《Fortes_fortuna_adjuvat》 チャットログ:メイン


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目次

・導入
・シーン1「Journey-獅子王流離譚」
・シーン2「Phantom-亡霊ども」
・シーン3「Fortuna-レムリア」
・シーン4「Sangue-責務のかたち」
・シーン5「Farsa-欲望の徒よ(1)」
・シーン6「Farsa-欲望の徒よ(2)」
・シーン7「Farsa-欲望の徒よ(3)」


導入

GM :


      【Fortes fortuna adjuvat】

         ▽最初から始める

            エクストラ



GM :

 ………。

 ………………。
 ………………。

GM :

◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 これより「Fortes fortuna adjuvat」の開始を宣言します。
 PL各位、および観戦席の皆々様、どうぞよろしくお願いします。▼

SYSTEM :

 開始に先立ちまして自己紹介を行います。
 雑談席、ないし観客席にて相談のち、
 希望する順番で各PCの自己紹介をよろしくお願いします。▼

SYSTEM :

 ………。

 ………………。
 ………………。

SYSTEM :

【自己紹介/PC1】

夏瑞珂 :
「私を知りたいの? ……そ。変な人」

夏瑞珂 :
           ルーツ
「夏瑞珂。御覧の通り、血統がそうなの。と言っても大陸の土を踏んだことはないのだけれど」

夏瑞珂 :
「生まれも育ちも合衆国よ。幼い頃にいろいろあって、軍人さんに育ててもらったの。
 ね、テンペストってご存知?」

夏瑞珂 :
「知らないのなら、憶えていって頂戴ね。
 世界最強の軍隊にして、嵐を征く者たちの名を──」

夏瑞珂 :
「あら、話が脱線しちゃったみたい。私の話だったかしら」

夏瑞珂 :
「三年前から、闘争代行人として各地を転々としているの。
 個人の闘いから集団の戦いまで、あらゆる暴力的解決を請け負います。有り体に言えば傭兵ね」

夏瑞珂 :
           コード
「オーヴァードとしての名義は──」

夏瑞珂 :
 STORM BRINGER
「" 嵐を齎す者 "」

夏瑞珂 :
「ここに嵐を征する彼らはいない。解き放たれた嵐がすべて吹き飛ばして、無謬の荒野を拓くさまを……どうか見ていてね」

ask2 :
(すぽん)

ask2 :
過去編卓で起きた事件をフックに作成した新規PCです。
拼音で「シア・ルイクゥ」、音読みは「か・ずいか」になります。

なっちゃんと呼んでください。

ask2 :
十余年前の合衆国で発生した「覚醒する世界」による大規模な衝動侵蝕にまきこまれ、ハヌマーンとして覚醒。
のちにシナリオロイスに敗北しサラマンダーを発症、クロスブリードになりました。

ask2 :
ストライクハーケンと風鳴りの爪の「技能:白兵/射撃」を活かした遠近両方に対応できるアタッカーで、最大の強みはシナリオ1の低C値アタックです。勝つぞ勝つぞ~!

ask2 :
そんな彼女は、自由を求める暴力賛歌ガール! 
現在は焦げついた自由と共に、復讐かかげて邁進の日々です。

ask2 :
年齢は23歳ですが、PLとしては少女として扱っていきたい所存。カナンとか式とか、あのかんじです。

よろしくおねがいしまーす!

GM :
よろしくお願いします。 

GM :

           ストームブリンガー
 と、いうわけでHO1、“帯来风暴”の夏瑞珂さんです。

GM :

 本人およびPLの言及通り、
「Falling down Sodomy City」、通称過去編のクライマックス前に発生した然る出来事…。
 詳細はログを見て頂きたいので簡潔に語りますと…。概ねPL本人の語った通り、ものすごく性質の悪い衝動浸食の被害者です。

 行き着くところに行く前に、聖夜の奇跡…というにはあまりに小さな人の縁。
 当時解決にあたっていた組織の片割れ。
 第三海兵遠征軍、参謀本部直属部隊テンペストのある人物たちの手で助かりました。

GM :

 で、助かったはずなんですが、のちのち行うOPにてドンガラガッシャンと。

GM :

 特筆するべきはどちらかというと所有アイテムとの組み合わせ!
『暴走』をトリガーにダメージロールを2d10する「怨念の呪石」相当のブツを所持しており、
 これと紅蓮の憎悪で暴走時にさらに固定値を上乗せ、
 さらに風鳴りの爪を合わせて徹底的にダイス事故を排除しにきている印象です。

GM :

 シナリオ1の低C値も賢者の石+α指定ならではのギミック。
 …まあぶつける相手は想像がついているでしょう!

GM :

 あと、珍しく…HOの仕様上どこか指定気味で申し訳なくもあるのですが、
 本当に珍しくこの本体様ながら「ガード値」「装甲値」「軽減」「カバーリング」という言葉を露ほども見かけておりません。

 僕がこれで調整をミスったら紳士からこっち、
 このカバーリングにクソほど甘えていたという事実にセルフ北斗懺悔拳をすること間違いなしですね。

GM :

 そんな彼女のHOはこちらです。 

HO/PC1:逆襲の刻 :

     .レムリア
 ロイス:“黒鉄の狼” 
 推奨感情:P任意/○N殺意
 
 あなたは元々UGNか、FHか、ゼノスか、そうした組織の中にいた。
     ・・
 そう───いた、だ。
 今のあなたは組織に属する人間ではない。
 死に場所を求め、平穏の裏側にひたすら続く戦場の火に身を投じる傭兵だった。

 かつてあなたの仲間とあなたは、ひとりの人間に殺されている。
 あなたがオーヴァードだったならば、たまたま命を繋いで復活を遂げ。
 あなたがそうでないならば、たまたまそこがレネゲイドに魅入られる瞬間だった。

 あの時から、何故か心が燻り続ける。復讐を、逆襲を、再戦を果たせと誰かが叫ぶ。
 あるいは、その声こそが、本当のあなたなのかも知れない。

 あなたは、いまイタリアのローマにいる。FHセル「リグ・ヒンサー」に雇われている状態だ。
 遺産『雷神の槌』を強奪する作戦に、武者修行、あるいは別の理由で参加したが………?

GM :

 やとわれ先で何が起きるのか…。
 何を知り、何を勝ち取るのか…。
 それはGMにさえ、すべては分かりません。どうか幸運を──。

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。

SYSTEM :

【自己紹介/PC2】

アレウス :

「よう、また会ったな。
 これで何度目だ? 二度か、三度か……」

アレウス :

「ま、いいさ。
 座れよ、俺の事を聞きに来たんだろう?」

アレウス :

「自分から言うのも何だが、俺のことを知らんとは中々珍しい。
 尾鰭の付いた"看板"のせいで、こっちの世界じゃそれなりに有名人でな」

アレウス :

「あらためて名乗らせてもらおう。
 俺はアレウス……アレウス・バルバートだ」

アレウス :
 
「基本的には……そう、"死滅天隕"という字名でやらせてもらっている。
 ああ、勘違いするなよ、俺が考えたんじゃあない」

アレウス :

、   、  、   FH
「アンタは……そうか、同業か。
 それなら、話が早い……俺はセルリーダーを務めていてな。
 聞いたことがあるか? 亡霊の鸛──"ファントムストークス"の名を」

アレウス :

「ハッハッハ! だろうな。
 アンタらのようないちエージェントからしたら、俺たちみたいなセルは気味が悪いだろう。

 その通りさ……亡霊のように彷徨い、海を渡り、大地を駆け、屍肉を啄むのが俺たちだ」

アレウス :

「俺ん所は名前だけが知られている方が都合が良くてね。
 こんな風に、人にベラベラ喋るのは中々ないのさ……アンタは運がいい。
 二重の意味でな」

アレウス :

「……ん? 俺のもう一つの名前?
 ……ククク! そっちの"看板"に触れるのはあまり感心せんな」

アレウス :

「だが良いだろう、教えてやる。
 だが……気軽に"これ"で呼んでくれるなよ?
 こいつは老人から押し付けられた看板に過ぎないんだ……」

アレウス :

「……俺がそう、"マスターハーヴェスター"だ。
 所以は言わなくても、アンタなら分かるよな?」

アレウス :

「──クックック、続きが聞きたいようだな。
 アンタみたいな"知りたがり"に関しては、することは決まってるんだが……」

アレウス :

「さっきも言ったよな?
 アンタは運がいい──ようこそファントムストークスへ。
 歓迎しよう……そうだな、バーボンでも嗜みながら、だ」

オオ :

 こんばんは。
 急遽自己紹介ということで全部アドリブでやりました。
 お時間かけて申し訳ないです。
 

オオ :

 PC2「アレウス」の自己紹介になりました。
 ブリードはクロスブリード、王道のエンハイ/モルフェウスです。
 ご存じ射撃型です。

オオ :
 
 基本的にはシンプルな範囲アタッカー。
 マスターエンブレム"蹂躙者"により、バステもかけられるお得仕様です。
 セルリーダーの立場を悪用し、AIDAやハイペリオンを積み、スカイキッドで飛び、とにかく数字を盛っています。

オオ :

 自己紹介では書きませんでしたが、ローマにいるFHの人たちとなにか色々あるそうですよ。
 基本的には任務のメンバーに優しいですので、親しくいきましょう。
 よろしくおねがいします。

GM :
よろしくお願いします。 

GM :

          モルデ=メテオリーテ
 というわけでPC2、“死滅天隕”のアレウス・バルバートさんです。

GM :

 設定上彼は『ハーヴェスター』の称号を得たマスターエージェントですが、
 どちらかというと此方のコードネームこそ本領! というところでしょう。

 かなり数奇な運命をたどっているようで、その道行たるや、
 少年兵→政府引き取り→脱走してイタリアギャング→軍属→自分でセル設立!
 生まれついてのグリーンカラーとはよく言ったもの。
 ちなみにこちら「環境保護主義」または「軍人全般」の職業を指すのだとか…。
 なるほど掃除屋ってことですね。

GM :

 また、PCとしてはかなり珍しい「コードウェルの主流派から外れた」セルを率いる人間です。
 ただ、実は前例が当方の前卓にあったりします。(自卓のDAIMA)

GM :

 ビルドとしてはエンジェルハイロゥとモルフェウス。
 仰る通り、能力値と「感覚/射撃」関連エフェクトの多い、王道的な射撃ビルドです。

 範囲のレーザーファンや火力のマスヴィジョンなど馴染みのあるものが揃っており、
 更にはコーリングシステムによるスカイキッドに搭乗しての戦闘など、モチーフ通りの機動戦が期待できます。

GM :

 なお、この際搭乗する兵器をPSYフレーム(※過去編またはwiki用語集(海藻類)を参照)と呼びます。
 こちらも端的に記載するなら「出力格差や能力のムラが激しいオーヴァードの運用を規格化・均一化することを目的としたパワードスーツ」…と言ったところでしょうか。ごま塩程度に覚えておいてください。

 こちら、設定元は私ではありませんので借りる時などにはお気をつけて!

GM :

 ちなみに
 なぜか光の舞踏を持っておられます。

 あいつ…歌舞いてやがる! 

GM :

 そんな彼のHOはこちらです。

HO/PC2:欧州戦線異常あり :
      ア ス ラ
 ロイス:“赤の鬼人” 
 推奨感情:P信頼/○N猜疑心
 
 あなたはギャング上がりのFHセル『リグ・ヒンサー』のセルリーダー“アスラ”と知己の関係にある。
 彼からその腕っぷしを見込まれ、ある作戦への助力を願われる。
 
 ローマに運び込まれ、オークションめいて情報の公開された遺産『雷神の槌』。
 これを回収し、周辺セルに対する更なる躍進のために立案された作戦に、
 あなたは流れの傭兵(エージェント)であるPC1を従えて参加することになったが………。

GM :

 このHOには記載していない続きが募集要項にありまして、
 彼はPL本体様の言及通り、ローマの一部の組織や人物についてある程度の理解を相互に持っています。

 私は開始から終わりまで全方位に好き勝手ほざくため、どうぞ投げ返していただけると幸いです。

GM :

 それはさておき『依頼』そして『助力』とのことですが…。
 FHが如何なる組織か、FH同士の衝突が『何』を生むのかは御存知のはず!

 あなたが…いえ、厳密にはあなただけではありませんが…。
 何を重んじ何を軽んずるのか、状況判断が問われることでしょう。 

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。

SYSTEM :

【自己紹介/PC3】

とあるFH拠点の監視カメラ :
 ────灰色の室内が映し出される。

とあるFH拠点の監視カメラ :
 その中心には、椅子が一脚。
 誰かが腰かけていた。

とあるFH拠点の監視カメラ :
 その“誰か”の手は椅子の背に回され、足は脚部に鎖で縛められている。
 その椅子自体も、まかり間違っても転倒などせぬよう、床にがっちりと固定されていた。

 いかにも尋問前といった様子。
 項垂れるその首には、奇妙な首輪が巻き付けられていた。

とあるFH拠点の監視カメラ :
 ……小さく物音。
 部屋の扉が開き、閉まる。
 そしてキイ、と金属音────鉄格子の扉が開かれた。

とあるFH拠点の監視カメラ :
 現れた人影は、一つだった。
 尋問など格子越しにやればよかろうに、わざわざ入ってくるのはそういう酔狂か、それとも必要だから行っているまでなのか。
 物音に気付き、首をもたげる囚人に、判別などついているのかどうかは定かではない。

とあるFH拠点の監視カメラ :
 看守にしては、派手な服装の男だ。
 羽織った上着には、鬣が如き白いファーを纏わりつかせている。
 馬掛にも似た上衣にはアレンジが利かされていて、彼が手を伸ばすとカフスボタンで留められた袖口がちらりと画角に映った。
 
 黒髪の内側は目を惹く紅で染められており、監視カメラの方を振り仰いだ瞳の色は、カラーサングラスに遮られて特定することは叶わない。
 口元は場に似つかわしくない、穏やかなれど真意を窺わせぬ微笑みの形に。

"七花胡" :
「おはようございます、ベネツィア支部のUGNエージェントさん。ご機嫌はいかがですか?
 ────はは! 熟睡のところを叩き起こされればそんな顔にもなりましょう。
 自分の“薬”が、貴方の快眠の一助となったようで何よりです」

"七花胡" :
    ベルヴェデーレ
「自分は“七花胡”、貴方を此処まで拉致させた、その黒幕といったところでしょうか?
 ああ、ふふ……御心配なく。眠りによく効く薬以外は、盛っていませんよ。
 貴方の体は健康そのもの、御安心ください。まあ節々が痛いのは……部下の歓迎が少々手荒だったようで。
 我慢くださいね」

"七花胡" :
     ・・・           ・・・
「此処までご同行いただいたのは、貴方にお遣いをお願いしたかったからです。
 そう、お遣いです。物を運んで、言葉を伝える。子供にだってできる簡単な仕事ですよ。
 できるでしょう? 激戦地イタリアのエージェントであれば、それくらいは……」

"七花胡" :
「ねぇ?」

"七花胡" :
       ・・・・・
「というのも、アールラボに解析しておいていただきたいものがあるのですよ。
 貴方の首についている“それ”のことです。この地域のFHが独自に開発したものらしくてね。
 本来、自分が直接依頼するのが筋なのですが、今は仕事中で手が離せません」

"七花胡" :
「何、貴方はただそれを付けたまま、ゆっくり眠っていればよろしい。
 貴方を助けに来たUGNエージェントがそれを外し、しかるべきところに回すでしょう」

"七花胡" :
「自分、今はある遺産を追っていてね。何故遺産探しに自分なのだか。
 昔本部にいた時も、遺物探索局務めではなかったのですがねえ……。
 慣れない仕事で困ったことばかりですよ。たとえば、UGNの看板ぶら下げた何処かの誰かさんのおかげで、此方の身分が盛大にバレそうになるとかね」

"七花胡" :
「まあ、どうにかこうにかやり遂げますよ。
 ですから御心配なく、極東からやってきた何処ぞの畜生風情など気にせず、貴方は貴方の職務に忠実であればよろしい」

"七花胡" :
「……ははは! “お前こそ喋りすぎ”だって? そんな顔をしていらっしゃる。
 お気になさらず、どうせもう数分もすればすべて忘れるのです。
 ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 今此処で自分がお話したことは、誰の記憶にも何処の記録にも残らない」

"七花胡" :
「残るのは、哀れFHに拐され昏睡させられたUGNエージェントだけ。
 それからきっかり十分後、突入してきたUGN部隊によって貴方は無事、回収される。
 そういう筋書きですから」

"七花胡" :
「おっと。そろそろ自分もローマに戻らなければ……上が煩いものでね。
 客将という身分は便利ですが、如何せん品定めの目が厳しい。
 お遣いすらこんな回りくどい手を使わないといけないなんて、面倒なものですよ」

"七花胡" :
「それではね、二度と会うことはない同僚さん。
 短時間とはいえ心置きなく熟睡できるよう、強めの処方にしておきますからね。
 
 ああ────もし、万が一、覚えていればの話になりますが……」

"七花胡" :
 ソーン・ガーデナー  ・・
「“楽園の看守”、謝花がよろしく言っていたと、お伝えください」

"七花胡" :
「それでは、佳い夢を……♡」

とあるFH拠点の監視カメラ :
 黒いレースの手袋に包まれた男の指が、囚人の額をつん、とつつく。
 その瞬間、つつかれた側の首が「がくん」と垂れ下がり、一切の反応を示さなくなった。
 
 一つ頷いた男は、それ以上彼に興味を払うことなく踵を返す。
 牢屋から出る間際に、瞳がサングラスの隙間から一瞬だけこちらを捉えた。
 
 金色の、蛇の如き眼が。

とあるFH拠点の監視カメラ :
 ……無用に録画が回り続けて十分ぴったり。
 爆音と振動が画角を揺るがせ、続く第二波が運悪く監視カメラを固定していた壁を粉砕したのか、「カシャン」という耳障りな音を立てて視界が落下する。

 レンズに罅が入ったらしい。囚人は、こんな大騒ぎにも関わらずぴくりとも目を覚ました気配がない。
 次いで響くのは幾多の足音だ。乱入してきたそれらは囚人の安否を確認したあと、手早くその拘束を解除────

とあるFH拠点の監視カメラ :



 がしゃんッッ

とあるFH拠点の監視カメラ :


 ジジ ジーーーーーー

とあるFH拠点の監視カメラ :


 ブツッ

とあるFH拠点の監視カメラ :
 撤退のどたばた騒ぎに、誰かが踏み壊したのだろう。
 致命打と思しき破壊音が聞こえて、そして、音声と映像が同時に途切れた────

ルビコニアンデスコンブ :
(ぬ゛る……)

ルビコニアンデスコンブ :
 お世話様です! PLです。
 そしてPCはNPC出演回数とPC出演回数が今回でどっこい! どっこいってマジ!? 待望の続投・謝花です!!
 待望しすぎて新規立ち絵と戦闘立ち絵を用意しました!!!!!!!!!(ドン!!!!!!!!)

ルビコニアンデスコンブ :
 本来は日本でQ市・S市小支部を取り仕切るUGN支部長ですが、特命によりイタリアはローマでFHエージェントをやります!!

 ノリノリじゃないかって? いやだなあ不本意ですよフホンイ

ルビコニアンデスコンブ :
                ベルヴェデーレ
 FHエージェントとしての名前は“七花胡”です。
 とはいってもやることは支部長の時とあんまり変わりません。
 懐柔しt……言い包めt……利害の一致でたまたま仲良くなった人たちにバフを撒いてそのバフを活用して働いてもらいます。

ルビコニアンデスコンブ :
 シンドロームはソラリス/ノイマン/オルクス。
 メインプロセスでバフを撒き、適宜達成値補助、クライマックスで味方に割り込み行動をさせる、後方支援型のビルドです。
 今回はIA解禁ということで、侵蝕値対策にレインボウファイアルを持ち込んでいます。長旅には備えが重要ですからね。
 戦闘立ち絵に乞うご期待!!!!!!!!!!!!!!

 精神と社会がそこそこ高いのとオルクス御用達ミーミルの覚書を持っているため、ミドルもわりと得意な部類。
 あとはPLのリアルINTが追いつくことをご期待ください。

ルビコニアンデスコンブ :
 今回はランカスターのじいさまからの御命令で、自分の庭ではなく、よそさまの庭でのお仕事です。
 あくまで第一は自分の庭! ですが其処は柔軟に、FHとだって協力関係を結べる男なので仕事は粛々と。

 その結果他人の庭がどうなろうとあんまり興味は無いみたいですが……。
 まあ、それはそれ!

ルビコニアンデスコンブ :
 そんな感じでFH謝花、ご期待ください。
 よろしくおねがいしま~~~~~す!

GM :
よろしくお願いします。 

GM :
      ベルヴェデーレ
 そんなわけで“七花胡”さんです。
 いったい……何花さんなんだ……。

GM :
 概ね本編では本人がバラさない限り未知のエージェントなため、
 何とは言わないその辺りについては基本「シークレット」とさせて頂きますが…。

 ちょっとその名前を名乗る方について軽く解説しておきますね。

GM :
 中国に存在した大手FHセル《八仙過海》に所属していたところ、七年前にUGNの攻撃でセルは崩壊。
 各地を転々としていたところをスカウトを受けた、そんな筋書で潜入しました。

 素性知れずのエージェントだろうと招致したのは、
 リグ・ヒンサーの“赤の鬼人”には自信があるとも取れますが、
 外様ながら既に客将の立場になった彼には、彼なりの思惑と達成するべき目的があります。

GM :
 セル内ではちょっと珍しいタイプの効率主義者な彼は、
 ソラリス、ノイマン、オルクスの三種から成るトライブリード。

 よくよく見かけるタイプの支援構成ですが、ここに『夢の雫』や古代種エフェクト、レインボウファイアル相当品などの小回りの利く品揃えで差を付けています。
 長期戦になる…のかどうかは正直血の気の多さ次第ですが、なればなるほど輝くかもしれませんね。

GM :
 しかし言及取り彼はUGN。目当ては言及通り、なんと遺産です。
 本来は「庭師」として支部長を務めている彼が、いったいなぜここにいるのか。

 そんな彼のHOですが…。

HO/PC③-α:ザ・ビジター :
 ロイス:ヨシュア・ランカスター 
 推奨感情:○P有為/N厭気
 
 あなたはUGNのエージェント、または関係者である。
 日本在住の人間でも良いが、なるべく海外出張が可能だと望ましい。

 あなたは名家ランカスターの長であるヨシュア・ランカスターから、
 かつて本部エージェントだった縁を伝って、依頼を受ける。
 イタリアのローマに運び込まれた遺産の確保(ないし破壊)───それがあなたの任務だ。
 
 UGN勢力の手が届かぬローマでは、
     ホーム    .ビジター
 あなたは庭主ではなく来訪者である。
 飢えと退廃、弱肉強食の記憶に、もう一度踏み込むにあたって………。
     ・・
 どちらの流儀を持ち込むのかは、あなたの手に委ねられた。

GM :

 要するにヨシュアから「遺産かっぱらってきて(ぶっ壊して)」と指示されました。
 本部エージェント(元)、青天の霹靂。


GM :
 しかし遺産をただ回収するだけでいいなら、
 ぶっちゃけ遺物捜索局やナイトフォールに任せておけばいいはず…。

 ヨシュア・ランカスターの判断と見込みにどう応え、
 どの流儀をどのタイミングで適用していくのか。それはあなた次第です。

GM :
 くれぐれも悪縁にはお気をつけて…。 

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。

SYSTEM :

【自己紹介/PC4】

  :
 ☛PC④
 ☛Lases, The Demi-Lion/Vassal-Lion

  :
 Bleed:
 ☛Chimaera
 ☛Black Dog

  :
 Descript:
 ☛The LEGACY

獅子王 :

「────ああ。おはよう」

獅子王 :
「だが、此度は……」

獅子王 :
「知らぬにおいだな。血と鉄、欲望の臭いがする」

獅子王 :
「わが臣下は、その臭いは纏わない。鼻が曲がるようだ」

獅子王 :
「ああ……」

獅子王 :
 ・・・・
「貴様だな?」

獅子王 :
「貴様の来訪に、森は恐怖したな?
 その嘆きが、我が氷の眠りを醒ましたな?」

獅子王 :
「つまり貴様は、この森の敵だ。なにを求める、客人よ」

獅子王 :
 しなず
「不死を──?」

獅子王 :
「──そうか」

獅子王 :
「おれの知るかぎり、それは絵空事だ」

獅子王 :
「形を得たのなら、滅びぬものなどない。
 まことのものがあったとしても、それは既に喪われている」

獅子王 :
「よしんば、それがこの森にあるとして……」

獅子王 :
「貴様は、何も得ることなどなくここで死ぬだろう。
 さもなくば、我が喉笛を食い千切ってみせよ」

獅子王 :
「────」

獅子王 :
「──なんだ?」

獅子王 :
「名か。お前の頭にある鉄の臭いが、それを持ち帰らせるのだな」

獅子王 :

 Demi-Lion
「隻獅子──」

獅子王 :
「聞かせる名は、それだけだ。
 せいぜい広めてみせるがいい」

獅子王 :
「後は、我が身を砕き、肉を裂いて確かめればよい」

獅子王 :
「ああ。無論。その前に────」

獅子王 :
「貴様の頭を、我が手が砕いてみせようが」

おだまき :
(すぽ~ん)

おだまき :
これはわんちゃんに見えますがねこちゃんです いいですね?

おだまき :
意味怖擦って1500年! おだまきです! よろしくお願いします!

おだまき :
      ドゥミリオン
 使うPCは“隻獅子”ラーゼスです。
 ドゥミリオンはDemi-lionと綴ります。
 獅子の半身…! そう! 隻獅子ってことですね

おだまき :
 5世紀イギリス……ホーリーグレイルステージ出身のアニマルオーヴァードです。
 ロンドン卓のシャロンさんや土日卓のサイラスが所属している、SoG傘下の隻獅子騎士団という団体で名誉団長をしているライオンの王様です。

おだまき :
 いろいろあって自分の治めていた森から臣下によって追い出されたり、その最中で言葉と知性を取られたり、それを全部取り戻したりしたところ、
 結果として古代種に感染して不老を得ました。
 細かいことは第一次DF卓こと「Crime of Order」のログをご覧いただければと思います。PC3が連れてるアニマルテイマーのアニマルだったほうです。

おだまき :
 不老になった代償として、もしくは不老を狂わないまま超えるための手段として、基本的に出身地の森がピンチになった時だけ活動し、それ以外は森の奥で氷になって眠りにつくようになりました。

おだまき :
 データ的には非常にシンプルなブラックドッグ/キュマイラ白兵型です。《マグネットムーブ》で自分の間合いに連れてきて復讐で殴り合う!
 侵蝕率が上がれば《フルパワーアタック》で、更に上がれば《雷神の降臨》で基礎攻撃力を底上げします。
 Dロイス遺産継承者で《カウンター》を取得しているので、チャンスがあれば攻撃封殺も積極的に狙っていきます。

おだまき :
なおミドルは基本的に無能です。浦島ライオン丸なので仕方ありません。要人への貸しで一回だけがんばります。

おだまき :
いろいろ設定はありますが、本人(本ライオン)が特にこれをひけらかすことはないので、基本的にはちょっと箱入りのお上りさんという感じで動きます。

おだまき :
 何とは言わないんですが
 DFでつくってもらった下地に蒼月後半のエッセンスをぶっかけた感じになると思います

おだまき :
 今回は森のみならず世界のピンチ! ということでピキーン! と来て起床!
 のちロケット噴射でローマに飛んできます。

おだまき :
若い人間さんたちと仲良くするぞ! よろしくお願いします!

GM :
よろしくお願いします。 

GM :
       ドゥミリオン
 そんなわけで“隻獅子”のラーゼスさんです。

GM :
「きたない風花雪月だ! キャッキャ!」と燥ぎ散らかしていたところ、現れたのは有識者Lv99です。
 迂闊なことを喋ろうものなら警告の唸り声の後に首をちぎられるに違いありません。

GM :
(※GMの断末魔予想図) 

GM :
 キャラクターとしては「Crime of Order」、通称DF卓からの実質的続投となります。

 仔細はやはりログで読んで頂けると嬉しいのですが、概ね語って頂けた通り、彼女はHO3である「従獅子のキース」と………。
 そして「MURDER in the MIST」、通称ロンドン卓のHO1として登場したシャロン・ゴドウィン、
 また「All rebirth」、通称土日卓のHO3として登場したサイラス・ゴドウィン。
 両名の所属する組織『隻獅子騎士団』とかかわりのあるキャラクターとなります。

GM :
 さて、そのラーゼスが長年の眠りから覚める、ということは、
 この森に何らかの、対処せねばならない危険が迫っている、ということなのですが…。
 
 解説する前に改めてビルドをご覧ください。

GM :
 ブラックドッグとキュマイラのクロスブリード、パワースイングとアームズリンクの白兵型…。
 また、近付く手段の無さをマグネットムーブで補うなどして、この構成が齎す行動値の低さを補っています。
 
 で、その補った末の白兵戦で何やるかって、フルパワーアタックと雷神の降臨を二枚重ねです。
 いったいその火力で誰を消し飛ばそうというのか。なんだよ固定値+50って。

GM :
 侵蝕が80%を越えた時、黄色信号が出るのはPCだけではありません。
 仮に一撃で吹き飛んだキャラが居た場合、以降その名前は「コルネリア」となります。

GM :
 そんな感じでこちらも実はダイスを振りまくるタイプではなく抜けば一撃のタイプですが、
 彼女…陛下…大将…大将。
 
 大将のHOはこちらです。

HO/PC④-γ:貴種流離譚 :
 ロイス:“狼の王”
 推奨感情:P任意/○N脅威

 ───微睡みから目を覚ます。
 眠りから覚めることの意味は、あなたを抱き、あなたが従えるこの森が、
 あなたを必要としたが故の事。
 
 幻想から現実の側に這い出すあなたが、微睡みから覚める間際。
 古き血が、朧げな凶兆を幻視していた。
 かつて往年の繁栄に縋った男が、歪んでも尚愛していた国───。
 ローマ
 羅馬に留まるその禍が、何かの引金を引くのだと直感したのは、その瞬間であった。

GM :
 どうやらそれが嘗て縁のあった「ローマ」にあることが確定しています。
 しかし、実際に辿り着いた先では人の好いものばかりではありません。

GM :
 みごと、人の好くないものと凶兆を頭だけにし(ローカル用語)、
 臣下の待つところに帰ることが出来るよう、陰ながら応援しております。 

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。

SYSTEM :
 全てのキャラクターの自己紹介を確認しました。
 お疲れ様でした。▼

SYSTEM :
 トレーラーに移行します。
 しばらくお待ちください…。▼

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

〈Trailer〉 :
 ひとりの男が夢を見た。
 愚かしく、浅ましく、けれど。避けられない夢だ。
 大きな野望は、足元から燃え広がるように、心の中で広がった。

〈Trailer〉 :
 ひとりの男が夢を見た。 
 その広がった炎に中てられるようにした、忘れられない夢だ。
 這い出てくる炎は彼にとって真実で。衝き動かされるように踊り出した。

〈Trailer〉 :
すべての道が通ずる、ここイタリア半島がローマの地。
UGNの手が及ばぬこの大地に、ある遺産が運び込まれた。

〈Trailer〉 :
タイプ───雷神の槌。
カテゴリ───曰く、ケラウノス。

〈Trailer〉 :
多くのマフィアとFHセルを焚き付けたこの遺産は、

〈Trailer〉 :
やがて勢力の均衡を崩す、
血で血を洗うような闘争劇を呼び起こす。

〈Trailer〉 :
あなたもまたこの地に訪れ、
そこで夢と再会することになる………。

〈Trailer〉 :
………遺産は人を狂わせるという。
強さもまた、然り。

〈Trailer〉 :


 ダブルクロス 
 The 3rd Edetion『Fortes fortuna adjuvat』

 プレイヤー想定人数:3~4人
 経験値想定:フルスクラッチ+44 = 174点
 一部サプリメント起用

               Loading...
  
   ───ダブルクロス。それは、裏切りを意味する言葉。



・シーン1「Journey-獅子王流離譚」

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。

SYSTEM :

【シーン:Journey-獅子王流離譚】

 登場PC:ラーゼス
 登場侵蝕:なし

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
        【 Now Loading... 】

 ドゥミリオン
『“隻獅子”』。ラーゼス。
 獅子が知恵と力を得て、永き生を眠りながら生きてきたアニマルオーヴァード。
 永久の命を、嘗て願った牙なきものの幸福に捧ぐ幻想の王。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 かつて。
 長い旅をした。

SYSTEM :

 淀みから民を護りつづけた、偉大な王。
 彼と共に翔けた黒龍と、その臣下にして友たる勇壮なる騎士たち。

SYSTEM :

 消えぬ昂ぶりの火は、然る地にて消えない希望となっていた。
 黄昏刻にも尚消えず、刹那の終わりを拒み、ひとつの街を王の帰る街とした。
 伝説という名の力が越えるべき壁として罪に転じ、やがて伝説は幕を下ろした。

SYSTEM :

 ──王は去り。
 ──龍は還り。
 ──その伝説を見届けた者もまた、為すべきを為して退場する。

SYSTEM :

 彼らと共に在った獅子の王は、旧き伝説と一つとなった。
 刻まれた龍血の運命は、淀みから己を護るための氷の眠りの術とともに、獅子にひとつことを約した。

SYSTEM :

 もしもこの森が獅子の王を必要とする時。
 森を守らねばならない時、その眠りから覚め、為すべきを為す時が来るだろう、と…。

SYSTEM :

 ───そして、今。

SYSTEM :

 凍り付いた聖樹と、雪の中でさえ咲く花に抱かれて。
 あまたの忠義者/不忠者の遺した名残が、今なお留まる、消えない誓いの地にて。

SYSTEM :

          あなた
 ───微睡みから、獅子の王は目を覚ました。

ラーゼス :

 ────微睡みから。
 ────目を醒ます。

ラーゼス :

 脚の先から、ゆっくりと凍りついた体が温まるのを感じ取る。
 氷の園に在って寒さを感覚するのは、もっと冷ややかな眠りの中にあったからだ。
 頭の頂点まで体のこわばりが解けたのを理解すると、体を大きく震わせた。

ラーゼス :
 氷の粒を払いながら、足先に視線を下ろす。
 朽ちた骨と、古びた剣がわだかまっていた。

ラーゼス :
『────おはよう』

ラーゼス :
『此度の目醒めは……いつもより、ずっと近いようだな』

SYSTEM :
 …森の伝説を知らぬ者には、ここは、特筆するべきところも、王の残り香も澱みも、何もないただの森だ。
 かつてこの地に、そのようにまじないを施した隻獅子公が、この地に眠る伝説を現実と切り離したからだ。

SYSTEM :
 王賢の眠る墓と……それを守る、森の王、獣の双王子の間。
 嘗て永遠に別たれた幻は、もとより現実と永久に混じりゆくことはない。
 二つを紡ぎ重ねることを望んだ継嗣は、彼の血を分けた子供たちにいなかった。

 しかし………。

SYSTEM :
 ・・・ 
 目覚めには悟りが伴う。
 永遠にこの地を護る王の目覚めには。

 変わらぬあいさつの言霊の中。
 あなたはその悟りを回想する。

SYSTEM :

 古き血が、朧げな凶兆を伝える。

SYSTEM :

 …かつて往年の繁栄に縋り、まことの騎士の時代を蔑んだ男がいた。

 そこに如何なる人倫も根付くことはないと知り、
 冒涜に身を浸す覚悟と引き換えに、初心の灯を失って道を潰えさせた獣だ。

SYSTEM :

 己ではなく、己の亡骸から出ずるものが。
 何度、洛陽を迎えても。残すべきものを残すと、腐り落ち、あがいた獣だ。

SYSTEM :

 ───その男が愛していた国の名。
 ローマ
 羅馬。

SYSTEM :

 あなたは永きの中の微睡で、ふと夢を見た。

SYSTEM :

 黒曜の如く輝く毛皮を纏って。
 煮えたぎる混沌を思わせる、黒い欲望を貪る狼が吠えている。

 彼は際限なく貪り、その爪と牙から零れ落ちた血が彼の礎を作る。
 それは確かに大地に染み出して、その果てにひとつの巨きなものを生むだろう。

 ───染み出す血が礎を築くために、生きとし生ける全ての血が要る。

SYSTEM :

 これが凶兆でなくてなんとする。
 この闘争の渦、破壊の渦は火種から破滅の赫き炎を生むだろう。それは篝火だ。
 凶兆を生む新たな火を、その火から“知恵”を得るものを招かない道理はない。

SYSTEM :

 微睡みは予知に等しい。
         ・・・・
 そのあらたな火のいずれかが、伝説に土足で踏み込むのだとあなたは直感する。

ラーゼス :
 目を閉じ、微睡みの中に在って得た啓示を読み解く。
 羅馬の地──吼える狼。
 広がる戦火と、それが際限なく広がった先の光景。

ラーゼス :
 破壊の果てに生まれるかもしれない惨禍を夢見て、森が恐怖している。

ラーゼス :
 以前の目醒めの折に──
 確か、聞いた。
 あるときに、澱みを広げる妖精の戯れが世界中へ拡がったと。
 それを機に、騎士団も新たな形を模索せねばならなかったと。

ラーゼス :
 ならば──。

ラーゼス :
 それか?
 狼の王は、いまや人に満ち、幻想の淘汰されつつあるこの世界に在って、どのように血を啜る?

ラーゼス :
 自問は短かった。
 供回りでもあるまいに、わからぬことにかかずらうこともあるまい。

ラーゼス :
 低い唸り声が響く。
 次いで氷の園へ響かせた大きな咆哮は、その形に圧縮された力を編むための音律だった。

ラーゼス :
        両手
 雷鳴とともに、前脚を大地から離して、二本足で立つ。

ラーゼス :
 次いで墓標に掛けられた瑠璃の外套を引き、体に巻き付けた。
 旅支度など、これで十分だろう。

SYSTEM :

 微睡みから覚め、淘汰を待つ幻想の最中に王が立つ。
 旅支度と呼ぶには、全体と統括すればあまりにもあまりであるが、この場においては確かに十分だ。

ラーゼス :
 ふと振り返る。
 墓標と骨の群れのところに屈み込んだ。

ラーゼス :
「レムス。ラルヴァ。グローバー」

ラーゼス :
「キース」

ラーゼス :
「行ってくる。此度の遠征は、少し長くなるかもしれない。お前のつくった名を借りていくぞ」

SYSTEM :

 降り立つ幻想の標は、かつてひとりの臣下が手渡してくれていた。
 …なおも色あせぬ伝説の象徴たちが、あなたを見送る。

 如何なるさだめにも、飢えやあらゆる自然の猛威にも、
 決して離れることを選ばなかった、ゲールの大地から。
 幾度目かの、旅立ちを。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 ………その伝説が。
 隻獅子が使命を携えて現実に降りると知れば、
 かれ
 臣下の残した騎士たちはあなたを必ずや出迎えるだろう。

SYSTEM :

 ただ、ここは未だ森の中だ。

 かの大英帝国の中では希少極まる原生林の生き残り、
 それも特別視を避けるがための二次、三次林として知られるこの森が、
 伝説の残る“だけ”の森でないことを識るものはきわめて限られている。

SYSTEM :

 加えてかつて清拭の大樹の片割れが澱みの食む儘になったとあらば、
           コロニー
 少なからず在りし日の規模はその範囲を狭めるのは道理だった。
                    アニマルオーヴァード
 生ける森の動物たちに変わりなくとも、妖精と親しきものは殊更に。

SYSTEM :

 ………だがなおも残る姿があり、かたちがあり、名残がある。
 その名残を歩く中、生まれたその刻より、眠り姿を現さずともあなたを“王”と識るものが膝を突き、頭を垂れた。

森の番兵 :
“陛下”

SYSTEM :
 ・・
 それが、低い声を挙げた。

SYSTEM :

 遥か以前のこと。
 うかがい知れぬ刻に目覚め、森を守るために戦ったあなたへの恩義の為、
 何より彼らを受け入れた森のため、
 森の深層にある不可侵の地を守るための番兵/墓守となったものだった。

SYSTEM :
    ・・
 いや、それと比較すると、そいつの顔の彫と、年月が刻んだ体格は少し小さい。
 推察するに、当時の“番兵”ではないのだろう。

 記憶の限り、遥か過去の時代に居着いた森の動物たちの中でも、
 彼らは特に、恩義に忠実であった。
 なれば恩も恨みも、たかが刻の流れ程度では忘れはしまい。

SYSTEM :
 ………未だ逞しく残る森の天然自然の中に、
 ・・
 それが好んでいた花があった。
 聖域とされるその地の墓守は、大地に手を入れる人間らしさとは無縁だが、
 ただ在るものたちを慈しんで来た。彼も、それに変わりはないように思える。

森の番兵 :
“彼らに、言伝は”

SYSTEM :

 番兵は、目覚めた所以を問わなかったが。
 あなたがいったい何を成そうか、それを察せぬほどの愚鈍ではなかった。

 そもそも、目覚めを促す縁は須く凶いである。
 彼がそれを識るはずはないが、
 彼は顔を合わせてもおらぬ森の王の道理をよく存じていた。
 姿さえ知らずとも、たとえ彼の冥府より顔を出すこと有り得ずとも。
 頭を垂れるべきと魂が識る、祖霊の王の神話と同じほどに。

ラーゼス :
 彼の姿を目にして、少し唇が緩んだ。
 一抹の淋しさこそあるが……なにより嬉しいのは、かつて自分に首を垂れたものが、いまも系譜をつないでいることだ。

ラーゼス :
「おはよう。……そうだな」

ラーゼス :
「『羅馬に行く』と伝えてくれ。
 仔細はわからないが……森が畏れているのだ」

森の番兵 :
“…は。承知しました”

森の番兵 :
“人の世は、ずいぶん様変わりした………。
 森の外を識る騎士たちと言葉を交わす、同じ変わり者たちの言伝です”

ラーゼス :
「変わり者……」

ラーゼス :
「……ああ。確か、グウィンもそう言っていたな」

ラーゼス :
「人の世界は、鉄が飛び、妖精が戯れ、我らが追い立てられる時代になったと」

ラーゼス :
「………」

SYSTEM :
番兵が重々しく頷く。

森の番兵 :
“外には善しも悪しも居られます。
 大きな括りでは、如何ともし難くとも…”

森の番兵 :
“…なればと、当代の森の長たちは
 彼らとお互いの領分を定めました”

SYSTEM :
 騎士たちと森に今も居着く者たちの共通の願いは、幻想が境界線を越えて現実を侵さぬこと、そしてその幻想が現実に征服されぬことだ。

 言伝を行うもの、進んで外を識る変わりもの(あるいは幻想を識るもの)は、絶えることなくとも、全てがそうとは行かない。

SYSTEM :
 彼もその一匹だが、一目見ただけでは分からぬ厳めしさである。
 言伝を如何に成すかは、想像の赴くままといったところか。

ラーゼス :
「森の中と、森の外か」

ラーゼス :
「……森の外にも見えぬ形で妖精が戯れるいま、それも必要なことなのだろうな」

ラーゼス :
「騎士団の采配のことは信じている。森がこのように在って、おまえたちがここにいる限り、約束の形が変わることは無いだろうが──」

ラーゼス :
「……気の向くままに飛び、駆け、敵を喰らう──というわけにはいかぬのだろうな」

ラーゼス :
「それはとても困る」

森の番兵 :
“…陛下…”

森の番兵 :
”僭越ながら…仮に為せる世でも…御身と、御身を阿る朋友をどうか労わられますよう”

森の番兵 :
"…それに…斯様なさまは、危機を遠く離した安寧の世とも言えましょう”

SYSTEM :
 番兵はあなたの下げた眉を労わるように、また、内も外もいまは安寧が漂うことを伝えたが、ややあって。

森の番兵 :
"時に、陛下…”

ラーゼス :
「うん?」

森の番兵 :
"…その当代の世に その召し物だけとなると聊か不適当かと”

SYSTEM :
 番兵は、騎士団の者から伝え聞いた限りを寡黙な性分の出来る限りに話す。

SYSTEM :
 時を隔てたいま、人の営みのかたちもずいぶん変わったというわけだ。

ラーゼス :
「…………………」

ラーゼス :
「………………………」

ラーゼス :
「重い」

森の番兵 :
"陛下”

森の番兵 :
"…言伝の折に見繕って頂きますか? 斯様なままでは、いらぬ諍いの種となるかと”

ラーゼス :
「いけないか……」
 声が明らかに沈む。

森の番兵 :
"………陛下”

森の番兵 :
 僭越ながら申し上げますが、と前置き。

森の番兵 :
"いけません”

ラーゼス :
「…………」

ラーゼス :
「……わかった、わかった」

ラーゼス :
「外の世界の流儀には、お前たちの方がずっと詳しいことも道理だ。
 動きやすい布を見繕ってほしいと伝えてくれ」

SYSTEM :
もとより口数の少ない番兵が、重く頷いた。ただあなたが強く拒否したのならば、先代も彼も、等しく"出過ぎた真似”を詫びただろう。

森の番兵 :
“事を為した暁には、二度目の御目通りを”

森の番兵 :
"伴をお望みにならぬのであれば、おれたちはここで、あなたをお待ちしております”

SYSTEM :
首を垂れる。それは如何な王きっての望みとて、単身で(彼にとって)未知の都に放り出すことを望んでいない仕草でもあったが。

ラーゼス :
「無論だ。必ず戻り、お前に『帰ってきた』と伝えよう」

ラーゼス :
「できれば……お前の名は、そのときまで取っておいて欲しい。
 聞くまで、死ねなくなるからな」

ラーゼス :
『単身で向かう』ということを伝える仕草だ。
 はぐれ者となるなら、集団より一人の方が都合がよいこともある。

ラーゼス :
──懐かしい。アンスフォスもそうだった。

ラーゼス :
彼女のように飄々と、自らの異質を煙に巻けるだろうか。

SYSTEM :
 脳裏をふと過る、かつて森を訪れた希人の片割れ…。
 探求心を以て踏み入った、身軽で、奔放で、それでいて道を違えることのなかった旅の輩である。

森の番兵 :
"…心待ちにしております”

森の番兵 :
"父は、それを誇りにしてゆきました”

SYSTEM :

 残る花をふと視線で見つめた番兵が、父の僅か語った思い出をなぞる。
 故郷の名残と同じものが根付く森を、第二の故郷にし。幻想を受け入れるゲールの郷にて生き抜いて来た血の名残を。
        ・・
 かつてあなたはそれの名を聞いている。ここで生き抜く系譜の名は、帰る時の約束になるだろう。

ラーゼス :
ふと屈み、大地に手を当てる。おそらく彼の父が眠るであろう森の底へ、感謝をこめて。

ラーゼス :
「あいつは、あの花が好きだったな」

ラーゼス :
 ……はじめにそう言った彼の父祖は、ああ。
 今向かい合うものと、ずいぶん似た面差しをしていたものだ。

ラーゼス :
 続く時と、それがもたらしたものと、置いていかれる自らを思うたび、心を衝くものがあることを否定はできない。
 己が舌を抜かれ、思考を戒めた智慧無き獣であり続けたのなら、それでも良かったのかもしれないが。

ラーゼス :
………。

ラーゼス :
思考を払うように目を閉じて、開く。大柄な熊の、毛に埋もれた瞳を見つめた。

ラーゼス :
「ラーゼスだ」

ラーゼス :
「おれが戻った時には、そう呼んでくれ。おまえの一族に『陛下』と呼ばれるのは、いつもむずがゆいんだ」

森の番兵 :
"…あなたに無礼は働けません。
 おれは陛下の友人ではなく、臣下なのです”

SYSTEM :
無礼な行いは出来ぬ、と。
なによりその朋友と呼ばれるべきものを識るその口から、その父祖から、母祖から、血と恩義を継いだ彼は暗に告げるが、ややあって。

森の番兵 :
"ですが、返し切れない恩がひとつでもお返し出来るなら…”

森の番兵 :
"お戻りの暁には…一度だけその名を呼ばせて下さい”

SYSTEM :
 父祖から、母祖から、血と恩義から識る"王”ではないあなたを。
 御戻りの暁に教えてくれと彼は乞う。どこか思慮の仕草があったのは、引くべき一線と、森の民らを識るあなたの言葉のためだろう。

SYSTEM :
 ………その父祖は彼と同様、己を臣下であり民とする線引きには厳格だった。

ラーゼス :
「そうしてくれ」

ラーゼス :
乏しい表情にはしかし明確に「不満」と書いてあったが、ひとまず抑える。控えめな性分の一族であることは承知している。

森の番兵 :
"…は”

SYSTEM :
 番兵はあなたの様子に一度頭を下げた。表情の中に"不満”を感じ取りながらも、そこは譲りがたい一線ということだろう。

SYSTEM :
 呼び止めねば、あなたの言伝を果たすために騎士団の者に接触するだろう。
 その旅支度を以て、あなたは当代の世に紛れることになるわけだ。

ラーゼス :
その背を見送りながら、小さく笑う。

ラーゼス :
「……いつも、お前たちが目醒めを迎えてくれることが嬉しい。ありがとう」

ラーゼス :
「……」

ラーゼス :
「……くしゅ」

ラーゼス :
……毛のない身体に布一枚は。確かにはしゃぎすぎか?

SYSTEM :
 その自問に応えるものがいる場合、
 恐らく誰もが同じ言葉を返しただろう。

 めったなことで立ち入りの赦されぬ幻想の地に、言伝と共に訪れたものの胆力によっては、殊更に。

SYSTEM :
 ………やがて。
 嘗て交わした誓いの名残と共に、獅子の王が征く。

SYSTEM :
 朽ちゆき、形を変え、受け入れ、それでも、喪ってはならぬもののみを守り通し…。
 今も尚、時の中にただ在る幻想の森。
 かつてここが、生きる場所であったものたちがいた。

 今もそうだ。

SYSTEM :
 だから。
 澄んだ空気の向こう側に発つあなたの、旅が始まる。

SYSTEM :
 かたちを裂くように変えて、名残を奪い合い、伝説が色褪せて尚も。
           ローマ
 辿り着くべき地は、永遠の都であった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………そして世間知らずの“ふるきもの”がただ旅をするだけならば、だ。
 国境越えは繊細かつ手間がかかる、とか。
 あからさまに浮いた旅行客はイタリアでカモ同然である、とか。
 海を越えた先にてあなたを“そちら側”と気付く人間の厄介事があったとか。
 まあ色々と、記すこともあったのだろうが。

SYSTEM :
 世間知らずの旅人であったとしても、それは獅子の旅であった。
 ましてや、オーヴァードの。

SYSTEM :
 …俗世に馴染むかたちと共に、その街並みをあなたが行く。

SYSTEM :
 ローマ
 羅馬。
 道行く最中も然ることながら、街中となると“それ”は特に顕著だった。

SYSTEM :
 人だ。あちこちを行き交う人。
 あなたが目立つ、目立たないは別としても、老若男女の統一感がない。
 悪い言い方をしてしまえば雑多だが、良い言い方をしてしまえば自由。

SYSTEM :
 旅行に来たのだろう精悍な顔つきの男。
 何処からきて何処に行くかも定かでない男女の談笑する声に、
                      ベビーカー
 開けた場所に固まって写真を撮る数人組。赤子を手押し車に載せている辺り家族連れ。

SYSTEM :
       アスファルト
 道はそもそも土でない灰色が敷き詰められていて、
   クルマ  バイク
 屡々鉄の箱と鋼色の馬が広い道を行き交う様子が散見される…。

 どれも、旅の最中でもしも人の生活圏などすれ違っていたら、見ることができただろう風景だ。
 決してその風景の中に、災禍の予兆など、未だ感じようはずもない…。 

ラーゼス :
 眼前を鉄の箱が過ぎ去ったあと、思わず鼻を押さえかけて、それを堪える。
                 あぶら
 鉄の塊が走る場所はいつもこうだ。火の水のにおいがきつい。
 感覚を意図して閉じるが、それにも限界はあるだろう。

ラーゼス :
(……だが……)

ラーゼス :
(煙のあった頃よりずっとましか)

ラーゼス :
 鬱陶しい布を手で払いながら、人に紛れる場所を選んで歩き回る。
 先立つものを多少詰め、獲物を外套の内側に畳んで仕込んだ簡素な旅装である。
 人間としてのそれなりの振る舞いは、ここに来るより前に当代に教わった。

ラーゼス :
……教わったが。

ラーゼス :
……あまり大仰に驚くなとも言われたが。

ラーゼス :
「……なんとも。ここまで様変わりとは」

ラーゼス :
 通用するものが土地勘ぐらいしかない有様である。
 思わず周囲をきょろきょろと見渡しながら、傍目にはふらふらとしか言えない足取りで歩き回る。

SYSTEM :
 産業革命期の時期にあなたが人の営みを訪れたのならば、それは森の空気と息づく生命のかたちとは似ても似つかなかったことを覚えていよう。
 日の登りと沈みの中、在るがままに生きる時代が、
 知恵の興りと共に少しずつ欲望と混ざるようになって時間は久しく…。

 記憶の羅馬と似通うものがあるのか、いや、そこまでの道中に如何程記憶と連なるものがあったものか?

SYSTEM :
 背丈も非凡、しなやかな獅子王の躯体が大仰に、そして目に映るもの全てに戸惑いの色をにじませて歩き回る様子は、ともすればいらぬ手を招いたことだろう。
       イタリア
 端的に言って情熱の国は観光客というやつにある意味親切で、ある意味辛辣なのだ。

SYSTEM :
 "なにかお探しですか?”で済むならまだよく。いつ道を逸れて人気のないところに向かうのか期待するようなものも、決していなくはなかった、が…。

SYSTEM :
 そんなあなたにとって幸か不孝か。

 ローマの街並みに触れ、声かけや邪な観光客狙いとの悪縁がつながる前に、ふと声がする。

 木々の入り組んだ有様には覚えもあろうが、
 それがコンクリートや煉瓦となるとどうか。
 そんな視覚ではともかく、オーヴァードの聴覚がこれを喧騒と捉えるのに時間はかかるまい。

声の主 :
"おいこいつだ───どこまで───”

声の主 :
"何を───やめて下さい───”

ラーゼス :
「──む」

ラーゼス :
声のした方向を振り返る。

SYSTEM :
 声のした方角はそう遠いところではないが、人通りの多い場所にはつながっていないだろう。
 何事か、面倒事の気配もしないではない。

ラーゼス :
路地裏…というやつだな?

ラーゼス :
ならそちらへ向かうとする。曰く…

ラーゼス :
厄介事を追うなら、厄介事の気配には積極的に向かうべし。と言うものだ。

GM :
首を突っ込むわけですね。いいでしょう…。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 やがて聴覚の示す先にあったもの。
 人通りの乏しい路地裏のいさかいを、さて、なんと表現したものか…。

 結論から言えば、そう時間の経たないうちに会話の詳細が耳に飛び込んで来た。

記者? :

「デマ記者なんかじゃありません!
 俺を信用して下さいよ」

FHエージェントB :

『いや記者なことは初めて知ったんですけどね?』

FHエージェントA :

『構うなマルコ! これだからジャポーネは厭なんだ、
 堅気なら堅気らしくしておけばいいものをよ………』

記者? :
「こ、このアメリカ人の俺をジャポーネ呼ばわりだって?
 そんなことが本当にあるのか…?

(って言ったけど実は母さんが日系だから強がりすぎたかな…?)」

FHエージェントB :
『おい! こいつどこなら殴ってOKなんだ!?』

記者? :
「でもそれも根本的解決になりませんよね?」

記者? :
「ちょっと路地を外れて盗み聞きをしただけでこの仕打ちなんて、
 こんなんじゃ俺、ジュンジに自慢したくなくなっちまうよ……」

SYSTEM :
 ちょっと口数の多い方に非のある揉め事なことに間違いはないだろう。
 話の断片的な部分を耳にしても、
 これは破落戸二人組のプライバシーを彼が思い切り突き破っただけだ。
 人の神経を逆撫でした自覚のない彼に明日を無傷で生きる資格はないとすら言っていい。 
 
 いい、のだが。

記者? :
「やっぱりイタリアはダメじゃないか………!
 もういい! 争うなら勝手にやってくれ! 俺はデトロイトに帰る!」

FHエージェントA :
『馬鹿にしやがって…もういい、やっちまえ!』

SYSTEM :
 ───そこで発生したものが。
 ・・・・・・
 ワーディングであるならば、少し別だ。

SYSTEM :
 最後まで減らず口を叩いた暫定記者はどうだっていいとして、だ。

 そのワーディングが誰かを招き寄せることを臆さず、
 また感情の振れ幅的に“咄嗟に”使ったオーヴァードが、この街の裏の裏では罷り通るらしい。

SYSTEM :
 同じ幻想の守り人たち、隻獅子騎士団の者らから現代を聞いていれば。
 よもやそれは、“それ”をよしとしない人間が現代にいる限り、有り得ない話である。

FHエージェントA :
『………おい………これをどうする?』

FHエージェントB :
『せめてこいつって呼んでやれ。まあ………。
 報告することでもないだろ。どうする? バラすか』

FHエージェントB :
『…うん、漁師の方々には魚が悪食なことに期待してもらおう』

SYSTEM :
 ぱたり、と斃れる無辜ではある記者の音。

 およそ非オーヴァードに対する征服の特権でもあるワーディングをこうも暢気に使用し、気の緩んだ彼らは、背後から迫りくる何者か(というか、あなた)に気付く様子はなさそうだ。

ラーゼス :
    ワーディング
(……人避けの結界か? ならば、奴ら……)

ラーゼス :
         オーヴァード
(襲っているほうは妖精騎士ということか)

ラーゼス :
 逡巡は一秒にも満たなかった。
 こちらに気付きもしない者たちへ大股で近付きながら、外套の中から杖を取り出す。畳まれていたかたちが長く伸びる。

ラーゼス :
「力持たぬ者へ──」

ラーゼス :
   ・・
「徒にそれをひけらかすとは。
 どのような由があってのことだ?」

FHエージェントB :
「あァん? この状況で何口答えして───」

SYSTEM :
 一山幾らのエージェント、その声が一瞬で凍り付く。
 振り返った先にいるものが”同類”だと気付いたまでならばいい。

SYSTEM :
 …その者の声が、囁きながら背中をやさしく叩く死神の声に等しいと気付いたものと、そうでないものの対応は別れた。

 具体的に言うと片方は一歩後ろにすぐ退いた。

FHエージェントB :
『………俺たちってもしかして………。
 サバンナじゃ生きていけねえタイプかもしれないな………』

FHエージェントA :
『バカ、なにを怖気づいてやがる!
 手前オーヴァードだろ、理由もなにも、ここが誰の縄張りだか分かってンのか…!?』

FHエージェントA :
『うちの問題なんだ、すっこんでな!』

ラーゼス :
「…………」

ラーゼス :
 サバンナ
「海向こうより暑い場所ではないな。とはいえ、答えは間違っていないだろう」

ラーゼス :
大真面目に自分の森の凍える冬を思い出しながら、無造作になお一歩踏み出す。

ラーゼス :
「ほう。『うち』か──」

FHエージェントA :
『なっ、なんだよ…』

ラーゼス :
 ・・・・・・
「丁度良かったと思ってな」

FHエージェントA :
『こ───こいつ"どっち”だ!?』

SYSTEM :
 あなたのその宣言を聞くや否や、エージェントの片方のみならず両方が強張ったように身構える。

FHエージェントA :
『ハイエナどもか、"貴人の庭”のエリート様かガキの御守か…!
 やるってんなら相手になってもいいんだぜ!』

ラーゼス :
「うん……?」

ラーゼス :
首を傾ける。

ラーゼス :
「……思ったより多いな。
 随分入り組んでいると見える」

ラーゼス :
誰かの癖をなぞるように顎をさする。

ラーゼス :
「不要だ。お前たちの首に価値もなければ、食いでもなかろう」

ラーゼス :
「おれは……」

ラーゼス :
 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・        ・・・
「お前たちのことを隠さず、すべて教えろ、と、お前たちにお願いをするのだ」

ラーゼス :
《死の眼光》でごろつきどもと友好的に交渉をしたい。かまわないか?

FHエージェントA :
死がつく時点で友好じゃねえだろ………………

ラーゼス :
そう見えたか?

FHエージェントA :
 

GM :
問題ありません。では少しお待ちください。

SYSTEM :
 果たしてお願いの効果は如実に現れた。
 体格のわりに精神的に食われる恐怖への備えが”なってない”当代の一山幾らまで膨れ上がった妖精騎士/オーヴァードが、
 あなたの交渉という名の圧を刹那で悟って屈するまでに時間はかからなかったからだ。

FHエージェントB :
『ま…待ってくれ、話す! 話すから、』

FHエージェントA :
『おいマルコ! "ボス”が幾ら人手が入り用だからって───』

FHエージェントB :
『うるせえぞリザレクト常習犯!
 俺まで巻き込むんじゃねえ!』

FHエージェントB :
『ここは………』

SYSTEM :
 男たちがあなたの圧に完全に屈して自らが威を借る組織"リグ・ヒンサー”について口を開こうとした、まさにその時であった。

青年の声 :
『ヒンドゥーの言葉で『暴力』と『賛歌』。
 重ね合わせてリグ・ヒンサー…』

“????” :
「ローマのいまのギャングたちの元締めの縄張りさ」

SYSTEM :
 まさにその時、あなたのまた背後から声がする。
 ワーディングの気配に釣られて来ただろう青年が、完全に屈したばかりのFHエージェントの代わりに疑問の第一声を掠め取った。

“????” :
「うちの身内が悪かったな、貴婦人どの。
 いや、この言い方も違うか…?」

“????” :
「ラシードだ。おまえたち、こんなところで何やってる?」

SYSTEM :
【Check!】
 以下のエフェクトが使用されています。

 エフェクト:??の?
 所有者:“黄の希人”

FHエージェントB :
『あ………ああそうだ、ラシードの兄貴!
 このお上りが、じゃなかった、姉御が…』

“????” :
「首突っ込んだ記者サンも大概だが、お前らそもそも表側で何堂々喋り散らかしてるんだよ…。
 全面的に非はこっちじゃないか?」

SYSTEM :
 …そのすっかり威勢を削がれて沈黙したFHエージェントが、旧知の知人や兄貴分のように話しかけている男が、あらためてあなたに向き直る。

SYSTEM :
 どうも言葉選びから、屈した彼ら共々、話をする気ではあるようだ。

ラーゼス :
 槍を握る力を強め振り返るが、その後の様子に疑問を覚える。
 今しがた話を聞き出そうとしたものと比べ、新たに現れたほうはどうにも訳知り顔だ。

ラーゼス :
(……貴婦人と呼ばれることも姉御と呼ばれることも慣れないが……好きなように呼ばせれば構わないか)

ラーゼス :
     ワーディング
「そこのは人避けで倒れた。おれは話を聞こうとしただけだ。たいした話ではない」

FHエージェントB :
「(大したお願いされてたんですけどね俺達???)」

ラーゼス :
ギロリ。

FHエージェントB :
ナンデモナイデス

“????” :
「そうかい。諍いなんてのは幾らでもあるが、流石に身近で起きたんでね。
 火の粉の振り掛かり方でも見ようと来てみたら、この様子………」

SYSTEM :
 肩を竦める仕草と共に、青年が静かに笑う。
 その表情には彼らを労わるようなものは見られないが、嘲る様子もない。

“????” :
「そこにあんただ。ローマに何の用だ? 
 観光ってわけでもなさそうだな」

“????” :
  う  ち
「"リグ・ヒンサー”もいま気が立っててね。こっち側の人間は当然、そうでない人間にも縄張りの中じゃ神経質になりたいのさ。
            ワーディング
 だからこうして無遠慮に人避けなんかぶっ放しちまう…」

SYSTEM :
 その"訳知り顔”の言葉に、一山幾らの二人が軽く一度頷く。
 一見すると平静だが、あなたが改めて意識を傾けたなら、改めてお願いの通りに喋るだろう。

ラーゼス :
「……ん」

ラーゼス :
「ならば、縄張りの中で無礼を働いたのはおれか。軽率なことをしたようだ」

ラーゼス :
「すまない。
 だが、丁度良かったと言ったのは事実だ。
 この街で起こっていることを知りたくて来た」

“????” :
「気にしなさるな、そりゃお互い様。

 ただ…ああ、気を付けた方がいいぜ?
 律儀にやっても律儀に応えてくれるやつばっかりじゃないからな」

SYSTEM :
 青年の言葉と共に、起こっていることを問われたひとりと二人が異なる反応を返した。
 興味深げにあなたを見るひとりと、相互に顔を見合わせる二人。

“????” :
「普通に過ごす分には、まあ、分別を連中みんなが守ってくれれば別として………。
 ちょっと大掛かりなことが起きるのさ。血が苦手なら回れ右を御奨めしとくよ」

FHエージェントB :
『ボスは俺たちみたいなお零れ組にゃなんにも教えてくれやしませんが………。
 この街に"イサン”? ってのが近日運び込まれるそうで』

FHエージェントB :
『もともとローマを完全に縄張りにしたい"リグ・ヒンサー”と、インテリだの金持ちだの味方につけた旧い保守層の"貴人の庭”…』

FHエージェントB :
『その隙間にいつの間にか入り込んでる、もう一つのセル…"御手翳す開放者”が、そのイサンってのの確保に躍起になってンです…』

“????” :
「大筋は合ってるね。
 で、そいつが”いつ”運び込まれるかって段階で、守り人ナシの街で揃いも揃って睨み合いの牽制真っ最中ってことさ」

ラーゼス :
「“リグ・ヒンサー”、
 "貴人の庭”、
 "御手翳す開放者”……」

ラーゼス :
「……それに、遺産か」

ラーゼス :
「どのようなものかは判らないが……お前たちにとって、間違いなく火種と成り得るものなのだな?」

FHエージェントA :
『うす。"イサン”のことなんて知らないけど、とんでもなく強ぇレネゲイドの道具なんだろ? あ、いや、でしょう?』

“????” :
「そりゃな。
 知ってるヤツにとってはもっとだ」

“????” :
「これを機に"リグ・ヒンサー”は連中を一掃したいし、他のセルも手に入るなら使いたい。
 ………」

“????” :
 ・・・・・・・・・・・
「大掛かりなことが起きるって言ったろ?」

SYSTEM :
 青年はあなたの"火種”という言葉を値踏みした後、遠回しの言葉でそれを肯定した。
おれたち
 FHはそれを手に入れることに人の生き死にを躊躇しない、と。
 そして───手に入ったなら"どう使う”のかも。あなたがまだ、その守り人である可能性を、こちらの男だけは頭に置いているように思えるが、それで言葉選びを変えるつもりは今のところなさそうだ。

ラーゼス :
「大掛かりなこと……」

ラーゼス :
「……力持つものがあれば、それを扱いたがるものがいることも道理だな。
 いつも変わらない世のならいだ」

“????” :
「まあな。火を見れば使わざるを得ない、武器を見れば使わずにはいられない…」

“????” :
「だが…少なくとも"リグ・ヒンサー”の我らがボスはそうお考えでね。
 今も、他より節操なく人を集めてる」

SYSTEM :
 いい/悪い例が、
 おそらくそこで今も隙あらば平伏手前のエージェントたちだ。

ラーゼス :
「有象無象でも、数に意味があると思う御仁のようだな」

SYSTEM :
有象無象たちはもはや反論すらできなかった。

“????” :
「近代戦やるわけじゃないからな。
 同じなら数に意味のあるのがオーヴァードのやり方だ」

“????” :
「あるいは………いやまあ、憶測か」

“????” :
「………何ならそうだ。"リグ・ヒンサー”に紹介状の一つや二つ書くよ。俺の言うやつに届ければ一発さ。
   ・・・・
 その大掛かりに、ほぼ確実に参加できる」

“????” :
「こいつら二人分の詫び代わりだ。
 火種がどのくらいのものか、見物にもなるし…うちにも人手が欲しくてね」

ラーゼス :
黙して考え込み、男をじっと見つめる。

ラーゼス :
「願ってもない話だ。
 遺産というものが向かう先も興味があるし……中にいれば、折よく巻き込まれることができる」

ラーゼス :
「おれがそこのと同じかどうかは、働きで知らせればよい話だな」

“????” :
「決まりだな? 道案内は、ああそうだ………。
 ひとりもいれば十分だろ」

SYSTEM :
 青年は『ただし、間違っても俺の言う特徴のやつ以外には出さないことだ』と、その特徴と共に一言付け加え。
 いつも持ち歩いているのか、一筆を丁寧に、また迅速にしたためて、あなたに手渡した。

 指をさされた”マルコ”と呼ばれた男は、あなたとラシードを名乗る男を交互に見てから、怯え交じりに一度頷く。

ラーゼス :
「……。……」

ラーゼス :
「確かに受け取った。ありがとう、『ラシード』」

“????” :
「はは、どういたしまして」

“????” :
「あんたがちょっと“見ない”タイプだったから…俺も世話を焼きたかったのさ」

SYSTEM :
 ひょっとしたらあんたが、俺と本当に馬の合う人間なのかは分からないけどな、と冗談を零した男は。
 ・・・・・・
 そういうこと/ローマで何かが変わるから、不確定要素を投じたいのだと暗に振る舞った。
 
 果たして本当にそれ以外のことを考えていないのかは、どうだろう。
 その顔から分かったものではないけれど。

ラーゼス :
「それは重畳だ。……少しは風を纏って見えただろうか」

ラーゼス :
小さくつぶやく。後半は、誰に聞かせる話でもない空言だ。

SYSTEM :
 かつていた、留まる水をかき回す者の道理を、あなたがふと思い出す。
 もしくは、波紋を起こす"彼女”のような道理だろうか?

SYSTEM :
 青年はそれを知ってか知らずか、重畳だ、とする言葉に合わせて肩を竦めた。

ラーゼス :
「…………」

ラーゼス :
その様子をじっと見つめる。

ラーゼス :
「ラーゼスだ。おれのことは、そのように呼べばよい。
 ただの旅人──いや、観光客だ」

ラーゼス :
「……ところで……」

ラーゼス :
声を低め、潜めて問いかける。

ラーゼス :
「貴兄はどこの火種なのだ?」

ラーゼス :
 様子見というなら、彼らが人払いを使う前に出てくればよい。
 本当に『兄貴』ならば、伝手を繋げるものを限る必要もない。
 いかな数を重視するという群れと云えど、得体のしれない、どこの馬の骨かもわからないものを軽々に引き入れることはせぬだろう。
 むろん、実としてそうだからこうしているのだろうが──

ラーゼス :
 このたぐいの思慮深さは、よく知っている。
 なにかをかき回したくて、石を池に投げ入れるものの知略だ。それをするのは、数で敵を圧し潰そうと目論むものではあるまい。

“????” :
「権謀術数って言うには幼稚だって? 
 はは、まぁな」

“????” :
「火種のつもりはないよ。
  お れ
 ラシードが”リグ・ヒンサー”なのも一緒だ。ただそうだな…」

“????” :
「留まり、淀み、燻り、腐り………止まった風車ってやつが、好きじゃないだけさ。
 今日と変わらない明日なんてのはない。善しも悪しも、何かが変わる…」

“????” :
「…なんてな。世話を焼きたいのは本当さ。
 俺が何処の火種かは、いま以上の言葉はないが…」

“????” :
                     ・・・・
「───そうだ。恩に着てくれるなら、いつかこの顔を訪ねてくれよ。歓迎するぜ?」

SYSTEM :
 あなたがもしもいつかのことを憶えているならば。
                    ・
 その道理の端くれを話した時の男の瞳は、彼より確固たる礎を持っていたように見える。

SYSTEM :
 …だが根付く生命があることも、変えてはいけない何かを留めることの大切さも、
 すべて知った上で踏み潰す、彼よりも巨きな横暴と傲慢さが伴っていたように見えた。

SYSTEM :
 天を焦がす黄火を。
 青の空をゆがめる、かき回すものの道理を男が覗かせて、それから。

“????” :
「さて…じゃあ案内頼むぞ、マルコ」

“????” :
「忙しくなるが、ああ。
 あんたとは、また話が出来ることを願うよ…」

ラーゼス :
「………………」

ラーゼス :
「分かった。改めて礼を言いに行こう。
 ここで槍働きをするならば、すれ違わないということもあるまい」

ラーゼス :
 男の翠の目を見つめる。
 森を吹き抜ける風とは言い難い、傲慢すらにじむ颶風の如き男だ。

ラーゼス :
ふと、問いが口を衝く。

ラーゼス :
「ラシード」

ラーゼス :
「黒い狼を知っているか?」

“????” :
「…いいや? 残念ながら覚えは…」

“????” :
「………。ああ。
 ローマに限らないならひとつだけ覚えはある。ろくでもない逸話と一緒にな」

“????” :
「ま、ほんとの意味で狼ってわけじゃないらしいがね。
 伝説には尾ひれがつく。実際の姿と聞こえる話は別さ。

 興味があったら、いまから言う名前でも探ってみるといい」

ラーゼス :
「うん」

SYSTEM :
 あなたの言葉をどう受け取ったのか、ラシードはそれからひとり(おそらく)の名前を教えた。

“????” :
    レムリア
「………”黒鉄の狼”」

“????” :
「戦場生まれの戦場育ち………。
 目に映るもの全ての喉笛を食い千切る餓狼さ」

“????” :
「まあ、真偽は確かでもないがね」

ラーゼス :
 レムリア
「“黒鉄の狼”……」

ラーゼス :
「ありがとう。その名を恃みにするとしよう」

“????” :
「お安い御用さ。
 ───それじゃあな、ラーゼス。次のすれ違いってのを期待しているよ」

SYSTEM :
 年にして二十の半ばを越えたばかりの、
 海向こうから吹き荒ぶ風のような男。
 彼から受け取った紹介状と、示唆された『大掛かりなこと』の当事者たちの縄張りに向けて、あなたが歩き出す。

SYSTEM :
 リグ・ヒンサー
“暴力賛歌”の名で呼ばれた複合セル。
 少なくともここで、もっとも協力という言葉に馴れた者たちの影は見当たらなかった。
 仮にあったとしても、ついにあの状況に駆け付ける姿もない。であるならば。

SYSTEM :
 何が起きるにせよ、足掛かりたるものを見つけ出さなくてはならない。
 絢爛なこの都の夜に燻る火を、風たちが煽り立て。予知が叶う前に。影も形も知れない狼が火の色を嗅ぎ付ける前に…。

SYSTEM :
 その背中を、男は暫し見守り、見送った。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

“アイシャ” :

『アーキル』

SYSTEM :
 ラシードと名乗っていたはずの男のまことの名を、
 後ろから同じくらいに浮世離れした、麗しい矮躯が囀る。

 残る一人の情報源を横取りした男が呆れ顔で振り返って、
 戻って来る足音がないかを最初に手繰った。

“黄の希人”アーキル :
「───おおっと、今その呼び方は勘弁してくれ。
 彼女がおまえと同じシンドロームだったらどうする、踵を返して是非を問われる」

“アイシャ” :
『ん』

“アイシャ” :
『いいの。こっちに“お誘い”しなくて』

“黄の希人”アーキル :
「いいんだよ。今も昔も連中が一番大きい。下っ端でも情報は貴重だしな。
 それに下手に均衡取るより、こっちの方が状況が動く」

“黄の希人”アーキル :
「あの様子でも案外…またその機会があるかも知れない。
 そっちの方がおれ好みだよ」

“黄の希人”アーキル :
         エ ノ ク
「………ところで“血色の探求”のやつは?」

“アイシャ” :
『フった』

“黄の希人”アーキル :
「うわ、あいつ懲りないな………いやそうじゃない。
 なんて言ってたかの方。進捗聞いただろ」

“アイシャ” :
『どこにもいるって。お客さん。
 あなたたちにも声をかけた。他もおんなじ。お迎えした方がいい?』

“黄の希人”アーキル :
「いや? 止めておこう。
 ただでさえ俺達自身そっち側なんだ。これ以上ハイエナと仲良くするのもね」

SYSTEM :
 黄燎の風と共に征く男の、達観の中に渦巻く野望のいろ。
 目を緩やかに細めた少女がなにごとか囁くと、男は肩を竦めた。

“アイシャ” :
『…ユピテルさまの雷、みんな御執心。
 アーキルも欲しい?』

“黄の希人”アーキル :
「そりゃそうだよ、アイシャ。昔がどうだったかは知らないが、
 いまこのご時世、特に俺たちの間では“そいつ”がすべてだ」

SYSTEM :
 古今東西どこであろうと、
 F H
 その名に属した者たちの共通する鉄則はひとつだ。
 理由などではない。ただ、弱いものは死に方ひとつ選べず、

“黄の希人”アーキル :
   だ せ
「力を有難がれないやつから死んでいく…ということさ」

SYSTEM :

 ゆめ
 欲望をかなえられるのは強いものだけだ。


 ラシードを騙り、アーキルを名乗る男には、およそ野望と呼べるものがあった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :
 シーンが終了しました。
 ロイスの取得等ございますか?

ラーゼス :
取っておこう。縁ははじまりが肝心とキースも言っていた。

GM :
ほう。どちらに?

ラーゼス :
ラシードに○好奇心/猜疑心で取得する。彼が何を考えているかも、きっといずれわかるだろう。

GM :
了解しました。キャラシートに書き加えておいてください。

GM :
…あと、なに、とは言わないのですが…

GM :
『彼が別の名前で登場した』場合、改めてロイスの名称を変更しても構いませんよ。ええ、なぜとは言いませんが…。

ラーゼス :
?????

ラーゼス :
一体なんのことだかは見当もつかないな 本当にわからない おれの上のほうが覚えておくだろう

GM :
わかりました。(流れていくエンブレムの音)

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。


・シーン2「Phantom-亡霊ども」

SYSTEM :

【シーン:Phantom-亡霊ども】

 登場PC:アレウス
 登場侵蝕:なし

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

        【 Now Loading... 】

 モルデ=メテオリーテ
『“死滅天隕”』。アレウス・バルバート。
 FHセル「ファントムストークス」のセルリーダー。
 戦いの混沌の中で自己を確立し、戦火の中に充足を見出した収穫者。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 アルフレッド・J・コードウェルの決起、消息不明、叛逆…。
 それは通算で三度、世界の在り方を変えた。

SYSTEM :
 一度目は、日常の在り方を知らぬ間に。

 二度目は、紛争の在り方をすみやかに。

 そして三度目は、悪党の版図さえも…。

SYSTEM :
 いや二度目において、厳密にはコードウェルの消息不明など問題ではない。
 世界に蔓延るレネゲイドの因子は、人の欲望と情動にしがみつき、彼らに新しい力を与えた。

 それは守るための力であり、それは奪うための力だった。

SYSTEM :
 そしてそれを持った時、彼らは戦わずにはいられなかった。喉から手が出るほど欲しいもののために、だ。

 ………とどのつまり“一度目”の変化を以て、二度目、三度目は必然である。
 彼らにとってそれは拳銃よりも魅力的で、また手っ取り早く個人の暴力が再び台頭し得る…。
 そんな、自分を“超人”という言葉で彩り、容易く他者を捻じ伏せられるワイルドカードだったからだ。

SYSTEM :
 だから日々彼らは見落とす。
 レネゲイドは確かに“超人”という名の異常者を作る因子だが。
 その同じ括りに収まったから、誰もが階段の同じところに足をかけているのではない、ということを。

 それは、どんなにあさましくとも、またどんな大義を抱えていようとも関係がなかった。

SYSTEM :
 ここに、傭兵のカバーを被る、名も知れぬFHセルと癒着した、欧州の某企業がある。
 付け焼刃でかじったレネゲイドを、なまじ力を手に入れたものだから勘違いし。
 レネゲイド以前のとある問題を見落とした者たちだ。
 彼らはオーヴァードを“自分たちと同じ土俵”と勘違いした。いや、あるいはそれ以下だと。
                      シャドウランナー
 蜥蜴の尾のように、必要になれば斬り落とせる非公認人材に過ぎないと驕った、暴力の新入生だ。

マーセナリー :
           ウィング2 ロスト
「───クソっタレが! 二番機、消失!」

マーセナリー :
『じょ、冗談じゃ…、数は勝っていたんだぞ!
 俺たちゃ後始末じゃないのかよぉ!』

マーセナリー :
「ほざいてるなよ! ヤツが来る…!」

SYSTEM :
                         イオノクラフト
 その証明───空をブラックドッグ・シンドローム系列の飛行機能で飛翔ぶ、PAアーマー。
 それはコードウェルの叛逆に伴い、
 遅まきながら欲望の罷り通るレッドオーシャンに参入した彼らにとって、他を“舐め腐る”には十分な暴力だった。

SYSTEM :
             エアライド
 たとえ同じバケモノでも、空中戦は自分たちの領分と嘲っていた“とっておき”。
 都合4機から成り、それ相応にお高い維持費用をかけていた機体が今や半分だ。
                                  スクランブル
 彼らが行うのは天罰気取りの空襲ではなく、先手を打たれてからの惨めな緊急発進だった。

SYSTEM :
 イオノクラフトによる飛行で生じる機体のバランス制御をコンマ単位で行いつつ、EMPを伴うレネゲイド因子の散布。
 有視界戦闘の中、爆風の向こう側のそれに向けて、彼らは落ち度を戸棚に上げて口々に焦燥と怒号を撒き散らす。

 しかも彼らが現代のオーバーテクノロジーひとつにあぐらをかいていたわけではない。
 大枚はたいた“象徴”の適性にそぐうオーヴァードの調達から、
 アタック・パターンの構築までしていた彼らを、その点で責めることは出来ないだろう。 

SYSTEM :
 ───彼らの落ち度は。
     アマチュア        ベテラン
 無法者の新入りなことを忘れて、古参の掟に手を出したことだった。

SYSTEM :

 ・・・・・・・・
 裏切りは赦さない。

ファントムストークス
 旧き亡霊の末裔が、
 貪る屍肉を求めてやってくる。

独白 :
 
 裏切りは戦場の常。
 背中に目をつけ、刃を振るわれ銃を突きつけられる前に対処する。
 それが出来て当然という、如何にもそれだけで飯を食おうとしている連中の考え。

 状況判断においてそれが間違いでない事も現実には有り得る。
 だが裏切りを働くのならば、必ずと言っていいほど注意しなければならないことがある。

独白 :

 即ち、裏切ったならば"必ず"殺すこと。
 即ち、裏切ったならば"必ず"逃げ切る事。

 そうでなければ──そう、彼らのように、"報復"に合うのがオチだ。

ガンドルフ[バルチャーII] :

 黒煙の中から跳ねるように躍り出る機影が一つ。
 人を模し、人を真似、されど人に非ずといった鋼鉄の悪魔。
 "それ"の源流が、何処の夢から始まったかなどと、纏う者達には関係がない。
 
《ターゲット・インサイト。
 距離測定30……40、有効レンジ内。》

アレウス :

「──調子が良いじゃねえの、《ファンタズマ》!
 ルーの奴に褒められでもしたか?」

 そう、この鉄の魔神がどこを始祖としているかは関係がない。
 手足となり、羽根となり、自分自身であるならばそれでいい。
 信頼できる確かな武器こそ至高というのであれば、最も信頼できるのは己自身。
 己そのものと成りうる、この魔神──"PF”なる兵器は、それでいい。

アレウス :

 耐ショック用スーツ越しに腕を動かす。

 ダイレクトモーションによってPF──ガンドルフの腕が動き、腰部にマウントした一本の槍を手に取る。

ガンドルフ[バルチャーII] :

 最もそれは槍、矛といえるものではなかった。
 あるいは"それ"から放たれるものが「そう」であるのか……。

 ガンドルフが手にし、追い立てた獲物に向けたものは明らかにライフルであったからだ。

ガンドルフ[バルチャーII] :

《RCシステム、スタンバイ。
 ターゲット周辺のエリア情報更新──座標設定、いつでもどうぞ》

アレウス :

「いい提案だ、それでやってみるとするか」

アレウス :

「──いっちまいな、レフ・ビット!」

 音声認識と同時に《ファンタズマ》が作動。
 搭乗者の感染したモルフェウス・シンドロームを媒介にし──背部のラックから無数の"端末"を射出。
 何層かに重ねられたディスクのようなものが、まるで生きているかのように動き、獲物の周囲を取り囲む。

「パターン・ヴィーナス……さァて!」

アレウス :

「動け動け! 貴様らの操るそれは機動せずしてなんとするか!」

 ガンドルフが向けた"射出機"に光が収束。
 あまりに見え透いている射撃など、オーヴァード同士の小競り合いにおいては意味をなさないはず。
 だが既に怯え切っている敵に対し、淡々と合理性を求めた攻撃など意味をなさない。
 確実に仕留める──それは相手の心理に浮かび上がった恐怖を、見える形で具現化してやること。

アレウス :

「最も──砂塵嵐を越えられたらの話だが、な」

ガンドルフ[バルチャーII] :

 ──ビシュン!

 つんざくような音と共に"射出機"から何かが発射される。
 それは音を越え、光そのものとなって撃ち放たれ、獲物の片割れを狙い撃つ……のではなかった。

 見当違いの方向に飛んだであろうその"光の矛"。
 彼らがもしもそれを眼、ないしセンサーで追ったのであれば……それが最後だ。

ガンドルフ[バルチャーII] :

 ──ガキン!!

 まるで刃金と刃金がぶつかり合う音とともに。
 明後日の方向へ消えていったはずの光の矛が、ありえない方向転換をして返ってくる。
 それは一度のみならず、二度、三度……それだけでは数え切れぬほどの方向転換を繰り返す。

 ガンドルフが撒いた端末の正体が、それだ。
 放った光の矛を何度も何度も反射する"乱反射端末"。
 反射と同時に、加速を繰り返し、既に光速だったものがあらゆるところから襲う。

 獲物の手足を啄み、死肉を食い漁る亡霊の鸛のように。

SYSTEM :
 推進剤の燃焼に伴う青白い炎がバーニアから放射され、
 電磁浮遊によるホバリングの姿勢制御と加速を同時に行う、まさにその初動。
 耐弾性能に優れた電磁シールド防御を施した虚栄の鎧が、
 
 天から地から左右から、ハチの巣をつついたようにけたたましく警告を上げる。
 まるで狩りの獲物を追い立てるが如く、機動鎧が揃ってバーニアから噴射炎を吐き出し、空のキャンパスに不格好な絵を描いた。

SYSTEM :
 そうだ。

 こんなものは、もはや戦いですらない。
         トイ・ボックス
 流出し、発展せし秘密兵器の系統樹…第三の腕たるビット兵器。
 搭載した複数の兵装の熱源と、視界に入った携行兵装の銃口から覗く死の色、
 凡そ嬲る側に立つことはあっても戦う側に立つことのない彼らが脳内でそれを処理するには遅すぎるからだ。

SYSTEM :
 インサイト  アクション
 照準内から攻撃までの時間に躊躇がない。
 兵士/戦士がコマンドを実行に移す猶予のなさというものが、
 こと、その鋼の戦馬に限ってはダイレクトに反映されている。

 鋼殻義体、PSY-FRAME。
 それは徹頭徹尾、何かを生むための道具ではない。
 拓く、争う、奪う、どのように言い換えても、とどのつまり“戦う”ための手足だ。類似する道具でしかなくとも、扱うための心構えに違いがありすぎる。

マーセナリー :
『熱源ッ! いち、に、さん、』

マーセナリー :
『───ッ、なんだ、はずれ、』

SYSTEM :
. ガンダルフ     バルチャー
 鉄と血の妖精の元締め、屍肉漁りが一つ目を光らせた。
 それを死神の目と錯覚する前に死ねた方は幸運だ。自分の命ごと一瞬のまぼろしに出来た。

SYSTEM :
 だが、そうでない方は漸く、遅まきながら此処に至って思い知る。

 機体側面から、頭上から、嬲るように、いや死にゆく肉と鉄の塊を啄むように、ピンボールの標的が撃ち抜かれていく。

マーセナリー :
「うっ…嘘だ! 嘘…嘘だァ───」

SYSTEM :
  ファントム
 ───亡霊に魅入られた一部始終、その自業自得を。

 圧倒、という回答を以て。
     はや
 なにより光速く。

SYSTEM :
 …爆散。
 過ぎた玩具が解体され、
 趣味の悪いピンボールの高得点を祝うように鉄血の花火が上がる。

SYSTEM :
 それは仮に彼が生身だったとして、喉笛を食い千切られることに然して変わりはないだろう。
 
 抑止力であり大黒柱だった、機械化兵の一個小隊を失った彼らの未来はそう明るくない。
 いや、そもそも………。

“Mr・A” :

《“Mr・A”より我らがボスへ》

“Mr・A” :
    コンプリート
《此方も指令達成だ。
 ガエル
 社長殿は由芽クンの手でお休みしてもらったし、
 5分後には盧クンの仕込んだワームで企業としては穏便に終了して頂くトコだよ》

SYSTEM :

 彼らがそれを認識する時間などない。

SYSTEM :
 応報に来たファントムストークスのメンバーは仕事の“はしご”感覚で都合四名(諸説)。
 そう大きな企業ではないが、ただのチンピラ程度は歯牙にもかけないいち企業は、
 5分後、株式会社としては致命的な顛末を迎え、適切なカバーストーリーをかけた上で臨終する。

“Mr・A” :
《私もスピーチの練習とかしとかないと。
 アー、最初の謝罪声明何がいいかな?》

アレウス :
「そうか、よくやった──謝罪声明だぁ?」

アレウス :
「そんなもんお前、"すいませんでした"の一言で構わねえのさ」

“Mr・A” :
《違いないね。
   ガエル
 だが社長殿は知っての通りおしゃべりだった》

“Mr・A” :
《由芽クンも言っていたよ、ええとなんだったかな》

“逢魔狩り”三草由芽 :

“え? すみません、話が長くて。
 もうそこに転がってますけど…”

“Mr・A” :
《こんな感じで》

アレウス :
「奴め、首を落とすのがいつも早いんだよ」

アレウス :
「ウェルギリウスめ、上手く躾けなかったな?
 ──ま、構わんさ、舌の脂の乗りがいい奴は腐るのも早いからな」

“Mr・A” :
《彼にもキャパってのがあるからねェ…》

“Mr・A” :
《そんなわけで人生最後のスピーチの代役をするんだ。すみませんでした、の前にもうちょっと何か…。
 ───アア、だからこそか。人生の転落に気取ったこと話せる人間の方が稀だもんな》

“Mr・A” :
《で、どうだいボス?
 腐っても“レアモノ”のマッチングだ、滅多にない相手だったと思うが》

アレウス :
「言えれば二流、理解して言わなければそれで一流だ。で……」

アレウス :
「多少の歯応えはあったが、それくらいだな。
 だが確実に言えるのはPFの方が小回りが利くということだ」

アレウス :
「例の《RCシステム》も今回は上手く動いた。
 ガンドルフに積んだAIDAもご機嫌だったことだしな」

アレウス :
「とはいえ……未だ慣れんな、あの端末兵器。
 先だってウェルギリウスにパターンを精査してもらったが、失笑されたもんでね」

“Mr・A” :
        レネゲイド
《ほう!さすがはワタシたちを戦争仕立てにしただけはある。とはいえ…》

“Mr・A” :
《彼はちょっとトクベツ寄りだ。良くも悪くも畑違い、一度のオアソビで慣らそう追い付こうってのはキミでも目標が高かったようだねェ》

SYSTEM :
 僅かなノイズ交じりの、くぐもった男性の声と一緒に”かたかた”と揺れる音。

アレウス :
「努力目標ってところだな」

“Mr・A” :
《次回の課題かい? ま、そんなわけで》

“Mr・A” :
 スクランブル
《緊急発進終了、宴もたけなわだ》

アレウス :
「了解した、お前たちもぼちぼち撤収準備に入れ……特にミクサだが」

SYSTEM :
 あちらの動かせる兵力も頭も皆死んだ。
 あとは彼の性格上本当に、無辜でもない社長殿のデス・マスクを被って「すいませんでした」と謝罪会見をブチ上げて終了だ。

“Mr・A” :
 オーライ
《了解。遠足の御片付けを終えたら帰…》

“Mr・A” :
《あ、それ聞く? 伝言入れとくね》

“逢魔狩り”三草由芽 :
”いつも通りでした! なんで…。
 いつものように褒めて下さいね”

“Mr・A” :
《だって》

アレウス :
「なんだ、意外に素直だな。獲物の数を嗅覚(はな)で知れるようになったか?」

アレウス :
「ま、金銀財宝がここにあるって喚くよりはずっと"らしい"な」

“Mr・A” :
《元々彼女、殺しが好きなクチでもないしねェ…自覚ほどじゃないけど感性タイプだ》

“Mr・A” :
《キミに"待て”されて"待ちません”いうタイプでもないよ。…ああホラホラ、油売りもこの辺だ。
 続きは着陸後としておこう》

アレウス :
「全くだ。ガンドルフは"跳ぶ"から足にくる」

アレウス :

 ……ま、褒めるくらいは構わんな。

 [バルチャーII]の推力を下げながら内心で呟く。
 もはや懐かしい思い出レベルのものだ。
 鉄砲玉が帰ってくれば、兄貴分が肩を叩いてきたのを憶えている。

アレウス :

「よし──ランディングギアを展開した、降りるぞ。
 しくじるなよ? 謝罪声明のつもりが、宣戦布告にならんようにな」

“Mr・A” :
《おっとすまない! ワタシに"それもアリだな”と思わせる発言を入れないでくれたまえボス、やっちゃうぞ?》

“Mr・A” :
《───ハハハ! 睨まれたので通信終わり!》

SYSTEM :
 かたかたとまた揺れる音。
 通信が切れる僅かな間に、捨て犬上がりではない方/しなやかな女の諭す声。

 あれで出迎え準備をしくじる両名でない。一夜が明ける前に”何時も通り”、上前を撥ねた人間への仕置きは終わりだ。

SYSTEM :
 アルフレッド・J・コードウェルの決起、消息不明、叛逆…。
 それは通算で三度、世界の在り方を変えた。

SYSTEM :
 一度目は、日常の在り方を知らぬ間に。

 二度目は、紛争の在り方をすみやかに。

 そして三度目は、悪党の版図さえも…。

SYSTEM :
 世界は知らぬ間に変貌した。薄氷の上側に滲み出すような影響を与えながら。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 …そんな因果応報の翌日。

SYSTEM :
 企業社長に成り済まして、知る者が見たら噴飯ものの真に迫った緊急謝罪会見をいまも行う張本人が、
 そのままファントムストークスのセルリーダーである貴方の前にいる。

SYSTEM :

 ───戦場の屍肉漁り。神出鬼没の戦争屋。どこにも靡かぬ亡霊の鸛。


 表向きのカバーである民間軍事会社としての仕事を請け負うこともある彼らだが、
 一線を越えて上前を撥ねる行い、つまるところ裏切りに伴う報復や自衛の結果が先刻に当たる。
 そのメンバーもまた、己の基準以外では動かない者揃い。経歴から出自まで同じ例は殆どない。

SYSTEM :
 ・
 彼もそうだ。

“Mr・A” :
  ブラックロータス
「“血穢の蓮花”から伝言だ。
 しごと
 支援要請が来たよ。しかも…」

SYSTEM :
 名前は嘯くに曰く“Mr・A”。
 Aは『Anonymous』でも『Ace』でも『Actor』でも、なんでもいいらしいレネゲイドビーイング。
 ブラム=ストーカーとエグザイル、なにより起源の合わせ技で、どこにもいる/いない不死不偏。

 陽気な人間好きだが、RBならではの感情と、ある手段によって培われてきたきわめて残酷な論理性の無さが同居した彼は、どこにも靡かぬコウノトリの巣を、己の都合に是しと気に入って棲みついている。

“Mr・A” :
「イタリアの“伝説”からだ」

SYSTEM :
 ───そのAが愉快気に語る話は。
 先刻セル宛てのメッセージを、抜け駆けして傍受したクラッカーの伝言。

SYSTEM :
 イタリアで名高き“赤の鬼人”…。
 腕っぷし一つで成り上がって来た、まさにストリート・ギャング・スター。
.               暴力至上主義
 嘗てのあなたの古巣でもある『リグ・ヒンサー』の元締めだ。

“Mr・A” :
..メッセージ
「音声つきが一件。私は外すかい?」

アレウス :

「──……」

 帰投を終え、ガンドルフを整備スタッフに突き出し、ミクサに"お褒めの言葉と飯"をくれてやり、
 ようやく息をついたのも束の間。
 疲れを感じさせないほどの緊張──というよりも、意表を突かれたような気分だ。

アレウス :

「構わねえ、そのまま再生していい」

 少しの沈黙の後。
 "愉快犯"のような部下の同席を許した。

“Mr・A” :
「ほォ、では気が変わらないうちに押してしまうケド」

“Mr・A” :
「いいのかい? こういうのアレだろ? ”水入らず”というやつだ。
 望んでデバガメしたこと両手足を越えて久しいんだが…」

“Mr・A” :
「…あ、音声メッセージに積もる話もクソもないとか?」

アレウス :

「いや……」

アレウス :

「ボス──……いや、その男が単に旧交を温めるなんて目的でメッセージなんぞ送るものか。
 そう、今しがたお前が言ったとおりだ」

アレウス :

「十中八九、本業の事だ。
 構わんから再生しておけ」

“Mr・A” :
「最後の一秒まで私は大穴に賭けておこう」

SYSTEM :
 なお彼の指の軽さを侮ってはならない。
 既に解答の気が変わる前に、その洒落た細工つきの指が、物珍しいと太鼓判のついた音声メッセージの再生に手をかけていたからだ。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

"赤の鬼人” :
    お れ
《───“赤の鬼人”だ。挨拶は現地でする》

"赤の鬼人” :
        ・・
《此方の縄張りに遺産が運び込まれる》

"赤の鬼人” :
.      カテゴリ
《………遺産の金型は『雷神の槌』。
 タイプ
 特性は『ケラウノス』》

"赤の鬼人” :
《分かってるのはそれに加えて相当の曰く付きらしいコトだ…。
 やり合っている埃被りと、紛れ込んだハイエナが、どうもそれに食いつく気満々だからな》

"赤の鬼人” :
《コイツを回収して、小うるさいのを黙らせたい》

"赤の鬼人” :
《契約は作戦間。猶予はX月X日まで。
                          ヨソモノ
 指揮系統は独立を容認するが、別の伝手で上がって来た客将もいる。
 そいつらとの連帯の容認込みだ》

"赤の鬼人” :
《前金は振り込んである。派手な戦にするつもりだ。
 乗り気ならオマエも食いつきに来い》

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 録音された音声メールは、知っている佇まいを持ちながらも、
 約5年ほどの月日が齎す過去との差異を伴って、時間通り一方的に切られた。

SYSTEM :
 前金は心配するまでもない。
 気にするならば、それ相応の───昔から妙に散財癖のある“あの男”らしい───相場より上の金額がついている。

 理由はそう大したことではない。
 生まれてこの方、“赤の鬼人”は地に足付ける稼ぎ方を知らない男だったからだ。

アレウス :

「変わらんな、ボスは」

 メッセージを聞き届けた男の第一声がそれだった。

アレウス :

「5年ぶりだというのに相も変わらずだ。
 必要なことだけ言ってさっさと話を切っちまいやがる」

アレウス :

「聞いたか? 愉快犯のA君よ。
 ピンハネしてきたヤツへの報復なんてのが惨めに思えるくらいの仕事が来ちまった」

アレウス :

「しかも我が祖国はブツを巡って三つ巴と来た……台風が三つも出来てやがる」

“Mr・A” :
「もちろん聞いたともボス! 
 伝説殿はその様子では、五年前からなかなか…“カマクラ”…“ムロマチ”…」

“Mr・A” :
 …エド? だったかな?

“Mr・A” :
「エド育ちであるらしい。しかも、だ」

“Mr・A” :
      フカ
「なかなかに誇張した名前だねェ…。
. ケラウノス
 “神の雷”とは!」

SYSTEM :
 神の雷霆───ケラウノス。
 ギリシャの神話に曰く、秩序を守護し統べる全能のゼウスが振るう武器を指すが、その用途は守るためではないともされる。
 
 裁き、壊す。創造る立場にいるものが持つ、相反した権能の証。

 あるいは───その前準備としてついて回る破壊の象徴。何よりも、力の象徴。

アレウス :

ケラウノス
「"雷霆"と来たか。
 あいにくとその手の雷ネームには嫌な思いでしか無いんだが……くそったれ、思い出しちまったぜあの女の顔」

アレウス :

「しかも大がかりだな。
 ウチだけじゃなく別口の協力も取り付けているらしい」

アレウス :

「金があるのは結構なことだがな。
 さて愉快犯にして花火好きのA君よ、俺ぁこいつに乗ってみようと思う」

 まるで即決のように切り出す。

“Mr・A” :
「イタリアがハイエナ大戦争の群雄割拠なのはご存知の通りさ。
 どうやら“赤の鬼人”殿は二つまとめてお相手って気分なのかもねェ」

SYSTEM :
 続くあなたの言葉───“行くかい?”と聞くまでもない第一声───に、Aは満足げに笑った。
 表情は見えないが、彼は心底楽しい時、カタカタと仮面(あるいは頭部?)を震わす“癖”がある。

“Mr・A” :
.        ピクニック
「オッケーだ。では遠足の支度を始めよう!」 

“Mr・A” :
「───というかそう言うんじゃないかと思って、
 実は3分くらい前、盧クンに頼んで“この指止まれ”してるからねフハハハ!」

SYSTEM :
 意訳:あなたはこの手をNoと言わないと思っているので、
    もう似たようなマイペースに伝達をお願いしています。

アレウス :

「いつも許可を取れと言っているんだがなァ?」

“Mr・A” :
「織り込み済だろ? 今のところ出し抜いた数の方が少ないからねェ」

アレウス :

「……いや、今思うと、人にいちいち許可を聞いて回るお前は、毎日がエイプリルフールのように思ってしまうな」

アレウス :

「そうでなければお前とは付き合ってられん。
 ルーやウェリギリウスもそうだろう?」

アレウス :

「しかしそうとなれば……連絡が付くのは少数だな。
 さっきのメンツでいくことになるか?」

“Mr・A” :
「まァね。と、いうかウチの中でキミの指示待ちするのなんて由芽クンくらいだぜ?」

SYSTEM :
 連絡がつくのは少数、という言葉に、Aはわざとらしく顎に手を当てた。
 ちなみに先の肯定は掛け値なしの真実だ。
 ルー・トゥホア
 盧秋華───。メンバーの中では比較的新参の類だが、極めて捉えどころがなく、飄々とした態度で接するエゴイストの女性を指す。

 どこぞの大型セルを始めとして定住の癖を持てない渡り鳥で、いまは自主的な居候にして、機械いじり絡みのマルチロールの片割れだ。

SYSTEM :
 で、その癖の強い扱いのむずかしさが、元々アレウスの趣向か巡り合わせか、あなたの周りには多いのだが。

“Mr・A” :
「確かに彼女、アレで気遣い屋だ。
 仕事のタイプと相性の悪いヤツにその手の悪戯はしないだろ。連絡がついてもね」

“Mr・A” :
 ヴァルキュリア
「“戦処女”はいままさにウェルギリウスが面倒見てんだっけ?
 後者はこういうのもってこいだ。キミとも歩調が合わさりやすい、が………」

“Mr・A” :
「連中プラスアルファと“グル”で仕事するんだろう?
 キミが言えば5:5でノるだろうが、今回はご縁がない。カバーがちょっと本人の自嘲通りにデリケートだからね」

SYSTEM :
 例えば。遺産継承者になるために生まれた養殖モノ、情緒不安定と書いて躁鬱気味。
                             ヴァルキュリア
 おまけに本質的に戦闘に不向きな性格をしたFHチルドレンの『戦処女』。

SYSTEM :
 例えば。人格こそ何の問題もないが、経歴そのものが根本的に如何なる勢力にも馴染めない…。
          .デュプリケイト              アンフォーギヴン
 コードウェル博士の“複製体”───レネゲイド社会にとっての『堕とされしもの』だ。

“Mr・A” :
                ・・・・・
「あと彼女、嫌いなヤツには平気であてつけるから連絡ついても呼ばないだろう。
“ヴィクター”とか…。あいつもダメじゃないか? “葬魔灯”」

SYSTEM :
 例えば。腕は確か、頭脳はそれ以上。
 しかし人嫌いに加えて偏屈な性根、そもそも見た目が改造し過ぎで人間離れしており、この手の仕事でブレーキがいないと大暴走しがちな『ヴィクター』。

SYSTEM :
 例えば。このセルに馴染むだけあるウォーモンガーだがそれ以上に、
「他人の建てた綿密で自分本位な計画を壊す」ことが大好きという、
               ヘキ      ギルド   デッドエンド
 端的に言ってどうしようもない趣味の持ち主な元犯罪者の『葬魔灯』。

SYSTEM :
 どちらも貴方が物理的に制したため、向こう十年は折り合いを付けるだろうこと、またカテゴリとして信じがたいことにジャームではなく、最低限の“義理”のあるタイプなだけで、いざ枷を外したら好き勝手やる面子だ。たぶんローマ中を滅茶苦茶にして回るだろう。

(あるいはローマにいるオーヴァードに滅茶苦茶に“される”かだ)

“Mr・A” :
「ま、大勢でゾロゾロと略奪とはいかないことは確か…。
 仰る通りこないだの面子が最大値だね。私と由芽クン、留守は私と盧クンってトコじゃない?」

SYSTEM :
 彼らには優先順位がある。
 報酬以外に“引き受ける理由”のようなものだ。

 ───そもそも連絡がついても。
 全員揃う、というのは稀なのである。

アレウス :

「そして連絡が付かないのも私、と続くと思ったんだがな。
 茶化しに期待しすぎたか?」

“Mr・A” :
「まさか! 連絡を“つける”のがワタシさ。
 オモシロい話は聞こうとしなくても聞こえちゃうからね」

アレウス :

「地獄耳め」

アレウス :
「ま、ルーが残ってればセーフハウスのセキュリティ面は何も問題はない。
 “ヴィクター”に“葬魔灯”は…ま、お前の言うとおりだな。
 我が情熱の国の土壌は奴らを受け入れはするが、飲み干すには狭すぎる」

アレウス :
「ウェルギリウスも暫くはアイツの面倒をみてやりたいんだろう。
 ああ見えてセンチなところがあるのさ、自分と似たようなヤツのことを気に掛ける」

“Mr・A” :
「意外とロマンチストだからね彼」

“Mr・A” :
                    ポジション
 更にウェルギリウスクンは私と被るからね立ち位置が。

アレウス :

「ま、特に今回は祭りのミコシが"遺産"だ。
 お前はちと怪しいが、ミクサのヤツならそういうのにはあまり興味もないだろう……」

 ああ、と思い直して片手を顔の上半分に翳す。

アレウス :

「──なら決まりだ。
 X月X日までに準備を整えるぞ」

 仔細は決まった。
 誰を連れていくかだけでも一苦労するのがうちだが……、
 誰を連れていくかさえ決まれば、渡り鳥はすぐに他の大陸へと飛ぶものだ。

アレウス :

「……しかし」

“Mr・A” :
「しかし?」

アレウス :
「いやなに」

アレウス :

 何か思うところがあったのか、グラスを片手に息を吐く。

「案外俺もノスタルジーに浸る性根があるらしい」

“Mr・A” :
「そいつは年輪を重ねたヒトの特権ってやつだろ? 分かるんだ」

“Mr・A” :
「ああそうだ。センチメンタルの根元に直談判したいことでもなければ、準備中に受け付けよう。情報はいつだって武器さ」

SYSTEM :
 あなたの珍しい(彼が知る限りは)様子に、どこか仮面と一緒にその長身が軽く傾いたが、気にせずとばかりに余談を向ける。

 行くと決めてから、渡り鳥の翼が鈍ることなどそうはあるまいが。

アレウス :
「情報は武器、か。至言だな。
 だがまあ、情報に頼りすぎてもな」

アレウス :
「ところでお前、ローマの方はどれくらい目を向けてる?
 一つだけ気になることがあってな」

“Mr・A” :
「そりゃあアンテナは貼ってるよ。いちばんホットなのはニホンと言えどもね」

“Mr・A” :
「だが気になることっていうのは…」

アレウス :
「なに、ノスタルジーの一つさ」

アレウス :
「俺は台風の事はよく知ってるつもりだが、暫くはご無沙汰だったものでな。
 世話になった爺様の娘──姫君もこの件に乗り気かどうかが気になっただけさ」

“Mr・A” :
「───なるほど“彼女”か。表舞台に一番かかわりのあるようだからね」

“Mr・A” :
「あそこのローマに張ってる根の深さと徹底ぶりと来たら凄いモンだなと感心するが………。
 その口ぶり、ご存知だろ?」

アレウス :
「ああ……まあ、な」

SYSTEM :
 爺様───クラウス・C・クリスティ。
 アウラ・ドミナ  ..・・
 “貴人の庭”の、先代セルリーダー。
 少年兵時代のアレウスの窮地を匿った恩義というものがある人物だ。
 で、その孫娘とかわいがられていた、当時若干一桁台の“姫君”がどうしているのかと言えば………。

 少しFHと書いて同業の事情に詳しい人間なら丸わかり。
 ・
 今のセルリーダー。

“Mr・A” :
「伝説と一緒に仕事するなら、先達としてヨロシクやるってことだろうさ。
        くる
 ───遺産は人を熱狂わせる! 持ち主だけじゃない、ビジネスとして、ロマンとして、パンドラの箱として!」

“Mr・A” :
「───何なら。

 契約が終わったら伝説を反故にして、
 姫君と逆に”よろしく”するかい?」

アレウス :

「くっくっ……何を言うかと思えば」

アレウス :

「アイツも、もう子供じゃないんだ。
 酸いも甘いも嚙み分ける事を知っているだろう」

アレウス :

「そうとなれば俺達は対等だ。  FH
 立場の上下なんぞは関係ない──俺達はいつだってそうだ。

 てめぇの抱えた"願い"の大きさが優劣を分ける」

アレウス :
「言っただろ? ノスタルジーの一つだってな。
 過去は思い返しても時間が止まったままだ。
 出向けば"今"に出会い、時計の針が動き出すってもんよ」

アレウス :

「そう、だから"それだけ"だ。
 で? さっきっからウズウズして、この俺に何を言わせたい?」

“Mr・A” :
「そうでなくっちゃナア」

SYSTEM :
 うずくようにかたかたと揺れる仮面は、そのノスタルジーの中の”姫君”でない方に向いているのは明白だった。
 
 ───時として"願い”を矮小な我欲が踏み躙る反例をAも、おそらくアレウスも存じていようが、それは言葉遊びでしかなく。
 なればAの話も、おそらくはその類。

“Mr・A” :
「そうだとも、時計の針が動いたら跡は消えてなくなっちゃうからねェ。だからこそボス、聞くわけなンだが」

“Mr・A” :
     アスラ
「キミ、“赤の鬼人”とはどんな関係?」

アレウス :

「くく……そいつは心配の一つと受け取ればいいか?
 それとも珍しい直球の問いかけとみていいのか?」

アレウス :

「それ次第だ。
 おっと、答えないとは言わねえさ」

“Mr・A” :
     ナンセンス
「ワタシ、無駄なことは好きだよ?」

アレウス :
「よく存じてるよ」

“Mr・A” :
「だから聞くんじゃあないか…。

 ボスのノスタルジーなんて珍しさ、首突っ込まないような"根っこ”をワタシがしていないのも御存知だろ?」

SYSTEM :

 ───"Mr・A”はレネゲイドビーイングであるが、
   オリジン     
 その起源は現代ならではの新鮮さと悪辣さに満ちている。

SYSTEM :

   アノニマス
 ───不特定多数。

 オリジン:サイバーの、
 現代社会ならではの最新生命体。
 曰く、貌のない悪意が彼をつくった。

SYSTEM :
 つまり直球の興味本位である。

 言葉に直すとこうだ。
 "なんでノスタルジーになったの?”くらいの図々しい踏み込みである。

アレウス :
「くっくっ……迂遠な言い回しをしてみたがお前には敵わんな。
 それがどうも隙になったようだ、次からは改善するとしよう」

アレウス :

「……ま、なんだ」

アレウス :

「俺にとって──"リグ・ヒンサー"は古巣だ。

 ガキの頃、RUF、CDFと転々とした俺を迎え入れた、社会復帰更生プログラムとは水が合わなかったもんでね。
 そのまま野戦病院を抜け出して走った先が"情熱の国"なんだよ」

アレウス :

「ま、最初からそこに転がり込んだわけじゃない。
 俺の流れ着いた先は小さなギャングで、吸収された後にってヤツだ。
 それからだったな……"ボス"……そう、“赤の鬼人”と知り合ったのは」

アレウス :

「といっても俺は組織の直参や執行部に入れるような器じゃなかったモンでな。
 名前は知ってるし、組織の仕事の一環で話をすることはあったが、脱退した後にこうして連絡を寄越すほどの仲だったかどうかは覚えがない」

アレウス :

「これが認知症だったら参るね。どうも30代からアレの兆候はあるらしい」

アレウス :
「つまりは、今向かい合っている俺とお前の立場そのものだったのさ」

“Mr・A” :
「ほほう、そりゃ顔パスなワケだ…」

“Mr・A” :
「伝説の始まりってのを一緒に眺めたと。ハハハ!
 経験がヒトを作るとはよく言う。では…」

“Mr・A” :
「ワタシや由芽クンとウマが合うかは1/2ってトコかな。参考になったよ」

アレウス :
「そうか、それなら何よりだが」

アレウス :
「一応聞くが、合わなかったらどうする?」

“Mr・A” :
「ボス…兆候のハナシをしてから実例を出すとは、けっこうブラックなジョークの使い手になったねェ」

アレウス :
「好い教材が目の前にあるもんでな」

SYSTEM :
  アスラ
 “赤の鬼人”………。
 貴方と彼の関係は、貴方の言葉以上に適切なものはないだろう。

 古巣の大御所と若造。
 情熱の国の中で、血と諸々を運ぶ風の中、国盗りをした間柄。

SYSTEM :
 ただ、満足げに笑って(あと教材扱いにエグザイルの肉体をいいように扱って仮面に鼻気取りの突起を作って"ふざけ”て)納得を示したAに言わせてしまえば。

“Mr・A” :
 ヒト
「我々のいいところはだね、ボス」

“Mr・A” :
「気に入らなければ、      ロイス
 時計の針の痕跡って名前のどんな思い出も。
 それはそれで踏み潰して書き換えられる、そんなデリカシーのなさだよ」

SYSTEM :
 要は、それが答えだった。

アレウス :

「板についてきたようで何よりだ。
 華と情熱の俺の祖国には、こういう言葉がある」

アレウス :

 Fidarsi è bene, non fidarsi è meglio.
「信ずるは良し、信じないのはもっと良い。

 幾らノスタルジーを感じようと、幾ら旧知の過去を思い返そうと……、
 それは俺達が手を付ける仕事には何も関係がない。
 あるのは信頼だけさ、良くも悪くも」

アレウス :
 アスラ
「"赤の鬼人”が何を考えて俺達に打診したのか。
 その結果、俺達にどういう利があるのか。
 
 どうせ御大層な前金だけで終わるなんて性に合わんし、割にも合わん」

アレウス :

「──どうせなら俺達が最終的にかっさらってしまうとするか。
 砂嵐に紛れてしまえば、どんな雷霆だろうと淡い光にしかならんさ」

アレウス :

「その過程に三つの台風が吹き荒れるのなら……、
 乗り越えるには"ちょうどいい"高さの壁だろうよ」

アレウス :

 誰が相手だろうと、最終的に利を手にする。
 この道を選んだ以上、それを掴まなければ成った意味がない。
 それが親であろうと兄弟姉妹であろうと、願いの前に立ちはだかるのであれば、それを乗り越えて進む。

 それがファルスハーツというものだ。
 信ずることが出来るのは己だけで、他人の願いに煽られるくらいならば、それにすら歯向かう。

アレウス :

「それに──俺も祭りは好きだからな」

 口角を釣り上げた男は、自分の中にある衝動と、舞い降りたものを照らし合わせた。
 そう、亡霊は亡霊らしく、己の欲望のままに進めばいい。
 裏切り者の聖人に釣られるなど言語道断というものだ。

「その優待券を受け取ったなら、楽しまなきゃ損だ。
 ミクサにも言っとけ、この前買ってやったサクラの和装持ってこいってな」

“Mr・A” :
「いい謳い文句だ。 
 Chi va con lo zoppo impara a zoppicare.
 朱 に 交 わ れ ば 赤 く な る ………ってワケじゃないが、
 交わった後の朱といつまでもご一緒する理由はないものなぁ」

SYSTEM :
 ともすれば無軌道で無謀な「いざという時」の開示を前にして、人間まがいの仮面が“かたかた”と揺れる。

 必要とあらば、ではあるが、その言葉がまつり好きの顔なしに殺し文句とならない理由はどこにもない。

SYSTEM :

 ───彼の理由は“どちらにも転び得る、派手で痛快な現場”であるかどうか。

 ならばどう転ぼうとも、さぞ痛快で、派手なことに違いはないだろう。
 そうと感じるほどに感性が日常離れしていれば、そこに一切のノスタルジーを挟む余地さえないなら、殊更に。あっても、あるいはこの稼業の人間にとっては問題もないのやもしれない。

“Mr・A” :
「よぉし、好きなら楽しまなくっちゃ!
 行こうぜボス、全ての道は何とやらだ───」

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 イタリアが首都、ローマ。

 表向き/事実として華の都と知られる情熱の大地は、
 世界の裏側の目線で見れば、日々破落戸の鎬を削る血風吹く荒野であることを誰も知らない。

SYSTEM :
 少なくとも、表側にとっては、だ。

 あなたは馴染みのある符丁、手馴れた引き、そして…。
 古巣とて背を見せることのない信頼という名の警戒を伴って、ここにやって来た。
 顔なじみのあなたは、事前に此処に来ると分かっていれば後進や末端の注意を引くには十分らしい。

 ふしぎとかつての同僚はともかく、先達には会わなかったが、それだけ組織が大きくなったということだろうか?

“逢魔狩り”三草由芽 :

「やー、遥々来たぜーって感じですねぇ。
 …ところでボス、いちお聞いときますけど」

“逢魔狩り”三草由芽 :

「同席の場に私要ります?」

SYSTEM :
 で、その警戒とは何の関係もない、あっちにふらふら、こっちにふらふらと、装い揃って奇抜なお上りと化した鉄砲玉が、
 つい十数分前にあわやカモられる手前だった時と同じトーンで“赤の鬼人”への身構え方を問いながら、ちょうど三歩後ろの間合いをついてくる。

SYSTEM :
 余談ながら、戦いの場で使うことになれば恐らく三日と経たず“おじゃん”になるだろうから、三草由芽はそれを嫌って三日と経たず平時の装いに戻すだろう。
 馬子にも衣装であるが、本人が着飾る気もないなら是非もない。

アレウス :

「こういう場に連れてきてる以上、お前にも最低限の"社交性"ってモンを憶えておいてほしいもんなんだがな……」

 普段のナリを鉄火場で纏う分には問題がない。
 どのみち"事"になれば駄目になって買い直す羽目になるのも分かっている。
 
 が……例え相手がギャングだろうと、この情熱の国の都市を仕切る裏社会の大物。
 それを相手にする以上、ドレスコードというものは求められる。

 ……要は見栄の一種だ。

アレウス :

「正直に言えば、要らんといえば要らん。
 だが……」

 だが、そう。
 正直言って危なっかしいし、トラブルに巻き込まれるのではなく自らトラブルを起こしそうで何かと気にかかる。
 裏社会は「先に手を出した方の負け」だ。
 そうなってゴタゴタになっては困る。

アレウス :

「交渉の場にはある程度の武力が必要だ。
 俺一人でそれを担保出来るほど、この地は甘くない。
 お前を連れてきているのは、お前のその懐刀としての腕を信頼しての事だ。
 少しは我慢しろ……出来るな?」

 交渉は対等の武力をもって成立する。
 少なくとも自分一人でそれを賄うことはできないと確信している。

“逢魔狩り”三草由芽 :
.       ドロップアウト
「えぇーッ、私が中退組なの知ってるのに?
 それだったら盧さんでいいじゃないですか テキザイでテキショでテキセツですよぅ」

SYSTEM :
              ピュアブリード
 心底余談だが彼女はノイマンの純血種である。

 しかし…その天才性は無意識のうちと凡そ“棒振り”と揶揄される方向に全てが注がれており、
 その言葉の由来がスパコンであることを彼女から感じ取られた覚えは経歴もあって基本的にない。

“逢魔狩り”三草由芽 :
「で、えーと。やれって言ったら出来ますよ。やるなって言ったら出来ません。

 暫く仲良しこよしでしょ? “何時も通りだなー”って思ったら優先順位つけるんで、それまでは大人しくしときますね」

アレウス :

「それで構わん。
 話が長くて眠いと思ったら昨日食ったステーキの事でも思い返しておけ」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「人斬った後にお肉出すのけっこうノンデリ多いですよねウチ」

アレウス :
「家畜と人は違うからな」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「(死体にした場合は)喋るか喋らないかの違いなのに?」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「とりあえず合点承知です。アレですよね、社会見学」

アレウス :
「そりゃ綺麗な表現だな。ちょうどいい、それでいこう」

SYSTEM :
 正直1/3見たことある顔なんで勉強になりませんが、と笑って、そこからは再び一言も喋らないお付きのお上りだ。

 彼女について特筆しておくことがあるとするなら。
 拾ったその時から、“できるか”という問いについては是非でなく「やります」としか答えなかったこと。

SYSTEM :
 本質的に人の生死に優劣をつけておらず、殺人に好悪もない。衝動的な部分もない。
 ほっとけば余裕で迷子になる好奇心と、即断即決の機械の合理性がラグなく切り替わる。

 どこぞで拾ったその日暮らしの“なんでもしてきた”鉄砲玉に、グリーンカラーの少年兵をあなたがなぞったのかどうかは定かでない。 

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 …ローマの都市郊外に広がるフォツェーネの沿岸部等、イタリアの玄関口や流通経路を主な根城とするFHセル。
 組織名はヒンドゥー教の「暴力(ヒンサー)」と「賛歌(リグ)」を組み合わせた造語であり、
 直訳するならば「暴力賛歌」。

 レネゲイド解放からFHの暗躍が表面化する頃にボスが代替わりし、それ以降、その元締めが変わったことはない。

SYSTEM :
 5年ぶりの馴染みの顔。伸びた背丈と旅の成果は、あなたを見上げる側から同じ目線にしたが、そいつの面持ちや装いは相変わらずだった。
.. アスラ
 “赤の鬼人”。
 箔付けがどうのと言って、本名で呼ぶのを常々禁じて来た、ストリート・ギャングの伝説だ。

"赤の鬼人” :
「デカくなったものじゃないか。
 どっちで呼んでほしい? え?」

アレウス :
「よしてくれボス。
 通り名のうち片方は不本意だ、引退した爺さんから勝手に押し付けられたものなのさ」

アレウス :
「そうだな……これが俺の出戻りだったり、あんたとの盃直しなら昔のように呼んでくれたって構わねえが。
 今回は仕事だ……どう呼べばいいのかは、あんたよくわかってるんじゃないのか?」

"赤の鬼人” :
「ふん…おまえも一端の大将面をするようになったというコトのようだな。“死滅天隕”」

"赤の鬼人” :
「不本意の方も、戦場の死神にその名はケレン味が利く。使えるものなら使ってしまえ───。

 等と、今日のおれは確かにおまえにヘマの説教をしに来たわけでも、その上下関係を理解らせるわけでもないな」

アレウス :
「勉強会かと思ったよ。ずいぶん昔の話だ」

SYSTEM :
 ふん、と鼻を鳴らした男が手元の人斬り包丁を一瞥。
 包丁、無言で会釈に留める。

 アレで居て“厭な予感”には鋭敏な娘だ。もしも赤の鬼人の考えが騙し討ちや他意のみであったなら別だが、その様子でもないということだろう。

"赤の鬼人” :
「懐かしかろう。アレッサンドロとミラノ…この辺りが特に覚えが悪かった。おまえの年上のクセしてな」

"赤の鬼人” :
「順を追って伝える。
 X月X日、今から丁度2日後てトコか………。

 連中の縄張りでその筋向けのオークションやるって話でな。
 そこに紛れて到着する予定のブツの目録に、例の品があった」

SYSTEM :
     アウラ・ドミナ
 連中とは“貴人の庭”を指す。
 であれば彼らの縄張りというと、パリオリ/ローマではそれなりに名高い高級住宅街の地域だ。

アレウス :
「金持ちの道楽にしちゃ……えらく気が立ってるな。
 それこそ、金を入れたやつらが全員感電死しそうな」

"赤の鬼人” :
「ああ。これ見よがしに運んでくれる予定のモノでな、別のハイエナも俄に活気付いた。
 火付けをしたのが連中でもそれ以外でも関係はない、人様の鼻先で踊る阿呆になるツケを払って貰うワケだが…」

"赤の鬼人” :
「その遺産…。『ケラウノス』。
 こいつに用がないこともないが、」

SYSTEM :
 その言い草から、彼が欲しいのは口実の方だろう。暴れる都合、また、長年立場としてはお互いがお互いの”縄張り”の邪魔になる"貴人の庭”の始末に丁度いいと踏んだわけだ。

 男の口調が、バカ正直に金持ちの道楽に興じる気がまったくないことを隠そうともしないのはその辺りだろう。

アレウス :
「……また随分と派手な火種を選んだな。
 ハイエナだけじゃない、俺達の当面の敵も、恐らくそれを知って何か手を打ってくるんじゃあないか?」

 例えば、秩序の集団……とか。
 とは続けなかった。
 この地での彼らの規模の縮小ぶりは流石に憶えているからだ。

"赤の鬼人” :
「デスゲェムを安全席から眺めるよーなのはいるが、鼻薬も意に介さず突っ込むような勇者諸君はローマから死滅して久しいんだ。
 れんちゅう
 "貴人の庭”の軸線は近いが、あの小娘はそんな勇者諸君を好いていないようだしな…」

SYSTEM :
 派手な戦にすると言っただろう…と、口にする男にとって、その豪華な優勝トロフィーに何の価値もないわけではないだろうが、それ以上に彼は件の集団を気にも留めていない。

 あるいは、気に留めるよりも優先する事柄でもあるのか。

アレウス :
「そいつは素敵な花火が上がりそうだ、同類しかいないんだからな」

アレウス :
「だがボス、戦争は最終的な目的を達成して初めて終結を宣言することが出来る。
 シャカに説法というヤツだろうがな……だが"貴人の庭”に吹っ掛けるんだったら、それこそ件の遺物が無くても出来たはずだ。
 遺産が絡むとロクなことがない……うちの部下もそれで手痛い目にあったもんでね」

アレウス :
「その辺のリスクリターンの勘定は、既に済んでいるとみて良いか?」

"赤の鬼人” :
「フー…利巧な回答だ。順を追う前に、」

"赤の鬼人” :
「そいつは軍人のアタマでギャングのアタマじゃあない。『殺す』と決めた相手に『勝てるから殺します』と宣言するのか?」

SYSTEM :
 リスクリターンを勘定しているのかどうかを問うた時に、彼は頭ごなしに否定こそしなかったが、信条を先に告げることを優先した。

 元々そういう類の人間だ。何も考えず我武者羅に殴り抜け、"強い”を叩きつけて"弱い”を踏み躙って来た。
 それで、野良犬から此処まで来た人間だ。

SYSTEM :
 しかしそれが…。

 同業への要請ともなると確かに別だ。
 個人の理由をブチ撒けたのは前置きのようなものだろう。己の変わらなさを示すかのように。

"赤の鬼人” :
 . ジ ャ ハ ー ダ
「“御手翳す解放者”………。
 アーキルってガキが、下水を這い回るドブネズミのように手を広げている。
 こいつがどうにも器用で賢しい男だ。一つなら”吹っ掛ける”火種にこんなものは要らんがね…」

"赤の鬼人” :
「そいつだけじゃない。元々イタリアじゃ同業も多いんだ。
 ギルドの手だって混じっている。おまけに、いちいちつけあがる」

"赤の鬼人” :
「だから…うっとうしい瘤の切除が手遅れになる前にこれを機に一掃しようってコトだ。
 何の理由もなくあれこれ声を掛けるほど耄碌するには、まだ早いんでな」

SYSTEM :
 自分にとっての見返りはローマの”同業”のうち根付いた瘤の始末だと語る男の態度と、リスクとして踏まえるべき”二つ”の相手を、彼は必要以上に問題にはしていないようだ。

アレウス :
「“御手翳す解放者”……」

 訝しむような表情。
 対局された勢力図に加わったもう一つの台風がコレか。
 だが何か思うところか、あるいは引っかかることがあったのか、その組織の名を今一度復唱する。

アレウス :

「くっくっ……あんたの所から抜け出て、正規軍に世話になっていたら、少し牙が抜かれてしまったようでな。
 勝てない喧嘩ってのにはどうしても手を伸ばしかねる……必ず勝てるとなりゃ別だが」

アレウス :
「確かに内外にもあんたの力を見せつけるいい好機だ。
 腫瘍を放置すると膿が溜まる……更にそれを放置すれば致命傷になる。
 そろそろ手術のし時というところか」

アレウス :

 客人用のグラスに口を付ける。
 それはある意味、差し出されたものに手を付けるという信頼を示す行為だ。

「あんたの腹は大体把握した。
 我々ファントムストークスとしては、正式に依頼を貰っている立場だ……そこを確認しなければ、出来る仕事も出来なくなるんでね」

"赤の鬼人” :
「ああ…気にするな。その利巧さはつい最近から付き合い始めたばかりだ。
 まさかおまえまでそっちに片足突っ込むほど流行りだったとは思わなかったがな」

SYSTEM :
 いっぱしの大将面と煽てられた一つで気を良くするような性分でもないことを知っているのか、男の様子に少なくとも言質だの何だの、と言った賢しさは見受けられない。

 手術のし時、という部分に頷いて、男はまた鼻を鳴らした。

アレウス :
「俺は内戦の中で神を信じたクチでね……そっちの方が実は先に呑んだ水なのさ」

"赤の鬼人” :
「で、呑み比べた感想がソレというコトか」

"赤の鬼人” :
「その仕事に差し掛かりもしようから、いちいち顎で使いはせん、裁量権は与えるつもりだが…。

 そういう育ち方をしたなら、やはりおまえで文句はなさそーだ」

アレウス :
「試験は合格か。クリストフォロの兄貴に殴られながら勉強した甲斐があったってもんだ」

"赤の鬼人” :
「…ふん…やつから学ぶのは度胸が最初で最後だったろう」

"赤の鬼人” :
「まあいい、それでだな。"ついで”で構わんが、他の跳ね返りどもの目付と束ねをやって貰いたい。
 おまえ以外にも声を掛けたのが大小含めて…幾つかいてな」

アレウス :
「ほう……?」

"赤の鬼人” :
    ベルヴェデーレ
「その中に“七花胡”というのがいる。その最中で通した男でな。
 中国じゃ名の知れていた黒社会上がりのセルにいたやつだ」

"赤の鬼人” :
「目は確かで采配も確か、マフィアとは言うが軍人将棋のケが強い合理性…。
 それでいて、間違いなく理由のために人を足蹴にする性根の持ち主。

 おまえの言う水と十中八九気の合うやつであるのも含めて、
   ・・・・・・・
 まァ文句のないやつだが………」

SYSTEM :
 曰く…。
 あなたより先に"伝手”を伝ってやって来た、所謂『使う人間』の話だが。
 少なくとも"赤の鬼人”にとって、そこには含みがある。

アレウス :
「黒社会の出か……連中は俺達以上にギブアンドテイクだ。
 中国人を名乗るヤツにあまりいい思い出はないが、腕が確かなヤツが多いのも事実だな」

アレウス :
「それで?
 実務に文句はないが──そいつの差し出してきた酒に、濁りでもあったか」

“逢魔狩り”三草由芽 :
 彼女の剣は剣っていうかサイバネでしたね

“逢魔狩り”三草由芽 :
 次会う時は先手つけるといいなあ…

アレウス :
 張り合ってんのか……? 

SYSTEM :
 何も喋らない後ろの人斬り包丁は、その話の少し前とは打って変わって、露骨かつ暢気に表情に私情を載せた。
 余談であるが件の中国人に"撒かれた”ことをわりと根に持っているらしい。

SYSTEM :
 は、ともかく…。

"赤の鬼人” :
 パーシェンコーハイ
「《八仙過海》…火遊びのやり過ぎで襤褸出して、小娘ごと沈没したってんで久しい場所の生き残りだそうだがね。

 腕は確かだ、見ず知らずの火遊び小僧を”ああ”も出来るのも含めて役に立つ…」

"赤の鬼人” :
「しかし、だ」

"赤の鬼人” :
 ・・・・・・
「濁りがない酒だから言ったのさ」

SYSTEM :
 ア ス ラ
“赤の鬼人”は冷笑気味に、ロクでなしのセオリーを語った。そう、即ち。

アレウス :
「……ハ、まさか清酒の類か?」

"赤の鬼人” :
「文句のないヤツというのが、おまえの手元で見つかったことはあるか? “死滅天隕”よ」

アレウス :
「無いな。全員問題児だ……俺を含めてな」

SYSTEM :
 背後からなんとなく抗議の視線。

SYSTEM :
 …縦の繋がりは暴力のみ。力の切れ目が縁の切れ目。
 横の繋がりは利害のみ。金の切れ目が縁の切れ目。

 それが平気で罷り通るのが旧いFHであり、今もそうだ。

SYSTEM :
 極道、ギャング、マフィア…仁義の言葉で着飾っても、何処かに必ず根付いている暴力主義を受け継いだマフィア上がりの男が"赤の鬼人”である。
 しかも彼は、余所者には聊かに懐疑的だ。黒社会上がりの訓練された合理性を持つ彼は、信用が置けるが信頼のできる人間とは言い切れない、ということだろう。

 いつものこと、と言えばそれまでである。

"赤の鬼人” :
「短い間に尻尾を出さなきゃそれでいい。実際、一月未満だが役に立っている。
 似たようなのもいるもんで、おれが二人目を訝しみたいだけということだな…」

アレウス :
「疑い出すとキリがないからな」

アレウス :
「今更の話だが……」

"赤の鬼人” :
「今更が"手遅れ”になる前に言っておけ」

アレウス :
「俺達の世界において、"所属"なんてものは皮のようなものだ。
 詐称しようと思えば幾らでもできるうえ、それを完璧にする手段なんてものはごろごろ転がっている……」

アレウス :
「せいぜい、イタリアの国土に合わぬ濁り酒であることを祈ろう。
 そうでなかったら、吐かねばならんからな」

"赤の鬼人” :
「発つ鳥なら後は濁さんようにしておけよ。おれにもう一度掃除をさせたいなら別だが」

"赤の鬼人” :
「ともかく…、そういうことだ。こいつとこいつのチームとは上手く付き合え。
 背から鉛玉ブチ込まれん限りは味方は味方だ。教えたな?」

アレウス :
「ああ、教わったさ」

SYSTEM :
 ───なお。FHにとって味方とは、一線を越えても痛まないクソ野郎にとっては、
 自分の欲望に都合のいいやつ、という意味を持つ。

 誤解ないように言うと、彼はそっちだ。

アレウス :
「なにしろうちは背中を撃たれたら即座に撃ち返す主義でね。
 それが分かっていればなにもしないし、なにも出来んさ」

アレウス :
「立場だけなら俺とソイツは同じものだ。
 今のは俺に対する忠告としても受け取っておくとしよう」

アレウス :
「……ボス、続きを聞く前に先に聞いておきたいことがある。
 構わないか?」

"赤の鬼人” :
「そのへんの是非はさっき言った通りだ」

SYSTEM :
 曰く、今更が"手遅れ”になる前に。

アレウス :
「ああ、そうだったな」

アレウス :
「……俺は“貴人の庭”とは多少縁がある。
 引退した爺様に多少の恩義があるのは、ボスも知っての通りだ」

アレウス :
「だがもう一つの台風について知っておきたい。
 “御手翳す解放者”……そのアーキルってヤツの顔は、知ってるのか?」

"赤の鬼人” :
「引退したクラウスの爺が表舞台に出てくることは恐らく"ない”。連中面構えがだいぶ変わったもんでな…」

"赤の鬼人” :
「………だがそっちか。

 連中はほぼオーヴァードだ、しかも夢見がちな小僧小娘の。
 それを纏める溝鼠の長は人をよく”たらす”ようでな、平気で顔と素性を曝してくれるよーなヤツではないというわけだが…」

"赤の鬼人” :
「ヤツは遺産継承者だと吹聴している。
  トリスタン
 ”黄の希人”なんぞ名乗る小僧が、無駄無しの弓を自慢げに掲げて、逸れ者と跳ね返りどもを合わせて肩組んでスキップしているのさ」

アレウス :
「ま、ここで顔を知るのは高望み過ぎたと思っているさ。
 まるで当てつけみたいな名乗り方、鬱陶しいにしてもほどがありそうだな」

アレウス :
「そのフカシが真実かどうかも確かめる必要があるな。
 いずれ戦うことになるとはいえ、今回の件でその自称は意味が違ってくる」

"赤の鬼人” :
「ああ。他に伝え聞いている話は………。
 スラブの出の育ちだってことだ」

SYSTEM :
 容貌の大まかな様子以上ではなく、明確に顔を伺わせるような者でもないが、"小僧”と呼ぶ辺り少なくともトリスタンの名を騙る麗人だとかではないらしい。

 アレウスの言葉通り、それはずいぶんと厚い化けの皮でもあるようだ。

アレウス :
「……なんとなくの段階だが、情報提供に感謝しようボス」

アレウス :
「素性の知れぬ台風が一つ……、こいつは多少の対策くらいだと容易に吹き飛ばされてしまうな。
 そうなると土台の質がモノをいう事になるんだが……」

アレウス :
「その“七花胡”が最後でもあるまい。
 あれだけラインを下げているんだ、玉石混合と言えど、石ばかりというわけでもないんだろう?」

"赤の鬼人” :
「ああ。団体様で来たようなおまえや“七花胡”も居れば…。
 お一人様で来たようなやつも居てな…」

SYSTEM :
 仮にも二つ分のセルと足して有象無象を殺ろう、ということなのか、確かにアレウスの言葉通り彼は必要以上にラインを下げている。
 石の率は決して低くはない。ここではない何処かで"それ”が諍いを起こし、1名が何ら価値のない死を遂げたように。

 …しかしそれはそれとして。何も一山いくらの捨て駒を揃えるために散財癖を発揮したわけでもない。

SYSTEM :

 無機質なノック音が二回。

『入れ』の声で応じる赤の鬼人が、あごでしゃくって、すぐに開くだろう扉の向こう側にいるものを指した。

"赤の鬼人” :
..マーセナリー
「傭兵というやつでな…」

"赤の鬼人” :
「其方の領分は戦場だったかどーかまでは知らんが…。この名を聞いたことはあるか?」

SYSTEM :

 ───闘争代行人。
 
 数秒後に開く扉と共に視界の端から中央へやって来る一人。

 アジア人の容貌をした(おそらく)成人したての身長と、そのわりには成熟とは遠い雰囲気の鋭さをまとう女性をおそらく指して、“赤の鬼人”はこう言った。

"赤の鬼人” :
「こいつをおまえに預ける」

SYSTEM :
 ───のち。

 まさに渦中となるものを追う、
 女の名であった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :

 シーンが終了しました。
 ロイスの取得等ございますか?

アレウス :
そうだな……。

アレウス :
いや、今はやめておこう。
この一件、引き寄せられる星が多すぎる予感がするからな。

GM :
まずは様子見。慌てる坊主はなんとやら…ということですね?

GM :
了解致しました。

アレウス :
ああ、それで構わん。


・シーン3「Fortuna-レムリア」

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。

SYSTEM :


【シーン:Fortuna-レムリア】

 登場PC:夏瑞珂
 登場侵蝕:なし

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

        【 Now Loading... 】
. ストームブリンガー
『“帯来风暴”』。夏瑞珂。
 仕事を択ばず、情報や物資を報酬に求め、戦地から戦地へと渡り歩く闘争代行人。
 薄笑む貌は一見すると柔和だが、その胸中には自由に焦がれる黒い炎が燻っている。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 12/24の某年。
 雪降る街並みが、汚れた窓の先に広がっている。

SYSTEM :

 街征く店のラジオからは、ざりざりとジャミング音を立てながら古臭いクリスマスソングが垂れ流されている。
 そう。今はクリスマスを控えている。雪化粧する街を彩るように。

SYSTEM :
            ・
 だからその日は殊更に、夢を見ているようだった。

SYSTEM :
 行く場所などない。
 郵便物の二回に一回は催促状で、アルコールの臭いを漂わせた父親は夜遅くにしか帰ってこない。

 寝てる子供を叩き起こしては、土台から壊れた情緒が不平不満を叫んでいる。
 子供が自分の思い通りと違うことをした時は、男は呵責なく(あっても)暴力に訴えた。

男の声 :

「瑞珂! 瑞珂、どこにいる!」

SYSTEM :
 どこにも居場所のない父親は、職場では蔑まれる“ぐず”だ。

 いや、最初はそうではなかったが、連日連日の疲弊は彼からあらゆるものを欠けさせた。

SYSTEM :
 環から孤立する切欠は些細なミス。そこから雪だるまのように積み重なること数年以上。
 この父親から、妻は出来る男のもとへ逃げ、そちらに子供を求め。
 切り崩していくわずかばかりの蓄えの中で、拠所となる安酒に彼はすっかり依存して、ここまで転げ落ちた。

男の声 :

「なんだその目は………」

男の声 :

「くそ───くそ!」

男の声 :

「どうせお前は、こんな生活してる理由は俺のせいだって思ってんだろ!
 あいつが男を作って逃げたのも、クリスマスに祝いの一つすら出来ねえのも!」

男の声 :

「だがな、俺だって苦労してんだよ!」 

SYSTEM :

 …そうとも、ここ以外に自尊心を満たす場所は、この男にない。
 ましてやその子供には尚のことだ。

SYSTEM :

 家の外では、その子供は「有色人種の外国人」だ。
 仲間外れならまだいい方。“何をやってもいい”という優越感にも似た免罪符が、
 理性を成熟させていないティーンエイジャーたちに、下劣な自由を与えるのに時間はかからなかった。

SYSTEM :

 …何が悪かったのか。
              モンキー
 不法移民の二世。有色人種の黄色猿だから?
 父親が自分の女一人抱き切れない甲斐性なしだから?
 あるいはティーンエイジャーのひとりにあなたが強気な態度を取ったから?

 虐げられる要素は山ほどあった。そのどれも、非と呼ぶものはなかっただろう。

SYSTEM :

 気力などあろうはずがない。立ち上がる気力も。何もかも。

 じっと蹲って、耐えて、父親という名の同居人がまだ欠片は残っている罪悪感を、翌日アルコールと共に流し切っていく涙と共に覚えて、その振り上げたこぶしを降ろすまで。

SYSTEM :

 この先のことなど分かるはずがない。
 クリスマスソングが、我が家から流れたことは一度もなかったからだ。

夏瑞珂 :
 夜毎、震えて眠りにつく。
 吹きつける隙間風に凍えて。
 青黒く腫れあがった足首の痛みに耐えかねて。

 それから……

     おとうさん
「……はい、 爸爸 」

 決まって訪れる、恐怖の予兆に。

夏瑞珂 :
 自由の国に逃れ、馴染もうとしたはずのひとは、知らない言葉で呼ぶことを強制した。
 いつだったか。たしか、そう。母がいなくなった頃。

 変わり果てた日々が、変わらず続く。
 だから祝祭の日も、何も変わらない。

 飾りつけられた街はわたしの手の届かない異世界で、変わったことと言えば、少年たちの悪罵と悪戯がホリデーシーズンに模様替えしたくらい。

夏瑞珂 :
 軋む階段を降りて、膝を折る。
 怯えもしない。泣きもしない。やめてと声を枯らしても意味がないと学んでいたから。
 膝の上に乗せた手だけが小刻みに震えている。

夏瑞珂 :
 ばきっ。

 ──感覚を遠ざける。
 痛みは鈍く、罵声は薄く。体から力が抜けて、震えがおさまる。

夏瑞珂 :
 どかっ。

 ──意識を遠ざける。
 ボールみたいに転がった自分を、もう一人のわたしが眺めている。

夏瑞珂 :
 ごきっ。

「ぎっ」

 鈍い音がして、何かが壊れたと知覚/自覚する。
 とたんに感覚が、意識が、急激に追いついてきた。必死に遠ざけたものたちが、鮮明な現実となって襲いかかってくる。

夏瑞珂 :
「ぅ──うう、ぅうう──」

 痛い。痛い痛い痛い痛い痛い!
 でも泣き喚けばもっとひどくなるから、ひどくなると知っていたから、手首に噛みついて声をこらえる。もう片方の手は、震えながら頭を庇っていた。

夏瑞珂 :
 先のことなんて分からない。この先が続くのかも分からない。

 まだ死んでいないだけのような日々が、ずっと続いている。──続いていく? こんなものが、生きているかぎり?

夏瑞珂 :
 漏れ聞こえるクリスマスソングががりがりと心を削るから、
 腕に突き立てた歯までもが、がじがじとはげしくなる。

夏瑞珂 :
 何が悪かったのか。
 ……わからない。
 この先どうなるのか。
 ……わからない。

夏瑞珂 :
 痛む全身はもう起き上がれなくて、
 挫けた心ももう草臥れきっていて、

 床の冷たさが、流れた血の温かさが、泣きたくなるくらい惨めで──

 このまま、ぐらつく意識を手放したって──

男の声 :

「…なんだ…泣いているのか」

男の声 :

「泣いて───」

男の声 :

「───泣くんじゃねぇッ!」 

男の声 :

「俺だって───
 俺だって…なあッ!」

SYSTEM :

 加害者が被害者のように喚き散らした。
 半分は事実であり、その後悔は明日に徒労という名の循環を形創る。
 ボールのように転がった被害者のそのまた被害者(あなた)が、すっかり身を打ち付け慣れた家財道具の近くで身を横たわらせている中で。
 おそらく彼は、自分がなぜ怒っているのかさえ、後にしてみれば「しょうもない」ことだと理解って、より袋小路に行くのだ。

 もうあなたが覚えてもいない祖父母の願いは、そんな矮小さとは正反対の名前を、この大陸育ちの男につけていた。

SYSTEM :

 この父親最後の罪悪感か、
 彼はアメリカでもっとも易い“幸福”に逃げることに歯止めをかけていたが、
 それさえも時間の問題に過ぎない。

 幸福の不平等に歯を食いしばる代わりに、がじがじと突き立てるさまを嘲るように怒る男の言葉は、普段こうしてあなたが大人しくしているなら、最長1時間、最短10分ほどで沈静化し。
 そのあとは、まるで自分が悪魔に取りつかれていたことを詫びるかのように殊勝な態度になると相場が決まっていた。

 この先はそうなる。だが、この先の更に先は、いつも分からないし、分かるわけにはいかない。
 …賑やかな声の中であなたを抱きとめる暖かささえ、願ったものとはかけ離れている。

SYSTEM :
 窓の中で明滅する明かりと華やいだ声たちは、
 続いて行く明日を思って、雪景色に拙い可能性を描いては有難がっている。
 あなたはそれを見るか聞くしかなかった。昨日も今日も。だが………。

SYSTEM :

 ………だがその時。

SYSTEM :
 遠のく意識の中で、

SYSTEM :
 矢庭に鬱陶しいクリスマスソングが消えた。

  :


 恐れろ。
 恐れろ。
 世界の真実を知らしめて、原初の闘争に興じろ。
 
 立ち上がれ。
 己を開放しろ。


SYSTEM :

 声にならない衝動を、掻き立てる狂奔が。

 世界の誰よりも自由で、晴れがましい笑い声が。
 消えたクリスマスソングの代わりに、ふと聞こえた。

SYSTEM :
 ───この時、何を聞いたのか。具体的には判るまい。
 だが一つだけ確かなことは分かる。

SYSTEM :
 ───あなたは、もっと自由でいてよかったのだ、ということ。

SYSTEM :
 ぼやける視界の中、偶さか機嫌の悪かった、
 引鉄を引き切れなかった男が殴りかかって来るのが見えた。

男の声 :

「今日という今日は───」

SYSTEM :
 ・・・・・・
 何が出来るか?

 目の覚めるような鮮明な答えを、
 あなたは知ってしまっているはずだ。

夏瑞珂 :
「ぅ…………」

 喉は引きつったままなのに、瞼が重い。いや、全身が重たいのだ。お決まりの慰めを受け入れることさえ、もはや億劫だった。
 父自身の後悔を慰撫しているに過ぎない殊勝さを、跳ね除ければどうなるか知っているのに。

夏瑞珂 :
 ふいに耳障りなクリスマスソングが途絶えた。代わりに、何かを聞いた。そう。聞いていた。そして刻まれた。まるで夢を見ているようだ。ひどい夢を。

夏瑞珂 :
 ……ひどい?

 それは嘘だ。だって、こんなにも高鳴っている。恐怖以外でも心臓は弾むのだと、ずっと忘れていた心が高揚している。

夏瑞珂 :
 ああ──きっと。
 ・
 彼があまりに愉しそうに嗤うから、わたしも、つられて可笑しくなってしまったに違いない。

夏瑞珂 :
「あ……れ」

 つい先ほどまで、惨めに転がっていた。立ち上がれないはずの足で、ゆっくりと起き上がる。

 目の前には、振りかぶられた拳。
 拳の前には、立ちつくした自分。

夏瑞珂 :
 ──わかる。今なら、わかる。
 あの時、何を聞かされたのか。具体的には判らくても。

夏瑞珂 :
 ──でも、わかったのだ。この瞬間。
 生まれながらにして閉ざされていたと思った世界が、そのとき開けた。いや、拓いていいのだ。わたしが。自分の手で。

夏瑞珂 :
「今日という今日は───」

 声が、かさなった。切れた口の端がにいと吊り上がる。

夏瑞珂 :
「──自由に、なろう」

 立ち上がれ。
 己を開放しろ。
 声にならない衝動を、掻き立てる狂奔が。

 今宵、嵐を解き放った。

夏瑞珂 :
 風が、室内に吹き荒れた。風はわたしだった。わたしを中心に吹き荒れているのに、わたし自身の手足よりも自由に動いた。
 うねる風の束が、蜘蛛の巣を払うように眼前の男を跳ね除けた。それでも収まりのつかない風は、安普請の壁をブチ抜いて、わたしたちに寒空をもたらした。

SYSTEM :
        ヘンジ
 ──はじめての暴力が返されていた。

SYSTEM :

 先の見えない閉塞感と、なぜを問う心が。
 暴力的な喜びといっしょに、
 根こそぎ、吹き抜ける嵐と一緒にかなたへ吹き散らされる音がした。

男の声 :

「っ、が、ごぼ───」

SYSTEM :

 ───あなたは父親と、父親が築き上げた小さな世界の名残を吹っ飛ばした。
 とても容易く。
 
 それで、たまたまガスの元締めを忘れていた部分に家財の何かがあたって、聖夜の生誕祭にはちょうど良い塩梅で、祝いの火が上がる。

SYSTEM :

 火はすぐに燃え広がったが、あらゆる意味で幸いなことに。
 痛みに傷み切った壁も天井も壊すにはあまりに易かったから、気温としては丁度いい。

 その中で“なぜ”誰かが疑問に思わないのかさえ、あなたにとってはなんでもよかった。

SYSTEM :

 父親が築き上げた小さな世界がガラクタに紛れていく。

 いつも座っていた椅子、ぼろぼろになるにつれて笑顔の少なくなっていったソファーも。
 父が使うことはもう全くなく、あなたのパーソナルスペースめいてすらあったダイニングも。
 母がいたころに買い与え、父が壊さなかったぬいぐるみと、その近くにぽつりと残る結婚指輪も。

SYSTEM :

 聞き慣れるだけ聞き慣れた英語の母の名前と、あなたの名前。
 いま
 最期に愛し切れなかったものを未練たらしく残してた、黄ばんだ走り書きと、殆どばらばらのアルバム。

 父の写真を示すページを開いて、ごろごろと転がる父の近くに落っこちた。

SYSTEM :
シア・ハオフェン
 夏浩風───。

 何もかも受け入れる大陸の強い風のような男と祖父母に願われて“そのまま”の名を貰ったひと。
 それが吹く先を間違えるまでは、きっと“こんな”でなかったろう男の名前だが、それが吹き止んで久しく、最後にはあなたの下で地を這っている。

男の声 :

「───げ、ェッ………がふ…」

男の声 :

「たっ、たのむ、待ってくれ………」

SYSTEM :

 あなたは父親だったものが、情けなく、あわれっぽく、あなたに縋りつくさまをみた。

男の声 :

「瑞珂………パパを、………
 捨てないで、くれぇ………」

SYSTEM :

 なんて無様で、なんて勝手で、なんて───。

夏瑞珂 :
 小さな牙城が崩れていく。藁の家みたいな軽さ。木の枝らしい燃えやすさ。煉瓦だって吹き飛ばせる風はごうごうと唸り続けている。

夏瑞珂 :
 思い出らしきものが潰れ、焼かれていても、原初に猛る心にはかなしく映らない。
 ただし、今にもばらけそうな紙の束は、すこしだけ目を引いた。

夏瑞珂 :
 足の置き場に、ちょうど良さそうだったから。

夏瑞珂 :
「なんだ、その目は」

 笑みが浮かんだ。酷薄な、それでいて愉しそうな笑顔だった。

夏瑞珂 :
「泣いているのか」

 あんなに怖ろしかったパパが、足元で情けなく這い蹲っている姿に途方もない喜びを抱いた。

夏瑞珂 :
「泣くんじゃねえ」

 だから否定する。哀訴を、尊厳を、思い出を、徹底的に貶め、暴力で塗り潰す。やり方は知っていた。そうされてきた。ずっと。

夏瑞珂 :
 FUCK
「クソが……!」

 蹲るとどうなるか。背中だ。丸くなった背中に振り下ろしていた。そうでしょう、パパ?

 振り下ろす。蹴り上げる。わたしの足は風を纏って、動かすたびに透明な刃が血飛沫を舞わせた。渦巻く風が血を霧散させるから、露出した骨を見てやっと、それがちゃんと壊れていると分かった。

夏瑞珂 :
「ああ、ごめん、ごめんよ、でも、アハ、俺だって、俺だってつらいんだ……アハハハハ!」

 こらえきれなくなった笑いが溢れて、泣き疲れた喉を痺れさせた。甘い痺れだった。
 涙がひとつぶ目尻から落ちて、きっと、それはたくさん笑ったからに違いなかった。

夏瑞珂 :
「あたたかくして寝るんだよ」

 いつか。いつだったか。思い出せないほど昔。
 そうやって、寝かしつけてくれたっけ。

 風が炎を掻き抱くように流れて、生きているか死んでいるかも分からないものに纏わりついた。おやすみのキスをして、毛布をかけてあげるみたいに。

SYSTEM :
 …重なっていた全て。
 自由が産声を上げた時、その音で「がらがら」と崩れ去っていった。
 ジユウ
 尊厳を取り戻すこと、その最も直線的で、爽快で、痛烈なことは一つしかない。
 なぞるかたちを報復と呼ぶにしたって、この日風を通り越して嵐の娘になったあなたに、悪意と呼ぶほどの悪意はなかった。

SYSTEM :

 はじめてふるった権利の、

 ───なんて心地よいことだろう。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 …いつも窓の外、他の家からこの時期になると聞こえるクリスマスソングは、この日はあれきり、しんと静まり返っていた。
 夜が更けても二度と目覚めないものを置いて、無意識が次にあなたを導く。

SYSTEM :

 他の家───そう、他の家。
 いつも何をするにも気にも留め、足を引き、夜出歩けば怒鳴り散らす父親が阻んでいたが。
 こうして夜に出歩くというのは、小さな頃の冒険以来だった。

 だがその小さな頃の冒険と比較して、街からは硝煙と血の臭いだけがした。

SYSTEM :

 雪に混じって滲む赤色を視線でたどれば、そこに転がった肉の塊がいくつもあった。
 うち一つを、鉄の筒のような頭をしたやつが、本当に執拗に、執拗に、欠片も残さず撃ち抜いている。 
 じゃりじゃりと砂を踏むような雑音は、それの笑い声だった。

SYSTEM :

 別の鉄の筒のような頭をしたものが、抱きしめるように子供を殺していた。
 横には既に冷たくなった子供がいて、子供の上に覆い被さった大の大人がいる。
 子供は、銃弾の即死を免れたが、喪われる体温と共に、聖夜が与えてくれる暖かさの蚊帳の外になって死んでいた。 

SYSTEM :

 お祭りにしては、とても賑やかで、穏やかにならない…。
 そんな音だけがずっと響いていた。
 聖夜の祭と言えば、自分の小さなころの思い出は、こんな感じではなかっただろう。

SYSTEM :

 だが、そのころはまだいた友達も、今はいない。
 みんな、声の大きな“免罪符”を手に入れたものに靡いていった。

SYSTEM :



 ───ああ目の前に、丁度いるではないか。

  :

「い”───いたい、痛い痛いよォ!
 母さん 母さん…!」

  :

「ま、マーク、大丈夫? 肩貸すよ、ほら…」

SYSTEM :

 その、いちばん声の大きかった少年だ。
 近くにいた“とりまき”が二人くらい。そいつを気遣うようにしゃがみ込んでいて。
 仲の良かった家族同士なのだろう者達のうち、その子供のものでない家族が、とっくに先へ逃げている。

  :

「急ぎなさい! 立ち止まらないで! 
 ───あ、」

SYSTEM :

 ティーンエイジャー同士の心配を、命の危機に諫めようとした、少年のではない家族が。
 あなたに気付いた。

 あなたが彼女には、どう見えていたのだろう?

  :

「あ、あ、ああ、あぁぁ、」

  :
 ・・ ・・
「ばけ、もの───」

SYSTEM :

 あなたを見てそう言った。
 それとも後ろにいたものにだろうか?

 どちらでもいい。なんという幸運だろうか。
 丁度、まとめている。

 追っていけば、いや、この辺りを探れば、残りもすぐ見つかるだろう。

SYSTEM :

 そうだ。

 そんな言葉を黙って聞いてやるのも、今日限りだ。

夏瑞珂 :
 裸足のまま、雪道を踊るように歩く。消えたジングルベルを代わりに口ずさんで、ああ、ひどく気分がいい。夢を見ているよう。

夏瑞珂 :
 夜の街は煙にくすみ、銃声が絶えなかった。あちこちにへばりついたミンチから、血が濃く薫っている。

 徘徊するガンヘッドはツリーから落ちたオーナメントなのだろう。今日は聖夜。祝いの日。誰も彼もはしゃぎたがる。

夏瑞珂 :
 疑問を懐くわたしが、わたしの中からどんどん消えていく。あとには声が残った。あの嗤い声が。

夏瑞珂 :
 恐れろ。
 恐れろ。
 胸の奥でリフレインが響く。

夏瑞珂 :
「ばけもの……?」

 ああ、それはいい。化け物は暴れるものだ。怪物は脅かすものだ。決して、決して、その立場が逆になることは──ない。

 たっぷり熱を含んだ呟きが、白く染まる。

夏瑞珂 :
 彼らの視界から、わたしの姿がかき消えた。たったいま吹き荒び、大型トラックめいて少年たちを微塵に打ち砕いた暴風がわたしだった。

夏瑞珂 :
 衝突の瞬間、わたしという実体が姿を取り戻す。吹き飛んだ頭のひとつと目が合った。

 ……惜しいことをした。いちばん声の大きかった彼は、悲鳴もさぞ大きいに違いなかったのに。

夏瑞珂 :
「すてき。ホワイトクリスマスね」

 だって、ほら。あなたと、あなたの白いおともだちの手足が、胴体が、中身が。ちぎれて、ばらけて、雪みたいに降っている──

SYSTEM :

 近所のティーンエイジャーたちは根こそぎ、一部は自分が手を下すより先に、明日を見る権利を失っていた。
 腕を振るったか、望んだか。それで簡単に、吹っ飛んでいった。

 ところで、この国ではハリケーンだの強風だのによく名を付ける。
 無慈悲に無価値を量産し、一切の酌量をしない。悪意で吹き荒れるものではないもの。

 現れて、一切合切を吹き飛ばすものを───確かにばけもの、と呼ばない理由はなかった。

SYSTEM :

 白い雪に紛れてばらばらと散るからだ。そこから零れたもので赤い斑がつくさまは、
 数えるほどしか見たことのない苺のせのクリスマスケーキのよう。

 なぜ、を問うものはいなかった。
 目の前も、内側も。吹き直した風がすべてをさらって切り裂いた。

SYSTEM :

 ───やがてあなたが、どれくらいその手を血と雪で濡らしたのか。

 定かでない。

SYSTEM :

 だれかがせっせと積み上げて、そう願われるままに自尊心を満たしていた、
 やがて大きくなる小さな砦が。
 その連続する憎たらしいほど奇跡のような繋がりごと、ただの瞬き一つで消し飛ぶ。

 その嵐が、あまりにも痛快で……。
 その嵐こそが自分なのだという事実があったからだ。

SYSTEM :

 望んだことが望むままに届く、小さな頃に子供が味わう全能感。
 やがて世の中と折り合いをつけるべきものを、あなたは、この瞬間に味わっていた。

SYSTEM :

 だがこれでは足りない。
 あなた自身が、ふと思う。

SYSTEM :

 鉄の筒のかいぶつさえも捻り潰すほどソレに向いていた、あなた自身が…。
                    この
 次に吹っ飛ばすことを思い付いたものは、合衆国だった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 しかしそれは、なりたての嵐だ。

SYSTEM :

 闘争をかきたてる開拓時代の赤い風は絶える事なく吹き続けるが、
 あなた自身が、絶えることなく戦い続けられるわけではなかった。
 あなた自身に、そんな自覚があったかも怪しいけど。

SYSTEM :

 殆ど自分のものではない血でかすむ視界。だが“もっと”と際限なく求め続ける心。

SYSTEM :

 テンペスト
 嵐を征する者が、その幼気の嵐に気付くのは、
 丁度遠くにいた鉄の筒が、前のめりに倒れ込んだ時だった。

アレックス・ブリーズ :

「誰か! 誰か生きていないか!」

SYSTEM :

 声がする。
 糠喜びだと気付く五秒前の、歩いている“まともな”人影を見かけた男の声。

アレックス・ブリーズ :

    きみ
「そこの子供───」

SYSTEM :

 訓練課程を終えて卒業したばかりの、おぼっちゃまの士官。
 それが何の因果か超人の資格があったから、出世コースの形が変わってしまって。
 嵐と向かい合って三年、根性と人の縁だけで食らいついたような、生ぬるい男の声。

SYSTEM :
                シルフ
 夜灯の中に、見惚れるほど美しい風の精を。
 そう呼ぶにはあまりにも残酷で、悲惨なものを見つけたのだと気付いたのは彼ではなかった。

テンペスト隊員 :

「───馬鹿、よく見ろ!
  Bullshit
 くそったれ、あんな餓鬼までジャムってやがる!
 手前のクソをガキに押し付けて何の大義だ、楽園だ…!」

SYSTEM :

 数人の男。今まで紙屑のように吹き飛ばし、ちぎって来たものよりはちょっと煩わしい足音。
 ひときわ喧しいのが、あなたに、鉄の筒に似たものを向ける。

アレックス・ブリーズ :

「だが───待ってくれ、」

アレックス・ブリーズ :
 ガンヘッド
「銃のやつじゃない!
 彼女は───」

SYSTEM :

 無数のジャームが溢れかえる中。
 
 そうでないものさえも“馴れ果てた”地獄の中で、男のそれは見識による理解ではない。

SYSTEM :
                    ・・
 あなたは決して知ることはないだろうが、願望だ。

夏瑞珂 :
 昂った心に、拓けた視界がたまらなく心地いい。自由を。もっと自由を。
 際限なく求めてやまない衝動に従うかたわら、ふと、黄ばんだ殴り書きを思い出す。風。大陸を、力強く駆けていく風を冠した名を。

夏瑞珂 :
 大陸の風? あんな、掃き溜めに阻まれて滞るようなものが?

 あんなのは違う。
 わたしとは違う。

 まだまだ行けるはずだ。
 まだまだ強くなれるはずだ。

夏瑞珂 :
 もっと遠く、もっと高くまで!
 すべてを薙ぎ倒した地平を、わたしという嵐なら……きっと見れるに違いない!

夏瑞珂 :
 吹き荒んで──吹き荒れて。見知らぬ区画に辿り着いたころ。

 赤色がかった視界に、ふと、今まで見たものと違う姿を捉える。
 違う。何かが違う。足音は重く、鉄の筒を持っていた。頭ではなく手に。そして、聞いたことのない声だった。

夏瑞珂 :
 ぱちっと目が合う。偏光ゴーグルの向こうのまなざしと。

 彼の声は、罵声ではなかった。怒声でもなかった。かたちでイメージすると曲線になるような、そんな声。

夏瑞珂 :
   FUCK
「──くそ!」

夏瑞珂 :
 FUCK  FUCK FUCK
「くそ! くそ! くそ!」

 ひどい焦燥に襲われた。その事実がたまらなく許せなかった。
 わたしは自由なのに、自由になっていいのに、彼はそれを邪魔したのだ。原因は断たたなくてはいけない。今ここで。

夏瑞珂 :
「そんな目でぇっ……!」

 わたしは脆弱で貧相な肉体を捨て、自由を望む形へと姿を変えた。

 暴風転身、瓦礫の積まれたワンブロックをまっすぐに駆け抜ける。風はミキサーのように唸って、目の前のものを傷つけたがっていた。吹き飛ばして粉微塵にしたいのだ。

 ばらばらに、こなごなに。

SYSTEM :

 それは間違いなく焦燥であり、風の音色を制し阻む鉄の壁を厭う言葉だった。

 当然だ。まだいける、と願う先が主観的喜びであっても。
 客観的断崖であることをあなたは知らないし、知ったって、別に理由にならない。

SYSTEM :
 ───対話の余地はない。
 お互いにだ。

 そう判断したテンペストの隊員が、防風のため、分かりやすい結論を取る。
 新米の上司を叱責するように、向かって来る嵐の前で端的に。

テンペスト隊員 :

「フー………准尉殿、あんたもあと1体斃せばエースだぜ。
 此処じゃ全員イエス様のもとに召された後……いいな、割り切れ、でないと───」

SYSTEM :

 …でないと、の次を彼は言えなかった。

 死んだのではない。
 粉々に───出来たのかもしれないが。
 彼の言葉を遮ったものは、生まれたての嵐の癇癪ではなかった。

アレックス・ブリーズ :
 ・・・
「だめだ!」

SYSTEM :

 だめだ、はどちらに向けた言葉だったのだろう。
 フォワードの役割を担っていた(逆に言えば"それくらい”しか食らい付けなかった)時の准尉殿は、躊躇すらなく嵐に向かって真っすぐ立った。

アレックス・ブリーズ :
「突き抜けたって、ひとりじゃないか───」

アレックス・ブリーズ :
「そんな後先短いのが…子供の夢でいいわけあるか!」

SYSTEM :

 そんな目で見るな、と殺意を向けられた男が、いったいその焦燥に何を思ったのだろう。
 射線を彼は塞いだが、同時に嵐がどこかに行くことを赦さなかった。

 彼にとって、その誰にも庇護されない嵐は鮮烈で、打ちのめされるほど衝撃的で、自分の常識と正反対で…。

SYSTEM :
 ・・
 それが手遅れでないことをまことに錯覚したせいで、そのとき優先順位が狂った。

テンペスト隊員 :

「───始末書は俺が書くッ! 退けッ!」 

SYSTEM :

 死に戻って目を覚ますことを、
 そして嵐に引き裂かれるだろう准尉殿を弾き出すように、年上の部下は躊躇なく銃弾を放ったが。
 
 それを年下の上官は何の躊躇もなく受けながら、嵐を抱え込むようしながら、猶も我武者羅に叫んでいた。

アレックス・ブリーズ :
     テンペスト
「おれは…嵐を征する者だ!
 嵐に負けるつもりはない!」
 
「だから、だが、止めないぞ、こんな───」

アレックス・ブリーズ :

「こんな子供にも”嵐に明日はない”なんて言っていいとは───
 誰にも教わっちゃいない───!」

SYSTEM :

 成すべきことを為すにはあまりに不格好で、理由もごちゃ混ぜだったが。
 このたわけた男にとって、兎に角あなたは撃つべきではなかったらしい。

SYSTEM :
 どれほどその過程が不格好だったとしても。
 男はただ、あまりに正しくない理由のためにあなたを止める選択を取った。

 アメリカのおぼっちゃまの延長線、しかも感覚鋭敏のエンジェル・ハイロゥにとって。
 一目で衝撃に襲われた嵐の幼子を見抜いたものは、もはや奇跡でもなんでもなく。

SYSTEM :
 あなたに、止める理由はない。

 だが───。

SYSTEM :

 止めなかったとしても。
          アシタ
 恐らく彼があなたを断崖に行かせたいとは、思ってくれない。

夏瑞珂 :
 自由には力が要る。自由を通すには力が要る。風、暴風、嵐。それは自由を象徴する無形、何者にも捕らわれないことの具象だった。

 だった、のに。

夏瑞珂 :
「え────ぁ」

 不可視の姿に変わっても、衝突の瞬間は実体に戻る。逆説的に、物理的な接触さえできれば転身は解かれる。
 今起きているのは、つまりそういうことだと理解するのに数秒を要した。

夏瑞珂 :
「いやだ」

 抱え込まれている。腕の中。窮屈に閉じこめられている。沸騰していた血が、急速に凍りついていく。

夏瑞珂 :
「いやだ、やだ、とめないで」

 目にみるみる涙が溜まって、ぼろっとこぼれ落ちた。自由に、やっと自由になれたのに──風が止んでいる。

夏瑞珂 :
「あああああ……!」

 逃げたくて、逃げ出したくて、暴れようとしたのに、身動ぎのひとつもできない。

 荒ぶる感情を代弁するように風が周囲を切り刻んだ。
 密着した腕を、わたしを閉じこめる檻を、台風の目に入れることはしない。それこそが、壊すべきものだったから。

夏瑞珂 :
「ぁ──あ、あっ……?」

 血のにおい。鉄のけむり。それらが抱きかかえた人の向こうからすると分かって、叫びが当惑に途切れる。

夏瑞珂 :
「なんで……だって」

夏瑞珂 :
「突き抜けて、ひとりになったら……」

夏瑞珂 :
「誰も、わたしを傷つけられない」

夏瑞珂 :
「だから とめないで……」

SYSTEM :
 とぎれとぎれの当惑と共に面を上げたなら、
 ひび割れた偏光ゴーグル越しの視線がまず覗く。

 あなたが無意識のうちに嵐と成っては戻るのを繰り返すように、
   オーヴァード
 彼も超える者だ。だから、傷は癒えて、ついて、刻んで、癒えてを繰り返していた。

SYSTEM :

 ぱちぱちと走る雷光が、彼の細胞を活性化させ、治癒を促している。
 
 しかし意識的に傾き、触れるもの皆拒み引き裂く風の子の願いを押し留めることは、
 その普遍的な機能をやがて超えるだろう。このままやれば、彼には取り返しのつかない疵が付く。
         リザレクト
 分かっているから一度の再生程度で済むような、ひどい力技で退かそうとした部下の始末書ものの警告さえ彼は知らぬと退けたのだ。
 …こうなっては、もはや次の斉射に意味はないだろう。

テンペスト隊員 :
   Bastard
「………馬鹿野郎が───」

テンペスト隊員 :
「手前、この貸しはでかいぞ…」

SYSTEM :
 焦燥交じりのあなたが先に呟いた言葉と似たような悪態を吐いた部下が、
 銃を降ろす。いや、降ろさざるを得ない。

SYSTEM :
 それでも割り切る用意を出来る程度に生き延びて来た男とて、
                            ・・
 そこで零された言葉が、今はまだ統計的に算出されていない5割の…。
 いや、覚醒めを促したものを思えば、確実にそれ以下の偶然を潜り抜けた人間の言葉であることを悟ったからだ。年下の“准尉殿”に遅れて。

アレックス・ブリーズ :
      ・・
「そしたら、次のきみが…きみを傷付ける」

SYSTEM :

 嵐は次の嵐を呼ぶと、彼は繰り返した。
 先人たちが幾つも嵐を止めて、だが止めきれなかったものが、何を齎してきたのかを朧げに知っている。
 だがしかし、止めないで、に返すべき言葉を彼はそれだと思っていない。矢継ぎ早に次が出た。

アレックス・ブリーズ :
「だから…止めるんだ。そのためにおれはいる。
 ソッチ      . きみ
 断崖で泣くことを、子供の明日にするわけには、いかない…」

アレックス・ブリーズ :
 おれ
「大人は、きみを、傷付けない…!」

SYSTEM :

 台風の目の外側で、痛みさえアドレナリンが押し流したのか。
 “止めないで”にも”だめだ”と言った男は、嵐の前に立つ無謀を伴って、こう言い続ける。
 風にもどれ/成れと。言葉としてあまりに論理のない嘆願の感情で。

夏瑞珂 :
 血は流されるたび、新たな血を呼んだ。傷つける力と生きようとする力がぶつかり合って、嵐をひとところに押し留めている。
 欲望に渇いた心に、それはなんて窮屈なのだろう。息苦しくて、狭苦しくて、とても耐えられない。

夏瑞珂 :
 耐えられない、のに──
 全身を濡らす鮮血が、わたしを抱きとめる腕が、ひどくあたたかで。

夏瑞珂 :
「明日が……あるの? 先なんて、見えないのに」

 風が止んだ。
 わたしが止めたという事実に、わたし自身が驚いていた。

夏瑞珂 :
「あなたは、わたしを……傷つけない」

 復唱する。まだ夢を見ているようだった。ちがう。夢が、自由の夢が、揺らぎ始めている。
 それに抗うみたいに、風がまた、吹き荒れたがっていた。窮屈な枷を壊して、解き放たれるのを望んでいる。

夏瑞珂 :
 なのにもう髪を揺らすこともできずにいた。限界を迎えたのは体と心、どちらが先だったのだろう。

夏瑞珂 :
「うそつき」

 額を押しつけて、くぐもった声をあげる。

夏瑞珂 :
「うそつき……」

 彼はひどいうそつきだ。
 彼さえいなければ、わたしは愉しかった。なにもかも吹き飛ばして、後には地平だけが残るはずだった。

夏瑞珂 :
 それを断崖だなんて呼んで、こんなふうに停滞させた。わたしより傷だらけになってまで、ばかみたいなことを言っている。
 この人は、わたしにおねがいしているのだ。おとなのくせに。命令しないし、怒鳴りもしない。

夏瑞珂 :
 そんな人間がいることが信じられなかった。
 そんな人間と出会えなかったことが可笑しかった。

「すごく、傷ついた」

SYSTEM :

 …もう、そこにいるのは嵐ではなかった。
 それならおそらく、出会いがしらの"准尉殿”の錯覚も正しい言葉になるだろう。
 
 滲む涙、頷く仕草と共に。
 最初で最後、恐らくこれ以降あなた以外知る/見ることのない、傷にまみれた顔が映る。

アレックス・ブリーズ :
「…そうか…ごめんな。
 傷ついたなら…その分を、取り返さなくちゃ」

アレックス・ブリーズ :
 ベッド
「寝床も用意する、食事も偏らない程度に、リクエスト聞くさ……
 な…? そのくらいの明日から、始めてみないか───」

夏瑞珂 :
「……」

 その提案は、ほとんどゆうわくだった。
 昨日のわたしがずっと夢見ていたかたち。

夏瑞珂 :
「……でも、クリスマスが終わっちゃう」

 今日のわたしには、もう素敵には映らない。

夏瑞珂 :
 明日のわたしも、きっと、この聖夜に焦がれ続ける。だけど……

夏瑞珂 :
「……ケーキが、いいな。苺の乗ってる」

 明日だけ……。
 このひとに任せてみてもいいかな、と思えた。

アレックス・ブリーズ :
「ああ…約束だ。明日だけじゃない…!」

アレックス・ブリーズ :
「…来年のクリスマスも…。
 そのまた来年も…! 約束、するよ──」

SYSTEM :
 彼は客観的に考えて、絆しに膝をついただけの凡人だった。
 だがその偶然こそが、産声をあげたあなたに地平以外を用意した。

 あと一日早かったなら…。
 それはいまより遥かに魅力を伴っただろう。

SYSTEM :


 ───あまたのひとりの人生を以後永久に変えた、悪夢のような聖夜が終わる。

SYSTEM :

 それは…無数にあった聖夜の奇跡のひとつだ。

             ロイス
 あなたを見て、人だと誇る理由を必死に紡いだ男が。
 あなたにとっても、なにかの理由で“それ”になって、か細くとも、のちの命綱になったことは。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇ 

SYSTEM :
 ・・・
 だから夏瑞珂は、その聖夜が終わっても、
 夜明けの空といっしょに明日の続く側の人間だった。

SYSTEM :
 この
 合衆国の籍を得て、毎日食事を摂り、きれいな服を着て、学校へ行くこともできた。

 アレックス・ブリーズ。
 あとあと聞こえた名前を繋ぎ合わせ、翌日の約束をたいへん不格好に果たした男の名乗り曰く、テンペストなる者たちの“准尉殿”が、あなたのこの日からの家族だった。

アレックス・ブリーズ :

“こら、瑞珂! 脱いだらせめてカゴに入れなさいと何度言ったら!”

アレックス・ブリーズ :

“片付けるのはおれなんだぞ! 
 そうだいいのか、その、なんだ、年頃のティーンが男に自分の服触らせて…!?”

SYSTEM :

 余裕の出来たあなたの生活習慣は育つにつれて別の意味で嵐だったので、
 アレックスにとっては、男手ひとつで養娘を育てることと軍人稼業はとてもハードだったようだが。
 
 彼はあなたの不自由に根気よく付き合ってくれた。

アレックス・ブリーズ :

“…いいかい、瑞珂”

アレックス・ブリーズ :

“おまえに、あのクリスマスで備わったものは、
 気に入らないものをなんでもかんでも吹き飛ばす力じゃない…あー、いや”

アレックス・ブリーズ :

"言い方違うな。出来るけど、しちゃいけないんだ。
 吹っ飛ばしたあとの夜空は寒くて、手持ち無沙汰だったろ”

アレックス・ブリーズ :

“その力を振るう時は、何がしたい、じゃない。
 ・・・・・・
 何をするべき、のために振るうんだ。
 その時は、同じ目的のために、おれや誰かがおまえをひとりにしない。
 一緒に戦ってくれる。守ってくれる。どんなに神様にそっぽ向かれても、一緒に傷ついてくれる…”

アレックス・ブリーズ :

“…あれだよ、包丁は料理の時以外使わないだろ? 
 正しい使い方で間違えた時はフォローできるししてくれるけど、
 最初から使い方を間違えたんじゃ、誰もフォローしてくれない。それと一緒だ…”

アレックス・ブリーズ :

“…世の中もそうだ。「間違える」からだな。
 おれも怒られたよ。でも後悔してないぞ。傷くらいなんだってんだ”

SYSTEM :

 そんな彼も、いつもあなたの言うことを聞いてくれたわけではなく。
 子供の傍らにいる大人としては、ちょっと思い込むこともあったし。
 帰りが十数分遅れる程度の「遠回り」で心底大袈裟に身を案じてくることさえあったし。
 彼の友人がバカ笑いしながら何かを喋るとき、凄まじい速度であなたの耳をふさいだりしたが。

 最後は必ずあなたの味方でいてくれた。理解ろうとし続けた。

SYSTEM :
 不自由な時間だ。あの時の暴風が突き抜けるような解放感はない。
 窓も、積み上げていくものも、今度はずっときれいで豊かだが。
 窓の向こう側には、クリスマスソングの代わりに風の音が鳴って止むことがきっとない。

 だが、それでも。
 不思議なことに、やっていけた。

夏瑞珂 :
 暖かな寝床。温かな食事。燠かな家族。
 かつて夢見たすべてが新しい生活にはあった。
 なのに、こんなものか、という思いが拭えなかった。こんなもの以上のものはないと分かっていたのに。

夏瑞珂 :
 自由になりたい、という思いにしばしば襲われた。
 生活には何の不自由もない。だが、目に見えない何かにいつも縛られていた。おかしな気分だった。

夏瑞珂 :
 ……でも、安心した。それらの思いが、アレックスとの生活をやめる理由には一度だってならなかったから。

夏瑞珂 :
 風は鳴りやまない。暴風はずっと、わたしの裡にある。

 それでも。
 やっていけるうちは、続けていられる。どんなに不思議でも。

SYSTEM :

 …あるいはそれが、風が嵐になることのない理由だった。
 月日はずいぶんと経ち、新兵が大人に、幼子が嵐を抱きかかえながら成熟していく。

SYSTEM :
         ・
 その日は殊更に、夢を見ているようだった。

SYSTEM :

 ハイスクール卒業後のこと。
 力と付き合っていく術のひとつとして、最後まで渋りはしたものの、アレックスらと決めた選択肢…。
 P M C
 民間軍事会社を居場所にするという選択肢を取り、第二の故郷を一旦あとにする日のことだ。

SYSTEM :
 ウィンドブレーカー
 望風旅団。
   ・・・
 嵐を留める風除けの名だ。
 卒業とその設立の日に、見送りがいた。

『キャプテン』 :

「…もう行くのか?」

アレックス・ブリーズ :

「お世話になりました、キャプテン」

『キャプテン』 :

「その呼び方は中佐にしてやれ…。まったく。
 あいつ、せっかく名を譲ってやったのに揶揄って“それ”で呼んでくるんだぞ?」

アレックス・ブリーズ :

「はっは。中佐もおれにとってはそうですけど、あなたが最初です。そろそろ銃後なんでしょ、呼び納めようかなと」

『キャプテン』 :
「まぁ、な。
 エース・イン・ザ・ホール
 米国の切り札の名は譲っちまったが、決めた限りは先輩面をするさ」

『キャプテン』 :

「アランと、パティにジョッシュにクラーク、それから…。
 あいつらによろしく。アメリカの厄介になりたかったら、その時は中佐を通せ。

 いまはその子を口説いたりせんだろ。ニンジャの方に忙しいから」

『キャプテン』 :

「僕もほら、そろそろ潮時だしな…
 昔の約束を大っぴらに果たせるかはイーブンってとこだが、張れる見栄なら生涯張るさ」

『キャプテン』 :

「…そう言えばビリーはどうした?
 付き合い長かったろう」

アレックス・ブリーズ :

「誘ったんですけど、アメリカ以外のために引鉄弾きたくないって。
 あっちも退役近いそうですし、キャプテンの厄介になったらお願いしますよ」

『キャプテン』 :

「分かったよ。…まったく揃いも揃って生真面目な男だ。
 テンペストも、色々あったしな…」

SYSTEM :

 あなたが小さい頃はよく”口説きに”来たディアスのおじさんを、たまにからかったり。
 寝静まった(と思っている)頃を見計らったアレックスの夜遅くの相談に乗ってくれていた、曰く『キャプテン』。名は、憶えているだろうか。
         シオドキ
 なんでもそろそろ退役らしい。
 これから居場所のひとりになる人間と同じだが、彼はアメリカで銃を置いた後を探すのだという。

『キャプテン』 :

「きみ。アレックスをよろしくな。
 そいつは筋金入りの馬鹿者だが、」

『キャプテン』 :

「僕の知る限り、誰より努力家だ。支えてもらってくれ」

夏瑞珂 :
「──ダンおじさん!」

 たしか初対面のときでさえそう呼んで、アレックスを驚かせたっけ。今も昔も、彼をそんな風に呼べる人間は多くないそうだけど。

夏瑞珂 :
 過労でダウンしたアレックスの代わりに朝ごはんをつくりにきてくれた日があったのを、今もおぼえている。あれはすごかった。

夏瑞珂 :
「引退なんて、つまらないの。わたし、あなたが銃爪を引く姿をまだ見てないのに。おじいさんになるつもり?」

夏瑞珂 :
よろしくされてしまった。

夏瑞珂 :
「いいの? ばかものに、らんぼうものをつけて」

夏瑞珂 :
「支えきれないくらい、圧し潰しちゃうかも」

SYSTEM :

 僕もついにその呼び名に追い付かれちまったわけでな…と、
 
 銃爪をあなたの前では弾かなかった男の苦笑い。

 軍人なんて働かないくらいが丁度いいかもな、としていた彼の戦場は、恐らくそっちではなかった。理由を、若いあなたが識ることはまだないだろう。

『キャプテン』 :
「なに、ばかものはそんなに柔じゃないって顔に書いてある」

『キャプテン』 :
「それに、それも生き方だ。
 …僕が爺さんになるまでに乱暴の仕方を間違えるなよ、飛んでこないといけなくなっちまう。次はパンケーキじゃ済まんぞ」

アレックス・ブリーズ :
 後ろで一喜一憂する、もう二十代は置いて行ったはずの"ばかもの”の表情。見なくても分かるだろう。

夏瑞珂 :
「……ずるいわ。食べ物を粗末にできないの、知ってるくせに」

 言い当てられたのも敵わないのも、以前と同じ。くやしくて、ちょっと膨れ面になる。

夏瑞珂 :
「でも、そうね。もしそうなったら、連帯責任だと思わない?」

 振り返ってにんまりと笑う。

夏瑞珂 :
     わたし
「ちゃんと 嵐 を留めておいてもらわなくちゃ」

夏瑞珂 :
「あなたが飛んでこなくていいようにね? 次は私たちが会いに行くわ。それまで老人ホームに入っちゃだめよ、ダンおじさん」

 おじさん、と気持ち強調して。

アレックス・ブリーズ :
 連帯責任の主の頭上に吃驚の印が浮かぶのもすぐのこと、
 内容がそちらと分かれば、彼はゴーグル越しにしか伺えない目を輝かせた。

アレックス・ブリーズ :
「ああ…ああ! なにもアメリカとはこれきりじゃない、中佐ともども会いにいきますよ、キャプテン!」

『キャプテン』 :
. シルバー
「老人ホームになるにはまだ全然さ。
 10年近く『おじさん』で留めた以上、あと20年は『おじさん』で留めるつもりなんだからな」

『キャプテン』 :
「それまで向こうでも見てるよ、空越しに。
 きっと覚えているから果たしに来なさい。いいね?」

夏瑞珂 :
「"ホワイト・スカイ"は譲れないのね? 聞いちゃったんだから。あとでパティに自慢するわ、私」

夏瑞珂 :
「──はい。かならず」

 この先なんて分からなかったわたしは、昨日だけ。ごく自然に胸を張って、しっかりと頷く。

 外敵に怯えて背中を丸めるくせは、直そうと思う前になくなっていた。彼らがいてくれたから。

SYSTEM :

 それが───。
 これからも生きていく場所の、これまでの追想だ。
 窓の外、すぐ近くに嵐を置いて、続く明日の道標。

SYSTEM :

 かつて白澄んだ空に、解放の音色はない。

 ただ今は、標として留まる風だけがあった。 

SYSTEM :

 ………。
 ………。

 ………………。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 ………そうだとも。
         ・
 その日は殊更に、夢を見ているようだった。

SYSTEM :

 鈍い痛覚がじわじわと鮮明にいろを取り戻していく。
 ちりちりと人と諸々が焼け焦げるにおいと音を聞いた時、
                  リザレクト
 あなたはそれが、オーヴァード特有の自己再生のラグなのだと気付いた。

SYSTEM :

 あなたの知る言葉だろうか、知らない言葉だろうか。
 東洋のとある島国で、このような益体もない思考を次のように記す…。

SYSTEM :



 ・・・
 走馬灯。

SYSTEM :



 ───あの半年後。

SYSTEM :

 護衛、仮想敵/軍事教練、兵站、片手指を越える程度になってきたころ。
 あなたが属する民間軍事会社が、欧州でとある依頼を受けた。

 三年のち、どこかで“不祥事”を起こして解体される欧州某企業…。
 その要人警護の任である。
 順当かつ正着に護衛は済むはずだった。いや、済んでいた。

SYSTEM :

 イタリア、某所におけるその警護。最後に“けち”がついた。
 その“けち”な戦いを嗅ぎ付けるように…。
 ・
 狼が来たのだ。餓えた狼が。

SYSTEM :

 闇夜に融け込む鋼色をまとって、
 遍く生けるものの喉笛に食らいつく人獣。

 そいつが鋼の咢を広げて、何もかも呑み込んだ。

SYSTEM :

 ───アレックスが思わずあなたの耳をふさぐくらい、
   聊か品のない冗談が好きなアランが初動の対応に遅れて即死した。

SYSTEM :

 ───陽気なパティと気弱な仲間想いのジョッシュがすかさず逆上し、
   命を擲つ一撃は傷一つ付けられずに白兵戦の白黒がすぐついた。

  :

「撃ったんだぞ…当たったんだぞ!
 畜生め、頭を切り替える前にやられちまうやつがあるか───!」

  :

「今すぐ逃げろ! 命あっての物種だ!
 オーヴァードだって死ぬ時ゃ、───」

SYSTEM :

   ロートル
 ───退役軍人のクラークは“倒せない”と悟ると一時の撤退を決断したが、
   その決断の直後、あなたの意識ごと吹き飛んだばかりだった。

SYSTEM :
 目を覚ます。
 何処とも知れぬ街並みだった場所が、みごとに焼け野原。
 敵方だった相手の姿など微塵も残らず、火の向こうに恐らく"それ”がいる。

SYSTEM :
 …すぐに飛び込んでくる声がある。
 まるで庇うように脱兎を促す男の声だ。

アレックス・ブリーズ :

「瑞珂!」

夏瑞珂 :
 そして、夢から醒める。あるいは、今もまだ。

「がっ──ふ……」

 煙で焼けた喉の組織が剥がれ、吐瀉物に赤黒く混ざった。
 賦活(リザレクト)は効いている/安堵と戦慄。鮮明になりだした感覚が痛みを伝え、脳裏にわだかまっていた『昨日』を吹き飛ばした。

夏瑞珂 :
「アレックス……?」

 呼び声に顔を上げる。周囲は残火踊る一面の焼野原と化していた。
 炎の奥へと向きかけた意識を、理性らしきものが押し留めた。だって逃げなくては。逃げる? なぜ? クラークが言っていたから。

夏瑞珂 :
「あ……あっ」

夏瑞珂 :
「アラン、ねえ、アレックス──アランが」

 震える手を頬に伸ばす。濡れる指先。血のにおい。わたしのじゃ、ない。

夏瑞珂 :
「パティ」

夏瑞珂 :
「ジョッシュ」

夏瑞珂 :
「クラーク──逃げるって、逃げなきゃって! 言ってたのに──なんで、なんで!?」

夏瑞珂 :
     ・・・・
「なんで、居ないの……!?」

アレックス・ブリーズ :
「………ッ、だめだ、いま探しては───」

アレックス・ブリーズ :
「いまは…瑞珂!」

SYSTEM :

 彼はあなたの言葉に無事を認めた瞬間、
 何も言わずあなたの手を引こうとした。

SYSTEM :

 なぜ、を問う猶予は普段ならばともかく、今だけは逆効果。
 そもそも問う問わないは、この先を特に変えはしなかったわけだが、この時彼は最善の機を逸しながらも最良を取った。

 敢えて言えば、誰が残っていても同じことをしただろう。

アレックス・ブリーズ :

「───」

アレックス・ブリーズ :

   ・・・
「───危ない!」

SYSTEM :

 ………あなたがアレックス・ブリーズの肉声を聞いたのは。
 これが最後である。

”黒鉄の狼” :

■メイン:シ■ル■の■技
Major:《CR■■■■L2+1》《電光石火L3+1》《吼え猛る爪L5+1》《????L3+1》《????L3+1》
Minor:《????》

 HIT:26dx7+8(+8)
 ATK:xd+48
Add'l:装甲値無視

”黒鉄の狼” :
26dx7+16  (26DX7+16) > 10[2,2,2,3,3,3,4,5,5,6,6,6,6,7,7,8,8,8,9,9,9,10,10,10,10,10]+10[1,1,3,4,4,4,6,6,7,8,9,9,10]+10[2,2,3,5,10]+5[5]+16 > 51

SYSTEM :

■リアクション
 リアクション結果を確認します。

アレックス:カバーリング⇒夏瑞珂

SYSTEM :

■メインプロセス:ダメージ
 ダメージ判定を行います。 

”黒鉄の狼” :
6d10+48  (6D10+48) > 44[9,2,9,8,8,8]+48 > 92

SYSTEM :
■ダメージ結果
 ダメージ結果を確認しています…。

SYSTEM :

 辞世の句など語ることはなかった。
 彼は人より視野が広くて、人より頑丈で、だからあなたをいま庇った。

”黒鉄の狼” :

『───』

SYSTEM :

 その誤差が、永久に泣き別れになって爆ぜる。
 人の言葉を喋る怪物が、あなたを見ている。

”黒鉄の狼” :

 もろ
『脆弱い』

SYSTEM :

 無感動な音の興りから、かわいた風が吹いた。
 時を軋ませるその眼が、再び一命を取り留めたあなたの姿を見下ろす。

”黒鉄の狼” :

 よわ
『無力い』

SYSTEM :

 彼は嘲りにも似た声を零して、歩き出した。

 戦闘ですらない。
 なればこそ、彼は猛りさえ見せなかった。

”黒鉄の狼” :
    いみ
『喰らう価値もなくば…。
 ゆえ
 理由にさえ、なりはしない…』

”黒鉄の狼” :

『だのに、なぜ戦う術を持つ?
.   レムリア
 なぜ、俺の前で火を掲げた…』

SYSTEM :

 彼が、
 自然の理をその腕に載せる。

SYSTEM :

 おまえたちが己の手でこれから死ぬのは、
       ・・
 おまえたちが弱いのが悪いだけだと。

 黒鉄が、至極当然のように。

夏瑞珂 :
「え」

夏瑞珂 :
「あ」

夏瑞珂 :
 引かれていた手がとうとつに行き場をなくす。
 見上げる位置にあった顔が、どこにもない。

夏瑞珂 :
 衝撃も焦燥も、ろくに追いつきはしなかった。だって、こんなのは別れじゃない。目も見てない、話してもいない、何も残ってない。

 ただ掻き消されるみたいな……こんな、こんなものが、アレックス・ブリーズの最期であっていいはずがない……!

夏瑞珂 :
「──そうだ、くっつけよう? ねえ! 押さえててあげる、そしたら元通りに……ねえ、聞いてる? 聞いてよ……!」

夏瑞珂 :
 離れた体を抱きかかえて、残った胴体にぎゅうぎゅう押しつける。血で滑って、まっすぐにならない。焦るほど繋がらない。こんなことをしてる場合じゃないんだ。繋がらない。逃げなきゃ。逃げてどうするの? でも、繋がらない、だって、逃げなきゃ──繋がらない──今逃げなきゃ、彼らは何のために──繋がらない繋がらない繋がらない!

夏瑞珂 :
 だけど。
 かわいた風が、わたしから狂乱さえ奪っていく。

 嘲りにも似て、それよりも遥かに酷かった。心底理解しかねるという呟きは、だからこそ貶めるためではないと伝えてくる。

夏瑞珂 :
 この怪物は、鋼の狼は、ごく単純に、

 わたしたちが弱いからこうなったのだと、道理を説くように──

夏瑞珂 :
「なんだ、その目はァァァッ──!」

 ずっと封じてきた、
 忘れてしまえるくらい奥底にあった呪詛が、

 わたしの性根を暴きたてるみたいに、口を衝いて出た。

”黒鉄の狼” :

『───腑抜けめ。
 牙の突き立て方さえも、群れれば忘れるのか?』

”黒鉄の狼” :

『だが、ああそうだ、おまえ………
 残るようなら言っておくことがある…』

SYSTEM :

 爆ぜるような嵐と共に、辺り一帯が拉げるようにねじ曲がった。

 不自由の中にある自由が、その枷の名残ごと、再び、完膚なきまでに砕け散る。
 解き放たれた風の音に、高らかな笑い声さえも、怒りも喜びも何もかも伴わない。

SYSTEM :

 そして、それを。

”黒鉄の狼” :


『二度と顔を見せるな』  

SYSTEM :

 以て、一撃。
    フラット
 あまりに平坦な、暴虐の蹄が落ちた。

夏瑞珂 :
「は、は、は」

 嗤いが漏れた。愉しくないのに喉が引きつって、勝手に嗤いだす。
 だって、あまりにふざけている。男のたわごとも。アレックスが動かない現実も、何もかも。

夏瑞珂 :
 ──この男は、わたしを脅かした。

       ころした
 ──みんなを傷つけた。

 ──次はわたしの番だ。

夏瑞珂 :
「あ……」

 愕然となる。なんて間抜け。衝動のままに暴れていれば、そんな事実に気付かずに済んだのに。

夏瑞珂 :
 抑圧と被虐。わたしにとっての悪を許してなるものかという猛りよりも、目の前の現実に打ちのめされている自分に。
 ありのままを受け入れてしまった失態に。

夏瑞珂 :
 気付かなければ──
 ばかみたいに座り込んだまま、

「やめ──」

 たとえ名残でもゆいいつ残った彼のかたちが、ただの余波に砕かれていくさまを……呆然と見送ることはなかったし。

夏瑞珂 :
 這いつくばって、かき集めようとするものだから。
 迫る一撃になすすべもないなんてことは、きっと──きっと、なかったはずなのに。

夏瑞珂 :
「    」

 叫ぶ声さえ、既に亡い。
 断絶しかかった意識のさなか、何もかもが遠くなっていく。 

 熱。敗北。嵐。悲憤。不/自由。

 わたしという嵐が、解き放たれる。夢のようだ。夢であるべきだった。ひどい夢ならば、いつかは醒めるのだから。

SYSTEM :

 血のこびりついて渇いた荒野に、
 かつて等身大の勇者だった男たちと、
 かつて奇跡と共に歩いた少女の成れの果てが転がる───

SYSTEM :

 かつてあなたがしたように、
 風除けは、より大きな“風”に吹き飛ばされた。

 それで、終わりだ。

SYSTEM :

 ───因果応報。

 否。否!
 そのような言葉で片付けられるのは当事者でないものだけ。

SYSTEM :

 レネゲイド
 爆ぜる感情が、焦げ付く炎にまとわりつく。

SYSTEM :

 ………。
 ………。

 ………………。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

『謎の声』 :

 復讐を、

『謎の声』 :

 逆襲を、

『謎の声』 :

 再戦を

SYSTEM :

 ───再生の叶わぬ器に。
   熱が宿り始める…。

『謎の声』 :

 失われた名誉と未来の回復は、
 相手の血を濯ぐことでしか戻らない

『謎の声』 :

           くに
 やつの骸で、おまえの世界を築くのだ
 そのとき、まことの自由が戻る

『謎の声』 :


SYSTEM :
【Check!】
『オーバーマインド』の効果対象が予告されます。

  対象者:“黒鉄の狼”/???
 発動条件:????


SYSTEM :

 勝者になれなかったものの声が、
 無意識に溶け込む。

 否、溶け込んだものは、ひょっとすると…。
 あなた自身のものだったのかもしれないが…。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 目が、醒める。

SYSTEM :

 次に目を覚ました時、そこにあるのは焦げ付いた洛陽でなく。
 色という色を失った、無菌を讃える白いコンクリの空だった。

SYSTEM :

 それを眺めるのは二度目だ。
 ウソ
 聖夜のような出来事の翌日。それが一度目で。
 ウソ
 悪夢のような戦いの後日談。こちらが二度目。

 どちらが、あなたにとって。
 夢だったのだろう───いいや、いいや。
 どちらも、夢などであるはずがなかった。

SYSTEM :

 地続きだ。示すように、傷みが残る。
 その中で…。

SYSTEM :
 
 そのあなたの目覚めを待っていたのか。
 病床のそばで座っていた、
. し  ら  な  い 
 どこか明るく乾いた男の声。

エージェント? :
「お目覚めかな」

エージェント? :

「先に言っておくが、医者じゃないよ。通りすがりだ。
 きみが目覚めなかったらどうしようかと思っていた。言い逃れの余地なく不審者だ」

夏瑞珂 :
 ちかちかと熱く燃える視界は一転して、眩むほどに白かった。壁も天井も、みな漂白されたように色彩を欠いている。

夏瑞珂 :
 ……これが二度目で済んでいたのかと、いまさらになって驚きをおぼえた。それはわたしの功績じゃない。ずっと誰かに守られてきたあかしだ。

夏瑞珂 :
「声を聴いたわ。でも、あなたじゃない」

 投げた一瞥を天井に戻して、知らない声に応じる。どこか乾いてるくせ、明るい声。寒々しいけど脅威はない。
 わたしに何かしようという人間なら、眠っている間に済ませるだろう。

夏瑞珂 :
「ねえ、通りすがりの不審者さん。知らない人と話しちゃだめって教わったことは?」

夏瑞珂 :
「私はあるわ」

 天井をじっと睨んだ。現実が追いつかないように、できるだけ理解を意識の外に追いやるために。

エージェント? :

「いいご家族がいたね」

SYSTEM :

 ちなみにボクもある、と変わらずへらへらと笑った男は、寒々しく、無神経だが、確かに脅威ではない。
 その気がない、それだけが理解る事実だ。

エージェント? :

「そうそう…ちなみに言葉を繕うこともないよ。
 ・・・
 こっちの医者だ」

エージェント? :

「生き延びたのか、死に損なったのかは、まあ。聞かないであげよう。
 あの場に生きていたものは、ふたつしかいなかったからね」

夏瑞珂 :
「ふたつ──?」

 体の痛みも忘れて跳ね起きる。訳知りの医者に詰め寄ろうとした体は、シーツにもつれて、点滴のチューブを引き抜きながら床に転がった。

夏瑞珂 :
 名前も知らない男の裾を掴んで見上げる。這いつくばった無様な姿。でもかまわない。

「わたしと、誰」

 この、きっと無意味な期待に、はやくとどめを刺してもらえるなら。

エージェント? :
「………」

SYSTEM :

 男は形振りもかまわない年下の有様をじっと見つめた。見下ろす目は空洞のよう。

 かわき切った欲望の子が、そこに燻るものに何を見たのか。ややあって、口を開く。
 あなたの望みを知らぬまま、だが、口ずさむ言葉が望みにそぐうものでないことをわかった口ぶりで。

エージェント? :
「きみに何かを語ることは、ひとつを除いて、無価値と。そういうのだね」

エージェント? :
「では、その無価値だ。
 終わったものを始めさせることは出来ないから、ボクは無遠慮に言う。
.. レムリア
 “黒鉄の狼”…そういう伝説だよ」

夏瑞珂 :
「……そ」

 ああ、では、クラークは……あのときにはもう駄目だったのだ。倒れたパティとジョッシュに奇跡は起きなかったし、アランにはその芽もなかった。

 アレックスは──

夏瑞珂 :
 裾を掴む手に目をやる。清潔な手。あの温かな血は洗浄されて、汚物のように流されたあと。あるいは乾いて剥がれたあと、塵になったのか。

夏瑞珂 :
 のろのろと身体を起こして、床にぺたんと座りこむ。話すための必要最低限。

夏瑞珂 :
   レムリア
「……"黒鉄の狼"」
 
 くり返すと、胸の奥でなにかが燻った。口の端が歪んで、嗤うように曲線を描く。

夏瑞珂 :
 ああ──そうだ、嗤おう。笑おう。わたしは自由だ。自由になったのだから、わらうべきだ。

夏瑞珂 :
「いいわ、どうぞ遠慮なく。話してくださる? 価値は自分でつけられるわ」

エージェント? :
「いいだろう、それでは遠慮なく聞き流しなさい」

エージェント? :
「といってもね、経験上の話だよ。
 足元が崩れ去って、再出発を語ることが理想だってわかるだろう?」

エージェント? :
「だからボクは、終われなかったひとに理想を語りに来たつもり」

SYSTEM :

 齢20の前半らしき男は、
 あなたに親切だったが、それはとおい親切だ。あるいは、それをするつもり“だった”。

エージェント? :

「………。それに価値はないよ。ナンセンスだ。
 マイナスをゼロにすることに、客観的価値はない」

エージェント? :

「だがね、マイナスのままいる理由も、し返していけない理由もない。
 それをいけないことなんて言う人間は、ただお利口か、痛がりか、運がいいか、強いヤツなだけだ」

エージェント? :

「きみ、どれでもないだろう。
 そういうやつに、理想は居場所を作ってくれない」

SYSTEM :

 だってそのはずだ。
 あなたは断じて夢に居場所を作ってもらったのではない。

 ただ馬鹿で、身近な暖かさを持った人に、
 手を取り合う居場所を作って貰ったのだ。

エージェント? :

「災害のキズが時と共に癒えた時の行き先を紹介してあげるつもりだったが、ちょっと気が変わった。

 明日ここに来るから、そんな間延びした話が聞きたければ、大人しく二回目の夢を見なさい」

エージェント? :
「そうでないなら………」

SYSTEM :
 青年は野暮を言うだけ言った。

SYSTEM :

 ───敢えて言うが。

 その行先に、似たようなものはあるだろう。
 あなたの炎を鎮めるすべはない。

SYSTEM :

 ・・・・・・・
 似たようなもので、取りこぼしたものを埋めるなど邪道だ。
 
 彼の言葉を聞く限り、ここはその「オーヴァード」にそれなりの繋がりを持っている場所だ。

SYSTEM :

 あなたが炎の燻りを良しとして、再び不自由の中の自由をひとりで築くほど、
 欠片もつながりを感じたことがないなどと言うなら、それでも良し。
.        ジ・エンド
 それはそれで、一つの終わりだ。

SYSTEM :

 ───そうしないなら、することは決まっている。

SYSTEM :

 肉体のキズは後で癒えるが、
 そうでないキズは時で塞げない。
   オディオ
 その憎しみは、当事者の血でしか濯げない………。

夏瑞珂 :
「理想を説くのね。そんな、からっぽに渇いた声で」

 ほんとうにナンセンスだ。マイナスをゼロにしても、わたしが出しっぱなしにした牛乳を戻してくれるひとはいない。

夏瑞珂 :
 そんなこと誰にでもできる。目の前の彼にも。でもそれはプラスじゃない。

夏瑞珂 :
“その力を振るう時は、何がしたい、じゃない。
 ・・・・・・
 何をするべき、のために振るうんだ"

夏瑞珂 :
 そうね。

夏瑞珂 :
"失われた名誉と未来の回復は、
 相手の血を濯ぐことでしか戻らない"

夏瑞珂 :
 そうね。

夏瑞珂 :
           くに
"やつの骸で、おまえの世界を築くのだ
 そのとき、まことの自由が戻る"

夏瑞珂 :
 失くしたものは戻らない。
 理想はわたしに居場所を作らない。

 なら、自分で作らなきゃ。そうでしょう──?

夏瑞珂 :
「仕返しなんてしないわ」

夏瑞珂 :
「壊して、犯して、踏みにじって、嗤うの。あなたが弱いのが悪いのよって」

夏瑞珂 :
「だって、弱者は玩具にされるものでしょう?」

夏瑞珂 :
 だから仕返しじゃない。復讐でも仇討ちでもなく、そこにいた奴が悪いんだから。

「欺瞞かしら」

 くつくつと喉奥で嗤う。顔をしかめて困惑するひとは、ここにいない。どこにも。

エージェント? :
「さあ? ボクに出せる答えは少ない」

SYSTEM :

 抑圧から解き放たれた最初の矛先が仕返しでない所以はない。
 愛されたものが等しく背負う憎しみのリスクだと、指摘する人間はしただろう。

 しかしその言葉が正しくても。
 少なくとも言って止めるべき人間が自分でないことを、無神経な男は遠回しに告げた。笑みを深めるわけでも、ゆがめるわけでもない。
 笑う能面に色はあっても生気がない。彼はそれを止めなかった。

エージェント? :
. レムリア
「“黒鉄の狼”は戦場にいる。
 ………この言葉の代わりに、そうだな…」

エージェント? :
「…守らなくてもいい。流すように、同じ欺瞞を耳に通してくれればいいよ。
 はじめの一歩のお手伝いと、お節介を、ひとつだけしとこう……」

SYSTEM :

 青年は口にしながら背を向けて。
 遠い親切をぶちまけながら、あなたを一人にする。してしまう。

 …だから最後のこれは余談だ。
 ここから先の、あなたの話に関わるものではなく、
 知ろうとしなければ、知る余地のない話ではある。

エージェント? :
     ゴール
「物事には到達点がある。だが…。

 ゴールの先を厭うならそこで終わらせるべきだし、
 厭わなくていい時が出来たら……厭わないことだ」

エージェント? :
「終わらせ方を、そして“やり直し方”を間違えるとね。
 世界に色は二度と戻らない。風も吹かないし、時も進まない。熱も宿らない」

SYSTEM :
   い ま
 ───3年前。欧州某任務の記録において。

 FHと繋がりのある、検体集積の役割を受け持った病院に、
 それとは異なる届け物を終えたばかりのエージェントの名がある。

エージェント? :
               .じゆう
「ここから行くなら、それがきみの権利だ。
 好きにすればいいが、」

“終わった男”樋浦・彼方 :

     おれ
「きみは。先人のようになっちゃいけないよ」

SYSTEM :
        ジ・エンド
 コードネーム…“終わった男”。
 名前、樋浦・彼方。
 FHの中で数少ない、満ちるのでもなく、届かぬのでもない。
      ・・・・・
 ただ欲望を終わらせた男。

SYSTEM :

 死に損ないの前に、比較して故意に通りすがった彼は、
 いつものように寄り道して、決まっている気まぐれを始めた。

 終わり切っていないものが、間違った終わらせ方をしないための気まぐれだ。

SYSTEM :
 これ以降、あなたが安直に眠りにつきでもしないなら、彼と出会うことはない。
 あなたにとって大事なのは、彼との出会いではなく、
 ただ夢から覚めたあなたの現実がこうだということだけだ。

 その欺瞞を留めてくれる人はいない。
 窓の外の笑い声を遠ざけていても、不思議とやっていける確証を与えてくれた人も。

SYSTEM :
 咎めるものはいなかった。
 
 今日と地続きの明日をどうするかは、
 あなたのものだ。

夏瑞珂 :
「色は戻らなくていい。風は吹かなくていい。時は進まなくていい。熱は宿らなくていい」

 この欠落が彼らの不在の証であるのなら、ゴールの先も無彩色のままであればいい。冷たく滞っていればいい。頑なに言って、けれど顔を逸らす。 

夏瑞珂 :
「でも、あなたは……そうはなるなと言うのね」

夏瑞珂 :
「……いいわ、覚えておいてあげる」

夏瑞珂 :
「昔、拾われたときね。そのひとの提案を拒まなかったの。あんまり気乗りしないような話だったけど」

夏瑞珂 :
「でも後悔したことはないの。……だから、ジンクスを信じるわ。終わったあなたじゃなく、わたしの人生を」

夏瑞珂 :
「ねえ、通りすがりの親切さん。ひとつだけ聞かせて」

夏瑞珂 :
「間違った終わり方より……いっそ終わりきれずにいたほうがマシだって、一度でも思った?」

“終わった男”樋浦・彼方 :
 ・・
「ああ。後悔はしなかったけどね」

SYSTEM :

 終わらせてしまえば“そんなもの”だったと語る何某を、彼は終に変わらぬ顔で言い切ったが。

“終わった男”樋浦・彼方 :
 ゴール
「到達点で満足出来るのに、しておかなかったから、俺はずっと通りすがってるのさ」

夏瑞珂 :
「誰も、めでたしめでたしと言ってくれなかったのね。あなた自身でさえ」

“終わった男”樋浦・彼方 :
「ああ。言う相手がいないんだから、しょうがない」

“終わった男”樋浦・彼方 :
「でも、過ぎたことだ。俺にとってね。
 引き合いに出すなら、お節介だろう?」

夏瑞珂 :
「ええ、すごく」

夏瑞珂 :
 ……もう会うことはないという予感があった。わたしがゴールに向かって歩きだした時点で、違うゴールの果てをあてもなく行く彼と道が重なることはない。
 あるとすれば、それは……

夏瑞珂 :
 ……同じになったとき。

SYSTEM :
 …最後まで変わらない顔つきのまま、男は最後の問いかけに応えるなり、病室から姿を消した。

SYSTEM :
 けっきょく、名前すら名乗ることはなく。あなたの事情を問うこともしない。言いたいことだけ言い残していったわけで。
 そのしなやかさと遠さが必要だったかどうか、その価値は言葉通りあなたの決めるものだ。

夏瑞珂 :
 欺瞞の価値は分からない。今はまだ。ゴールが近づいた時にこそ、重みを帯びるのだろう。

夏瑞珂 :
 “黒鉄の狼”は戦場にいる──

夏瑞珂 :
 床に座り込んだまま、やるべきことを反芻する。明日のことを考えると、遠ざけたはずの実感が押し寄せてきた。
 みんなはいない。もう、いない。死んだ。殺された。あの男が皆を殺した。復讐を。何かが囁いた。何かはわたしだった。

夏瑞珂 :
 逆襲を。再戦を。ちっとも嗤ってなくて、愉しくもなさそうな声だけど、今は心地よかった。それ以外のすべてを塗り潰してくれるから。

 ……なのに、聞いてしまった。思い出してしまった。

夏瑞珂 :
"その時は、同じ目的のために、おれや誰かがおまえをひとりにしない。
 一緒に戦ってくれる。守ってくれる。どんなに神様にそっぽ向かれても、一緒に傷ついてくれる…”

夏瑞珂 :
「うそつき」

 諦観の殻にくるまれていた自分が、ついに顔を出した。

夏瑞珂 :
「うそつきっ……」

夏瑞珂 :
「約束、したのに……!」

 二度と聞こえないクリスマスソングを想って、わあわあ泣いた。子どもみたいにみっともなく、声を張りあげて。

夏瑞珂 :
 ──三年前のこの日が、わたしが最後に泣いた日。

SYSTEM :

 嵐が来て、家族を二度失った。
 自由を知った心に、三度目は抑圧にすらなりはしない。
        もの
 だがその失った過去の重みが、消えてなくなるわけではない。否定は消失とイコールではないが、心がそれを受け止め納めるには、今は事実があまりに鋭くて。
 終わってしまったクリスマスのその次───来年に、ソレが内側で響くことは、望まぬ限り二度とないのかもしれなかった。

SYSTEM :

SYSTEM :

 ………枯れるまで涙をこぼした日の夜が更ける前に。
 軛から解き放たれたものは、喪った自由を求めて足掻き出す。
  サンズ・オブ・リバティ
 自 由 の 息 子 た ち………。
 嘗て失われた過去の轍たちを継ぐものが、翳る産声を上げるだろう。

SYSTEM :

 やがて白澄む空に、抑圧と規範はなく。

 ただ今は………標として燻る炎だけがあった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :

 シーンが終了しました。
 ロイスの取得等ございますか?

夏瑞珂 :
……ないわ。

夏瑞珂 :
うそつきなんて、タイタスにしてやろうかって思ったけど。

夏瑞珂 :
……いやだったの。

GM :
…畏まりました。では、そのまま。

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。


・シーン4「Sangue-責務のかたち」

SYSTEM :

【シーン:Sangue-責務のかたち】

 登場PC:謝花纏/“七花胡”
 登場侵蝕:なし

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
        【 Now Loading... 】

 ベルヴェデーレ
『“七花胡”』。本名不明。
 イタリアFHセル『リグ・ヒンサー』の客将。
 訓練された軍人の合理性、欲望の底に隠された願い。二つの貌持つ外来者。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 グレートブリテン及び北アイルランド連合王国を構成する、
 四つの国のうちひとつ、イングランドの某荘園……。
 
 その一室。卓を囲んで、向かい合うように二人の男がいた。

SYSTEM :
 有体に言って九割九分の人間が目にすることもかなわない、現代の幻想───。
 超多国籍企業、ランカスターグループの総帥。
          ブルーブラッド
 疑うことすら許されぬ貴種───ランカスター家の当主には、あるもう一つの側面があった。

SYSTEM :
 UGN中枢評議会議長だ。

 彼は、世界の表側と裏側を同時に采配する“義務”を持ち、
 それをどちらも望まれるようにデザインする“権利”を伴っている。

ヨシュア・ランカスター :

「息災のようだな」

SYSTEM :
 巌のような顔をしたその男、ヨシュア・ランカスターが。
 あ な た
 対面する男に声をかける。

SYSTEM :
 言葉少なく、厳めしい表情のまま振る舞うその様子には、
 血の意味を知る程度の人間なら重圧で上せることもやむを得ないものだろうが。

 対面する男にとっては、およそ振る舞いに支障を及ぼすものではなかった。

SYSTEM :

 ………UGN日本支部、Q市支部の支部長。以前の経歴に曰く本部エージェント。

 表向きは相互利益の信条を伴う実業家として、裏向きは世界の守り人として。
 その裏向きの中に、理由を内包し、今日まで“昨日”を続けて来た楽園の担い手。

SYSTEM :
 彼は、庭の表側と裏側を同時に采配する“義務”を持ち、
 その手腕の届く範囲を望むようにデザインする“権利”を伴う人間だ。

SYSTEM :

 その男が、庭の外に出る理由は利益のため以上にはない。
 ましてや、望んで外を出歩き目溢しするほど彼にとって庭は軽くない。

SYSTEM :

 なれば、その発端───。
 ヨシュア・ランカスターその人、直々の指名であった。

謝花纏 :

 難事とは、夕立のようなものだ。
 来てほしくない時に限って、驟雨のように降り注ぐ。
 まるで予想だにしない出来事が、それこそ雨霰と。

 けれど支部長なんて地位に居れば、それも日常茶飯事だ。
 派遣したエージェントからの緊急要請、事態の転変、
 時には自ら赴いた“害虫退治”が、思った以上の大物捕りになるだとか。

 梅雨時に夕立なんて珍しくもない。
 驚きはするけれど、驚くだけ。折り畳み傘があれば、雨宿る軒先があれば、どうにでもなるものだ。

謝花纏 :

 しかし、今回の“夕立”ばかりは違った。
 およそ天変地異とも言えるほどに寝耳に水、思わず一報を疑うほどの変事。

 ────ヨシュア・ランカスター直々の招聘。
 謝花纏、極東のいち庭師に過ぎぬ者にとっては、まさしく青天の霹靂であった。

謝花纏 :
「────御身こそ、壮健であらせられるようで何よりです。
 改めて、膝元である荘園までお招きいただき、恐悦至極の極み」

謝花纏 :
「御身の多忙は存じております。
 とうに本部付けを退いた身にも関わらず、自分のような一兵卒に直々の謁見をお許しくださったのは……
 御自らがこの場にお出にならなければならないほどの、『事態』があったゆえと推察いたします」

謝花纏 :
「単刀直入に。
 此度の召喚の理由を、御伺いしたい。

 邸下」

謝花纏 :
 返す言葉に、浮かべる微笑みに、瑕疵はない。
 評議会議長という肩書き、貴種なる血、備わった威厳、どれも矮小な身には過ぎたる謁見ではあるものの。
 怯える時間で、さっさと用聞きを済ませ……雷雨を凌いで、自分は一刻も早く、庭に戻らねばならないのだから。

SYSTEM :

 あなた自身がヨシュア・ランカスターと縁があるのかと言えば、
 その答えは7年前に遡る。

SYSTEM :
 パーシェンコーハイ
《八仙過海》…。
 本部エージェント時代のあなたが討伐に大きく関与した、FH大型セル。
 組織形態として、現代社会に根差したFH“らしい”欲望に忠実なセルの末路を描くにあたって、発端はともかく、その段取りから仕上げまでを担当したのがあなただからだ。

ヨシュア・ランカスター :

「過猶不及…だな。”楽園の看守”よ」

ヨシュア・ランカスター :
「とはいえ、私とて庭の主と彼我を比べるようなつもりで貴公を呼んではおらぬ…」

SYSTEM :

 だがそれよりも別の縁となると話は違う。

 世辞/あるいは本心を耳に留めながらも、そこを避けた男に、
 厳めしい面持ちの壮年は、夕立の見込みについて話を始めた。

ヨシュア・ランカスター :
「ローマを…知っているか?」

SYSTEM :

 この場合のローマとは、表向きの情報を指すものではない。

 ローマ───表向きは沈黙と平穏を保ちながらも、実態はFHをはじめとした、
 レネゲイドの力を得たマフィアやギャングが統括する欲望の根城。
 これらを抑制するべきUGN支部は嘗て崩壊の憂き目に遭い、最も近しい拠点でベネツィア支部がせいぜい拮抗する程度の有様………UGNの視点で言えば、欧州きっての、目の上の瘤の話をしている。

謝花纏 :
「ローマ。ええ、はい。存じております。
 未だUGNの庭ならざる、我らの悩みの種でございましょう。
 雑草取りや害虫駆除に、人手が御入用で?」

謝花纏 :
 とは言うものの、外れだろうという思いもあった。
 そもそもそれが本当であるのなら、現役の本部エージェントが真っ先に駆り出されるべきである。
 とうに退いたいち地方の支部長如きが出る幕ではない。ましてやイタリアとは縁の一つもない。

 となると……

謝花纏 :
「(……適性の問題か?)」

ヨシュア・ランカスター :
「それが諧謔であるなら、巧くなったものだ」

SYSTEM :
 …そのローマにおいて、FHは横も縦も繋がりの意識そのものが希薄だ。
 これらを統率し得る組織はあっても、同じ旗の下に色を統べることなど出来ず、
 彼らはお互いをお互いの色で染め合おうとばかりに、一枚岩になり得ない己を曝け出している。

SYSTEM :
           ・・・・
 非情な話であろうが、それなら問題はないのだ。

SYSTEM :
 彼らが混乱し、勝手に自滅し合い、余計なリソースを注ぎ続ける状態ならば、
 全体の視点で見て特に困ることはない。

 もちろんそれは、そこに住まう一般市民を無視するという前提を踏まえるものであるが…。

ヨシュア・ランカスター :
「そこに…、遺産が運び込まれる」

SYSTEM :
 そこに“困ること”が出来てしまった。

 聊かにでもレネゲイドに通じ、生き延びて来たオーヴァードであればあるほど、
 ・・
 遺産の名を───契約者を選ぶEXレネゲイドを。
 伝承と紐づくことさえある現代の神話、代償を伴う力の象徴を、軽んじることは出来ない。
 それが起こした事案を識るものであれば、あるほどに。

謝花纏 :
 にこりと微笑む。
 先のは話を進めるための潤滑油、相槌以上の発言ではないと、この老翁も理解していようと思っての発言である。

謝花纏 :
「……ほう。彼の地に……遺産が。
 それは……聊かに厄介ですね。どう足掻いても均衡は崩れましょう。
 手にした勢力が増長するのは当然のこと。
 その過程で膨らんだ図体が、半島の枠をはみ出て余所の庭に押し入りかねない」

謝花纏 :
「……成程。
 そうなる前に、遺産の対処に当たれ、と?」

謝花纏 :
 そうであるなら、最悪だ。
 想定していたパターンの中で最も避けたかった択、夕立に竜巻と降りやまない雷が全部トッピングされたようなもの。
 しかもそれが自分の庭であるのならいざ知らず、海向こうの他人の庭だ。
 絶ッ対に厭。

 とはいえそんな内心を素直に顔に出すわけもない。これは、貴種に比べれば下賤の身に過ぎず。
 権利を行使できるとはいっても、その範囲はまさしく比較するべくもない。
 外面はただ粛々と、発言の本意を尋ね返す。

SYSTEM :
 ならば御存知のはず。

 天気予報は概ね最悪のものほど変わらないもの。そして庭の運営において楽観は毒に等しいこと。何より…。

 仮に同じ庭師とした場合、男の庭の範囲は比較にならぬ、ということを。

SYSTEM :
 あなたの様子を知ってか知らずか、巌のような面持ちの男は構わず仔細を話した。

ヨシュア・ランカスター :
 カテゴリ
「金型は『雷神の槌』。
 タイプ
 形態は『ケラウノス』…」

ヨシュア・ランカスター :
「主要セルのいずれが主導し、発掘したのかは定かでないが…。
 いずれのセルも、これに興味を示した。Xデーには、イタリアは火の海になろう」

ヨシュア・ランカスター :
「此度、貴公に任ずるのはそれだ。
 手に入らずんば破壊せよ」

SYSTEM :

 当然、その言葉選びには含みと他意がある。

 まさか好悪是非はともかくとして…。

 あなたの適性を二つの所以から存じている男が、"というわけで、ひとりで血を吐きながら駆け抜けろ”と命令するだろうか?

謝花纏 :
「(……最ッ悪! 台風もいいところではありませんか。
  何が楽しくて消火器片手に、余所の庭で火消しに駆けずり回らねばならないのか。
  まるで全く一銭にもなりやしない。邸下に借りを作れるとは言ったって、向こうは貸し一つだなんて対等には見ちゃくれないでしょう。
  こっちは自分の庭を守るので精一杯だというのに。
  遺産みたいなろくでもないものに飛びつこうとする、FH連中もそうです。どいつもこいつも、目を離した瞬間好き勝手しようとするのだから……)」

 外面にはおくびにもださず。
 内面でさんざんに溜息をついてから。

謝花纏 :
「復唱。
 作戦区域、イタリア半島はローマ。
 作戦目標、《ケラウノス》。
 作戦目的、遺産の奪取ないし破壊」

謝花纏 :
「拝命仕りました、邸下。
 御身の御下命の通り、この不肖・謝花纏、ローマにて火消しの任を全う致します」

謝花纏 :
「して。
 邸下も御存知の通り、この身は多くの手足がなくば立ち行かぬもの。
 いくつか御身の末端を御借りしたく存じます。
 御許し願えますか」

SYSTEM :

 ───そう。分かっていようが。
 ・・・・・
 ただの突入ならば、あなた一人を呼び、密会のように場を拵える必要はない。

SYSTEM :

 あなたは嘗ては一線にいたエージェントだ。今でも衰えを赦すような怠惰はしていまい。

 ………ただし。それと同時に、庭師が切った張ったを志すなぞ邪道である。 
 あなた一人を鉄火場に放り込むほど、ヨシュア・ランカスターは耄碌していない。

 それをしていいならばストライクハウンドこそ投入の最右翼であり、
 本部エージェントにはこの手の鉄火場向きが昔も今も(数や適性の差異こそあるが)基本的にベセスダへ詰めている。

ヨシュア・ランカスター :

「そのサガを存じている。だがな…」

SYSTEM :

 ………なぜか?

ヨシュア・ランカスター :

「あの地に表立った介入は望めぬ」

SYSTEM :

 答えは簡単。出来ないからだ。

ヨシュア・ランカスター :

「イタリア旧家………富裕層、知識層。これらの連帯で構成される排他的側面を持つセル…。
 アウラ・ドミナ
 “貴人の庭”。あれの盟主は、事と次第によっては国家権力さえ怯ませる」

ヨシュア・ランカスター :

「その今の盟主、イタリアに最も寄せ付けなくないものとして矛を向ける先が………───」

SYSTEM :
【Check!】
 以下のエンブレムが開示されます。

 エンブレム:ハーミットセプター
 所有者:“青の貴人”テレサ・C・クリスティ

 所有者のセルが公権力に対して強い影響力を持つことを示す。
 シナリオ1度まで、公共機関や組織ひとつをただちに活動停止させる、
 もしくは逆に出動させると言った行いをすることが可能となっている。

謝花纏 :
「“貴人の庭”────ほう、混沌の坩堝たる彼の地を我が物呼ばわりですか。
 セルリーダーは随分と……大胆な方の御様子」

謝花纏 :
「成程、街どころか国そのものが搦めとられていると。
 ローマではUGNの看板を掲げた馬鹿者から、同じ茨に吊るされるというわけですね」

 となればどうするか。

謝花纏 :
「邸下は、“ローマに巣食う彼らと同じ戸口から入り込め”と……
 そう自分に仰せなのですね?」

 FHの顔をして、FHとしてイタリアに上陸せよと。
 そういう命令なのだと解釈した。
 と同時に、ずっと腑に落ちぬままだった人選の理由に、ようやく見当がついた。

SYSTEM :

 …と、このように。FHの中にはそうしたセルも存在する。
 表社会とのつながりを強く持つような、それこそがセルの目的であるかのようなケースだ。

“貴人の庭”は財政界にも繋がりを持ち、またローマにおける権力層とのパイプも太い。
 国家間の緊張も続く中、UGNが根を張っていない/FHと結びついたイタリアでそれをやるのだ。これほど悪条件が揃おうものなら、UGNが大々的な作戦活動を行うのは難しい。

ヨシュア・ランカスター :

「表立っての介入、干渉…諜報も難く。
 直の攻略に持ち込めば、屍肉漁りの全てが我らに牙を剥く…そうだ」

ヨシュア・ランカスター :
   ・・・
「───だから貴公に任じたのだ」

SYSTEM :

 ───なれば。毒を以て毒を制する。
 其れに必要なものは武力では"ない”。

 端的に言って、そういうことだ。

SYSTEM :
 ビジター
 来訪者として乗り込め。
  /花を持たせて“実”を取れ。と。

謝花纏 :
「なるほど、ようやく納得いたしました。
 ずっと疑問だったのです。邸下が何故、自分のような下賤の身を御指名なさったのか」

謝花纏 :
「それは本件がサイクルに則った“収穫”ではなく、ルール無用の“収奪”だから。
 必要なものは刃先の鋭さではなく舌鋒の鋭さ。
 人を人とも思わず蹴落とせる畜生加減と、
 欲望のために秩序を利用する狡猾さを持ったうえで、
 嬉々として他人を使い潰せるだけの人材……」

謝花纏 :
「遺産局を始めとした、綺麗で、真っ当で、忠義に篤いエージェントには行かせられないわけです。
 FHの小汚い手段など、誰も彼も好みはしないものを率先して取れるエージェントなど、そうはおりますまい。
        ・・・
 その点、自分は元FH────掃き溜めの味は慣れたものですから」

謝花纏 :
 そう、この老翁が自分を指名してきたのは単純な話────
 自分以外に最適解がいないから、だ。

 FHの残忍で躊躇のないやり方に嫌悪感を持たず、
 罪悪感なく同じ手法に手を染めることができ、
 彼らの思考に馴染みがあるうえで、
 ・・・・・・・・・
 人的被害を厭わずに目的達成に臨めて、
         ・・・・・
 最終的に、此方に戻ってくることが確信できる人材。

謝花纏 :
 なるほどそうは居ない。特に最後があいまいだ。
 欲を満たすことに慣れれば、人間など容易く向こう側に転げ落ちるもの。

 希少ならば今後、この老翁に対する何らかの「札」に成り得る。
 切り札とまで楽観するつもりはないけれど……

謝花纏 :
「(自分の庭が危機に瀕し、どんな手にも頼らなければならないとなった時……
  ・・・・
  選べる札は、多ければ多いほど良い。
  その札を増やす行為と思えば……余所の庭の厄介事ではありますが、まあ、やってやれなくはない)」

謝花纏 :
「剪定鋏の持ち込みが入国検査で弾かれるというのならば、毒物を以て海を渡りましょう。
 我々ソラリスはある意味、どんな場所にも合法で持ち込める劇毒です。
 悟られることなく、御望みの“果実”を掠め取って御覧に入れます。邸下」

 微笑みを深くする。
 そう断言することが、何よりも自らの「庭」の未来に献すると信じて。

SYSTEM :
 天候はいかようにも変えられぬものだが、庭師にとって天の機嫌とはなるようになるものとして付き合うもの。

 その“最悪”を己の中でもっとも都合の良い筋道に変える、即ち…。
 最悪の中の最善を導き出せないような凡俗では、あなたはなかった。

SYSTEM :
 ノイマン
 天才の頭脳が、ではない。
.                  ブービー
 生まれた時から手段を択ぶ贅沢者を“甘ったれ”と嘲るのが道理の世で、生き抜いて来た少年のいまがそうさせている。

 その様子、そして“綺麗で真っ当”と嘯かれた、己が管轄の庭に何を思ったか。男は暫し沈黙を守ったが…。

ヨシュア・ランカスター :
「………………」

ヨシュア・ランカスター :
「現地における裁量は貴公に一任する、必要な備えもな…。
 此方から必要な情報は提供するが、直の戦力投入は出来ぬ」

ヨシュア・ランカスター :
「故に遺産は奪取こそ好ましいが、破壊、また…。
 次悪として、折り合いを付けられる利巧さの持ち主がいれば、“勝たせる”ように仕向けたとて構わん」

ヨシュア・ランカスター :
「………尤も、そのような場所に心当たりなどないが。
 何れが毒で、何れが薬。
 何れが望む華を咲かせるか…見極めるは十八番であろう。上手く手綱を握ってみせろ」

謝花纏 :
「は。承知仕りました、邸下。
 泥中からでしか窺えぬものもありましょう。どうあれ、UGNにとって……
 ・・・・
 御身の庭にとって最良の結果になるよう、力を尽くします」

謝花纏 :
「泥を付けても問題ない支度を整え次第、ローマへと向かいます」

ヨシュア・ランカスター :
     ソーン・ガーデナー
「励めよ、“楽園の看守”」

SYSTEM :
 泥中の蓮花を求めるが如き旅の支度に、
 よもやこの荘園は不適当だ。
 立ち去ろうとするか、あるいは…その背中に、ふと男が声を掛ける。

ヨシュア・ランカスター :
「帰る前に、言伝を恃まれている」

ヨシュア・ランカスター :
 アヤツ
「雲竜のだ」

謝花纏 :
「……は……言伝、……」

謝花纏 :
「……“閣下”から、自分、宛に?」

ヨシュア・ランカスター :
「…。その呼び名も変わらぬか」

SYSTEM :

 雲竜。
   シェ・ユンロン
 ───謝雲竜。

SYSTEM :

 山の守り人。在るがままを貴び、栄枯と盛衰を見守って来た、
 元UGN本部エージェント。肩書上は評議会議員。周遊し世界を臨む人。

SYSTEM :
 あなた個人をヨシュア・ランカスターが存じている理由は、あなた自身の働きであるのかもしれないが。
 それと同じかそれ以上に、その師/名付け親に依るところが大きい。なぜなら…。

SYSTEM :
 戦場の平定と眼は彼の役目だったからだ。

SYSTEM :

 雲竜にとっては周遊の最中に巡り合った古き輩に過ぎず、
 ヨシュアにとっても数奇な縁であれ刎頸の交わりというほどでないが。
 何事かを切欠としたある種の信を以てして、彼はその席を、雲竜は古い盟約を赦している。

“天衝華山”謝雲竜 :

 他山の石、以って玉を攻むもの。
 己が水を枯れさせることなかれ

“天衝華山”謝雲竜 :

 ───御前は御前の故を持つ。
 育てた花が映す己が色、見誤らぬよう願う

SYSTEM :

 他人の悪行も過ちも、全て己の糧となる。
 不変の身において流転を重んじる、あなたの師の言葉は、
 少なくともあなたに任ぜられる戦いを識るものに聞こえた…。

SYSTEM :
 ───さて。
 混沌を泳ぎ切るものとして、あなたを推薦したのは、
 ・・・
 どちらなのか。

 聞いてみてもいい。聞かなくてもいい。

謝花纏 :
 謝花纏は、謝雲竜の弟子である。
 少なくとも、自認としては。

 天涯孤独だった少年が「超人」となった時、それを秩序の内側に招いた者がいた。
 少年が欲望のままに奔る野火へと成らぬよう、自ら連帯に繋がれる利を説いた者がいた。

 誰にも守られず、愛されず、顧みられなかった少年を、
 守り、愛し、顧みた人がいた。

 それが謝雲竜だった。

謝花纏 :
 万象流転を則とする世界の中で、
 それでもなお、不変たるものが定命の人の中に在ると。
 巌のように信じている人だった。
 
 自殺以外のあらゆることを試みて今日までを生き延びてきた少年の心根にさえ、
 善性や良心といった綺麗なものが眠っていると期待してやまない人だった。

 世界は絶えず栄えては枯れ、変わりゆくものだと知っているはずなのに。
 くすみなき純真が汚泥に塗れて変節していくさまを、きっと何度も見ているはずなのに。
 あの人にとっては自分など、数多いる教え子の一人に過ぎないはずなのに。

謝花纏 :
 どうしてかあの人は、ゆるやかに擦れて薄まっていく心に、
      ・
 自分────俺のようなものを留め、気に懸けているらしい。

 あの人と同類の「友人」がそんなことを言っていて、正直、俺は半信半疑だったけれど。
 まさかこんなに早く、目の当たりにさせられるとは思っていなかった。

謝花纏 :
「(……目の前に居ないのに、久々に叱られた気分だ。
   センセイ
  あの師の説教のくせ、長くないだけ、変な感覚だけれど。
  正座してもいないし……)」

謝花纏 :
「(狙ったように言伝して釘刺してくるとか、案外この件、師も絡んでたりする?
  偶然? だったらタイミングが気持ち悪すぎ、地面に目でもついてんのかよ……
         ヒト
  いや、そういう古代種だった。おかしくないか。
  それともこのじいさまが告げ口したとか……そんな仲良しだっけか?
  何方がこの仕事に俺を挙げたにせよ、傍迷惑なことには変わりないけれど)」

謝花纏 :
「(“育てた花が”とか、ろくに見もせず知ったかしやがって……
  どうせまた変なとこばっか出没して、日本なんざろくろく寄りつきやしないくせに)」

謝花纏 :
「…………………………」

謝花纏 :
「自分からも一つ、閣下に言伝したいことを思い出しました。
 僭越ながら邸下、次御会いした時にでも、お伝え願えますでしょうか」

ヨシュア・ランカスター :
「赦す。しかし…」

ヨシュア・ランカスター :
 アヤツ
「雲竜が”いつ”ここを訪れるかまで…確約はせぬぞ。
 貴公がその身で存じていようが」

謝花纏 :
「はい。あの方の放浪癖は承知しておりますゆえ。
 いつになろうとかまいません」

謝花纏 :
「邸下がお忘れになりさえしなければ、無限の時がある我らには、いつか必ず届くはずですから」

SYSTEM :
 老翁はあなたの不遜/正論を、同じく承知の上の経験からか何も言わず流した。
 こんな言葉がある。沈黙は肯定。

謝花纏 :
 にこりと微笑んで、身の程知らずの舌を一拍引っ込める。
 それから。

謝花纏 :
朱に交われば赤くなる
「近朱者赤、近墨者黑……と申しますが、自分はもう土地を決めた身。
 いくら濁りが棲みやすかろうと、染まることはありません。
 庭師の腕や人柄は、何よりもその花を見れば分かるというものですから、
 自分の育てた花がどんな色をしているのか、是非その目で確かめにいらしてください」

謝花纏 :
「……と。
 そう、お伝え願えますでしょうか」

SYSTEM :
 ………それは己はさておき己の庭に持ちうる限りの理想を入れ込んで来た人間ならではの、遠い目の感想に対する当てつけだったのか。
 あるいは、別の所以でもあったのか…。

 だが、これを聞いて能天気に『お会いしたい』と受け取るヨシュア・ランカスターではなく、なれどもそこに言葉を弄する彼ではない。

ヨシュア・ランカスター :
「…請け負った」

SYSTEM :
 伝えたのちのことまでは
 どうなるか予測不可能だが。

謝花纏 :
「はい。感謝致します、邸下」ニコ

ヨシュア・ランカスター :
「………」

SYSTEM :
 UGN評議会議長は、半分は感謝ではないその笑顔の意図を察したのか否か、重々しく頷くにとどめた。

謝花纏 :
「では……邸下、発つ前にもう一つ。
 遺産についてお尋ねしておきたく、よろしいですか」

ヨシュア・ランカスター :
 ..カテゴリ
「…金型を訪ね直したいわけではあるまいが」

ヨシュア・ランカスター :
「発つ前にも目利きを望むか。如何した」

謝花纏 :
「性分でして」

謝花纏 :
「邸下は遺産が『運び込まれる』と仰いましたね。
 ということは、『今』何処にあるのか、所在が掴めているのではないかと思いまして」

謝花纏 :
「運び込まれたところを狙うからには、そうでなくてはならない理由が在ると推察いたします。
 今すぐに手を出せない事情でも?」

ヨシュア・ランカスター :
「…貴公に任せた任は探偵でない。
 収穫だ。分かっておろうな」

SYSTEM :
 ただ言の葉のわりに、
 彼は不機嫌も怪訝も見せなかった。

SYSTEM :
 ………意味するところは幾つか考えられるが、ヨシュア・ランカスターの胆力を弄した言葉で崩せるとは考えられない。

 ただ、何も識らせる気がないなら、その言葉をあしらう術は彼にある。
 "今”そのカードを持っているのか、知っているとして、それはどこかのセルか、それとも………。

謝花纏 :
「(『知らない』、もしくは『言いたくない』のであれば、
  この御仁はもっと別の言い方をするはず。

  ……『言えない』、が適当なところか)」

謝花纏 :
 何かあるのだ、彼の遺産には。
 議長たるものが口重になるだけの理由が。
 数多のセルが求めたくなるだけの理由が。
 何にせよ、手前で調べるしかないというわけだ。

謝花纏 :
「承知しております、邸下。
 詮索のし過ぎでございました。御許しを」

ヨシュア・ランカスター :
「………うむ」

ヨシュア・ランカスター :
「他の用向きは。人手は送り込めぬとて、送りようはある」

謝花纏 :
「いえ。此方から尋ねておきたいことはもう御座いません」

ヨシュア・ランカスター :
「良かろう。…では行け」

謝花纏 :
「は。失礼致します、邸下」
 内心の鬱屈だとかは、最後まで表には出さない。
 折り目正しい礼をした後に、豪奢な貴賓室を辞する。

SYSTEM :

 …去る守り人の背中を見送る厳めしい顔つきが、ふと物憂げに細められる。

SYSTEM :
 ことUGNは人手不足と常に縁を切れぬ。
 ましてやヨシュア・ランカスター直々の任を果たせるものなども。

 先に送り出した、名を挙げ訪ねた雲竜の───。

ヨシュア・ランカスター :
   アヤツ
「………雲竜の高弟、か」

SYSTEM :
 その高弟は、彼の受容を、裁定者の気風を受け継いではいなかった。

 他山の石に充てられて初心を忘れ、賊に堕すことのないように…と。
 その言葉は、彼相手でなくとも、必要な限りに伝えられていただろうが。

SYSTEM :
 嘗て友が酒の席にて語った誤りを思い出しながら、男は荘園で幾度となく廻る思考を再び開く。

 己にも血を分けた子等がいる。
 最愛の息子は亡くなって久しく、娘は片や明日も知れぬ地へ発った。
 片や、遠い聖者の影を追う。

 そして………。

ヨシュア・ランカスター :

「『子』の悩みとは、尽きぬものだな………」

SYSTEM :
 あるいは“弟子”ならまだしも。
 雲竜に限って、その呼び方は有り得ぬものだ。

SYSTEM :

 ───数奇を、郷愁と共に呷る。

SYSTEM :
           ・・
 あの流浪人に出会った若造は、なるほど強くなった。
 だが世界に権利の掌を広げ、その力を義務の楔で留めた我が身は、いまや斯様なさま。

 己自身が痛感する。いつかの郷愁から、今に至るまで。

SYSTEM :
オーヴァード
 超人は強いほど、須く不便だ───。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 イタリア首都ローマ。
.                パーシェンコーハイ
 中国黒社会の尻尾でもあるFHセル《八仙過海》の“七花胡”。
 対価と利害の一致を伴って、リグ・ヒンサーの一員となった外様のエージェント。

 それがあなたの二つ目の名前。

SYSTEM :

 件の遺産が運び込まれるまでの期日が迫ろうとしている中、
 あなたは急造と雇われの混じったチームのひとつを受け持った。
 ベクトルの違う跳ね返りだらけだが、それで苦労をあらわにするほど柔ではなく、受け持ったチームは最早“あなたの”ものになっている。

SYSTEM :

 名乗ったあなたの前で“赤の鬼人”は眉一つ変えず、
 さりとてあなたは“赤の鬼人”の眼に眉一つ動じず。
 元より猜疑心の強い性格らしい相手にしては、暫しの時が経ち、なるほど順当なところに収まったと言える。

SYSTEM :

 ただ、強いて…。
 あの当時、気になることがあるとすれば………。

“帝釈天” :

 
『怪不得───』

“帝釈天” :

『華の香、いずこよりと思わば…其方でしたか。
 同郷…ですね?』

"赤の鬼人” :

「何処で生まれ、何処で育ったかなど構わん。
 何を成し、何で死ぬかだ」

"赤の鬼人” :

「───荒事の経験はFHの常だが、人を使うことはどうも“そこら”からは集まらん」

"赤の鬼人” :

「巧く躾けろ。報酬分程度はやってみせるがいい。
 出来ねば死ぬだけだ。知っているだろう?」

SYSTEM :

 その“赤の鬼人”の傍らに、華人がひとりいたこと。

 コードネームのみは即座に調べた。
 インダラヤ
 "帝釈天”───曰く印度の名高き雷霆の神をもじった真言の名。

SYSTEM :

 薄らと微笑む美女は、暴力賛歌など謳う場所にずいぶんと浮いていた。
 何ならその呼び名自体がたいそうな皮肉である。

 …それを言えばあなた自身も名にそぐう破落戸崩れとは聊かに遠いところにいたが。

 彼女はその破落戸の大将の言葉をかわすあなたにも、“赤の鬼人”にも口出しをせず。
 ただ最初の一度、にこりと微笑んでからは、何ら言葉を発せず控えていた。

SYSTEM :

 ………逆に言えば、気になるコトなど、“リグ・ヒンサー”の内部で言えばそのくらい。

 ざっと下っ端や外様の範囲で触れて分かることは、
 ここが社会のはみ出し者だらけの纏まりだという益体もない話だ。

SYSTEM :

 だから、どちらかと言えば、気にかかることは内部に留まらない。

SYSTEM :

 だが、あなた自身がいちいち調査のために席を開けていては、如何に流儀の違うFHとて、いやだからこそ、手綱を握る手を緩めるものではなかった。

 そもそもランカスターの当主はあなたに命じたが、あなた“単独”に命じたわけでもない。
 あなたは"それ”を待つ傍ら、思考なり、受け持ったチームなりの整理をしているところだった。

"七花胡" :
 FHとしてローマに赴くにあたって、然るべきカヴァーを用意した。
 ベルヴェデーレ
 “七花胡”の名前。真と嘘を半々ずつの経歴。それから、衣装。

 服は、かつて生まれ育った街で、破落戸紛いをしていた頃に着ていたものを原型にした。
 縁もゆかりもない西洋の国で衣服まで変えるのは、思考のベクトルを彼方寄りに変えるため────というのが一つ。

 本音としては。
 庭師の服に、余所の土は付けたくなかった。
 だからだ。

"七花胡" :
    ボス
 現状の上司にあたるところの、“赤の鬼人”。
 それはまあ────いい。良くも悪くも予想通り。
 遺産争奪戦に際し人手を募集していて、なおかつ、気質由来を問わず求めるのは貢献のみ。
 一番シンプルで分かりやすい、だからこそ彼のセルは紛れ込みやすい。

"七花胡" :
 “貴人の庭”は政府関係にまで手を伸ばせるほど強い影響力のかわり、外様に厳しい。
 “御手翳す開放者”は不明点が多く、これは直感だが、頭の回り鼻の利く人間が統率者だ。
 どちらも無視できない存在ではあるものの、隠れ蓑にするには不適だった。

"七花胡" :
 “リグ・ヒンサー”……中国人の女が、セルリーダーの傍に控えていることが、気がかりといえば気がかりではあるが。
 それも実力主義がゆえの登用、で理由としては片付いてしまう。
 そも、同じ“中国人”である自分を迎え入れているのと同じと、そう言われてしまえばそれまでだった。
 
 気にはなるが、率先して調べるほどではない。今はまだ。
 それよりも優先するものがあって、其方に部下を向かわせていた。

"七花胡" :
「……そろそろですかね。全く、何処で油を売っているのやら」

SYSTEM :
 ………噂をすれば影。急激に現れる足音。
 露骨だが存じている、エグザイル・シンドロームの侵入作法。

“アセルス・デスミオス” :

「大将」

SYSTEM :
 くたびれた30代後半の華人が、あなたの仮の塒に足を運ぶ。

 軽薄な笑みと無精髭には、凡そ毅然や凛としたものとは正反対の印象を与えるが、何を隠そうそれがあなたの手駒である。

SYSTEM :
 手駒───訂正の必要はない。
 庭を作るもの、庭と折り合うもの、“彼”はそのどちらでもないのだ。

SYSTEM :
 彼はあなたの要望と目的に合わせて調達された棒銀である。
 シャドウランナー
 名前のない捨て駒だ。

SYSTEM :
         コード
 故に名前ではなく記号のみ明記するが…。

 過去、日本に存在したFH複合型セル『ビーハイヴ』に名を連ねる調達セルのセルリーダー。
 更に遡って7年以上前に壊滅した/させた中国セル『八仙過海』の活動履歴を持つエージェントだった。

SYSTEM :
 同名と思しき人物は今とは似ても似つかない冷酷な破壊工作員だった彼は、どういう事情か定かではないが、牙を抜かれていた。

 ビーハイヴ壊滅の折、UGNとの司法取引が出来るだけの材料を持っていたことで生き延びた彼は、
 いま政治的交渉の末にあなたの子飼いになっている。

SYSTEM :
 公にする“べきではない”コトの際に使われる何でも屋。それが彼だ。

“アセルス・デスミオス” :
「ただいま戻りましたよ、と」

"七花胡" :
「遅いですよ。また余所で引っ掛けようとしていたのではないでしょうね」

“アセルス・デスミオス” :
「はっは、手厳しっ。
 おっさんは労いと甘い言葉はいつでも歓迎中だけど、引っ掛けたなんてとてもとても」

"七花胡" :
「どうだか。此方に来て即、向こうでは見ないタイプの女性にばかり目移りしていたではありませんか。
 貴方が理由で“リグ・ヒンサー”への加入を断られたら、どうしてやろうかと思いました」

“アセルス・デスミオス” :
「あのねえ大将? そりゃあさ。
 おっさん確かに声かけること、」

“アセルス・デスミオス” :
1d6 回 (1D6) > 6

"七花胡" :
おい

“アセルス・デスミオス” :
「六回だったけどね? 聞いてよ弁明」

"七花胡" :
「言って御覧なさい」

“アセルス・デスミオス” :
「だいたい引っ掛けて捕まる女なんて、甘い言葉と引換に実質命要求するパターンが殆どよ?
 一夜のライン弁えてますゥー "お茶しませんか”は挨拶ですゥ」

SYSTEM :
 彼について敢えて特筆すると、
 ちょっと女癖が悪い。酒癖も悪い。

 尚もここにいるのは、理由はあるが、割愛。

"七花胡" :
「まあ、食い散らかしで貴方がどう下半身にしっぺ返し食らおうと、『ざまあみろ』以外何も思いませんけど。
 手足さえ喪わなければ。貴方の利用価値、今のところそれくらいですし」

“アセルス・デスミオス” :
「残酷だ…おっさんはこうして更年期まで社会の歯車として生きてゆくのだ…」

“アセルス・デスミオス” :
「…」

“アセルス・デスミオス” :
「首から伸びるヒモを締める5秒前っぽいんで、この辺で本題入っていいすか?」

"七花胡" :
「分を弁えていて大変結構。駄馬にしては殊勝な態度ですね」
 本題どうぞ、の合図。

“アセルス・デスミオス” :
うっす。

SYSTEM :
 ロバ
 駄馬が軽い口調で、言葉を択ばず率直に語る。

SYSTEM :

 …この話にはそれなりに重要なコトが欠けている。
 遺産の出処は何処で、何の理由で運び込まれるのか。

 どれかのセルが、他のセルを吊り上げるために仕組んだことか、
 それとも何か別の思惑を伴なって、このローマに火をつけたがっているのか。

SYSTEM :

 ランカスターのこともある、あわよくば遺産の争奪戦が始まる前に“任務”を果たすことも視野に入れ…。
 あなたはこの子飼いに、軽い勢力図の確認と“赤の鬼人”からの通達との相違点の確認…。
 それから、ローマ内に存在する一枚岩でないものについての認識を並行して進めていた。わけだが。

“アセルス・デスミオス” :
「遺産の出処は分からないことが分かりました!
 …っておっさん言ったら怒るっしょ。まあ最後まで聞いてから怒ってちょ」

“アセルス・デスミオス” :
「運び人はドンピシャ………ギルドよ、ギルド。
 そもそも“リグ・ヒンサー”以外にも茶々入れてるっぽいし…。
 どこかから河岸を変えて商売しに来たのがいるのは確かねえ」

“アセルス・デスミオス” :
「ただねえ…。
 おっさんの伝手と数日で拾ってこれるほど、浅いトコの繋がりじゃないね。
 てか、それだったら爺様が教えるでしょ?」

SYSTEM :
 肩を竦めて喋る男の言葉に出たギルドとは、
 今更念を押して説明することではないだろうが…。

SYSTEM :
 19世紀末のイギリスで“教授”と呼ばれる人物が作り上げたネットワークを雛形とし、
 冷戦体制にあったアメリカとソ連、双方の“手の痛まない”走狗探しが肥大化して生まれた、
 イリーガル・エージェントの若者らしい無鉄砲さと柔軟性が作り出した、巨大犯罪ネットワークを指す。

SYSTEM :
 情報伝達の量と速度において、あらゆる公的機関が想像も出来ない個人主義の恩恵と問題点を抱え、
 ・・・
 ギルドという言葉一つで括っても雲泥の差があるが…。
 重要なのは、彼らは結果を重んじる方の商売人であり、実力と実績で倫理を"黙らせる”性分だということだ。

"七花胡" :
「なるほど、流しているのはギルドでしたか。
 であれば遺産の名前でセルを釣り上げてボロ儲け、が一番わかりやすいシナリオではあるのですが……」

 とんとんとん、と机の端を叩いていた指先が止まる。

"七花胡" :
「邸下が口を閉ざすだけはありますね。
 単純に力ある遺産として売り出したいだけであれば、由来を以て喧伝するのが最も簡単です。『どこどこの遺跡から出土した』、とかね。
 それを深部に潜らせたままということは、わざわざ取り上げずとも売れると踏んでいるか……」

"七花胡" :
「現状手元に置いているギルドとて、軽々には扱えぬ代物であるか。
 金型が金型ですから、案外、さっさと何処かの有力セルに売り払ってしまいたいのかもしれませんね」

"七花胡" :
「とはいえ、連中は根っからの業突く張りです。
 情報を伏せているのも、セル間の期待や闘争を煽れるだけ煽って利益を上げようとしているだけかもしれません。
 ギルドとは戦争商人のようなもの。
 葉裏に潜んで栄養を掠め取る害虫が、此処では庭師を恐れず大手を振って商いに勤しめるというわけです」

"七花胡" :
「出所が掴めなかったのは良しとしましょう。元より簡単に判明するとは思っていない。
 他には?」

“アセルス・デスミオス” :
「こいつが主題よ大将。そのギルドなんだけどねえ。
 言ったでしょう? “いろいろ”茶々入れてるって」

“アセルス・デスミオス” :
「どこと何処が手ェ組んでるか、何処が一緒に“メイワクだ”と思ってくれるかは…今のトコさっぱりだってコト。
     リグ・ヒンサー
 それ言ったら“うち”もちょーっと引っ掛かるコトあるしね」

"七花胡" :
「このテの尻軽には、彼方でも此方でも困らされてばかりですね」嘆息。

“アセルス・デスミオス” :
「そりゃ大変だ! いったいどんなダブルクロスをご存じで」

"七花胡" :
「貴方よりは品行方正ですよ」

“アセルス・デスミオス” :
(もと破落戸の亜種が、“どっ”と道化て笑った…。)

"七花胡" :
さっさと続きを話しなさい、と手でシッシッ

“アセルス・デスミオス” :
へーい。

“アセルス・デスミオス” :
「ま、大将、信用は稼いでるけど“外様として”だし、
 あの昔ながらのギャングタイプの中身覗き切ってるワケでもないでしょ」

“アセルス・デスミオス” :
「もっと言えば、ローマに根強い繋がりがあるっぽい“貴人の庭”も…。
 此処で根を広げ始めて3年そこらの“御手翳す開放者”も。ン十年経っても隣の人間のアタマなんか分からないんだ、瞬き一つで中身覗こうなんざとても」

SYSTEM :
 ・
 誰がギルドを呼び込み、事を始めているかまでは。今のところ定かではない。
 遺産の手掛かりを探すなら“そこ”だという第一歩以上ではなかった。 

“アセルス・デスミオス” :
「………ただ大将。
 わりと取引に律儀なあんただから言うんだけどね」

“アセルス・デスミオス” :
ケラウノス
「神の雷って言われて浮かべた遺産のイメージで、最悪のケースってヤツを考えたとして、だ」

“アセルス・デスミオス” :
  リグ・ヒンサー
「それがウチなら、砂のかけ方に打算は要らないよ。
 大将と同じようなタイプ、ローマにいたとしたら、よっぽど品行方正なFHだと思いねえ」

"七花胡" :
「………………」

"七花胡" :
「自分のやり方が、『行儀のいい方』だってことには自覚ありますよ。そういう風に躾けられましたから。
 綺麗な場所で食い散らかすような真似をしたら後ろ指さされますが、此処じゃ裏切ったもの勝ちですからね。
 今のは忠告として受け取っておきますよ」
 貴方に諭されたのはちょっと癪ですけど。

"七花胡" :
「邸下は“大勢に影響なしと見定めたらば、いずれかのセルに寄せるも良し”と仰っていましたが……
 腹を捌かない限り、寄せようがない。遺産を手にしてなんとするか、欲望の中身が分からないという意味では、此処も同じです」

"七花胡" :
「このセルを含め、引き続き各方面に探りを入れましょう。
 近々で派手に動きそうな組織は?」

“アセルス・デスミオス” :
「リグ・ヒンサー」

SYSTEM :
もはや本末転倒の即答である。

“アセルス・デスミオス” :
「大将も御存知だろうけど“御手翳す開放者”は基盤が一歩劣るし、“貴人の庭”は排他的で保守的。

 前者は派手に動きたいけど動けないし、
 後者は派手に動けるけど動きたくない」

“アセルス・デスミオス” :
「外様だろうがお構いなしで、使える頭数揃えて、物理的に二つ纏めて潰そうってくらいの“ハデなの”やろうとしてるの、代表は此処だよね。
 いや、ずいぶん気合入れてるモンだ」

SYSTEM :
 ひとしきり話してから、アセルスは神妙な面持ちで目を瞑った。

“アセルス・デスミオス” :
「ああそうそう、それと関係する………。
 いいニュースもある」

"七花胡" :
聞きたくなかった、を隠さない大きな嘆息

"七花胡" :
「まあ、それを当て込んで潜り込んでるのは此方ですが。
 荒っぽいのが多くて嫌になるんですよね、リグ・ヒンサーの連中……」ぼやき

"七花胡" :
「……良いニュースとは?」本当に良いんでしょうね の顔

SYSTEM :
 ちなみに彼が敬虔な信徒などであれば、
 そこより放たれる吉報とは天と呼ぶべきものへの感謝や畏敬であるだろう。

SYSTEM :
 つまりだ。

“アセルス・デスミオス” :
「───次ウチに来る“雇われ”は金髪の別嬪です」
         バカ
 男は曇りなき眼で宣言をした。

SYSTEM :

 一先ず彼は敬虔な信徒などではない。
 まるでダメなオーヴァードである。

 つまりここから飛び出すのは妄言だ。

“アセルス・デスミオス” :
「大将聞いてよ、大は小を兼ねるって言葉作った日本人はやっぱ天才だ」

“アセルス・デスミオス” :
           タッバ
「育ちはイギリスかな。身長凄いだけあって恵み豊かなんだけど、
 おっさんくらいになると筋肉のカバーリング範囲じゃない南半球にこそ至宝を見出し───」

SYSTEM :
 これ以上は中の人の褒め言葉が思いつかないため、
 どうか早々に止めて頂きたい。

"七花胡" :
「ッハア~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

"七花胡" :
「種牡馬にでも転職なさったらどうですか? この駄馬」

“アセルス・デスミオス” :
「あ、すんません土下座何発で話戻してくれますか?」

"七花胡" :
1d100+20 (1D100+20) > 84[84]+20 > 104

"七花胡" :
104回

“アセルス・デスミオス” :
ちょっとォ! 労基呼んでェパワハラよぉ!(裏声)

"七花胡" :
自分が労基です

“アセルス・デスミオス” :
アア、オワッタ…

"七花胡" :
貴方を守る法律はありません。諦めるように。

SYSTEM :

           エンジェルハイロゥ エグザイル
“アセルス・デスミオス”。感覚強化と肉体変化のクロス。
 頑張れば一分以内に腹筋感覚で地獄の土下座レースがいける。

SYSTEM :
………。閑話休題。

"七花胡" :
「貴方の懺悔で床をぶち抜かれてはたまったものではありません。
 で? その雇われとやら、どういう素性で?」

“アセルス・デスミオス” :
ウッス

“アセルス・デスミオス” :
「“赤の鬼人”がローマの眼の上の瘤を排除したいからって、あちこち招集かけてンのは知ってっしょ?」

“アセルス・デスミオス” :
「ローマで浮世離れした素性知れずのイリーガルを、どこ経由か分かんないけど人事が拾ったの。
 で、それが“帝釈天”ってのの耳止まって採用。

 身内以外で一番余裕と規模のあるウチと緩やかに連携してねって感じ」

“アセルス・デスミオス” :
「大将、頭数だけ揃える気ィ満々の大きい餓鬼どもを襟首揃えさせたワケだけど、そういうのみたいな行儀の悪さもなければ、青瓢箪って感じもまるでしない。

 どう扱うかはともかく(あと私情はともかく)ニュースではあるっしょ」

"七花胡" :
「“帝釈天”経由というところが少し引っ掛かりはしますが……まあ、駒が増えるというのは、ニュースですね」良くも悪くも。

"七花胡" :
「貴方の言い方だと、グループではなく一人なのでしょう? そのイリーガル。
 こんな火薬庫みたいな場所に単身で来るというあたり、よほどの自信家なのでしょうが……」

"七花胡" :
「まともに言うことを聞く駒だといいのですがね。
 こればかりは会ってみなければなんとも、ですが」

“アセルス・デスミオス” :
「そそ、おひとりさま。けど、珍しくもなさそうよ?
 だいいち鉄火場に一人でやってくる戦争屋は珍しいけど、珍しすぎるわけでもない。此処に何人か“そういうの”がいるみたいにね」

“アセルス・デスミオス” :
「いるわけよ。食って生きていくため、好きなことやるため、金のため、後は………うーんそうだな、死ぬため。
 ・・
 強い以外の骨子がないからそう生きているようなヤツに、自信って”あればいい”であって“ないとダメ”でもないとおっさん思うワケ」

“アセルス・デスミオス” :
「………ただその別嬪さんがどれなのかはさっぱり! 少なくとも金と自殺志願は除外でいいと思うよ、おっさん的に」

SYSTEM :
 しかし、火薬庫とは言い得て妙である。

 それが分かっている人間なら、
 どこかの傘に売り込むようなものも…。
 傘同士をぶつけ合わせるものも、
 ただそこを“自分の欲望の矛先”と見做して踏み荒らすようなのも出るだろう。

“アセルス・デスミオス” :
「あとは、…その半分身内がXデー近くに来るっぽいね。元かな?
 大将知ってる? ファントムストークスっての」

“アセルス・デスミオス” :
「日本じゃ多分遠目かな?
 ・・
 主流と折り合い悪いかんね」

"七花胡" :
「その所感は実体験ですか」くすり。少し意地の悪い微笑み。

"七花胡" :
「この機に乗じて武功を挙げるか、ストレートに遺産狙いですかね。
 まあ、自殺志願でないのなら良しとしましょう。その手の類が一番振れ幅あって、使ってて怠いので」

"七花胡" :
「“ファントムストークス”まで此方に? 専ら裏社会の傭兵と名高いセルでしょう。
 反コードウェル派かつ、アジア圏での交戦記録はあまりないセルですが、存在自体は存じていますよ」

"七花胡" :
「"マスター・ハーヴェスター"のセルまで招くとは……"赤の鬼人"の本気度がうかがえますね。
 勢力図が大幅に書き換わりかねない……」

SYSTEM :
   ビーハイヴの死にぞこない
 ───“アセルス・デスミオス”が笑う“かたち”の冗談を作って流した。
 意地の悪い微笑みはきっと全てを知っているが、“それ”は庭に置いている生き物ではない。詮索は任意、矯正は余分だ。

“アセルス・デスミオス” :
「ちなみに大将、当人のファーストコンタクトを“用意周到なヤツ”って覚えられたいなら、その呼び方禁句ね。
..モルデ=メテオリーテ
 “死滅天隕”が本人の肩書。身軽じゃない“マスター”を嫌うエージェントはいるにはいるけど、彼もそのクチってワケ」

“アセルス・デスミオス” :
「連中、全員揃うことは“ない”けど…。
 ・・ 
 全員、契約関係上の裏切りには情け容赦ないから気を付けてちょ。ハイエナ紛いをおっさんにやらせるなら特にね」

SYSTEM :
 “赤の鬼人”は確かに用意周到に事を進めているとも見える。

 分かるのは、そのXデーがローマ中の水面下を大きく揺らすということだけだ。

"七花胡" :
 形ばかりの微笑みで流された。此方もそれ以上ほじくってやろうとは思わない。どうこうしたところで、死体はこれ以上変わりやしないのだし。
 交わす冗談は軽やかに────ただし、時折手綱は引き締めてこそ。

"七花胡" :
「分かってますよ、それくらい。ただ、『収穫者』なんて御大層な名前だったものですから、少し口にしてみたくなっただけですよ。
 裏切ったらアウトなんて、お行儀のいいセルではありませんか。
 その手の連中には確かなことだけ約束して、都合の悪いことはお口にチャックでいきましょう」

"七花胡" :
「案外、そのセルにこそ、遺産を寄せてしまってもいいかもしれませんね」
 なんてね。

“アセルス・デスミオス” :
「おっさん的には武闘派に持たせてよさげなモノでもなさそーな気がするけどねえ…」

“アセルス・デスミオス” :
「…まあ何、おっさん使う時にはいつもやることでしょ!
 任せてちょーだい、おっさん裏切りは専門よ? 裏切り前の胡麻摺りもねゲッヘッヘ───」

SYSTEM :
 ───そう下卑て笑う“かたち”の冗談をほざいた男が、
   ・・・・・
   裏切れない理由をあなたは持っているし、知っている。

SYSTEM :
 彼に欲望の火はもうない。もはや燻ってすらいない。
 よくいる挫折者だからだ。唯一ある部分の違いが、彼を幸運にも活かす。

 男が差し出した命綱は、男と全く縁もゆかりもない、ただ同じセルのチルドレンひとりだ。
 いったい何を思ったのか、当時そいつの命を引換に、彼は牙を抜かれる前の全てを差し出した。

SYSTEM :
「囚人のロバ」「繋がれたロバ」…。
 もはや本名を名乗ることもないその名の由来はプレセペ星団だ。

 ラテン語で『飼い葉桶』を意味するが、
 別名の英語/中国語では違う呼び方をする。

SYSTEM :
 
 ビーハイヴ/積尸気。

SYSTEM :

 飼い慣らされたハチの死体を嘯いた男が、またあなたから仕事(Xデー向けのもの)と、飼い慣らした大きい餓鬼どもの調練を受け取ると。
 エグザイル特有の退室方法で彼はそそくさと立ち去って行った。時は金なりだ。

"七花胡" :
 手を一振り、音もなく去っていく背中を最後まで見送ることはしない。
 情報の「献上」が終わったら、会話はそれで終わりだからだ。
 自分の支部のエージェントやチルドレンなら当たり前に行う、士気上げのための声掛けだとか、メンタルケアだとか、土着意識を養うための世間話だとか、そんなものは考える必要が無い。

"七花胡" :
 あれは自分の庭に転がり込んできた害虫の群れ、その死体にすぎない。
 庇護下にはなく、使われるだけの存在。従うしかないのだから従わせるための調教ひとつといらない。
 なくなったとて、ちょっと困るだけで大して心も痛まない、単なる駒。
 随分安上がりだ。楽で助かる。

"七花胡" :
 イタリアに来てからは、そんな感じばかりだ。
 けれどだからこそ。

 任務に赴くエージェントの背中に、掛ける言葉だとか。
 泣きそうなチルドレンの肩に、寄せるてのひらだとか。
 帰ってきた彼らが土産と共に浴びせてくる、持ち帰り話だとか。

謝花纏 :
 そういうものを、決して「億劫」とは思わなくなった自分を。
 ひっそりと隅に、見つけてしまいなどした。

"七花胡" :
「さて。仕事をこなして、さっさと帰るとしましょう」

SYSTEM :

 ここ半月程度の滞在。
 
 FHのまだ理性があるものほど、自認して認める、ドブの色。
 遠ざかっても尚見覚えが残ってしまう、他人を踏み付けて蜘蛛の糸を掴む鉛色の大地。

 他山の石だらけの既知の世界で、
 あなたはするべきことがあった。

SYSTEM :
 ・・・・
 生き易い欲望の徒として生きなかった理由のために。
 …その理由の色こそが、あるいは、ドブの中に宝石を見出した者達との違いなのだろう。

SYSTEM :
       ビジター
 他人の庭への来訪者は数知れず。

 だがあなたの欲望だけは、
 断じてこの情熱の内側にない───。

 あるのならば、
 あの死体が牙を抜かれる前のような、
 そんな生き方が…。

SYSTEM :

 ………いいや。

 自殺以外の全てを手段にし、
 己の欲望のままに野火を放つような、

 世界を脇から見て弄びながら、
 その野火のめぐるさまを見て、
 充足を求める生き方があったはずだからだ。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :

 シーンが終了しました。
 ロイスの取得等ございますか?

"七花胡" :
そうですねえ……取得というわけではないのですが

"七花胡" :
Sロイスの宣言は可能ですか?

GM :
ほう…

GM :
もちろん! Sロイスの指定そのものは「いつでなければならない」等のことはないはずですね。

"七花胡" :
では。確認が取れましたので……

"七花胡" :
既に取得している「庭の花たち」のロイスを、Sロイスに指定します。
よろしいですか?

GM :
もちろんです。戻る理由の最たるものとして認めましょう。

"七花胡" :
ありがとうございます。新規取得は……いったん無しで。

GM :
では、キャラシートの追記と記入をよろしくお願いします。

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。


・シーン5「Farsa-欲望の徒よ(1)」

SYSTEM :

【シーン:Farsa-欲望の徒よ(1)】

 登場PC:全員
 登場侵蝕:あり

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
シークレットダイス

SYSTEM :
        【 Now Loading... 】

 ア ス ラ
『赤の鬼人』。
『リグ・ヒンサー』のリーダーにして、
 かつて栄華を誇った無双の無法者。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 あなた
 夏瑞珂が、
 戦場の渡り鳥になって三年近くが過ぎた。

SYSTEM :
 幸運にも死に損ない、不運にも終わり損ねて。
 そんな彼女には、イタリアに渡る機会があった。

SYSTEM :
 切欠は何のこともない。
 イタリアのローマに本拠を置くFHセル『リグ・ヒンサー』が、
  イリーガル 
 その手の逸れ者のうち、腕に覚えのあるものに声を掛けたからだ。

SYSTEM :
.   ハヤイモノガチ
 報酬は応相談───遺産を渡す気はなくとも、遺産以外の代替というかたちで、その手のハゲタカを釣った。
 
 遺産に興味のないハゲタカは多数派であり、全てではない。
 かつての栄光を掴んだ人間“らしい”セルリーダーの招集に従ったものもいれば、
 金や故ではない、戦場にこそ何かを見出すような破綻者もいた。

SYSTEM :

 あなたがどっちだったのか、
 そもそも当てはまるのかは、
 この際ここでは語らずにおくが…。

 はじめて情熱の地を訪れた時、
 出迎えた男のそう多くない口数に、なんと答えただろうか。

"赤の鬼人” :
「“闘争代行人”がこんな東洋人とはな…」

"赤の鬼人” :
「ローマに遥々ようこそ。情熱には情熱、暴力には暴力で歓迎してやろう。
 何を求めに宴に来た?」

夏瑞珂 :
      イタリア       ローマ
 三年ぶりの来訪と、三年越しの訪問。すべてが焼け落ちたあの日、仕事が終わったら遊びに行こうと約束していた場所にわたしは居る。

夏瑞珂 :
 どこへ行っても、もうアレックスたちはいない。寂しいわけではなかった。
 ただ、ふとしたときに彼らの不在を痛感した。いなければ、それは仕方がないことだった。

夏瑞珂 :
「記念にニホンゴでも話してあげましょうか? コニチハ~」

 高い位置にある頭を仰いで、ひらひらと手を振る。
 暴力賛歌を看板に掲げ、鬼を名乗る男が、次の雇い主だった。

夏瑞珂 :
「いち、気に入らない相手を殴り飛ばす力」

 ぴっと指を立てる。暴力の手段。ハゲタカ向けのご褒美。

夏瑞珂 :
「に、気に入らない相手の情報」

 二本目の指。暴力の理由。彼に限らず、人が集まっていれば期待はできる。

夏瑞珂 :
「さん、"リグ・ヒンサー"」

 三本目。思いつきは行動の原動力だ。

「素敵な名前。気に入ったわ、とても」

"赤の鬼人” :
 ジャポーネ
 日本人の真似事を彼は鼻で笑った。
 実際に区別しようという意図ではない。必要性がない。

 だがいちばん鼻で笑ったのは三つ目だ。

"赤の鬼人” :
「そいつは来世で強請ることだ」

SYSTEM :
 つまり十年早いの超ロングバージョン。

 生まれ変わって俺が死んだときに貰え。

夏瑞珂 :
「しょんぼり」
 にこにこ言って、指をいっぽんひっこめる。ぶい。

"赤の鬼人” :
「ふん…」

"赤の鬼人” :
「気に入らない相手など、
 生きていれば腐るほど見つかる」

"赤の鬼人” :
「何人目か知らんが、よほど殴り難いらしいな…。
 精々巡り合わせに期待しておくことだ」

"赤の鬼人” :
「───まあ、いいだろう。
         バッカーノ
 決行はX月X日だ。馬鹿騒ぎの合図に言葉はない。お求めのものが見つかるよう、派手にやれ」

SYSTEM :
 彼はあなたの“理由”を深堀しなかったが、殊更否定もしなかった。

 同じだからだ。気に入らないものへの対処が。そうであるべきだと思っているからだ。

夏瑞珂 :
 他人を跳ね除け、踏み潰す。された側はやり返す。二度とそんな真似を起こす他人が出ないよう、徹底的に。

 ああ、その分かりやすさの──なんて息のしやすいこと。

夏瑞珂 :
「あなたの戦争の一端を請け負ったわ、ボス。乱痴気騒ぎのあとには、きっと開けた視界が待っているわ」

 あるいは。薙ぎ倒されたものの描く、赤いベルベットの道が。

"赤の鬼人” :
 悪くない謳い文句だ、と男があなたの言葉を涼やかに受け止める。

 あるいはどことなくなぞるように。

SYSTEM :

 面会した男の最初の言葉はソレであり。
 あなたの回答の機会はそう多くなかった。

 一戦限りの契約主。後ろから撃ち合うが上等の、偶々同じ方向を殴る参加者。
 だがそれは、嵐を留める人間ではなかった。

SYSTEM :

 加えて言えば、嵐を打算なく留める人間は、幸い/不幸なことに3年で一度も会わなかった。

 通った路のせい? 間の悪さ?
 まあとにかく、そんなものだ。

SYSTEM :

 用心深いのか、よほど集めた頭数が多く手が回らないのか。
 あるいはある程度放任を許すことにしているだけか…。
 彼は、あなたと今日この時まで出会うことはなかった。が…。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

"赤の鬼人” :


「こいつをおまえに預ける」

SYSTEM :

 開いた扉と共に視界の端から中央へやって来るもの。
 曰く傭兵。先任の一人でない方。
 アジア人の容貌をした、見た目より雰囲気の若さを覚える成人女性を指して、“赤の鬼人”は言った。

"赤の鬼人” :
 モルデ=メテオリーテ
「───“死滅天隕”。こいつの名だ。
 作戦中の仮上司と思え。
        ・・
 もちろん言葉の意味は互いに分かるな?」

"赤の鬼人” :
     ストームブリンガー
「そっちのが“帯来风暴”。闘争代行人だ」

SYSTEM :
【Check!】

・登場侵蝕を確認します。
 対象:PC1、PC2


夏瑞珂 :
1D10 (1D10) > 7

アレウス :
1d10 (1D10) > 6

system :
[ "死滅天隕"アレウス ] 侵蝕率 : 33 → 39

system :
[ 夏瑞珂 ] 侵蝕率 : 36 → 43

アレウス :

   ・・・
(──若いな)

 闘争代行人。
 その触れ込みのもと、"赤の鬼人” より招かれた傭兵を見て、心中で呟く。
 見てくれの事でもあるが、その推し量れぬ"内面"に対する憶測が半分以上を占める。

アレウス :

 戦争生活の中でその名前を全く聞かなかった、なんてことはない。
 特に雇われ──流れ者ならば尚のことだ。

 ある時は敵であり、
 ある時は協力者であり、
 ある時は依頼人であり……、

 利益をチャームに吊り下げ銃を取り、剣や拳を振るう傭兵は、互いをそう認識する。
 その"通り名"くらいは耳に挟んだことがあるということだ。

アレウス :

 心中の呟きは、そんな傭兵という戦争経済に浸かった獣へ、目の前の女が成り下がっているという事実についても意味している。
 それだけの齢で、戦争生活者となっているのは、もはや「何か事情がある」レベルのものではない。

 そして──その決断をする事そのものを、若さと称した。

アレウス :

 だが、所詮憶測は憶測だ。

 特にこんな超人の跋扈する世界で年齢なんてものはアテにならない。
 人体を置換し、表面上の姿など幾らでも変えられる様に、
 今の憶測が全て無駄になることなど星の数ほどあることだ。

 この"第一印象"は、一度しまっておくとしよう。

アレウス :
「たった今紹介を受けた。
 コード"死滅天隕”……アレウス・バルバートだ」

アレウス :
「噂は常々聞いている……この世界じゃ、名が売れることは決して悪いことじゃあない。
 他人の欲望に代わり鉄槌を振るうその手腕……同業として期待させてもらうぞ、“帯来风暴”」

 そこに何の意図があり、何の含みがあろうと、定められた以上は任務の"協力者"だ。
 利き手である右手を懐に持っていき──その手に"銃"が握られていないことを示すように、手ぬぐいを取り出す。

 潔白であることを示すように手を拭った後、握手を求めるように差し出す。

夏瑞珂 :
「預けられちゃった」

 入るなり、手綱は他人の手へ。なにごと? と首を傾げる。

夏瑞珂 :
 受け渡し先の男は、律儀にも拭った手を差し伸べてくる。
 対して、きょとんと間を置く。潔癖とは思えない男と出された手を交互に見比べ、ややあって、意味を理解する。
 意図は……分からない。銃を誇示するほうが、たいていの物事が簡単になる。

夏瑞珂 :
「光栄だわ、"ファントムストークス"のセルリーダーさまに名が届いてるなんて。
 一度あなたたちにちょっかいを出す仕事があったけど、受けなくて正解ね」

 あれはたしか一仕事のあと。
 報酬に渡航を用立てさせたばかりで、間が悪いと思ったものだけど。

夏瑞珂 :
「…… ……」

 握手に応じる。ごつごつした感触。銃を握る人の手だ。目が自然と細まるのを自覚した。

夏瑞珂 :
「血と鋼のにおいがするひとは、好きよ」

夏瑞珂 :
「私は"帯来风暴"の夏瑞珂。よろしくね、鳥のおじさま」

SYSTEM :
 握手の傍ら、後ろの人斬り包丁が“あれっ二十代? 闘争代行人? この背丈で?”と言いたげな顔をしていた。

アレウス :
「そいつは奇縁だ、部下の中には派手好きもいるものだからな……その判断が無ければ今日の出会いは無かっただろう」

アレウス :

 最低限の信頼を示す行動に応じてくれたことをまずは感謝するとしよう。
 そして、その意図──内約に気づかずとも意図があるということだけでも、分かってもらえているのであれば幸いだ。

アレウス :

「ふっ、これは素敵なラブコールだ。

 "Stokes"
 コウノトリの群れには、風に乗せられて違う渡り鳥が紛れ込む事がある。
 あんたを預かる以上、俺は群れのリーダーとして責任を果たさなくてはな」

 何をもって、血と鋼の匂いに口を動かしたのかは分からない。
 だが──今ので少しだけ、ある種の共感というものがあった。
 それは戦争──闘争の中で生きる者にしかわからぬ"匂い"でもあった。

アレウス :
「さてボス……いや"赤の鬼人” よ。
 注文通り、“帯来风暴”を一時的な部下として預かる。
 鉄砲玉として打ち出すには惜しいというのがよく分かったよ」

 しかし、なんだ。
 後ろの"包丁"役といい、こういうのに縁があるのかね。

"赤の鬼人” :
「おまえも組織のボスをやっている…言葉の意味が分かっているなら構わん。
 よく暴れさせてやれ。望み通りにな」

SYSTEM :

 つまり彼の発言は、FHのリーダー交代がいかにして行われるかを存じた上での発言であるのだが、
 そこについては今更説明するまでもない。

 なにより彼女と旧知の縁を纏めた理由は、端的な目付というわけでもなければ、船頭を多くする嫌がらせの類でも断じてない。どちらかというと、そこには石橋を叩くような判断があった。

"赤の鬼人” :

「とりあえずはこれだけだ。もう一人、名うての雇われがいるが…。
 おまえに気分屋を二人預けた日にゃ、あとでガンマンの決闘が始まる程度では済まないのでな………」

夏瑞珂 :
「言われちゃった」

アレウス :
「マカロニ・ウェスタンの気分じゃないな。少なくとも今は」

夏瑞珂 :
「ニホンはドブ川で殴り合いするのがフレンドシップだそうよ」

"赤の鬼人” :
「どれでもいいが、こっちは西部でもテキサスでも、夕陽のカセンジキでもない」

"赤の鬼人” :
「なにしろローマ中の血を血で洗ってもらうんだ、矢鱈と死体が転がる。
 ───まァ、あっちが掃除役をやってくれる以上、遠慮は要らん」

アレウス :
「まるで透析患者だな」

"赤の鬼人” :
「ああ。目の上の瘤を片付けられるんだ。あとの掃除など幾らでもやる、全力を尽くして患者を看取って貰うがね。
 …しかし、烏合を烏合のままにせず居られるのはおまえのトコとあと一つでな」

"赤の鬼人” :
「とりあえずはそんなトコだ」

アレウス :
「だろうな」

夏瑞珂 :
「ねえ。いい? 話の腰にバックブリーカーかけるけど」

"赤の鬼人” :
「話を再起不能にしなけりゃ幾らでも」

アレウス :
「意外に肉体派だな」

夏瑞珂 :
     タフネス
「ふたりの手腕に期待するわ」

夏瑞珂 :
「それで、ええとね。ボスとおじさま、おともだちなの?」

夏瑞珂 :
わかりやすい興味本位。

"赤の鬼人” :
「長く生きていると付き合いってのが増える………」

"赤の鬼人” :
「そのひとつ。こいつが“マンモーニ”の頃の知り合いだ。笑って銃口突きつけるまでは、“友達”へのランクアップはまだだな」

夏瑞珂 :
「まんもーに?」

SYSTEM :
 こともなげに言った男の言葉は、少なくとも腐るほど増える“気に入らない相手”への話し方ではない。
 いっぱしの組織面をした男の過去を引き合いに出そうってこともない。

アレウス :
「ママっ子って意味さ……酒も飲めないガキの頃から、俺はボスに世話になっていてね」

アレウス :
「今でこそ違うが、俺はボスの部下だった。
 少しは対等の関係になれたつもりではあるが、どうも手厳しい……」

アレウス :
「ま……この世界で親しみある友人というのは、突きつけた銃の引き金をあっさり引いちまうもんだ。
 出来れば"友達”までで止めたいもんだね」

夏瑞珂 :
 ちょっと意外な気持ちで両者を見る。ひとでなしのテロリストに友誼がないとは言わないが、少なくとも無縁そうな雇い主ではあったから。

夏瑞珂 :
「でもわたし、引き金を引き合うときのあなたたちは愉しそうに笑ってると思うわ。きっとね」

夏瑞珂 :
「それにしても、お子ちゃまの頃なんてあったのね。あなた」

 ね~と背後に控える部下たちにキラーパス。

アレウス :
「ははは、しみったれた葬式に出るよりはマシだな」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「それが教えて貰ったことないんですよ 立ち去るまでに強請るの手伝ってくれませんか?」

夏瑞珂 :
「乗ったわ。もし成功したら……お代は一戦でいい? カタナを見るのは初めてなの」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「あ、お望みそういうタイプ」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「ンー、まあいいですよ。減るもんじゃなし。ガード崩した後の”1回”なら許容範囲でしょ」

SYSTEM :
 ガード崩して興味に目を輝かせた昔話が終わったなら、お代でどちらが1回“リザレクト”しても笑って流して終わり。
 ジョークにしては血のこびりついた、意義を持つ未来を平常の顔で言った年下を余所に、葬式を喩えに出した男に“赤の鬼人”が目を向ける。

"赤の鬼人” :
       ロ ー マ
「おまえが後々おれのモノを欲しがるなら何時でも構わん。盛大に歓迎してやる」

アレウス :
「勘弁してくれボス。
 俺の胃袋はそこまでデカくないんだ……、
Mǎn-Hàn quánxí
 鬼のフルコースを平らげられるほどじゃない」

アレウス :
「俺としても、育ての親に銃を突きつける不幸者には……願わくばなりたくないものでね。
 血で血を洗う外道の歩みでもそれを捨てちゃならんと、日本の同業者に教えられたもんさ……そう、確か"仁義"とか言ったか」

アレウス :
 ・・・・・
「お子ちゃまの頃よりも、少しは大人びちまったもんでな」

"赤の鬼人” :
「フン…。あっちじゃ余所者が幅を利かせがちで、その道理も風化しがちなモンだがな」

"赤の鬼人” :
「まあいい、その時はその時ってだけだ。
 こいつでおまえの藪蛇には満足な回答だな?」

アレウス :
「ああ、納得だ。
 そして、その時が来たらティベリス川で殴り合いだ。
 ロムルスとレムスのように川流れでもしようや、ボス」

夏瑞珂 :
「カセンジキ!」やぶへび満足

"赤の鬼人” :
早速覚えたな 妙なところまで貪欲だ

"赤の鬼人” :
「いいだろう。殺した方の屍で城壁と国を作ろう」

"赤の鬼人” :
「しかしそんな未来航海図の前に、
 長年の眼の上の瘤どもの切除が先でな。
 そこで近日の遺産の件が必要になる……」

SYSTEM :

 ───遺産が運び込まれるまさにその“前段階”。
 名目上はこのご時世、ビジネスの読み違えで首の回らなくなった資産家が資金繰りに卸す旧時代の骨董品、そのオークションである。

 元よりパリオリの知識人と富裕層にとっては道楽の亜種であり、
 珍しいが珍しすぎるものではなく、ローマの財政界の中心は彼らだ。厭う理由、咎められる理由、なにより訝しまれる動機がない。

SYSTEM :
 で、あれば…。何も落札だのなんだの、穏当な手段に出る理由もなく。
 窃盗に打って出るような姑息さを発揮する動機もない。元より礼儀作法、良識の類は学んでも、必要でない時には無視“できる”のがギャングだ。

 彼が欲しいと見込んだものを、その土俵で奪えぬと最初から分かっているなら答えは一つ…。

"赤の鬼人” :
「作戦決行は“遺産”を運び込むまさにその段階。合図は“デカ”いのが飛ぶ。
 ヴェニスマラソンのよーに合図で一斉、ローマ中でドンパチだ」

SYSTEM :

 答えはこれだ。欲しいものは、如何なる手段でも手に入れる。

 入札の掛け金は鉛玉、ないし命。
 オープンプライスの主導権を競り合う前に、会場の人間を纏めて叩き潰すようなもの。
 とても乱暴で、分かりやすく、またリターンに重点を置き…。
        ・・
 尚且つ心底から派手だ。
 凡そ受動から入る“べき”UGNと、また、そこに拠り所を持つべき人間と考えが違って当たり前なのである。

"赤の鬼人” :
「カネで馬鹿正直にやったら御貴族様の独壇場でな。
 噂のガキと鼠どもも、恐らくそこは同じ判断をする…」

"赤の鬼人” :
                    UGN
「おまけに御貴族様の御令嬢は先代と違って余所者嫌いだが、
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 ローマが荒らされることの方には黙っちゃいない。
        ブタ
 あちこちで表の民衆を暢気に居眠りこかせて、後は鼠ども毎、同業を纏めてだ」

"赤の鬼人” :
「鼠の親玉がいちいち食いつく姑息な野郎なことだけは分かっているからな…。
 二つデカいのが顔を出して噛みつき合えば、確実に手を出す」

SYSTEM :

 アレウスが識る限り、彼は慎重な時はとことん慎重な性分である。
 
 仕掛ける時はいつも先手。やると決めたら即判断。
 肝心なことは最後に起こると、抗争相手の息の根を止めた後でさえ油断なく、関係者が皆くたばるまで手を緩めることはなかった。

 ならばその男らしい暴力的判断ではあるが、その男らしくない部分が一つある…。
 あるいはそのリスクを踏まねば“鼠”が顔を出さないと踏んだのか?

"赤の鬼人” :
 ドライバー
「運転手、関係者には適当に哀悼の意でも捧げておけばいい。どうせカタギじゃない。
 ただ…ローマごと更地にはするなよ。
 “マンモーニ”の頃の無知なら許したが、大人びたんだ。分かるだろう」

"赤の鬼人” :
「味方の面は教えた通り。だが覚えてる限りでいい。
 こんなトコだ。一通りおさらいしてやる…」

SYSTEM :

 ───その言葉には“気に入らなかったら敵にしとけ”が含まれている。
 FHにとっての味方の定義など概ねソレだ。

 お互いの欲望が逸れた時、彼らは笑ってお互いの眉間に銃口突きつけ死をかます。

SYSTEM :
 …例外は幾らでもあろう。大きな括り全てがそうではない。
 しかしローマの人間の主流、その元締めから言わせれば“そう”だ。

アレウス :
「ああ、いつだってそうだ。
 新しい酒を注ぐにしても、器が無くなってしまってはな。
 ・
 鼠の大好きなチーズも置けなくなる」

 表面上の同意をする。
 あくまで、今の自分は"リグ・ヒンサー"に雇われているのだ。

夏瑞珂 :
 可笑しな話だ。三年前のわたしは、こんな彼らを制圧する側だったろうに。

夏瑞珂 :
「そ。好きに食べ散らかしていいのね」

 敵も味方も、決めるのは陣地の色ではなく自分次第。表裏の境で起きる乱痴気に、心は弾んでいる。でも──

夏瑞珂 :
「……だめなの?」

 更地。

アレウス :
「血を入れ替えるからな。身体が吹っ飛んじまったら、元も子もないだろう?」

"赤の鬼人” :
「荒野にロマンを懐く年は過ぎてる。残念ながらな」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「(その性分とカッコで? 禁句ですかね)」

夏瑞珂 :
「老化……」ぼそ

アレウス :
「手厳しいな」
 苦笑する。
 おい後ろ分かってンだからな。やめとけって。

"赤の鬼人” :
「高い買い物を強請って与えられたことがあるなら聞いてやらんでもないが、反論は終わりか?」

“逢魔狩り”三草由芽 :
えーッ なんも言ってませんよぅ

夏瑞珂 :
「……見栄張って冷や汗かきながらがんばるひとならいたわ」

夏瑞珂 :
「でも元も子もないっていうのなら、仕方ないわ。がまんしましょう」

アレウス :
「ハ、それが言えれば一人前だ」

 "葬魔灯"と、今比較をしてしまった。

夏瑞珂 :
「含みを感じたわ」びびっと

アレウス :
「そうか? ならそれは、終わるまでに考えておくといい……当たっていたら褒美をくれてやるさ」

夏瑞珂 :
「言ったわね。聞いたわよ」刀の少女に目配せ。かぎりなく皮算用だった。

“逢魔狩り”三草由芽 :
「言質ってやつですね 任せて下さい」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「確かに記憶しましたよ、そう私………(なんか知らないけど)天才なので!」

アレウス :
「この世界で出来ない約束には銃弾をプレゼントするのが習わしだ、合わせて覚えておくといい」

SYSTEM :
 余談だがその天才性が、
 通常の座学に発揮されたことは基本ない。
 むしろひどい。

アレウス :

 その天才性の発揮する場所が一方向に限られている事に気付いてほしいのはさておく。

「しかしボス……何度目かの"今更"だが。
 派手は派手だが、少し"過ぎる"な……巣穴に引っ込んだ鼠は、それほど警戒していると? あんたらしくもない」

"赤の鬼人” :
「窮鼠が猫を噛む。知っているか?」

アレウス :
「ああ、ジャイアントキリングの冴えた言い回しだな」

"赤の鬼人” :
「ああ。だがもちろん、こんな言葉遊びでおまえの疑問を流したいわけじゃあない………。
 入り込んだそいつらの余地に検討がつかないまま三年近くだ。いい加減片付けもしたいのさ」

夏瑞珂 :
「……三年?」

夏瑞珂 :
 ……嫌な数字だ。

アレウス :
「長いな──……」

 今、何か引っかかったのか……?
 微弱だが、わずかな空気の流れが変わった──そう感じた。

アレウス :
「鼠の見当は? まさかだが、先の話に出た……」

 借りを作っている"庭"でないのであれば……、

"赤の鬼人” :
「…。何よりローマを大人しく纏めるには、おあつらえ向きにダークホースになりたがり過ぎる。
 連中の殆どはオーヴァードだが、除け者が多い。寄せ集めとするには重かろう」

"赤の鬼人” :
    ジャハーダ
「その“御手翳す開放者”だ。

 ギルドの線も考えた、グルの根拠と確信もないが…。
 自分の持ち物で誰だって好き勝手されたくあるまい。派手にもする。勝てるようにセッティングもする」

SYSTEM :
 …三年前。

 丁度狼が争いを嗅ぎ付けた場所は、
 まさにその時期のイタリアであった。

SYSTEM :
 渇いた荒野に、火花の散る音。
 幻聴が己のものかも定かでない黒い渦を微かに創るのを、“赤の鬼人”は察しない。

アレウス :
「そうか……分かった。
 勝てない戦をするよりは幾分かマシさ……俺もあんたに倣って、勝てる戦ばかりしてきたからな」

夏瑞珂 :
「"御手翳す開放者"……」

 "貴人の庭"に次ぐ、三つ巴の一色。油断ならない寄せ集め以上。……触りだけで判断するなら、点と点は結びきそうにない。

夏瑞珂 :
 思い返す。怪物の視線を。発する音の無感動さを。
 アレは──何かと共存できる生き物か?

夏瑞珂 :
「…… ……」

夏瑞珂 :
「ねえボス。鼠の群れに狼が混じってるだとか、そういう話に心当たりはない?」

SYSTEM :
 一息、鼻で笑う音。
 その空想を笑い飛ばすようにも、何か別の感情を込めたようにも聞こえる音色。

"赤の鬼人” :
「狼はもともと群れをつくる生き物だ」

"赤の鬼人” :
「だが、鼠の群れに混じる狼なんざ聞いたことはない…。
 餌を見つけた狼に“待て”はないものだ」

夏瑞珂 :
「一匹狼とも言うでしょう? でも、そうね。そうよね……」

夏瑞珂 :
「待てを知らないはしたない獣が……子鼠ちゃんたちと並べるはず、ないものね」

アレウス :
「シア」

アレウス :

 ・・・・・
「野暮を聞く。
 それが気に食わなかったら、裏でポイントでも付けて構わん」

アレウス :
                ・・
「その狼が居たとして──お前は、なにを願う?」

夏瑞珂 :
「眉間のレーザーポイントでも?」

 意地悪く笑って、野暮にも表情を変えない。変わらない。

夏瑞珂 :
「なにも。だって」

夏瑞珂 :
「強者が弱者を踏みつぶすのは、願いの結果じゃないでしょう?」

アレウス :
(こいつは──……)

アレウス :
GM……EE《七色の直感》をシアに向けて使用したい。

GM :
ほうほう…問題ありません、が

GM :
その夏瑞珂は対抗判定を行いますか?

夏瑞珂 :
ピーピング・トムなんていただけないわ。対抗しましょう!

アレウス :
ハ、疑似的な入隊試験のようなものさ……では、俺は《知覚》で振るとしよう。

GM :
では…どうぞ! 対抗判定は《意志》です。

アレウス :
(6+3)dx+1 《知覚(+AIDA)》 (9DX10+1) > 10[1,2,6,7,8,9,10,10,10]+8[3,4,8]+1 > 19

夏瑞珂 :
2dx (2DX10) > 8[3,8] > 8

GM :
はい。(「それはそれ」のジェスチャー)

夏瑞珂 :
えっち。

アレウス :
もう少し身長を伸ばしてこい、そうしたら色目で見てやるさ。

アレウス :
さて……「なにも」から「強者が~」の部分だな。オーラの色、あるいは言っている時の感情がどんな感じか……大雑把で構わん。

夏瑞珂 :
……憎悪。

夏瑞珂 :
憎くて、許せなくて、殺してやりたいって気持ち。衝動的な感情が……ずっと続いてる。

アレウス :

 目を凝らす。

 わずかな筋肉の動きを感知し、人間を構成する要素の一つ一つに"五感"をラベリング。
 様々な部分から得られたその"動き"を、"色"として可視化……得られた情報を集約させる。

アレウス :

 《七色の直感》と呼ばれるこのエフェクトは、エンジェルハィロゥが持つ超感覚を効率よく利用したリーディング能力。

 特にそれらを司る知覚を持つ者が使用すれば、並大抵の壁は無理矢理"視て"しまえる。

アレウス :

 そうして──仮部下Aである夏瑞珂の、つい先ほどの口ぶりを、目を凝らして確認する。

 その言い様に何か引っかかりを得たのか……そこに、歯車を破壊せんとする何かがある事を直感的に感じ取った故か。

アレウス :

 リーディングの果てにあった"色"……それは。

アレウス :
(……なるほど)

アレウス :

 
 ──黒。

 それは渦巻く激情に等しい、衝動の黒。

アレウス :

  ストームブリンガー
 "魂を喰らう混沌の魔剣"とはよく言ったものだ。

アレウス :

 その"狼"とやらを前にしたとき──この"剣"は間違いなく、その魂を喰らいにかかるだろう。

アレウス :

 憎悪、殺意……そこに向けられた純心の黒。
 ただひたすらに渦巻く、ただひとつの衝動……。

アレウス :
 
 ・・・・・  ・・・・・・・・・
 間違いない──それには覚えがある。


アレウス :

「フッ────……」

アレウス :

 思い出してしまう。
 これほどまでに憎悪と殺意の坩堝の中にいながら、「なにも」と答えれてしまう、その精神が。

アレウス :

 似ているのか?

 それとも……これはただの同情か?

 「なにが」起きたのかもわからぬまま?

 おかしな話だ──ただ見えた"色"に一体何の感傷があったという?

アレウス :

 だが……思い出してしまうのだ。

 生まれついてから銃を握り、銃が無ければ棍棒を振るい、石を投げ、しまいには拳で、人を殺してきた"獣"の事を。

アレウス :
 
 今でも覚えている……、リベリアからの支援を受けた革命統一戦線に売り渡され、ガンパウダー・スープを共に飲み、生きるために喰らい合った彼らとの戦列を。

アレウス :

 政府軍による壊滅作戦で皆死に……俺だけが、"保護"された日を。
 神などいない、祝福儀礼のAKを羽根とした天使も居ないと知ったあの日を。
 子供を子供として受け入れ、銃を持つ手を解き放とうとした国連職員に願いを問われ──「なにもない」と答えた日を。

アレウス :

 ……憎悪と殺意は、何もないところから生まれてこない。
 火種が必ず存在する。

アレウス :

 火種に何度も何度も薪をくべて、黒く猛々しく燃え上らせ、昇華させるその瞬間を、焦がれたものは欲しがるのだ。

 その殺意を……憎悪を、欲望と言わずしてなんとする。

アレウス :
 
「フッ、ハハ……ハハハハハッ!!」


アレウス :
 
 朧気ながら確信した──夏瑞珂、この女は間違いなく、自分と同じ……あるいは近しい■だ。
 

アレウス :

 そして何より……たった今、夏瑞珂は、仮という形であっても身柄を預かった。

 群れの統率者は、群れそのものを存続させるために、群れを生かし、群れの欲望を叶えさせる。

 なにより、この感情を見たからこそ生じる責任を果たさなければならないだろう。
 

アレウス :

 この世界に産み落とされた、ただ生きていただけで呪われた子供たち。
 鉄と火に包まれた華狭間に居る者は、皆必ず蝕まれている。
 
 ……それを、笑い飛ばした後──

アレウス :

「……狼は、時として群れから離れ、孤独に生きていく。
 餌を求め、鼠の群れの中を荒らしにいくこともあるだろう。

 だが……この情熱の都市のドブに巣食う"鼠"が"鼠"で無いとしたら?」

アレウス :
「シアよ、俺はお前の"上官"として言っておくことがある」

アレウス :

 Al cuore non si comanda.
「"心までは命令できない"。
 お前の言う"狼"とやらが、この宴に肉を食みにきていたのなら……、

 その時は構わん、俺に一言だけ連絡し、お前の思うままにするがいい」

アレウス :
「ボスも言っただろう? 気に入らなければ、敵にすればいいとな」

アレウス :
 最も、ローマを更地にしちゃいかんのは前提の上で、と続ける。

アレウス :

 彼女の憎悪は彼女のものだ。
 彼女の殺意は彼女のものだ。
 故にその憎悪と殺意に、この俺が上官として銃を添えることは出来ても、
 込めた弾丸で脳を撃ち抜くことは、あってはならない。

 その宣誓のようなものだ。
 俺は俺なりの責任を、自らの持つ銃に乗せた。

アレウス :

「ああ……そして、その"なにを"願うか、よく考えておくといい。
 その腹が定まったのなら……俺に"なにを"して欲しいかも、だ」

アレウス :

「──この俺が、お前の願いを叶えてやる」

夏瑞珂 :
 呵々と大笑する姿に呆気にとられるのを、なに? と首を傾げてごまかす。

夏瑞珂 :
「放し飼いにしてくれるなら、わたしも楽よ。群れ方は忘れちゃったの」

 言われなくても、とは口にしない。欲望に首輪はかけられないと知っているから、この男は最低限の保証を得たがっている。

 わたしにも、応じるだけの義理はある。責任も。

夏瑞珂 :
「──え」

 そう思っていたのに、話は予想だにしない方向へ転がっていった。

 言うに事を欠いて、願いを叶える? わたしの? なぜ? なんのために?

 セルメンバーでも何でもない、一介の傭兵が……いっとき配下になっただけで?

夏瑞珂 :
「へえ。そう。じゃあ」

夏瑞珂 :
 わたしのためにクリスマスを祝ってほしいと言ったら、この男はそうするのか? ツリーを飾りつけて、ケーキを大きく切り分けてくれる?

夏瑞珂 :
 ──なんて、莫迦げた話。

 わたしがそんなもの、もう願ってなんかないのが特に莫迦げている。

夏瑞珂 :
 だいいち"なに"の中身でも何でもない。びっくりしてヘンな方向に意識がハネたんだろう。

夏瑞珂 :
「あきれたひとね。それとも上官というのは、世話を焼きたがるものなの?」

 じゃあ、の続きをうやむやにして返す。

アレウス :
「くっくっく、勘違いはするなよ。
 お前の首輪を外すのはその狼を見つけたときだけだ」

夏瑞珂 :
えー。

アレウス :
 首輪は所詮、かりそめのセーフティだ。
 それが外れなければそのままで、外れたときは外れたときだ。

「そうでなければ、ミクサとの決闘もお預けだぞ」

夏瑞珂 :
「はぁい」しぶしぶ

夏瑞珂 :
「更地はだめなんでしょう、更地は」

“逢魔狩り”三草由芽 :
あれっ 軽い気持ちの約束が
さらっと私交渉材料にされてません?

夏瑞珂 :
何もない荒野がいちばんきれいなのに。

アレウス :
使えるものは何でも使うのが鉄則だぞ、覚えておけ。

アレウス :
「ああ、それはお前の雇い主であるボスの意向でもある。
 こういう稼業だ、渋々従うのは慣れたもんだろう?」

アレウス :
「で──まあ、そうだな。
 上官というのは言葉の綾だが……いずれにせよ、人を動かす者には責任が生じるものさ。
 そして部下の願いを限りなく叶えてやるのも、従える者の役目なのさ」

アレウス :
「そうだろ? ボス。
 俺も美味い飯が食いたいと言ったら、あんたは喧嘩に勝てばトスカーナのサラミを贈ってくれたもんなあ?」

夏瑞珂 :
「そうなの? ボス」

"赤の鬼人” :
「埃のついたエピソードを持ち出して郷愁に浸ったモンだな」

アレウス :
「例題にしちゃあ上々だろう」

"赤の鬼人” :
「まァ…な。それなりの難題を“吹っ掛けた”というのに果たして戻った、食い意地の張った小僧の話という前提が付くが」

夏瑞珂 :
もしかして報酬にサラミねだるほうがどうかしてるってオチなのかしら、この話……

アレウス :
「耳が痛いな、もう大喰らいじゃあねえよ」

"赤の鬼人” :
「よく言う。おまえの眼は欲しいものを貪る強欲さが抜けていない。
 分別がついたことは、欲望の萎みとイコールにゃならん」

"赤の鬼人” :
「だがまあ、言っただろう?
 渇いた野原と血色の風、拳一つの路地裏。そこにロマンを夢見る少年時代は過ぎて久しいんだ。

 より欲しいものがある時、それに劣る欲望には蓋をする」

"赤の鬼人” :
「いずれそこに、辿り着くためにだ。
 気に入らないものを殴るにしても“殴る順番”をつける賢しさが必要になることだってある…。

 尤もそこの男のは、おれの理屈とは違う。
 ・・
 兵士の理屈だ」

"赤の鬼人” :
「おれのものはその“路地裏”上がりだ。
 …好きにすりゃいい。おまえの路に吹く風だぞ」

SYSTEM :
 ・
 狼の名にいったい何を覚え、何を感じたのか。
 前提を共有しないがために流れる後ろの人斬り包丁と男の沈黙は、あなたが振った話で解消されて有耶無耶になった。

アレウス :
「……ま、細かい違いは確かにあるがな」

アレウス :
「だそうだ、ボスの許しも出た。
 この依頼に限り、俺はお前を預かる身だ。
 
 ──改めて気に入った、よろしく頼むぞ“帯来风暴”」

夏瑞珂 :
「兵士、ね」

 …… ……。

夏瑞珂 :
 面食らって言葉が出てこないとき、どうすればいいか知っている。

夏瑞珂 :
「まるで足長おじさんだわ。
 そこの仮面の人。彼っていつもそうなの?」

 力尽くで押し流すのだ。

SYSTEM :
 あなたが呼びかけた“仮面の人/Mr・A”は何時からそこにいたのやら。
 なんで、を問う心を跳ね退けるような言葉を、向けられた瞬間、彼は素早く切り返した。

“Mr・A” :
「彼は博愛主義ではないからネエ…」

“Mr・A” :
「足長おじさんに善悪を拘らないなら、アーどうだ、由芽クンどう思う?」

“逢魔狩り”三草由芽 :
 ・・
「それ私に振りますう?」

SYSTEM :
 めずらしい/少なくともこの場では曖昧な響き。貌無しの冗談は“いつもじゃない”の端的な響きを含むに終わり、目論見は意図した通りかはさておき達した。

 いざ“その時”になれば、面食らった時の言葉が杞憂かどうかも分かるだろう。

"赤の鬼人” :

「それでもあれでも構わんが…そうだな、決行はすぐだ。用意はしとけ。
 ───面はもう迎えを通して“七花胡”には伝えてある。あっちも好きにやれと付け足してな。現地で会った時の倣いは教えた通りだ」

"赤の鬼人” :
   ケラウノス
「生きて“神の雷”を奪え。
 おれの望みとかち合わぬよう、己の望みのままに貪るといい」

SYSTEM :
 ………その少し前───。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 その前時刻。いよいよ決行のXデー前日にあたって。
 遺産の真偽調査、ひいては奪取/破壊を目指す“七花胡”にとっては、まさにこの日が分水嶺の始まりであったわけだが。

“帝釈天” :

「───と、いうことです。先生」

SYSTEM :

 大陸の出に曰く『先生』は「さん」の意味を持つ。

“帝釈天” :
     ベルヴェデーレ
「ああ、いえ。“七花胡”と。
 そうお呼びした方が手っ取り早いですね」

SYSTEM :

 その血が身体に流れているはずの華人が、先日“アセルス・デスミオス”から言伝を受けた…曰く、槍働きの雇われを連れてあなたの前に現れた。

SYSTEM :
 前置きは既に聞いた通り。
 ローマに何らかの所以あって訪れ、諍いを切欠に人事の眼に留まり、
 それが今“リグ・ヒンサー”の中枢すれすれを渡り歩くこの“帝釈天”の耳に伝わり、斯様な結果になった。

“帝釈天” :
        お嬢さん
「それで、こちらの小姐が…」

SYSTEM :
【Check!】

・登場侵蝕を確認します。
 対象:PC3、PC4


ラーゼス :
1d10 (1D10) > 2

"七花胡" :
1d10 登場侵蝕 (1D10) > 4

system :
[ “隻獅子”ラーゼス ] 侵蝕率 : 37 → 39

system :
[ "七花胡" ] 侵蝕値 : 30 → 34

“帝釈天” :
おじょうず
 不 错 。

SYSTEM :

 お嬢さん、と呼んだ相手は、
 その“帝釈天”より一回り尺が大きい。

 凛々しさは浮世離れと呼ぶにふさわしい様であるが、
 何より世俗の生き方を忘れているようなのが隣にいて、何より此処は世俗の裏側だ。
 ここであるなら、その来客の特異性とて、なるほどずいぶんと薄れてくれるだろう。

SYSTEM :

 そしてそのお嬢さん/ラーゼスも。

 件の『ラシード』の紹介状を怪しまれることは終になく、外様の先に来ていた“行儀がいい”方を紹介される運びになっていた。
 眼前の男が“それ”というわけだ。

"七花胡" :
「"七花胡"でも、先生でも、なんでも。どう呼んでくださってもかまいませんよ、"帝釈天"。
 無論、自分だと分からないようでは有事に困るので、原型は残しておいていただかないと困りますが。
                     フー
 他に短い呼び名が必要であるなら、どうぞ『胡』とでも」

 隠すことのない偽名である。

"七花胡" :
「それで……貴女が例の」

 目を向ける。自身よりも大きな、明らかに武人といった佇まいの女性。
 その風貌、造形は、何処となく芸術品の趣を感じさせる。つまるところ、貴種の血だ。
 駄馬に曰く、金目当てでも、自殺志願でもないとのことだが……

"七花胡" :
「スカウトされたとかいう方ですか。
         ベルヴェデーレ
 初めまして、自分は"七花胡"、"リグ・ヒンサー"の客将なんかやってます。
 一応貴方の身柄をあずかることになる者ですので、まあ誤射しない程度に覚えておいてください」

"七花胡" :
「貴方の名前と、コードネームと、御職業と特技なんかを教えていただけると嬉しいのですが」

ラーゼス :
瀟洒な部屋で、部屋の様式とは似つかわしくないふたりの顔を交互に見つめる。

ラーゼス :
 どちらも馴染みのある顔立ち、声色ではない。
 しかし値踏みするような視線とその表情は知っている。
 時代が変わろうが、国が変わろうが、これだけは変わらないものだ。

ラーゼス :
華やかなふたりのうち、目を惹く背中のものをつけた豪奢な男に視線を戻す。

ラーゼス :
「わかった。では、『フー』と呼ぶことにする」

ラーゼス :
「おれは……」

ラーゼス :
      コードネーム
「……そうか。通り名が要るのだったな」

"七花胡" :
「(……んん? コードネームが……ない?)」

ラーゼス :
「いや。俗世で使う名は心得ている」

“帝釈天” :
「………」

“帝釈天” :
「では…改めて、
 お伺いしてもよろしいですか?」

ラーゼス :
「ラーゼスだ。
           demi-lion
 通り名が必要ならば、“隻獅子”と」

ラーゼス :
「器用な性質ではないが、物を壊すことは心得ている。
 あなた方の希望には従えると思う」

“帝釈天” :
「働きのほどは伺っていますが、………ふむ…」

“帝釈天” :
   demi-lion
「………“隻獅子”………?」

"七花胡" :
「おや。何か思い当たりでも?」

SYSTEM :
 中々に世俗と遠い生き方の御様子………、と。
 小さな呟きに、ひときわ違う色が混ざったのもつかの間。

“帝釈天” :
「いいえ…珍しい名と思っただけです。
 なまじ彼方の出でありますので、ね」

“帝釈天” :
「では、彼が………。
 そうですね、じゃ、私も親しみを込めて『胡』さんと準えてしまいますが」

“帝釈天” :
「その『胡』さんが仮の伺い先です。
 
 その言葉の意味は好きに捉えて頂ければ。
 今の私の大師ならば、とりあえず、そう仰るでしょう」

“帝釈天” :
       インダラヤ
「…ちなみに私は”帝釈天”と申します。呼ばれましたがね。
 親しみを込めて頂けるなら、好きにお呼びになって構いませんよ?」

ラーゼス :
「………」

ラーゼス :
「わかった。そうしよう。……尋ねておきたいのだが」

“帝釈天” :
「おや、何か」 そもそも私宛ですか?

ラーゼス :
        あざな
「ふたりの名は? 字と名は異なるものなのだろう」
 探る意図のない、純粋な疑問を投げかける。

"七花胡" :
「(あ~……腕っぷしには自信があるようですけど……
  もしかして、それ『だけ』でやってきたタイプ?
  お作法とか暗黙の了解とか、あんまり御存知無い……)」

"七花胡" :
「(う~ん、面倒な。こっちで名前の方を使うつもりはないのですが……
  誤魔化し方を間違えると今後に障りそうな予感がしますねえ……)」

"七花胡" :
「自分、仕事とそれ以外は分けているのですよ。
 これは仕事なので、コードネームの方を名乗っています」

 要するに、『名乗っているのだからそれで呼べ』だ。
 嘘も言っていない。

“帝釈天” :
足の形が正しいのなら靴のゆがみを気に病むことはない
「 脚   正   不   怕   鞋   歪 ………」

“帝釈天” :

「と、私は申したいのですが、………。フフ」

“帝釈天” :
「私、やんごとなき事情で名前を明かせぬ身でして。
 それを辿ってやって来る旧知を、少し遠ざけておきたい気分なのです」

“帝釈天” :
..     こちら
「ですので“帝釈天”で呼んで頂けますか?
 それでも不満でしたら、また何れ。羅馬の火祭のあとにお話を伺いましょう」

ラーゼス :
「……なるほど」

ラーゼス :
「世を忍ぶ仕事だ。過去のしがらみにはよきもあしきもあるのだろう……」

ラーゼス :
「理解した、ありがとう。余計なことを尋ねてしまったな」

"七花胡" :
「(え、あからさまな誤魔化しだったのに納得するんですね ソレで)」

“帝釈天” :
「お気になさらず。
 それに、過去のしがらみを顧みて綴るも楽しきことでしょう」

“帝釈天” :
「だからそろそろお会いしようかなと思っているのですが…。
 なにぶん戦支度の直後というのは、ね」

“帝釈天” :
「あ、そうそう…ちなみに…。
 この『仕事の名前』を使い分けたがる方は他にもいらっしゃいますので、お伺いは、斯様な事情のある時は控える方がよいかと。
 私は好きですがね、その姿勢」

"七花胡" :
「脛に傷持ちも多いですからね、この業界……特にこの地域は。
 余計な火の粉を被りかねません」

ラーゼス :
「そうしよう。確かに『大掛かりなこと』が起こる場所だ……脛に傷持つものも多いのだな」

ラーゼス :
   グウィン
「(……先代も『コードネーム』のことは言っていた。彼らの世界と同じ、無法者の世界なのだろう)」

ラーゼス :
「(……おれには、むしろ都合がよいな)」

"七花胡" :
「そうそう。今は特に、これから一世一代の催し物が起ころうとしている時期で、ピリピリしてますからねえ。
 あっちもそっちも」ぴりぴりなんて感じさせないのほほんとした言い草

"七花胡" :
「御宅、なんか揉め事起こして……首突っ込んで?スカウトされたとかって話ですけど。
 一体全体、なんだってこんな火薬庫みたいな場所に来られたので」

"七花胡" :
「出稼ぎですか、それとも腕自慢のようですから、武功でも挙げに?」

ラーゼス :
   ・・・
「その催し物に用があるのだ」

ラーゼス :
「探しものが、どうやらこの羅馬にあるらしい。
 火花を探せば、火元にはゆきあたるだろうと思ってな」

ラーゼス :
「そのために故郷をいっとき空けて来た。貴公のことばを借りるなら、『出稼ぎ』になるだろう」

"七花胡" :
「………………」

"七花胡" :
「"探し物"とは何か、窺っても?」

ラーゼス :
「黒い狼だ」

ラーゼス :
 レムリア
「“黒鉄の狼”という名も聞いている。……この街にいるかも定かではないし、探す狼かも分からないが」

SYSTEM :
.レムリア
“黒鉄の狼”………。

 日本ではまず間違いなく聞かぬ名であり、
 ローマでも探ろうとしなければ、
 風の噂にさえ乗らないおとぎ話。

 だが小耳にはさんだなら、
 その伝説は次のように嘯かれて来た。

SYSTEM :

 戦場にのみ現れ、
 戦場の当たる幸いを食い千切る。

 ウソかマコトか、然るアングラなオーヴァード同士の“強さ”を測るという某サイト「Sランキング」で、常連チャンピオンの“イスカリオテ”、1位の“異界の巫女”に並んだことさえある………。

 伝説を生む餓狼。

"七花胡" :
  レムリア
「("黒鉄の狼"……

  ……氷ヶ崎さんがあまりにもシッブい顔をしていたので尋ねざるを得なかった、例の胡散臭いランキングに乗ってた名前……)」

"七花胡" :
「(はまあいいとして。
  戦場のあらんかぎりを食い尽くす餓狼、との触れ込みでしたか。
  それがこのローマに現れたという話なら、"赤の鬼人"が口にしていてもおかしくはありませんが……。

  …………あれも腹の内をすべて見せたわけでは、到底ありますまい)」

"七花胡" :
「貴女は貴女で、捕り物のためにやってきたのですね。
 催し物に乗じて姿を現すかもしれない、と……
 賞金首ハンターみたいなものですか」

ラーゼス :
「そういうことになる。貴公らの用向き……」

ラーゼス :
「『遺産』というものについて、おれ自身は用がない」

"七花胡" :
 遺産に興味がない武力装置。欺瞞の可能性をさておいても、なんとまあ、使い勝手の良い駒が転がり込んできたものだ。
 多少世間知らずの風はあるが……仕事の間、適当に扇いで転がしてやればどうにでもなろう。
 一応、気にならんでもないのは……

"七花胡" :
「なんで"黒鉄の狼"なんです? 値打ちのある首なんて、それこそこのローマには他にもたくさんおりましょうに」たとえばそこの"帝釈天"とか

ラーゼス :
「……そうだな」
 この組織を紹介した、あの男を思い出す。ラシードと名乗った男。
 彼とて、さぞ名打ての妖精騎士なのだろう。振舞いが只者ではなかった。

ラーゼス :
 眼前のふたりとてそうだ。
 笑顔の奥で策謀が渦巻くさまが見えるよう。
 そしておそらくは、それに恥じない実力も備えていると見える。
 慎重な値踏みと確認は利用価値の確認だ。
 互いの交わる道に乱れがないように。そして己が使いでのある駒であるかどうか。

ラーゼス :
 ひとを動かすひとというのはそういったものだ。
 そして……

ラーゼス :
 いまの己が価値のある槍だと見せるには、
 ・・・
 知らぬを強く見せるべきだろう。
 色のない、意図のない力は、幾分か扱いやすくあるはずだ。

ラーゼス :
「確かに、そのようだ。おれには、貴公らの名も輝いて見える。数多の戦場を渡り歩いてこられたのだろう」

ラーゼス :
「だが……」
 言葉を選ぶ。頭に並んだ回想の中から、もっともそれらしい言葉を拾い上げた。

ラーゼス :
「挑むなら、伝説であるべきだと思ってな」

ラーゼス :
力のみを求める武侠者とでも捉えられれば、それでよい。彼らがよきように己を測るだろう。

"七花胡" :
 回答に、瑕疵はないように思えた。
 オーヴァードの中には、人ならざる力を存分に振るいたいという衝動を持つ者が少なからずいる。
 UGNであるなら、そこに着色して、“今日と明日を守るために使いなさい”と教導するものだ。
 だがそういう「屁理屈」を嫌う人間が、FHに流れ、傭兵やセルの尖兵となる。

"七花胡" :
 そういう手合いの、武侠者……そう考えるに、彼女の回答は百点満点だった。
 百点すぎるし、そういう乱暴者にしては、理性的すぎるきらいはあるが。

"七花胡" :
「(これが計算尽くであるにせよ、少なくともそう振る舞うつもりはあるということでしょう。
  自分にとって損はない……駄馬に調教させている連中だけでは不足を感じていたところでしたし、ある程度自由の利く駒として利用できるのなら、利用されてやるのも戦略というもの。
  この手の暴力装置は、得てして自分の代わりに情報を集めてくれるアンテナを欲するものですからね)」

"七花胡" :
「(“黒鉄の狼”の情報で釣るだけ釣ってうまく使いましょう。
  ソイツがイタリアにすら居ないのだとしても、
  遺産争奪戦の間はなんだかんだのらりくらりと引き伸ばしに引き延ばして、
  その利用価値を、徹底して搾り尽くして差し上げる……!)」

"七花胡" :
「────なるほど、そうでしたか。
 強きに一途な貴女のような武人に、なんとも無粋なことを尋ねたものです。
 どうかお許しを」ニコッ

"七花胡" :
「自分は身柄預かり人ということにはなっていますが、
       ・・
 改めて貴女と取引がしたいと、今の話を聞いてそう考え直しました」

"七花胡" :
「内容はこうです。
 自分の元に“黒鉄の狼”の情報が入ってきたならば、最優先で貴女に融通するとお約束しましょう。
 その代わり、この遺産争奪戦の間は、自分の指揮下にて戦ってもらいたいのです。
 催し物は大きな鉄火場となりましょう。“黒鉄の狼”が国内に居るのであれば、その機を逃すはずもない」

"七花胡" :
「必ず姿を現す。そうしたらば、ソイツの首は貴女のものだ」

"七花胡" :
「この取引で、貴女はアンテナを手に入れる。
            ウィンウィン
 自分は武力を手に入れて皆大欢喜。
 如何です? 貴女にとっても、悪い取引ではないのではありませんか」

ラーゼス :
「取引──」

ラーゼス :
 暫し黙考する。
 冷静にひも解けば、すべて彼に利として返ってくる取引だ。
 “黒鉄の狼”が、己の求める狼王であるかどうかはわからないのだから。

ラーゼス :
『フー』を見つめた。

ラーゼス :
 黒い眼鏡ごし、蜜色の瞳が三日月に歪むのが見える。
 慎重に己の鱗を磨き上げた美しい男だ。
 英明さを盾とし、あるいは矛とする、狡猾な蛇の風情。

ラーゼス :
「(……かまいはするまい)」

ラーゼス :
 己に言わせれば、実のところは、言葉のとおりの『皆大欢喜』。
 どの火種が森を焼くのかが未知数ならば、そのどれをも見定め、危ういとあれば喰らえばよいこと。
 それは“黒鉄の狼”も、潜り込んだこの鬼人の穴倉すら同じだ。

ラーゼス :
「いいだろう。狼を殺すまで、おれは貴公の槍だ」

ラーゼス :
「だが……」
 唇にあるかなきかの微笑みを描く。

ラーゼス :
「貴公は『必ず』と言った」

ラーゼス :
「そしておれは、約したものを破られることが嫌いだ。
 どうかわかってくれるな?」

ラーゼス :
蒼い瞳が冴え冴えと輝いた。値踏みするのはこちらもだ、と示すように。

"七花胡" :
「────アハ」

"七花胡" :
「もちろん、もちろんですとも! ではでは、交渉成立ということで……♡」

"七花胡" :
 本当に"黒鉄の狼"が国内にいるのだとするならば、排除は何方にせよ避けては通れぬ難事だと、長年の経験が直感していた。
 放置すれば、盤上試合どころではない。その手のたぐいは盤ごとひっくり返すものだからだ。
 現れるなら、これをぶつけるになんの異論もない。除けてくれるのであれば大変結構、できずに折れれば────それはそれで、向こうさまの自己責任。

 それがFHの道理だ。
 此方は粛々と、それでいてなおかつ堂々としておればよい。
 簡単なことだ。

"七花胡" :
「短い間ではありますが。
 どうかよろしく、"隻獅子"殿……♡」

 薄い手袋を脱いで、右手を差し出す。
 かりそめの友誼、つかのまの同盟の証として。

ラーゼス :
………。手袋を脱ぐ様子を見る。

ラーゼス :
………なるほど。このような作法か。

ラーゼス :
 彼に倣って手袋を外し、その手を握る。
 薬品の匂いのする、冷たく骨ばった手だった。

SYSTEM :
 なるほどそれは確かに、
 共存/共栄を旨とするUGNの言葉選びではなかったと言えよう。お互いに。

SYSTEM :
        ダブルクロス
 己が目的のための抜け駆けを是とする仕草であり、
 またそこに伴うプロセスには、皮肉なほど推察と打算が………。
 霧の中に紛れて見えぬものから、いつでも崩せる信頼があった。

 ───事と次第によっては、これでも尚行儀はいい方だ。

SYSTEM :
 その仕草に口を挟まず静観していた、厳密には“一例”の折に向いた視線を素知らぬ顔で笑って流した女が、金色の獅子の牙に打算を巡らせる者を見る。

“帝釈天” :
「遺産ではなく、遺産を引き合いに出した争いにこそ用向きのある方…。
 いいえ、むしろ大変“俗”な理由をお求めの方も、こちらでは決しておらぬわけではありませんが」

“帝釈天” :
     ・・
「挑むなら伝説ですか。
 ───良きことかと。こと、成す欲望の小さきは生きるにあたって不足を齎しましょう。叶うといいですね?」

SYSTEM :
 握手の様子をひとしきり眺めてから告げた口当たりの良い立会人の礼賛は、
 しかし、この情熱の国にそれを求めて訪れた者の多さを示している。

 別段、黒鉄の狼を目指して訪れたものが、という意味ではなく。
 そしてその坩堝を覗く、最も近き出来事が…。

“帝釈天” :

「立会のみで帰るのも吝かではないのですが…。
 ボス
 大師からもう一つ言伝を伺っております。よろしいですか?」

ラーゼス :
「言伝?」

"七花胡" :
「"赤の鬼人"からですか。何でしょう」手袋を嵌め直しつつ

“帝釈天” :
「はい。
 決行は明日の未明…と」

SYSTEM :

 概ね、彼女の口から語られた内容は、
 これとほぼ同時刻、“赤の鬼人”直々に語られたもはや襲撃めいた内容と代わりはない。

SYSTEM :

 骨董品に扮した遺産を運び込む複数の輸送車が入るまさに当日、
 ・・
 合図と共に一斉に行動を起こし、ローマで乱痴騒ぎが起きることを好かない“貴人の庭”の鼻先をくすぐって。
 その二大FHセルの連帯同士の激突で、同じく遺産を欲しがる“御手翳す開放者”を叩き起こす。

SYSTEM :

 両者の撃滅と並行して、遺産を回収。手筈としてはこのようになる。
 あくまでも“リグ・ヒンサー”としては、主題は遺産回収とローマ内の同業者の殲滅の二つを持ち、そしてそれらは対等なものとなっているわけだ。

 言伝/使いと振る舞う女の言葉からは、その背に確かに彼の意を取れた。
 傲岸さと自信に両立する慎重さ。奇妙な破落戸の道理。

“帝釈天” :

  アウラ・ドミナ ジ ャ ハ ー ダ
「“貴人の庭”と“御手翳す開放者”…。
      ・
 双方の頭数は及ぶべくもありませんが、それぞれ輝かしき星に欠けるでもなし………」

“帝釈天” :
      ボス
「他でもない大師が、承知の上で戦に臨むと仰いました。
 窮鼠畏るるに能わず───どうぞ存分に奮われよ、とのお達しです」

"七花胡" :
「遺産と剪定、同時並行とはまた。"赤の鬼人"は、雑草塗れの現状がよほど腹に据えかねているようだ。
 ・・
 花火に合わせて此方も行軍を開始しますと、そう彼にはお伝えください。"帝釈天"」

"七花胡" :
「"隻獅子"、貴女にも無論のこと、働きを期待します。
 できますね」

"七花胡" :
「……三つ巴を派手にやればやるほど、件の狼も乱入してくるやも?
 ですしね♡」

ラーゼス :
「かまわない。烏合だろうが数は数だ。燃えれば狼煙にはなろう」

ラーゼス :
「ここの主とて、そう思っているのだろう? ……そうだな」

ラーゼス :
「こういう時は。『お手並み拝見』というはずだ」
 当代の名代が、笑い交じりにそう言うのを幾度か聞いた。

“帝釈天” :
「まったく、如何にも大掛かりでございましょう。
 ボス
 大師は遺産を掌中に収めるというより、まるで………」

“帝釈天” :
「…まあ。羹に懲りて膾を吹くこともありますまい、ね。
 御想像にお任せしますよ」

SYSTEM :
 含みのある言葉は、概ねあなたたちの“赤の鬼人”への所感を肯定する意味合いで使われた。

"七花胡" :
「ところで────"帝釈天"、雑草刈りの方なのですが。
 明日大捕り物が始まった時、向こうから打って出てくるであろう要注意人物について、何か御存知でしたら共有していただきたい。認識に違いがあってはいけませんので。
 “貴人の庭”、それから“御手翳す開放者”……如何?」

“帝釈天” :
 アウラ・ドミナ
「“貴人の庭”は他でもない、大師自ら鎬を削った不倶戴天なれば…。
 当然存じております。風の伝うとおりにお答え致しましょう」

“帝釈天” :

「まず、“青の貴人”には懐刀が居ります。
クストーデ・デラ・レギナ 
“不朽讃えし懐刀”………。
 字は己が宣誓、生ける様とも語れましょうが、中々どうして」

SYSTEM :
 イタリア語、直訳に曰く。
          ・・・
 女王の番人、ないし守り人。

 “貴人の庭”をローマの制圧者たらしめるのは、他でもないその女王のオルクス・シンドロームと喧伝されるが。
 彼女自身の武力は、彼女が従え、彼女に血を捧ぐもので構成されるとまことしやかに囁かれる。

SYSTEM :
 その筆頭がその名だ。
 曰く…。

“帝釈天” :
「荒ぶる雷公と、
 鈍色の蚩尤が如き様の麗人と………。
 伺っております。

 彼女の御頸に望みあらば、くれぐれもお忘れなきように」

“帝釈天” :
    ジ ャ ハ ー ダ
「反対に…“御手翳す開放者”。

 こちら、木端の寄せ集めなれど…。そのすべて、世に馴染めぬ無頼漢の超人にて。
 大師が、”貴人の庭”が如何なる故を以て目の敵とするかは、その予測不能さにあると言えましょう」

“帝釈天” :
    あざな
「具体的な字は定かでありませんが、
 逢魔ならざる神怪がいる、とか…」

SYSTEM :
ジャーム
 逢魔ならざる神怪。

 直訳に曰くレネゲイドビーイング。
 理路整然の女王と信奉者に対して、破落戸の集まりが“リグ・ヒンサー”ならば、こちらはもはや破落戸の集まりなどと呼ぶことすらも生ぬるい。
          かべ
 遍く種別、あるべき区別を知っていて意に介さぬ形振り構わなさ。
 何処にも馴染めず、または、何処から根付いたかも定かでない。
 話だけ聞けば、新興勢力として成立することそのものが、奇跡かペテンの域…錯綜する情報の中で“目立つ”のがそれだという。

ラーゼス :
「(我ら、智慧を得た獣とも違う……)」

ラーゼス :
「(妖精より出でたものか。
  確か、いまは──『レネゲイドビーイング』と、呼ばれているのだったな)」

"七花胡" :
「“貴人の庭”には番犬が居り、“御手翳す開放者”には妖怪が居る、と。
 首魁の前に立ちはだかる難事となることは必然、ですね」

"七花胡" :
「なるほど、覚えておきましょう。ありがとうございます。
 とはいえ“御手翳す開放者”の連中は目下正体不明、場当たり感が否めませんがね」

"七花胡" :
「それと……あともう一つ」

"七花胡" :
「"黒鉄の狼"────
 風の噂に、心当たりなどは?」

“帝釈天” :
 ・・・
「いいえ? それはまったく」

“帝釈天” :
 
「光阴似箭───と、申しましょう。

 世俗にて、時は惜しむものなれば。
 意味のないものは、風とて運びませぬ」

ラーゼス :
……。

“帝釈天” :
「? …あ、失礼、」

“帝釈天” :
 ・・・・・・
「私にとっては、です」

“帝釈天” :
「何の跡も残さぬものを前に。
 詠むものも、ましてや馳せる思いも…ありませんね?」

ラーゼス :
胡を見つめる目が一度ほど冷える。

ラーゼス :
…さっきの言葉は本当に本当なのだな?

"七花胡" :
「(……"帝釈天"にとって“黒鉄の狼”は興味の範疇外。
  どうでもよい、関心が無い、ゆえに知らない……ということでしょうか。
  何処までが本心かは測りかねますし、嘘をついている可能性も否定できませんが……ここで彼女が嘘を吐くメリットは、あまり思いつかない。

  ……まあそもそも、情報不足であれこれ決めつけたところで、益はありませんね。
  保留保留)」

"七花胡" :
 時は金なり
「时间就是金钱、と申しますからね。
 これ以上は足で稼ぐとしましょう」無論自分の足というより部下の足だが。

"七花胡" :
      ・・
「見つかったなら、その時は“黒鉄の狼”の首は、貴女のものです。
 そう焦らないで」

 まあ、本当に「いるのなら」の話だが。
 こちらは「いる」と断じた覚えはない。

“帝釈天” :
百聞一見に如かず
「百聞不如一見と。良き心掛けかと」

ラーゼス :
「…………」

ラーゼス :
「わかってくれるな?」

ラーゼス :
おれが『違えた』と思えば『違えた』なのだ、と、姿勢が無言のうちに語る。

"七花胡" :
「ええ、もちろん。わかっておりますよ♡」にこ

“帝釈天” :
「………」

SYSTEM :

 踏み込むことも遠ざかることもしない。
 如何に言っても、
 その華人が言伝を終えて立ち去るまさにこの時まで、主張らしい主張をすることはなかった。

SYSTEM :
        ・・
 だがそれは女の謙虚なることを意味しない。
 むしろ───。

“帝釈天” :

「それでは、私はこれにて失礼。
 武運長久を祈っております………」

“帝釈天” :

「…が、そうそう。そう言えば…」

“帝釈天” :

 パーシェンコーハイ
「《八仙過海》の一員…と。
 仰っていましたね、貴方…」

"七花胡" :
「…………」

"七花胡" :
「ええ。“元”ですが。
 それが何か?」

“帝釈天” :

「フフ…そう、そう」

SYSTEM :

 薄らと目を細める。
 成熟した華人が、童女のように。
 確かめ終えたことの意味のため、わらった。

“帝釈天” :

「なにも。私、そのセルの人間とは縁があるものでして…。
 幾星霜にてなおも、世界の狭さ、というものを…感じた次第にてございます」

SYSTEM :

 彼女は、そのまま“余談”を語り終え。
 あなたの横を通り過ぎて、

“帝釈天” :


──────

“帝釈天” :


───
───

“帝釈天” :


───
───

“帝釈天” :
 うまおりて
「下馬飮君酒、」
きみにさけすすむ

“帝釈天” :

. きみにたずねる
「問 君 何 所 之…………」
.それでどこにいくのか

“帝釈天” :
「………フフフ………」

SYSTEM :

 ………送別の詩の一節である。

 続く言葉に曰く、
 送り出されるものが儘ならぬ世を歌うのだとか。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 某日。

 イタリア・ローマ入りし、テベレ川の橋を丁度超える輸送車のドライバーは、眠い目を軽く擦りながら、夜景に目移りすることなく職務を全うしていた。

SYSTEM :
 とはいえ、彼に特筆するべきことはない。
 どこにでもいて、どこからでも襲い来る不幸への備えがない、
 ただそれだけのドライバーだ。別段勤勉でもないし、逆に怠惰だったわけでもない。

SYSTEM :

 彼はその積み荷が何なのかは知らされていないが、
 少なくともパリオリ宛てのそれなりに“値の張る”品だとは聞かされていた。
 それなりに後ろ暗い事情のにおいを嗅ぎ取ったその日暮らしの男は、詮索することなく、ただ何時も通り払いの良い“雇い主”のオーダーを受諾してここに来たのである。

SYSTEM :
 王は彼ではない。彼が王なのは、空けがちの安い賃貸住宅の一室だけだ。
 
 身の程を知っているから、彼は積み荷の後ろ暗さもあって、気を紛らわせるように思いを馳せた。

運転手 :

「どこのどいつが首回らなくなったんだかな…」

SYSTEM :
 そしてどこの誰がお求めになられるのやら、と。一生をかけても縁もゆかりもないだろう贅沢品の極致を妄想した。

 生まれとその後の間の良さ。
 それ“だけ”で社会の強者になった者たちを、偏見を刃にして羨むのが肴代わりだ。

SYSTEM :
 パリオリの身綺麗な人間が見えてくるまで長く、一見してもしなくとも、この静まり返った状況に違和感を懐けるほど彼のアンテナは鋭くないし、彼もまた責められる謂れはない。

 溝と暗闇に潜む人喰いネズミどもは、観光客と言う名の余所者が主食だが、
 それはローマに入った無警戒のマヌケを見逃す優しさとイコールではない。
 どこもかしこも似たようなものだが、なまじ積み荷が積み荷だけに必要以上の慎重さが彼にはあった。

SYSTEM :
 だが。
 仮令その慎重さがあろうとなかろうと、彼の命運が変わったのかは定かでない。

運転手 :

「んあ? なんだ、眩し」

SYSTEM :

 特に理由はなく。
 続く彼の思考は、痛みと爆発に呑まれて永遠に途切れた。

FHエージェント :

『リーダー、これ!』

FHセルリーダー :

『………ハズレだ。コイツじゃない』

FHセルリーダー :
            パク
『だが渡す理由もないし…強奪っとこう。
 ───よぉし! 今日のケツ持ちは“赤の鬼人”だ、睨まれん程度にハシャげ!』

SYSTEM :

 以降、深夜より夜明け前にて、テベレ川の橋は数十分から数時間ほどの通行止めになるが、
 彼と中身を抜き取られた輸送車がその発端である。

SYSTEM :

 現金に換算すれば“それなり”になるイタリアのどこぞの芸術家が仕立てた骨董品。
 人によっては垂涎の品であろうが、彼らの用があるものはそれではない。

SYSTEM :

 それを悟らせない複数の同時ワーディングが、ローマの夜を瞬く間に呑み込んだ。
 名うてのオルクスである“青の貴人”が広げた巨きな領域の内外問わず、
 どちらだろうと等しく放たれたそれは、お互いを誇示し振り翳す、血と硝煙の漂う暴力と闘争の風景。

SYSTEM :
 ローマ市民にとって幸いだったのは、
 ローマを更地にしようという魂胆“は”、この当事者たちになかったこと。

 だが不幸だったのは、その前提さえ守れば彼らにとって、
 その他大勢のエキストラの明日など、別に晴れようが嵐に襲われようがなんでもよかったことだ。

SYSTEM :
 であるから、ローマ市内でも平然と起動した多重のワーディングの中に、
 余所者を故意に入れ込んだ“リグ・ヒンサー”の意図を読み取り次第、
 ある種の守勢である“貴人の庭”は腰の重さを主張できない。正面衝突が始まる。

SYSTEM :
 手勢の数に限ったならば、元々手広いリグ・ヒンサーは、
 さらに今回に限ってハゲタカを考えられる限り手懐けているのだ。
 しかも、彼らは薄氷の上の日常を有難がる性分ではない。
 
“貴人の庭”は比較的その例外に相当するが、それとて、御客人に容赦をする理由はない。

SYSTEM :
 分厚い紙一重の向こう側で、烈しい音の何にも誰もが気付くことなく、
 幻想にしてはあまりに血腥い闘争が幕を開ける。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 ───時に、“七花胡”の躾けた部隊は複数ある。

 全て、修羅場をくぐった経験のある“アセルス・デスミオス”に言わせたなら大きな糞餓鬼の群れだった連中を、
 さながら魔法か何かでも使ったように、彼はシンデレラに魔法をかけた老婆が裸足で逃げ出す短時間を以て、統制された猟犬に仕立てた。

SYSTEM :

 ただその彼らとて、FHである限り闘争と欲望には背を向けられない。
 また、パリオリを目指した総取りと見極めをもくろんだが故に、
 彼らの一部は、その“貴人の庭”のこっぴどい迎撃を受ける羽目になった。

SYSTEM :

“貴人の庭”の放し飼いには、時として異様なものがいるとは聞いていた。
 はじめは不自然なほど士気の高い捨てがまりに等しいチルドレン。
 しかしその程度ならば、餓鬼の数人単位を食いつぶすことに何ら難しさを感じない彼らの手は緩まない。
 
 ………つまりその“こっぴどい迎撃”とは、彼らの手が緩もうが緩むまいが関係のない暴力であり。

“赤の鬼人”の雇った外様のチームが潰されること3度目。ついに“七花胡”の管轄下、その名代にも飛び火という名のお鉢が回って来た。

“アセルス・デスミオス” :
        リザ
「───はいはい、再生効くうちにお下がりよ。
 三度目は後ろから射抜くぞー」

SYSTEM :

 何かが爆ぜ飛ぶ。
 ずいぶん大きな肉塊が拉げて飛んで来た。
 再生したものは二人。一人は不可能。合計三人分のばらけた“もの”は、
 奥にいるキュマイラ相当のオーヴァードたった一人が拳の一振りで成し遂げた成果だ。

 臆する声に、その名代が気の抜けた声で合図する。

SYSTEM :

 爆撃じみた音が遠くから聞こえる。
 臆した一人と、逸る一人。後方支援役のソラリスが齎す興奮物質さえ効かない恐慌と“効きすぎた”勇猛。

“アセルス・デスミオス” :

「はい次───肉弾向けのヤツ、10秒足止め。
 死に損なったら下がれよー」

SYSTEM :
 鞭を持つ調教師の代理が萎れる前の花に冷や水を浴びせ、
 群れのひとつを牙なしの獣なりに覚えた、躾け通りの動かし方を取る。
    ・
 それは人の獣狩りめいた仕草だ。
 大きな獲物を数人、いやさ十数人のチームで並んで仕留めるに等しい。

SYSTEM :

 ………であれば、だ。

 この瞬間相対しているものは、
 まさに獣だった。

“ヘカトンケイル” :



『ウォォォォォォ────ッ!』 

SYSTEM :

 いや、獣というにも喩えるものがない。
 それはどちらかと言えば巨人だ。

“アセルス・デスミオス” :
「………ウヒョ~、馬鹿力…」

SYSTEM :
 オーヴァード
 超人の範疇に彼を留めていいのかも怪しい。
 端的に、そのレベルの暴虐だった。

 バーサーカー
 強化兵………。
 如何なるモルフェウスの作った必殺の兵器さえ容易く弾く皮膚に、
 数人掛かりの盾を纏めて薙ぎ払うどころか弾き飛ばすその豪腕。

SYSTEM :

 それはもう後天的努力でどうにかなるものではない。
    かた    はや
 単純に強靭すぎる。強靭すぎる。 
 筋力と反射神経…もっとも迫撃において秀でるハイブリッド。
.キュマイラ ハヌマーン
 肉体強化と衝撃操作の両特性を掛け持つものが、令嬢の番犬。
           かみ .ヘカトンケイル
 生まれながらの戦士。貴人を守る醜い巨人。

“アセルス・デスミオス” :
「いる、いる、こーゆーの。番犬ってやつかねェ…」

“アセルス・デスミオス” :
「(ガキの頃から育てて躾けた暴力担当ってやつ? 貧乏籤引いたか)」

“アセルス・デスミオス” :
「(なら、いっそコイツら捨て駒にするか?
  …イヤ、それは一番“ない”わな)」

SYSTEM :
 冷静に取捨選択をする“アセルス・デスミオス”であるが、そもそも彼に選択権はない。
 
 使い捨ての利用先とはいえ、己の飼い主の駒だ。
 駒が駒自身を粗末にする自惚れは、少なくとも今の彼には出来ない。
 ───やってもいい理由がないからだ。

SYSTEM :

  .フリークス
 何より怪物と対峙した、ただ一言だけで臆するようなら、彼はとっくに野垂れ死んでいる。

 それに目下、リグ・ヒンサーの目的は、遺産というよりは、瘤の掃除であるようにも見えた。
 ───点数稼ぎの目くらましと思えば悪くはない。
 駒を粗末に扱わず、害虫除けになるのがこちらの役目。

“アセルス・デスミオス” :

「しゃーなし、クジを引き通すか。
 ───飼い犬同士、元気よく尻尾振ろうや…!」

“ヘカトンケイル” :


『がぁぁああああああッ!!』 

SYSTEM :

 それなら、両者の利害が一致する。
     ・ ・・
 飼い主の敵を殺す。

SYSTEM :
 ───その意志の差は明らかに巨人が勝るが。
 彼にない姑息さ、狡猾さ、そしてかつての野心の名残がローマを血色に彩った。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :

 ───人斬り包丁が血色を裂く。

 目に映るもの悉くを薙ぎ倒す暴虐でなく、
 人体のひとつひとつを穿ち抜く精密機械。

SYSTEM :
 ひとたび戦いの場に出たならば、
      デュアルフェイス
 ノイマンの戦闘論理が三草由芽を動かす。
 たかだか数体、いやさ十体前後の軍勢に彼女は捉えられない。

SYSTEM :
 しかし…。

“逢魔狩り”三草由芽 :
「(───従者かこれ)」

“逢魔狩り”三草由芽 :
         イジ
「(しかもけっこう調整ってますね、生身混じりもいる…。
  下手すると大元ハネても止まらない? いや、“あれ”も本当に生身?)」

SYSTEM :
 それが減らないなら、さしもの彼女とて進み切れない。
 相対しているのはその類の人間だ。
 
 ブラム=ストーカーの血を媒介にした従者形成能力。
 たった一人で一個中隊にも匹敵する戦闘力を発揮するのがオーヴァードであるが、
 こと、このシンドロームは物理的に一個中隊になれる。
 もちろん制御を誤り練度の不足を突かれようものなら、
 そこに待っているのはただの烏合の衆、薙ぎ倒されるだけの張子の虎。

SYSTEM :
 だが目の前のはそうではない。
 そうではないなら、いくらだって切り抜ける術というのがあるからだ。
 高を括る御高説などしてきた相手の首なら、欠伸しながらでも斬り飛ばせる。

 出来ていないのがその証明───自惚れでなく、客観的結論だ。

SYSTEM :
“貴人の庭”の凡そ警戒するべき相手は頭に叩き込んだ彼女であるが、
 いざそこに“御手翳す開放者”の介入があった時、鼠たちの顔までは覚えきっていない。つまり眼前のは“それ”だ。

 そもそも彼らは上に行けば行くほど、というより組織の形態からして秘密主義の隠密主義だ。

SYSTEM :
 その冷静な分析は、元々剣を誇らない三草由芽に撤退の選択肢を与えるべきだが、そうしない。
 
 それは退く理由のなさだ。万全、良好でないが単身でない。
 何より、恐らくもう一斉に散らせているだろうこの頭数を更に自由にしたならば、宝探しの主導権は一気に彼の手に渡る。

“逢魔狩り”三草由芽 :
「情けないこと。
 男なら後方で囃し立てるのではなく、組み伏せてくれればいいのに」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「始めてじゃあないでしょ、お互い」

SYSTEM :
 どこまでが冗談のラインかは自分が一番知っている戯言を、
 見下ろすように立つ男が聞き留めた。

SYSTEM :
 顔色一つ変えず、彼は顎に手を当てる。
 身長はともかく体格は、戦場上がりの人間ではない。

 油断一つ見せたならば、この間合いからでも首は獲れるだろうと、
 挙動を予測させ難い透明な殺気を浴びながらも、彼は平然としていた。

“血色の探求” :
『───ふむ』

“血色の探求” :
                   このみ
『厳正な審査の結果を話すが、えー、君は崇拝対象ではない。
 またの応募を心よりお待ちしております、以上』

“逢魔狩り”三草由芽 :
「は?」

SYSTEM :
 いきなり“ごめんなさいタイプじゃないの”の亜種をぶつけられた彼女の、
 あらゆる感情のこもった「は?」を涼風のように受け流しながら、男が続ける。

“血色の探求” :
『そして基本的な疑問に入らせて貰いたいのだが、その台詞…。
 後ろの男にも返してやったらどうか』

SYSTEM :

 視線が、後方に向く。

 返答は狙撃。 

SYSTEM :
 系列にして同じノイマンの精密射撃を、                      
 モルフェウス系列特有の強化・形成を伴って放たれる、
  レールキャノン
 いわば電磁砲。

 一方、彼の傍らには血色の従者が無数に控えている。
 点の斬撃/線の射撃は、何枚重ねの面で防ぐ。
 凡そ二人掛かりに対して一人、だが実際は「二人」と「無数」だ。

SYSTEM :
 ───“御手を翳す開放者”はほぼ全てが変わり者のオーヴァード。
 そのうちあらゆる意味で上澄みに相当する彼は、
 互角以上の防戦を繰り広げながらも、しかし眼鏡の裏に潜む好奇心と探求心を隠さない。

 人を見る眼ではない。齢17の少女の中に潜む怜悧さが淡々とそれを仕分ける。
 どちらかと言えば、それは…。

“血色の探求” :
       .PSY FRAME
『なるほどやはり、P.F.………。
 そいつを直に見るとは思わなんだが、あれがそこらの破落戸の手にまで渡っていようとは』

“血色の探求” :
『しかし噂に聞いたスペックではないな。乗り手の問題かね?
 地続きすぎる。ずいぶん御利巧な戦場で生きておられたらしい』

SYSTEM :
 ───端的に一言。
   マッドサイエンティスト
 男は偏執的探究者。

SYSTEM :
 ならばその眼、生き物を見る眼ではない。強さを見る眼だ。
 ただオーヴァードというものが何を齎すのかを見ているならば、
 なるほど彼にとって「ただの兵器」ほど面白くないものはない。

SYSTEM :
   ナメ
 ───無礼られたと感じて内心の撃鉄を上げる未成年を余所に、

 鉛玉の次、射線の向こう側から、ノイズ交じりの通信音が混ざる。
 見知らぬ由芽との、最低限のコンタクトのため代わりの通信機から発された音だ。

“グレイ・スコーピオ” :

〈───口の回る野郎だ。
 おしゃべりが好きなようだが、コミュニケーションにその貪欲さが向いていないらしい〉

“血色の探求” :

『相手を択んでいると言ってくれたまえ』

SYSTEM :
 機械的な音声交じりの声。
 鋼の鎧の中身が、どこか皮肉交じりの声を零す。

 育ちは日本ではないだろう。
 粗野な英語は、並行していつでも隙に鉛弾を撃ち込める傭兵の声色だった。

“血色の探求” :
『それで、どうかね返答は。
 コミュニケーションの必要性を感じたことはないが、
 是非とも手本を見せてくれると喜ばしい』

“グレイ・スコーピオ” :
〈見りゃわかるだろ? 元より此処が俺の居場所でね。
 そこから利巧さが失われただけに過ぎねェよ〉

“血色の探求” :
『それは素晴らしい。さぞ色褪せた風景を臨んで来たな?』

“グレイ・スコーピオ” :
〈そりゃそうだ…だが、どんな景色も嵐で吹き飛ぶ。毒で腐る。
 いつまでも残る理想なんざ聞いたことも知ったことでもない〉

SYSTEM :
 乾いた血のにおいに、達観混じりの憎悪が混ざる。
 戦場を生業とする人間に由芽は三度と会って来た。

SYSTEM :
    ・・
 ───皆そうなのか? と邪推する無体な思考。
 戦場に立つ自分を鋼色で鎧う狙撃手の冷酷さは、
 生まれながらのものにしては雑味があった。そういうのは分かる。
 
 なら、対する人間と比較してしまえば、それは確かに交わる所以もない。

“血色の探求” :

『よく聞く正論だ』 

“血色の探求” :

『───ではそんな現実主義の貴君も要らん。
 端的に、間に合っているのだよ。女神が慈愛を示す前にとっととご退場願おう』

“グレイ・スコーピオ” :
〈そりゃお互い運がいい。撃つのが気楽ってのは大事だ。
                  カネ
 遠慮なく仕事を果たさせて、パーッと報酬をせしめよう〉

SYSTEM :
 お互いの欲望が交錯する“だけ”で死は容易く振り撒かれる。
オーヴァード
 超人は手にしたナイフを引っ込められるから折り合いがつくというが、
 逆に言えば引っ込める気がないなら触るもの皆傷付ける。
        ・・
 突き詰めたら、障るもの皆殺しだ。この二人はまさにそれだった。

“グレイ・スコーピオ” :

〈あと───〉

“グレイ・スコーピオ” :
〈鼻持ちならんアンタにも、ひとつだけ同意出来ることがある〉

“血色の探求” :
『何かな。聞いて差し上げよう』

“グレイ・スコーピオ” :
          ノーサンキュー
〈俺も乳くさい未成年は守備範囲外だ〉

“血色の探求” :
           ノーサンキュー
『生憎と私はただの人間が守備範囲外だ。
 残念だったな』

“逢魔狩り”三草由芽 :
「───よし、」

“逢魔狩り”三草由芽 :

「後ろの人、声覚えましたよ。
 まとめて殺して来世フンコロガシにしますからね」

“グレイ・スコーピオ” :
〈おう背伸びか? 保護者に見て貰え〉

“血色の探求” :
『ナイスアイディアだ凡俗。後で女神にやってもらおう』

SYSTEM :
         ナメ
 尚、二重の意味で無礼られた若い鉄砲玉の対応は単純。

SYSTEM :
 えらそうなの
 知識人気取りは首ハネて、

 後で殺すほう
 溝漁りの傭兵はシメよう。
 少女は静かに決意した。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ───争いの狼煙とは、逸った末端のワーディング。

 それが次から次へと伝播し、自分の庭を荒らされることを嫌った“青の貴人”の領域操作による、ワーディングの性質そのものの転換だ。

SYSTEM :
 即ちワーディングによって発生する日常と非日常の隔離、
.            ラビリンス
 その意味さえも卓越した都市形成能力が作り替える。

SYSTEM :
 それが出来ることを知っていて、更地を厭った男自身が街を人質に取った。
 欲望のために、そのようにすることも、知っているからだ。

 そしてこうなってしまえば、動くものはまあだいたいオーヴァード。
 後は顔を覚えているものが味方の資格ありで、
 ないものは殴られようが何されようが文句は言えぬ。

SYSTEM :
 …“帯来风暴”と“死滅天隕”の二人の前に転がるのは、その動くものに向かって来た跳ね返り。

 特段、必要以上の戦闘態勢…即ちエフェクト行使の必要もなく片付いたものを、派手にやり合うのが得意分野でない同伴が代わりにつっつく。

SYSTEM :
   エグザイル
 彼は身体操作だ。乱暴に突っ込んだ指は脳髄を傷付けず、思考の糸を忖度抜いて見聞する。

“Mr・A” :
.  アスラ
「“赤の鬼人”というのは随分喧嘩好きな男だ。
 さては自分の成功体験ってヤツかな?」

“Mr・A” :
「ちなみにいまの彼らは“御手翳す開放者”の方………。
 ・・
 衝突にかこつけて出て来てくれると評判のネズミだ。
 確かに釣れたが、所見を言うと“お上りさん”のようだがネェ」

SYSTEM :

 これを恐れたわけじゃなさそうだ、
 と囃し立てる部下を余所に聞こえる音は、祭りの音か、それとも。

アレウス :
「これじゃ喧嘩どころか乱痴気騒ぎだな」

アレウス :
「釣れた獲物のサイズで一喜一憂するよりは、質の方を大事にしたいところだがね。
 最もその点で言えば、ミクサは"いいもの"を釣り上げてそうだが……」

アレウス :
「これではお前の実力の程を直で見ることは、まだ叶わんみたいだな"帯来风暴”」

夏瑞珂 :
 すぱーんと側頭を蹴りあげたら、
 どかーんと転がってしまいました。おしまい!

夏瑞珂 :
 ぐりぐり頭に指をねじ込んでいるひとと横並びにしゃがんで、なにげなく観察。祭のくじはどうやらハズレのよう。

「つまんないの。せっかくのお祭りなのに、おこぼればっかり」

アレウス :
「骨に残った肉じゃ不満だろうな」

夏瑞珂 :
「私も早く遊びたいわ、おじさま」

 頬に跳ねた返り血を唇に差す。
 今は何もかもが子どもの遊びの延長線だ。
 はしゃいで、さわいで、こわす。

夏瑞珂 :
「ええ。おっきく口を開けてかぶりつきたいの、私。ね、狩り場を変えてはいけないの?」

アレウス :
「質の悪い口紅をつけると不幸になる。
 今度はもっと質の良いものが流れるといいが……さて」

アレウス :
「どうだったかな、神算のA君よ」

“Mr・A” :
「フゥム? 悪くない提案だと思わないかボス。
 そもそも骨すら怪しいし、」

“Mr・A” :
..         独 立 し
「下働きは卒業してベンチャー持ったんだろ? 何年か前」

アレウス :
「ああ、そんな日もあったな」

“Mr・A” :
「それと同じさ。
 行儀の悪い参加者を抑えきれなかった時、どんなパーティーも我慢とは損だよ」

SYSTEM :
 囃し立てる“Mr・A/Anonymous”を余所に…。
 
 ───大きな衝突の気配が複数。

SYSTEM :
 それぞれ目当てのお宝の分け前で揉めたのだろうことは想像に難くないわけだが。
 その中で、ひときわ大きな自己の誇示がある。 

SYSTEM :
 衝動をくすぐるレネゲイドの発露。
. アスラ
 赤の鬼人が───伝説が戦っている。

“Mr・A” :
 シルフ
「風のレディ、宝探しの経験ってある?」

SYSTEM :
 で、物見遊山したがりなモノの反応はこれだ。遠回しの”やって来るものが小さい”なら大きなお宝を探そうという、ボスへの返答も兼ねた比較的趣味でしかない誘惑である。

アレウス :

 ──ヘルメットをかぶる。
 それは臨戦体勢の合図だ。

「ハッハー! 脂の乗った部分を持ってく気だな、あの男!
 美味い肉の気配もするな……どうだ、シア!」

夏瑞珂 :
「イースターのエッグハントでよければ」

 復活祭の宝探し。不器用にペイントされた卵の記憶を、今は内にしまう。

夏瑞珂 :
「ボスばっかり愉しんでずるいもの。だから、そうね。わたしたちも、とびきり綺麗な卵を割りに行きましょう?」

夏瑞珂 :
「殻の中には、きっと素敵なご馳走が待ってるわ」

“Mr・A” :
「派手にしたいのは彼のようだからね、盛り上げて貰おう」

“Mr・A” :
「ああでもワタシ、口はついていても食用じゃないんだ…。
 感想は聞かせてくれよ?」

アレウス :
「よかろう。これでも舌は肥えてる方だ」

夏瑞珂 :

夏瑞珂 :
「わたしはお腹が膨れるなら好きよ、何でも」

夏瑞珂 :
「全部まとめてぺろりとたいらげてしまうのが、いちばん好き」

夏瑞珂 :
「だから、ね。大人の愉しみ方はあなたから教わることにするわ」

アレウス :
「そいつは殊勝な心がけだ、だがなんでも食うのは悪いことじゃあない」

アレウス :
「味を確かめる舌も、所詮はただの感性さ」

アレウス :
「入れてしまえば同じってもんよ──お前がこれから知るのは、酒の味さ」

夏瑞珂 :
 ──酒。それはいい。きっと体は熱く火照るだろう。何もかも吹き飛ばしたあとの夜空の寒さに、気づかなくていいくらい。

「素敵」

 したいことのために力を振るう自由が、ここにはあった。

“Mr・A” :
「今日はエスコート付きというワケか。
 よォし。注文も決まったことだ、抜け駆け返しと洒落込もう」

アレウス :
「ああ、それが一番良い」

アレウス :
「食前酒は質が悪かった。
 食中の酒で口直しをするとしよう」

アレウス :

 ──しかし、随分派手だ。

 派手すぎるくらいだ、これではもう祭りの規模ではない。

アレウス :

 もはやこれは──"戦争"だ。
 誰が疑わずとも、これは、殺しを享受し、火の中で踊る獣たちの、爪の振るいあい。

 そうなる定めだったのだ。
 この火薬庫にも等しい場所に、遺産なんてものを持ってきてしまえば……。

アレウス :

 ・
 俺は述懐する。
 目の前で起こる戦争への高揚感、湧き上がるような血液の流れ……奮い立つ心臓の音、全てが俺の本心だ。
 だが同時に──その本心は、もう一つの思いを抱く。

アレウス :
   ・・・・
(──テレサ姫よぉ、お前……これで良かったのか?
 ・・・・・・
 こんな火遊びは……俺は教えた覚えはないぜ……?)

SYSTEM :
 高揚の中に混じり生る一房の疑問。

 若き日の狩人、アレウスには、
 確かにかつて“貴人の庭”に貸しがあった。
 厳密には、先代のセルリーダーに。
 その僅かな邂逅のことも含めて、覚えておいたのはあなたがあなた自身で認めた義理の価値故のことだ。

SYSTEM :
 ───争いを知らぬ純潔の幼子から現在へ伸びる退廃を彩る影が。
.          バッカーノ
 血と硝煙の真ん中で馬鹿騒ぎに興じているその様に、男は何を思ったのか…。

 少なくともいつでも客観のAには分かりようがない。
 ましてや、あるいは姫と呼ばれていても良かったはずの成人女性/少女にも。しかも後者について言えば、理解る暇がなかった。

 別の高揚感と痛感が交互に入り混じった中で、面には見せない感情など手繰りようがない。

SYSTEM :
 ………。
 そうだとも。夏瑞珂は確かに覚えている。

 黒鉄の狼は争いの気配に釣られてやってくる。
 実際に、そうだったことも含めて。

SYSTEM :
 警護の依頼を受けて果たした最中、
 けちがついた時、骨まで食われた犠牲者は、
 何も記憶に焼き付いた彼ら彼女らに限らない。

 何処の馬の骨とも分からないオーヴァード・ギャングもだ。
 ・・・ 
 だから/それもあって、貴女は戦場を渡り歩いて来た。なにかの終わりに繋がる道程を。

SYSTEM :
 ………戦場の伝説と巡り合わずして三年。

 胸騒ぎにも唸りにも似た鼓動の音は、
 殺戮の血風を浴びる心地よさのせいか?

夏瑞珂 :
 “黒鉄の狼”は戦場にいる──

 終わった男の言に則って、
 終わりを探し求めた三年。

夏瑞珂 :
 きっと足りなかったのだろう。もっと激しいのがいいのだろう。ああ、だとすれば、今夜はなんて相応しい──。

夏瑞珂 :
 沸き立つ血が、心臓を打ち鳴らす。がなり立てるハードビートにあの声が重なった。復讐を。逆襲を。再戦を。

夏瑞珂 :
「ふ」

 かつかつと弾む足取りに、くつくつと忍び笑いが漏れた。
 もっと愉しくなる予感がした。もっと自由になれる確信があった。

夏瑞珂 :
 耳の奥で、自分にだけ響く音を鳴らす。風使いの特権が奏でる、『危ない!』あなたの声。

夏瑞珂 :
 『危ない!』リピートする。『危ない!』また。『危ない!』もう一度。『危ない!』『危ない!』『危ない!』

夏瑞珂 :
「────殺すわ、必ず」

SYSTEM :
 焦げ目をつけて焼き付いた音色が。
 もとの声量で響くことはない。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

“アセルス・デスミオス” :
〈───あー大将、こちら“アセルス・デスミオス”
 健康状態3分前に予想つけて先んじて連絡、返答不可能でゴメンちょ〉

“アセルス・デスミオス” :
〈こっち収穫ナシだが、“でか”いのと遭遇する。
 事前にあった“お嬢様”はいろいろ飼い犬飼ってんだね、驚いた〉

“アセルス・デスミオス” :
〈まあこっちの回収は要らないっしょ。
 別嬪さんにおっさんの活躍盛って話しておいて下さい、適当にやります、葬儀は不要、以上〉

SYSTEM :
 ───“七花胡”の下にも、交戦3分前に先んじて。 
    いつものこと
 恐らくは命の危機だから、知っている平常心で解答を残すだけ残した飼い馬の報告が届く。

SYSTEM :
 死体に危機感はないが、昨日の経験がある。
 ………其れを以て、いくつかの箇所の“はずれ”を伝えるためだけの言葉だ。
      
 遺産はそこではない。となれば、残りは“どこ”なのか。
 作戦の予定箇所を考えたなら、残りの候補はそう多くない……。

SYSTEM :

 あなた
 七花胡の目的は何も馬鹿騒ぎに関わることでは“ない”。遺産の回収ないし破壊である。

 それを踏まえて考えたなら、替えが利くと前提に置いた部下の扶けなど、考えるまでもなく、わざわざ行うことでもない。
 やることはいくつもあり、その一つに隣る彼女のことがあっても、最優先は…何処が遺産の在処なのか、誰が“それ”を手にするのか。
 
 宝箱の当たりを見極めることだ。

SYSTEM :
 ラーゼス
 その彼女にとっても。

 この満ち足りた永遠ならざる羅馬にて、尚もと残る栄華を求めて血と肉を散らし合うさまは、皮肉にも存じた風景である。

 断じて、その意味をこの未来に中てて“彼”はそう口にしたのではなかろうが。
 誰が言ったか、まことの騎士の時代───差し伸べる手の代わりに、砕き穿つ腕を。溺れ落とす足を、妖精に魅入られた万人が持っている。

SYSTEM :

 ───その流れる血が、
 染み出る昏き欲望が。
 果たして、あの予知を叶えるか否か。

ラーゼス :
 武器として体をなしているとはとても言い難い、少々ばかり上等な棒切れの如き杖を抱え、長身を丸めるように革張りの椅子に座している。
 俯きがちの顔から視線だけが持ち上げられ、硝子ごしの外、そこかしこで上がる爆炎に吸い寄せられていた。

ラーゼス :
         ワーディング
 殺意と敵意を帯びた結界の気配。
 既に戦端は拓かれ、無法者たちが欲望のままに殺し合う──
 ここはもう、己から飛び込んだ、人間どうしの生を求めるものではない奪い合いの最中だ。

ラーゼス :
「(『貧しき者どもが矮小な富を巡って、果てなく殺し合う』……)」

ラーゼス :
「ああ……
 その果てがこれか」

ラーゼス :
 喉から零れた述懐は、
 この国を、都を守ろうとした、醜く、汚らしい、我が森の仇を思ってのものだ。

ラーゼス :
 だが臨む羅馬の街は、たしかに華やぎの都でもあった。
 結界の外、何も知らぬものたちは、ただ明日を思って眠るのだろう。
 年月はあらゆるものを洗い流す。
 尊きものも、醜きものも、互いに望むようには流れてゆかぬのか。

ラーゼス :
 ……だからこそ、あるがまま火種は灯る。
 このように。人間の欲望のままに。

ラーゼス :
 そして己のすることもまた、この嵐を調伏することではない。
 この中に炎のひとつとなって飛び込み、望むべき首を見定めることだ。

ラーゼス :
「胡。貴公が望む『遺産』の気配はどこに?」

"七花胡" :
 ついに始まった。
 収穫祭と言うにはややも血腥い、大物捕りの夜が。
             ・・・
 普段、こんな乱痴気騒ぎは止める側だ。
 人の庭先で火遊びなどやらかす糞餓鬼共を、叱って縛って捕えて、場合によって調教し直す。
 その中から、価値ある種だけを掬い取って、植えて水を遣るのがライフワーク。
        ・・
 それがまさか、煽る側で参加する日が来ようなどとは……

"七花胡" :
「(余所の庭、客人だからこそできる無責任ですね。
  巻き込まれる此処の住民たちはかわいそうですが、眠りの底は天の御国のほど近く……
  運悪く流れ弾で死んだとて、神とやらのリムジンタクシーは待たずとやってくるでしょうから、心配ありますまい)」

 帰依したことはないので、実態がどうかは知ったことではないが。
 余所の花壇に遣る心配など、しょせんはこの程度のものだ。

"七花胡" :
 華の都、栄華の街、ローマを、一台の高級車が駆け抜ける。
 狼煙のように広がるワーディングの中を、アルファ・ロメオが爆炎を振り切るかのように切り裂いた。
 その車中だ。駄馬の留守電を聞き終えたら、頭の中のマップのうちの一つのマルにバツを付ける。

"七花胡" :
「候補は幾つか。今ほどそのうちの一つが外れました。
 残りのうちの一か所が、この街路を抜けた先です」

"七花胡" :
「其方の準備は整っておいでで? “隻獅子”。
 御望みの祭りの会場はもう目前だというのに、随分つまらなそうではありませんか」

ラーゼス :
「いつでもかまわない」

ラーゼス :
「貴公が『よろし』と言えば、そのとおりに働こう」

ラーゼス :
問いかけには少し考える風を見せる。そう見えるか、と言いたげな仕草。

ラーゼス :
「ここは、古い仇の住まった町なのだ。おれも、どうにも思うところがあったようでな」

ラーゼス :
「自分でも驚いている。そのぐらいだ」

"七花胡" :
「へえ。既にこの街とは縁が合ったのですね。意外です。
 まず真っ先に、その仇とやらを訪ねようとは思わなかったので」

ラーゼス :
「そうするなら……」

ラーゼス :
「故郷に戻って、友人の腹の中に尋ねなければならない」

ラーゼス :
『その仇は他者に喰われた』ということだ。文字どおり。

"七花胡" :
「ハハハハハ! そうでしたか、そうでしたか。御自分の手で首を獲れなかったのです、さぞや残念だったことでしょう。
 いえ、その感じ、意外とそうでもなさそうですね?」

ラーゼス :
「ん……」

ラーゼス :
「……貴公は群れで獲った首を、おのれの獲った首とは思わないか?」

"七花胡" :
「成程。“お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの”ってやつですね。
 納得です」

"七花胡" :
「随分野性的な表現をなさる方だ。知人にもそういう表現をする人がいるので、少しばかり親近感が湧いてしまいますね」

ラーゼス :
「知人……」
 どこの森のものだ? と興味が首をもたげたが、先程の言葉を思い出して収める。
『素性を訊ねることは好ましくない』。この男がはじめに教えてくれたことだ。

ラーゼス :
「貴公のような人間と一緒にいるのは……その『知人』にとってはやり易かろう」

ラーゼス :
「野に這う理しか知らぬものにとって、己の頭脳となってくれる人間の心強きことは、おれも知っている」

"七花胡" :
 「彼」も元はそういう人間だったと、人づてで聞いたことがある。
 自分はただの暴力装置だから、それを秩序のためにいかようも使ってくれ、というような世迷言を宣う輩だと。

 だが彼が自分の手元に来た時の印象は、少なからず違っていた。
 そして自分は、慣れないなりに不格好な主張を試みる、今の彼の方を高く評価していて……

"七花胡" :
「では貴方の傍で貴方の『頭脳』を務めてくださった方は、自分なしで何処までもいける貴方を見て、喜んでおられるのではないですか。
 御役御免だ、と」

"七花胡" :
「……なーんて、たわごとです、たわごと。
 聞き流してください」
   いつもの
 少しUGN寄りの振る舞いだったかもしれない。彼女の纏う雰囲気があまりにも朴訥で、釣られた感が否めない。
 いつもの口調に戻って、適当に誤魔化す。

SYSTEM :
 その振る舞いの自己評価が正確だとするならば、なるほど駆ける高級車の内側の内訳が”彼女”だったことは巡り合わせの良さだろう。

SYSTEM :

 ───閑話休題。
 祭の会場はいくつもあるが、他でもない飼いロバ/処理前の死体からの報告でバツをつけた位置を除けば、候補はそう多くない。

 この手の定石は“騒ぎの大きさ”だ。仕掛け人に統率する気が薄いのだから、個人主義の者たちは必然的に輝きの強いところに鴉の如く集まって来る。
 そうでないところは、割の合わないところかはたまた後片付けに入るところか、だ。

SYSTEM :
 ふとした拍子。
 走行中の音の中、奇しくも“ここ”と定めた場所から、衝動をくすぐるレネゲイドの発露。

SYSTEM :
. アスラ
 赤の鬼人が───伝説が自ら、戦っている。

SYSTEM :
 そこに我先にと萃まる気配の多さと、触らぬ神に祟りなしという定石を除けば、
 大捕り物の舞台としては、なるほど理には適う───。そんな気配だ。

ラーゼス :
「────」

ラーゼス :
「……大きなゆらぎを感じる」

ラーゼス :
 ・・
「これか?」

"七花胡" :
「その通り。目星をつけてはいたのですが、どうやら“赤の鬼人”が先に始めておられる様子」

"七花胡" :
「周りは火に飛び込む蛾ばかり。しかし求むものこそ、きっとその火でありましょう。
 熾火に群がるのもみっともない。轟轟と燃え盛るうちに、我らも蛾となり、馳せ参じるとしましょうか」

"七花胡" :
「羽根が燃え尽きるぎりぎりまでの働き、期待しておりますよ♡」

ラーゼス :
「あいさ。誰の目にも見えるように努めよう」

SYSTEM :
 秩序を守る者と壊す者同士の闘いと、
 いま起きている火に群がる者の闘い。
 唯一無二の共通項は、そこに譲ってはならないものがあること、ただ一つだけ。
 ただそれ以外の全てにおいて、これより行われる戦に呵責も容赦もありはしなかった。

 どこまでも他人の庭だ。
 そこで生き易さの是非など、
 確かに図る所以はない。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
───そして今日の未明にて。

SYSTEM :
 もしも、これより起きる出来事を拝む超人に非ざるものなどいたら……。
 その者は考え得る限り最大の凶兆を今日に集約したと言っていいだろう。

SYSTEM :
 衝突に伴う一際大きな“揺れ”───。
 バロール・シンドロームの純血種が成す、
 高レベルの魔眼制御によって発生する重力場を纏う超加速と打撃力。

SYSTEM :
 轟くような切り返しの音───。
 これと相対する半人半機、半ば人体が発生させ得る速度の天井を叩く、
 反射をそのままイコールで実際の機動に反映するアタック・パターン・プログラム。

SYSTEM :

 天の光が瞬くと同時、対象を射貫く閃光───。
 オルクスの領域制御とエンジェル・ハイロゥの複合形態で襲い掛かり、
 標的か否かの、徹底的な差別のもとに放たれる絨毯爆撃。
 .                     オリジン:レジェンド
 地に足を付ける生物のやっていいものではない、伝承型RB特有の悪意なき苛烈さ。 

SYSTEM :
 ───凡そが偶然。
 仕掛け人が誰にせよ、当事者たちが合意した以上、
 あとは見つけた“敵”を己の手で叩き潰すだけの純粋かつ野蛮な仕組み以外は有り得ない。

 そして…そうなったなら、彼我に是非などない。
 あったとして、あるのは一つだけの純粋な理屈。

SYSTEM :
 即ち、死んだものは弱く。
 弱いものが悪い。

SYSTEM :

 見物人覚悟でやって来たもの、純粋に加勢に来たもの、
 
 他の場所でも輸送車ごと巻き込んで殴り合うものだから、君子危うきに近寄らずと、どれかの威を借りようとしたもの。
 性質の悪いことにひとりは余波を気にせず、ひとりは酌量を持たず、ひとりはその判断に限って苛烈だ。
 寄せ集めは贄か礎となって、ばたばたと死にながら、中心はいずれも未だ健在。

“不朽讃えし懐刀” :
「狼藉者が。
 帝王は依然変わりなく…───嵐しか起こせぬ様でよくも宣う」

“アイシャ” :
「そっちのヒト。
 随分鍛えたのね。偉い偉い」

“アイシャ” :
      イノチ
「羅馬に或る生命なら。
 羅馬が、しがみつくものごと、あなたを寿くよ」

“アイシャ” :
「───ああ、でもそっちはダメね。
 狼藉はあなたの方」

“不朽讃えし懐刀” :
「無駄な是非を問うとは、人間のつもりが上手いな」

SYSTEM :
 ただ、彼我には“それなり”の差があり。
 打つに打たれない出る杭が、一切の厭気を見せることなく言い捨てる。

"赤の鬼人” :
「───見る阿呆も踊る阿呆も、ここまで多いとはな。
 だが、態々派手にしてやったのだ、集まって貰わないと困る」

"赤の鬼人” :
「だがまあ、丁度いい塩梅だ。
 “帝釈天”───見る阿呆のつもりならそこにいろ。巻き込む」

“帝釈天” :
「明白了」

SYSTEM :
 物見遊山もかくやの様子で、畏まりながらも助力の気配がない部下に、
 むしろそれで構わぬと言い切ってから、視線が遠くに向く。

 状況の主導権は確かに赤の鬼人のものだったが、ここはこれより千客万来だ。
 先んじて視線が、既にいる方に向く。

"赤の鬼人” :
「そちらはどうだ、小僧。

 シケ込んだ女のスカートに隠れて様子見とは、
 どうにもデカいのは口だけで、“マンモーニ”が抜け切っていないようだな…え?」

“黄の希人”アーキル :
「手厳しい。お嬢様の我儘を聞いたのは俺の方さ」

“アイシャ” :
「ん…甲斐性なし」

“黄の希人”アーキル :
「見ろ、お陰で背後から撃たれた」

“黄の希人”アーキル :
                  ヒダネ
「それに俺としては…あんたと違って、遺産は本当に欲しくてね。
 こんな僻地で油を売って遊ぶほど、若者の時間は無限じゃない。分かるか?」

"赤の鬼人” :
「その弓の狙いがおれの眉間から離れていたなら、
 いまの戯言に耳を貸しても良かったがな………」

SYSTEM :

 だが、その女のスカートの後ろに隠れる男が、赤の鬼人の“トドメ”の隙を作らせない。

 乱戦、ともすれば頭一つ抜けているのがこのギャング・スターだ。
 出る杭は打たれる、という机上の空論を抜きにしても、
            レジェンド
 およそ迫撃において劣る伝承型のRB一つトドメを刺せない理由があるとすれば………。
.    トリスタン
 それは“黄の希人”の弓の音色が彼を捉えて離さないから。

SYSTEM :
 狙われている、という可能性が、その名と共に携えた遺産の業と共に、男にトドメを許していない。
       ・・・
 そのかたちの三竦みだ。つまり…。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :

『───あら厭だ。
 いい年した大人が若者を語る気?』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :

『破落戸の領分ね。人様の寝静まる夜に品もなく騒ぎ立てておいて、恐れ入るわ』

SYSTEM :
 ・・・・・・・・・
 チルドレンの口から、 
 そいつの声ではないものが響き渡った。

SYSTEM :
 オルクスの中には稀に、領域内の対象のレネゲイド因子の支配権を奪い取るような、
 ジャック
 強奪に秀でたものがいるという。これはそれだ。
 ただ、この場に顔を見せず、しかも数人単位の支配/意識の共存など、
 出来る人間は五本の指で数えていればいい方だろう。

SYSTEM :
 手足代わりの傀儡から響く声は、
 自分の血が自分だけの掌に収まる価値でないことを知っている女の声。

 この場の誰よりも若々しいが、
 それだけに平坦の声の中に確固たる指針が見える。つまり。
 もっとも羅馬の火薬庫たる様を容認していないのは彼女だ。

“黄の希人”アーキル :
「これは失礼した。
 女王様のご機嫌取りは初めてじゃないが、
 なまじ蛮人の血だ。マナーが染みついていなくってね」

"赤の鬼人” :
「ふん………その破落戸の五十歩百歩が。
 やつあたり
 UGN嫌いの温室育ちの分際で、一丁前に国を語るのか?」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :

『育ちがいいの、お陰様で。何より…』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『ここにあるものは、老若男女、東西南北私のもの。
 招いてない御客人にあげられるのは躾の鞭だけ。お分かりになって?』

SYSTEM :
 これから来るもの、いまここにいるもの。
 聞こえる全員への朗らかな塵殺宣言である。

 偶さかの集まりではなく、
.    あたり
 そこに”目当て”があるがための三竦みであった。

夏瑞珂 :
 三竦みへ割り入るように熱風が吹き荒れた。戦場の炎に焦げついた、血色に燃える風。
 恐れ知らずの狼藉は雇い主へもちょっかいを出して、ひび割れた路面の果てへと抜けていく。

夏瑞珂 :
 未明を照らす残火は灼々と。
  わたし
 台風の目を中心に、放射状となって未明の空を照らした。

 燃える蜘蛛の巣の上──笑みがこぼれる。快楽を前に舌なめずりをする、寒々しくも艶のある笑み。

夏瑞珂 :
 すべて     すべて
「老若男女、そう、東西南北! 嵐はすべてを吹き飛ばす!」

夏瑞珂 :
「さあ、踊ってくださるのはどなた?」

 いまにも暴発しそうな火薬庫に火達磨で飛び込む無謀。
 これが超人の生き方だ。これが超人の自由だ。誰も彼も死んで蘇り続ければいい。みんなみんな、赤い靴を履きましょう!

SYSTEM :
 呼応して興る嵐の音色。
 ドレッドノート
 恐れ知らずが駆け抜ける。燻る火が燃え上がる。
 撫でれば只人は撥ね殺せる程度の狼藉/お遊びを、波濤がいなし、稲妻が弾き、残る無形の城塞が隔てた。

 抜け駆けの来客、反応は三者三様。

“不朽讃えし懐刀” :
「───」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『ふぅん…飼い犬の次は飼い嵐?
 自分の腕以外は知らないでしょうに、“赤の鬼人”が臆病極まったわね』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :

『───いい宣言ね。余所でやって下さる?』

“黄の希人”アーキル :

「───…“闘争代行人”」

“黄の希人”アーキル :

「成程、噂の根元がお嬢さんとは。この形での歓迎は不本意だが───。
 ああちょっと、待てアイシャ。まだ撃つな。潮目が変わる」

“アイシャ” :
 よそ
「異物よ。彼女」

“黄の希人”アーキル :
「どっちの意味で? …ああ、どっちもか」

"赤の鬼人” :
「…ふん…品を忘れて、早食いと洒落込むべきだったか? パーティーの作法としちゃ半分正解だがな」

SYSTEM :
 以て警戒、値踏み、その他諸々。
 来客のはじめに、動じる、だけはない。

夏瑞珂 :
         イヌ
「ワンワン!」飼い嵐。

夏瑞珂 :
「リードの外れたワンちゃんだから、遊んじゃいけないところで遊んじゃうの。ごめんなさいね?」

 眉間に感じた殺気にさえ心が湧く。空気は剃刀のように体の内も外もひりつかせて、その味わいは焦げつきによく似ているから──つい笑みが濃くなる。

"赤の鬼人” :
「“待て”も聞かないものは飼っているとは言わん」

夏瑞珂 :
「ク~ン」

ラーゼス :
 ────ROAR!

ラーゼス :
 女の喉から獣の咆哮が迸る。
 握った棒切れから蒼い稲妻が刃のように伸びあがり、力任せに振り回されれば、辺りの有象無象が芥のように吹き飛ばされた。

ラーゼス :
                 ・
 邪魔な波をかき分け、ふたりぶんの道をつくりあげ、
 踏み込んだ先には、無数の嵐が在った。
 槍のような雷の穂先をそのままに威風堂々と歩み、棒を地面に突き立てて、それらを無言のまま検分して──ほんの僅か首を傾けた。

ラーゼス :
「……おかしいな」

ラーゼス :
「いつか訪ねる気でいたが……思ったより早かった」

ラーゼス :
               ・・・・
「貴公をどう呼べばいいのだ? ラシード。
 虚言はひとの理だ、かまいはしないが──

 に ん げ ん
 おれでないものは、そうではないだろう?」

SYSTEM :
 続く来客は嵐ほど行儀は悪くないが。
 悪くないだけだ。
 雑味の混ざらない気高く純粋な猛りが、そこにワイルドハントを招き寄せる。

 少なくとも風向きが如何に傾きを見せたかは明白なれども、矛先を向けられた方、特に名を呼ばれた方の反応は明確に違った。

“黄の希人”アーキル :
「おっと、こいつは………」

“黄の希人”アーキル :
          ・・
「早晩出会うとはな。派手に付き合うと決めた以上は、しょうがないが…」

“アイシャ” :
「…だからこっちに引っ張ればよかったのに…。
    よそ      .いのち
 彼女も異物だけど、大きい生命だわ。
 きっと羅馬が映えるでしょう」

“黄の希人”アーキル :
「明日のことが見えるならそうしたさ。
 汗顔の至りだ。…さて、」

“黄の希人”アーキル :
            トリスタン
「改めまして、今日の名は”黄の希人”だ。
 どっちだろうと自己責任、信じたい方で呼んでくれりゃいいが…こっちの名前には、不本意ながら憶えがあってくれるだろ?」

ラーゼス :
「“黄の希人”……」

ラーゼス :
 記憶を掘り返す。 セ ル
 この街を三分する群れのひとつ。

ラーゼス :
「……驚いた」

ラーゼス :
       セルリーダー     セ ル
「おれは他所の群れの頭に、今の群れへ案内されたのか?
 それは──外聞が悪いときくが」

ラーゼス :
「……汚名は働きで返上するとしよう。わが槍がその首に届いたころに、本当の名を教えてくれ」

“黄の希人”アーキル :
「権謀術数って言うには幼稚だと言ったろう?
 挨拶のおまけに覚えておくといいぜ、ラーゼス」

“黄の希人”アーキル :
「イタリアで値札がついてないやつは、
 9割カモ御用達だ」

ラーゼス :
「なんだと……?」

夏瑞珂 :
「先に口つけられちゃった」

 青も黄も食べ散らかしたいくせに、あーあとぼやいて。

夏瑞珂 :
「素敵な金髪ね」

 にこりと笑む。乱れあう嵐に臆さず介入してきた、雄々しい女性へ。

「お仲間の……ライオンちゃん?」

夏瑞珂 :
「鬣みたいだから。かまわないでしょう?」

ラーゼス :
「かまわない」

ラーゼス :
「美『人』と呼ばれるより、余程耳に馴染む。
 ちいさな嵐よ、貴公はどこの無法者なのだ?」

夏瑞珂 :
「そうね。どこからでも、どこへでも……」

夏瑞珂 :
「嵐って、そういうものでしょう?」

ラーゼス :
「……道理だな」

ラーゼス :
「そのものにはなれずとも……そのように在ることは、難しくもたやすいことだ」

ラーゼス :
 誰にとっても。
 己にとっても。

ラーゼス :
「おれにとっても、同じこと。
 同じ場所を食い荒らさないうちは、そのさまを眺めていたいものだ」

ラーゼス :
「──嵐の娘。きみの名前は?」

夏瑞珂 :
 ストームブリンガー
「"帯来风暴"」

夏瑞珂 :
「生まれ名は、夜明けにあなたが生きていたら教えてあげる」

ラーゼス :
「励むとしよう」

ラーゼス :
「おれも……俗世の道理は覚えた。“隻獅子”だ」

夏瑞珂 :
「ライオンちゃんね」けっきょく。

"七花胡" :
 火の手は既に燦燦と。
 山火事もかくやと燃え盛る火柱に、振り撒かれる圧は今までの戦場の比ではなかった。
 
 現着し、すぐ車を下がらせる。運転手に命じれば、降りかからんとする火の粉のあまりの凄まじさにアクセル全開で尻尾を巻き退いていった。
 調教済みといえど、現地調達のFHにこの光景は心臓が痛かろう。同情はすまいが。

"七花胡" :

"七花胡" :
「(いの一番に突っ込んだのは……蛾の一匹? いえ、“黄の希人”の言い方から鑑みるに、傭兵でしょう。
  若い身形であの無謀────支部長やってる時なら、ぱっと見頭を抱えて白旗上げたくなるタイプの“取返しのつかなさ”です。
  
  まあ、あれの前途などどうでもよろしい。問題は“使える”かどうかだ)」

"七花胡" :
 成人して間もないであろう娘と、“隻獅子”が目も敵意も惹いている間に、素早く周囲に目を配る。
 三雄が揃い踏みだ。そのうえ各々虎の子やら懐刀まで持ち出してきているのだから、本気具合は容易く窺える。
 この夜に賭けているのだ。何奴も此奴も。

"七花胡" :
「(……“帝釈天”)」

 あれは黙って見ているままだ。加勢する気もまるでない。
 物見遊山といった風情の童女じみた表情からは、何も探り取れない。

 否、否。今あれは重要ではない。
 よしんば自分の「推測」が当たっていたのだとしても、あの場で声を大にして言及しなかった以上、確かめるのは後で良かった。

"七花胡" :
 気を取り直す。

"七花胡" :
「────はい、はい。御歓談中のところ失礼しますよ、
 シ ニ ョ ー ラ
 “隻獅子”、傭兵さん。
 怖い怖い我らの“オニ”さんはともかく……
          シニョリーナ
 我々を気に入らないお嬢さんの注目の的だ」

"七花胡" :
 乾いたクラップ音が二つ。
 先んじた獅子の女が拓いた道をゆっくりと歩みながら、懐から杖を取り出す。

"七花胡" :
 コンバンハ ビジター
「晚上好、来訪者です。
 草刈りバイトのついでに、庭の見学に参りました」

"七花胡" :
「自分、陣営としては“リグ・ヒンサー”ではあるのですが……
 園芸が好きなもので。“青の貴人”の“貴人の庭”、貴女の庭園にも、かねてから並々ならぬ興味があったのですよ。
 イタリア様式の庭園といえば壮麗なことで有名ですから。
 それがさぞ静かで、落ち着いていて、美しく、手入れの行き届いた整然なのだろうなと思っていたのですが……」

"七花胡" :
「御大層な看板に番犬まで設えておいて、我々破落戸共にどんちゃん騒ぎの会場などにされてしまって……御可哀想に。
 この際ですから、我々が草一つに至るまで綺麗に刈り取って差し上げますよ」

 収納式のステッキにも見える杖が、一振りで天秤の形を成した。
 その形が現す則は今や公平などでなく、恣意によって如何様にも傾く。

"七花胡" :
「さすれば焼けて惨めに倒れた花も、
 芽吹かず草臥れた根も、
 もう嘆かずに済むでしょう?」

 あからさまな挑発は、敵対陣営としての最低限の礼儀。
 とはいえ、言に偽りはなかった。
 無論、その明け透けな嘲りにも。

SYSTEM :
 切り拓くものが風であり獣ならば。
 悠々と石の路を辿ぎ訪れたものは、
 後者が切り拓いた二つ分の片割れに相当する。

 統べるものだが、今ばかりは来客だ。
 目に余る芽を検分するでもなく、向けられた寸評と憐憫に、古き血の主の影、そのここでは見えぬはずの眼が薄らと細められる錯覚がある。
 その残滓と香りは憤りでも不快でもない。様式美に等しい、あるいは“まだ”礼儀のいい応対への感情だ。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
 ・・
『それの飼い主? 流行りかしら。
 まことに手綱を握ったわけでは、なさそうね』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
 Arrivederla
『ごきげんよう、お客様。
 ───お生憎様、時期が時期、靴の先が靴の先なら、その名の示す絶景のひとつも用意してあげたのですけどね?』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『花ひとつ育つのに何年掛かるか、さぞ御存知なのでしょう?
 是非とも、破落戸の首と一緒に、散りゆくものの責任を取って下さいな』

“不朽讃えし懐刀” :
「───華人が、よく宣える」

“不朽讃えし懐刀” :
 ・・・
「草刈りは此方の領分だ。
 血で汚す腕も、踏みしめる足も持たぬ侵略者に、請け負って頂く理ではないな」

SYSTEM :
 柔らかな言葉と冷たい言葉はまったく同じ意味を持つ。“そちらでそれを宣う意味”を踏まえた“お構いなく”。

 軽く口笛を吹く希人を余所に、
 軽く目をかけた見物人は、というと…。

“帝釈天” :
「ふむ。流石、凶には鋭きもの…」

“帝釈天” :
  大 師
「“オニ”さん、如何に?」

"赤の鬼人” :
「おれは同じ言葉を幾度も繰り返すほど、耄碌はしていないぞ」

夏瑞珂 :
何も言わなかった。

"赤の鬼人” :
その生意気さは何処で学んだ?
アレと同じ大陸か?

"七花胡" :
「アハハ♡ つれないお返事。余所の庭で責任なんて御免で~す。
ベルヴェデーレ
 絶景も、自分、他人の庭はそうと思えない性分でして。お気遣いなく」

"七花胡" :
「貴方の御所望通りに働いたでしょう?
 派手にしてくれそうなのを、きちんとエスコートしましたよ」
 自分は火に油を注ぐ担当だと、“赤の鬼人”への言外の宣言。

"赤の鬼人” :
「食えん男だ。それでいい」

“不朽讃えし懐刀” :
「───重ねてよくぞ言った。
 気遣いが不要ならば、剣にて応じよう」

接触回線による警告 :


《──そうかい、なら抗いな》

 膠着し、緊張という空気を入れこまれた風船に等しい場に。
 唐突に声が投げかけられ────

--- :

 ……数刻前。

ガンドルフ[バルチャーII] :
スクランブル
 緊急発進したガンドルフが、いくつもの家屋を"足場"として飛ぶ。
 烈火に包まれる華園と、それを包み込む夜空を生みとし、銃を咥えた海豚が跳ぶ、跳ぶ、跳ぶ。

アレウス :
「"帯来风暴"は先に往ったか。
 嵐は只人の思惑などすべて吹き飛ばして進むというが、正にこの事だな」

アレウス :

「──[バルチャーII]要請!
 ルーの奴がサボってなければいいがな……」

 網膜キーボードを"目"で叩き、最寄のセーフハウスに要請を送信。
 ガンドルフ専用の"下駄"を発進させておくためだ。
 導火線に火が点いている段階だが、しかるべき時に直ぐに装備できるようにだ。

アレウス :

 "ヴィクター"に最終調整を頼んだガンドルフは、先行した"帯来风暴"の後を追うように跳ぶ。
 R出力が高まっていない現状では、切込み役を彼女に任せるのが適切だ。
 そのうえでは部隊での扱い方はミクサと似ている──やりやすいことこの上ない。

アレウス :

「──"A"! 
 何かあった時は真っ先にシアをフォロー、サポートだ。
 俺の事はいい、この庭では幾分か遊び慣れている」

 もう一人の部下に指令を入力。
 預かっている"帯来风暴"が無謀な行いをしたときに、最低限の"場の調整"が出来るようにだ。
 ヤツは享楽に満ちているが、その享楽が崩れるような事は命じなければするはずもなかろう。

「……最もこれでは徒競走だな」

ガンドルフ[バルチャーII] :

 ガンドルフのモノ・アイが輝く。
 接続しているAIDA《ファンタズマ》が、同調したアレウスのレネゲイドをリソースとして消費。
 イージーエフェクト
 簡易機能を再現、使用する。

 飛び交う弾丸、あるいは剣戟の余波より機体を守るために《雑踏の王》を。
 "帯来风暴"の軌跡を追い、戦場への最適な道を選ぶために《猟犬の鼻》を。
 
 特に後者は──その収束地点に集まった演者を捉え、知るためにも。

ガンドルフ[バルチャーII] :

《センサーロック。
 カテゴライズし、高出力対象にマーキング完了》

《イエロー、ポイント2。
 ブルー、ポイント1。
 レッド、ポイント4──該当なし、仮称ビースト、ポイント1》

アレウス :

「──なに……? こいつは……」

 ブルーポイント1は理解できる。
 これは庭の番人──姫君の忠実な騎士様だ。
 レッドポイントも理解できる。
 ボスに子飼いの中国人、そして"七花胡"……先行した"帯来风暴"。
 仮称ポイントについては理解が出来ないが──そのアンノウンよりも理解できないものが、イエローポイントにあった。

アレウス :

 前に出ている男。
 ……この顔ぶれ、状況から推察すれば奴こそが鼠の王。
 《御手翳す開放者》のリーダーであるのだろう。
 
「ヤツが……? 一体何の冗談だ」

アレウス :

「──間違いない、ヤツは5年前……」
 ・・・・・・
 UGNに居た男──得物をかち合わせた、あの男だ!

アレウス :

「……はッ!
 いいね、きな臭くなってきた。
 遺産、そしてそれに群がる鼠……こいつはただの戦争じゃあねえ」

アレウス :

「なら、俺が乗り込まんわけにもいくまい!」

ガンドルフ[バルチャーII] :

 ガンドルフが──三度跳ぶ。
 それは先行した"帯来风暴"を後追いするように。
 火薬庫の中に派手に飛び込む、炎の海を泳ぐ海豚の如く。

 背部より射出された無数の"レフ・ビット"が、瞬く間に睨み合いの現場を包囲。
 サターン・フォーメーションと呼ばれる陣形を作り出す。

ガンドルフ[バルチャーII] :

《パターン確定──》

《──そうかい、なら抗いな》

 庭の忠臣の言葉を遮るように、接触回線で高らかに声を発する。
 天より向けられた光槍が、一筋の光軸となって射出され──その戦場に、無数の光の網を発生させた。

 その無数の光は、わざとらしく、全員に当たることなく、その脇を掠めるように反射を繰り返し、虚空に消えていく。

アレウス :
「よう、ボス……随分楽しそうなことしてるじゃねえの。

 なあ、テレサ姫よぅ……玄関先にC4を投げられた気分はどうだい。

   アーキル
 久しいお前も愉しんでるようで何よりだ──こんな賑やかな会場に、俺を忘れてもらっちゃあ困るな!」

 空より光と共に着弾する大掛かりな機械。
 人の形をした機械仕掛けの神が、"帯来风暴"の背後をカバーするように降り立った。

SYSTEM :
 …ところで。

 到着前のもしもその“ぼやき”を耳に挟んでいようものなら、他でもない混血の天才児は穏やかに、悪びれず、笑って告げただろう。

“血穢の蓮花”盧秋華 :

“而して浮生は夢のごとし、歓を為すこと幾何ぞ…”

“血穢の蓮花”盧秋華 :
.  い ろ の つ く
“───戯れる余裕のある人生をお互い御望みなら。
 アクシデントの一つ二つ、喜んで受け入れるものじゃあない?”

SYSTEM :
 これに関して貴方の懸念と冗談があたったことは、その言動に反してただの一度たりともない。

 Aが曰く、厭なことほどきっちりやり遂げる才能の持ち主だ。
 要請と同時のバックアップの心配はない。

SYSTEM :
 Aについても、彼は自ら天秤を傾けない。
 以前は躊躇なく“それ”をやったが、ポリシーを定めた以降の傍観者としての流儀だ。

 つまり心配、懸念あらば、それは外側に存在するわけで。

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。

“Mr・A” :
「如何にも承った!
 では、騎兵隊の登場───」

“Mr・A” :
「というには我々は行儀が悪いナア。悪漢が勝つピカレスクロマンだ」

“Mr・A” :
 あ、ハジメマシテ。気さくにMr・Aと呼んで下さい。
 名刺は後で作るからね。

SYSTEM :

 
 鋼で鎧うもの。まことの亡霊を謳う傭兵集団、その主。
 囃し立てるものと共に訪れ、
 彼は確かに嵐の指し示す先へ、ドレスコードを通過し舞い降りた。
 ソラ
 宙を駆けるバルチャーの翼と共に啄む死色は、先程とは色の違う“礼儀”である。

 東欧戦線、確かに異常あり。されどもこれこそが日常だ。
 なればその日常の断片たちが、
 月日を経た再会に声を上げる。

“不朽讃えし懐刀” :

「………」

“不朽讃えし懐刀” :
 レギナ
「我が王」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『───。
 あら? そこにいるの、もしかして、おじさま?』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『久しぶり! 直接の対面でなくて残念だわ。
    ビスコッティ
 会うなら茶菓子の一つや二つ、用意したのにね』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『…さらに言えばそっちなのが残念だわ。
 お父様の時と違って貢物がそれじゃあ、ええ流石に。殺すしかないじゃない?』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『───くれぐれも死ぬ気で生き延びてね、おじさま?
       このくに
 私、神だろうと羅馬に付けた土の利子は、
 是が非でも払ってもらう主義なの』

“黄の希人”アーキル :
「…やれやれ、分かり切っちゃいたが。
 こうまで人に差が出るとは、おれの人望もちょっと不安になって来るな」

“アイシャ” :
「なんか言った?」

“黄の希人”アーキル :
「イッテマセン」

“黄の希人”アーキル :
「それに見た顔もいる。千客万来ってところか?   ベスティーア
 あんたとまたやり合うことになるとは思わなかったよ“牙獣”」

“黄の希人”アーキル :
     バルチャー
「御自慢の禿鷹は、どうにもずいぶん弄りなさったようだがね…」

“アイシャ” :
「知り合い?」

“黄の希人”アーキル :
「揃って知り合いさ。是非とも水入りのままにしておきたかったが───。
 運命ってのは、ニホンの“イチゴイチエ”が好かんらしいようでね」

SYSTEM :
 ・・・
 5年前のもう片割れ。

 重い腰を上げるように、男が答える。

"赤の鬼人” :
「そりゃあな。二度とない夜だ」

"赤の鬼人” :
「探し物の序でに瘤も除いて、一番の望みも叶える。
 そのための手段はシンプルであればあるほどいい…」

"赤の鬼人” :
「奮えよ、一端の群れの長になったんならな」

夏瑞珂 :
 クリスマスの電飾みたいにワザとらしく、光が瞬く。マズルフラッシュにも似た明滅の網は、誰の目にも明らかな挑発だ。

夏瑞珂 :
 あるいは、お守りの気遣い? ハ、と笑みがこぼれる。理由の分からない笑みは……あまり愉しくない。

夏瑞珂 :
 背後からの風圧にはためく髪をそのままに。
 揃い踏みの猛者たちへ視線を巡らせ、鋼鉄の翼へ肩越しに流す。

「秘密の多い人。お色直しがあるなら待ったのに」

     けだもの
 口だけだ。 獣 は我慢をしないし、嵐は何にも縛られない。

ラーゼス :
「これは……」
 小虫を払うように槍を振るいかけて、手を止める。
 それは現代流の魔術の一端だ。牽制と、ここに己在りと知らしめるための自己主張。

ラーゼス :
 嵐の娘の背後に着地したそれは、鉄の塊だった。
 そうとしか呼びようのないしろもの。
 土人形であるほうがよほど馴染みがある──それは、神秘なきこの時代に人間の手で作り出された幻想だった。
 絵空事が、鉄で鎧ってそこにある。

ラーゼス :
「…………驚いた」

ラーゼス :
「……このようなものが。
 中に人がいるのか? 声はそれか」
 思わずそちらを振り返り、ほうと見上げる。

夏瑞珂 :
 びっくりした。
 ジョッシュよりジョークの下手な人間がこの世にいることに。

"七花胡" :
「────────!」

"七花胡" :
「……念のため。友軍です。“隻獅子”」

 驚愕より一拍。我に返って一番最初にしたことは、怪訝そうな指揮下への通達。
 誤認のち誤射、それが一番面倒になるとの判断だ。

"七花胡" :
 投網めいた光の束は、器用にも何れの服の端さえ掠めず石畳へと吸い込まれていった。
 その意は信頼や信用、秩序の枠の内でなら恃みにできるそれらではなく……もっと明瞭だ。
 ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・
 何れだとて、心臓が粉微塵になるまで撃ち抜けると。
 それは名目上の同陣営である自分とて例外ではない。
 
 分かりやすい宣戦布告を伴いながら、空より鋼が舞い降りる。
 それは湖面に爪先を付ける鳥が如く、これ見よがしに諸方面への挨拶を振り撒いてみせた。

"七花胡" :
「(これがあのマスター・ハーヴェスター……
  伝え聞く手勢の豊富さといい、この金の掛けぶりといい、彼のセルの主戦場が日本でなかったことの幸運を思いますよ。
  どうやらあれもこれもと顔馴染みの御様子ですし、
     ころがせられれば
  上手く協力関係が築ければ、色々早いかもしれません)」

 あくまで皮算用ですけど。

"七花胡" :
「随分と重役出勤ですね、“死滅天隕”。
 せっかくの大捕り物なのに、貴方の参加はないのかと思いましたよ」
 
 同じ陣営であるぞというアピールだ。それ以上でも以下でもない。
 吹き荒れる風に舞い遊ぶ服の裾をそのままに、鋼鉄を振り仰いで軽口など叩いておく。

ラーゼス :
「友軍か……」
 複雑な声。

アレウス :
「ああ友軍だとも……俺としても上玉の女君が友軍で助かっているね」
 どうやらお眼鏡にかなったらしい──見た目が、だ。

“Mr・A” :
「フム…やはり大は小を兼ねると言うのかナア
 私はもう少しアピールが必要だったようだ ボス」

“Mr・A” :

夏瑞珂 :
「あなたも出したら? ビーム」

“Mr・A” :
「顔面から? 努力目標だが
 イキモノには得意不得意がある」

ラーゼス :
…びぃむ?

“アイシャ” :
💡

夏瑞珂 :
「このライオンちゃん動物園卒園したてなの?」

SYSTEM :
 疑問符を前に実演。

 エンジェル・ハイロゥ形式の収束光が空に向かって飛んだ。

"七花胡" :
「お上りさんなのですよ。大目に見て差し上げてください」

夏瑞珂 :
1D100 (1D100) > 10

ラーゼス :
「!」

夏瑞珂 :
「甘いわ。10倍出せる人を知ってます」

人はそれを思い出補正と呼ぶが、ここには証人がいなかった。(ナレーション)

“アイシャ” :
「不覚…」

"七花胡" :
「今の射撃は新手の友好的アピールと見て宜しいので?」

ラーゼス :
「そういうことか。よく理解した、ありがとう」

“黄の希人”アーキル :
     コイツ
「御宅らが遺産を諦めてくれるなら、
 俺としちゃ喜んでアピールじゃない、実際の“友好”に出来るんだがね」

SYSTEM :
 若者の言葉を余所に、
 ふわりと具体例を示した女は意味もなく胸を張った。

 いまこの一瞬垣間見えたお上りさんと言えば、こちらも相当なものなのか、あるいは常識に“ズレ”があるのか。
 他に候補がいなければ、そいつが以前話題に上ったRB、と見てもいいだろう…。

アレウス :
「解せんなァ、俺を"牙獣"と呼ぶくらい覚えているのだ……俺もお前のことはよく覚えているよ」

アレウス :
「アーキルだったか?
 秩序の軍団は辞めたのか?
 こんなところで頭目張るとはいい度胸じゃねえの」

"七花胡" :
「(……『秩序の軍団』……こういう言い方するということは……
  “黄の希人”は元UGN、か? ………………)」

"七花胡" :
「(……これが邸下の口を重くさせた理由?
  いえ、まだUGNとすら、断定するには早い、か。
  なんとも。頭の痛そうなワケアリが多いですね)」手慰みのように手の中の天秤を傾ける。

SYSTEM :
 ───五年前だ。

 “牙獣”の名を名乗ったのは、
 少なくともアレウスが、
 ・・・・・・・・
 ローマ支部の壊滅に付き合った当時の話である。

SYSTEM :
 そこでアレウス・バルバートは、
 アスラ
“赤の鬼人”が今なおローマにて名を一目置かれる所以…。
 UGN支部崩壊の原因を作り出した無敵の“鬼人”を目にしていた。

 またその時の殿を追う追撃戦の最中、あなたは結果的に一つの壁を破るにあたって、お互いの命にあと少しで手が届くほどの戦いを演じたこともある。その時の相手が…。

“黄の希人”アーキル :
「おいおい…あんたこそ、親分子分は卒業してるんだろ? イーブンだ」

“黄の希人”アーキル :
「強いて言えば…留まり、澱み、腐り落ちる…そこに根付いて生きるっていうのが、どうしても性分じゃなくてね。
 どうなんだよ“牙獣”。あんた、昨日と同じ自分を爺婆になってもやれるか?」

アレウス :
「抜かせ。
 確かに俺はあの時はまだ"マンモーニ"だったが……、それくらいの分別は弁えている」

SYSTEM :
 涼やかな笑み。遠回しの肯定。

 分別という言葉に、自称若者たるや、
 一切の返答をしなかったが………。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『───どうだか。
 自分の腐臭が自分に分かるなら、世の中みなもう少し利巧でしょう』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『ましてや社会に根付く術を知らない人間なんて、どんな蛮人の村落とてお断り。

 ………どんなのがあの愚か者を引き込んだのかと思えば、こんな傾奇者気取りとはね』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『それでおじさま。
 …その分別はこのまま“私”に銃を向けるという話でいいの?』

夏瑞珂 :
「ですって、お・じ・さ・ま」

アレウス :

 ──返答には少しばかりの"間"を必要とした。

 誰かに口をしたわけでもない経緯ありきの話だ。
 ここでこの男が口を噤んだ理由を知れるのは、彼の上司であった男か、幼き頃に彼を知った女だけだ。

アレウス :
「そこの鼠の王様とは5年だったが……
            ・・・・
 お前とは10年だったな、ティーラ」

 ……俺は"敢えて"姫君をそう呼んだ。
 ティーラ、収穫を意味する「therizein」。
 その父親、クラウスへ借りを作った俺が出会った彼女たちへの、慣れない愛称。

「あの頃に比べて口の回し方も随分と達者になったな。
 そんなお前から見て俺は、軽率に銃を向けるような傾奇者に見えたか? そいつは残念だ」

アレウス :
「だが、俺も敢えて言おう」

アレウス :
「俺達"ファントムストークス"は──金で雇われ、金で動く、亡霊の渡り鳥だ。
 今回は"赤の鬼人"に雇われてしまったものでな──例えそれが心を通わせた友であろうと、血肉を分けた兄弟であろうと……、

 ……面倒を見てやった淑女にも、銃を向けなければならんのだ」

アレウス :

 言葉を並べていくうちに理解する。
 今この瞬間、俺は借りを仇で返す、裏切り者になっていることを。
 俺がこの世で一番嫌いなものに、俺自身が成り果てようとしているのだ。
 矛盾を体現してしまうとは──確かにこれは傾奇者だ。

「だがテレサ。
 既に口火は切られてしまったんだ。
 そうなれば、そこには勝者と敗者しか残らない」

アレウス :

「それが分かってて、俺に聞いたんだろう?」

 ──こう答えれば満足かい、と。
 ガンドルフが肩をすくめるような動作をする。
 もちろんそれは視界にこそ映らないものの、"雇い主"に向けてのものだろう。

アレウス :
「くくっ、湿気た話になっちまったな。
 "帯来风暴"、"七花胡"、そして……そこの獅子の如き淑女よ。
 重役出勤になってしまった分、これから働かせてもらおうじゃねえの」

 "七花胡"の軽口へのアンサーを交えながら、ガンドルフが光槍ライフルを構える。
 そのわずかな動作に、一体幾つもの思考が挟まったのかは、誰にもわからぬことだ。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『───。
        ・
 残念だわ。貴方は特に代わり映えがしないのね』

SYSTEM :
 わざと過去の呼び名を択んで使った男に、静かな沈黙。つまらなげな信頼を吐き出す音。
           ティーラ
 少なくとも記憶の限りの姫君とは、
 いささかに我儘で、直線的で、また血臭とは無縁の人間だった。

SYSTEM :
 ・・
 こうではない。月日の違いは、ひとを容易く変える。
 持てる強さのかたちさえもだ。

アレウス :
「変革が美徳であるのなら、
 不変もまた美徳なのさ」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『ええ。そうあって貰わないと』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『だけど月日のせい?
 その呼び名を、10年来の人間に向ける辺りは…記憶の中より、センチメンタルに浸りがちなのね、おじさま』

アレウス :
「ハ、意外だったか?」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『ご想像にお任せしますわ?』

アレウス :
「では精一杯、チンピラ同然の頭を働かせるとすっかね」

夏瑞珂 :
「ねえ、昔話はいつまで続くの? ボスがおじいちゃんになっちゃうわ」

アレウス :
「ははは! それもそうだ」

アレウス :
「俺も疼いてるんだ、やるのなら早くやろう」

"赤の鬼人” :
「次は伺う前に引き裂いてやることだ。“帯来风暴”」

"赤の鬼人” :
「時計の針を戻して得られるのは、自分のしたり顔だけだ。
 ───お嬢様の成人体験会が済んだなら、そろそろ始めるとしよう」

SYSTEM :
 おじいちゃんになると言われた男は、しかし同じように火の色を燻らせていたもの同士だ。それを咎めずに同意した。

 遺産を欲しがる理由は最もないが、
 この場の人間を蹴散らして“戦う”理由のある男。
 いまの雇い主、立場上その男が、得意の重力場を励起させる。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
  クストーデ
『───我が剣』

“不朽讃えし懐刀” :
       レギナ
「───御意に、我が王」

“不朽讃えし懐刀” :
「…その首、斬らせて貰う」 

SYSTEM :
 それに応じて、女帝の指先が動く。
 彼女の矛、彼女の盾。

 …アレウスは“ああ”言ったが、少なくとも嘗てここが貴人の庭と呼ばれていた時、彼女の存在はなかった。
 この場の人間を諸共下す理由のある女の声を聞き留め、続いて弓を引く音が響く。

SYSTEM :
 言伝通りなら、曰く。
 無駄なしの弓───。
        トリスタン
 遺産継承者たる“黄の希人”の絶技。

“アイシャ” :
「続き、始めていいのね。
 それじゃあ、」

“アイシャ” :
「ローマにようこそ。
それいがい
 余所者には容赦しない。喜んで土になりなさい」

“黄の希人”アーキル :
「その言い分だと俺もそうなるんだが…。
 まあいい」

“黄の希人”アーキル :
           ・・
「遺産ひとつで狂うのは人生だけだ。
 ・・
 世界に手を届かせるなら、もうひとつ箔が欲しくってね………」

“黄の希人”アーキル :
「───黄の希人が“無駄なしの弓”、よく味わって頂こう」 

SYSTEM :
 そこに───仁もなく、義もなく、偽りもなく。
 あらゆる道理を捨て置いて、
 日常を上塗りした欲望の咢持つ獣たちが牙を剥く。

 多くのマフィアとFHセルを焚き付けたこの遺産は、
 やがて勢力の均衡を崩す、血で血を洗うような闘争劇を呼び起こした。

SYSTEM :



 ………ならば、それは偶然ではない。
 ・・
 運命と呼ぶのだ。

SYSTEM :

 きっかけはただ一つだった。

 いざ死合う、その最中。
  /あの時と同じ、戦闘の真っ只中に。

SYSTEM :
 そこにいるものの概ね全て、
 背筋の向こう側から、彼方から、ただ共通するいち方向から、

 まったく同一のものを感じ取った。

  :




             ・
             死




”黒鉄の狼” :
■メイン:カース・バルムンク
《パワーオブリエゾン:厄災の遣い》
・回数制限:[シナリオ1度]
・シーンに登場している全てのトループ、エキストラを殺害する。

SYSTEM :
 曰く。災に善しも悪しもない。
 例えるならば嵐や飢饉のように、当たってしまえばそれまでのもの。

 もはや瞬きのうち。
 遍く生けるものの滅ぶさだめが、可視化された光になって駆け抜ける。
 戯れで人を破滅に追いやる、黒き鱗と死のはためきを思わせる。
 その生き物の咆哮にも似た破壊の光芒。

SYSTEM :
 それは戦いの最中、遅れて駆け付けたものを、物見遊山に洒落込み反応が遅れたものを、たまたま射線上にいたものを。
 篩にかけるが如き気安さで、再生の余地なく消し去り。

SYSTEM :

 微かな判断で生死の分水嶺、前者に立つものに、より強い予感を叩きつけた。

 なぜならば。

”黒鉄の狼” :


   ・・・・・・・・
『───俺を覚えているか』

SYSTEM :


 ───声が、するからだ。

SYSTEM :


 彼方、視覚にも豆粒のようにしか映るまい、遥けき水平線の向こう側。

 陽炎のように揺らぐ死が、群れを喰らう一匹の狼が。

SYSTEM :


 国を創造る、狼が。

夏瑞珂 :
 終わった男に曰く、“黒鉄の狼”は戦場にいる。
 ならば、それは偶然ではなく──

夏瑞珂 :
 予感に、すべてが凝固した。心臓。時間。感情。強張ったものたちが、一瞬にして爆ぜる。

「うああああッ!」

 意味のない叫びが迸った。悲鳴ではない。裂帛でもない。湧き上がる何かがそうさせた。

夏瑞珂 :
 分かる。地平の彼方、遥か果てに。いる。翻った毛先に炎がともり、風が唸りをあげた。
 この瞬間、世界は一と零だ。有と無だ。奴かわたしか。生か死か。境界線の上。

夏瑞珂 :
 直前──視界の隅、顔の真横。後ろから伸びた手。軍用の、分厚い手袋──

「ッ」

 意識が、現実に引き戻される。指の示した方向/鋼鉄の巨体が遮蔽になる位置へ、跳ぶ方向を強引に変更。咄嗟だった。負荷に体が軋む。

夏瑞珂 :
 だが、その咄嗟がわたしを分水嶺を間際で超えさせた。目の粗い篩の上にこの命を残した。

「はッ……──」

 それまでの嵐は、みな児戯だったのか。そう錯覚させるほどに視界が開けている。更地。たわごとを思い出した。意識を逸らさなくては気が狂いそうだった。
 三年前の記憶が蘇る。危ない。くっつかない。危ない。危ない。危ない。

アレウス :
「ぬうッ──!?」

 チキチキチキ!!
 AIDA:ファンタズマが金切声のような警告音を上げる。
 それは簡易機能として作動していた《猟犬の鼻》が危険を感じ取ったのだ。
 そして第六感的な感性がそこから迫りくる"死"を細かに感じ取った。
 ミサイルが降り注いだあの戦場など比べ物にもならない、死の恐怖(スケィス)!

アレウス :
「ちぃぃッ!」

 幾つかの雑兵が弾け飛ぶ中で、展開していたレフ・ビットを防御展開。
 だが──

(間に合わないか! ならば)

ガンドルフ[バルチャーII] :

 センサーの端で“帯来风暴”……シアがガンドルフを遮蔽物とした事に、場違いな「皮肉」を浮かべつつ。

 手元に残った光槍ライフル──"ラ・フォルトゥーナ"の、質量ある残像を手にし振るう。
 その動作と共に回避運動!
 "死"に触れた幻影の切っ先が大きな音を立ててはじけ飛ぶ。

ガンドルフ[バルチャーII] :

《警告──負荷増大》

アレウス :
、   、  、  狼
「ぬゥ──もしや、”コイツ"がか!?」

ラーゼス :
 瞬間──
 首筋に迫る死の気配が、肉体を動かした。
 一回り低い胡の身体を強引に引き寄せ、己の身体の後ろへ追いやりながら槍を大地に深く突き立てる。

ラーゼス :

「────ぉおおおおおおおッ!」

ラーゼス :
 ────ばぢり!

 蒼雷が奮い立つ。
 破壊の光を真っ向から受けた雷は、形もたぬもの同士で激しく軋み上げ、やがてばぢばぢと音を立てて眼前で弾ける。
 その髪先をわずかに焼くが、身には及んでいない。
 歯を強く食いしばったまま、その源を探る──

ラーゼス :
      ・・・・・・・
「(不快だ、なんと懐かしい……!)」

ラーゼス :
その気儘な破壊の波に想起したのは、かの日の黒い焔であった。

"七花胡" :
 直感を灼き尽くしたのは、気が狂いそうなほど濃密な死の匂いだった。
 腐臭などと生易しいものではない。もっと絶対で、もっと壮絶で、もっと執拗で────もっと醜悪だ。
 枯れるとか萎れるとか、そういう摂理を一足飛びにしたような、押しつけがましくも声高な圧制の気配に、体の方が先に反応する。
 
 できる限りの回避行動────

"七花胡" :
「はッ!? なんで貴女、────」

"七花胡" :
 非力な体が一回り大きな女に引き寄せられたと理解できたのは、一拍未満を置いてのこと。
 迫りくる絶死の予感を前に、その更に次の寸暇で、全ての動揺を強引に脇に寄せる。

"七花胡" :
「~~~~ッ、共倒れだけは御免ですよ……!
 ────“咲きなさい”ッ!」

"七花胡" :
 裂帛の雄叫びと共に突き立つ蒼き雷────
 鬩ぎ合う波濤の飛沫に、寄せたのは薬品の青い気配だった。
 
 天秤の片方が、かくんと傾く。預けられたフラスコの底からはひとりでに液体が湧き上がるも、即座に蒸発してケムリへと転ずる。
 それが雷へと寄り添った途端、黒波に抗う火花の瞬きが激化した。

"七花胡" :
 咲けよ。開けよ。
 更に蒼く、殊更に激しく。
 黒波に航路を拓くように!

SYSTEM :

 果たして死を紛れたのは、極僅か。

 その生き物が焦げ付くほど刻み込んだ追憶が後押しした者。
 生物の警告以上に確かな耳を持っていた者。
 その生き物と似て非なる猛りと嘶きを聞いた、血においては猶もふるき者。そして幸いにも、それを扶け得る、この場の人間らしからぬ術を持つ者…。

SYSTEM :

 その中には間違いなく、対峙していた者達があり、
 戦いに心を躍らせていた“赤の鬼人”も、傍観を続けていた“帝釈天”もいた。

SYSTEM :
 狼の遠吠えが、木霊した時。

 誰よりも早く反応したもの。
       あなた
 それは確実に夏瑞珂だ。
 あなたは最早、その猛りを感じ取れないような生き物にはなれない。
 だからこそ分かるだろう。逸らしたものは消えるわけではない。開けた視界の向こう側に、確かな証がある。

SYSTEM :


 しかし………。
 ・
 他に、誰も反応すると考えもしなかったものがいた。

"赤の鬼人” :


「………や………………やはり、」

"赤の鬼人” :


 ・・・ ・・・
「やはり、来たか───ッ!」

SYSTEM :

 それは歓喜であり恐怖であり、
 予定調和でありながらも、理解の彼方にあるものを呼ぶ声。
 噛み締めるような“理解”と共に、
 彼は遠吠えの声の主をすぐさま区分けした。

SYSTEM :
 ───それは偶然を貴ぶ声ではない。
 ・・・・・
 招いた必然に挑みかかる、
 おそれを握りつぶした狂奔の声だ。

SYSTEM :
      ・
 後にして、彼を識るものほど分かる。
 ・・・・・・・・・・・・・・
 赤の鬼人らしからぬ唯一の部分。

SYSTEM :

 自らの力を絶対を誇るべき古強者が、他者の力ありきの合理を振るいながら、
 発想そのものについては、まるで違いがなかったという矛盾。

 順繰りに叩き潰すべき合理を敢えて無視してまで“派手”を臨んだ迂闊さ。

SYSTEM :

 だが、確かに。ひとつピースを嵌め直せば全てが道理を持つ。

SYSTEM :

 それは───それは。

”黒鉄の狼” :


『───匂う』

”黒鉄の狼” :


『───次の戦場の匂いだ
 ───次の目的の気配だ』

SYSTEM :

        □□
 彼にとっての、欲望のためだったのだと。

”黒鉄の狼” :


『───だが、まだいるのか
.  レムリア
 ───俺から逃げ果せた、喰い残しが』

”黒鉄の狼” :


『ならば』

”黒鉄の狼” :


『──死合う。殺す
 ──奪う。喰らう』

”黒鉄の狼” :


レムリア  レムリア
『俺が、運命だ』



SYSTEM :
【Check!】
 以下のEロイスの使用が検出されました。

Eロイス:殺戒現出
 所有者:“黒鉄の狼”


SYSTEM :

※演出上、NPCに対してのみ使用し、
 NPCは全員『失敗』として処理を進めます。


”黒鉄の狼” :
17dx+99 意思判定 (17DX10+99) > 9[1,1,1,1,2,3,3,4,6,6,6,6,7,9,9,9,9]+99 > 108

SYSTEM :

 ───雄叫びは、容易く世界に破滅を齎した。

 ───戦闘中の全てに。

 気を抜けば骨の髄まで“中てられる”猛りを以て、男が叫ぶ。

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
【Check!】
 戦闘が発生します。
 

SYSTEM :
【CAUTION!】
 この戦闘での行動で、物語が大きく変化します


SYSTEM :
【Engage】

[D]
1:“不朽讃えし懐刀”
[E]
2:“マグナ・マーテル”
       -5m-
[A]
3:“帯来风暴”
4:“死滅天隕”
5:“七花胡”
6:“隻獅子”
       -5m-
[B]
8:“Mr・A”
9:“赤の鬼人”
10:“帝釈天”
       -100m-
[C]
11:“黒鉄の狼”


SYSTEM :
【-Round 1-】 

SYSTEM :

■セットアップ
 タイミング:セットアップのエフェクトを宣言出来ます。 

”黒鉄の狼” :

■セットアップ:悪竜現象/血脈励起
《狂想の旋律.L3+1》《限界突破.L3+1》
・攻撃力増加:[+12]
・BS付与:[暴走]
・エフェクト一つの「ラウンド1度まで」の制限を解除する→加速する刻I


ラーゼス :
貴公……それは!

”黒鉄の狼” :
 ───遥けき彼方のにおいだ
 ───その眼 さぞ気高きものと相対したらしい

”黒鉄の狼” :
 ───だが是非は問わぬ 死ね

ラーゼス :
……伝説を嘯くものを前にして死にそこなうなら、ああ、二度では足らぬぞ!

夏瑞珂 :
【 Sons Of Liberty 】
       テリオン・クラウン
セットアップ:獣の因子/怨念の呪石
追加効果:変異暴走
侵蝕値:3

system :
[ 夏瑞珂 ] 侵蝕率 : 43 → 46

アレウス :
──"戦い"ではなく、"闘い"の眼をしてやがるな……アレは!

”黒鉄の狼” :
 ───そこか 
 ───なるほど 俺に食い残しがあるとは

”黒鉄の狼” :
 ───そこのは なんだ
 ───鎧う器に己を隠したか?

”黒鉄の狼” :
 ───鉄屑を飛ばして粋がるのか否か…
 ───いまより征く 腑抜けでなくば挑んでみるがいい

アレウス :
ハハハッ! 何を言い出すかと思えば……時代錯誤な”狼"も居たもんだ!

アレウス :
  ・・・
誰が腑抜けだって……?

アレウス :

然らば教育してやろう!
"現代"の狩り、そのものをな!

アレウス :
 ホット・スクランブル
《ガンドルフ、出るぞ!》

セットアップ:《コーリングシステム》
効果:
 セットアッププロセスで所持ヴィークルを呼び出す。
 ヴィークル呼び出し時、搭乗状態となる。

→搭乗:スカイキッド(ガンドルフ[バルチャーII])

アレウス :
──征くのはこの俺だ、尻尾を巻いて逃げるなよ野良犬!

”黒鉄の狼” :
   レムリア
 ───俺を前に、死の覚悟よりも戦意が猛るか

”黒鉄の狼” :
 ───だが
 ───血肉には先約がある

SYSTEM :
■セットアップ
 セットアップ結果を確認しました。

SYSTEM :
■イニシアチブ
 イニシアチブを確認しています…。

※ AUTO MODE ※ :
 

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。

SYSTEM :

 ───寄越せ、寄越せ!
 ───すべてを寄越せ! 

SYSTEM :

 ───戦え、戦え、そして勝て!
 ───どこまでも! 生命ある全てのものの頂へ!

SYSTEM :
 荒ぶり猛ける、底無しの衝動から解き放たれるもの。 
 可視さえ出来る戦意の興りは、燎原の火が如く広がり、伝播して伝染する。
 気を抜かば即ち魂の芯から中てられる波動の所以は、

 万人が等しく持っているものだ。
 戦いの時代であろうと、平和な時代であろうと、それは変わらない。

SYSTEM :
 あるいは戦場、あるいは煌びやかなリング、あるいは薄汚い路地裏。
 あるいは盤上の駒に手を掛け、算盤を弾く時にも根付き得るものであり……。
 ただ生きていくそれだけの行為にさえ、時として咆哮の根源たるものが付随する。

SYSTEM :

 本能───。
 闘争の本能。

SYSTEM :
 人は強者を蔑み、恐れ、そして───。
 須く、斯く在りたいと、道行くすべてを薙ぎ倒す、同じ狼の道に踏み込む。

SYSTEM :
 あなたたちが一瞬揺れ動く意識を直に感じたように、それを“もろ”に受けたのが二人。

 よりにもよって/不幸中の幸いか。
 先程まで交戦状態にあったばかりの、敵性エージェントだ。

“不朽讃えし懐刀” :
「こ、れは───ッグ!」

「グゥゥゥァアアアアア───ッ!」 

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :

『───!
 この子越しに、この位置まで………』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
   Scemo Cane
『───とんだ、駄犬───!』

“黄の希人”アーキル :
「こいつが“黒鉄の狼”!? 馬鹿げた真似しやがって………。
 アイシャ! おい、アイシャ!」

“アイシャ” :
「──────」

“黄の希人”アーキル :
「聞こえてないのか…!? ───ああいや、クソ! 

 そりゃあそうか! 知らん概念マッハでぶつけられてパニくらないヤツはいない!」

“黄の希人”アーキル :
「(だがやられた、こっちは盲点だ…!
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  コイツが死んだらウチは早晩空中分解しちまうぞ…!!)」

SYSTEM :
 振るう刃に不自然なほど感情の抑揚がないキリングマシーンめいた、
 曰く“女王の番人”が。

 超広域の制圧攻撃を旨としながら、攻撃に殺意がそもそも乗らない、
 名を“アイシャ”と呼ばれた暫定レネゲイドビーイングが。

SYSTEM :
 前者は如何なる所以か、抑圧の反動とばかりに。
 後者はひとにしか持ち得ない概念を直に浴びて。
 ひと一倍強く、その猛りに中てられた。

 こうなってしまえば、どちらも待っているのは元々の性格をかなぐり捨てたバーサーカーだ。

SYSTEM :
 刹那のうちの阿鼻叫喚を起こした本人は、その事実に一切頓着せず。
 得物を引き摺るように振り抜く。

SYSTEM :
 確かに、それは剣だ。
 体重と質量を乗せて潰すように断ち切る道具を剣と呼ぶならば。
 身の丈を遥か越え、大きく、分厚く、重く…まるで鉄塊のような得物さえも。
 ・
 剣、と呼ぶならば。

SYSTEM :
【Check!】
 以下のエンブレムが開示されます。

 エンブレム:パワーオブリエゾン
 所有者:“黒鉄の狼”

 所有者がさまざまなFHエージェントの力を利用できることを示すエンブレム。
 この「利用」の意味は所有者に委ねられるが、経験点を別途消費する。

“黒鉄の狼”は上記のエンブレムを用いて───(以下、詳細未開示)。


SYSTEM :
【Check!】
 以下のエンブレムが開示されます。

 エンブレム:パワーオブリエゾン(ミリオンベイン)
 所有者:“黒鉄の狼”

 一振りで一軍を退けるとさえ言われる、規格外の大きさの槍。
 厳密にはそれそのものではないが、
 データ上は当該エンブレムと同じカテゴリの武器を所持しているものとして扱う。


”黒鉄の狼” :
『───あの時の喰い残しか?
 折れた牙を…なるほど、紛らわしたな』

”黒鉄の狼” :
『懲りずに群れる。二つも。
 ならば順番の違いだ。まずは───』

”黒鉄の狼” :

■オート:貪瞋痴
《加速する刻I.L5》×2
・イニシアチブプロセスにメインプロセスを行う。
・その行動では行動済にならず、行動済でも宣言できる。


SYSTEM :
※ゲームの処理上は「同じイニシアチブのタイミングで、宣言されるたびに加速する刻を宣言した」ものとして扱います。 

SYSTEM :
 瞬間。
 纏った時代錯誤の武装装甲越しに、大殿筋から下腿三頭筋に至るまで、およそ人体のものではないほどに膨張し瞬時に圧縮された筋肉が。

 遥か遠くにいるはずなのに、猛りの主がそこにいると分かる、絶対的な威圧感が………。

 凶兆を預言した。

SYSTEM :

■手番処理
”黒鉄の狼”が行動を宣言します。 

”黒鉄の狼” :

■メイン(加速I.1回目):全力移動
 エンゲージC⇒B(100m)

SYSTEM :
 続く踏み込みが。
 水平線のかなたから此方まで、瞬くうちの踏破。

 武具を鎧う異形が、触れたもの消し飛ばす黒き暴風となって迫りくる。

SYSTEM :
 差異や好悪はない。食い千切るにあたって、選り好みがない。
 ただその眼前に立つものを、持てる力の全てを使って食い破る。
 小難しい理屈を一切抜きにした、文字通り『生存』と直に結びついた戦いにおいて…。

 ・・ ・・・・
 敵は、ただの敵だ。

”黒鉄の狼” :
■メイン(加速I.2回目):シグルズの絶技
Major:《CRバロールL2+1》《電光石火L3+1》《吼え猛る爪L5+1》《巨人の斧L3+1》《居合いL3+1》《獅子奮迅L3+1》

 HIT:26dx7+8(+8)
 ATK:xd+48
Add'l:装甲値無視
Target:“赤の鬼人”“帝釈天”“Mr・A”


"赤の鬼人” :


「───無礼るなよ、小僧ッ!」 

"赤の鬼人” :
.     ボナ・フォルトゥナ
■オート:この時間はただひとり
《時の棺.L1》
・指定した判定を自動失敗にする

"赤の鬼人” :
.     ボナ・フォルトゥナ
■オート:この時間はただひとり
《時間凍結.L1》
・イニシアチブプロセスにメインプロセスを行う。 

SYSTEM :
 二撃目。
 見かけにおいて非にならぬほど凡庸だが、
 振り抜く大剣は先の波濤を凝縮したような重みに満ちていた。

SYSTEM :
 地盤ごと刳り貫いて叩き切るような、まさに巨人の、いや…。
 もっと巨きく、情け容赦がないものの、踏み付けにも似た、上段からの打ち下ろし。
 調べる小手ごと握り潰す、初手にて揮う止め技。
 真っ向から、男が受け止める。いや、厳密に言えば受け止めたのではない。

SYSTEM :
 体内時間の超加速、アドレナリンの極限までの増幅と循環。
“赤の鬼人”の伝説は、彼の戦いがさながら時を飛ばすかのように素早く………。

 一個の世界が直に動くかのような重みを伴うがためのもの。
 その超速度が繰り出す打撃の神髄は、ごく僅かな時間の中を遡る超速度が齎す逆説的停止。
         フリーズ
 拳に欺かれた世界が硬直して、本来齎されるべき極大規模の破壊の影響をキャンセルすると同時に間合いに入る。

SYSTEM :
 ローマ支部の最精鋭、激戦区の無法者たちを本来壊滅させる立場であったものたちを、
 まさに血に酔うように片付けて回った紅き悪魔。
         ビーコン
 増幅された魔眼を指針のように扱い、指数関数的な勢いで加速する“赤の鬼人”の所作は、
 エンジェルハイロゥ・シンドロームが持つ光速の立ち振る舞いさえ、フルパワーなら悠々と越す。

SYSTEM :
 音と光が速さの優劣を競う、そんな舞台に彼はいない。
 彼がいるのは「数える前か後か」…。
    ・・ ・・・
 つまり零秒/計測前の段階だ。そこにつけては、もはや主導権など争える位置にいない。
 
 故に、瞬きひとつしていなくても、直撃の音色が幾つ鳴ったのかさえ定かではなかった。
 
 同じ時間に重複して聞こえる打撃音という荒唐無稽が答えだ。

"赤の鬼人” :
「そうだ、無礼るなよ…!
.       アスラ
 帝王はこの“赤の鬼人”だ…依然、変わりなくッ!」

"赤の鬼人” :
     アスコルタ・ロッソ
■マイナー:おれは紅き悪魔
Minor:《ダークマター.L4+1》《過剰収縮.L4+1》《縮退機関.L4+1》
・攻撃力増加:[+40]
・HPダメージ:[10]


"赤の鬼人” :
   グッドバイ・ファウスト
■メイン:抵抗は無駄だ
Major:《CRバロール.L2+1》《漆黒の拳.L7+1》《漆黒の波濤L7+1》

 HIT:14dx7
 ATK:xd+16+40
Add'l:装甲値無視
Target:“黒鉄の狼”


SYSTEM :
 ───そして。

 本来圧倒から来る余裕を以てそれを振るうべき“赤の鬼人”の、
 誰がどう聞いたとて聞こえる乾坤と気勢は火を見るより明らかだった。

SYSTEM :
 遠目でさえも、その拳に宿るものの大きさは比較にならない。

 あるいはこの戦闘状況でさえ、地金を出すことなかった……。
 いや、戦闘の喜悦以上のものを出さず余裕を漲らせていた“勝者”の、このザマは。

SYSTEM :
 まるで食らい付き、縋りつくような必死さありきの。

 叩き込み続ける高速の拳打、その向かい先に対して、あまりにも小さく見えるその様子は。

"赤の鬼人” :
「無礼るなよ犬コロがッ!
 おまえごとき屍肉を貪る無法者ごときが、
 この“赤の鬼人”の『栄光』を! 血の、重みを───!」

"赤の鬼人” :
「きさまさえいなければッ───。
 おれは目も眩む『栄光』の中で! 『頂点』で在れたんだッ!」

"赤の鬼人” :
14dx7  (14DX7) > 10[1,2,2,3,3,4,5,6,7,8,8,9,9,10]+10[1,2,3,5,9,9]+4[1,4] > 24

SYSTEM :

 ───きさまさえいなければ!
 ───あの時に現れなければ!

"赤の鬼人” :

「次はきさまが! 堕ちる番だァァァァァーーーーッ!!!」

SYSTEM :

■リアクション
 リアクションを確認しました。

“黒鉄の狼”:不可

SYSTEM :

■ダメージ計算
 ダメージを計算しています...

"赤の鬼人” :

「おおおおお───ッ!」

"赤の鬼人” :
3d10+56  (3D10+56) > 19[8,10,1]+56 > 75

SYSTEM :
 血を吐くような、文字通り「万人」を殺せる猛打。しかし。

SYSTEM :
 聞こえた打撃音、百を越えて十八発。
 本来ならばオーヴァードの人体さえも、
 柘榴を通り越して粉微塵にし消し去った嚇怒の猛撃。

SYSTEM :
 結果はこうだ。

”黒鉄の狼” :
■オート:悪竜現象/血の護り
《パワーオブリエゾン(濃縮体)/超人的弱点Ⅱ.L20》
《拒絶領域.L4》《斥力障壁.L5+1》《不死英雄:社会》
・被ダメージ軽減:[1d+78]
・「社会」能力値による攻撃、判定を無効化する

”黒鉄の狼” :
1d10  (1D10) > 4

”黒鉄の狼” :

『───もういい。

 おまえを喰い損ねたことには、
 意味はなかった』

”黒鉄の狼” :

『噂だけの、屑が』

SYSTEM :



 無 傷 。

SYSTEM :
 底冷えするような冷たさを伴って、聳え立つ現実の名。
 それは徒労、と呼ぶのだ。

 殴る本人こそが、焦燥の渦の中で知っていた。

SYSTEM :
 誰しもが、現実という高き壁に時としてひざを折る。
 自分が頂点ではない、時としてある“上”を知り、折り合いをつける。
 みっともない賢さであり、人生で長生きしていくための臆病さだが…。
 
 この時“赤の鬼人”は、まさにそれを感じていた。

"赤の鬼人” :
「がっ………ギ………!」

"赤の鬼人” :
「こッ………こんなことが………ッ
 あって、たまるか………」

SYSTEM :
 影一つさえ踏めなければ、手応え一つない。
 
 路地裏の野良犬からのし上がり、奪うと決めれば奪い。
 最終的には必ず捻じ伏せて、強さと弱さの比較において必ず前者に立っていた者が。

 挑み、食らい続けて来た破落戸上がりの勝利者が……。
 
 ある言葉を自覚する現実を前に、血の滲む歯ぎしりと共に自覚したものがあった。

"赤の鬼人” :
 ・・・
 だめだ

 ・・・・ ・・ ・・・・
 これには、また、勝てない

”黒鉄の狼” :


『 消 え ろ
   身 の ほ ど 知 ら ず め 』 

"赤の鬼人” :


「うっ………うお、おおおォォォォ───!!」 

SYSTEM :
 鬼人の鼻っ柱と現した頭角が、無惨に叩き折られた。

 いや…あるいは、折られたのではない。
 あるいはそんなもの、嘗て彼を識る男が五年前に別れたその後、どこかで。
 とっくに気勢を失い、ひん曲がり、へし折られて久しかった。

SYSTEM :

 次に失われるのは命だ。

”黒鉄の狼” :
■メイン:シグルズの絶技
Major:《CRバロールL2+1》《電光石火L3+1》《吼え猛る爪L5+1》《巨人の斧L3+1》《居合いL3+1》《獅子奮迅L3+1》

 HIT:26dx7+8(+8)
 ATK:xd+48
Add'l:装甲値無視
Target:“赤の鬼人”“帝釈天”“Mr・A”

アレウス :
 生きている限り、望みあり
 Finché c'è vita c'è speranza.

 だがそれは、生きていればの話だ。
 目の前で起こった"真実"を、冷徹に受け入れる軍人としての己と、感情的に受け入れられないギャングとしての自分。
 相反する精神が、ただただ血風の嵐の中に虚しく響く。
   ・・
「──ボス!」

 この地に来てから何度かそれを口した。
 だがそれは──過去の記憶をアテにした、思い出語りのようなものにしか過ぎない。
 今この時叫ばれた声は、あの日、あの時の……"牙獣"の、それだったからだ。

夏瑞珂 :
 喰い損ねが、無惨にも食い尽くされる。

「──見、えた……!」

 三年前は、何が起きたか分からなかった。荒ぶ熱風と圧倒的な暴力にもたらされた結果しか残らなかった。
 だが今は違う。振るわれる大剣の迅さを、それに抗う荒唐無稽を、知覚できる……!

ラーゼス :

「────あれは……」
 ・・・・・・・・・ ・・・・・・・
 無我のままに振るう、生きるための剣……。

ラーゼス :
 あの森で、知恵無き目をもって見た剣にひどく似ている。
 だが違う。あの風は探求の風などではなく首飛ばしの狂風だ。

ラーゼス :
「……なんという奇縁か……!」 

"七花胡" :
「(地平線の彼方からぶっ放されたと思ったら、今や目前!
  しかもいつの間にか“赤の鬼人”が圧倒されてる、俺の視力と感覚じゃ何が起きたのか捉えられなかった!
  あれのターゲットが此方に向いたら────
        ・・
  駄目だ、この肉壁だって保たせられる気がしない!)」

"七花胡" :
「(撤退? 離脱? そんなこと出来るのか? あれを前にして? 駄目だ、諦めだけは駄目だ!
                 ・・・・・・・・・・
  許されない、許されない、俺には戻らねばならない場所がある!
  こんなところで、野垂れ死になんて願い下げだ……!)」

"七花胡" :
「(────あんな厄物がいて知らん顔なんて通じると思うなよランカスターのくそじじい!
  何が何でも、生きて文句の一つでもつけなきゃ気が済まない……!)」

"七花胡" :
 どれだけ可能性がゼロに近くても、ゼロ以前の問題であろうと、あれに完敗を喫しようと、そんなことは関係ない。
 目線だけは眼前の絶死を見つめながら、ありとあらゆる感覚を全開にして、退路を探す。
 其れがたとえ針の穴を通すよりもか細いものであったとしても!

 此処で誰を犠牲にしようと、俺は、俺だけは、絶対に生き延びてみせる……!

SYSTEM :
 せんやく
 赤の鬼人の首を撥ねたら、
   のこり
 次は夏瑞珂。つまり喰い損ね。
 その後は、恐らく目についたもの手当たり次第。

SYSTEM :
 通った先の縄張りに燃ゆるもの、すなわち戦う術を持つ火の全て、挑んで示さずにはいられない。

 つまり状況が致命的な方向に動き、ありふれた終わり方を“非凡”の頂点にいた男が迎える、と。
 誰もが確信した時、台風の目にいたものの対応は、彼女が一手早かった。

“帝釈天” :
           ボス
「………ふう。残念です、大師。
 こうなっちゃいましたか」

“帝釈天” :
「───というわけで。ええと、ですね」

“帝釈天” :
■オート
《瞬間退場III.L1》
Target:“帝釈天”、“赤の鬼人”
・指定したキャラクターはシーンから退場する。

“帝釈天” :
 ・・ 
「あとはよろしくお願いしますね」

SYSTEM :
 彼女だけは、嵐に恐怖を懐いていなかった。

 いや違う。
 厳密には、挑む思想を最初から持っていなかった。

SYSTEM :
 ───誰が、嵐を嵐以上に恐れるものだという。

 見物の所以がなくなったと見れば、彼女はもとよりひとつを除いて己以外を重んじる謙虚さを持たない。

SYSTEM :
 それは、

 自殺以外の全てを己のやり方とする、自尊心の高さゆえに、
 必要とあらばそれすらも切り捨てて欲望のままに邁進できる悪人の所業である。

 その冷酷な利巧さが、まだ意味のあるもの以外を、なんの躊躇もなく見捨てた。

"七花胡" :
「────”帝釈天”……!」
 手前だけトンズラこきやがった、あのクソアマ……!

アレウス :

「───高くつくぞ……!」

 協力者を見捨てて逃げる。
    ・・・
 それが裏切りだと言わず、なんと呼ぶのか。

アレウス :

「"A"!
 ──逃げろッ、俺たちのことは気にするな!」

SYSTEM :
 瞬間、続くもう一撃。

 斬撃の轟かせるような音ではない“何か”が地面を抉り抜いた先、
 そこに彼女はいなかった。
 いや、彼女だけではない。 

SYSTEM :
“赤の鬼人”もいない。
 
 オルクス・シンドロームの領域展開を織り交ぜた、高度な瞬間転移である。
 おそらく仕組み上はやろうと思えば、その射程が何も“身近だけ”ということはないだろう。

 分かっていてそうした。
 高くつく、という言葉の最後に、

“帝釈天” :
.  あなたがた
 これが世俗でしょう?

SYSTEM :
 凡そ肯定の台詞を残り香にし、
    ・・・・
 残るは懸念通りただ一人。

SYSTEM :
【Check!】
 コンボ宣言中に攻撃対象がシーンから消滅しました。
 再度、ターゲットの確認を行っています...。


”黒鉄の狼” :
■メイン:シグルズの絶技
Major:《CRバロールL2+1》《電光石火L3+1》《吼え猛る爪L5+1》《巨人の斧L3+1》《居合いL3+1》

 HIT:26dx7+8(+8)
 ATK:xd+48
Add'l:装甲値無視
Target:“Mr・A”

”黒鉄の狼” :
26dx7+16  (26DX7+16) > 10[1,1,1,1,1,1,1,1,1,2,2,3,4,4,4,5,6,6,6,7,8,8,9,10,10,10]+10[2,5,5,5,6,7,8]+10[6,8]+6[6]+16 > 52

SYSTEM :
■リアクション・ダメージ計算
『トループ』のため
 イベイジョンで判定が行われました。

 ダメージ計算に移行します。

”黒鉄の狼” :
6d10+48  (6D10+48) > 43[10,2,6,6,10,9]+48 > 91

“Mr・A” :

「は、は、は───」

“Mr・A” :

「はははは、素晴らしい………。
..         レムリア
 コレが! コレが“黒鉄の狼”…!」

“Mr・A” :
「確かに今ワタシの命は、
 どう転ぶか分からず…。

 これが人生で感じるべき初めての恐ろしさだというなら、」

“Mr・A” :

「それが何より、」 

SYSTEM :

 言葉を乗せる音ごと、空気が真っ二つに両断される。
 黒衣が微塵に引き裂かれ、仮面ごと打ち砕かれる様を見せずに消し飛ぶ。

SYSTEM :

 ───喩えるなら。

SYSTEM :

 爪先だけで人間の全長より大きな生き物が、無造作に腕を薙ぎ払うような。
 そういう有無を言わせない暴虐が、
 紛れもなく技も情も超越した、生存て荒ぶる我欲を以て叩き込まれる。

 耐えられるはずがない。

SYSTEM :
 だが。

“Mr・A” :

■オート:Alternative
《蘇生復活.L1》


“Mr・A” :

「───まったく。当て逃げは犯罪だよ」

SYSTEM :
 カタチのない悪意は死なない。
 一振りは彼を何度殺しても有り余る暴力であったが、
 ・・・・・・・
 何処かにいた彼が急遽呼び出された。

SYSTEM :
 ただそれは断じて無限ではない。

 分かっているから、
 狼の牙が緩む気配もない。

”黒鉄の狼” :
『いいだろう、初めてではない。
 何体目でそのうすら寒い影が消える? 試してやろう』

“Mr・A” :
「ハ ハ ハ !
 何度もやりたくはないナア!」

“Mr・A” :
「そういうわけだボス! 
 分かっているだろうね…」

SYSTEM :
 戦士として。
 ・・・・・
 こんなものに挑みかかることの意味は分かっているだろう。

 あるいは断崖絶壁を覚悟で飛んでみることも。意味を見出すのであれば、そこに確かな意味があるかもしれないが…。
 しかしだ。

“Mr・A” :
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
「目の前塞いでるどっちか殺したまえ。

 ワタシも死ねない。逃げ道が欲しいからね」

アレウス :
「──すまん! 俺としたことが"どうかしていた"ようだ……!」

“Mr・A” :
「過去形には早いよナア!
 最後に笑っていこうとも!」

“Mr・A” :
「ちなみに…1秒で1ページずつワタシがもがれている感じがするので早めに恃むよ!」

アレウス :
「縁起でもない……貴様にはやってもらうことがある! 虫食い本などお断りだ」

アレウス :

「だが──そうだなァ!
 いまいち煮え切らぬし、燃える気もしなかったが……そうとなれば、笑って終わるとしよう!」

アレウス :

「──貴様ら!         ケツ
 緊急時だ、今から俺がこの戦いの責任を持つ!」

ラーゼス :
「………」

ラーゼス :
引き寄せていた腕の力を抜き、胡を解放する。

"七花胡" :
「……いいでしょう。
 貴方に面倒を見てもらう謂れはありませんが」
 離れた後に天秤を持ち直す。ずれたサングラスを直し、衣装の裾を払う。

"七花胡" :
「“隻獅子”、この場は彼と『連帯』し、切り抜けます。あれとまともに戦りあうには、手札が足らない。
 いいですね」

 指揮下に下ったわけではない。あくまでも共闘戦線だ。
 “隻獅子"へのそれは、問いかけではなく断定。確認作業である。
 此処で否やを唱えるような、盤上の計算すらできない愚か者ではなかろう、という算定が裏面に潜む。

ラーゼス :
「あいさ」

ラーゼス :
「……」
 遠くの男を見る。
 鋼に身を包んだ、知るようで知らぬ風のもの。
 狼の王。

ラーゼス :
「この目で見た。いまはそれでいいだろう──」

ラーゼス :
小さく呟いてから、握る槍を取り巻く雷の勢いがいや増した。

ラーゼス :
「生きるため、どちらを間引くかは貴公が決めろ。おれは貴公の槍だ」

"七花胡" :
「任されました。その槍の鋭きに期待します」

夏瑞珂 :
「はっ……はっ……」

 興奮した狗のように喘ぐ。死合う。殺す。奪う。喰らう。言わせたままでいいのか? 貪られたままでいいのか?

夏瑞珂 :
「は、は、は」

 否。断じて否だ。敵はすべて、この風のもとに断たねば。
 知らしめねばならない。二度とわたしの前に顔を出すなと。

夏瑞珂 :
 tight
「窮屈なのはきらい」

 双眸に火が宿る。
 衝動が、なけなしの理性を燃やしつくす。

 そうだ、誰の庇護も必要はない。後より先より刹那を嗤え。

夏瑞珂 :
「好きに争う。好きに壊す。そうして気に入らないやつをブッ飛すのが、自由ってものでしょう?」

“Mr・A” :
「その意気さ、ボス。その調子さお歴々。
 そうでなくちゃアな…ワタシも、ここで“ウェルギリウス”にバトンタッチはゴメンだ」

“Mr・A” :
「そんなワケで急ぎたまえよ自分のために。
 そう、可能な限り、自分のためにだ───」

“Mr・A” :
           コト
「でもワタシは彼の言う約束しか聞かない。それも覚えておいてくれるなら…。
 まあ、好きに決めたまえ! ワタシは楽しい!」

SYSTEM :
 だが。
   アノニマス
 この不特定多数の煽り立てるような、
 自分のために他人を踏み躙る提案を聞いた時。

 彼方に見ゆる青凛の血と、此方の黄燎の風が、
 形にならない殺意/切り抜けるための思考をあらわにした。

SYSTEM :
 あちらも判断は同じだが、
 ・・・・
 道ふさぎを置いて行く決断の気配はない。
 ユメ
 欲望を踏み躙ることが、
 結果的に手袋を彼女/彼の足へ叩き付けるに等しき意味を持つことも………。

SYSTEM :
 ・・・・・・
 それを好かぬとしても、
 元より奪い食い千切る以外の道がないことも、存じているだろう───。

SYSTEM :
【Check!】
 エフェクトの発動が予告されました。


“不朽讃えし懐刀” :
■オート
《加速する刻I.L2》
・イニシアチブプロセスにメインプロセスを行う。
・「行動済み」でも宣言でき、行動済みにならない。

[下記を満たすと発動]
・『待機』中にダメージを受ける

“アイシャ” :
■オート
《加速する刻I.L2》
・イニシアチブプロセスにメインプロセスを行う。
・「行動済み」でも宣言でき、行動済みにならない。

[下記を満たすと発動]
・『待機』中にダメージを受ける

???? :
■オート
《瞬間退場III.L1》
使用者:?????
対象者:“帯来风暴”、“死滅天隕”、“七花胡”、“隻獅子”
・シーンから指定したキャラクターと共に退場する。

[下記を満たすと発動]
・ラウンド終了時
・?????

SYSTEM :
■イニシアチブ
 イニシアチブを確認しています...

SYSTEM :
■手番処理
 ”アイシャ”が行動を宣言します。


SYSTEM :
■手番処理
 “アイシャ”が待機を宣言しました。


"七花胡" :
「────“帯来风暴”!」

"七花胡" :
「貴方の欲望が不退転の矜持、あるいは自殺志願にあるというのなら、勝手になさい。
 この場で選べる死に様があるとは思えませんが、どの瓦礫に血を塗りたくるかくらいは選ばせてもらえるでしょう」

"七花胡" :
「この戦場は既に貴女のものではなく、戦うことを強いられている時点で、窮屈であるということに変わりはありません。
       ・・
 貴方の欲望があれにあるというのなら、この場は我々と共に撤退を」

夏瑞珂 :
「────────────────」

夏瑞珂 :
「ヤ」

ラーゼス :
「………」

“Mr・A” :
ハ ハ ハ! 好きにしろとは言ったが!

"七花胡" :
クソガキ!と口をついて飛び出しかける悪態をどうにか飲み込む。

アレウス :
「(……さて、どうする? コイツは紛れもない獣だぞ)」

"七花胡" :
「ではどうします、ここで無駄死になどしてみますか?
 “赤の鬼人”ほどの腕であっても『ああ』だったのですよ、それと真っ向から打ち合って勝てる自信がおありで?」

"七花胡" :
      ラッキーセブン
「二度三度の食い残し、再戦のチャンスなど巡っては来ません。
 彼が稼いでいる時間を使い、撤退することを選ばない限り……」

"七花胡" :
「あれの掌中で雁字搦めのこの戦場を、貴女の欲望の果てとして、
 それで良いのですか」

アレウス :
「(……返答次第だな。
  ここで理性的な返事が出来るか否か……ただの獣なのか、或いは、真に戦争に身を置いているのかが分かる)」

夏瑞珂 :
 彼は正しい。正しいから、余計わからない。りくつで説き伏せたがるのは、あまり『彼ら』らしくはないから。

夏瑞珂 :
 りくつ、りせい。でもわたしは、最初から間違えたままでいたい。ああ──あたまの中の声を聞かせてあげられたら、きっと蛇のひとだって納得するだろうに!

夏瑞珂 :
「むぐ」

 しらない、と言いかけた口が塞がった。ごわごわとした手袋の感触。

「んむ、むー」

 傍目にはわたしが勝手にもにもにと唸ってるようにしか見えない。

夏瑞珂 :
「ぷは」

夏瑞珂 :
「……つまんないの」

 名残惜しくちらちらと背後を窺って──はっきりと振り返れないのをかくして──遠い姿を、魂の焼き痕と照らし合わせる。
 この、ふてくされきった返答が、一応おおむね俗に言うところの一説によると『わかりました』だ。

『謎の声』 :
 ────復讐を、

 ────逆襲を、

 ────再戦を!

『謎の声』 :
 失われた名誉と未来の回復は、
 相手の血を濯ぐことでしか戻らない

SYSTEM :
 鼓動は何より高らかに。
 それこそがおまえの国の礎なのだ、と。
 それこそがやがて血に染まった手袋を突きつける先なのだとあなた/だれかがいう。

SYSTEM :
         はて
 だが、重なる姿が断崖へ行くことの邪魔をする。
  
 憎らしいほどに。
 嵐を阻んで白雪から身を守る、風除けの陽炎が、どこまでも。
 もう、そこにないはずなのに。

 名残を感じるたびに、蘇る…。

"七花胡" :
「よろしい」

 彼女の不貞腐れたような呟きは、本当に心の底から渋々の了承の意だった。
 一時的であろうと、取り込みが叶ったのであればそれで上々。
 内心で恋しさが頭をもたげぬうちに、見覚えと聞き覚えしかないそれから意識を離す。

"七花胡" :
「此処を脱するまでの一連において、自分は足りぬものを補い、余るものを削ぐ、貴方たちの園芸師となりましょう。
 どんな我儘な枝葉だろうと、すくすく育つかたちに整えて差し上げる」

"七花胡" :
「存分に、揮いなさい」

夏瑞珂 :
「野菜はきらい」

ラーゼス :
「……」

ラーゼス :
「人間は好き嫌いをしてはいけない。偏るそうだ。強くならない」

アレウス :
「今更ここは幼稚園か?」

夏瑞珂 :
「うらぎりもの……」ライオンちゃんなのに。

"七花胡" :
「保母さんになった覚えはありませんよ!
 好き嫌いの面倒までは自分は見ません」

アレウス :
「ええい、大人しく此奴の手ほどきを受けておけ!」

アレウス :
「言っただろう……責任は俺が持つと。
 貴様らの手腕を見せてもらう時だ」

アレウス :
「俺はすべてを見下ろす天にいる。
 貴様らがしくじったら一度くらいはカバーしてやる……そのつもりで動け!」

SYSTEM :
 ───一時の敗北はいい。
 だが最後は必ずや勝利せよ。

 旧くから伝わる、生きるための戦いの流儀である。…あるいはそれも奇縁か?

SYSTEM :
 猛る獣のような唸り声。
 理知を伴う技の欠片も残らぬ女王の剣の姿勢が弛緩し、間近の群れへ征伐の一振りを向ける。

 空に浮かぶ無数の岩礫。輝きを増すファンタジーの投射装置。
 慈愛が抱え込めない極大の闘争本能にショートした思考の防衛本能が、こちらを敵と認識した。

 近いの/致命は前者、広いの/危険は後者。
 そして───。

SYSTEM :
■イニシアチブ
 イニシアチブを確認しています...

SYSTEM :
■手番処理
“死滅天隕”が行動を宣言します。 

アレウス :
 口にした通りだ!
 俺は奴らの"ポカ"をフォローせにゃならん……"待機"を選択する!

“Mr・A” :
 なるほど二段構えということか、手厚いネエ…

“Mr・A” :
 ではワタシのペース配分が狂ったら
 にこやかによろしく恃むよボス

アレウス :
 フン……そうなったらミクサにも一言言っておけ!
 ウェルギリウスにもだ!

“Mr・A” :
 彼女はけっこう生死にゃシビアさ

“Mr・A” :
 後者の伝言は死にながら考えよう!

アレウス :
 ツーマンセルの責任というモノだ……まあ、いい。

アレウス :
 無いことに越したことはないのだ。
 さぁて貴様ら、動け動け! 
 戦争は機動せずしてなんとする!

行動選択:
 《待機》

SYSTEM :
■手番処理
 “死滅天韻”が待機を宣言しました。 

SYSTEM :
■イニシアチブ
 イニシアチブを確認しています...

SYSTEM :
■手番処理
“七花胡”が行動を宣言します。 

"七花胡" :
では────お守りのつもりはありませんが、仕事は果たすとしましょう

"七花胡" :
【天秤を傾ける】

マイナー
 アカリヤザガマの天秤(レインボウファイアル)使用

次に使用するソラリスのEの侵蝕値に-1する
複数組み合わせた場合、全てに適用
1S1回

"七花胡" :
【頂芽を摘む】

オート
 タブレット
 多重生成

メジャー
 導きの華
 戦乙女の導き

対象:3体(“帯来风暴”、“死滅天隕”、“隻獅子”)
射程:視界
侵蝕:8

バフ内訳:
 ダイス+2個、達成値+6、攻撃力+5

ラーゼス :
いただこう

夏瑞珂 :
いただくわ

アレウス :
構わん ……が、俺はフォロー係だ 効能のほどは次だな

SYSTEM :
■イニシアチブ
 イニシアチブを確認しています...

SYSTEM :
■手番処理
”不朽讃えし懐刀”が行動を宣言します。 

SYSTEM :
■手番処理
”不朽讃えし懐刀”が待機を宣言しました。 

system :
[ "七花胡" ] 侵蝕値 : 34 → 42

SYSTEM :
■イニシアチブ
 イニシアチブを確認しています...

SYSTEM :
■手番処理
”帯来风暴”が行動を宣言します。 

夏瑞珂 :
F**k野郎の代わりなんていないけど──いいわ! 見せつけるように遊びましょう!

夏瑞珂 :
【 Outta My Head 】
マイナー:なし
メジャー:《風鳴りの爪 LV1》+《コンセントレイト:ハヌマーン LV2》+《援護の風 LV5》
対象:"不朽讃えし懐刀"
判定:〈射撃〉射程20M
侵蝕値:6

SYSTEM :
■メイン
 宣言を確認しました。
 判定を行ってください。 

夏瑞珂 :
9dx8+10 (9DX8+10) > 10[1,2,3,3,5,8,8,10,10]+10[2,4,9,10]+10[9,10]+10[6,9]+1[1]+10 > 51

“不朽讃えし懐刀” :
グ───ゥ、ゥウ………!

SYSTEM :
■リアクション
 リアクションを確認しました。

“不朽讃えし懐刀”:不可能(暴走) 

SYSTEM :
■ダメージ計算
 ダメージを計算しています...

夏瑞珂 :
8d10+22 (8D10+22) > 47[1,8,8,8,3,10,1,8]+22 > 69

夏瑞珂 :
アハハハハハハ!

system :
[ 夏瑞珂 ] 侵蝕率 : 46 → 52

夏瑞珂 :
もっと──もっといけそうな気がするの!

夏瑞珂 :
1を振り直してもかまわない?

GM :
風鳴りの爪の効果ですね
もちろんどうぞ

夏瑞珂 :
1D10 (1D10) > 5

SYSTEM :
■ダメージ計算
 ダメージ結果が確定しました。 

“黄の希人”アーキル :
 あのナリでエラい馬鹿力…。
 いや、嵐か! 噂の”帯来风暴”なんてよく言うよ

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
 ───なら余所で渦巻いていればいいものを。
 野良犬が、よくぞ噛みついてくれたわね。

アレウス :
 ……想像以上だな。
 アレは──暴風そのものだったか。

夏瑞珂 :
ばうばう! うー、わんっ

アレウス :
 犬の真似をしている場合か! 残心を怠るなッ

“不朽讃えし懐刀” :
 ギ───ァアアアアアアッ!

SYSTEM :
■イニシアチブ
 イニシアチブを確認しています... 

“不朽讃えし懐刀” :
■オート
《加速する刻I.L2》
・イニシアチブプロセスにメインプロセスを行う。
・「行動済み」でも宣言でき、行動済みにならない。

SYSTEM :
■手番処理
“不朽讃えし懐刀” が行動を宣言します。

“不朽讃えし懐刀” :
 全テ…破壊、スル! 

“不朽讃えし懐刀” :
■メイン:ユピテル・スパーダ
Major:《アタックプログラム.L3+2》《雷光撃L1+2》
Minor:戦闘移動/5m(エンゲージD→A)
Passive:《ハードワイヤード.L10》

 HIT:16dx+30
 ATK:xd+15
Target:”帯来风暴”

“不朽讃えし懐刀” :
16dx+30  (16DX10+30) > 10[1,1,2,2,3,3,3,4,5,6,7,8,8,9,9,10]+6[6]+30 > 46

SYSTEM :
■リアクション
 リアクションを確認しています... 

夏瑞珂 :
アッハハ! なぁんにもできない!

アレウス :
チィ! 言わんこっちゃねえ!

アレウス :
AMBACだ! 《カバーリング》をする!

“不朽讃えし懐刀” :
邪魔ヲ………ッ!

アレウス :
するさ! 仮だが上官なものでな!

夏瑞珂 :
え、う

夏瑞珂 :

アレウス :
──貴様、よく見ておけ……

アレウス :
"戦争"を生きるとはこういうことだと!

SYSTEM :
■リアクション
 リアクションが確定しました。

“死滅天隕”:カバーリング→”帯来风暴” 

SYSTEM :
■ダメージ計算
 ダメージを計算しています... 

“不朽讃えし懐刀” :
───ハァアアアアアッ! 

“不朽讃えし懐刀” :
5d10+15  (5D10+15) > 27[8,3,5,9,2]+15 > 42

アレウス :
フン……流石だな、ティ──いや、テレサを護ってきただけある。

ガンドルフ[バルチャーII] :
《ガード》を宣言。
 ガード値[4]を適用し、38ダメージ……。

system :
[ "死滅天隕"アレウス ] HP : 23 → -15

アレウス :
《リザレクト》だ!

アレウス :
1d10 (1D10) > 2

夏瑞珂 :
──、

夏瑞珂 :
死ぬのがお上手ね!

system :
[ "死滅天隕"アレウス ] HP : -15 → 2

system :
[ "死滅天隕"アレウス ] 侵蝕率 : 39 → 41

アレウス :
上手さ……何度も死んできた! かつての仲間と"も"な……!

“不朽讃えし懐刀” :
………!

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
 クストーデ
───我が剣!

SYSTEM :
■イニシアチブ
 イニシアチブを確認しています...

SYSTEM :
■手番処理
“隻獅子”が行動を宣言します。 

ラーゼス :
オートアクションで槍を装備する。

ラーゼス :
マイナーアクション:なし
メジャーアクション:
▼淀裂く幻月/《コンセントレイト:ブラックドッグ》+《アームズリンク》+《パワースイング》
 判定:(6+3+2-1)dx8+(9-1+6)
 ダメージ基礎:nd10+20+6
 侵蝕:7
 対象:“不朽讃えし懐刀”

“不朽讃えし懐刀” :
来…ル、カッ!

ラーゼス :
(6+3+2-1)dx8+(9-1+6) (10DX8+14) > 10[1,3,5,6,7,8,8,9,9,10]+10[3,4,6,7,10]+1[1]+14 > 35

SYSTEM :
■リアクション
 リアクションが確定しました。

“不朽讃えし懐刀”:不可能(暴走)

SYSTEM :
■ダメージ計算
 ダメージを計算しています... 

ラーゼス :
その剣の堅さ……我が牙で試みてみせよう!

ラーゼス :
4d10+20+6 (4D10+20+6) > 20[10,1,4,5]+20+6 > 46

system :
[ 獅子王 ] 侵蝕率 : 39 → 46

“不朽讃えし懐刀” :
鋭イ………ダ、ガ!

“不朽讃えし懐刀” :
ダガ、マだ、ワタシ、は………───ッ

SYSTEM :
■ダメージ計算
 ダメージ結果が確定しました。

“不朽讃えし懐刀” :撃破! 

"七花胡" :
 ────天秤が傾く。
 
 両側に備え付けられたフラスコに、ひとりでに液体が湧き上がった。
 赤色。揺らめくたびに、水面が淡いを融かして煙のように蟠る。

"七花胡" :
 ────天秤を振る。
 
 振り撒かれた煙は、霧のように一帯を包み込み、酸素が如く万象を染め渡る。

"七花胡" :
「伸び過ぎた頂芽は切り取ってしまいましょう。
 出来る限り多くの花を咲かせるために」

"七花胡" :
    ・・・・・・
 それはこそげ落とすための帳だった。
 
 過剰な力み、空転気味の回転数、それから過ぎた気負いに、深読みのし過ぎ。
 ひずんだ石畳、汚れた土埃、血の泥濘と、敵対者の環境エフェクトの影響まで。
 その力の完璧を阻害するすべての可能性は、“剪定鋏”によって、極限まで排斥される。

"七花胡" :
 オルクス ノイマン ソラリス
 領域制御・高速演算・薬剤生成の三層から成る、
 不都合な因子・乱数を悉く切除することで、望むものに百パーセントの結果を齎す結界────

"七花胡" :
「土は整えておきました。
 後は貴方がたが根を下ろすだけ。
 好きなように、振る舞うがよろしい」

SYSTEM :
 当事者に背を向けた、あるいは雑多な可能性の隣人とでもいうべき”第三者”たち。

 その矛先の余地が残るものから、土を整える時間を作るものまでが、傾いた天秤と共にもたらされた三種混合の異能/技術を吟味した。
 当事者ならばより正確にわかるだろうが、遠目から見ても分かることはある。

“黄の希人”アーキル :
  コンダクター
「(指揮者………。いや、もう少し根を張るタイプか?
  さっきのドンパチの時から、どうも思っちゃいたが、)」

“Mr・A” :
「───ホォ! 確かに、“赤の鬼人”のお墨付きなだけある。
 ヒトを扱い馴れているね」

SYSTEM :
 示唆と効果発揮のプロセスこそは神経質ではあるが、不確定を前提にした支援形態などは“それ”を糧としてきた人間の技だ。潔癖の人間にはむしろ出来まい。
 ───それから程遠いものが、対象外にも関わらず気質を感じ取って、自分の状況などどこ吹く風で囃した。

 …その所感自体は、口にしなかった方も同じだ。

アレウス :
「手慣れているな」

アレウス :
「(だがこれは人を支配するやり口じゃない。
  ……ふゥむ、協調性が無いよりはマシだが……)」

"七花胡" :
「人を転がす仕事で食っているものでしてね。
 それは何も、煽って囃すだけがやり方ではない」

ラーゼス :
「……邪魔を削ぎとっているのだな」

ラーゼス :
「(まるで国を整えるときのように。大筋は理解する。見事な手際だ)」

アレウス :
「(踏み入る者には刺を見舞うやり口。
  まるで茨だな──……華人にしては稀なタイプだ、通常の奴らは例えるならば食虫植物……。

  さて、稀有な人間性というだけで済めばいいがな)」

夏瑞珂 :
 三年前のあの日、わたしの風は焦げついた。燃え移った火が今も燻っているみたいに。そして、燃え尽きることのできないまま火達磨で踊っているように。

 手を差し伸べる。上へ向けた手のひらに、渦をなして風が集まる。掌握──伸展。炎が、風を貪って燃焼した。

夏瑞珂 :
「ふ。くふ──あはっ」

 奪われている。貪られている。食い尽くされ、消えていく。

夏瑞珂 :
 このままでいいのか?

 わたしだけが費やされたまま──無惨な焦げつきをさらして。

夏瑞珂 :
「いやよ」

 ひときわ強く、そして高く、炎が噴き上がった。熱にあおられ、仄かに頬が染まる。

 炎は彩づいた霧をも酸素のように取り込んで、伸びやかに成長していく。しかし植物よりも無秩序で、野放図だ。

夏瑞珂 :
 過剰に費やして、余分に燃やす。だって、それがわたしだ。わたしを芽吹かせた、解き放つためのかたちだ。

 効率なんて度外視、欲望を叶えるための直情と直行。無茶苦茶な形でしか、わたしはいられない。焦げついた今でさえ。

夏瑞珂 :
 風はどこにも根付かない。だけど好きなようにる舞うのは、きっと誰よりうまくやれる。後のことを考えるのはわたしじゃなくていい。

夏瑞珂 :
「だから、ねえ、どいて?」

 槍のように細く伸長した炎を、握りしめる。焼かれることはない。それは既に起きた結果で、いま他者にもたらす未来だ。

 腕を引く──解き放つ。ぶんっと槍投げの要領で。

夏瑞珂 :
 復讐を。逆襲を。再戦を。声はやまない。やまずともいい。ただ、視界の端に映る手が、うなだれたようにしているから……

 それは真っ先にむけるべき仇よりも、
 たまたま進路上にいたものへ、真っ直ぐに飛んでいった。 

SYSTEM :
 嘗て夜に躍ったものを、ある男は風の精と見間違えた。

 その風は、あの日から焦げ付いた。
 広がり続ける炎に飲まれ、いまや戦火を伴う形でしか吹き荒れることは叶わない。
 留められておくべきものが解き放たれたとて、しかしそこにはもう、聖夜の喜びも、留まる所以も残っていない。

 あとはもう、引き裂く颶風だけで。それが炎を望む望まざるを問わずあおり続けるならば、放たれるものが“そう”なのは必然だ。

SYSTEM :
 触れるものみな裂きながら、血と共に笑う。
 整えた土壌は万人が居着く。混沌の手綱を持つ男たちですらそう感想付けたなら、彼/七花胡は断じて手懐け方、ヒトの遣い方を間違えたのではない。

 間違えたままでいたい。
 意地か自然体かはさておき、そんな形が根付かないことが、その証左だ。

SYSTEM :
 そしてその駄々のような“イヤ”さえも、彼女のパフォーマンスを削ぎ落とすものにはならない。
..         GUN
 突き抜ける一撃が、銃から放たれる火線のように鋭く。しかし、留めるべきものを失ったがために、何処までもそれと異なる自由の名残として、灼熱の軌跡を刻んで飛んでいく。

SYSTEM :
 矛先は───。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『…“余所でやれ”の躾一つ聞けないようね、この野良犬───!』

“不朽讃えし懐刀” :
「───ォォオオオオオオッ!!!」

SYSTEM :
 本能で敵意を嗅ぎ取ったものが、そのまま真っ向から挑みかかった。

 稲光を伴い、駆け抜ける。
 そしてその走る雷光を以て、気付いたものが毒づいた。だがそれは、元より“己の持ち物が狙われた”ことに対する憤りなどではない。
 そもそも此処に立つ時点で順番の差異でしかないからだ。躾の不足というより、彼女が毒づいたものはその恐れ知らずの余所者である。
     ・・
 真っ先に火蓋を落としたのは彼女だからだ。

SYSTEM :
 燃え広がる炎のかたちを、真っ向から稲妻が断ち割った。

 しかし、元よりそれは矛でしかなく。
 故に視界を焦がすような激しい火花と光の明滅の中───麗人の肌を、焔が撫で、肉を焼く。 

SYSTEM :
 仮面越しに覗く藍色の瞳と、零れ落ちる金砂の髪が焦げた風に揺れた。

 …だが毀れた血は、裂傷と火傷の規模と比較すれば遥かに少なく。
 その手触りは、鋼色をまとうものを切り裂いたのと何ら変わらない。

 そうとも、焼き焦がしたもののまとう気配は、半ば人体を焼いたものではなかった。いや、あるいは人体だが□□のような。

ラーゼス :
「……獣のように──いや」

ラーゼス :
「悲鳴をあげるように燃え盛るのだな」

ラーゼス :
「(──それに、あちらはまだ浅い。いいや、深いが死ぬほどではない。
  生き物の肉では、ない……?)」

SYSTEM :
 ───そうとも。
.クストーデ
 女王の剣は未だ健在。

 ならば間合いに踏み込んで来たものを、生かそうという思考があろうはずもない。

SYSTEM :
 駆け抜け立ち割った雷霆の中、血さえ蒸発する熱の中で鋼色が吼え猛る。

“不朽讃えし懐刀” :

「キサまモ、敵か………ッ!」 

SYSTEM :
 鋼色が煌めき…切り裂いた微かな隙間に、生身とは思えない亜光速が飛び込んだ。
 粛清の一振り。女王の手元を離れ、その刃が跳ねて動き出す。

SYSTEM :
 暴走でくすぐられた衝動は、今なおも猛る闘争の奔流とは違う。
 定めた敵に襲い掛かる、論理なき破壊衝動。

 渦巻く嵐一禍に飛び込むなど、女王の懐刀と自他ともに名乗る者からすれば苦でもない。
 それは狂奔の是非を理由にしない。仮令正気だろうと/そもそも正気を認められなかろうと、敵と定めたならば彼女の行動は一直線だっただろう。ただ、それのみを己が成すべきことと定めて、血染めの赤絨毯で目撃のための路を築く。

SYSTEM :
 ならば狼藉者に向かって飛び込んだそれは斬撃とは呼ばない。
 それは雷光だ。 

“不朽讃えし懐刀” :
「───ナラばキサマが、ドケ…!!!」

SYSTEM :
 瞬きの一つと同時に、直接切り裂く鉛色と共に放たれ、音を置き去りにしながら、真正面を叩き切って竹の如く割り断つ。
 斬撃と雷霆が、まさに枝分かれしながら一人のみに食らい付く。
 
 幸いなことは本来はあるはずの技が今は備わっていない、というただ一つ。
 それ以外の全てにおいて、轟音と共に嵐を断たんとする一振りに支障はない。

夏瑞珂 :
 音を置き去り、迸るスパーク。炎に焼かれた超特急は、瞬きの終わる前に届くだろう。

「アッハ! かわいいワンちゃん!」

 けたけたと笑う。かたかたと震える。笑いすぎて頭がばかになったみたい!

夏瑞珂 :
 一秒先はまっぷたつ? それはいい。とってもいい。だって、右と左で二回殺せる!

アレウス :
「ちぃ、世話が焼ける……危なっかしいヤツだ」

アレウス :
「よし、スラスター強制噴射!
 アブソーバーの緩和調整は、《ファンタズマ》がやれ!」

ガンドルフ[バルチャーII] :

《脚部ショックアブソーバー、制御75%で設定。
 姿勢制御プログラム、オールグリーン。
 AMBAC実行可、モーメンタムホイール稼働開始》

ガンドルフ[バルチャーII] :

 ガンドルフが急速回転の後、その鋼の巨体を"帯来风暴"の眼前に滑らすように動かす。

 ワーディングによるレネゲイド干渉地帯においては、通常のスラスター噴射移動に加えて、
 人体特有の手足の「振り」を利用した動きが時として効果を発揮する。

ガンドルフ[バルチャーII] :
 モーメンタムホイールは、その動きをごく自然に作動させるよう、
 ガンドルフの脚部ディスク・フレームに組み込まれた姿勢制御プログラムの一つだ。

アレウス :
「チ──防ぎきれんな」

ガンドルフ[バルチャーII] :

 光槍ライフルを十手のように構えた直後、その雷撃の威力故に"不可能"と判断。
 バタフライ・エッジモードによる最低限の凌ぎを行い、そのダメージを完全に防ぐのではなく受けることにシフト。

アレウス :
「《ファンタズマ》、ライフスロットを解放。
 レネゲイドファクターを接続──コクピットハッチ展開と同時に起動だ……」


ガンドルフ[バルチャーII] :
《ラージャ》

ガンドルフ[バルチャーII] :
 機体装甲への過度なダメージを嫌い、コクピットを緊急展開。
 コクピット周辺の内部装甲は積層型ドラムフレームと、モルフェウスによる緊急増強を実行し、被害を最小限に収める。

ガンドルフ[バルチャーII] :
   ・・・
 ……つまり、“不朽讃えし懐刀”の放つ一撃を生身で受けるのだ。

ガンドルフ[バルチャーII] :

 そこに恐れはない。

ガンドルフ[バルチャーII] :

 何度も死んできた。

ガンドルフ[バルチャーII] :

 銃弾を脳天に受けても、
 砲弾を腹にぶち込まれても、
 細菌兵器を吸い込んでも、


ガンドルフ[バルチャーII] :
 あるいは超常の力に蹂躙されてなお、自らの身体に充填させたR因子の修復を使ってきた。

ガンドルフ[バルチャーII] :

 戦争におけるオーヴァード最大の利点──

ガンドルフ[バルチャーII] :
                         
 それは低侵蝕段階における、
             ・・・・
 《リザレクト》を利用した死に戻りだ。

ガンドルフ[バルチャーII] :
フ ィ ア レ ス  デ ッ ド レ ス
 恐怖を失った兵士や、死を忘れてしまった兵士。

ガンドルフ[バルチャーII] :
 それらは幾つもの兵士よりも効率的に戦い、効率的に勝利を掴むことが出来る。
 恐怖を知り、恐怖を味わい、最大の恐怖を持つからこそ──恐怖を"ゼロ"に出来るのだ。

アレウス :

 自らの身体から弾け飛んだ血が、雷撃の波動によって炸裂──蒸発する。

アレウス :
 そこで刻まれる肉体へのダメージ、裂傷、そのものすべてを……自らのR因子を活性化させることで、《リザレクト》を引き起こす。

ガンドルフ[バルチャーII] :
 それが緊急蘇生システムとして、"ヴィクター"の手で確立されたレネゲイドファクターだ。
 蘇生によるレネゲイドの活性化、それに伴う侵蝕率の情報を、大きく抑制する。

ガンドルフ[バルチャーII] :
 幾多の戦場で死に、生き帰ってきた経験が無ければ、そのシステムと共存する事すら叶わない。
 超越的な感覚能力を持つエンジェルハィロゥによって、その痛みの感覚を限りなくゼロまで抑え込める。

ガンドルフ[バルチャーII] :

 オーヴァードは、死というモノに嫌われているが、死から逃れることも出来ない。
 だがその時の死を否定する事は出来る──死と命を、極限まで"同居"させることができれば。

ガンドルフ[バルチャーII] :
    グリーンカラー
 それが戦争生活者ゆえの、

 オーヴァードとしての戦い方だった。

アレウス :
            ・・・・・・
「ふむ、問題はないな──頭の切り替えに1秒かけなければ……こうも出来る」

アレウス :

「オーヴァードは──容易く死ねんのだから……、
 オーヴァード
 "超越者"と呼ばれているのだ。

 "帯来风暴"!
 次は守ってやらんぞ、死ぬ気で"適応"しろ」 

アレウス :
「ご自慢の刀にしては少しばかり"研ぎ"が足りんかったな、テレサ……俺は生きているぞ?」

"七花胡" :
「見事なものですね。自分の命まで消耗できるユニット扱いとは、聞きしに勝る熟練ぶりだ。
 過保護だとは思いません?」

"七花胡" :
            パフォーマンス
「それとも、“青の貴人”への義理立てでも、なさりたかったので?」

アレウス :
「自由に考えるがいい──俺は部下曰く、"部下思い"だそうでな」

アレウス :
「オーヴァードにとって死は"薄い"概念だ。
 だが死ねば染まってゆくもの……死に過ぎても使い物にならん。
 仮とはいえ身柄を預かった上官だ、それくらいは面倒を見てやらんとなあ?」

アレウス :
          ・・・・・・・
「ま、これで代わりに死んでやったら──確かに過保護かもしれんがな」

"七花胡" :
「左様で。自分にはそういう発想はとんとなかったものですから、後学とします」ニコ

夏瑞珂 :
「────────、え」

 人型の鋼なら、そのままであればよかった。だって、それは遮蔽物だ。戦車の裏に隠れるのと変わらない。

夏瑞珂 :
「あ、う、う……」

 危ない。危ない。危ない。危ないのに──なぜ!

夏瑞珂 :
 まず怒りのこもった目で睨みつけて、目が合うより先に見ていられなくなって、爪先に視線を落とす。

夏瑞珂 :
「死ぬわ」

夏瑞珂 :
「誰だって、簡単に」

夏瑞珂 :
「…… ……」

夏瑞珂 :
「邪魔、しないで。わたし──愉しかった、のに。笑ってたのに」

アレウス :
「……貴様の、何の癪に障ったかは知らんが──」

アレウス :
「貴様は"闘争代行人"としてこの場にいることを忘れるな!
 愉しむのは構わん、狼狩りをしたいのも構わん──だが、仕事は遂行しろ。
 その為に、退き際を見誤るな」

アレウス :
「責任は俺が持つと言った。
 それがある限り、この俺が死ぬようなことはない……無用な心配をする暇があれば、貴様の闘争に身を費やせ」

夏瑞珂 :
「しらない。そんなの、しらない。だってボス帰っちゃったもの」

 地面を睨みつけたまま、つんと言い返す。だって本当だ。この局面で、わたしは誰の代行者であればいい? 誰でもない──わたし自身だ。

夏瑞珂 :
「してない……あなたの心配なんて、してあげない。勝手に死ねばいい。でもわたしの目の前に飛び出してこないで」

アレウス :
「フッ! 減らず口が叩けるのであれば一人前だ。
 案ずるな、貴様を庇ってやるのは一度切りだ」

アレウス :
「そのツケは、後で"赤の鬼人"に払わせるのだな!」

夏瑞珂 :
このひとはなしきいてる? 指を差して、Aに振り返る。抗議。

“Mr・A” :
「アーすまない流石に取り込み中で───」

SYSTEM :
..        いのち
 翻した二言と共に断片が欠片も残さず消し飛ぶ。
 恐らく余裕があってもAは想定し得る限りで同じ内容を口にしただろう。“聞いてるからそうなんじゃないか”と、心底から無責任に。

SYSTEM :
 …瞬きのうちに走る雷霆、その本懐となるひと太刀。
 致命と根幹たるを見抜いた古強者の判断は、確かに、凍えるほどに正確だった。

SYSTEM :
 時としてオーヴァードにとって、
 命と兵器の優先順位は逆転する。

 彼らにとっての命は精神の死であり。精神が保つ、または不可逆となり得るほどの致命的損傷を越えない段階において…。
 ・・・・・
 肉体の破壊などは、短期的に限って一切のリスクがない。

SYSTEM :
 だがそれは生物である以上、死を本能が恐れないこともなく。
 耐え難い精神的ダメージがあり、それこそが長期の疵となる───故に。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『…先の言葉を訂正するわ。
 傾奇者はそこの鼠一人でもなかったようね、おじさま───』

SYSTEM :

 死に対する徹底の備えこそが、
 無謀を現実にした。
 
 文字通り手足たるガンドルフの緊急蘇生システムまで備えた、
 オーヴァードならではの闘い。
 懐刀の一振りを抑え込むのに、アレウスがその代価を“高い”と踏んだか“安い”と見たのか。どちらでも、まあ構わないが。

“不朽讃えし懐刀” :
「ッグ───ゥゥウウ!」

SYSTEM :
 ・・・・・・ ・・・・・
 その間合いで、足を止めたことは。致命的な間隙だ。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
   ・・
『───阻め!』

SYSTEM :
 それを傍観席のさらに外周から分かっている青の貴人が、先程からずっと自分のメッセンジャー代わりにしているチルドレン以外を操った。
 生き残りの数少ない二、三体。それが、一呼吸遅れて彼女のカバーに入ろうとする。

SYSTEM :
 入るまでの間合い、5m未満。コンマ数秒の猶予あらば到達する。
 それは完全に青の貴人が自分の手駒の中で、
 彼女の優先度を高く見積もる証であり、また暴走中の彼女とアレウスを天秤に積もり…。
 ・・
 彼女/自分の庭の一振りをなにより欠けさせないために、目下の排撃に移った証だ。

SYSTEM :
 そしてそれは、数秒と経たず到達する───しかし!

ラーゼス :
「なるほど」
 喧噪の合間、小さな声で素朴に首肯する。

ラーゼス :
 あの悲鳴の炎嵐を風として吹かせるなら、この局面は望ましくない。
 そしてあの狂乱する鎧の女は、貴人がもっとも大切にする駒か。

ラーゼス :
 ────三代前は随分こずるい男だった。彼ならこう言うな。

ラーゼス :
「────大事な駒なら、おれの前に立たせるべきではないぞ」

ラーゼス :
 握った杖──雷を凝らせて穂先を創り上げた『槍』を握り、一歩踏み込む。

 踵が地を叩いた瞬間、石畳が耐えかねたように軋んだ。
 すぐさま剪定鋏によって修復されることには目もくれない──いいや、ひとりでに修復されてゆくものをもう一度踏みしめ、踏み台としながらなお前進する。
 戟尺の距離すら通り越し、その首をまっすぐと狙って。
 腰だめに構えた槍の青い輝きに、ひとかたまり黒が滲んだのはほんの一瞬のこと。

ラーゼス :

 そこにはただ呼吸の隙間を狙う、動物じみた狩りの流儀だけがある。
                ・・
 こちらから意識を逸らした四匹の獲物へ、雷槍が食らいつく。

ラーゼス :
 ────────ROAR!!

 地鳴りのように吼える声はまぎれもなく獣のものだった。
 おのれの存在を誇示するように叫んだようにも聞こえるものは、凝縮された音律。遅れて、槍の纏う杖に硬い雷を纏わせる音。

ラーゼス :
 同時に迸った槍の横薙ぎに技巧などはない。
 頼りなくすらある獲物がただ振り払われただけだ。
 ただそれが、破滅的なほどの獣の膂力で行われたことを除けば。

SYSTEM :
 ………細められたまなざしを伴う稲光が、このように、女の悪手を裁断する。
 否、たかが数秒の分水嶺に過ぎず。そこにいたものが違えば、これは悪手と罵倒されることもなかっただろうに。

SYSTEM :
 涼やかな女の声というのに、響く音には確かな重圧があった。
 根こそぎ命を絶ち貪るものを狼とするならば、
 縄張りに踏み込み、敵と定めたものの喉笛を抑え込み食い千切らんとするそれは、獅子だ。

 間合いに入ったならば、生かして返さぬ。

SYSTEM :
 雷槍は女王の指先を容易く拒み。
 その刹那、狂える刃と暴虐の一振りが交差する。

SYSTEM :
 稲妻がふたつ迸る。王の剛腕が、淀みに浸かる不届き者を裂かんとした。

 あるいは女王の懐刀に、曇り掛かって見えぬ“技”が伴うならば。
 それは先手を取られずまともな勝負になったかもしれないが………。

“黄の希人”アーキル :
「(技───ですらないか!
  ・・・・・
  ただ振っただけだ、見た目以上によくもまァ───)」

“不朽讃えし懐刀” :
「ッグ───ォ、オオオオ………!!」

“不朽讃えし懐刀” :
「───ガ、ァッ………!?」

SYSTEM :
 ただの膂力同士の激突になってしまえば…。

 その細腕が適う道理はない。
 勝負は一瞬、誰もが見込んだとおりになった。切り返す術もなければ、仕切り直す暇もない。流れるように、得物と装甲ごと“不朽讃えし懐刀”が弾き飛ばされる。

SYSTEM :
 それは致命傷だ。
 一文字に刻まれた、まぼろしの狂気を祓う一振りは、戦士を容易く制圧した。

 …しかし、まだ息のある状態ではある。
 そうもなれば、“青の貴人”の判断はすぐさま切り替わった。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『いいえ、ここまで保てば───』

SYSTEM :
 規格外のオルクスの領域が、
 己が剣を、働きの報いとして”包む”よりも遥か早く。

 その致命に対して、三つ目の稲妻が轟いた。
 稲妻、いいやそれは───。

”黒鉄の狼” :


『間抜けが』

”黒鉄の狼” :


『───敗け犬に、次があると思うか』

”黒鉄の狼” :

■オート:狂える餓狼の颶風
Auto:《ワールウィンド.L3+1》《加速する刻II.L2》
・イニシアチブプロセスにメインプロセスを行う。
・「行動済み」でも宣言でき、行動済みにならない。
・指定した対象(条件:戦闘不能のキャラクター)の下に移動し、
 当該イニシアチブプロセス終了後に再度、元の位置に戻る。 

”黒鉄の狼” :

【Check!】
 以下のEロイスの所持が検出されました。

Eロイス:敗者死すべし
 所有者:“黒鉄の狼”


”黒鉄の狼” :

■メイン:狂える餓狼の颶風
Major:《かまいたち.L1》
Target:“不朽讃えし懐刀”
・トドメを刺す。

SYSTEM :


 決した勝負に。
さだめ
 死が、向こうから這いずった。

SYSTEM :
 アノニマス
 不特定多数の命を刈り取る最中(既に十七体が跡形もなく裂き消えている)、
 朽ち果てるものの無為なあがきのにおいに対し、彼と呼ぶべき人物はひどく辛辣だった。

“不朽讃えし懐刀” :
「………」

“不朽讃えし懐刀” :
「ティー───」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『─────!』

SYSTEM :
 当事者であり傍観者でもある女の、達観に入り混じった息を呑む音。
 実際に耳に響くほど大きい音ではないが、それは幻聴というには実態を伴いすぎていた。

SYSTEM :
 そして。

 それを阿る理由など生まれてこの方、狼にありはしない。

SYSTEM :
 鋼色が未練をなぞると共に、嵐ですらないものが彼女を貪り喰らった。
 跡形も残さず、影一つとて許さず。
 ………それは蹄であり、顎であり、尾であり眼光であった。 

SYSTEM :
 赤の鬼人の戦意を叩き折り、“Mr・A”の命を貪り喰らう斬撃は、戦技だ。
 それは技と呼ぶにはあまりにも遠く、あまりにも儀礼というものに欠け。
 生命が生きるための活路を開く行いの延長線を技というなら、彼が振るうことはあまりにも“ずれ”ていたが、技だった。

 ………ならば。

SYSTEM :
 時を軋ませるその眼が、
 人のかたちをした怪物が。
 何よりも優先し、食い散らすように振るったそれは。もう、技などではない。

SYSTEM :
 死すべき理由を前に、
       ゆえ
 彼を進ませる理由が見込んで、ただ無感動にそうした。
                      オーバーロード
 掲げられた火と熱を、捻じ伏せるように喰らい貪る制圧者。
 戦場のあらゆる全てを叩きのめし、登頂を目指しながら、善悪等しく幕引く牙。
 
 そのひと睨みが、戦場で果てるものを呑み込んだ。
 塵のひとつも残さず分解されたレネゲイドが、咆哮にも似た一振りが起こす黒い風に呑まれて還る。
 だが、それは空とか地とか、そういうものではない。

SYSTEM :
 黒い風が意志を持ち、人の姿をした死のもとに集まった。
 残滓が擦り切れるような音と共に粉微塵になり、“黒鉄の狼”の喉を通るが如く集っては消えていく。

”黒鉄の狼” :
『下らぬ腐臭がしたかと思えば。
 フン…。疾うに敗者だったのか、この女』

”黒鉄の狼” :
 ゆえ
『理由さえ己では持てぬ腑抜けが。
 だが貴様に預けられた其れのみは、喰いでがある………』

”黒鉄の狼” :


『 糧 と な れ 』

SYSTEM :
【Check!】
 以下のEロイス&エフェクトの所持が検出されました。

Eロイス:ありえざる存在:メンタルインベイション
Eエフェクト:異能の継承
   所有者:“黒鉄の狼”

『死亡』させたNPCに対してのみ発動し、下記のプロセスを経緯する。
1:NPCの死亡直前に『異能の継承』で「異能の継承」を獲得させる。
2:獲得させた対象にEロイス「ありえざる存在:メンタルインベイション」を発動する。
3:獲得させた対象から『異能の継承』を状況に応じ、発動できる限り宣言させて自身が獲得する。


SYSTEM :
【Check!】
 以下のエフェクトを“黒鉄の狼”が獲得します。

・雷光撃.Lv1
・アタックプログラム.Lv5
・クレイジードライブ.Lv5


SYSTEM :
    いみ    ゆえ
 喰らう価値あらば、理由あらば、

 彼方で、此方で、灯る戦いの火の持ち主に、
 優れたるを認めたならば。
 狩ると定めた餌は、狼は必ず食い千切る。

SYSTEM :
   ・・・・ ・・・・・・
 ───殺すだけ、男は強くなる。

 どこまでも。頂に至るまで。
 それが強く在れる者の業とばかりに。

SYSTEM :
 ───乾いた風の中で、眼が。

 骸を砕いた原因に向いた。

”黒鉄の狼” :
『───そう言えば。
 獣の牙は。久しく貪ったことがない』

”黒鉄の狼” :
『王者の牙となれば、猶更だ…』

SYSTEM :
 見込みに彼はにこりともしなかったが、高揚だけは確かに漂い、しかしそれでも。
 ・・・
 ついでに喰い貪りながらも、視線の矛先は最初から最後まで同じ方に向いている。

”黒鉄の狼” :
『だが、ああ、それより。
 いつまでお預けにしてくれる…。
   ・・・・
 その食い残しを、片付けさせろ───』

ラーゼス :
「────!」

アレウス :
「なんだと!?」

"七花胡" :
「────~~~~ッ……!」

"七花胡" :
「(────冗談も大概にしろ!
  一触れで百薙ぎ払えるくせに、余所で出来上がった死体にまで食らいつく! 挙句の果てに捕食によるエフェクトの獲得だと!?
  狼なんて一体誰が呼んだ、ハイエナじゃないかこんなの……!)」

"七花胡" :
 ちらりと、暴走中のレネゲイドビーイングを視界の端に収める。

「(残る“的”はあともう一つ! だが同じことを繰り返したところで、あれに餌を投げ与えるようなもの。
  隙などと小賢しい策略では埒が明かない、やはり物理的に、一足飛びに、すぐさまこの場を離れなければ……)」

"七花胡" :
「“帝釈天”……! つくづく、貴女の逃げ足を恨みますよ……!」

アレウス :
「バルチャーIIの出力が上がらん! まずったか、こいつは!」

夏瑞珂 :
 目の前で、鋼鉄を纏った女が捕食される。蹂躙と簒奪。敗者の運命はかくあるべきと、一切の容赦なく。

 どす黒い風が嚥下され、狼がわずかに喜悦する。次なる獲物に、期待さえ覗かせて。

夏瑞珂 :
 ただ、その前にわたしだ。狼のくせに、食い残しが片付かないのは気になるらしい。でも今は、そんなのどうだっていい。

夏瑞珂 :
    いみ
"喰らう価値もなくば…。
 ゆえ
 理由にさえ、なりはしない…"

夏瑞珂 :
 では──では、何か?

 喰らう価値さえなかったと?

夏瑞珂 :
 アレックス。アラン。パティ。ジョッシュ。クラーク。

 三年前、あの戦場で……欠片も残らなかった彼らは。

夏瑞珂 :
 敗者ほどの価値すら見出されず、
 真実まったく何の意味さえなく、

 塵も同然に打ち捨てられたのか?

夏瑞珂 :
「殺す。殺してやる」

 毛先に火が灯る。愉しくもないのに唇が歪み、声が上擦った。

 激情にあてられて、唸る風鳴りが次々に燃えていく。整地のため撒かれた靄を、もっと寄越せと貪りながら。

夏瑞珂 :
「おまえの血でわたしの人生を濯いでやる! おまえの骸でわたしの世界を築いてやる! そこを──動くなァッッッ!」

”黒鉄の狼” :
『………吼えるだけの潤いが残っていたのか?
 これから渇くものが無駄に喚く。だがいい徴だ』

”黒鉄の狼” :
『誰の世界とて構わんが…』

”黒鉄の狼” :
『踏み込んだ以上、弱きは死ね。
 強きは我が糧となれ』

”黒鉄の狼” :
..  レムリア
『頂は俺のものだ』

SYSTEM :
 ぎろり、と。
 黄金色の眼光。兜の向こう側の、もはや生物かも疑わしい獣の眼がうごめいた。

 ノドを震わせ、喰らったものより強い相手を求め。
 その足元に無数の屍を築いた伝説が、奇跡の名残たるものに、燎原の火の如く広がる激情の根元が………。ただ宣誓する。

SYSTEM :
 何より悍ましいことあらば、

 そこに不可解から来る嘲りがあっても悪意がないこと。
 壊してやろう、消してやろう、貶めてやろう…そんな邪さがない。

SYSTEM :
 理解の是非以上に、

 優先順位が違い過ぎる。

SYSTEM :
 ───しかし。しかし、だ。

 時間稼ぎの功と退路は見出せた。
 うちひとりにその気が、改めて失せかけたことを差し置いても、だ。

SYSTEM :
 幸いなのは、その僅かな隙間が、考えられる限りあらゆる方向から来たことだ。

 ………そうだろうとも。
 此処まで仰々しく戦の花火を上げ、
 国を揺るがし、危機を仄めかした。

 羅馬はばか騒ぎの中心点であるが、
 その更に中心点。本命がここだ。

SYSTEM :
 ・・・・・・
 何処からとて、
 来ない理由がない。

SYSTEM :
 危機に間に合ったものは二組、二方向。
 レムリア
 “黒鉄の狼”とそもそも戦う発想ではない。

SYSTEM :
 視覚外からの連続狙撃。いや狙撃というには連射の仕方に容赦がない。
 Barrage fire
 間接支援射撃とでもいうか。流れ弾さえも厭わない。

SYSTEM :
 戦闘用VT、特にその中でも特異な多脚戦車タイプ。
 機械化兵用戦闘義体、PSY-FRAMEの使い古された汎用型のオーダーメイドモデル。
 
 そいつが担いだ、有効射程1km以上にも上る超遠距離からの狙撃は、
.                         チャフ
 黒鉄の狼の足元目掛けて放たれた対レネゲイド弾による妨害を伴っている。
 惜しみなく放たれ、色褪せてもなお時代に食らい付ける、怪物狩りの特別品だ。

SYSTEM :
 ………何者だ?
 正体は、七花胡が持つ“飼い馬”からの通信で解決した。

“アセルス・デスミオス” :

『───おほ! 最悪は避けたっぽいわね。
 じゃー大将、返答前から手短に代わんまーす』

“グレイ・スコーピオ” :
   バーンアウト
〈………燃えカス野郎の飼い主だな? あとで伝えておくがいい。
 一度目は赦してやるが手前、俺が貸しを忘れる人間たぁ思うなよ〉

“グレイ・スコーピオ” :
              シク
〈流れ弾に当たったり、逃げ方失敗ったり。
           ブツ              クソ
 この期に及んで此処で遺産に目を晦ませたいなら、手前の不幸と思いな。
 ───以降文句は聞かん、警告終了。よし撃つ〉

SYSTEM :
 もはや警告中にすら容赦のない射撃は、
 おそらく彼自身ほんとうに流れ弾に当たったら今ので哀悼の意を済ませる気満々の台詞だ。

SYSTEM :
 それだけではない。
 既に水平線の向こう側まで根絶やしにされたはずの、雑多な有象無象にお代わりである。

SYSTEM :
 唯一最大の違いは、それが…。

 所謂血で編まれた従者であり、更に言えばその中に、
      イジ
 ずいぶんと改造られたジャームが何体かいることだ。

SYSTEM :
 接近と同時に恐らくボロクズのように消し飛ぶのだろうが、
 彼らが何より執心なのは、現在進行形で二重にお預けを喰らう羽目になった“黒鉄の狼”だ。

 一呼吸分の猶予は、揃ってお優しいことに作ってくれるだろう。

SYSTEM :
 それがあなたたちの味方であるのかは、
 まあ怪しいところであるが…ともかく。

 取り込み先はついさっきの敵。

“血色の探求” :
『───女神の危機に遠隔で失礼仕る』

“血色の探求” :
『ああ、それと“黄の希人”。
 どうものっぴきならん状況だが、蟻地獄の生贄は増やした方がいいのかね』

“黄の希人”アーキル :
「───いや…ここは“まだ”貸し借りナシで行きたいね。
 手助けしろとは言わないが、連中にまで手出しはするな。出来るか?」

“血色の探求” :
『フー…貴君はうんざりするほど可能性に対して吝嗇だな…。
 まあいいだろう。
    サンプル
 貴重な実験体をくれてやる意味があるのに変わりはない…』

“血色の探求” :
    レムリア
『これが“黒鉄の狼”………。
 とても惜しいな。もう少し早ければ、死んでも迷わず飛びついたかもしれん………』

SYSTEM :
 ───で、ひと呼吸と動作の猶予があれば。

 お開きの合図と見て、退路から仕切り直すにはあなたたちなら十分だ。

SYSTEM :
【Check!】

 条件を達成したキャラクターからの『瞬間退場III』が発動します。
(※Mr・Aが前回範囲対象に含まれていませんでしたが、
  基本的にこのNPCも範囲対象となるものとして話を進めます) 

“グレイ・スコーピオ” :
■オート
《瞬間退場III.L1》
使用者:“グレイスコーピオ”
対象者:“帯来风暴”、“死滅天隕”、“七花胡”、“隻獅子”

・シーンから指定したキャラクターと共に退場する。

“血色の探求” :
■オート
《瞬間退場III.L1》
使用者:“血色の探求”
対象者:“帯来风暴”、“死滅天隕”、“七花胡”、“隻獅子”

・シーンから指定したキャラクターと共に退場する。

夏瑞珂 :
 銃声が、滾る火の起爆剤と化した。復讐を、逆襲を、再戦を! 憎しみの火がわたしを焦がすなら、血を以て濯がれるべきだ。

「どけぇッ! 殴られたいのかアバズレが──!」

 勝手に助かれと退路を拓きにきた男と、
 時間稼ぎの肉盾どもを引き連れた何某に怒鳴りつける。

アレウス :
「狂犬が、貴様よく生き残れてきたな!」

アレウス :

「(だが確実に様子はおかしい……一体やつは何者だ!?
  この凶暴性は元来なものとは思えぬ……なにか強烈な体験が、アレを形作っている!
  ちくしょうが、こういうヤツの扱いが上手いウェルギリウスを無理にでも連れてくるんだったな!)」

"七花胡" :
「此方こそ。作った借りを眠って忘れられる性分ではありません。
 必ず返す」
 
 一方的に押し付けられた警告に、返答を返す。
 それから、どうやら生き延びたらしいあの駄馬にも……
 飼い葉桶に遣る餌の、少しくらいは増やしてやることを頭の隅で検討する。

"七花胡" :
 盤面を動かしたのは、“黒鉄の狼”の足下に転がり込んだチャフスモークだった。
 途絶えて久しい通信が復旧したかと思えば、背水にて横柄な声が一方的な警告を押し付けてくる。
 なれど、驚きのあまりせっかくの機会を無為にするほど、愚かではない!

"七花胡" :
 構えたままの天秤杖を即座に仕舞い込みながら、砲火と雑兵の方向を確認する。
 “黒鉄の狼”は今動けない。きっと“狩場”に踏み込んだ闖入者を一つ一つ吟味し、どれが最も食いでのある獲物か見比べている。
 
 あれはさもしい美食家だ。
 いずれすべてを平らげるつもりであっても、きっと其処には“順番”があるはず……

"七花胡" :
「“帯来风暴”、これが最初で最後の警告ですッ!
 一矢報いる前に蜂の巣になりたくないのなら、あれが吟味をしている間に火を抑えなさい!」

"七花胡" :
「────撤退しますよッ!
 ハイエナ風情の胃袋には、死肉と鉛でも詰め込んでおくがよろしい!」

“グレイ・スコーピオ” :
〈…だそうだ。お望みどおりに詰め込む序で、言い捨てていくんだが…〉

“グレイ・スコーピオ” :
〈いまの声と来たら御宅のガキか? 
 大した“けち”の付けられようだが、なにか? 近頃の嵐は親の育ちが悪いのか?〉

“グレイ・スコーピオ” :
〈流れ弾で死ぬ前に言っとくが、俺ぁ阿婆擦れの知り合いはいるが手前が阿婆擦れになった記憶はねェ…。
スラング
 罵倒は正しく使え覚え立て。OK? OKだな。オーバー〉

アレウス :
「親の顔を見てやりてえのは俺も同じだがね……!」

"七花胡" :
「右に同じく。躾をしていいのは自分ちの子供だけですので、此方からは注意いたしかねます」

“グレイ・スコーピオ” :
〈はんッ───そりゃそうだ。
 手前以外の餓鬼に手厚く手間暇かける甘ったれだってんなら参るぞ、俺がマイノリティになる〉

夏瑞珂 :
 FUCK YOU ASS HOLE
「 全員くたばれ! 」

夏瑞珂 :
 もう誰にも邪魔をされてなるものか。死体と鉛のつまった胃袋を引き裂いて、積み上げたすべてを無為にしてやろう。そうだ、それがいい。悪い狼には罰があるべきだ。罰は死であるべきだ。

夏瑞珂 :
 髪が、末端から赤熱する。砂塵に火の粉が混じる。爆ぜるように跳んでいこう。だから──そこをどけ!

ラーゼス :
 状況が変わって猶も荒れ狂う少女の様子はただごとではない。
 幼げな言葉遣いと態度を裏切る凶暴さ。口をつく借り物のような戯言は、まるで自らを握る手綱を失ったようだった。
 彼女を指して「食い残し」と言った“黒鉄の狼”の言葉をみれば──彼女が「こう」なった原因は、間違いなくあの狼なのだろう。

ラーゼス :
 理解はする。納得もした。
 知恵と力を奪われた、みすぼらしい獣の姿を幻視する。

ラーゼス :
 口ぎたなく罵る声の隙間をかいくぐり、彼女の細い身体を担ぎ上げる。
 その毛先に灯った炎が彼女自身を燃やし尽くす前に。
 おのれの多少の火傷を度外視して。

夏瑞珂 :
「っ──!?」

ラーゼス :
 どう言葉をかけるか考える。
 見捨てられるぞ──意味がない。
 このままでは死ぬ──やはり意味がない。

ラーゼス :
         ・
「……できるのか? 娘よ」

夏瑞珂 :
「な、にを……っ」

夏瑞珂 :
「は……な、せっ! はなしてっ!」

夏瑞珂 :
「殺す! あいつを殺すの!」

夏瑞珂 :
「邪魔を、するなら──!」

 熱気が渦をなす。阻むものすべて、焼き捨ててしまえと苛烈に──癇癪を起こすように。

ラーゼス :
「殺す?」
 声が冷え冷えとした響きを帯びる。
 吹きあがる熱気に肌が焼かれるが、それにかまいもしない。

ラーゼス :
「……おまえの人生を濯ぐべき狼の血は、その微温火などたやすく洗い流してしまうぞ?」

ラーゼス :
「策なく食らいつき、何もなせず。狼の糧になるだけで終わりでよいと?」

ラーゼス :
「貴公のつくる貴公の人生とは──それで充たされる安いものなのか?」

夏瑞珂 :
「……る、さいっ」

 声の冷ややかさに挫かれたように、熱が揺らぐ。焦りが勢いを削ぎ、緩やかに霧散を始めた。いやだ、と唇を噛む。

夏瑞珂 :
「人生、なんて……ない」

 失われた名誉と未来の回復は、相手の血を濯ぐことでしか戻らない──裡なる声はわたしに囁く。

 ほんとうは、そんなのどうだってよかった。

夏瑞珂 :
 未来も人生も……
 三年前のあの日、彼らと一緒に亡くなった。もう戻らない。戻らなくてもいい。だけど。

夏瑞珂 :
「……復讐を。代償を、払わせたいだけ」

夏瑞珂 :
「そこに、いるのに」

夏瑞珂 :
「ころせるのに」

夏瑞珂 :
「おねがい……はなして」

ラーゼス :
「────……」

ラーゼス :
 過った感情をどう言葉にすべきかは明確だ。
 ……安い言葉を口にはすまい。あれならそうする。

ラーゼス :
 ・・・・
「殺せない」

ラーゼス :
「おれごときの言葉で冷える熱で、狼を御せると思うな、娘。
 それとも……払うべき代償の名を知るものが野垂れ死にすることが、貴公の『復讐』なのか?」

ラーゼス :
「それならばそれでよい。あの狼へくれてやろう。だが──」

ラーゼス :
「そうでないなら、いまは止せ。おれは貴公の復讐に興味がある」

夏瑞珂 :
 勝てぬ殺せぬと、誰もが言う。だがやるのだとわたしは吼える。
 無茶無謀など知ったことじゃない。憎悪を、欲望を、ここで解き放たなくては収まりがつかない。

夏瑞珂 :
 ああ、だけど──

「……アレックス」

 アラン。パティ。ジョッシュ。クラーク。みんなの名前。価値もないと打ち捨てられた、わたしの大事な──

夏瑞珂 :
 わたしがここで死ねば、あいつは永遠に知らないままなのか。彼らを脆弱いと断じた、その愚かさを。

夏瑞珂 :
「…… ……」

 うなだれた視界が、ふっと暗くなる。うそつきの手袋に覆われて、"黒鉄の狼"の姿が見えなくなった。

夏瑞珂 :
「……ぐ、う……うっ」

 わたしを担ぎあげた彼女の青い布に齧りついて、嗚咽を殺す。悔しくて溢れた涙は、余熱に消えていった。

ラーゼス :
「…………」

ラーゼス :
「よく堪えた」

ラーゼス :
短くねぎらいながら、その身体を担いで踵を返す。薪になったとて、たやすく燃え落ちてしまいそうなほど軽い。

ラーゼス :
「胡。“死滅天隕"」

ラーゼス :
「この娘の気が変わらぬうちだ」

"七花胡" :
「…………」

"七花胡" :
「貴女、ソレ……」

"七花胡" :
本当に抱えていくつもりか?この状況で?命が惜しくはないのか?

アレウス :
「(……あれは重症だな。
  俺ですら戦力としての数えはせん)」

SYSTEM :
 ところで…七花胡に、最初で最後の警告以上の義理はない。
 であれば、彼の駒が彼の躾通り/思惑を一致させてくれる方向で働いた以上…。
 後は残るものを“間抜け”と捨て置き、狼狩りの算段を立てる段階だ。
                ・・
 いやそもそも、狼狩りの最適解を何処で打ち出すのかと言ってもいいだろう。

SYSTEM :
 この状況だが手放させる方が手間でもある。
 となれば、残るは個人個人。

 うちひとつは“Mr・A”。
 その姿はいつの間にか消え失せている。いや、正確に言うと…。

“Mr・A” :
「───オッ、無茶するねェ…
 立場逆じゃないコレ? ワタシの絵面と尊厳だいじょぶそ?」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「ほんとですがいま捨ててほしいですか!?」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「───すみませんボス、後で!」

SYSTEM :
 砲弾の隙間、従者どもの乱痴騒ぎの数秒を縫って走る影が、戦闘の適正に欠けるものを適材適所と担いだ(その名をプリンセスホールド)。
 すこしも衰えない速度は、驚くべきことにノイマン以外の補正はない。

 で、戦場では軽口叩かない彼女が掴まる心配もない。周りの潮も、こと数秒で引く頃合いだ。

アレウス :
「構わん、さっさといけ」

ラーゼス :
「うん」

ラーゼス :
衒いのない肯定。肩にわずか滲んで熱に干されたものを邪魔しないように駆けだす。

ラーゼス :
「連れていく。この娘に興味が湧いた───」

ラーゼス :
「と、いうことでよいな?」

"七花胡" :
「……随分と大きな掌をお持ちのようだ」

"七花胡" :
「まあいいでしょう。貴女の荷だ、貴女の勝手にするといい」

アレウス :
「フン、どのみち、この場の貴様らの行動に責任を持つといったのはこの俺だ」

アレウス :
「急げよ、俺は後に続く」

 視線がズレる。
 おそらくこの場で最も──被害の大きかった陣営の頭目が、媒介している者へ。

ラーゼス :
「ありがとう。わかっている」

ラーゼス :
「……あのまま無為に死ぬことだけは、どうにも見ていられなくてな」

ラーゼス :
つぶやきを最後に、“死滅天隕"の鋼の体を置いて駆けだす。

アレウス :

 駆けだした獅子の王の背を見ることなく、鋼の頭が"青の貴人"の残されたメッセンジャーに向く。

ガンドルフ[バルチャーII] :
 向けられていた光槍ライフルの銃口に光が灯される。
 だが、それが真正面に向くことはなく──ただ煤けた空のもとに一筋の光を吐き出すに終わる。

アレウス :

「餞別だ。
 自分の部下の死は堪えるだろうが──お前もその椅子に座るのなら、後で弔ってやれ」

アレウス :
「また会おう、ティーラ。
 どうやら俺は、お前にも、ボスにも、あの男にも、ケリをつけてやらねばならんようだからな」

ガンドルフ[バルチャーII] :

 ガンドルフが、自身の脚部にドッキングした飛行ユニット"バルチャーII"の援けを受け、浮かび上がる。
 そして引き起こされた渾沌の影に消えゆく前、そのモノ・アイが何度か明滅し──……

ガンドルフ[バルチャーII] :

《・-・・・ --- -・・・ ・-・・ --・ ・--- -・- ---・- --- -・ ---- ・・-・・ -・・・ ・-・ ・-》

ガンドルフ[バルチャーII] :

 静かにその明滅で何かを伝えた後。
 機械仕掛けの"いるか"が、火薬にまみれた陸の海を跳びあがる。

SYSTEM :
 いまや白く荒む空に、感傷が撃ち出される。
 いや、それは撤退信号か。
 答えこそ口にしたが、真相を語る気の毛頭ない男のことだ。

 果たしてまこと、その餞別を贈るべきものが何であったのかも含めて…。
 誰かが声を掛け得る余地はない。いや。

 真相の名が伝わったものだけが、顔も見えぬ彼方で薄らと笑う。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『───ばかね、おじさま。
 それはもう済んだことなの…』

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
『お父様だってもう、いないわ───』

SYSTEM :
.いちぶ
 部下を食い荒らされた女の言葉にしては、不吉さと達観を帯びていた。
 ………それは自らの庭に踏み込んだものに対する敵意の類ではなく。また、殺意と呼ぶべきものなのかも怪しい。

SYSTEM :
 それは繰り返すが最初から伴っている。
 また、やり場のない怒りにも似た感情ではない。

 ───そこにあるのは、齢19の人間が持ってはならない感情だけだ。

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 そして、唯一助けが間に合わなかった………いや。
 助けで失われるものと残るチルドレンを天秤にかけたがため、
    ・・・・
 扶けに来させず、結果。跡形もなくなった貴人の守り人たちの亡骸がある。

SYSTEM :
 それを、喰らうことなく踏み付けてチリにしたものが。

 此度の乱痴騒ぎ、最大の目玉を手に取った。 

SYSTEM :
              ・・
 そもそも三首領の邂逅理由はソレだ。

 これだけの争いに巻き込まれても、もはや原型ないほど砕け散った輸送車の瓦礫から、ひと掘りで抉り出すように見つかったもの………。

”黒鉄の狼” :
『───火の源はコレか。
.    レムリア
 面白い。俺を畏れず、いざなう気だったとは…』

SYSTEM :
 白い羽を思わせ、掴めば砕けてしまいそうなか細い杖にも似たもの。
 迸る雷霆と馴染むレネゲイドを、丁度手に入れたばかりの男は、
 その稲妻を砕かんばかりに握り締めながら……己がものとした。 

SYSTEM :
 そこに宿るレネゲイドの僅かな蠢きに、
 鎧う黒鉄越しの眼が、金色に煌めいた。
 獲物を定め、また一禍に奮い立つ、只管に闘争を繰り返す怪物の所作だ。

”黒鉄の狼” :
『いいだろう………。戦いのにおいだ。まだ続く。
 ならばこの羅馬。確かに平らにしてくれる』

”黒鉄の狼” :
 ゆえ.レムリア
『理由が俺に牙を剥かんとするのだ………。
 さあ、』

SYSTEM :


 ───遺産が、狼のノドを通った。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :

 シーンが終了しました。
 ロイスの取得等ございますか?

ラーゼス :
“帯来风暴”に、P同情/○N憐憫で取得する。気の毒な娘だ

GM :
 畏まりました。ではキャラシートにご記入を忘れずお願いします。

ラーゼス :
記入した。ありがとう

夏瑞珂 :
ライオンちゃんに好奇心/〇恥辱

夏瑞珂 :
おじさまは……有為/〇脅威

アレウス :
光栄と受け取っておこう。

GM :
 こちらも、のちのPC間ロイスの先行、そして新規というわけですね。畏まりました。

GM :
 キャラシートにご記入を忘れずお願いします。

夏瑞珂 :
ん……。

GM :
残るおふた方は如何になさいますか?

アレウス :
“黄の希人”に取得するとしよう。
好奇心/〇不快感だ。

GM :
ほう…こちらに? 畏まりました。

アレウス :
ああ、それで頼む。俺は先行はよしておくとしよう。

"七花胡" :
……では、自分も。PC間ロイスの先行と言う形にはなりますが、“隻獅子”に○有為/厭気でロイスを取得します。

GM :
ほう、ほう…

GM :
畏まりました。キャラシートにご記入を忘れずお願いします。

"七花胡" :
承知しました。

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。


・シーン6「Farsa-欲望の徒よ(2)」

SYSTEM :
【シーン:OP/Farsa-欲望の徒よ(2)】

 登場PC:アレウス(※全員推奨)
 登場侵蝕:なし

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
S1d3  (1D3) > 3

SYSTEM :
        【 Now Loading... 】
  グレイスコーピオ
『神に仇名す毒蠍』。
『リグ・ヒンサー』の雇われ兵。
 利己的に戦いをつとめ、現実を弁える、清々しき歴戦の凡夫。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
              バッカーノ
 ───かくして、一夜の盛大なばか騒ぎは一時お開きだ。

SYSTEM :
 根付くUGNがおらず、潜入の余地も少ない今、
 これらの騒ぎを片付けるのは、それぞれの現代社会に寄生する利益から算出し、
 FH自身が他でもなく尻を拭く現状となるだろう。

 特に、そのケが強い“貴人の庭”は、周囲の見立て通り間違いなくそうする。
 暫くローマを彷徨する怪物の処置も含めて。
 追って来るかどうかは賭けに等しいが、その気配はなかった。そこからは、めでたく(?)仕切り直しの様相を醸し出すことになるだろう。

SYSTEM :
 しかしそれよりも、まずは、だ。
 撤退したあなたたちを迎えるように、それぞれに見知った顔がひとつ/ふたつ。

“アセルス・デスミオス” :
「よっす」

“アセルス・デスミオス” :
「お嬢さんもエスコートおつかr………。

 え、なに、新しいコ? やだーティーンって感じィ。
 おっさん的には見ないタイプの感じがして心底新鮮───」

“Mr・A” :
「ところでお初めましての方
             ユメ
 見ないタイプの感じとして彼女クンは?」

“アセルス・デスミオス” :
「このタイプ一度手ェ出すとケツ四つに割るからいいよ 未成年だし」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「次たわけたこと言ったら本当に四つに割って餌にしますからね」

SYSTEM :
 刹那的アホと愉快犯的アホと相対的座学のアホである。

 彼らとて一息の気配を察知しなければ、
 迎えがてらこんな態度はとらない。言い換えればいまは安全と書いてグリーンだ。

アレウス :
「喧しい。
 誰の飼い犬だ? コイツは」

 コ イ ツ の 事
 “アセルス・デスミオス"。

"七花胡" :
「嗚呼、うちの駄馬がなんとも失敬を……」ヨヨヨ

"七花胡" :
「四つに割ってくださって結構ですよ。手綱を引いても引いても、これの浮気性は直らないもので」
 飼い葉桶に餌を増やしてやるのもやぶさかでもないと思ったが、前言撤回である。

夏瑞珂 :
「…… ……」

 背負われたまま肩にくっつけていた額を、ゆらりと持ち上げる。しげしげと眺めること十数秒。

夏瑞珂 :
「サングラスないからだめ」

 赤くなった鼻をすんと鳴らして、額を元の位置に戻す。

“アセルス・デスミオス” :
「そんなー」

SYSTEM :
 主要因があるなら間違いなく今さっきの言動であるし、にべもなく振られた/フッたのは正解であろう。

"七花胡" :
 あるならいいのか?と自分の服装を思い返したが、まあ、気疲れの末の妄言だろう。流す。

アレウス :
「なるほど、軽薄ゆえのじゃじゃ馬か」

“アセルス・デスミオス” :
「御宅初対面のしがないおっさんにバカクソ失礼だと思わないの? 一途よ?」

アレウス :
「飼い主から許可が出ているのなら仕方がない。
 ミクサ、次は得物を抜いていいぞ」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「分かりました じゃあ次は警告抜きで行きます」

"七花胡" :
「数秒前の自分の発言を聞き直すがよろしい」弁護人なし

SYSTEM :
 まさに針の筵である。

アレウス :
「シアは……、……」

アレウス :
「……すまんが、そのままで頼めるか?」
 何かを口にしようとして断念し、ラーゼスの方へ。

ラーゼス :
「かまわない。軽い娘だ」

ラーゼス :
「……肉も足りない。食事はしているのか?」

アレウス :
 こいつもこいつでどこかズレているな……?

"七花胡" :
「そんなに気になるなら後で食わせて差し上げては?」

"七花胡" :
 いやがるでしょうけれど。

夏瑞珂 :
「いらない。煤と灰の味しかしないから」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「…。思った以上にナニゴトかありました?」

アレウス :
「だそうだ。ガンパウダーがスパイスにならない時代はお気楽なもんだ」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「あとボス、それ頷くのウチでもマイノリティです」

ラーゼス :
…………火薬を飯とするものがいるのか?

アレウス :
「それもそうだ。ガキの頃から戦争で飯を食っている人間は少ない」

アレウス :
「何事かと言われれば何事ではある。
 事がそう単純でなくなってきたことも含めてな」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「じゃ5年くらい経てば馴れるのかなあ………」

 あとすみません
 彼女からいま誤解がオーバーランした音がしますね

アレウス :
 俺はそこまで責任は持てない。

"七花胡" :
ああ、あー…… ひとまず話を先に 誤解は後でまとめて解きましょう 増えるごとにやっていたらきりがなさそうですから

SYSTEM :
 コトがそうシンプルには行かなくなった、という話はもっともだ。

 ただ、派手な騒ぎの横で敵と定めたものを殴り倒して遺産を奪る───という、祭り騒ぎで終わってくれる話ではない。

SYSTEM :
 ひとまず話を先に。

 その所作と共に話題を切り出したのは、
 当事者側の、別の意味の被害者筆頭。

“Mr・A” :
「尤もだ。お陰で素敵にヒドイ蛇の目だった。しかし…」

“Mr・A” :
「計らったようなタイミングだったネエ、そちらのロバさん。ということは…」

“アセルス・デスミオス” :
「いやそれがね? 語るも長い、話すも長いことがありまして」

"七花胡" :
「手短に」

夏瑞珂 :
「ぐう」長くて寝た

“アセルス・デスミオス” :
「おっさんの『天下分け目の超決戦』パート(30分2部構成)も?」

“アセルス・デスミオス” :
待って会話実行から1秒未満

"七花胡" :
「二度言わせるつもりですか?」

ガンドルフ[バルチャーII] :
ピー

ガンドルフ[バルチャーII] :
《15分・Aパートで充分と推定》

“アセルス・デスミオス” :
「こっちはこっちで会心の作を没にしてくるんすけどォ!」

“アセルス・デスミオス” :
 ンモーしょうがねえなあ分かりましたよブツブツ…

"七花胡" :
「15分も付き合ってくれるだけ優しいと思いなさい」自分は付き合いませんけど

ラーゼス :
大真面目に聞く姿勢を見せている

“アセルス・デスミオス” :
私の味方は貴女だけだ(人が変わったような声)

"七花胡" :
オイ

ガンドルフ[バルチャーII] :
《欺瞞》

“アセルス・デスミオス” :
「じゃ省略して話すんだけどさ、」

 男は“やられる”可能性を察知して押し流した。

“アセルス・デスミオス” :
「………たぶんそっちのPF兄ちゃんの知り合いよね、このねーちゃん?」

SYSTEM :
 かつ、かつ、と。
 靴音が鳴る。

 それぞれに見知った顔の揃いとして見た場合、
 ・・・
 ふたつ/アレウスの方に馴染みのある顔だ。

SYSTEM :
 留守を任せていた人物のシンドロームは覚えているだろうか?
 ブラックドッグ ノイマン      バロール
 電磁操作、思考拡張、そして重力操作だ。

“血穢の蓮花”盧秋華 :
. ハァイ
「你好你好」

“血穢の蓮花”盧秋華 :
「ご無沙汰ボス。
 留守であることないこと話してたA君が、目の前で消し飛んだから 来ちゃった」

アレウス :
「なんだ、来ていたのか。
 真面目に留守をするよりは祭りに出てくるだろうと踏んでいたが……」

SYSTEM :
 軽く片手を上げて挨拶。

 元々真面目な性分だが、それ以上にちょっとエゴイストなタイプでもある。
 留守番はどうしたのだろうと聞けば悪びれもなく答えるだろう。“押し付けた”だ。

“血穢の蓮花”盧秋華 :
「そっちの人のおともだちです。
  ブラックロータス  ルー
 “血穢の蓮花”でも盧でもどっちでもいいわ。それより、」

“アセルス・デスミオス” :
     ね  ー  ち  ゃ  ん
「で、このノイマン特有の喋り方する女がいきなり押しかけてきて火急の報って言ったでしょ?
 急遽の現場判断…ちょっと探ったらドンピシャだ」

“アセルス・デスミオス” :
「んで、そっちのコ…ユメチャン? がやり合っていたトコじゃ、話聞いて相手は即Uターン。
    ガンナー
 残ってた射手に声かける部分まで、後は流れよ」

“アセルス・デスミオス” :
「おっさん、路頭に迷うのは御免だからね。ま、ちょっとセコいことはしたけど……。そんで、」

“アセルス・デスミオス” :
「大将込みで御宅ら何とドンパチやってたの?
 ガッズィーラ?」

夏瑞珂 :
「…… ……」

"七花胡" :
「まあ……。……そうですかね……」
 ゴジラの新作映画が出たときに騒いでいたチルドレンたちの話を総合すると、似たようなもんか……

アレウス :
「間違いとも言い切れん」

“アセルス・デスミオス” :
向けられる視線から“今度迂闊なことを言ったら口を縫い合わすぞ”みたいな空気感じるんですけど

"七花胡" :
 レムリア
「“黒鉄の狼”」

"七花胡" :
「三陣営の乱痴気騒ぎのさなか、介入してきた者の通称です。
 オーヴァードと見るや見境なし。殺し、食らい、奪うもの……。
 一触れで百を薙ぐ、あれはもはや『災害級』と言っても良いでしょう」

夏瑞珂 :
むっとした顔で肩をかじる。

"七花胡" :
 肩をかじられている“隻獅子”を一瞥、その背中の小娘を一瞥。
 戻す。

"七花胡" :
「あれによって、“貴人の庭”の懐刀が殺られました。その他、数えきれないほどの被害が多数。
 その直後に入った撤退支援により、辛くも脱出……といったところです」

"七花胡" :
「『ドンパチやってた』というのも適切ではない。
 『眼前に晒されていた』という方が正しい。

 ……あの“赤の鬼人”でさえ傷をつけられなかったと言えば、現場におらずとも凄まじさは理解できるでしょう」

"七花胡" :
 その“赤の鬼人”にしても、“黒鉄の狼”を引きずり出すためにあの場を御膳立てした可能性がある。というのは今は口には出すまいが……。
 遺産を巡り、どうにも避けては通れなさそうな「脅威」への認識を共有するため、所感を隠し立てすることなく口にした。

“アセルス・デスミオス” :
     マジ
「…ああ、本気なのね例の都市伝説………。
 広まらないのはアレか? 目撃者だいたい腹ん中ないし野晒しってこと?」

SYSTEM :
 肩を竦めるくたびれた男の様子と、ほんの一度興味を乗せたようでいて、特に気にも留めていない女の顔。
 
 戦場の伝説から眉唾物まで、“黒鉄の狼”に関する情報は多々ある。
 少なくとも、名の広がらなさは喰らい方の容赦のなさか、あるいは別の何かか。
 避けられぬ脅威であることは確かだ。そしてそれは同時に───。

“Mr・A” :
「ああマジだとも。ボスはご覧の有様お陰様!
 命だけは取り留めたと言ってもいいかナ。残りの、特に“貴人の庭”は大わらわだろう………」

“Mr・A” :
「聞いた感じではワンマンみたいだから、矛一本もいだ程度じゃ経営変わらないかもだけどね。

 あの場に送り込んでいた彼女はおそらく一番信用のおけるカードだ。
 失くしたなら、相応に打ち手を変えないといけない」

SYSTEM :
 それは例えばあの場で、“帝釈天”の言葉を借りるなら、恐らく根幹/少なくとも一端程度ではない扱いのRBを守るため、即座に所属勢力のオーヴァードが助力しに来たのと同じだ。

 こんな序盤で失うことを想定した駒ではなかった。そして、その結果が何を齎すかは想像に難くないが、言えることはひとつある。

“アセルス・デスミオス” :
「なら現場のFHの判断は二択っしょ。

 割に合わないと放り捨てるか、追い掛けられると困るから殺すかだ。しかも…」

“アセルス・デスミオス” :
「…元々遺産探しの最中でしょ?
 レムリア
 黒鉄の狼の目的が戦い大好きクンで、ちょっと頭が回るなら、………遺産入手の報告がこの夜中になけりゃ、実は自分で掴んじゃったりしててもおかしかぁない。
 ・・・・・・・・・・・・
 脅威がゴールとくっついた、みたいな状況も考えられるワケね」

SYSTEM :
 .レムリア
 “黒鉄の狼”の動機は見てわかるとおりだ。

 何かを廻る争いなことに勘付ける程度に頭が回るのであれば、それを掴むことにリスクがない。
 殴って来るなら良し、殴り返す気もないなら自ら出向いて片端から叩き潰す───そういう荒唐無稽を選択肢に“出来る”生き物のように聞こえた、と。ハチの死体が、賢しくあなたの“それを脅威と伝えたい”言葉を翻訳した。
 また、利用の仕方も。

アレウス :
「くく、楽観的だな」

アレウス :
「仮にそうだとしたら、目下最大の脅威のレベルは跳ね上がる。
 うちには遺産をコレクションする変態が居るが、遺産というモノは手にしたヤツの力を大きく増幅させるという」

アレウス :
「あの時点で既に俺達には、明確なオーヴァードとしての”性能差"がある。
 それが本当になったら、果たして斃せるような怪物のままでいてくれるもんかね」

“血穢の蓮花”盧秋華 :
「彼女、せっかく手に入れたモノは使えばいいのにね」

アレウス :
「眺めてるのが良いらしい」

“アセルス・デスミオス” :
「お待ちなさい 一度の発言で二つツッコミどころ作った?」

アレウス :
「気にするな。この世界では儘ある事だ。
 色物のようなコスチュームを好み過ぎる阿呆もいる」

 風のうわさに聞いた女中服の傭兵など。

“アセルス・デスミオス” :
「わかった おっさん理解の外側にあるものについてはお祈りメールして終わらせることにしてるから…」

夏瑞珂 :
話が進まないのでがじがじしている。

"七花胡" :
(ずっと齧ってるな、この小娘……)涎塗れの肩をチラ見

アレウス :
「大丈夫かね、躾がなってないようでな」

ラーゼス :
生地は傷つけない程度にしてほしい 贈り主に嘆かれそうだからな

ラーゼス :
「仔にはよくあることだろう。気にせずともよい」

アレウス :
「そうか、寛大で助かる。
 さて、話の腰を折ったな」

アレウス :
「"七花胡"、貴様の所感は?」

"七花胡" :
「そこの駄馬が示した通りです。この場は最悪の想定をしておくべきだ────遺産は“黒鉄の狼”が所持している、とね。
 情勢を利用するという知性があれに少しでも残っているのなら、手にした遺産は餌として活用されることでしょう。
 あるいは、既に其処に宿る力ごと、自分の糧にしてしまっている可能性も高い」

"七花胡" :
「よしんば遺産に見向きもしていなかったとしても────無視するわけにはいかないでしょう。
 あれを差し置いて目の前の雑草にばかり目を取られた結果、自分ごと刈り取られて腹の中、なんて目も当てられませんから」

"七花胡" :
「ゆえに。
 どうあれ、“黒鉄の狼”は殺すべきだと自分は考えます。
 未だ、その算段がまるで付かぬ状況ではあろうとも」

"七花胡" :
 “黒鉄の狼”をこの国で仕留められなかった場合のことを考える。
 奴は国境を越え、海を越え、そしていずれ必ず日本に辿り着くだろう。そうなれば、自分の庭とて無事では済まないかもしれない。
 そして自分は、庭師として、その可能性をたとえほんの少しであろうと、残しておくわけにはいかないのだ。

 余所の庭がどうなったって構わない。
 この連中の腹が憎悪や使命、何に満たされていて/何に飢えていようが、そんなことは知ったことではない。
 総意をまとめる顔をして、どうにかしてこの連中を、自分の庭を守るための尖兵としてやる。

"七花胡" :
「この場の総意はそれで一致と考えますが……
 何かご意見ある方?」

アレウス :
「俺はヤツの命など、至極どうでもいい。
 が──……」

 ヤツが暴れて他が死のうがどうでもいい。
 強さを求めてコードウェルを殺してくれるのであれば、それで構わない。
 ヤツの命など、本当にどうでもいい。

 だがピンポイントで「話の誘導」を完遂させられる前に自らの思考で楔を打つ。
 この場を支配されるわけにはいかんからだ。

 視線が──仮の部下へ一瞬、向く。

夏瑞珂 :
「殺すわ。必ず」

 唇を舐め、犬歯を覗かせて笑う。

夏瑞珂 :
「遺産を獲られたなら好都合」

夏瑞珂 :
     うば
「次は私が簒奪う番。あいつの手に入れたものを、目の前でもいでやる。皮膚を剥がすみたいに。羽根を毟るみたいに」

アレウス :
「だそうだ」

“Mr・A” :
「ハ ハ ハ。
 姿勢がレディの負んぶじゃないなら、
 中々に堂の入った宣言だ」

“Mr・A” :
「ただまあ…ンー…そうだねェ…」

“Mr・A” :
「彼、いまのところ二人に御執心じゃない?
  アスラ
 “赤の鬼人”と………キミだ」

SYSTEM :
 水を向けたその時鳴った音を、アレウスは知っている。
 仮面がかたかたと揺れる音は、何かしらを彼が楽しんでいる合図だ。 

“Mr・A” :
「大きい小さい関係ない。倒したものが呼吸してるのが許せないクチだ。
 インタビュー
 敗者の弁が嫌いっぽいね、勿体ない」

アレウス :
「あぁ──そうみたいだな? マナーのなってない狗だ、アレは」

“Mr・A” :
 アスラ
「“赤の鬼人”がソレを分かっている性格なら、ローマから逃げ出せない。少なくとも放置はないだろう。
 …もっとも追い掛けられると分かっていて、震えて生きる方を択ぶとしたら………」

“Mr・A” :
       インダラヤ
「それだったら“帝釈天”が乗っ取っていたりして! ハ ハ ハ !」

SYSTEM :
 ひとしきり笑った後、彼は言葉を変えた。
.    レムリア
 実際、“黒鉄の狼”に狙われた側としても。何より“七花胡”の見立てならば因縁があり、また打算があると思わしき”赤の鬼人”はローマを離れられない。

 離れるとしたら、それは彼が自分の栄光を自分で捨てて、埃をかぶったみじめな処刑台に上る時だ。

“Mr・A” :
「頭数は揃うだろう。マア、頭数で意味があるのかは知らないけどね」

“Mr・A” :
「それに、他二つについては…」

“アセルス・デスミオス” :
 アウラ・ドミナ
「“貴人の庭”はローマを放り出さないよ」

“アセルス・デスミオス” :
 ・・・・・
「放り出せるならとっくにやってる」

SYSTEM :
 それはセルを見た第一印象から来る男の断言に等しい言葉だ。
 一切、そのようなものを持たなかった(持つ気がない“はず”だった)男の。

“アセルス・デスミオス” :
「連中が長年ここに築いて来た基盤を手放せるほど頭が柔らかかったら、ま…。
 分かりませんけどね! どう思うねーちゃん」

“血穢の蓮花”盧秋華 :
「…さあ? いま聞いたものを知りましたって言うのも烏滸がましいし。
 でも、彼女たちとは仲良くなれないわね、きっと」

SYSTEM :
 その女は断じて先の経緯を知らないし、
 懐刀の死に憤るような感情を去り際に覗かせていたこともない。
.   ならずもの
 どのみちFHをやっていて、死に憤るなど贅沢だ。死んだ方が悪い。

SYSTEM :
 翻って曰く、弱い方が悪い。心底からの暴論であり、適用された側には幾らでも反論もあろうが。
    FH
 つまり彼女の言う“仲良くなれない”は別のコト。

“血穢の蓮花”盧秋華 :
「ま、私の話だしそれはいいかな。
 大事なのはそっちじゃないわね」

SYSTEM :
 軽くかかった声に、同じ疾患のオーヴァードが応じる。
 三草由芽は元気よく大の大人を突き回していた夏瑞珂のおぶられる様子に、
 軽く横目をやってから、ごくごく自然な声色で答えた。

“逢魔狩り”三草由芽 :
「あー…ええ、そうでした。ボス」

“逢魔狩り”三草由芽 :

 ・・
「どうします?」

SYSTEM :
 どうします、の意味は簡潔である。
 “七花胡”の展望と、それに従うように見えるラーゼスと、更にはここで退く発想のそもそもない瑞珂を除いて、彼らにはこの言葉に二つ意味を持てる。

 一戦分の契約で此処に来たわけだが、結果はこの様子だ。
 仕事の義理は果たしたと見たところで、何ら問題はない。

 そして彼女は拾った気まぐれ以前から、その辺りの思考に緩急がない。
 昨日の約束と今日の敵対をそれはそれ、で片付けられるくらいに。

SYSTEM :
 最終的決断は早いほどいいが、少なくとも今仄めかすのとは別だ。

 彼女は仄めかしたものの中にどれくらい親しい人間がいても、微塵も動きを止めないだろうから。
 それは、あなたの望む方向が何処なのかを聞いているようにも、”七花胡”の握るボードに乗るとしたら何を理由にするかを聞いているようにも見えた。

"七花胡" :
「("帝釈天"の乗っ取り────『我就是天』なんて宣うかは、五分もないですかねえ。
  それをするなら、作ったセルを端から放り出すこともないでしょうし。いえ、それ自体、何かしら思惑があったのかもしれませんけど。

  ……今いない人間の考えよりも、今は“死滅天隕”のセルをどうにか引っ張り込みたいところですが……)」

ラーゼス :
「………」

ラーゼス :
「おれに貴公らの事情ははかりかねるが……」

ラーゼス :
「“貴人の庭”のものは、あるじを『王』と言っていた。王は国に尽くすものだ」

ラーゼス :
「彼女たちにとっての国がこの街なら、捨てることなどあり得ないとおれも感じた。黄色い方、レネゲイドビーイング、の少女にも、似たような感想を覚えたが」

“Mr・A” :
「…アチラかあ。正直ちょっと計りかねているが…フム。
 どうもワタシが図るより”根付く”考え方はキミの方が何倍も聡そうだ」

“Mr・A” :
「そうだね、僭越ながら申し上げると。
 ワタシには彼女、余所者は別の生き物だと思ってるように見えたよ」

“Mr・A” :
「リーダーさんは余所者のまま“価値観”を広げてみたいのかな? 彼は彼で、なんともはや色々打算がありそうだ。
 それが今の状況で何を思うか、までは知らないけど………」

“Mr・A” :
   ・          れきし
 同じ国を見るとしても、その価値観は違うだろう?

SYSTEM :
 もっとも根付くことに縁遠く、血と縁となれ合えない生き物の戯言が。
    れきし
 久遠の価値観と共に根付いて来た王への返答代わりに響く。そんな彼/Aの言葉が、意味のある言葉かどうかは定かでない。

ラーゼス :
「ああ。彼女の在り方には理解が及ぶ。
 若い声だったが、いっぱしの統治者であると──最低でも、そうあろうと努めているようには感じた」

ラーゼス :
「ラシード……いや、“黄の希人”と言うのだったな」

ラーゼス :
「あちらは貴公の言うとおり、真逆のようにも感じる。最低でも指揮を執った“黄の希人”はそうだった。
 根付かないからかき回すのか、根付きたいからかき回すのか、べつの思惑があるのか……いまは判然としないな」

“Mr・A” :
「フム。アチラには逆にワタシの方が詳しそうで───いや、どうかな?」

“Mr・A” :
「…危ない危ない。キミと話すと余計な興味に脱線しそうだ。
 世界を変えたい人間が”根付く気もない”なんてことはない。確かに仰る通りだ。ならそういうのは、流れる風のぬるさか嫌いか、静けさを畏れるかだよ」

“Mr・A” :
「あとは、そうだな…手段を択ぶ贅沢さを知っている顔にも見えない…
 割に合わんと思うなら、そもそも3年も東と西から睨まれてネズミやらんだろうしね」

ラーゼス :
浅く頷き、目を伏せ黙考する。どの勢力をも見定める必要がある以上、多くの視点からの知見を得ることは願ってもない話だ。

夏瑞珂 :
 話の傍ら、ぱたぱたと足を揺らす。
            センテンス
 わたしの頭にはまだ前の話題がこびりついていた。食べ残し。三年前は見向きもしなかったくせ、残り滓は気になるらしい。潔癖なことだ。

夏瑞珂 :
 "赤の鬼人"とわたしは、二度食べ残された。「きさまえいなければ」。あれは、わたしと彼の数少ないであろう一致のひとつ。

 だが彼は敗け、挫けた。あの場では。再起の目はあるのか。

夏瑞珂 :
 ・・・
 お友達をいじめられた鳥のおじさまは、どう出るのだろう? 昔の上司よりも、今の部下のほうが大事なようだけど。

 そして、どういうわけか、そこにはわたしも含まれている。

夏瑞珂 :
 なんでかなんて、しらないけど。
 寝返りを打つみたいに、おぶさった背中のうなじに頬を埋める。しなやかだけど芯のある、たてがみを思わせる感触。

ラーゼス :
くすぐったそうに若干の身じろぎ。

アレウス :
「……」

アレウス :
 ・・・・・
「どうするか?」

アレウス :
 俺は、部下のその問いを聞いた時、すかしたような態度で笑った。
 仕事は既にご破算だ。

アレウス :
 ボスがああなった以上、"帝釈天”を名乗る女狐に対しては一ミリも信用することができない。
 既に喧嘩を売っている以上、テレサとは銃を突きつけあうロシアンルーレットの最中。
 そして──この俺がこの世で最も下らんことをし、最も忌み嫌うことをしている黄色のドブネズミ共も、言うまでもない。

アレウス :
 決まっている。
 こんなときの──俺達、ファルスハーツの在り方など決まっている。

アレウス :
 裏切りの聖人を名乗る、糞のような裏切り者が来てから、その在り方は大きく歪められた。
 テッペンからツマサキに至るまで、俺たちの世界は純粋な暴力に満ちていたはずだったのだ。

アレウス :
 戦いの常識も知らんガキ共が”レイス”を名乗り、下らん未練を引きずる連中が我が物顔で闊歩する。
 そんな、掃き溜めのような世界に付き合わされてうんざりしていたところに、これだ。

アレウス :

「決まってんだろ」

アレウス :
「弱鬼にはツケを払わせ……、
 貴族には鉛を贈り……、
 溝鼠には死を降らせる……」

アレウス :
            ・・・・・・
「俺は、どいつもこいつも気に入らねえ」

アレウス :
「気に入らねえよ、誰も彼も。
 “狼”を名乗る、矜持も知らん、部下を食い残しと蔑むバカのガキ大将もよ。
 なあシア!
 ヤツの首は宣言通り貴様が喰えばいい!」

アレウス :
「だからよォ、ミクサ……。
 そんなの、ハナから決まってんだよ」

アレウス :
「気に入らねえ奴は──全員ぶっ潰して殺すんだよ。
 虐殺じゃない、俺らに砂をかけてきたクズ共全員に、誰に喧嘩を売ったか教えてやるのさ。

 それに意地汚い狼が遺産を喰ってるンなら話が早い、ウチで頂こうじゃないか……”遺物怪盗"は喜ぶぞ?」

アレウス :
「誰がどう動いて、なんの絵図を描いてるかは、それまでの余興だ、調べる価値はあるだろう。
 だが結果だけは既に決めた──全員潰して、喉笛を噛みちぎってくれる」

アレウス :
「それが我々ファントムストークスの方針だ。
 異論あるか?」

“逢魔狩り”三草由芽 :
 ・・・・・
「わかりまし、」

“血穢の蓮花”盧秋華 :
「あーストップ由芽ちゃん。過程の何段飛ばしはケガするからね」

SYSTEM :
 もしも彼女に“けじめをつけさせに行く”と言ったなら、
 その足であなたのかつての上司の元に乗り込む。
 知っていて言ったなら同伴の面倒見の良さを当て込んだか、知らずに行ったならよほど腹に据えかねたのか。

SYSTEM :
 言われた本人は“ぎゅむ”と良く分からない擬音を残して足を止めた。図星だったらしい。
 咳払いのち、テイク2。

“逢魔狩り”三草由芽 :
「わかりました。
 じゃあ順番が決まったら教えて下さい」

“逢魔狩り”三草由芽 :
「それが得意でそれしか出来ません」

SYSTEM :
 必要以上の自己表明と、あとの二人はノーコメントで右に倣え。最初のは宣誓代わりにも見えた。

 そしてそれは、彼らの判断だ。

SYSTEM :
 オブ
 背負られている方と、余所の庭を自分の庭の肥やしにすることを決めた当人と、見定めの最中である流浪の貴種にはまた別である。

ラーゼス :
「(人の流儀だ。人の流儀だが……)」

ラーゼス :
   アウトロー
「(……荒くれものというやつだな。彼らは)」

"七花胡" :
「(これで彼らも狼狩りに参加、と。いやあ心強い♡
  "帝釈天"にはややも問い詰めないといけないことが多々ありますが、彼らの後押しになったのなら……少しくらい甘くしてやらんでもない)」

"七花胡" :
「で? 後ろの小娘にむしゃぶられてる其処の貴女。
 “隻獅子”、貴女も狼の首が欲しかったのではありませんか?」

ラーゼス :
「おれか」

"七花胡" :
「貴女以外にいませんね」延々齧られるままにしているのは

ラーゼス :
なんとなく周囲を見る。

“逢魔狩り”三草由芽 :
「たぶんそれ高いやつですよう 
 齧るのその辺に…」

“逢魔狩り”三草由芽 :
………素面でボケた!

ラーゼス :
「確かにそうだ。おれしかいないらしい」頷く。

夏瑞珂 :
……。

夏瑞珂 :
ちょっと考えて甘噛みし始める。

“逢魔狩り”三草由芽 :
かっ 噛み方の問題なんですかねコレ…?

"七花胡" :
なんなんだ こいつのこの執念

アレウス :
だろうよ。

“アセルス・デスミオス” :
大将 これね

“アセルス・デスミオス” :
おっさん分かるよ ティーンの手持…

SYSTEM :
真相は(甘)噛みのみぞ知る。

"七花胡" :
歯でもかゆいんですかね……

ラーゼス :
毛づくろいか? と獅子は思いなおすに至る…。

ラーゼス :
「狼の首は、たしかに望むところだが……」

ラーゼス :
「殺すべき仇とはすこし違う。
 あの嵐が止むのなら、それは己が手でなくともかまいはしない」

ラーゼス :
「………胡。貴公のことばを借りるなら」

ラーゼス :
 ・・・・
「自分の庭に迫る脅威ゆえ、あれを取り除きたいだけなのだ。おれは」

"七花胡" :
「貴方の庭。……ですか」

"七花胡" :
 その言葉を、自分にとっては命を懸けるに値する言葉を、この国に来て口にしたことはそう多くない。庭師として訪れたわけではないからだ。
 この女と顔を合わせてからの期間であれば、なおさら。

 だというのに、まるで自分の本質を見抜くような言葉選びをするものだから、……驚いた。
 振る舞いはマイペースなのに、目線ばかり本質や美質を掴んでくるそれには、どうにも既視感があった。
 営みを守るものでありながら、その営み自体につぶさに目を掛けるそれは……

 ……切り替える。

"七花胡" :
「……成程。首は『群れ』で獲れればそれでよい、と。
 “お前のものは俺のもの。俺のものは俺のもの”、ですね」

"七花胡" :
「安心しました。後ろのお嬢さんと土壇場で獲り合い。なんてなったら、彼はともかく、自分じゃ止めようありませんから」首を竦める

夏瑞珂 :
「獲り合いができるなら、全員とっくに殺してるわ」

 おぶさったまま、首にぎゅうと抱きつく。手折れそうとは思えなかった。到底。

夏瑞珂 :
「鳥のおじさまは私の願いを叶えると言った。
 ライオンちゃんは私の復讐に興味があると言った。

 あなたはどうしたいの? 蛇のひと」

"七花胡" :
「遺産を手に入れて、お金を稼ぎます。
       ・・・・
 そのお金で、自分の庭が欲しいのですよ」

"七花胡" :
「というのも、自分がローマに来たのも全部、資金集めのためでして。
 最初は勝ち馬に乗って荒稼ぎと思ったのですが、今や期待できそうもありませんし……。
 一番高値で売れるであろう遺産を獲得したい。それさえ手に入れば、“黒鉄の狼”の首を誰が獲ろうと、自分は一向に構わないのですよ」

"七花胡" :
「自分は、復讐を遂げたい貴女と取引がしたいのです。
 貴女は武力を提供し、自分は知恵を提供する────そしてこれは、“隻獅子”と“死滅天隕”、お二人に対しても同じです。

 使えるものは何であろうと使った方がお得。
 誰もが最短距離で辿り着けるのであれば、それが最も天下泰平、ではありませんか?」

夏瑞珂 :
「お庭……?」

 家についてる──バスケットのゴールがあって──垣根で覆われた?

夏瑞珂 :
 ピンときてない顔でじっと見つめ返すこと数秒。
 王は国に尽くすもの、なんてライオンちゃんのとんちんかんを思い出す。彼女が借りた言葉も庭だった。

夏瑞珂 :
 領域、領土か。自分だけの。その線引きがオーヴァードのみに可視化されたものでも、それ以上でも、たしかに莫大な額がかかるだろう。

夏瑞珂 :
「ふうん、そ。あなた、私と取引できると思ってるんだ?」

 望むか否かの手前、そもそもの大前提。可不可の話。
 復讐に煮詰まったあたまに通せる道理があるなら、それもいいだろう。

夏瑞珂 :
「びゅうびゅう吹き荒ぶ嵐を、あなたが手玉に取れるなら。いいわ、使われてあげても」

 できるものなら、と挑発的に。

アレウス :
「取引だと?」

アレウス :

 随分と割に合わぬ取引があったものだ。
 この点、少しばかり"奇妙"に思う点がある。

アレウス :

 数分前、"気に入らないものは全員潰す"という宣言の後。
 "七花胡" の発言は、どことなくこの場を支配しようとする意志──そこまでいかずとも、盤上を少なくとも己の手に収まる範疇にとどめておきたいと思える言動があった。

 それは華人らしい掌握術の一つだ。

アレウス :

 それを思えば……。

アレウス :

 そこまで思索し、一手を打つ度胸の持ち主が、こんな割に合わぬ事ばかり起きる土地に居る意味はない。
 ・・・・・・・
 ただ金が欲しいのであれば幾らでも舞台はある。
 眉唾物のうわさなど幾らでも転がっている。

 単に商機を見出したといっても割に合わない。
 これは"七花胡"の口ぶりと、先の戦闘時の行動が根拠となる。
 奴は直接の戦闘を、自ら行うタイプではなく、人を顎で使う側だ。

アレウス :

 ましてや自前の戦力に等しい存在が──目の前にいる胡散臭い男以外に見当たらない。
 あるいは何か極秘の行動を取らせている可能性もあるが、それはひとまず置いておくとしよう。

 戦力バランスと比較して、そこに不可解な点がある。
 少なくとも、奴はただ金が欲しくてここにいるわけではないと、俺は仮定する。

アレウス :

 最も。
 これは俺個人の、これまでの戦争への歩みや裏社会とのかかわりから紡いだ推論に過ぎない。
 こう見えて、本当にただ"強欲"なだけの可能性も、華人には捨てきれぬのだ。

アレウス :
「フン、いいだろう」

 今は仮定を心のうちにとどめておく。

アレウス :
「だが取引の内容は、貴様がこちらに渡す"知恵"と……。
 俺が貴様に渡す"暴力"、それの一対一の交換までは認めよう」

アレウス :
「だが"遺産"については話は別だ。
 それはその時に決めるとしようじゃないか、互いにな」

アレウス :
「狼の胃の機嫌次第では、溶けてなくなっているかもしれんからな」

“Mr・A” :
「捕らぬ狸の皮算用はしないというコトだネ。さて…」

“Mr・A” :
「モノが入り用なら、手段は他にもある。例えば…羅馬に根を張っているどこかの誰かとか…」

“Mr・A” :
「その辺のどこから餌をちょろまかしているのか定かでもない鼠とか…シノギが一つや二つで効かないような古いギャング集団とか」

SYSTEM :
 彼らのうち、どのような態度をとるのかは、主に最後が“黒鉄の狼”に狙われると分かっている、という部分から逆算するしかない。

 確約するのは少なくとも“羅馬で引き上げることはしない”という部分だけだ。

 とはいえ、基本指針が一致したなら次は細部───追々で済む内容とそうでない内容のどちらかも定かでないが、男が口を開く。

“アセルス・デスミオス” :
    ノゾミ
「各方の欲望はともかく明日が分かりゃ苦労しないよ。…んで」

“アセルス・デスミオス” :
「取引成立っぽい感じなのはいいんですけどね大将。
 じゃあどうする? 塒引き払う?」

SYSTEM :
 “赤の鬼人”がまさかあの顛末から証拠隠滅とばかりに当事者の寝首をかきに来るような、恥も臆面もない盤面を択んで来なければ、基本は杞憂だ。お互いにとって。

SYSTEM :
 ───ことFHにとって同盟とは。
 次の目的の道中までを如何に出し抜くか、に過ぎない。

 まこと全ての無法者がそのように出来ているわけではないが、概ねはそのようになる。

SYSTEM :
 その同盟という名の腹の探り合いの最中に、この仮の連帯の間合いをどうするのか、という判断の是非だ。

ラーゼス :
「………」

ラーゼス :
「(すべてではないのだろうな。
  ただ金が欲しいのなら、雇い主の立ち位置が揺らいだ時点で、このようなところに留まり続ける由もあるまい……)」

ラーゼス :
互いの言葉を呑み込みながら沈思し、視線のみを彼に向ける。

ラーゼス :
「おれも、それは尋ねたい。
 “死滅天隕”と手を組むということは、“赤の鬼人”の客将という立場から多少は遠ざかることにもなるのだろう?」

ラーゼス :
「最低でも、彼の群れ──セル、というのだったな」

ラーゼス :
「それからは、多少の距離を置くことになるはずだ」

夏瑞珂 :
うしろで足をゆらゆら。

“Mr・A” :
「(群れ───つくづく言い方が独特だネエ…)」

アレウス :
「そいつについては、一つ補足をしておくとするか」

"七花胡" :
「と言いますと?」

アレウス :
「俺とて自ら時流を読まずに、ミサイルの一発を肚にブチこむほどイカれちゃいない」

アレウス :
「貴様の言葉を借りるのであれば……だ、"七花胡"。
 使えるものは何であろうと使った方が得なのさ」

アレウス :
「俺が気に入らんと思うのは、俺個人の"感情"に過ぎん。
 だが俺は、兵士でもあった身なのでな──合理さを無視するつもりもない」

夏瑞珂 :
金髪を掬いあげて左右で束にする。

"七花胡" :
一瞥 スルー ツッコミ役にはならないという強い意志

“逢魔狩り”三草由芽 :
「ボス 手遊び始めてますよ夏ちゃんが」

アレウス :
 遊ばれている女と、遊んでいる女に視線が向く。
 問いは遊ばれている方から発せられた。
 では……、

「気が済むならそれで構わんじゃないか。
 嫌ならそこの女が嫌と言うさ」

ラーゼス :
………。

"七花胡" :
微動だにしない……

ラーゼス :
たてがみが軽くなったような気がする

“アセルス・デスミオス” :
この間合いの寛容さのわりに
なんか独特の一線はある気がすんだよねえおっさん的に…

アレウス :
どうやら、いろいろな意味で器は大きいようだ。

アレウス :
「長くなってしまったな。
 結論から言えば、俺達は"リグ・ヒンサー"に対して、まだ宣戦布告をするつもりはない。
 しばらくは──利用されて、利用し続けるつもりだ」

アレウス :
「時と場合に応じて、俺達は俺達の方針で、気に入らんものを潰しにいく。
 そしてそれは、今ではないということだ。

 それで構わんかな?」

夏瑞珂 :
あみあみと三つ編みをつくる。

アレウス :
……先ほどの戦い方からは想像もつかん手先の器用さだな……。

ラーゼス :
興味深そうに編まれていく長髪を見ている…。

アレウス :
こいつ、心が広すぎないか? よほど能天気なのか、それともそういった資質なのか……

“血穢の蓮花”盧秋華 :
大きい生き物なのね 
背に乗せることを苦にも思ってない

ラーゼス :
たしかにこの娘よりはずいぶん大きいだろう

アレウス :
そうではないが……いや、精神の話か……?
そうであれば俺は何も言えん……。

“血穢の蓮花”盧秋華 :
どうかしら? 人の考えは謎よ?
でも一目でわかるのは…。

“血穢の蓮花”盧秋華 :
…背中のコは自分に正直ね?

夏瑞珂 :
 

アレウス :
そういうことにしておいてやろう……

アレウス :
「で、どうだ、"七花胡"。
 俺の補足を受けて、どう応える」

"七花胡" :
つかえるものはつかう
「八面玲珑。
 問題ありません」
 全部の茶番に極力無反応を貫きながら、小さく肯く

"七花胡" :
「“赤の鬼人”の統率に揺らぎが出たところで、このセルは依然“貴人の庭”と真っ向切って渡り合える唯一の勢力です。
 考えなしに三行半を叩きつければ、余計な面倒が増える。“赤の鬼人”の考えを問い質すにせよ、利用するにせよ、懐に留まる方が色々やりやすい」

"七花胡" :
「ですから、この国での仮住まいはまだ畳まずともよろしい。
 プランターに植えた種もまだ芽が出たばかりですしね。
 いつでも引き払える準備だけはしておくように」

"七花胡" :
「方針は今まさに確かめた通り。
 利用できるものは利用する。それは“リグ・ヒンサー”も、“貴人の庭”も、“御手翳す開放者”も同じです。
 対立の決定打は、『それ以外に価値なし』としてからで十分でしょう」

“アセルス・デスミオス” :
「ほいさ。んじゃ…おっさんのやることも変わらずだ。
   レンラクサキ
 その外回りに御宅らが増えるくらいで」

SYSTEM :
 幸い醜態の目撃者はほぼ“シミ”だ。
 あなた方を除いて。

 残る者たちが羅馬の伝説をまるで信じていないものだけだったり、引き締める方法さえ忘れるほど彼が落ちぶれていなければ、彼らの伝手や、“黒鉄の狼”を相手取る時、敵の敵(ないし船の乗組員)として使うことは出来るだろう。

“Mr・A” :
「合意ってコトかナ。
 有事の連絡手段はワタシ………」

“Mr・A” :
「と言いたいトコなんだが」

“Mr・A” :
「いや何、さっきのでどうも、派手に中身をブチ撒けてしまってね。
 もともと戦闘用のボディじゃないのにあちこちガタガタのガタだ」

“アセルス・デスミオス” :
「今の“リグ・ヒンサー”の客将ででかいのなんて大将とそっちの兄ちゃんくらいだし。出会う大義名分くらい幾らでもやれるっしょ。

 有事って方はホラ、おっさん、これでも足は速くて手は広いの」

“アセルス・デスミオス” :
「そっちのねえちゃんから連絡先交換して貰ったから、何かあったらそっち越しね」

“アセルス・デスミオス” :
「ついでにおっさんの用事も───」

"七花胡" :
「余所にオイタは許しませんよ」

“血穢の蓮花”盧秋華 :
「不測の事態があっても困る人じゃなさそうだし、何かあったら遠慮なくやるわね」

アレウス :
「構わん」二重の意味で。

"七花胡" :
「どうぞ」一重の意味で。

SYSTEM :
 美男美女に命をトスされ、
 嘆くこの場の推定最年長。

“アセルス・デスミオス” :
「…まあ、それは良くないけどヨシ。
 あとはおっさんの知ってる作法通りだ」

SYSTEM :
 傘下、庇護下、それらも場合によっては類義した意味を形成し………。
 金銭、名誉、執着、感情、それら纏めひっくるめ、千差万別の意味を持たせたある言葉で括り、そのために活動する。

 そこに、ファルスハーツの人間とあらば誰しも変わりがあろうはずはない。
 よって、同じ括りの信頼と、最低限の信用を以て形成された同盟、約束、なんだって構わないが…それの寿き方のポピュラーなものがある。

“アセルス・デスミオス” :
    ノゾミ
「各方の欲望のために」

SYSTEM :
 せいぜい勝ち取りましょうや、と。
 最もそれを持たない人間が、一匹の狼を放り込んだがために、波紋の広がるように変わっていく羅馬に渦巻くものを寿いた。

SYSTEM :
 ───守護者は世界のために戦い。日常のために水平線の向こう側に行ったものを斃す。
   アウトロー
 では、無法者はどうなのか?
       つ よ さ
 己の根にある価値ある物と定めたものを至上とする人間にとっては?

SYSTEM :
 ………答えはこれだ。

 羅馬の誰しもが、望みのため戦い。
 望みのため、水平線の向こう側に行ったものを制するのだと。
 彼が口にするまでもなく知られているがために、それは暗黙の了解として適切な言葉だった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 …今日未明の動乱のち。
 確かにローマを取り巻く三勢力の動きは変わらなかった。

 お互いがお互いを敵視する現状も、
 遺産を求める/このローマを統一しようという意思も。
 ただそこに、唯一変わったものがあるとすれば………。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :

 シーンが終了しました。
 マスターシーンを挿入のち、ミドルフェイズに移行します。

SYSTEM :
 現時点を以て「PC間ロイス」を確認します。▼ 

SYSTEM :
 対象者は、下記のようになります。▼

 夏瑞珂→アレウス
 アレウス→七花胡
 七花胡→ラーゼス
 ラーゼス→夏瑞珂 

SYSTEM :
 ただし、該当ロイスを既に所有している場合は改めて宣言する必要はありません。▼ 

アレウス :
さて、俺だけだったか? 所有していないのは。

GM :
 そのようですね。アテはございますか?

アレウス :
ああ。もちろん"七花胡"だが……、
信頼/〇猜疑心だ。
奴の手腕は"プロ"として認め、信頼しよう。だが、腹の底まではそうとは言い切れんからな。

GM :
腹を探り合う部分と「腕前」への信頼は別、ということですね。よいでしょう。

GM :
キャラシートへの記入をお願いします。

アレウス :
ああ、了解した。すでに完了している。

SYSTEM :
 ………。

 ………………。
 ………………。 


・シーン7「Farsa-欲望の徒よ(3)」

SYSTEM :
【シーン:OP/Farsa-欲望の徒よ(3)】

 登場PC:なし(マスターシーン)
 登場侵蝕:なし

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
        【 Now Loading... 】

 カエサルレウム
『青の貴人』。テレサ・C・クリスティ。
『貴人の庭』のセルリーダー。青き血の盟主。
 なれどその血を流すことを、必要と思わば厭わない。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 アジト
 根城に戻った“赤の鬼人”は、最初に血を吐いた。
 容態の安定まで、顔を見せた相手は2名。いや、意志表示したものと数えるなら1名…。

SYSTEM :
 少なくとも今この時に、持てる全てを出し尽くした乾坤一擲。
 しかしそれは、何ら届くものではなく。
 これから河岸を変える理由のないローマを滅茶苦茶にして回って得たものは、一言で述べるならばただの敗北だった。

SYSTEM :

 ───彼を識るものほど、そう呼ぶ。
 それは敗北だ。完膚なきまで。

"赤の鬼人” :

「動かせる者は」

SYSTEM :

 沈黙の中、億劫になるほどの痛みに沈殿した声が浮き上がった。

“帝釈天” :
「…。おや、もうよろしいのですか」

SYSTEM :
 華人が妖しく微笑むのも僅かなことで、
 すぐにわざとらしい驚きの声が上がる。
 ボス
 大師と呼んだ男の、目に宿る感情を値踏みするように。

"赤の鬼人” :
「…どうなのだ。いるのかと、聞いたんだ」

“帝釈天” :
「いらっしゃいますよ。当事者が生きていれば。…ああですが、」

SYSTEM :
 だが、その当事者は生きているか定かではない。

SYSTEM :
 ましてや生きていたとして、だ。
 これを嘯く当人の印象も、敗者の姿を曝した男の印象も、只では済むまい。

 分かっている戯言に“赤の鬼人”が答えた。
 重圧から離れて冷えた頭が、望まざるにも関わらず来る“これから”に旨を述べる。

"赤の鬼人” :
「………することも変わらん」

“帝釈天” :
「使えるものは使うのでは?」

"赤の鬼人” :
「そういうことだと言った。すぐに目眩しの効くヤツを嗾けろ。
 …この分では、遺産は“やつ”の手に渡ったのだな?」

"赤の鬼人” :
「たぶんローマ中を滅茶苦茶にして回るだろうが、どのみちそのためにやったんだ。今更…」

SYSTEM :
 どのみち逃げ道はない。
 あの日の狼は獲物を喰い尽くすまで一切止まらず、
 まさに草の一本も生えないほどの凶行を披露した。

SYSTEM :
 割に合わない、と退いたところで残るものはない。命さえも。
 その点、牙を向けられた男の判断はまだ適切だった。
 元よりそのために、この一件に関しては臆病なほどかき集めた手駒があり。
 宝さがしのゴールが動くようになっただけだ。知らない者からして見れば。

 ましてやその元部下がどう動くかをアテにしなかったのは、土壇場の経緯を彼が存じているからだ。

SYSTEM :
 やった本人/ただの取捨選択をした人間が、薄らと微笑む。肯定の意。

“帝釈天” :
「御随意に…どうぞ」

"赤の鬼人” :
「…もう行け。ローマの夜はそう終わらんぞ」

SYSTEM :
    ・・
 もはや挑むしかない、と。
 その回答を受け取った帝釈天は、彼をひとりにした。

SYSTEM :
 取り残された“赤の鬼人”……。

 いいや只のひとりの破落戸が、顔に手を当て、重々しく息を吐き出す。 

"赤の鬼人” :
「アレッサンドロ………ミラノ………」

SYSTEM :

 クリストフォロ、
 バジーリオ、
 オスカル。

SYSTEM :

 それから、それから。指折り数えるように。最後には、もっとも若い元番犬の名を零す。
 夜明け前の月光に懺悔して、得られるものは慰めにもならない追想だ。

SYSTEM :

 毎晩夢に見る。広がった炎が背を追いかけてくる。
 這い出てくる炎は己にとって真実で。衝き動かされるように今日まで踊った。

SYSTEM :

 その結果はまだ出ていないと信じたい。
 だが、その結果がこれならば。

"赤の鬼人” :
「おれは………………」

破落戸 :
あの時から、何をやってきたのだ………

SYSTEM :
 ───頂点からはいずり落ちた先の奈落にもがくとは、こんなにも哀れなものだ。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

“帝釈天” :
「───まったく、路地裏の玉座とは脆いもの………」

“帝釈天” :
「知ってはいますが、あと少し育てたなら…。
 此度のは、たいそう愉快に、栄え実ると思っていたのですが…」

SYSTEM :
 零れる小さな息。華人は連れ帰った大樹を吟味する。
 根から腐り落ちた様子はなかったが、醜態は醜態だ。

SYSTEM :
 こと破落戸の纏まりにとって、主幹となるものは強さである。
 負けが込み、己の欲望叶わぬとなれば、従う理由が何処にあろう?

SYSTEM :
 ならば…目撃者がおおかた更地と染みになっただろう現状は、不幸中の幸いですらあった。
“赤の鬼人”がいまさら無益なパフォーマンスを取る必要がない。唯一無二の一点を除いて。

SYSTEM :
 だが、これで勢力図の均衡は動いた。
 少なくとも、事と次第によっては羅馬ごと道連れとなるだろう。

“帝釈天” :
「───少なくとも雇われる側にとっては、
 根本から崩れる以上、ここから猶も雇われて“あげる”理由はないわけですね」

SYSTEM :
 是非を問う声の矛先に、渇いた鋼色。

“グレイ・スコーピオ” :
〈で? それを何故俺の前でほざいた?〉

“帝釈天” :
「ええ。だってあなた。聞いたって何もしないではありませんか?」

“グレイ・スコーピオ” :
〈ご明察だ。藪をつついて蛇で済めば良かったと思うことが、そりゃもう腐るほどあってね。どれだけ掃除しても残ってる〉

“グレイ・スコーピオ” :
   カネ
〈だが報酬さえ貰えるなら、何だろうと撃ち殺す。
 上前撥ねられるなら、お大事な羅馬に払ってもらうさ〉

“グレイ・スコーピオ” :
〈…ほらよ、続ける理由はコレでいいか? あんたはいけ好かなくもおっかない。
 こういうタイプの女は、長く生きていて初めて会ったよ〉

“帝釈天” :
「四半世紀…いえ、ひょっとして半世紀?
 それで世の表も裏も存じた顔をしようというのは…、聊か傲りが過ぎますね。ま、いいでしょう」

SYSTEM :
 清々しい俗物の理由を話した男に、
 睨めつける蛇を思わせる薄らとした微笑みの色。
 
 世俗から離れられず、一生、銃後の人間になることはない愚か者に。
 彼女は、閑話休題と片付けた。男の事情“には”心底興味がないことの表れである。

“グレイ・スコーピオ” :
〈それは何より〉

“グレイ・スコーピオ” :
〈…そんなあんたの虫の好かないところは。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 自分以上に優れてる人間がいないと思ってるところだ〉

“グレイ・スコーピオ” :
〈………ぜひとも莫迦にされ返されないことを願うよ、“帝釈天”〉

SYSTEM :
 肩をすくめて立ち去る、灰色の無神論者。
 ただの負け犬の遠吠えと彼女は一切取り合わず、女はふと思いを馳せた。

SYSTEM :

 ───何に? 

SYSTEM :

 ───愚問である。識る由持つのは一人でいい。

“帝釈天” :
 そうしょくはまったく さいうをもってうるおい
「 草  色  全  經  細  雨  濕 
 かしはうごかんとよくするもしゅんぷうさむし
  花  枝  欲  動  春  風  寒 … 」

“帝釈天” :
「いよいよとなれば…フ、フ。
 まあそれはそれで、悪くない…」

“帝釈天” :
「野放しの荒れ放題の絵面は、お互い。
 そう好きなものでもありませんから、ね…」

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 “御手翳す開放者”。
 その設立の動機からして魔女の鍋めいた組織の盟主が、
 静かに唇を尖らせ、ステイツの人間発祥の大袈裟なジェスチャーを取る。

 眼鏡を光らせ、嘲るか蔑むようにモノを言う男の逆鱗に、
 ともすれば触れかけたと分かっているからだ。

“血色の探求” :
「───で? 大した失敗だな“黄の希人”。
 卓上の天才がなんだって?」

“黄の希人”アーキル :
                        エ ノ ク
「やめろやめろ、汗顔の至りを突き回さないでくれ“血色の探求”。
 というかなんだその呼び名は」

“血色の探求” :
「貴君のお題目に乗った猿どもから聞いた」

“血色の探求” :
「それはそれとして突き回すとも。私がなぜ貴君の下で、この雑多さを享受していると思うのかね?」

“血色の探求” :
「私が貴君の興味もなくもなくはない野望とやらが視界に入るのを許しているのは、私の女神がここにいらっしゃるからだ」

“血色の探求” :
「そうでない貴君などその他大勢の猿の中でひときわ優れた…。
 M a c a c o
 お利口なお猿さんに過ぎない」

“黄の希人”アーキル :
「あんた、ひとんちに亡命しといてその態度かよ………」

SYSTEM :
 もしも昨今の内容を貸しと思うことがあらば、
 黄の希人にとってそれは間違いなく、彼女を捨て置いて“くれた”ことだ。
 狼の次の餌になっていたのが此方だったなら、
 己は野望の第一歩でいきなり左腕と右腕をもがれてしまう。

SYSTEM :
 ───左腕はとびきりの厄も招いてくれたし、右腕は試金石も兼ねているが。
 今は、いや、今も、出来るなら避けたいところだ。
 
 その最後通牒を耳にし、悪うござんしたねと軽口叩く“黄の希人”が、視線を横に向ける。

“黄の希人”アーキル :
「………で、“アイシャ”。もういいのか?」

SYSTEM :
 精神的な負荷に防衛本能が表面化していた彼女だが、それは一時的なものだ。
 シャットダウン
 強制終了のち、無意識の防衛システムのみを働かせていた彼女が、
 ほ、と息を吐く。首を傾げ、闘争の奔流において希薄だった自我が戻って暫くだ。

“アイシャ” :
『その名前は窮屈…
 あなたたち
 羅馬の人々が名付けた名前だからいいよ』

“黄の希人”アーキル :
「ああいや、そっちじゃない。充てられただろ」

“アイシャ” :
『ん…大丈夫。おかしいことじゃない。巨きすぎてびっくりした。
 おそと
 余所者の血かな。それの中に………ううん、それよりも………』

SYSTEM :
 しかし彼女にとって肝要なことがあるとして、また聊かに感じ入ることがあるとしてだ。
 それは自分の是非などではない。

“アイシャ” :
 あなたたち
『羅馬の人々が死んだ。痛がった。苦しんだ』

“アイシャ” :
『私のせいよ。ごめんなさい』

SYSTEM :
.  オリジン・レジェンド
 その伝承型RBが眉を下げ、指折り数えて詫びているのは、終わりに理由のなかった、世界の内側の死だ。
 
 発生要因を識り、何より承知の上で思惑の糸を手繰るアーキルが、
 女の悔恨と、隔絶した精神構造なりの寄り添う手に応じた。

“黄の希人”アーキル :
「承知の上だったが…まァそうだな、せめて報いもくれてやってくれ。きっと喜ぶ。
 どうあれ半分は行く当てがないような連中だし」

“アイシャ” :
『…うん』

“黄の希人”アーキル :
「ああ。次は出さんよう立ち回るよ。
 …ちなみに“血色の探求”が、ご心配で何も喉を通らん面してた件については?」

“アイシャ” :
『あのね、ヘンタイさんは程々にした方がいいと思う』

“血色の探求” :
「謹んで御受取り致します」

SYSTEM :
 アーキルは既に彼の度し難さを知っていた。
 話を押し流す音。

“黄の希人”アーキル :
「さて。お互いの不幸を嘆くのはその辺にしておくとして、だ…」

“黄の希人”アーキル :
「…まったく誰があんな眉唾物が今ここにいるって思うよ。
 聞いた話じゃ、あいつ先週は露助のトコで暴れてたんだぞ?」

“血色の探求” :
「ほう! 詳しく伺いたいねその辺り。
 貴君の情報網は、いったい、何処から出てくるのか…」

SYSTEM :
 分かってるくせによ、と白を切る。
 実際問題、彼にとって“遺産”はどうしても頂きたい宝物だ。

SYSTEM :
 一つあれば人生が狂う。
 ただ…一つだけで世界は変わらない。
 その持ち主が、あの狼になってしまった以上、ここで打てる手は二つ。

“黄の希人”アーキル :
「………で、こうなりゃこっちの手立ては二つ。
 いや、一つだ。“黒鉄の狼”を殺す」

SYSTEM :
 もう一つの手段は、割に合わないと引き上げることだったが、
 それが出来る立場にアーキルはいない。あらゆる意味を以て。

SYSTEM :
 彼はこの羅馬を愛する守護女神にまだ付き合って確かめねばならないことがあり、
 また同時に、口にはしない聊か世知辛い身の上を持っていた。
 ・・
 挑む以外の道はない。
 彼は強さに何ら頓着していないが、それを必要とする場面があることを知っている。

“黄の希人”アーキル :
「あんたもそうだろ、“血色の探求”?」

“黄の希人”アーキル :
「もともと雁字搦めの立場でね。こんな機会は、ひょっとすると二度もあり得ない…。
 その状況で考えることがあるとしたら、そいつは多分…方法論の小賢しさじゃないのさ」

“血色の探求” :
「さてな。私の目的は究極的には此処でなくとも構わない。
 ・
 猿同士の愚者の踊りなど、上等なものを見飽きて久しい」

“血色の探求” :
「何しろ、私自身も混ざったのでね」

SYSTEM :
───嘯く男は、眼鏡の底に宿る醜くも美しいものを煌めかせて言った。

“血色の探求” :
「───そうとも。くれぐれも女神の扱いには気を付けろよ、盟主アーキル。
 彼女の歩み寄りを反故にしたならば……私は次の希望に傅くまでのことなのだ」

“黄の希人”アーキル :
「よく承知しているよ。
 どこに航海するにも、あんたの度し難さがまだ必要なんだ」

“血色の探求” :
「それは有難いな。私も盟主たる貴君の願いを汲んでやりたいんだよ…」

SYSTEM :
      アイシャ
 首を傾げる守護女神の前に、謳うように約束が交わされる。

SYSTEM :
 男たちの共通項はひとつだ。
 だから厄介事と知りながらここにいる。

 それが前向きか、後ろ向きか………そこで分かり合えないのが最大の違いであって。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ───重く息を吐く。

SYSTEM :
 忘我の中で、白やみ荒む思考の波が、和らいではまた跳ねる。

SYSTEM :
 つう、と流れる一筋の汗と、椅子に身を預け、ぐったりと脱力した様子。

 …齢十九の娘とて、病弱の身の上でもないなら、交戦状態のオーヴァードを遠くから操っていた“程度”の消耗でこうはならない。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「───っ、はあっ、はあっっ……」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「…はあっ、はあ………ふ………」

SYSTEM :
 熱を帯びた息を整えるように吐く。

SYSTEM :
 吐き切って、誰もいない女王の閨で、身を起こし、現実にピントを合わせた。

SYSTEM :
 覚束無い足取りは一歩目で即座に整えた。

 二歩目で呼吸が戻り、三歩目で平常に戻る。

SYSTEM :
 痛みや憎しみはない。それは通り過ぎたものだ。

SYSTEM :
 その代わりに、生まれながらの王の血統は。支配者の義務と権利を教えて来た。
 そうとも。
 当たり前のように振る舞うことのなんと簡単なコト。

 扉に手をかけ、回廊を歩く。静けさの残る場所で、動くものが視界に入った。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「………ウンガロ」

“ヘカトンケイル” :
「あ…」

“ヘカトンケイル” :
「テレ、サ」

SYSTEM :
 テレサ・C・クリスティの倍以上の巨漢が、覚束無くも拙い所作で傅く。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「いいわよ、畏まらなくて………」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「…ふふ。この台詞何回目かしら? 
 お父上の真似しなくてもいいって教えたのにね」

“ヘカトンケイル” :
「………駆け付けるの、遅かった」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「それも、いいわよ。貴方は私に従っただけ。彼女は間が悪かっただけ。
 私は彼女以外にも、何百人の血を啜って、奪った女よ? だいいち………」

SYSTEM :
 その続きを口にする若き女帝のさまは、
 ユメ
 欲望と嘯くにはあまりにも■■が過ぎていたことを、傅く醜き巨人は恐らく、ローマの誰よりよく知っている。

SYSTEM :
 だが彼は口下手で、眉を下げ、うつむく以外の術を持たなかった。

 そして、他人の感情に鋭いこの執政者をすぐに戻すのは、彼女自身への労りではない。
 そんな賢しさを、庭の誰もが持っていなかった。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「ローマの話に戻りましょう。
 ───遺産、アレが獲ったのね」

“ヘカトンケイル” :
「……まだ敵がいる。あれは、退かない」

SYSTEM :
 黒鉄の狼がまだ此処にいることは、彼女が誰より一番よく知っている。
 それが今のローマを何より一番脅かしていること。

SYSTEM :
 他ならばどうだって構わないが、ここは貴人にとっての庭だ。

 テレサ・C・クリスティのいまにとっては、それだけで理由になり得る。
 色褪せ切るその時まで、喩え誰だろうと。それを侵したその時点で敵の資格を持つ。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「カエサルのものはカエサルに───当然、取り返すわ。
 土足の蛮行の代償も合わせて、きちんと払ってもらいましょう」

SYSTEM :
だが。

“ヘカトンケイル” :
「…わかった。おれがやる」

“ヘカトンケイル” :
「でも………」

SYSTEM :
 判断の前にまず快く引き受けた、他でもない“ヘカトンケイル”が一番よく分かっている。
 彼はそう智慧のある人間ではないが、
 それでも生物的な勘が、出来る/出来ないを区分ける程度の扶けはしてくれる。

SYSTEM :
 そう、無理な相談だ。

 テレサ・C・クリスティは、
 既に半身をもがれた。

SYSTEM :
 五体不満足の女ひとりと、彼女を守る最後の巨人。
 後者がどれほどに精強で、凄まじく、暴風のようなものであろうとも…。

SYSTEM :
 “赤の鬼人”が擁する暴力集団は撫で斬りに出来ない。
 “黄の希人”が仕込んだ魔女鍋を平らげることも難しい。

 ましてや………“赤の鬼人”が招き寄せた外様の傭兵集団も、もう一つの外様を率いた者も、大前提としてそこにある“黒鉄の狼”さえも。
 まともに相対しなければ、羅馬の被害を問わなければ済むかもしれないが、その選択肢はテレサに限ってなく、故に有り得ない。

 あるいは一夜にして、この争奪戦の様相から真っ先に脱落したとさえいえるのは彼女だった。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :

「そうね」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :

「………それでねウンガロ。返さなくていいわ。
 彼ら、懲りもせず来ているでしょう?」

SYSTEM :
 巨人は続く言葉をわかっていて、躊躇いがちに頷いた。

SYSTEM :
 そのままやったなら勝利は有り得ない。
 行儀よく、綺麗に、それで名残の夢を守ることが叶わないのであれば。
 彼女は今までもこれからも、躊躇わず溝に身を擲った。当たり前“ではない”ことをした。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
 Chi ruba poco va in galera, chi ruba tanto fa carriera
「こ そ 泥 は 牢 獄 へ 行 き 、大 泥 棒 は の し 上 が る………」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「ハハ………アハハ!」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「───誰が。のし上がらせるものですか。
 ───くれてやるものですか」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
.           U  G  N
「破落戸にも、鼠にも、日和見の裏切り者にも、
 硝煙狂いにも誰も彼も何もかも………」

青き血に濡れた女 :

 この庭は。

 生まれてから死ぬまで私のものだ。

SYSTEM :
 …その罪の徴が実体を失っても、変わり切った女にもとより更に変じる理由はなかった。

SYSTEM :
 身を急がせる。
 招いてもいないのに居座られた応接室には、彼らがいる。

SYSTEM :
.  いさんのはこびや
 ───事の仕掛け人が。
 不躾に来賓の礼を取って待っている。

SYSTEM :
 女は眼前の者たちに、とびきりいい顔で笑って。
 背に変えられない腹を、捨値の誇りで入れ替える。

SYSTEM :
 ウンガロの視線の矛先にいたのは、ローマに最初に踏み込んだ狼藉者だ。

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「───気が変わったの。
 売りつけた毒を飲み干してあげる」

“青の貴人”テレサ・C・クリスティ :
「とびきり上等なのを献上なさい?
 でないと………ね、踊る最中に踏み殺してしまうから」

SYSTEM :
 ・・・・・・・
 ローマを続けるというただ一点において、
 何より強く願う彼女の前で…。

SYSTEM :
 そこのみ嘘を吐かなかった、最低最悪の狼藉者。曰く…。

SYSTEM :
 ───ギルド。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

GM :
 
 シーンが終了しました。
 マスターシーンのため、ロイスの確認は行われません。

SYSTEM :
 ミドルフェイズの進行に伴い、
 ローカルルール「東欧遺産戦線」を適用します。▼ 

SYSTEM :
 しばらくお待ちください...▼