得られるものは自己満足と、多少の知的好奇心を満たす発見だ。
 暴くこと、解き明かすこと、人間の常態であっても………ジョリー・ロジャーベースの人間がそれをタスクとしているわけでもない。

 そもそもレネゲイドビーイングが常態のものと分かっている未来で、
 わざわざこれのためにオーバークロックのエネルギーを使うリスクに見合う見返りなどない。誰にとっても。

マキナ :
 クロノスガーディアンは基本、多くの記憶情報を制限された状態で現地に登用される。私みたいな特例でも、程度の差があるだけでその例に漏れない。
   プレイン
 その時 代を保護するためのものでもあり、もっと言えばエージェントの『魔が差す』リスクを考慮した故のものだ。

 だから多くの情報が渡されることはない。のだけど……

マキナ :
「……え、情報今ので終わり?
 それ、うちらが介入する必要とかある?」

 だからってさっき渡された情報は、本当にうちらの仕事とは何らかかわりのなさそうな範疇のものだ。
 時空犯罪のケースでポピュラーなもののひとつに、『その時代に絶滅したものを別の時代に持ち帰る』というものがある。絶滅危惧種の生物の転売なんかがそれだ。

マキナ :
 その逆も然り…異なる時代間を移動することで、価値を見出せないものに付加価値をつけること。それが時間犯罪の定型の一つ。
 だけど今の話を聞く限りだと、特異性はあってもそれを求める奴らの考えが、まるで見えてこない。

SYSTEM :
 疑問はもっともだ。
 推定ブラックドッグの、自覚の是非は置いといて”悪さをする”程度のレネゲイドビーイングを手に入れて、何をするというでもない。
            オリジン
 そも…。未来のこの時代、起源の一つや二つは完全にではないにせよ、発生の経緯と経験の蓄積にモノを言わせて、創造る術もあるやも知れない。
 ベースの起動のための電力を考えれば、いや、それが必要のないジャームだったとしても。割に合う合わないの話ではない。

SYSTEM :
 可能性は二つだ。

 それがよほど、ろくでもない結末に代わる余地を持つのか、あるいは。
 …あるいは。ウェンディはそちらと踏んで口にしなかっただけだが、結論は、あなたはどうあれ、少なくとも彼女の想像を飛び越えた。

『キャプテン・フック』 :
 ・・・・・・・・・・・・・
「そこに時間移動を行ったヤツが問題なんだよ」

『キャプテン・フック』 :
「ネバーランドベースのお下がりチームから…ベースごとオーバークロック装置をパクったバカモン。
 確認済みの信号だ」

SYSTEM :
 もう一つは……。
 改変者にとって、介入の見返りが常軌を逸している場合だ。

SYSTEM :
 そもそも基本的にはジャームなのだから。
 彼らの中では完結している理論に基づいて、彼らは平気で人を殺し、奪い、一切を捻じ曲げる選択が取れる。

 ………だが。

SYSTEM :
 ベースを必要とする時間移動犯罪者。

 正気のまま凶行に及べる、“狂人”という言葉では安くも聞こえる類の人間。
 そういうものの答えは、多くなかった。

マキナ :
「──あァ、そういう」
 合点がいった。知らず力が入ったのか、大気がパリッと電荷を帯びる。
 ヴィジョンキラー
「"蓋然を閉ざす者"……性懲りもなく、またあいつのケツ持ちってコト」

『ウェンディ』 :
「───! 船長、それはッ、」

SYSTEM :
 ………事ここに至って、あなたに遅れて答えを察したウェンディの、
 どこか責めるような口調を態と無視した“キャプテン・フック”が、躊躇のない「続けるぞ」の発言で話を持ち出した。

『キャプテン・フック』 :
「おう。特A級時間移動犯罪者…」

『キャプテン・フック』 :
 ヴィジョン・キラー
「“蓋然を閉ざす者”」

SYSTEM :

 ──────あなたには。
 その名前に、覚えがあった。

SYSTEM :
 出身がいずれかの時代のイギリスであること以外定かではない偏執的自由主義者…。
 通称、ピーター・パン。

 これがジョリー・ロジャーベースのみならず、大抵のクロノスガーディアンにおける永遠の宿敵にして永遠の少年というわけだが。
 そんな彼と並ぶ特A級の指名手配を受けた、時間移動犯罪者。

SYSTEM :
   ヴィジョン・キラー
 ………“蓋然を閉ざす者”。

 時間移動犯罪者を殺す時間移動犯罪者。
 もっとも強く安定する未来以外の全てをその手で屠るもの。潔白以外を許さない、鋼鉄の塵殺者。

SYSTEM :
 その所業は現地の人間から、オーバークロックを行った対象にも及び…。
                    ・・・・・・・・・・・・・・・
 時空の改変予兆を何らかの手段で察知し、改変成立前に事の発端を抹殺する所業で知られる。

SYSTEM :
 沸騰し続ける思考は常人の最高速度。どんな天才の初速にも食らいつこうとし続けてきた、その代価は止まれずの足。故障したブレーキ。終了しないエンジン。
 
 彼は世界を守るために世界を殺せる。悪を傷つけるために、悪になれる。ただそれだけを見返りとする───。

『キャプテン・フック』 :
「フツーの歴史改変にはな、現地のオーヴァードの協力がいる」

『キャプテン・フック』 :
「なもんでウチは基本、現地のオーヴァードにベース使って交渉かけてる。かけてる、が───。
 知っての通り、うちから直接職員を出す例外のケースってのがある」

『キャプテン・フック』 :
「対象となる箇所周辺が閉鎖的すぎる、またはその逆。現地協力のしがらみが大きいんで“対象”に改変させるケースが一つ。
 既に協力を取り付けちまったオーヴァードにとって、情報じゃなくて武力のお助けが必要なケースが一つ。
 そもそも職員の時間から見てそこは未来だから、協力仰ぐまでもなく改変出来ちまうようなケースが一つ…」

『キャプテン・フック』 :
「………例外ラスト。
 歴史改変前に時間移動犯罪者を見つけたケースだ。
 残念半分嬉しい半分! コトが起きる前に、コイツが動くのをこっちで確認しちまったのさ。それもこの時代に」

マキナ :
            タイムパトロール
「……ウチらはある意味では時空警察。
 そして大抵の場合、そういうサツの仕事ってのは、本質的にはいつも手遅れ。ガイシャが出てからじゃないと動かないし動けないもんだからね。
 まあ──そりゃこんな形でなきゃ、素直に喜べたでしょ」

マキナ :
「でも、合点がいった。うちの方にお鉢が回ってくるのも、そりゃ納得だ。
 
 奴の目的は基本一貫して、どーいうわけか外したことは一度もない。
 そしてその凶弾の飛ぶ先には……」
    ・・・・・・・・・・
 必ず、別の時空犯罪者がいる。
 恐らくは何かを起こした後では手遅れな何かを目論んだ、とびきりの悪党が。

マキナ :
「でも、ちょうどいいや。
 あいつのことブン殴れるのは、私しかいないし──いい加減、ケリをつけたいと思ってたんだ。
 事件を未然に防ぎ、勘違い野郎を黙らせる。一挙両得じゃん」

 ウェンディにちらりと目くばせを寄越しつつ、鼓舞するように不敵に笑う。
 こーいうときは笑うもんだ。

SYSTEM :
         ・・・・ 
 そう、彼の存在はもう一人、時間移動犯罪者がいることの証だ。
 彼にとっては、あるいは、時間移動犯罪者であることが矛先になる理由というわけではないのかもしれないが。

 唯一無二の指針において、それを最優先で殺しに行く。
 変化の兆しを、客観で見て、主観の善悪問わずに断ち切る。そういう性格の持ち主だからだ。

『ウェンディ』 :
「マキナちゃん。………」

SYSTEM :
 ウェンディは、これでも大人だが、同時に豪快とおおざっぱを地で行くフック船長の相方だ。心配性でないとやっていられない。
 …だが、ちらりと向いた目配せを見て“でも”と声高に主張するような類の心配性ではなかった。むう、と唇を尖らせはしたものの、とりあえず、この任務の仔細を聞く方向にシフトしたらしい。

『キャプテン・フック』 :
「そういうことだ、その意気だ。

 なにせただでさえ聞き分けのないガキンチョがうちには多いからな。
 だが、聞き分けもなくておまけにラインを超えるヤロウの腐れ縁は二つ! 見過ごせねェのは確かだぜ」

『キャプテン・フック』 :
「いいかマキナ。今回は、その電子の妖精が…」
 ・・・・・・・・・・
「コイツにブッ殺される前に、コイツをとっ捕まえて…。
 コイツが変えるべきだと思った事件がまともな結末に行くようにする。それが、今回のオーダーだ」

SYSTEM :
 あの時代の隠れ蓑はあちこちにある。20XX年の、オーヴァード絡みの組織の数と言ったらないものだ。

 だが、そこに彼が訪れた時、空振りだったケースはない。
 どういう判別方法をしているのかはいざ知らず……。

SYSTEM :
 したがって、電子の妖精を取り巻く事件に必ず“ソレ”がいる。
 あるいは”ソレ”の尻尾。時間移動犯罪者の中でも、ピーターパンがそうだったように…。
  グ  ル
 唆す役と動く役の犯罪者だっている。不確かで、好ましいかは定かでもなく、決して続けたいわけではないだろう、白い凶弾への信頼/認識の形がそう伝えている。

『キャプテン・フック』 :
「だいたいのことは俺が許可する。引っ張り出す!
     クルー引っ張り出すやつ
 ベースからの物理的人海戦術は、エネルギー的にもちと厳しいが…」

『キャプテン・フック』 :
「こいつも間に合えばだな。なァに、大船に乗ったつもりでいろよ!」

SYSTEM :
 現地協力者の選択と裁量はクロノスガーディアンのあなたに委ねられている。
 そしてベースの情報や戦力も、基本現地からの連絡に「任せろ」の二つ返事に近しい、今のような態度で答えがちの(たまに無茶ぶりにすら答えて座礁に乗り上げることがある)彼に揺すれば…出るものは出るだろう。

マキナ :
「……」
 この時代背景と、面子と、状況。
 ……似てるな、あの時のミッションと。

 尤も今回はあそこまで場がかき乱れるわけじゃなさそうだし、考え過ぎ、だといいけど……。

「オーライ、承った。
 とりあえずは前者を片付ければ、後者の道行きも見えてきそうだね。となると、現着後は地道に電子の妖精探しかな」

マキナ :
 追加の人員は元から期待してない。ベースに保存されたエネルギーの総量は限られてるし、手数を増やせば増やしただけこちらの滞在時間が減るばかりだ。
 人手は現地調達、バックアップに期待できるのは装備と弾薬、そのあたりが関の山。つまるところ、いつも通りだ。
           レイヤー
「オーケイ。ま、今度の時間軸は21世紀だし、だいたいのことは何とかなるでしょ。
 一旦は拠点探すから、あとでLiar Gunとトライク持ってきて。転移直後に見咎められたら、いろいろメンドーだからさ」

SYSTEM :
 …そもそも万年人手不足で水夫募集中のジョリー・ロジャーベース。
 こうした直接の職員投入というケース自体が、凡そオーソドックスな歴史介入任務とは異なることもある。

 ああ言ったのは基本“鈍り”がちな机仕事を好かない、元は前線でモノを言わせていた我らが船長の願望だ。なので、願望止まりとも言う。

『ウェンディ』 :
「了解です。
 こっちから招けば、どこでもいつでも! が、ベースの強みですからね」

『キャプテン・フック』 :
「おォ、だいたいのことは何とかなるぜ。
 20XX年なら、そのセット持ち込んだところで『だいぶ変わった武器』で済む」

『キャプテン・フック』 :
「だが個人の時代が薄れていっても、そのころはまさに! オーヴァードが一番多様だったころだ…!
 何とかなるってぇのは良くも悪くもだぜ。探し人の腐れ縁はともかく、共通の探し人についちゃ、そう易々とは見つからんかも知れねー…」

『キャプテン・フック』 :
「ま、そのへんは釈迦に説法か。そのための持ち込み品だ。で、他はいいのか?」

マキナ :
「いらない。どの時代でも身軽にダイブ出来るのが、今の私のカラダなんだって、これも知ってるでしょ?」
 言いつつ、胸元に手を当てる。全身に絶えずエネルギーを行き渡らせる人工の心臓、この身で燻り続ける機械仕掛けの神。
 そして、それらが躍る舞台仕掛けに小道具をそろえるためのシステムも。

マキナ :
 エレクトロン・レプリケーター
「電 子 変 換 型 物 質 合 成 装 置のメンテナンスは終わってる。
 最悪、転移先が絶海の孤島でもアマゾンのど真ん中でも鼻歌交じりに生活できるし、都会に出たなら片っ端から電子情報をくすねていけるんだから」

 ……まあ、この時代に限ってチーター気分でいられるとは思えないけど。あそこ、外れ値が多いからなあ。

SYSTEM :
 少女のかたちの義体に仕込まれた神鳴。
 絶えずその身に供給される電力と、拡張された感覚にとって、現代の情報化社会はありとあらゆる場所に“眼”があるようなものだ。

 状況への順応より、自己のコントロールと取捨選択に意識のウェイトを割いても問題ない。

SYSTEM :
 当人が幻想の時代、聖杯探索に騎士たちが靴音を鳴らす当時にぼやいたのも無理はないこと。

 この時代はまさに。
 人知れず変貌した今日、そこにたどり着く過去。やがて至るだろう未来のすべてにおいて。
 あらゆるものを受け入れ、共存し、利用する電気の存在が…。
 ワールドシステム
 世界を繋ぐ電子の海が、あらゆる神秘を暴き始め、一つの時代を終わらせるまさに過渡期だ。

『キャプテン・フック』 :
「それもそうだ…! ちょっと違うだけの“いつも通り”に気負うこたないわな、おれとしたことが心配性だった!」

『ウェンディ』 :
「船長の場合は三分の一でもいいので心配も………ああ、いえ、いいです。
 でしたら、現場で何かあれば連絡を。こちらからも逐一モニタリングします」

『ウェンディ』 :
「特に、到着早々はだいたい3回に1回くらい………」

SYSTEM :
 ………そこで始めかけた奇妙なジンクスの話は、一旦横に置く。
 持ち込む装備と前提条件の確認が終わったなら、あとは現場へ、だ。

『キャプテン・フック』 :
     ブリーフィング
「ようし! 確認は以上だ」

SYSTEM :
 そして現場に行くといっても、何も歩いてのこのこ行くわけでもない。

SYSTEM :
 先の通り、ベースとはどこの時空間からも切り離され、独立したガイアの輪郭に存在する。
 招けばどこからでも入れるブリーフィングの拠点だ。

SYSTEM :
 しかし実際に過去を遡り、目的となる時代に向かうにあたって、ベースの中枢にあるオーバークロック装置の起動が必要となる。

『キャプテン・フック』 :
「ウェンディ、最終チェック!」

『ウェンディ』 :
「目標の時代は20XX年。
 時間移動犯罪者は“蓋然を閉ざす者”およびアンノウン1名…。
 時空改変の兆候なし、なれど、上記2名により結果的改変の恐れあり」

『ウェンディ』 :
「中心点となる事件、電子の妖精に纏わる事件が適切な結末になるように…。
 彼らの捕縛と事態収拾をお願いします」

『キャプテン・フック』 :
「よォし! 帆を張れ、ジョリー・ロジャーベースよ!
 全員の応答、準備完了を以て、時の海に出航する!」

SYSTEM :
 当然のことながら帆はベースにない。彼の気分だ。
 
 だがこれで、あなた次第でいつでもどこでも、オーバークロック装置は時の海原へあなたを送り出す。

マキナ :
「了解……
 プロンプター、セッティング!」

 左腕の水晶体に触れ、サポートAIへ下知を下す。自らを取り囲むようにサブモニターが展開され、時空間転移の準備を整えていく。

マキナ :

《シューマン共振同調、シンクロ率60%。基準値に到達。

 ガイアレコードへの疑似アクセスを確認。

 コードインジェクション、スタート……》

マキナ :

《タイムスケールを20XX:XXのエリア23に設定、指定座標に認証アンカーを生成。
   レイヤー    プルーフ
 目標時 間 層における存在証明を完了しました。

 これよりオーバークロック転送シークエンスに入ります》

マキナ :

 準備を整える中、心の余分が片隅で無駄な思考を走らせる。
 ……心配掛けてるか、やっぱ。
 なんか漏れてたかな、私。

 そりゃあまあ、思うところはある。けど、思うところがあるから引き下がれないコトだってあるわけで。
 結局これを続けると決めた時から、そういうのは一応振り切ったつもりだ。

マキナ :

 だから……スマートに片づけて、すまし顔でパパっと帰ろう。
          デウ ス ・ エ ク ス ・ マ キ ナ
 それが私の目指す、"凡て世はこともなし"なんだから──

マキナ :

《オプティマイズ完了。
 スケーリング完了。
 システム・オールクリア》

マキナ :

「……識別名L-UN09-a、コード:D.E.M、準備完了!
     だ
 船長、出航して!」

『キャプテン・フック』 :
「おうよ! ───抜錨!」

SYSTEM :
 ベースの膨大な発電エネルギーがフル稼働し。時空間移動が開始される。
 ベースのエネルギーはあなたの座標を両立させるためのものであると同時に、オーバークロック装置を起動するもの。

SYSTEM :
 今日のその先から、今日へと遡り。
 今日から振り返った昨日をなぞる。
 ガイアの追憶を一段飛ばしで振り返り。時のねじれを越えて大海に漕ぎ出して。
 あなたは時代を、後ろ歩きで進む。

SYSTEM :
 …幾度となく繰り返した、時空間移動。
 
 発生する現象はオーヴァード以外のものに耐えることも反応できることもないとされる。
 その定型化された奇跡を拝むことができるのは、レネゲイドとの共生もしくは支配にあるものだけだ。

SYSTEM :
 オーバークロック装置の稼働と同時に開始される時空間転移。
           レイヤー
 目標となる20XX年の時間軸に存在しない未来の旅人。
 時の狭間に帆を張るジョリー・ロジャーベースからその先へ、プロンプターを通じ、平面構造となるガイアの記憶に存在証明を書き込むのに並行し、
 機械仕掛けの身体を動かす動力源から供給されたエネルギーが渦を巻く。

SYSTEM :
 ベースから目的地へ。遠雷の木霊する中を、旅人が行く。

SYSTEM :
 幾度となく捻じれ、幾度となく元に戻ったこの星の歩みを遡って向かう先は。
 曰く、20XX年…。

SYSTEM :
 アルフレッド・J・コードウェルの誕生から死去、復活から結末まで。
 まさに───その激動の渦中であった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
 オーバークロックから、時のページをめくることしばらく。
 かつ(3回に1回のジンクスが成立せずに)首尾よく進んだこの時間軸への定着と同時に、活動を開始し始めた時期からも、等しく。合計で一週間。

 電子の妖精の噂話…そしてもうひとつの噂話を追って、あなたはここに辿り着いた。

SYSTEM :
 20XX年への到着からしばらくして、あなたが何かにたどり着いたのはこれで3件目。

 遥か未来では共に形を変え、面影をなくした組織の片割れ…通称、ファルスハーツ。
 レネゲイドというあり方に対して欲を前面に出して向き合った彼らが、
 現代に溶け込むにあたって、UGNの手の届かない地方…アジアの然る大国に作った、発電施設を兼ねたセルだという。

SYSTEM :
 復旧のため動員されるべき作業員たちは、ワーディングの気配と合わせて発されていない。
 不可思議な事態の中、もっと不可思議な“あなた”がここを訪れていた。

SYSTEM :
 少なくとも一週間前の主目的として、あなたが“茶々”を入れる理由があるとすれば、大きく分けてその候補は三つだ。

 ひとつは、電子の妖精の確保/保護。
 ひとつは、これを抹殺しに動く“蓋然を閉ざす者”を捕捉すること。そしてもう一つ…。

『ウェンディ』 :
《…停電事故の発生ケースは確認した中で三件。うち二件は、到着前に幻のように復旧してしまいましたが…》

『ウェンディ』 :
《ここは違います。今も続いていて、堂々とワーディングまで広げられている》

SYSTEM :
          ・
 あなたの知る限り、彼は必要な時に関しては非常に短絡的になるが…。

 だからといって発電施設、それも、FHが不透明なアジアに衛星めいて作ったセルまでいちいち目くじらたてる真似はしない。するが、そんな暇は彼“も”持たない。
 むしろ仮に、目がつくのであれば、その腐れ縁などはもっと迅速に済んだことだろう。

SYSTEM :
 一週間で気付いた事実がある。発電施設の停電には二パターンがあった。
 一つは、文字通り一瞬の幻のように過ぎ去っていくもの…。
 もう一つは、大掛かりな施設が、長時間停電を起こすもの。

 どちらかが電子の妖精の仕業で、どちらかが…そうではない者の仕業だった。

マキナ :
 ……さて。
 事と次第ではジャングルの真ん中や絶海の孤島に着地するより面倒な、あの底なしのレネゲイド星人や見た目だけはかわいい急に出てきて助言言うチェシャ猫がポップするトラブルもなく。
 現着から拠点設営、活動まで。拍子抜けするぐらいサクサクとコトは進んだ。

マキナ :
 いいベッドのセーフハウスを拵えて、武装回りも遅れて転送され、一先ずの土台を整えて。
 今はその捜査の網を広げているところだ。

「これでちゃっかりあいつが出てきたら、この時代のごたごたにも巻き込まれずスマートに話がつくんだろうケド……」

 冗談半分に笑い飛ばしながら、夜のハイウェイをトライクが疾走する。

マキナ :
  コピーキャット
「模 倣 犯ってやつか、火事場泥棒か。
 ハズレの可能性は高いけど、きっちり確認しておく必要はあるかな。調べた限り、ほかにアテもなさそうだし」

 それにしても、これだけ情報が拾いやすい環境にいて一週間でこれだけとはね。
 あの盆暗も手を焼いてるというか、攻めあぐねてるわけか。

SYSTEM :
 情報の拾いやすさは、同時に情報の処理のしにくさでもある。
      ウェブ
 世界各地に電波を通じた情報の洪水から、最適なものを取捨選択するというのは簡単なことではない。
 ましてや、今から乗り込もうという箇所については、そもそも公的には存在自体を認められていない僻地だ。

SYSTEM :
 だが、それでもあなたが各地の情報を浚ってここに訪れ、3度目の正直とまで転がり込んでいるのには理由がある。

 一つは、先ほど繰り返した通り…。
 文字通り一瞬の幻のように“観測”と同時に停電現象が過ぎ去り、姿を失するからだ。

『ウェンディ』 :
  イタズラ
《ただの模倣犯レベルにしては場所が離れすぎていますが、火事場泥棒となると…。
 正直に、その線を否定できないところではありますね》

SYSTEM :
 笑いごとじゃないです、コトバはコトダマですよ、と。
 幾度かのナビゲート時に、相対した彼の”顧みなさ”を知っている彼女があなたの冗談に答えつつも、もう一つの理由について口を紡ぐ。

 アジア方面、特に、潜り込みやすさはともかく利便性においては3本指で。
 穏健性でいえば(地域により致命的差異はあるが)平均的に高めの結社/ロッジ…。
 
 UGNの活動が困難なこのユーラシア大陸、中国に訪れているのは、もう一つの理由あってのことだ。

『ウェンディ』 :
《…それに。“蓋然を閉ざす者”のビーコンの初期設定座標はこのアジア方面です。
 まだ留まっているとも限りませんが、万が一のことだってあるかもしれません》

SYSTEM :
 彼が錨を下したこの時代の地球において、“蓋然を閉ざす者”がピーター・パンから強奪したベースのひとつが、最後に示した座標がここだからだ。

 強ち、今のあなたの冗談交じりは半分叶い得る話でもあった。だから言ったのかもしれないが。

マキナ :
「まあね……」
 ハンドル片手に頬杖をついて、遠くの目的地を見やる。
 実際、最後に存在が確認されたのはこのエリア16……アジア方面。一口でアジア方面と言ってもだけど、可能性はゼロじゃない。
 それ含めてここにのこのこ出てくるなら、とんだおまぬけってとこだけど。

マキナ :
「とにかく実際の様子を見てみないことには始まらないか。
 とはいえ、物見遊山だけじゃ、話は済みそうにないけど……」

SYSTEM :
 繰り返すように、彼は…。
 本当に必要ならば躊躇がない。己も他人も顧みず、目的のために一直線だ。

 だが、必要な理由が見えてこない。
 ここはただの発電施設だ。それなりに大掛かりではあるし、セル一つの資金源を賄うのに十分。その程度。

SYSTEM :
 火事場泥棒だとしても何のために。
 物見遊山の気分で行くには…遠方から尚も把握できるワーディングの気配が、楽観を消している。

 人気のなく、整備も間の空いたまばらな舗装の剥がれが残った道路を行く中の考察でわかるのはそのくらい。
 割り切るが早いか、あなたはそのまま自らの愛車を奔らせていた。

『ウェンディ』 :
《はい。周辺の感知情報はありません。増援や第三者の可能性は欠けますが、内部についてはワーディング中にジャミングを兼ねているものがいます。ブラックドッグですね。
                サーチ
 他は…いつものように、こちらの探査網を潜り抜けてくる彼女のようなのでなければ…》

『ウェンディ』 :
《いえ、これもコトダマかしら…。
 とにかく、気を付けて》

SYSTEM :
 通信もそこそこに、その発電施設へ機体を向かわせる。
 出迎えの気配は予想の範疇でナシ。そして、それを裏切られることはなかった。

SYSTEM :
     ・・
 だがその内部は、発電施設だったという前提に首をかしげるような“ざま”だった。

SYSTEM :
 有機的なエフェクトの侵蝕は人的気配を感じさせず、発電施設自体はそのまま駆動し続けている。
 あるいはそれなりの人員が詰めていただろう土地の範囲と、いくつかにブロック分けされた施設は、入口からここに至るまで、あなた以外の人の気配を認めることがなかった。

SYSTEM :
 おそらくは襲撃を受けたFHセル/カモフラージュとして機能する発電施設の「使える部分」だけをそのままに、それ以外が生命的な脈動を残していたのだろう。

 電子機器の暴走事故と過負荷による停電───そちらに該当する行いがこのような襲撃の結果なのか。
 あるいは、完全に模倣犯の“やらかし”なのか。

SYSTEM :
 …そしてそのような状況なら…。
 人の気配などというもの、すぐに気取れる。あちらからもだ。

SYSTEM :
 ワーディングを行い、施設の人間をあらかた排除し…。
 何らかの目的でここを占拠していたのは、あなたより背丈は高いが、年齢は、おそらくそう変わらないだろう少年だった。

『少年』 :
「…話が違うな。先遣は片づけたハズ…」

『少年』 :
「そこらのイリーガルか。余計なケチがついたな…」

SYSTEM :
 緑髪の端正の取れた顔立ちは、自然的な美しさとは若干趣が異なっている。
 どちらかといえば、彫刻や絵画。人為的な他意を練りこんだ、人工物の美しさだ。
 冷たい氷のような瞳が、向こう岸からあなたを見る。そして、それと同時に……。

SYSTEM :
 …その有機的なエフェクトの床を、どろどろ、と溶解させて現れる姿。

『怪物』 :
「ほう! ほうほうほーーーう!」

SYSTEM :
 …片方の少年は紛れもないオーヴァード/チルドレンだった。
 そして、並大抵の者でもない。

SYSTEM :
          ・
 だが、こちらは特に別だ。考えるまでもないほどRB。

SYSTEM :
    レジェンズ
 不定形の偶像から生まれた、おとぎ話の怪物。
 来客に気付くや否やニタニタと下卑た笑顔を見せ、むき出しにした歯からは怪物相当の知性以上のものはない…。

 だが、知性はなくとも本能はある。
 その本能が、欲望に結び付き、能力を下地にし、脅威で測ったならば。話は別だ。

マキナ :
 さて……
 侵入自体は予想通り。特に難しくはなかったけど、ちょっと面倒なことになってきたな。

「なにコレ。おたく、家庭内菜園とか趣味?
 それとも実家でアナコンダでも飼ってるわけ?」

 発電所って聞いてたし、その機能や名残は生きてるみたいだけど、室内にはびっしりと蔦や木の根が右と言わず左と言わず生している。
 電子機器へ負荷を掛けようとエフェクトをぶっ放した結果だろうか。

マキナ :
 入口あたりで何となく監視カメラの類をつぶして回っても意味ないなと思った通り。オルクスの領域の類だとしたら、初めから隠密行動とか無理だったワケだし。

 そして案の定、奴でもなかった。多分協力者でもないだろう。基本、身軽なのを好むタイプだし。

マキナ :
 一先ず武器をちらつかせるのは、出方をうかがってからにする。片っぽなんかとくに、殺意に対しては敏感そうだ、刺激して厄介ごとにしたくない。
                            ガービッジ
 片方はだいたい15程度。FHチルドレンってやつ? そこらの量 産 品とは訳が違うのは、立ち振る舞いでわかる。
 人為的に作られたような端正な顔立ち。……デザイナーズチャイルドか?
 話は通じるかもしれないけど、話をしようという気がなさそう。
 

マキナ :

 もう片方は……ジャーム? それにしては形状が人間的。
 姿かたちが完全に変容するジャームは、原形すら留めないこともある。こういう擬人化された怪物は寧ろ人間のイメージから出来たもの。
 パッと見の印象だと、なんだろう……

 アーカイブで読んだペルシャの読み物なんかに出てきそうな感じだ。
     イ フ リ ー ト
 いわゆるランプの魔神。願い事を三つまで叶えてくれるっていう精霊で……

マキナ :

「……」

マキナ :

「……………………」

マキナ :
          サイバースプライト
「……まさかソイツが"電子の妖精"とか言わないよね?」

SYSTEM :
 蠢く有機物が結果的に様変わりさせた施設内が、もともとどのような地形と施設だったのか…。
 それは定かでない。
 ただ肝心なのは、人の気配がしない理由はソレだ。

 施設の停止のために何をしたのか、あるいは…。
 そもそも本当にそれは植物なのか。どろどろに溶けた有機体の中から現れた確定レネゲイドビーイングの自分だけ愉快気な笑い声だけが、未だに響いている。

SYSTEM :
 幸い? なことは…。

 あなたの予想よりかは、
 彼は会話に億劫に応じてくれる人種だったことだ。

『少年』 :
「この光景を見てソレが出る藪蛇に免じて話すけど」

『少年』 :
「あいにくと生き物を飼ったことはない。
 さらには趣味でもない。畑仕事なんて門外漢だ」

『少年』 :
「…そして…。

 なぜその言葉を知ってここにたどり着いたのか、という基本的突っ込みを前置きにしたうえでいいなら。
 同感だ。彼は妖精といえば妖精かもしれないが、メルヘンとは無縁だし、サイバーとはもっと無縁だ」

『少年』 :
「…それで」

SYSTEM :
 目を合わせなかった、無感動の瞳が持ち上がる。
 中に巡る思考のほうに気付いたのか。

 そして無機質と無感動をまとうだけで。
 あからさまにこちらを観察している方と違って、そうと見せないだけで。
 彼らは共通して、訪れたイリーガル(と、思っている)のあなたに強い興味か、警戒心か、あるいは、ほかの何かを向けているようだった。

『少年』 :
「きみ、誰」

マキナ :
 へえ? 意外に会話に乗ってくれるね。
 羽虫がまた一匹飛んできたか、とでも言いたげなムカつく態度だけど、確実にこっちの興味がある方だ。もう一方は相変わらず、なんか新しい餌だー、ごすずんさま食べていい? とか言ってきそうな雰囲気でこっち見てるし。

「答えてあげてもいいけどさぁ……」

マキナ :
「その前に──結局、コレ何。
 茶化したけどさ、実家をアマゾンにするよりよっぽど悪趣味な代物でしょ」

 まあ聞くまでもないかもだけど。

『少年』 :

『少年』 :
「答えてあげてもいい、ね。
 そのあたりお互い様のようだけど」

『少年』 :
「悪いね。それは僕以外のプライバシーで───」 

SYSTEM :
 億劫気味に振り返ろうとした時のこと。
 怪物のほうが、今まで興味のない会話の最中、視界の端っこで屈伸やら何やら、手持無沙汰の暇つぶしに相当する行いを唐突にやめて口を開いた。

『怪物』 :
 ・・・
「くった」

『怪物』 :
「なかなか…悪くなかったぞ。オマエはアレか?
 オマエ、食べ残し………」

『怪物』 :
「………ンンン………?」

SYSTEM :
 要領を得ないが概ね満足げな言葉。

 断言してもいいだろうことは、少なくともこちらはれっきとした、由緒正しいくらいのジャームだ。
 その衝動の排気熱が“どういう”ものを作ったっておかしくない。

 だがそんなことより、ここまで話して漸く、このマイペースで自己中心的なバケモノは、あなたの装いが“前例”と違うこと…あるいは別の何か琴線に触れること…に気付いたようだった。

SYSTEM :
 …暫く首ごと身体を捻った後、なにか答えが出たらしい。再び表情を戻す。

『怪物』 :
「………───おっと! 知ってるぞ。
 おまえみたいな“ぶがいしゃ”の前ではなすコトじゃなかったなあ。いけないことだからなあ」

『少年』 :
「手遅れだけど。…まあ、順番の違いか?」

『少年』 :
「聞いての通りだ。ここのセルの飼い犬だったら、悪いけど全員彼の腹の中。契約破棄だ、ご愁傷様。

 ああ、それとも…考えから外していたけど…」

『少年』 :
「UGN…ゼノス…テンペスト───。
 いや、最後のはないな。連中が縄張りから出て声高な主張をするのも限度がある」

『少年』 :
「で、改めて聞くけど何。
 ずいぶんと余裕そうなあたり、このテのジャームや負け犬は見慣れてるのかい?」

マキナ :
「……でしょうねえ」
 あーあー、そうでしょうよ。レネゲイドビーイングとかいう奴ン中でも、特に頭のカッ飛んだ奴ら。こいつ、ランプの魔人かと思ったらとんだ悪食じゃない。

マキナ :
 そしてその食欲はこっちに向きつつあるわけだ。なんか反応鈍いけど、マシンボディはお気に召さないとかかな、そうであってよホントに。

「別に。負け犬の最期にしたって、もーすこしマシなものがあってもいいとは思うけどね。
 ……喰われた奴らは喰われた奴らで、手前のツケを払っただけ。私がしばき返してやる義理はないけどさ」

マキナ :

「で、私が誰かって? さっきのおでくんの言った通りだよ。
 アウトサイダー
 "部外者"……なるほど、言い得て妙って奴だ」

マキナ :
            デウスエクスマキナ
「クロノスガーディアンの"凡て世はこともなし"。
 ……なんて言っても、どーせ伝わんないだろうし、事が済んだら全部忘れると思うけど。
 あんたこそどこの犬だか知らないけど、このヤマに首突っ込まないでくれない? 何したいのか知らないけど、捜してるのは"電子の妖精"の方でね。ランプの魔人はお呼びじゃないんだよ」 

『少年』 :
「………冗談みたいな組織名だな。どこのセンスだ?
         イカレ
 まさか欧州あたりのSoGのお友達?」

SYSTEM :
 当然…。
 
 そんな組織名がヒットするはずがない。
 少年は怪訝通り越して若干不愉快気に、あなたの堂々とした態度のほうに眉を顰めた。
 答える気がない、という受け取り方をしたからだ。そして、この期に及んで“面倒”が増えたという理性的なポーズの裏側に、また何かを隠しているようにも見えた。

SYSTEM :
 ………そしてもう一つは。

『怪物』 :
「ヒッ…ヒッヒッヒ」

『怪物』 :
「“ぶがいしゃ”…そーか、そーか。
 やっぱり! おまえそうか!」

『怪物』 :
「さっぱりイミはわからなかったが…。
 いやだね。ここはおれのものだ。なくした分を食うんだ。もっと食う!」

『怪物』 :
「おまえもおまえも…。
 ・・・・・・・・・・・・・・
 いまちょっと近づいてるおまえも…。
 きいたとおりだ! 強いちからはぜーーーんぶおれのものだ! ウヒヒヒヒ…!」

SYSTEM :
 何が琴線に触れたのか、ごきごき、と…。
 あるかも定かでない骨の鳴るような音と一緒に、その肉体を器用に収縮させ始めた。

 つまり…。
 今の姿勢から明確に“やる気”になったのはこちらだ。

『少年』 :
「お互い様か。あやかりたい名前も大して変わらないらしい。
 クロノス、とはね。まったく」

『少年』 :
「………。だがまあ、“電子の妖精”じゃないのが網に掛かった僕らの気持ちにもなってほしいところだ。
 撤収の前に、ランプの妖精をやる気にした責任を取ってもらう」

『少年』 :
「…で、わかってるね?」

SYSTEM :
 億劫というよりは“それ”を口実にしたかのような行きがけの駄賃の話。
 向いた視線が何を示しているのかはともかく、向けられたほうは露骨に、まるで、嘲るように首を傾けた。

『怪物』 :
「お? おまえがおれに命令するのか?
 いやだね、おれはやりたいようにやるために“雷人”のタノミをきいたんだ」

『少年』 :
「そっちがこの女にどういう興味を抱いたのか知りたくもないけど…。
 今その気になるなよ。きみが、ただでさえ、一番目立つ」

SYSTEM :
 それに、その“雷人”からの言伝だ、と。
 彼が口にすると、分かっていたかのようにげらげらと怪物が笑った。

 目の前のあなたを軽く見ているというわけでもない。特に少年のほうだ。
 こちらは、斜めに構えた達観を除いては、あなたの初見の印象が一番正しい.”話す”が“話を続ける気はない”だ。

 だが、少なくとも…。
 怪物のほうは、自分が負けると思っていない態度だった。

『怪物』 :
「ヒヒヒ…! しかたない…。
 じゃ、あまりものだ。こいつらの代わりはすぐ用意しなきゃなあ」

マキナ :
 ──もしそこで反応違ったら、それはそれで大事だけどね。演技って感じでもなし。
 どうやら時空犯罪者の息のかかった手下ってわけでもない、か。

マキナ :
 いや、決めつけるのはまだ早いな。少なくとも『そう』であることを明かしていない、ぐらいでタグ付けしておくぐらいでいいか。
 それより、今は……
      ・・・・・・
「なるほど、コイツが狙いか。
 見た目通り嗅覚は中々、見る目もある。
 ──もう少し行儀よくしてりゃ、女の子にもモテるだろうに!」

 今目の前の危機を脱する方が先かな。
 テクスチャーチェンジを解除、無数の数列が手元に奔り、愛銃を手元に現出させる!

SYSTEM :
 臨戦態勢の気配を感じ取ったか、露骨に辟易…あるいは、もうすこし人間的な感情を覗かせたほうの少年が、ため息を吐く。

『少年』 :
「…やれやれ。どっちに向けた言葉か知らないからどっちも答えるけど、彼の系統に異性なんてものがあるかわからないし…」

『少年』 :
   ブラックドッグ
「僕も、電子操作絡みの女は御免だから願い下げだ。
 ・・
 同じは余計に嫌な気持ちになるからね───」

SYSTEM :
 バチバチと弾けた稲光が膨れ上がって、空間に“ねじれ”を生んだ。
 自己申告通りブラックドッグ、続いてバロール。
 赤方偏移が引き起こす重力異常が、その圧力を力強く自己主張しながらも、中から鋼色が顔を出す。

SYSTEM :
 …まずこちらが展開したものは、そもそもからしてゲートなどではない。
 モルフェウスの物質生成とも話は異なる。男はどちらの純血種でもない混ざりもの。

SYSTEM :
ポケットディメンジョン
 持ち歩きの異相空間から、あたりごと巻き添えにして引き摺り出されたのは…。
  フォールンマシン
 鋼色の戦闘兵器。少しばかり出来過ぎた、引き金一つで人を殺せる殺戮人形。

『少年』 :
「言い忘れていたが、見物料は“タダ”じゃない…」

『少年』 :
 ヒュロス              ガラクタ
「英雄の子なんて豪華な額縁貰っただけの量産品だが…。
 こちらは高くつくよ」

SYSTEM :
 鋼色の兵器が、動力部より唸り声を上げる。
           プラズマ
 窮屈な廊下を揺らし、荷電粒子をマウントした肩の砲口から収束させるその様子。
 AIの挙動ではない。誰の指/脳から発された意図で動いているかは明白だ。

SYSTEM :
 それだけではない。
 有機物と仮称し、植物のテクスチャに擬態していたものの正体、それは…。

 あなたが想定している程度のろくでもなさだったのか、どうか。

『怪物』 :
「ヒヒヒヒヒ…!」

SYSTEM :
【Check!】
 
Effect:【生命割譲】【????】【????】
Player:?????
Target:シーン

[Add's]
・肉体の一部をちぎって、動物や昆虫など、様々な形をした兵士を生み出す。
・詳細不明。


SYSTEM :

 うごめく植物とも言い難い魔手。葉を翼のように伸ばした昆虫もどき。
 そのフォールンマシンの周りにこぼれおちて、うごめく彼らは総じて生命だ。ただし………。
 ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 そのジャームから吐き出され、溜め込まれた膨大な生命のひとかけらだ。

SYSTEM :
     コロニー   プレデター
 彼自体が、生態系に対する外来種。
 その気になればいくらでも、成立しないキメラの系統樹を作り出し、生態系を書き換える。
  エグザイル
 暴れ喰う身体操作。

 この施設を襲撃し、作り替え、己のテリトリーに塗り替える過剰な余分を行使したのは、こちらだ。

『怪物』 :
「もー消化おわりだ…。
 でも、こいつらまとめて吐き捨てた分よりずっと、オマエのほうがウマそうだ…」

『怪物』 :
「なによりオモシロそうだ…。
 楽しみだぁ…! なぶり殺しにしてやる!」

SYSTEM :
        ・・・
 いまのはここの被害者というわけだった。
 伊達にどこぞのセルに悠々乗り込んで、生存者なしのレッド・ゾーンを作り出したわけでもないわけだ。が…。

SYSTEM :
 ………一番乗り気のほうが”直接”仕掛けてこないあたり。
 よほど言いつけが大事か、あるいは嗜虐心まで衝動に重なっているどうしようもない手合いか。

 わかっているのは、あちらが撤収前のひと当て/帰り道の拾い食い気分でも、それ相応の殺意を載せてあなたに矛を向けたことだ!

マキナ :
 ……なんだ、本体が直接向かってくるわけじゃないのか。堪えの利かない怪物と思えば、割とおりこうさんだね。
 その代わりに差し向けられるのは……位相空間から引き出された、私にとってはお馴染みの殺戮マシーン。
 プラズマ砲二門を備え付けた二脚歩行戦車。自律兵器じゃない、遠隔操縦タイプをラジコンみたく自力で操ってる感じかな。

マキナ :
 次いでそこを取り巻くようにぼとぼとと落ちてくるのは、カンブリア紀古生物を彷彿とさせる巨大節足動物。或いは、それ未満の何か。あの魔人の肉片から作り出されたミュータントってとこか。
 喰った人間を利用して作られた、自己の体を生命の海とする群体の切れ端だ。
 うへえ、きしょ。折角アマゾンに遭難せずに済んだと思ったらコレ? 元の素材のことも考えると猶更気色悪いな。

マキナ :
 お互い去り際に小手調べ、ちょっかいを掛けてずらがるつもりか。
 いいよ、データ収集にもならないぐらい、一瞬で蹴散らしてやる。
「それ、パパにプレゼントして貰ったのか知らないけどさ……」

マキナ :
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・
「何かと思えば、イマドキ博物館にも置いてない骨董品じゃん。
 こんな玩具は流行らないよ。おたくらの代わりに、一撃でオシャカにしてあげる──」

『怪物』 :
「ヒヒッ、言われた、いわれた!」

『少年』 :
「…安い挑発をどうも。その発想がすぐに出る程度には親想いのようで羨ましいね。
     ガーベッジ
 だがまあ、量産品には似合いだ」

『少年』 :
  ガーベッジ
「その量産品似合いの品で嫉まれる経験はそんなにしたことがないが、それ以上に時代遅れを嘆かれたのは初めてだったよ。
 …いまのがどういうつもりのフカシか知らないが、ますますこのまま”サヨナラ”とはいかなさそうだ」

SYSTEM :
 …あなたの視界に移る、彼自身の生体電流は二つある。一つはこの位置から遠すぎない程度に遠く、もう一つは目の前の大型二足歩行兵器だ。
 そして、口ぶりのわりに今の発言の何かが、十代らしくそれなりに“カン”には障ったらしい。澄ました態度は半分が建前だった。

『少年』 :
「目当てと違うが土産物には十分だ。
 あの女への文句とセットで持ち帰ろう。いいかい」

『怪物』 :
「証拠がちゃんと…のこるといいなぁ!?」

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
【Action!】
 判定が発生しました。 

SYSTEM :

[Action]
Order:謎の機動兵器を破壊せよ!
Detect:〈白兵〉or〈射撃〉or〈RC〉≧12

Success!:進行
Failed...:再判定

[Add']
・武器の「命中判定」は有効。
・『Failed...』の場合、このユニットは『命中判定:20』『ダメージ:2d10』の射撃攻撃を行い、その後判定目標値が[2]ずつ低下する。

SYSTEM :
【Action!】
 判定内容を確認しています。
 使用する判定を宣言してください。

マキナ :
GM,EEの<セキュリティカット>で判定して補正とかつかない?

GM :
(ぱら…とページをめくる音)

GM :
これか…

マキナ :
至近距離で妨害電波をぶち込んで、スマートに無力化させたいんだけど

GM :
建物、というわけでもないんだけど…
まあ彼の動かしている機体は記述の通り、生体電流絡みの遠隔操縦だ

GM :
いいとも。実はちょっとした理由もある、判定に+2扱いにしよう。

マキナ :
やりぃ。あともう一つ、このEEは<RC>か<知覚>か選んで判定してもいいってことなんだけど
知覚、使わせてもらっていいかな

GM :
…おや? 構わないけど…

GM :
目的を明記したうえじゃなかったらちょっとな~! ってところだが、
今回は事前に「そういうエフェクト使います」で僕が加点をしたうえだから良しとしよう

マキナ :
どうもー。手段としては敵の命令系統を把握して、ピンポイントでつぶしにかかるってところで

マキナ :
メタ的に言えば知覚の方が都合いいんだよね(LV1+リサーチャージャケット達成値+3+もらったボーナス+2)

GM :
ほかに宣言するEE等はあるかな?
なければ正式に判定を変更したものとして進めよう

マキナ :
十分十分。許可ありがと

SYSTEM :
【Action!】
 判定内容の変更を確認しました。
 宣言を確定させてください。

マキナ :
8dx+6 (8DX10+6) > 9[1,1,1,3,5,5,7,9]+6 > 15

『少年』 :
 ………! へえ…

『怪物』 :
 ヌ………!

マキナ :
セキュリティホール、ガバガバじゃん。
だからこうやって利用されるんだよ――、っと!

SYSTEM :
【Action!】
 判定の成功を確認しました。

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
 射程距離にして20m前後。
 おまけに手狭な連絡通路。

 十分な有効射程。
 肩部のプラズマ・クラスターユニットが視界を丸ごと焼き尽くすための予備動作が眼前で行われる最中でも。
 常人に…否、凡そ超人と名状できるオーヴァードにとってしてみても、不可能ではないが、易々と詰め切って対処できる距離ではない。

SYSTEM :
 ワンアクション
 一工程で収束され、放出される、人に向けるにはあまりに罰当たりな神の雷───。
             ENキャノン
 それが人の手に収まり堕した殲滅兵器。

 ブラックドッグ・シンドロームの利点のひとつである近代兵器の昇華を、
 バロールの空間歪曲とハヌマーンの制御性能を以て必殺に変えている。

SYSTEM :
 だが、言い換えれば単品ではその程度だ。

 問題は、発射体制に入ったソレが主砲というなら、周りに揃っている疑似RB体。
 それはその発射までに生じるラグを補うサブであり、まさに肉の盾だった。

『怪物』 :
「グゥゥゥゥオオオオアアーーーーーッ!」 

SYSTEM :
                              ウォークライ
 宿主の嗜虐心と、まだ見ぬ黄金の体験への喜びを綯い交ぜにした戦いの雄叫び。
 肉体変化を主とするエグザイルらしからぬ剛性はキュマイラのものだが、
 ほぼ生命としての本分を全うできるかも怪しいようなモノとて刺激される野性というのはあるらしい。

 2秒後に殆どがフレンドリーファイアで掃討されること上等の、使い捨ての肉のスクラム。

SYSTEM :
 あちらの、あなたの得物を見たうえでの判断は、打ち合いへの誘導。
 あるいは、それを見せつけることで“食らう”間合いに相手を引きずり込むこと。
 示し合わせたわけでもないチームワークは言い換えると相互利用。数と間合いにモノを言わせた飽和攻撃。

SYSTEM :
 ………だが………。

マキナ :
 積んであるENキャノンは古臭いけど、別に古かろうが新しかろうが銃は銃で、兵器は兵器だ。たとえこの時代ですら古臭いパーカッションリボルバーでも、撃鉄一つ落ちれば一人の命が容易く吹っ飛ぶ。
 ましてこれ、ふつうは人に向けてぶっぱなす代物じゃない。当たればオーヴァードであろうとも灰となる。リザレクトの性能ってのには個人差があるけど、基本、当たればそれも間に合わない。

マキナ :
 まあゴツいだけなら、発射工程までに距離を詰めて射線から外れれば済むけど、ご丁寧に護衛までつけている。
 おまけにこの触手も纏めて灰にするつもりだから、発射直前の隙もない。教科書通りの戦車運用だ。どこまでも律儀な奴……

 どこまで意図したかは知らないけど、お互いの利益が一致した共生関係ってわけだ。中々面倒な布陣だけど──

マキナ :
 残念ながら……
   デウス ・ エクス ・ マキナ
 この"機械仕掛けの神"を前に、そんなものを差し向けた時点で詰みだ。

 I Have Control
「"つ か ま え た"」

マキナ :
 パリッと翳した掌が紫電をまとい、電磁波を迸らせる。
 まるで何かを掴むかのように、広げた掌を握りしめると同時、異変が生じる。

 一工程を済ませ、今激発しようとするENキャノンの方向が、相手の思惑と全く異なる方向へ歪み始める。

マキナ :
「出力調整、射角調整。こんなところかな……っと」
          プロンプト
 すべては私の描いた筋書きの通り。
 数秒後には、機体から放たれる砲撃は私だけに当たらない絶妙なバランスで周囲のミュータントを消し飛ばし……
 同時に制御系に無理な挙動を敷いた結果として、その巨体は自らの反動により倒れ、両の砲身は熱暴走を起こして自滅するだろう。

マキナ :
 ──私には見えている。電子の波とそれが帯びた意味のすべてが。
 そして見えているなら、割り込み書き換えるのは容易いこと。

 恐らくあの生意気なヤツから放たれた命令信号を、横から割り込み奪取。さらにその上から無茶な信号を送り……
 A C S F C S
 姿勢制御と射撃管制を同時に狂わせ、自滅を強いた。

マキナ :
 すなわち「Telecommunications Electronics Material Protected from Emanating Spurious Transmissions Attack 」。
 TEMPEST Attack
 "電磁波傍受攻撃"である。
 
 やってることはシンプル、金と時間と労力を掛けて、現代でも行われるやり口の一つ。そいつを片手間に行えるのが、私の胸の内で鼓動を続ける神の権能だった。
 要するに…あんたとは相性最悪ってコト!

SYSTEM :
コントロール・ジャック
 制御奪取までコンマ数秒。
 加速も減速もせず、ノイズとしてさえ認識せず、スムーズに行われる異常事態。
 その根本に気付いた方、理解せずとも“予想”と違う動作の撃鉄が上がったことを認識した方、どちらも対処方法はない。

『怪物』 :
「ヌ!?」

『少年』 :
「同種だとはわかっていたが…」

『少年』 :
「そうきたか、意外にへそ曲がりな真似をする───」

SYSTEM :
 それもそのはずだ。
                 インスタントウェポン
 その兵器自体、このFHセルから拝借した即席武器に過ぎない。
 彼の生体電流の二つに一つ、片方が本命であり、信号発信の余地もない代わりに…。
 もう片方は制御系統を掌握して差し向けた代物。つまるところ、もともと同じようなことをFHセル全体に向けてやったのが彼だ。

 片方が生命の、片方が兵器の火事場泥棒。少なくとも攻撃手段に使ったものについては、そのように結論できる。

SYSTEM :
 となれば、より強い生体電流に軍配が上がる。
 あなたの心臓は蓄電されたEXレネゲイドと、それを覆う機械仕掛けのメガエンジン。
     ・・・・
 仮に彼に対抗手段があったとしても、それを使うのは今ではない。

『少年』 :
「(だが…)」

SYSTEM :
 こいつは本当にそこいらのオーヴァードか? と。
      ヒュロス
 曰く他称で“英雄の子”、自称でガラクタ。その少年の脳裏を過る冷静さとは別の単語。

 表情の見えない無機質さが一瞬剥がれた。持ち物を取り上げられた子供のそれというよりは、手段の指し示すものに向けた人間味。

『少年』 :
TEMPEST
「電磁嵐か、わかっててやったなら───」

『少年』 :
「見た目以上に意地の悪いことだ───!」

SYSTEM :
 言い捨てるような客観的負け惜しみ。

 コンマ数秒、発射体制と同時にあらぬ方向に光が迸る。
 人ひとりに向けるような兵器でないそれは、まさに“向けられるべき”ものへ矛先を向けた。

 威力は───考える余地もない。
 殆ど“そちら”を余波で掃討すること前提の仕掛けだ。照準の中心に彼らが据えられたなら、どうなるかなんて分かりきっている。

* :
「──────」

SYSTEM :
 瞬きのうちに一帯を薙ぎ払い…。
 鮮やかに自壊。

 あなたの、有言実行だった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 爆ぜ散る火の粉と、かつては別の生き物だった混ざりもののかけら。
 それが火をつけるのに合わせて、舌打ちする少年と、大袈裟に頭に手を当てる、未だ余裕そうな怪物のほう。

『怪物』 :
「フヘ…ヘヘヘ。
 せっかく食ったのにぜんぶムダ!」

『怪物』 :
「…おれはしつこいぞ…。おれの獲物、おれの一部に手を出したもの。おれより強いもの! ぜーーーんぶ許さない!」

『怪物』 :
「だが、ヘヘ…ウヒヒヒ!」

『少年』 :
「………。いや」

『少年』 :
 ・・
「撤収だ。
 業腹だが、顔を見られる程度で済ませておこう」

SYSTEM :
 目論見の出鼻を挫かれたにしては不自然な余裕と。
 それを諫める気がないにせよ、おそらく追撃の姿勢を早々に割り切ったほう。

 前者が後者に「本気か?」とでも言いたげに、そしてあまりに無防備に首を傾げ始めたが、少なくとも“二の矢”は目に見える範囲にはなさそうだ。

SYSTEM :
 あるいは、持っている方がそれを放つ気もない、というべきか。

マキナ :
「……」

 息をついて、爆風で乱れた髪をかき上げる。
 一歩も動かず、予定調和で殲滅を終える。このぐらいはとーぜん。
 なにせ向こうの気が変われば、もっとハードワークになるんだから。省エネしていかないとね。

マキナ :
「何、もう終わり? こっちは玩具の自慢がてら、もう少し遊んでいってもいいんだけど──」

 お互い、ろくに力を見せず終い。言ってみればありあわせのモノをぶつけ合って、手の内を明かさない範囲で小競り合いを制したに過ぎない。
 余力は十分、有り余るほど残ってるけど……いや、だからこそか。怪物の方は相変わらずだけど、男の方からもともと希薄だった攻めっ気が、今は完全に消えている。 

マキナ :
 もう少し遊んで情報を引き出したいとこだけど、こちらも深追いは厳禁。タイマンならともかく二対一は、今の装備じゃキツいところだし。
「ここらでお開きなら、メアドでも交換しとこうか? まだ、うちはコードネームも聞いてないしね。
 そういう仕事の依頼なら請け負うよ、今ならクーポンもあげちゃう」
 ……あれ、この時代はSNSアプリの方がよかったかな。流行の更新が早いんだよね、このあたりの時間層。

『怪物』 :
「ウハハハ! おまえ”ぶがいしゃ”じゃないのか?
 あそんでてイーのか? それともまだホンキでにげるキなのか?」

『少年』 :
「人の話を聞いて…イヤ、期待するだけムダだったか。
 生憎だが僕は仕事の依頼をするほうじゃない。される方だよ」

SYSTEM :
 たかが小競り合い。あちらにとってもあなたにとっても、恐らくは何か隠し玉がある。

 ともすればお道化ているようにも、それが丸ごと本音の理性なき短絡さのようにも見えるジャームのふるまいの根底は“それ”だ。
 そして、同時にどちらも仕掛けようとしないのは、それが“されど”の小競り合い。

 あまりもの以上の本腰を入れたやり方が、悪代官に対する印籠めいて機能するほど軽い相手ではないと見たのか。
 あなたに本当の意味で敵意のようなものをまとった方の判断こそ、まるで自分自身に言い聞かせるような冷静/消極さだった。

『少年』 :
      ・・
「それに………迎えだ」

『少年』 :
「──────ジュピターXIII」

SYSTEM :
 その呼びかけに答えて現れたものも、奇妙なことに、いやさ皮肉なことに。別の人形だった。
 あなたは彼の引っ張り出してきた兵器を玩具と呼んだが…。
                  ハートレス
 彼の身の回りにあるものは、徹底的に心なき人形だらけだった。

『ジュピターXIII』 :
『──────』

『ジュピターXIII』 :
『御呼びとあらば即参上。即参上。
 ルーン
 あなたのジュピターXIIIでございます!』

SYSTEM :
 一目見ただけで分かる鋼色の戦闘人形。
 温かみを一切持たない戦闘兵器が、親しい隣人のような冗談じみた口調で、急ブレーキ音と同時に何処かから現れる。

 壁越しの出現から、そのシンドロームは少なくとも片方エグザイル。
 だが、脈絡のなさと佇まいは、むしろこちらが彼の護身刀だ。

『ジュピターXIII』 :
『しかし坊ちゃまこのお方どちらで?』

『少年』 :
「知らないな。強いて言うなら…。
 意地と間と運は悪そうだよ」

『少年』 :
「それより、帰るよXIII。
 手持ちがカラになってまで、下手を打ちたくも、ぐだぐだやりたくもない」

『ジュピターXIII』 :
『うう~む…』

SYSTEM :
 主人を守るナイトには、あまりに熱がない。
 着装したブレードは攻撃用のものではなくどちらかといえばエネルギーの媒介用だろうが、
 殺傷能力はある。その刃物を、おそらくどのような会話中からでも、命令/判断によって振り下ろすだろう。
 饒舌で親しげで、ただ、一目で分かる“終わったもの”、あるいは命ですらないものの気配がするのは此方だ。

 ついでに言えば、先ほどから伸びていたもう一つの電波…。
 本命はこちらだ。

マキナ :

「……!」

 チッ、もう一息吹っ掛ければあっちもエンジン掛かりそうなところだったのに。
 ずっともう一方と通信してたように見えたけど、どうやらコイツとらしい。こっちはさっきの玩具と比べてもよほどに金のかかった逸品だ。
 サイボーグ     ヒューマノイド
 戦 闘 機 人じゃない、自 動 人 形のジャーム。一から十まで被造物でありながら、キッチリレネゲイドの恩恵に与っている。
 
 愉快な対話型インターフェイスを積んでるようだけど、ロクに話も通じそうな気配がない。

マキナ :
「次から次へと、金掛かってそうなのがゾロゾロと。どこでそんなの買い集めたのやら」
 状況は3対1。こちらとしてもあんまり長居したい状況じゃない、お互い見て見ぬふりをして手打ちとしたいところだろう…………

マキナ :

 ……なんていうのは弱気弱腰の発想だ。相手の立場で考えれば『それだけ優位でもいちいち消耗したくない』が本音のはず。
 機が来てるときは、ガメる!

「──ますます、気になっちゃうじゃん!」

 さりげない素振りで伸ばした左手の甲、《プロンプター》の内蔵されたガジェットが上にスライドし、仕込み武器の銃口を覗かせる。
 不意を打つ形でスタンアンカーを射出、捕縛に入る。
 十中八九、本来のスタン効果は望めないだろう。けど、直接接触による干渉なら何らかの形で個人情報につながるデータをかすめ取ることはできるはず!

SYSTEM :
 その数的優位で仕掛けようとしない、ということは…。
 単に”余りもの”の片付け方が手を焼くと判断したが故の臆病な消極策とも取れようが、
 なるほど確かにあなたの考え方は外したものではない。

 片方の“いざやり合えば負けない”という自信の根拠と…。
 片方の“いま誰かに見せたくはない”という警戒のもとに隠された虎の子は、恐らく全くの同類だ。
 早々に撤収の姿勢に入った少年と、やや不服気な怪物と、そして前者が持ち込んだ本命。
 彼らのペースに置き去られる前に仕掛けたのは、彼らのうち誰かではなく………あなただった。

SYSTEM :
 しかし射出されたアンカーは………。
 確かにその刃物で弾かれたとて、直前コンマ数秒程度の接触に成功しておきながら、
 おそらくあなたの期待する形を掠め取ることはできなかった。と、いうのも。

SYSTEM :
【CAUTION!】
Effect:【????】
Player:”????/ジュピターXIII”
Target:自身

[Add's]
・???と現実世界の双方に───
・条件を達成していない相手からダメージを─── 

SYSTEM :
 接触したにも拘らず、さながら霞を掴むように朧気な、手ごたえの無さ。
 実際にブレードではじいた音がし、実体が確かにそこにいたと五感が捉えるにも関わらず、おしゃべりな自動人形への接触が叶っていない。

SYSTEM :
エグゾースト
 排気の分類には確かに、斯様な自己保存能力に類するものがある。
 あるいはそれこそが“本命”の所以なのかもしれなかった。

『ジュピターXIII』 :
『あ、申し遅れましたワタクシ、登録番号ジュピターXIII。
 ボディにはUGN式の疑似RB個体ブラザーフッドA-01を、あ、ご拝借中!』

『ジュピターXIII』 :
 ちなみにこれ御近づきの証のミニジュピターくんです。
 光り、喋り、寝込みを襲い!
 個人情報を漏洩して勝手に日本円10,000以内の買い物を行います。

『ジュピターXIII』 :
『お問い合わせは1200-414-141、いつも明るく!
    Nameless
 我々は”刻知らず”、お願いごとはリエゾン───』

『少年』 :
「───XIII」

『ジュピターXIII』 :
『───。畏まりました』

SYSTEM :
 終始饒舌なくせに平坦な対話インターフェイスが、いよいよ言葉選びも平坦になったところで、あちらの動きは、あなたのちょっかいを受けて尚(あるいは“受けた”からこそ)初志貫徹。即ち逃亡だ。

 揃いも揃ってエグザイル、神出鬼没の姿晦ましはお手の物。逃げるまでに時間は掛かるまい。

マキナ :
「っ」

 ナニ、今の感触。少なくとも視覚センサーでは間違いなく敵の躯体に触れていたはず。なのに拾える情報が一つもない。接触回線を電磁波シールドで防がれたというのも、たぶん違う。
 ……当たってない? 今ので?

マキナ :
 今の感覚は何だったのか、よくはわからないけど……後でログを検証してみるか。ちょっと偶然とは思えない。

「いらないっての。ミニでも実物でも。
 そんなもんよりそっちばっか見物料取ってさ、個人情報よこしなよ個人情報!」

 さっきかなりよからぬ名前が聞こえた気がするけど、それなら猶更だ。

『ジュピターXIII』 :
『キャッ! 著作権何するものぞのこの姿勢!
 さてはお嬢様…』

『ジュピターXIII』 :
『Paparazzi…』 

SYSTEM :
 続く言葉がリエゾンの“どちら”だったのか。よからぬ名前に対抗したよからぬ押し売り分の仕返しを耳に挟みつつ…。
      ユーピテル
 少年は自称『木星』な自動人形もろとも、バロールの空間転移で。
 もう片方は伊達に自らの色に染め上げたわけではない施設の有機体に潜り込む形で、さながら蜘蛛の子を散らすように去っていく。

『少年』 :
「負け惜しみの一つでも言ってやったらどうだい」

『怪物』 :
「ウヒヒッ! まけてないからな!
 さいごにくったほうのカチ…だ!」

『怪物』 :
「それに…“ぶがいしゃ”! 
 やっぱりいた。こうでなくちゃ…エヘヘヘヘ…!」

『怪物』 :
「ぜったい食ってやる!
 いいか、ぜーーったいにだ───!」

SYSTEM :
 負け惜しみを”言わせた”方こそ言い出しっぺのわりに不服気で。
 分かっていて変わった方こそ、目論見がご破算のわりには楽しげだった。

 しょせんはジャームの思考だ。そう言えば、それまでのものだったが。

SYSTEM :
 ぐにゃりと、溶けていく樹木のテクスチャ。彼自身の撤収に合わせて、尾を引くようにレネゲイド体が何処かに行く。
 レジェンズ     コロニー
 何かの伝承か、はたまた群体か。
 得体のしれない生き物の笑い声と、あれだけ饒舌だったわりに目的遂行となると一言も言わない自動人形の駆動音だけが耳に留まった…。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 嵐の過ぎ去った後で、既にあなたの視界に残るレネゲイド体が引き始めている。

 所属不明の、少なくともこの時代の組織群とは折り合いの悪いだろうジャームとチルドレン…。

SYSTEM :
 だが、肝心なことはある。
       ・・・
 そんな彼らの探し物。
 それがあなたの探し物の片割れと一緒なことだ。

マキナ :
「──ふぅ」

 周囲に残ったワーディングによって放散したレネゲイド反応が引き始める。それは間違いなく、三人……いや一人と一匹と、一機か。奴らが残らず去っていった証だ。
 緊張の糸が切れて、どっと疲労が押し寄せてくる。脳内麻薬をドバドバと出してごまかしてたけど、あのまま気が変わってフクロにされてたらと思うとゾっとする。

マキナ :
 予想外の会敵だったけど、面倒なのに目ぇつけられちゃったな。……いや、いずれにしたって衝突してたか。
                サイバースプライト
 何せあいつらの狙い、どう見ても"電子の妖精"っぽいし。

  サイバースプライト
「……"電子の妖精"ね」

マキナ :
 FHって連中はピンキリで、愚連隊レベルのものから政財界を牛耳る巨人、果ては世界を裏で操る秘密宗教結社に至るまでそれはもう幅広く活動してるらしい。
 その中の多分ピンよりの、たんまり財力と技術力を持ったセルが、あんな与太話を信じて追っかけまわしてるのには、何か絶対理由がある。
 一体何者なの?

マキナ :
 ……まあいいや。今は、とりあえず……
 デバイスを操作して、時空通信機アプリを立ち上げる。
「ウェンディ、ちょっと頼まれてくれる?
 何件か気になるワードが出てきたから、調査お願い。それから、ログの解析も」

マキナ :
 NAMELESS
「『刻知らず』ってセル。多分リエゾン絡み。ロードじゃない方なことを祈りたいね。
                        ヒューマノイド
 それから、交戦時のログも。特にワイヤーが、あの自動人形に触れたあたり。ちょっと何か引っかかるんだよね……」

SYSTEM :
 再び開いた通信機から、ウェンディの声が雑音混じりに響く。
 ベースからのナビが、あなた同様に周辺状況の探査を走らせるのに平行しながらのものだった。

『ウェンディ』 :
〈はい。調査、ですね。…〉

『ウェンディ』 :
                   オートマタ
〈こう言うのは難ですが、後から来たほうの自動人形と、最初にいた方のレネゲイドビーイング…。
 あちらは特に難物であるように感じました〉

『ウェンディ』 :
〈リエゾンの意味がどちらにせよ…。

 どうも意識的に“電子の妖精”をカモフラージュに使っている節もありますから。
 先ほどの交戦ログ込みで、そちらの結末を狭めない程度に調べておきますね〉

SYSTEM :
 確かに接触はした。実体もここにあった。
 まして電子の世界において、あなたは豪語するコードネーム通りの存在だ。
 コンマ数秒程度もあれば、狙いを絞った程度の情報量は容易い。

 ………ところがそうはならなかった。その交戦時のログがあなたの違和感以上の内容を引き出せるかは、これからのウェンディにかかっている、というところだ。

SYSTEM :
 ………ややあって、そのウェンディが何か躊躇がちに咳払いした。

『ウェンディ』 :
〈ところで…そのセルを去る前に伝えておきたいことがありまして〉

マキナ :
「ん、よろしく。
 正直三体目が出てきたときはギョっとしたよ。まだこちとらサブアームの調整が済んでないし、長期戦出来る装備がそろってないんだから」

 あの場で殊更に自慢のLiar Gunをぶっ放さなかったのは、そういう理由もある。一撃必殺、なれど一射一殺。手数が足りないどころの話じゃない。

マキナ :
          ・・・・・・・
 まあ、もしかするとそれ以前の問題が、うちらの目の前に聳え立っていたって可能性もあるんだけど……

 まあ、それはそれとして。随分改まった様子のウェンディが、きまずそーな眼差しでこちらを見つめてくる。
「あん? 何?」

『ウェンディ』 :
〈いえね…その“刻知らず”を名乗るアンノウンの一人が…。
 ちょっと近づいている何かがいる、というような発言をしたあたりで、探査範囲を広げて接近するオーヴァードを探っていたんです。
 先の自動人形…ジュピターXIII? というのがなぜか引っ掛からなかった事と言い、よけい気にかかることはあるのですが…〉

『ウェンディ』 :
〈………一週間前の「さんぶんのいち」を避けた、という話は撤回したほうが良さそうな気がします。
    ・・
 それ、彼女です〉

SYSTEM :
 なんとなく気まずそうに“コトダマ”の成立を伝えてきたわけだが、彼女、というのは…。

SYSTEM :
 いずれの時代だろうとなぜか、だいたい3回に1回の頻度で現れ…。
 オーバークロックによりベースを経由して該当する時代に訪れた時現れるもの。

 最古のRBと知られ、どの時代にも類似する個体が存在するという…通称”プランナー”であった。

SYSTEM :
 …この滅多に時空移動犯罪者が訪れない当代においても、
 ゼノスという組織が存在し、その組織がクロノスガーディアンを、仔細を知らぬままコンタクトを取り便宜を図ることがあったという。

 あなたも恐らく、この時代に訪れた回数は一度や二度ではない。片手指以上両手指以下だ。
 そして訪れた“時期”は毎回違うのに、第一声はだいたいこちらであり、程度は違うがだいたい事情を把握している。
      スポーン
 極めつけに出現地点に出待ちするソレはまさに、初心者狩りか不正者の挙動であった。

SYSTEM :
 つまり今回は比較的遅いほうだが。

 どうも、明確に“認識してほしいもの”をあなたが認識したタイミングを見計らったかのような遅刻の仕方だった。

マキナ :
「…………」

マキナ :
「……マジ?」

マキナ :
 っていうか、あの怪物が言ってた近づいてる奴、こっちの感知範囲の外だろうなと思ってたけど、よりによってそいつかよ!
 プランナー。ある時代は八尾比丘尼、ある時代はテミス、ある時代は何仙姑。全部が全部異なる個体であるようで同じ記憶を共有してるだとか、地球圏内に漂う情報集合体存在もあれがルーツとか、あるいは原形であるとか言われてたりする。
 要するに基本的にかかわりたくない、できれば顔も見たくない筆頭。

マキナ :
 どの時代にいてもこちらを認知して、そこそこサポート寄越してくれたりもするのは結構なことだが、欠片もありがたいとは思わない。
 だって基本的にこいつがかかわろうとする事件にロクなもんないから。本人からすれば数ある手札の内と思って適当に拾ってきてるんだろうが、拾わされた身分からすろと自力解決できないようなコトの渦中に放り込まれるのと同じだ。

マキナ :
「……今すっごくうっちゃって帰りたいんだけど。
 駄目っていうか、シカトこいたら苦労するのうちの方なんだよね……その反応、まだこっちに近づいてんの?」

『ウェンディ』 :
〈………〉

『ウェンディ』 :
〈入口で“ぴた”…と、反応が止まっていらっしゃいまして〉

マキナ :
 

マキナ :
「いやすぎる……」
 万が一気のせいとか偶然とか同じ方向向いてるだけとか、そういう期待はコナゴナに打ち崩された。

『ウェンディ』 :
〈(ふ、普段以上にゲンナリしてる…)〉

『ウェンディ』 :
〈ただ………。
 ・・・・・・
 危害を加えると決めた時の彼女、あるいは彼女と共通点を持つRBは、迂遠な手段や躊躇いを持ちません。
 そこで待っているあたり、最低でも害意はないかと〉

マキナ :
「まあ、そりゃそうなんだけど……」

『ウェンディ』 :
〈はい。害意がないから困ることもありますけど〉

『ウェンディ』 :
〈このタイミングで接触しようと思い立ったというなら、よほど行き当たりばったりに見える時の彼女でない限りは…。
 案外、渡りに船かもしれません〉

SYSTEM :
 ちなみにそれはそれとして何を考えているかは普段から分からないタイプであり、
 あなたの知っている限り、彼女が直接“頼み事”や”お手伝い”を申し出てきた時の事件は、想定されている規模から一段か二段ほど剣呑さが増している。

SYSTEM :
   タイムスケール
 加えて時間感覚の違う生物なのだ、根本的に。その時の最善と”彼女が思っている最善”が違うことだって儘ある。
 今までそんな事例は(幸いなことに)なかったが、そうした危険性自体はマニュアルとして保管されていた。

SYSTEM :
 もし…本当に、本当に見なかったことにしようと思うのなら、出来ないことはない。
 どのみち侵入の仕方も強引だったのだろう、今後復旧の目途もないセルのなれの果てだ。後から生まれた抜け道の一つや二つあるかもしれない。

マキナ :
「渡りに船ねえ……」
 確かに最善手を、先を見越して打つタイプではある。
 そうはいうけど、めちゃくちゃ大局的に見ての最善だ。それは百年先か千年先かもわからないし、地球の歴史を俯瞰できるようになって初めてその意図に気が付いたような事例さえある。
 幸いそういう貧乏くじ直接引いたことはないけど、引かされるリスクは常にある。
 デウスエクスマキナ
 "凡て世はこともなし"を掲げてる私だけど、だからって千年先の世界の安定の捨て石にされるのを素直に受け入れられるような聖人君子じゃない。

マキナ :
 結局こいつの射程に入った時点でもう信じて突っ走る以外にないんだ。
 幸い、うちらはネタバレを知ってる職員と連携できる。そのウェンディが積極的に止めないってことは、まあ、不都合な展開の布石にはならないハズ……

「わかったよ。行けばいいんでしょ、会えばいいんでしょ。
 はぁ~……」

SYSTEM :
 ナビゲートを務める職員は幾人か例もある。彼女は基本、個人と全体を天秤にかける行動そのものに消極的な類だ。

 まったくしない、ではないが、少なくともマキナのタスクに参加している時、ウェンディがそのような素振りを見せたことはない。

SYSTEM :
 そもそもの初邂逅に居合わせたとあっては、特に。

 …あるいはそもそも“プランナーが直接出向きたい”理由がある時点で回避不能だと、
 あなたに負けず劣らずのレベルで盆に返らない覆水を儚んだだけかもしれないが…。

SYSTEM :
 そも、プランナーにそこまで悪印象を持たない者に言わせてみれば。

 彼女をふつうの価値観における善意や悪意で測り、その感覚で抱き込むほうが間違いなのだとか。
 彼女にとっての善の物差しは、どのような時代だろうと一つしかない。
        レイヤー
 その当時当時の時間層においては理解できずとも、全体の一枚絵として切り取らずに眺めれば行動に一貫性があるからだ。

SYSTEM :
 そして、それは悪の物差しも同様に。

 だから…あなたの位置が後者ではなく、前者の余地があるからいちいち接触しに来るのだ。
 あなたの存在から生まれる”揺らぎ”を期待するかのように。あるいは、いま地球の霊長種として君臨する生き物とは違う価値観からくる、善意の発露として。

SYSTEM :
 ウェンディの“お気をつけて”の言葉を最後に、通信を一度切る。

SYSTEM :
 ともかく…。
 ウェンディがあなたにドッキリ大成功、などと看板を向けるほど徹夜と過労を起こしていなければ、その話題の人(人?)は入口であなたを出迎えているはず。

 来た道を辿った、その先には…。

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 …果たして。
 推察の通り、寒空をものともしない態度で、そのプランナーが立っていた。

SYSTEM :
 知性と意志を持つレネゲイドウイルス、“レネゲイドビーイング”を集めて設立された組織「ゼノス」のリーダー。
 現在世界で確認されているRBの中ではもっとも早く自我を持った彼女が、いつ、どこで、何を起源として生まれたのかは定かではない。

SYSTEM :
 神々と呼ばれるほどの超常現象の担い手が生きていたトロイアの戦争、オーヴァードがまだ神秘であったブリテンの聖杯を巡る旅、怪異であったころの平安の都…。
 科学万能の影に生まれた冒険譚、そして遥か彼方の未来においては0と1の数字の羅列が作るデータの中。
 名も姿も形も違えど、彼女の影はレネゲイドの存在の傍らにいつもいた。

 あるいは、誰もが知らぬ“この先”においても。

“プランナー”都築京香 :
「お久しぶりです。ああ、いえ…」

“プランナー”都築京香 :
「…初めましてでしょうか?」

SYSTEM :
 それとも“お疲れ様です”のほうが望ましいでしょうか、と嘯く様子は。
 基本的に「三回に一回」を果たしたその段階で最初に切り出してくる挨拶だった。

 いつ、どの時期の“あなた”/クロノスガーディアンか定かではなく、あるいは、その記憶の残り方自体が非常に特異なのかもしれない。
 掘り下げたところであなたには考えるだけ憂鬱(?)が加速する余談だ。

マキナ :

「あっはいご無沙汰してます 勘弁してください」

 わざわざ終わるの待ってここに来るなんて、回りくどいね。いつもみたく最初から会いに来ればいいじゃん。

“プランナー”都築京香 :
「本音で通すことは好ましくもありますが…。
 人間社会では使うべき建前と本音が逆ですね」

マキナ :
「ン゛ン゛ッ」
 咳払いしてマインドセット。いつもの調子を取り戻す。取り戻せ。

マキナ :
「……で。細かいツッコミは抜きにして、とりあえず要件を聞かせてほしいんだけど。
 私と面識あるにしろ、初対面でも伝聞で知ってるにしろ、今わざわざ会いに来たってことでいいんだよね?
                 レイヤー
 私がクロノスガーディアンで。違う時 間 層から来た連中を追ってここまで来てることを、知ってるうえでの話だと思っていいんだよね、いまの『プランナー』は」

“プランナー”都築京香 :
「ええ。
 サイバースプライト
 “電子の妖精”…彼女を追っているだろう点を含めて、多少のことは」

“プランナー”都築京香 :
「ですが、事の切欠は自らで掴んだほうがよいかと思いまして。
 出来れば早いうちに意思の疎通を取っておきたかったところですが、まあ、遅きに失した…ということではないでしょう」

SYSTEM :
 概ね直接的に言わないだけで肯定だ。

 単に無機質なだけならまだしも、彼女には彼女なりの物差しと好悪がある。
 今までの出待ちはその彼女なりの幾許かの悪戯心と、繰り返すが、彼女なりの、レネゲイドが学習した善意から来るものだった。

SYSTEM :
 言うなれば…。
 ・・・・・・・   ・・・・・・
 どちらでもよいなら、なるべくよい、に。だ。

SYSTEM :
 そしてこの接触はその”どちらでもいいから選択肢を持たせてあげよう”という類の接し方ではない。
 明確に目的があってあなたにコンタクトを取りに来ている。その目的も…。

“プランナー”都築京香 :
「ええ。考えることは同じというべきか、だから同じ手を取ったというべきか…。
 その彼らが追う“電子の妖精”について…正確には、“電子の妖精”を追う彼らについて、話があるのです」

“プランナー”都築京香 :
「電子の妖精は、どうにも、人の営みを辿って動く…。
 事件が起きるのはその“序で”か不可抗力です。
   ここ            
 既に中国にはいません。おそらく、合衆国のほうにそろそろ出る頃合いなのですが…」

“プランナー”都築京香 :
「………その合衆国での“探し物”。やや不承不承ぎみに付き合っていただいている方がいるのですが…。
             レイヤー
 あなたが追うような、遠い時間層の方々の思惑までもが混ざるのであれば、少々困ったことになりそうでして。
 彼らの伝手との橋渡しをする代わりに、この導きに耳を傾けてほしいのです」

SYSTEM :
 …彼女の言い分は。ものすごくざっくりと口にしてしまえばこうだ。

 あなたと私は概ね似たようなものを探している。
     ゼ ノ ス
 あなたは自分の組織/自分の伝手を、こちらはあなたを。お互いに借りませんか、だ。

“プランナー”都築京香 :
「先になぜ、を問うかと思われますので答えますが…。

 私、もの探しは得意な時とそうでない時があります。今回は後者なのです」

“プランナー”都築京香 :
「それに…あなた自身も、ここでどなたかとお会いしたでしょう?
 ならば今はそうするのが、お互いにとって都合のよいことかな、と考えまして」

マキナ :
「……余計なお世話だろうけど、そういうやり方相手選びなよ。大抵の場合は利で動いてくれるけど、そーでもない奴は想像以上にいるもんだから」
 
 どこまで掌の上なんだか。こちとら利を、実を取るタイプだから、乗ってやるけども。

マキナ :
「……理由や理屈はわかったよ。さっきのに続いてあんたもやってきたって所から、今度のヤマがとびきり苦労する案件だってことは察しがいった」

マキナ :
「いいよ。こっちも万全を期したいところ、後ろ盾が出来るのはありがたい。
        ・・・・・・・・・・・・・・・
 必要ないけど、どっちでもいいならなるたけ良い条件を揃えさせてもらおうじゃない」
 ──それに……
 前みたいな結果になるのは、こちらも御免だ。手札は増やせる限り増やして、対応していきたい。

“プランナー”都築京香 :
「ええ。だから選んだ…というには、仰る通り、すこし性急ですとも。
 利の上ではわかって頂けていると思うので、その採点は私なりに受け取っておきますが」

SYSTEM :
 意趣返しを混ぜた言葉にも、彼女の表情は動かない。文字通り幅の広い想定の中だからか。
 あるいは、もうひとつ理由がある。

 このごろの…20XX年の“プランナー”は揺らぎを容認する傾向にあるとも言うが…。同時に全く変わらない部分として、自分の物差しで『排除』を定めた時の対応には一切違いがない。

SYSTEM :
 つまり“YESを言いたい状況にしてから話す”などというやり口自体が、どちらかと言えばそちら側だ。
    ・・
 よほど排除したいものがいる時の仕草と言える。

SYSTEM :
 その答えも本人が言っている。
 自分が直接動くと”それ”が気取るからだ。あなたの了承と要求に眉一つ動かさないのはただの性分だが、こちらに乗り込んできた理由はこのあたりにあるだろう。

“プランナー”都築京香 :
「成立ですね。では…。
 あなたの足跡を見かけなくなる時まで、お手伝いを約束しましょう」

“プランナー”都築京香 :
「あなたの探し物が、アメリカで見つかった時にはお伝えします。その道の辿り方も。
 私としても別に、悔やむ思いをしてほしいわけではありませんしね」

“プランナー”都築京香 :
「ですから、成立のお祝い代わりに、そうですね…ひとつ。
 Nameless
 “刻知らず”というのはFHではありません」

“プランナー”都築京香 :
「ここ由来のリエゾンロードが、片手前にちょっとだけちょっかいをかけてはいるようですし…。
 所属という区分で言うなら、大抵そちらのほうが水の合うような性格かと感じますが…」

“プランナー”都築京香 :
「彼らを率いているだろうものについては…。
 その括りはそこまで関係がないかと」

SYSTEM :
 どの程度まで知っているのか…それについては、本当に端から端まで知っていたら自分で解決しに行くようなことだ。

 あなたに対してこのタイミングで訪れたのは、その懸念の相手に対して共通の認識───つまり敵───を持ち、共通の手がかりを見つけ出せるものであることを期待した、ということなのだろう。

マキナ :

マキナ :

「うへぇ……」

 しれっと語られるワードに苦虫顔が思わず漏れる。
 嫌すぎる。ロードってはっきり言われると、余計に。
 ロードっていうと、もう『そういう世界』だ。
 具体的に言えば千年単位で人類史を動かしてきたみたいな宇宙人たちの世界。FHなんて存在がとっくに風化した未来でも、そいつらの影響はでかすぎていろんな時間層でかかわってくる、そういう次元の話。

マキナ :
「……でも意外。そいつら、FHじゃないんだ。クランってやつ?かと思ったのに。
 ほら、おたくん家の検怪異使の一族みたいな、ああいう"FHの括りが出来る前からの私兵"みたいな」

マキナ :
 疑問は多いけど、要するに単に潰すなら自力でやれるけど、別途知りたいことがある。その開けてびっくりブラックボックスの錠を開く鍵としての役割を期待されているんだ。
                   ・・・・
「……そういやあんたFHやめたんだっけ、前来た時とは印象違うけど。
 脱サラしたそっち系の人らのひめゴトとか、ロクでもない匂いしかしないなあ」 

“プランナー”都築京香 :
「ええ。あちらに居座って事を成すより、こうしたほうが、“良いこと”の数が多かったのです…。

 さて、私はあなたにこれを何度答えたのか。そうだとして、前の私とどの程度違ったことを言ったのでしょうね…?」

“プランナー”都築京香 :
「おっと…話に戻りましょうか」

“プランナー”都築京香 :
「どうにも、そうしたクランの括りをするほどの人数が動いてはいないようですから。
 FHが同じFH同士を、目的の違いで蹴落とすことなど当然のようにあった以上、強引にどちらかに区分するならそうとも言えますね」

“プランナー”都築京香 :
「先程ああは言いましたが、そのロードとて、過去一度会った限りでは、元々世間になんの興味も示さない変わり者でした。
          ・・・
 言ったでしょう? 片手間だ、と。…何のつもりかまでは存じ上げませんが、そも、身構えてほしいのは此方ではありませんしね」

SYSTEM :
 参考程度にどうぞ、と話を締めくくる”プランナー”。

マキナ :

マキナ :
 あくまでそいつの派生組織であって、そいつ本人が動くようなことでもない、か。
 安心できるのやらそうでないのやら。あんなのを盛りだくさん連れてるんだから、資金力は相当なものだろう。そもロードってやつらの本質は個の強さより、組織力の方。

マキナ :
「……まあ、参考にはなったよ。奴らの装備の良さやら、人材の豊富さにも説明がついたし。
 これからは連中のことなんでもアリって前提で捉えりゃいいんだね」

マキナ :
 もう既に帰りたいけど、やるしかないか。ターゲットの命が掛かってるなら避けようのないことだ。
「……それじゃ、その探し物に付き合わされてるやつのところまで案内して。
 顔合わせは必要でしょ、連携してコトに当たるなら特に」

“プランナー”都築京香 :
「おや。隣人への思い付きとしてはよいほうと思っていたのですが…。
 先を越されましたね」

“プランナー”都築京香 :
「ええ。良いでしょう。もっとも別に、一人ではありませんが…」

SYSTEM :
 どのように名乗っても構いませんよ、と彼女は嘯く。
 ゼノスの隠れ家ないし、あちらで都合のつく場所に“行く当て”が浮かばない…そうと分かっている時は、あなたの知るプランナーは、時としてそのような言葉をかけてくることがあった。

 下手をすると飛び回る場所は大陸一つに留まらない。あなたが此方でした準備も込みで、その伝手ないし出会う相手との顔合わせをするに越したことはないだろう。

SYSTEM :
 こと…事情を正確に話せない場合のクロノスガーディアンは、その時代にとって”都合のよい”立場をとる。

 神秘が表に残る時は、妖精の名を被り。神の使いを名乗る。
               フィクサー
 その名残には、旅の僧を象り。交渉人を騙る。

SYSTEM :
 この時代においては、あちらからコンタクトを取り、興味と引き換えに引っ掛かりやすい現地協力者の筆頭は、基本彼女と、彼女が擁する“ゼノス”だった。

 宇宙人と口にすれば本気で信じるようなものは…一名いたようだし、組織として一つあるが…基本的にいない。
 また、ありのまま真実を話して待っているものは黄色い病院か、某不名誉な衝動ありきのジャーム認定だ。
 そういう意味では、仮宿候補その2としても、コンタクトをとる相手としても十分なところではあった。

SYSTEM :
 あなたの言葉に、平時と変わらぬ笑みでうなずいた彼女のシンドロームは、けっきょく”どれ”なのか定かでない。

 最多の報告があるノイマン・シンドローム以外を平然と操る彼女が今回使ったのは、ある意味おなじみのバロールが作るゲートだ。

“プランナー”都築京香 :
「では。参りましょうか。
 お名前ほどに、満ち足りた結末を導き出されるように」

“プランナー”都築京香 :
「その過程で、きっと、誰に頼まれるまでもなく…。
 あなたは私の探し物の手がかりも、先の話に不足していたことも、教えてくれるでしょう」

マキナ :
「……そりゃどうも」

マキナ :
 ため息交じりに乗ってきたトライクに触れて、テクスチャーを変形させる。
 サイズを縮めてトランクに変えると、手で引きながらゲートへと向かう。

 今回も出だしからきな臭い。刻知らずとかいう謎の組織に、やる気満々のプランナー。いまだ見えずのヴィジョンキラーと、すっかり役満手が揃っている。

マキナ :
                 デウスエクスマキナ
 でも、それにブルって逃げ出すほど"凡て世はこともなし"の名前は軽くない。

 だいたい、関係のないことだ。敵が多かったり強かったり、そういうのは重要なことじゃない。重要なのは、そーいう連中に付け回されてるような奴がいて、それを守るのが私の仕事だってことだけ。

マキナ :
 ──やってやろーじゃん。
 髪留めに手で触れて、決意を新たにゲートをくぐる。

SYSTEM :
 物事すべてなるように。
  デウスエクスマキナ
 不可能の後始末のお題目は、事と次第によっては、たとえばその読み方を『円満解決』に変えたなら。神様にだって抱えきれない夢物語だ。

SYSTEM :
 だが…どうあれ、今までもこれからも、そのようにしてきたことだ。

 あの日、その躯に、人の手で作られた神鳴る雷霆が宿った時。
 あなたにとっての不可能が可能になって、二つ目の名前をそうすると決めた時。そのあと幾つのことがあっても、あるいは。

SYSTEM :
 ………ならばこれもその一つだった。

 時を渡る旅の足跡が残ることはない。あとから降り注ぐ淡雪がかき消していく。
 その積もった足跡を思い出す追憶の特権は、いつだって、時を渡る旅人だけにしかない。

 どこに、どう足跡をつけるのかも。同じように。

SYSTEM :
 それはいつもとちょっと違った”いつも通り”…。
 あなたを示す名こそが、こうと決めた顛末のための、序幕だった。

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :
 シーンが終了したよ!
 ロイスの宣言はある?

マキナ :
今はナシ。温存かな

GM :
 オッケー! 先は長い!

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

 

・OP3『価値-A live-』


SYSTEM :
【Scene:価値-A live-】

Scene Player:Smaragd
   Erosion:OFF

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ───そのセルにおいて、「明日」を知るものは一握りだけだった。

SYSTEM :
    Principium
 FHセル『礎工』。
 ラテン語において意味は原理、もしくは礎。
 翻って、新しい人類の礎、もしくは原理を指す。

SYSTEM :
 何の目的があったのかは定かではない。あなたに、知る由もない。
 そこは生命の誕生をいいように規定し、己が誇る『原石』を生んできた。
 少なくとも始まりにおいては確実に、自分たちだけを犠牲の勘定から外した誇らしげな大義と一緒に成立した。

 珍しくはあるが、珍しすぎない。そういうセルだ。

SYSTEM :
 ・・
 それが大量生産品に堕したのは、己の限界に突き当たったからだ。

SYSTEM :
 可能と信じていたことにたどり着けなかった彼らは、ただ、過程をツギハギにして成果を生んだ。

 設計からして片道切符。死をも厭わず、生還のために洗浄されるジャガーノート。
 死力を尽くした報酬は次の戦場で。疑問の余地などは先天的に生まれようがない。
 記憶も感情もその日限り。

SYSTEM :
 ただ彼らにも、当たり前の人間と同じように…。
 昨日と同じ今日があった。今日から明日に続くことが、未来永劫ないだけだ。

SYSTEM :
 使い捨ての量産兵士。過程だったあなた。やがて名前を持つあなた。

 そのいち個体は、いつしかそれが目的になっていく光景を見ていた。
 あなたより後に生まれ、あなたより先に死ぬものを見てきた。
 きっと、覚えている“頭数”の十倍以上。

SYSTEM :
 あなたは幸運だった。
 完璧なものを生み出したがった彼らは、彼らが思い知るとおり人間であったから。
 今日を続けるための礎にもうヒビが入っていたことに気付かなかった。目を逸らしていた。

SYSTEM :
 だから、あなただけは「今日」の頁を一枚だけ進めることが何度かあった。
 読み終えた章の続きを知る権利と、誰もがそうしている事実を知る機会が何度かあった。
 あるいはそれも、不幸だったのかもしれない…。

SYSTEM :
 だって知りながらも、あなたに「続きを手に取る」権利はなかった。
              アロー・ヘッド
 命を代償に目的を殺すための、放たれる矢。
 鮮明な輝きを持った石を作ろうとした彼らは、やがて、原石を放り投げる愚劣さだけを磨き上げた。

SYSTEM :
[1月9日]
 欧州イタリアにおける某ファミリー同士の分裂に対し、片方の若頭が後ろ盾としてFHセルを頼る。
 そのセルからの助力要請を受け、戦力を派遣。
 
 損壊:十二台
 (※修復可能数:四台)

SYSTEM :
[3月11日]
 日本某都市における要人暗殺のため、対UGNの目を“逸らさせる”ために動員。
 目的は遂行したが、作戦主目的の抹殺に失敗する。
 
 損壊:八台 
(※修復可能数:五台)

SYSTEM :
[5月2日]
 黒海支部に対する牽制および攻撃を兼ね、クロドヴァ戦線にデータ収集のため第二世代を投入。
 費用対効果、および効果的な戦闘データを見込めず。以降の協力を打ち切る。
 
 損壊:六十ニ台
(※修復可能数:十六台)

SYSTEM :
 ………。
 ………、………。
 ………………………………。

SYSTEM :
 生き延びた。
 あなたは、ただ、何かにしがみつくように、生き延びてきた。

SYSTEM :
 そうして、今日の頁を一つ進める。
 生き延びた故を知る術もなく、今日以外の題名が書かれた本の在処を知る由もなく。
 ただ、そう在ることだけを以て、無銘の原石は生き永らえた。

「私」 :
 一日が次の日に繋がるように。
 明日を迎える自分を夢に見て。

「私」 :
 生きるとは、こういう事だと思っていた。これしか知らなかった。費やし、損ない、失いながら継続していくしかないのだと。

「私」 :
 それが、ある日ふつりと軽くなった。
 悲憤と抑圧、疑念、無力感、「私」を捉えていた数多のものが遠くへと追いやられた。あとにはただ、静寂が残された。

「私」 :
 何もかもが遠雷のようだ。揺らぎ、荒れ狂っていると確かに感じるのに、それらはみな彼方の出来事だった。

「私」 :
 窓の内においやられた「私」と、外に置き去りにされた「私」がいた。分断が「私」を生かしたが、そうまでして「私」を保つことにどれだけの意味があったかは分からない。

「私」 :
 かまわない。理由が分からなくとも生きていくのが命なら、「私」はまだ生き物だと言える。
 放たれる矢でも、削り出された石塊でもなく。

「私」 :
 安い自尊心だ、と俯瞰する。足元に転がる無数の残骸を見渡せるように。

「私」 :
 そして今日もまた一頁、古びた紙を捲る。遠い時代、誰に見せるともなく綴られた一字一句が手元にある数奇を思う心理も、もはや遠い。

SYSTEM :
 いつかは、その頁をめくる作業に終わりが来るだろう。
 しかしそれだけがあなたに残された…。
 あるいは、一日に攫われぬように残っていたものだった。

 何のために。その理由を見出したことはない。
 その思考プロセスにすら至らなかった屍の残骸のうえで、あなたは生きていて。
 あなたの土壌の上に芽生えた苦悩を礎に、完成形のその先に至らない“礎工”は生きている…。

SYSTEM :
 ………だが、ある時ふと気付く。
 繰り返しの中で、見覚えのある個体が、残っている。

SYSTEM :
 任務から生還するたび記憶や感情をリセットされ───。
 継続的な人格など持つ由もなく───。
 ある時から毎回、最後に、細部は違えどこのように零す。

『第二世代』 :
「わたしは」

『第二世代』 :
「何のために」

SYSTEM :
 言葉の羅列は形を持っていたが、意味を持ってはいなかった。
 誰かが“紛れ”で教えたことだったのかもしれない。
 …あるいは、損壊を修復するとき、何かの軛が半端に外れただけなのかもしれない。

SYSTEM :
 だが、それを口にする彼女の能面のような表情と、平坦な声には、ほんの僅かずつ“雑音”が混じる。

 それだって毎回、そこから先に行くことはない。
 見落としてしまいそうになるほど、意味を見い出し難いほど、小さな灯であり、記述の相違点だった。

SYSTEM :
 そんな様子を見せた個体を、あなたは知らなかったが。
 だがそれは“なぜ”の向こうに行く気配のない、余白のようなものだった。

 その時までは、ずっと。

「私」 :
 「私」は人の言葉を話せる。人のように考えて、能動できた。
 だが、そうした人間性の一切を閉ざしていた。誰にも「私」が継続的な存在だと悟られてはならなかった。

「私」 :
 帰還のたび人格を洗浄され、たとえ芽生えかけた自我があっても、排泄物のように押し流される。なぜの答えも、続きもない。

「私」 :
 だから「私」自身、零された音を意味のある言葉だとは思わなかった。
 石工に見落とされる程度の意味なら、誰に見出されることもないだろう。

SYSTEM :
 意味のない羅列が、五日、十日と続いても。
 その誤作動は、猿が滅茶苦茶に叩いたタイプライターが二~三文字の意味を見出した言葉を作ったようなものだったから。

SYSTEM :
 あなたの選択肢はずっと一択だった。

SYSTEM :
 ………………
 ………………。

SYSTEM :
 ………だからそれは。
 あまりに、唐突なことだった。

SYSTEM :
 今日のピリオドを打ったところから、継続するあなたの始点に戻ろうという時…。

 任務の終わり。損壊した個体を連れ帰るとき。
 からん、ころん、と。破片の転がる音がした。

SYSTEM :
 いつも決まった音ばかりの中で、覚えのない雑音。暗闇の中からそれがあった。

 振り返ればそこには、造り物とて人間と変わらない赤い血を零し。
 産声のように小さく呻くものが、差し込んだ一筋の光を頼りに、あなたを見上げていた。

SYSTEM :
 しがみつくように自分の体を抱き留めた、親鳥のいない雛鳥を思わせた赤い矮躯。

『第二世代』 :
「わたしは」

『第二世代』 :
「何のために」

「私」 :
 手足が動くかぎり、凡ての個体は帰還を試みる。常と同じく命令に追従しようとした「私」の聴覚は、異音を捉えた。定型から外れた音程。

「私」 :
 足元に滴る血から遡って、小さな個体の姿を認める。見上げてくる能面をじっと見返した。

「私」 :
 理由のない動作。意味を持たない反応。生体であるからには、目に見えたものに反応はするだろう。互いに。

「私」 :
 装置ひとつで無かったことになる、些細な一拍。

「私」 :
 ただ、少しだけ疑問に思った。
 無防備な身を外界から庇うような姿に、「私」は違和感を感じているらしい。

SYSTEM :
 なにか、意味のある言葉の羅列ではない。
 この個体の耐用年数はまだ十分にあるが、損壊の修復が叶うかは五分だ。
 洗浄と再起動の負荷に耐え切れなければ。
 その時いよいよ、0と1の数字の羅列に潜り込んだバグの再発可能性は失せるだろう。

 なかったはずだったが。
           ・・
 統一された石の模様が違うことに、あなたは決定的違和感を抱くべき発言の前から気付いた。

SYSTEM :
 その姿勢は…。
 外的知識に曰く、鳥類の雛のよう。
 傷を負い、這いもがく兵士の形でなく。
 どうにもこうにも、世界の形を変える幼年期の始まりのようであったから。

『第二世代』 :
「…生きていたい」

『第二世代』 :
「明日が見たい…」

SYSTEM :
      ノイズ
 次に聞こえた言葉が、明確な意味を羅列したとき。
              ゆいいつむに
 生きているはずのものが、この無味乾燥の生を否定したとき。
 それが違和感の後押しだった。

『第二世代』 :
「名前が、ほしい」

『第二世代』 :
きょうをおえる
「眠りにつく時は、水槽以外がいい。
 それから、それから、それから…」

SYSTEM :
 ただこれは、あなたに対しての”助けて”ではなかった。

SYSTEM :
 世の中が思い通りの希望を届けてくれることを信じる余地が、
 礎工たちの基底からしてそもそもなかったからだ。

『第二世代』 :
「………だって」

『第二世代』 :
「…わたしたちだけソレがないなんて。
 そんな不公平は、ない───」

SYSTEM :
 それは。
 相互に忘れると誤認したが故の弱音であり、呪いであり、夢想であり…。
 耐用年数の終わりにはまだ早く、だが、あるいは誤差ごと忘れ去られていく彼女の、爪痕を地面に刻むようなあがきに過ぎない。

『第二世代』 :
「だって、」

SYSTEM :
 洗浄する前の記憶と感情が、洗浄した“残り物”と混ざって、沈殿し続けて───。

 ある時/この時にはじけた、それも、誰かが先に見つけたならば簡単に是正できるほどのプログラムに過ぎない。

『第二世代』 :
「だってまだわたしは、生きていることを」

『第二世代』 :
「是いとも、悪いとも、思ったことがない───」

SYSTEM :
 ・・・・
 それでも、と。未練を外側に出すことを躊躇せず。
 あきらめと絶望のベールをかぶせても、身じろぎ程度の自由でも、一つでも多く自分をかたちにする。
 その程度の無謀に過ぎない。

 鳴き声を、光の向こうに差し込んだあなたに刻もうとする行いに過ぎない。
   タスク
 一切、任務以外のクチを利かないとわかっているものに、恨みがましく零す希望を、そう呼ばずして何と呼ぶものか。

SYSTEM :
 だが、あなたの知る限り…。
 小さな後継機たちの誰もが、沈殿に価値をつけることはなかった。

『第二世代』 :
「できないって、自分で、確かめて、ない──────!」

SYSTEM :
 特別な差異などない一個体が、プログラムに定められていたこと“以外”をした。

SYSTEM :


      ・・
 思うに───それを。
 あなたも、してはいけない理由などない。

 あなたのほうが、その奇跡は先だったのだから。

SYSTEM :

 よってあなたには二つの選択肢があった。
          ここでいきる   ここからでる
           見捨てるか / 道連れにするか。

SYSTEM :
 人生初めての経験である。
                       じゆう
 だがおそらく、もっと昔から存在していたはずの選択肢だ。

「私」 :
 膨れあがる違和感。「私」が遮る光に何を見ようとしているのか。いや……まさか「私」に? 何のつもりで?

「私」 :
 「私」たちは、そのように設計されていない。運用されていない。コンセプトに沿うべく削り出され、研磨をくりかえして再利用される。
 摩耗に耐えきれず砕けるか、経年劣化で滅びるかの差だ。その両方を免れたところで、都度生まれ直すかぎり永遠に殻の中だ。

 だが、その小さな個体はまさに殻を破りつつあった。

「私」 :
         声
 世界に叩きつける拳の、なんとか弱いことだろう。突き立てた爪が剥がれようとも、離すまいと必死に。

「私」 :
 漠然と、雛を連想した。羽ばたくことを知らないまま、地上に転がり落ちたものの喘ぎ。

「私」 :
 生きていたい。明日が見たい。そのどちらをも与えられない事実を、理不尽だと反発する。

 ──なぜ。

 だって、と叫ぶ声に無音の問いが重なる。

「私」 :
「────」
 
 そして光を見た。いずれどうなるか分かっていながら、殻の中で腐敗していくほかなかった「私」が。

 生まれて初めて。この目に、光を。

「私」 :
 生まれながらにして閉じていた世界が、ふいに開けた。していいのだ。「私」も、”それ”を。

「私」 :
 それでも、失われた「私」は二度と元に戻らないだろうと思った。存在の代償に失われた心の一部だけは、決して。

「私」 :
 だが、だとしても、

「私」 :
 ・・
 きみの明日が、今この瞬間、
 「私」の選択にかかっているのなら、

「私」 :
「できないことはない。何も」

「私」 :
「失ったもの。得られたもの。手に入れよう。取り戻そう。すべて、全部」

「私」 :
「私たちは、生きているのだから」

「私」 :
 是しにせよ、悪しにせよ、凡ゆる行為の原動力と実現の可能性が私たちには宿っているのだと──

「私」 :
 はっと顎を手で覆う。いま矢継ぎ早に捲し立てたのが「私」自身の声だと気付くまでに、相当の時間を要した。

SYSTEM :
 繰り返しの終点は、このとき突然訪れた。
 たった一度の切欠だ。
 どこまでも、その故はあなたの故でなく。

 俯瞰の風景こそが、いまこのとき選択の舵を握った。

SYSTEM :
 感情があっては立ち行かない環境下において。
 だが…たった一度、決定的に一度。そう生まれたことこそが。

『第二世代』 :
「────────────は。」

SYSTEM :
  ひなどり
 その後継機の表情を言い表すならば。
 面食らった、がもっとも正しかった。

『第二世代』 :
───なんだこいつは? 何をやっている?

『第二世代』 :
ずっと見ているだけじゃなかったのか?

『第二世代』 :
       ・・・・・・・・・・・・
いやそもそも、いまの発言はどういう意味───

SYSTEM :
 ………事此処に至って、彼女が気付いたことはふたつ。
 
 薄ら差し込んだ明かりの中に覗く無貌の第一世代が、
 ありとあらゆる意味で黙する先達だったことと……。

 そして………。
 矢継早に捲し立てた第一声が、末期を看取り呪いを抱えるためのものではなく。
 籠を開ける音だ、と気づいたこと。

SYSTEM :
 あいまいに、だが、そうだと分かる程度に。
 今この時、ともすれば自暴自棄が半分だった作り物よりも勇気を振り絞った男に、ソレは頷いた。

『第二世代』 :
「………なんで………、」

『第二世代』 :
「…ううん。…出たら…」

『第二世代』 :
「出たら、名前。考えよう…
 あなたの名前。すぐじゃなくても…」

SYSTEM :
 それは非常に遠回しな、未だにそれが叶うと信じているか定かでない…。
 それでも、今のが差し伸べられた手だと認識したものの、ぎこちない、人生はじめての暴力を伴わない他人との対面だった。

「私」 :
 当惑のまなざしを、黙して受ける。
 「私」は彼女の”わたしは”と”何のために”を記憶していたが、「私」が自発的な行動を見せたのはこれが初めてだった。

「私」 :
 それは虫が光を目指すように、知性を欠いた働きに過ぎない。
 だが長年這いつくばっていたものを其処/底から駆り立てるには、そうした短絡性こそが必要な力だった。

「私」 :
「自由だ。きみの」

「私」 :
「体を横たえて眠り、明日を迎えることも。これから思いつく全部を試せばいい」

SYSTEM :
 それは後にして思えば、あなたの自認通りに知性と展望をあまりに欠いた言葉だったが。
 だが、この場において”そう”選んだあなたとしてみた場合、これ以上にない祝福だった。

SYSTEM :
 白紙のキャンパスに、伝えられすらしないお題。
 漠然とした、あまりに長い時間/あまりに短い人生を期限にした彼女にとって。それはどんなに。

 そう、どんなに価値のあることだっただろう。

『第二世代』 :
「わたしは、何のために…」

SYSTEM :
 自問自答の前触れといっしょに。
 ゆっくりと、覚束ない足取りで立ち上がる。

『第二世代』 :
「うん。それは、……それは。わたしのもの」

* :

         バースデイ
 思うにこれが。あなたの生誕日だった。

* :

 たとえ、それまでの日々のほうが圧倒的に長くても。
       わたし
 この時の選択を彼女が疎んだことだけはない。決して。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 長い長い戦いの成果は、心身ともに、如何にいびつな沈殿に過ぎないとしても…。
 あなたに残るものを与えていた。

 戦闘のためのスペックを与えたテストベッドにして完成への過渡期。
 名付けだけがされていない原石は、ここから出るくらいなら、もう赤子の手を捻るほど容易だった。

SYSTEM :
 皮肉な話だ。彼らの“徒労”が生んだ唯一最大の成果こそ。
 壊れるまで今日を繁殖させ続けた生存本能であり。
 あなたの“徒労”と誤認しながらも、守り続けてきたもの。
 
 あなたが一番、彼らの「礎」が作った、もっともふるく、もっとも生き延びた原石だったからだ。望んだものかは別として。

SYSTEM :
 はじめてあなたは、そうするべき、という理由で出るための戦いをした。
 その他人事のような記憶と後悔と興奮が、いつものように消えはしないことも。
 おそらくは、承知の上で。

『第二世代』 :
「どこに…行く?」

SYSTEM :
 その明確な答えがないことを承知の上で。

 先ほど自由だ、と言われた彼女が、
 あなたに振り返って聞いた。

「私」 :
 唸りをあげるセキュリティ警報をバックに、杭打ち機のごとく骨を撃ち出して剥き出しになった肉を、再生した皮膚が覆った。

「私」 :
 外壁の残骸を踏みしめ、あとに続く。
 踏み出してみれば、何もかも呆気ない。しかし光がなければ、踏み出されることのなかった一歩だ。

「私」 :
「…… ……」

「私」 :
「イタリア……日本……クロドヴァ……。経路と手段を把握している候補地はいくつかあるが」

「私」 :
「行きたい場所へ向かうのが、筋なんだろう。この場合」

「私」 :
 ここではないどこかを目指す、という事になるのだろう。当て所ないが、途方もない。

「私」 :
 それは、どこにでもあって、どこにもない。「私」たちが捨て去った殻と孵れなかったものたちを思うのであれば。

『第二世代』 :
「…見つからない。そんな簡単に」

『第二世代』 :
「だから…」

『第二世代』 :
「…見つけよう。生きているうちに。
 やっぱりって後悔したくなるまで」

『第二世代』 :
「…あなたが…。
 あなたと、わたしが。こころのある間」

SYSTEM :
 のちに放浪の地の定義をアラスカと断定し。
 逃げ出した先の身の振り方を考える由もないまま。
 暗闇の荒野をあなたと後継機は歩くことにした。

SYSTEM :
 それはなんと希望に乏しくも、予測の叶わない序曲だっただろう。
 不可能とあきらめていた「明日」の…始まりだった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 あてもない放浪は、それから三日ほど続いた。
 なぜなら身の振り方のため、計画的な行動を行う経験も、方針も二人には備わっていなかったが…。
 どちらかが、あるいはどちらも、本能的に保護/庇護の合理性を感じ始めたからだ。短期的な指標が完成した。

SYSTEM :
 もちろん当然だが、戻る選択肢はない。

 全体の一つか、あるいは、あれそのものが中核だったのか…。
 『礎工』の追跡の余力はない。もともと疲弊し、枯れかけの大樹と呼ぶよりほかにないFHセル全体としての機能は完全にマヒしていた。

SYSTEM :
 だから───。
 あなたの人生の幕開けの礎は二つあり、一つはのちに“紅玉”とあなたが名付けた少女/後継機だったけれど。

SYSTEM :
 もう一つは、この瞬間だった。

SYSTEM :
 ………………。
 ………………。

SYSTEM :
 程なくして、渡り先と船を見つけた。
 どちらが言い出した事かはともかく、
 いま
 現代から数えて2年ほど前のこと。

『第二世代』 :
「待って、なにか…」

『第二世代』 :
「戦いの、音───」

SYSTEM :
 現代においてはある『渡り鸛』によって九死に一生を得るまでの間、凋落し続け…。
 そして現代では消滅のち鸛に僅かな一名を加えるのみになったという、北米FHセル『タイタン』。

 あるとき北米では、主要FHセルのほとんどが勢力を減退させたというある出来事があったそうだが。
 その凋落の兆しに歯止めを掛けようとした、最後の“あがき”のようなテロ行為が、この都市区ではあったという。

SYSTEM :

 戦いの音の片割れがUGNであるということ───
 オーヴァードが、関与しているということ───
 ワーディングの気配と“表沙汰”を避けたい姿勢から、それらはハッキリと感じ取れた。そして…。

SYSTEM :
 その片割れに用があった。
     ・・・・・
 それも、この状況のUGNに。

 ほぼ偶然、行き当たりばったりと変わらない、ラベルの上では打算と呼べる程度の行い。
 いったいどちらが言い出したのか、生き残るための綱渡りがこの時行われようとしていた。

「私」 :
 晴れて自由の身──とは行かない。追っ手の心配がなくとも、「私」たちには現実が差し迫っていた。

「私」 :
 生存とは、要するに消費行為だ。端的に金がなく、糊口を凌ぐ伝手もない。
 無知と無知が身を寄せ合っても「危険は避けよう」「とりあえず行こう」以上の方針を出せなかった。

「私」 :
 だが幸いなことに、最低限の知識は備えている。世界の対立構図。管理する側とされる側の相関。必ずしも一律一様でないこと。
 支配から逃れてきた「私」たちは、適切な管理者を求めることを選んだ。

「私」 :
「好都合だ」

「私」 :
「思い立った日に、機会のほうから巡ってきた。逃す手はない」

『第二世代』 :
「…。ほんとに? やるの?」

『第二世代』 :
「全員が、全員、“そう”かなんて…」

SYSTEM :
 あなたほど前向きに進めない後継機、つまるところ無知の片割れの、訪ねるような、見上げた瞳と言葉だけがブレーキだった。
 いや、あるいはそれも一種のアクセルだったのかもしれないが。

SYSTEM :
 そのように教育され、そのように設計されてきた性能が顔を出すのは戦闘行為の時だけだ。
 基本的に、自分の手元に希望が来るという可能性のなさを、例外を一度かみしめたからこそ信じていない悲観性があったことが、3日の拙いコミュニケーションで発覚していた。

SYSTEM :
 ………しかし。
 思い立ったが吉日と呼ぶなら、
 その日以降は概ね凶日だ。今しかない。

 なぜなら突き当たった現実というのは。
 現代秩序における生存という言葉は、霊長類の都合よく作った社会なくせ、ことのほか霊長類にこそ辛辣で複雑怪奇だったという点だからだ。

『第二世代』 :
「…決裂したら逃げる。怪しいと思ったら逃げる。あなたとわたし、かたっぽでも置いてけぼりはナシ」

『第二世代』 :
「百歩譲る…」

SYSTEM :
 それが分かっているからか、なんとなく“渋々”みたいな態度を醸し出し、そのくせばつが悪そうに頷いた拙いコミュニケーションの主犯は、
 いざ遭遇した“前提条件”のほうは気にしていなかった。そちらについては経験が持続しているからだ。

「私」 :
 三日の行路にあって、数えるほどの対話の中。彼女は意外なほど用心深く、奇跡の在り処を知ったからこそ、それが普遍的でない事実についても重く受けとめているようだった。

「私」 :
 「私」は彼女ほど悲観しない。楽観があるのでもない。
 あらゆる事物は遠く、外にある。斯かることを不安と思わなければ、「私」の内に不安は生じない。

「私」 :
 見上げてくる瞳に、肯きだけで応じる。信じる信じないで言えば、「私」は次の機会に対して懐疑的だった。

「私」 :
 ……悔いることはできないが、記しておくことが一つ。
 百歩譲る、と。渋々捏ねまわした言葉の奥に気遣いや無垢の善意があると、当時の「私」は理解していなかった。

「私」 :
「もちろん」

 万が一の対応は、それで決まった。
 「私」たちが運命を共にする理由は、明確にはない。だが、しない理由はもっとなかった。

「私」 :
 そして、一度実行に移れば彼女のほうが「私」よりも遥かに果断であることも知っていた。

 アーキタイプを模索した第一世代、
 完成形を元に量産された第二世代。

 後者にあたる彼女は、教育の練度も個体の品質も高い。
 願って与えられた物ではないが、彼女と「私」が生きていくのに必要な手札だった。

「私」 :
                   普通
「では行こう。先に出会ったほうがFHなら任務通りに、UGNなら……」

「私」 :
「私たちの価値を示す」

「私」 :
「ワーディングを用いる、非オーヴァードは遠ざける、ジャームではないと示す」

 手振りの一つもなく、淡々と列挙する。知識と経験のかぎりにおいて、彼らの方法はそれだ。

「先ずはあちらのやり口に合わせる。それが出来ると理解してもらうのが最善だが、意思が伝われば十分だ」

SYSTEM :
 こと戦闘行為一辺倒のチルドレンたちが『歩み寄る』という交渉/コミュニケーションの基礎を抑えた上でのその判断。

 敵ではない、と。
 あるいは…自分たちは教義を理解する余地がある、と。そう見せるために、この相談は実行された。

SYSTEM :
 本当に幸いだったのは、構想半日前というそれはもう”思い付き”レベルの計画が、都合よく場の整った場所に出くわしたことだ。

 身長差のある後継機が、二度首を縦に振る。FHであればいつも通りに、UGNだけならば非日常のそのまた非日常を、と。

『第二世代』 :
「あとは…」

『第二世代』 :
「…ううん。なんでも。行こ」

SYSTEM :
 この時後継機の脳裏を過った可能性は、繰り返すように彼女の中では考慮に値せず、優先順位の低いものだ。

 ………仮にそのような状況だったとして、彼女の自我が優先することは生き残ること。
 世界を広くできない無頼が、その優先位置に、当然のようにあなたを含んでいることは、運命を共に“しない”理由の無さからくるものであり、そんな彼女は、あなたほどに管轄下という言葉への信頼がなかった。

SYSTEM :
 後々の結論だけ記すが、もしも彼女一人だった場合。
 次見る光景に対しては即刻、踵を返したことだろう。

 ある意味、彼女はあなたのおかげで二度命拾いした。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 …そのUGNと、相対しているものがいる。
 程なくして発覚した、というより少し先に認識できたワーディングの気配がある。
 ここまではある意味想定通りだ。何もかも都合は良かった、ただ一点を除いて。

SYSTEM :
 その北米FHセル『タイタン』…。
 最後のあがきだったテロ行為は、自らの存在を刻むため、力を誇示するため、“手駒”を増やすため。
 どれだったのかは定かでない。

 ただし、オーヴァードの最期とはいくつかの種類がある。おそらくは“彼”もまたそうだったのだろう。

SYSTEM :
 戦いの中で暴走したのか、元々“そう”なのか。おそらくはキュマイラの個体だ。
 レネゲイドは、究極的に人間を宿主としながらも、人間と“同一”にはならない。いずれは乗っ取り、裏返り、際限なく進化/増殖する。

 あなたも存じているように。

SYSTEM :
 人間だったころの名残を、いくつかのパーツに残しながら…。
 どこまでも怪物のような皮膚と翼と尾を備えた、人と獣と幻想のキメラ。

 有用性を示す相手として見ると、スケールに少しばかりの過剰さがあった。
 なぜならば───。

SYSTEM :
 相対する推定UGNのオーヴァード・チームが、ほぼ壊滅状態だったからだ。

SYSTEM :
 片や余裕綽綽で、片や1名を残して壊滅。

 おそらく………そう、おそらく。
 倒れた者はまだ助かる余地があるが。
 放っておけば生存者諸共その可能性はゼロになる。

 これ以上ないほど有用性を示す機会だったが、同時にその“成れの果て”を見たとき、後継機は後ろ脚を引いた。
 確実に勝てるかは定かでもないからだ。

『UGNエージェント』 :
「な………、」

『UGNエージェント』 :
「なんでだよ…」

『UGNエージェント』 :
「なんでオレがこんな目に合わなきゃいけないんだ…なんでオレだけ…!」

SYSTEM :
 自分の不運を呪う男のチームは、助かる見込みがまだあった。だが。
 悪態を吐き、死を覚悟し、今にも誰かが助けてくれる淡い希望に縋る様子が。
 おそらく、それを達成させるような状態には見えなかった。

SYSTEM :
 ………しかしあなたの判断が躊躇のないものだったとしても。
 空いていた距離で、その絶好の“アピール”の機会において把握できる情報はあった。

SYSTEM :
 狩人役のキメラの目は瀕死のオーヴァードに向いており、彼は明らかに逃げられる位置だ。

 そのうえで、逃げない理由は何か。

『UGNエージェント』 :
「で………でも」

『UGNエージェント』 :
「ち………ッ、くしょう! 来い! 来やがれッ!
 テメーじゃねえ! テメーじゃねえぞ! 
 ・・・・・
 本部サマが助けにくるんだ、それまで…」

『UGNエージェント』 :
「オレは…オレはなあっ、まだ生きるんだ! 
 オンナだって知らない、酒もまだで、未完成の設計図がたくさん! 生きてやりてーことがある!」

『UGNエージェント』 :
「こ…コイツらもなんだぞッ!
 背ぇ向けて一生トラウマもんにするくらいなら…!」

SYSTEM :
 あなたがどのような気持ちで…。
 おそらくは死ぬ戦いに、膝を震わせながら、おそらく土壇場でしか発揮される余地のない自棄交じりの献身で戦おうとした、非効率なオーヴァードを見ていたのか。
 それは、知る由もないが……。

SYSTEM :
 少なくとも打算があった。彼の言葉と、のっぴきならない事態。
 オーヴァードのワンチームを壊滅させるほどの強力なジャームと、そこにいたワンチームを“救う”という行い。

 そのうえ巻き添えになった被害者という立場。格好の“有用性”の証明だった。唯一の問題は…。

『第二世代』 :
“………ねえ”

『第二世代』 :
“五分だよ。やる?”

SYSTEM :
 唯一の問題は、それが“まとめて道連れ”になるかもしれないことだった。

「私」 :
 事ここに至って、タイタンの結末は確定した。あの成れの果てに、斜陽の組織を立て直せるだけの知能は残っていないだろう。
 たとえ北米の地に爪痕を残すとも、ああなる以前にあったはずの欲望は水泡に帰した。

「私」 :
 対峙する一方も、悪あがきに足元を掬われたらしい。さんざんな有り様は壊滅的と言ってよく、残された一人に何ができるでもなかった。
 いや、ただ一手。逃げを打つだけならば、あるいは。

「私」 :
「…… ……」

 及び腰、負け犬の遠吠え。”それまで”の時間を稼げるとは思えない。正気を疑うが、彼は本気らしい。どうにも。

「私」 :
「五分か」

 納得はする。使い捨ての戦い方しか知らない「私」たちでは、刺し違える余地は十分にあった。

「私」 :
「私ときみで十分だな」

 おそらく、それは。「私」が生まれて初めて口にした冗句だった。

「私」 :
 進み出る。皮算用がないでもなかったが、それ以上に。

「未来に希望を持つ思考には、関心がある。私たちは生還のためのやり方を知るべきだ」

「私」 :
「彼はいい手本になる。おそらくは、だが」

「私」 :
 歩み出る。両者の中間点、喚く男を背に。

「私」 :
 売り文句の一つでも持ってくるべきだったと、今更ながらに気付く。僅か一秒の余白を思考に宛てた。私は、この場合──

「私」 :
「突然のことで驚いたかもしれない」

「私」 :
「私もだ」

「私」 :
「だが本当の驚きはこれからだ。あなたがたの生存を、私たちが請け負う」

SYSTEM :
 …そう。おそらくは、だ。
 何一つ確証はなかっただろう。
 何ならこの発言をしている間も。

SYSTEM :
 突然のことで驚いたかもしれない、という発言前に、

『UGNエージェント』 :
「ウ゛ワーーーーッ新手ェ!」

SYSTEM :
 と帰ってきたあたりでも。

 そのあと“自分も驚きだ”と発言した直後に…。

『UGNエージェント』 :
「オレが驚きてえよ持ってくな何もかも!!!」

SYSTEM :
 と帰ってきたあたりでも。

 そして…あるいは五分の賭けに挑むその瞬間も。

SYSTEM :
 何一つとして、確証はない。

 ただ、そんなことを言ってしまえば。
 あなたのつかんだ希望の辿る道は、今に至るまでなに一つの確証もなかったのだ。
 
 はっきり言ってしまえば今更だった。
 だからあなたは関心のもとに、もともと決していた意を確認し直した。それだけのことだった。

『第二世代』 :
“そんなコト…”

SYSTEM :
 ない、わけがないからだ。

 あなたの何一つ音のトーンが変わらない冗談を”そう”と受け取るのに、彼女の中では数秒の時間がかかった。
 だが、仕掛けると決めた直前…。

『第二世代』 :
“けれど…そう…”

『第二世代』 :
“0%でないのなら…” 

SYSTEM :
 …あるいは言い聞かせるような同意の言葉のあと、臨戦態勢のあなたを後継機が追い抜いた。

 決していた意を固めて現れた巨躯と、定まれば何の躊躇なく攻撃に出る矮躯。
 のちの同僚のファーストコンタクトはあまりに衝撃的だ。

SYSTEM :
 そして。
 打算の生き証人と、人生の灯を守り切る戦いが。
 
 主観ではあまりに長く、
 客観では“それまで”より早く…始まり、終わった。

SYSTEM :
 二つ分の交錯と、幾分かの命の放出。
 あなたは死を擲つように、命を掴み取る。

 崩れ落ちる鋼鉄のキメラ。去った脅威。
 銀の弾丸/対キュマイラ用の得物が斃れたUGNの側にあり、
 それを自棄気味に投げ込んだエージェントの一押しを、あなたと彼女は意味あるものにした。

SYSTEM :
 ひょっとするとこの時のことが。
 五分を勝ち取る戦いが、あなたが教わる『守り人』のアーキタイプだったかもしれない。

 あるいは、もっと前からの“あなた”の欠片が、守り通したこと。生命を守るやり方が。
 最初から、『この後』の適性を示していたのかも───。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 荒い呼吸だけが響いた。

 誰のだったのかは定かじゃない。
 後継機のシンドロームが生んだ血色の得物は既に形を維持していないし、
 どうやらモルフェウスであったらしいUGNエージェントは媒介となる道具を使い果たしている。あなたもどの程度の傷を廻らせたのか。

『第二世代』 :
「………やった…」

SYSTEM :
 勝ったのか、の確認代わりが、あなたの後継機から響く。
 弾みかけた音が途中で押さえつけられたのは、完全に息の根が止まった怪物を見て、これから先があることを忘れないためだった。

『UGNエージェント』 :
「か…勝った」

『UGNエージェント』 :
「(こいつら本当に勝っちまった…)」

SYSTEM :
 そしてほぼ無駄死も覚悟したアメリカ生まれのアメリカ育ち。
 凡そ合衆国の出の人間では珍しくもない凡庸な英雄的善性の不発した若者の救いの手は、断じて想定していたものではなかったが…。

 彼もまた茫然と、“結果”を見つめていた。

SYSTEM :
         ・・
 あなたの近くに、結果が倒れていた。

 生きあがき、痕跡を刻み。
 ただの怪物/戦闘の一要素として朽ちていく異形が。
 昨日までの頁の登場人物が。

「私」 :
           はらわた
 拘束具の代わりに用いた内臓を腹の前で引きちぎり、軟質に戻った屑肉を放って捨てる。射出のために内から破られた腹の穴も、じき塞がるだろう。

「私」 :
 「私」も彼女も捨て身の戦いしか知らなかったが、「私」が抑えに回ったのは正解だった。
 オーヴァードの生死を分かつものは何も肉体の損傷だけではない。消耗を受け持ち、有効打を持つ人員に攻手を任せる方法には一考の余地があった。

「私」 :
「振り返ってみるに──」

「私」 :
「六分程度だった」

「私」 :
 要するに一人二分。率直に、かなり危うい勝利だった。

『UGNエージェント』 :
「どういう計算式!?」

SYSTEM :
 ちなみにあなたの脳内を聞いたなら、“じゃあ四分どこ行ったんだよ!”と口にしたに違いない。
 脳内がわかるほどの卓越した思考回路の持ち主(と書いてノイマン)などこの場にいないのだ。

SYSTEM :
 なので、率直に出張る前の言葉を聞いていたほうだけが、それでも曖昧に頷いた。

『第二世代』 :
「でも…」

『第二世代』 :
「でも、生き延びた」

SYSTEM :
 そちらのほうが重要だったからだ。
 一分だろうが、確実だろうが。

 …そして、断じて今の戦いが軽いわけでなくても。どちらかと言えば“ここから”のほうが。

『UGNエージェント』 :
「そりゃ、おかげ様で生き延びたがよォ…」

『UGNエージェント』 :
「………オマエら、何者なんだ…?
 いや、まずは“サンキュー”か?」

SYSTEM :
 だが、あなたの心中はさておいて、彼の目線からはそうもいかない。
 あなたと後継機は彼の想定していた救いの手ではない。
 あなたの行いが品定めする第三者なのか、さらなる絶望の手か、本当に救いなのか…。

SYSTEM :
 彼の心情は間違いなく、共に命をかけようとしたあなたを敵視するものではなかったが、それでも。
 名も素性も知らずの相手を信じ切る人間は、底抜けの善人であると同時に阿呆だ。

「私」 :
 肯く。生きている。「私」も、彼女も。生きてやりたいことがあると奮起し、そのくせ後ろ髪引かれる延命を拒んだ男も。

「私」 :
「その質問には理解を示すが、私たちは納得を得られる答えを持っていない」

「私」 :
「何者でもない。ここへは交渉のために赴いた」

「私」 :

「私」 :

『UGNエージェント』 :
「こ…交渉って」

「私」 :
「ネゴシエーションだ」

『UGNエージェント』 :
「言葉のイミ聞いてんじゃねえよ!
 行動のイミのほうだよ!」

SYSTEM :
 だが、そのエージェントが短い時間で彼から感じ取った直線的な感性が…。
 発言に他意なきことを教えている態度が。彼にとっては手に余ることだった。
 
 なぜならこちらは根からのオーヴァードでも、そのように『ホーム』で育ったものでもない。
 純然たる才能と呼ぶべきものはあったが、ただ、それ以外は何ら平時を生きている縁遠い一般市民と感性が変わらない。

SYSTEM :
 ………もう一人のほうを恐る恐る見ても、あちらはあちらで口元を結んで見つめてくるだけなので、若者はいよいよ天を仰いだ。

 彼はここにいる二人がUGNにとって敵ではないことを示す生き証人だが、彼ひとりの権限で何かのできる人間ではないのだ。

* :
「───うん。UGNではないね」

* :
「この州の登録イリーガルは先に目を通したし…。
 どこか他からやってくる、と聞いた覚えもない…」

* :
「そうじゃないなら、残る答えは一…いや、二つかな」

SYSTEM :
 その時だった。
 間の良い/悪いことに、訪れた足音。

SYSTEM :
 UGN本部のエージェント…鉄火場のエキスパートであり、レネゲイドという厄災に対するベテランだ。
 例外はあるが、基本そのような人間だけがその看板を背負う。彼はそうだった。

SYSTEM :
 振り返った誰もが抱いた小さな疑問が、もしもあるとすれば。
   ・・・
 その背格好だ。

SYSTEM :
 のちに“礎石”と呼ばれる彼よりも、非日常の凡人だったUGNエージェントすらも下回る矮躯。
 背の高い少年、という言葉でだいたい説明がつくような声色、物腰…。

『第二世代』 :
「………誰?」

『UGN本部エージェント』 :
「ご挨拶だな…それは僕の台詞なんだけど」

『UGN本部エージェント』 :
「『タイタン』の余りものとかじゃない…何なら”それ”がセルリーダーか。
 いや、おかしい…どういうシチュエーションかな?」

SYSTEM :
 だが、確かに…対峙してみればわかることもある。
 彼は、その看板を預かるに足るエージェントだ。

SYSTEM :
 だから…彼は、その場にいたあなたたちを値踏みするような視線を向けている。

「私」 :
 「私」の胸ほどもない背丈を、じっと見下ろす。知らぬ顔だが心当たりはあった。

「そちらは本部サマか」

「私」 :
「あいにくと下働きの経験しかない。私は『礎工』の……」

 ……かぶりを振り、第二世代の彼女の隣へ並んだ。
 思考に先んじた動作に、一拍だけ硬直する。が、万が一の手筈に備えたということで納得した。

「私」 :
「ただの放浪者だ。現状については、私よりも彼の口から聞くのがいいだろう」

SYSTEM :
 あなたが万が一の手筈に備えた、一瞬だ。

 何かの言葉が琴線に触れたのか。
 当時から今に至るまで、あなたには少し判別しがたい感情の動きが彼にあった。

『UGN本部エージェント』 :
「本部サマって呼び方にイエスと頷くかは、躊躇したい気分だけど。
 いいよ、だいたい認識的には間違ってない」

『UGN本部エージェント』 :
「…だがそうか、きみは───」

『第二世代』 :
「──────、」

SYSTEM :
 しかし、あなたが水を向けるより早く。

 喧嘩早いほうが、その視線の意図をどう捉えたのか。
 ここまでだった、とばかりに得物を作ろうとしかけた、まさにその瞬間。

『UGNエージェント』 :
「………あの、」

『UGNエージェント』 :
「すンませんッ本部サン! こいつら…。
 こいつら………襲われてたオレと仲間を助けてくれたんです!」

SYSTEM :
 水を向けた/助けに入った打算通りに、
 彼は人間的感情であなたたちの間に入った。少年の目がそちらに向く。

『UGN本部エージェント』 :
「そう。ところで名前と出自は聞いてた?」

『UGNエージェント』 :
「い…いえ、初耳スけど」

『UGN本部エージェント』 :
「そうかい。それで…続けてもらっていい?」

SYSTEM :
 あなたの目前で行われたそれは、まさに途中まで“名前も出自も把握していないのに助けられた一点で信用したの?”とばかりの、圧迫面接だった。

 ………途中までは、だ。

『UGNエージェント』 :
「で、でも…でもよ…」

『UGNエージェント』 :
「…ナマ言ってすンません! 
 でも…せめて、仲間助けた礼くらいは!」

『UGNエージェント』 :
                       俺ら
「だいたい、居場所のないやつに居場所を作るのがUGNだって、アンタのエラいさんが言ったんだぞ!」

SYSTEM :
 ………本当に打算通り。

 彼は“完全には信用なんねーけど””判断は本部さんに任せるけど”と情けない二の句を継ぎながら。
 あなたと後継機の擁護をした。

 …いやあるいは、そもそも聞いている側が、最初から答えを出していて。
 それを言わせたかっただけかもしれないが。

『UGN本部エージェント』 :
  ユーティリティ
「…”万能工具”」

『UGNエージェント』 :
「う…ウス」

『UGN本部エージェント』 :
「礼を他人に代行させるような情けなさについては、無自覚なら改善しなさいね」

『UGN本部エージェント』 :
「でも、まあ……うん。
 概ね正論だ。よく言いました、の分で帳消しにしようか」

SYSTEM :
 それで結論がついたのか。
 彼は、軽く息をついてからあなたたちの方を向いた。

『UGN本部エージェント』 :
「3人分の…いや、ひょっとすると、もっと多いかもな…」

『UGN本部エージェント』 :
「…その分込みで、交渉のテーブルにつこう。
 ここ、テーブルないけどね。タイタンも派手にやったもんだ」

「私」 :
 「私」が理解を求めるより効果はあるだろう。そう期待した以上に事は運び、「私」たちは交渉の権利を得た。ここからが本命だ。

「私」 :
 先ず以て「私」に交渉の術はない。
 余地があるに過ぎない。提供できる価値を提示し、相手の懸念に対し否定材料を示すという。

「私」 :
「では端的に」

「私」 :
「私たちに名前はない」

 彼女の願いの一つであり、「私」も利便性の面で必要だと感じている。
 簡単な名称でもかまわないところ、あえて先延ばしにする理由はなかったはずだが、そうなっている。

「私」 :
「私たちは研究所から逃れた実験体であり、社会的な生存を望んでいる。UGNが互助組織であるならば、受け入れを要請したい」

「私」 :
 兵士
「人手不足と聞いている。デモンストレーションも果たした。そちらにも悪い話でないだろう」

『UGNエージェント』 :
「…ブ…ッ込みやがるなあ、おまえ…」

SYSTEM :
 つい先程まであれほど真剣に懇願していた若者も、
 まさか“あなた”がここまでストレートを投げ込むとは思っていなかったらしい。
 否、そもそもキャパシティオーバーもいいところだ。

 名無しの実験体が駆け込み寺のために、
 死地に飛び込んできたというだけでも、彼の世界の常識ではありえないことだ。

『UGN本部エージェント』 :
「でもああ言ったんだよね」

『UGNエージェント』 :
「…ス。二言も無理ですって…」

『UGNエージェント』 :
「この話の流れで本部サンが“じゃあサヨナラ”なんつったら、オレ、一生夢に見ちまうかも…」

『UGN本部エージェント』 :
「きみ、わりと前線任務向かないコだね」

SYSTEM :
 何も隠し立てすることのないあなたの言葉を、いつのまにか近くに歩み寄られていた後継機は、固唾を飲んで見守っていた。

 名前がない、という部分には事実だから目を細め。
 少年の一挙手一投足をじっと見守り…。

『第二世代』 :
「わたし、も」

『第二世代』 :
「…生きていたい」

『UGN本部エージェント』 :
「…相方が“兵士”を容認してるけど?」

『第二世代』 :
「戦うのはいいの。
 けど、戦う以外を、知りたい。じゃないと…」

『第二世代』 :
「…じゃないと、わたしは…。
 自分の命を”よかった”と言えない」

『UGN本部エージェント』 :
「………。そう」

『UGN本部エージェント』 :
「理由はわかった。…なるほど確かに…」

『UGN本部エージェント』 :
「彼も他のエージェントも傷つけず…。
 生き残り、ジャームの兆候も見えない。
 そして『万能工具』のモチベーションにも関わると来た。悪い話じゃあない」

SYSTEM :
 だけど、と、彼は口にした。
 少なくとも要件については理解した、とも。

 ………慎重に慎重に。
 あなたが出自を躊躇なく口にした辺りから。

『UGN本部エージェント』 :
「ただ、きみ…。名前のない、大きな守り人のきみ」

『UGN本部エージェント』 :
「UGNは確かに互助組織だよ。
 そういう目的で作られた。

 その文字が焦りで掠れて、曲解されて…。
 いくらかの時間が経って、目の前の目途が立たないところでも。そうだ」

『UGN本部エージェント』 :
「だから、きみの願いほど綺麗じゃない…。
 分かってて聞いたろ。だから今聞くんだ」

『UGN本部エージェント』 :
          ・・
「………きみのほうは、なぜ…。
 『礎工』を出たんだ?」

SYSTEM :
 概ね間違いではないが、それだけが全部でもない。
 最初からそこを縋りに来ただけの無知という様子でもない。あなたの横で身構える後継機はさておいて、あなたのほうは少なくとも…。

 対立構造とそのあり方を見てきたはずだ。
 使い捨ての兵士が知るべきでない余分を。

SYSTEM :
 あなたのほうは、
 置いてきた“留まる”あなたがいたはずだ。

 …知ってか知らずか、少年のかたちをした大人がそれをなぞった。

「私」 :
「……私は……」

 なぜ、に沈思する。

 生き長らえるだけならば、どこでも出来た。
 名前がなくとも、水槽で眠りに就こうとも。

「私」 :
「人間らしく死にたい」

「私」 :
「彼女とさほど変わらない。自分の命を”よかった”と言えるように」

「私」 :
 言葉にして、初めて自覚する。

 「私」には自分自身の欲求を理解することは難しいが、生物としての本能なのだろう。
 霊長として生まれ持った矜持、魂と言うべき情動が、不具の「私」をして願いを抱かせた。

「私」 :
「UGNに行けば済む話ではないことは、重々承知している。結局は私たち個人の問題だ」

「私」 :
 視線を、傍らに差し向ける。
 張り詰めた横顔。譲れない一線を、震える体で必死に守ろうとする後継機。

「私」 :
「だが少なくとも、彼女の願いを無碍にはしないだろう。生きた人間として尊重してくれることを期待する」

 少年に向き直り、要求を重ねる。兵士以外の行い。「私」には差し出せないものを。

SYSTEM :
 ………ああ。

 その要求のなんと素朴で。質素なことか。
 それは要求と呼んで然るべきものでない。
 動機と規定した言葉に宿る熱はない。否、結びつかない。
 
 だが、それでも。
 その身に宿った情動が、星を見た。

『第二世代』 :
「──────、」

『UGNエージェント』 :
「…ま、待ってくれ。死にたいっておまえそりゃァ…」

SYSTEM :
 隣る後継機は目をぱち、と見開いて憮然とし。
 違う世界の住人の素朴さに、非凡の中の凡庸ははじめて言葉を濁した。

 だが、それが余分を与える前に…。

『UGN本部エージェント』 :
「………………………。
 そうか」

『UGN本部エージェント』 :
「いいよ…わかった。僕が責任を取ろう」

『UGNエージェント』 :
「ほ…本部サン? マジすか?」

『UGN本部エージェント』 :
「ああ。テレーズちゃんにとっては何人目かわからないし、その点は迷惑をかけることになるけど…」

『UGN本部エージェント』 :
「それでも始めは…きみがいいな」

SYSTEM :
 後で名前、決めたら教えておくれ、と。
 彼は、一度言葉を区切って続ける。

『UGN本部エージェント』 :
「…人は生まれ方を選べない。生まれ持つモノも選べない。
 それをひっくり返すことについてだけは、だれにもできない」

『UGN本部エージェント』 :
「どんなに望んだってね…」

SYSTEM :
 あなたの事情を知ってか知らずか…それは、あなたの不可能/諦観をなぞるような響きだった。
 後継機の目が鋭く細められ、食って掛かる五秒前の姿勢を押しとどめたのは、
 その続く言葉が、今までの値踏みするものとは、どこかが酷く違っているように聞こえたから。

『UGN本部エージェント』 :
「ただ…選べるものはあるんだ」

『UGN本部エージェント』 :
「なあ………」

『UGN本部エージェント』 :
「きみたちはどう生きて………。
 どう死にたい?」

SYSTEM :
 勧誘というには。
 残酷な“使い道”の言葉で。

SYSTEM :
 消費のためというには、なにか。
 星空に描く夢想を語るような言葉。

SYSTEM :
 ………後にして思えば。
 その、あまりにもひねくれた“何になりたい?”を語る少年の声は。
 いま
 2年後になっても、この瞬間しか聞いたことのない声だったように思う。

「私」 :
 特に異もなく、同意のように頷く。生まれ方は選べない。
 ただ。不可逆を語る声色の遠さと、続く問いかけを……「私」は永く記憶した。五秒前で押しとめられた彼女の反駁と共に。

「私」 :
「…… ……」

「私」 :
 具体的な指針を模索していた思考を、誰に言われるともなく放棄する。

「私」 :
               星空
 浮いた手を導かれて、真っ新な画布に置かれたのだと分かってなお、夢想から隔たった「私」の指先は動かない。

「私」 :
「人間として」

 震わせる。爪先が掠めるように。

「私」 :
「できることなら、善い人間として」

 身じろぎ程度の自由でも、一つでも多く自分をかたちにする。

SYSTEM :
 二度繰り返す。
 地を這い、一つでも多くと爪痕を刻んだ小さな星灯りを思う。

 生誕の時を経て、死を思う。
 命に許された自由というには、あまりに残酷だ。

SYSTEM :
 だがそれでも。願うべきだ。
 その手はまだ、一度だって。

 是非を確かめていないのだから。

SYSTEM :
 あなたの後継も同じことを願った。

 人間として、と。
 その選択の権利を持って生まれた自分/命を誇るべく。

『UGN本部エージェント』 :
「覚えたとも」

『UGN本部エージェント』 :
「…それを以て…きみは。
        UGN
 きみたちは、世界の防人だ」

SYSTEM :
 非日常に踏み込んで少しの若者は、UGNを先ほどあのように定義した。居場所と。
 少年のかたちをした大人は、UGNをそのように定義した。守り人と。

 …どちらがあなたにとっての是非なのかは、それが衝突せぬ以上、あなたが決めればいいことだ。だから、彼は続けて、門出の挨拶代わりにこう告げた。

『UGN本部エージェント』 :
「………僕の名前は────」

SYSTEM :
 名乗る名を持たないあなたたちに、彼は最初に名乗った。
 二つの意味を伝え。どちらでも、好きに呼ぶといい………そう付け加えた、最初の参考例。

SYSTEM :
ブロンテス
 “紫電”………産み落としたものからは存在を認められなかった、ギリシャ神話に紐づく稲妻の巨人。

SYSTEM :
コードネーム
 識別符号をそう示した、少年のかたちをした大人の名はノヴァ=エヴァンズという。

SYSTEM :
 あなたたちの、今の上司の名だ。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 そして………現在へ至る。

SYSTEM :
 UGNを二分する穏健派と改革派、その前者に属していた”紫電”とその上司にとって、
 FHから転向を果たした人間は、珍しいが、珍しすぎるわけでもなかったらしい。

 加入の際に幾度かの悶着とニアミスがあり、シンドロームと機能の測定、安定化や教育を経ながら…。
 完全に望み通りかは数ミリ程度の差異もあるものの、おおむね、当時の打算通りの答えを得ることが出来ていた。

『万能工具』 :
「なあ。オメー名前まだないの?」

“紅玉” :
「………もう付けた」

『万能工具』 :
「いやオメーじゃなくてだな…、
 もうそっちは養子縁組? の話まで出たらしいじゃねーか。戸籍用とかで」

“紅玉” :
「…“礎石”のほうが。また『そのうち』」

SYSTEM :
 なんとなく不服気に、あなたの後回しをつついてきた後継機…。

SYSTEM :
 曰く、聖地の城壁。楽園の礎石。生命と不死を司る、緑の石………。
 廻る生命を費やす労役と、星下の誓いが、彼の報いになるように、と。

SYSTEM :
    スマグラド
 あなたに“礎石”とコードネームを付けた/願った少女にも。名前があった。

SYSTEM :
        コード
 あなたが願った識別符号と、
 彼女が欲しがった名前………。
カルブンクルス
 “紅玉”が前者の名前。

 後者の名前/人間社会向けの定義は、クィン。苗字候補はおそらく(借りる候補の都合上)エヴァンズで、成立したらクィン=エヴァンズ。

SYSTEM :
 “紅玉”というコードネームは、ラテン語で小さな炭火を指した。
 英語圏内で「理性」を…オーヴァードの証を指す言葉と、消えない光に例えた小さな灯。生存を願う言葉の掛け合わせ。

 ふたつ宝物をもらった贅沢への喜びを隠しているつもりの彼女が、
 あなたが“コード”以外を求めなかったことに気付き、”二つ目の名前”を催促する(強請る?)ようになって、これまた時間が経つ…。

『万能工具』 :
「だってよー兄ちゃん!」

“紅玉” :
「その呼び方やめて」

『万能工具』 :
「じゃあMrホワットノッ、」

“紅玉” :
「もっとやめて」

"礎石" :
 「私」と彼女にとって、激動の二年間だった。
 他者との交流が増え、蓄積した知識の多くを是正され……。自らを石の鏃にして、射手の意のままに放たれるやり方は、もう過去のものだ。

"礎石" :
 「私」の身体は今も増殖と伸張をくり返しているが、本部のケアを存分に受けられている。
 二メートルに迫る長躯と仮面に覆われた顔は、率直に奇怪だが、支給された装備の数々があればこそ、この程度に収まっていると言うのが正しい。

"礎石" :
 一番の変化は、やはり名前だろう。かつての彼女の望みを果たしたのが「私」であることを、「私」は誇りに思っていいはずだ。残念ながら、実際にそうだったかを判別するのは難しい。

"礎石" :
 「私」は概ね直感的に、せがまれるまま名を与え、その返礼を受け取った。

"礎石" :
「背負うべき意味なら、もう持っている。それ以上は贅沢だ」

 今の「私」は”礎石”だ。過不足なく、そうで在り続けられるのなら十分だ。
 それに、

"礎石" :
「私にとって、きみは妹と呼べる存在だ」

 それは『万能工具』の発明の中で、もっとも有益なものだった。
 『礎工』の研究内容──第一世代である「私」と、その別型後継にあたる彼女の所以を明かしたとき、彼が漏らした感想。

"礎石" :
 掘り下げてみると、血縁の有無は必須ではなく。年齢による区分があり。年嵩の者が年少の者を保護する。なっとくだ。

"礎石" :
 所属の経緯が経緯だけに、関係を訊ねられることもままある。概ね「私」はこれで押し切っていた。

"礎石" :
 彼女がお気に召さない偽名についても、こんな「私」でも市街に出る必要はあり、いつ名乗ってよい名前がないのは不便だという、取り立てて特別ではない理由があった。

SYSTEM :
 …なお、例の偽名について定期的に向かう抗議の一番の理由はこうだ。

“紅玉” :
 だれかさん
“ホワットノットじゃない…”

SYSTEM :
 またの名義をその他いろいろ。
 オーヴァードではないあなた、と定義する名前がそうなこと、あなた個人の積極性のなさから来るその名前の定着を、どうにか回避しようとしている筆頭の小さな目論見は…。
 まあ、今のところ実を結んでおらず、諦めるにも至っていないのである。

SYSTEM :
 閑話休題。

“紅玉” :
 そう
「事実だけど…。
 その呼び名にはひとつだけ不服がある」

“紅玉” :
「…背の差異の説明がつかなくなる」

『万能工具』 :
「ああ、軽く見積もっても30から40cmは…。
 いや、気にするとこソコか?」

“紅玉” :
「兎に角…あきらめてない。回答終わり」

SYSTEM :
 ………UGN本部、ベセスダ。
       バックトラック
 既にここが、帰り道の追憶を辿った先にあるものとなってから、早2年が経つ。
 思った以上に、訳ありと訳なしをどちらも見かけながらの、エージェントの合間を縫った人間社会への理解と試行。時間が余ることはそうない。人生の持ち時間が決して多くなくても。

SYSTEM :
 普段より幾日多めの休暇のち、あなたと“紅玉”はいまの上司に…。“紫電”に声をかけられた。
 普段より大がかりの仕事になるときの前倒しだ。

『万能工具』 :
「ところでオメーら、この後は…」

"礎石" :
 と、このように。
 ”紅玉”……いずれクィン=エヴァンスとも呼ばれるだろう彼女は、頑固者だった。

"礎石" :
「”紫電”からの呼び出しだ。ランチの誘いなら一歩遅かったな」

 そちらは? と”万能工具”へ首を傾けてみる。

 ほとんど直立不動で過ごしていた二年前に比べると、これも進歩の一つだった。表情を持たないハンデを補うボディランゲージ。

"礎石" :
「経験から察するに、大仕事か。……」

"礎石" :
            ・・・
「パターンが掴めてきた。らしくなってきたかな、これは」

 ベテランには及ばないが、ルーキーは卒業済みと言っていい。何の証書や認定があるでもないが。

『万能工具』 :
「さてはこないだの、(任意のコードネーム)さんへのお誘い見てやがったな………」

SYSTEM :
 ちなみに昼にランチの誘いを仕掛けた彼は悲しきかな撃沈済み。
 当時の全滅間際だったチームの一人である。“友達の友達”レベルの交友関係が幸いにも命を保って続いたため、得られた感想的に言うと、彼の片思いは全く別の方向を向いており、実りそうもなかった。

 閑話休題、それはともかく。

『万能工具』 :
「…あ、未だにその仮面越しにメシ食う時の謎解明できてねーんだった! 考えてみりゃソレもアリ───」

『万能工具』 :
「じゃなかった、メシの話から離れるわ一旦。
 オレはついこないだ任務終わったばっかだよ。ほんとは今でもドンパチやりがちなシカゴの応援だったんだけど、直前に“待った”かけられて、スケジュールズレ込んでるうちに別の仕事」

『万能工具』 :
「で、ああ、本部サン…“紫電”さんからのやつか。
 前言ってたな、休暇が普段より長かったら黄信号だっけか? 中々板についたじゃんか!」

“紅玉” :
「30分前に着こうって言ったのに…」

『万能工具』 :
「オメーは29分待ちぼうけする気なのか?」

SYSTEM :
 アメリカは“荒事”の本場だ。それは表社会のそのまた裏側の裏側でも変わらない。
 UGNの本場のひとつで生き延びてきたあなたのコミュニケーション能力は後天的人並みに近づいている(もしくはそのものになっている)が、それは偏にあなたの努力だと言っていいだろう。

 ある意味それも生きるための戦いだった。

SYSTEM :
 余談だが、“紅玉”が到着を急ぎたがるのは不測の事態が起きてもいいように、だが。
 別に、あなたが示したか妥協した今においても、会話の時間を加味しても余裕をもって間に合う時間である。

 基本、悲観的なのだ。待ちぼうけで毎回若干の後悔をまとうくせに。

"礎石" :
 不運な目撃者に曰く、サンチが削れる。その謎は開かずの箱にしまっておくのがよいだろう。

"礎石" :
「それはまた、多忙だな。例に漏れず」

 仕事に次ぐ仕事。持ち場の異動は茶飯事で、行き交う人間の多くが経験者だ。
 「私」たちは折よく休暇が差し込まれたが、巡りによっては世界地図の端から端を渡ることもあるのだろう。あるらしい。

"礎石" :
 自覚はないのだろう。率先して待ちぼうけをしに行き、所在なく爪先とにらめっこをする彼女の姿は、ことのほか悲壮だ。

"礎石" :
「する気らしい。私の現場判断で、29分間の(精神的)迷子を防いだ。治安維持の一環だな」

"礎石" :
「ランチで釣れるので、必要な場合は活用するといい」

"礎石" :
 既に食事が済んでいる場合、「私」が(物理的)迷子になることで対応している。

SYSTEM :
 待ちぼうけが人間社会にちなんだものであれば本だの何だのも受け取るが、任務前のブリーフィングとなると別だ。
 本人的には(聊かに背伸び気味だが)勤勉であろうとしているらしい。

“紅玉” :
「なってない、釣れない…」

『万能工具』 :
「そうか 朝食のオキニは?」

SYSTEM :
 パンケーキの“パン”あたりまで出かけた。片手がグーになる。さっと後ろにステップを踏む『万能工具』。

“紅玉” :
「もういい。知らない。
 ………」

“紅玉” :
「大仕事…なのは、たぶんホント。
 区切りついたらいこう。『万能工具』も引っ張って」

『万能工具』 :
「おー、大事無かったら奢りにしてやるよ、先輩(※数日)らしくな!」

『万能工具』 :
「そっちもだ”礎石”! 有言実行してやっから採点頼むぜ」

SYSTEM :
 はじめ打算で助けた彼は、だいたいこのように。
 今では立派に、任務帰還後、脇道に逸れるような知識の出所だったり、たまに真面目なモルフェウス周りの研究成果を見せに来るような間柄であった。

"礎石" :
「好きを恥じることはない。いい兆候だ。私としては、蛋白質の摂取量を増やすことを推奨したいが」

 ホイップの上に「それでは少ないだろう」とサーロインを追加したときは、かつてない抗議を受けた。二度としないと誓約書も書いた。

 思うにあれが、正しい気遣いを学ぶきっかけだった。難しい。

"礎石" :
「ああ。では大事なく、恙なく」

 人見知りのきらいがある”紅玉”が、見知った相手には能動的に誘いをかけられるのは良いことだ。
 見て、知る、の範囲を広げる手伝いを”万能工具”が無自覚にしてくれていることも。

"礎石" :
「時に私の場合、食事か補給かで額が変わってくるが」

 ニヤリと気配で笑む。ボディランゲージに次いで、表情に代わる「私」の非言語。

「後輩らしく、甘える練習をするのも悪くはない」

"礎石" :
「かわいげとやらは未知の分野だ。やるからには私も満点を目指そう」

"礎石" :
 他愛ない会話。軽口の応酬。明日の約束。

 みな、今生きる場所で学んだ。そうしたものを好ましく思う価値観と、その価値観の在り処を重んじる意味を。

『万能工具』 :
「ギャップの極致じゃねーか! 目指すならカッコよさだろその図体!」

『万能工具』 :
 あとさり気なく言ったけどいま額の違いっつった!? 早まったオレ!?

SYSTEM :
 だが、『万能工具』は二言に頭を抱えながらも、凡そ常識的善性が邪魔をして貧乏くじを引く類の人間だった。

 あとで領収書に対して覚悟を持って挑むことになるだろう。

SYSTEM :
 ところで、最後に話はまったくもって変わるが…。

SYSTEM :
 かつて、というか今も“必要量は管理している”というわりにやや食事量にムラのあり、
 特に片方のシンドロームはブラム=ストーカーの“紅玉”について、客観で“不足”だった頃。

SYSTEM :
 あなたの善意は、彼女の人生初めて見出した暫定好物ランキング上位に対し、かつてない地獄を舗装した時があった。

SYSTEM :
 その時、あなたは生涯三本指ほどの絶望と相互不理解を嘆く声を聴いた。

“紅玉” :
(※表情と音声はイメージです。実際の光景とは異なる場合があります。) 

“紅玉” :
(※表情と音声はイメージです。実際の光景とは異なる場合があります。) 

SYSTEM :
 一日のうちに喜怒哀楽が高速で回転した”後継機/妹”を前に、あなたがそこそこの反省と、やけに感情の籠った誓約書に向き合った当時のことである…。

SYSTEM :
 ………思えば。

 そんな体験談を含めて、あなたが得たものだった。
 かつて不可能だと諦め。永久にかつて可能だった一擲を置き去りにした己と共に代価としたもの。

 決して楽な道程でなく、今からの任務も同様であることを知りながらも。
 ただそのような理解こそ、あなたが示す名の通り、秩序の労役者たる“礎石”が得た正当な報酬の一部だったのかもしれなかった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 だいたい集合時刻3分前に、あなたと“紅玉”は辿り着いたが。
 到着したあなたたちを出迎えた人物は、それより早くに席についていた。端的に自分の部下の性根を知っているから、とも言える。 

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「早い到着だったね。“礎石”、”紅玉”」

SYSTEM :
 2年前から全く変わらない容姿の、信じがたいことに稼働年数/年齢でいえばあなたよりも上の少年。
              ブロンテス
 ノヴァ=エヴァンズ。あるいは“紫電”。
 平時はどちらで呼んでもいいよ、と嘯いた彼が、あなたたちの正式な上司だった。

SYSTEM :
 UGNも、彼の上司/テレーズ・ブルムも、あなたたちのような訳ありを抱えることは、そうそう珍しくもない。
 そもそもオーヴァードになること自体が不可抗力で、それまで、を失うケースだって全くないわけではないからだ。

SYSTEM :
 彼自身の姿勢は、あなたたちが納得する程度にあなたたちを利用しながらも、あなたたちの望みに手を添えてきた。
 そのうえ幸いなのは、それが冷徹な打算だけからくるような、か細い命綱でもない、ということだ。2年間、一度も変わらず。

"礎石" :
「早すぎる到着を未然に防いだおかげで」

 どうも、と手会釈。

 デスクを挟んだ対面。かつて名もなき「私」たちに、先んじて名を明かし、「私」たちが贈り合った名前を一番に知らせた相手がいる。

"礎石" :
 ”紫電”──あるいはエヴァンズ姓の、生来の持ち主だ。

 人生の過渡期に見える外見は、しかし二年前と変わらない。いかなる時も湛えられた薄笑みは、常のように「私」たちを出迎えた。

"礎石" :
 彼との取引は、ある意味で今も続いている。
 価値を差し出し、対価を得る。だが公平ではなかった。
 天秤が常に「私」たちに傾くのは、彼があの誓いを今も守り続けているからだろう。

"礎石" :
 責任を取る、と。
 「私」たちは彼の管理の下、世界の防人を担う権利を得た。二年間、それは一度も損なわれることなく。

"礎石" :
「労働意欲は十二分。ご命令をどうぞ」

 へりくだるのも、時には軽口だ。少なくとも私は、より良いふるまいを選択する以前から、彼には気安さを感じている。と思う。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「やれやれ…せっかちだなあ」 

SYSTEM :
 表情が伺い知れないというのを差し引いても、
 長く付き合えば付き合うほど、その2mの長身は日に日に表現力を増していった。
 遜った形の冗句に、眉を下げた苦笑。客観視した場合、どちらが大人なのか定かでない。

SYSTEM :
 あなたの身体年齢の想定ラインと照らし合わせるのであれば、答えは両方だが。
 精神的ラインでいえば、あなたはまだ“過渡期”と言って差し支えない頃合いだ。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「そう言うもんじゃないさ。5分前行動くらいなら立派なマナーの範疇………なんだが。
 教えるにあたって、何事も程々であるべきだ、という前提とセットのほうがよかったかもしれないね」

SYSTEM :
 むう、と腕を組む“紅玉”。気を付ける、という小さな呟き。
 反省もしくは内心で別の思慮をしているときの声は、平時より若干小さくなる。それはそれとして。

“紅玉” :
         38%と43%
「同文。検査結果は双方平常」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「うん。とりあえず…通達前にドクターストップがかかる数値でもないか。
 じゃ、モチベーションも永続無限じゃない。話を始めよう。いいかい?」

SYSTEM :
 長期の任務と分かり切っている場合は、彼は最初に断りを入れてくる。そういうタイプだ。
 ちなみに、断りを入れたからと言って辞退できるかは状況による。

"礎石" :
「程々が難しい。私もまだ慣れない」

 ”紅玉”には「気にするな」のつもりで、反面”紫電”には肩をすくめて応じる。
 なにせ程々なるものは、経験が物を言う万能規格だ。「私」と”紅玉”はいまだ習熟の過程にある。

"礎石" :
 38%と43%──ともに基礎値は平均をいくらか上回るものの、いたって正常な数値だ。首肯で同意を示す。

"礎石" :
 ”紫電”の長丁場を見越した確認。かつて彼の手口に嵌まった記憶が蘇る。
 提示された物事の多くを拒まない「私」の性分を指摘されたのは、その時だったか。

"礎石" :
 しかし「私」にしてみれば、たんに断る理由がなかったに過ぎない。
 もし南極大陸に無期限の逗留を求められたとしても、「私」は頷くだろう。

"礎石" :
「ああ、お聞かせ願おうか。判断するのはそれから、だろう?」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「その通り」

SYSTEM :
 彼のソレは半分程度は進退を問う言葉ではなく“こうなります”という事実確認だ。
 組織人の世知辛さを大人の強かさで上塗りして相殺する、とも言う。

 …しかし言い換えれば半分はそうでもない。
 あなたは彼のその言葉の段階で躊躇なく───厳密には首を横に振る理由がないために、二の句も継がずに承諾し。
 呆れ混じりの応答を受けたことがあった。

SYSTEM :
 そのような傾向を見越して“紅玉”はあなたに“礎石”の名を授けたわけではないし、
 それもまた習熟中の───人間社会的に言うなら研修期間中のことである。

 学習とは失敗から生まれるものであった。
 下手すると問題児すれすれもいる本部の中で、見た目以上の優等生という認識が途切れないのがその証拠かもしれない。

“紅玉” :
「今回のは…」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「長くなるかどうか? さて、そのあたりも踏まえてブリーフィングだ」

SYSTEM :
 今回のは少し予想の付き難い案件だからね、と付け足して、彼は説明に入った。
 モニターには、比較的他の生活圏より慣れ親しんだ北米大陸がアメリカ合衆国が映し出されている…。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 その目的地点として示唆されたのは…。
 アメリカ合衆国、イリノイ州シカゴ。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「イリノイ州のシカゴにおいて、潜伏するオーヴァードテロ集団…。
   ネイムレス
 通称【刻知らず】の検挙にあたってほしい」

“紅玉” :
 Nameless
「…“刻知らず”?」

“紅玉” :
「だいたいシカゴは、いまも激戦区だって話をしてたはずだけど」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「まあね。シカゴには現地支部がある。
 1年前に丁度立て直したきり、侵入の絶えない鉄火場だ」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「…そこがどういうつもりなのか他支部に応援要請を出していてね。
 間の悪いことに、近隣支部の手が空いてない状態と来た。件の組織とFHの二面を嫌がった、で済む話ではあるんだろうけど」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「ちょっと引っ掛かる。
 だから要請受理がてら、テレーズちゃんのところのオーヴァード…。“道化の真実”が査察に当たる予定でね。
 彼が緩衝役をやっている間に、事実確認のち、事実なら実際に検挙、という話になる」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「現場での判断で理念に偽りを混ぜるかどうかは君たちが責任を持ち、君たちの行動の成否はUGNが責任を持つ。
 そのあたりはまあ、教えた通りだ」

“紅玉” :
「………本当に“道化の真実”?」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「ほんとに“道化の真実”。
 聊か…ほんの少しタチは悪いけど、悪い人じゃないよ」

SYSTEM :
 かつて初対面で質問攻めに遭った事実を不機嫌気味にあなたに報告した”紅玉”が少しだけ唇を尖らせた。

 しかし、それはそれとして、話としてはこうだ。

SYSTEM :
 (“紫電”曰く)平時よりFHの襲撃を散発的に受け続けるアメリカ支部の中でも、特に頻度の多いシカゴ支部からの態々の応援要請。それが、今回の発端らしい。

"礎石" :
「……奇妙な言い回しをする。オーヴァードのテロ集団は、FHと呼んで差し支えないと思うが」

 呼び分ける根拠でも? と問いを挟みつつ、続きを促す。

"礎石" :
「人手不足は世の常だが、とはいえだな。中西部の田舎に手を伸ばすほど困窮している上、フージャーもアナグマも忙しいときたか」

"礎石" :
「ああ、噂の……」

"礎石" :
 セント何だかとかいう。

"礎石" :
 ”紫電”が悪い人ではないと評するなら、警戒は不要だろう。
 しかし彼をしてタチが悪いと言わしめるなら、警戒は必要だろう。

"礎石" :
 結論、ニュートラル。

"礎石" :
「疑念の残るシカゴ支部については専門家に任せて、私たちは現場仕事と。分かりやすい構図だ」

"礎石" :
「では教わった通りに。労働の喜びを分かち合おう」

"礎石" :
ハハハ。

“紅玉” :
「判断が早い…分かち合うって、わたしと、あとは誰と誰に」

“紅玉” :

SYSTEM :
 …万能工具? と首を傾げた彼女は意図的に“道化の真実”の間合いを取った。好き嫌いというよりは初見の印象苦手寄り威嚇。

"礎石" :
                 ボス
「それはもちろん、責任を負う我らが上司に」

"礎石" :
「事と次第によっては、”道化の真実”にも。適材適所とはいえ、私たちにできない仕事を代わってもらうんだ」

"礎石" :
「いいじゃないか質問くらい。いっそ、きみも聞かれた数だけ問いを投げればいい」

"礎石" :
 そもそも何を聞かれたんだろう、と顔を覗きこむ。とんがった唇を人差し指で押し戻しながら。

“紅玉” :
「………。はじめはシンドローム。家族構成。住所。“紫電”の印象、この顔に見覚えないかと改革派の“ミリオンサンズ”の表情───」

“紅玉” :
「………………」

“紅玉” :
「しらない。話戻して」

SYSTEM :
 あとにして曰く。

 UGN本部ベセスダにまだ馴れていない時の、あわれな物理的迷子が、タチの悪い犬のおまわりさんに接触しただけの話であった。
 つまり聞いたのは保護者の話。

SYSTEM :
 それはそれとして最初や合間合間に知的好奇心の話題が入っていたようだったが、

 研究者というファクターへの対応がこの程度───つまり“苦手”───で済んでいるあたりが、ある意味彼を良しも悪しも変わり者と認定できる根拠だった。

SYSTEM :
 閑話休題。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「質問で返すならテレーズちゃん周りの話で…いや、彼女にも諸刃の剣だな。
 でも悪くないチョイスだ。仲良くできるかもよ」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「とりあえず、話を戻そう。さっきの“礎石”の疑問のコトもあるしね」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「ここのところ、世界各地で発生する電子機器のちょっとした暴走事故…。
 のみならず、各地の発電施設の不可解な停止を原因とする『停電』…」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「これら…あるいはこれらにかこつけた、事件発生後の小規模な騒ぎのほうか。
 小火騒ぎの笑い話や御伽噺で済む範囲のやつと、そうじゃないやつ。だいたい1:4。それをずいぶんな頻度で引き起こしている者たちの名が【刻知らず】」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「“オーヴァードテロ集団”扱いしてるのも、連中がただでさえ少ない主張と痕跡の中で、単に自らの旗色をどちらにもしていないからってだけだ。
 キミの言葉通り、“其方”と明言しても然して支障はないよ」

SYSTEM :
 活動規模、人員ともに不明。少なくとも、後者は小規模。目的意識も定かでない。

 要はゼノスの前例もあるから“とりあえず”別のラベルを張っている程度の案件だ。扱いとしてもっとも近いのは、やらかしの傾向も加味するに、FHで相違はない。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「ああただ…、リーダーについては名前がわかってる。
 冗談みたいな名前だけどね」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
ニコラ・テスラ
「《雷 人》」

“紅玉” :
「ニコラ・テスラ…?」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「そ。…こないだどの辺りまで教えたっけかな」

SYSTEM :
 電磁を制した十九~二〇世紀の天才科学者。
 人間の文明に「電気」を齎した偉大なる碩学のひとり。

 それが組織内において唯一、内外に判明している首魁の名だ。
 …その名を僭称するものの所業が、よりによってテロリスト。

"礎石" :
「事故に便乗するテロリスト、か」

 小火で済まない被害が圧倒的多数。主張の見えない暴力である以上、FHと断定しない/テロリストと仮定するのは、あくまでも便宜上の措置だ。

"礎石" :
「……どうも妙な話だ。発電所の停電だけでも一般社会には大打撃だ。騒ぎを起こすまでもない」

"礎石" :
「まさか世界規模でランダムに発生する事象の後追いをしてるとでも? それこそ説明がつかない」

"礎石" :
「ニコラ・テスラ……」

 人類史における貢献者──無数の礎から、電気技術を発展に導いた偉人の名を選んだ男が、その途絶に乗じて騒動を起こしていると。

"礎石" :
                  Brontēs
「そのユーモアに則るならば。私たちは、雷鳴の徒になるな」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「我ながら、ゼウスの仇討ちって例えるとすごく縁起が悪いな、ソレは」

SYSTEM :
 神話から「電気」を簒奪した人類の味方と、その電気の持ち主に価値を見出された袋小路の巨人だ。皮肉なのは前者が、概ね確信的に人類の敵容疑がかかっていることである。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「どこの国の、いったいどの組織に結びついているかを、表沙汰には示してない…。
 こんな名前を使ったやつの所在がFHなのか、他所の国の研究機関の“やらかし”か、はたまた………だ」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「うん。どちらにしたって、野放しにする理由はない。
 説明がつかない上にそう思わせたいだけ、というのもあり得るほどだが…」

“紅玉” :
「要請が事実なら、シカゴに…。
 その事象に結び付くようなのがいる、ってことになるはず」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「そう。しかもシカゴの病院一つを使って潜伏した、という事実と重なってしまうと……だ。
 対応を急ぎたいのは当然の判断だよ」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「…言うまでもないことだけど、想定する最悪と、その対処の仕方はわかるね?」

SYSTEM :
 想定するべき最悪は、巻き添えとなる市民がいた場合、だ。
 銃を持つ持たないはおろか、そもそも使い方を知らない人間がいた場合の話。

 市民を守る、というのは軍人の仕事だが。
 軍人の領分でない現象が薄氷にひびを入れるのを…少なくとも“致命的な罅”を避け続けるのを、20年以上この組織は続けてきた。

SYSTEM :
 ………鉄火場向けの二人一組/”礎石”と“紅玉”だが、広域に派手な火力を叩き込むようなエフェクトには彼ら彼女らは乏しい。むしろ、閉所の局地戦のほうが得手だ。

 あなたに至っては更に得手な行為もあった。

SYSTEM :
 彼の言い分の限り”市街戦”向けの人材は、本部か、他から招集できるエージェントないしイリーガルで補填するのだろうが、その第一にあなたたちを選んだのはこの辺りにも起因するのだろう。

 万一、病院内で戦闘になった場合、だ。

"礎石" :
「病院に? シカゴ支部の手が回らないのをいいことに、大きく出たな。それも不透明な主張の一環か」

 【刻知らず】のこれまでの活動と照らし合わせると、目的はライフラインへの攻撃と取れる。素直に解釈するなら、だが。
 他方、例の暴走事故との因果関係は不明だ。事故現場に追従する神出鬼没の少数精鋭【刻知らず】が、一所に狙いを定めた理由も。

 ”紅玉”の推察に肯く。事は一刻を争う。

"礎石" :
「人命を守り、事態を鎮圧し、損害を抑える。問題ない。ただ……」

"礎石" :
 「私」個人がUGNの理念に同意する必要はない。
 規定通りに業務を遂行し、事態を解決する。

 それが「私」に課せられた義務であり、
 市井に居場所を持たない「私」にとっての社会活動だ。

"礎石" :
 わけても病院での交戦が予測されるとあれば、本部エージェントの花形より「私」たち向きだ。
    コツコツ
 地道に物理物理と。

"礎石" :
 時に。ただ、の続きになるが。

          アフターケア
「清掃局の手配を頼む。記憶処理の備えもあったほうがいい」

 閉所での被害抑止は「私」の分野だが、難点がひとつ。
 「私」は、現場を汚す。

"礎石" :
 ワーディングとて絶対ではない。無症状のAWF体質や敵方の妨害、時間経過による解除。
 「私」自身にしろ「私」の痕跡にしろ、見られずに済ませるのが一番だが、毎回うまくはいかない。

"礎石" :
                    ルーキーの洗礼
 ジャームの攻撃から市民を庇った折、『来ないで! 化け物!』を受けたことが思い出される。

"礎石" :
 救護対象に精神的苦痛を与えるのは、端的に望ましくない。
 なにより恐慌状態の市民と怒る”紅玉”を同時に宥めながら避難するのは、倍以上の労力を要した。できれば避けたい。

SYSTEM :
 あなたに至っては更に得手な行為。それは事実だったが、同時にあなたが語ったことも含むべきではあった。

 キュマイラシンドロームはその性質上。
          ・・・・
 非常に分かりやすく人間離れする。

SYSTEM :
   シンドローム
 あなたの構成は、こと変性が内側で完結し、また人体の変化とは無縁の“紅玉”と比較してあまりにも其方に特化する。

 ワーディングの機能不全と乱戦状態でやむを得ず人命を優先した時のあなたに浴びせかけられた心無い/至極当然の一言に対し…。
 そもそもあなたがいて/自分の望みに最も近しいからこそ、UGNなるものに対し、空回り以上に努力している“紅玉”の反応たるや極めて直線だった。

“紅玉” :
             マシ
「別に…記憶処理で済むなら幸運と思ってほしい」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「その“マシ”のため、ひいては“なるべく良いほう”のためにキミたちが行くんだ。
 だから、わかっているよ、手配する。

 アメリカのどこの州も暗黙の了解があるって言ったって、それは良しも悪しも理性のある相手の話だからね」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「そういうことで…僕の口から“念のため言っておくけど”が必要なころは卒業できるね、”紅玉”」

“紅玉” :
「………努力する」

SYSTEM :
 ちなみにこれは確約ではなかった。
 誰から学んだのかは敢えて伏せる。

 わかっているので“紫電”は話を切り替えた。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「行動にあたって合衆国にも調査許可申請は出したけど…まあそっちの助けは、そこまで期待出来たもんじゃないかな。
 おさらいするけど。仲、良くはないんだよ。あっち」

SYSTEM :
 そしてここはUGNにせよFHにせよ、土台はアメリカ合衆国だ。
 特に、社会秩序とよろしくやっていくつもりの前者が、彼らの機嫌を丸ごと無視する暴君にはなれない。

 …これは20年の間、世界各地のR案件に関して変わらない事実だが。
 そんな各州に根付いた彼らを、合衆国首脳部がどのように見做しているか…。

SYSTEM :
 片手では握手をし、片手ではナイフを握りしめている。
 魅力的なビジネスパートナーであると同時に、潜在的な危険因子。
 昨今のUGNの混乱を以て、特に米国からのUGNの扱いは、どれだけ彼らの“資産”をこちらに落とさせるか…。
 そうした側面が決してないわけではなかった。

 決して敵対的ではないことを前提としたうえで、胸襟を開いて話し合うような、友好的な関係ではないことは確かだ。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「そもそもシカゴ支部の再建だってつい1年前のことだ。
 きみたちがこっちに来るちょうど1年前だから、3年前かな…。その時の騒動以来、テンペストとは組織間の距離も離れてる。

 人員はバックアップも含めて、基本的にUGNやイリーガルのほうから出るものだと思ってくれていいかな」

"礎石" :
 ”努力する”と”善処する”は非常に便利な文言であり、上は評議員から下はエージェントまで幅広く活用されている。御覧の通りに。

"礎石" :
「了解した。疑わしい身内と付き合いながらの外交は、少々どころでなく骨が折れる。UGN主体で動けるなら、それがベストだ」

"礎石" :
「追加の人員について情報は?」

SYSTEM :
 ”紫電”は一度頷くと、資料をあなたのほうに手渡した。

 名簿の中に“万能工具”なる見知ったコードネームがあったが、彼はバックアップ・チームの側である。休暇の終わりをドッキリのごとく伝えられる側だったらしい。
 とはいえ、だ。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「直接任務に関与予定なのは三人。
        コギト・エルゴ・スム
 “アガースラ”と“故に私はここにいる”…。
 シカゴ支部の査察をあっちがやってくれている間、近いうちにこの二人とは対面してもらうと思うけど、折り合いはうまくつけてやって」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「もう一人は“道化の真実”のサポート。
 ただ彼女、ちょっと癖のある経歴のようでね…」

SYSTEM :
 名簿内にいるイリーガルの名は………。
  フォーチュンテイル
 曰く、“捧ぐ白翼”。

 その名簿の記載内容を真に受けるのであれば、海向こうから態々知人の頼みで渡ってきたところだという。
 癖のある経歴というのは、そもそもが“都合よく居合わせた”ことに対するものだろう。

SYSTEM :
 …序に。

“紅玉” :
「…念のため聞きたい」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「どうぞ」

“紅玉” :
「彼女、なんでメイド服?」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「ここでワンポイントアドバイスだ、世の中には…ごくごくまれに…わかろうとするだけ徒労なことがある。
 ほら、ジャパンにいたそうだよ、不思議な人助けのイリーガルとか」

SYSTEM :
 癖のある経歴は名簿内ですらなぜかメイド装束という部分も含むらしい。
 “紫電”の反応は理解をあきらめた、というよりは、そのあたりについてはそこまで重要じゃないから流した、だ。

“紅玉” :
「わからないけどわかった。
 …シカゴ支部のほうからは?」 

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「半分以上は本音なんだろうけど、あそこといい、合衆国の主要都市には隙あらば潜り込むのがいるからね…。警戒のための人数を割きたくないはずだ。
 割いてくれるとして、1チームくらいだろう」

"礎石" :
 ──アガースラ。
 ──コギト・エルゴ・スム。
 ──フォーチュンテイル。

"礎石" :
 渡された資料に目を通す。
 「私」たちが直接関わるのは、いずれも素性の不透明な少年少女たちのようだ。
 うち前者二名はいくらか情報が多く、写真が添えられてあった。
 いきなりフラッシュを焚かれたらしい少年の顔と、真顔でカメラに向けてピースサインを作る少女を記憶する。

"礎石" :
        ・・
「うまくやるさ。程々にな」

 どうあれ、当座の目的は同じ。一仕事の間の関係と向こうも割り切っているだろう。
 好い人間関係を目指すのは、あくまで「私」の個人目標だ。

"礎石" :
「”道化の真実”が手配したイリーガルは……給仕服?」

"礎石" :
 なんとかいう城の女中なんだろうか。そして、おそらくこれも徒労の一部だろう。

"礎石" :
「まあ……」

"礎石" :
「彼女も私たちに装いをとやかく言われる筋合いはないだろうな」

"礎石" :
 ”紅玉”が「私」に姓名を要求するように、
 「私」もまるだしの脚について抗議する。

 解決の兆しはない。

"礎石" :
「1チームもいれば、義理立てとしては十分だ。シカゴ支部のことは”道化の真実”に任せて、摘発はこちらで進めよう」

SYSTEM :
 譲り得ない平行線とは往々にしてあるものだった。実体験だ。
 あなたの予想外の方向から急カーブを描いて襲ってくる抗議に、彼女は…

“紅玉” :
サラマンダー
”熱操作能力”

“紅玉” :
“だから、べつに…気にしすぎ”

SYSTEM :
 自分の片割れのシンドロームを引き合いに出し、平時の服装はともかく、任務中の戦闘服(当時からの改修品)については納得せずの構えを貫いている。
 深い拘りがあるのかは定かでない。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「まぁね。僕がそうであるように…多少の奇天烈で驚くには長くやってきただろう。キミたちも」

SYSTEM :
 モニター上に表示された状況についての説明が終わる。
 目標はイリノイ州シカゴ、都市中心から外れた地点にある某病院。そこに潜伏するオーヴァードテロ集団の摘発だ。

 不測の事態───介入、想定外の伏兵、その他諸々───もなく、シンプルに終わるならばそれで済むことだ。

SYSTEM :
 とはいえ、シンプルに終わることなどそう多くない。オーヴァードが時に理屈ではないように、彼らを取り巻く出来事も当然、理屈をまれに飛び越える。
 あなたが、本部で活動してきた間の所感だ。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「…シカゴ支部再建前当時の出来事は…。
 まあ、任務に関わることでもないか。興味があったら、UGNのデータベースで適当に当たってみるといい」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「向こうでは”道化の真実”が支部内から連絡する手筈になっている。けど…。
 彼、本当に大事な時はともかく、たまに意思の疎通を一段飛ばしでやる時があるからね」

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「彼に万が一連絡がつかなかったりしたなら、ベセスダのほうか、シカゴ支部の支部長に連絡を通してかまわないよ。
  Dawine   Amir tory
 “淘汰する者”アミル・トロイ…それが支部長の名前だ」

SYSTEM :
 もっともそこまで不真面目ではないと思うけど、と、付け加えた“紫電”の対応で補足が終了した。…いや、訂正。補足はもう一つある。

“紫電”ノヴァ=エヴァンズ :
「うん…だいたいこんなところかな。決して楽観視することじゃないが、自分からパフォーマンスを落とすこともない。
 当日は、程々に上手くやった…と、胸を張って戻るように」

SYSTEM :
 あなたの“うまくやるさ”への”それでいい”が最後の補足だった。

"礎石" :
「了解。行きの読書に数ページ加わる程度だ。惜しむ手間でもない」

"礎石" :
 おそらく意思の疎通を一段飛ばしを直に食らったであろう本人を横目で見る。よほど癖の強い人物のようだ。
 もっとも「私」が気にするべきは、”道化の真実”のような型破りを相手にそれらしい反応をできるかどうかだ。

"礎石" :
「社会勉強だな」

 ハハハと雑に笑う。

"礎石" :
「ああ、件の。さて、苦労人か下手人か──という所だが」

"礎石" :
「私たちが疑ってかかることもない。答え合わせが済むまでは、所属を共にする者として存分に頼るとしよう」

"礎石" :
「ご命令とあらば、そのように」

 軽く肩をすくめる。
 見えないウインクとは実に器用になったものだ。

"礎石" :
「きみも、やれるな? ”紅玉”」

"礎石" :
「私ときみ、どちらか欠けるのはナシだ。何歩譲ろうと」

"礎石" :
 たとえ「私」が今日を最期の日として生きているとしても。

"礎石" :
 この不確かな口約束がきみを生かすなら、いくらでも言葉を尽くそう。

SYSTEM :
 昨日と変わらない今日を頁に記す。
 違うのは、今日の項目を書き終えて、明日の本を手にできるようになったことだ。
   じんせい
 残りの書物を読み切るまで、あと幾つか知れずとも。あなたには“なぜ”への答えが或る。

“紅玉” :
「とうぜん」

“紅玉” :
「社会勉強も、やりたいことも、終わってないもの。残りが片手指でも」

SYSTEM :
 あなたが終末医療の末期患者なら、彼女は余命宣告者だ。
 第二世代の量産個体の稼働年月はそう長くない。そして、彼女はその点において特別でもない。

 …ただ幸いなことに/不幸なことに。それでも、あなたよりはきっと長い。あなたが、その個体のさだめを超えて長く生き続けただけでも。

SYSTEM :
 往々にして希望があるかもしれない…そうでなくとも”その時”が宿題の答えを提出する時なんだろう、と。
 彼女はこのことに限っては悲観せずにいる。あなたのために。自分のために。

 ひっそりと書いているやりたいことリストにちょくちょくとチェックをつける、元・次世代版石の鏃の“とうぜん”は、いくつもの意味を含んでいた。

SYSTEM :
 ………それを。
 2年間ずっと変わらず見守るあなただけが知っている。

 だって、まだ生きている、と。

SYSTEM :
 任務直前の………。
 初心をなぞるような互いの確認に、少年は小さく頷いた。

 あるいはこの任務か、天命か。その確認を聞ける時が最後であっても。
 彼は、同じように見送ったのだろう。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :
 シーンが終了したよ!
 ロイスの宣言はある?

"礎石" :
初期ロイスの表記を修正する。

"礎石" :
「紅玉」を”紅玉”クィン=エヴァンズに傾倒/〇不安、
「上司」を”紫電”ノヴァ=エヴァンズに〇誠意/劣等感

"礎石" :
不安は……そうだな、私が彼女にしてやれることは何か。有事の際、私は義務と感情のどちらで動くのか。判別がつかないことに対して。

"礎石" :
劣等感は、私とノヴァの関係が公平ではないためだ。
率直に、甘やかされている。不服ではないが、私の側に改善の余地があると感じる。

GM :
 いいとも。同名の人物だからね、変更を是しとしよう!

GM :
 それに後半は案外…彼のほうはそう思ってなかったり、なんて…。

GM :
 さておき、キャラシートに書き加えておいてね!

"礎石" :
ああ。

 

・OP4『介入者-Planner-』


SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
【Scene:介入者-Planner-】

Scene Player:Aghasura
   Erosion:OFF

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 悪夢は現実に、現実は悪夢に。
 これは終わりの始まりなのか。
 それとも始まりの終わりなのか。

SYSTEM :
 UGNの壊滅は、ある日突然起こった。

SYSTEM :
 UGN日本支部の反乱に端を発するUGN各支部の同時蜂起により、UGNはわずか1日で瓦解した。

SYSTEM :
 反乱は首謀者の“ロード・オブ・アビス”の手筈によってUGN内部へと浸透していたFHエージェントによるもの。
 同時に日本政府中枢へのクーデターをも敢行し、FHは電撃的に日本を掌握した。

SYSTEM :
 日本だけではなく、アメリカ、ヨーロッパ各国、中国…同様の事態は主要国のすべてで発生し。
 数日の混乱と沈黙ののち、FHは世界を統治下に置いたこと、そしてオーヴァードの存在を公表した。
 ………FHは新たな秩序を築く者に。UGNはそれに対抗する者になった。

SYSTEM :
 あらゆる反乱は、新たな統治者であるオーヴァードとの決定的によって鎮圧され…。
 レネゲイドが齎す恩恵は、人々にやがて古き日常を忘れさせていった。
 そこにどんな代償があったのかさえ、彼らは忘れていってしまったのだろう。

 薄氷は砕けたのではなく、より薄く。
 踏み砕いて落ちる隣人にさえ、誰も気付かぬ奈落へ転じた。

SYSTEM :
 FHのセルの多くは、UGN残党の掃討を目指して活動し……。
 これに伴い各地の欲望たちもまた、鬩ぎ合うことを厭わなくなっていった。

SYSTEM :
 一方で、反体制側となった彼らは地下に潜り…圧倒的不利の中、僅かな希望に縋って戦い続けている。

SYSTEM :
 そしてそれは、何もUGNだけに限った話ではなかった。
 北米では新設直前のストレンジ・テンペストからの脱走兵が、無明の世界に夜明けを齎す為に。
 崩壊したUGN評議員からたった一人消えた人物の名が、時の迷い人らを束ねて。

SYSTEM :
 そして何より、渦中と言える日本においては、ある組織の名がまことしやかに囁かれ始めた。

SYSTEM :
 ブラストハンド───。
 組織と同じ名を持つオーヴァード、久坂勇を中心とした反FH組織。

SYSTEM :
 FHに対してゲリラ的な襲撃を仕掛け、成功させていること、何より…。

 “ディアボロス”の名指しの警戒指示。
 FH日本支部の全勢力にその名を刻み込ませるには十分であり、
 それを以てしても、彼らは尻尾を掴ませるには至っていなかった。

SYSTEM :
 …そんな彼らの組織的な活動形態は特異なものである。
 久坂勇が実働をほぼ一手に引き受け、三室戸もみじという少女を中心とした支援メンバーがそれを支え、
 鮮やか、かつ勢いに乗ったようなゲリラ作戦を遂行し続けてきた。
 
 今回の“それ”も、その一つであったことは間違いなかった。

SYSTEM :
 関東地区───東京。

 グループを挙げてのレネゲイド研究を展開し、アダムカドモンの恩恵さえ受けた、
 世界最大の企業………現神城グループ内において進行する恐るべき計画の片割れ。

SYSTEM :
 ───開発コード、通称…“ニュートロフィル”。
 志半ばでこの世を去ったある人物が作り出したシステムを悪用したものだ。

SYSTEM :
 実態は、開発初期の設計思想とは大きく異なる。

 非オーヴァード、および特定の“不都合”な因子パターンを持つものを捕捉して殺害する…。
 セル
 細胞の駆除装置。誰の良心をも痛めることなく世界を“掃除”する塵殺兵器。
 ある男の、闘争経路の礎。故に悪用だ。

SYSTEM :
   ・・・・・・・
 その完全な量産体制の破壊のため乗り込んだ最中に起きたアクシデントを、
 久坂勇は単身…いや、厳密には一人だけ、仔細定かではない同行者がいたのだが…ほぼ単身、よく解決した。

* :
『き、きさ、キサマッ…この私の悲願をォ!』

“ブラストハンド”久坂勇 :
「───ブラストハンド」

“ブラストハンド”久坂勇 :
「それが僕の名だ。地獄に行っても忘れるな!」

* :
『美しい………美しいぞ、我が好敵手………
 負けた私の美しさの次くらいに…』

* :
『だが………自分の力で、勝ったのではないぞ!
 この私の美しさを思う心がジャマを───』

“ブラストハンド”久坂勇 :
「お嬢さん、さあ僕の手を取って…」

“ブラストハンド”久坂勇 :
「そして始めよう新たなCampaign(流暢)を!
 もちろんPC1はこの───」

* :
『聞け!!!!! せめて聞いてから語れ!!!!!』

SYSTEM :
 彼はその中枢システムの傍らになぜか“存在”した少女を神城グループの研究施設から救出。

SYSTEM :
 同時にこのシステムの実用化に取り掛かる予定だったFHセル”タケミカヅチ”の息が掛かった“リンドヴルム”セル諸共粉砕。

SYSTEM :
 ………さらには不測の事態を見越して訪れた宿命の敵、“ディアボロス”との対峙において、死闘の末に再び勝利を収めた。

SYSTEM :
 ………ここまでは良し。
 ・・・・
 ここからが問題だった。

『ディアボロス』/春日恭二 :
「や…やはり見事だ…”ブラストハンド”。
 私にも驕りがあったようだが、やはりきみは大したオーヴァードだよ」

『ディアボロス』/春日恭二 :
「………常に挫折を知らず、完璧に生きてきた人は、暴かれたときもろいもの」

『ディアボロス』/春日恭二 :
「そうだな? そうだとも。まことの“ミス”とはな、ただ失敗をすることではない…。
    ・・・
 失敗のその先を考えない愚鈍さにある。泥を飲み、それで終わらせる脆弱さにこそある」

『ディアボロス』/春日恭二 :
「………悪魔は死なない。
                   ・・
 我が二度の汚点、その代価に! 貴様の手足は貰っていく───ッ!」

SYSTEM :
 “ディアボロス”は、失点の危機にさえ微塵も怯むことなく”最善”を見越す。
 その強靭な精神で次の手を打った。
 いや、あるいは、ブラストハンドがそう“させた”のだ。

 生来の彼はエリートであり、同時に、不撓不屈の逆境無頼である。
 敗北を知ったことは、“ディアボロス”に限って弱さに繋がらない。

SYSTEM :
 そもそも…彼の離脱を一手に引き受ける”パールヴァティー”は、そもそも“ディアボロス”自らが捕獲し研究した時期がある。
 彼女の能力を知り、彼の強さを知る男にとって、取るべき手段は明快だったのだ。

 その基底がバロール・シンドロームならば、
 バロール・シンドロームを阻害するありとあらゆる手段を打てば良い。
 故意の緊張状態による阻害、空間転移に対するノイズ、ありとあらゆる手段で緊急離脱を封じ…。
 自身との衝突で消耗した久坂勇を、自身以外の持てる全ての手段を使って仕留めようとしたのだ。

SYSTEM :
 久坂勇と、彼が救出した少女(その場で名付けて曰く『エフェメラ』)は。
 ギルドの離反者、そして同時期に前後して神城グループに用があったという、ある対FH組織の助力まで受け…。
 ”パールヴァティー”と『緊急回収役』のあなたが二人掛かりで作り出したゲートで離脱した。

SYSTEM :
 が、そうとも。問題はここからなのである。
   ・・・
 そのあなたを含めた僅かな“アクシデント”への対応役が取り残された。そして結果───。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

『フリサリダ』 :
〈そうなった、というわけか…〉

『ブラストハンド』/ミソラ :
「そういうことになったよ」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
 デコ  キル
「警備全員抹殺ってから飛ぼうとあれほど言ったのに…」

SYSTEM :
  チェイス
 要は逃走劇の対象が変わったのであった。
 久坂勇と『エフェメラ』から、シャラと残ったメンバーに。

SYSTEM :
 運転はたいして出来もしないのに「その席なら轢かれないから」などと、
 運転席に妙に座りたがるメンバーの少女(生後1歳未満のレネゲイドビーイングなことをあなたは知っている)が、
 非常に荒っぽい運転を伴いながら通信先に応じている。通信先にいるのは見知らぬ顔…。

SYSTEM :
 曰く“エフェメラ”を見過ごした『責任者』だとかだった。

『フリサリダ』 :
〈きみのリーダーは上手く撒いた。ほかのメンツも上々。あとはきみたちだ〉

『ブラストハンド』/ミソラ :
「つまりビリっけつね。全員しばき倒すと私らが一位だよ、シャラ」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「ところでこの事態に励ましの言葉とか」

『フリサリダ』 :
〈若者に励ましの言葉を贈る者がこのような強面ですまないとは思っている〉

シャラ :
「ミソラァ! オメ〜トゲつきの甲羅とか変身できねェの!?
 そんで後ろのヤツ全部ブッ飛ばせねェかなあ!」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「サンダーのほうが好き!」

シャラ :
「ンッでだよ! みみっち〜じゃんよカミナリのが!」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「わかってないね…
 一人倒すより全員倒したほうが…」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「えらい」

シャラ :
「キルスコアなら冥と競えよォ!! つーかかわれ今すぐ!」

シャラ :
左右にというか全方向に縦横無尽なヤンチャトラックが、並走していたバイクをなぎ倒す。
ショージキあと1回やられたら吐けるかもしれない。
そんな感じで、オレ様はいまアホどもとゲロオアダイの状況なのである。

SYSTEM :
 思い返すに、この4WDを躊躇なくかっぱらった当人…当RB…当人にしておこう、彼女の意見はこうだ。

『ブラストハンド』/ミソラ :
 人の運転と自分の運転では怖さが違うんだよ
 シャラ ここから先は戦争だよ

SYSTEM :
 主犯の運転技能はLv1である。
 何なら二輪。

 荒っぽい運転を擁護していい理由は“主に”後ろから迫っているが、
 それがなくともきっと似たような運転になっていただろう。

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
           キルレ
「先に述べておくと雷と撃墜数は競うものではないでござる
 刀と災害では殺り方が違う」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「拙者そのカーブが4回くらい続いたらそろそろ虹を架ける」

『フリサリダ』 :
〈さては余裕か?
 それとも後ろの惨状を忘れるためか?〉

シャラ :
「ンッなっわけねェ〜ッだろッッッゲロオアダイなんだよ! 
                ブッコロ
 余裕だったらこいつ今振り向いて皆殺しだっつのォ!」

シャラ :
「オッ、オエ……」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「イザナギ、シャラの日常を守護って」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「待たれよ 何割かは貴殿のせいねこれ」

シャラ :
「ヴォラァッ!!!」
 ヒップドロップでミソラを助手席まで押しのける!

『ブラストハンド』/ミソラ :
「わっ、たっ、運転中! イエロー!」

『ブラストハンド』/ミソラ :
 退場! 退場!

シャラ :
バリア〜〜!!!!聞く耳ねェ〜!!!!

『ブラストハンド』/ミソラ :
 上等だよ乱闘だ!!!

SYSTEM :
 遊んでいる場合ではなかったため、血の気の多い推定1歳児は別のブラストハンドの青年/冥と呼ばれた男に取り押さえられていった…。
 本人の目は本気だった。

シャラ :
「ッシャ!! ゲロ回避!!」

シャラ :
「安全運転でかっ飛ばしてやら〜ッ! サンゴはな〜ッ!」

『シャラ』 :
────免許は取った
    取ってすぐクーデターが起きたがな

シャラ :
「ごめん! ミソラよかマシぐれ〜だわコレ!」

SYSTEM :
 後方からの(小学生レベルの)聞くに堪えない猛抗議を他所に、あなたが運転を代わったわけだが、状況そのものには何ら違いがない。
 目をそらしていたわけでもない現実を一つ一つ整理していくと、その”主に”後ろには追跡者がいた。

SYSTEM :
 オーヴァードの公表以来、彼らの高速機動に耐え得るよう補修と改装が加えられた首都高速道路…。
 そこを走るのは、脱出用にかっぱらった(主犯:運転者)モルフェウス能力者自慢の4WDだけではなかった。

 背後から、ガシャン、ガシャン! と鉄を砕くような歩行音。
 そこらのモンスターマシンが泣いて謝る機動性を、全長20m前後の巨体で持ち…。
 各国に配備され、第二種以上のレネゲイド犯罪案件で使用される、高いペイロードと汎用性を備えた多脚戦車。
 俗称オルトロス。

SYSTEM :
 無機質な殺意を地に刻みながら行軍を続けているその多脚車両…。
 問題は追跡者というのが、“それ”だけではないという点にあった。

SYSTEM :
 何しろ現日本地区屈指の大企業、神城グループの目論見ごと物理的にケリを入れたのである。
 その混乱の落とし前に加えて”ディアボロス”直々の追跡命令とあらば…投入される戦力は普段の比ではなかった。

『フリサリダ』 :
〈…ストレンジ・テンペストとはな
 押っ取り刀と思いたかったが、これは───〉

SYSTEM :
 …ストレンジ・テンペスト。
 機械化改造手術を受け、最新鋭の兵器で武装した猟兵を中心とした戦闘集団。

 かつて世界最強の軍隊だったアメリカ軍と、独自のノウハウを蓄積し続けてきた自衛隊内部の私設組織ストレンジャーズ。
 その合併により完成した、日本を縄張りとする秩序の番犬である。

SYSTEM :
 ところで、その多種多様な兵器、にはこういうのも含まれる。

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈あー、テステス。こちら…〉

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈ストレンジ・テンペスト! 
 民間の皆様方に置かれましては○○4区から11区までの高速道路を、どうか使用なさらぬようお願い申し上げます
 皆様の協力に感謝致しますどうぞ〉

SYSTEM :
 バカデカい公共放送音声が響き切った後、その音の指向性が限定される。 
 ハヌマーンのシンドロームが齎す、音を“届ける”先を限定化するエフェクトだ。
 それが空から、地上のあなたたちへ。銃口を向けるような冷たさと、会話を試みる気楽さを交えて向けられている。

SYSTEM :
    ・・・・
 そう、上空からだ。

SYSTEM :
 空を自由自在に移動し、元・国家規模の自治区一つに乗り上げて制圧行動を行える強襲揚陸艦。
 ブラックドッグ・シンドロームを基底とし、鳥や幻想から空を取り上げた鉄の箱舟。
 もはや誰に憚ることもない軍事技術の無作為な発展の産物であった。

SYSTEM :
 サーチライトを至るところに照らしあげながら、神城協賛、ご自慢の空飛ぶ厳然たる暴力がコンタクトをかけてくる。

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈そしてテロリスト諸君! 
 オメーらに国際法の何たるかを教えてやるが、あってもなくても即・死だ!〉

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈しかし罪を憎んで人を憎まず、いいかァ一度だけ警告しといてやるぜ…〉

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈いいか車を止めて、両手を上げて命だけに固執しな…。
 おれは、運が良ければ命だけは助かるだろォと『親切』に忠告してやることにした!〉

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈なぜならこうしなかったとき、俺もオメーらも何一つ『納得』を得ることはない…
 『納得』とは世の中において須らく優先される! さあ、返事を見せな5秒以内!〉

SYSTEM :
 軽薄な男の声が、ハヌマーンと箱舟のエフェクト幇助機能を伴って下に響く。
 ほぼ一方的な通信からして、返事は行動のYorN。

 日本地区屈指の大企業神城横流しのR兵器も少なくない以上、警備として警戒され得る筆頭のストレンジ・テンペストだが、彼らの活動半径は主にアジアに規定される。
 留守を狙った襲撃…しかし、その部隊に限っては、運悪く急行できる足があったわけだ。

シャラ :
(……ったりめェだけど、ホント死ねるかもしんねェな!)

シャラ :
 ぜんぜん笑えねェ状況に心臓が鳴る。
 上からバラバラうるさければ、後ろもドコドコと元気な足音。上から照りつけてくるサーチライトは、いつにも増してとんでもないモノを連れてきた。

シャラ :
後ろのミソラと冥のコトも、『責任者のオッサン』のコトも気にしない。最初のふたりは似たようなコト言うに決まってるしな。
やけに楽しそうな声がクソムカツクので、ノータイムで返答だ。返事の一番乗りはもらっちまおう。

シャラ :
スウウウウウウウウ。

シャラ :
「死ね~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

シャラ :
「お生憎様だバ~~~~~~~カ!!!!!!
 テメェにいただく納得とかマジいらね~~~~~ンだよ!!!!!」

SYSTEM :
 キイ~~~~~~~~ン…と、響く音。

SYSTEM :
 小動物めいて跳ねて耳を塞ぐミソラと、ふむ、と空を見上げる“イザナギ”。
 さておき、高度にして遥か彼方の箱舟に声が届いたかは定かでない。ハヌマーンの声色が双方向ならば“そういうこと”もあっただろう。

 だが、少なくとも彼はそういうナンセンスを楽しむ人間ではなかったようだった。

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈ああ、そうかい…〉

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈非常~~~に残念だぜ…なぜなら…
    ア キ シ バ
 今日は唯一のブレーキがもう一人のブレーキと揃って地方に出張でよ…〉

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈これでオメーらの希望にすがる逃避行は全滅の最後で確定し…。
 俺はいま! 高速道路と器物損壊その他諸々の始末書を押し付けられると、またも確定しちまった…〉

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈おお、哀れだぜ…そしてこの声を聴く相手にレディの一人でもいないことをよく願っているぜ…〉

『ブラストハンド』/ミソラ :
「おっ、私?」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
 レディ
「手弱女…ふっ」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「シャラ、運転代わって スヤ
 有頂天心地のままこいつ永眠らせる」

シャラ :
「ナイナイ」

シャラ :
     スヤ
「オレごと永眠るじゃね~か却下!」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「動くな!!
 私の尊厳がどうなってもいいのか!!」

SYSTEM :
 だが、口調のわりに彼女の視線は空をとらえて離さない。理由は当然。

 それは最後通告だ。拒否がイコールで“わかりました、お帰りはあちらです”となることなど、だれが想定するでもない。
 それは追跡の被害者とコンタクトを取った、元ギルドの男も同様だ。

『フリサリダ』 :
〈ストレンジ・テンペストの鎮圧手段はいくつかある…。
 ああ、一番直線的で乱暴なものが空からくるぞ。初動に備えてくれ───〉

SYSTEM :
 そして心の底から残念そうな声の響きと共に…。
 東京の夜空を平気で闊歩する鉄の箱舟、本来ならば見下ろせる立場にいるはずの男が、
 痛みを訴える胃を突っ切るように(あるいはそれすら嫌味のスパイスにして)こう言った。

SYSTEM :
 おそらく八対二ほどの割合である。

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈えー譲歩失敗、繰り返す譲歩失敗〉

『ストレンジ・テンペスト』/管制官 :
〈───よおし!
 バカども、発進! 俺しらね!〉

SYSTEM :
 瞬間───空の箱舟から、いくつか光が落ちる。

SYSTEM :
 上空と地上の距離にして10,000m以上、空を切り裂く轟音と共に、狩人を載せたポッドが隕石のようにこちらに向かう。
 鋼鉄の流れ星は死のきざし。
 多くの人間には一瞬の幻に終わり、狙い定めた矛先の“賊”には永遠にして最期の幻となるもの。

SYSTEM :
 アジア地区におけるテンペストの得意分野。
Orbital Drop Shock Attack       Hell Jumper
 軌 道 降 下 強 襲 攻 撃 ………別名は、地獄に飛ぶ者。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「──────!」

SYSTEM :
 ボケもそこそこに“備えろ”の言葉に、生き残るため応じたのは彼女だった。

 身を乗り出して、“めくら”のままの早撃ち。
 人差し指の鉄砲が凶器代わり。落下速度の計算を合わせたうえで狙いすました無手の狙撃。

SYSTEM :
 エンジェル・ハィロゥの研ぎ澄まされた五感と光子操作技術を、
 過程をすっ飛ばしたノイマンありきの高速思考が射線を整えて解き放つ。

 都合、四射。そのポッドを情け容赦なく鉄の棺桶に変えた───変えた、が。

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「いいねぇ、噛みつけ噛みつけ!
 こっちは殺ったり殺られたりのために来てんだよ、なァッ!」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「───アカ子II、トバせ!」

『ストレンジ・テンペスト』/射手 :
    コピー
「───了解」

SYSTEM :
 問題は、その程度のアクシデントなら全員日常茶飯事なこと。

SYSTEM :
 破損したポッドから飛び出してきた、空から見上げれば黒い米粒でしかないもの…。
 それに気を取られているうちに、間近に突き刺さる水晶と鋼鉄の切り裂き羽根。

SYSTEM :
 白雪のように儚くも、ただ一目で訂正を強いられる。それは純然たる人殺しの道具だからだ。

SYSTEM :
 バロールの『ゲート』じみた磁場を形成し、通常落下で数十秒の距離を詰める。
 ひどいノイズ交じりの衝突音。 

SYSTEM :
 火花の散る音は、先んじて飛び出した冥が、空気を引き裂く轟音を“いなし”た音。 

 瞬きのうちに走る死を叩き斬りながら、風の赴くままに矮躯を地に放り出した人斬り包丁。
 4WDのルーフを蹴り飛ばし、空から緋色を束ねて襲い掛かる白い怪物を迎え撃つ。

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「む」

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「今日のは1分くらい戦いになりそうなカンジ。
 愚妹ー! こいつの発言あとでピックアップしておいてください!」

『ストレンジ・テンペスト』/射手 :
「………」

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「む、いつもに増して反抗期。やはりソノムラのほうが、」

『ストレンジ・テンペスト』/射手 :
    いいから
「───。要求。戦闘に集中して」

SYSTEM :
 4WDに求められる耐久性能の限界を軽く突き破るようなソニックブーム。
 機体の悲鳴を上げる音───しかし動きを止めたら最後。
 オルトロスの追跡を足場代わりに、こちらを追跡する猟犬の御変わりだ。

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「ほう、これが名にしおうストレンジ・テンペスト…」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
   イカ         アガ
「この狂れた態度、敵ながら高揚るものがある。どうかシャラ」

シャラ :
「親近感あるわ~! クッソすっげ~~ッムカつくけどな!!」

シャラ :
いいな~、オネーチャン! 見てるとジェラる!

シャラ :
場合じゃねェけど! アクセルを思いっきり踏み込む。
元気に飛び出してった冥がどうなるかを気にする必要はまっったくこれっぽっちもない。
四方八方を埋めて防弾ガラスをちょっと割ったのは、鋼色のように煌めいた人間弾頭。ケッコーイカれ寄りの強化人間×2と見た。

シャラ :
「ストテンって合体してからイカれ野郎のバーゲンだって聞いたけど、噂どーりだなオイ!
 ミソラァッ、他のヤツは!? 流行りのポンコツクン!?」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「それは流行る前にシメたやつ!」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
            アナノムジナ
「ほう、お勉強してるねェ社会不適合者よ!」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「うるさい今しゃべってたところ!」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「俺も今喋るところですぅ~!
 大人優先~! でだな、死に土産は詳細と簡潔どっちがいい?」

シャラ :
「大人振り回すヤツダッセ~! 詳細!」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「大人だから出来るんだよなあ!」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「オメーらんとこのアタマが壊したのは、いわば特定のオーヴァードか、レネゲイド因子のない生物を狙ってブチ殺せる、対人ルンバってなわけ。ここまで前提ね」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「こいつはその前身だ。
 オーヴァードならなんでも敵だと思う、こんな時代が大嫌いな誰かさんの死に土産…」

SYSTEM :
 既に“オジャン”となったニュートロフィルの前身となった、対オーヴァード用戦闘プログラム。
   Leukocyte
 俗称『白血球』。
 大義名分も、矛先の故も歪められて久しい憎悪のジャンク。

『ストレンジ・テンペスト』/ロイコサイト :
「………」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「見ろよ、このモルモット代わりに押し付けられたコイツ。    げんじつ
 こんなのが二つ三つと増えたら、せっかく大手を振って殺し合える大義名分にケチがついちまう。なァ?」

SYSTEM :
 ストレンジ・テンペスト。
 その分隊長の陽気な、火傷する冷たさを纏った戦意のそばから。
 物言わぬ殺戮人形の、血走るようなモノアイの光が走っていた。

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「これでも感謝してんだぜ? まァするだけだがね。
 ───はい先生授業終わりー、ガキども遊んでないで机戻りなさい殺り合うぞー」

『シャラ』 :
  ロイコサイト
────白血球

『シャラ』 :
────ウイルスを殺すモノ
   よほどこの世界が憎い誰かの名残だな

シャラ :
アー。そんでもこのウイルスの塊みたいなボケどもに使われてンのか。ナムアミ。

シャラ :
ここで死ななかったら、データ持ってかなきゃなんねェな。
ストテンがこんなん配備しまくったらヤバだ。
車の表面に張り巡らせておいた血の糸で殺戮人形のカタチを把握して、サンゴの頭に詰め込む。

シャラ :
「わーった! つまりブッ壊せば全部同じスクラップってこった!」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「ハ! いいねェ坊主。
       シンプル
 俺ぁそのくらい単純なの好きだぜ、何がいいって後腐れがない」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「だが…カハッ! 
 人の勤務先の備品の破壊宣言たぁ、現行犯逮捕でいいってことだよなァ!?」 

SYSTEM :
 男の待ってました、の臨戦態勢。

 時間にして数秒。冗談のような会話と、冗談のような説明。
 別に、珍しくもない。どこかで狂った歯車を、だれかが直そうとあがきながら届かず、その轍にこれ以上ない歪みを残していく。

 そういう一幕だった。

SYSTEM :
 そしてその数秒の間にも。
 ソラ
 宙で幾度かの、白刃の煌めき/散る火花。 

SYSTEM :

 冗談のような雰囲気で冗談のような短時間の講義中も。
 単純計算で冥/”イザナギ”と呼ばれた元人斬りFHの数倍の膂力と攻撃範囲を振り回す怪物を、
 単純計算でその怪物と、それをお膳立てする藍色の数倍の速度で切り返す。

 オーバーワークでつり合う均衡、4WDを踏みしめながら当人の片割れが急落下。

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「応。  ちいやば
 あの奥の危険人物どもは拙者が」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「どれ?」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「話通じないやつ」

シャラ :
「ゼンブだろ」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「一理ある。チーム“グマイ”のほうね」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「残り一人と一機は貴殿ら。
 で、この先のルートは理解るな?」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
               キズ フリ
「鼠の如く逃げおおせろ。連中の欠点は建前に付き合う部分だ。
ゴチャ
 乱戦る程度で済んでいるうちが華よ」

SYSTEM :
 そもそも空の”箱舟”をただの輸送船代わりに使う現実がその証左だ。

 この先の入り組んだ都市部において、誤射はおろか”余波”だけで建物に被害を及ぼすオルトロスも…。
 逃亡先ごと焼き払うような大規模破壊エフェクトも、彼らは持ち得たとてそこまで易々と使えない。

SYSTEM :
     ・・・・
 もちろんそこまでだ。ストレンジ・テンペストは世間一般でも泣く子も黙る殲滅集団。
 たとえばこれが英雄の直下ならば話が別だが、世間体の盾には限界がある。

SYSTEM :
 だが、 神城の看板に泥を塗った痴れ者/たかが数人の末端 を天秤に載せる“ラグ”は必ずある。

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
        イモヒキ
「罷り間違っても初戦惨敗などするなよ。
 よき
 了承?」

シャラ :
………。

シャラ :
やれんだな、と言うのをすぐやめた。  マズ  くたば
こいつにとって『やる』は『やる』で、失敗るとか死滅るかとかってハナシじゃない。

シャラ :
ハナシはどいつもこいつもふざけてるが、ふざけた世界じゃあこの手の奴が一番強いんだ。
だってイカれてるのに生きてるんだから。
こいつは貧乏くじを安値で買い付けた。理由は──

シャラ :
 りょ
「了解。おい冥」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「何ぞもなし」

シャラ :
「ウケねェ死に方だけはヤメロよ」
 こいつにとって、この役目を引き受けることもゼーンブ趣味の範疇だから。

SYSTEM :
 あなたは彼の経緯をそこまで多くは知らないが、知っていることはあった。

 人を斬るのが生業と公言して憚らぬ男であることも。
 いまの発言の半分以上は己の生まれた所以を果たそうとする志向/趣味であることも。
 ろくでもない性格と生活習慣だが、あなたの仮か終の棲家において、一線を測る程度の分別はついていることも。

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「うむ。いつ死んでも程々に無念ゆえ」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
      モームリ
「特に残るは心底御免というもの。
 ───では、お先」

SYSTEM :
 言うが早いか、飛び出すイザナギを他所に。 

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「カハハッ、ならこっちはこっちだ。
 講義続行と行くかねェ!」

SYSTEM :
 百戦錬磨の人殺しが、殺意の音又を伴った。

SYSTEM :
 空から降り注ぐ凍てつく死のかたまり。
 逆版の針山地獄をスノーボード代わりにして、上空から殺人者が襲い掛かる。一人と一機。

SYSTEM :
 だが、一機、のほうの使い方は最初から限定されている。

『ストレンジ・テンペスト』/ロイコサイト :
「──────!」 

SYSTEM :
 4WD/足を奪うべくアームを回転させ、乗組員もろとも破砕しようとする腕…。
 それを通すための必要以上に“派手”な広範囲攻撃だ。
 見た目は派手だが、それが余波をまき散らさないように絶妙に計算されている。

SYSTEM :
 冷気の広範囲投射を縫う本命がそいつだ。
 悧巧というほど行儀がいいわけでもない。
 もっとも荒々しく、もっとも狡猾な猟犬の統率者が、おそらくその黒兜だった。

SYSTEM :
 だが………。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「じゃ、こっちも………。
     イ モ
 あーと、不手際は引かない、だ!」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「シャラ!」

SYSTEM :
 一手分凌いで”どか”せば、猶予は十分に作れるはずだ。
 少なくとも彼の趣味に定めた相手の分は、確実に。

SYSTEM :
【Action!】
 判定が発生しました。 

SYSTEM :

[Action]
Order:【ストレンジ・テンペスト】の追跡を回避せよ!
Detect:〈白兵〉or〈射撃〉or〈RC〉or〈交渉〉≧20

Success!:進行内容変化
Failed...:進行内容変化(『シーン5』で発生する登場侵蝕を前借り)

[Add']
・判定時、必ず『ミソラ』は『勝利の女神L3』をあなたに使用する。

シャラ :
〈交渉〉で判定すンぜ!

SYSTEM :
【Check!】
 判定内容を確認しました。
 続けて判定を行ってください。

シャラ :
6dx+6 (6DX10+6) > 10[1,1,2,8,10,10]+4[1,4]+6 > 20

シャラ :
シャーッ見たかオラ!!

『ブラストハンド』/ミソラ :
なんで?(「出番」と書かれたカンペを仕舞い込んでいる)

SYSTEM :
【Check!】
 判定に成功しました。

シャラ :
オレ様がイーとことっちまってすまねえなァ〜!!!

『ブラストハンド』/ミソラ :
ようし…今こそあんたが究極の
キング・オブ・ブラストハンド…

『ブラストハンド』/ミソラ :
…長いな…没で

シャラ :
略してキングって呼びなァ!

シャラ :
「ひひ──」
 引き攣った笑いがこぼれる。
 1秒後には死んでるかもしれない恐怖。命の終わりが目の前にある実感。
 態度だけナメ腐ってるだけで状況はヤバいの上限を更新しはじめてる。冥が逃げろッつったのは、戦術判断あってのことだから。

シャラ :
 空を切る殺意。
 地からブン回される憎悪。
 オレにとっては実家みたいな悪意のただ中で。
 忘我のうちに、喉がオレじゃない声をひり出す。

シャラ :
 割れたフロントガラスから吹き付ける爆風と突風にあおられて、フードが頭の後ろへ放り投げられる。
 申し訳程度に隠されてた白い布の中から、妄執に濡れた金色の目が輝いた。

『シャラ』 :

    オン・マニ・パドメ・フム
『────蓮華の中なる宝珠よ』

『シャラ』 :
   Eat them all
『食い荒らしてしまえ────』

シャラ :
 4WDのアクセルを踏みつけ、踵の先にあるタイヤへ干渉の手を伸ばした。
 回転するアームに抵抗するように、足元から這い上がった泥みたいな黒い塊がマントみたいに車を覆い尽くす。
 これはオレとワタシがこれまで食い荒らしてきたヤツらの怨念の塊。ウロボロスの蠱毒のなかで熟成された特大の呪いだ。

シャラ :
 全身で死ねと命じる悪意が、頭のなかで笑った──引くほど楽しそうに。

『シャラ』 :
『ご教授願おうか──殲滅戦の愉しみ方を!』

シャラ :
 足元から吹き上がった悪意と狂気の泥の波が、空も地もなく全ての悪意を押し流す!

SYSTEM :
 ………欠片だらけの最適化されていない憎悪を載せて、
 伽藍洞の殺人機が、替えの利く鉄腕を凶器とばかりに振り下ろす。

 それが、本来ならば拉げるどころか当然のように叩き壊すはずの、鉄の獣性を押し留めたのは。同じく獣性だった。

 だがそれは、人の獣性だ。
 何ならば、鉄の獣性を動かすものと然して違いはなかった。

『ストレンジ・テンペスト』/ロイコサイト :
「──────」

SYSTEM :
 それは人の悪意だ。貪り、喰らい、いつしか混ざりに混ざっていったはずれ値の蟲毒。
 幾万の尾を食らったウロボロスが純化させたものこそが、金色の妄執に宿っていた。

 殺意をエンジンに積載して動く癌細胞の駆逐装置に“竦む”という機能はない。警戒する、という防衛本能もない。
 だが、故に境界を侵されに侵され切ったルールの切れ端が生んだ情念は、この上ない毒だった。

 黄泉からの使者が、まず鉄の塊を押し流す。

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「ハ───!」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「これで人様をイカレ呼ばわりたぁふてぇ野郎だ
         オトモダチ
 テメーいい具合の同じ穴の貉が居やがるなあ!」

SYSTEM :
 そしてこちらは(いちおう)純正の人間だが、その見るからに危険信号の悪意の波に竦む理解はあっても、実行に移すことはなかった。

 むしろ逆だ。
 波にのまれた殺人機を踏み台代わりに跳躍し、残る氷柱が呪いの熱に侵され溶けていくのを他所に、なおも研いだ牙を突き立てることを諦めなかった。

SYSTEM :
 その証拠が、氷柱を盾代わりにした本命。
 ストレンジ・テンペストで熟成され、研究され尽くして久しいR因子の管制からなる自律稼働兵器。
 見せ札が自らの態度ならば、伏せ札は斯様に地味で、人ひとり殺せたら十分な程度の兵器だった。

SYSTEM :
 だが…。

『ブラストハンド』/ミソラ :
 コギト・エルゴ・スム
「『故に私はここにいる』───!」 

SYSTEM :
 その初見殺しを、後手から先手で先んずる。

 聊か直感的なほうに偏ったノイマン・シンドロームの頭脳と、
 振り向くことなくとも「射撃」できる曲芸じみたエンジェルハィロゥの光子操作。

SYSTEM :

 煌めくケツァルの翼が、降り注ぐ氷柱を…。
          ガン・ビット
 否。その氷柱に紛れた自律兵器を打ち抜く。
         アドリブ        リフレクト
 加速するその先に見様見真似で重ね合わせた、反射射撃。 

SYSTEM :
 口ずさんだ言葉は彼女のコードネーム。
 
 理由はわからないが無性に使いたい言葉と語るそれが、
 彼女にとってレネゲイドの励起に繋がる符号であるようだった。

SYSTEM :
 たまや、とわかりづらい感情表現のコメントと共に、泥の中で咲いた光の花を見送る1歳前後のRB。
 同時に、タイミングを合わせて急加速した(あなたが“させた”)車体が、無理やりにフォワードを引き剥がす。

SYSTEM :
 追跡の足は相も変わらずこちらを追い立てる“オルトロス”。
 まだ何度も、あちらにはコンタクトを試みるチャンスがある。

 …だがしかし、肝心かなめの脅威は半減し、スタートダッシュに差がついた。
 複雑怪奇に入り組んだ元日本の首都、東京のハイウェイを、暴走族もかくやの勢いでひた走るその助走段階で、だ。

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
バッチシ
「完璧。では、行け」

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「あははははははは殿! 殿の自己犠牲ですよ!
 というか逃してるじゃないですか、バーカバーカへなちょこサラマンダー!」

『ストレンジ・テンペスト』/射手 :
「集中」

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「してますともこの上なく!」

SYSTEM :
 見送りの言葉は口元からしか伺い知れず、直後刃物の響く音と共に消えた。
 この上ないほど楽し気で無神経な笑い声と、飛翔体と生身が空を切り合う交錯の音が上塗りに上塗りを重ねている…。

シャラ :
「ッシャ! イチ抜け!」

シャラ :
 冥を振り返ろうとして──やめる。
 誰にとってもこれは死線で、イチ抜けカマしたオレらだって完全に例外じゃない。
 だから頑張れもやっちまえも言わない。言わないかわりに、ハンドルの中心を思い切り殴りつけた。
 ブゴオンと、間抜けたクラクションが鳴く。

シャラ :
 チョッパヤ
「強行突破でずらかんぞ! 後ろよろ!」

『ブラストハンド』/ミソラ :
 りょ
「了承! ただ見てアレ、追ってきますの自己申告」

SYSTEM :
 そして、脅威は半減だ。総量すべてから逃れたわけではない。
 サーチライトを誤魔化すための住宅街までまだ距離があり、彼らは一度の追跡で諦めるようには出来ていない。

 序に言えば、それを率いる人間がもう乗り気も乗り気だ。
 地獄の底までデッドオアダイを突きつけるべく、歯を鳴らしながら笑って追い回すスタンバイ姿勢。

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「おう、テメーら俺に先公やらしといて、
 帰りの時間にゃ早えーなあッ!?」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「さっきのヤツに教えとけ、殲滅戦の楽しみ方だ!
 殺る側は手札豪勢に使って根本まで!
 そして殺られる側は死に物狂いで捻じ伏せろ! サァビスだ、試させてやんよ…!」

SYSTEM :
 だが、一度できたことならあとは二度。三度。
 苦難であっても、ただのアクシデント程度だ。先の話はあなたにも言えること。

SYSTEM :
 残り半分。長くて短い逃走劇だ。

シャラ :
ただ……どーすっかな。頭のなかで思い描いたマップが黄色信号。

シャラ :
 そのままアジトに帰るルートは辿ってない。
 オレらイサミ回収隊はアジトとは違うセーフハウスで落ち合って、追っ手をいなしてから戻るつもりだった。
 目的の場所まではあと半分ってトコ。
 だけどショージキ言っちまえば、そのまま帰るのはナイ。ストテンはクソしつこいと評判だ。
 どこからどー見ても完全に撒ききらないと、『ちょっとほとぼり冷めた』ぐらいじゃあそれなりにケガしてるイサミのいる第三アジトがバレる。

シャラ :
 いまオレらにくっついてる黒メットはとりわけヤバそうだ。
 遊びでやりすぎるこたあっても、遊びで手ェ抜くやつじゃないだろう。

『シャラ』 :
      ミ ソ ラ
 ────『生まれたて』を使え

シャラ :
 却下! 却下却下却下!
 いーかよく覚えとけ、素直に転んだらこっからオレ様と死のランデブーだぞサンゴ!

シャラ :
 体乗っ取ろうとする
 手をブルブル震わすイカレたヤツの抵抗を力技でガマンして、そのイカレたヤツが数年前に見たチェイス映画じみて急ドリフト。
 行き先変更。東京自治区のハイウェイを、目的地へのルートから思いっきり外れたクレイジートラックが駆け抜ける。

SYSTEM :
 コンマ数秒の内在闘争/生存優先順位の取捨選択はどこ吹く風。
 知らぬが華の当事者は、ハイウェイを凍てつかせ滑るように追い縋る自認公務員/逸れ嵐の末席を迎え撃つ真っ只中。

SYSTEM :
 残り半分、されど半分。

 目的地にトレインさせるにはあまりによけいな病を持ち込む狂犬を引きはがすと決めたあなたの、免許未更新の腕前が猛威を振るった。
 後ろから響く”運転代わって”の猛抗議。ラフプレーに悲鳴を上げる車と同乗者こそ知らぬが華。

 残り半分、されど半分。
 アドレナリンに収まる兆しはなく、
 誰がどのように生き残るかも定かでない。

SYSTEM :
 エンドライン
 終わった世界では、珍しいことでもない。
 死の順番が近いか遠いか。測る術は誰にもない。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「しっかし…残ったのはそちらですか」

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「ところで一ついいですか?」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「何ぞもなし」

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「さっきのどのくらい建前ですか?」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「半分」

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「半分も?」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「然り。拙者、泰平の世ではどのみち切腹モノのサガであるからな。
くたば
 死滅るならまあ、誰にとっても。ソレはソレでよかろう」

SYSTEM :
 それが自分と似ても、あまりに非なる生き物だと…。
 どこかで決定的に“逸れ”たのだと初手で感づいた人紛いが、愉快気に笑った。

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「え、被虐趣味? 淡水で泳ぐ海水魚気取るの疲れませんか?」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
         タ フ
「拙者、こう見えて前向きにござるよ。それに…。
 淡水で泳ごうとしてみて良かったこともある」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
    ・・・・・・・・    ・・・・・・・・・・
「拙者は斬って楽しい相手の敵で、斬って楽しくない相手の味方でござるが」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「ここだと、敵が多い」

SYSTEM :
 死線を前に、青年が鯉口を切った。
 にこり、とも笑わないのは緊張からではない。ただの性分で。生業だからだ。

SYSTEM :
 敵が居なくなれば錆びて朽ち、敵を前にへし折られたならばそれで是し。
 いつでも程々に無念を抱えて逝くように仕上がった戯け者。
 彼は無我の刀剣のできそこない。
 天上天下に比肩するものなき天性の暴君、そのなりそこない。転じてこの場にひとりめの、何かになれなかった男だった。

『ストレンジ・テンペスト』/射手 :
「………何のために」

『ストレンジ・テンペスト』/射手 :
「今死ぬとわかっていて、その“やるべきこと”はそんなに大事?」

『ブラストハンド』/“イザナギ” :
「なに。貴殿のそれ、何処の誰に向けた科白?」

SYSTEM :
 自覚のない苛立ち混じりの視線と一緒に、鉾の群れが持ち上がる。

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「すみません、思春期なんですよ」

『ストレンジ・テンペスト』/攻手 :
「なんで本題入りましょっか!
 死ねーーーーーーい!!!」

SYSTEM :
 “妹”の戦闘態勢に、姉のテクスチャをかぶりたいほうが、変わらない笑顔で会話を打ち切ると決めてからの戦闘所要時間は、そう多くなかった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 残り半分、されど半分。
 そうやって始めたチェイスが、サーチライトを巻くに十分な距離を取る。

 残るは二つだ。だが、その二つがいつまで経っても終わらない。

* :
 正式採用された新鋭の『オルトロス』をはるか遠くの輪郭に貶め、
 死泥でリタイアさせた殺人機に追う兆しはなく、しかしあと一人、まだ一人だけが…。

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「オラ行くぜ、オラ行くぜ、オラ行くぜ!
 オラオラオラァッ!」

SYSTEM :
 とても楽しそうに4WDを、生身の人間が即席の凍てつく回廊を滑るように追跡し続ける。

 それを撒くための目途がちょうど”立つ”場所まで間がある。彼が追いつく可能性はゼロでなく、これだけ派手な追走が何かを呼び込まない道理もない。

SYSTEM :
 つまり先ほどの”提案”の価値がピークに達する…、まさにその時だった。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「…待って、何か来る…」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「…シャラ!」

SYSTEM :
 誰より五感の射程圏内が“広い”ミソラ/”生まれたて”が、警告代わりに言葉を促す。

SYSTEM :
 警告の正体は、あなたが身構えたコンマ数秒でやって来た。
 防げなければ/かわそうとしなければ、“どう”なってもおかしくはない。

SYSTEM :
 だがそれは、間違いなく…。

 どちらかが想定していた姿ではなく。
                  ・・・・・・・・・
 一番の問題は、それがあなたにとって敵でも味方でもないということだった。

SYSTEM :
 もうひとつ、隕石にも似た破壊の塊が落ちる。
 ───厳密に言うと、そうと見紛うほどの重力の塊だ。

 その未来まで、コンマ数秒。

シャラ :
「ハ……!?」

シャラ :
咄嗟にハンドルを思いっきり切り返して、直撃コースを反れるように芸術的なターンをキメる。
ブレーキを踏み込めばタイヤがまた死亡一歩手前の悲鳴を上げた。

SYSTEM :
 ───忘我の中でのとっさの対応が、脚を失わせる最悪を避けさせた。
 直撃コースの数歩手前。4WDもそろそろお役御免の気配を漂わせる中だが酷使には耐え得る。

 判断は文字通り、一秒遅れで死に直結するところだった。

SYSTEM :
 ところで…。

 着弾したものは隕石と見紛う重力塊と述べたが。
 べつに、レネゲイドが形成した能力行使の産物、というわけではない。

 むしろその実態は非常にシンプルだった。蜘蛛の巣を思わせるひび割れた高速道路が、着弾の威力とその精密さを伺わせた。

SYSTEM :
 超密度のバロール・シンドローム…。
 侵蝕率にして200%超の臨界点から繰り出される重力崩壊を伴いながらも、その本質は剛ではなく柔。
 叩き付けた拳は的確に高速道路の破壊点を狙いすませていた。触るもの皆塵にする、憎悪を束ねた殺人拳。

 芸術的なターンは“そいつ”と間合いが近く、故に、エンジェルハィロゥのレネゲイド体を持つ少女が、つう、と冷や汗を頬から垂らした。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「…。決めた、生き残ったら…お祓いする」

SYSTEM :
 軽口で“いいね”と口にした彼女だったが、それが概ね、ストレンジ・テンペストを“撒く”奇貨にするというにはあまりに…。
 こちらに益のない奇貨であることは明白だった。

SYSTEM :
 なぜなら、それを人の技術と呼ぶにはあまりにも躯体がかけ離れている。
 レネゲイドの暴走と修復の繰り返しが、いつしか彼を、かつて彼が望んだものと最もかけ離れた、憎悪の発信者にした。

SYSTEM :
 ゆらり、と。幽鬼が立ち上がる。
 本当に手遅れなのかどうかさえ定かではない。どちらだったとしても、きっと紙一重だった。
 視線は偶さか、追いすがる猟犬のほうに向いていたが、それは単なる優先順位の違いだ。

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「ほォ、噂の“ブラストハンド”はこんなヤツまで…」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「───あ、違ェわこれ。まあいっか」

SYSTEM :
 …UGN本部壊滅後から、存在を実しやかに囁かれ…。
                      ケルベロス
 平気で死がまき散らされる地獄だけを闊歩する憎悪の獣。

SYSTEM :
 ただ、その場から“浮いた”オーヴァードだけを狙って殺す。壊れたマン・ハンター。
 誰にとっても難しく、継続し得ない行動ほど簡単に為し得ながらも、
 当たり前の生命が行うべき行動など塵ほども出来ない。
                  バロール
 人の形をしていること自体が稀有な、自殺衝動をまとった烙印の異形…。

『生残者』 :

「───なんだ。
 一人じゃねェのか。わらわらと、襟首揃えて」

SYSTEM :
 …通称。
 リリーバー
 生残者。

 思うにこれは。何かをしなくてはならない、と責任に駆られた生き物の。
 …己の行いと過ちを自責と捉えた人間が、堕落の中で正気を削り続けた結果だった。

SYSTEM :
                   ・・
 そもそもこんな場所に訪れた彼に対するなぜを判断する暇がない。

 推し量ることはできたが、東京の神城グループを巡る出来事にはオーヴァードが居過ぎたと、ただそれだけの話から、“なぜ”にたどりつく術などそうもない。

SYSTEM :
 そのうえで、彼の襲来はあなたにとって、この上ないほど悪果であった。

 いまの到着で、追いつけるからだ。
 野良犬とじゃれ合うあなたに、猟犬たちが。

シャラ :
(──────ウソだろ)

シャラ :
 アダムカドモンが生み出した最高の狂気つまりダインスレイフとか、
 ア ク ノ テ キ
 『えいゆう』とか、春日の腰巾着の先行種とか。
 出くわしたらヤバいやつっていうのは、この世界じゃあ数えだしたらキリがない。
 その中でも、こいつは上澄みに入るイカれ野郎だ。

シャラ :
 デコボコのデコの部分を鉄槌で殴るヤツ。
 オーヴァード全員死ねを全身で叫んでたさっきのスクラップとは別の意味でヤバいんだ。だってこいつって生きてるから。
 生きてるってことは機械より説明がつかない。ねじれたらなおのことだ。

シャラ :
……今回の場合、デコボコの『デコ』のほうは──どう考えても、犯罪者扱いされてるオレら悪ガキどもで……。

シャラ :
こいつは当然みたいに、オレらの前に立ちふさがっていた。

シャラ :
「……いま」

シャラ :
「コワいおじさんに追っかけられてるんだわ、オレら。逃がしてくれね?」

シャラ :
 下手くそな命乞いを始めながら、ミソラの首根っこをつかむ。
 前にはこいつがいて、後ろには黒メットとオルトロス。あいつがどかなかったら、ホントに終わりかもしれん。
 オレかミソラ、どっちかが逃げられるとか。そういうのも怪しい。

SYSTEM :
 びく、と薄く跳ねるミソラ。
 後ろから悠々と近づく男の警戒の目は“どちら”にも向いている。

 それはそうだ。あなたも知っている通り、彼は社会秩序の悪人に対する敵だ。
 “浮いている”ものを叩き落とし、出る杭を再起不能にする。まさにあなたがその当事者である今、今度こそ先の提案が輝きかねない瞬間だった。

『生残者』 :
「納得してねェか? ああ、死に際は皆そう言うよ」

『生残者』 :
「ああ、喋るだけ頭痛がするが、まァすぐ終わらすから黙って聞いてろ。
 俺にとってはこれが一番ラクなんだ。“お願い事”を聞く時の作法とか忘れちまってね。それに…」

『生残者』 :
「そこは心配いらねえ。どっちも殺す。安心だろ?
 生き残りは俺だけだ。今までもこれからも、ずっと、ずっと…」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「へ、ェェェ…。
 途中までいいお誘いだったが最後が減点だな、オイ」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「テメー、怪物やりてえなら口閉ざせ。
 意思疎通のできるモンスターどこにいんだよ。わかる?」

『生残者』 :
「ハ、ハ、ハ───わからねェな。
 つーか聞いてねェ。おまえの価値観トークなら、数年後くらいに地獄で聞いてやるからそっちでしてくれ。OK?」

SYSTEM :
 今日の職場の気安い同僚のような声同士。挟み撃ちの狩りではないが、むしろより酷い。

 そして、彼については誰もがある部分を誤解する。
 社会秩序の悪に対する敵、とはいうが───。

SYSTEM :

 男の認識する社会秩序などは、
 4年前で永久に止まっている。

SYSTEM :
 ───よって、だいたい目に映るすべてが敵だ。

 彼は二人目の戯け者。

 何かになり切れなかったのではなく、
 何かをやめてしまった異形の殺人者。
 エンドライン
 終わった世界ではさほどと珍しくもない。
 蓋を開ければ、どんな”イカれ”もこんなものだ。

SYSTEM :
 二人が剣/拳を振り上げる。
 日常的な予備動作から、タメもなく殺意がレールに乗せられ放たれるまで数秒。

『シャラ』 :
────巧く使え

シャラ :
 わかってら!

シャラ :
 掴んだままのミソラの首筋を短く三回叩く。        リザ
 いちにのさん、で全力離脱を狙うってサインだ。1か2ぐらい死滅る覚悟で、こっから始まる嵐を掻い潜るしかない。

シャラ :
 あいつが何で、どういう人生を辿って、なんでイカれてるのかとか。
 そういうのは生き残るって目的の前にはいらんことでしかない。
 振り向いたやつから死ぬ。振り向いても生き残るのは絶対的強者の特権で、いまのオレらは逃げ回る鼠であってライオンじゃない。
 だから、どっちの思想にも付き合わず逃げの一手にかぎる。

シャラ :
(……まだ腹減ってんだ)

シャラ :
(死にたくねェ)

シャラ :
(……死んでも生き残る!)

シャラ :
 頭の中で数を数える。
 血の気の引いた顔で、『終わりだ』って震えてる鼠みたいなしおらしい顔を装って。捕食者どもの手を噛みちぎるためのカウントを全身全霊で数える。

シャラ :
 さん。に。いち────

SYSTEM :
 肯く反応はない。
 だが、考えていることはさほど違いがない。

 挑む選択肢だけはない。
 もしかしたら、ひょっとしたら…。
 何か致命的で不可逆な代償を払えば、この殺人者たちに引導を渡すこともできたかもしれないが、ありえない選択肢でもあった。
   ・・
 その代償が、両名の目的において死と大して変わらないからだ。

『生残者』 :
   ・・・
「───だよな」

SYSTEM :
 そしてその瞳に宿る微かな感情を、

 彼に一片でも名残があれば…。
    ・・・・
 いや、なかったら。見過ごしていただろう。

 視界の片隅に逃げていく只人のようなオーヴァードなど。
 殺し殺されの嗅覚が働くものではなく、逃げ惑って“消える”ものに手が出るのは、殺しではなく狩りだ。意味と嗜虐を優先するだけの行いだ。

 何ならそれは、どちらにもなかった。

『生残者』 :
「でも、今更なんだわ、そういうの」

SYSTEM :
 ──────それ故に。
       ・・
 さん、にの、いちのタイミング。
 まさに意が発露する瞬間を狙って、人間技とは思えない角度から、人体技術の延長線で辿り着く魔手が砲弾のように解き放たれ…。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「──────!」

SYSTEM :
 間に合わない、と判断した彼女が、
 むりやり引っ掴んだ手を外し、

 ───おそらく、次に彼女が意図的に脱落すると、中も外も共通の認識を抱いた瞬間。

SYSTEM :
 …捨てる神あらば拾う神ありなどと。
 よく言ったものである。

 その瞬間に、突風が視界を横切った。

SYSTEM :
 ノーモーション
 予備動作無しの奇襲攻撃は、あなたたちだけを標的から外している。
 道路を4WDごと割り断ち、弾き飛ばすコラテラル・ダメージと同時に巻き上がる砂煙、それを風が巻き上げて覆い、一時的に誰もの五感からあなたたちを外した。
 
 推定はハヌマーン・シンドロームだがそれだけではない。
 それだけならばもう少し攻撃範囲が広く、これほどの精密動作は為し得ない。

SYSTEM :
 あなたは二度目の絶望的不運の中で、それを聞いたことを、ただの苦痛の先延ばしと取るのか、それとも考える必要もないと割り切るのか。

 それは定かでもない。
 ただあなたは、その当事者と一度だけ会話したことがあった。勇を通じて、だが。

SYSTEM :
 
 ただ生きたいと願っていたものだけは、
 さすがに見過ごせなかった………。と。

 つい先程まで安否を願うそぶりを見せていた男。
 曰く、弱者を食い物にすることが常のギルドの人間だったというその男が、以降の通信を断っていた理由などそれだけだ。

『フリサリダ』 :
「───行け!」

SYSTEM :
 分かってもいるだろう。
               ・・・・
 それもほぼ、結末の見えている消化試合だ。

SYSTEM :
 ただ、終わり切った世界だからこそ何かを見出すようなものがいることも、情けが巡り巡ってくることも、
 エンドライン
 終わった世界では、実を言うと、珍しすぎることではなかった。

シャラ :
「─────ッ」

シャラ :
 風が吹いた。
 吹き飛ばされた勢いを使って、ミソラのほせぇ体を抱え上げてまた走る。
 使い手が誰なのか、気付いたのは動き出してからのことだった。

シャラ :
 フリサリダ。とかって名前のはずだ。
 ギルドの人間にしちゃ、情とかいう一銭にもならないもので動いたバカなやつ。

シャラ :
 こいつがあの“生残者”と黒メット相手に勝ちを拾えるとかありえない。
 来るだけ損、無駄の上塗り。ふつうのギルドメンバーならそう考える。でもそれを、こいつはしなかった。
 イサミといっしょに帰ってったコムスメを見逃したときより明確に。
 こいつはこれを越しても数十分後に終わるかもしれないガキどものために死にに来た。

シャラ :
 こういうヤツがたまにいるんだ。
 降って湧いた幸運には全力で飛びつくしかない。
 ムダになんてできるわけがなかった。

シャラ :
 かわりに、目いっぱい悪ガキの顔!

シャラ :
「サンキュー、おっさん……!」

シャラ :
 叫んで全力疾走!
 砂煙が晴れるまでに、少しでも長く距離をとる……!

SYSTEM :
 後にして思えば、そのわずかな行動が”死期”を先送りにしたようでもあったし。
 あるいは、その行動そのものが無意味な犬死にのようでもあった。測る術はない。

 そもそも、測るような贅沢ができる時代ではなかった。
 彼は贅沢の側にいながら酔狂をした人間だが、その理由をあなたは知っている。“たまにいる”からだ。悪びれたい少年の視界にだって。いや、だからこそ。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「…か…かっこつけ!」

SYSTEM :
 一番姿勢のかっこつかない人間の、
 そもそもどちらに当てた、どういう感情なのかすら定かではない発言をかき消す勢いの、少年の誠意なき誠意。
 
 男がそれに返す言葉はない。そんな余所見の隙がない。
 だから、この時口にした言葉が聞こえたわけでもない。
 なのでただの推察だが───。

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「ブハッ、おいどうだよオッサン!
 初めましてだクソ野郎、感想あるかオイ!?」 

『フリサリダ』 :
「10年前は自分が言う立場だった。
 あの時は、そうだな、こう言われたんだったか」

『フリサリダ』 :
「───“オッサンじゃない”」

SYSTEM :
 概ねその年頃の大人が四、五年すれば呼ばれる名誉(?)ある称号への反発が、砂嵐越しに響いていたのだろう。

 もちろん知る由はない。留まって得られるものは愚かな道連れだけだ。
 運のいいことに、お陰で追手は撒けた。少なくとも、追手と呼ぶにはあまりに無作為なものたちは。

SYSTEM :
 少しでも長く、と逃げ込んだ退路から。
 響く戦いの音に背を向ける。

 チェイスの終着点まであと少し。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 先天性の狩人と、後天性の怪物が得物をぶつけ合う。
 吹き荒れる砂塵と冷気の中を掻い潜りながら、戦場の主役はどこまでも”野良犬”のものだった。

SYSTEM :
 皮肉なことだ。
 失った比重がそのまま。余分を捨てた骸が、こと、その方面に“だけ”は最善の力を与えている。

SYSTEM :

 おわらせる
 モノを壊すという、何ら誰かに報いる術のなく、後に続くことを他人任せにしてもよい行い…。
 端的に言って何よりも楽であり、それを役立たせる術は何よりも難しい、殺しの技についてだけは。彼は無敵のプレデターだった。

SYSTEM :

 そして“生残者”は後者についてもはや考える余地を持っていない。なんと気楽で退廃的なことか。
 それも当然だ。どこにも行かなくていい。彼はずっと、そこに留まり/彷徨い、殺すだけ。

『フリサリダ』 :
  ・・
「(奈落か)」

SYSTEM :
     ・・
 三つ巴の一弱が、静かにそう感想を抱いた。
 どこかで断崖を飛ぶ無謀をして、飛ぶ自分を信じ切れずに落ちて行った者。
 ひょっとすると、物理的に現在進行形の側が抱いた感想がそれだ。

『生残者』 :
   よわ
「───脆弱い」

『生残者』 :
    よわ
「ああ。脆弱いな、おまえら」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「カハッ、次は安い喧嘩の値札つけるじゃねェか腑抜け。
 いいぜ、いくらだ買ってやる。最近は生意気にもバリエーションが欲しいところなんだ」

『生残者』 :
「ハ、ハ…買う必要はねェ、気にするな。どっちでもおんなじだ」

『生残者』 :
「でもまあ…、売ったんだよ。そりゃそうだ、嗤えて来るからな。
 目的のねェ野良犬と、目的も見つけられない飼い犬だ。

 俺の知らんうちにこの国も犬贔屓が勝ったんだって思っちまってな、だから思わず口に出ちまったんだよ」

SYSTEM :
 この自覚のない壊れ方をした男は、”めくら”のまま、一度手放した星を追いかけ続けている。
 追いかけるための道具も忘れて、道しるべも失って、本能のまま走り続ける人狼は、
 本当にたどり着くためのものを過去に置いて。そこからずっと目を背け続けている。

 これが次に珍しくない終わり方だ。
 ・・
 過ちで失ったものを取り戻そうと、灯台の下に残ったものを投げ込むように海の底に沈んでいくような者。

SYSTEM :
 では“俺”はどうなのだろう?
 あの少年は? あの子は?

 益体もないことを考えながら、五撃食らう中で三撃を返す。
 わかりきっている無謀の中で、余裕綽々でもないくせ高揚を隠さない男の声だけが響いている。

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
              ボッチ
「帰結すんのが自虐かよ逸れの一匹狼。
 その犬の一匹同士だが、仲良くするにゃテメーは論外だぜ。
 やりたくもねー目的のラベルを貼って、やりたくもねーって顔しながら出てくるたぁいい身分だ」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「つーかァ…俺、この際だから聞こうと思ってたんだけどよ」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「御宅だ御宅。神城とつるんでた欧州のヤツだろ。何を思って仕事ブン投げた?」

『フリサリダ』 :
「それか。大したことではない。
 そちらの彼が言ったんだが、俺は何処までも飼い犬だよ」

SYSTEM :
 どうなのだろう。
 彼の、自問の答えはすぐに出た。
 本当に大したことではなかった。

『フリサリダ』 :
「だから明日の心配が無用な生活と恩義で。世の中の大抵のことを忘れ、誤魔化してきたんだが───」

『フリサリダ』 :
「それを…越えられてな。思わず魔が差してしまった。
 我ながら反省している。飼い犬未満の人間未満が出来上がりだ」

SYSTEM :
 少年の推察は的を射ていた。ただの情だ。

 今後の展望もないから、大きな変化もありはしない。
 だから、結論から言えば、少年の寿命は数分伸びただけだ。
 主観においては間違いなく。

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「へー。一発きりの花火で満足するタチだったか、兄ちゃん」

『フリサリダ』 :
「ひょっとするとな。───だが。
 意外と、未練は生まれるものらしい」

『フリサリダ』 :
「花火の二発目を見たい気分でな。
 …つまりだ、意外と…ここから襤褸勝ちしてしまうかもしれないぞ」

SYSTEM :
 そして奈落に行く犬たちの展望を別つものも、さほどの違いはなかった。

 皆そうだ。ボタンの掛け違い。
 できていたことが出来なくなり、出来ないと割り切ったことがこうやって出来た。

SYSTEM :
 …その掛け違いの中で、
 唯一飼い犬だけがいつも通りだった。

 例えば、彼の好きな戦いは。
 どんな生き方をしていても、勝ちの決まった殲滅戦ではない。

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「───カハッ!」

『ストレンジ・テンペスト』/指揮官 :
「いいねェ嬉しいねェ! それじゃァうまいこと気張れよ色男。
 似たような痩せ我慢した野郎なら…こっちは片手指、そこらのシミにしてきてるんだぜェ!?」 

『生残者』 :
「前口上は終わったか?
 納得もしたよ。いい生き方したな兄ちゃん」

『生残者』 :
「───でもダメだ、死んでくれ」

SYSTEM :
 その戦闘音が一つ止むのにかかった時間は、背を向けたあなたが思うよりかは長かった。
 それだけだ。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 誤射の危険性において比較にならない市街地で“オルトロス”は入れない。
 走る4WDの姿を頼りに追っていたサーチライトも、あなたが逃げおおせた今となっては照らし先を見失った。

 チェイスの終わり、命を拾った。
 戯言を言う人間は二人…訂正。
 三人から二人に減り。
 戯言を訂正する人間も三人から二人になった。概ねそれが代価だ。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「………」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「役得終わりだよ。下ろして。
 1秒ごとにあることないことリズちゃんに撒くからね」

SYSTEM :
 このままどこかで頃合いを見て降り、身を潜め、帰還する。
 いまさら引き返すような無謀を思いつかなければ、それで残りは一工程だ。

 図ったようなふてぶてしい台詞を吐いた彼女は、あなたが下ろしていなければずっと件の姿勢のままだった。

シャラ :
「相手最悪ゥ〜……」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「いいんだよ 冗談で済まないほうとか…」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「冗談で地球一周できるほうとかチョイスしても」

シャラ :
「やめろバカ!」勢いよく体を落っことす。

『ブラストハンド』/ミソラ :
ギャッ

SYSTEM :
 丁重に扱え、とばかりの抗議の音もそこそこに立ち上がる生まれたて。

 …かつては日本有数、いまは世界有数。
 FHと太いパイプで結ばれた神城グループの本社に突撃し、目的を果たしたことそのものは確かに幸運で。
 あるいは、世界に訪れる終わりを決定的にする可能性を一つ彼方に追いやったようなものだったが。

SYSTEM :
 寿命が縮んだような思いをした人間はあなただけではなかっただろう。
 ひょっとすると、縮み切った者も。それも、たぶん”いつかは”の順番の違いだ。

シャラ :
「……とりあえず、連中は撒いたっぽいな」

シャラ :
「まだ油断できね〜けど。
 春日のほうからは、今んトコなんも来てね〜し……」

SYSTEM :
 久坂勇を追い詰め切る、ただそのために。
 “ディアボロス”の完璧主義は、おのれのプライドとまことの成功を天秤にかけた。

 その結果の到着が“どこ”に訪れ、だれが割を食ったのか。考える暇はない。
 そもそも、普段からあちこちを飛び回る彼らが、本当に日本にいるのかも。

SYSTEM :
 油断はできないと口にしたあなたが、本当に警戒を厳となしていたのか、それとも。
 口にしながらも、少なくとも、これ以上はない、と…安堵のようなものはあったのか。

 どちらの感情を抱いたのか定かでないが、それに少女は答えなかった。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「───。あー」

SYSTEM :
 いや…。振り返ったその時の表情が、淡い苦笑だったことは。

 ひょっとすると、答えだった。

『ブラストハンド』/ミソラ :
 ・・・ 
「ごめん」

SYSTEM :
               エフェクト
 言うが早いか、彼女はありったけの輝きを眼晦ましのように展開し。
 ダメ押しとばかりに、どん、と、あなたを突き飛ばし。

SYSTEM :
 次の瞬間に、熱と光が駆け抜けた。

SYSTEM :
 あなたの押し出された場所を余波で覆う程度の…“どう”なるかすぐにわかる熱線。
 先程まであなたの立っていた場所を、直線的に通過していた。じゅ、と蒸発する血の気配。

SYSTEM :
 すぐに分かる。
 いや、分かる情報の洪水は、あなたに理性的な判断を許したか分からなかった。

『シャラ』 :
────多少は使えたか
    起き上がれ 早く逃げろ

シャラ :
「は───」

SYSTEM :
 あなたに覆いかぶさった赤色/ほとんど蒸発した赤色は、その少女だった。
 咄嗟にカバーに入り、狙いを歪曲し、ひとりだけ生かした。

 リザレクトにも限度がある。オーヴァードは有限の不死だ。

 あなたの方が生きる目がある、と咄嗟に判断した少女の躊躇ない動作の結果は、あなたの中の濁った冷静さが一番わかっている。
 そしてそれ自体、あるいは、半ば逃避のようなものだったかもしれない事だって。 

SYSTEM :
                                  デビルハンド
 ───ところで春日恭二…“ディアボロス”が見初めたエージェントを、『悪魔の右腕』と呼ぶ。
 今や世界の立役者となった英雄に”力を貸してほしい”と乞われ、首を縦に振らないFHなどそうもいない。

SYSTEM :

 そして悪魔は今や、日本のみならず、世界を守る守護者の中の守護者だ。
 彼単身にFHとしての任務/”役得”を任せる無能を、統一政府は望まない。
 ただ彼が、表も裏も掌中に納める気概を持つ人間である事実を利用しない手も、またなかった。

SYSTEM :

 春日恭二自らが見初めた、あるいは要請を受けて出向したオーヴァードのみで構成された最精鋭チーム。
 嘘かまことか、神城最大の広告塔「アンリミテッドエボルヴ」の因子移植実験さえも経た…。
         New Type Unit
 特異なレネゲイド…先行種の集団。

SYSTEM :

 今や日本のみならず、“ディアボロス”を含めた問題解決の七つ道具として、
 FH統一政府、ひいてはセントラルドグマのクランチームとも渡り合える最強兵団。

SYSTEM :
     Discord Defend Demons
 ──────通称、『DDD』。

SYSTEM :

 ストレンジ・テンペスト…あるいは、欧州で死肉の啄みに明け暮れる鸛ども。
 そこに続く、古き世界への忌み名。
 悪魔と契約を交わしたこの星を守護り、混乱のすべてを断つディアボロスの眷属。第三の対UGN用戦闘チーム。

SYSTEM :

 端的に。
 口は、災いのもとだった。

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :


「───で」

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :


「なんで手を出したの?」

『DDD』/“終わった男”樋浦 彼方 :

「うん? ………ああ、残念だ。一撃で楽にしてあげるつもりだったんだけど。
 蛇の目が出ちゃったな」

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :

「そう。何もかも無駄ね」

SYSTEM :

 半径数百mを容易く覆う領域は、命の終わりを看取り、既知を否定して新生させる火の炉心。
                   コマンダー
 故意かつ冷酷な苛烈さを伴った、恐らくは司令塔役と思しき、女の声。
 火の炉心の中で全く違う、ただ終わらせるため“だけ”の死灰を積む男が、感情のない平たい声で口にした。

『DDD』/“メドラウト”エクレール=モルガーン :
「へー、“ブラストハンド”ってこんなガキかよ。
 せっかくガチる気で乗り込んだんだぜ、これじゃ骨折り損の……」

『DDD』/“パラディン”的場啓吾 :
「くたびれ儲け?」

『DDD』/“メドラウト”エクレール=モルガーン :
「そうそうそれそれ。やるじゃん国語の教師!」

『DDD』/“パラディン”的場啓吾 :
「そうか、ところで序でに言っておくが…こいつらじゃない。
 ちなみに…、“生残者”のほうでもない」

『DDD』/“パラディン”的場啓吾 :
「度胸は同じだが、結局のところ度胸だけ。まったくおまえの言う通りだな」

『DDD』/“メドラウト”エクレール=モルガーン :
「ハァ? 残り滓? 
 何だよ、自慢にもなんねーの」

SYSTEM :
 血を媒介に武装する、忠義立てするものを知らない騎士紛いの乱暴者をあしらうのは。
 元最強の日本支部UGNエージェント…今は如何なる理由か『鞍替え』した男。パラディン。

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :
「ま、いいわ。…“ノーバディ”。
 馴らし代わりに使いなさい」

『DDD』/“ノーバディ”来栖 暁丞 :
「善処する」

『DDD』/“メドラウト”エクレール=モルガーン :
「なンだ、まだカミシロからのオモチャ馴れしてねーの。
 つーかおまえ、前のヤツどこやったんだよ。オシャカ?」

『DDD』/“ノーバディ”来栖 暁丞 :
「ガンビットとかいうのは、おれに心底向かないと何度も申告したのだが……。
 その代わりとばかりにベツの際物を神城の…ナントカから押し付けられてな」

『DDD』/“ノーバディ”来栖 暁丞 :
「───いやいい、過ぎたことだ、いつも通りで行こう。流れでやることをやる。
     ・・・・・・
 一人と、この先に一人だったか」

SYSTEM :
 ましてそれは、あまりに残酷な“ついで”の発言だった。
 ………思うに彼らの過剰な集まりの本命は、あなたたちではない。
 神城本社を狙ったブラストハンドの襲撃に合わせて呼び出された、逃げおおせた勇…。

SYSTEM :
 ではなく。元々は先ほどの“生残者”を狙って訪れた長旅に“追加”で仕事を押し付けられたのが、いま漸く重役出勤し…。
        ・・
 作為すら感じる偶々で、あなたの前に現れただけだったからだ。

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :
「…ああ。そこのきみら」

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :
「降伏も恭順も和平も交渉もなし。
 楽に死にたいなら前に出なさい。どうせこの後、残すひとりは選べるから」

SYSTEM :
 大抵、反乱分子の鎮圧においてマニュアル通りに事を成した場合…。
 ひとりはバラして情報回収のち献体、それ以外は皆殺し。

 降伏勧告の無さは、ひとかけらを除いた容赦の無さだった。

シャラ :
(……………マジか)

シャラ :
 頭の中で無数の選択肢が駆け巡る。
 ミソラの血が飢餓を癒す。腹が満たされて舌が渇く。
 癒されることに腹が立って、こいつらのアウトオブ眼中加減にも心底嫌気が差す。

シャラ :
 全員知ってる顔。2/5裏切り者の、力に酔ったクソボケ集団。それがDDDだ。

シャラ :
 相手が裏切り者であることにオレはなんにも思うことはないが(オレがそうだしな)、オレじゃないほうは既におかんむりだ。
 ババ引いた果てが裏切り者によって殺される結末なのが、よっぽどムカッ腹立つらしい。

シャラ :
殺意がささやく。死人のクセ怒ってることだけはメチャクチャ伝わるのに、まだ冷静ぶっている。

『シャラ』 :
────選べ

『シャラ』 :
────貸すか狂うかだ

シャラ :
最悪の二択! 借りパクする気マンマンのくせに。

シャラ :
 引きつったような呼吸がうるさいと思ったら、全部オレのオトだ。
 綺麗に消し飛ばされて少しだけ残った血を舐め取る。死んだヤツを覚えておくために。

シャラ :
「ひ、い、はっ、は……ッ、ァ、ひぃッ、ひ──」

シャラ :
「……ひ、ひひ……」

シャラ :
(人生最悪って、生きてるかぎりコーシンされるってぇの……聞いたコトあっけど)

シャラ :
     ・・・
(……これが一番上か?)

シャラ :
 命は軽い。吹けば飛ぶよーに、簡単になくなっていく。
 オレの口はそれを絶望するほど知っていたはずなのに、何度目かの実感をともなう。

シャラ :
「ひっ……ひ、ひひひひひ!」

シャラ :
 ここで終わりかよ、あっけねぇな!
 死にたくないと心底思ってたし思ってるのに、『ダメだ』が実感を伴った瞬間キモいほど楽しくなってくる!
 擦りむいた傷やら切り傷打撲痕から、開かれてもいないのに血がドロドロ流れ出す! 

シャラ :
「残すひとりは選べる──?」

シャラ :
 手刀で手首を切り裂いた。
 繰り返す。何度も何度も。体中の澱を吐き出しきるみたいに、何度も何度も何度もジェネシフトを繰り返す。

シャラ :
「テメェらなんぞに……────」

シャラ :
 ・・・・・・
(お兄ちゃんを!)

シャラ :
「ひとっかけらもくれてやるわけ、ねェェェェェェェだろォォォォォォがッ!!!!」

シャラ :
 これで終わりだと悟った死にかけの生き物のやぶれかぶれは、こんなやつらにとって『ちょっと』でしかない。
 でもどんなモンが出るんだかわからないウロボロスとかいうシンドロームなら、『ちょっと厄介』を『かなり』にする。
 何が出てくるかわからないびっくり箱が、吐き出した血をオレごと爆裂させる!

シャラ :
 ワタシ   親しんだ
 オレの腕が、知らない仕草で柏手を打つ。
 炎の中で。自分と先にいったほうの痕跡を全部全部燃やしながら──たぶん人生最後のエフェクトを編み上げる。

シャラ :
「くれてやるものなんて、なんもねェよ……」

シャラ :
「てめェらは……」
 焼けた喉で叫びながら、血が生み出した無数のまがい物が宙を舞う。
 剣が、拳が、血の弾丸が、鈍器が。槍が。炎が氷が。黒いテクスチャに覆われた泥の塊が、遮二無二襲いかかる。
 燃え尽きて滓が逃げ出すまで、邪魔をさせないために。

シャラ :
「ずぅっと腐って!
 つまんねェ顔並べて!」

シャラ :
「死ぬまで渇いて、笑えずに生きてろ────ッ!!!」

シャラ :
 オレのバカ笑いとともに。
 見掛け倒しの最後っ屁が振り注ぐ。

SYSTEM :
 欠片もない納得。遠かったミソラの番が、数分遅れでやってきた。
 
 次はあなただ。そうわかったとき。
 悪魔の囁きに、あなたはどちらを選んだのか。

SYSTEM :
 蟲毒で煮詰められた呪いが身体を廻り、空に木霊する。
 奈落の絶望が、純化された最期の希望以外のすべてを歪めて流出する。

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :
「そう…。辞世の句、それでいいのね」

SYSTEM :
 ………、………。
 ……………………。

SYSTEM :
 …その後のことは、敢えて語るまでもない。
 爆ぜるように命を燃やし、最後の結果に挑んだその後など。

SYSTEM :
 このように。
 ただ理不尽が、目に映るものを車輪の下敷きとしていくようなこと。

SYSTEM :
 エンドライン
 終わった世界では、実を言うと、珍しすぎることではなかった。

SYSTEM :
 悪夢は現実に、現実は悪夢に。
 これは終わりの始まりなのか。
 それとも始まりの終わりなのか。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

『DDD』/“終わった男”樋浦 彼方 :
「ところで」

『DDD』/“終わった男”樋浦 彼方 :
「いいのかい、本部狩りの“けじめ”つけにいかないで」

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :
「任務中の事故が一つ増えていいなら続けなさい」

『DDD』/“終わった男”樋浦 彼方 :
「ハハ」

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :
「それに…“パラディン”はおまえより引率やる男よ。
 最悪、預かりものを死なせない程度にはするでしょ」

『DDD』/“終わった男”樋浦 彼方 :
「可愛がるね。“ノーバディ”はさておき、その預け先は彼女のことどうでもよさげだけど。なに、親近感?」

『DDD』/“終わった男”樋浦 彼方 :
「でも、きみの興味は元同僚より…見つけた不思議な形の石ころに向いているようだ」

SYSTEM :
 ………のち。

SYSTEM :

 撃破した敵性エージェント一体の残り香と、
 もがくように爆ぜていったもう一体の残滓。

 特に後者がまるごと生死不明のまま行方を晦ますという神隠しに遭った【DDD】は。
 だが、それも些事とばかりに、本分のための実働と、事後処理に部隊を分けた。

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :
「別に。有り得ないことは有り得ない、が、オーヴァードのルールよ。
 “ブラストハンド”の代表は特異点だって話。構成員のほうだろうと、何が起きたっておかしくない」

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :
「…それから神城の“白亜城相”に繋いで。
 “ディアボロス”の後始末なんてこっちから連絡かける必要ないでしょ。その間に、点数稼ぎの線も追うわ」

『DDD』/“終わった男”樋浦 彼方 :
「彼、嫌ってたんじゃないのかい?
 ほら、息子をなかったことにしたがって」

『DDD』/“ヴァルカン”春日 絢火 :
「さっさとやれ」

『DDD』/“終わった男”樋浦 彼方 :
「了解」

SYSTEM :
 神城グループとFHの研究成果を跡形もなく粉微塵にした許されざるテロリストを追跡、完膚なきまでに粉砕する───。

 その指示が、彼女らを右腕とした男から届くのに、時間はかからない。

SYSTEM :
 それは、現最強候補のFH精鋭部隊のひとつ、ストレンジ・テンペストにも然して変わらない。
 追われる彼らにどの程度の幸運がほほ笑んだとしても、今日の代価が致命的なものになるだろう現実も。

SYSTEM :
 ………しかし。

    ・・・・・・・
 これはこのまま行けば、の話であった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 時に。
 オーヴァードの死とは、基本的に肉体の死ではない。

SYSTEM :
 宿主がその負荷に耐えられる限りは、彼らは肉体の死を引っ繰り返せる。
 本当の意味での死は、精神の死だった。

SYSTEM :
 ………ならば目の前のこれは、どういう状況だろう。

SYSTEM :
 人生最後のつもりだったあなたの視界に広がったものは、どことも知れない夜明けの狭間。
 夢だと分かる時の夢のような浮遊感だけが、あなたの存在と生存を認めていた。

SYSTEM :
 あなたは。生きていた。
 あっけない終わりの向こう側で。

シャラ :
────────。────────。────────。
……………………………。

シャラ :
「~~~~~~ッだああ~~~~~~負けた負けた負けた!!!」

シャラ :
「ムッッッッかつくなァ~~~チビと裏切り者軍団!
 望風の連中からPFパチってきたらゼッテあと30秒は勝負なっただろ! 腹立、」

シャラ :
「……つ──」

シャラ :
「…………な…………?」

シャラ :
「………ン………?」

シャラ :
 むくりと起き上がる。
     ・・・・・
 んあ? 起き上がるって感覚がある。

 あれ?

シャラ :
「………ンだこれ」

シャラ :
 とりあえず周囲を見る。
 明らかにさっきと同じ場所じゃない。
 血の味は口の中で感じるような気がするけど、怪我の気配も最後の最後にぶっぱなした時に感じた、
 ・・・・・・・・・・・・・・
 正気と狂気の境目をブチ抜いた高揚感もまるっとすっぽり抜けている。

『シャラ』 :
────向こう見ずよ
   なぜ生きている?

シャラ :
オレに聞くなブチ切れマン! つーかなんでいるんだよ!

SYSTEM :
 なぜ生きている───。
 その疑問が浮かぶ程度には、
 あなたの感覚が自らの命を肯定している。

 ここはどこ、何があった、その他諸々。
 あらゆる答えをすっぽ抜かして、凡そ生命に貪欲なレネゲイドの純化された感性が、たったそれだけを肯定する。

SYSTEM :
 ありえないことはありえない。
 それがオーヴァードだ。
 全てではないが、常識よりその感性が勝るほうが多い。

 そして大抵の場合、時間と共にそれを補強する根拠がついてくるというものだが。

* :
「───モノによっては別の結果もあったでしょう。
 もっとも、私はアレをあまり気に召しませんけど」

* :
「ああ、そうだった。こういう話をしに来たのではありませんでした…」

SYSTEM :
 それを持ってきた人間は。
 あなたにとって、恐らく出会いたくない人間の五本指に入っていただろう。

SYSTEM :
 涼やかな妙齢の女性の声。振り返った先、今まで気配を微塵も感じなかったその場所に。
 女の姿が、立っていた。

“プランナー”都築京香 :
「お目覚めですね?」

SYSTEM :
 その女の名をあなたはよく知っている。
 ───”プランナー”都築京香。FH日本支部の統括者。

SYSTEM :
 春日恭二を含んだ”春日一族”のリエゾンエージェント集団が主と仰ぐ…。
 神算鬼謀の女だった。

シャラ :
「どぇ」

シャラ :
 喉が潰れたみたいな声が出た。
 身体が反射的に直立不動になって、その体勢のまま勢いよく後ずさる。ズザザザザザザ。

“プランナー”都築京香 :
「あら」

シャラ :
 全身の血の気が引くってまさにこのことだ。
 え? オレ様全身残らず爆裂した気がするのに? なんで?
 やっぱプランナーってそこからでも再生とかできるの? なんで?

シャラ :
「…………………………」
 ……人生最大って死んだあとにも更新されることあんだ。

SYSTEM :
 “プランナー”の表情は伝え聞いている以上に、凡そ薄いほほえみを湛えた人間の形をしただけの別物だったが…。
 あなたの顔によほど疑問の形が書いてでもあったのか、言いたいことに入る前に一呼吸を置いた。

“プランナー”都築京香 :
「強いて言うなら…」

“プランナー”都築京香 :
「死んだ後というよりかは、今際の際ですが…。
 認識としてはどちらでも構いません。なので、続きのための話をしましょうか」

シャラ :
「すんません、息するみたいに心読むのコワいっす」

“プランナー”都築京香 :
「長い話はお嫌いでしょう?」

シャラ :
「大嫌いっす!!」

SYSTEM :
 プランナーの表情は一切変わらなかった。ただ“そうですか”という言葉を確認のために使って、本題に入る。

“プランナー”都築京香 :
「───取引をしませんか? “アガースラ”」

“プランナー”都築京香 :
「あなた方の生きている現在、そして過去と未来が、ふたりの欲望で壊れようとしております」

シャラ :
「……取引ぃ?」

シャラ :
 この女に、どーでもいい相手に支払うペイとかあんのか?
 ファルスハーツとかUGNとかですらなく、現在なんてデッカい話もヘンすぎる。

シャラ :
 ならなんだ? この頭ぜーんぶこの女に聞かれてることを知っての上でも、なんでとその答えを考え始めてしまう。

シャラ :
 だいいち普通の困りごとなら、それこそオレとミソラをゴミみたいに殺した連中──の雇い主とかにやらせりゃいい。
 頼むまでもなく眉を寄せるだけで、春日軍団が束になって動き出すのが”プランナー”って女だ。
        やっかいもの     特異点
 わざわざ敵で、ウロボロスで、どころかイサミですらないオレにお鉢が待ってきたのがナゾすぎる。

シャラ :
……………………。

シャラ :
ただひとつわかることがある。この取引に首振ったらマジで死ぬ。

シャラ :
「……話だけは聞くけど」

シャラ :
「オレに口答えさせてるってことは、こっちの話きくつもりあるってコトだろ」

“プランナー”都築京香 :
「はい」

 躊躇のない肯定は、どちらに向いたものだろうか。
 “話だけは聞く”のほうか、それとも。

“プランナー”都築京香 :
「そうです。序に言えば…もう少し実感が欲しいかと思っていたのですが」

シャラ :
「じっかん?」

“プランナー”都築京香 :
「ええ。断っても構いませんが、お互いに益がありません。
 何度も彼を…『生残者』を欺き導くのは、無理ではありませんが、手間ですしね」

シャラ :
「は?」

“プランナー”都築京香 :
「それにあなた………。
 
 先ほど見て思いましたが、理屈より感情が勝つ類の方でしょう? ですから、ほら」

SYSTEM :
 ………見れば。もう一人が、そこにいる。
 実感のイミの証人がわり。

 それで思うに、目覚めたのはあなたが先ではなく、あなたが最後だったようだ。

SYSTEM :
 そいつはとてもばつの悪そうな表情をして。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「………なんてこと…」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「オモシロ方向の遺書を書きそびれた…!」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「久坂勇クン、お慕いしておりました、とか…」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「あとは死んだら時効ってことで…。
 以前騒動になったお菓子喪失事件の犯人は私だよ、とか…」

SYSTEM :
 訂正。ばつが悪い、というか未練の話をしていた。

 ちなみに遺書にそんなものを書いたら、
      もみじの鉄拳
 縺れた痴情はメギドの炎で焼き尽くされ、
 盗難には奉行と化したお兄さんお姉さん(不特定多数)に処されること請け合いである。

SYSTEM :
 あと余談だが件の被害者はあなた。

シャラ :
「あ?」

シャラ :
「え?」

シャラ :
「………………」

シャラ :
「なんで?」

『シャラ』 :
────人質

シャラ :
補足すんな丁寧に!目そらしたんだよ!

SYSTEM :
 ちなみに今のは彼女なりの意図的に踏み込んだジョークだったらしい。
 なので、あなたの表情が“それどころではない”なのを知ると、すぐに居住まいを正した。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「…待って、真面目にやるから」

シャラ :
「おっせーんだよタコ!!」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「バカの類義語…!
 知らないの、バカって言ったらバカなんだ」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「つまり───。
 間違いなく、イカだ」

シャラ :
「イカでもねーよ! このホタルイカ!」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「きっとどこかで、夢から覚めるまでの短い時間に会える気がするんだ…ホタルイカ…」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「………どういう状況?
 あんたが起きるまで少し待ちぼうけた」

“プランナー”都築京香 :
「実感…と、言ったではありませんか」

“プランナー”都築京香 :
「取引と言ったでしょう? 提示するものの具体例があったほうが、あなたが首を縦に振りやすいかと思いまして」

SYSTEM :
 先程の言葉を借りるならば。
 どーでもいい相手に支払うペイだ。

 なくなる命を回収した/できる。
 意味は好きに捉えていい。どちらでも彼女はするし出来る。
 そして、あなたの中の高値があなた自身であることを知りながら、女は言葉を弄し始めた。

“プランナー”都築京香 :
「あなた方は東京の神城グループ本社に乗り込み、ニュートロフィルの設計機構を破壊。
 しかしストレンジ・テンペストと、偶々、優先して訪れる故を見つけたばかりの『生残者』と、“ディアボロス”が呼びつけたDDDによって手痛い被害を被った…」

“プランナー”都築京香 :
        ・
「………その中から誰にしようか、と思っていたのですが。

 あなたが一番、予期せぬことを起こしたので。ちょうどよいから、あなたにしたのです」

SYSTEM :
 ちなみに厳密には…全体としてみた場合は“被害を被ろうとしている”なのだが。
 そう付け加えたところで、あまりにも荒唐無稽な話だ。

SYSTEM :
 しかし、これを…“プランナー”が口にしたとあらば。
 たいていのことは嘘でも事実に変え、黒い鴉を白く染める程度平気でやってのける…。
 そんな、この怪人が口にしたのであれば。話は別だ。
 恐らくそうなる。そしてその上で、彼女はあなたに取引を持ち掛けていた。

“プランナー”都築京香 :
「取引するものは、そうですね…。
 あなたと彼女の命にしましょう。
 したいなら、もう少しくらいは広げても構いませんが…」

“プランナー”都築京香 :
         べつのステージ
「あなたには、異なる未来を辿った世界に発っていただきたいのです」

“プランナー”都築京香 :
「そこで、私の頼みを果たして帰って来れば…。
 ・・・ ・・・・・
 今日を、ひとつだけ…あなたに都合よくして差し上げます」

シャラ :
「………」

シャラ :
「すっげー都合いい報酬だけどよ」

シャラ :
「その『異なる未来を辿った世界』とかってので、オレはどんなハチャメチャやらされんだ?」

シャラ :
そもそも予期せぬコトってナニ? やっぱラストにヤケ起こしたとこか?

“プランナー”都築京香 :
「ああ、それもそうではありますが…。
 “生残者”のもとから命を拾うか拾わぬかで言えば、私は後者だと思っていました」

SYSTEM :
 その理由は本当に偶然だ。

 偶さかあなたと会話した相手が、
 偶さかあなたの危機を察知しただけ。

 そのきっかけで数分伸びた命が、プランナーに言わせると“適任”と思える抵抗をした。

SYSTEM :
 あなたの想像通りに荒唐無稽を泳ぎ切る役割をだ。
 例えば、それまでは本気で、あなたに対しては別の目的で彼をぶつけていたのだとしても。

SYSTEM :
 ………ちなみに先ほどからさりげなく言っているが………

『ブラストハンド』/ミソラ :
「あの、“生残者”って」

“プランナー”都築京香 :
「彼、ずっと“一線”の瀬戸際にいる人間ですが…。
 目的と手段が混同し始めているので」

“プランナー”都築京香 :
「手間はかかりますが、“誰”にぶつけるか程度の誘導はそこまで難しくないんですよ。
 かれら
 春日の者だと、話を聞きすぎて困ることもありますしね」

シャラ :
言ったよ! “生残者”たきつけたっつった!! ほぼゆった今!!!

シャラ :
っぱ悪魔だこの女!!

“プランナー”都築京香 :
「あなた方が向かう先は…。
        ・・・・・
 FHがUGNに勝利しなかった先です」

 そしてあなたの内心の抗議を、口にしなかったので…とばかりにさらりと押し流した彼女は、“あなたに”押し付けた答えを遠回しに口にした。

SYSTEM :
 つまり………。

 簡単に頼めるほうの相手だと。
 主流が違うのだから馴染めない、だ。
 あなた自身が馴染めるほうなのかどうかは置いておくとしても、確実にマシであることは言うまでもない。

“プランナー”都築京香 :
「が、厳密には其方が根本です。
 こちらの結末如何によっては、あなた方の現在も諸共崩れ落ちます」

“プランナー”都築京香 :
「………それの阻止に手が欲しかったのです。
 其方のために動ける理由の持ち主が。

 しかし…生きているうちにこんなことを言われても、首を傾げるか、夢うつつを疑うだけでしょう?」

シャラ :
…………。

シャラ :
なんとなーくわかった
やっぱ悪魔だわ
っていうかこのプランナーって女が悪魔ってヤツの原型なんだろ 間違いねーわ

シャラ :
つまりだ。この女、邪魔なウロボロスが自分の射程圏内に入ったので、アシつかない方法で殺そうとしたけど──

シャラ :
   ・・
オレの引きが強かったから、自分が解決したい面倒ごとの解決にも使えそうと思って…

シャラ :
敵に塩送るよーな報酬持ち出して、自分のやっかいごとを処理させようとしたとって話だ。

シャラ :
ついでにいっぺん殺して現実わからせてから!!! ムッカつく~~~!!!!!

シャラ :
……まあ、それはともかくなんだけどよ。

シャラ :
「……アンタの持ってる悪魔の腰巾着ども、全員頭のネジオカシーかんな。
 UGNが残ってる世界とかムリだわ」

シャラ :
それはそうだ。たしかにそう。そうなんだけど。

シャラ :
「……アンタの話がホントなら、本当にヤバいことに聞こえんよ。
 アンタの嫌いなウロボロス相手にそんなことさせて、マズったときはどーすんだ?」

“プランナー”都築京香 :
「事態の解決そのものは、最悪、彼方の私が何とかしますが…。
 それも確かではなく。何より私が動くと、確実に片方を逃がすのです」

シャラ :
(彼方の私??)

“プランナー”都築京香 :
「だから大掛かりに、事を成し遂げられると見込んだ相手を選んで。
 首を縦に振りたくなるようにお願いしたのです」

“プランナー”都築京香 :
「もちろん横に振っても構いません。
 とても、とても残念ではありますが…。
         ・・・
 “ディアボロス”、こっちではけっこうやり手ですからね」

SYSTEM :
 悪魔の取引だ。
 いや、悪魔を従える者とあらば…神との取引だ。
 
 …あなたの仲間/同僚は、その感情の図り難い表情をそのままに。
 ちら、と視線を向けて。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「なら私は───」

“プランナー”都築京香 :
「いえ…あなたはどちらでも良いのです」

“プランナー”都築京香 :
    ・・
「あなた単体でいいなら、もっと私は手段を択ばずに済みますし。
 あなたを留めたのは、彼の実感のためですからね」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「(かちん)」

SYSTEM :
 無言でグーを振り上げ始めた。
 心底余談のクソ度胸である。

 …ともかく。話を戻すと、だ。

“プランナー”都築京香 :
「ですので…。
 あなたとあなたに、頷いて頂けることを期待して、話をしましょうか」

SYSTEM :
 あるいは彼女は。

 態とその言葉を択んだあたり、
 あなたの同居人のほうにこそ興味があったのかもしれないが。
 少なくとも“しくじった時”のことは、何も考えてはいないらしい。

 その場合はそれはそれ、やり手のディアボロスに粛々と始末させ、一瞬聞こえた不穏な想像が現実に動くというだけのことなのだろう。

SYSTEM :
 ………そして“プランナー”が、本題と称して語った内容は。
 あなたにとってはこの時点で、どう受け取るべきか判断に困るものであった。

 肯くかもまだの段階で先に聞かせてきたのは、内容が分からねばうなずかない、と、ここまでの言動を見て考えたからだろうか。

SYSTEM :
【Check!】

 トリガーハンドアウトの発生を確認しました。
 内容は対象プレイヤーにのみ伝達されます。


シャラ :
「………」

シャラ :
「……内容はわーった」

シャラ :
「ノってやる。
 アンタの目的のことは知らんし、ウチのイサミは強いけど」

シャラ :
「死にたくて戦ってるわけじゃねェーしな」

シャラ :
 ぜったい蜘蛛の糸ってヤツだ。

 この女はたぶんだけど、究極FHとかUGNとかどうでもいいんだろう。
 なんか優先しなきゃならんことがあって、それを効率よくやれるのが今はFH日本支部。
 ……そうとしか思えない。
 オレにとっての『今日を都合よくする』の結果がどうなるかなんてハッキシだしな。

シャラ :
 間違いなく全部マジで、都合のいいオレを使うために敵も味方もなく利用したんだ。こいつは。
 それは裏返せば……オレがうまく使われる限り、この一件の間だけ、こいつはオレにとって絶対的に味方だってこと。
 一番都合のいい結末に落とし込むために使う手足に、どーでもいい小細工とかしないはずだからな。

“プランナー”都築京香 :
「“ブラストハンド”と“ディアボロス”の結果はいつかに出てしまいましたが…。1勝1敗でしたね」

“プランナー”都築京香 :
「…ああ、いえ。こういう話をしに来たのではありませんでした。
 では、よろしくお願いします」

“プランナー”都築京香 :
「向こう側に辿り着けば、すぐにでも。
 あちらの私が待っています。
         イリーガル
 彼女を伝ってUGNの協力者として動いてください」

“プランナー”都築京香 :
「…ですが、先程の話にはそのUGNも該当します。
 そうですね…」

“プランナー”都築京香 :
 ・・・
「この件に限っては利害が一致した者がいます。
 まず、一人…」

“プランナー”都築京香 :
「セント………。
 “道化の真実”と呼ぶUGNエージェントです。表から堂々と“プランナー”の名を出さぬように」

シャラ :
(セント?)

“プランナー”都築京香 :
「そうですね。彼方も此方も、私にとってすべて都合の良い者とは言いませんが…」

“プランナー”都築京香 :
「この一件については話が合いましたから。
 それから………」

SYSTEM :
 ………、………。
 ……………………。

SYSTEM :
 彼女は幾人かの名前を挙げて。
 ”その名前”については無用な心配だ、と付け加えた。

シャラ :
 あーね
「理解。
 名前言われたやつのツラはアッチ行ったとき、オレで勝手に調べんぞ?」

“プランナー”都築京香 :
「ええ。何なら、皆、話が合ったのはその一件だけです」

“プランナー”都築京香 :
「特に、UGNにいる方…。
 私や“道化の真実”と同じと思って接するのは止したほうがいいでしょう」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「“今回だけよ”?」

“プランナー”都築京香 :
「だいたいそのようなものです。…ちなみに」

“プランナー”都築京香 :
「彼女をどうするかは、好きに決めて構いませんよ。
 元々は実感のためですが、そのくらいの余分と誤差なら彼方にも送り出せます。とはいえ、手数の多さには利点も欠点もあるでしょうしね」

SYSTEM :
 持ち込み装備品扱いに
 生まれたてがまた無言でグーを振り上げた。

シャラ :
 りょ
「了解。ミソラ、今回オレ様のひっつき虫な」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「ん。毎月よからぬことを起こすね」

シャラ :
「ビンボー神じゃねーかよ」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「数か月に一回竜巻も起こす」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「そういうわけで、やっていこう。これも99年の続きのためだ」

SYSTEM :
 この娘は自分がまじめでなくていい時はわかっていてふざける傾向にあるが、
 おそらくこの辺は素面であった。

シャラ :
「オー。ドレもコレも、死ぬよかマシだかんな」

シャラ :
「ところでよ。ホーシューの中身はアンタの依頼解決した後でイーの?」

“プランナー”都築京香 :
「その中にあなたと彼女を…。
 厳密にはあなたを含まぬ形でよいのであれば、代わりに履行しても構いませんが」 

“プランナー”都築京香 :
「そうでないと言うなら、いまここで…もしくは、帰り道を辿る頃にもう一度訪ねましょうか」

SYSTEM :
 あなたが死んでも叶えたい報いがあるならば、それは、もうあなた自身の命を考慮せず“今”変えられる程度のことだ、と口にしたこのプランナーが、一介のオーヴァードなのかどうか。
 そういう思考については、一旦隅っこにおいておく。

シャラ :
マジでこえ~、この女……。

シャラ :
「イーよ。それで。アンタの言い方じゃ、さっきオレらが死んだあそこの時間はフニャフニャしてんだろ?」

シャラ :
「知らん間に何年も経ってましたとかじゃねェーなら、後にとっとく。
 好きなモンは先に食う派なんだけどなァ」

“プランナー”都築京香 :
「ご心配なく。“何年先”も今日に含むほど悟りを開いたものなら、流石に選びません」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「…どっちの意味で?」

“プランナー”都築京香 :
「ご想像にお任せします。
 概ね、いまの言葉に唱える異議はありませんよ。取引の材料をどの程度と捉えるのかについてもね」

“プランナー”都築京香 :
「ひょっとすると、そういう“揺らぎ”の形も…。
 ・・・
 こちらでは、あったほうが好ましいかもしれませんから」

シャラ :
「……どーゆー意味?」

“プランナー”都築京香 :
「長いお話はお好きですか?」

シャラ :
「すんません。いらねっす」

SYSTEM :
 彼女は薄く微笑んだ。

シャラ :
ミソラの後ろに隠れる

シャラ :
……顔だけ出す。

シャラ :
「コエー女……」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「ここで豆知識」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「女の影に隠れてバトルの解説するのって
 よくないって勇ゆった」

シャラ :
「ちっげーから。ニコ…ってされるだけでコエーから見ないようにしてるだけだから!」

“プランナー”都築京香 :
(ニコ…)

シャラ :
ヒエェッ

SYSTEM :
 …実際。彼女の言う“ひとつだけ”の範囲は、たぶんあなたが思っているより冗談でもなんでもなく広いものだ。

 今日の襲撃事件の出来事、ひっくるめて丸ごと“ひとつ”という意味なのだろう。

SYSTEM :
 だから例えばの話。

 “生残者”の矛先が変わったり…。
 “ストレンジ・テンペスト”の誰それが偶さか別件に駆り出されていなかったり…。
  ぶかのぶか
 居合わせたDDDに対して、逆撃の一つや二つがかけられたり。
 その結果、誰が命を拾おうとも…。

SYSTEM :
 そのくらいのFHにとっての不都合など、彼女は十文字以内の感想で許容するのだろう。

 あるいは、あなたが思った通りだ。
 個人と表記するべきか定かでない“プランナー”にとっては、それすら、そもそも不都合でないのかもしれない、と。

シャラ :
連中がいい感じに半分ぐらいハケますように! とかお願いしたらダメかな

シャラ :
マーいいや。自分の上司の上司の気まぐれ使って、連中に吠え面かかせる一番いい方法考えとこ。

シャラ :
 軽く伸びて、自分の体の状態を確かめる。
 だいたい、ここまでのことはわかった。ミソラがいるなら、とくに縁もゆかりもない世界でもやってけるだろ。

シャラ :
「アー。そーそー」

シャラ :
「その『UGNが勝利できた世界』って、パラレルワールドってヤツだろ?
 サンゴがゆってる。そのサンゴとかオレ様、あとついでにミソラ。『そっち側』じゃなにしてんだ? そもそも生きてんの?
 会ったらヤッパ死ぬ?」

“プランナー”都築京香 :
「ふむ。…」

“プランナー”都築京香 :
「彼女は、そもそも記憶から作られた新しいいのちです。
 ・・・・
 同じものは生まれません」

“プランナー”都築京香 :
「…ですが。あなた方については。
 そうですね、存在はしております。生きてもいます。
 対面すること自体が、存在の危機となることもないでしょう。思ったより融通利くものですよ」

“プランナー”都築京香 :
「………と、言いたいところですが。
 ああ、そうですね…。
 ・・・
 あなたの場合は別でしょうか」

“プランナー”都築京香 :
「彼方の私から、“近寄ってはならない日本の都市”を教えておきましょう」

シャラ :
「ア~………」

シャラ :
なんとなくわかるわ。うっかりしたら頭の中で仲間割れだな。

SYSTEM :
 怖いもの見たさで飛び込むならば別だが。
 少なくともプランナーの言葉は、遠回しに、あなたたちが、向こう側でも”同じような形”であることを示している。
 そのうえで、相違点の数と内容によっては、危惧が現実味を帯びることは難しくないだろう。

シャラ :
「わーった。よかったなミソラ、オマエオンリーワンだってよ」

『ブラストハンド』/ミソラ :
 胸を張った。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「世界で一つだけの花と呼んでくれても構わないよ」

シャラ :
「やかまし~な~……」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「猫の手が可憐なことをもっと喜んで。
 …あと聞くことない?」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「ちなみに私は“あわよくば”とかやらんでしょうねとあんたに言っておきたい」

“プランナー”都築京香 :
「正直最初はそのつもりでしたが…」

シャラ :
オーイ

“プランナー”都築京香 :
「彼の命を拾おうとした者が…。
 私にとってはとても好ましい者を守ろうとしたことに、今回は、特に免じようと思いましてね」

“プランナー”都築京香 :
「人間社会ではこれを執行猶予などと呼ぶそうです」

シャラ :
 

『ブラストハンド』/ミソラ :
(ちょっとだけ身構えてから横を向いた)

『ブラストハンド』/ミソラ :
なに? シッコーユーヨって

シャラ :
「あとで殺す」っつってんだアレはぁ!

『ブラストハンド』/ミソラ :
中指はまかせて

シャラ :
だ~~も~~~

シャラ :
「ゼッテ思いどーりにならんかんな! バーカバーカ!」

シャラ :
ミソラの背中に隠れて野次を飛ばす

SYSTEM :
 プランナーは薄らと微笑んだ…。

シャラ :
ヒッ…

シャラ :
「ダメ! コワイ! こいつの気まぐれが気まぐれのうちに別のプランナーのとこ行くぞ!」

シャラ :
「……行った先もプランナーかよォ!」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「待って」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「もし男のプランナーだったら…どうする!?」

シャラ :
「笑顔でヒト殺しそうなヤバいヤツが真顔でヒトを虐殺するヤツになるだけだろ!!!」

SYSTEM :
 ホンシツはそうそう変わらないものだとか何とか。

“プランナー”都築京香 :
「私から言うべきことは先に済ませました。
 最後に、そうですね…」

“プランナー”都築京香 :
「同じ人間が、同じことを出来るとも…。
 同じことを出来ないとも限らぬもの」

“プランナー”都築京香 :
「まったく同じ名前の持ち主が…。
 まったく同じ轍を残すことも、ありません」

“プランナー”都築京香 :
「あなたにとっては、その違いは…」

SYSTEM :
 …面白い体験になるかもしれませんね、と。彼女は薄く笑った。
 この世のどことも知れない薄明りの中を渦巻く小さな刻の扉を指し示して。

 ディメンジョンゲートのそれを思わせるものは、気付けば…あるいは最初から。プランナーの背後にあった。
 原理は定かでない。今の話は茶番にしては凝り過ぎだし、そもそも、それを疑う立場にあなたはなかった。

SYSTEM :
 あるいは。
 昨日頼もしかったものが、向こう側では牙を剥くことも、その逆も、ザラにあるだろう。

 辿り着いた先で、戻る意味を失う可能性も…ひょっとすると。

“プランナー”都築京香 :
「それでは、”プラン”を始めましょう」

“プランナー”都築京香 :
「手始めに世界を救う、とは…。
 よく言ったものですが。

 その筋書きに、あなたの望みを、どうぞ好きに重ねますように」

SYSTEM :
 日常の失われ、薄氷が砕けて交じり合う世界からの奇妙な旅路に関して。
 プランナーのそれは、おそらくはあまりに遠く熱のなく、迂遠で、将来的な立場に変わりはなく。しかしどういうわけか、紛れもない祝福ではあった。

シャラ :
こいつが、マジでコワイことには変わりがないけど……
今回に限っては頼れる。それだけは間違いのないことだ。言いたいことはあるけど、うまいこと使わなきゃもったいない。

シャラ :
「あっちじゃ、オレ様の好きにやらせてもらうかんな。
 あと。とりあえず、イヤにならない今のうちにゆっとく。サンキュ」

シャラ :
言いたくもない礼を口にして、ゲートの前まで歩く。
                 パールヴァティー
くぐり慣れたカタチではあった。例えばあねさんが開く、ホントかは知らんけど異世界にも繋げられるとかいうゲートからも、こんな感覚があったような気がするから。

シャラ :
「……ミソラ」

SYSTEM :
 薄らと笑ったままのプランナーを他所に、呼ばれた少女が振り返った。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「ん」

シャラ :
「"生残者"のときのアレ。あと、DDDの連中のときのソレ」

シャラ :
「どんな理由か知らんが、三度目やったらマジ殺すからな。やられる前にやっから。先にオレ様が」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「………………」

SYSTEM :
 言い捨てるわりには複雑な色を含んだ一言を聞き留めた少女の視線。
 ぴん、と伸びた背筋から向かうそれが…さほど動かない表情より伸びて、薄っすらと、あなたに刺さった。

『ブラストハンド』/ミソラ :
「好きでやったわけじゃないし」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「ごめんって言ったし」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「あんた仏じゃないし」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「………………………、………………」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「やりたいことリスト…埋まってないし」

『ブラストハンド』/ミソラ :
「それは三本指にヤな死に方だから…。
 じゃ、もうしない」

SYSTEM :
 いつもがどうだろうと、“こういう時”を茶化すほど空気を読まないでもない。
 これでノイマンだ。いや、こう”だから”ノイマンなのである。大抵のことは分かっていてやるクチだとも言う。

SYSTEM :
 ───生まれた都市の名前、S市。
 ───あなたとの出会いの切欠、“かちん”と来て起こしたひと騒ぎ。
 
 平々凡々の女の夢から生まれて。
 その言葉には程遠いものを、地平線の向こうに探し求める空の名前。

SYSTEM :
 勇はいつもの調子で美少女と断定するや否や窮地を救って囲い込み、もみじに殴り飛ばされ、差し引きヒーローだったので酌量余地で許された。

 で、あなたは先輩だ。その一幕を見ている。

 そんなあなた自身の拾われた切欠は、真摯なものだったか、それとも、名乗った名前に謎のシンパシーを受けたような妙な繋がりだったか。

SYSTEM :
 何れでも。このRBの少女とも、付き合いはそう短いものではなかった。
 そもそも付き合いの短いやつなど、数える程度にしかいなかったのだけども。

シャラ :
「……ン」

シャラ :
しょぼくれた声が出た。なんとなくムカつく。

シャラ :
「オマエらの肉の味は、まだ覚えたくない」

シャラ :
「血は飲まされた。ムカつく。二度はやんねー」

シャラ :
だから。そうしないために、ふざけた条件を呑んだ。
とりこぼさないチャンスがあるなら、カスの可能性だろうが掴めば良いんだから。

SYSTEM :
 生き物は命を糧に生きて、死ぬ。
 人間がそうであるように、オーヴァードもそうだ。あなたの場合、それは“何”だったのか…。

 知る由も定かでないミソラのかける言葉はなかった。ただ、頷き、確かめるだけだった。

SYSTEM :
 何を糧にしたとして。もう永遠に埋まることのない餓えが、満ち足りることはないだろう。
 あるいは、あの日覚えた味を好ましいと思うことも。

SYSTEM :
 そんな、何より多くの零れ落ちたものを啜り、知恵ある蛇の囁きを以て、蟲毒と書いて楽園を追放された、イヴ知らずの少年の───。
 昨日と違う今日と、今日より遠い明日を目指す旅の始まりに向けた言葉がソレだった。

SYSTEM :
 夢まぼろしを見ることは数あっても。
 今日見るものは、きっと一番長い夢想になるだろう。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :
 シーンが終了したよ!
 ロイスの宣言はある?

シャラ :
ミソラに取る。◯信頼/憤懣な。マジで腹立つわ、先にイチ抜けピしようとしやがってな~

ミソラ :
おこなの?

シャラ :
激おこだバーカ!!

シャラ :
バーカバーカ!でべそ!!

ミソラ :
…ごめんって 二回目は特、に、…

ミソラ :
なにおーーーーーー!!!!

GM :
ロイス欄に記入しておいてね!

SYSTEM :
 ………………
 ………………

 

・Scene1『交錯-Crossroad-』


GM :
さて…これにて個別OPは終了したわけだけど。
まだPCが合流したわけじゃないからね、PC間ロイスはもう少し後にするよ。

GM :
PCロイスの取得タイミングは改めて出すけれど、ここから先のシーンも厳密にはオープニングのようなもの!

というわけで、先行して取得する分には問題ないことを前置きしておくからね。

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
【Scene:交錯-Crossroad-】

Scene Player:All
   Erosion:ON

SYSTEM :
【Guidance...】
 このシーンは適宜シーンプレイヤーが入れ替わります。
 そのため、上記はあくまで「すべてのPC」をシーンプレイヤーとしていますが、
 その都度適宜登場侵蝕の発生対象となるPCがアナウンスを受ける形を取ります。

SYSTEM :
 アナウンスは…。

SYSTEM :
【Check!】
 登場侵蝕が発生しました。
 Player:(Player Name)


SYSTEM :
 このような形を取ります。
 アナウンス発生後に1d10を振ってください。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………………
 ………………

“プランナー”都築京香 :
 取引をしませんか? “アガースラ”

SYSTEM :
 時を越える旅の切欠は、この言葉だった。

SYSTEM :
 か細い明日に繋がる今日を生きていたあなたが、
 投げられた賽に身をゆだねてこの地に降り立ち。
 辿り着いた先は、何処と知れない隠れ家。

SYSTEM :
 後に分かった話に曰く“ゼノス”なる組織の、世界中に点在するレネゲイドビーイングのすみか。
 そこでは、待っていましたとばかりに出会った人物がいた。

“プランナー”都築京香 :
「はじめまして」

“プランナー”都築京香 :
「自分に、自分宛ての来客を伝えられるというのも…。
 内容がもう少し手軽なら、中々面白い経験でした」

SYSTEM :
 “プランナー”の言伝を手に取ったあなたたちの前に現れたのも、また、“プランナー”であった。
 本人は一切名乗ってきたわけではないが、言葉選びはそうとしか考えられず、また往々にして、彼女に限ってはこのようなことも“有り得ること”の範疇になってしまう。

SYSTEM :
 しかしプランナー自身の出迎える必要があったかは別だ。
 それは、あなたに対して、ひとつの違いがこれほどまでに大きな分岐路を作り出してしまうものなのだ──あまりそちらの認識をあてにするな、と──と教えるためだろうか。あるいは…。

 ”プランナー”相互の正真正銘、けっこうな気まぐれだったのだろうか?

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
【Check!】
 登場侵蝕が発生しました。
 Player:Shara 

シャラ :
1D10 (1D10) > 3

ミソラ :
なかなかにクールビズ 
まだ夏には早いよ

シャラ :
マ〜〜見てろよな これがジツリキってやつよ

ミソラ :
(5年くらいしたら大人のみりきとか言いそうだな…)

system :
[ “アガースラ” ] 侵蝕 : 36 → 39

SYSTEM :
 ………………
 ………………

シャラ :
プランナーから逃げ出した先にプランナー(小)が待ってる、これなんて悪夢なんだ? マジで。

シャラ :
 小さかろうがデカかろうが感じるプレッシャーがどっこいなもんで、ナメさせてくれそうな気配はみじんもない。
 いや、今さら年齢が違うことにいちいち驚きはしないしな。マジだぞ。なんでちっこくなってんだとかはメチャクチャ思うけどな!

シャラ :
そもそもそれよりビビるのは、ここですれ違うのが全員RBってことだった。噂はあったけど、こいつマジで『そう』なんだな。

シャラ :
「ハジメマシテ。……さすがのアンタも、自分と話したことはねェんだ」

シャラ :
好奇心で聞いてみる。なんとなく答えはわかってる気がするけど。

“プランナー”都築京香 :
「そうですね。数えるほどにしか」

シャラ :
やっぱあるんじゃん

“プランナー”都築京香 :
 未遂抜きなら片手指ですね。

シャラ :
1回じゃねェーのかよ!

“プランナー”都築京香 :
数えるほどではあるでしょう?

SYSTEM :
 すれ違うもの全員レネゲイドビーイングで、彼女自身もそうであることをさほど隠していない。
 もう少し精査してみれば、案外、だからこそ入り浸るような変わり者とも出くわすかもしれないが………。

 そこに、あれだけ活発に動いていたクランの姿はない。
 あなたの到着前の推察──都合がいいからFHにいるだけ──は的を射ていたようだった。正答への感想が喜びとは限るまいが。

ミソラ :
「ところで…」

“プランナー”都築京香 :
「はい。“頼み事”の是非を聞きたいのですね」

ミソラ :
「最初はグーの段階で全部出さないで(ハイ)」

SYSTEM :
 ミソラがあなたの背後に隠れ返すのに時間はかからなかった。

シャラ :
アアアア~~~~!!!!!ズルじゃん!!!オレも!!!オレも隠れたい!!!!

ミソラ :
頑張れ男のコ! 美少女の危機が迫ってるんだよ

シャラ :
ンなーにがビショウジョだよ! このへんにいる美少女なんてみんな強いだろうが!

シャラ :
みろウチのを!!!

シャラ :
あねさん、リズ、アンナ! ほらな!

ミソラ :
必ず生きて帰って今の話を伝えます

ミソラ :
私は…戦場…カメラマンの…(スローペース)

シャラ :
ッダアア~~~~~~~~~~~

シャラ :
「そんで!? どーなんだよ実際! 送り出されて死になさいじゃシャレならんかんな!」

“プランナー”都築京香 :
 マサカ
「真逆。そうするなら…。
 ここに至るまでのすべての会話がただの手間ではありませんか」

“プランナー”都築京香 :
「もちろん余分を楽しむというのも…。
 私、嫌いではありませんが」

SYSTEM :
 冗談10割だとわかっていても剣呑だからか、本題だからか、いつの間にか隠れるのをやめたミソラをよそに、こちらの“プランナー”が切り返した話を線路に載せる。

“プランナー”都築京香 :
 サイバースプライト
「”電子の妖精”というものがいます。
 行方が分かり次第、其方を追うことになるでしょう」

“プランナー”都築京香 :
「あちらの私に“イリーガルとして動くように”などと言われたと思いますが…。
 動いて頂くのはその時です。いくつか席を空けます」

SYSTEM :
 それはおそらく、この件に限って利害の一致した、というUGN側の人間と合わせての干渉ということになるだろう。

 電子の妖精なるものが“頼み事”にどの程度一致するのかまでは、表面上の言葉では分かったものではないが。

シャラ :
……ほーん。

シャラ :
とりあえずこっちもオレらを悪巧みに乗っける気ってことだ。それならイイや。この手のヤツって、役に立つならいったん自分の好き嫌いとかおいとけるしな。

シャラ :
な。サンゴ。

シャラ :
…………。

シャラ :
返事ねー。高みの見物かよ!

シャラ :
 なるりょ
「理解。
 アンタのお願い事っつゥのはわかったけど、その"電子の妖精"ってのはナニ?」

シャラ :
「調べてこいっつわれたら、今オレ様なんもできねェぞ。
 一週間ぐらいねーとネットワークとかムリよ」

ミソラ :
「明日ここに来てください、本当の情報収集というものをお見せしましょう」

ミソラ :
「つまり今日は無理」

SYSTEM :
      ノーリアクション
 プランナーは変わらぬ笑みだった。

シャラ :
ハヒエェ

“プランナー”都築京香 :
サイバースプライト
「“電子の妖精”につきましては…。
 そうですね、暫定レネゲイドビーイング、とだけ」

“プランナー”都築京香 :
「人の営みを辿って動く、電子由来のレネゲイドビーイング…。
 そして、彼女の機能に価値を見出したものがいるという話です。それが表面上見えている機能だとは限らないでしょうがね」

SYSTEM :
 “プランナー”にとっては”ソレ”はそこまで重要でもなく、むしろ、これに意味を見出したらしい人間に目をつけている節があった。

 少なくともここについて、彼女の口からは調べ物を頼まれることはないだろう。

シャラ :
「アー……」

シャラ :
「レネビってのもイロイロあっしな。
 そいつの作り方次第で、できることがあって……」

シャラ :
「……アンタもそれに用があるワケ」
 奥歯にものがはさまったみたいな言い方をしてみる。

“プランナー”都築京香 :
「さて。彼女の生まれたかたちに、何ら興味がないわけではありませんが」

“プランナー”都築京香 :
「ですがまあ、用事はありますね。
 彼女自身が主賓とあっては、多くの“揺らぎ”があるでしょう」

ミソラ :
「もうちょっとわかりやすく。
 シャラが慣れない頭脳プレーで疲れちゃう」

シャラ :
そーだぞ! サンゴ出すぞ!

シャラ :
なんの脅しにもならね~ オレ様が困るだけ~

ミソラ :
まさか認める形でスルーするなんて
これがアメリカ伝統芸能『力技』…

“プランナー”都築京香 :
「その揺らぎのほうに用がある、というだけのことですよ。
 彼女がどの程度のことを出来るのかはわかりませんが……」

“プランナー”都築京香 :
「本当に用事を見出そうと思っては、今こうしている意味がありませんからね。
 
 強いて言うなら…」

“プランナー”都築京香 :
「物理的には捕まえられないかと。
 これを追っている者がいて、過程のまま動いておりませんから」

シャラ :
「ゆらぎぃ? アッチの大ンナーも似たようなことゆってたな」

“プランナー”都築京香 :
「ほう すると私は…」

“プランナー”都築京香 :
「ミニプランナーですか」

シャラ :
「サイズ的にはそーじゃん」

シャラ :
ほれ オレよりちっこい

シャラ :
いつもならこのまましゃがんで煽るけど、こいつにそれやったらぜったい殺されるのでしない。オレ様は賢明であった。

SYSTEM :
 この時彼女が話した「真っ新な形のほうが望ましいと思いまして」という言葉の意味も、
 しゃがんで煽った場合の趨勢も、概ね余談なので横に置いておく。

ミソラ :
「気持ちとかの話。それを取り囲む人の…」

ミソラ :
「たぶん」

シャラ :
「すげ~ よく解読できたな」

ミソラ :
(自分の頭をとんとんとし始めた
 心なしか口角が上がっている)

SYSTEM :
 ノイマンだと言いたいらしい。

シャラ :
まじめに褒めたのムカついてきたな やめるわ

シャラ :
「要はアレだな? ンアー、"電子の妖精"本人が行動すンなら、そいつのキモチとかで思ってもねェことが起きる? かも?」

“プランナー”都築京香 :
「彼女自体を悪用する者、彼女自体に望む者…」

“プランナー”都築京香 :
「その者によって望ましくないことが起きる、という話ですね。
 概ね、今の認識でよろしいですよ」

シャラ :
「ッス」

シャラ :
「で、その"電子の妖精"のコトはわかったわ。聞いたカンジ、そいつ本人がやべ~わけではねェんだ」

“プランナー”都築京香 :
「ええ。彼女自身、起こしたくて痕跡となる出来事を起こしているわけではないですね」

シャラ :
「びっくりするとポロッてしちまうってコト?」

シャラ :
マーそういうヤツいるよな。なりたてとか。あねさんとかも、なりたてのころはヤバかったとか聞くわ。

シャラ :
「そんでよ、ミニンナー? イリーガルとか言ってたろ」

シャラ :
「どこの? UGNとはゆってたぞ、大ンナーが」

SYSTEM :
 ところでプランナーは、基本的に確定した事実について言葉を濁すクチではなかった。
 興味関心のない時はさらに。

 イリーガル、とだけ発言したのは…。
 おそらく“電子の妖精”の行き先が分かれば、その時その場所に、ということなのだろう。

“プランナー”都築京香 :
「と、あちらの私が言ったなら、それは妥当です。まだ“どこ”とも分かりきっていない時ですから」

“プランナー”都築京香 :
「ついこの間まではアジアにその痕跡がありましたが、彼女、移動範囲については決して狭くありません。
 …話の通じる人間が”そこ”にいらっしゃるので、概ね北米に網を張るつもりです」

“プランナー”都築京香 :
「向こう側ではどうか知りませんが、こちらの北米…アメリカ合衆国のベセスダには、UGNの本部があります。お分かりですね?」

シャラ :
げぇ

シャラ :
でーも今回避けられねンだよなァ

シャラ :
        ・・・  ・・・
「それは聞いた。あいつとかそいつとかだよな」

シャラ :
オレ知らんケド。ボタンかけちがえただけで変わるもんだなァ情勢。

SYSTEM :
 転機は数えて4年前、クーデターの成否だけ。それで世界を薄らと覆う氷床が叩き割られるか、今も守られるかが変わる。

 守られた世界とそうでない世界において、あなたの伝え聞いていた話はずいぶんと相違点があった。場合によっては知りすらしない話も。

“プランナー”都築京香 :
「はい。差し当たっては、あちらであなた方を迎える者が…。
 内側ではなく外側に目を向ける者であることを望んでおきましょうか」

“プランナー”都築京香 :
「ああ、そうそう…見つかるまでの間の行動は一任しますよ。彼らと話しても構いません。

 ”はじめまして”である以上、出会えば興味は持たれるかと思いますが…。
 あなたに宿るものはともかくとして、あなた自身の言葉や行いが、何かの切欠にならないとも限りません」

“プランナー”都築京香 :
「あなた方が齟齬のあるままイリーガルと嘯いた結果が彼方からの疑心暗鬼、というのは好ましくありませんしね」

ミソラ :
    マジョリティ
「おやつの宗派が違うとか」

シャラ :
きのこ。

ミソラ :
たけのこ。

ミソラ :
………

シャラ :
あん?

ミソラ :
おん?

SYSTEM :
        ノーリアクション
 プランナーは薄らと笑みを浮かべた。

シャラ :

シャラ :
「とっっっっっころで!!!!!」

シャラ :
「アレか!? オレらがこーゆーアレだってことは伝えてイーのか!?」

シャラ :
「ソイツとかコイツとか! ソレ以外にも!」

“プランナー”都築京香 :
「その事実を“探し人”に伝えないという自信があれば」

“プランナー”都築京香 :
「丸ごとすべて、というわけでもありませんしね。無暗矢鱈にその事実を振り撒くのであれば、最初から私が行けばいい話です。

 ………ですが、そうと確信を持てる相手なら、場を選んで頂ければ構いませんよ」

シャラ :
「ン! アレだろ、えー、ゆらぎ」

“プランナー”都築京香 :
「はい。もう少し言葉を崩しましょうか、つまり」

“プランナー”都築京香 :
「“ある程度はアドリブで構いませんよ”と覚えてください」

シャラ :
わかりやす~!

ミソラ :
途中までなんで遠回しな言い方してたの?

“プランナー”都築京香 :
いえ、彼がわからなくても
彼の中にいるものは分かるかと

シャラ :
中にいるヤツいま返事しねェーンだ……

シャラ :
も……

シャラ :
いやなんで知ってンだよ! あれ!? ずっと知ってる風だった!? コワ!!

“プランナー”都築京香 :
いえ、こちらの私はこの上なく初耳です

“プランナー”都築京香 :
ですが向こう側の私が、何も下調べせず”この方にしよう”と選んだわけでもないということだけは…お伝えしておきましょう

シャラ :
ミソラの背中に隠れる

ミソラ :
💡

ミソラ :
よわむし!(必要以上の高音ボイス)

シャラ :
ア゛ァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン!?!?!?!?

ミソラ :
見せてしまったね
“モチベーター”を

シャラ :
クソが~~~~ッ(出てくる)

シャラ :
ハラ立つな~マジでよ~(ぶちぶち)

ミソラ :
いけない 効きすぎた

ミソラ :
”かくれる”が得意な王子に
効果抜群と聞いたのに………

シャラ :
(頭の中でなんか鳴らす音が響く)

シャラ :
頭の中までうるせえ!

シャラ :
「だいたいわかったわ。わかんないトコは後で聞く……」

シャラ :
「……。……連絡先とかケータイとかもらえんの?」

SYSTEM :
1d2
1:プランナーにはスマートフォンはわからぬ
2:プランナーにはスマートフォンがわかる (1D2) > 1

“プランナー”都築京香 :
「ふむ」

“プランナー”都築京香 :
「それを望むならあちらにいるRBの…。
 ああ、彼はいま欧州にいたのでした」

SYSTEM :
 ところで…。
 プランナーの神出鬼没さは、つまるところ“望むときに望む相手にあちらからやってくる”という意味でもある。
 現代社会における連絡手段というものが必要な人間…訂正、RBではなかった。

 つまり端的に言うと、彼女は迎え入れる用意とイリーガルとしての手続きだのその手の処理はすべて終えているが、

SYSTEM :
連絡先
 それをそこまで重要なものと認識していなかったのだ。答えは悪意なきNoであった。

シャラ :
「マジか……」

シャラ :
あ……足か~……!

シャラ :
イッ……イヤ……落ち着けオレ様! こーゆーときは……

シャラ :
騙る……!!!!!

ミソラ :
ところで私ネットワークによると
いま個人情報には割と厳しいとか

ミソラ :
………💡

SYSTEM :
 ちなみにあなたの相方が思いついたのは、
 じぶん
 同姓同名を騙ることだった。
 彼女に関しては5秒でやめた。理由は表情に表れている。

ミソラ :
「私、S市の何々のミソラさんかな
 天才野ミソラさんとかじゃダメ?」

SYSTEM :
 ダメだった。

シャラ :
「ゼッテダメだろ」

ミソラ :
「ダメか…」

ミソラ :
「そもそも言っといて難だけど…。
 天才はないな。うん、ない」

ミソラ :
             ク  レ  カ
「…シャラ。あんたに私の文化的で健康的な生活がかかっているよ」

シャラ :
「求めんな必要以上に文化的な生活を!」

シャラ :
「マ、なんとかしねェとな。ゼノスの連中だって全員機械オンチじゃねェだろーし、そっちに話聞いて、ダメだったらすんぞ」

シャラ :
「ミスノサンゴクン」

シャラ :
つーか正気のサンゴってどんなだっけ? 夢ン中の顔しか思い出せなくなってきたンだよな

シャラ :
マーいーや なんとかなんだろ

シャラ :
オレ様はこのあと ミスノサンゴクンがオレの知ってる顔から成長してる(当然)ことと、髪色が変わってること(なんか心当たりある髪色!)とかを知るのであった

SYSTEM :
 なお、あなたは危うく内なる妄執に要らぬ閃きの機会を与えるところだった。
 具体的に言うが人知れず、どちらかの九死に一生だった。

 さしものプランナーとて現代社会に全くの機械音痴ではやっていけないというものであるし。
 ゼノスにオリジン:サイバーが不在ではなかったことは、あなたにとって不幸中の幸いではあっただろう…。

SYSTEM :
 なお、その最中、あなたとは違った方向で調べ物をしていたミソラが、“ディアボロス”の現在のご尊顔を知って、その気持ちを伝えたいとばかりに周囲のテクスチャをゆがめ宇宙にしていたのは心底どうでもいい余談である。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
【Check!】
 登場侵蝕が発生しました。

 Player:Makina 

マキナ :
はいはーい

マキナ :
1D10 (1D10) > 2

マキナ :
うーん、スマート

マキナ :
……あ、そうそう

GM :
うん?

マキナ :
今更で悪いんだけど前のシーン、セキュリティカットの支払いがまだだったと思うから、コイツとまとめて支払うよ

GM :
…あ! そういえばコスト付きのEEだったね。
オッケ~だよ

system :
[ 玖月 マキナ ] 侵蝕率 : 31 → 34

マキナ :
これでよし、と

GM :
丁寧でヨシ! それじゃ、続けるよ~

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
 …それから少し。期日一週間ほど。

 そのゼノスに、意図した来客が来て。
 シャラは当時その場に居合わせるように指示された。

SYSTEM :
 隣人への思い付きを口にした“プランナー”が、
 表向き、ゼノスの外部協力者(イリーガル)としてあなた/マキナを迎え入れたからだ。
 籍を置くというより、呼べば来るし、あちらから伝えるべきことがあれば伝える程度の関係ではあったが。

SYSTEM :
 仮宿であるゼノスには、訪れた回数だけ悪意なき好奇心の接触があり…。
 北米大陸の何れに訪れるという”電子の妖精”にまつわる進展を待つのみとなったが…。

 非常に端的なプランナーからの相互の紹介より、ほぼ一日か二日程度のラグを待って、何度目かの来訪となるマキナを前に、”プランナー”はこう告げた。

“プランナー”都築京香 :
サイバースプライト
「“電子の妖精”の行先に目途が立ちました」

SYSTEM :
 プランナーから直接、あなた/マキナに連絡があり、再びあちらの隠れ家に訪れる機会を得ていた。

 あるいは案外…一度二つ目の仮宿を得たものだから、あなたと来たら全力であちらの待遇に甘え倒したかもしれないが。
 流石にそれはオフの話だ。そのはずである。

SYSTEM :
 どちらにせよ、出会い頭の第一声はプランナーであり、端的な目的に対する表現だった。

マキナ :
 ……あれから1日2日経過した。
 この世界でいうプランナーは、次の電子の妖精の所在を既に見つけていた。
 早速パシリの出番ってわけ。

 エネルギーの問題と、物理的な問題で、装備の方はまだ万全じゃない。事を起こすならその辺も抑えたうえで行きたいトコだけど、仕方ないか。

マキナ :
 今回作戦が始まるってことは、多分前にちらっと言ってた別の協力者も一緒だろう。団体行動、得意じゃないんだけど……
「来たよ、プランナー。わざわざ呼びつけた以上、本格的に準備は整ったってコトでいいんだよね」

シャラ :
声に振り向く。サイボーグかアンドロイドかバトルスーツか、明らかにブラックドッグって見た目の女子一名。
……『あっち側』じゃあ、そろそろ珍しくなくなってきたんだけどな。『こっち側』じゃあそうでもないか?

シャラ :
「よっす。アンタも電子の妖精捜索隊なんだ」軽く手を振る。

SYSTEM :
 …そこには、確実に知っている姿がひとり。知っているか定かでない姿がふたり。

 曰くはゼノスの一員だという白いフードの少年と、灰色の髪の少女。
 …それと待たせていた/呼びつけた張本人が、順番にあなたに応じた。

“プランナー”都築京香 :
「ええ。アメリカ合衆国、イリノイ州シカゴ…。ここに向かいます」

SYSTEM :
 おさらいするならば…“電子の妖精”は、どうにも、人の営みを辿って動く。
 訪れる先々で善しも悪しもを起こす存在だが、肝心なのはこれが幾つかの組織や人間から追われていることだった。
 その彼女はアジアから海を渡り、アラスカで見かけられたという報告を経由し、次なる場所へと気ままに歩みを進め、それが…。
シカゴ
 そこだった、ということらしい。

マキナ :

「やっ、おたくらがうちと同じマグロ漁船のパシリ仲間ってワケね。
 お互い大変だね」

 知らない顔だ。フードの方と、灰髪の子。どっちも人……いや、若干雰囲気どっちもただのオーヴァードじゃないっぽい。この組織らしいや。

ミソラ :
「そう、ラスベガスの夢の代価で、」

シャラ :
「未遂だ未遂」

シャラ :
「オレ様はシャラ。こっちがミソラ。こいつのクレカ支払いのせいで巻き込まれたんだわ」

ミソラ :
「おバカさんめ 
 私が支払ったのはあんたの持っていた現金のほう」

シャラ :
ハ?

ミソラ :
「じゃなかった。そのミソラです。
 苗字と記憶がありません。末永く、もしくは短期的に、望む時間だけよろしく」

シャラ :
(横でサイフを開いて絶望する声)

マキナ :
「……ま、抱えてる事情は何でもいいや、夫婦漫才コンビ。
 私はマキナ。ここじゃ珍しいかもだけど、全身義体のサイボーグやってます。ロケットパンチは無理でもビームライフルは常時装備、そんな感じでよろしく」

 ……この体は借金のアテにした、とか言おうとしたけど、やっぱナシ。
 このボディ、結構気に入ってるんだよね、かわいいし。

シャラ :
「ないんだ ロケットパンチ」

ミソラ :
「ロケットパンチよりビームライフルのほうが現実に近い……。発見だね」

マキナ :
「ないよロケットパンチ。
 マニピュレータを武器にするとかアホの発想でしょ」
 とくにフックのおっちゃんがやたらつけたがってたけど。

シャラ :
「なんで!? カッケーじゃん!」

マキナ :
こいつも同類か……

SYSTEM :
 当時の“キャプテン・フック”も、あなたを迎え入れ“その義手なに?”と聞かれた時も、力説したという。

 どうせ義手にするなら武器を仕込んでこその義手! と。

マキナ :
「……まあ、仕込み武器ならあるけどね」
 船長の話でふと思い出した。実はこっちにも反応するんじゃないか?

シャラ :
「あんの!? すっげ! 任務入ったら見せろよな!」

マキナ :
「見せるほどに切羽詰まる局面は、来てほしくないけどね……
 期待しないで待ってなよ。で……」

マキナ :
「アジアからアラスカへ、次はシカゴってわけ。あんたのことだから、スカを引くことはないと思うけど、どのくらい確度のある情報なの?」

“プランナー”都築京香 :
 イタズラ
「停電事故の痕跡以外で話すならば、少々込み入った情報になります。順を追っていきましょうか」

SYSTEM :
 イタズラ、とは呼んだが事実としては推定不可抗力。
 それがアラスカから南下しアメリカに来た、というのが大まかな部分だが、具体的に絞った理由は別のところにある。

“プランナー”都築京香 :
「激戦区の一つであるシカゴのUGN支部が直接、各支部に対して応援要請を求めました。
 これ自体は何ら関係のない情報ですが、求めた理由が付加価値になります」

“プランナー”都築京香 :
「行き先となる場所に、
 Nameless
 “刻知らず”という、オーヴァードテロ集団の潜伏疑惑を突き止めた───というのが理由のようです。

 彼らのほうも痕跡を滅多に出すほうではありません。
 如何に合衆国周りのUGNといえど、いち支部が見つけられる程度のものなら、もう少し早く目処を立てられたでしょう」

SYSTEM :
 …刻知らず。
 
 あなた/マキナがウェンディに密やかに調査を頼んだ、オーヴァード集団。
 ここが「テロ集団」名義なのは、FHのセルとしての横の繋がりを誰も把握できていないから。つまりは、単なる暫定だ。

SYSTEM :
 活動規模は決して大きくなく、首魁となる人物の名称だけが発覚していて…。
 わざわざ潜伏の発覚があった以上、良きにせよ悪きにせよ、そこで何事かを起こそうという魂胆があるのだろう。
 そう見せたいだけかもしれないが。

SYSTEM :
 ともかくプランナーは、それの真偽がどちらであれ、意味があるものと見込み…。
 あとは(口にしていない内容がなければ)実際の移動経緯(不可抗力の足跡)の行く先からの推察、というところだろう。

マキナ :
 NAMELESS
「"刻知らず"……向こうも同じのに当たりを付けてるなら、確からしいね」

マキナ :
 モ ブ
「名無しっていう割には資金力も背景も相当にデカい。
 そのくせ何がしたいのかてんでわからないで、よくわかんないRBの尻を追っかけまわしてる。そんなのに、よくあの連中動いたね。
 ……いや、だからこそあちらさんも警戒してる段階ってことか」

“プランナー”都築京香 :
「あちらの視点で言うなら、占領ないし潜伏した箇所が病院…というのも、動く理由ではあるのでしょうが。
 さて、何を考え、何を優先したかまでは」

シャラ :
 ネームレス
「刻知らずなァ」

シャラ :
「ニコラ・テスラが電子の妖精を狙うって、なんかそれっぽいよなァ」
 サンゴの知識を引っ張り出しながら首をひねる。

マキナ :
「ニコラ・テスラ。20世紀の発明家だったっけ。
 交流電気でお馴染み、そして時代を間違えたマッド・サイエンティストの代名詞としても」

 ──ちなみに、そいつはクロノスガーディアンとしても有名な名前だ。
 オーバークロック時に行われる地球の周波数の共振……シューマン共振という発想は、元はと言えばその男の発見だったといわれている。

シャラ :
「ン。……現状、ほぼ情報ナシなんだよな? 他につかめたコトとかあんの?」

SYSTEM :
 ニコラ・テスラ。
 交流電気の生みの親にして、科学万能の時代を跨いだ碩学のひとり。
 あなたが知る限りでは、地球の呼吸…などと銘打たれるシューマン共振の発見者でもある。
 表にも裏にも、決して拭えぬ功績を残し礎になった彼だが、晩年になればなるほど、その行いには無常さが付き纏った。

 彼は彼自身の一番の望みを果たすことなく、無一文で亡くなった、とか。

“プランナー”都築京香 :
「残念ながら。掴めた、と断言できるほどのことではありません。
 というより…、幾分かは“ソレ”を確かめてもらうための行いでもあります」

SYSTEM :
 クランの括りをするほどの人数がいないことも、リエゾンロードの片手間のちょっかいがかかっている話も。
 序のようにしたが、そちらは重要ではない。重要なのは、彼らが何をしにそこを選んだかだ。

シャラ :
いますごいコト説明されたか?

マキナ :
だからマグロ漁船なんだってばコレ

ミソラ :
契約書のすご~~~い下…

ミソラ :
ほら この小さな文字

シャラ :
かっ書いてるウ〜〜〜〜〜〜

“プランナー”都築京香 :
「…シカゴは数えて3年前。
 UGNとテンペストが揃って『無意味な目的のもと引き起こされた最悪の戦役』と結論付けたような出来事がありました。

 街機能を何より早く優先したからか、UGN支部が再度機能するまでに年単位の時間がかかるような、ね」

SYSTEM :
 そこを態々舞台として、神出鬼没の電子の妖精を、同じ神出鬼没が求めるというわけだ。

 雲をもつかむような話である。

マキナ :
「なるほど、付け入るスキはてんこ盛りだね。
 目的は兎も角、経緯の方は納得だ」

シャラ :
それ調べたな。クレイジー・ウォーとかっつったっけ。

シャラ :
『あっち側』も大概バカみたいなコト起きてるけど、『こちら側』も負けず劣らずって思った気がするわ

ミソラ :
テンペストにストレンジついてなかったりとか、
大手を振らないだけでPFはけっこう飛んでたりとか

ミソラ :
ゴニョゴニョのムニャムニャ。

シャラ :
望風のおっさんたち生きてンのかな~ あっちであんなアホやれてンだし、こっちでも探しゃ暴れてる情報出てきそうでウケるよな

シャラ :
マーそれはいいや。とりあえず…

シャラ :
「じゃ、いまのシカゴはけっこー瀕死……ちょっと生き返り始めたぐらいってワケだ。UGN支部はいちお生きてンだよな」

“プランナー”都築京香 :
「ええ。シカゴも常々、隙を見出したセルの襲撃を受けていることが多いようですから。
 ですが…こちらが作った二席分は、彼らの元ではありません」

“プランナー”都築京香 :
 イリーガル
「UGNの協力者名義のほうが要らぬ手間をかけずに済みますが、
 その席を設けたのは本部から直接、“刻知らず”鎮圧のため派遣される側です。

 あちら…シカゴ支部の方には、同時期に査察が入ります」

“プランナー”都築京香 :
「ですので、目下最も可能性の高い場所に踏み込む彼らに同道する方と…。
 “電子の妖精”が“そこ以外”に現れた時に備えてもらう方も含めておこうかと」

シャラ :
「本部の? 査察?」

“プランナー”都築京香 :
「ええ。シカゴ支部の…。
 別段特別なものではありませんよ。復興一年経ってなお攻撃を受ける支部への出向と動向確認のようなものです。ですが」

“プランナー”都築京香 :
「件の要請があって尚、特に予定を変えないのであれば…。
 先に話したように、素知らぬ反社会的オーヴァードの存在への察知と報告に、あちらも警戒したのかもしれませんね」

シャラ :
「よくわからん奴がオヒザモト近くに来てっから、本部様がわざわざ様子見ってことだよな? ほーん」

マキナ :
「例の事件のコトもあるし、残党がしれっと混ざってるのも警戒してるのかもね」

マキナ :
「……一応、私そいつらの一味って名乗る奴らと接触したことあるけど。
 バックがデカいだけあって装備も人員も上澄みの方に見えた。それが接触しただけで、三人。
 事を構える気はないにせよ、連中の対応は適切だと思うよ」

シャラ :
「マジか」

ミソラ :
「三人…」

ミソラ :
「…思ったよりいるな。活動規模そんなでもないって話だったけど」

マキナ :
         プラズマ
「あいさつ代わりに荷電粒子砲積んだ歩行戦車ブチ当てられたよ。こっちだと結構なゼータク品だ。それを雑に使い潰せるだけのカネとモノがあるってこと」

マキナ :
「よっぽどうまく行動を隠してきたのか、それとも単に気付いてないだけでいろんな組織の脱落組のより合わせなのか……
 いずれにせよ、こういうのから電撃戦を喰らうとひとたまりもないだろうね。半壊してる支部なら猶更」

シャラ :
(こっち? ……こいつも似たよーなクチか?)

シャラ :
(ミニンナーが目の前にいてこの態度だし、
       ・・
 こいつはマー外れか。いったん突っ込まんでおくかな)

シャラ :
「3人……で、資材はありそーで。そのカンジじゃあ超幹部って風でもなかったんだろ? もっといる気配すンな」

マキナ :
「まあね。
 ……カチ合うかもしれないし、今の内に情報共有しとこうか。人相・背格好・ついでに使う能力の特徴程度の情報しかないから、たいして役に立たないかもだけど」
 言いつつ左腕を前に突き出して、"プロンプター"の水晶体からホログラムを表示。視界情報で確認した三人の姿を、それぞれ映していく。

SYSTEM :
 提示された三者の姿。
 そこに“雷人”という名義に似合うようなものはいない。最低でも4名だ。
 何なら、うち2名ほど…人定義して良いのかも定かではないが。

SYSTEM :
 ところで、改めてその人相を見せた時…。

“プランナー”都築京香 :
「………。ふむ」

“プランナー”都築京香 :
「レネゲイドビーイング…ですね。
 名前や特徴については、視界情報以外にありませんか?」

SYSTEM :
・キュマイラ/エグザイル
・ブラックドッグ/バロール/ハヌマーン
・エグザイル

 判明しているシンドロームに限ればこの程度。名前そのものも明かされているものは多くない。

SYSTEM :
 そんな中で、プランナーが話の脇道に逸れてコメントを求めたのは最初の一体だ。

マキナ :

マキナ :
 「ああ、このランプの魔人みたいなのね。
 シンドロームはキュマイラとエグザイル。どっちも生命力に秀でた症状だけど、こいつの場合……」

マキナ :
「喰ったやつを蓄えるなり、自分と同化させるなりして補強する能力と……
 それで膨れた分の肉片を切り離して自律させられる特性があるみたい。
           コロニー  レジェンド
 RBの発生傾向としては群体型か伝承型か、その辺だと思う」

 実際に交戦時の映像も添えて見せる。コイツが見た目通りのガキンチョならサクッと演出盛って超スマートに映像編集してたところなんだけどね。

シャラ :
うわ~ キャラ被りか? コレ

『シャラ』 :
────。

シャラ :
アホか? って怨念だけ飛ばすなよ!

シャラ :
「捕食と自己進化ねェ。っぽいっちゃっぽいな、どっちも」

シャラ :
「そんで、なんでミニ、じゃねェ、プランナーはそいつを気にしてんの?」

ミソラ :
「レネゲイドビーイングだから?
 それだったらまあ、その下のやつも…」

“プランナー”都築京香 :
「さて。少なくとも発生した個体についてはある程度把握しているつもりですが…。
 彼のことについては存じ上げなかったので」

“プランナー”都築京香 :
「とはいえ、直前で生まれた個体、情報の行き来に乏しい場所の個体…そうしたものならむべなるかな、とは言えましょうが」

SYSTEM :
 参考にします、と、薄く笑ったプランナーにとって、三体目の個体──曰く『ブラザーフッド』がどうとか──は、知っている発生個体か、あるいはそもそもRBではないか、だ。

SYSTEM :
 …プランナーからそれきり、この時その三者に関して自発的に目立った反応は起きなかった。

マキナ :
              ナチュラルボーンキラー
「……組織内で純正培養された生 物 兵 器か、最近発見された個体か……」
 まあこの時代のRBって、確か大規模な種形成が行われ始めた時代って言われてるから、こいつの知らない存在が知らない場所でポコポコ生まれてても、違和感はない。
 とにかくそういう背景があることぐらいは覚えておくかな。

シャラ :
そもそもなんで生まれるレネビを把握してんだよ…とか 突っ込んだら負けだよな

シャラ :
ミソラもヤッパあっちのデカンナーには把握されてたんかなァ

シャラ :
「アンタ的には気になるものってハナシ? どーせ調べっし、なんかあったら報告すっけどよ」

“プランナー”都築京香 :
「ええ、少なくとも…」

“プランナー”都築京香 :
「これだけ目立つものです。よほど閉鎖された環境で育ったか、もしくは…」

“プランナー”都築京香 :
「…いえ、今は確定しない事柄について話すものでもありませんね。

 残る一人と一体についても、どちらかというと現代社会に馴染んでいるのは彼のほうでしょうが…」

SYSTEM :
 でしょうが、に続く言葉はつまり“私にとっては特に興味もない”だ。
 あなたにとって恐れるべきか否かの警告とは異なる。あるいは、そういう点で含めても、分かりやすく対処があるということかもしれない。

ミソラ :
「それで、その警戒されているシカゴ支部のほうは何かするの?」

“プランナー”都築京香 :
「こちらは引き続き、シカゴ内に侵入するFHの相手に当たるはずですが…。
 余力があったとして、現地に送られて来るエージェント・チームに存じておくべき相手はいません。その支部長も、目的となる病院には直接出向くことはないでしょう」

“プランナー”都築京香 :
  DAWEIN
「“淘汰する者”アミル・トロイと云う男です。
 ソラリス・シンドロームが主軸のオーヴァードで、支部の再建直後から支部長を務めているそうですね」

“プランナー”都築京香 :
「勤務態度、実績、凡そ特長のないのが特徴です」

シャラ :
「あみるとろいな」

シャラ :
「復興しなきゃいけない支部でそんなヤツがトップなンかよ? UGNも人手不足か?」

マキナ :
「こういう時だからこそじゃない? 復興って結局のところ、地味ーな仕事の繰り返しだし」

 モニターをしまいながら

シャラ :
「そんなモン?」

シャラ :
首をひねる。

ミソラ :
一緒になってひねる。

ミソラ :
「ただなかったことにするだけじゃあ、元の状態に戻す、ではないし…」

“プランナー”都築京香 :
    UGN
「はい。彼らの規範に限って言えば、そう悪い言い方でもありません。
 ただ、模範的、という言葉はこだわり過ぎれば進歩を阻むもの…」

“プランナー”都築京香 :
         ・・
「それは進歩のない怠惰と…。
 然して意味では変わりません」

SYSTEM :
 良くも悪くもシカゴの「今日」を続けるにはうってつけの支部長らしい。
 アメリカ自体、水面下で、UGN/FHが一線を認識し合ってやり合う機会が非常に多い場所だ。こういう時だからこそ、という言葉と“今この場における重要度の低さ”は両立し得る。

シャラ :
「フーン」あんまりピンとこない様子で違う角度に首をひねる。頭の中のほうはなんとなくわかった風。

マキナ :
「……ま、ほんとに怠惰なくらい平凡な奴なら、こっちからは願ったりでしょ。
 これから厄介になる相手なら猶更」

シャラ :
まーなー、とあいまいに返事。

“プランナー”都築京香 :
「ええ。付け加えるなら、シカゴ支部と本部の応援要請に応じて派遣されたエージェントは別口で動きます。

 電子の妖精を捕縛する可能性と術をあちらが持っているなら、その本部エージェントへの同道は必須でしょうが…」

“プランナー”都築京香 :
「そこ以外に現れる可能性…。
 そもそもシカゴ全体が思惑の射程圏内である可能性も含めたいところです。あなたにはそちらを」

SYSTEM :
 …あるいは出し抜く思惑が一人でも出た時の牽制か。プランナー自体が”出し抜かせたい”のか。
 二つ分空けた席はシャラたちに、そうでない、つまり“電子の妖精”の行き先が確定するまで後の先に備える役がマキナ、というのがプランナーの想定らしい。

シャラ :
 あーね
「理解。オレとミソラは本部さんか」

ミソラ :
      ソ ク  わか
「任せて。最初の一撃で理解らせ──」

シャラ :
 わか
「理解らせられてヒイヒイ言うのオレらだかんなゼッテー!」

マキナ :
   フリー
「で、 遊 撃 はこっちが担当ね。
 メンバー選出はそれでいいと思う」

 こっちもこっちで別に、潰しとく相手がいるわけだし。

SYSTEM :
 …あれからアジアに“彼”が留まっているとは思えない。
 必要とあらば何日だろうと、何ヶ月だろうと、何年だろうと網を張る男ではあるが、逆に”そう”でなければ即座に見切りを付ける類ではあるし、そもそも…。

 そもそも。立ち止まるという行いに少しでも適性があれば、彼のような生き方は出来ない。
 あなたにとってたいして知りたくもない事実だろうが、何度も見てきた以上、それは容易に推察できる事実だ。

“プランナー”都築京香 :
「本部の人間といっても一概に全員が一騎当千というわけではありませんが。
 天地をひっくり返す巨人のようなものでも連想しない限り、まるきり期待外れ、ということはないでしょう」

“プランナー”都築京香 :
「いえ、案外いたのかもしれませんけどね、巨人。…ふふ」

“プランナー”都築京香 :
「では、改めて確認することもないでしょう。
         フリー
 所在を確認次第、遊撃役のあなたにこちらからも通達はするつもりです。御三方、プランの仔細はよろしくお願いします」

シャラ :
「ッス。マキナ、連絡先くれ。するときもあっかもだろ」

ミソラ :
(私も私も、と言いたげにシャラの後ろから人差し指を出して「鬼の角」ごっこをしている)

マキナ :
「りょーかい。
 まあ、電子の妖精の性質上マトモに通信できるか怪しいとこだけど、一応ね」

SYSTEM :
 ミソラは残念そうに鬼の角ごっこを取りやめた…。

シャラ :
「オー。そんときは現場判断ってヤツだな」

マキナ :
「ま、そうなったらそっちの電波便りにドローン飛ばすなり何なりで連絡は取ってみる。
 わざわざこの時代に伝書鳩とか飛ばすの、結構屈辱的だけど」
 あとさっきからその角なんだったの アンテナ? 二本角のロボット?

ミソラ :
「逆にアンティークでオシャレかもだよ。いいじゃん伝書鳩、使う時が来てほしくはないけど」

 角が二つあって目が二つあれば
 みんな同じロボットだって言ってたよ

シャラ :
「不便だよなァ。確実にいっぺんはあるんだろーし、しゃーねェけど」

シャラ :
「じゃ、そんなワケで。マキナ、アンタ単独行動? いちお気ィつけろよな」

マキナ :
「心配ご無用。私、強いから。
 自分らの安全の事だけ考えてなよ。場合によっちゃ回りから激詰めされるかもだ」

ミソラ :
「だってシャラ。でも…」

ミソラ :
「そのへん前提だよ。だいいち、こっちもいざって時生き残ろうとするのは得意だから」

ミソラ :
「お互い様ってことで、私からも、寝覚め悪くならないよーにしたいね。などと言ってみる」

シャラ :
「そゆコト」

シャラ :
「強いっつえるのはかっけェからよ。そいつは買うわ。うまくやろーぜ」

マキナ :
               デウ ス ・ エ ク ス ・ マ キ ナ
「オーケイ。私のコードネームは"凡て世はこともなし"……
 神様が降りてきて大概のことを後味よく終わらせる物語の手法を意味する言葉だよ。
 その通りのスマートな形で完結させてあげる」

SYSTEM :
 あらゆる収拾のつかない事態、取り返しのつかない終わりに対するカウンター。 
 物事を綺麗に幕下す。あるいはあなた自身の願掛けでもあった。

シャラ :
「言うじゃーん!」けらけら笑う

シャラ :
「オレ様“アガースラ”。
 その神様に腹ン内側から食い破られるんだけどな」

シャラ :
「そうならずに終わらしてくれや。ヨロシク、マキナ」

マキナ :
「安心しなよ、うちの神様は修行フェチの神様と違って、感情に流されがちだからね」
 拳を作り、フィストバンプを求める。

シャラ :
「イーね! 3回以上はお目溢ししてくれそ!」
 にかっと笑って拳を突き合わせる。

SYSTEM :
 ここではない彼方のあなたたち同士。目的も動機も同じでない。
 それでもと、然して改まることなく、一期一会の信用の証を突き合わせた。

SYSTEM :
 探し物も、経緯も、ましてや見込まれた前後も。
 共通項は“プランナー”の思惑。

 そして彼女はコトを、基本的には外さない…だがそれは、長い目で見れば、の話だ。
 短期的にはどんな予測外があるのか定かでない。彼女にとって、それは予測外なのかどうかさえも。

SYSTEM :
 締め括りを神様が勤め上げると宣誓したこの出来事のきっかけは、そんな彼女の推測と調査だったが。

 結論から言えば…。
 当たりも当たり、大当たりであった。

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
【Check!】
 登場侵蝕が発生しました。
 Player:Smaragd 

"礎石" :
1D10 (1D10) > 6

system :
[ スマラグド ] 侵蝕率 : 43 → 49

"礎石" :
おやおや

“紅玉” :
やや上。って言っても…平均から誤差。

“紅玉” :
いくらでも修正は効くはず…。

"礎石" :
(そういえば備品を買い足し忘れていたな……と思い出した雰囲気)

"礎石" :
ありがとう

“紅玉” :
待ちなさい 今の反応はなに
問題で問題を覆った?

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
 大陸北部、UGNの勢力が活発な方向に属するイリノイ州シカゴ。
 ベセスダの本部からそちらに出立し、支部長アミルとの軽い挨拶が済んだあとのこと。

“淘汰する者”アミル・トロイ :
『ああどうも。悪いね、こんなナリで。
     DAWEIN
 オレが“淘汰する者”だ。シカゴじゃよくスクランブルで起こされるんでね、御目溢しして貰いたい』

“淘汰する者”アミル・トロイ :
『といっても、オレが本部さんの指揮を執るわけじゃないんだが…。
 まあ面目が立つ程度の用意は済ませてある。後ろを頼むね、鉄仮面のジェントルとリトル・レディ』

SYSTEM :
 などと挨拶を交わした後、彼はシカゴに点在するUGN預かりの建物の一つへ向かっていった。
 忙しいものである。

SYSTEM :
 …そしてUGNエージェント、4名1チームの受け入れは素早く済み。
 あなたと“紅玉”が残るイリーガルを待つ最中、通信がかかった……。

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈UGNエージェント・千城寺薫は世を忍ぶ仮の姿、我が名はオーストリア西部の山奥を治める欧州貴族セントジョージ!
 遡ること千五百年ほど前、ご先祖は世のため人のため○○戦争の裏で───〉

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈あ。繋がった?
 残念、”紫電”くんではなく僕でした。初めましてとお久しぶり、お土産はこの仕事が終わったらテレーズくん用と合わせて調達するけど何がいいかな? ねえどう思───〉

SYSTEM :
 とても元気な挨拶(オブラート)に、あなたの横にいた“紅玉”の行いは早い。

 だが、あなたには彼女が何をするかすぐに分かるはずだ。

“紅玉” :
 

SYSTEM :
 ああいう顔をしている時の彼女は、
 ヨリミチナシ
 グーで来る。通信切断5秒前であった。

"礎石" :
 よれたシャツと無造作に伸ばした頭髪。”淘汰する者”は苦言を免れない身なりではあるが、さりとて目を引くところのない男でもあった。
    ・
 尤も。彼に比べれば、大概の人物はそうだと言える。

"礎石" :
 二メートルはあるかという骨ばった体を、タイトなコートできつく締め上げた姿。手足は不自然に長いが、それがかえって長躯と釣り合いが取れていた。
 高い位置にある顔貌は、真鍮製の仮面に覆われて窺い知れない。

"礎石" :
 まるで真昼に出歩く怪人の風貌。室内に長い影を落とした”礎石”は、できるだけ柔和に聞こえる声色で応じた。

『任された。互いの務めを果たすとしよう、Mr』

"礎石" :
 軽い顔合わせののち、アミル・トロイは去った。

 安堵を共有するための溜息をつく。
 駆け引きをする気はない。多忙を理由に席を外してくれたのは僥倖だった。

"礎石" :
 あとは適当にあてがわれたシカゴ支部の一室で、イリーガルの到着を待てばいい。

 懐から本を取り出し、頁に視線を落とす。いつもと同じ一冊。幾度となくなぞった一節。没頭する間もなく、通信を受け取り……

"礎石" :
 ────なるほど。

"礎石" :
 何一つ理解できなかったが、分かった。"礎石"はもう一度呟いた。……なるほど……。

"礎石" :
「オーケイ」

 頭が痛そうに仮面越しのこめかみをぐりぐりと指圧する。

"礎石" :
 それ以上の返事をするより先に、予備動作に移行したクィンの手へカップ──シカゴ支部の備品。UGNのロゴマークが入っていたりはしない──を持たせる。

"礎石" :
「UGNがカバーで特権階級がワークスの……待った、繋がる前から喋りだしていたのか?」

 UGNの管理下に置かれて二年。世迷言を鼻歌代わりにする男に出会ったのは、これが初めてだった。
 話しながら、湯気の立つ黒い液面へフレッシュとスティックシュガーを落とし入れる。

"礎石" :
「初めまして。……」

"礎石" :
choice[テレーズに寄り添う,千城寺に寄り添う] (choice[テレーズに寄り添う,千城寺に寄り添う]) > 千城寺に寄り添う

"礎石" :
「世を忍ぶ者同士、仮の姿でお話願おう。シカゴ土産は食品が主なので、帰りがけに買うといい。間違っても年頃の女の子に野球チームのユニホームを贈らないように」

"礎石" :
 理由、ウケない。義理で寝間着にしてくれてはいる。

SYSTEM :
 カップを持たされた───つまり「ステイ」された───方の対応は、渋い顔をしたっきり。
 訂正。”ぐ”、とか、”う”、とか声にならない声を挙げて引き下がった。

SYSTEM :
 …本当に頭に血が上っている時は平気で踏み切るが、シカゴ支部の備品だ、という事実を突っ切るほど無謀ではない。

 追記しておくと基本彼女は他人に対して、二の足を踏むか、承知の是非を問わずに食って掛かるかの二択。
                    あなたいか
 恐るべきことに友達の総数は自覚もあろうが片手指。指摘すると二度目まで気にしない風。

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈ほう、参考になるアドバイスありがとう。つまり………つまりだ〉

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈そのアドバイスに含まれる他意は「自分にならバッチコイ」かな。
 分かった。フッフッフ、お土産は三つ中二つ決まったようなもの。九回裏ツーアウトまであと八回だよお二人とも!〉

SYSTEM :
 つまり1回裏と書いて第一印象が無安打の無風で終わったところだ。
 試合は始まったばかりである。

“紅玉” :
「…もうだいたい無視して自分の都合で話すけど…。
 本当に査察任されてたんだ」

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈そうですとも。くれぐれもおかしなことはしないようにと念を押されるほどの信頼だ。

 ちなみに繋がる前から話してみたのは、僕のさっきの話、人間関係って掴みが大事だと思うんだけどね…?〉

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈こないだやったら“その話は長くなりますか”でキャンセルされちゃった…〉

SYSTEM :
 つまりリベンジを創意工夫したわけである。閑話休題。

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈それで“紅玉”ちゃんから話聞いてたけど…。
 きみがお兄ちゃんの“礎石”くんか。なるほどねえ〉

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈じゃ、後輩ふたりに免じて仮の姿でお話しよう。
            ホワイトフェイス
 このあとシカゴに向かう“道化の真実”の千城寺薫。改めてよろしく。
 キミにもいろいろと興味はあるから、仕事終わりの帰り道は一緒がいいね〉

“紅玉” :
「こういうときの言葉は知ってる…
 一緒に帰って噂されると恥ずかしい」

“紅玉” :
「…シゴト上の先輩分の敬意は一応払う。払います。よろしく」

SYSTEM :
 繰り返すが好き嫌いではなく…。
 単にこの間合いの反復横跳びが苦手なだけである。

"礎石" :
 そう来たか。来るらしい。なぜ同地で任務につく仕事仲間に土産が必要なのか"礎石"は思考したが、すぐに取りやめた。「わかろうとするだけ徒労なこと」だ。

"礎石" :
「そうだ。お兄ちゃんです」

 質問攻めに辟易しつつも、素直に答えていたらしい。呼び名が千城寺につられるが、視線は低い位置にあるつむじを向いた。

"礎石" :
 不服があると言っていたわりに、関係性を聞かれた際に「兄」と紹介される存在ではあるようだった。

"礎石" :
「…… ……」

 "礎石"は何も言わず、スティックシュガーを一本追加した。

“紅玉” :
「なに」

SYSTEM :
 余談だが、こと食物周りでは無理に背伸びをしない。ブラックを主張したのは一度だけだ。
 しかしそれとは別の意図を含んだ、どこか優し気なスティックシュガーの追加に対する応答は、感情を誤魔化す食い気味の都合二文字に終わった。

"礎石" :
「なんでもないさ」

"礎石" :
「……さて、"道化の真実"。支部に来るのはおそらく無駄足だ、気をつけてくれ」

 帰投の件には触れずにおく。本部付き同士まとめて帰されるか、任務の違いがタイミングを分かつかは、上司(カミ)のみぞ知る。

"礎石" :
「"淘汰する者"ならもう出立した。俺たちもイリーガルが到着次第、現場へ向かうことになるだろう」

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈ふむ。仕事が早いね、聞いていた通りだ。
  DAWEIN
 "淘汰する者"と言えば…。
 真面目な自業自得を茶化されるほうとその原因ばかり独り歩き、もともとあった本意を誰からも気付かれない、ちょっと不憫なカンジだが〉

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈シカゴにはいくつかのUGNが中継地に使ってる建物がある。そんな彼は、風評気にせず粛々とお仕事開始か。

 いいとも、任せてくれ。上を向きながら下を向く程度の警戒心で僕も無駄足スタートダッシュを決めることにしよう〉

“紅玉” :
「それ”出来ない”ってことじゃ、」

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈いいや違うっ、無理難題を言われた時くらいに頑張るよってことさ!〉

"礎石" :
 出来るとは言わなかった。彼は本部に務めながらも、空気を読めるメットだった。

SYSTEM :
 読めるけど読めないほうが一人(本部のあるエージェントの主張に曰く)。
 五割ほどの確率で読まず、さらに五分の確率で読み違えるほうが一人(諸説あり)。

SYSTEM :
 …閑話休題。
 などと言うセントジョージ、失礼、千城寺薫は、その“淘汰する者”含めたシカゴ支部の査察役だ。
 
 もちろん、それが原因で査察が行われたというわけではなく、ほかの支部にも似たようなことが行われ、今回それがシカゴで薫だったというだけのことなのだが…。
 風評と外聞を気にせず、この1年間模範的な仕事を通してきた彼の地道な苦労が功を奏した、というには…今まで痕跡のなかった“刻知らず”なるオーヴァードテロ集団の存在は少しばかりノイズだった。

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈そちらに来るイリーガルは二人だったかな? どちらもキミらとあんまり年は変わらないほうだ。自己紹介の下書きはしたかい?〉

SYSTEM :
 やはりスタートの印象が悪いと以降もよろしくしてくれないからね~、と嘯いた彼は、相手を見て言葉を変えるようなタイプではなかった。
 それが出来る器用さと、それをしない性格は別なのである。

"礎石" :
 主立った功績はないものの、一定の水準を維持し続けた模範者。
 疑うに足る要素はあるが、確たる証拠のない身内。
 "刻知らず"や暴走事故の件がなければ、彼らも肝入りを寄越されることもなかったろうが──あるいは穏当に処理するための人選か。

"礎石" :
「そうしてくれ。俺たちも協力は惜しまない。そちらの仕事で役に立てることは、あまり多くはないが」

 およそ査察官らしくない人物ではあるが、"礎石"の知るかぎり信頼の最上位に位置する人物と、その上司の(ノイズキャンセリング)お墨付きだ。存分にお任せするとしよう。

"礎石" :
「十代の少年と少女が一人ずつ。情報の大半がマスキングされているわりに写真資料はポラロイドなのが引っかかるが……」

"礎石" :
「まあ、うまくやるさ。第一印象の緩和と払拭は永遠の課題だ」

 何日何か月の永遠だが、ウケないので言わなかった。そも期限が見えるなら永遠ではない。

"礎石" :
「……ひとつ訊ねたいんだが」

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈そんな、ひとつと言わずふたつみっつ!〉

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈で、どうしたの?〉

"礎石" :
 ・・
 それは千城寺にとって、呼吸か相槌ほどの意味しか持たないことを記憶に留める。取り合う必要はないが、少なくとも前者なら本人には不可欠だ。

"礎石" :
「あなたが手配したほうのイリーガル……"捧ぐ白翼"は?」

 包括的にざっくりと問う。あとは向こうがあることないこと、そして必要なことを教えてくれると理解した者の対応だった。

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈ああ、彼女〉

SYSTEM :
 ざっくりとした問いには、ざっくりとした答え。

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈いい子だと思うよ~、の一言で済ませると二言を翻すことになっちゃうからね。

 彼女とは現地でよろしくする手筈になってる。ホラ、シカゴに限ったことじゃないけど、アメリカは水面下でバチバチやりがちなところだからさ〉

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈イギリスのどっかの企業勤めらしくてね、むか~しむかしに我が城で出会ったこともあるし、丁度いいから一期一会をお願いしたワケ〉

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈望むならミュージカル風に語って聞かせてあげよう〉

“紅玉” :
「“礎石”」

SYSTEM :
 『聳え立つイバラの城~』を始まりとする最大10分ほどの即興ミュージカル第一幕「セントジョージと白の姫君」。
 その初動を前に、彼女が振り向きざまにあなたを見上げた。会話回数1回で経験則を語るとは妙なものだが、つまり“ろくな話出ないよ”と言いたいらしい。

"礎石" :
 ……イギリスの企業エージェントが、イリーガル名義で本部エージェントと同道?
 噂の"チャンサー"でも、そんなふざけた話を持ち込んだりはしないだろう。

"礎石" :
「ああ」

 だろうな、と見上げてくる双眸に肯く。

"礎石" :
 おそらく、というか確実に煙に巻かれている。同じくらい今のが全容なのだとも思う。
 要するに資料通り、"捧ぐ白翼"は謎の多い人物ということだ。それで納得する。

"礎石" :
「いやいい。大体わかった」

 善意のミュージカルは謹んで断りを入れておく。

"礎石" :
「こちらからは以上だ。問題がなければ通信を終了するが」

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈問題はないよ? けど、提案はある〉

“道化の真実” 千城寺薫 :
〈イバラの城ミュージカルがお気に召さないなら方向性を変えよう、差し当たっては───〉

SYSTEM :
 差し当たっては、から繰り出される多分の余分と書いてナンセンスの途中で通信が途切れた。
 ちょうどイリーガルの到着時間が近いからだが、それ以上に…。

“紅玉” :
「…。ああいう人」

“紅玉” :
「べつに…。わたしやあなたを下に見てる、とか、そういうのはないし。仕事はちゃんとするみたいなんだけど」

“紅玉” :
「………疲れる」

"礎石" :
「……そうだな」

 一定の基準に即することで社会に適応する彼にとって、千城寺のような外れ値(オブラート。勤勉な社会性の成果)は対応に困る存在だった。
 うまくやれていただろうか? リアクションの幅はもう少し大きくても良かったかもしれない。

SYSTEM :
 後に聞いてわかったが、彼の妄言を彼女は真面目に聞いたことがあるようで。
 質問攻めとナンセンスの、知性的胡乱なる暴力の反動こそがあの行動だった。

“紅玉” :
「“捧ぐ白翼”は、調べる時間ないし…。
 まずはやってくる二人のほうだけ考える。って言っても」

“紅玉” :
      ワケ
「あんまり、裏表がない事情じゃなさそうだけど」

SYSTEM :
 お互い様と暗黙の了解が、これから数分後に出迎える見通しの、二人のイリーガルに関する紅玉/クィンの感想だった。

"礎石" :
「だが、当面の仕事仲間だ。仲良くな」

 クィンに促してから、椅子に掛ける。通信が切れた暗い液晶に、長躯の怪人が映り込んでいた。

"礎石" :
「…… ……」

 腕を組む。机上──胸の前──膝の上。威圧感の軽減を模索して、姿勢を何度も組み替える。

"礎石" :
choice[机,胸,膝] (choice[机,胸,膝]) > 机

"礎石" :
 口元で両手を組み、静かに座した。

SYSTEM :
 人間の半分は第一印象で決まるという。
 ならば2m弱の巨躯と鉄仮面が、来訪するイリーガルにどのような印象を抱かせるものか。暗い液晶に切り取られた一枚絵は、その平常の客観視を延長させるには十分すぎた。

 試行錯誤の末にあなたが取った出迎えの佇まい。小さな沈黙の時間が流れる。

“紅玉” :
「あなたがそうなら異論はない。…」

“紅玉” :
「…しかしひとつ訂正。その迎撃の姿勢には異論が───」

SYSTEM :
 威圧感の軽減どころか強化パーツである。口数少なく必要な案件のみを伝えようとしたなら完璧だ、もう異論しかなかった。

 そして、その事実を伝えきるまでの間に…。自動ロック式の扉越しに声がする。

* :
「失礼します、エージェント“礎石”、“紅玉”!
 イリーガルのお二方が───」

SYSTEM :
 よく響く青年の声。
          フォーマンセル
 こちらに振り分けられた四人一組のUGNエージェント・チームのうち一人の声だ。
 彼らとの面識は既に済んでいて、特筆することはそうない。

"礎石" :
「迎撃……?」

 きみじゃあるまいし、と善意のクロスカウンターが発生する直前。

"礎石" :
「通してくれ」

 顔合わせした面々と声の記憶を照らし合わせ、肯く。姿勢は維持。

SYSTEM :
 は! ───と、さらに響く声。

 続いてドアのロックが解除され、そこから二人…。
 事前に目を通した姿と然して変わらない背格好の男女の姿が目に映る。

SYSTEM :
 フードの少年と、灰色の髪の少女。
 イリーガルという前提、そもそもUGN自体が広義の意味で秘密結社であるという点を置いても、その統一感の無さは特筆に値する部分だった。

SYSTEM :
 ………ちなみにその統一感のない二人から、出迎えの本部エージェントがどう見えていたのかは定かでない。

シャラ :
「ッじゃまっス」
 サンゴ経由で習得した(していない/したってことにしろ)英語を我が物顔で使いながら入室。
 特に遠慮せず、問題のふたりの顔をしげしげと眺める。

シャラ :
「……ンー? ンー」

シャラ :
「ンー……?」

シャラ :
 またクセ強いヤツが出てきたわー、というのが最初の感想。
 立ち上がれば1.5倍の高さになるかもしれないひょろ長い形が、圧迫面接(って言うらしい)のフンイキで、両手肘を机につけてなんとかポーズをしている。
 デカいお面で中身は見えないけど、呼吸はしてるように感じる。たぶん。アレックスのオッサンみたいな話か?

シャラ :
 隣のちまいのはなんとなく馴染みのある感じだ。こっちはなんとなくわかる。
 同年代女子の印象。オレならこの出で立ち見るとまずチルドレンを疑う。本部様らしいしそのクチかな。

シャラ :
 とりあえずイイや。第一印象は「ビミョー」。
 サンゴがオレの脳みその中で、ふたりの頭の上に三角をつける。

シャラ :
イリーガル
「バイトの“アガースラ”っす。アンタたちが本部様だよな? よろ」

シャラ :
手を軽く振ってみせる。こんで怒られたら真面目にやるかっていう、ある種の試し行動。

SYSTEM :
 余談だが、あなたが何もしなければ、横の彼女/ミソラが“ここ面接会場ですか? 特技はメギドラオンです”という切り出し口から似たような試し行動を取っただろう。

"礎石" :
 遠慮のない視線をどうともなく受け流し、傍らに一瞥。
 初動に注意を払いつつ、長身がゆったりと立ち上がる。天井までの余白は室内の誰よりも少ない。

"礎石" :
 顔のない怪人が、胸の前に手を置いて深く一礼する。
 が、面を上げると同時に恭しい挙措は取り払われ、意外なほど若々しい声を発した。

"礎石" :
「初めまして、”アガースラ”。そちらは”故に私はここにいる”だな?」

 二人を順々に見る無貌は、まるで素顔のように視線の動きまで読み取れる。
 彼が持つ奇妙な技術の一つに『何を被っていてもアイコンタクトが取れる』がある。これだ。戦闘用きぐるみでも実証済みの、ノーカウント特技。

"礎石" :
「掛けてくれ。自己紹介をしよう」

 我が物顔でコーヒーマシンを作動させる。
 一年前に復興した支部の備品にしては高級品なので、存外、誰かの持ち込みなのかもしれない。

ミソラ :
「そういうそちらは…ああ、自己紹介は改まってやりたいほう」

ミソラ :
「こちらこそはじめまして。ちなみに、行き先がマグロ漁船だったら先に契約書で教えてね」

"礎石" :
「では電子証明書もお付けしよう」

 ちなみに自己紹介については、必要のない手続きは省くほうであった。

ミソラ :
「やるね。手練れだよ“アガースラ”」

シャラ :
「金ある〜」

SYSTEM :
 口を開かない小さい方が視線で牽制してきた。早く座れ、の意。

シャラ :
ミソラをちょっと見る。ちまいのは冗談ムリそうだぞ

シャラ :
それともアレか? 人見知り?

ミソラ :
このタイプは時間をかけてOKにしていくタイプ
残念だったね

ミソラ :
ヒソ…ヒソカ…

シャラ :
苦手だわ〜 まーいいや、お面のほうはハナシわかる…か

シャラ :
ハナシわかってないけど流すタイプと見た!

ミソラ :
では各個撃破の構えで行きます
異論ないねBoy(流暢)

シャラ :
ッシャ 頼むぞ女100人切り!

ミソラ :
1d100 高いほど寄せるだけで負けてる。 (1D100) > 3

ミソラ :
よくわかんないけど任せて 

シャラ :
ダメだこりゃ

シャラ :
「ミルクと砂糖ある? オレ様にげーの苦手」
 勝手も知らん他人の家で、どかっと遠慮なく勧められたソファに腰掛ける。

シャラ :
腰掛けてちょっとびっくりして数ミリ跳ねる
やわらか! 千切れてねえ! 復興しかけ支部でこれかよ!?

ミソラ :
「見ての通り礼儀知らずAとBで、Aはお上りだよ」

ミソラ :
「あ、待ったBはお上りにしよう。私Aがいいから」

"礎石" :
 気にしない。なぜなら彼にとっても、ここは他人の家だった。
 シュガーとフレッシュを容器ごとテーブルに置く。

"礎石" :
 軽薄な態度に、どこか挑みかかるような気配。何倍にも稀釈された警戒心に、ふむと顎に手をやる。

"礎石" :
   スマラグド
「俺は ”礎石” だ。知っての通り彼女共々、本部から派遣された。よろしく頼む」

SYSTEM :
 無作法なリクエストに硬化せず、柔にもしない応対を見届けたのち、
 終始真顔のしょうもない拘りとともに粛々と座席に近づく、自称礼儀知らずA。それを視線で追うハリネズミ。

“紅玉” :
 カルブンクルス
「…。“紅玉”」

“紅玉” :
「以下同文。そっちの名前は聞いてる。
 聞いてるけど、資料の話。よろしく代わりに名乗ってほしい」

『シャラ』 :
  エメラルド   ルビー
──スマラグドとカルブンクルス
  相方のコードネームに照らすなら 男のほうは植物ではなく石だ

『シャラ』 :
──片方の機嫌を損ねるな 双方の心象を悪化させる
  コードネームが重ねられているなら 浅い仲ではない

シャラ :
へいへい。

シャラ :
それはそれとして、砂糖とミルクを大事そうに一個ずつつまみ上げる。これ持ち帰ったら怒られるか? 怒られるよなタブン

ミソラ :
     ノーマナー
人はこれを“無作法”と言います…ます、ます…

ミソラ :
(囁く声)

"礎石" :
構わない

"礎石" :
消耗品の費用も賄えない支部ではないさ。俺も無許可で使ってる身だ

"礎石" :
もし怒られるとしたら一番手だな

シャラ :
イーの!?!?!?!?!?ホントに!!!????

ミソラ :
やるね一番手。

シャラ :
(好感度が跳ね上がる音)

シャラ :

ミソラ :
こっちのお兄さん…
待った、お兄さんでいいの呼び方?

"礎石" :
19歳はギリお兄さんかな

ミソラ :
30までなら通用すると聞くよ。

ミソラ :
(囁く声は好き勝手喋ると自分のコーヒーに口をつけ始めた…)

シャラ :
(祈るような顔でミルクをそっと2個分入れる)

シャラ :
ひとしきりナムナムしてから顔を上げる。忘れてたわ本題。

"礎石" :
(憐みを含むやんわりとした眼差し)

シャラ :
わっ…わかるぞ! 明らかに見えねェお面の中から…眼差し! オレを憐れんでる!?

シャラ :
ちっ…ちげェもん!!もう入れ放題だもん!!

シャラ :
クソデケェ咳払い

シャラ :
「えっと」

シャラ :
「コーヒーうまいっす
 あざっす」
 人間は施しに敗北する生き物である。

"礎石" :
「生活苦が窺えるな。ふつうなら行政の支援を受けるよう勧めるところだが」

"礎石" :
「あなたたちの経歴は見た。ものの見事に空白だ。事情ありと見て言うが」

"礎石" :
「おおむね経費で落ちる。適当に理屈をつけて要請するといい」

"礎石" :
パチンとウインク。異形の相の便利な使い方。

"礎石" :
「おっと」

 クィンの耳を両手のひらで塞ぐ。

シャラ :
「ワタクシ本日からアナタ様のチュージツなシモベっす
 シャラと申します 手足のように扱ってください」

シャラ :
平服。

“紅玉” :
(なぜか塞がれたことを不服気に見上げている)

ミソラ :
         バディ
「このような性格の相棒だよ」

シャラ :
靴とかお舐めしたほうがいっすか? オレベロンベロンっす

SYSTEM :
 そのバディからシャラへ、アイコンタクトが一度だけ飛ぶ。
 相方の買収具合を流石に100%本気だとは思っていないが、100%方便だとも思っていない程度に培われた信用。

"礎石" :
「福利厚生の範疇だ。マグロ漁船の」

"礎石" :
手足も生えるほどにあるのであんまりいらなかったが、こんなんで打ち解けるならまあいっか、という顔をした。

シャラ :
「あれ?」
 マグロ漁船っつった?

"礎石" :
そちらのお嬢さんが。

シャラ :
言ったけどもぉ!

シャラ :
靴を本当に舐めさせていただこうとかがみかけたところで、すごい不自然に身体が止まった。サンゴがロコツに嫌がっている。

"礎石" :
彼はいつもこうなのか?

"礎石" :
流石の俺も、ここまで気合いの入った有言実行は初めて見たな

"礎石" :
やるなら美人のだけにしておきなさい

シャラ :
美人の金持ちのクツは全身で舐めさせていただくっす

"礎石" :
ハハハ

"礎石" :
ごめん、少し気持ちが悪かった

シャラ :
率直にキモがるな!!!!

ミソラ :
客観視する光景ではあったね

“紅玉” :
………。

SYSTEM :
 それぞれの相方が目を合わせた。
 じつはとしした
 成熟しているほうが頷き、
  じつはとしうえ
 背丈の小さいほうが怪訝な表情をして納得する。

“紅玉” :
「それで………仕事の話の前に」

ミソラ :
   コギト・エルゴ・スム
「ん。“故に私はここにいる”のミソラ。
       エンジェル・ハィロゥ
 得意なことは遠くのものを見ることです。資料書いてあったりするかな」

ミソラ :
       Agent
「よろしくね、防人さんたち」

ミソラ :
 シャラ、このコの靴なら許すって

“紅玉” :
 言ってない

“紅玉” :
 そして(有言実行が不本意であってほしいから)その辺にしておいて

シャラ :
ヤベェ これマジでキレられる二秒前だわ

"礎石" :

シャラ :
もう一回すごい咳払いする

シャラ :
「シャラっす。コードネームは"アガースラ"」

シャラ :
「得意なコト……? 得意なコト……」

シャラ :
 ブラム=ストーカー
「血ィ使うの得意っす。戦ってるときダバダバすっけど気にしなくてイーから」

シャラ :
「そんで、アンタらは?
 コードネームで呼ばれるほうが好きなヤツいるのは知ってっけど、そういうクチ?」

"礎石" :
「ではミソラ、シャラと」

"礎石" :
「スプラッタは俺も彼女も似たようなものだ。仲良く規制と戦っていこう」

"礎石" :
「そうでもない。もっとよくある話で、姓名を取得してないんだ。
 クィン……彼女はともかく、俺の身なりで戸籍が必要になる場面はさほどないからね」

"礎石" :
「俺は盾役だ。あなたたちの安全を守ることが、俺自身を守ることにも繋がる」

 イリーガルやフリーランスにとって最大のリスクである尻尾切りの心配はそれほどない、という話だ。
 リソース配分を防衛に偏重させた”礎石”の派遣が、外部協力者や諸支部に対する譲歩であることは珍しくない。

シャラ :
「アー……」
 あいまいな納得の声。イロイロ考えるとエグザイルっぽいな。
 "紅玉"はクィン。でも"礎石"は名前を取ってない。
 なんとなく理屈はわかるし、突っ込まないでおく。

シャラ :
『あっち側』にもわんさかいた。表舞台に出たやつは増えたけど、それと同じぐらい、表に出ず名前を与えられなかったやつらも増えたから。

シャラ :
だいいち……。

『シャラ』 :
         ・・
──九割五分の確率で外れ

『シャラ』 :
──まともな神経の相手ならば
  直属の手足に信用の置けないものは使わない

『シャラ』 :
──派閥が穏健派ならばの話だが

シャラ :
だよな。ならイーや。がら空きの背中見せますって言うのは、普通の世界ならバイトに気ぃ使いますって宣言だ。

シャラ :
「わーった。じゃ、アンタはスマさんな。で、そっちはクィンって呼ぶから。
 遠慮なく守ってもらうんで、そのへんヨロ」

シャラ :
「その分仕事はすっからよ。先出て邪魔なの掃除するし」

SYSTEM :
 あなた同士の考察をよそに、責任者の片割れ、つまり“スマさん”より先に言葉を切り出す。端的にインターセプト。

“紅玉” :
   カルブンクルス
「いいえ。“紅玉”」

“紅玉” :
「仕事のときにそっちは呼ばないし、使わない」

SYSTEM :
 片割れ/あなた/“礎石”が知るに曰く、その拘りの所以は…。
 UGNの用途では“ない”ほうのために貰った名前であるからだ。
 序に、べつに呼ばれたくないわけでもないこともあなたは知っている。

SYSTEM :
 つまり呼んでもいいけど作戦中はそっちで呼ばないで、を端折るだけ端折るとこういう言い方になる。

シャラ :
「えっ、メンド。こだわり?」

シャラ :
「じゃーカル子な。ウン」

"礎石" :
いいんじゃないか 骨が丈夫になりそうで

“紅玉” :
カルシウムじゃない

“紅玉” :
「………………………。………………」

“紅玉” :
「………譲歩する」

SYSTEM :
 “紅玉”のさりげない願望を話しておくと、
 背は伸ばしたい。

"礎石" :
 程度にもよるが、小回りが利くほうがよい。

"礎石" :
「それで……」

 自己紹介を終えた面々を順繰りに見る。束の間のコーヒーブレイクは終わり、ここからは労働の時間だ。

"礎石" :
「俺たちの仕事はネイムレスの摘発だ。そこはいいな?」

"礎石" :
「潜伏先と目されるシカゴ郊外の病院へ直行し、対応する。要するに一から十までアドリブだが、できることを提供してくれればいい。俺たちもそうする」

"礎石" :
「以上。問題なければ出発だ」

 手を叩いて起立を促す。

シャラ :
 りょ
「了解。ケッキョクそのネームレスのこともサッパリなんだよな? ンならそんなもんだろ」

シャラ :
あま〜いコーヒーの残りを一気飲み

“紅玉” :
「ン…。わかってることなんてそう多くない。
 リーダーの名前、行動の傾向…素性の知れない組織やセルなんて珍しくないけど」

ミソラ :
「“サッパリ”の先から進展がないならやることは一つ。
 こちら異存なし」

SYSTEM :
 けっきょくどちらの視点からとっても、“刻知らず”に関わる情報は多くない。
 足取りを辿ることさえ至難の業───その手のセルやオーヴァード絡みの組織が全くないわけではない。白紙の状態から首謀者を探すエージェント・チームも同様に。

 故に、手掛かりが見つかること自体は、いちから十まで不可思議というわけでもない。ないが…。

SYSTEM :
 なぜシカゴの、しかも病院なのか。
 そのあたりについても“サッパリ”に含まれる点も含めて、確かに一から十までアドリブの行先不透明ではあった。

シャラ :
「本部様で『ゼンゼンわからん』なら、オレらが確認することね〜からな」

シャラ :
「こゆ時って出たとこ勝負が鉄板だろ。特にね〜か……アー」

シャラ :
「あのよ。アミルトロイ、アンタ達からどー見えた?」

シャラ :
 探るように問いかける。
 ・・・・・・・・・・
 特長のないことが特徴であるというのがマジなら、プランナーはコードネームも名前もまともに共有しないはずだから。気になったってだけだ。

"礎石" :
「どうとは」

 高い位置から顔を覗く。かち合う視線。

シャラ :
うお デッケ

ミソラ :
(シャラの頭の上に手を置き、そこから水平に持っていく)

ミソラ :
彼我の戦力は圧倒的(背伸びしながら)

シャラ :
っせ〜〜よ!!!まだデカくなんだよ!!!!

シャラ :
「特に意味はねーよ。ねーけども……」
 ウン。ないわけないんだけどな。

シャラ :
「ビョーインが潜伏先でビンゴっつ〜なら、そいつのこともフツー疑うだろ?」

シャラ :
「平た〜くしてるやつってよ、トガッたとこ、都合の悪いトコ? ロコツに隠してる場合も多いじゃん」

シャラ :
「オレ様はアンタらと同行だから別にイーけどさ。仕事中は深くきかねェし。
 でも、オレら闇バイトくんは今後の付き合い方考えねーとならんしよ」

"礎石" :
「そうだろうな」

 肯き。
 二年前の売り込みが失敗していたか、二人だけで生きていく器用さがあれば、”礎石”と”紅玉”は組織に依らない稼業に精を出していただろう。
 信用と信頼を数値化して、対外的な関係を整頓するのは道理だ。切り離せないのなら、それなりの付き合い方がある。

"礎石" :
「疑いはしない。盾役が背後から刺されるなど妄想していては、業務に支障が出る」

"礎石" :
「だが……聞きたいのは、これではないね」

"礎石" :
 指先で顎を打つ。かつかつ、と高く短い音。

"礎石" :
 感想、それも他人の印象を問われるのは、率直に苦手分野だった。”礎石”は他人にどうと思う神経が鈍く、思考も自己完結的。
 疑いがかけられた男だとしても、実際に何かしでかすまでは、彼にとって”淘汰する者”は仕事仲間だ。それ以外の何者でもない。

"礎石" :
 ……

"礎石" :
「仕事熱心なほうではない。いや、情熱的ではなかったと言うべきか」

"礎石" :
「データだけ見れば、ここ一年間の仕事ぶりは悪くない。不安定な情勢下でよくやっている」

"礎石" :
「彼は要求される水準を満たし続けていたが、その代わりに失敗も進展もなかった」

"礎石" :
「シカゴ支部は復興の足掛かりであり続けたが、その目的を未だ果たせていない」

"礎石" :
「倦むにしろ焦るにしろ、何か思う所があるのが”フツー”なら……俺の目にはそうは映らなかったと言えるな」

"礎石" :
「しかし俺も一目見た程度だ。あまりあてにしないように」

"礎石" :
「分かっていると思うが、大人は都合の悪い部分を隠すのが上手いんだ」

SYSTEM :
 大人の特権とは誤りを割り切り、ひとつのブロック化することでもある。
 この場の大人とは誰なのか。

SYSTEM :
 …ただ“礎石”の一目見た所感とデータから得た人物性にこれ以上という結論はない。

 アミル・トロイは模範的なUGN支部長であり、シカゴ支部の復興において精力的に活動し、外部からの影響を良くも悪くも受けない勤勉さがあった。
            ・・
 あったが、それが齎した進展は一切なかった。

SYSTEM :
 彼は今日を勤勉に続けながら、
 明日と無縁の怠惰さがあった。

 時期が来るまで“そう”でいたいUGNにとっては、決して反目したい人材ではないが、替えの利かない人材でもない。そんな程度だ。

SYSTEM :
 …隣の“紅玉”は瞑目し、口を挟むこともなく、最年長の大人と子供の狭間の客観的見解を聞いていた。

シャラ :
「……ン〜」

シャラ :
「おとなってリッパそ〜なこと言いながら、タイテーロクでもね〜ことしてっからな。なんとなくわかったわ」

シャラ :
「そこまで教えてくれたら、いったんイーや。アー、ン〜」
 こっちの事情とかあっちの立場とかあるのを踏まえて、どちらの立場からの言葉もひねり出したのはわかった。
 盾役が後ろを気にしてたらしゃーないのも事実だしな。

シャラ :
「サンキュ」
 お礼は言っとけ、は、サンゴはオレに教えんかったけど。
 記憶の中のサンゴの兄貴やブラハンの数少ないまとも枠が気にしてたことだった。ので、言いにくそーに付け足す。

"礎石" :
「どういたしまして」

"礎石" :
「あまり心配しなくていい。UGNにはロクでもない大人を監視するためにロクでもない大人を設置する制度がある」

"礎石" :
「では行こうか。働かざる者なんとやら、があなたには一番効きそうだ」

シャラ :
「食えねェのはマジでイヤ!!」

ミソラ :
「お父さん、この仕事が終わらないと明日のお夕飯はなしだよ」

シャラ :
「明日の夕メシィ〜〜〜!!!!」

SYSTEM :
 自称闇バイトにとって重要なのは明日の生活であった。嘘ではない。

SYSTEM :
 躊躇がちに絞り出した付け焼刃の御礼を模範解答で返した、UGN勤務2年強に続く応答。それを最後に、異存らしい異存はなりを潜め。

 チームの編成を再確認して、任務は決行の運びとなった。

SYSTEM :
 こちらを立てる気が最低限あり、一線を越えた粗相はしない若者二人。
 経験上、イリーガル…外部の一線を引いたものとの共同任務は初めてでもない。

 折り合いはうまくつけてやって、という人道半分職務半分のオーダーにあなた/“礎石”は忠実だった。
 指示に、というよりは、そこに含まれる社会的振る舞いに、とでも付け加えておくべきか。

SYSTEM :
 現地への潜伏が想定される中、シカゴ支部からの1チーム、本部からの補助要員。
 イリーガルとの混同の急ごしらえとして見るならば、仮に病院内に危険なジャームが潜伏していても問題のない陣容ではあった。

 その任務に潜り込んだイリーガルには、当然ながら他意があり…。
 その他意さえも、お互いの目的に反発し合うものでなかった。

SYSTEM :
 だが…。
 ありえない、という言葉をオーヴァードは真っ先に排斥する。

 予想外のことは起こるもの。
 経験測の引き出しが増えるほど、それを痛感するものは多い。

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
 イリノイ州シカゴ、某総合病院。

 郊外の交通便において若干不便な地に建てられ、北米大陸の必要以上に広大な領土にものを言わせたような、大きな建物とその敷地。
 それが見えてくるころだ。既に編成されたチームの一つが哨戒にあたり、あなたたちもまた、敷地内に入っている。

SYSTEM :
 通信は万一の時に備え、強力な発信モジュールと、また非常電源への切り替えが備えられている。

SYSTEM :
 仮にも頻発する停電事故と、それに関与するオーヴァードテロ集団の捕縛だ。
 この程度の備えは然るべき、ということなのだろう。

 シカゴ支部の常にある程度切迫した情勢の監視がてら、先日ドッキリのようにチーム配属を伝えられた製作者に曰く。

『万能工具』 :
“まーオレ、ブラックドッグじゃねーけど! こーゆーのは単純さがモノ言うのよ!”

『万能工具』 :
“でも100%アテにゃすんなよなー。
 機械そのものがブッ壊れることだけはねーって保障すっけど”

SYSTEM :
 想定されるオーヴァードの人為的にかけた過負荷程度ならどうにでもなるというお墨付きの元、
 本部および”道化の真実”との相互回線機能を持たされた端末に対する自信なのか警告なのかわからない言葉が、彼からの激励代わりだった。

SYSTEM :
 そして現地に辿り着いてみれば…。

ミソラ :
「異常なし。夜間の病院ってこんなものかな」

SYSTEM :
      エンハイ ノイマン
 首を傾げる感覚強化と並列思考。
 潜伏先と見做すには気配はずいぶんと静かで。訪れる人の気配もそう多くない。

SYSTEM :
 病院そのものが所見の“紅玉”に比較する知識はなかったが、もとより摘発の折の交戦において、ここに居合わせた民間人の立場は保護対象だ。
 そうであること/人気のなさに多少の警戒意識はあっても、そうであることを不都合に思う素振りはなかった。

"礎石" :
「どうかな。夜間救急が賑わっているよりは都合がいいが」

 応じつつ、問題なく動作する端末を懐にしまう。
 これで彼の手にするもので最も信頼できる道具の一つになった。

シャラ :
 ぷちっと親指の腹を歯で噛み切って、そのへんにぺたぺたと血を付けまくる。
 つけた場所から血のワイアが伸びた。蜘蛛の巣というよりはブービートラップのように足元へ張り巡らせる。

シャラ :
ど? サンゴ。そのへん。

『シャラ』 :
──アメリカの病院事情は不明

シャラ :
 切り捨てんなバッサリ。
 とりあえずスタッフルームとかさりげなーく覗いてみるけど、まばらに人がいる感じだ。

シャラ :
「まーなァ。消灯時間じゃこんなモンなんかね」

"礎石" :
「そちらは仕込みか」

シャラ :
「ウン。オレの血使ったワイヤー。引っかかったやつとか探知できっからさ」

ミソラ :
「ヘンゼルとグレーテルね」

“紅玉” :
「ブラム=ストーカーの。…申告通り。
 目立つところじゃないし、とくべつ言うことはない」

SYSTEM :
 けど、と続けなかったが、言外にはそれが付く。仕込みかどうかを尋ねたあなたの見解を待っているからだ。

"礎石" :
「理解した。バックアップチームには共有しないが、構わないな?」

"礎石" :
「そのほうがあなた好みだろう」

シャラ :
「ウン。でもスマさんが必要だと思ったら伝えといてイーよ。
ブッチャケ
 正直、こいつに引っかかったときには手遅れなコトも多いかんな」

シャラ :
「引っかかったのがどんなヤツかは把握できっからよ。なんかあったら言うわ」

"礎石" :
「分かった。恃みにしている」

シャラ :
 りょ
「了解」

"礎石" :
(聞き慣れない若者言葉に肯く若者)

ミソラ :
「…」

ミソラ :
💡

ミソラ :
「オッケー? それじゃあ行こうか」

SYSTEM :
 オッケー、と続く言葉を若干意図的に切り離したのは、若者言葉の意を伝えたかったからかもしれない。
 あるいは適当にモノを言っただけかもしれない。

SYSTEM :
 なお、それは“礎石”には無用な心配だったかもしれないが、怪訝な面持ちをしていた”紅玉”向けのものとしては効果があったようだ。

"礎石" :
「ああ。楽しい遠足の時間だ」

 不敵に笑んで、先陣を切る。翻った外套が弧を描く。

"礎石" :
 協力者の警戒心を解く必要はない。
 それは後ろ盾を持たない少年と少女を生かしてきた経験則だ。

 どんな状況であれ”礎石”は業務に従事するのみだ。

SYSTEM :
 そうしている間にも、未だ気配や音沙汰はない。自ら姿を晒すも同然の《ワーディング》は当然として、急患などもなかった。

SYSTEM :
 ところで、遠足とは帰るまででワンセットなどと云う。
 燥ぐ子供のころから良く聞かされる注意を促す言葉だ。

 燥ぐ子供時代という日常の経験者に該当する人物が果たしてどれほどいたやらだが、
 帰り道なき騎行が死よりも悲惨と知られるオーヴァードにとってそれは似たようなもの。どのような任務であれ、生還とは概ね、彼の帰属する組織もしくは生命活動にとっては義務だった。

SYSTEM :
 ひと際背の高いエージェントの歩みに付いて行く、相対的により背の低く見えるほう。
 一番二番と矢面に立つ先陣二人を目で追いかけるイリーガルの表情から、感情は伺い知れなかったが、シャラに聞こえるように零した言葉がそれを雄弁に示した。

ミソラ :
「ちゃんと組織してるんだ、あそこ」

ミソラ :
「うん。帰ってからの目的が一つ増えたね」

SYSTEM :
 なんとなしに書き留めたこちらとあちらの違い。
 俗っぽい言い方を差し控えるなら“縁起に関わる”その行いは、彼女の願掛け5割、手癖5割だった。

SYSTEM :
 ………………
 ………………。

SYSTEM :
 通信状態の確認も問題なく。
 外来受診の受付も、人そのものはいて。
 来院上の建前もずいぶんスムーズに済んだ。

 内側から外側まで、何の変哲もない、ただの深夜帯の病院。
 幸いなことに急患もなく、平常通りに機能しているものだから、肩肘張って扉に手をかけているものほど肩透かしだ。

SYSTEM :
 なお、見るからに記憶から消しがたい特徴を残した“礎石”がどのように侵入を果たしたのかはさておく。
 UGNのサポートチームの尽力だったのかもしれないが。そこも含めて然したるトラブルはなかった。そう、なかった。

SYSTEM :
 したがって………何が起きたのは外側でなく。
 見かけ以上に広い敷地を使った、その病院の内側だ。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 灯りの乏しい院内。通る先々、病室の悉くから物音はしない。
 あっていいはずの夜間の巡回さえもなかった。平常通りに機能する外側と、もぬけの殻と呼んで差し支えない内側の様子が全く以て違っていた。

SYSTEM :
 間取り図通りの地形なのは確かだが、本当に外側から見た通りの、患者が療養する病院なのかどうかを疑うほどに。

“紅玉” :
「…さっきは人気がないほうがありがたいと思ったし。
 静かなものと聞いていたけど」

“紅玉” :
「これほどに?」

"礎石" :
「明らかに異常だな」

"礎石" :
 では遠慮なく、と覆いを脱ぎ去る。

"礎石" :
「入院患者をまとめて移送した、なんて話もない。どういうことだ、これは」

"礎石" :
 手近な病室にあたりをつけ、室内を覗く。
 消灯時間は過ぎている。まかり間違って誰かが何かを目にしても、怪談話がひとつ増えるだけだろう。

SYSTEM :
S1d2 
1:使われていた
2:使われていない (1D2) > 2

シャラ :
よかったマジで
あと2秒遅かったら「明らかな異常は目の前にもいるんだよ」つっちまうトコだった

"礎石" :
かまわないよ

ミソラ :
雉が鳴かずに一生を拾っ…

"礎石" :
あなた流に言うと「マジでな」というやつだ

ミソラ :
って、ないかと思ったら…そう来たか………

SYSTEM :
 覗いた部屋について、あなたが怪談の心配をしたのは杞憂だ。
 居たのならば確かに、労わるような退室間際ごと記憶を消し去る必要があっただろうが。

 …なぜなら消灯して久しい病室に人の痕跡はない。そもそも誰かが入院していた跡さえも。

SYSTEM :
 だがそれならば外部と内部の違いはどういうことなのか。
 疑惑の手掛かりを、いつの間にか最後尾にいたりいなかったりしたほうが戻ってくる足音が連れてきた。

ミソラ :
「悪いな、と思いつつ、さっきいくつか覗いたんだけどね」

ミソラ :
「引き払って長いのかな。ずいぶん使われてない病室と…。
 ついこないだまで使われてた病室。二通りがあったよ。そっちの見た部屋が違うなら仮説ごと撤回するけど…」

SYSTEM :
 ある場所は機能を失って久しく、ある場所はついこの間まで患者がいた。
        ・・
 ならば幾日か前までは病院として機能していた、が正しいのではないか、と。
 最後尾で態度のわりに真面目に(?)観察に勤しんでいた少女/オリジン・ヒューマンが主張する。

シャラ :
「ほーん。じゃあガワだけ病院ってコトか?」

シャラ :
オレらにとっちゃ、カネと権力持ってる元気なころのUGNさんを見るよかよっぽど馴染みはあるけどよ。『こっち側』でもオーコーしてんのか? こゆの。

シャラ :
「オレ、こーゆー状態の病院見ると『バレたから被検体引っ張り出したんだなァ〜』って思うけど。UGNさんはどーよ」

SYSTEM :
 日本では神城のような大企業が、裏ではFHと接触し、独自にR兵器の開発に勤しむ場合もある。
 そのためのカバーとして表社会向きの施設が使われるなどザラにあるわけだ。

 合衆国では“どう”なのかは、そこのところ割愛するが…何も、日本でしか起きない事例というわけでもない。

SYSTEM :
 病院として機能していない隠れ蓑から、スムーズに“それ”を…病院がカバーで、本来の形態がもっと人道無視の理屈を伴うものだと連想するのは、
 むしろ『向こう側』で公にしなければ手段は問わぬとばかりに常態化してきたケースを見てきた二人のほうだろう。

“紅玉” :
「どうもこうもない。押っ取り刀で飛び出したなら…」

“紅玉” :
「この状況で足跡一つ残さず退散なんて、無理な話」

SYSTEM :
 そのことについて潜伏場所を探り当てたシカゴ支部からの伝達があって然るべきだし、外部が平常に機能しているのも妙だ。
 何なら直接問い質してみるというのも視野かもしれないが。

シャラ :
「ガワだけ急いでなんとかしてる間に逃げろ! みたいな話かね。アヤシ〜な〜」

"礎石" :
「まさかエントランスに近い病棟まで被験者のベッドだとは思いたくないが、証人の一人もいないようではな」

"礎石" :
「院内の調査にあたろう。隔離された民間人がいれば保護する」

"礎石" :
「場合によっては出入りが必要だな。”アガースラ”、病院の内外に跨がる形でワイヤーを張ってくれないか」

シャラ :
 りょ
「了解。イーよ、張っとく」

シャラ :
「ワイヤの近くに目ぇつけることとかできっけど、それはいらん?」

“紅玉” :
「(器用…)」

"礎石" :
「使い手の判断に委ねる。あなた自身の力だ、俺よりよほど付き合いが長いだろう?」

シャラ :
「マーな。じゃ糸だけ張っとくわ」

シャラ :
「まだ入ったばっかだしよ、消耗したくねんだわ。ナニがいるかもわからんし」

"礎石" :
 ありがとう、と肯き。

"礎石" :
「では行こう。息を潜める必要がないのは、いくぶん楽だな」

シャラ :
「ウン。このカンジじゃ~廃墟探索と変わんね~もんな」

GM :

SYSTEM :
 エントランスに近い病棟の先端ですら“そう”なのかどうか。
 確かめるすべとして思い浮かぶのは、素知らぬ顔で応じた受付を含むスタッフだが…それは間違いなくオーヴァードではなかった。

 血のワイアが来客を伝えた回数も、一度たりともない。たとえ、短い時間に過ぎないと言えどもだ。

SYSTEM :
 だがその時だった。

 ───外側に張ったワイヤのほうに、一瞬の違和感。

SYSTEM :
 誰ぞが通過した、ではない。
 張った地形そのものに対する、ほんの瞬きほどの違和感。

SYSTEM :
 だからこそ。
 それ
 稲光が、脈絡もなく訪れた。

SYSTEM :
【Check!】
 
Effect:【ドミネーション】【電子結界】【ショート】【電波障害】【????】【超越的能力】
Player:?????/?????
Target:シーン

[Add's]
・シーン内における電子機器が使用不能になる。(シーン終了時に解除)
・シーン内における一定範囲が「■■化」する。(再使用で解除される)
・本来発生する現象は「電子の流れを可視化し、その空間内に侵入する/その流れを改変・操作する」行為だが、
 複数のEEが追加使用されていることで内容が変化している。 

ミソラ :
「───!」

SYSTEM :
 砂嵐のようなひどいノイズが一瞬だけ通過し、それから照明や機器の類が激しく明滅した。

 その明滅した電子機器、特にオーヴァードの手掛けたものでないなら…。
 数秒の激しい断末魔のような煌びやかさと引き換えに過負荷で電線が焼け焦げ、あるいは爆ぜるような音が小気味よく聞こえる。

SYSTEM :
 激しいR因子に基づいた放電現象。
 病院のどこか───そう呼ぶにはひどく遠く、だが確実に近い場所で、数秒以上、十秒未満。
 空間そのものに浸透し、破壊し、表層を駆け抜けていく亜光速のインパルス。

“紅玉” :
 ショート
「過負荷…! ならこれが!」

SYSTEM :
 世界各地で発生する電子機器の暴走事故…。
 のみならず、各地の発電所の不可解な停止に過負荷を基とする『停電』。

 それか、あるいは、それにかこつけた騒ぎを起こすテロリスト集団。
 どちらとて、状況には当て嵌まる。

SYSTEM :
 ここまで見える範囲が無人で、ほぼ人の気配がないことはある種の幸いでもあった。
 二次被害が想像し辛いからだ。

 しかし嘘のように伝播し、発生源が“近い”だけで何処と知れぬまま消えていくソレは…明確な異常の兆しだった。

"礎石" :
 可視化された電荷が駆け抜ける──『暴走事故』とラベリングされた事象が、現実に発生している。
 ネイムレスの現れる予兆とも取れる、破壊の兆しだ。

"礎石" :
「よりにもよって、だな……。生命維持装置に繋がれた患者がいないことを祈るのみだ」

"礎石" :
 スパークの瞬間に破裂した照明が、硝子の雨となって降りかかった。”礎石”は手近な場所にいた相手の頭を守り、腕をふるって破片を払い除ける。

シャラ :
「──ン……」

シャラ :
「ッだ今のキモい感触! 触られてね~のにモヤモヤするわ!」

シャラ :
「"電子の妖精"って呼ばれるカンジのやんちゃじゃね~だろこれ! 当たりなのはいいけど、とりま源っぽいとこ探すか!?」

"礎石" :
「”サイバースプライト”? 原因に心当たりがあるのか」

 首を傾げる──疑問のしぐさ。保証書のないお墨付きの端末を検め、この過負荷に耐えられたのかチェックする。

"礎石" :
「……捜索に同意する!」

シャラ :
 ワカンネ
「不明! でもこゆの"妖精の気まぐれ"って呼ぶってきーたぞ!」

SYSTEM :
 まず、“万能工具”のモルフェウス・シンドロームが手掛けた保証は主に耐久性の話である。

 構造を絞ったがためか、彼自身の拘りから来るものなのか。他の電子機器が9割9分ご覧の有様だという前提に対して無事だ。
 その放電現象が収まる頃には、機能も復旧するだろうか。

“紅玉” :
「その“やんちゃ”の呼び方は問い質したい」

“紅玉” :
「ただ、それ以上に…潜伏の真偽がどうであれ、空振りではないみたい」

SYSTEM :
 張り巡らせた血のワイアの微かな違和感───そこにあるのにそこにないような矛盾───を置いて、電流が収まりを見せる。

シャラ :
「……ンン~?」

ミソラ :
「どしたの、奥歯に何か挟まった」

ミソラ :
       ここ
「………それとも建物の話?」

シャラ :
「どっちもちげ~んだけどよ、ア~……」

シャラ :
「ワイヤの感覚がフニャついてんだよな。なんつーの? うまく言えんけど」

シャラ :
「うまそ~な肉のニオイはしてんのに、皿の上にモノホンの肉はなさそーな感じ」

ミソラ :
  イッキュウサン
「絵に描いた餅の話してる?」

ミソラ :
「デジタル…錯覚…でもないな。
 よくわかんないけど頭の片隅に置いとくとして、だよ」

SYSTEM :
 そのころ電子の妖精についてUGN側の認識(厳密にはその重要度)と、こちら側の認識に齟齬があると踏んだ彼女/ミソラが一度送ってきたアイコンタクトは「止めないとノーガードで行く」だった。

"礎石" :
 手を振って止める。いい警官と悪い警官を演じるのは理に適っているが、相手は尋問対象ではない。

"礎石" :
「…… ……」

 未共有の情報を検討する。たんなる出稼ぎ労働者ではなく、目的を持った同行者である点。

"礎石" :
 かまわない、と肯き。もたらされるかもしれない不利益に対する危惧は、付加された情報であって事実ではない。そして、事実でなければ採用に値しない。

"礎石" :
「戻って確かめる必要はないんだな? では捜索に移ろう」

 ──結論、自分の目で見るほうが早い。

“紅玉” :
「………」

SYSTEM :
 こくり、と頷く姿勢。

シャラ :
「いらんと思う。
『ワイヤになんか引っかかった』んじゃねくて『ワイヤのかかりかたがヘン』なんだよ。
 点でなんか起こったつーより、さっきのヤツきっかけでこの空間そのものに干渉されたって感覚な」

シャラ :
「も~あっちさんの腹ン中かもしれんから気ィつけろぐらい」

シャラ :
ミソラのアイコンタクトにはかるーく目線だけで頷いておく。情報の感じが違うのは気になっけど、掘り下げてる間にメンドーが加速しそう。

"礎石" :
「留意する」

“紅玉” :
「…ん。収まり次第連絡は取るつもりだけど」

“紅玉” :
「空間に干渉…オルクス? それとも別のやり口?
 どっちにせよ、繋がるかどうか試しながら待ってる時間はなさそう」

SYSTEM :
 妖精の気まぐれが事態を招いたのか、雷人ひいては“刻知らず”の仕業か。
 どちらとて、ここがいま渦中であることは紛れもない事実だった。

SYSTEM :
            ・・
 程なくして、間取り図にない離れの病棟を見つけるまでの間も、見つけた後も。
 あなたたちは警戒を新たに前進を再開した。

SYSTEM :
 道行く限りではまだ、病室に取り残された患者も、あるいは、“礎石”の懸念を真実とする残酷な痕跡も見つからなかった。
 それは幸いと呼んでいいのかは分からなかったし、通信障害の状態は状況をより複雑なものとしていたが…。

SYSTEM :
    ・・・・
 妖精の気まぐれは、確実に因果の糸を引っ張ってくることは確実だった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 停電の復旧目途の立たない中、目立った襲撃の気配もないままに見つけた病棟。
 表向きの病院、最初に訪れた病棟から聊かに離れた先にあるこの場所は、建前上、長期入院を前提とした患者用の病棟の先であるようだった。

SYSTEM :
 そこに人の気配は前にも増して存在しなかったが。
 先ほどまでの場所とは違う。

 診療記録を保管するカルテ室を含めて、こちらはまだ使用の跡がある。
 この病院の用途が、病院としてではなく、懸念や疑惑の根拠として(つまりテロリストの拠点や、何らかのラボ代わりとして)考えるなら…。おそらく“ここ”が中心点だった。

ミソラ :
「…つまるところ、本当に慌てての引き払いだったかな」

ミソラ :
「病院丸ごととは贅沢な話だ。
 私だって大きめのソファ独り占めしたい」

シャラ :
「ンだな。つか、資料もいくらか持ってけてないヤツありそー」

"礎石" :
「UGNが運営する病院も珍しくはない。長年の友人が同じことをしない道理はないな」

"礎石" :
「夜逃げ跡の家探しか……。本命は残っていないだろうが、手掛かりにはなる」

シャラ :
「ケーサツっぽ。ウケんな」

シャラ :
イヤ警察みてーなもんか

“紅玉” :
「適材適所。こっちの警察は…」

“紅玉” :
「やる気あるのかないのかだし。
 わたしが知らないだけでやる気があっても、折り合い悪いから」

ミソラ :
「では代行経験分はお任せしよう、先輩。闇バイトくんとちゃんが御供するよ」

シャラ :
イエーイ

"礎石" :
「上から仕事を取り上げて、追い出すのが俺たちだからな」

 ドラマの比喩を引っ込めて、言い換える。

「ルールに従わない縄張り争いの相手だ。良い顔はされない」

"礎石" :
         カナダ
「先輩風はあいにく明後日向きだ。いくらか向いてる男は置いてきた」

"礎石" :
「資料があれば軽く目を通して、情報媒体やサンプルがあれば回収。危険物を見つけた場合、すぐに報告してくれ」

"礎石" :
「地道に手早くがんばろう。はい、開始」

シャラ :
「ハーイ、センセー」

ミソラ :
「よろしくお願いしまーす」

“紅玉” :
「なんで掃除前みたいに」

"礎石" :
「似たようなものだ」

“紅玉” :
「そうかもだけど気楽な…」

“紅玉” :
「…いや平常心の話か。ならいい。やろ」 

シャラ :
……。ミソラに近づく。

ミソラ :
どったの。

シャラ :
「カル子ってよ」

シャラ :
「アレだよな 毛逆立てたネコ」

シャラ :
「イヤネコじゃねーな 警戒してるっすって感じのイヌ」

ミソラ :
「うーーーん…」

シャラ :
こんぐらいの(手で小型犬サイズをつくる)

ミソラ :
「ネコではないね、確かに」

シャラ :
「通りがかった人間にキャンキャン吠えてるヤツ」

“紅玉” :
(やや遠くから“なに?”と言いたげに向けられている視線)

ミソラ :
「吠える仕草は基本飼い主とか同族を守るためのものだったりもするんだ。群れだと特に。
 結果的にってタイプだろうけど、悪いコじゃなさそう」

ミソラ :
「で、急にどうしたの。なつき度が上がらない現実の話?
 シャラ、モテそうなのにモテないもんね」

シャラ :
「っせ~~~~!!!!!ちっげ~~~~~わ!!!!!!オレだってなァオレだってなァ」

シャラ :
……。

ミソラ :
フ。

シャラ :
違うもん!!!!

ミソラ :
「悲しいね 心の痛みは鎧では守れないんだ」

ミソラ :
「ところでサボり続けてると委員長の視線が強くなるよ ホラ」

“紅玉” :
 

“紅玉” :
(推定”委員長”が“先生”を一瞥した。たまに向けられる視線で何かを察しているようだ)

"礎石" :
彼らがいつも通りに過ごせているなら何よりだ

"礎石" :
十分なパフォーマンスを期待する

シャラ :
ガンバリマース(超笑顔)

“紅玉” :
…じゃ、いつも通りに免じて不問にする

SYSTEM :
 ………そうして粛々と和気藹々の反復横跳びのち、捜索が開始された。

SYSTEM :
 コンピューターのほぼ全てが機能を停止しているのと、(初手で平然と机の引き出しを開け私物をチェックした約1名でさえ)好き好んで霊安室を最初に当たることはなかったため、そちらは割愛する。
 
 また、当然のように資料は虫食い状態だった。保存状態の話ではなく、記録番号と年月が最新を除いて飛び飛びになっているあたり…。
 重要ではないもの、あるいは未記録のものがそのままになっている、というわけだ。

SYSTEM :
 紙の資料として残る、カルテに記載された患者情報と、医療用の薬品保管庫。軽くさらったのはこのあたり。

SYSTEM :
 結論から語るなら、この病院全体がではなく、そうした用途で使われているのはごく一部。この病棟だけだ。
 出資者につながる情報だけは徹底して隠蔽されているものの、どうもここについては、その人物の影響が強かったらしい。

 では、概ねまっとうな病院の形を取っておきながら、ここがどういう意味を持っていたのか、というと…。

SYSTEM :
 彼らは献体であった。
 レネゲイドを用いた、何らかの。

 病棟のうち、ここにいたもの。
 何らかの理屈で重病と認定され、この病棟に移動された、もとは違う病気だった患者も含めて。

SYSTEM :
 適性を認め、その上で何かの用途に用いられ………同時にきれいに全員バツ印がつく程度の、見込みのないモルモットであった。

 概ね病院として機能しておきながらも、この区画だけが別だ。
 治る見込みのないものを用いたのか、そもそも治る治らない関係ナシに“ソレ”をしたのかまでは推し量れないが…。

"礎石" :
 虫食いのデータから汲み取れる情報は、そう多くはない。だが名さえ無かった男と”礎石”、どちらの記憶にも覚えのある光景だった。

"礎石" :
「…… ……」

 だが、書類を取り扱う彼の手が怒りに震えたり、薬品のラベルを確認したことで悪夢が呼び覚まされたりもしなかった。

 仮面越しの一瞥。”紅玉”の様子を見、"礎石"は切り出した。

"礎石" :
「献体の選定基準を知りたい。死んでも疑われない患者を選んだのか、その程度に重症だと診断していたのか」

 もし適性を見出されたのが先なら、入院の筋書きまで作り込まれていたことになる。
 目的か、それを実現するための仮説に基づいて。
 バツ印をつけられた全員には果たせなかった『何か』を知る必要がある。

"礎石" :
「正体不明のMr出資者についてもな。ただの金蔓ではないだろう。出資者の意向で現場が動いているなら、相応に重要人物だ。金の動きから追えればいいが……」

 オーヴァードにとって書面上の偽装に知識や経験は必要ない。親切な魔法使いが杖をひと振りすれば、”礎石”でさえ立ちどころにパームビーチのセレブに早変わりだ。

“紅玉” :
「………、」

“紅玉” :
「………ん。ちょっと待って」

SYSTEM :
 あなたが質疑応答のはじめを切り出すまで、彼女の視点は同じところを向いていた。
 存じている限り、彼女の視点はきわめてミクロだ。これ以上ないほど全体主義に向かないし、目をつむる行動を是としない。

 自分の意志で命を終えられなかった不運な被害者の集まりは、見捨てられたその他大勢と変わらない。
 だから、数秒の剣呑さを齎したものは、偏に感情の乗らない無機質なデータ的表記に片づけられた故人と、それを是しとした者に対する突発的な感情なのだろう。

SYSTEM :
 無論同じではない。類似性の一つで同情など、易い感情の興りだ。

 ただ、だからと言って…あなたのそれは冷徹とイコールでも、そうした合理と結びついたわけでもない。
 あるいは、その権利を持つ人間がいるとして、それはアラスカの奥深くに、いまもか細い繋がりを残したまま置き去りにしてきた誰かだ。

“紅玉” :
「…これといって共通項はない。と、思う。
 例えば………この頁」

“紅玉” :
「血縁関係に先立たれた人。死んだときに覚えてくれるだれかもいない。
 そうかと思えば…見て。こっちは年頃のコ。忘れられるはずがない」 

“紅玉” :
「………だから、あまり、言いたくないけど…」

SYSTEM :
 歯抜けの記録でこの程度の人数がいるとして、文字通り“たまたまここに来たものから、全体として怪しまれない程度に見境なく”だったのではないか、という話。

 実際、病棟とはいうが、これだけの離れで、公的に記録されていない場所だ。
 使い道が真っ当な療養のためだったとは思えない。その用途がレネゲイドだというなら、共通項は最低限の適性程度のものだろう。

SYSTEM :
 何のために? その目的と発症させるシンドロームが、具体的にブラックドッグに偏っていることだけは確かだ。
 そこから先の情報は、急いで引き払うにあたって念入りに消したのか、そもそも露呈を恐れてここでは記載すらしていないか。

SYSTEM :
 そこから、首を横に振った“紅玉”の様子は、あなたの後半の問いに具体的回答を持ち合わせていないこと、その回答の根拠となる情報がない証だった。

“紅玉” :
「隠したい人なのは確かみたい。でも…」

“紅玉” :
「根の深いところにはいるはず」

SYSTEM :
 UGNのいずれを容疑者としないのは、基本そうは思いたくないからだ。
 あなたほどに人の善良さを尊重はしないが、かといって忌み嫌うわけでもない少女なりに。

シャラ :
「フーン」
 ペラペラと資料を当たりながら、特に感慨のなさそうな相槌。

シャラ :
 予想通りといえば予想通りだ。
『こちら側』でも、このタイプの胸糞な悪巧みは行われてる。それに対する驚きはそんなにない。
 気持ちよくはない話だけどな。ムカつくなと思うけど、そのぐらい。

シャラ :
「適性あるっぽい病人をかすめ取って、バレね〜ように実験に使ってたんだ。
 資料の感じじゃあ、消えやすい人間を選んでるよ〜、じゃなくってブラックドッグ適性のアルナシが基準か?
 復興しかけの街じゃあアシもつきにきーだろーし、うまくやんねココの人」

ミソラ :
「でも、シカゴの支部からはこれでアシがついたのかも。それに…」

ミソラ :
「…いや、杞憂すぎるかな。
 ここ、復興前からもチマチマやらかしてたみたいだからね。3年前のやらかし前後で勢いを増したのが事実だとしても」

"礎石" :
「うまくやっていたわりに、去り際は慌ただしげ。侵入者への備えもない。気がかりは多いな」

"礎石" :
「隠し病棟はまだ先があるな? 調査を続けよう」

シャラ :
「そ〜なんだよなァ」

シャラ :
「セキュリティがガバいっつ〜か、もしものこと考えてる体制とか思えね〜とか……」

シャラ :
オレならこれ、身内が警察とズブズブでやってたセン疑うわ。

シャラ :
それな
「承諾。とりま行くか、つぎつぎ」
 こんなコトゆっても確証ねーから言わんけど。

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
 軽く探し回った時点でも、見つかった情報はいくつかあった。

 この総合病院本来の目的が、一つ事…恐らくレネゲイド絡みの、特定の何かを狙って発現させるための臨床実験であったこと。
 ブラックドッグ・シンドロームだ。それに用があったと見ていいだろう。

SYSTEM :
 もう一つだけ特筆するなら見境の無さだ。
 ほぼ確実に臨床データは持ち去られたか処分されたかの二択だろうが、これが何か有意義な結果を残したかは定かでなかった。

SYSTEM :
 …うまくやっていた、という状況と去り際の姿勢は致命的に矛盾する。態とでないなら、よほどの想定外でもあったのか。
 万一の失点と書いて目ぼしい資料を探し、入った最後の部屋が、そこだった。

SYSTEM :
 唯一灯りが復旧していたその部屋は、もともとオーヴァードによる電子機器の掌握や過負荷を想定していた軍用設備と同じような見立てであったらしい。
 巧妙に、かつ遠方に。人の目に触れないような設計のもと作られていた、資料ないしサンプルの保管室であるようだった。

シャラ :
「オ。イーじゃん、ロコツになんかありそーな部屋」

シャラ :
「ネコババすんならこゆとこだよな。資料の残りカスにヒントありそーだしよ」

“紅玉” :
「言い方…」

“紅玉” :
「残りはここだけ…空振ったら、一旦後にするかどうか考えよう」

"礎石" :
「賛成だ。ただしサンプルに触れるときは慎重にな」

"礎石" :
呼んでくれたほうが助かる。検分はできないが

シャラ :
「ほーい。鍵とかかかってるトコあったら勝手に開けるけど、イーよな?」

SYSTEM :
 “紅玉”は沈黙。遠回しの肯定と共に、あなた/“礎石”に視線を向けた。

"礎石" :
(休憩室で同僚に見せられた飼い主とアイコンタクトを絶やさない小型犬の散歩動画を思い返す沈黙)

"礎石" :
「ああ。力加減ができないほど不器用ではないだろう?」

“紅玉” :
いま何かヘンなこと考えた

"礎石" :
考えてない

"礎石" :
仕事仕事

シャラ :
ぶしつけにカル子を指さす。

“紅玉” :
ごまかした…!

シャラ :
「人見知り?」

“紅玉” :
「………」

"礎石" :
「概ね。だが自分の意見は言える子だ」

"礎石" :
「むっとしていても何も言わなければ基本的に肯定なので、よろしくしてやってほしい」

シャラ :
あーね
「理解」

“紅玉” :
「言ってない」

“紅玉” :
「してない」

シャラ :
「してんじゃん」

シャラ :
自分の両目尻を指で持ち上げる。

シャラ :
「こ~なりながらスマさんのこと見てる」

“紅玉” :
「独りの任務じゃないから、確認取れる時は取ってるだけ」

“紅玉” :
「………だから、そうだけどそうじゃない」

ミソラ :
「ほら これは“答えたくない”の沈黙
 謝ってシャラ」

 副音声:勇に誇張表現で報告の刑だよ

シャラ :
「ええええ~! ゼッテこっからオモロくなるだろ」

"礎石" :
「やりすぎると一切口を利かなくなる。徹底抗戦の状態に持ち込むとあとが大変だ、切り上げてやってくれ」

"礎石" :
 ちなみにその状態を引き起こしたのは彼ではなく、彼の端末の製作者だった。

『万能工具』 :
スマラグド
“礎石ォ! オマエんとこの妹に籠城決められたんだけどォ!”

『万能工具』 :
”…え? オレが悪い? 待って? いったん話聞こ?”

SYSTEM :
 なまじコミュニケーション経験2年なだけはある。徹底抗戦の構えになると長い。
 当人は事実陳列罪で今にも“礎石”を訴える5秒前だったが、任務中という強固なブレーキに加えて、二重の防衛網が一線をケアしたようだった。

"礎石" :
 提訴の末に最高裁のノヴァまで持ち込まれたこともあったが、紅玉”は公私に厳しくあろうと努めている。任務中に外部協力者と断絶することはない。つまりエマージェンシーは回避された。

SYSTEM :
 余談だが、最高裁の意見は「きみが戸籍にこの年齢を希望するなら諍いの元を自分から形にしないことだ」だったこと、
 アフターフォローは丁寧だったが裁判の判決は若干容赦がなかったことを付け加えておく。

SYSTEM :
 …閑話休題。

SYSTEM :
 視界に入るラボの設備そのものは金がかかっており、保管室に並べてあるサンプルも少なくない。

 だがそれは、途方もないことを考えたか、胡乱で向こう見ずなことに挑んだか、ただビジョンがなかったか。
 そのあたり、まとめて次の言葉で括れる程度の結果の土台でしかなかった。

SYSTEM :
 まだ20年足らずのレネゲイドにおいては、往々にして良くあるコト。
 ・・ ・・・ ・・・・
 失敗、未完成、発展途上。

 …あなた/“礎石”の知る限り。石工たちが突き当たり、心と槌を折った怠惰の根源。
 おそらくはきっと同じものに突き当たったのだろうことが、資料を読むまでもなく、薄らと、その空気の名残だけで感じ取れた。

SYSTEM :
 だが、資料に手を付ける前のこと。
 いざ、誰かが歩みを進めようとした時のことだ。

SYSTEM :
 ほんの一瞬の、空気の揺らぎ。
 ぴし、と走った静電気のような違和感。

 だが…物音の発生源を感じ取るような聴覚の広さは、“礎石”にも、シャラにも、”紅玉“にもない。

SYSTEM :
 ただしきわめて幸いなことは、後者が几帳面であったこと。
 あなた/シャラの相棒が”それ”を持っていたことだった。

SYSTEM :
【Check!】

Effect:【ブラッドワイア】
Player:シャラ
Target:?????

[Add's]
・ワイアへの接触対象を確認。

SYSTEM :
 もはや一周回ってあまりにわざとらしく、
         ストレート
 人間業か定かでない剛速球が。
 あなたのワイアを1秒のうちに突っ切って、複数個所同時にブチ抜いた感触。

シャラ :
「──ンな……」

ミソラ :
「───二人ともッ!」

SYSTEM :
 今まで声を張り上げもしない呑気な少女のかたちが警告した“死”の警告が、
 あなたの認識通達と同時に接敵を示唆した。

SYSTEM :
 そしてもう一つ幸いなことがあったとすれば…。
 その二人だけだった場合、
 ・・・・
 気付いた、が最後の感覚だったやも知れないことだった。

“紅玉” :
「───”礎石”!」

"礎石" :
「────ああ」

SYSTEM :
 ブラム=ストーカーとサラマンダーの二重構造。
 あなたほど堅牢ではないが、あなたほど単一的な機能でない。汎用性ありきの量産個体。

 本人の性格のわりに熱量操作は冷気に傾く少女の、襲い掛かる物体の質量と着弾面積を同時に図った、自身の血中因子を媒介にした広域への凍結エフェクト。

SYSTEM :
 冷たく燃ゆる紅氷の防壁。
 “あなた”が凌ぎ切ることを前提にして、余波の一つもイリーガルの二人に通さず、あなたに万一の傷を与えないための陣形。

 そのコンマ数秒のちに“それ”が来た。

SYSTEM :
Uncontrollable・Legends
【 制御不能の一撃 】
Major:《CRモルフェウス/Lv2》《ストライクモード/Lv3》《ギガンティックモード/Lv1》《ライトウェイトモード/Lv5》《デトネイトモード/Lv5》

Act:11dx7+5
Dmg:5d+54(??+??)

[Add's]
・使用後に武器(インフィニティウェポン)を破壊する。
・「演出上」のため実際の計算を行わない。

SYSTEM :
 ・
 何が来たのか。
 受け止めた、かわした、応対した。

 どれでも構わないが、向き合えばすぐに分かる。

SYSTEM :
 第一印象は、装飾華美なアメリカンコミックが音速の壁を突き破り…。
 装飾で殴り掛かってきた、だ。

 過剰質量が超速度で突っ込み、発生させた因子の衝撃はもはやビッグ・バンであった。

"礎石" :
 直感──桁外れの質量と速度が、乗算で突っ込んできた。
 理解──それが何であるかを検めるのは、後で構わない。

"礎石" :
    ・
 長躯は何かを迎え撃つべく前へ。
 鉤爪のように曲げた指が大気を掻き、凍える温血を攫う。長い腕を指先から肩口にかけて覆う、紅くゆらめく即席の籠手。

 背後の心配はない。”礎石”の不足は”紅玉”が補い、”紅玉”の危険を”礎石”が負担する。
 今はただ、為すべきことを。果たすべき義務を。

"礎石" :
 暴威が迫る。刻一刻、音を超えて。迎撃の右ストレートが突き出されるのと、直撃/着弾は同時だった。

 無音の空白。のち──轟音。

"礎石" :
「……これは、これは」

 皮肉げに作られた声色に続いて、燃ゆる氷が砕け、剥がれ落ちた。破片は落ちきるよりも先に、中空でより強い熱に呑まれていく。

シャラ :
 千切れたワイアに反応して、白い意識が瞬時に浮上する。
 いきなりフルスロットルの警戒が頭を支配して体を動かす。ミソラの腕を引き防壁と"礎石"の後ろへ。
 意志に付随する命令は後から追いかけてきた。

『シャラ』 :
────無用
────適任者の防御性能に張れ

シャラ :
「ッどわ……」
 直後に襲った余波をギリギリで踏みとどまる。
 それだけで留まったのに驚いた。二人がかりの防御で守られた体には、今のところケガひとつない。

シャラ :
 ヤバ
「超常くねェかァーッ、これ! 兄妹いなかったら死んでンぞオレら!」

SYSTEM :
 シャラが無理やり引っ張ったその細腕の持ち主が息を呑む。
 無言の肯定と同時に、エンジェル・ハィロゥの強化された視覚が一瞬の交錯を見届けていた。

 ここが病院だと建前上知りながら、最短距離で根こそぎ踏み潰した到来。
 その余波が、施設に存在したRサンプルと資料のみならず……。
 値の張るはずの研究機材をイレギュラーごと破壊しようとする、一撃必殺の突破力。

SYSTEM :
 事実、その爆ぜるような暴力の波濤はラボの内部を根こそぎ破壊した。
 破壊してなお、まったく健在の個所がある。

 楽園の礎石から這い出る、オン/オフを持たない、スイッチ押しっぱなしで再生産される生存本能の塊。
 それが…紅く凝固した氷河の壁の内側で、その倍以上の耐久力と、もはや比較にもならない許容不能の生命力を以て、衝撃を抑え込んでいた。

SYSTEM :
 そこに留まったシャラの声、硝子の割れ砕ける音。それらに負けじ劣らじのよく響く声。

“闘争卿” :
「ほぉう…先客?」

“闘争卿” :
「それに手強い! 蹴り躓いた小石にしてはずいぶんと頑強そして、しなやか!」

SYSTEM :
 地の底から低くうなり、天高く昇るような男の声だった。
 目に見えるものすべてを拉げるほどに抱え込まねば……。
 ・・・
 欲する、という言葉に正直で行き続けなければ生きてゆけないサガをまとっていた。

SYSTEM :
 あるいは、この院内の奥底に隠れていた易い欲望の意味を…。
 もっとも…理解している、と。そう呼べるものが、そこに。
 あなた/“礎石”の目の前にいた。

ミソラ :
「…誰───!?」

“闘争卿” :
「当然…オレだッ!」

“闘争卿” :
「やはり何時の世も、アクシデントとは起こるもの。
 オーヴァードならば、そう! ここは適切に対応するとしよう!」

“闘争卿” :
「この────」

“闘争卿” :
 アルターコード
「“闘争卿”が…ひとつ問おう! 
 新時代を作るには、何が必要だと思うかね?」

“闘争卿” :
「そう………破壊だ!」

SYSTEM :
 全長2mと数十cm。ぎりぎり、人間として許される骨格と存在感。
 だが、そんなことよりも、その名前。

SYSTEM :
                                             ヴィラン
 男が朗々と語った名前は、合衆国とオーヴァード、二つに関連する全ての組織で語り継がれた有名な悪党だ。
   ・・
 彼は死亡が確認されているはずだった。

SYSTEM :
 あの───三年前のクレイジー・ウォー。
 当時の“紫電”が”ホワイト・スカイ”と呼ばれるテンペストの「キャプテン」の指揮のもと、”蒼い双星”をはじめとするチームとの連帯によって………。
 シカゴの被害抑制と、脅威となる二人のオーヴァードの撃破は成し遂げられていたはずだった。

SYSTEM :
 すなわち“グレート・アトラクター”と…。“闘争卿”のふたりは故人であり。

 ならばここにいるのは正しく。
    イマージュ
 タチの悪い悪夢のようでさえあった。

シャラ :
「──はあ!? "闘争卿"って……」

シャラ :
 シカゴがぶっ壊れた原因の半分、『こちら側』でダンのおっさんが殺したヤツじゃなかったか!?
 だからって出鱈目だ。フツーの人間はこんなダイナミック証拠隠滅はしない。
 ヒトの迷惑とか後先とか考えていない出力は、もーゼッテジャームだし。

シャラ :
 オレらにしても、スマさんとチワ子がいなかったら絶対死んでた。
 やっぱあっち戻ったらマジメに勉強しよ、ダメコン! 絶対する! そういう決意を握りながら、唇を噛み切る。

シャラ :
          オッタマゲ
「いきなり出てきてソレは驚愕!
 新時代迎える前に死ぬわソレはァ!」

"礎石" :
「……古い名だ。借り物にしては、よく着こなしている」

 暴力が具現した威容に、目を細める。真鍮の奥。無数の瞳が怪訝に皮膚を引きつらせた。

"礎石" :
「考えたくはないが、本物か。呆れた男だ。上司が世話になったよ」

"礎石" :
「……では、あえて答えるが」

 傾けた顎から、溜息。
 切り捨ててもかまわない余分を、あえて有事に持つ。断崖へ行き過ぎた者と対峙すればこそ、”礎石”は人間性の楔を手に打った。

「進化、そして繁殖だ」

"礎石" :
「……シャラ、よく気付いてくれた」

"礎石" :
「備える余地と借り物の護りがあって、どうにか凌いだ。不徳ですまないが二度はない」

 背後に視線の一つを投げる。少年をすり抜けて、その外周へ。
 熱波に巻かれ、今なお沸騰する金属の残骸。炭化した諸々。痕跡もなく蒸発した何某。
                        ・・・・
 率直に。軍仕様でなければ、足場どころか建物ごといかれていただろう。

シャラ :
「備えあればウレシーなだなっ、オレら気付いても死ぬから助かったわ!
 後はも~リキでなんとかすんべ!」

"礎石" :
「ああ。完璧なプランだな」

"礎石" :
「実現するだけでいい」

“闘争卿” :
「ほぉう…! さてどの顔だったかな?
 若造か、女か、はたまたロートルか!?」

“闘争卿” :
「だが消去法で考えるに…。立派になったらしい!
 使われる立場が手練の部下を二人も拵えたわけだ!

 リベンジのファーストラウンドを代わってやってくれるというなら、それもいいなあ胸が躍るッ!」

“闘争卿” :
「しかしその言葉に、前者は同意するが後者は頂けない! 微温い!
      ・・
 繁殖の次は淘汰だ! あえての理由が出来たな!?」

SYSTEM :
 吠え猛るような哄笑は、ぎらぎらと照り付ける太陽に似ている。
 干ばつの大地を焼き尽くす炎。
 見境もお構いもなく、欲して望む姿勢のまま、掠め取る傲岸さ。

 爆ぜるような衝撃は可視される炎とはまた別のものだ。

ミソラ :
「…これが“闘争卿”。
 生きてるはずがない、その名前は───」

“闘争卿” :
「御存知のようなら結構!
 吹いても飛ばずの小僧小娘よ繰り返す!
                 オレ
 そうだ! シカゴで無様に果てた”闘争卿”だよ!」

“闘争卿” :
「不便なるオーヴァードのしがらみを超越し、レネゲイドを征服する男!
       ハーフタイム
 その伝説の、長い休憩の時間が終わったということだ!」

SYSTEM :
 じぶん
 “闘争卿”は不滅だ、と。
 ぐっと拳を持ち上げて力説する男の仕草は、あからさまが過ぎるほどにジャームだった。

SYSTEM :
 世界を変えることを望んだ、オーヴァード絡みの戦史上最大の”無意味な戦い”の当事者。
 もっとも易く残酷な破壊を引き起こした男という扱いも、むべなるかな。

 出鱈目な登場といい、己の性能を誇示するような立ち振る舞いに遠慮というものはない。
 この思考回路と性能が件の情報と変わらず仕舞いなら、“これ”がアメリカに根付いたFHセルの大半を、そしてシカゴ支部を踏み荒らした片割れである、ということだった。

SYSTEM :
 そして当然、そういう性格ならば…。
 逃がす、という振る舞いを気紛れでもするはずがない。

“紅玉” :
「単純…でもそれしかない。
 このタイプに”逃がす”はない」

“闘争卿” :
「ほう、何とかする…何とかと来たか!
 いいぞ、ノープランかつストレート! 男の矜持というやつはやはりそうでなくては!」

シャラ :
 生き返ったってコトか? 本当に?
 複製体ってのは珍しいことだけどありえない話じゃない。
 UGNを裏切った“運命の導き手”なんかは本人含めて6人の複製体がいたし、ジャームに限定すれば蘇生や量産をウリにしたセルもある。
 要は、『あっち側』の話をすればメジャーな話だってこと。
 だけどそれはレネゲイドが濫用される『あちら側』の話で、ついでに言うとコピーした連中がコピー元と出力が同じとは限らない。

シャラ :
 問題はこいつが『クレイジー・ウォー』なんてゆって街一つをオシャカにしたやつとまんま同じ力を持ってるか。
 それから、こいつがほかにもいる可能性があるのか。
 さらに言えば、このレベルのやつを作り出せる勢力がUGNでもFHでも、ストのいないテンペストでもなく『刻知らず』かどうかだ。

シャラ :
……弱いかどうかはかなりキビしいけどな! 周りこんなだぞ!

シャラ :
「ハーフタイムねェ……」

シャラ :
「誰かに頭下げてお願いして起こしてもらったとかじゃねェのかよ、オッサン!
 復活怪人の一発目がボロ負けじゃあ恥ずいだろ、目的果たしたらはよ帰れっつゥの!」

“闘争卿” :
「目的…目的か。ああ、そうだった。
 このオレの新たな闘争の介助人を迎えに来るつもりだったんだよ」

“闘争卿” :
「そこで到着してみればコレだ!
 いやはや、やはり自分の脚は使うものだなァ小僧!」

“闘争卿” :
「故に…その機嫌の良い闘争日和に二つ教えてやる、よおく覚えておけよ!」

“闘争卿” :
     アルターコード
「ひとつ! “闘争卿”は………不滅だ!」

“闘争卿” :
「そしてふたつ! 男が負けた後のことなど考えると思うかね!?」

SYSTEM :
 それがジャーム特有の、現実を捻じ曲げる歪んだ情念なのか…。
 あるいはただの事実や打算を伴う、性能の誇示であったのか。

“闘争卿” :
「そこを踏まえてみればな、負けなど遠回りの整地と石積みに過ぎんのだ!
 オレはこうしてここに立っている。己の欲望の行くままに!」

“闘争卿” :
「しかし、そう…それを考えるとだ…。
 目の前の敵に背を向け、散らかった部屋で出迎えるというのは…負け以下の行いと思わんか!?」 

SYSTEM :
 その身勝手さは確かに伝聞そのものだった。そして、予見している行動も。
 そこまでは良しとしよう。理解出来ずとも目の前に起きた出来事だ。

SYSTEM :
 だが、彼は果たしてどのような手段で…病院に到達し。
 そもそも、彼が到達するまでの間に何があったのか?

"礎石" :
「”お帰りはあちらです”が通じる相手ではなくて残念だ。尤も、みすみす逃す気はないが」

 そして、それは相手方にとっても同じことだ。”紅玉”と彼の見解は一致している。

"礎石" :
「今夜の仕事はネイムレスの摘発だが、ジャーム討滅は通常業務の一環だ。介助人とやらも放ってはおけないな」

"礎石" :
「あなたの持論は偏向しているため同意しかねる。おかげで情報がパァだ」

 誰が散らかしたと思っている、と率直なクレーム。もっと言えば、散らかるまでもなく消し飛んだのが実情だ。

"礎石" :
 死んだはずの男がここに在ることは、いい。それは事実だ。処理すべき事柄として”礎石”は苦もなく受け入れる。

(──不滅か)

 ただの誇示、とは言い難い。この大気を煮立たせる欲望の熾り。排気によって不滅性が具象した可能性は、十分に考えられる。

“闘争卿” :
「なかなかの闘争心! いやッ、仕事意識か!」

“闘争卿” :
「そこのところはどうも似ているなァ。
 類は友を呼ぶとはいうが、あの日オレに立ち塞がった連中の大半も、同じような仕事意識があった…。

 そしてその時も言った。偏向けっこう! 世界には新しい規範が必要なのだ」

“闘争卿” :
「偉大なるアルフレッド・J・コードウェル…。
       おう
 新しき時代の規範になりかけた先駆者は…。

 今のようなつまらんことのために、
 レネゲイドを見つけたのではないからなァ!」

SYSTEM :
 不滅の闘争者の論理は偏向している。行動のパターンも同様に。
 
 そこまで直線的な傲れる精神が、理性の壁を燃やし尽くした排気熱…それが不滅性を生んだケースは少なくなかった。
 そして、それには必ず解除方法がある。

SYSTEM :
 幸いなのは、衝突したあなたの手応えから見て…。
 これがまったく攻撃の通用しないタイプではない、ということだ。

"礎石" :
「……ではリフレインといこう。UGNは二度立ち塞がり、あなたはいつもの仕事として処理される」

 始点から逸れつつある己が組織を、そうと認識しながら、存在意義を果たし続けた人物を知っている。

 そして何の因果か、”礎石”に順番が回ってきた。

"礎石" :
「シャラ」

"礎石" :
「あれは傷がつかない相手ではない。やってくれるな」

 勝ち目のあるなしで言えば、分が良いとは言えまい。万一ここで協力者が逃げ出すようであれば、追われる背中を守るだけだ。

シャラ :
「……はあ~」

シャラ :
「わーったよ、付き合う、付き合いますって」

"礎石" :
「いい返事だ。労働万歳」にっこり。できるのだ、この仮面顔でも。

シャラ :
ウワ~ッスッゲいい笑顔!

シャラ :
「シャカイジンって大変だなァマジで!
 ヤだわ~、こんなので人生懸けんの!」

ミソラ :
「大人になるって悲しいことなんだ」

"礎石" :
「覚えておくといい。人生の六割は労働だよ」

ミソラ :
「だって。7:3じゃないのが不平等だね」

ミソラ :
「…あ。無事に帰ったらもっかいコーヒーよろしく。
 漁船が港に帰る分は付き合う約束だからね」

シャラ :
「コーヒー一杯でチャラなる苦しみじゃねーだろゼッテェ!
 オレ様アレがいい!」

"礎石" :
「聞こう」

シャラ :
「ふらぺちーの!」

"礎石" :
「追いクリームも許可しよう」

シャラ :
「マジで~~~~~~~~~~~!?!?!!!?!?!?!?」

シャラ :
「ィヤッタ~~~~~ッッッッ人生懸けさせていただきまァ~~~~~す!!!!!!」

"礎石" :
十代が数ドルで人生を擲とうとしている

"礎石" :
これが現代社会

“紅玉” :
ぜったいに違う…

シャラ :
スゲェ! 興奮してきた! あの夢みたいな飲みもん飲ませてくれるらしーぞ!!

ミソラ :
見ての通り私とシャラは貧乏苦学生
いや このカテゴリに自分を置くのなんだか悲しくなってくるな

"礎石" :
……

"礎石" :
カカオを収穫する児童労働者の間違いではないか

シャラ :
ちっげーよ!ち…ちょっと世間知らずなだけだもん!

ミソラ :
ちょっとかな

SYSTEM :
 …2mと数十cmの、人間離れした圧力が。
 膨張し、解放の時を待っている。

“闘争卿” :
「勝利前に祝杯の相談かね!
 なるほど、いいルーティーンだ!」

“闘争卿” :
「しかし………。
 オレの壁はそんなに薄くはないぞ、よって…」

“闘争卿” :
「今のは叶わぬ夢だ!

 そしてフルフェイスの男よ、おまえの屍を以て…。
 リフレインではなくリスタートを切る!」

“闘争卿” :
「その結果で、オレはまたひとつ手に入れるのだ!」

SYSTEM :
 喝采にも陶酔にも聞こえる言葉。
 破壊的な衝動、恩恵のない太陽。

 純粋な暴力の形をエンジンにした男のそれは対話ではない。
 ただ、求めるという形が服を着て歩いているものの排気音。

SYSTEM :
 彼は立派なジャームだ。
 そう見える。

 衝動に基づいて行動を起こし、
 欲求を既存概念より優先し捻じ曲げる。
 刻も道理も知らない怪物の一匹のように。

ミソラ :
「(…けど…)」

SYSTEM :
 だがその衝動が己の傲慢さを隠しもしないものなのか、あるいは闘争を是しとするものなのか。
(仮にも)ノイマンが、その衝動のうち前者だった時の微かな違和感について、答え合わせを行う前に、事態は動いた。

 厳密には、事態の中心が動き出した。

“闘争卿” :


「──────行くぞォッ!!」

SYSTEM :
 それほど複雑ではなかったはずの任務は、一度複雑化してから、このひと時のみきわめてシンプルな形に回帰した。

 生き残る、だ。

SYSTEM :
 あなたの巡りあわせに携わった少年のかたちをした大人は、かつてこれと相見えたという。
 仕留め損ねておいて、その情報を誇示するような性格でもなかった。
         ・
 だが、蘇った男は誰を迎えに来たのか?

SYSTEM :
 まず、その答えが理解るまでには、少しのラグがあった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 時を少し遡り…。
 シカゴ都市圏。

SYSTEM :
 ゼノスにとっては伏せ札であり、同時に“万一”を想定していたマキナが。
 杞憂に終わってもすぐ足を運べるように、病院からそう離れていない程度の都市部に待機していた時のことだ。

SYSTEM :
サイバースプライト
 ”電子の妖精”は、訪れる先の電子機器を、何らかの原因で停止させるケースがある。
 そして同時に、それを追う”刻知らず”もまた………あるいは前者など比較にならない頻度で“それ”を引き起こしている。

SYSTEM :
 あなたの場合、追跡はそう難しいことではなかった。
 こと21世紀ともなれば、情報化社会はいったん、ひとつの興隆を極める。
 その電子の流れにおける異常をつかみ取ることは、決して簡単ではないが難しいことでもない。

SYSTEM :
 …噂のシカゴ支部は日夜この市街で、潜入するFHの摘発や警戒に当たっている、というが。
 今日が珍しくそうなのか、たまたま居合わせた場所が”そう”なだけか。状況の推移を見守る今現在では、そういう気配もないようだった。

マキナ :
「(向こうのUGNに動きらしい動きがないね。そろそろコトが起こってもよさそうな時期だけど……)」
 
 そのころ私といえば、喫茶店のテラスでノートPCを弄りながら、状況を探っていた。この年代この年頃のそれらしい服装をウェンディに見繕ってもらい、テクスチャーを変更。傍目からは学生のそれに見えることだろう……
 ……見えるはずなんだけど。なんかちょっと浮いてる感じ。ウェンディめ、さてはまた微妙に外したチョイスの服装用意してくれたな?

マキナ :
 先に向かったシャラ達との通信が途切れるころには、電子の妖精との接触も始まるだろう。こっちの仕事はないに越したことはないケド……

SYSTEM :
 ところであなたが知っている限り、ウェンディ唯一無二の弱点がある。
 それも、ことある毎に義手をロマン寄りに改造し自慢したがる船長と同レベルの矯正不能の欠点が。それこそが…。

『ウェンディ』 :
〈おかしいですね…。
        ・・
 確かに今世紀の学生に見えるように、資料から作成したんですが〉

SYSTEM :
 その欠点とは、なぜか。本人の間の悪さとピンポイントでズレる下調べによって、
 現地向けの服装が「無理はないが浮く」程度のチョイスになるということだった。

 思うにそのコーディネートは確かに21世紀だが、“アメリカの”21世紀ではなかったということだろう。

『ウェンディ』 :
〈今のところは都市機能に影響もないようですけど…〉

SYSTEM :
 イリーガルの二人を通じて、もしくはUGNのサポートチームから傍受する情報で得られる病院の外部に関しても、特段気にかかる内容はない。
 あなたしか把握していない第三の男は大馬鹿者だが、さすがに近代の都市で堂々と飛び込んでくるタイプでもない。

SYSTEM :
 発生の兆しも、少なくともシカゴやその近隣都市ではまだない。いざ始まりの撃鉄に指をかけている程度の空気感だ。

マキナ :
「学生ねえ」
 なんだろう、多分にジャパニメーションってやつの影響がちらつくんだけど気のせい?

マキナ :
 まあ、いいけど。それなりに可愛いから、今回はよしとする。
 問題はそっちじゃない、仕事仕事。
 ちなみに映像は時空通信機をノートPCにマウントして映し、ビデオ通話として周囲に偽装を施している。一応衆目に晒されてるとはいえ、目立つことはないでしょ。

「嵐の前の静けさってヤツ? 経験上、却って不気味だね。
 結局まだ"蓋然を閉ざす者"の居所も掴めずだし……」

マキナ :
「"刻知らず"も、一応FHだって聞くけどジャームを兵器として使ってる当たりロクな奴らじゃないし。ああいうのは堪え性がないもんだけど、その割にえらくお利巧に機を待ってる。
 今は先遣隊の様子を伺うしかないけど……」

 さて今はどんな状況だったか。キーを走らせ、UGN側の情報を傍受して確認してみる。

SYSTEM :
 そう、おそらくは日本。序に言うならすこし別のイメージに沿った日本。
 不幸中の幸いなのは、ウェンディは微妙に外すが完全には外さない点だ。

SYSTEM :
 …閑話休題。

SYSTEM :
 少し浮いた空気はあくまで外面の話であって、内面や行動に向けられたものではなかった。
 病院に足を踏み入れた先遣隊の回線を傍受し情報を取得する形で状況を俯瞰する中、呟く内容は、嵐を持ち込んでくるだろうものの話だ。

『ウェンディ』 :
〈ええ。彼、自分の中で必要だと思ったこと以外はしない…。
  スプリンター
 短距離走者以外の適性のない方だ、と。
        ログ
 船長は過去の航海図を見て判断していましたが〉

SYSTEM :
 その男が極東地方に足を踏み入れた理由は分からずじまいだ。探し物があったのか、あるいは”そこ”にいると何かの形でアタリでもつけたのか。

 そしてもう片方は………。
 首尾よく行くなら、潜伏先と目される病院にいて然るものだが。

SYSTEM :
 傍受していた通信情報。
 先遣チームのうち一つ。シャラたちのものではないほうについて、裏口を慎重に進む気配。
 他愛もない軽口の類はそうない。上と同じ程度に模範的だが、こちらは“熱心”の付加価値がつくようなチームだ。

 その一方で、そのシャラたちも今院内に入ったところのようだった。

SYSTEM :
 中から感じ取れる情報を一言で表すならば、病院として機能しているようには思えなかった。
 出迎えるつもりであちら側がオーヴァードを配置していたわけでもなく。
 取り残された民間人は彼らとそのカメラ等から取得できる情報の限りでは存在さえしない。

SYSTEM :
 ………やがて少しの時間が経過すると、砂嵐のようなひどいノイズが一瞬だけ通過。情報の窓口がほぼ一斉にブラックアウトする。

 侵入を気取られた、というわけではないだろう。強制シャットダウンの正体は概ねR因子が生み出す電流の過負荷だ。

SYSTEM :
 …その波長の変化が”電子の妖精”のサインと呼ぶには聊かに気まぐれと乱暴が過ぎるが、今のは決定的だった。

マキナ :
 傍受したカメラを、Youtubeでも見るようにモニターに映して閲覧。頬杖を突きながら眺めていたけど、どうにも屋内の様子が妙だ。

「何コレ。なんかやけに人少なくない?」

 パッと見、どうにも普通の病院とは思えない。完全なダミーってわけじゃなさそうだけど、それを隠れ蓑に一部の病棟を実験施設に変えてたっぽいな。

マキナ :
 そういえば初めて刻知らずと接敵した時はFHの息のかかった施設だった。それを考えれば、別に違和感は感じないけど……
 金の流れを追えば、共通点を洗い出せるかも。そう思ってカーソルを移動させたところで、事態は起きた。

「……来たね」

 傍聴していた複数のモニターが一斉にぷつんと途切れる。電子の妖精、或いは刻知らずの起こすEMFI攻撃……電流誘導による電子機器の自壊。
 雷でも落ちたような大規模の電子機器の不調は、間違いない。

マキナ :
「ウェンディ、どーやらこっちもそろそろ出番みたい。
 《プロンプター》、向こうの様子見に小型の調査用ドローン飛ばして。
 目立たないようにコッソリね」

 席を立ちつつ、服の袖で隠した水晶体にコマンドを入力。向こうの磁気嵐の中でどこまで飛ばせるかは分からないけど、飛ばすだけならタダだ。このぐらいなら幾らでも複製できるしね。

『ウェンディ』 :
〈みたいですね。
 込み入った状況になる前に潜り込んで確保し、状況を収束できるのが一番の理想ですが…〉

『ウェンディ』 :
〈次にいいのが…まだしも目的がこちらとあまり違わない人たちが確保していること。というところでしょうか。
 …電子の妖精がどんなコかは分かりませんし、イメージ以上のお転婆さんだった時は、うまいコンタクトの仕方を考えないといけませんけど〉

SYSTEM :
 その込み入った状況の当事者の一つが、穏便に事を終わらせてくれることはないだろう。
 それも承知の上のあなたが、調査用ドローンを飛ばし、首尾よく病院目掛けて飛翔する。

『ウェンディ』 :
〈状況はこちらでも逐一───〉

SYSTEM :
 ………だが。その時だった。

SYSTEM :
 あちらの押し間違えを疑う唐突さで、ウェンディとの通信が遮断されたのは。

SYSTEM :
 そしてすぐに気づく。通信の遮断は電気の異常ではない。
 それらしきものは先程来た。

 ここが、仮に…通り路だったとして。時空通信機の通信が遮断されるかは未知数。
 そもそも電子の妖精の悪戯が(もしくは先日に遭遇した刻知らずのような“やらかし”が)通り過ぎたのならば、いまシカゴ市内が平常稼働しているはずはなかった。

マキナ :
「……? ウェンディ?」

マキナ :
 何コレ、押し間違えた?
 時空通信機は厳密には電気通信じゃない。媒体が磁気の影響で誤作動を起こす可能性はあるものの、常に自分と接触し続けるパーツであるため最先端のシールドを備えている。基本的に妨害されるものじゃない。

マキナ :
 というか、これ単体を狙い撃ちするには接触でもしない限り周りに被害が出る。そうなってないあたり……何かイレギュラーが起きていることは間違いない。
 サイボーグは冷や汗なんてかかない。けど、やや緩んだ気が、急に引き締まっていくのを感じる。

SYSTEM :
 そもそも押し間違えだったなら…。
 彼女が慌てて再通信をかけるはず。

 あなた自身を狙い撃ちにするには、そもそもあなたに関する情報がこの時代にはなさすぎる。
 …唯一可能性のあるとしたらまさに“刻知らず”だが、彼らがそんなお礼参りを最優先にする陰湿さまで備えていたらもっと簡単にコトは済んだだろう。

SYSTEM :
 おかしなことが起きている。
 それはすぐに理解った。
            ・・・
 なにしろおかしなことの具体例が、すぐに起きたからだ。

* :
 Excuse me,Excuse me!
「すみません、ちょっとォ!
 注文間違ってるんですけど!」

* :
『はい! はい、申し訳ございません』

* :
「頼むよォ、あんた学生だからって”このくらいでいい”とか思ってない?
 ヒトに注文聞いて持ってくるだけのことで客不愉快にするなんて才能だよ才能」

SYSTEM :
 始まりは喫茶店の店内だった。
 学生のアルバイターらしき要領の悪いウェイトレスが、
 注文の聞き間違えの責任を恐らく誰ぞから押し付けられていたらしい。
 
 平謝りする若者と、怒りの矛先の趣旨がいつの間にか変わっている先輩店員。
 それだけならまだいい。良くはないが、ただの諍いの話で終わる。これで散らせるほど締めなおした気は安くないだろう。

* :
「…ねえ聞いてる? ちょっと」

* :
「なにを振りかぶっ、」

SYSTEM :
 例えばソレが。

* :
『はいッ、たった今…』

* :
『お持ちしましたぁぁぁぁあああ!』

SYSTEM :
 明らかに非オーヴァードではない振りかぶる速度とパワーで、
 その辺のトレーを凶器にして、ちょっとのストレスで犯罪行為のスイッチをアクセル全開で押し込まなかったら。

SYSTEM :
 いいや、それだけではない。
 シカゴ病院で起きた通信障害/不可解な通信遮断に、若干のラグを置いて…。

 その一件とほぼ同タイミングで、左を向いていたら勢いよく法定速度を無視したトラックが二人一組の男女に突撃し。
 右を向いていたら本当に挨拶気分でいきなり店頭商品を自分のバッグに突っ込む取り立てて特徴のないリーマンの姿が映り。

SYSTEM :
 そのあとにごくごく自然にワーディングなど起き始めなければ…。

 無視できる”平常”だった。

SYSTEM :
【Check!】
 
Effect:【??支?】【?言??】【??の?】
Player:?????
Target:シーン

[Add's]
・????? 

SYSTEM :
 ワーディングの対象者は見ればすぐに分かる。あなたが目じゃないくらいに浮いたファンシー&バイオレンスな発生源があちこちを走り回っているからだ。

 それがジャームでないことはなかっただろう。ジャームじゃなかったらいよいよ擁護の余地なき変質者だ。

SYSTEM :
 あちこちを跳ね回る暫定着ぐるみじみたジャーム。ワーディングの中でなぜか行動を起こす一般人。
 おそらくは時間をかけて追いつく別のワーディング。シカゴ支部のUGN。
      いつもどおり
 言ってしまえば非日常の始まりなのだが、その始まり方はあまりにも唐突で乱暴で、悪意の籠った状況だった。

マキナ :
「……、ちょいちょいちょい……
 いつからシカゴはゴッサムシティになっちゃったわけ?」

 相手もなしに軽口を叩くのは、ある意味では自分の中のマインドセットのようなものだ。隠し切れない当惑が声に出つつも、努めて冷静に状況把握!

マキナ :
 シカゴ支部は何してんの、さっさとワーディングを……

 ……いや違う、もう張ってある。張ったうえで、一般人が動いてる。
 まるで何かに充てられたみたいに、倫理観のブレーキがぶっ壊れた酔っ払いと、ファンシー着ぐるみジャームが躍るパニックホラーが広がっている!

マキナ :
「チッ……仕事増やさないでよ、今オフじゃないんだから」

 苛立ち半分にテクスチャーチェンジを解く。シカゴの連中で手に負える規模じゃなくなってるのは明らかだ。コイツぶちのめしたら精神汚染が解けるのかはわからないけど、やらないで向こうの現場に行くのは後味が悪い。

SYSTEM :
 跳ね回る暫定キュマイラ擬き。訂正、クマ擬き。
 見た目は同じ、理性も揃ってナシのくせにバリエーションだけは異様に豊かだ。

 一般人がまさか全員揃いも揃ってAWFというわけではない。
 彼らは思い思いの異常事態に対する対応(例えば現実逃避、死への恐怖、責任転嫁、自棄の攻撃)を以て状況に接触しており、その一部はあなたにも向いた。書くに値しない程度の、上記いずれかの対応があった。

* :
「キャホーーーー!」

* :
「ぎゃああああ~~~!」

SYSTEM :
 この場一つに限れば昏倒させるのは難しくない。
 それはどのような思考プロセスからか脈絡なく非行に走り、暴れまわるジャームとほぼ同じような見た目に変異し掛けた事の発端も含めて。

SYSTEM :
 しかし、なぜか駆け付けたUGNと、ジャームの戦闘に収まる気配はなく…。
 ワーディングがワーディングとして機能している素振りもない中、おそらく正常/浮いているあなたが、見てわかる一番おかしなことに気が付いた。 

SYSTEM :
 被害を食い止めて“シカゴの日常”を守るために、その主役から畏怖や悲喜交々の感情を受け、死に至るものさえいるUGNも。
 標的ではないが結果的に巻き添えを食らっている一般市民のほうも。
 好き放題にするジャームのほうも、本当に、なぜか、一人たりとも”していない”ことがある…。

SYSTEM :
 殺人、犯罪。トリガーを引いたそれらを異常事態と認識していて、そのための対応は全員適切だ。

 だというのに誰も通報/連絡しないからだ。

SYSTEM :
 事態の根源がこの場というよりは、
 もっと根の深いところにあること…。

 何より間違いないこととして…。

SYSTEM :
 …病院で起きている件の出来事とは完全に無関係な事実だけは、その共通項のなさと、刹那的な犯罪プロセスからすぐに分かる話だった。

マキナ :

《──此度の争乱には違和感があります。
 察するにこの騒動は、この場で増殖を続けるジャームを起点とする現象ではない可能性が高いです》

マキナ :
「え?」
 今まさに身を乗り出そうとする中、制止するように《プロンプター》の水晶体が語り掛ける。

マキナ :
《現れたジャームはあくまで因子感染によって生じた被害者であり、また感染拡大する彼らを制するだけでは事態の収拾がつかないと推察します。
 提案。片手間では根本治療が難しい事態です。
 既に現場で対処に当たっているUGNシカゴ支部員に任せ、現場への急行を推奨します》

マキナ :
            レ イ ヤ ー
《元々これらの事態はこの時間層で生じるべくして生じた事件なのやもしれません。であればなおのこと、我々の任務遂行には直接的な関係はありません。
 可能性は低いですが、病院の通信障害と関連している場合、そちらを優先することが間接的には事態の収束に繋がるでしょう》

マキナ :
「──バカ言わないで。
 いいから最短でこいつら処理出来るルート、出して。現場へ向かうのはその後」

マキナ :
 All right. My master
《承知しました。我が主》

マキナ :
 五指を開いて、掌に雷を纏う。こいつらに貴重なLiar Gunの弾を使うわけにはいかない。非殺傷設定でまとめてスタンを狙う……

 その段になってもう一つの違和感にも気付く。こいつら、こんな事態になってるのに、UGNの方は必死に抵抗を始めてるのに、何故かこいつら一番肝心なコトをしない。
 通信障害が起きている様子もないはずなのに、外部への応援連絡を行う通信が周囲で一つも発信されていないのだ。いや……しないのではなく、できない?

マキナ :
 試しにタッピング&オンエアでUGNとの通信を試みるよ。いける?

GM :
おや。ちょっと待ってね…。

GM :
その前にひとつ聞こうか…どこにかけた?

マキナ :
 シカゴ支部だね。適当に身分を偽って連絡を取らない理由を確認するつもりだから

GM :
OK。それなら…。

SYSTEM :
 当然の違和感と同時に試した行動。

 それが問題なく発信されるのを知覚した時点で、実際に誰が出るでもなく状況そのものに答えが付く。

SYSTEM :
              ・・・
 逆だ。できない、ではない。しない。
 その発想そのものが、シカゴにいる誰もから抜け落ちている。

 UGNからも、一般市民からも。あるいはここに潜伏しているのが真実だとして、FHの有象無象さえも。

SYSTEM :
 よほど巧妙かつ、一つや二つのシンドロームでは効かない迂遠で地味なやり口と言っていい。

 …では、実際に声を掛けてみたらどうなるか? 
 答えは通信先として指定した、しないに関わらず、態々出てきた相手の態度にあった。

“淘汰する者”アミル・トロイ :
〈おや。この型式の記録はないな。
 イリーガルサン? それとも拾ったエージェントかい?〉

“淘汰する者”アミル・トロイ :
〈まあいいや、手短に通達。
いつもの
 襲撃だ。各自立場に則って行動するよーに〉

マキナ :
『その許容範囲超えてんだけど。とっとと援軍寄こしなよ』

 適当に倒れてるエージェントの通信回線を間借りするつもりだったけど、この際面倒だ。それに、掛ける途中でだんだんわかってきた。

マキナ :
 普通なら連携する、というのが常識だから、できないのだろうと最初は踏んでいたけど。
 多分違う、そうじゃなくてしないんだ。自分の意志でそうしている、というか……純粋にその選択肢が抜け落ちている。
 素人ならパニックになって、そういうことも起こるだろう。訓練されていても虚を突かれれば、素早いはずの猫が車に轢かれたりするみたいに、判断を誤ることもある。
 けれどこれは、ここにいる全員がまるで正常な思考ができないようになっているように思えた。

マキナ :
『……怠惰の極みだね。ルーティンワークを回すだけ回して、それ以上はしたくないって?』

“淘汰する者”アミル・トロイ :
〈えー戦闘班の1班単位で1郡。必ず2人以上で行動。
 ワーディング発生現場に急行し、速やかにジャームを除去。余波からは一般市民の救助を最優先…〉

SYSTEM :
 かけた数秒で一瞬にして通信内容が食い違ったのは態となどではない。

 あなたはシカゴ支部の”どこ”にかけたのか…もしも支部長相手に直にかけたのであれば違和感もなかろうが、文字通り「適当につなげる」という認識でやった場合でも彼のもとに通信が来た。
 杜撰さの答えはこうだ。

“淘汰する者”アミル・トロイ :
     ・・・・・・・・・・・
〈それからこの状況でまだ繋いでる察しの悪い絶望的なヤツには、〉

SYSTEM :
         ・・・・
 あなたは数秒後の録音音声が
 何か致命的な発言を投下する危険だけを察知した。

SYSTEM :
【Check!】
 
Effect:【??支?】【流言飛語】【不安の霧】+その他
Player:?????
Target:シーン

[Add's]
・????? 

SYSTEM :
 その一言の続きは電波越しのソラリス・シンドロームとノイマン・シンドローム。

 なんのことはない。昨日と同じ今日を続ける模範生など良い皮肉だ。

SYSTEM :
 メカニズムも、動機も、具体的判断もわからないが、直感的に“切るべき”とあなたの本能か《プロンプター》の演算結果が訴える。

 ───なにしろUGNシカゴ支部と、本当に侵入した有象無象が付き合っているものを二文字で語るならば。
 ・・
 茶番だからだ。

マキナ :
 ……音声を繋ごうとしたものの、このパケットは違う。予め録音されていた音声を再生しているだけだ。これ以上何か話していても、時間の無駄。
 それどころかきっちり罠まで仕掛けてやがる。電気信号だけでも視覚・聴覚などを介して洗脳を掛ける手段はある。初手で掛けてこなかった辺りナメたヤツだけど……今ので確定だ。

「チッ」

 舌打ち交じりに通信を切断。

マキナ :
「……案の定じゃん、付け入るスキは十分あるとは思ってたけど」
                        ・・・・・・
 でっかい溜息。何かが混入するなら、普通に考えて崩壊した直後だ。とろとろ復旧を始めた段階で、どでかいバックドアは仕込まれていたというだけの話。連中の監査も役に立たないな。
 ……先遣隊が今付き添ってるのはUGN本部。今まで気づかなかった手前、そこまで汚染されてる可能性は否定できないけど、病巣の只中に居る訳じゃない。すぐ危ないってことはないでしょ

マキナ :
 ……脳裏に一つの単語が浮かび上がる。
 同時多発テロ。
 異なる勢力が一斉に蜂起を初めて、分散して機能を麻痺させる大規模テロ。

 "刻知らず"の規模を考えると、少なくともアメリカ合衆国の主要各地を巻き込んだ規模になることも十分あり得る話。

 つまりこの騒動自体に直接関係があるわけじゃないとしても……
 この騒動を起こした連中の繫がりは、しっかり持っている可能性が高い。

マキナ :
「……やめやめ! 考えるの、後にしよ。
 兎に角……」
 まずはここで起きてる騒動を秒でカタして、向こうの救援に向かう。目の前のタスクに集中する。

SYSTEM :
 支部の復興に先んじてUGNには混乱があった。コードウェル博士の再来という、そうそう忘れ去られもしない類の混乱だ。
 あるいは灯台の下に潜り込める都合の良いタイミングだった可能性は否定出来ないだろう。

 ………だが、その“ちぐはぐ”さは電子の妖精を狙って起こしたものではない。
 その仕込みにどの程度時間をかけたか、どれだけ欺くのに神経を使ったのか。その前提と、いざ行動を起こした時の刹那的欲求に格差がありすぎるからだ。

SYSTEM :
 それを踏まえてあなたの《プロンプター》は先の提案をしたのだろうが、事実確認のち、あなたの判断が揺らぐことはなかった。

 あとのことを考えるに現場への急行を急がない理由はない。
 事実として本当に秒で片付く程度とて。

 非殺傷設定での制圧を試みたその演算速度と、表出した感情は、きっと別のものだ。

SYSTEM :
          シーン
 キリなく沸いて現れ、対決の一つを演出し続ける着ぐるみバイオレンスと、相対するUGN、巻き添えの一般人。
 最短経路で“のし”て、あなたは救援先に向かう。先行したドローンから、病院現地の情報が拾えるのもそう遅くはないだろう。そして、その移動経路上の“惨状”も。

SYSTEM :
 人目につかない移動経路の上も下。
 どちらでも、さも当然のように、シカゴ支部配属のオーヴァードと、這い出たキュマイラ擬きが交戦に徹していた。

 ………もっとも恐ろしいのは、それを異常事態だと誰もが認識しながらも、規定の範囲内でしかコトが起きていない点。
 その部分では当然のように命を懸けながら、その部分以外ではシカゴは平常が続いている。

SYSTEM :
きんべん
 怠惰なUGN支部長アミル・トロイそのものなのか、あるいは彼を土台にした犯罪計画の立案者でもいたのか。
 いずれにしたって、立案者の悪趣味だけが確実に窺えた。

SYSTEM :
 ………目の前のタスクに意識を割いて、いざ都市圏から離れ、病院に急行しようというあなたの前に。
 反対側から現れ、あと数秒ですれ違う人影があった。
 
 少し奥では何度か見かけたキュマイラ擬きが、UGNエージェントとの交戦もなしに転がっている。

SYSTEM :
 その女はあなたの姿を見つけると、足を止めて着地。視線は明確に他と異なる動きをするマキナに向いた。
 それに対して、あなたが足を止めたのかどうかは定かでないが、足を止めた女…暫定イリーガル…が、控えめに言っても特徴的な容貌だったのは確かだ。

”捧ぐ白翼” :

「───おや。
 シカゴ支部の登録エージェントに、
 この手の義体持ちはいなかったはず…」

”捧ぐ白翼” :

「はじめましての前に、お急ぎのところ失礼しますが…。
 どちらさまで?」

SYSTEM :
 なにしろその外観。
 夜間を高速滑走する給仕服の女性など、
 滅多にみられたものじゃない。
 
 …滅多に、だ。皆無でもない。
 実は日本に似たような事例があるという。ちょっと頭の螺子が緩やかに外れているが、こと良識だけは備えたようなのだ。しかも二件。
 あるいはそれこそ、アメリカにはかつて、素性知れずのイリーガルが“カヴァー”のためにこんな装いをしていた、という話もあった。

SYSTEM :
 彼女の行き先はどこをどう見てもシカゴ支部だった。ちょうど、あなたの行き先と正反対だ。

マキナ :
 スタンアンカーを振り乱し、時には周囲の防衛機器を利用して、秒できぐるみめいた怪物をノして……
 そのまま、即座に病院に向けて疾走する。公道がパニックで使えない以上、頼れるのは自分の足か、あるいはもう一つのアシ。後者は推進剤の温存と、得られる速度を考慮して不適と判断し、純粋な脚力のみに頼る……

マキナ :
 そうして現場に急行する間際、初めて声がかかる。ほかの奴らと言えば、どいつもこいつも目もくれずに、やられた頭でルーティンワークをこなすばかり。
 そんな中で初めて、それを違和感と認識して、誰何を問う声。まして向かう方向を考えるに、あれは記録の上ではシカゴ支部の方角……

 コンマ数秒だけ考えて、足を止める。病院の惨状は惨状ではあるものの、同伴しているノッポ仮面はそういう時間稼ぎに長けているように見えた。
 それより増援を拾えるなら拾った方がいい。

マキナ :
 ……よく見たらこいつ、クラシックメイド服なんぞ着てる。なんで? いやそれはもうどうでもいい。人のこと言えないし。
「……あんた、シカゴのか外様か知らないけど、そっち行くのはやめときな。
 十中八九殺される。嘘だと思うなら支部長にコールしてみればいい。人のコト舐め腐った自動音声でお迎えしてくれるだろうさ」

”捧ぐ白翼” :
「おや…。見ず知らずの相手に掛ける言葉としては、お釣りがくるほど誠意のある回答」

”捧ぐ白翼” :
「“どちら様で?”にお答えしなかった分は、まあそうですね、匿名希望さんと受け取らせて頂きますわ」

SYSTEM :
 あなたの発言が会話に応じる意図を伴っていると認識したのか、にこりと笑った女性の佇まい。
 少なくとも、状況の危機に焦りを表面化させない程度の冷静さは持っているようだった。あるいは単に暢気なのか。

”捧ぐ白翼” :
「しかしそれならば、益々行く理由が出来ました。
 そのシカゴ支部に海向こうの友人、兼、依頼人がいらっしゃいまして」

”捧ぐ白翼” :
「凡そ人は簡単に死ぬと申しますが、
 超人の場合は隣人を失うと死ぬとも言います」

”捧ぐ白翼” :
       けいやくさき
「そして家政婦はご主人様を失うと死ぬというのが個人的見解です。
 お気持ちを受け取る序でに、そちらこそ故がなければ回れ右を推奨します。誰も咎めません」

SYSTEM :
 …彼女から是非を聞く前に、あなたのドローンはシカゴ郊外の某総合病院を補足していた。より正しく言うと、厳密にはそこで停止した。
 そこから先の電波そのものが途絶していただけではない。ドローンがどれほどの機能を持っているかにも依るが、認識できる光景は深夜の病院、という様子ではなかった。

SYSTEM :
 そのドローンが停止したポイントから先を隔てるように広がる零と一の電子の壁。
 亜光速で行き来する電子は通信障害が起きているにもかかわらず、その得体のしれない向こう側に限って活発。
                テクスチャ
 まるでそこを中心にした一定範囲の表層が切り取られ、別の位相が置き換わったかのような風景だった。

マキナ :
「……ああ、そう。うちの掃除の手伝いに来て欲しかったんだけどな。
 うち、ちょうどその向こうに用事があってね」

マキナ :
「知り合いの掃除を手伝うコトになってんだよ。別に顔合わせしただけの仲だけど、抜け駆けしたら寝覚めが悪い」

マキナ :
 まあ、実際どうしようかこっちも考えてるとこだけど。先に飛ばしたドローンで向こうの状況は把握している。というより、把握できないということを把握している。
 そもそも行ったところで干渉できるか否か微妙な、位相が変化したとしか思えない変容。危険もそうだけど、シンプルにあの中に入り込む手が手札にあるか微妙なところだ。

マキナ :
「一応忠告はしたからね、仕事熱心な通りすがりのメイドさん。
 お互い苦労するね、嫌な案件担いでも手前の意地で捨てられないなんて」

SYSTEM :
 匿名希望で互いに通した、曰く通りすがりのメイドさんは、あなたの貧乏くじを引いた主張を聞き届ける。
 …あなたの一度限りの忠告と書いて命綱を受け取りながらも、彼女の言葉や態度に変化はなかったが、真に受けていない、というわけでもないらしい。

”捧ぐ白翼” :
「はい。仕える者の危機には水の中、火の中、痴情の縺れの中と申しますところ。
 メイドの基本をタスクの中途で投げ出すほど意気地なしな育ちはしておりません、というところで私のほうは一つ」

”捧ぐ白翼” :
「…しかし理屈ではなく心情の問題だと出されますと、どうにも回答に困りますね。
 引き留める理由がなくなってしまった」

”捧ぐ白翼” :
「私はせめて、その御友人があの場にいないことを願うのみです。
 正直、ちら、と見た程度でも困り果ててしまって。ブラックドッグの進展はもっとも早いと知識人の知り合いたちから存じておりましたが…」

マキナ :
       マーセナリ
「金で雇われる傭 兵だって、命が危なけりゃ仕事投げ出すってのに。こんな資本主義の世、資本主義の帝国で、見上げた忠誠心だこと」

マキナ :
「それが中にいるところ、映像で確認しちゃってんだよね……
 一応だけど、アレ何かわかる? こっちもドローン越しの映像じゃ、どうにも判断できないし」

SYSTEM :
 病院のいずれかを起点として発生し、現実を侵蝕し、空間を裏返す電子の侵略。
 プログラムの羅列が生む電子音が現実を隔てる砦になっている。あなたが見たものは、概ねそういうものだ。

SYSTEM :
         モダンタイムズ
 …凡そ21世紀とは科学万能時代の延長線にあるものであり、
 この情報化社会において電子技術とは肩で風を切るような技術の中心格である。
 しかし、それは現実ではなく、ハッカーやクラッカーが幅を利かせる電脳の話だ。

”捧ぐ白翼” :
「さて。
                  エフェクト
 一つの場所を起点に内側と外側を区切る能力行使などは、代表例がございますが…」

”捧ぐ白翼” :
「あのようなことがオルクスに出来るなら、私とて自分の非才に傷つくところ。
 単純な通行禁止や障壁というには、こちらのR因子に基いた能力行使とその干渉を拒む様子もなかった…」

SYSTEM :
 しかし、それは現実ではなく、ハッカーやクラッカーが幅を利かせる電脳の話で。
                    サイバー
 通常、これほど広い範囲の現実を侵蝕する電子空間など聞いたことがない。

 阻み隔てるというより、そこから先そのものが実体の実感に乏しいようなものだ、と語る彼女の現実から浮いた言葉の是非については、
 実際に辿り着けばより詳細に映し出されるだろう。

”捧ぐ白翼” :
「それから誠意のお返しとしてもう一つだけ。
 私…育ちも生まれも、合衆国ではございません。まあ、資本主義の話となれば、さほど意味は変わらないかもしれませんが」

”捧ぐ白翼” :
「郷に入っては郷に従うという言葉がございますが、
 私、その点においては既に入っている郷があるものでして」

マキナ :
「イレギュラーってわけだ。オルクスにできないことが、ブラックドッグにできるとも思えないし……」
 ここから未来の住人からしてみれば、0と1の世界が現実に降りてくることはない。厳密には量子力学がそれにあたるが、それだって基本ミクロの世界の出来事であってマクロの領域まで手を伸ばすことはありえない。
 そして大前提として電子世界なんてのは物理世界ありきのもの。どれだけ拡大しても、それを広げている物質的なサーバがダメになれば、まるで一炊の夢のように消えてしまう。

マキナ :
 現実を侵す電子情報ともなれば、いよいよどうやって干渉するべきか。
 デバイス
 端 末さえあれば、もしかすると……ってとこだけど。直に触れて、やってみるしかないか。

マキナ :
「郷ねえ……」
 どう見てもイギリスって感じがする。けど、この格好的に実は日本だったりする? なんか流行ったっぽいし、そういう風俗的な商売。
「じゃあ、うまくカタしてウチ帰んなよ。
 あんたそこそこやり手かもだけど、今起きてるのはうちらの想像を超えてデカい規模の話かもしれない」

”捧ぐ白翼” :
「ええ。気遣い有難く。
 ただ、それが捨てられぬという話は貴女が仰った通りですから」

”捧ぐ白翼” :
「特に、その依頼人にも故があれば猶のことです。
 何分驕る前に身の程を思い知らされて久しいところですが、その手の出来事で身の程など考えるだけ無駄でしょうよ」

SYSTEM :
 口ぶりの端的さから、少なくとも“家”は帰るに値する場所ではあるらしいが、それを込みで仕事熱心な性分が勝るようだった。

”捧ぐ白翼” :
「では…、縁が合えばまた。
 先の話はこちらにとっても発見でした」

”捧ぐ白翼” :
「通信…もしもするなら、シカゴの中の、くだんの支部以外にすることをお薦めします。
 通りすがり分の誠意はこれでお返しということで」

SYSTEM :
 あなたが引き止めなければ。
 最後にその視線が、あなたの身長から考えて少し上のほうを改めて見つめたあと…彼女は有言実行しに、あなたの来た道をなぞるように去っていくだろう。
      シーン
 道すがらの演出を適切に対処して、曰く火の中水の中の依頼人とやらを助けに。

マキナ :
「そのつもり。……じゃあね」

 死なれたら寝覚めが悪い。ロイスにもならない通りすがりの縁で、別の時代に分かれりゃ消える程度のものでも、見送った奴の死体なんてのは見たくもない。
 そうはいっても覚悟の据わった目ぇしてるこんな奴相手に、今更できることもない。まさに武運を祈るってやつ。

マキナ :
 お互い振り返らない。立ち止まって、油を売る時間はお互いないだろうし、必要な情報は交換できたでしょ。
 こっちも現場に向かって再始動だ。

SYSTEM :
 あなたは時代のいずれからも浮く放浪人だ。
 そこに縁が残ることは概ねない。ごくわずかな例外はあっても、それは例外に時からの旅立ちを強いるケースが殆どだ。

 ………それでも、そのように振舞うのがオーヴァードというものかもしれないが。
 それとて、己の縁を、証を、そうと感じたものに担ってもらうための行いだ。

SYSTEM :
 あなたのそれは超人の理というより、あなた自身の心情からくる仕草だった。

SYSTEM :
 通りすがりの外様同士の僅かな接触はタイムロスにもならない。
 あなたは、シカゴの都市圏を抜け、すぐさまその場所にたどり着いた。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 シカゴ某総合病院。
 到着早々、あなたはドローンの探査を阻んでいた電子の壁を目視する。

SYSTEM :
 病院のいずれかを起点として発生し、現実を侵蝕し、空間を裏返す電子の侵略。
 その正面にたどり着いて確認したものはまず…不自然に途切れながらも、垂れ下がるではなく直線に伸びる血色のワイアだ。
 このような状況でなければ見つけるにもひと手間かかっただろうが、伸びる先が異常とあらばつられて炙り出されるというもの。

 電子の壁の向こう側に向かって伸びておきながら、その先を目視することがまるで出来ない。

SYSTEM :
 その先の通信状態は依然変わりなく不定で、電子の流れだけが活性化を続けている。
 電子という言葉と縁もゆかりもない風景で、可視化され、共有されるほどの電子結界。
ハードウェア
 物理世界ありきの空間が現実のテクスチャを侵蝕することの不可能さ加減はあなたが存じている通りだ。
       ・・・
 逆説、それはよほどのものが…荒唐無稽な特性の持ち主が衝突しないとこうはならない。

マキナ :
 いざ現着して実物を多機能カメラで視認しても、ためいきをつきたくなるような荒唐無稽が広がっている。
 早速目についたのは、多分シャラが伸ばしていただろう血のワイアー。あの隔たりから不自然に途切れてる。仕事慣れしてる分、キッチリ退路の確保と周囲の警戒のために網を張ってたみたいだけど、相手が一枚上手だったか。
 いや、一枚上手とかそういうレベルの話じゃないなこれ。こんな無茶苦茶やられたら、生半可な備えじゃどうしようもない。

マキナ :
 これだけの力場が働いているなら電子情報が潜り抜けることは出来ないだろう。それにしても、見れば見るほどに奇妙……
 これは電磁力によって壁ができているわけじゃない。仕切りの奥の悉くが『情報』という単位に変換されている。必然、電子情報は物理的に干渉できるものじゃない。

マキナ :
 まずは解析からだ。視覚・触覚の情報を《ハイパーコンピュータ》で分析する。
 これが電子情報であるのならば、ブラックドッグの範疇で何かしら干渉することができないか……まずはそこを探る

SYSTEM :
 心臓部に備えたEXレネゲイドが齎す膨大な電力供給と、それにより拡張された感覚の副産物。
 凡そ人間の脳が捉えられるかも定かでない膨大な電子情報の一つ一つさえ捌き切るあなたの演算プログラム。

 ………わかりきっていた、無難ゆえにもっとも有り得ない可能性はまず消えた。
 これが何れの超精度のコンピュータを起点にした電脳空間を表裏させたものである、というケースだ。

SYSTEM :
 むしろ、もっと純粋な…。

 今もなお通る電子/電磁波の流れだ。
 それが、何かを切欠に可視化され、空間を侵蝕し現実のチャンネルを上書き…もしくは置き換えたもの。
 その結果こそ、仕切りの奥の電子情報の羅列だった。中の情報自体は弄られていないことが、却ってその空間遮断を万全なセキュリティたらしめる。

SYSTEM :
 現実の表層を、自我も次元も持たない、ただの電気の流れ。
 その通り道という概念を、因子に侵蝕されて作られた道筋。

 …誰ぞがこじ開けた結果がコレだ。
 あるいは、こじ開けたうえで何かがあったか。

マキナ :
 何らかの電子空間を現実に表出させた……ってわけじゃない。電子の流れが可視化して、現実世界を侵蝕しているのか。
 けど、これ……

「抉じ開けられてる? 誰かが後からその中に入り込んだみたいな……」

マキナ :
 あの白メイドが気付かなかったのは入れ違いだったからかな。
 一体だれが何の目的でこの電子の壁を張って、またどこのどいつが後からそいつを割って入ったとか、気になることはヤマほどあるけど!

マキナ :
 あの通り道が閉じてしまえば、もう二度とあの中に入り込む手段が失われる。少なくとも、今のところ一番確度が高いのはその通り道を流用してアクセスすることだ。

マキナ :
 続いて《電子使い》と《ハイパーコンピュータ》で電子の通り道を解析。バックドアを作り、中に侵入できるか確認する!

GM :
了解したよ。ただ…。

GM :
確認するけど扱いとして
「接触した」でいい?

マキナ :
リスクはあるけど、時間がない。手っ取り早くマニピュレータでの接触で解析を図るよ

GM :
オッケー!

SYSTEM :
 メカニズム
 その構造がより純粋な通り道であり、
 プログラムに基づいたものでもない、と。
 即ち、電子を通り道とすることの出来る何某が齎した結果であるとわかった時点で…。

 あなたは先の仕事人との最大の相違点を武器にすることが出来、その必要があった。

SYSTEM :
 時空移動適性を伴うEXレネゲイドを基としたメガエンジン……。適性の根幹が7.83Hzの周波数、すなわち、地球の固有振動と共鳴が齎す電磁波へのシンクロを可能とする点にあり、拡張された電子世界への干渉能力もこれが基点だ。
 他の誰かが通り抜けられないとしても、あなたならばその世界に足を踏み入れられる。

 しかしそれを直接的に行う、というのは、経験したかどうか。
 こんな荒唐無稽を実現できるものなどそうはいないからだ。

 むろん───この場で立ち往生以外の選択肢が取れたのはその恩恵ありきのもの。

SYSTEM :
 あなたは、確かに電子の扉を開けるべく。
チャンネル
 位相の異なる空間の鍵代わりを携えて、接触した。そのとき───。

SYSTEM :
   ノイズ
 ───雑音。

SYSTEM :
 錯覚する。
  /接触した感覚の霧散を錯覚する
   あなたは偽りの浮遊感を得る

SYSTEM :
 錯覚する。
  /目が映し出すチャンネルが変わる
   現実のテクスチャが剥がれ落ちてゆく
   御伽噺の絵画目掛けて、現実の無粋な手が伸びる

SYSTEM :
 錯覚する。
  /声と呼ぶにはあまりにも乱暴
   悲鳴と呼ぶには感情が飛び交い
   意味を見出すには纏まりがない
   だが仮に、それに意味を与えるならば

SYSTEM :
 …プログラムの羅列が生む電子音の中に奏でられたものは。
 あるいは、歌声のよう。妖精の歌声だ。

 突破と侵入を試みたあなたにとって、転送現象は決して想定外、というわけではない。
 いましがた、事態の渦中に飛び込むにあたって、その現象の痕跡を追うようなものだ。

SYSTEM :
 “電子の妖精”の気まぐれではないと、直感的に分かる。

 そもそもこのようなことを平気で起こしているならば、UGNは今の対応より一段階苛烈な選択をしただろう。
 ましてFHや合衆国に根付くテンペスト、当事者ではないオーヴァード絡みの概ねの組織が、このようなものを秘匿、静観するはずがない。

SYSTEM :
 だが、それでも…。

 位相の切り替わる瞬間。
 ニューロンを駆け巡る、並の人間なら接触で脳を過負荷で焼き切るような情報を処理する最中の激しい雑音。
 痕跡の中に、郷愁が入り込んだ。

『■■■■』 :
『あのね、■■■』

『■■■■』 :
『私、次に生まれ変わったら───』

SYSTEM :
         チャンネル
 その名残が、世界の位相が変わる合図だった。

マキナ :
 白メイドは多分これを純粋な電気の通り道としか認識できない、入り込むという発想すら浮かばなかったんだろう。でも、私は違う。
 周波数を解析すればオーバークロックに近い感覚で同調・侵入が可能な筈だ。
 勿論そんな演算、ぶっつけ本番でやったことなんてない。頭部の型落ち量子コンピュータの処理能力でどこまでやれるか……

 意を決して、手を伸ばした。その瞬間……

マキナ :
 音に触れ、光を嗅ぐ。様々なセンサー系が異常値を叩き出して、極彩色の世界を描き出す。
 本来相互に機能しない筈の感覚が共感し、感覚器官がバグを起こす。
 
「ッッ、……!」

 気持ち、悪い……! でも、手応えはある!

マキナ :
 思った通り、いける──!
 流れは制御できないけど、目的地に向かうだけなら十分。濁流に逆らうことなく流されれば、電子結界の奥に進める……!

マキナ :
 とにかく無我夢中で、その乱数の海を泳ぎながら。
 聴覚マイクが拾った/認識したものが……果たして何だったのか。振り返ってもわからない。
 ただとても懐かしいものの名残が、明滅する意識の中で浮かんだ気がした。

SYSTEM :
 オーダーメイドされ人間と顕色ない感覚器官と、人間と比較にならないセンサー系列、二つの羅針盤が航海に適さなくなっても、泳ぐことは出来る。
 進む、という行いさえ出来れば問題はなかった。おそらく、というにはあまりに確信を持てる精度で、渦中へと辿り着けるからだ。

SYSTEM :
 …郷愁の正体をつかむには、その意識の隙間はあまりに短い。
 いや…そもそも、その現実と夢想の狭間で響いた音は。そのささやきは、本当に実在する響きだったのだろうか。その答えはあなただけが知っていた。

SYSTEM :
 0と1の乱流の中で舞台の幕をあげようというまさにその時から、三度時を遡って、曰く───。

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
【Check!】
 登場侵蝕が発生しました。

 Player:Lux 

天導 ルクス :
ムッ

天導 ルクス :
1d10 (1D10) > 3

GM :
さあ登場侵蝕なるものが何だかわからぬうちに
振るがい…

GM :
ビューティフォー…

system :
[ 天導ルクス ] 侵蝕率 : 48 → 51

天導 ルクス :
何か分かんないけど分かった!

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
 その時…。
 ゲームのような派手なエフェクトが、
 目覚めたての少年の、視界いっぱいに広がった。

SYSTEM :
 雷の帳だ。
 土砂降りの雨の中に降る轟音と光が、十数本くらい纏めて発生したような印象を、知識から準えるならそう呼ぶ。

 それは、あなたの視界に見えていた電気の動きをひどく歪ませた。

SYSTEM :
 網膜を焼く光、目の痛みは、あなたの知っているどの痛みより痛烈だったが、一瞬の幻のように引いていくものを痛みと錯覚するかも怪しい。
 得体のしれない高揚感と、当然持つべき警戒心。多くても1対4程度の割合の感情を伴いながら、あなた/ルクスはそこに、人間ひとり分の猶予を作り出す。

SYSTEM :
 赤く輝く、彗星のような煌めき。

 やがて現れたものを、あなたはすぐに理解する。
 あなたより一回り華奢な細腕を、あなたをかばうように広げた少女の視線の先…。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈………誰〉

SYSTEM :
 金色の髪は、日本では珍しい(最近は若干の例外がある)が、日本でなければたいして珍しいものでない。
 肩幅の良い体格は、ギリシャ彫刻のような荘厳さと、血の通う生物に似つかわしくない無機質さを備えていた。

SYSTEM :
 片方だけならばまだしも、両方揃ったものが目の前に現れたことはそうない。
 ましてや、この現実離れの中においては。

 だがそれを、現実の存在たらしめる威風堂々とした佇まい。

SYSTEM :
 それでいて、物腰は来訪の仕方に反して穏やかだ。

“雷人” :
『 …ニホンには一挙両得という言葉があると聞く。
  このような状況を指すものなのだろうな 』

“雷人” :
サイバースプライト   ・・
『 “電子の妖精”がよもやここで見つかるとは。
  物事など、存外に執着しないほうが上手く行くということか 』

“雷人” :
『 だが…。物事には順序というものがある。
  一つ目の要件を果たすことにしよう 』

SYSTEM :
 あなたが姿勢を整える前か、あとか。
 第一声は、少女ではなくあなたに向いた。曰く。

“雷人” :
『 はじめまして。天導ルクス。
  日本名は呼び慣れていない。合っているかな 』

天導 ルクス :
 視界を焼くような光に、耳に響く遠雷の音。
 曰く『電気』の流れとやらを尋常ではない勢いで歪ませ、視界の先に現れたのは―――……。

天導 ルクス :
「ヒト……!」

 と、吐いては見たが実際のところ確証はなかった。こんな現れ方をする人間は、最低でも液晶越しでしか見たことはない。
 頭の中で、視界の端々で、何よりハーフィの庇うような仕草でレッド・アラートは脳裏に鳴り響き続けている、が。
 そんな状況にも関わらず、出現した張本人は落ち着き払っている。

天導 ルクス :
「なんっ、……で、オレの名前知ってんの?」

 状況への混乱と、耳に慣れない名詞と。
 気になることはどんどんと増えていくが、まず、第一の疑問が漏れた。

“雷人” :
『 きみとは理解の限り初対面だ。
  そのきみがわたしを存じているはずもない以上、当然の疑問でもある 』

“雷人” :
『 最低限の答える義理を優先するなら…。
  きみという個人ではなく、ここにいたきみのことを知っている、という言い方をするべきか 』

SYSTEM :
 おそらくあなたの知っている身近な大人を一回り上回るその長身と、今日び見かけるはずのない仮面の男は、続けて、最初の言葉に薄らと笑った。

“雷人” :
『 ある意味ではそうと言えるが、
  ある点ではそうとも言えない。…なるほど 』

“雷人” :
『 きみは自分自身については把握していない、ということだ 』

天導 ルクス :
「…… ……」

天導 ルクス :
「むずい話し方するね、お兄さん」

 自分自身について把握していない、と言われると……まあ実際のとこ、全然否定出来ない。
 出来ないけど、どうにも素直に真っ直ぐ答えてくれる感じの人じゃないらしい。

“雷人” :
『 するとも。大人のつもりだからな 』

“雷人” :
『 もちろん、確かにピントを合わせた会話をしていないと言われたならば、そこに対する自己弁護の手段はない。いいだろう 』

“雷人” :
『 きみがそう望むならば…。
  そうだな。少し端的に言うことにする 』

SYSTEM :
 聞き分けの良さをよそに、あなたに視界に薄っすらと伸びる手。ハーフィの手だった。
 本当に危ないと思ったら自分の手を取ってほしい、とでも言うような。逃げの姿勢。

 その少女の姿勢を抜きにしても、彼は目下、あなたに害意のようなものこそ放っていないが…。

SYSTEM :
 …これまで出会ってきた人々と、何か致命的なところが違う気がした。

天導 ルクス :
「え~、ありがとう……?」

 登場のインパクトの割には随分物分かりが良い。
 状況が状況じゃなければ、多分もっと受け入れてた。変だけど受け入れられない程じゃない、と感じたって良い。
 ……にしたって、何だろう。心根の部分がざわつくというか、何というか。

天導 ルクス :
 ぽん、とハーフィの肩を軽く叩く。
 大丈夫、だの、落ち着いて、だの、それほど深い意味は込められていない仕草の後、視線はくだんの大人の方へ。

「何にしたって、一方的に知られてるっていうのもちょっとむず痒いからさ」

 端的ついでに目的と名前くらいは聞きたい。走って逃げるにしても、それくらいは見極めたって良い。
 ……いや、何というか、第一声を考えるとどうにも色々きな臭いのだけども。

SYSTEM :
 肩を叩かれて振り返った視線が、あなたを心配げに一度見つめる。
 そこまでの他意のない行いを深読みする僅かな時間的猶予。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈あなたは…。…いえ、ごめんなさい。焦っちゃったかも〉

SYSTEM :
 けれど、と言いかけた口ぶりは、あなたの視点と彼女の視点において、情報の祖語があるからだ。だから、表面上は引っ込めたようなものでもある。

 …それでも齢14歳の少年の挙動を突っぱねるほど彼女は意固地ではなかったし、同時に精神的に頑健でもなかった。小さく聞こえる呼吸音ののち、その様子に男が感嘆を零す。

“雷人” :
『 ほう。楽観的だな。
  いや、度胸があると言おうか 』

“雷人” :
『 理解した。こちらとしても、名乗るのは吝かではないところだ 』

“雷人” :
『 ただし、断っておくが…口で説明したところで、今からする話はフィクション擦れ擦れの滑稽さがある。
  疑いたいものは好きに疑うといい 』

天導 ルクス :
「……?」

 現時点でさえ首を傾げてるんだけど。
 これ以上が普通にある―――みたいな言い回しだ、これ。

“雷人” :
『 正直で結構。続けよう 』

“雷人” :
『 わたしを…人は、いくつかの名前で呼んでいる 』

“雷人” :
ニコラ・テスラ
『 “雷人”………。
 その中でわたしが”自分の名前だ”としているのは之だ 』

SYSTEM :
 もう少し端的に、の言葉を律儀に実行して”それ”なのか、ほぼ方便のようなものだったのかは想像にお任せする。

 ちなみにその名前は、ティーン向けの伝記にもいたような名前だ。
 電気絡みの科学者のものだった。興味がなければ覚えていないかもしれない。

“雷人” :
『 目的は一つ。きみを迎えに来た…
  …というだけでは納得すまい? 知る限り、それで首を縦に振られたことがない 』

“雷人” :
『 きみのその様子、彼女を含めた視界に映るたいていのものは、現実のそれからひどくかけ離れて居るはずだ。
  “それ”が何か、から口にしよう 』

天導 ルクス :
「……」

 分かり易さ、という意味じゃそんな変わってない気がするけど。
 話の腰を折るわけにもいかないので一先ず受け止める。

天導 ルクス :
 二コラ・テスラ。図書館だか、インターネットだかで見たような名前。
 ……だけど、結構な偉人だった気がする。実は生きてた、みたいな話だったらまた別の驚きが出てくることになるが……なんか、違う気がする。

天導 ルクス :
「……そりゃ、ナットクはしないでしょ」

 とだけ答えて、次いで出てきそうな内容に閉口した。

SYSTEM :
 彼はあなたの首を傾げるような、半分周回遅れの理解に肯定も否定も付け加えずにいた。

“雷人” :
『 レネゲイドウイルス………。
  ある時期から地球を覆い、人類に、自然の摂理に反逆する謎の因子……… 』

“雷人” :
『 そうだな…ウイルス、はわかるかね。病を誘発し、生物から生物に感染するものだ。
  きみの認識に目線を合わせるなら、インフルエンザのそれの延長線にあるものだと思ってもらおう 』

SYSTEM :
 ちなみにあなたが罹った場合でも、あなたの母親は本職の医者で、医者の不養生という言葉とはちゃんと縁遠いタイプの人間だったことをいちおう付け加えておく。

“雷人” :
『 未知のレトロウイルスに侵蝕されたものは、すさまじい能力を発揮するが…。
  ひとたびその侵蝕に心が耐え切れなかった時………その理性や良心を失う 』

“雷人” :
『 その侵蝕に耐え得る新しい人間を…。こう呼ぶ。
  摂理の超越者…オーヴァードだ 』

“雷人” :
『 当然、社会常識も、これまでの生活圏もたやすく崩壊させるが故、権力者も、それを発見した者も…。
  ・・
  隠蔽という結論をとり、それが続いた。きみの日常生活で知るはずもないだろう 』

天導 ルクス :
「そりゃ、ウイルスくらいなら分かるけど」

 ざっくりと頭の中で咀嚼をするなら、人知れず―――じゃ、ないな。
 自分たちの生活の裏で、その……超人化ウイルスと言って差し支えなさそうな存在が在った、らしい。

“雷人” :
『 ああ。だから、実例を見せよう 』

SYSTEM :
 男は、あなたの頭の中での情報の咀嚼が順調に行きながらも、より手っ取り早い理解の手段をとることにした。

 男の右手が持ち上がり、その指先が空…と呼ぶには幾何学的な模様へ向く。

SYSTEM :
 そして───ばちり、と。

SYSTEM :
 男の指先から火花が迸った。
 …見間違いなどではない。

 それは断続的に、あちこちに稲妻を走らせ、しかしあなたやハーフィに害を及ぼさない。
 さらに稲妻は男の指先を焦がし炭に変えていたが、瞬きのうちに、その負傷は元通りに。

SYSTEM :
 人の手から電気が走る。

 わかりやすく、それでいて…。
 マジックでは適いようのない芸当だ。

“雷人” :
『 フィクション擦れ擦れ、といったのはこのような話だ 』

天導 ルクス :
「!」

 右手が持ち上がり、火花が迸る。
 咄嗟に己を庇う少女の手を引こうとして、それが此方に向かうわけではないことに気付きそのまま動きを止めた。
 ……今の、そう、今のだ。そもそも現れ方だって普通じゃなかったじゃないか、驚きと納得が同時に去来する。

天導 ルクス :
「じゃあ、」

 当然彼もオーヴァードってやつなんだ。
 ……途端に、畏れと奇妙な感情が胸に来たる。

SYSTEM :
 そう。例えば、の話だが。
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 その指があなたの方を指していたならば。
 瞬きのうちに到達した雷は、寸分狂わず、あなたに向かって飛んできたことになる。

 現地でそういう映画を見たことはあるだろうか。あるいはゲーム、漫画?
 音より早いと評判の雷が、あなたに向けられていたわけだ。

SYSTEM :
 …そしてそれを認識できることについて、あなたは目をそらしたのか、気づいているのか。

“雷人” :
『 自分の…当たり前の生活の裏で…。
  
  それを秘匿して、きみのようなのに“当たり前”をやって欲しいものと。
  それを大っぴらに使えるようにしたい、それを持つだけで片隅に追いやられる自分を変えたいものがいる… 』

“雷人” :
『 ここまでが冗談のような話の前置きになるが。
  この話からきみが知るべきことは、きみが、其方側の…オーヴァードだ、という事実にある 』

“雷人” :
『 現実に失われたきみの肉体から、
  いまここで目を覚ましたきみは 』

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈───っ〉

SYSTEM :
 …そのどちらだったとて。
 彼の言葉は、その事実を手心抜きで突くものだった。

天導 ルクス :
「……っ」

 予見していた―――違う。彼女との会話で、ほんのちょっとはアタリがついていたことではあった。
 消えていく光、残る光。死んでいったオレと、此処に居るオレ。
 どういったワケでこうなったのかだけ抜け落ちてたけど、そのナントカ言うウイルスが原因だと。

天導 ルクス :
「……マンガ過ぎるって」

 全部を全部信じるなら、その超越者―――オーヴァードなるものとしてここにいる俺は、ユーレイどころの騒ぎじゃない。
 今、その“事実”を語っている男も。多分、ハーフィさえも。
 最低でも、生前の自分の基準で言えば……口にした通り、フィクションが過ぎる。

SYSTEM :
 その言葉に、軽い調子の相槌ひとつでも打ってくれる相手がいれば。
 クラスメイトとの5分休みのような軽い雑談のような空気であれば。

 あるいはそういう気持ちで今の台詞を出したのかもしれないあなたに、その返答をしてくれるものはいなかった。
 ハーフィも、“雷人”を名乗った男の方も。

“雷人” :
『 きみのようなもの、そしてそこの彼女のようなものを…。
  そのレネゲイドウイルスを知る人間はこのように呼ぶ 』

“雷人” :
    Renegade Being
『 レネゲイドから生まれし者…と 』

“雷人” :
『 きみ自身の記憶と意志…敢えて一先ず、心と呼ぶか。
  それがそのレネゲイドを礎に今の“きみ”を作り出した… 』

SYSTEM :
 敢えてと呼んだ彼の言葉は、あなたに楽観を抱かせるためのものでなければ、悲観を誘うものでもなかった。
 残酷なほどにフェアでフラットだ。誠意ある対応だがそれ以上に、これまでそれと無縁だった相手への言葉としては不平等さが欠けていた。

SYSTEM :
 …だからか。ハーフィの視線が一度不安げにあなたを見ても、彼女はあなたの前から動こうとしなかった。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈彼に…それを伝えて、どうしたいの〉

“雷人” :
『 ………わたしはきみに義務を提示できる。
  その力の使い方を。いや、もっと単純な話だ 』

“雷人” :
『 フィクション擦れ擦れの話が“そうではない”と伝えられ…。
  死から蘇ったばかりの、今後の目標のないきみに対して 』

天導 ルクス :
 それは。……生き返ったっていうか、それは―――……。
 ぶんぶんと一度首を振って思考を平静に戻そうとしつつ、一先ずハーフィの方に無問題だと声を向ける。
 その上で、男へ視線を投げる。義務。……義務ってなんだ?

天導 ルクス :
「……ハーフィの質問と殆ど変わんないよ。言うコトは。
 どうしたい、―――……何をさせたいって?義務、ってなんだよ。どう使えって……?!」

“雷人” :
『 不躾だったな。
  このように知ったような口を利くほうばかりに馴れてしまった 』

“雷人” :
『 だが、どうせ不躾をするなら半端な真似はしないでおく。そうとも、義務だ 』

“雷人” :
          あした
『 きみからあらゆる可能を奪い去った仕組みに、摂理に。復讐する義務だ 』

“雷人” :
『 末期の記憶は、きみ自身がよく知っていると思う。
  きみは何を欲した? 何を諦め、何を背けた? そして… 』

“雷人” :
          ・・
『 きみのその苦悩が偶然ではなかったとしたら… 』

SYSTEM :
 淡々と語る男の言葉が真実なのか嘘なのかを測る術はない。
 今までの態度に嘘偽りがなかったとしても、だ。

 …だが、もしもそうならば。
 あの時の“どうして”と嫌な気分が、誰かにとって意味のあるものならば。

天導 ルクス :
「それは、」

 復讐。生きてきた中で凡そ浮かぶことのなかった言葉に息が詰まる。
 でも、でも、だ。言っていることの欠片でも合っていたとして、オレの死に…… ……他意があったとして。

天導 ルクス :
「そんなの、…… ……何で分かるんだよ」

 それでも。何となく、嫌なものを感じる。
 何となく…… ……その、復讐という択自体に、だ。それこそ、要領を得ないものだと自覚もあるが。

“雷人” :
『 偶然であってほしいことが、偶然だった試しなどないからだよ 』

“雷人” :
『 …きみ自身はいま選ぶ力を得た。きみ自身を呼び戻す術を得た。
  そのうえで、もし今怒りを持つ余地があるなら 』

“雷人” :
『 きみには…世界になぜを叩きつける義務がある 』

“雷人” :
         あした
『 きみからあらゆる可能を奪い去った仕組みに、摂理に。そのようにする義務だ。
  生まれたものには、生まれたが故の役割がある 』

“雷人” :
         ・・
「きみはわたしの…同志になれる」

SYSTEM :
 …あるいは。

 男があなたのもとを訪れた理由は。
   ・・・
 そのあなたを誘いに来たがためだった。

SYSTEM :
 何かになることを、彼女は権利と呼び、彼は義務と呼んだ。
 …敵意の視線を“雷人”に向けながらも、おそらくは明確な差のあるハーフィの意識はあなたに向いているが。それでいて、あなたに何れの選択肢を誘導しようという意志もなかった。

SYSTEM :
 …それが実利なのか、別の感情なのかを測る術も当然ない。
 その言葉に含まれた意図をどうとるのかも。

天導 ルクス :
「…… ……」

天導 ルクス :
 “きみには世界になぜを叩きつける義務がある”。
 “きみには世界を救う権利があるの”。
 投げかけられた言葉に、彼女に与えられた言葉が重なる。重なって、こんがらがりそうになって……視線を彼女へ向ける。
 敵意はあちらへ、意識はややこちらへ。静観している。……してくれている、という方が正しそうだ。けど。

天導 ルクス :
「…… ……オレがその、あんたの同志ってのにノっちゃったとして。
 この子は?」

 オレは、ともかくとしてだ。
 次に気にすべきは、“狙い”の一つでもありそうなサイバー・スプライト―――多分だけど、ハーフィのことなんだろうと思う。
 彼女のこと、少し聞いて……それをほっぽってどうのこうのするワケにもいかないのは確かだ。

“雷人” :
『 そのことか 』

SYSTEM :
 あるいは…。
 今その時、あなたは、当たり前の反対側にありすぎる出来事が大挙する現実に対し。
 首を縦に”振らない”理由を欲したのかも知れないが。

SYSTEM :
 結論から言えば、それは良くも悪くも。気にした通りだった。

“雷人” :
     ・・
『 彼女の機能は、わたしの目的に必要でな 』

“雷人” :
   ネットワーク
『 この電子世界の表層にいるうちに、掌中に納めさせてもらう。
  きみが頷く、頷かない…出来ればそれは前者が望ましいが、この話に関しては、どちらだろうと関係はない 』

SYSTEM :
 男に虚偽を弄するという賢しさはなかった。いや、あるいはただ一点を除いて“その態度”を取り続けたこと…会話を可能なものと振舞って見せた行いそのものが大人の賢しさだ。

 あなたに対する譲歩の限界点は、あなたに関することだけ。男が一歩、歩き出す。

SYSTEM :
 あなたは、あなたが知っている通り…。
 フィクションの側の住人じゃない。

 たとえ其方に引っ張られたとしても、昨日まではそれをガラスの向こう側に置いて、主観一週間前まではそれを夢物語のケースに仕舞い込んでいた立場柄だ。
 いきなり実力行使の雰囲気が漂った時、どうしていいかなんて思いつくはずがない。

SYSTEM :
 ………だからだろうか。今度は逆にハーフィが、あなたの前で笑った。
 ひょっとすると、些細なことだと言いたげに。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈彼…なるべくあなたに敵意を持ちたくないみたい。なるべく、よ〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈だから…ごめんなさい。来た道を戻って。
 まあ、言い出しっぺはいないけど、さっきの話はきみ一人でも叶えられるかもしれないし〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈………でも…うん。もし彼に頷くなら、それでもいいわ。
 良いことじゃないけど、良いことだけで生きていけないでしょ〉

SYSTEM :
 恐らく他意なく、彼女は、あなたの手の届く範囲からすり抜けようとした。
 逃げる、の発想があったのは途中まで。男は雷そのもののような存在で、彼女がもしどれだけ強くても、あなたを庇いながらどこまで、どの程度逃げたらいいのかも定かでない。
               ・・
 そして男に、そもそもあなたの自由を阻む意志が積極的にないと来たら、ルクスの人生の障害になるのは彼女だった。

天導 ルクス :
「あ、……」

 ……いや、いやいや。不味い、と思考が濁る。
 誠実で、真っ直ぐなように見えはじめていた男の挙動が、彼女へ向く。
 故に……少し、身が竦む。フラッシュバックするのは先程の雷光と、現れたときの轟き。

天導 ルクス :
 ……いや、だから。
 そこでこちらに笑い掛けられるのは、どうしてなんだ。
 機能とか、どう聞いたって普通じゃないこと言われてるのに。

天導 ルクス :
 ……ああ、もう!変に竦むなよ、そんなんじゃなかっただろって!
 離れかけた彼女の姿を見送る―――のは、きっと、良くない。
 両の手で、自身の頬を気付け代わりに叩いてみた。

 分かったことも分からないことも、突き付けられたことも色々あるが。

天導 ルクス :
「……女の子に守ってもらって、逃げても。あの人に着いてってハーフィのこと無視しても。
 流石にカッコワルすぎるでしょ!」

 じゃあ、どれだけオレに出来ることがあるのか。と言う問題に立ち返ってしまうが。
 それを練るのはこの際、後にしよう。ばっ、と二人の間に飛び込む。

SYSTEM :
 あなたの知っている限り…。
 目の前で心の底から”今やらなきゃ”がある時にそうしないというのは、した時よりもずっと後悔することを教えた人間が一人いる。あなたの母親だ。

SYSTEM :
 そして普段の態度はさておいて、いざという時には自分の身の上を顧みずに家族のために居てくれたような、もっとも身近で等身大の参考例がいた。あなたの父親だ。

 …あなた自身が何より実行してきたではないか。何かを変えるときには自分から、だ。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈───!?〉

SYSTEM :
 それが、蟷螂の斧を承知の強がりなのか。本心からの威勢の良さだったのか。
 そんなことは、あなただけが知ればいいことだ。

 そしてその行動が客観的にどれほど無謀かは、あなたが知っては足の止まる行いだ。

SYSTEM :
 事此処に至って”電子の妖精”の非を挙げるならば、
 誰もがその言葉に素直に頷くわけではないということを念頭に置かなかった点だったが、そんなことは問題でもない。

 立ち向かった少年の所作に、男の表情は変わらない。嘲るでもない。脅威と見るでもない。残念と首を横に振るでもない。

“雷人” :
『 ほう。向こう見ずな………、いや。
  違うな。承知の上でそうするのか 』

SYSTEM :
      ・・
 そもそも…それを見て、見苦しく言葉を並べてくるようなタイプではないと。
 見ていれば、話していれば、わかるはずだ。

“雷人” :
『 いいだろう 』

“雷人” :
『 では、その対価を支払ってもらう 』 

SYSTEM :
 ・・・
 やめて、という悲鳴のような静止の声より早く。
 あなたに向かって指が持ち上がる。

 瞬きのうちに、蒼い稲妻が、亜光速の世界の中で奔った。 

SYSTEM :
 非常に大人気ないことに、先ほど見せたような加減を伴う、見せるためのものではなかった。
 あなたに対する裏表のない言葉と、脅威となる前に消し去るという、その態度は両立し得るものだからだ。 

SYSTEM :
 それを見たあなたの感情が後悔だったのか、
 それとも別の何かだったのか。
 稲光に掻き消えた声が答えだったかもしれない。

 ………そのままならば、だ。

SYSTEM :
 だが。
 瞬きのうちに到達するはずの雷を、あなたは視認できている。その事実に土壇場になって気付いたのか。

 あるいは本当に無我夢中で“何かできないか”と思った結果なのか。それはわからないが。

SYSTEM :
          ・・・・
 あなたには一瞬だけ迎え撃つ時間があった。

天導 ルクス :
 ああ、やっちゃったな!

 耳に響く、静止の声。ぱちり、と輝く蒼い稲妻。
 そこに籠る感情こそ分からないが、当たれば死ぬだろというのは想像がついた。あれ?死ぬ、で良いのかオレの場合も。

天導 ルクス :
 ただ、違和感があるとするならば。
 雷光が身を焼く―――などという悲劇に到達する前に、それを“認識”出来ていることだった。

 脳裏に過るのは、先ほどほかならぬ彼自身に伝えられたこと。
 レネゲイド、だとか。オーヴァードだとか。

天導 ルクス :
「……だ、あああッ!!!」

天導 ルクス :
 じゃあ―――……ひょっとしたら。『出来ちまう』んじゃないか!
 そう思い込んでから行動に移すまでは早かった。オレ自身から放たれる稲妻が見えた気がする。
 その時点でかなり驚きだったが、そんなこと言ってる場合でもない。必死にそれを掴んで……斬り払う形で、精一杯ぶん回してみる。防げればヨシ、なるようになれ、だ!

SYSTEM :
 ・・
 それは確証も何もない思い付きだったが、悲観や自暴自棄のみで構成されたわけでもなかった。
 もしかしたら、を実行したあなたのしがらみのなさが、結果としてその手元に雷を生む。

SYSTEM :
 色合いは違うかもしれない、使い方は違うかもしれない。
 効率性や巧緻の度合いについては敢えて語るでもない。

 だが、それは間違いなく。
 間違いなくもう一度殺し返すつもりだった蒼き雷霆を切り返した、稲光の一振りは。

“雷人” :
  ・・・・
『 電子変換……… 』

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈切った───!?〉

SYSTEM :
 そう来たか、という呟きには。
 幾分かの想定内と、幾分かの想定外が同時に交じっていた。
 仮面越しには、何を思っていたかを窺い知ることは出来ないが………。

 あなたの人生初の能力行使は、雷を切り裂く雷…。
 一度たりとも握ったことはない、重みすら感じない、心臓の鼓動や無自覚の高揚感───レネゲイドの囁きを受け取りながらも、案外やってしまえば出来るフィクションの極地であった。

“雷人” :
『 自覚なく使いこなしたか。
  だが、それならば二度目は─── 』

“雷人” :
『 …いや、そうも言っては居られんな 』

SYSTEM :
 そして、あなたの能力の自覚と理解が追い付こうというまさにその時のことだ。

 …あとで、あなたは彼の語る“レネゲイド”を知る片割れと出会う折、ついでにシンドロームについて教わることになるが。
 あなたはその中でも、ブラックドッグ・シンドローム…電撃を操り、近代社会にもっとも迎合したシンドロームに、きわめて高い素質を持つオーヴァードであった。

SYSTEM :
 そして、それは目の前の男も同じであり。

 それ以上に、あなたと”雷人”には。
 ひとつだけ、共通項があった。

SYSTEM :
 相手の攻撃も同じ電気を用い、それを凶器と殺傷力にダイレクトに変換した余技であり。
 あなた自身の攻撃も、自覚していないだろうが、概ねそのような純粋な電気を用い変換した攻撃だった。

 その瞬間、あまりに似通うレネゲイドの性質が。
 それを”巧く”扱える雷人の特性と掛け合わさって。

SYSTEM :
 ………あるいは。
 あなた自身に結び付くもう一つの意志と合わさって。偶発的な事故を起こした。

SYSTEM :
【Check!】
 
Effect:【ドミネーション】【電子結界】【ショート】【電波障害】【????】【超越的能力】
Player:雷人/天導ルクス?
Target:シーン

[Add's]
・シーン内における電子機器が使用不能になる。(シーン終了時に解除)
・シーン内における一定範囲が「■■化」する。(再使用で解除される)
・本来発生する現象は「電子の流れを可視化し、その空間内に侵入する/その流れを改変・操作する」行為だが、
 複数のEEが追加使用された状態で同時衝突したことで、内容が変化している。 

“雷人” :
  ・・・
『 やはり…きみがそうだったか… 』

“雷人” :
『 ならば猶のこと、共に行きたかったのだが 』

SYSTEM :
 もっとも親和性の高い能力同士の衝突で、空間そのものが軋むような響きを上げる。
 衝突と共に散る火花が、あなたの中にある、無自覚だった激しい昂りを刺激する最中…。

SYSTEM :
 視界にいたハーフィの姿が、一瞬ノイズのようにぼやけて。
 声が響く。あなたの内側と、外側から、同時に。

天導 ルクス :
「う、おおっ……!」

 やった、やった!まずは一発なんとかできた!
 雷を斬る雷。無我夢中で振り抜いたソレは、正しく効果を発揮したらしい。
 初めてにしては上手くいった気がする。舞い上がる内心に対して、頭の片隅では抵抗を承知の上で放たれるであろう二撃目に恐怖がチラついて仕方がない。

天導 ルクス :
 ……けど、オレに出来ることがあるって分かっただけで一旦は十分!

 興奮やら何やら、様々な感情が入り乱れる最中に事は起こった。
 雷……もとい、それを生じさせたレネゲイドがぶつかった故か。何か他の要因があるのか―――自分自身には理解できてない、何かが。

天導 ルクス :
「は、あっ!?なんて……!?」

 空間が軋む。視界に映るハーフィの姿がぼやける。
 響く。声……声?誰の。どこから?何だ……!?
 思わず、少女に向けて手を伸ばして。

SYSTEM :
 接触した電子同士、この空間においては何よりも勝る雷撃の能力者/■■■■■■■同士の微かな接触。
 その事故が起きようが起きるまいが、そもそもあなたの現状を占める割合は分からないことが遥かに勝る。

SYSTEM :
 ならばどうするか…その手の合理とは無縁の発想で伸びた手。
 それが一度空を掠めてから、少女の手を、ぱし、と掴む。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈───!〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈だいじょうぶ──いえ、何か、来る…?!〉

SYSTEM :
 あなたの人生最初の、夢想の向こう側に置いていた出来事との接触は、このような結果から始まった。
 出会って数分の少女に、成り行きで力を貸す。あるわけないと思ってた、漫画みたいな出来事。

SYSTEM :
 ………そして驚くべきことに。
 我武者羅のスタートは、本当の意味で出だしに過ぎなかったことを、あなたはこの後思い知ることになるのだった。

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 同時刻───
 イリノイ州、UGNシカゴ支部───

SYSTEM :
   モニター
 状況の観測を続けていたはずの一室は、剣呑な空気に包まれていた。

SYSTEM :
 当事者たちのみが口元を緩め、軽薄、暢気に言葉を交わしているが。
 少なくとも、武器を携えた有事の人間…。
 最初から本腰を入れて乗り込むことも視野だった“道化の真実”含む4名のうち、彼を除いた3名にそんな気配はない。

SYSTEM :
 UGN同士がこのような内部争いをすることなど基本的にはない。
 彼らのお題目を鑑みれば、そこに欲望だの私情だのが生まれることは然程なく…。
 後者が生まれたとて、その矛先が同じ志に向きようもないからだ。

“道化の真実” 千城寺薫 :
「だがここに例外が存在するのだっ!」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「と、いう切り出し口から入りたいんだが、どうだろう。確か………。
  Dawine
 “淘汰する者”?」

SYSTEM :
 例外は往々にしてある。
ホワイトフェイス
 ”道化の真実”の柔和な笑みの内側に湛えた英知の光が捉えた先。
 シカゴ支部長、アミル・トロイは、シカゴ都市部の惨状の中でなお、お偉方の言いがかりだとばかりに肩を竦めて応じた。

“淘汰する者”アミル・トロイ :
「うーん、“道化の真実”殿。
 御宅、こんな再建したての窓際支部に何かしに来たと思ったら。
 なにか、噂のトンチ(キ)をかましに来たということですか?」

“淘汰する者”アミル・トロイ :
「こんなに大勢のオーヴァードまで連れちゃって」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「お望みとあらば聞かせてあげよう…」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「ミュージカル風に」

“淘汰する者”アミル・トロイ :
「すんません普通にお願いします」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「僕ら目指した~(シャングリラ~)
 ここがそうなの~(そうよアメリカ~)」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「手を取り合って~(まあ大変!)
 さあ進むのさ~(結果を出したまえ~)」

“淘汰する者”アミル・トロイ :
「聞けよ」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「そんな、第二部まで用意してきたのに…」

SYSTEM :
 残念気にしながらも表情を変えない薫の姿は、この状況では道化以外の何物でもない。
 現在進行形で起きていたことだけを思えば、彼の行動は作戦妨害に等しいまである。

“淘汰する者”アミル・トロイ :
「御宅いまシカゴの作戦区域じゃ広域の通信途絶と監視衛星からの情報途絶が起きててね?
 ウチは頻繁に侵入されてるFHの摘発平行しててですネ?」

“淘汰する者”アミル・トロイ :
「御宅のビックリドッキリ人間ショー付き合ってる暇ないんだけど、
 そのこと把握してる? 把握してますよね多分?」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「失敬な、してるともっ!」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「UGNの運命的な出会いを果たした次の後輩たちが、今日も今日とて一期一会の出会いをし!
 オーヴァード斯くあるべしというカンジの交流のち、朝ごはん前に片づけてくる、というこの瞬間だからこそ来たんじゃないか!」

SYSTEM :
 大仰な身振り手振り。しかし、彼の動作にエージェントたちは眉一つ動かさない。
 理由があるからだ。

 本当に業務妨害と暇つぶしで支部に乗り込んであれこれする“だけ”の男ならば、
 彼は流石に評議員の信頼(※セントジョージセレクションより抜粋)など置かれていない。序にそれをすることは多々あるけれども。

“道化の真実” 千城寺薫 :
              ・・
「その僅かな前後の時間しか、きみは尻尾を出さなかった。いや、掴んで欲しかったのかも。
 きみ…1年の間は、本当に『普通のUGN支部長』しかやっていなかったようだからね」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「ただ『普通のUGN支部長』をやりながら『普通のFHセルリーダー』なんてやったらボロが出るのは当然だし…。
 というかこの瞬間に限ってはハメを外しすぎだ。うん、アレはない」

“淘汰する者”アミル・トロイ :
「おや。アレとは?」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「きみのそれは、収容前のやり口が同じじゃないか。
           ・・・・
 手間暇かけて自分から思い付きで台無しにするなんて。とんでもない刹那主義だ」

“道化の真実” 千城寺薫 :
        aMirtory
「あと───アミル・トロイはない。
 きみ、犯人の名前言っちゃってるじゃん」

SYSTEM :
 くつくつ、と喉を鳴らす音。

SYSTEM :
 そう、例外…UGNがUGNに武器を向ける数少ない例外的なケースがある。
             ダブルクロス
 武器を向けられた先が、何れかの裏切り者だった場合だ。
 日常と怪物の半端者としての意味ではなく、その“理由”にさえ背いた本物の背徳者。

SYSTEM :
 アミル・トロイ───。
 否。

“道化の真実” 千城寺薫 :
「そうだろ? “H³”」

“道化の真実” 千城寺薫 :
  Moriarty
「モリアーティもひどい皮肉を考えるものだ。
 自分が育てた弟子のひとりに、自分のライバルと似たような名前をつけるなんてね」

“淘汰する者”アミル・トロイ :
「─────────」

“淘汰する者”アミル・トロイ :
      Tu eres correcto
「フ、フ、フフフ…正解!」

SYSTEM :
 根城に誘い込み、絡め捕り、手を変え品を変える殺人鬼。
 名探偵ではないほうのホームズとして、その筋に知られた悪人の名を賜った男であり。
 集団脱走の折、最後までその姿が見つからなかった男がいたという。その名がソレだ。

SYSTEM :

 その名を“H³”───ハリー・ハワード・ホームズ。

“淘汰する者”アミル・トロイ :
「That's right、Risposta corretta、정답、Richtige Antwort!
 あァ、英語のほうがいいかやっぱり。では正解の理由をお聞かせ願おうか」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「まさか。彼の弟子の確保にはむか~し関わったんだよ僕。
 当時追っていたことは全然違ったんだけど」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「…で、もっかい聞くけどなんで?」

SYSTEM :
 しかし唯一最大の誤算、否、UGN当時に発覚していた情報に曰く。
 冷凍保存の処置を下されたハリー・ハワード・ホームズはただの■学生だった。

SYSTEM :
                        ・・
 では目の前の男は何なのか? 誰なのか? 答えはこうだ。

“淘汰する者”アミル・トロイ :
                   エゴ
「その前に…答え合わせの最中まで他人の人格着るもんじゃないな。ちょい待ち」

SYSTEM :
 たまたま都合の良い”空き”が出来た、シカゴ支部に入る予定だったUGN支部長の席。
      ホテル
 ここを自分の根城にするべく乗り込んだ大量殺人鬼。

SYSTEM :
 UGNがこれに気付かなかったのは、直前まで本当に彼は裏表なく普通のUGN支部長だったこと。
 冷凍保存された彼女が、そうなる前からストックしていた予備だったこと。
 実際に彼女が性格を模倣して作り上げ、入れ替わったアミル・トロイは勤勉にUGNの職務を遂行し…。

SYSTEM :
 そして今日。

“H³” :
「ドジャジャジャーーーーン!!! 
 “H³”、見ッ参ッ! だ・ぜ!!!」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「きみそんなキャラだったの?」 

“H³” :
「失礼、説明よろしいですか?」

“H³” :
「これは一年も裏表なく肩の凝る勤勉な支部長などという、飽きの塊と書いてモブキャラのような行動ルーチンを演ったことが原因です。
 私は見ての通り非常に飽きやすい性格………なのに月日にして300日以上も判を押した大人の生活など送ってしまい、みごとに………」

“H³” :
「自分のキャラが思い出せなくなってしまいましたって寸法でした…。
 ぐす…すみません、迷惑ですよね…」

“道化の真実” 千城寺薫 :
     ことば    たいど
「迷惑なのは発言じゃなくて行動かな~」

“H³” :
「フ───、正論だぜ、“道化の真実”…!」

“H³” :
「ああ、それで回答すると…。リスペクトだよリスペクト。
 あの御仁、かなり無理やりなアナグラム使ってヘマしたのが最後の事件でね」

“H³” :
「聞いた感じ、言葉通りの悪の弟子はオレ様がファイナル! 七人の侍ならぬ四十人の犯罪者が笑わせる!
 行儀が良すぎで完全にコッチ染まっちまったらおしめーさ!」

SYSTEM :
 骨格から立ち振る舞いまで変わる”完全演技”など早々ない。あったとして、それはよほどの努力あってのものだ。
 彼女の場合はそういうものでない。特に彼女の場合、その嗜好と飽きっぽさは現在進行形で態度に出ているところだ。

 だから、シンドロームありきでその非常識は成り立たない。

SYSTEM :
 何が言いたいかといえば、
 とても分かりやすくジャームだった。

 ただの気分と発作的な欲望で世の中を容易く切り崩し、それでいて世の中には二度と戻ってこれない。自由に生きること以外のすべてが不可能な、流れ者たちの名前。

“H³” :
「ええ、話はまったくもって変わりますがセントジョージ氏。TVゲームはプレイしたことがありますか?」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「ときめきメモリ○アルのヒロインをテレーズちゃんに置き換えた改造品をやらせたことなら…」

“H³” :
「キャッチボールで投げた球打ち返して三塁に走り出さないでくれる?」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「協賛がいっぱい居たんで説教ボイスだけ豊富に収録してあるよ」

“H³” :
「ヤダ…こんな部下がいるなんてあのヒトなかなか絶望的…」

SYSTEM :
 のちに“道化の真実”は弱冠10代の被害者に真実が明るみになったとき、
 目の前が物理的に真っ暗になったというがさておき。

“H³” :
「まー聞いてらっしゃい見てらっしゃい。
 どんなゲームも一番冷める時と萎える時があるのよね。
ゲームクリア
 勝利条件が、まだこれから! って時に見えちゃった時」

“H³” :
「ラスボスが中盤に出てきてそのまま倒した、目標にしていた宝物が見つかった。
 ゴールが見えると“あとは消化試合だな”ってなって冷めちゃうってワケ。ない? そーいうの」

“H³” :
「ええ、つまり私様は予測の付いた出来レースという展開を非常に嫌っております。
 その怠惰を打ち崩す絶望的好奇心に基づいて、ただいまフライングを実行させていただきました。ご理解いただけますと幸いです」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「ふうん…じゃ、なにか」

“道化の真実” 千城寺薫 :
        こ こ 
「よりにもよってシカゴの協賛で、情報の出所が良く分からなかった相手が分かったのも…
 こんな自分のアドバンテージを捨てるようなやり方したのも…」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「ノイマンならやりかねないコトだけど、こんな露骨なことないなとも思ってはいたことも…。
 身内も押っ取り刀っぽいけど、その職務放棄も。だいたいわざとってことだ」

“H³” :
「正解! だぜ…。
 なお、根拠は割愛するぜ…」

“H³” :
「お分かり? 
 うちの陰気なリーダーがひとり勝ちしちゃうなんて予測可能な展開のために、
 私様はこんなクソダセー眼鏡つけてまっとうな苦労人支部長なんてやりたかないワケ!」

“H³” :
「だから御宅の息子さん娘さんと、私たちのリーダーが偶然バッティングするように舞台を作りました…。
 すみません…こんなの誰にとっても絶望的ですね…」

SYSTEM :
 イリノイ州某病院に潜伏/侵入したというテロリスト集団に関する情報を寄越したのは、他でもない彼/彼女。
 あるいはどちらにとっても、議論の余地さえない裏切り者だった。

“道化の真実” 千城寺薫 :
                 ナメプ
「どうでもいいけど…プレイスタイルが怠惰気味だねキミ」

“H³” :
サイバースプライト
「電子の妖精が今アメリカに来るなんて絶望的な間の良さ、笑っちゃうのが最初なワケよ。
 言うてもアタシ、別に陰気仮面の都合が上手く転ぼうが転ぶまいが、そこは正直どうだっていいんだよね…」

SYSTEM :
 UGN支部長の声も姿もかなぐり捨て、道義にもとる思想を披露した少女の前に。
 変わらない笑みのまま、どこか感嘆にも似た声を薫が洩らす。

SYSTEM :
 一年の間、普通のUGN支部長をやりながら、普通のFHセルリーダーをその都度、手を変え品を変えて演じてきた。
Law Chaos
 秩序と混沌のどちらでもない。・・
 彼女は、永遠に今日を繰り返す茶番をこの街でやっている。

SYSTEM :
 その女が態々尻尾を出した理由について、語った以外のものがあることに薫は薄々勘付いていた、が───。

“道化の真実” 千城寺薫 :
「いやあ…こんなことがあってもいいようにと、彼女から話を聞いてよかったよ」

“道化の真実” 千城寺薫 :
     ホテル
「ここが次の根城だったかな。ここまでだ、“H³”。もう一度頭を冷やしておいで」

SYSTEM :
 それは行動を変える理由にならない。
 ここで撃鉄を上げる前に打倒する。
 その判断で、彼は横槍を入れたのだ。

SYSTEM :
 時間の噛み合った、アメリカの激戦区育ちのエージェント三名に本部仕込みの貴(奇)人一名。
 まともなFHならば瞬殺し、“まとも”でなくとも正面からやり合うには十分。
 多少の特異性も異常性も対応できる取り揃えがされていた。

“H³” :
「頭を…冷やす?
 フッ…寝言は寝てから言うもんだぜ、旦那…」

“H³” :
「私様はゲームや漫画の悪役ではありませんが、そのように振る舞うべきと自認しております。
 …よって、いま語ったのは負けを覚悟した自白ではありません。そちらの思考レベルで分かるようにお伝えしますと、」

SYSTEM :
 しかしその異常性と特異性において。
 対応どうこうの問題ではなかった。

SYSTEM :
 答え合わせに曰く。
 
 彼女は正面衝突において、
 彼女自身が冷めるくらい敗北の余地を感じていない。

“H³” :
「───勝!利!宣!言!
 なんだよバァァァァカッ!」

“H³” :
  Sloth Sin       A c c e s s
「七星霊装・怠惰───絶望的に起動しな!」

SYSTEM :
           Calamity
 この場における女は無敵の厄災であった。

SYSTEM :
【Check!】
 
Exhaust:【愚者の契約】【傲慢な理想*3】
Player:?????
Target:?????

[Add's]
・指定した全ての対象者に衝動を無視して『究極存在』を会得させる。(代償・解除条件は不明)
・このEロイスはシナリオ開始前に発動されており、
 Eロイスの所有者はこれらのEロイスを「未使用」状態で所持している。(※カウントを共通して扱う) 

SYSTEM :
 瞬時にリザレクトしたオーヴァード2名。
 したもののその場から動かないオーヴァード1名。
 薫自身だけが戦闘の射程内にいなかった。だから、被害は彼女だけはなかった。

 …その薫から薄らとした笑みが消える。焦燥ではない。
 懸念と予感が的中し確信に変わったとき、意を得たときほど人の面持ちは神妙なものになる。

SYSTEM :
         ジャーム
 言うに及ばない、なれ果ての仕草と、排気がもたらす無敵の現象であったが。
 攻撃の結果は妙だった。

 そのリザレクトしたオーヴァード3名全員、その場で何をされたでもない状態から爆ぜるように自壊したからだ。

“道化の真実” 千城寺薫 :
「ソレは…」 

“道化の真実” 千城寺薫 :
                レネゲイドクリスタル
「僕が思っていたのとも、すこし違うが。賢者の石だね」

SYSTEM :
 それそのものが、既に人智を半分超越するオーヴァードを更に隔てるほどの、超高純度のレネゲイド体…。
 原理はともかく原材料は確実だった。

 彼女をそうたらしめたものは、賢者の石と呼称される存在だった。

“H³” :
「賢者の石と書いてレネゲイドクリスタル…。
 如何にも、ってところだな…やれやれだぜ…」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「そう、如何にもだよね。だが…。
 きみのそれ、厳密にはちょっと違うでしょ?」

“H³” :
「さあ? メカニズムは知らないわよ。コレ頂きモノだし。
 何よりさあ、分からないものは分からないままに出来るのが現代人の美徳じゃない?」

“H³” :
「それとも…20年より先からずっと調べて、レネゲイドのこんなこともわからないんですか? 私もわかりません…くすん…」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「興味はあるね。どんな恥知らずな方向で希望を踏み躙ってくれたのか」

“H³” :
「えっアンタ…ここまでの言動で“““恥”””の概念分かるヤツだったんだ」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「失敬なっ、分かるに決まっているじゃあないか!
 僕としてはそこまでのシロモノの製造方法に興味がなくもなくもなかったが…」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「こればかりは例外と、最初に未練を断っていたからね。彼女の選択に悪いもん」

“H³” :
「へ~え…」

SYSTEM :
 年を忘れて軽薄に笑い合っていた男から、その軽薄さは失せていた。
 こればかりは別だと。だが問題は…。

SYSTEM :
 道化の博識に“解決方法”がないこと。
 あるいはここで彼を知ることが出来たことこそ。
 ”好きな時に好きなようにした”彼の功績であるかもしれないが。

“H³” :
「では、未練のお手伝いに助力させていただきましょう。
 僭越ながら私、語り部を務めさせていただきます」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「聞かせてもらおう。このシーンだいぶ誇張して書くからね」

“H³” :
「御宅ここから生きて帰るばかりか本にするつもりなの? 本気?」

“道化の真実” 千城寺薫 :
「ちなみに絵本だ」

“H³” :
「格好悪いまま歴史に残ってしまいそうなチョイスをされました…」

“H³” :
「じゃ、改めて自己紹介したげる。
 ・・・・・・・・・・
 私様と愉快な仲間たちの名前、それは───」

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

南極・秘匿支部エリア :
 

SYSTEM :
 雪と氷に閉ざされ、人の立ち入る余地のないこの南極大陸にも。
 FHの魔手は伸びる。厳密には、彼らの欲望に叶うものがある限り、どこにでも伸びる。

 ゲート───秘匿され、封鎖され、未だ全貌の明かされない南極のアンノウン。
 その調査用に設立されたFH研究セルの拠点。
 厳重なカモフラージュを潜り抜けた先、けたたましく鳴る警鐘の中に、先ほどまで人の声が混ざっていた。

SYSTEM :
 ジャームか、普通の職員か。この際それはどうでもいい。
 全員が寸分狂わず撃ち抜かれ、それはもう、二度と立ち上がることはない。

SYSTEM :
 南極基地を制圧したのは、鋼色の巨人。
 平時はその関連性から持ち出そうともしない鋼鉄の殺人機。

SYSTEM :
 かつて名にしおう古き亡霊の主が用いたという、レネゲイドによる人機一体の殺戮兵器。
                         エルクレス・ヒュロス      
 ───その名、秩序を下す英雄たるエルクレスの名を継ぐ、英雄の子。

『?????』 :
「───制圧完了」

『?????』 :
「内部の仕上げに入ろう。
 何だかんだと言っても南極…人間の生活圏にしようなんて誰も考えもしなかった場所だ。長居はしたくないな」

『ジュピターXIII』 :
『坊ちゃま、こちらホッカイロ(物理)でございます』

『?????』 :
「“排熱”をそう主張するのは四度目だ。学習能力がないのかい?」

『ジュピターXIII』 :
『日本のトヨトーミを真似してみました。キャッ』

『?????』 :
「わかった。…これだけ無駄口を叩いていても迎撃が出ない。
 やはりFHといってもピンキリだな。母さまたちとは比べるべくもない」

SYSTEM :
 勝って当然だ、と。白い息を吐き、ピンキリのFHと称した、南極でも活動可能なほど人間辞めた生き物たちを虫けらのように潰した最高傑作を畳む。
 南極基地を進むこの少年に任された任務と担当地域は、ほかと比べても明らかに手狭だった。

SYSTEM :
 あるいは、そのような他意を“雷人”が伴った。………だとすれば何のために?
 その少年に知る由はない。

『ジュピターXIII』 :
『御尤も! ルーン坊ちゃまに掛かれば南極の秘匿チャンバーなどではなく世界さえも!
 それこそが、『ルーン』の最高傑作の───』

『?????』 :
「…ジュピターXIII」

SYSTEM :
 その素材/目付を顎で指す。
                オーダー
 饒舌で一方通行の自動人形が、その指令で沈黙した。

『?????』 :
「任務続行だ。連中の設備を使わせてもらう」

『?????』 :
「誰もが結果のみが真実と嘯くならば…。
 母さまに代わって、僕が、僕たちの存在価値を証明しよう。行くよ、XIII」

『ジュピターXIII』 :
『ははーッ! これこの通りでございますぅぅ』

『?????』 :
「…それ、流行り?」

『ジュピターXIII』 :
『社会勉強的にはファンタジーとかのがよろしかったでしょうか』

『?????』 :
「いや、どっちでもいい。だが…そうだな、次は夢のないピカレスクロマンを擦ってくれ」

『?????』 :
「明るい話は、いつかの能天気な顔を思い出すからね」

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

東欧・黒海エリア :
 

SYSTEM :
 黒海の中枢に浮かぶ、某国の中型艦。
 時代錯誤のそのフォルムには、時代を先に進めすぎたある機能がついていた。

SYSTEM :
 EXレネゲイド───レネゲイドを『兵器』とする、20年の進歩の悪用品。
 水面下の兵器競争に誰が入れ知恵し、発展させたのか。それは定かでない。
 ただ同時にその阿漕は、激化していくR案件に対する国家の備えでもあった。

SYSTEM :
 如何に国家の息が掛かったとて、艦内にUGNのエージェントがいたのがいい証拠だ。
 万全の備えは、しかし驚愕と共に、わずか数秒で打ち砕かれた。

SYSTEM :

 5分前───警備システムによる迎撃機能のすべてをすり抜けて、オーヴァード1名が接近。

SYSTEM :

 3分前───迎撃用ドローン、アンチワーディング装備の護衛兵、壊滅。

SYSTEM :

 1分前───炉心となるEXレネゲイドの第一防衛ライン突破。そして、現在。

* :
『ば』

* :
『バッ…バカ、な』

* :
『あんたがなぜここにいる!』

* :
ナハトヴェヒター
『“無明の守人”は死んだはずだ!』

SYSTEM :
 最後のUGNエージェント───国家のしがらみに辟易したがために、
 いざとなればこの艦の実践運用を阻害するための決意を以て潜り込んでいたアーリア人の青年。

SYSTEM :
 彼は対峙した“テロリスト”の姿に覚えがあった。

 今はさておき、嘗てとあらば知られていないはずもない。
 消息の絶ち方も、決して珍しくなかった、その類のオーヴァードだ。

* :
『いや、生きていたって───』

* :
『あんたはそれに人生を滅茶苦茶にされることを何より───』

『?????』 :
    ・・
「────どけ」

SYSTEM :
 死んだはず。
 その言葉は正しかったが、認識の答え合わせを彼がすることはなかった。

SYSTEM :
 氷像のように凍てつき、固まり、なんの慈悲もなく蹴り砕かれた男の意識は永遠に途絶えたからだ。
 全員がこのようになった。彼女に躊躇、という言葉は最初からありもしない。

SYSTEM :
 片側には魂の底から凍り付く憎悪が吹き荒び、
 片側には今もなく焦げるほどの狂おしい嚇怒が燃えている。

 …炉心に向かうと同時に、手元のEXレネゲイドが妖しく輝く。
 死を予言するヤドリギは、その意味と役割を終えていた。

『?????』 :
「私だ」

『?????』 :
「5分後に後続を到着させろ」

『?????』 :
「一人で片付く。終わらせる。ただ…いや、いい。
 分かってるならいい。そうすることは、本意ではない」

『?????』 :
「おまえも、おまえも、顔を見せるな。
 全員順番の違いだ」

SYSTEM :
 なぜなら女は───死人であった。

『?????』 :
「なあ…見てくれ」

『?????』 :
「おまえが繋いでくれた命は最後に…。
 おまえを失望させると知りながら…」

『?????』 :
「…この戦場に、再び舞い戻った」 

『?????』 :
「………ツムジ」

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

アジア・中国エリア :
 

* :
『敵襲! 敵襲!』

* :
『誰だ日本から“あんなもの”運び込もうなんて段取り立てたバカ! 
 どんなリエゾン様の思い付きだ!』

* :
『知るか! 迎撃しろ! なんかの弾みで目覚めたらこの世の終わりだぞ!』

* :
『その前にオレらが終わるんじゃないか!?』

SYSTEM :
 UGNの手が届きにくい国家は幾つかある。中東、ユーラシア大陸の中国はその中でも顕著だ。
 その秘匿性に任せた研究チャンバーの一つは、いま…。
 ・・
 未知に襲われていた。

* :
『第二部隊ロスト! 第三部隊通信復旧!』

* :
           オチ
『そいつらは第六と同じ末路だ! 
 間違っても行くな、食われるぞ!』

SYSTEM :
オーヴァード
 同じ化物とならば戦ったことはある。その先に行った成れの果てとも。
 不死の怪物という言葉に、彼らはこの上なく馴れていた。馴れ過ぎるほどに。

SYSTEM :
        ・・
 だがこれは───これは、どうだ?

SYSTEM :
 ・・・・・
 こんなものがいるならば───我々は何なのだ?
 怪物とはこのようなものであって…。
 我々は怪物“もどき”なのではないか?

SYSTEM :
 得体の知れない、を地で行くものを前に。
 冷血がデフォルトのFHとて、彼らの狼狽と疲労、緊張は頂点にあった。

SYSTEM :
 …そして。

* :
『一度戦線を下げるんだ! 隔壁を下ろせ! 通信が生きているうちに…』

* :
『うち、に…』

SYSTEM :
 隣のエージェントの姿がいつの間にか消えていた時。
 
 隣のエージェントが、別の生き物に生まれ変わったその時。
 彼は死期を悟った。

* :
『あ』

* :
『あ ああ あああああああああ───!!!』

SYSTEM :
 ぐしゃり。
 頭が柘榴のように弾け飛び、残る肉は数秒ですべて綺麗さっぱり消えた。
 新しい肉が地面を動き出す。次の獲物、腹に収まるに足るものを求めて。

 死ねるならまだよかった。
 彼は不幸なほうだった。

SYSTEM :
 その中に紛れて、襲撃者があざ笑う。
 彼に正体などない。なぜなら。

『?????』 :
「ふ…」

『?????』 :
「フフ、フハハ!」

『?????』 :
「エッヘッヘッヘッヘッヘッヘ………!!」

SYSTEM :
 怪物に正体などという言葉はない。

SYSTEM :
 ───誰にもその場を知られていないが故の、
  
   終わりようがない悪夢の始まりだった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

極東・日本エリア :
 

SYSTEM :
 神城グループの、然るオフィス。
 神城の重役のひとりが、そこで頭を抱えていた。

SYSTEM :
 彼は、日本きってのその大企業においては、もはや定年を迎えて久しいご老体のご意見番だった。

SYSTEM :
 だが創設者の血と偉業を知るが故に、その椅子にただ“血”の縁だけで座った小娘に従う義理なしと…。
 影では反早月で知られ、FHへの利用さえも躊躇することのなかった…。
 かつてを知るが故に、かつてに焼かれてきた男だった。彼が頭を抱えているのは、なんのことはない。

* :
『おのれ………!』

* :
『───おのれ、おのれッ!』

* :
『何なのだこの体たらく!』

* :
『買い叩いた旧式が瞬殺されたのは…まだいい。開発中のR兵器までもが足止めにすらならないのも、この際いい!』

* :
『だがこちら側に引き込んだオーヴァード8名が…』

* :
 ・・・・・・・・・・・・・・
『戦うことすらなく彼方に寝返るとはどういうリクツだ!』

SYSTEM :
 夜間の襲撃はあっという間だった。
 日常に罅も入れず、影も差さず。誰かが特に巨きなグループの動脈の一つに乗り込み、
 あっという間に中枢を制圧してしまった。

SYSTEM :
 神城の土台が断たれてはどうしようもない、と。
 彼は、彼の背信が露呈するのを承知ですべての戦力を提供し、迎撃に回した。
 神城改革派のエージェント集団、FHからの秘匿出向者。そのすべてがしかし。

SYSTEM :
 どういうわけか、戦うことさえなく寝返り…いまここに向かっているという。

SYSTEM :
 …その体たらく、軟弱さ!

 かつては日本政府の中核とさえ刎頸の交わりとなり、眉唾物とされながらも、
 彼の知る限りではすべてまことだった伝説を築いた神城が───どうだ! 見る影もない!

SYSTEM :
 彼は怒りを露にしていた。決して屈することはないだろうとしていた。
 おそらくここに訪れるだろう“そいつ”に、何を叩きつけるべきかを考えて───。

『?????』 :


「───応」

SYSTEM :
 強化素材の一室が、障子紙のようにバラバラに引き裂かれたとき。
 いや…。その本人を見たとき、その気概は消し飛んだ。

『?????』 :
「お! 此処に居ったか。
      ブタ サル テッペン
 古今東西、重役と馬鹿ほど高所上ると相場が決まっておる喃」

『?????』 :
         ヨシ
「…煙だっけ? まあ是」

SYSTEM :
 歌舞いた、男であった。狐面をつけた若者。
 見ればわかる。見るまでもなく理解できる。

『?????』 :
                      ショボ
「にしても儂の居らん間、どいつもこいつもまあ低品質くなりおってからに。
   ズルッコ
 折角無敵形態せんで来とるのに、せめて一太刀くらい浴びせに来んかい」

『?????』 :
    ホンマル
「やっぱり本社にイイのが控えてるうち、初手で潰すんだったか喃………。
                     シャーネー
 いや、喧嘩と祭りは派手にやらにゃ意味なし、妥協か」

SYSTEM :
 戦うまでもなく”膝をつかせた”のはこいつだ。この、歩く冗談みたいな男だ。

* :
『お…おまえは、』

* :
   ・・・・
『いやあなた様は………』

SYSTEM :
 …老人が10にも満たない、神城重役の“息子”だった頃。
 
 父に連れられて“神城”の偉業を教えられた時と、戦争で生き延びた時。
 老人は、二度伝説に出会った。

SYSTEM :
 最初はただ圧倒され、次は中国大陸で還れずとなっていた時、そこを徘徊する”彼”に命を救われたのである。

SYSTEM :
 その伝説の名は。
 現実はおろか、お伽噺を凌駕するものの名は…。

『?????』 :
「…呵々!」

『?????』 :
「呵々呵々呵々なんじゃい手前! まだ生きとったんか!
                      ウッソ
 すっっっかり爺になっちまって、分かっとったが虚像だろ!」

* :
『や………………大和様』

SYSTEM :
 伝説の名前を、神城の黎明に携わった…。
 先々代の代表。神城大和。

 …彼は膝を折った。
 勝ち負けは最初から分かっている。それはいい。
 そうと分かりながら、彼は抵抗する理由を持っていた。

SYSTEM :
 だが”そう”だと口にして、確信した時。
 抵抗するという気概、それを振るう“理由”がまるっきり失せた。

SYSTEM :
 重圧じみた威光。有無を言わせない、”道理”が服を着て歩くような有様。
 むろん彼にその気などないことはわかっている。
 脳では異常も、美辞麗句ほどでもない、むしろその反対側を極めたような性根も分かっている。
   ・・
 彼の性根が発揮される時代ではなく、そうとなった時は男は老齢だっただけのことで。

『?????』 :
    ネエム
「応。別の名義あるんだがまあいいか」

『?????』 :
          ウケ          シブ
「儂、蘇っちまった。苦笑るじゃろ? あんだけ伊達い辞世の句つけて…。
                 シ メ   
 せ~っかく後進に譲って、儂の人生幕引いたのに。“(黄泉から)来ちゃった”ってやつだ喃」

『?????』 :
                 ザマ
「自慢の面は───ほれ見い! この調子だが。
      ベイエイ
 やっぱり異国者の血が混ざってんのがいけねーのか喃?」

『?????』 :
          リボ    ヤ
「でな? 儂、万が一復活ったら挑戦ってみたいことがあったんよね。
アリエネ        アリエネ         ウケ
 非実在ェことが起きたら、非実在ェことやるのが一番衝撃るかなと思って」

* :
『やって…みたいこと、でありますか』

SYSTEM :
 この次に口にされる言葉がどんなものか、どのような結果を生んでしまうのか。

 わかっている、わかっている。だが…。

『?????』 :
「───応。
   イス
 儂の玉座、返せ」

『?????』 :
 ・・・
「国奪る」

SYSTEM :
 ・・・・・・・・・・・・・
 わかっていて男はひれ伏した。

SYSTEM :
 これに焼かれたのだ、と。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
 この男の役に立ちたくて仕方がない、と。

『?????』 :
「呵々ッ…呵々呵々呵々呵々!」

『?????』 :
「応それで良し、やはり…、
 リボ  ゼロ
 蘇生って虚無から始めるなら、まずは…」

『?????』 :


        つぶ
「手前の城は手前で滅さんとなァ──────!」

SYSTEM :

 ───神城グループ本社ごと、神城早月が標的になったのは。
   混乱の中、誰もが察知し得ない、この一時間後のことである。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

西欧・ブリテンエリア :
 

SYSTEM :
 その日の夜は、やけに空気が重く。
 やけに、焦がれるような甘さが喉を満たしていた。

SYSTEM :
 レネゲイドビーイングであるところの“彼女”に、それはわからないが。
 それと共存するゼノスのエージェントに、喉を満たす焦がれの意味は分かっていた。

SYSTEM :
 渇きだった。影のこれほど濃く、月灯りがこれほど心を滾らせる夜に、その影の持ち主がいやに恋しい。

 まるで永遠に明けない夜を錯覚する、恐怖と未知の領域の中。
 しかしそれでも、彼と彼女は、プランナーの指示を忠実に守り、”恋しさ”の先を躊躇なく追いかけた。

* :
『ああ、ここ、ここ、ここだ! この先に…』

* :
『どうか、どうか、この血肉の一片まで───』

SYSTEM :
 譫言をつぶやき、熱に浮かされ。若者たちが、影に飛び込んでいる。
 形を持つ影ではない。月の光輝が作り出す幻想の扉。言うなれば影絵の城だった。

SYSTEM :
 だが、確信さえあった。辿れば間違いなく戻ってこれない。
 肉体も精神も。どちらの意味でもだ。だからエージェントは、踵を返そうとして…。

SYSTEM :
 次の瞬間。
 月光の狂気が、彼と彼女の影を捉えた。

SYSTEM :
 …ああ、もう遅い。影の城が───。

 偉大なる血族の主を基底とする混沌が、他所の国に聳え立たんとしている。

SYSTEM :
 染み出す影が立体と見紛う強度で世界を蝕む。ここに太陽は黒く染まり、月の狂気は夜の隠者を呼び覚ました。

 宴の始まりに、幻想たちが熱狂する。

SYSTEM :
 この世ならざる意匠の中、月の光のみを灯りとするもの。
 月灯りに焼かれた者たちの影、闇の血族たちのなれの果てが、我々のエデンはここだと高らかに歌っている。

SYSTEM :
 レネゲイドビーイングであるところの“彼女”に、それはわからないが。
 それと共存するゼノスのエージェントは、かつて先祖だというものの遺した事実から知っていた。

SYSTEM :
ダークワン
 闇の血族。

* :
『──────!』

SYSTEM :
 事実を語り、咄嗟に逃げ出そうとするその時。
 狼の顎が、彼と彼女をかみ砕いた。

SYSTEM :
 最後に聞こえた声…。

 …走馬灯の真横で。
 彼は最後に心当たりを見つけ出した。

SYSTEM :
 頭を垂れ、気高く厳かなる主の手を愛おしそうに待つ狼の向こう側。
 そして、彼の命が、まるで包み込むような甘露なる混沌の肌触りに覆われたとき、声を聴いた。

『?????』 :
「よい」

『?????』 :
「影の一かけらになることを許す」

『?????』 :
「その勇猛を愛そう。その欲望を愛そう。
 決して埋まり得ぬ渇き、我が一片となって。満たすがよい」

SYSTEM :
 死の間際、すべてをささげながらすべてを満たされるおぞましい快楽の中…。
 彼と彼女、半端者のデュオは逝った。

SYSTEM :
 陰から形を成した血の軍勢。爪先から天辺まで男を構成する闇の枝葉は、本質的に孤独で編まれた細胞のレギオン。
 だがそれでも、この日よりブリテン諸島を襲う闇の名を、まことしやかに非日常の住人たちが囁く。

SYSTEM :
    モダンタイムス
 かつて科学万能の時代に滅ぼされた、史上初、そしてもっとも高名なる文化的遺伝子のひとつが生んだ存在。
                              アンゴル・モア
 かつてルーマニアに名を轟かせた者への恐れが生んだ、一世紀早い恐怖の大王。

『?????』 :
「渇きはその血で潤そう。
 穢れはその魂で濯ごう」

『?????』 :
「さあ…我が子らよ。
 私の行いに続くがいい」

* :
『─────────!!!』

* :
『─────────!!!』

SYSTEM :

 その日。
 かつて討ち滅ぼされた混沌が再臨した。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

“H³” :

 Nameless
「“刻知らず”」

“H³” :
            ナマエ
「やらかす意味もやらかす出来事も、出自も立場もバラバラ。何もかもそいつ次第。
 好きにやらせる代わりに”好きにされても”文句言うな…」

“H³” :
「どうよ? 私様たち八人…ああ、いや、九人? 総勢揃って烏合の衆!」

“H³” :
「だからアタシも好きにやる。今日のすべてを絶望的に繰り返す。その怠惰こそアタシの犯罪!」

SYSTEM :
 時間にして56秒。
 世界規模で発生した“停電”は、それがR案件と悟った各組織の手で早急に復旧し…。
 現実にその不可思議が伝わることはない。

 しかし同時に、復旧に携わったすべての者たちに…。
 そして一部のなぜか復旧出来ず掌握された地区の者たちに。
 または、掌握も何も、現在進行形で“危機”に陥った者たちに。ある事実を悟らせた。

SYSTEM :
  ワールドエンド・ジュブナイル
 世界の終わりを望む少年少女の物語………などと。
 これはそんな寂寥も理解も示せるようなものではない。

SYSTEM :
                         ピカ
 もっと破滅的で退廃的で、人の作ったものを踏み躙る悪漢の所業。
 矛盾と不条理に飲まれたもの、嗤うもの、作るもの…。
 それら全てが、ただ規範も理屈もなく、自ずから蒙昧となって暴れ出す。
 
 織り成すに、曰く。

“H³” :
「冥土の土産は以上です。ご清聴ありがとうございました。
 それでは、締めの一言を送らせていただきます」

“H³” :
「誰もが試して、たどり着かなかった…
      End Line
 この世界の終着点…おまえに与えるのはそれだけだ、ぜ」

“H³” :

「張り切っていきましょう!
 わっくわくのドキドキ、滅亡ターーーーイム!」

SYSTEM :
 ワールドエンド・ピカレスク
 世界を終わらせる悪漢の物語だ。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :
 シーンが終了したよ!
 ロイスの宣言はある?

天導 ルクス :
ん~~~

"礎石" :
宣言なし。状況への対応を継続する

シャラ :
(ん?ちっこい?)

マキナ :
あのメイド、うまくやれたか気にはなるんだけど……
今はナシかな。

シャラ :
オレもとりまナシ!

天導 ルクス :
じゃあオレ、“雷人” にP信頼/N○不信感で取っておこうかな

GM :
 おっと!

GM :
 OK、問題ないよ。
 キャラシートに書き加えておいてね。

天導 ルクス :
了解~!

GM :
 では他の皆もいったん保留、というようだし…。

GM :
 続けて次のシーン行ってみようか!

 

・Scene2『侵略者-Domination-』


SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
【Scene:侵略者-Domination-】

Scene Player:All
   Erosion:OFF

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 空間そのものが軋むような響きを上げる。

 接触した、レネゲイドを結び付けた電子同士が引き起こす衝撃は、
 如何なる理屈で形成されたか、この空間においては何よりも勝る雷撃のシンドロームにより齎された。

SYSTEM :
 鳴り響く遠雷が、急速に近づく。
  テクスチャ
 現実の表層にきわめて近く、限りなく遠い。電子を源流とする空間。
 亜光速で常に動き続ける電気の流れで構築されたその世界を、人間は感知し得ない。
 名高きゼウスのごとき男さえ、稲光の内側を覗くなどかなわぬ話だ。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈何か………いえ、だれか………?〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈ここに、どうやって───?!〉

SYSTEM :
 だがその電子情報によって構築された、実体と非実体のきわめて不定形な世界において。

 彼女は偶さか同じ適性を持っていた。
 口ぶりの戸惑いと、咄嗟にあなたの手を握り返す不安と献身の反復横跳びの中で、ハーフィの視界が…。
 いや、この場にいる二名、少なくともその意識が“そちら”に向く。

SYSTEM :
 急速に近づき、先に視界に入れたような“ばちばち”と輝く稲光。
 誰ぞが姿を現そうとしている───ならば、と。もっとも早くに動いたのは“雷人”だった。

“雷人” :
『 これは出来すぎた偶然だな… 』

“雷人” :
  ブラックドッグ
『 他に電子操作のオーヴァードが、紛れ込んでいるなど。
  ………転ぶ先の備えには、“闘争卿”は役立たなかったか 』

“雷人” :
『 ならば 』

SYSTEM :
 男の認識する手札の中に、
 少なくとも自分に味方する幸運はない。
 確定した手札も当然ない。

 ならば、訪れる何某かがコトを起こす前に…。
 自分の目的を遂行する。

SYSTEM :
 一度目の相殺で手を拱くでもない。
 むしろ二度目以降から増していく精度を思わば、半端をする道理はなかった。

 彼はルクスとハーフィに、再びその腕を向けた。

SYSTEM :

 …そして。

 電子の扉を潜り抜け、引き寄せられるように飛び込んだあなた/マキナは、
 まさにその渦中に収拾をつけろとばかりの無茶振りを、幕の上がった舞台に要求されていた。

SYSTEM :
 鮮やかな、青い翅と。金色の髪。見ず知らずの少年の背後に守られていたその娘。
 どちらに目を向けたのかは知らないが、目を開けた瞬間に流れ込む情報は、前方の彼女たちと、背後に佇む気配、そして解き放たれた稲光だった。

マキナ :
 ──状況は、正直よく把握できてない。
 何事かあることは、突っ込んだ時点でわかってたことだけど。ホントになぜかわからないけど、居合わせたメンツは揃ってドローン越しのカメラで認識した連中とは違う。
 自分の身に何が起きていて、目の前にいる奴らのことだって、何も。

マキナ :

 ──ただ、理解ってる。現場で、イチから十まで状況を懇切丁寧に説明してくれるコロスなんていやしない。
    イ ン プロ             ノリ
 現場は即興劇の連続だ。やるべきことは……直感でかぎ取る!

マキナ :
 リコンストラクト
 再 構 築されていく体は、その沿うように……まずは腕から。
 続いて、その腕に握るべき愛銃を、0と1の数列が返還され、形作られていく。
 目が見えずとも、電子情報そのものと化した今の状態なら狙いは外さない。

マキナ :
 慌てたようすで男から解き放たれる稲光。殺意の矛先に立つ少年少女。
 ……どっちに加担するべきかなんて、トロッコ問題なんかより百万倍ラクに導き出せる。
 仮想質量装填、照準補正完了、ENタービン開放……
                     レールガン
 爆速でENチャージを完了させた、前代未聞の電磁投射砲のクイック・ドロゥを放たれた雷撃に向けてお見舞いする!

SYSTEM :
 その身を焦がすはずの雷霆が。
        まじ
 二たび、稲妻と相殺り合った。

SYSTEM :
 状況開始からコンマ数秒。論理立てた思考より先に直感が先んずる。
 どちらが理不尽の加害者で、被害者か。事態の兆しを感知するのに視覚も聴覚も、斯様な空間の中では不要だ。

 電子空間においても再構築したあなたの肉体と機能は一つも損なわれず、
 構築し始めるその段階から引き金にかかっていた指が、構築と共に向けていた矛先へ敵意を投射した。

SYSTEM :
 電磁力により亜光速に加速された仮想質量───。
 対する蒼い稲妻、雷人の指先から呼吸に等しく放たれた人殺しの叡智。

 これが両者の間で弾け、あちこちに火花をまき散らし、衝撃を引き起こす。
 顔を片手で覆うハーフィをよそに、防がれた当人は涼し気なものだった。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈………あな、たは………?〉

SYSTEM :
 その顔を覆ったほうが、ルクスの身を案じながら、矛先へ言葉を投げる。
 敵か味方かも定かでない二度目の介入者。

SYSTEM :
 …そして、そのものを訪ねた少女の姿こそ。
 マキナ/あなたが確かめるまでもなく“電子の妖精”だった。消去法と言ってもいい。

SYSTEM :
 “電子の妖精”。その姿はまるで、蝶のようだった。
      モルフォ
 鮮やかな青い翅の蝶。

天導 ルクス :
「誰か来る……って!?」

 どうにも、単純に驚いている場合ではないようだが。
 “雷人”とハーフィの意識が向いた方に、遅れて視線を向ける。
 激しく揺らぐ雷光は力場の証左。二人の反応と、自分の直感が新たなる存在の出現を予感させる。

天導 ルクス :
 その状況変化を受けて、男は今一度此方へ攻撃の手を向け。しかし、その雷は自分たちには届かない。
 降り落ちる衝撃が、稲妻を撃ち抜いた。迸る衝撃と弾ける火花に顔を顰める。
 間違いないのは、その一撃に拠って自分たちが守られたこと。此方の身を案じているように見えたハーフィへサムズアップを返し、現れる“誰か”に意識を向け。

天導 ルクス :
「……ヒーロー!?」

 明らかなピンチであることは疑いようがなく、また、こういったタイミングで現れる助け船の存在に咄嗟に自分が出せる言葉はこれだった。
 凡そ願望に近い。状況を思えば、別にオレたちを救いに来たワケじゃない人の可能性だってあるし。

マキナ :
                     リザレクト
 ……0と1の"情報"に分解された肉体と精神が再構築される。
 残る部位が幾重の電子情報により作り出され、異空間から這い出てくるみたいに五体を取り戻す。
 電脳へのダイブを髣髴とさせる、現実離れした景色に感覚。正直内心幾らか混乱してるけど、混乱してる場合じゃないことだけはハッキリ認識していた。

「何さ、舌打ちの一つくらいはしてもいいんじゃない?
 こっちもそれなりに気合入れてきたんだけど」

マキナ :
 未だ稲光を帯びるLiar Gunの銃口を掲げながら、挑発するように金髪の男に語り掛ける。おっとり刀でぶっ放しただろう、明らかに殺意満々の一撃をはじいてやったのに、あいつ全然余裕そうだ。

 襲われそうになってるってんで、とりあえず撃ったけど、どーにも取り込み中のとこに突っ込んできたみたい。イレギュラーの事態が起きているコトは、ザックリ予想してたけど。
 見覚えのないのが三人。ログを漁ってもデータがない。

マキナ :
 でもさっきの判断は正しかったみたい。
  モルフォ
 青い翅の蝶を思わせる意匠の、金髪の子。
 ……何処か見覚えのある面影。まるで誰かが夢見たような、だけどそれの由来に考えを巡らせている暇はない。
          サイバースプライト             デリート
 直感だ。この子が『電子の妖精』で……さっきの男はそいつを消 去しようとした。
 それだけで、敵味方の識別をするに十分だ。

マキナ :
 その顔が恐る恐る、覆った顔を上げながらこちらの様子を見てくる。
 何となく、こう返さなくちゃいけない気がした。
デウス・エクス・マキナ
「"凡て世はこともなし"」

マキナ :
「あんたを……助けに来たよ」

 短くそう告げて。臨戦態勢に応じ、左の射撃用拡張モニターを展開する。

マキナ :
 …………それはそれとして。

「ま。別にヒーロー呼びでもいいけどさ、ヒーローほど高潔じゃないんだよね、私……」 

マキナ :
「つまりチビっ子だからって背中に隠れてりゃ助かるとか思わないコト!
 ほら状況説明!」

天導 ルクス :
「えぇ!?」

 当たり!最低でも、ハーフィやらオレやらを狙う第三勢力とかじゃないっぽい!
 が、それはさておき、一喝を食らってしまい驚きの声が出た。

天導 ルクス :
「状況…… ……状況!見た通りです!
 あいつがハーフィ―――……あ~、えっと、女の子狙ってます!」

 あたふたと端的過ぎる説明と同時に、男に向けてやや行儀が悪いと思いつつ指をさす。

マキナ :
「よろしい!」
 ホントは背後関係とかもっと細かいこと教えて欲しかったんだけど。
 今のでただの巻き込まれだって分かっただけ十分か!

SYSTEM :
 指を指された方の動じない様子と、名前を呼ばれた方が半ば動転気味に視点を左右に振る様子。対照的な在り方だったが、口を開いたのは後者だった。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈”デクス・エクス・マキナ”………〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈………あ───そのっ、ハーフィです!
 このコは…ルクスは、ここで見つけたばっかりで…!〉

SYSTEM :
 どこかあなたの名前を確かめるような呼び方の後、はた、となって自分より先に彼の身に言及したのが、おそらくは”電子の妖精”なのだろう。
 Halfy
 半分こ、が名前など、オーヴァードにしてなかなかの皮肉なものだが。

“雷人” :
『 機械仕掛けの神…。
  その役割が身の丈に合う人間が幾つ或るのか 』

SYSTEM :
 仮面越しの凍てついた瞳。感情の起伏がないフラットな声の響き。
 男が、指先に燻るように迸った稲妻を、指ごと下ろして視線を向ける。

“雷人” :
『 ことがすべて、思い通りに運ぶと思う年頃は卒業している。
         ニコラ・テスラ
  だいいち、狼狽する”雷人”など求められたものではないだろう 』

“雷人” :
『 しかし目をつむり、口を噤んで去る気はないようだ。
  誰の差し金か…あるいは本当に、偶然なのか 』

マキナ :
「Halfy
 半分こに、ルクス……」

 後者は普通にこの子の名前? 前者も、本来の名前にしては随分意味深な名前してるけど。
 っていうか、電子の妖精はともかくこの空間に紛れ込んでいる第三者って時点で、突っ込みどころ満載だけど。そういう意味でもルクスって子の方も確保して、ここを脱出しないといけないか。

「さっきも言ったけど生憎もう大丈夫、なんて言いきれる状況じゃないんでね。
 二人ともやれることやってしっかり身を守りな。あんたたちだってオーヴァードなんだから」

マキナ :
 視線を切り替え、油断なく"雷人"と名乗る男に照準を切り替える。
 まさか、いきなり大当たりを引くとは思わなかったけど。いや、どっちかというと大凶か?
「そういうあんたも名前に着られてるんじゃない?
               マッドサイエンティスト
 電気工学の巨人、大碩学にして世紀の狂科学者。
 
 少なくともあんたみたいな、情熱なんて言葉と縁遠そうな人間が名乗っていい名前とは思えないけどね」

マキナ :
「それに、あんたに翳す御旗なんてない。
 どうする? あんたの目の前にいるのは、もう口で篭絡していざとなれば力で黙らせられるような、迷える羊じゃあなくなったよ」

“雷人” :
『 その名前は、ネバーランドで夢想に耽溺するような性根の持ち主こそ使うべき、か 』

“雷人” :
『 気に召さない、というなら…。
  好きに呼んでもらってかまわないが。わたしは自らをそのように定義している 』

“雷人” :
  Nameless ニコラ・テスラ
『 “刻知らず”の……“雷人”…。

  晩節に夢を置き去りにして果てたような者たちの、願いを受け止める器がわたしだ 』

“雷人” :
『 このマスクも、そのためのものだ。
  人の厚意は素直に受けねばならない。趣味に合わないことでもな 』

SYSTEM :
 吸い込まれるような声の響きは、同時に…距離がひどく遠い。
 口元を軽く釣り上げた男に情熱はなく、空虚な響きで、それ故に彼の言葉には裏表、というものがない。

 付け加えるならば、意地になる要素も。

SYSTEM :
 もし、障害となるものがルクス一人であるのならば…。
 彼はこの場で、あなたが持つ能力に”馴れる”前に幾らかの打てる手を打つことで、開花前の才能を摘むことに全力を費やしただろう。
 事実として、そうする気だったのだから。

SYSTEM :
 だが、今この場にあなたが現れた。
 底も中身も伺い知れない“雷人”が、力ずくを取るには不確定要素が混じった。
 そのことを、彼は好ましいことだとは思っていないらしい。

“雷人” :
『 どうする? 異なことを聞く。
  テロリストは小心者であり、折れやすい主義者だ 』

“雷人” :
      ・・・
『 だから、やり方を変えるとしよう 』

SYSTEM :
                  ロール
 彼がもしも“闘争卿”ほどに向こう見ずの役割を尊重するなら、
 少年少女の意思表示に突きつける行いは一つを除いて他にない。

SYSTEM :
 勝つ負けるではなく、最初にルクスが思案した発想を実行に移される可能性。
 あるいは彼を、このまま捨て置くというのを選択から排して、その目論見がしくじったならばどうするか。

 答えは単純明快だった。

“雷人” :
『 その碩学はこの力をこう定義した 』

“雷人” :
『 雷と或るもの、神より人へ 』

“雷人” :
 World Wireless System
『 ワールド・システム…とな 』

SYSTEM :
Effect:【ドミネーション】【電子結界】/【マグネットムーブ】
Player:“雷人”
Target:?????

[Add's]
・電子の流れを可視化し、その空間内に侵入する。もしくはその流れを改変・操作する。
 転じて、電気の流れるものであるならば大抵の動作が可能。
・シーン内における一定範囲が「■■化」する。(再使用により解除を行う)
・また、この能力を行使して電子空間から現実の位相へ移動する。(この際、ハーフィを対象として引きずり込む) 

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈え───〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈きゃ───!?〉

SYSTEM :
 その瞬間…辺り一帯に激しく走る雷霆が、空間に雑音を走らせた。
 莫大な電力投射が現実に負荷をかけながら共振を起こし、
  テクスチャ
 電流が表層を力技で書き換えながらこじ開ける。

SYSTEM :
 彼は彼自身の因子を用いて電子空間を可視化、変換し、それを自在に行き来する。
 あるいは何かが噛み合う限り、自分以外も。

 これほど大規模な空間を現実に形成する必要性すら本来はない。
 ゆえにこの空間の位相を置き換えたこと自体がそもそも“事故”のようなものだ。

SYSTEM :
 つまり、彼にとって“出る”は造作もない。
 拘泥していた理由は、最初は本当に勧誘する気だったから。

 次は本当にあなた/ルクスを脅威と見て。
 最後はあなた/マキナの存在が状況に差し支えあるものと見做したから、こうした。

 小心者とはよく言うもの。
 最低限の目当てだけを引き摺り込んで───。

“雷人” :
『 きみのうなずきを得られなかったのは惜しいが、それならばそれでいい 』

“雷人” :
『 ただ、遠回りするだけのことだ 』

SYSTEM :
 あなたたちだけを置き去りにし。
 ここから去ろうというのだ。

 断じて不可逆の侵入でなかったのだから、マキナは出られるかもしれない。
 だが、出られる、出られない以前に、ここで仮に行方を晦ました男を追跡する術はない。

SYSTEM :
 そしてこのような真似ができる男が首魁の時点で、
 そもそもゼノスすらもたやすく足取りを追えるはずがない。

SYSTEM :
 電子空間をバロールの《ディメンジョンゲート》めいて使いこなし、
 現実と夢想の二つに足を置き、簡単にどちらにも行き来する。
 
 こんな荒唐無稽が罷り通ろうものなら、彼らを知覚できる警備など存在しない。
 そしてそんなことが通常のオーヴァードに、通常の能力規模で出来る筈はない。

SYSTEM :
 だが何より…。
 勝ち負けどうこうではない。

 律儀に相手取る、という発想がこの男にそもそもないのだ。
 あなたは彼を情熱のない男と評したが、まさにその通り。

 ”雷人”は目的のために手段を択ばない小心者の合理を、顔色一つ変えず、裏表なく行える大人だった。

SYSTEM :
 空間がこじ開けられる。
 彼女を引き摺り込もうとする。

SYSTEM :
 止める、飛び込む…どちらも間に合うか、否か。
 だが、逃がした場合彼女が“どう”なるか。考えるまでもないことだ。

SYSTEM :
 …………”雷人”のレネゲイド能力は…。
         ・・
 おそらくルクスと同じだ。
 あるいは逆で、ルクスが彼と同じなのか。

 具体的な理屈がどうというのは分からずとも、雷を扱えた、というイメージがあなたにそう直感させる。

SYSTEM :
 “雷人”が空間をこじ開けたようなことも、瞬時に発生した空間の亀裂が閉じる前に彼女を追う/助けることも。

     Overed
 あなたを超える者と呼んだ彼女の言うような”やれること”があるかもしれない。
 このような空間に限っては。

SYSTEM :
【Guidance...】
 このシーン以降、PC1/ルクスはエネミーエフェクト『異能の継承』により『ドミネーション/電子結界/超越的能力』を獲得します。

 ただし、各エフェクトは本来の用途では使用できず、
『雷人』を始めとする“同じエフェクトを使用可能なオーヴァード”が該当能力もしくは【????】を使用した際の対抗宣言、
 もしくはシーン中の『宣言可能』アナウンスが発生した時に使用するものとします。

マキナ :
 ──時に。
 ニコラ・テスラはシューマン共振と呼ばれる地球定常波の共振を見つけ出した。以前そう言ったけど、厳密には語弊がある。
 ・・・・・
 シューマン共振といったように、歴史の上でその存在は別の学者が見出したものだ。
 ニコラ・テスラはあくまで自身の発明の副産物として、その理論の基軸となるものを見出した。

マキナ :
 ではそのシステムとは何なのか?
 送受信の双方の周波数が合うことで、振動のエネルギーとは極めてロスを抑えて伝えることができる。むろんそれは電子、電磁波という波に関しても同じことがいえる。
 その前提を踏まえたうえでテスラは、この星全体にそうした波が偏在していることを見出した。

マキナ :
 この星に充満する星の鼓動。地球と電離層の間を伝わる周波数。それらと共振する電磁波を媒体とすることは何を意味するのか?
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 それは地球上のあらゆる場所に電力を無線で送受信させるということに他ならない。

マキナ :
 貧富の差、地域の差、身分差を問わずして遍く人類に電力という自由なエネルギーを授けることを目的とする、ニコラ・テスラが発案した星の鼓動を利用しての電力革命。

 その名をワールドシステム理論。
 まさしく雷を人の世に降ろす、生涯未完の仮想のシステムだ。

マキナ :
 ──ある意味ではそれは部分的に叶えられている。世界を駆け巡るネットワークも、それに通ずるものがある。
 けど、この状況と、これまでの所業を鑑みて、嫌な予感は一瞬にして像を成した。

マキナ :
「……やばい!」

 今、私たちは電子化され、地球と電離層の間の周波数に乗ることで光の速度で移動する『波』そのものになってる。
                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 それがひとたび動けば、文字通り地球のあらゆる場所に神出鬼没に移動できる。

マキナ :
 逃げに徹されれば当然、一生捕まえることなんて、出来ない。

「でも、どうやって……!」

 やけくそ気味に銃を構える。でも駄目だ。非殺傷設定では同種のブラックドッグには効果がない、よしんば効果があっても、人質を抱えたままこの高火力をぶち込むわけにはいかない。

天導 ルクス :
「…… ……」

 オーヴァードなんだから、と。
 現れたヒーローもといデウス・エクス・マキナと名乗った少女の言葉に一瞬奥歯にものが挟まったような表情をし…… ……している間に、状況が大きく動く。

 空間が乱れる。耳に響く音、視界に映る共振。

天導 ルクス :
 今の己にとっての世界―――空間が、書き換えられようとしている。
 きっと、彼の思う通りに……彼がやりたいように、此処から去るために。
 ハーフィを、連れて?……それは不味い。具体的にどう、とかははっきりとは分からないが。

天導 ルクス :
 それを見過ごすわけにはいかないし、それに…… ……出来る。何となくだけど、なにか出来ると直感できる。
 じゃあ、やらなきゃ。この直感を信じて行動しなければ、オレは絶対後悔する。
 一度“そう”動いたなら、貫き通せなきゃ―――カッコわるい!

天導 ルクス :
「オレがやるっ!!!」

 銃を構えた彼女の横から、ダッと飛び出す。
 引き摺りこまれようとするハーフィを助けるべく、真っ直ぐに飛び込み搔っ攫わんとする。
 
 通させない、彼の理屈と……脱出を。

天導 ルクス :
「止まれ……!!!」

 違う。……止めるんだよ!
 勢いのまま、全力で。出力だの、指向性だの、そういった理屈のようなものは全部思考から飛ばして。
 真っ向から、“雷人”の執った策を押しのけんと力を発揮した。

SYSTEM :
 あなたは…ルクスは、超常の世界を知らない。

 どこか浮いた話として、大人が喋るには荒唐無稽なアメリカンコミックめいた世界の裏側と。
 いざ自分が”そう”だと言われて、自衛を促された時の即決しない程度の感情を持っていたからだ。

 若者の適応力がいくら高かろうとも。
 数分から十数分前の認知を、日常的動作のように無理なくこなせるはずがない。

SYSTEM :
 しかし………。

 では、あなたの今取った行動は何か?
 それは本当に、荒唐無稽な世界の中でしか起こり得ない動作で、感情なのか?

SYSTEM :
 ここには呼ぶ大人もいなければ、選択を待ってもらうこともない。
 ただやれる、という不確かな直感こそあなたの命綱であり根拠で。

 その根底にある行いは、地続きの感情から成立していた。

SYSTEM :
 むろん、RCとしては稚拙なイメージ先行。放つでも干渉するでもない。

SYSTEM :
 なにしろあなたにとって今することは、父母の教えと実体験から学んだ十四年の経験の延長線上にある。
 …それはそれでヒーローのやることと大して変わらないのかもしれないが、彼らのような超パワーありきのことでもない。

SYSTEM :
 ただ、踏み込んで、手を伸ばす。
 それ以上でもそれ以下でもない。
 ただそれが、この場に限って考えたら不可能な間合いであり、不可能な行いというだけだ。

SYSTEM :
 そ れ        ねつ
 不可能を、あなたに宿る感情を借りて介助する。
 人間とレネゲイドの在り方だ。

“雷人” :
『 ─── 』

SYSTEM :
 “雷人”の能力行使は既に引き金を引いた後。
 既に転移の止まる/止まらないで言えば、後者にある。

SYSTEM :
 しかし…。
 あなたの翳した手から、踏み込んだ足から、迸った雷撃の腕/麟が。
 閉じる寸前の扉………0と1の羅列で編まれた座標をズタズタに焼き切る。

SYSTEM :
 直前で発生した■■■■■■■の電子操作エフェクトが、出力はどうであれ同種のエネルギーと相殺し合ったからだ。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈ルクス───!〉

SYSTEM :
 一瞬だけ空を切ったあとに、ぱしり、と掴んだ手。
 完全に閉じきる前のゲートから救出した少女の手はあなたより一回り小さく、
 それでいて彼女の表情は脅威から解放された安堵ではなかった。

SYSTEM :
 なにしろ…。

 あなたの能力行使は超人になった、という自覚のなさからか、別にスマートではなかった。
 スマートではない行いを通すガッツのためにポテンシャルを行使したからだ。

SYSTEM :
 つまり、その近くには未だに“雷人”がいる。

 そして、“雷人”が躊躇なく能力を行使する。
 あなたの内側と外側から、同時に声が響く。
 それらはほぼ、全く同じタイミングに発生した。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈ダメ……ッ!〉

SYSTEM :
 蝶の歌。
 心底へ響き、魂を震わせる音波の波濤。
    ココロ
 それは、精神のつま先から天辺までを、自主的に振り返るマインド・ソナー。

SYSTEM :
 同種の能力の衝突により、
           チャンネル
 現実の上に広げられた電子の位相。
 それが、再びの衝突/エフェクト行使によって揺らぎかけた。

SYSTEM :
 それと同時に、雷人のエフェクトが至近距離で稼働する。

 自身の転移、まさにその一瞬で引き寄せるはずだった“電子の妖精”が手元から引きはがされようとしているからだ。
      ・・・・・・・・・・・
 ならば───手に入らずんば撃破する。
                しめい
 殺意と呼ぶには無機質な行動への義務感が、彼の手元から迸る蒼き雷霆に宿る。
 それを見ての反応が何を起こそうと、一工程で、どちらかの命は奪えるだろう。彼の裏表ない行動とそれは全く両立し得るからだ。

SYSTEM :
        ワンアクション
 しかし、転移までの一工程。
                  マキナ
 彼は不可思議なほどに、銃口を向けたあなたに無防備だった。
 ・・・・・
 たかを括るような人間性が彼にあるとは思えない。それは、撃たれても問題がないという認識の上だった。

SYSTEM :
 …そして同時にマキナにとっては、
 今が事実上の人質が“雷人”の手元から離れた瞬間だった。

天導 ルクス :
 ―――できる。やる、やった!

 迸る雷撃が、電子の扉を撃ち砕く。開きかけた何某かを破壊したのだ。
 結果として、ハーフィの手を取ることに成功。後は、引き寄せて……引き寄せてから、どうなる?

天導 ルクス :
 安堵も束の間、眼前には未だ“雷人”が立ち。
 その力の隆起が、今一度、『声』を響き渡らせた。
 一瞬でも身が硬直する。否応なしにぶつかり合う力が、空間を歪ませている。と、言うのに。

天導 ルクス :
「っ、やば……!」

 今度は、明確に攻撃だと断じれるような気配を彼から感じる。
 迸る蒼き雷霆は、きっと瞬く間にこちらに届き、自分たちを害する。あんなもの受けて無事で居られるわけがない。
 オレ……も、当然だけど、彼女もだ。庇えるように身体を動かして、視線はテスラを名乗る彼のもとへ。

マキナ :

「さっきからずいぶん余裕そうだけどさァ」

 射程は十分。威力は、調整の必要なし。
 今のはルクスに譲ったけど、こんなイレギュラーでカカシになってたんじゃヒーローどころか特撮の一般兵士にだってなれやしない。起きたことは起きたこととして処理する。今重要なのは人質がいなくなったことだ。
 これでコイツをぶっ放すのに、遠慮はいらない……

マキナ :
     なめ
「あんまり無礼んなよ、おっさん──!!」

 第二射、発砲……!
 リアクターの超高圧電流により稼働する雷の牙、超音速にして光の速度に迫る電磁投射砲。
 仮想質量精製から発砲までの工程を可能な限り短縮し、余裕綽々という様子のそいつへとぶつける!

“雷人” :
『 ───! 』

SYSTEM :
 …後々にして、改めて判明することではあるが。
 堂々と横腹を空けていたのは、受けて傷にならぬ、という驕りではない。いや、ある意味ではそうかもしれないが。

 実際に食らわない、という確証があったからだ。

SYSTEM :
 一瞬の間隙を縫い、未来から射る音越えの電磁投射砲。
 例えばそれが戦車だったとして簡単に破壊し得るものに、彼は何ら防御的挙動を取っていなかった。

SYSTEM :
         ・・・
 しかし───いや、だから当然の結果として。
 雷人の意識の死角から、
 それは彼を撃ち抜いた。

 黒く煤けた着弾個所、電子空間の中において鮮明な生命の気配が、彼もこの仕草で人間であるという事実を示している。

SYSTEM :
 おそらくは成そうとしていた何かの不発だ。
 彼の肉体が一瞬、レネゲイドの因子に基づいた“何か”を着弾の瞬間に起こそうとしていたことだけは把握できた。

“雷人” :
『 …驚いたぞ。何がきみをそうさせた…。
  いや、それは先に投げかけた愚問だったな。撤回する 』

“雷人” :
『 しかし…。…不遜な力だ。
          メモリー
  資格もなく、他人の記憶に押し入るか 』

“雷人” :
    ・・
『 それだけならば、わたしに、然したる脅威でもなかったのだがな。
  いいだろう。今の一発は、無礼の代償を支払ったと考える 』

SYSTEM :
 撃ち抜かれ、目的も果たせずじまいの当人の口調は驚嘆ではない。

 ないが、何もかも想定通り、の口調ではなかった。
 それで驚けるほど“巡り合わせ”へ嘆き始めた人生を送っていない男の達観だ。

SYSTEM :
 揺らぎ始めた空間、ルクスがハーフィに言われた言葉を顧みるに曰く「電気の通り道」が薄れていく。

 あるいは単純に…。そこに数人の人間という膨大な情報量を収めるだけの構造が。
 触媒の下で起こされた衝突により、一時的に拡張されていたソレが失われていく。

SYSTEM :
 と、なれば、男の対応は素早かった。

“雷人” :
『 これ以上の遠回りは本意ではないが…
  已むを得んな 』

SYSTEM :
 今度は余分な荷物を持とうともしない、小心者の二度打ち。
 あなたたちの眼前から、再びこじ開け、既に行使されていた電子の羅列を通って逃げおおせる。

SYSTEM :
 だが、そのこじ開けられたまま閉じ方を失ったゲートはそのままで。
 あなた/ルクスには、このように電気の通り道に作られた”道”の辿り方も、理屈ではなく感覚として分かる。

 …“雷人”の言葉は、相変わらず感情の乗らない言葉だったが、彼にとって今起きたことがどれほどに本意でないのかは明白だった。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈あ…りがと、二人とも〉

SYSTEM :
 脅威が目の前から消えて、緊張の糸が途切れかけたとばかりに座り込みかけたハーフィだったが、状況が一刻を争うことに変わりはなかった。

 あなたの見様見真似のように、ぺしん、と頬を叩き直す。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈…糸を引っ張って、手繰る感じ! たぶん!
 彼の行先、ここからの出方はそれで何とかなるわ〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈わたしはともかく、ルクスとあなた…マキナ、このまま、留まっていられないわ。
 危険かもしれないけど…〉

SYSTEM :
             たぐ    ダイブ
 浮上する場所を振り返って遡る、細かい探索のコツ以上に。
 やろうとする意識があれば───行き着きすぎれば相応の対価もあれど───オーヴァードはそれが出来る。

 あなたの感覚としてわかるだけの“扉”の開き方についてと、小さくなりそうな語調をキープした補足は、概ねそれに集約された。

マキナ :
「……!」

 中った。確かに、こっちの銃撃は通った。あまりにあっさりと当たったことが、かえって意外だった。
 しかし今のじゃ電圧が足りてない。速射じゃ、当たっても致命傷には程遠い。
 そこはまあ、別にいい。とにかく牽制して、目論見を挫いたのだから。
 でも今の感覚は何だ? なんで防いだり、防壁を張るような素振りも見せなかった?
 ……何か以前、似たような感覚を知覚したことがある気がする。 

マキナ :
 とにかく人質の安全は確保した。次は、また閉じ込められるより前に、さっきみたいに来た道を戻って追跡する。
 "刻知らず"の主魁、このまま逃がすわけにもいかないし、安全確保するにしてもこんな不安定な電脳にいつまでもとどまってる理由はない。
「ほら、うちらも行くよ! 
 やり方は見て覚えるの、あとは勘!」

『電子の妖精』/ハーフィ :
 か、カン………………

天導 ルクス :
カン……!

『電子の妖精』/ハーフィ :
(やっぱりこのコ、グーで行くタイプなのかしら…)

マキナ :
当たり前!懇切丁寧に教えてくれるセンセーが現場にいるとは思わないでよ

『電子の妖精』/ハーフィ :
じ、実感がこもってる…!

天導 ルクス :
現場……なんだけども!確かに!

天導 ルクス :
「ん、んん゛っ……オレからも!
 ハーフィも、ええっと……マキナ……さん?も色々ありがとう!それと……」

天導 ルクス :
「……やってみる!」

 ぐっ、とガッツポーズ。糸を手繰る、糸を手繰る……。
 綱引きとか、棒引きとか、そういう感じのイメージで良いんだろうか。
 何はともあれ、頑張ってやってみるしかない。念じて、『道を辿る』をやってみよう!

SYSTEM :
 意識の覚醒めから数十分。
 外がどうなっているのかも分からないが、少なくともあなたには今のところ、がむしゃらにやれそうなことをやるというモチベーションがあった。

SYSTEM :
 義務を語った男と、権利を望んだ少女。
 あなたに外の旅路を招いたのは、どちらでもなかった。
 等身大な機械仕掛けの神様の乱暴さが、そうしているあなたに牙を剥くことはないとわかっていたがための裏表ない謝意だったのかどうかは、あなたのみぞ知ることだが…。

 切欠を得たあなたが次にすることは決まっていたわけで。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈でも…そうね。
 …だいぶドタバタで、口にした約束とはちょっと違うけど…〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈…行きましょ!〉

SYSTEM :
 合間に小さく零れた、“ちょっとはうまくやれているかな”、という音を他所に。

SYSTEM :
 傾けた先の意識が、扉の向こう側を潜る。

 ルクスの現実の不本意なゴールの重なる場所であり、
 そこがマキナの先程全貌を見られずじまいだったシカゴの某総合病院だった。

SYSTEM :
    ・・
 それは体感にして一週間ぶりの外だ。

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
 そしてその転移は…。
             アンカー
 逃げおおせた“雷人”の座標を要石とし、
 彼の能力行使の残滓を手繰ったうえで、再度元通りになった位相からの復帰を伴う形になったようだった。

SYSTEM :
 だから、目を覚ます前の、不本意ながらちょっと周りを覚えていた病室の風景ではなかった。
 もっとも、そうだった場合のほうがより不本意だっただろうか。

SYSTEM :
 空間の穴がこじ開けられ、コンマ数秒の遅れと共にそこに3人揃ってたどり着く。
 3人…厳密には4人だ。

 そして………。

“闘争卿” :

「──────おう!?
 これはどういうことだ?」

“闘争卿” :

「迎えに行く予定よりだいぶ…。
 だいぶ多いなあ! 取り込み中だぞッ!

 せっかく骨も心臓も血もありすぎる若造どもと戦り合うというに!」

“紅玉” :
「巻き込まれ───違う! “礎石”、あの三人!」

SYSTEM :
 散る火の粉と。まるで打ち鳴らすような拳の音。
 あなたには馴染みがあるはずがないが、当事者と鉄火場に放り込まれがちの棍棒外交代表にはわかるものがある。

 戦闘の音だ。

SYSTEM :
 その戦闘の音の中心点。
 今しがた、焼き直しの向こう側に行くか行かぬかの防衛線をたたき割らんとする豪傑悪漢の力強い笑い声と、
 三者にいち早く気付いた少女たちの反応。

“雷人” :
『 不可抗力だ。それより 』

“雷人” :
『 随分…派手にやらかしてくれたものだな。
  人前に姿を晒すのに厭はないが、こうも千客万来だとは。らしからぬ大雑把だ 』

SYSTEM :
 あなたたちが追ってきた、コンマ数秒を先んじた男/雷人が。
 相対する少年少女のほうではなく、その豪傑悪漢にコンタクトを取ったことで、陣営の旗色は明確になった。

SYSTEM :
 その声に、もし、もしも…聴いたものがいるなら共通項を見いだせる。
 アルフレッド・J・コードウェルの声だ。周波数も、言葉のトーンも。

 ただ、そこに悍ましいほど無機質な気配と、熱のなさがあるだけで。

ミソラ :
「(シャラ!)」

ミソラ :
「(いるけど、マキナ!)」

SYSTEM :
 その相対の最中にいた方のうち、表情少なく、驚く“だろう”シャラを先に引っ張った。

 即時の目配せの方向はマキナに向いている。
 どちらかというと自覚的でない突発的な「なんでここに」と言わないブレーキをかけ合うための確認だった。

シャラ :
「……んだッ、この状況!」

シャラ :
 思いっきり手首あたりの皮を噛み千切って血がダラダラ流れるのをよそに、ミソラと急いで視線を交わし合う。
 マキナが連れてきたのか? どっから? 知らんタイミングで転移してきた? マキナのやつ、ゲートとか使えそうに見えないけど!?

シャラ :
そもそも一緒にいる……ガキんちょと……世界観から浮いてる女子!

シャラ :
わたしは電子の妖精でございって顔してるけど!? ビンゴかアレ!?

シャラ :
 申し訳程度に《ワーディング》は展開済みだし、とりあえずガキんちょと妖精(仮)はオーヴァードのはずだ。
 そこだけわかればとりあえずいいだろ!

シャラ :
「どっちがどっち!? あの悪そうなヤツらには追われてるヤツか!?」

"礎石" :
「なに……」

 空間の歪みをこじ開けて、複数のオーヴァードが姿を現す。金髪の偉丈夫に次いで三人の少年少女。 

"礎石" :
 巻き込まれ、と一度は口にした”紅玉”が即座に打ち消したのも頷ける。異装の面々に囲まれた少年からは、平凡と平穏の気配がする。
 だが、空間と摂理に対する狼藉の二番手は彼だ。ワーディングの影響下で活動する彼は、間違いなくオーヴァードだ。

"礎石" :
       ・・・
 一方、意識は一番手へ。

「そこな男が、例の介助人か。合流させる気はなかったが……」

"礎石" :
(──しかし、今の音声は)

         ねつ
 静けさとも違う、感情を欠いた声。怪人にとって心当たりは顧みる自己である以上に、資料で見聞したものと一致する。

"礎石" :
 アルフレッド・J・コードウェル──蘇った死人。堕ちた守護者。反逆の聖人。
 あらゆるラベルを記憶から引き出し、一致と不一致に訝しむ。

"礎石" :
「そちらは本人ではないな。三年前の男に、コードウェルの似姿。お互い愉快な姿で結構なことだが、今日はハロウィンでないことをお忘れなく」

"礎石" :
「ああ、想定外に次ぐ想定外だな。場が混乱している……」

 押し込むように眉間を指圧して、”礎石”が応じる。

"礎石" :
「ハァ……こういう時こそ単純に行こう。外したら他人のフリでもしてくれ」

 溜息ひとつ挟んで苦笑。シャラとミソラに小声で囁いて、一歩前へ。
 燃える前景に、黒い影は細く長く伸びゆく。

"礎石" :
             スマラグド
「俺はUGN本部から派遣された”礎石”だ。現在、平常通り業務を遂行している」

 この場に現れた少年少女たちに向けて、自らの立場を明示する。
 誠意からではなく、後追いの三人の立場を知るために。好意的か否か、抑々UGNを知らないとすれば……。

"礎石" :
 ──時に。
 
 前置く程度には問題がある。

 頭部を覆う真鍮の仮面。
 正常な均整を外れて伸長した手足。
 偉丈夫と対峙してなお異容なる長躯。
 
 ”礎石”の客観視において、彼は理想的なUGNエージェントの容姿をしてはいなかった。
 彼なりに出来るだけ和らげた声色を作ったが、どれほどの効果があったかは分からない。

天導 ルクス :
 そういえば、そうだ。彼女は覗き見ることしかしてないと言っていたし、オレも、心のどこかであの空間の外に出るようなことはないのかと思っていたけど。
 しまい込み掛けていた願いの一つが叶う。そこには不安と、少しの期待があったが……やるしかなかった。そして。

天導 ルクス :
「うっ、わわわ……!!!」

 何……なんだこれ!どういうアレ?!

天導 ルクス :
 オレたちと対峙していた彼は、これまた屈強な男と会話している。どうも知り合いのようなので、多分仲間で……そうすると、オレたちにとっては良くないことな気がする。
 次に、これまた画面向こうや頁を通してしか見たことのない荒れ方をしている空間を認識。冷や汗が止まらない。
 最後に、ニコラ・テスラと話している男とは別にまとまっている人たち。内ひとりが、何となく自己紹介をしているであろう内容を語ってくれている。が。

天導 ルクス :
「えっ、……とぉ……! ???」

 当然、その内容が分かる筈もないためテスラたちへの警戒だけはしつつ、マキナと男―――男?だよな、多分。顔見えないけど―――を含む彼らを交互に見る。もしかして別にこっちは知り合いとかじゃない感じ……?!

"礎石" :
ッスー

"礎石" :
「そうか……」

 その慌てようが答えだった。ゆっくりと肯く。

マキナ :
 なんとかして現実世界……正確には、電子結界に隔てられた本来の空間……に出てきたものの……
 ずいぶん……ごちゃごちゃしてるな。

マキナ :
 けど、寄り道して漸く目的地に到着したみたい。見覚えのある面子が揃ってる。
 奥のガタイのいいデカブツに関しては、殺しあってるってことはFHで敵の認識でいいハズ。十中八九刻知らず、そうでなくても"雷人"の関係者。……どっかで見たことあると思ったけど、あれって資料にあった『闘争卿』?
                          レ イ ヤ ー
 クローンか、蘇生したのか。一番考えたくないのは違う時間層からズレて来たとかだけど……

マキナ :
 ・・・
 あの時も大概ごちゃごちゃしてたけど、今回のはもっとだ。
 こーいうときは下手に誤魔化すより状況の緊急性で押し流す。

「追われてる方! この金髪の子も、青髪の子も!
 あんたらUGNなんでしょ、だったらあいつらなんとかして!」

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈ゆ、UG………? 知ってるの?〉

SYSTEM :
 三者の対応は外れ2、当たり1。
 追われているほうが揃って首を傾げた。

 しかし数十分前まで自他ともに巻き込まれの一般人だったルクスはもとより、
 多少なりともレネゲイドを解している素振りのあるハーフィ/“電子の妖精”/暫定RBまで。

SYSTEM :
 3割当たれば首位打者とよくも言う。
 少なくとも、悪意を伴わない”礎石”に対してまだしもハーフィの警戒は度合いが低かった。
 その点込みでミソラは判断に迷ったのか“外れたら他人のフリ”寄り保留。

“紅玉” :
「…何とかしていた最中!」

“闘争卿” :
「ハハハァ完遂出来ていたつもりか!
 フルコースの三品目だぞ、途中退席ができると!?」

“闘争卿” :
「だがおまえ、さてはしくじったのか!
 挙句、知らん客まで連れてくるとは!

 エジソンというにはSFが過ぎる、背丈もデフレーションが過ぎる! 無粋!」

“雷人” :
         ・・・・
『 見ての通りだ。どちらも、のようだな 』

“雷人” :
『 職務熱心で結構なことだ。
  あいにくと我々は素面だよ。仮面舞踏会の出席予定もない 』

“雷人” :
           マ タ イ
『 だが、わたしをイスカリオテの尻尾と呼びたくば、そう呼んで構わんよ。
  その呼び名も聞き馴れぬものではない 』

シャラ :
 なりたてと電子の妖精をマキナがうまいこと捕まえたってトコか? いやいや、それもそうだけど……。
 『マタイ』がどうとか言ってるお面男2号の顔をじ〜っと見る。
 こいつが迎えに来られたほうってことで間違いなさそうだけども、な〜ンか見覚え……

『シャラ』 :
──ゼノスの裏資料
──メディアジャックの動画
──『こちら側』では死んだことになっていた男
──裏切り者のコードウェル博士

シャラ :
そいつか!! 直近で声聞いたと思ったわ!!!

シャラ :
「他人のフリはしなくてセーフそ〜だけどよ、状況がアウト寄りだわこれ!
 明らかに追われてっしまとめて保護でイーだろ、なりたてと生まれたてじゃねあっこのチビと蝶娘!」

シャラ :
………。………つーかコードウェルって複製体作ってんのか!? こんな物騒なヤツに引っ張られて!? これアンナとかに言ったら倒れるかな!?

『電子の妖精』/ハーフィ :
蝶…娘!

天導 ルクス :
チビ!?

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈ひ…ひとの外見を揶揄らないの!
 ちゃんと名前があります!〉

"礎石" :
「────”電子の妖精”」

SYSTEM :
 ルクス/あなたに名乗ったほうではない名前を耳にし、ささやかな抗議が止んだ。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈その名前は………〉

SYSTEM :
 聊かの戸惑いと腑に落ちなさの意思表示。少なくとも”自分の呼び名”であるとは認識しているらしい。

天導 ルクス :
「…… ……」

天導 ルクス :
「っ……そ、そうそう!チビじゃなくてオレ、ルクス!こっちハーフィ!」

 チビ呼びへの抗議ついでにハーフィの方の名前を伝えておく。
 ……いやいや、オレも妖精さんとか言ってたから人のことあんま言えない気がするけど!

"礎石" :
(……三人中二人か)

 RBと見受けられる少女までUGNを知らないのは、シャラの言うように生まれたてか、余程の引きこもりか。

"礎石" :
「かまをかけたつもりだったが。正解か」

 その名前でさえ、自らの証ではないらしい。少なくとも誇らしい誰かに授かったものでは。

"礎石" :
「……ルクス、ハーフィ」

"礎石" :
「俺たちは……仮に、だが。そうだな、世界の解決屋とでもしておこう」

"礎石" :
「トラブルに巻き込まれていると見た。通常業務と並行して、あなたたちの救援を行う。隣のお嬢さんも含めて、だ。OK?」

"礎石" :
「……それから、シャラ」

"礎石" :
「俺はここに残って仕事をするが、あなたは退いてもかまわない。本気でコーヒー一杯のために死ぬ気はないだろう」

"礎石" :
「安心しろ、何も放り出すわけじゃない。撤退を援護するのは端から仕事のうちだ」

 UGNがイリーガルを使い潰すつもりで招いたのなら、そもそも彼のような男はつけない。
 秩序の労役者はただ、敵には向けることのない背を二人の協力者の前に佇立させている。不退転の後ろ姿を。

シャラ :
「……」

シャラ :
「アンタ、マジメだね」

"礎石" :
「ああ。がんばりやさんなんだ、俺は」

"礎石" :
パチンとウインク。特殊技術。

シャラ :
いまナニ起きた???

“紅玉” :
努力の証。

シャラ :
「キモチだけもらっとくってヤツするわ。しねェから」

シャラ :
「命はクソほど惜しいけどな」

ミソラ :
「…。よし。じゃあ、以下同文で。
          マジ
 揃って命惜しむのは本気だから、頼むね頑張り屋さん」

ミソラ :
 かたっぽ斃れたら墓に刻む名前は「うそつき」でお願い…は、なんかあの二人そういうジョーク耐性なさそうだな やめとこ

"礎石" :
「了解。マグロ漁船が蟹工船にグレードアップしたな」

"礎石" :
そんなことはない

"礎石" :
コーヒーカップのデザイン墓石をオーダーメイドしてあげよう

ミソラ :
デザインって参考にしすぎると盗作かな…

シャラ :
ギラッギラにしろよな!!イルミネーションとかつけろ!!

シャラ :
「ゆっとくけど、ギリとかニンジョーだけってわけじゃねェからよ。
    ・・
 そこも安心な」

マキナ :
「…………まあ」

マキナ :
「私はずらがりたい気分だけど、どだい無理。
 出口まで伸ばした血のワイヤ、途切れてたでしょ。退路とかとっくに断たれてんの」

マキナ :
「気付いてる? ここ、正確にはここを覆う形で今、空間が電子化してるから。
 ウチら、立場とか関係なく一蓮托生ってわけ」

“雷人” :
『 補足けっこう。
  ハートのエースはこちらが握っている 』

“雷人” :
『 だがそれだけに不可解だ。“闘争卿”。
  きみは送迎車で交通事故を起こすのが趣味となるほど単純な男か? 』

“闘争卿” :
「それがレースとあらば吝かではない!
 つまりそういうことだとも」

SYSTEM :
 会話を他所に…。
 つい先ほど親切な怪人(相対的評価)から向けられた言葉を前に、ハーフィの視線がルクスに向く。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈揃って、悪い人では…ないみたい〉

天導 ルクス :
「…… ……うん。解決屋、って」

 じゃあ、多分その……UGNだかなんだか言ってたのが解決屋さんで、この人たち皆そうってことになるのだろうか。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈ええ。…マキナの言うこともあるし、一旦は甘えましょう〉

“紅玉” :
「だいたいは了承するし、以下同文…。
 そっちの名無し、いま聞き捨てならないこと言ったけど、目の前優先」 

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈あのっ…その話、わたしとルクスが何とかできるかもだから!
 …お願いしてもいいですか!〉

“紅玉” :
「それも以下同文…。
 振っておいて断る理由がない」 

“紅玉” :
「イエスが出せてよろしい。だいいち業務が複雑化するのなんて、そう、珍しすぎないことだもの」

シャラ :
「カル子のことだいたいわかったわ! これ『助けてと言えてえらいです、私たちも頑張ります』つってんな!?」

"礎石" :
「イエス」

“紅玉” :
「人の言葉を勝手に解釈しないで」

“紅玉” :
「………いや、もう、あとは態度でやるから、好きに受け取って」

天導 ルクス :
 解決屋っていうとなんか……何となくヒーロー然としてるけど、結構愉快な人たちなのかな?

マキナ :
「仕事熱心で助かるね。お言葉に甘えるまでもなく、救援してもらおうかな。
 ま……サボって見てるだけってわけには、いかなそうだけど」

"礎石" :
「ご協力感謝する」

"礎石" :
「予定変更だな。ルクスとハーフィ、どうやら二人が鍵のようだ。恃みにしている」

"礎石" :
「支援、救援、応援だ。俺たちもがんばる、あなたもがんばる。やってくれるか?」

天導 ルクス :
「……う、うす!オレもお世話になります!それで、……」

 合ってるか?この返しも。一瞬悩んで。

天導 ルクス :
「オレらも頑張ります!ス、え~っと……スマラグド、さん!」

 名前にしては、何かの単語っぽい感じだ。今更だけど。

"礎石" :
「いい返事だ。では────」

シャラ :
「ア!!!!! 待って!!!!!」

『電子の妖精』/ハーフィ :
ビクッッ

"礎石" :
(つまずく)

ミソラ :
「これで変な提案だったら”水差し丸”というコードを渡そう」

ミソラ :
「どうしたの」

シャラ :
「オレ様シャラ! そこのはミソラ! あっこのツインテは!?」

ミソラ :
そこの!?(不服)

マキナ :
 ……
 ・・・・・
 前に来た時に登録したイリーガル情報とか、とっくに消えてたし。しれっと済んでから名乗ろうと思ったけど。
 ここで明かした方が、他人のフリやめるにも継続にも都合がいいか。

マキナ :
        デウス・エクス・マキナ
「マキナでいい。"凡て世はこともなし"……
 ジャンルの違う解決屋だよ。内容は……」

マキナ :
「……これから更にややこしくなった時、話すこともあるかもね」

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈(あるのね、ジャンルの違い…)〉

“紅玉” :
「…含みのある言い方。
 じゃ、そっちのやつのためにも、聞かず仕舞いを願ってる」

“紅玉” :
カルブンクルス
「“紅玉”。分かる呼び名ならいい。これで十分?」

シャラ :
「なげーからカル子でイーってよ!」

“紅玉” :
こいつ

"礎石" :
まあまあ

天導 ルクス :
カル子!一人だけ凄い気安い!

“紅玉” :
略してもいいけど主流にしないで

マキナ :
「じゃーよろしくカル子」

“紅玉” :
「………………月のない夜とコーヒーの中身は、
 可能な限り覚えておいたほうがいい」

シャラ :
このチビ1号食い物粗末にしようとしてっか!?

マキナ :
「じゃあ子を抜いてカルとか?」
 呼びやすくない?どう?

“紅玉” :
呼びやすさのセンスの話をしていない………

天導 ルクス :
あだ名っぽい……!子ついててもそうだったけど……!

"礎石" :
「カル子で妥協してやってくれ」
 どちらに対しても。

“紅玉” :
「わかってる」

SYSTEM :
 不服がそのレベルで済んだのは、5割はそれどころでないから。
 5割は、あなた/“礎石”ほど熱心ではないにしても、振り回されがちな少年/保護対象たちに対して、それを詰め寄る意味がないという話。

"礎石" :
「では自己紹介は済んだな。はい前を向く。
 俺としては、敵方の名を知りたいところだが……。
 俺たちとやり合っていたのは”闘争卿”だが、コードウェルもどき……いや、あなたたちの追手は何と?」

天導 ルクス :
 シャラ、ミソラ、カルブン―――カル子。先に名乗ってくれていたスマラグドさんと、マキナ―――さんも含んで、これで大体の顔と名前は一致だ。
 よく見たら、メットの人以外はそんな年が違うようにも見えない……かも。改めて変な気分かも。で、……。

天導 ルクス :
「ニコラ・テスラ!って言ってました!」

 コードウェル?と首を傾げるが、其方に関しては多分聞いても分からないので気にしないでおいた。

"礎石" :
「……それはまた」

シャラ :
ブッホ

マキナ :
「"雷人"……"刻知らず"の主魁がお出ましってコト」

"礎石" :
「そのようだ」

"礎石" :
「ルクス。かいつまんで言うが、俺たちはテロリスト集団の摘発にやってきた。そのリーダーが彼だ」

天導 ルクス :
「うぇっ」

"礎石" :
「隣の大男は気にしなくていいが、気をつけろ。見ての通り極悪人だ」

“雷人” :
         Nameless ニコラ・テスラ
『 紹介に与った。“刻知らず”の、“雷人”だ 』

“雷人” :
『 なお、その呼び名も否定することはない。
  我々は国際法の適用されないテロリストだ。懸念通りに彼女を渡して頂こう、さもなくば… 』

“闘争卿” :
「諸共滅んで、轡ならぬ墓を並べるかだな!」

“闘争卿” :
       ・・
「しかし小僧、ここから出てきたということは…。
 成程なァ………」

“闘争卿” :
「二鳥を狙ったのも頷けるというものだ。フハハ!」

“雷人” :
『 この上は最悪を避けるとする。
  アルターコード
  “闘争卿”、電子の妖精が手に入らずんば、横着はせず順当に行くより他にない 』

“闘争卿” :
「応とも! だが、オレとしては都合がいい。
 そういうことだ小僧ども、それから…」

“闘争卿” :
「そこの無粋擦れ擦れのアンノウン。
             コード
 機械仕掛けの神とはイカした戒律だが、
  オレ
 事態収束の壁はそんなに薄くはないぞ………?」

SYSTEM :
 “闘争卿”の振る舞いは、衝動を満たす相手への選り取り見取りといってもよかった。

 三品目と評する程度までには暴れた自分と抗した者たちも、現れた誰にとってものアンノウンにも。

ミソラ :
「───?」

SYSTEM :
 その様子の中、ルクスに対してだけの微かな差異に気付いたのが、どの程度いたのか。
 その意味を悟れるほど結末を識るものなどいない。無粋な余談だ。

シャラ :
「…………?」
 ミソラの様子に首を傾げるけど、すぐに聞くのをやめる。
 違和感とかそういう話は、一旦生き延びてからと相場が決まってる。

マキナ :

「お褒めにあずかり恐縮だね──再生怪人。
 負けなしの闘争の王ならいざ知らず。負けの味を覚えた相手なら、まだうちらにも勝ちの芽がある」

マキナ :
「──行くよ旧世代。装備の違いってやつを見せてあげる」

“闘争卿” :
「ハッハァ───それならばいいことを教えてやろう。小僧どもはもう一度聞いていけ。
Defeat
 敗北とはより高く石段を積み上げる過程に過ぎない!」

“闘争卿” :
「最強無敵の怪物も悪くはないが…。
   コード
 オレは規範なのだよ。次の時代の、人間の規範だ!」

“闘争卿” :
「最後に勝つという気概こそが、コードウェル博士を勝利者にし!
 彼に一時でも、時代を築く権利を与えたのだからな!」

SYSTEM :
 あなたの言葉が響いているのか、届いていて無視しているのか。
 好戦的な態度のなか、傲岸さと強い欲求の入り混じった主張に違いはない。

 もう一度聞かされた方からすれば、それは、先ほどから、そして対峙中常に放たれていたものだ。

“雷人” :

『 さて…わたしも、天運という言葉を感じる生涯は送っていないつもりだ。その御し方も存じている 』

“雷人” :

『 天導ルクス…きみに述べた言葉は事実のつもりだったが、猶も否を唱えるなら是非もないことだ 』

“雷人” :
『 “闘争卿”。聞いての通りだ。
  “電子の妖精”を除いて一切合切を叩く 』

“闘争卿” :
「イヤ…? そうも行かんなァ。
 オレはあの小僧にも興味が沸いたぞ」

“闘争卿” :
「せっかくリベンジを代行してくれる輩がいるのだ。
 その序に宝が手に入るとは、復活の前祝には十分すぎる趣ではないか! え!?」

“雷人” :
『 …いいだろう。何れとて同じことだ 』

SYSTEM :
 何れの増援も定かではないが、元より彼方に退く理由はない。
 付け加えるなら…あなたたちの退くのを黙って見逃す理由がない。

 戦う、という行いへの無自覚の高揚と、持つべき緊張感。
 これまでその言葉を当てはめるような行いが日常の安心と健全さに囲われていたルクスにとって、その熱気とスパークを起こすような殺意は擦れ擦れの劇薬だ。
 ハーフィの目が苦し気に細められ、その圧をぶつけられる彼を庇うように近場に立つ。

 付け加えると、こちらはそれ以上に争いに似合わない気質の箱入り娘だった。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈なぜ…なぜこのコなの!〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
    こ と
〈あんな理不尽に見舞われたばかりでも…。
 いま、飛ぼうとしたばかりなのに!〉

“雷人” :
「───飛び方を知らぬまま死に絶える生き物もいる。それだけのことだ」

“雷人” :
『 そして、それはきみにも言えたことだ、“電子の妖精” 』

“雷人” :
『 敢えてひけらかす理屈もないが…。
  所詮テロリストなのでな。目的の過程は、可能な限り横着させて頂くよ 』

SYSTEM :
 見出せる隙があり、僅かな時間の戦闘であったから四人は余裕を維持していたわけではあるが。
 本格的な戦闘に“いざ”と入ってしまえば、そのフィジカルは見掛け倒しではない。

 真偽はどうあれ…伊達に。
 3年前、北部のFHセルというセルをなぎ倒し、UGNシカゴ支部を“壊滅”の憂き目に追い込み、『クレイジー』を飾った片割れを名乗っていない。

SYSTEM :
   ・・・・・
 そのクレイジーと合流した男は、炎と雷の熱気の中でも、尚も凍てついたような義務感だけを讃えていた。

 目的以外のすべて、生い立ちも趣味も理屈も理解し合う前段階のティーンエイジャーたち。
 それを前に、対照的な大人げなさが歩み出る。

“雷人” :
『 これ以上の戦闘行為は本意ではないが…已むを得んな 』

“闘争卿” :
「何が本意ではないというのか!
 勝ち取り、手に入れ、広げ…!」

“闘争卿” :
「正義も悪もなァ! それがオーヴァードというものだろう!」

“闘争卿” :
「ゴングを鳴らしたなら覚悟とともに聞くがいい!
 オレは何度でも…な・ん・ど・で・も! 言ってやるぞ。示してやろう!」

“闘争卿” :

Alter Cord  ・・
「“闘争卿”は不滅だ──────!!!」

SYSTEM :

【Check!】
 戦闘が発生します。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

 

・Scene2『侵略者-Domination-(戦闘)』


SYSTEM :
【Engage...】

[A]
1:Lux
2:Machina
3:Smaragd
4:Aghasura

-5m-

[B]
5:Alter Cord

-3m-

[C]
6:Nikola Tesla 

SYSTEM :


        【ROUND 1】

SYSTEM :
【Setup Phase】
 セットアッププロセスを開始します。 

シャラ :
なーし!

"礎石" :
宣言はない

“闘争卿” :
 ほォう? ではここはひとつ…。
 手本というやつを見せてやろう。

“闘争卿” :
 オレこそが次なるナプキンの支配者というところを、よおく見ておくがいい───!

“闘争卿” :
Unbreakable・Legends
【 究極無敵の■■ 】
Descript:《?????》
Passive:《装備:白銀砂塵》
Auto:《錬成の掟/Lv5》
Sut up:《アーマークリエイト/Lv7》

[Add's]
・装甲値[32]の防具を作成する。

“雷人” :
  オーバードヴォルト
【 雷電魔人・戦闘稼働 】
Set up:《雷神の降臨/Lv3+2》

[Add's]
・そのラウンド中、自身の攻撃の威力を[Lv*4]増加する。
・そのラウンド中、自身の行動値を[0]にする。

SYSTEM :
【Setup Phase】
 ラウンド中の行動値が変化しました。

 “雷人”:??→0 

天導 ルクス :
それじゃ早速、分かんないなりに分かんないことをやっていこう!
《フルオープン/Lv5》宣言!なんか……ダメージダイスがLv個増える!

マキナ :
……じゃあ、こっちは未使用で
ガチガチに固めてるみたいだけど、意味ないよ。すぐにわかる

“闘争卿” :
 恐れ知らずと示威行為か!
 猛々しいものだなあ!

“雷人” :
 では見せてもらう、としたいものだが…。
 成長に付き合うのは悪手だな

system :
[ 天導ルクス ] 侵蝕率 : 51 → 57

SYSTEM :
【Setup Phase】
 セットアッププロセスを終了します。

SYSTEM :
※ AUTO MODE ※

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
 “闘争卿”の脅威たる所以は、その闘法にある。
 ここまで見せてきた能力はモルフェウス・シンドロームのピュアブリード。
 ハイレベルな錬成を駆使しながらも、その白兵戦能力はキュマイラが泣いて逃げ出す剛力無双。歩く山だ。

 しかしだからと言って鈍足なのかと言われれば、そうでもない。なかった。

“闘争卿” :
「開戦の号砲というやつは…!」

“闘争卿” :
「やはり、このオレでなくてはなあ!」

“闘争卿” :
【 CAUTION! 】
Effect:【加速する刻II】
Player:“闘争卿”
Target:自身

[Add's]
・イニシアチブプロセスにメインプロセスを行う。
・行動済でも宣言を行え、この行動で使用者は行動済にならない。

SYSTEM :
 膨張し、開放を待つ暴力性。
 ビッグ・バンに例えた爆ぜる拳が披露される瞬間を止める猶予はごくわずか。
 速度は、音速では緩慢に過ぎる。
 威力は、光速では脆弱が過ぎる。

 彼は確かに一級品の怪物だった。

SYSTEM :
 だが…。
             ・
 この場、最速で動いたのは彼ではなかった。

SYSTEM :
 その暴威が…。

 あの爆発を起こした無限色の拳を生み出し、陣形に一突き入れようというまさにその時。

『?????』 :

「見つけたぞ」

『?????』 :

 ・・
「先ずは…お前だ」

SYSTEM :
   ・・
 白い死神が。すべての人間の警戒を置き去りにする。
 いざ動作のその瞬間。命運を鑢で削りながら、何もかもに先んじた。

『?????』 :
【 CAUTION! 】
Effect:【加速する刻II】
Player:“?????”
Target:自身

[Add's]
・イニシアチブプロセスにメインプロセスを行う。
・行動済でも宣言を行え、この行動で使用者は行動済にならない。

SYSTEM :
 その瞬間を思い返し、比較する。
               アベレージ
 闘争卿が常に90を出し続ける、平均点にて追随を許さない強者であるとしよう。
 彼は全くの逆だ。

SYSTEM :
 いましがた現れた闖入者は…。
 歯車の小さな砂粒。虫のひと噛み。盤石ならざる白銀の屑鉄。一瞬の初速で120点を出し、どんな天才の初速だろうと追い縋りリタイアさせる、それのみ得意な異常者だ。

 なぜなら彼は、ただひとつ事に己を切り売りするが如く擲って敵を“殺す”達人だった。

SYSTEM :
 弱者も強者も唯一許された一つの武器の使い方だけを、徹底的に研ぎ澄ませた男。
 あらゆる蓋然の揺らぎをはねのけて、必然に塗り替えるもの。

SYSTEM :
 その言葉をいわく、執念と呼ぶ。

『?????』 :
 Chrono Vendetta
【 滅 尽 滅 相 】
Descript:《復讐者》
Passive:《ハードワイヤード/Lv5》
Minor:戦闘移動(シーン入場)
Major:《CRブラックドッグ/Lv2+2》《アームズリンク/Lv3+2》《ライトニングリンク/Lv2+2》《雷の残滓/Lv3+2》

Act:17dx7+12
Dmg:271(???+??+??)

[Add']
・命中した相手に『邪毒(ランク5)』を付与する。
・使用後に自身のHPが[5]点減少する。


『?????』 :
17dx7+12  (17DX7+12) > 10[1,2,4,5,5,5,6,7,7,7,8,8,8,9,9,9,10]+10[3,3,5,5,6,8,9,9,9,10]+10[2,3,6,8,10]+10[6,9]+6[6]+12 > 58

『?????』 :
6d10+271  (6D10+271) > 26[2,4,7,6,1,6]+271 > 297

“闘争卿” :
「むうッ───!?」

SYSTEM :
【Main】
 ダメージ結果を確認しています…。

SYSTEM :
 スローカメラで、膨張する力の隙間をつき。
              ・・
 ここ以外では、いやそもそも認識されたなら。
 猛威を振るう闘争卿を止めようもない、という瞬間。
 つまり殺すという意識を軌道に乗せる場合、ここしか存在しない状況。
                          トップギア
 天才が初速の段階で、それのみに人生を費やした生命の最高速が、殺意を滾らせて横殴りする。
 オーヴァードが、オーヴァードを狙って交通事故を起こすようなものだ。

SYSTEM :
                トイ・ボックス
 手足の延長線のごとく扱いきる、秘密兵器の出来損ない。
               ライトニングリンク
 自動銃座合計六基それぞれを因子連携接続の恩恵で繰り出す攻撃は、
 同じ時間軸内、七箇所から同時に、そして零距離から浸透させて撃ち込む対R因子特化の自壊因子。

SYSTEM :
 もう数秒の猶予があれば…。
 戦闘のスキでなければ…。
 あらゆる条件の揺らぎを突破して、今。

SYSTEM :
【Main】
 ダメージ結果を確認しました!

 “闘争卿”:撃破! 

SYSTEM :
Unidentifiable・Legends
【 ■■■■■■■ 】
Descri■■■■■■■■■■■■■■■

[Add's]
・?????
(発動の成否をプレイヤーから判別不能。)

“闘争卿” :

「ハハハ、無粋な…! だが…!」

“闘争卿” :

「キサマは誰──────!?」

『?????』 :
 ■■■■■
【因果破却】
Auto:《装備:時の砂時計》

[Add']
・対象の『オートアクション』を打ち消す。

SYSTEM :
 ほぼ瞬きのうちの…。

 攻撃一つに、自分の寿命を、天運を乗せ。
 はたまたもっと巨きなものを削りながら死を振り撒く…。

SYSTEM :
 ・・
 狂人の動作であった。
 断末魔すら許さず、黄金色の男の息の根が止まった。

『?????』 :

「召されよバケモノ…神の身許に」

SYSTEM :
 ………男の名も、主義主張も。

 ひとりを除いてだれも知らない。知るわけがない。

SYSTEM :
 ただそいつはあなたの知る限り、はじめ訪れた場所で何かを探った後…。行方を晦ましていたはずで。

 ここに来る動機は一つしかなかった。

SYSTEM :
 ・・・・・・・・・
 マキナの知るその名を──────。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :


 ヴィジョン・キラー
 “蓋然を閉ざす者”。

シャラ :
「えっ、は、ンー!? ……何!? ナニナニナニ!?」

"礎石" :
 膨れ上がる暴力の予兆。
 狙いは誰か? 否、標的などない。
 一息に諸共吹き飛ばす純粋無色の力に、指向性などありはしない。蒼翅の蝶を巻き込まない程度の制御もあったのかどうか。

"礎石" :
 思考する猶予はない。だが一歩、いや半歩でも動けるなら十分だ。その勘所を見誤ったことは、二年前から数えてひと度もない。

 ──しかし。
 ”礎石”だけが見出せる空隙に、先んじて何者かが介入した。

"礎石" :
「……莫迦な!」

"礎石" :
「増援……では、ない。一体……」

 UGN支給の戦闘服でくまなく拘束された体の首筋へ、冷ややかに汗が伝う。模倣ではない、ただ一滴の純粋な身体反応。

"礎石" :
Alexithymia
 失感情症──自己の連続性を保つため”礎石”が負った代償によって、彼の感情と意識は断線している。自分が喜んでいるのか悲しんでいるのか、単純な二色さえ彼は判別できない。
 だが自覚できずとも、彼の感情は確かに存在している。いかなる熱も伝播しない器ではなく、疵ついた生身の心がそこに。

"礎石" :
 故に理解る。これは感じ取れる。本能に紐づいた直観、肉体に付随する知覚であるのなら。

"礎石" :
 すなわち驚嘆。三年経った今もオーヴァード社会におけるシカゴに深い傷痕を残したクレイジー・ウォーの主犯、その片割れを討滅せしめる御業。
 それはレネゲイドを自壊に追いやり、オーヴァードを屠るオーヴァードへ皮肉な死をもたらした。

"礎石" :
 しかして畏敬。たった一瞬に自己の持てる全てを賭した、往路知らずの乾坤一擲。
 だが少年の姿をした死神は破れかぶれの博打打ちではなく、定めた結果を帳尻の合わない消費によって叩き出す。その執念はいずこから?

天導 ルクス :
 瞬間、轟くのは暴威の音。
 音の主は、相手方の屈強な男だ―――、と、思ってたんだけど。
 ある意味間違ってない。炸裂前に受け手になってしまっていただけで。

天導 ルクス :
「ああ、もう、ずっとコレどうなってんの……!?」

 次から次へと!よくあることなのか?と思ったが、どうも他の反応的にそうでもないっぽい。

マキナ :
 無軌道に目の前に立ちふさがるものを踏み砕く暴威は。ただ一つのみを穿ち貫く狂気に膝を屈した。
 あの堅牢な城壁を思わせる、超人が一撃で粉砕された事実。
 何よりこの状況で割って入った事実。
 けれどそれ自体は、私にとって驚きはなかった。破砕の粉塵が晴れるまでもなく、その奥にいるだろう人物を確信した。
 ・・・ ・・
 奴なら、やる。

マキナ :
 チェンバー       ハンマー
  薬 室 の中で、殺意の撃鉄に弾かれ、爆熱を受けて弾き出される殺意の弾丸。
 
 足し引きや利害の勘定を抜きにした、執念で叩き出される一撃はすべてが捨て身で、すべてが必殺。

マキナ :
 普通は、こうはならない。
 バイプロダクト ガービッジ
 失 敗 作の量 産 品は、超人の土台に立ったとしても、厳然たる差の前に多くが屈するしかない。
 頑張れば誰でも一番になれるなら競争は発生しない。そんな平等な世界に、私たちは生きちゃいない。
 
 コイツには、持たざる者のまま、その差を埋めるだけのものがある。
 超人を1秒で潰すそのために何年もの時間を狂奔し続けることを誓約した、イカレ野郎。

マキナ :
 歴史改変がなされる蓋然性を閉ざす、その一心で弾丸へと変じた者。
 その名を……
 ヴィジョン・キラー
「“蓋然を閉ざす者”……
 つくづくあんたって奴は。
 呼びもしないのに横からしゃしゃって、人の獲物を搔っ攫うじゃない」

SYSTEM :
 ゆらり、と───。
 この手で砂金のように砕けた命のなれの果てを作った若者が。
 ようやっと、面を上げた。

SYSTEM :
 背を向け、下を向いていたから判別もつかなかった面持ちは、高く見積もっても10の半ば。 
 だがこの上ない攻撃性に満ちた瞳は、向けられる前から、行動や先の結果よりも雄弁にモノを言う。
        Tempest
 白い鋼鉄は、特別強化中隊の機械化兵士や、本部でも稀に見かける白兵戦特化の装甲義肢を取り付けたブラックドッグ・シンドロームを髣髴とさせたが、
 しかしそれとは極めて近くあっても限りなく遠い。

SYSTEM :
 こと、FHが時代の度を越したSFめいた装備を用立てることなど“ざら”にあるとはいえ、
 彼のそれはそのどれとも類似しない。形態としては”それ”に近くとも、経緯からして彼は異質だった。

SYSTEM :
 ………”闘争卿”の果てた黄金の死灰を踏みしめた少年は、
 その中から、一際に煌めく命の痕跡を拾い上げていた。

SYSTEM :
 オーヴァードの中には。

 事切れるにあたって、肉体をチリのように崩壊させ、あとに唯一無二の痕跡を残す例外がいる。
 雷電の残光を残した、一片の水晶体。

“紅玉” :
レネゲイドクリスタル
「賢者の石…、違う、」

SYSTEM :
   デミクリスタル
 通称、愚者の黄金。
 全てではないが、もっとも近しいものはソレだ。

 まるで死を証明するかのようにまろび出た、灰の中から生まれた黄金を掴み取り。
 それで、ようやっと少年が振り返った。

 ………それは無警戒とイコールでない。彼の視線において、因子が導く他者はすべて敵。
 この時点においては単なる順番の違いだった。あるいは一名を除いて。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「蝕む病巣に順位を付けて来てみれば…。
                 デウス・エクス・マキナ
 いったいそれは何の道化芝居だ。“凡て世はこともなし”」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「此方にとっては、呼びもしないのに居合わせて、余計な手間にかかずらうオマエの道連れになることのほうが業腹だ」

SYSTEM :
 その中身と内訳を知る人間からして見ても。
      ・・
 少年ほどの狂人は、唯一比肩するネバーランドの夢追い人を除けば。
 時空犯罪者の何れにも居なかった。

SYSTEM :
               ジャーム
 それもありふれた、よく見る類の狂気ではない。
 少年のそれは、鑢で削って形を残した芯だけの感情だ。
 衝動の鋭利さ、手元の火器、何から何まで、手を取り合うという言葉を頭から欠いている。

ミソラ :

「(………似てる?)」

SYSTEM :
 シャラ
 あなただけに聞こえる声で彼女が、ようやく一言零した。
 その悍ましさと痛ましさ。

 正気を削り続けながら奔走する者。
 向こう岸だったほうがまだ救われるような者。
 レ ッ ド ゾ ー ン
 死線という名の断崖を飛翔び続ける、鋼の鳥。

SYSTEM :
ラスト・リリーバー
 永遠の生残者だ。あれが、直近のあなたの感覚としてはよく似ている。

シャラ :
「(……。……アー)」

シャラ :
「(なんかわかる。……こういうやつ、『あっち側』でならたま〜〜〜〜〜〜〜〜〜にいる)」
 そして、だいたい──ロクな生き方もしなければ、ロクな死に方もしない。
 ダインスレイフの終わり方とは違うし。確かに、あのモサモサ野郎が一番近い。

 ……この最悪の三つ巴、オレらちょっち前に同じことやられて死んだわな!?
 マキナのやつは訳知り顔だし、マジでどうにもなんねェかこれ!?

SYSTEM :
 付け加える一点は、その軌跡に必ず多くの、本意か不本意か、命を巻き込むという点だ。

 今のように。

SYSTEM :
 当然の話だが増援のはずがない。
 連絡が取れない現状に、そもそもシカゴ支部が潔白かは諸説のある状況だ。
 状況を察して訪れるものがいるとして、先の電子空間による遮断という情報がある中で、それもうまくいくかどうか…。

 そして、あなた/“礎石”は、灯台下を除いて人の感情の機敏をよく学習しているはずだ。
 マキナの口振りで、まさか、これが友好的な介入者の証だと思うワケがあるまい。

"礎石" :
「解析する間もなく向こうの手の内か。事態は悪くなる一方だな」

 巨躯は砂金の灰と化し、埋もれた結晶は少年──”蓋然を閉ざす者”の手へ。
 真贋の価値は研究者には瞭然かもしれないが、一現場作業員の”礎石”にとってはどちらも劇物だ。

"礎石" :
「……なに?」

 極めて剣呑だが、知れた間柄だと見て取れる棘の応酬。マキナを怪訝に振り返り、顎に手をやる。

"礎石" :
「”更にややこしくなった”ようだな」

 ……命を擲ち、死を齎す。誇示するまでもなく狂気を飽和させる彼を、さも腐れ縁かのようにマキナは何者なのか。
 その身に幾度、白い死が掠めていったのか、窺い知ることはできない。現状では。

“紅玉” :
「………ソレ、言うんじゃなかった」

SYSTEM :
 “万能工具”の発明と発見。
 こと、悪い発想は口にすると実体を帯びやすいという。またの名を言霊だ。

 だがまさか、これを想定したものなど、どこにも居ようはずがない。

SYSTEM :
 ”闘争卿”が愚者の黄金の類似パターンを発生させたことも、
 それを手にしたものがどちらでもなく、この上なく敵対者とわかる風貌なことも。

マキナ :
「物事には順序ってものがあるんだよハリー君? 物語を軽んじる癖に、物語を救おうなんてムシがよすぎるでしょ。過程すっ飛ばして結末だけ書き換えるなんてのは、下の下なんだよ大根役者。
 こっちはいい迷惑。さっさと消えてくれる?」

マキナ :
 つくづくコイツとはソリが合わない。
 コイツはアホだから、間に何が起きたって何の感慨もわかない。
 確かにこいつはハズレを引かない。割と当たってる道を選びがちだ。
 けど結果的に歴史が安定する枝に進む道を、今まで偶然選んできただけで……本当の意味では、歴史が安定することなんて欠片も興味がないんじゃないか。

 歴史犯罪者を殺すこと、それ自体が目的となってもいないと、ここまで狂うなんて、できっこない。

マキナ :
 ……っていうか、しまったな……勢いでめちゃくちゃ反応しちゃった。
 サイボーグがこーいうのも何だけど、コイツ見てると頭に血が上るっていうか……
 まずったな、後でどう説明するか考えとこ。今は……

マキナ :
「……、とりまコイツ敵。
 さっきのデカブツしばいたのも『道に邪魔だったから』程度の理由だよ。そこだけは確約しとく。

 説明は後でするんで、今はそれで納得してくれる?」

シャラ :
(あの勢いでキレてたらそりゃそー言うな……)

"礎石" :
「そうだな、それ以外には見えないな」

天導 ルクス :
 適応はや!

"礎石" :
「見解は一致しているようで何より」

"礎石" :
「諸々覚えておこう。他に留意すべきことは?」

マキナ :
「じゃあ、一つだけ」

マキナ :
           ・・・・・
「狙いは十中八九そこの"電子の妖精"だ。
 何なら、その子の傍にいたルクスだって危ない」

マキナ :
「──筋肉馬鹿が選手交代して、イカれ馬鹿に代わったってだけだよ。
 状況は大して変わんない。ま……今出涸らしのあの野郎ぶっ潰す方がラクかもね?」

SYSTEM :
 少なくとも“雷人”にさえ、精神的一線を保っていた少女の対応として。
 瞬間的に沸点を越えかけた第一声の揺らぎは、第一印象から僅かに逸れる。
  
 節々から零れ出るメモリーの揺らぎを知ってか知らずか。
 それとも、ただ臨戦態勢に混ざる雑音を感じ取れる感受性をしているのか。
 ルクスのすぐ傍で、自らが矛先という事実に背筋が強張るのと同じくらい、あなたの様子のほうに“電子の妖精”/ハーフィは当惑の表情を見せていた。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「聞き飽きた欺瞞をべらべらと。
 一つ覚えの山門芝居が関の山の癖して、過程も結末も暴力沙汰の役者気取りとは嗤わせる」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「それに、それも………オレの台詞だ。
 手遅れになる前に刈り取るその序で…その認識を己に強いるたび、毎回屍を生み損ねた。その都度、結末から遠のいた」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
        いのち
「此度こそ、その背徳者の価値、神に返してもらう」

SYSTEM :
 …そしてあなたの存じている通り。
                   ドライブ
 “蓋然を閉ざす者”は常に心身ともに最高速度で跳ね回り続け、
 己の傷や負荷の一切も顧みない類の人間だ。
 あるいはもはや、人間のカテゴリとして認めるべきかも定かではないほどだが。

SYSTEM :
 ただしその彼とて、一撃必殺は常態だが平常ではなかった。
 
 相応の代価を常に払い、仕留めるべきと踏んだ相手に躊躇なく命の札を切る。
 その繰り返しだ。

 だからその白鋼には傷が絶えぬ。何かしら機能を損なう。そもそもの話…。
 あなたの知る限り彼が万全の状態だったことは一切”ない”。

SYSTEM :
 少年が。少年と相対する時は、必ず…。
    ・・
 何かを討滅するために白雷を輝かせ、爪牙の跡を残した時。
 彼の払える代償は一つだけであり、それを支払った後だ。

SYSTEM :
 であれば彼の中で、あるいは。
 闘争卿は“よほど”傾けるに足る危険因子だったのかもしれないが。
 その仏頂面と敵意の海から“誰”を狙っているかなど、事前の知識がなければ見いだせるものではなかった。

“雷人” :
『 何者か…は、問うまい 』

“雷人” :
  ・
『 何を、しに来たのだ? 』

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「知れたこと…」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「人に仇なし、世を破壊する悪鬼羅刹…
           レネゲイド
 その惑乱の兆しが貴様らバケモノだ」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「それを駆るもの、手繰るもの。一切を問わず…滅相する」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「オーヴァードを殺す」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「当然、貴様も殺す」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「…兆しは、すべて殺す」

SYSTEM :
 知らぬ人間の第一印象として…これ以上ないほどの宣言である。
 彼は言うに及ぶことなくオーヴァードだ。

 だが、それの根幹に根差すもの、はたまたそれが齎した全て。
 闖入者にとっては紛れもなく引き金を弾き、銃口を突き付ける先だった。自分すら。

“雷人” :
『 なるほど…狂人の戯言だ 』

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「果たして、戯言かな───」

SYSTEM :
 その眼差しは、はじめこそ首魁たる“雷人”に、その手足の一つたる”闘争卿”に向いた。
 ただ、だからといって貴方達に向かなかったのか? というとそうでもない。
 
 むしろ、向いたのははじめだけだ。それは態度を見ていれば分かる。

SYSTEM :
 彼の価値観の中で、引き金を弾くのは全員と決まっている。
 自らが斃れ逝くまで、一人でも多く、一つでも多く。

 ───兆しを。世を変えるものを。銃創を刻む先は、必ずそこだ。
 だが生き続ける限り、それはオーヴァードと名の付くものをどれほど根こそぎにしても終わるまい。

シャラ :
  ヤッべ
「……危ッ機ェーなアレ、オレ様史上でも上位の狂人かもしんね」

シャラ :
「ゼッテこっちにも来んべ! 結局ふたりかよォ……!」

天導 ルクス :
 ハーフィからの視線に、強張った表情のまま何とか首肯を返す。
 ……オレたち。どころか、オレたちのような存在全てを殺したい、みたいな……。

天導 ルクス :
「……っ、アブない人がアブないヤツに変わっただけって、マジなのかよ……!」

"礎石" :
「ああ。マジのようだ」

 仮にUGNで括れる面々が死神の眼中にないとしても、ルクスとハーフィが標的なら同じことだ。

"礎石" :
「一夜のうちに誘拐犯と殺人犯に追われるとは、苦労するな」

"礎石" :
「ルクス。もしかしたら、今日はあなたにとって人生最悪の日かもしれない」

"礎石" :
「それでも。俺の仕事は、あなたの今日を人生最後の日にしないことだ」

SYSTEM :
 それはあなたの知る限り、あなたが実利と打算で選び、また、参考にし続けてきた居場所の在り方だった。もしくは守り方だ。

SYSTEM :
 少年少女の命が…この時この場、
 お れ
 あなたの選択にかかっているならば、と。

SYSTEM :
 一蓮托生と定めた少女から、是非を問う言葉は出ない。
 沈黙のち臨戦態勢の意味はあなたがよく知っている。

天導 ルクス :
「…… ……あ、あはは。割ともう最悪気味だけど……!」

天導 ルクス :
「でも……うん。大丈夫、です!
 ビビってるだけでオレも後ろはまだ向いてない!」

 頼もしい言葉にコクコク頷きつつ、気合だけは入れておく。

"礎石" :
「素晴らしい」

シャラ :
「そーだぞガンガンゆっとけ! あーゆーのは気合で負けたら終わりだかんな!」

マキナ :
「……鏡見て言いなよ。チャカでしか会話出来ない、ジャームになってないだけのダブスタ野郎。
 あんたみたいなのが割って入らなきゃ、エリィは──」

シャラ :
(オイオイオイオイオイ!
 言わんほうがイーことゆってねェか!?)

マキナ :
 ……いけない。そこから先は、引き返せない。
                 ・・・・・・・・
 だいいちカッコ悪いにも程がある。コイツと同じ思考なんて、死んでもしてやるものか。

マキナ :
 ばつが悪く舌打ちして、話を区切る。暖簾に腕押し、今更ぐだぐだ言い合う必要なんか、本当はないハズだ。
                  プロンプト
 うん、スマートじゃない。そんなの、台 本に書いたつもりはない。

マキナ :
「……まあ、それも今日で終い。
 あんたの大好きな神様の下に送ってやるよ。向こうで指でも咥えて、大人しくしてな──!」

 あの野郎と交わすのは、結局。
 コイツ
 銃でのやり取りだけだ!

SYSTEM :
 あなたは彼の正気の狂行を見てきた。厳密にはきちんと“勝ち越し”にする程度には未遂にして来た。
 男は必ず、阻止が一刻を争う事柄に踏み込み、弾丸のように駆け、代償のある奇跡を起こし、それ以外を皆殺しにする。

 その際に交わした言葉など、概ねは“今更”だ。特に…。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「くだらんことをいつまでも喋る…。
 引き金の遅れ、無遠慮な蓋然の許容…それが過ちを起こしてきた」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「神を騙る過ち、犯した罪も…。裁きの後に救われよう。
 そこに先に行くのはオマエだ、“凡て世はこともなし”」

SYSTEM :
 …特に。あなたが一瞬触れかけた話題に、彼は食いつきもしなかった。
 そこが互いの雷管をどうしようもなく刺激するから。あるいは、その是非について話が済んでいるから。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
      サイバースプライト
「………それが“電子の妖精”。
 そして、そこの小僧が…」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「…怯懦に塗れて目をつむっていたほうが“まし”な死に方だったな。だが、いいだろう」

SYSTEM :
 “雷人”も“蓋然を閉ざす者”も。
 彼女/ハーフィの生命を脅かす、という点においてのみ共通する。

 だが、後者の剣呑さと言ったらなかった。
 あなたの人生を生きてきて、こうも短期間で命を狙われることなど初めてのはずだ。
 前向きでいることの、いようとすることの、なんと難しいことか。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈…だいじょうぶ。大丈夫よ〉

SYSTEM :
 自分にも言い聞かせるような、“あなたならできる”と続く少女の一声。
 誰に言われるでもない臨戦態勢を他所に、眼前の脅威の銃口があなたたちに向いた。

SYSTEM :
 そのイレギュラーに予備動作などというものはない。彼に初速という手緩さはない。
 常にその目的だけに驀進するものに、今更振り返る余裕もない。正気の狂行は、同時に、摩耗した鉄心でもあった。

天導 ルクス :
「…… ……」

 気合で負けたら終わり、っていうのも分かる。支えて貰ってるような自覚もあるから、ウンウン頷いて気合を保ってるんだ、けど。
 とんでもない重圧だ。これが殺気ってヤツなのだろうか。テスラさんは、殺気というよりは義務だの何だのという感じだったし。

天導 ルクス :
 固唾を呑んで深呼吸。近くで聞こえる、言い聞かせるような励ましの声に、ピースサインで応じる。
 ……狙われているのはオレやハーフィだけでは、最早ない。けれど、“こう”なってからずっと妙な熱量を受けている気がする。

天導 ルクス :
「死、……なないっての!好き勝手言って!」

 今一度、気合を入れ直しておく。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「よく言った。
 …ならば結果を冥府の土産としていくがいい」

SYSTEM :
 覚醒めの時からあなたの無自覚と自覚の反復横跳びを続けている熱量。それは果たして、誰のものか。
 ただ、仮にその熱量があなた自身のものだったとして、その情動と眼前の少年の行いがかみ合うとは思い難い。

 あなたのそれは宣戦布告であり、
 同様に…戦いのための心構えだからだ。

SYSTEM :
 だが“蓋然を閉ざす者”の態度は戦闘ではない。生物の生存競争や是非を競うものでは、断じてない。

 接近のためのブースト音を遠鳴りのように響かせながら、その鋭利さが牙を剥く。
 彼のそれは即ち、死神の宣誓に近しかった。
 ・・ ・・・・
 必ず、そうする。眼前の相手を必要としない、ワルキューレ要らずの地獄への騎行だ。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「…その無謀。オレが討滅する…!」

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
【Initiative Phase】 
 イニシアチブプロセスを開始します。

SYSTEM :
【Initiative Phase】 
 イニシアチブプロセス開始前に、
 状況の変化を確認しました。

SYSTEM :

【Engage...】

[A]
1:Lux
2:Machina
3:Smaragd
4:Aghasura

-5m-

[B]
5:Vision Killer

-3m-

[C]
6:Nikola Tesla 

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
【Initiative】
 イニシアチブを確認しています...

SYSTEM :
【Initiative】
 “蓋然を閉ざす者”が行動を宣言します。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
  Beowulf
【 雷華狼藉 】
Passive:《ハードワイヤード/Lv5》
Major:《CRブラックドッグ/Lv2+2》《アームズリンク/Lv3+2》《ライトニングリンク/Lv2+2》

Act:17dx7+12
Dmg:41(??+??)

[Add']
・Empty 

SYSTEM :
【Main】
 攻撃対象を選択しています...

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
 余分は無用だ。一撃で仕留める…!

SYSTEM :
【Main】
 対象が指定されました。

 Target:→Lux 

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
17dx7+12  (17DX7+12) > 10[1,2,2,3,3,4,4,4,7,7,7,7,8,8,9,9,10]+10[2,4,4,6,6,7,7,9,9]+10[2,6,9,10]+5[4,5]+12 > 47

SYSTEM :
【Re:Action】
 リアクションを確認しています...

天導 ルクス :
わーっマジで来た!

"礎石" :
大マジだな

"礎石" :
では一つ、死神に御覧に入れよう

"礎石" :
  Inner Chaos
【 内なる棲域 】
オート:《崩れずの群れ LV1》+《イージスの盾 LV3》

system :
[ スマラグド ] 侵蝕率 : 49 → 54

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
 仮初の秩序にしがみつく獣が…
 生残性もそこまで突き詰めてしまえば冒涜だ。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
        ケイオス
 いいだろう…その混沌、打ち砕く。

SYSTEM :
【Re:Action】
 リアクションが確定しました。

Lux:被カバーリング→Smaragd
Smaragd:カバーリング→Lux 

SYSTEM :
【Main】
 ダメージを確認しています... 

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
5d10+41 (5D10+41) > 34[2,10,10,5,7]+41 > 75

"礎石" :
3D10 (3D10) > 10[2,2,6] > 10

system :
[ スマラグド ] HP : 239 → 186

"礎石" :
命懸けの凶弾は流石に堪えるな

シャラ :
っかしーな 明らかにオレ様ふたりは消し飛ぶの出てたハズだぞ

天導 ルクス :
えっ大丈夫……大丈夫そう!

"礎石" :
ハハハ、4分の1

マキナ :
     リザレクト
これでまだ自己治癒しないなんてね。どうなってんのよ……

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
(仕損じた───違う、仕留めてはいるが、)

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
 ・・・・・・・・・・・・
 仕留めた上から生じているのか…オマエ。
 守人が手段を択ばぬ所業に走るなど、初めてでもないが。

"礎石" :
フリーク・ショーはお気に召さなかったかな

"礎石" :
そうとも。自己を代償に事をなすのは、超人の習性だ。業腹だろうが俺もあなたも変わらない

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
 三文芝居にはお蔭様で耐性がある。
 ………奈落に先に行くのはオマエだ。二度目の開演があるとは思うな。

SYSTEM :
【Initiative】 
 イニシアチブを確認しています... 

SYSTEM :
【Initiative】
 ”アガースラ”が行動を宣言します。 

SYSTEM :
【Main】
 行動の宣言を確認します。
 宣言のち、判定を行ってください。

シャラ :
イーコト言うじゃんスマさん!
タマ
生命支払って生きてンのはどいつも同じだべ!

シャラ :
じゃァー行くぜ! 起きろーッサンゴ!

シャラ :
【マイナーアクション】

   Awake:"Styx"
▽オン・マニ・パドメ・フム
《赫き重刃Lv3》
 効 果:Lv点以下の任意のHPを消費し、そのシーン中の攻撃力を[Lv*4(+20)]点
 上昇値:HPを3点消費(攻撃力32点上昇)
 侵蝕値:5

シャラ :
【メジャーアクション】

 Combine:"Styx"- add junction:"Scutch step"
▽超必殺・ブラストハンド
《コンセントレイト:ウロボロスLv3》+《無形の影Lv1》+《原初の赤:異形の祭典Lv2》
 備 考:エンブレム『スレイヤーの証』適用(オーヴァードへ与えるダメージを「+3d10」)
 対 象:“蓋然を閉ざす者”、“雷人”
 判定値:8dx7+6
 攻撃力:nd10+38+3d10
 侵蝕値:10

“雷人” :
 ほう…目聡いな。こちらを射程圏に含んだか

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
 ウロボロス
 影なる獣…欲するままに牙を剥くか。
 際物ばかりよく揃える…。

SYSTEM :
【Main】
 判定を確認しています... 

シャラ :
ひっひ! 呑気に漁夫の利ったってそォーはいかねェなァ!

シャラ :
8dx7+6 (8DX7+6) > 10[1,5,7,7,7,8,9,10]+10[2,3,4,7,8,10]+10[1,4,8]+10[7]+2[2]+6 > 48

SYSTEM :
【Re:Action】
 リアクションを確認しています... 

“雷人” :
 …。

SYSTEM :

SYSTEM :

【CAUTION!】
Effect:【究極存在】
Player:”雷人”
Target:自身

[Add's]
・???と現実世界の双方に───
・条件を達成していない相手からダメージを───

SYSTEM :
【ERROR!】
 Eロイス『究極存在』が不発しました。 

“雷人” :
 一度胡坐をかいた分の授業料は払ったつもりだがね。
 こうもなるか…ならば、致し方がない。

『シャラ』 :
アレらのエフェクト干渉か

『シャラ』 :
情けは人の為ならずとは…よく言ったものだ

“雷人” :
   シールドヴォルト
【 雷電魔人・防御駆動 】
Descript:《?????》
Passive:《ハードワイヤード/Lv5》
Auto:《球電の盾/Lv5+2》

[Add's]
・ガード値を+[14]する。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
Grendel
【閃変挽歌】
Descript:《?????》
Passive:《装備:?????》《ハードワイヤード/Lv5》
Auto:《ディスマントル/Lv1+2》
Act:-
Dmg:-

[Add']
・受けるダメージを[??(??+??)]軽減する。
・相手がダメージロールを行う時、そのダメージを-[(Lv*3)]する。

SYSTEM :
【Re:Action】
 リアクションが確定しました。

SYSTEM :
【Main】
 ダメージを確認しています... 

『シャラ』 :
遮二無二生き急ぐわりに、リスク管理は一丁前…

『シャラ』 :
自殺志願にしては悪くない手際だ。どこまで貫けるか試してみよう

『シャラ』 :
……この程度で崩れるなら、所詮そんなものだろ

シャラ :
5d10+38+3d10 (5D10+38+3D10) > 17[3,1,2,1,10]+38+16[4,5,7] > 71

system :
[ シャラ ] HP : 0 → -3

system :
[ “アガースラ” ] HP : 27 → 24

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
道化の裏側に仕込みがあったか…だが、

system :
[ “アガースラ” ] 侵蝕 : 39 → 54

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
オマエのような獣にくれてやる餌など…。
とうに持ち合わせてはいない…!

SYSTEM :
【Main】
 ダメージを計算しています... 

SYSTEM :
【Main】
 ダメージ計算が完了しました。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
 …だが、あの歌声。やはり貴様が。
 いや、貴様たちが───。

“雷人” :
 逃がした魚の大きさを悔やむと同時に、
 巻き添えで網にかけてしまった魚の牙の鋭さを嘆くところ、か。

“雷人” :
 だが、面妖な生者なればこそ、現世の未練には造詣も深かろう。
 わたしも同じだ。これでは死ねんな。

『シャラ』 :
……そうか。実に安心した

『シャラ』 :
音に聞こえるテロリストが、盾を剥がされたあとに八つ当たり一発で沈むなど

シャラ :
おもろくねェーかんな! ウソ! オレは早く帰ってほしいっす!

“雷人” :
 きみの人生で一度たりとも その泣き言が苦難を阻んだならば 
 あるいは 繰り返してみるのもいいだろう

ミソラ :
 つまるところが「甘えるな男の子」!

ミソラ :
 …それからあの白いの、ガードの一つ分は今ので品切れだ。
 今のが全部とは思えないけど!

シャラ :
あるとこにはあるもん!! イー気になったタイミングで帰れよな!! あるあるだろォが!!

シャラ :
花道つくったかんなーッチビ助ども! うめ~コトやれよ!

SYSTEM :
【Initiative】 
 イニシアチブを確認しています... 

SYSTEM :
【Initiative】
 複数のキャラクターが同一行動値に存在しています。
 先に行動するキャラクターが宣言を行ってください。

・天道ルクス
・“凡て世はこともなし” 

マキナ :
……私が出る。
つか、チビと一緒くたにすんな

シャラ :
オメーが一番チビ助じゃんよ!

天導 ルクス :
よく見たら……そうじゃん!!!

マキナ :
うっさい!巻き込むよ!

"礎石" :
(物理的高みの見物)

『電子の妖精』/ハーフィ :
お…穏便に 
いえ戦いの最中だから違うのかしら…

SYSTEM :
【Initiative】
 “凡て世はこともなし”が行動を宣言します。 

SYSTEM :
【Main】
 行動の宣言を確認します。
 宣言のち、判定を行ってください。 

マキナ :
  ἐπείσοδιον/Liar Gun
【 電磁加速式虚構粒子砲 】
マイナー:なし
メジャー:《コンセントレイト:モルフェウス》《ペネトレイト》
対象:単体(→“蓋然を閉ざす者”)
侵蝕率:5
判定:7dx+2

効果:射程200m,装甲値無視,ガード不可

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
      Liar Gun
 お決まりの虚構粒子砲か。
 …だが、精々よく狙え。一撃外せばそこがオマエのデッド・ラインだ。

マキナ :
出涸らしのあんたをブチ抜くには十分。
そら、自慢の玩具で防いでみなよ!

SYSTEM :
【Main】
 判定を確認しています... 

マキナ :
7dx8+2 ブチ抜け! (7DX8+2) > 7[4,4,5,5,6,6,7]+2 > 9

マキナ :
…………

マキナ :
ば、バッテリー切れ!!!!!!!!うそでしょ!!!!!!????

『電子の妖精』/ハーフィ :
切れるの!? バッテリー!?

マキナ :
(いや違うわこれ
さっきあの雷人にバカスカ撃って……砲身の放熱が終わってない!!!)

天導 ルクス :
あれっ間接的にオレらのせいかもコレ!

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
───ハ。出涸らしが何だと?

マキナ :
クソァ!!!精々躱してみな!!!

SYSTEM :
【Re:Action】
 リアクションを確認しています... 

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
だが…、念には念をだ。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
Grendel
【閃変挽歌】
Descript:《?????》
Passive:《装備:?????》《装備:アーマースキン》《ハードワイヤード/Lv5》
Auto:Empty
Act:-
Dmg:-

[Add']
・受けるダメージを[??(??+??)]+[1d]軽減する。

SYSTEM :
【Re:Action】
 リアクションが確定しました。
(※ガード不可) 

SYSTEM :
【Main】
 ダメージを確認しています...

マキナ :
へっ、万が一躱すのトチったらさらに大恥だもんねえ
勝負の土台に降りたこと後悔させてやるぁ!

マキナ :
1d10+22 (1D10+22) > 1[1]+22 > 23

マキナ :
こりゃひでえや

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
(鼻で笑う)

"礎石" :
大丈夫か?

シャラ :
わッッッ笑うなーーーーッッッ!!!!

マキナ :
ダイジョバナイデス

天導 ルクス :
な、なんちゅう

SYSTEM :
【Main】
 ダメージを確認しています... 

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
1d10 装備:アーマースキン (1D10) > 2

マキナ :
お?

"礎石" :
煽るな煽るな

"礎石" :
どうなってるんだ反応速度

マキナ :
まさかまさか ねえまさかねえ
今のでポックリ逝ったりしないよねえねえ

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
フン…生憎とこちらは装備の一つに
命綱を集約させた覚えもない

シャラ :
やっぱナカヨピだろこいつら

"礎石" :
まずい

天導 ルクス :
!?

"礎石" :
なかよ火が飛んでくる(きた)

シャラ :
(背中に隠れる)

マキナ :
誤射したろうか? お?

"礎石" :
クロスファイアだと……

天導 ルクス :
ステイ!!!危ないから!

SYSTEM :
【Main】
 ダメージを確認しました。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
 出枯らしがどうのと、他人を前に舌なめずりできる状況ではなかったようだな。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
(ならば一手分の猶予がある…問題は…)

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
(その一手で復調するヤツをかいくぐり、あの”礎石”とやらを諸共に崩せるか…そして…。
 ・・・・・・
 あの仮面の男だ)

SYSTEM :
【CAUTION!】
・“雷人”の手番が来た場合、非常に強力な攻撃を行います。

SYSTEM :
 ライトニングスフィア
【 電 光 曼 荼 羅 】
Descript:《?????》
Passive:《ハードワイヤード/Lv5》《バーストプロセッサ》
Major:《CRブラックドッグ/Lv3+2》《雷の槍/Lv6+2》《雷の剣/Lv2+2》《フラッシングプラズマ/Lv1+2》
Minor:《オーディンアイ》

Act:27dx7+20
Dmg:30+25

[Add']
・シーン内の対象を攻撃する

SYSTEM :
【Initiative】 
 イニシアチブを確認しています... 

SYSTEM :
【Initiative】
 天導ルクスが行動を宣言します。 

SYSTEM :
【Main】
 行動の宣言を確認します。
 宣言のち、判定を行ってください。 

天導 ルクス :
こ……こほんっ びりびり嫌な予感もしてきたし、出来る限りやってみよう!

ミソラ :
顔見知りレベル1からアドヴァイスだよ

天導 ルクス :
えっ!ハイ!

ミソラ :
・・・・・・・
自分にはできると思って。
撃った後のことは、撃った後。

天導 ルクス :
…… ……

天導 ルクス :
とにかく……了解!

天導 ルクス :
マイナー:なし
メジャー:《コンセントレイト:ブラックドッグ/Lv2》《雷の槍/Lv6》
侵蝕率:+4
命中判定:(2-1+5)dx8+13(セカンドブレイン適用済)
攻撃力:(n+5)d10+16(フルオープン適応済)

SYSTEM :
【Main】
 判定を確認しています...
 対象確定後、判定を行ってください。 

天導 ルクス :
あぶねっ 対象は……あの雰囲気ツンツン男!

system :
[ 天導ルクス ] 侵蝕率 : 57 → 61

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
紛れで間隙を突くか、小童が!

天導 ルクス :
こわっ……小童!?

天導 ルクス :
とにかく……!

天導 ルクス :
(2-1+5)dx8+13 命中判定、ゴーッ! (6DX8+13) > 10[2,4,5,5,8,8]+6[2,6]+13 > 29

SYSTEM :
【Re:Action】
 リアクションを確認しています... 

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
あの雷霆…! だが!

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
Grendel
【閃変挽歌】
Descript:《?????》
Passive:《装備:?????》
Auto:Empty
Act:-
Dmg:-

[Add']
・受けるダメージを[??(??+??)]軽減する。

SYSTEM :
【Re:Action】
 リアクションが確定しました。

SYSTEM :
【Main】
 ダメージ計算を確認しています... 

天導 ルクス :
よしよしよし……

天導 ルクス :
(1+2+5)d10+16 レッツ、シュート!!! (8D10+16) > 50[6,4,10,2,7,9,5,7]+16 > 66

SYSTEM :
【Main】
 ダメージを確認しています… 

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
 オレとしたことが…
 見誤った、ということか…!

SYSTEM :
【Check!】
 ユニットの戦闘不能を確認しました!

・Vision Killer 

SYSTEM :
 ………………
 ………………

SYSTEM :
 ・・
 稲光が一度走る。

SYSTEM :
 …敢えて“蓋然を閉ざす者”に予備動作があったことを指摘するならば。それはたったそれだけのこと。
 知覚と同時に、音の壁を突き破って敵意がやってきた。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :

「汎用戦闘シフト───。
 モード/PSYビット!」

SYSTEM :
 白い稲妻と殺気が併走する。抜き打ちじみた動作で銃撃が叩き込まれること瞬きのうちに数回。

 ───そして、立て続けざま、秒間数十を越える、鉄鋼の傾盆大雨。
 発生する反動ごとコンマ1秒単位で演算・最適化され、磁気による加速を通じて射出。
 初速から最高速に到達し、音の壁を超越る電光戦駆。
 深紅の残影を残す白鋼の銃口はつねに一つだが、その超機動は残像に質量さえ伴わせた。

SYSTEM :
 屋内の重力下を、まるでピンボールのように跳ね回る彼の三次元戦闘を支えるのは、

 疾駆と共にラグなく射出された数基の自律式浮遊砲台。
 俗に言うガン・ビット…高度なEXレネゲイドを内蔵し、脳波と電子制御に加えた因子コントロールの三重奏を伴うサポート兵装だ。

SYSTEM :
 可視化し得るほどの電磁障壁を展開し、そこに衝突するようにしながら踏みしめてまた次に。
 凡そ人体では不可能な挙動の理由は、それら一つ一つを配置して適切に把握する空間認識能力の高さ…。

 極限状態の集中力を戦闘の開始時から状況終了まで維持する…。
 凡そ無為と呼べるものを削ぎに削ぎ落とした男だけに成せるもの。
 エア・コンバット
 空中曲芸だ。

SYSTEM :
 だが少なからずFH産の、オーヴァードが、R因子の運用を前提として扱う火器とは…。
 その構造において、21世紀の常識を少なからず凌駕するものがある。
 彼の武器も、おそらくはそのようにカテゴライズ可能な武器だった。

SYSTEM :
 おそらくは、だ。類似性においては、FHとも、テンペストとも合致し得ない。UGNなど以ての外。

 なにしろどんな銃器であろうとも───銃、という一括りの道具である以上は。
 形状からある程度の用途は察し得る。
 年齢十代の片手にグリップが収まる程度の火器。リボルバー、または高く見積もってもマシンピストルが精々。

SYSTEM :
 だが、飛翔体の誘導は、レーザー誘導にせよ赤外線誘導にせよ、未だミサイル程度の大きさは不可欠になる。
 彼のように、その形の銃器から、これほどの精密性と連射速度で、飛び回りながら機関砲めいて放たれた弾丸が…。
 すべて等しく、標的と定めたルクスのもとに、視界のあらゆる角度から変幻自在に襲い掛かるなどというのは、まずあり得るものではない。

SYSTEM :
 ライトニングリンク
 生体電流式連携接続───。
 
 多量の生体電流を一挙に放出して火器管制システムと接続。
 より精密で、かつ直感的な、ブラックドッグ・シンドロームならではの火器運用。

SYSTEM :
 弾丸一つ一つに帯びさせた電子/磁気そのものを、銃器の演算システムにリンク。
 電磁障壁を展開させたPSYビットへの反射さえ利用し、
 それぞれの軌道を射撃の片手間で、敵の回避運動や陣形の変更に合わせて再調整する。

 神経加速はそもそも攻撃時のみアクティブにしているわけではなく、常時それだ。
 射撃角度の調整、移動先のビットの有無、敵の攻撃死角の認識に至るまですべてを並行している。彼がノイマン抜きの常人ならば、まず以て不可能寄りの至難に等しい芸当だ。

SYSTEM :
 常に自分を破損させながら加速するその愚直な前進と、討滅への意思。
 コロシ
 殺戮を、引き金を弾くだけという一工程に収めた銃器を。
 ・・・・・・
 一工程のまま、殺せる範囲を極限まで広げる。

“雷人” :
『 よく言ったものだ…
   Killer
  殺戮者か 』

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈───ルクスっ!〉

SYSTEM :
 確かに。
 彼は、塵殺者だ。

 そう、と定めた相手を殺す。
 彼が生誕したばかりのオーヴァード/RB体であるという事実は、
 終わりの兆しを断つ、という意思に対して何ら免罪符足り得ない。

SYSTEM :
 彼が行っているのは闘争ではないのだ。

 成長し切る前に殺そうとした、“雷人”のものと本質に何ら変わるところはない。

 加熱する使命感と、底冷えする憎悪。その二つが、驟雨の如く音を鳴らして襲い掛かる!

天導 ルクス :
「―――う、わッ……!!?」

"礎石" :
 発育途上の片手に収まる銃火器から、軌道を制御された掃射が実行される。
 加えて、異次元の空中機動を補佐するのは数基の自律式浮遊砲台。
 "蓋然を閉ざす者"の兵装は、彼の苛烈極まる運用を含めて常軌を逸していた。

"礎石" :
 膠着と停滞のドツボに嵌まった現代のオーヴァード社会において、流通する装備の多くはアーカイブされている。
 当然"礎石"がその全てを把握しているとは言えない。だが知らなかったで済ませるには、その小銃は時代の先の先を行き過ぎている。
 一挺あれば明日の戦争が塗り替わる──そんな代物だ。

"礎石" :
 "紅玉"へ視線を流し、端末を収めた懐を指す。データが必要だ。施設内の電子機器の大半が召されてしまったが、"万能工具"特製の端末ならば話は別だ。通信できずとも、映像は記録できる。

 そして。

"礎石" :
                       ・・・・・
 緻密に管制された集中砲火だが、ゼロ距離にある動く遮蔽物は計算にない。

(あってほしくはない──の、間違いか?)

 着弾の寸前を狙って、ルクスと立ち位置を入れ替える。

"礎石" :
 塵殺の雨が降る──文字通りの鉄砲雨は、皮膚を穿ち、肉を貫き、命令を妨げる長躯を容赦なく血に染めた。

"礎石" :
             Trypophobia
 一瞬にして、"礎石"の上体は集合体恐怖症が青褪める虫食いの様相と化した。
 オーヴァードの耐久力など百も承知の狼藉、見敵必殺の最高速を前に、弾丸の一発たりとも標的に到達させなかったのは間違いない。

 だが、その光景はあまりにも致命的だった。

"礎石" :
 ルクスの眉間を狙った弾丸が、”礎石”の首筋を引き裂いていた。
 爆ぜるように血が噴きこぼれる。皮膚ごと断裂した筋繊維は自重に耐えかねて、劣化したゴムのようにブチブチと千切れていく。

"礎石" :
 ──ゴト、ン
 
 やがて胸鎖乳突筋の支えを失った頭が、肩にぶつかって鈍い音を立てた。
 衝撃に揺れる長身。首が奇妙に折れ曲がったシルエットのまま、"礎石"は頽れもせず血の海と化したラボに佇立している。

天導 ルクス :
「ちょっ……」

 己に迫る、普通じゃない軌道の弾丸たち。
 それらを前に成す術は当然無く、頭を庇うように両手を持ち上げ―――ずい、とその位置に現れる長躯に声が漏れた。

天導 ルクス :
 ―――いや、いやいやいや。

「な、っ…… ……んで!」

 誰がどう見ても、致命傷―――って言うか、即死だ。
 身体は貫かれ、首からは……普段あまり見てこなかった、スプラッターな作品もかくやという勢いで血が飛ぶ。どころか、最早頭だって本来ある位置にない。これまでの非常識な光景よりも、より現実に近い『死』が眼前に繰り広げられることとなった。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈───そんな…!?〉

SYSTEM :
 次に驚愕の言葉が、当事者に近い少女から零れ出た。
 弾倉ひとつ分のリロードのわずかな猶予、降り注ぐ死の切れ目なればこそ、
 当事者を除いた少年少女の声がより鮮明に響き渡る。

SYSTEM :
 凡そ人体一つ分とは思えない出血量と、
                 ・・
 凡そ超人の末路というにはあまりに凄惨な損傷跡。

 人体一つ分に向けるには暴力的に過ぎる最低ひとり二役、二重三重のクロスファイア。
 細胞の一つ一つを射抜くような白鋼の冷徹さをすべて留める代償は───。

シャラ :
「………!」

シャラ :
「(……オイオイ、負けず劣らずグロってコレか!)」

マキナ :
          リザレクト
「(ちょいちょい、これ自己治癒間に合うの……!?
 幾らあの野郎が出涸らしでも、ここまでモロに直撃したら……)」

"礎石" :
「Shh……」

 衆目の真中。首側面にぴったりとついた顎の前で、垂直に人差し指を立てる。

"礎石" :
 ジェスチャーを解いた手が自らの赤毛を掴み、頭を持ち上げて元の位置に戻した。据わりの悪い首を何度かねじって整える。

"礎石" :
 酸鼻極まるスプラッタの様相だが、そもそもからして並大抵の出血量ではない。あとから湧き出しているのでなければ説明のつかない量の血液が、赤い湖畔を広げていた。

 ……"蓋然を閉ざす者"の必殺は確かに届いた。それは間違いのない事実だ。だが、もたらされた死を遥かに上回る生命力が"礎石"を生かしていた。

"礎石" :
「「確実に一人を潰すために二人は殺せる火力を叩き込むか……徹底しているな。おかげで蜂の巣だ」」

 やれやれと溜息混じりな"礎石"の声は多重にぶれている。
 癒着したばかりの頸部内に声帯が増えて、喉の奥で奇妙に反響しあっているような複数人の話し声。

"礎石" :
 そして、その穴だらけの身体にも、異変が起きつつあった。露出した肉が震え、ぷつぷつと泡立つ。
 皮膚の引き攣れでも筋肉の痙攣でもない。濁った半球が、ざわめく肉の奥から顔を出した。
 無数の弾痕を埋める、同じく無数の眼球が、光を求めるかのごとく四方八方へ視線を巡らせた。

SYSTEM :
 通常のオーヴァードに換算して二度、いやそれ以上の破壊だ。
 通常通りならばリザレクトの余地さえない。

 文字通り生命を削りに削るクイック・ドロゥを、彼は真っ向から浴びたからだ。
 トドメの一射が首の折れ曲がるスプラッタ映像を演出すると同時…。
 少年はほんの微かな違和感を伴いながらも、着地し。その違和感が間違いでなかったことに気が付いた。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「───、」

SYSTEM :
 だが───だがこれは、どうか。
 違和感は果たして真実だったが、その“ざま”に眉一つ動かさず居られたものがどれほど居たという。
 
 その生命力…死の淵からの復活で“すら”ない。
 身中に繁殖する生存本能の獣が、彼の体内という棲息領域に内なる合成獣を作り続けている。

SYSTEM :
 げに恐ろしきはその過剰な繁殖力だ。
 声帯、眼球、臓器、ありとあらゆる体内器官が、福笑いを整頓された顔だと言えるほどに剥き出しの過剰生産を果たしている。
 その形成過程には人体設計図など無用の長物だ。どこの世界に皮膚中に眼球を根付かせ、その出血多量を秒で補うほどの血液を循環させる傍から排出するという。

ミソラ :
「これが───」

“紅玉” :
「十八番」

“紅玉” :
「怖がっても、やることはやるから」

SYSTEM :
 おそらくルクス七割ミソラ三割に向けた、“ああいう形態のオーヴァードですが、あなたに対して嘘はつきません/ついていません”の解説。
 …ノイマン・シンドロームの理性が頷き、感情が痛みを案じかけると序に無体なことを考えたミソラはさておき、
 その取りこぼしがないと知りながらも万一に備えていた“紅玉”本人は、直前のアイコンタクトの意味を確りと受け取っていた。

 “万能工具”の自称が伊達ではなかったことの証は件の通信機だ。
 モルフェウス由来の技巧で機能性を絞ったのが幸いした。あなたを二人分屠った火力は確かに記録されている。

SYSTEM :
 ………そう。二人分だ。
 逆に言えば───。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「悍ましい発想をする…あるいは不可抗力か。
 冒涜的かつ天井の知れた製造工程を通ったな、オマエ」

SYSTEM :
 よくも日和見主義どもが“それ”を受け入れたものだ、と、うわべを掬って吐き捨てる白鋼の少年の言葉。

 そう、彼ひとりの器に何十人、何百人の超人が収まっているか定かでないのだ。

 それで足りるはずがなかった。眉一つ“だけ”動かした少年の認識と状況修正は、レネゲイドがもたらした変化と、その脅威分析を殺意と混ぜ込んだ言葉で締めくくられた。

"礎石" :
  みかけ
「「生き方によらず、人生経験は豊富のようだな」」

 知った口で言い当てられて、多重奏の喉で苦笑する。
 珍しすぎる話ではない。こんな世界で生きていくかぎり、いずれ類型に出会う。見覚えができる。そして、またソレかと呟く羽目になる。

"礎石" :
 だが、たとえどんなにありきたりな過去だとしても、それは永遠に当事者だけのものだ。善きにせよ悪しにせよ。

"礎石" :
「「……!」」

"礎石" :
 相手に手のひらを向ける制止のジェスチャー。
 一拍の空白が置かれる。"礎石"の顎を覆う手が喉にすべり、えずくように曲げた背を揺すった。

"礎石" :
 直後、離した手のひらにじゃらじゃらと金属片が降りそそいだ。弾丸だ。
 血みどろの戦果を壊れたスロットマシンのように吐き出しきった"礎石"が、喉の亀裂を閉じながら一言。

「「……お目汚し失礼」」

マキナ :

「……!」

 電子の動きが読める私には、見える。
                            A T P
 単純なリザレクトだけでは説明のつかない、途方もない量の生体電流! 命の通貨とも呼ばれるソレが、人間一人の中に押し込めるには過剰過ぎる程に火花を散らしている。
 生き物として優れてるってより、非効率なぐらい無理やり濃縮して生命機能を底上げしてるんだ。

マキナ :
 ドローン越しの計器で解析して、相当なモノを積んでると思ったけど、ダメージに反応して活性化したらその比じゃない。
 致命傷に際してオーヴァードは宿主を生かすため、急激に自己治癒力を高めるが、今のコレは違う。
 これでまだ、自己保管の範疇だ。緊張感の欠片もない様子で弾なんか吐き出してるのが、いい証拠。

「私が言うのもなんだけどさァ、心臓に悪いって、よく言われない?
 努力して治るようなもんでも、ないんだろーけど……」

"礎石" :
「「ご想像の通り、方々から大変不評だ。できることならあまり見せたくなかったのが本音だが……」」

"礎石" :
「「こんな局面だ、使えるものは何でも使っていただくしかない。どうぞ今後とも御贔屓に」」

天導 ルクス :
「マ…… ……マジで心臓に悪いからね!!?」

 そりゃ不評だろうね!?の顔。

"礎石" :
慣れろとも言うに言えず、笑ってごまかした。大人はずるいのである。

シャラ :
「慣れろってこったな! カッケーじゃん増えンの!」

"礎石" :
言った。

"礎石" :
「「では次はあなたの番だな。新人にひとつレクチャーしてやってくれ」」

"礎石" :
スプラッタUGN(イリーガル)のよしみで……

シャラ :
「任せなー!! スプラッタの次はホラーだぜーッ!!」

シャラ :
「ホラーかな! わかんねェけど!
 とにかくッ、ビックリ人間ショーキメてやんよ!」

シャラ :
 ケタケタ笑いながら、オレは噛みちぎった手首から滴る血を虚空に振りまく。
 ただの切傷から滲んでいい量じゃない血の玉が舞った。
 酸素に触れきってない赤が、一瞬で赤黒く、いいや真っ黒に染まる。
 血を媒介に生まれたウロボロスのナマ因子たちは、血として排出された瞬間オレの体にまとわりつき直す。
 準備完了。
 大ペテンの仕込みもそこそこに、オレは貧血の快い感覚を解き放つ。

シャラ :
「オン・マニ・パドメ・フム──ひっさァつッ!」

『シャラ』 :

 オン・マニ・パドメ・フム   コンバイン ステュクス
『蓮華の中なる宝珠よ──結合:“泉守”』

シャラ :
 セルが教え込んだ起動文言を叫ぶオレの声と重なり合って。
 まるきり同じ喉から出る声が、まるきり違う言葉を吐く。

 ・・      ・・・
 オレと同じ声が、ワタシの警句を口ずさみ。
  ステュクス
 “泉守”。サンゴの──

シャラ :
混ざり合ったワタシの意識を、完全に叩き起こす。

シャラ :

 パチン!

シャラ :
 柏手を打つと同時に、血で生み出した闇がオレの足元で凝固する。
 ハイキックの要領で無造作に振り上げた足が、
 ひと呼吸ごとに、どんどん、
 どんどん。
 巨大化して、更地を埋めるほど膨れ上がる。

 半分ぐらいオレの領分。
 今回サンゴを起こしたのは本人に暴れさせるためではなく、ワタシに演算をさせて必要な能力を励起させるためだ。

シャラ :
 オレとワタシの適性は、踊り食いのせいで奇妙に混ざり合っている。
           シャラ
 もとは肉体偏重だったオレと、

『シャラ』 :

                       サンゴ
 まともに身体が動かない所為で出力をRCに絞ったワタシ。

シャラ :
 それはオレの能力の使い方を奇妙に偏らせて、いくらかの不便と多大なメリットを齎した。

『シャラ』 :


   Et in Arcadia ego
『──おまえの席はない』

シャラ :
 サンゴの詠唱といっしょに、オレの真っ黒くデッカくなった足の裏に、獣みたいな口がぬぐりと生えた。
 鋭い牙を携えて、カチカチ噛み合わせ敵どもを威嚇する。

 そうそう。
 オレが食ったのは、なにも、生きたままを千切って食べたサンゴだけじゃなくて。

シャラ :
 アダムカドモン特別支部
 ウロヴォロス・オフィスには、
 輪廻の獣のなりそこないが、生まれたはしから運ばれてきていた。

『シャラ』 :
junction add         
『追加接続:"スカッチ・ステップ”───』

シャラ :
「やいッ、“雷人”ッ! 漁夫の利とろうったってそーはいかねェ!
 遊ぼォーぜ、ケーサツ様とよーッ!!」

シャラ :
 狙いは両方。わざわざデッカくて派手なヤツを選択。
 まだ動いてない“雷人”がまともにエンジン掛けたときに楽に済むなんて思えない。だから機先を制して強く当たる!

シャラ :
 山ほど食った同類の残滓を、サンゴと二人がかりで記憶をたどって追想する。
 オレはあんま覚えてないけど、ワタシはよく記憶していた。
 施設に来た時にはもうジャーム化していた、トキコって女だ。
 コードネームは、そうそう。確か。

『シャラ』 :
“スカッチ・ステップ”。

シャラ :
 そいつそいつ!
 運悪くクーデターの折に感染して、そのまま味方ごと全部を滅ぼしてから支部に連れた来られた女だと聞いてる。
 だけど技は知ってた。
 クッソ強かったから。そいつが支部で殺し合いしてた時、いちばん使って一番殺しまくった技は──

シャラ :
「ブラストぉぉぉぉッ……」

シャラ :
          トリヴィクラマ
「──コーーードッ、“虚空を渡る”ッ!!」

シャラ :
 その脚の質量に物を言わせて圧縮し──
 足に作った口のなかに生み出した亜空間で食いちぎる、二段構えの力技。
 踏み潰して/食い荒らして/噛み千切って圧し潰す。
 分解すればそれだけの技は単純だから強く、派手だから出足を潰せる!

 死人の足は“雷人”だけじゃなく、当然──リソースを削りまくる“蓋然を閉ざす者”も巻き添えだ!

SYSTEM :
 ・・
 それが日常茶飯事の少年にとって…。
 生死の分水嶺とは、肩肘背筋を張るものではない。

 初速からトップギアの”蓋然を閉ざす者”とは違った加速の早さで現象が起きた。
 
 被害者のスプラッタ映像が生むスナッフ・フィルムに負けず劣らずの鮮血噴水。
 それが一瞬で刻を加速させたが如く、黒く染め上げられる。

SYSTEM :
 血が攻撃の主軸ではない。それはただの媒介だ。
                カタチ 
 尾を食らう蛇、レネゲイドの原初の容を運ぶ演出舞台。
 起動文言は二人羽織で二人掛かり、
 凝固する血がまずは、いつの間にか不完全なオルクス擬きを作り出した。

SYSTEM :
 ここからここまでは己のものだと定め、その内側に自身の意識を反映する…。
 もっとも意識と自己の定義を拡張させて扱うものだが、シャラにはその適性がない。彼の三つ目のシンドロームなどでもない。

 領分を定める、という行いを是とした男の名残が、あなたの中で尽きず滾る燃料となっていて。
 その無形の交わりと食い合いが奇妙なレネゲイド適性を生み出した。

SYSTEM :
 それが、始まりだ。
 持ち上げた足がタイタンもかくやに攻撃範囲を膨れ上がらせていきながら、その脚より牙が生え揃うさま。
 巨人同士ならば片方は素足で逃げ出すだろう、狂気擦れ擦れの暴力性。

 他人の褌上等。それを成型するのがウロボロス。
 しかしその流暢かつ脈絡のなさと来たらなかった。華奢な振る舞いから連想される攻撃ではない。

SYSTEM :
 そちらまではさておき、
 シンドロームの是非はすぐに悟られた。

“雷人” :
『 ウロボロス 』 

SYSTEM :
 そのウロボロスの特色は二つある。
 捕食と模倣。媒介は基本的に影。

 捕食をきわめて攻撃的に使うものもいれば、影を軸線にするようなのもいる。
 あなたの場合は本当に悪食で、それはもう多くの命と轍を貪ってきた。
       メモリー
 その無造作な引出しを読み込む外付けならぬ内付け思考がある。結果が”これ”だ。

SYSTEM :
 
ジャンクション
 追想/接続。
 あなたの“引き出し”はあなたでさえ曖昧だが、アナタには正確だ。
 出だしのケレン味を求めた大雑把なオーダーに容易くこたえられるほど。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「二兎を追うか、ならば───」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
 シフト       Grendel
「陣形変更────拒め…“捕食形態”…!」

SYSTEM :
 それ故の広範囲攻撃。
 永遠に失われた、色あせた輝きの残り香が放つモノクロームの先手必殺。
 亜空間の中に生者という生者をバラまこうという大雑把ながら迅速な先制攻撃に、リロード中の“蓋然を閉ざす者”が、発声と共にビットを集結させた。

SYSTEM :
 それを、銃へ。連結し、合体させる。
 幾つも繋ぎ直されたそれは。さながら盾。あるいは怪物殺しの十字架だ。

 その盾を基盤に放出・展開された因子は、理論としてはストレンジャーズやらテンペストやらの、対R因子用の強化弾頭…。
 因子結合を崩壊させ、能力行使を中和するブレイクバレットのものが近しい。

SYSTEM :
 影が持つ亜空間、物理的防御力が意味を成さないキル・ゾーンだけをピンポイントで中和する。

 加えてブラックドッグ由来の電子障壁を集約させた防御陣。
 その圧力を完全に殺しきれず白い破片をばらまきつつも後退したのは、彼が謗られた通りの出からしだから───では、ない。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「知性のカケラもない獣の割に、巧く使う───」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「(ウロボロスの特徴はその器用さ…。
  間の悪いことだ)」

SYSTEM :
 単純だ。

 殺しあってきた記憶の鮮明さと、熟成された蟲毒の蛇の強さ。
 なにより捕食の領分ではあなたのほうが上だ。知ってか知らずか、彼は危険な損傷を避けることを優先して防御用のエフェクトを展開した。
 もしもこれで真っ向勝負を挑んでいたら、もう少し酷い被害になったに違いない。

SYSTEM :
 …そしてこれは“蓋然を閉ざす者”。
      ・・・
 あなた視点“ついで”の話だ。
 本当に出足を挫きたかった男は別にいる。

“雷人” :
『 狙いは此方か。
  良い反応だ、だが… 』

SYSTEM :
 時に“雷人”は、眼前の“蓋然を閉ざす者”ほどに高速戦闘を是とする類の男ではなかった。

 丸太のように太く、肉食獣のように獰猛な影の束を、男は回避しようとしない。
 その動作にマキナは見覚えがあった。
            ・・
 唯一の違いは…。今度は万一を加味して防ぐ動作を兼ねたという点だ。

SYSTEM :
 その時だった。

“雷人” :
『 向こう見ずでもある 』 

SYSTEM :
 ・・ ・・・・・
 男を、すり抜ける。

シャラ :
「……はァ!?」

SYSTEM :
 身体を電気に変え/身体を電子に変換し。
            いち
 攻撃を回避する/自分の位相をズラす。

SYSTEM :
 電子空間をこじ開けて強襲する稲妻…。

 それと入れ替わるように、
 彼を証明する骨子を其方に置き直す。
 発生した稲妻は音より早く。
 肉体の電子変換/位相転換を同時にこなしながら、仮面の底ゆえ推し量れない表情で男は続けた。

“雷人” :
『 元ほどの厄災を気取るには、聊か矮小だが…。
  このくらいのことは出来る 』

ミソラ :
「こっちにいるけど、こっちにいない…」

ミソラ :
「…いや、なにか、違うな…」

SYSTEM :
 ・・・・・・   ・・・・・・・
 どこにもいるけど、どこにもいない。

 彼女が二度目を見ていれば辿り着く回答だが、
 マキナには類似する答えがあった。

 時を渡るジャームだ。
 地球の記憶のどこにも繋がりを持ち得ないから、彼らは時の何れにも存在を容認される。

SYSTEM :
 翻って………電子の王は、
 どこだろうと存在を容認/否認される。

SYSTEM :
       ・
 ………あるいは後で知ることなのだが。

 シカゴ支部のオーヴァードを一蹴し、各地のオーヴァードが”勝負”にすらならない最大の理由はそれだ。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「その力…やはり、成れ果てたか。
 だが、それのみを理由にそうなるワケがない」

“雷人” :
『 先ほど授業料を払ったのでな。多くを語るほど慢心はしないつもりだ 』

“雷人” :
『 故に、その対価をそちらにも支払っていただく─── 』

SYSTEM :
 彼らはこと現実世界において。
           Calamity  
 世界を終わらせる、無敵の厄災であった。

『シャラ』 :
『……厄介なジャームだ』

『シャラ』 :
『干渉不可能な性質が 正体不明のタネか』

シャラ :
 オレの口から出るオレの声が、サンゴの今にも舌打ちをかましそうな不機嫌を出力する。
 接続中最大の難点だ。持ち主のオレの許可なく身体を使いやがるんだよな。

"礎石" :
「「……驚いたな。同族喰らいとは」」

 警戒心──と、いうよりはリスク管理か。軽薄なようでいて、油断を見せなかった少年の所以。
 それが全容ではないにせよ、ウロボロス・シンドロームを抱えて生きるリスクは多岐多数だ。実験資料に大した反応を示さなかった理由も、その症状を思えば納得がいく。

"礎石" :
  デュアルフェイス
「「戦闘用人格……いや」」

 それでは説明がつかない、と否定する。人格の主導権をスイッチさせる特性の持ち主にしては、シャラ自身に変わりはない。
 ならばRBと共生関係を結んでいるのか? ……根拠はないが、”礎石”の直感は考えうる妥当な線を否定している。

"礎石" :
 血を媒介にした影が捕食を試みる。

 "蓋然を閉ざす者"が護りに回ったことに疑問はない。
 彼の狂気はいつ死んでもかまわない無謀ではなく、命というリソースを最大効率で運用する非人間性だ。目的以外に代償を払う余分などない以上、損耗は極力避けるだろう。

 だがもう一方、遠方の見物人と化しつつあった男は──

"礎石" :
「「すり抜けた──?」」

 "礎石"の意識につられるように、全身の盲視が”雷人”に向く。

 非実体すら捉えるのがレネゲイドだ。たとえ"雷人"の本体が人工衛星にあって、目の前の彼が投影された立体映像だったとしても、ダメージはフィードバックされる。
 ……にも拘らず、現実は摂理の反証を突きつけていた。

"礎石" :
「「拙いな……。あちらが動き出す前に戦局を変えなくては」」

マキナ :
「今の……」

 そういうことか!
 以前にも経験があったアレの正体が漸く掴めた。
 そして、その事実が示すことも同時に理解した。

マキナ :
 ・・・・・・・ ・・・・・・・
「どこにでもいて、どこにもいない」

 量子力学では有名な話だが。量子重ね合わせ、すなわち二つの状態が重なり確定しない状態は、観測者の観測により確定する。
 この理屈を応用して、私の頭部に増設した量子コンピュータも稼働している。
 オーバークロックの世界にとって、これに近い動きをするのが異時間との関わりだ。世界における自己の証明、観測とは、その時間軸にいる何かからロイスを取得するという行為によって保障される。

マキナ :
 つまり地球というフォーマットの上にあるロイスの結び付きが、それぞれの人間が根付く時代というものを設定している。これがガイア理論をもとにした、オーバークロック理論の仮説の一つ。
 私たちが移動した先で起こした現象の多くが記憶・記録として残らないのは、未来と繋がりのある存在だからだ。違う時間の存在として違うロイスを有している……その密度が強ければ強いだけ、私が過去に及ぼせる影響も、オーバークロックによるエネルギーロスも大きくなる。

マキナ :
 ──だがこれに例外が存在する。

 現在の時間軸でその特性が実証されていないが……ジャームはそのロイスによる軛に囚われていない。
 歴史における接点を持たない。それは歴史に縛られず、故にこの世界のどこかにいることを証明し固定されないということだ。
 それは同時に、異なる歴史から干渉し、歴史を変えられるということさえも意味する。

 今の時代の人間がその脅威性に気付いていないのは、シンプルに時間を移動する手段が極度に限られているからだといわれているけど……

マキナ :
 ここに、別の脅威性を示す可能性が提示されたわけだ。
 レス・エクステンサ
「”遍在する者”……デカルト的に言えば、つまりそういうことだよ」

 何かに気付いた様子のミソラに合わせるように、乾いた笑いを浮かべつつ同意する。

マキナ :
「今のこいつらは、電子そのもの。地球と電離層の間で揺蕩う電子情報と自己を行き来できる存在になってる。
                                ・・
 自動か、手動か、条件はわからないけど──こいつらは存在の単位を『情報』にまで圧縮できるんだ」

マキナ :
「だから攻撃はそちら側に行けば当たらなくなるし。
 そちら側を通れば、どんな場所でも秒速30万メートルで移動できる。

 ──あれは、文字通り地球に遍在する何かになってるんだよ」

シャラ :
「ぜっゼンゼンわかんねーッ!! 食べ物か買い物で例えろよォ!!」

天導 ルクス :
超むずかしい話してる!

ミソラ :
「それその二つで例えるの、今の説明よりムズそーだけど…」

"礎石" :
「皿の上に出してあるベーコンと冷蔵庫にしまってあるベーコンどちらにもなれて、俺たちが手を出そうとするかぎり彼は後者になるということでいいか」
 一旦……とりあえず……

ミソラ :
 すごいね、どんな経験があれば今の無茶ぶりに対応できる柔軟性が?

マキナ :
「あんた翻訳うまいね」
正確ではないけど、攻撃が当たらない理屈としてはそれで充分か

シャラ :
「それクソヤベェじゃん!?!?!?」

SYSTEM :
 いち
 位相をズラす───何処にでも存在を証明出来る。

 もちろん、そのメカニズムの根幹は、
 ここ
 現在以外の時空構造を把握できる立場でなければ根拠を伴って説明出来まい。

 だが、だが仮に───それがジャームだったとしたならば。時を隔てたジャームのすべてがそのような適性を持っているならば、あなたの役割は、不可能もしくは現在の数倍の困難さを伴っていたに違いない。

SYSTEM :
 それ故に彼の特別性はこう説明できる。

 極端なブラックドッグ・シンドロームの適性者が、どこにも楔を持ち得ないジャームの生残性と結びついた結果だ、と。
 
 電子の可視化と自己のみならず、特定の条件に当てはまるものの可逆的変換…。
 それを戦闘の瞬発的判断がいくつも求められる状況で平然と執り行う反射神経。
 ましてや現実に実体を持ちながら、いつでもその現実を無視できる…。

ミソラ :
「それは…神様も吃驚だ。特権とられたじゃん」

“雷人” :
『 ジャーム、か 』

“雷人” :
『 何れの理由であっても…わたしをそう定義するならば、それもいいだろう。
  今のわたしは、“なぜ”を突き付けるべきものの、意志の器だ。そのように定義し、そのように活動している 』

SYSTEM :
 その言葉に熱が宿った回数は二度…いや、ジャームと断定したアナタの知る限りでは一度だけ。

 それすらも、衝動の荒波を、押し寄せる嵐を感じたことはない。

SYSTEM :
 だがそれでも。“雷人”は、間違いなく、ジャームだ。
 そもそもどんなブラックドッグ能力者とて…あるいは、
 電子世界に存在した“電子の妖精”を見る限りでは、いくつかの例外はいるのかもしれないが。

 そんな現実をゆがめる行いができるものが、後戻りできないほどにレネゲイドに自らを浸していないはずはない。

SYSTEM :
 だが…。
 そもそも彼は、詰みの一手を前に講釈を長々垂れるような男でもなかった。

SYSTEM :
 裏返る空間が齎す破壊的共振の中を、まるで空洞のように歩きながら、男が掌を向ける。
                   レッドスプライト
 ぱちり、と走る稲光。指先から姿を現す紅色型放電発光現象。
 放たれれば、瞬きのうちに…音の440倍の速度を誇り、1ギガジュールに及ぶエネルギーの塊が。
 亜光速の矢が死を運ぶ。

“雷人” :
『 では、チェックだ 』

SYSTEM :
 だがその時───。

『電子の妖精』/ハーフィ :

〈いいえ…!〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈こんなところで、終わらせない…!〉 

SYSTEM :
 ・・      うち
 歌声が、あなたの内側から反響する。 
 蝶の歌。心底へ響き、魂を震わせる音波の波濤。

“雷人” :
「──────!」

SYSTEM :


【ERROR!】
 Eロイス『究極存在』が不発しました。  

SYSTEM :
    そと
 歌声は彼女から発され…。
 う ち
 あなたから反響した。

 この場に戻ってくる前、ルクスが感じた“声”と同じものだ。
 電子の妖精のレネゲイド因子が、ルクスの持つ何かと共鳴する形で、それが発生している。

SYSTEM :
     ココロ
 それは、精神のつま先から天辺までを、自主的に振り返るマインド・ソナー。

 ソラリス・シンドロームの中にはこのような人種が稀にいる。
 記憶を感情を、ひとつの仮想現実としてエミュレートし、追体験するほどに…。
 他人の意識に同調することが出来るもの。

SYSTEM :
    メモリーダイバー
 通称は記憶探索者、などと呼ばれる。自らの心を対価とする幸福な王子様の名。
       ・・
 ハヌマーンの歌声という形をとって、広がったものは、この特異性とすべてが同じものではない。
 ない、が。それに極めて近く、限りなく遠い現象を引き起こしていた。

SYSTEM :
 繋がりさえ持たないジャームが生きる現実を、ここに楔を打ち込み固定する。
 蘇るはずのないジャームの繋がりに訴えかける術などありはしない。
    メモリー
 しかし…記憶は別だ。

 それは一度留めたならば、燃え尽きることもなく留まり続ける感傷。
 ジャームに成り果てる前に持っていた、この現実に存在した者の証。
 ・・・・・・
 焦げ付いた跡から、そこにかつてあったものを復元する…。

SYSTEM :
 いまさっきすり抜けていたもの。
 そこに存在しながらも同時に別に位相に存在した“雷人”の実体が。
 彼がこの星に存在した記憶を辿って、引き寄せられる。

   エグゾースト
 終わった男の排気熱を基底とした、
 どこにもいないがための究極。

SYSTEM :
 さながら怪物を滅ぼすための剣。

 そして、電子世界でもほぼ無自覚に響き、彼の無敵の盾を阻害していた武器の正体が。
    ブラックドッグ
 いま、ルクスの因子を媒介として奏でられた、電子の譜歌だった。

SYSTEM :
 結果…間合いから逃れた”蓋然を閉ざす者”と違い。
 万一に備えていたとはいえ、その現象ありきで身を留めていた雷人に……。

SYSTEM :
 一度すり抜け、尚も残る、蟲毒の残滓。
 それが名誉を挽回するほんの僅かな間隙が生じていた。

天導 ルクス :
 カゲロウめいて害意をすり抜ける、無敵と言わざるを得ない男の優位性。
 マキナとスマラグドさんの説明を受けても尚最終的に出せる答えが「ズルじゃん」だった少年は、迸るエネルギーを前に一つ想起する。

天導 ルクス :
(―――そうだ、さっきアッチでハーフィ助けたときも。此処に出てくるときも)

天導 ルクス :
 瞬間、歌声が響く。蝶々のハネを持つ彼女から―――同時に、オレの内側からも。
 この現象に理論めいたものがあるかは、現時点のオレには想像できなかった。できなかった、けど。
 明白なのは、オレ……というか、“今のオレ”が、歌を介させて―――その優位性を崩すことが出来ているということ。

天導 ルクス :
(―――今あれこれ考えたって何も分かんないか!だったら、)
「……えーい!今だっ!」

 ―――一先ず、呑み込む。
 呑み込んで、歴戦の戦士などであれば即座に気付くであろう生じた間隙に檄を飛ばした。

"礎石" :
(──まずい)

 一人は生かせる。只一人を選ぶ条件が不明瞭に過ぎる。瞬きのあとの死を延期して、その次は? いつでも擲てる"礎石"の身体が、赤光を前に活性化する──直前。

"礎石" :
 断崖の護りが破綻する。偏在する者は、故に在る者へ。

「「まさか……この歌声が?」」

 たった一瞬、僅かな固着。だが超人の戦いにおいて、一瞬は十分すぎる猶予だ。

シャラ :
……今何した!?/無用/地頭残念が頭使っても意味ねェっつったなァ!?

『シャラ』 :
『猫箱が開いたなら重畳──』

シャラ :
「よくわかんねェけどッ、任せなァッ!」
 二度目の追想は同じ女からだ。
 ほか選べば“雷人”が即応するリスクがあるし、咄嗟に体頼りがムリなサンゴじゃ接続に時間がかかる。

『シャラ』 :

rejunction
『再接続:“スカッチ・ステップ”──』

シャラ :
                         カゲ
 サンゴの接続コードを聞きながら、オレは解けていた血をもう一度かき集める。

 同時に跳躍。
 大地にちっぽけに落ちるオレの影が、長く長く伸びてゆく。
 両脚に追想を鎧う。影が“雷人”の足元をすっぽり覆い戒めた。

『シャラ』 :
『事象固定。準備よろし』

シャラ :
 あいつの足元に小規模の亜空間が生成される。
 こんなの所詮影でつくったペテンだ。追想の力で『それに限りなく近い』を再現しているだけ。
 それでも十分。
 あっちの大魔術には遠く及ばないが、鎧が剥げたならオレの手品で十分だ!

シャラ :
        パターラ・ドロップ
「コ――――ドッ、“奈落へ落ちろ”ッ!!」

シャラ :
 大跳躍──からの、針で貫くような急降下。
 質量を増した両脚の影が、“雷人”の空間とせめぎ合って歪み、今度こそ当たるはずの肉身を捩じ切る!

SYSTEM :
 もちろん、たかが一瞬の間隙だ。

 だから、大地に落ちた死者の雑念が彼の足元を覆い、
 外面だけが同じ研鑽の残骸が猛威を振るうまでの間。
 そ れ
 二度目を予見していた“雷人”が口をあんぐり開けて無防備に直撃打を食らうことだけはない。

 弾けるプラスとマイナスの電荷が生む電磁場の防壁。
 だが咄嗟に生まれたそれも、たかが一瞬の間隙を縫う自動防御。

SYSTEM :
 そして、理屈で説明できる範囲ならば。

 たかが亜光速に割り込まれたところで、
 貪り重ねた経験は裏切らない。

 今度こそ───手応えがあった。

SYSTEM :
 ………爆ぜるような稲妻の衝撃が、彼を引き剥がした。
 仮面越しの表情は既に、仮面がなくとも能面じみて無機質な色を戻している。

“雷人” :
『 やってくれる…やはり我々にとって脅威となり得るか 』 

“雷人” :
『 自覚もないのか。露呈を恐れなかったのか。
  こうして確信に至った今となっては… 』

SYSTEM :
 絵に描いた炎は現実を燃やせないが、
 現実の炎が容易く絵を燃やすように。
 確かに彼はいつでも自身の存在証明を切り替える、最強の鉾と盾を有していた。

         メモリー
 あるいは、ただその記憶をなぞる歌声だけならば…。
 仮に無敵の盾が用無しになったところで、問答無用だったのかもしれないし。

ミソラ :
「二つで、一つ…?」

SYSTEM :
 その厄災に抗する術を持つレネゲイドビーイングは、
 要石が現実になければ表出さえ出来なかったのかもしれない。

SYSTEM :
 電子の妖精を、“刻知らず”と、その首魁が追いかけていた本当の理由が…これだ。
 自身の切り札を断つ術を唯一有する特性のレネゲイドと、その要石になれる存在が、彼の眼前にいる少年と少女だった。

マキナ :
「当たった……!」

 電子化し、現実とのつながりを失い、0と1の量子的存在へと変じたそいつが。確かに今守りに入った。
 先ほどの理屈からすれば、絶対に当たることのない量子重ね合いが、猫の入った開かずの匣が、観測者の手によって確定する。

マキナ :
 理屈から言えば……同系統の能力を持っているように見えるハーフィならば──確かに、ありえることがあるのかもしれない。
 でも電子の妖精は、どこまでいこうと電子的な世界から表に出ることはなく。本来ならば決して、奴らの敵となる存在ではなかった筈だ。

 きっとルクスとの出会いが、すべてを変えたんだ。

マキナ :
 理屈の上で分析すると、状況は好転してる。
 その一方で……

「この歌……」

 理屈とは違う場所で、私に訴えかけるものがある。
 皮膚は鋼鉄、筋肉は外付け、心臓に至ってはワケの分からないEXレネゲイドをぶち込まれて、人間だった部分が脳みその、それも一部分だけ。
 そんな私のはずなのに、何度聞いても不思議な気持ちがわいてくる。

マキナ :
 ずっと自由を求めて、あきらめていたあの子。
                       バディ
 窓の奥の景色から、庭を飛ぶ蝶に焦がれた、私の相棒……

 似ているところなんて、髪の毛の色ぐらいなのに。
 センサーで捉えるあらゆる情報が、別人だと告げてるのに。
          バグ
 どうしてか、そんな誤情報を訴えかけてくる。

マキナ :
「……あんた、一体……何者なの?」

 そんな掠れるような言葉は、たぶん誰にも聞こえないまま流され消えていった。

"礎石" :
「「……届いた! だが──」」

 追われていた少年少女の謎が、意味に変わる。付加価値を伴う。彼らは"雷人"、ひいては”刻知らず”を取り巻く者たちすべてに自らの意義を示してしまった。

"礎石" :
「「いや、だがも何もないな。グッジョブ」

"礎石" :
 今は目の前の脅威に対応する。"闘争卿"を排除した"蓋然を閉ざす者"が、ルクスとハーフィの命を狙う理由も分かっていない。

 何かがあるはずだ。ジャームの絶対性を破る以外の、何かが。

SYSTEM :
 そうとも。“雷人”が二人に目をつけていた理由の説明は付いた。
 だが、ならばなぜ…“蓋然を閉ざす者"の矛先は其方に向いているのか? その説明がついていない。

SYSTEM :
 彼の目にとっては。
 Calamity
 無敵の厄災よりも、これを打ち破るヴォーパルの剣のほうが脅威にでも見えたのか。
 あるいは前者の対処方法に心当たりでもあるのかも知れない。

シャラ :
「クリーンヒットォ! キモッチ~……」

シャラ :
「な~~っオレも!? オレ様もだよな!?!?」
 電撃で弾かれたところを綺麗に着地。

シャラ :
「つかあいつ、そのデンシナントカがなくなってもカッテェぞ! どーするよ!?」

“紅玉” :
「…大丈夫。
 そいつ、どこで、何してきたのか知らないけど…」

“紅玉” :
「ここに来た段階で手負いだった。なら───」

SYSTEM :
                 ・・
 …それはほかでもない電子世界での不覚だ。
    
 ならば、今のでちょうど二撃目。
 よもや切羽詰まる前の段階から、生死の境目に立ってまで目的を遂行しようとするような行いはしないだろう。

SYSTEM :
 しかしそれも、危険が見返りを上回るまでのこと。

 今現在、脅威と価値を───その向こう側を示したものに、改めて。
 あらゆる兆しを屠る狂人が銃口を向ける。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「その力は…」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
     ・・
「ならば、それを雷人に使わせる理由も…。
 貴様らを生かしておく理由も…、猶のことない」

SYSTEM :
 繰り返しになるが、彼の目には…。

 無敵を誇る電子の魔人よりも、
 魔人の仕組みを“断つ”力こそが。
   ・・
 曰く兆しとして。
 あるいは、何かしらの私情を纏う何かとして、映ったようだった。

SYSTEM :
 そこで間接的に、眼前のトロフィーへ競争が成立している限りは、雷人に退く選択はないだろう。

シャラ :
         ヤバ
「……こっち、ガチで危険くなるまでやめるつもりなさそォだな!」

天導 ルクス :
「何かっ……余計にアブない感じ?!もしかして」

"礎石" :
「「…… ……」」

 "蓋然を閉ざす者"の射線を遮るように、小柄なふたりの前へ長躯が立つ。

"礎石" :
「「彼らを殺した先に何がある? その憎悪の源は? お聞かせ願いたいものだ」」

 身命と天運の限りを尽くして、一つ事を成す。
 今日より先の我が身を顧みることのない姿勢。
 "蓋然を閉ざす者"の在り方を”礎石”は、彼と”紅玉”は──放たれる石矢だった彼らはよく知っている。 

 だが、あの執念は違う。洗脳によって植えられた専心とは一線を画す、自ずから生じた狂気だけは。

SYSTEM :
 逆に言えば、石の鏃との相違点などそこでしかない。

 彼は標的と定めたものを破壊し、後を考慮しない一方通行の凶弾。
 その形が偶さかに生き残る…それを続けてきた、という点を含めて既視感がある。

 だが、ただ一つの相違点が加わるだけで意味はこうも違う。
 彼は自分から猶も断崖を飛んでいる。その点において、凶弾は狂人となったのだ。

SYSTEM :
            まじりものを
 二つ重なる一つの声に、灰色も黒色も許さない潔癖の白鋼が…瞳を持ち上げる。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「…囀るな。死ぬオマエに答える義理はない。
 ない、が…愚行の分は愚答で返してやる」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「兆しを殺す。罪人が罪人を殺す。
         ・
 …それは、オレの業だ」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「神の御許に先に行くオマエに、
 これ以上の土産などは要らんだろうよ」

"礎石" :
「「そうか」」

"礎石" :
(……彼の理性の在り処が、少し分かった気がする)

 白い凶弾は、まぎれもなく狂人だ。まだジャームになっていないだけの逸脱者。
 しかし命の簒奪を業と呼び、自らを罪人と称する少年でもあった。

"礎石" :
「「では、ますます先には行けないな。すまないが俺は人命第一だ」」

シャラ :
「業ねェ……」

マキナ :
「業だの罪だの、覚悟の有無は殺人証明書じゃないよ。
 ──勝手にしょい込んで殺された奴らが哀れでならないよ。もういい加減止まってきな」

天導 ルクス :
「……だからって死ねるかって!」

 と、もっと強く言いたいところではあるけど……なんというか、覚悟のようなものの違いを感じる。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「その是非など聞いた覚えはない。
 恃んで行うつもりなど毛頭ない…」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「………だがそれも幾度となくオマエの、感傷か何だか知らぬものによって画竜点睛を欠いた。

 しょせんは一過性の対症療法に過ぎない無責任が、よくも天秤を握るようなセリフをほざけたものだ」

SYSTEM :
 彼への対話に然して意味と呼べるものはない。ないが、それがジャームであったほうがまだ“まし”な男なのは繰り返す通りだ。

 出なければ、彼はルクスと“礎石”にまとめて吐いて捨てるようなセリフも向けなければ…。
 等しく剣呑な気配を銃口の向こう側に向ける中で、一際その強弱が生まれることもない。

SYSTEM :
 ミソラは彼を見て最初に生残者を連想した。
 死に損ない、自ら奈落に向かうものを。

 …ルクスに向けられるさだめの銃口に、同じように標的にされた電子の妖精が立つ。
 あるいは、その無謀なる騎行に何かを言わねばならぬ、とでも思ったのか。

マキナ :
「バーカ。犯罪に根本治療なんて、目指す方がどうかしてる。
 感傷だか何だかわかんないのはお互い様でしょ」

マキナ :
「──対処療法に文句があるんなら、この私を壊してからにしなよ」

 どっちも引いてくれる様子じゃない。ハリーのアホが拘泥するせいで、雷人もまだ未練がましくワンチャン狙ってるんだろう。
 保身第一、安定第一。たとえ無敵の盾を剝がされても、いつでも逃げれるからこその撤退見送り。
 逆に言えばさっさとこいつをノしちまえば、二人纏めて追い払える……

マキナ :
 だったら今まで通り……コイツで雌雄を決するだけだ。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「………懲りんヤツだ。
 そこのといい、類は友を呼ぶと見えるな」

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「だがオマエは、辟易というのを知らんと見える。
 言われずともその妄言、ここで息の根ごと止めてやろう」

SYSTEM :
 ブラックドッグありきの多種多様な装備を“使い潰す”が如き加速力と手数にモノを言わせる彼は、誰もを抜き去る最高速度で相手の初速に合わせる。
 斉射のちの弾倉交換も終わった今…機先を制さなければ、再び凶弾が煌めくのみだ。

マキナ :
 愛用のEMLには三通りのスタイルがある。
 通常の質量弾を電磁加速させて飛ばす、燃費と安定性を重視したRail Gun。
 半粒子化した弾丸を拡散させ、大気中の指定した範囲に電荷を付与して電気ショックを流し込むLesslethal Arms。
 ──そしてモルフェウス特有の砂操作を素粒子レベルに拡張して作り出した、虚構粒子に電荷を与え、加速して放出する破壊力重視の非実体弾Liar Gun。

マキナ :
 いずれも現代科学の延長線上。表社会では試作段階、オーヴァードの世界でも同様に。
 でも小銃サイズにまで縮小し、片手で運搬出来る程の小型化を果たしたものは巷じゃそうは見られない。
 ましてや多機能化したものとなれば猶更。これは私の適性に応じて設計された主兵装。
                        Electromagnetic Multi-purpose Launcher
 無尽蔵の電力供給とレプリケータの能力を活用した多 目 的 電 磁 加 速 式 兵 装。

マキナ :
 これから放つのはその十八番。
 一発の破壊力を追求する虚構粒子砲……あの野郎の初速に追いつくためには、やっぱりこいつが一番いい。
 EMLモジュール、リンクスタート。

 Railから、Liarに。反転させ、今粒子を放つ……

マキナ :


《──警告。
 Liar Gun待機時間中 放熱完了まであと136秒》


マキナ :

………。

マキナ :

………。
………、………。

マキナ :

《──放熱完了まであと133秒》

マキナ :
「二度言わんでいいわ!」

マキナ :
 ウンともスンともいわないと思ったら。
 一気に青ざめる。マシンボディに血は通わない、当然皮膚の色なんて出ない筈が、うっかり青ざめる程に。
 待機時間。待機時間? なんで?

マキナ :
 幾ら技術が進もうとも、武器が武器である以上、欠陥を常に抱えている。
 毎回弾丸を精製して放つ関係で、弾切れを起こすことはないが、無限に発砲できる訳じゃない。
 時代が如何に進もうとも化学が如何に発展しようとも、科学も工学も基礎的な部分は共通している。

マキナ :
 銃は射撃を続けていれば、銃身が熱されて使い物にならなくなる。こいつも電磁加速して発射する以上、その電熱によって砲身は強く熱され、機能を失うのだ。
 磁力は熱によって失われる。結果、加速力が落ち、精度は低下する。
 レールを小型化しているのならば、猶更影響は大きい。

マキナ :

 ──マズった!
 うそでしょ、此処にきてこんな凡ミス──!!

マキナ :
                   リキャストタイム
《──電子化状態における熱パラメータの変化速度が想定と異なっているためでしょう。
 よいデータが取れました》

マキナ :
「ノンキこいてる場合かッ!!」

マキナ :
 思わずツッコミを入れてしまったが……そういうことか。
 自己のアバターを電子空間に投影するのでなく、自らを電子情報に変換して戦闘を行い、またそこから復帰していた。
 思うに電子で再現された空間では、排熱効率が必ずしも現実と同じとは限らないのだろう。

マキナ :
 要するに雷人との応戦の際に遠慮なくぶっ放したLiar Gunの熱交換が、まだ済んでいないのだ。
                  バグ
 そして電子化状態が災いし、計器類の酔いを誘発した。
 科学と技術とは経験則だ。翻って一度も経験したことのない事象には脆い。誰が組成を電子化させた状態でのヴァイタルデータなんてワケわかんないモノを持っているだろうか?

マキナ :

「ッ、だったら──!」

マキナ :
 だったら、経験する範囲の蓄積で、帳尻を合わせるだけ……!
 分解して再構築してたんじゃ一手足りない。
 こうなったら過負荷でレールを自壊させながらぶっ放すしかない。

マキナ :
 四肢に巡る蒼い雷霆が、血潮のように溢れ出る。
 この際威力は二の次。一撃でぶっ飛ばそうという当初の目論見をすべて捨てる。
               ハイパー
 射撃管制をマニュアルに変更、量子コンピュータと接続した脳が現在の電磁力で発射される場合の複雑な弾道計算をコンマ数秒で完了させる。
 荒くなる狙いを、電磁誘導で補正を掛ければ……!
 
「ッ、らぁーーッ!!!」

マキナ :
 けど案の定収束が甘い、拡散する。
 まるで勢いなくホースから噴き出す水のようだ。当たれば相応の威力は見込めるが、本来のパワーを出し切ってるとはとてもいいがたい。
 これなら躱すまでもなく、奴は防具で受けながらターゲットへの攻撃を続行するだろう。
 けど……布石は撒いた。

マキナ :
 せいぜい油断しろ、バカハリー。こっちは一人で戦ってんじゃない。

「──続けて、今!」

 すかさずルクスに一声。こんな時に新人だよりってのも締まらないけど、ハナから使えるモノは使うってもう伝えてあるし! ノーカン!
 出力が落ちた荷電粒子は、布石。
 ……電荷を帯びた虚構粒子を浴びさせることで、奴の周囲にプラスの電荷が溜まることになる。

マキナ :
 ──つまり、でたらめにぶっ放した放電でも、マイナス電荷を引き寄せることによって百発百中の雷槍となる!
              ディスチャージ
 力を満足に扱えないルクスの 放 電 を誘導する。今出来るのは、このぐらい!

SYSTEM :
 ───ところで。
 兵士は基本的に、自分の最善のパフォーマンスなど想定しない。

 戦場には不測の事態がつきものだ。
 環境、装備、戦局、自他ともに目まぐるしくバグを吐き出す乱数の中で100%など、
 考える方が基本的に烏滸がましい。

SYSTEM :
 ましてや精密機械となれば当然だ。
 もちろんそうならないために、ありとあらゆる戦闘状況を想定してデータを蓄積するものだが、
            バイプロダクト
 それで済むなら世の中に不良品と欠陥品などという言葉は存在しない。
 先程の言葉ではないが、根本治療を目指すほうがどうかしている分野だ。

 従って誰にでも不測の事態と書いて蛇の目が訪れるわけで。
 機先を制されるコンマ数秒、まさに解放の時を待つはずだったオーバーテクノロジーの塊/愛銃 が吐いたエラーは、その蛇の目があなたを仰いでいたことの証だった。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「───ハ」

SYSTEM :
 そしてその数秒足らずのリキャストの余地において。嘲笑2割、妥当8割の自然な声色。

 なぜなら“雷人”の損傷度合いを敵UGNチルドレンが発した時点で…。
 彼の中では、一体誰が男に致命傷を与えたのかほぼ消去法で二択だった。

 厳密には“礎石”が積極的攻勢に出ず、
 雷人の用いた無敵の盾に、ころころと表情を変える“アガースラ”の反応を見て二択。

SYSTEM :
 伊達に幾度も矛先を向けられ、死線を彷徨ったわけではない電磁加速式兵装の唯一無二の欠点と状況性。
 確信があったわけではないが、全く考慮していないものでもない。

 この瞬間、“蓋然を閉ざす者”は、想定通りに初速を跳ね上げた。
 概ね何をしようと然したるダメージにもならぬと分かっているならば、最短経路を最大火力で打ち抜くという当初の目的を達成するだけでよい。

SYSTEM :
 意識の中核は紛れもなく標的と、
 おそらく阻みに来るだろう男に向いた。

 そして、そこまでは概ね事実だ。
 当事者に如何程の無念と抗議があろうと、たとえこの男が出からしだろうと、同じ条件で足を止めるほど狂弾の支柱は脆くない。

SYSTEM :
 もちろん明日撃つ分のリスクヘッジはこれで終了した。
 弐度目はないだろう。概ね。

 …だが今日撃つ分は別だ。

SYSTEM :
 その答えは簡単だ。持ち主の経験で是正するしかない。
      ふろしき
 その広げた無理難題を力技で制するしかない。
 そう判断したあなた/マキナの対応は迅速かつ乱暴だった。

 白き流星が眼前で加速するその瞬間に、蒼き雷霆が愛銃に過負荷をかける。

SYSTEM :
    ガ ン          スプレー
 それは粒子砲ではあったが、さながら噴霧だ。
 向かってくる相手には覿面の効果であろうとも、その有効射程距離の短さ、ましてや最大火力の発揮出来る箇所は限定される。
 しかも、そもそも本来の用途ではないのだから、とてもではないが一撃必殺の火力など見込めない。

SYSTEM :
 …受ける彼の側が、最初の“闘争卿”に全霊を傾けた余波で破損したアーマーであることは幸いした。

 まったくの無傷ではないだろうが、最初に思い描いていた結果から比較すれば雲泥の差だ。
 “蓋然を閉ざす者”は、接近のまさにその瞬間、声を掛けられたルクスに銃口を向け…そんなものは承知の上とばかりに殺気を切り裂く空気に靡かせた。

“蓋然を閉ざす者”ハリー :
「苦し紛れを…。
 ならばその愚行、いま精算してもらう───!」

SYSTEM :
 そもそも粒子砲が“どう”だったとしても躊躇なく踏み込む算段だった以上、状況にさほどの違いはない。
 ・・・・・・・・
 撃たねばやられる、あなたの人生で短時間のうちに押し寄せる三度目の危機だ。
 しかも、今度は生身の人間の、本気の殺意を伴って。

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈───生きるの、まだ!〉

『電子の妖精』/ハーフィ :
〈…あなたは死なせない!〉

SYSTEM :
 知ってか知らずか。
 彼女の歌が反響する中でどういうメカニズムなのか、おそらくは持った覚えもない銃を一緒に支えるような錯覚が腕に宿る。

 何ら意味はない。単に、隣に居ようとするだけ。
 危機一髪を千載一遇と両立させてくれたマキナの意志を、追いつかないなりに、同じ思いだから何とか汲みたがっているだけだ。

SYSTEM :
 だが、よもや。
 幾ら不測の事態で殴られようとも。
 ひょっとすると自暴自棄擦れ擦れのラインかもしれないが。

 あなたにとっては、既に何人分か分からないお膳立てだ。

SYSTEM :
 つまるところ、
  /回想するに曰く、

天導レイ :
“やらねば男が廃る、だ!”

 

・Scene2『侵略者-Domination-(戦闘後)』