《Beyond_the_sea》 チャットログ:メイン


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目次

・導入
・自己紹介
・トレーラー
・シーン1「切欠」
・シーン2「道筋」
・シーン3「依頼」
・シーン4「追憶」
・シーン5「宿命」
・シーン6「一隅」
・戦闘:“渇望喰い”&“蝕みの君”
・シーン7「去就」


導入

GM :
 それでは…。
 開始予定時刻になりましたので、本日を持ってダブルクロスDX3rd『Beyond the sea』を始めさせて頂きます。

GM :
 PL各位、および観戦席の皆々様、よろしくお願いします(低姿勢)

 なおここまで概ね紳士淑女の過去ログ見ながら書いています。始め方はいつもわからん。

荻野目 旭 :よろしくお願いしまーす!

"残骸" シホ :……よろしく。

木口龍 :何がなんだかわからんがよろしくだぜ!

三廻部 颯 :よろしくおねがいしますっ!

久外境耶 :あーハイ、よろしく

GM :始める前に、今回導入する『ダブルハンドアウトシステム』、そのうち「トリガーハンドアウト」について解説します。

GM :
 このトリガーハンドアウトは、
 メインプロセス中にGMが定めた特定のタイミングで渡される2枚目のハンドアウトです。

 内容は手渡されるPLのみが知っており、公開には何らかの条件が必要となります。

GM :
 公開の条件も込みでそのPCが知っていますが、RHOと違うのは「公開が任意ではないこと」「経験点には関与しないこと」「公開がトリガーシーンの条件となること」です。

GM :
 まあそんな深く考えることではありません。「なんか1名赤紙渡されてんだな」というレベルで考えておいてください。

GM :その他、卓会場内の細かい部分については「?」の部分にマウスカーソルを合わせてご確認下さい。

GM :…というところで前置きの確認内容が終わったところなので、まずは自己紹介に移ろうと思います。

GM :希望者がいればその人物から、そうでない場合は今からダイスで「PC1から順番に」か「PC5から順番に」かを決めます。どうでしょうか?

木口龍 :オレが最初はマジモンの出オチだから勘弁してほしいぜ!(迫真)

三廻部 颯 :どぉしよっかな……写真映りがちょっと悪くて……

"残骸" シホ :こちらの準備は完了している。順番についてはアナタがたの要望に合わせよう。

GM :遠くの観戦席で三葉虫の嘆きの声が聞こえて参りました

ask2 :ミー

"残骸" シホ :……なんだ、この妙な生き物。

GM :かわいそうに 今日のおゆはんです

荻野目 旭 :わ〜い でも三葉虫ってどうやって料理するんですか? まるやき?

木口龍 :てなわけでオレが最後だと助かるぜ! 他と違って直近続投唯一なのオレだけだしな!

GM :野生の生物に「焼く」以外の調理方法はありません 残酷なことです

GM :であれば…PC?から順番というのが色々良さげな次第ですが、どうでしょうか三廻部さん 自己証明写真の用意は?

三廻部 颯 :さんようちゅう……

三廻部 颯 :あ、大丈夫でーす!

GM :分かりました。では…

GM :まずはPC1から行きましょう! よろしくお願いします(低姿勢)


自己紹介

三廻部 颯 :よいしょっと。

三廻部 颯 :
「はじめまして! 
 はじめまして……ですね! だよね!?
 ……、……うん、よかった合ってたー」

三廻部 颯 :
「三廻部 颯(みくるべ・はやて)
 って言います! 高校二年生です!

 ……っていう感じでいいのかな?
 えへへ、自己紹介なんて一年振りだなー。

三廻部 颯 :
「あっ、でも、クラスのみんなに向けるものじゃない……んだよね。
 うーん、うーん……えっとぉ……そうだなあ……。

 ……一年前になんて自己紹介したのか忘れちゃったかも……!」

三廻部 颯 :
「あ、趣味!
 えっとね、趣味はスポーツです!」

三廻部 颯 :
「体を動かすことが大好きなの!
 おじいちゃんのところで柔道とか空手をやってるからかな。
 おかげで体育の成績は去年はAもらえました!」

三廻部 颯 :
「あとはー、料理!
 家庭科の調理実習で、料理って楽しいなって思って! 

 お母さんに台所を使わせてもらったことはまだ一度もないんだけど……。
 お母さん、『台所は主婦の戦場なのよ!』って入れてくれないんだもん……わっ、内緒ね内緒!」

三廻部 颯 :
「あとはー、食べ物は甘いものと、麺類が好きです!
 ラーメンとかうどんとかパスタとか!
 甘いものなら……ドーナツとか!
 太るよーって言われるけど、運動してるから大丈夫だと思ってます!

 あとあと、好きなものだったら「可愛いもの」かな……?
 動物とか、アクセサリーとか」

三廻部 颯 :
「この星のヘアピンとか凄くよくないですか?
 デザインはけっこうシンプルなんですけどー、色の組み合わせが可愛いなっていうか……。
 あ、脱線脱線……」

三廻部 颯 :
「あと言っておくことは……うーん……」

三廻部 颯 :
「あ、そうだそうだ、アニメとか漫画も知ってます!
 まあ、特に好き!っていうのがあるわけじゃないんだけど……、
 クラスのみんなとお話ししたくって、それでついてきたくて見てるんです」

三廻部 颯 :
「最近パソコン買ってもらったから、動画サイトの公式配信?とかで見てまーす。
 見放題のサービスとかあるらしいんですけど、まだお父さんが許してくれなくって……」

三廻部 颯 :
「でもでも、おかげでなんとか修学旅行にまで履修を間に合わせたんです!
 みんなアニメとか漫画の話して夜過ごすのに、私だけついてけないの、なんだか悔しいから……。

 ……あ、でも先生に見つかったらいけないから、ヒソヒソ話になるのかな?」

三廻部 颯 :
「中学の頃はバスだったから、飛行機に乗るの初めてなんです。
 乗った時に……こう……なんだろう……ふわっとするっていうか……ひゅっとするっていうんですか?
 出張に行くお父さんがそんな感じだ〜って言ってて」

三廻部 颯 :
「おっかなびっくりで気になってまーす!」

三廻部 颯 :
「飛行機の席も気になるなー、
 昔から仲良くしてる子がいて、その子と隣だと話もはずんで面白いかも?
 ……あ、でも、『飛行機の中は静かにしてて』って怒られちゃうかもなー。
 せっかくの飛行機、寝てるなんて嫌だもん!」

三廻部 颯 :
「……と、こんな感じかな?
 えへへ、なんか要らないことまでいっぱい喋っちゃった気がします。
 修学旅行が終わったら進路のこととかも始まるし、いっぱい印象つけてかなきゃって!」

三廻部 颯 :
「それでは、よろしくお願いしま──」

三廻部 颯 :
 ─── ─── ───

三廻部 颯 :
 ▄█▀██ 。
 █▄█▄▀▄。

 ───▄█▄█▄▀▀▄█ 、▄█▀▄██▄▀█▄ 。

三廻部 颯 :
『三廻部 颯。
 年齢17。
 身長157cm。
 体重─kg。
 血液型B』

三廻部 颯 :
『シンロドーム情報:モルフェウス。

 症状性質:純血。

 覚醒要因:▄█▄█▄▀▄▄▄█ 。

 衝動性質:█▀▄█▄█▄▀▀▄█ 。

 特記事項:▄█▀▄██▄▀█▄ 』

三廻部 颯 :
『攻撃手段:近接攻撃。
 攻撃性質:単一による特化火力。
 副次性質:敵対ターゲットの防御を"分解"し、事実上の防御無視を行う。
 副次性質?:瞬間的な威力増加。空想具現による一時的な武器の生成、強化』

三廻部 颯 :
『運用方法:単騎による接触領域までの接近、対象が倒れるまでの攻撃継続。
 注意事項:覚醒要因・衝動性質が不安定な傾向アリ。また、覚醒に至った▄█▀██ を考慮すべき。

 以上──報告終了。
 当該データは数秒後に破棄されます』

三廻部 颯 :
 █▄。
 ▄█▄▀▀、█▀▄██▄▀█▄ 。

 ▀▄█▄█▄▀▀▄。

 █▀▄█▄█▄。

 ▄█き▄█▄█くのは、▀▀▄█だ。

三廻部 颯 :
 ─── ─── ─── ───

三廻部 颯 :
「……ぷぇ。
 あ、あれ? わたし、なんで俯いて……はっ」

三廻部 颯 :
「もももも、もしかして、寝ちゃってました!?
 そんないきなり!?」

三廻部 颯 :
「う、うわあ……やらかした……うう……。
 ご、ごめんなさい……別に寝不足ってわけでもないんだけどなあ……」

三廻部 颯 :
「え、えーっと、とにかく!
 あらためまして、三廻部颯!
 好きなものはドーナツ・麺類・かわいいもの!
 よろしくおねがいしまーす!」

:
……
 ……
  ……

オオトリ :
 人間よ 滅ぶべし……
 全てはザマスの名の下に……、

オオトリ  :
破壊。

オオトリ : 

オオトリ  :
 バカの神がお騒がせしました。
 あらためまして、PC1・三廻部 颯の自己紹介でした。
 PLのオオトリと申します。よろしくお願いします。

オオトリ  :
 見ての通りの元気な子です。
 当初は版権ガワだったり色々と難航しましたが、ご覧の通りの天真爛漫な高校生になってくれました。
 
 趣味や好きなものについては本人の言葉通りです。

オオトリ  :
 暴力は嫌い、悪口も嫌い、そんな優しい子ですが、
 そんな優しい子がダブルクロスの世界に送り込まれるのはどういう罪に問われるのでしょうか。
 
 それはさておき。
 性能はなんかバグったレポート君が紹介してくれましたが、単体白兵アタッカーになります。

オオトリ  :
 この度アイテムアーカイブの一部導入が決定し、
 上方修正を受けた『インフィニティウェポン』、これを軸にしたビルドとなっております。

 このエフェクト自体は『遺産』で取得しました。最大レベルで習得するのでリミット習得に便利です。
 何がとは言いませんが遺産です。

オオトリ  :
 戦闘時は武器を作り、
 カスタマイズ、ペネトレイトなどの豊富な起点を用いて色々します。
 余裕がありそうならそこにリミットエフェクトの咎人の剣を付け足し、恐怖の攻撃力41の装甲値無視を飛ばすことになります。
 役割はそれくらいで、シナジーもへったくれもありません。

オオトリ  :
 殴って勝つ! 実にシンプルじゃあないの!!
 とは誰かが言ったものです。
 ともかく、敵が倒れるまで殴って殴って殴り倒すビルドです。
 節約もできますが、基本かっとビングしていくのがPCらしさではありますかね。暴力嫌いつってなかったか?

オオトリ  :
 ともあれ、戦闘面においては破格のダメージを叩き出しますが、
 砂加護という最高の代物がないので、ミドルは置物です。
 ピクミンになるので指示を出してください。

オオトリ  :
 以上、PC1の自己紹介になりました。
 ご静聴ありがとうございました。

オオトリ  : 
 もう一回破壊しとこ。

オオトリ :『ウワァァァァァァァァァァァァ!!!!!!』

GM :
 …というわけでまだコードネームはなし。
 三廻部 颯さんの自己紹介でした。

GM :
 PL本人の主張は“““概念的な方の”””美少女回避とのことです。

GM :
 なあ…“賭け”ねえか!? どのくらいまで続くのか!
 人の癖は! 終わらねえ!!!(ドン!)

GM :
 とはいえ自己紹介の通り、普通の学生さんです。
 普通というにはちょっとズレて浮いた女の子が幼馴染で………。
(描写するかは分かりませんが)全うな関係の両親がいて………。
 クラスメイトとの関係も相応に良好みたいな、日常を生きている人です。

GM :性能面はかなり丁寧に語られたので割愛とし…。

GM :
 したいところですが
 僕は彼女のダメージテストで散々酷い目に遭いました。
 今から怖いですね。 

GM :
 もちろん………その彼女は、この時点ではオーヴァードではありません。
 パンピー
 一般人です。

GM :
 よわ
 脆弱い一般人を巻き込むなど
     マジギレ
 UGNは心底絶許のはず………。
 何かがあったに違いありません。

GM :
 ではその彼女が何をどうすればオーヴァードの世界に飛び込む羽目になるのか。
 何があればそんなド偉い遺産持つことになるんだバッキャロー! となるのか。
 それらは今後に描かれます。

GM :その発端となるHOを開示しましょう。

Awakening〜お覚醒めですか?〜 :
ロイス:池田咲楽 推奨感情:○P好意/N不安
   カヴァー/ワークス:学生/学生
   備考:年齢16〜18完全指定
   ワークス:「UGNイリーガル/UGNエージェント/UGNチルドレン」については応相談

   あなたは日本千葉県K市に在住する高校二年生である。
   そしてロイスとなる池田咲楽(いけだ・さくら)とは幼馴染の関係にあり、長い付き合いだ。
   あなたは変わらぬ日常を送っていた。
   それが仮初なのか真実なのかはともかくとして………少なくとも、今日この時までは確実に。

   さておき、高校生もだいたいこのくらいの年になると修学旅行があるもので、
   あなたは人生初か、あるいは何度目かの飛行機に乗り合わせる。
   そして恐らくは初めての、突如として巻き込まれた『嵐』に見舞われ………。

   ある出来事がきっかけで、あなたの存在は日常から切り離され、渦中に飲み込まれていく。

GM :
 というところで、PC1については一区切りと致しましょう。

GM :
 続きましてはPC2の自己紹介です。
 よろしくお願いします(正座)

久外境耶 :ン。

久外境耶 :
「どーも。紹介するほどのこともないけど、レーギなんだろ」

久外境耶 :
「久外境耶、コードのほうが通りはいい。

 "ラッキージンクス"……その名も幸運の徴ってな」

久外境耶 :
「あいにく、あんたの分まで担保はしてやれないけど。
 どんな死地に突っ込んでも生きて還ってくるからこその名だ。おれの運はおれにしかツイてこない」

久外境耶 :
「元ボスはおれのいない間に砂になってさ──うん? そう、砂。いやほんとほんと。
 不測の事態ってやつ。で、おれの古巣は誰かに代わりが務まる場所じゃなかったから、あちこち渡り歩いて、いまはちょっと落ち着いてるかな」

久外境耶 :
「ああ、言ってなかったっけ。おれFHな。もっと昔はUGNの掃き溜めにいて、いろいろあってこっちなわけ」

久外境耶 :
「やりたいことやって、好きにくたばる。おれはそれでいい。だれかの下につくのはついでなんだ」

久外境耶 :
「だってそのほうがいかしてるだろ。
 いつでもできる無駄死により、だれかの野心に命を賭けてみるほうがさ」

ask2 :よいせ!

ask2 :
と、いうわけで。
PC2の"ラッキージンクス"久外境耶、ワークスはFHチルドレンです。
主な任務は足止めと陽動、捨て駒として運用されながら何度も戻ってくるのでこのコードネームがつきました。

ask2 :
UGNの被害者で、実験の廃棄場で目を覚ました末にFHへ流れ着き、最初に所属したのがタケミカヅチ──GM主催卓「裁かれし者」に登場するセルです。許可してくれたGMに改めてかんしゃ!

ask2 :
ご存じの方も多いかと思いますがタケミカヅチは壊滅済み! なんで所属を転々としたのち、今セッション時点ではひとところに収まっているようです。

ask2 :
シンドロームはエグザイル/サラマンダーのクロス。例によってガード屋です。
異形の刻印と濃縮体の組み合わせによって得たボス並みの体力と安定の氷盾で受けるシンプルな構成! バステ対策に遠隔カバーリングと、そつなく対応できると思います。

ask2 :
戦闘時には異形の痕を形状変化と言い張ってメットに変身します。ガード屋とメット、すごく生を実感します。

ask2 :
キャラクター的にはフラットでドライ、からっとしたFH像をめざしたい所存! わんちゃんに即堕ちしたらわらってください。よろしくおねがいしまーす!

ask2 :
ちなみに三葉虫は分類上の総称であって種の名称じゃないよ。

GM :マジで!?

GM :失礼しました。

GM :
 と…言う訳で、TLもといXでの呼び名は通称「濃縮刻印」くん。
 コードネームは“ラッキージンクス”の久外 境耶くんの自己紹介でした。

GM :
 言葉選びはぶっきらぼう、ドライながら前向きなFH少年。
 “その方がいかしてる”。思っていたよりアッパーというかパンクというか、そんな自己紹介でしたね。

GM :

 タケミカヅチというのは説明して貰っちゃった通り、僕がGMを務めた拙作「裁かれし者」に登場したセルです。
 たまにゆな江ママにミカヅチをノーダメージにされた悔恨らしきものを語っている、変な浮遊霊が観客席にいるかと思いますが、彼がラスボスだった卓でした。個人的には地味にオキニです。

 なお、その元構成員が信じられねえレベルで後々質が高かったことが証明され始めたのが個人的オモシロポイントです。
 なんせその面子がラスティリッパーとタルカスと言えば観客席の方もご存じでしょう。
 色んな意味で。当時はお疲れ様でした。

GM :

 その彼のビルドですが、ご存じ『濃縮体』を使った異形の刻印のレベルかちあげが特徴です。
 起きる効果はHP+100。もう一度言います、HP+100です。
 お蔭で自己紹介段階で彼がラスボスみたいなHPになっています。

 あとのエフェクトはリヴァイヴセル以外はだいたい『ガード屋スターターキット』みたいな内容ですが、それだけに腐る心配はなし。
 
 ………果たしてこのHPが削り切られる日は来るのか? 僕はちょっと心配です。

GM :
 そんな彼は転々と所属を移していた何度目かの新しいセルで、
 ちょっとした無理難題を申し付けられます。
 その先で、とある「喋る犬?」、推定RBと出会うことになるのですが………。

 そのHOを開示しましょう。

Three-legged〜一期一会のパートナー〜 :
ロイス:ホデリ 推奨感情:○P有為or好奇心or好意/N不信感
   カヴァー/ワークス:任意/「何らかの組織」

   あなたは何処かの組織に所属するオーヴァードである。
   傭兵でなければ、少なくともイリーガルではなく、大きな組織の傘下にいる存在だ。

   あなたはあなたの組織の上司、またはエージェントから、
   太平洋方面に発生した正体不明の超巨大レネゲイド反応について調査を求められた。
   海を越えた先にあるものを探すあなたは、発生源の近い場所で、とある未知の孤島を発見し、辿り着く。
   時代に取り残されたかのような風景の中で、あなたは一匹の白い犬と出会った。

   白い犬のすがたをしたレネゲイドビーイングは、
   自分のことをホデリと名乗り、あまりにも人間めいた溜息の後にこう言った。

  「なんと運の悪い人間だ。しかし、わたしにとっては運が良いことだ。
   おまえがこれからたくさんの人間に降りかかる災いを止めたいと思うならば、わたしに力を貸しておくれ」

GM :
 というわけで謎の推定RBに付き合い、あるいは謎の推定RB「が」付き合うHOとなります。
 どうなるかは………。

GM :
 やってみないと分かりませんね。
 ってところで、PC2についての自己紹介を一区切りとしましょう。

GM :
 続きましてはPC3の自己紹介です。
 よろしくお願いします。(低姿勢)

旭 :了解です!

旭 :
「ただいま帰りました、お父さん。ごめんなさい、遅くなっちゃって」

「テストはね、ふふ、ばっちりです! これなら迷惑はかけずに済むかな」

旭 :
「お友達のこと?
 あ、そうだった。この間体調不良て言って倒れちゃった子の話したもんね。
 しばらく入院はするみたいだけど──」

旭 :
「……って、あは、そっちじゃあないですね」

旭 :
「大丈夫ですよ、首尾は上々です。
 あの学校で動いていたFHによるR因子の暴走誘発は、無事に主犯の居所が掴めました。
 もうエージェントによる対応が始まっています。じきに終了報告が来るでしょう」

旭 :
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それもこれも、あなたが僕を息子さんにしてくれたからですよ。
 今回の向こうの動きはかなり周到で……学校内部の犯行となると、あなたぐらい出資している方の傍にいないと、ぼくでも尻尾がつかめませんでしたから」

高倉 旭 :
「だから。これで十分です。
 お世話になりました、高倉さん。
 ──あ、そっちはなにがなんだかって顔。

 すみません、いま暗示を解いちゃいますから」

“ナイトホーク” :

 ぱちん。

“ナイトホーク”荻野目 旭 :
「はい、おしまい。
 実は僕はあなたの息子じゃなくて、情報支援の工作のために息子さんと入れ替わったものです。
 はじめに説明したことも思い出しましたよね?」

“ナイトホーク”荻野目 旭 :
「ご心配なく。あなたの息子さんも無事に、オーヴァードとして安定しました。
 明日からこのおうちに戻れるでしょう。
 だから僕も、あなたの息子さんのお名前をお返ししますね」

“ナイトホーク”荻野目 旭 :「それから」

“ナイトホーク”荻野目 旭 :
「僕が一か月間あなたの息子さんと入れ替わっていたことは、
                    ・・・・・・
 これから行う記憶操作処置によってすべてなかったことになります」

“ナイトホーク”荻野目 旭 :
「僕みたいな立場の人間がいることを広く知られてしまうのは、
 いくらあなたが我がUGNに出資をしていたとしても……少々、不都合なんですよね」

“ナイトホーク”荻野目 旭 :

荻野目 旭 :
「はじめまして!
 ぼくは、高倉──違った、もう高倉は終わったんでした。てへ」

荻野目 旭 :
        おぎのめ・あさひ
「本名は荻野目です。荻野目旭。
 コードネーム“ナイトホーク”、UGNチルドレンです。
 ……荻野目旭は本名じゃない? まっさかあ。本名が何個もあったら大変じゃないですかあ」

荻野目 旭 :
        ソラリス オルクス
「シンドロームは薬品操作と領域操作です。
 主な職務は情報工作、潜入、監視任務。

 学校に潜り込んで監視任務にあたったり、
          ・・・・・・・・・・・
 ちょっと怪しい人の息子さんにしてもらってお話を聞きに行ってみたり? そういうことをしてるんですよ。
 動物に因子を組み込めばぼく自身の体をここに置いたままよそにも行けますんで、ときどき遠方の派遣任務にも駆り出されてます。
 うわあ、後ろ暗いって言いました? ひどいなあ。まあそのとおりなんですけどね」

荻野目 旭 :
「戦闘中は後方支援とか、一部のひとに需要のある戦闘中の回復支援ですね。

  《女王の降臨》+《狂戦士》 《癒しの水》
 初動の早い人に興奮剤の投与、あとは活力回復。
  《妖精の手》
 領域内の因果率操作と、ペア任務が多かったんで追加支援も得意ですよ。
 戦闘はからっきしなりに、適材適所ってやつです」

荻野目 旭 :
「今回はちょっとだけ年上のふりをして、高校で監視任務にあたっています。
 高校ぐらいまでなら暗示で誤魔化せるものですよ? ぼく、得意なんですから」

荻野目 旭 :
「それよりっ、楽しみですよね、シュウガクリョコウ!
 任務にこの時期があたったことってあんまりないんですよぉ、どんな風になるかなあ!
 楽しみだなあ……ふふ、よろしくお願いしますねっ」

荻野目 旭 :「────」

荻野目 旭 :
「……とは、言うけど。
 今回の任務には猛烈にイヤな予感がするんですよね。気のせいかなあ。
 なんだか、ヤクザに因縁つけられた時のこと思い出すなあ──」

おだまき :というわけで、なんとリアル時間五年越しの続投キャラクターでお世話になります。おだまきでーす。

おだまき :必要な事は全部本人が説明しきったのでとくに補足はないんですが、強いていうなら実年齢が14歳です。3年ほどサバ読んで高校に潜入します!

おだまき :キャラクターも本人の説明通り! 模範チルドレンだけど今回は因縁のおねいさんと暗黒のおねショタをして遊びます! よろしくお願いしま〜っす。

GM :宜しくお願いしま〜っす(こだま)

GM :
 というわけでコードネームは“ナイトホーク”。
 荻野目 旭くんの自己紹介でした。

GM :
 
 当卓最年少にして、まだかに…何とかが生きていた頃にやっていたDX3rdにおいて、
 Dロイスすらないサプリ揃ってない、そんな頃に作られたキャラクターです。

 なるほど当時は御世話になりました。このマセた14歳が社会屋やってくれなきゃ、残されたのは社会1の外見不審者と現代都市で崖を探す内面不審者。
 ノイマンピュアの、わりとまともに行方不明の友達を探していた親鳥もといPC?の心象が心配になっていたところです。

GM :
 世渡り上手の彼ですが、
 当時はヤクザの当たり屋的な貸しの押し付けからシーンがスタートしておりました。
 呉越同舟めいた環境、そもそもイレギュラーでイレギュラーをサンドしたみたいな、
 今回のステージでどう動くのかは期待が寄せられるところです。

GM :
 そのお世話になった筆頭と印象深いものは「狂戦士」。
 
 それ以外も妖精の手…は万能存在だからさておき。
 癒しの水、しれっと所持したハンドリングに猫の道など、
 こんなに局地戦向けを揃えてくることある? って感じのラインナップです。
 ステージの事前情報から担いできたのだろうこれらが吉と出るか凶と出るかは、今後のお楽しみですね。

GM :
 そんな彼のHOを開示しましょう。

Utter-defeat〜命ある限りは〜 :
 ロイス:“喚楽の人食い虎”明夜白銀 推奨感情:P執着/N恐怖
 カヴァー/ワークス:任意/UGNエージェント、またはUGNチルドレン

   ───あなたはある時、敗北した。
   とあるジャーム化したレネゲイドビーイングと交戦したあなたの部隊は、
   あなたの想定を上回るほどの脅威であった“それ”によって、壊滅した。

   けれど、あなただけが生きている。
   あなたが死ぬ直前、そのレネゲイドビーイングを………。
   よりにもよって、ファルスハーツの“彼女”が横槍を入れて、撃破したからだ。

   敗北した人間にも、困ったことに明日は来る。
   あなたは日本千葉県K市のとある高校へ潜入し、池田咲楽について監視する任務を言い渡されていた。
   年が高校生くらいなら生徒として、それ以外ならば新任の教師として。
   PC1とその少女には、顔を知る間柄にいる。どちらの場合でも、修学旅行には同行する事になった。

   レネゲイドのものと思わしき恐ろしい海の怒りに巻き込まれ、
   辿り着いた先。現実のものとは思えないその場所で、あなたは忘れられない顔と再会した。
   彼女はあなたを見た瞬間、とてもとても嬉しそうに、そうはもう朗らかに笑ってこう言ったのだ。
 
            ・・・・ ・・・・・・・・・・
  「御丁寧にどうも! ところで、あなたは誰でしたっけ?」


   人食い虎の合成獣キメラ、その名を冠した女は、
   あなたを嘗て、路傍の石のように、何の興味もなく退けていった。そして、今も。

   あなたの組織的な目的は、UGNの基本的概念を忠実に実行することだ。

   ただし………あなたの個人的な目的は、彼女に自分を認めさせることだ。
   何故どうして、ではない。
   安いプライドと意地のようなものが、“このままでは終われない”と叫んでいる。

GM :
 …ちょっと奥さん知ってます?
 あのHO見てこの少年を放り込んでくる“邪悪”がいるらしいですよ。

おだまき : 

GM :
   メインプロセス
 弁解は法廷でお聞きしましょう。
 そんな感じでPC3の自己紹介を一区切りとします。

GM :
 続きましてはPC4の自己紹介です。
 よろしくお願いします。(正座)

"残骸" シホ :さて…ワタシの出番か。少し失礼する。

"残骸" シホ :「こんにちは、おはようございます。“はじめまして”でいいのかな。
 ワタシはシホ、このたびUGNイリーガルに正式登録することになったオーヴァードです。」

"残骸" シホ :「コードネームは…ええと……ああ、《残骸》って名前で登録してもらいました。
 所属は一応▅█▂県の▅█▂市ってことになっているんですけど、今は日本のいろいろなところを転々としています。だから皆さんと顔を合わせる機会は少ないかもしれません」

"残骸" シホ :「───コードネームが変わっている? 登録したてのイリーガルにしては手慣れてる?
 ああ、これにはちょっと複雑な事情があって……」

"残骸" シホ :「ワタシ、どうやら記憶喪失になってしまったようなんです。
 随分と前からオーヴァードとしてジャームを狩っていたってことだけは覚えているんですけど……気がついたときにはそれ以外の記憶はほとんど消えてしまっていて」

"残骸" シホ :「何がなんだかわからないなりに、“こう”なる前にやっていたことを続ければいつか記憶が戻るかも、とジャーム狩りを続けているうちに縁あってUGNに協力させていただくことになったんです。
 記憶の《残骸》を辿る人だから、ってことでコードネームもそのように」

"残骸" シホ :「ええと、少し話が逸れてしまいましたね。
 とにかくそういうわけで、ワタシは普段は出自不明のジャームをいち早く無力化するお手伝いをする為に日本各地に赴いています。」

"残骸" シホ :「シンドロームはモルフェウス・エンジェルハィロゥ・オルクスのトライブリード。そのなかでも特にモルフェウスの力が秀でている───」

"残骸" シホ :「……らしいんですけれど、肝心の力の使い方も忘れてしまっていて。モノを壊す方向になら少しは制御できるんですが…。
                   レネゲイド
 だからというのも変ですけど、その分の因子は専ら空間把握と制御の方に回しています。狙撃は得意なんですよ」

"残骸" シホ :「自己紹介はこれくらいでいいですか?
 それでは、ワタシの記憶が戻るその日まで、よろしくお願いします!」

ザザッ…… :────────────
────────
──────

《朧の狩人》シホ :「それがUGNイリーガル《残骸》登録時のワタシの記録映像だ。
 何かワタシの行動に異存はあるだろうか、《タイガーアイ》」

《朧の狩人》シホ :「“演技にしては饒舌だ”……?
 む、それは円滑に登録を進めるための必要条件で───」

《朧の狩人》シホ :「───失礼、G市郊外の住宅街にて任務遂行中だったUGNエージェントのレネゲイド侵蝕率がジャーム化の閾値を超過したとの情報が入った。
 コードネーム ホロウハンタ-                   アウト
 識別名《朧の狩人》、これより脅威対象の殲滅に入る。通信終了。」

指鳴り :……文句のあるやつから出ておいで。

指鳴り : というわけで、とうとうやってきてしまいました。観客席でキャイキャイ騒いで荒らしていたあんちくしょうが初めてメイン記事に正式に書き込んでしまう日が。
 これが界隈初PLとなるスナップ/指鳴りです。皆様方、どうぞ温かい目でよろしくお願いします。

指鳴り : 初PCとなる《朧の狩人/残骸》のシホはゼノス所属のオリジン:ヒューマンなレネゲイドビーイング。レネゲイドの超常的な再生能力により修復された何者かの亡骸が、生物学的に見て一般的な少女と何ら変わりないモノになった…という文字通りのリビングデッドな存在です。
 その再起動の際に、中途半端に脳に残っていた(と思しき)記憶が彼女の中枢となっており、その自我は純粋なレネゲイドビーイングと元の死体───推定「水崎志穂」との狭間にあるような不確かなものとなっています。

指鳴り : 彼女の望みは自らの存在そのものを定義する何かを見つけることです。果たしてこの卓で見つかるのかどうか…。
 この辺自己紹介させるのを断念したことは内緒です。

指鳴り : ミドル探索適性は前情報通りであればこの卓に限って高めです。高い知覚に加えて隠密移動に適した《透明存在》《不可視の領域》+遠方知覚の《真昼の星》を持ち込んでいます。
 戦闘での役割は至ってシンプル。高い行動値からの範囲殲滅攻撃です。《未知なる陣形》の効果により捕捉できるのは最大5体!必要に応じて単発攻撃や隠密狙撃にも切り替えられます。

指鳴り : コンセがLv.3かつ破壊者補正も加わり初期値7dx7+9で固定値22+1d。固定値の割には火力と命中率にかなりムラがありますのであしからず。メインウェポンの《レッドテンペスト》は射撃するたびに1Dの反動もあります。
 また明確な弱点として至近距離への攻撃手段がナイフぐらいしかないのにエ ン ゲ ー ジ の 離 脱 手 段 を 持 っ て い ま せ ん 。この辺は約1名のおんぶにだっことなる予定です。
 その代わりと言ってはなんですが、最後の切り札としてオート《ミスディレクション》でシナリオ中2回ほど範囲or範囲選択攻撃の単体化ができます。

指鳴り :兎にも角にも初舞台、至らぬところは多々あるかと存じますが、何卒お手柔らかに。
よろしくお願いします!

GM :
 よろしくお願いします!

GM :
 えー、というわけで。
 コードネームは“朧の狩人”または“残骸”。その名はシホさんです。

GM :
 そのPLは今回が初卓とのことです。
 初動のビルド案で「ギガンティックモード起点」とかいう明らかに手練れかバケモンの発想をしてきたPLさんですが、お待たせした分、楽しんで頂ければ幸いです。

GM :
 説明の通り、オリジン:ヒューマンのRB。
 元々誰かの死体から作られた、似て非なるヒトというわけです。あちこちを転々とし、監視領域内で感知したジャームを人知れず始末し、表向きのカヴァーはカヴァーをしていない、そんなゼノスのエージェントさんです。

 ウラ わるさ
 裏社会で悪事かませば朧の狩人が来るというわけですね。

GM :
 そんなゼノスのエージェントと言えばUGNにもFHにも敵に回ったり味方したりと忙しい役職。

 というわけで「UGNイリーガル」として動く時の名前が『残骸』とのことですが、
 その正体は言動の違いやスタンスの違いからか結び付けられておりません。GMのガバで気付きそうになっても見過ごしてください。

GM :

 そんな彼女のビルドですが、どうやら見たところ…。
 要の陣形を『未知なる陣形』で拡大しての範囲射撃を得意とするようです。
 また、実はわりと未知のエリアと名高い「隠密状態」になるエフェクトがくっついています。

 そして破壊者のお蔭で行動値脅威の20!
 出だしで一撃撃ち込んで陣形をガタガタにするのが御仕事と言えるでしょう。
 エンゲージの離脱能力のなさを補うための行動値と言えなくもありませんね。

GM :
 そんな彼女のHOはこちらです。

Affinity〜つまりは同胞〜 :
   ロイス:タイガーアイ 推奨感情:○P友情/N食傷
   カヴァー/ワークス:任意/レネゲイドビーイングorゼノスエージェント

   あなたはゼノスのエージェントであり、レネゲイドビーイングである。
   それも、そこそこに場数を踏んでいるか、相応に強力な個体なのだろう。
   あなたはゼノス内でも名のある支配型RB「タイガーアイ」とも親交がある。
   そのタイガーアイと交流する最中、彼がふと思い出したように、あなたにこう語って来たのだ。

     朝ご飯感覚で支配し観察し(そのままポイ捨てし)たFHのとある春日なんとかと思われる人物の記憶を覗いたこと、
   すると『リュウグウジマ』なるキーワードと、レネゲイドビーイングのキーワードが記憶野の中で結びついていたこと、
   そして彼はその場所について詳しく知っていたこと………。
   それらを語った彼が次に何を言うか、親交のあるあなたは知っているだろう。

   一緒に行かないか。
   もしくは、ちょっと調べたのちに教えてくれないか、だ。
        ・・
   今回は───前者のようだ。

GM :
 そんなわけで公式NPC「タイガーアイ」を引っ提げるHOとなります。
 便利ポジションです。適度に使ってあげてください。

GM :
 こんなところでPC4の自己紹介を一区切りとしましょうか。

GM :
 えーそれでは最後…。
 PC5の自己紹介です。よろしくお願いします(踊ってから土下座)

■■■ : 

■■■ :

 オレはなにわ探偵・木口龍。

■■■ :
 幼馴染で同級生のLANケーブルとクロトヴァに遊びに行って、
 黒ずくめのカーネイジの怪しげな取引現場を目撃した。

■■■ :
 取引を見るのに夢中になっていた俺は、
 背後から近づいてきたもう1人の春日に気付かなかった。
 オレはその男にαトランスを飲まされ、目が覚めたら……。

■■■ :

 ……ということがあったかは定かではないが記憶を失っていた!

木口龍 :
 ※名刺複製用メモ(失くしたら偽名ごと変えること)※
 『偽名:木口龍』
 『連絡先:080-xxx-xxx』
 『事務所:大阪市西成区』

木口龍 :
 手帳にあったなんかよくわからん内容を読んだオレは、
 書いてあった通りに『木口龍』と名乗ることにして、
 そしてポケットに入っていたレッドブルを飲んだ……。

木口龍 :

 記憶を失くしてもシンドロームは多分(ここ重要)(オレ記憶喪失だから確証無い)同じ!

木口龍 :

 迷宮ありの迷探偵。
 真実はいつも1d10つ!!!

GM :1d10 (1D10) > 1

木口龍 :

 真実はいつも10つ!!!

■■■ :


 ──────
 ────
 ──
 ─


木口龍 :

 ──────

 ボロボロの手帳

 ──────

木口龍 :

 1ページ目

木口龍 :
 ここには、俺が関わってきた事件のメモを記載する。
 ・そして、一番最初に書いていることは、
  万一「俺が俺でなくなった時のために最低限必要なもの」だ。
 ・何かあれば読み返せ。

木口龍 :

 2ページ目

木口龍 :
 ・お前の魂は、何があってもその形を覚えている。
 ・「やらなければならない」と死地に立った時、覚悟を決めろ。その手には既に得物は握られている。
 ・百回死んでも死にきれない痛みが走るだろうが、お前ならばどうということはない。
  ただ狙いを定めろ。引き金を引け。
 ・それだけで、決着がつく。

木口龍 :

 3ページ目

木口龍 :
 ・仕事に必要な知識や情報は、お前の頭の中に入っている。
 ・引き出したい内容を、本を引っ張り出すイメージで使え。

■■■ :

 ……手帳の最後のページ

■■■ :
 『200x年 ガキの頃の誓い。
  これは、北斗星君に呪われたときからの、魂の誓いである』

■■■ :

 『俺は、俺を裏切らない。
  相手が魂を賭けて俺に託したのならば、俺はそれに応えるべきだ。

■■■ :
  始めたことは、終わらせる。
  撃鉄を叩き、雷管を弾けさせろ。己の意志こそが、全てを打破するものと知れ。
  兄貴が死んだときから、これは死ぬまで有効とする』

■■■ :

 ─────

つくよみ :
 はい。PC5、ただの探偵です。
 誰がなんと言おうが、
 オレはなにわ探偵木口龍です。
 記憶喪失なので拷問したところで悲鳴をあげるだけです。

つくよみ :
 それ以外喋ることが無い!!!
 後は任せたぜGM!!!

つくよみ :
 シンドロームはブラックドッグ/モルフェウスのクロスブリード。
 また、今回に限り、特殊で『インスピレーション』をLv1で習得しています。
 この辺はGMが後で貼ってくださるHOに記載されていることでしょう。

つくよみ :
 やることは変わりません。
 ミドルフェイズではデータブレインの力を借りて情報収集し、
 バトルパートでは『雷の残滓』を何がなんでもブチこんで蛇毒をねじ込む。
 それだけを目標としたビルドとなっています。

つくよみ :
 アイテムアーカイブ導入に際し成長も少し変えて、
 ・ハンドレッドガンズを最大レベルで習得。
 ・リミットエフェクト『魔弾の悪魔』習得。
 ・その他エフェクトレベル上げ+それに伴い『ロックオンサイト』導入。

つくよみ :
 ……と、なっております。

つくよみ :
あとは本編がどうなるかしか私はわからないぜ。
というわけでよろしくお願いしまーす(レッドブル呑みながら)

GM :よろしくお願いします(すり替える)

GM :えー先にHOから開示します。

Saver〜絶対救うマン〜 :
 ロイス:任意のPC、またはNPC 推奨感情:○P任意/N任意
  カヴァー/ワークス:任意/任意

  あなたは○○(任意の名前を入れる)絶対救うマンである。

  以上で説明はほぼ終了した。OPは登場したキャラの『ワークス』や動機によって可変する。
  あなたはロイスとして取得したキャラクターに対しポジティブな感情を懐き、
  その人物の日常への帰還、またはその人物の目的を果たすために活動することになるだろう。

  これはPCでもNPCでも構わない。
  ただし公式のNPC以外は、ハンドアウト取得後に選択できるものから選ぶこと。

  ただし、あなたはこのロイスを『タイタス』にしてはならず、必ず守り抜かねばならない。
  余談だが、ここを救う気がない場合は、この部分を『絶対殺すマン』に読み替えて構わない。
  その場合は『タイタス』にしても良いが、
  ロイスに設定したキャラを「本編に登場する限りは」何があっても殺すという信念を持つこと。
  ちなみにこれは、ロイスに設定したからと言って対象が本編に登場することを確約するものではない。

GM :
 【なお、あなたはこのハンドアウトを取得した場合、このセッションに限り、経験点、シンドローム、その一切に関係なく『Dロイス:複製体』の取得方法と同じ扱いで『インスピレーション』をLv1で取得する。そして、その演出方法はGMが主導して行う。】

GM :
 記憶喪失のオーヴァード…?
 妙だな…。

GM :

 というわけで今回このHOは「投げて来たら相応の“覚悟”をしろよ」という、
 HOからしてフザケ倒した『雪合戦やろうぜ!俺雪玉に石詰めとくよ!』枠で。
 そこに乗って来たのがこちらのなにわ探偵木口龍です。

 もう一度言います。なにわ探偵木口龍です。
 なんか知らないけどすき家のレシートがポケットに入っていたそうです。

GM :
 見事にフザケ倒したキャラが飛び込んできましたが、彼を責めないで下さい。
 
 白状しますと、最初にキャッチボールと称して顔面に剛速球をぶつけたのは僕です。
 そのあとカウンターでこっちに剛速球が飛んできただけなのです。まさか先制攻撃を仕掛けて来るとは………。

GM :
 剛速球のわりにビルドが妙に堅実なのも続投PCだからですね。
 問題はデータブレインがステージと噛み合うかですが、やってみなければ分からないとも言います。

 そんな彼ですが、スタートダッシュから頑張ります。
 というか頑張って貰います。よろしくね。

木口龍 :よろしく頼むぜ!!!

GM :任せて下さい ブレーキは破壊しておきます

GM :
 というわけで皆々様自己紹介が終わりました。
 一先ずお疲れ様です。


トレーラー

GM :
 続いては早速最初のシーンへ………。

 と参りたいところですが、
 改めてのトレーラー公開となります。

GM :では少々お待ちください。

GM :

◇ ◆ ◇

いつか必ず、会いに行こう。 :
 十年、百年、千年………どれくらいの時間が掛かってでも。
 俺は、お前の所に還るのだ。

昔の話だ。 :
 ひとりの男が、ひとりの女に恋をした。
 煌びやかなものを見て、美しいものを知った。
 女は自分に幻想を見せた。何時までも溺れていたいような幻想を。

けれど、 :幻想より浮上した果ての現実は………。

どうしようもないほどに、 :█████ものに見えた。

時は流れて :
 20XX年、夏の熱気が臨界点に達する9月の半ばごろ。
 太平洋の側に、ひどく巨きく、瞬きほどの時間だけ、レネゲイドの息遣いが聞こえた頃。

 これは、その時のお話だ。

日常の側にいたはずのものが、 :非日常を運ぶ嵐に巻き込まれて。

敗北を刻まれた戦士は、 :再び敗北にめぐり合い。

調査のために降り立った者が、 :御伽噺のような風景を前にした。

人への好奇心を骨子とするいのちは、 :その同胞と識るだろう。

だれかに望まれた救いの手を、 :その縁として。

あるいは今この時まで、 :男の妄執が叶う機会などなかった。

今この瞬間、
引き込むように縁がめぐり合うまでは。

水底に人はまぼろしを夢想する。 :引き込むような、重力の井戸の底に。

ダブルクロス The 3rd edition《Beyond The Sea》 :
  / プレイヤー想定人数:4〜5人     /       
 /  想定経験点: 172〜220点       /
/   サプリメント適用:CRC,NC除く /

        Now_Loading...

ダブルクロス─── :それは、裏切りを意味する言葉。


【シーン1:切欠】

SYSTEM :
【シーン1:切欠】

 登場PC:シホ
 登場侵蝕:あり(特殊)

SYSTEM :

Tips-レネゲイドビーイング

 レネゲイドそのものが知性を持った存在。
 かつて弱弱しい知性しか持たないか、長く存在できない不完全な個体ばかりだった彼らは、
 20年前のレネゲイド解放を以て知性を伸ばし、ゆっくりとその存在を増やしていった。

 変化が明確となったのは“面影島事件”と呼ばれる事件であり、
 これ以後、彼らは共通してある欲求を持つようになった。
     ・・・・・・・・
 それが、人間を理解したいという欲求である。

SYSTEM :
 登場侵蝕についてはOP中
「振っても振らずともどちらでもOK」という形態を取ります

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 201X-XX-XX
  東京首都高

SYSTEM :

 ………時刻を見る。
 午前1時。静まり返り、夜の闇に閉ざされることを知らない首都の街並み。

SYSTEM :

 知らぬものは感じ入ることの一つもあるだろうし、知るものにとっては日常風景だ。

 そのドライバーと同乗者は、これを意に介した様子もない。
 あるいは後者であるのもそうだろうが、それ以上に。
 夜間の高速道路を走行する貨物輸送用の大型トラックの中で、彼らは適度な緊張感を伴としていた。

SYSTEM :

 彼らがしているのは仕事だった。
 ただ………。
 まっとうな仕事だったのかと言われると、少々首を傾げたくもなる。

“ディアボロス”春日恭二 :
「………どうだ?」

FHエージェントA :
「ハッ! 前後の護衛車両からの異常報告ありません」

“ディアボロス”春日恭二 :
「よし………」

SYSTEM :
 201X年現在、世界は尚も変化を表舞台に曝け出すことなく。
 薄氷の上に、平穏を飾り立てているが。

 その薄氷一枚張った水面下では、いつも変わらず、思惑が渦巻いている。
 レネゲイドウイルス───これに感染し、超常的な力を手に入れた存在。
 オーヴァードの、思惑だ。

FHエージェントB :
「しかし…、ここまで内密にヤる必要があったんですかね?
 東京はてんてこ舞いだし、日本はあっちこっちで導火線に火をつけてる」

FHエージェントB :
「輸送するものなんて“あれっぽっち”なんだ。
 今時、あれくらいじゃカネにもならない。脅しにもなりゃしませんよ」

SYSTEM :
 
 超常的な力には対価があり、その対価を乗り越えたオーヴァードにも種類がある。
 己の力を隠し、抑え。人間として生きて来たところにある縁を護ってきたものもいれば。
 その逆で、手に入れた自分の力を抑圧せず、己の思うが儘に振る舞うようなものもいる。

“ディアボロス”春日恭二 :
「………この護送任務はコードウェル博士の息が掛かっている」

FHエージェントB :
「───博士のですか?」

“ディアボロス”春日恭二 :
「そうだ。でなければ、件のICチップ一枚にも、積荷の“コイツ”にもこんな手間はかけん。
 思うに『ヘルタースケルター』が怖いのさ。ヤツと来たら、どっちの思惑で動くか分からんからだ」

FHエージェントB :
「はあ………ですが“ディアボロス”。
 それでもこんな護衛がいるんでしょうかね?」

“ディアボロス”春日恭二 :
「さあな。重要なのは、FHのコードウェル博士が………。
 この任務を“それなり”に重要視しているということだ」 

“ディアボロス”春日恭二 :
「諸君らも出世はしたいだろう? グチグチ言わず、任務に励むことだ」

SYSTEM :
 たった今、部下となった者達に語り掛け、微妙な反応を返された男は後者だった。
 先の話にも無数の分類がある。二つの縞模様だけで世界は作れない。

 この“ディアボロス”───春日恭二という男も、分類としては後者であった。
 彼もまた努めて冷静に振る舞っているが、こんな「使い走り」めいた仕事を寄越されたことに、若干の不満がないではなかった。人を越えた者であること、任務の不透明さ、その任務に対する警護の仰々しさ………全てが“疑惑”に包まれていた。

SYSTEM :
 とはいえ、楽な任務だったとも彼は思っていた。

“ディアボロス”春日恭二 :
「………警護車両にそれぞれオーヴァード部隊が1チーム、合計2チーム10人。
 各輸送車両には上級エージェント1名と麾下エージェント2名………」

「ワーディングによる短絡的な情報工作ではない、カネとヒトを使った人払い………。
 時間を同時にしたダミーデータを積んだ輸送トラックの複数展開………」

SYSTEM :
 春日恭二は口元を緩める。
 こんな、たかだか“ひとつ”の輸送のために慎重になり過ぎだという失笑か。
 あるいは彼の中で際限なく“ひとつ”に対する価値が高まっているが故の期待の笑みか。

“ディアボロス”春日恭二 :
「こんな警備で攻めてくるバカはおらんよ」

SYSTEM :
 このような勝ちの決まった任務では、己の再起の足掛かりに対して役不足だという態度なのか。
 洩らした言葉は、恙無い任務の終了を確信しているように見え、誰も異論を挟む余地はない。

FHエージェントA :
「───いえ」

SYSTEM :
 はずだった。

FHエージェントA :
「バカは、来ます」

“ディアボロス”春日恭二 :
「何だと?」 

SYSTEM :
 春日恭二はその不可解な部下の言葉に怪訝な顔付きになり………。
     ・・・・
 そして、気付いた。

FHエージェントA :


「たたたタとえバ、こんなふウにににに」

“ディアボロス”春日恭二 :
   ドライバー
「───運転手、どけッ!」

SYSTEM :
 部下のひとりのあまりに虚ろな目、回らない呂律。
        アラート
 それに己の中の警鐘が鳴る速さは、腐っても“悪魔”の男。 
 すぐさま“ディアボロス”の名に恥じぬ怪腕が闇を切り裂いて現れると、窓ガラスごとかち割るように、その部下の頭に暴力が放たれる。直撃したならば、その時は現在輸送中の大型トラック一つさえ叩き潰せるほどの超腕力が、数秒前まで部下だった者の頭を頭蓋ごと柘榴に変えて吹っ飛ばしたのだ。

SYSTEM :
 ───そして、コンマ1秒。

 高速道路に投げ捨てられた遺体が───。

SYSTEM :
 ・・・
 爆ぜた。

SYSTEM :

◇ ◆ ◇

タイガーアイ :
『ふむ。判断が早い。
 見事だ。生死の分水嶺をよほど潜って来たらしい』

SYSTEM :
 あなたを後部座席に乗せていた男───。
 厳密には、後部座席に乗せていた男の首に掛かった宝石が、暢気に呟く。

 外部パーツに覆われた奇妙な宝石が言葉を発する、という聊か有り得ない光景の中。
 当人(?)だけは確実に、どこ吹く風という様子で状況を見ていた。

SYSTEM :
 人払いが行われ、渋滞とは一時無縁となった首都高において、
 ともすればファルスハーツよりもはるかに横暴で、無法な行いをするものが一両。
 本意かはさておき、そこには法律も常識も状況もへったくれもありはしなかった。
 
 風を切る漆黒の機体は、他でもないその『超人』が改造し手掛けた二輪バイク。

タイガーアイ :
『この距離での“ジャック”ならば、事前に聞いていたあのオーヴァードは持てる力の全てを駆使してラグなく自爆に移ったはず。
 しかし放り捨てるまでの判断、維持されている車両………。
                バディ
 ───以上から結論。敵健在だ、同業者』

SYSTEM :
 後部車両を気付かれる前に無力化し、中央の輸送トラックに接近。
 首都高を経由して、FHセルからFHセルに輸送されるという何かの確保。

 その依頼を与えられたシホは、先の人種のどちらでもなく。
 そも、ある観点でモノを見たならば人であるかも怪しい者だ。
 転じて、そんな彼らを寄せ集め抱えた組織も、また同様に。

SYSTEM :
   ゼノス
 ───余所者とはよくも言う。

 彼らはどちらにも属さないはぐれものの蝙蝠野郎。
 あなた方の此度の仕事は、そのFHに敵対する人間との連帯によるものだった。
 
 普段のあなたにとっては、少なくともめずらしい分類の仕事である。

《朧の狩人》シホ :

《朧の狩人》シホ :
.Copy
『了解。対応速度を考慮するに、噂通りの腕利きと見える。
 ああ……ところで、積荷についての情報が不足している。彼らも襲撃を予想しての警備態勢となれば、衝撃吸収の用意もあるだろうか?』

タイガーアイ :
『積み荷はアンノウンだ。
 用意周到に“バラけて”くれた。事前に聞いている通り、2つはダミーで1つが本命。
 2つのダミーには他のものが当たっている』

タイガーアイ :
『だが我とお主のクライアントに曰く、“当たり”は単なる情報メモリだそうだ。障害の生死は問わぬとも』

《朧の狩人》シホ :
『それだけ判れば十分だ。
 直接の武力制圧による無力化は少々手間だろう。まず彼らの足を奪う。』

タイガーアイ :『妥当な判断だ』

タイガーアイ :
『運転手諸共の無力化には失敗した。
 従って第二段階に移行しよう。心理状況から推測するに………』

SYSTEM :
 輸送トラックの背中が見えてくる。
 それと同時に、エンジェルハイロゥの強化された聴覚が、何かを察知する。

 怒号、気配、殺気───。

“ディアボロス”春日恭二 :
“───積荷を出せ!”

FHエージェントB :
“しかしアレは、”

“ディアボロス”春日恭二 :
“構うな! 
 次に接近されたらこっちがやられる!”

SYSTEM :
 そのトラックの曰く“積荷”が、解放される瞬間を予測する。
 
 強力なレネゲイドの波濤。
 言うなれば、侵蝕限界値=100%を越えた個体。トラックの積載から顔を覗かせるものは、しかし───。

FHジャーム :
「───█▇█▇██▇█▇▇───!!!」

SYSTEM :
 飛び掛かる数秒前。

 テリトリーに入らんとするこちらに、
 今まさに牙を剥く、典型的かつ古典的な“成れの果て”。
 ゼノスとしては何の生存価値もない類のジャームである。

《朧の狩人》シホ :
『───積荷の“衝撃吸収”は必要なさそう、か。』

タイガーアイ :
『うむ。
 ありていに言って“はずれ”であるようだ』

SYSTEM :
 淡々と“ダミー”の報告をするタイガーアイと同時に、彼我の距離が近づく。

 扉が開け放たれ、こちらを視認したFHのエージェントが、
 自動小銃を片手に迎撃の構えを取る姿も、まだ見えないが予想は付くだろう。 

タイガーアイ :
『接敵と同時に撃ち抜け。
 車でもジャームでも、エージェントでも、どれでも構わぬ。近付いて第二手で動きを止める』

《朧の狩人》シホ :
『応答は略す、衝撃に備えろ』

タイガーアイ :
 了解
『Copy』

SYSTEM :
 距離が縮まる。
 寝起きを起こされた“成れの果て”が飛び掛かるまで、

 5秒、4秒、3秒………───。

SYSTEM :
【Check!】
 判定が発生しました。

 判定:〈射撃〉
 目標:6/8
 Success:イベント進行
  Failed:HPダメージ[1d10] or 侵蝕率+[1d10]

 備考
 ・「エージェントまたは車を撃ち抜いて無力化/殺害する」場合は6
 ・「ジャームを撃ち抜いて無力化/殺害する」場合は8

SYSTEM :
 判定となります。
 判定時に宣言するものなどがない場合は、そのまま射撃でダイスを振ってください。

 ndx@C値+判定値 と言った具合です。

SYSTEM :
 なお、どちらを撃ち抜いてもシナリオが進行することに変化はありません。
 あなたの裁量で判定難易度を選択してください。

《朧の狩人》シホ :
……私はジャームの狩人。その選択を誤ることはない。
無論、ジャームを狙撃し無力化する。エージェントはオマエに委ねよう、タイガーアイ。

タイガーアイ :
 重ねて了解した。
 我々の知識欲求には個体差がある、
 支障はないとも。

《朧の狩人》シホ :
だが、その前にひとつ確認事項がある。
ワタシの通常兵装は運用時に少なからず反動ダメージが生じる。そちらの判定は今回は必要か?

SYSTEM :
 確認に回答します。

 行うのは「射撃技能」を使った判定であり、
 攻撃を行うための命中判定ではありません。
 そのため、処理の関係から反動ダメージは生じません。

SYSTEM :
 実際の攻撃プロセスを行うのではなく、「射撃技能を参照した判定を行う」という形になるわけですね。

《朧の狩人》シホ :
把握した。それでは狙撃を実行する。
終わったものに、終止符を。

《朧の狩人》シホ :7dx10+9 狙撃実行 (7DX10+9) > 10[3,5,6,8,8,9,10]+1[1]+9 > 20

SYSTEM :
【Check!】
 判定に成功しました。 

《朧の狩人》シホ :
 眼前に迫る成れの果て、彼らFHが重用する使い棄ての兵器達。
 猛り狂うその様は、百獣を治めた王のなりそこないを思わせる。緩慢に、獰猛に、喰らうべき標的を捉えた愚王はその口を可動限界まで抉じ開けて癒えぬ渇きを潤しにやってきた。

《朧の狩人》シホ :
 アスファルトを削る荒くれた重低音。機体に備え付けられたバーニアが火を噴かす。
 選ぶ択はひとつだ。減速でも、回避でもなく。

《朧の狩人》シホ :
『Renegade Smith Hearth
 抗レネゲイド弾薬精製機構の起動を確認。発射シークエンスに移行。』

3秒。

《朧の狩人》シホ :
『    EML
仮想電磁加速砲モジュール構築。エネルギー充填開始…』

2秒。

《朧の狩人》シホ :
. All set
『全行程完了。標的までの着弾時間、推定約0.07秒。』

───1秒。

《朧の狩人》シホ :
 いつも何ら変わらない。ただ無味なだけの乾いた作業だ。
 銃口を擡げ、照星を掲げ、照準を合せ、引鉄を引く。
 ただそれだけの行程に敢えて大仰な名を附す理由もない。
 故に、それには技術体系としての名ではなく、在るべき儀礼としての名を冠した。
 一つの死を迎えてもなお常世に還れぬ魂たちに、来るべき惜別を告ぐ嘆きの調べ。

《朧の狩人》シホ :
.     Nemain
その名を────弔銃と。

SYSTEM :
 刹那。
 典型でもあるが故の肉体的頑強性と精神的欠落性を備えた、夜色の獣の視界に映るものがある。

 飛び掛かる寸前の彼は、まさに本能以外を頭に宿していたとは言い難い。

 ジャームとはそういう分類だ。常に頭の箍が外れている。本能のまま、心を突き動かす衝動のままに、生きながら死んでいる。

FHジャーム :
「───█▇█▇██▇█▇▇───!!!」 

SYSTEM :
 だが、その視界。

 飛び出す頭を抑え、胴体を貫いて、尾へと駆け抜けるもの。
 .  シルバーバレット
 狩人の銀の弾丸。
 死を忘れ、彷徨う朧をこそ屠り、否。

 弔われぬまま死んだものを彼岸へ送り返す弾丸。
 物理的破壊力は電磁加速によって保障された抗レネゲイド弾。

 そこの付加価値は言うに及ばず。

SYSTEM :
 それが彼/彼女の最期の光景となった。 

SYSTEM :
 着弾と同時に、『ドライバー』が距離を加速する。
 高速道路を転がって、恐らくはサラマンダーシンドロームの個体だったのだろうそいつが、高速道路に撒き散らす炎の残滓を踏み抜けて進む。 

“ディアボロス”春日恭二 :
“バカな! 一撃───!”

“ディアボロス”春日恭二 :
“いや違う、何をしているドライバー!
 距離を───!”

SYSTEM :
 そしてその一撃で反応が遅れ、
 唯一反応できた男の間合いは彼女より遥かに狭い。

 序でに言うならば、その“ドライバー”と比較しても話にならぬ。

タイガーアイ :
『ドライバーから応答。
   HELLO WORLD
 射程圏内へ、ようこそ』

SYSTEM :
【Check!】
 タイガーアイがエフェクト「ナーブジャック」を使用します。

SYSTEM :
 そしてこの射程に入れば、
 それのみにおいて脅威となる“エージェント”が彼(暫定)だ。

 もはや一撃必殺。適う道理はない。

“ディアボロス”春日恭二 :
“ぐ───ヌ、ゥ───”

SYSTEM :
 車両の出せる最高速で走っていた車が、ドライバー諸共の無力化に伴い、そのスピードを緩めて行く。

 停止までは1分と掛からないだろう。

《朧の狩人》シホ :『流石の手際だ。追撃はご所望だろうか?』

タイガーアイ :
『我に聞くか?
 どういう答えを返すか推察の一つもしていよう』

SYSTEM :
 タイガーアイ───その首飾りが暗に訴える。

 無力化して以降の尋問対象が欲しければ、1名を連れて帰るだけでいい。

タイガーアイ :
 ・・
『無論、追撃を提案する。
 はずれであった以上、大してめぼしいものなど持っておるまいが………』

《朧の狩人》シホ :
『……大方予想通りの返答ありがとう。
 確かに、こうなってしまえば尋問も容易いだろう。ゼノスエージェントならは首肯すべきところだろうが……』

《朧の狩人》シホ :
.        ジャ-ム
『ワタシはあくまで死人たちの狩人だ。
 下手に刺激を加えれば彼らFHのジャーム化を促しかねない。同意しかねるところだ。
 ……先ほどの“思考制御”はまだ効いているか、タイガーアイ?』

タイガーアイ :
『ふむ』

SYSTEM :
 タイガーアイはあなたの言葉に何を思ったのか。
 その結晶体がちかちかと明滅する。

 曰く「考え中」のサインらしいが、それがなくとも彼(暫定)は思考を進め、行動を実行する。

タイガーアイ :
『如何にも生殺与奪は此方が握った。
シャットダウン
 離脱を赦すほどの間抜けには未だなれぬな』

《朧の狩人》シホ :
『ならば話は早い。
 先ほどからの指揮を見るに、恐らく先の“ハズレ”の守護ではオマエが制御したエージェントがお目付け役の上役のようなものだろう。
 “アタリ”に関して何かしら情報のひとつも握っているはずだ。ここはひとつ彼を連れ帰ることで手打ちとしないか?』

タイガーアイ :
『よかろう。元よりそのつもりであった。
 我とてお主の機嫌を不意にする気はない。曰く───こちらの国では“わやに”とでも言うのだったか』

SYSTEM :
 それに、と。
 相変わらず、即席で“拝借”したカラダではない首飾りから、どこから発されているのかも定かではない音が波紋めいて広がる。 

タイガーアイ :
『クライアントの───“プランナー”の恃みもある。アタリを引かずに手ぶらで帰るわけにも行かぬな。
 続きは上役の頭に直接聞くとする』

《朧の狩人》シホ :
『了解
 Copy。頭の中はどんな玉手箱になっているのか…楽しみにしておこう。』

タイガーアイ :
『努々、落胆の準備も忘れぬことだ。
 ファルスハーツの指先が握る情報など、
   ジャンク
 概ね我楽多の山が精々よ』

SYSTEM :
 ………丁度、他の地域でも“大捕り物”はほぼ終わったようだ。
 尋問ともなれば彼の領分。敵は無力化し、護衛用の戦闘用“オーヴァード”は始末した。

 普段とは聊かに違ったが、
        オーダー
 恃まれていた追加依頼は一区切りだ。

SYSTEM :
 停止したトラックから、よろよろと男の片割れが歩いて来る。
 もう片方は、後は“何があったのか”も忘れて何処かに放逐だ。

SYSTEM :
 ………未だ灯りも消えねば悲鳴も上がらぬ。
 首都高で微かに上がる火の残滓が、ばちばちと火花を散らすだけの音が、耳に響いた。

 夜の帳の中で、世の中は変わらず回る。

SYSTEM :

 ◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 かくして、“仕事”はひと段落。
 ゼノスエージェントが纏う隠れ蓑の一つで潜り抜けた先で、彼女の現在の滞在先に戻った後のこと。

SYSTEM :
 先日の出来事が記憶に新しい中。

 彼女の現在の滞在先に、現在の暫定協力者が転がっていた。

タイガーアイ :
『先の任務の結論のみ、日本語に言い表す。
 骨折り損のくたびれ儲けであったようだ』

SYSTEM :
 その暫定協力者───コードネーム:タイガーアイが。
 恐らくはそこにあなたしかいないのだから、あなたに向かって話しかけている。

SYSTEM :
 この明らかに人間ではない奇妙な生命体は、レネゲイドビーイング(以下、RB)。
 レネゲイドが知性を持った存在であるが、
 知性を持たぬものに感染し、それが暴走せずに理性をはっきりと保つことは希少な例である。
 
 タイガーアイは、潜入工作を任され、高い任務達成率を誇るゼノスのメンバーだ。
 RBの例に洩れず、好奇心が大きく、知識欲も大きい。あと、ついでに態度も大きい。
 そんな彼がリラックス(?)状態でテーブルに転がりながら零した発言は、先の任務の顛末である。

SYSTEM :
 ゼノスのエージェントと協力して行った、FHのデータ奪取任務。
 復興中の東京、あるいはそこに滞在するFHセルに届けられる予定であったことは間違いないが、
 複数が出発し、その殆ど全てが同胞の手で抑えられ、そして比較的脈絡のないデータか、先のような“番犬”であった。

 ………あなたにしては、珍しい任務である。
 あなたはゼノスの協力者。メンバーではなく、利害/意識の一致で仕事を受けている。
 そのシホにとって、銃先が捉えるものは、たいていの場合ジャームであった。

《朧の狩人》シホ :
「……念の為確認する。
 まさかとは思うが、オマエはワタシが判断ミスをしたと言いたいのではないだろうな?」

 “徒労”の一言は、否応無く体力を削ってくれる。体重を古びたソファに預け、目の前に転がる先の『同業者』をやるせなしに睨んでみる。
 彼は識別名《タイガーアイ》。名に違わぬ容貌と名に見合わぬ知性を有する、ワタシの友人だ。

《朧の狩人》シホ : いつも何処の辞書から引っ張り出してきたのかも分からない素晴らしい知識でワタシの焼けた脳領域を何割か圧迫してくれる。
 …その知識の残骸からワタシの喪った悟性の破片を見つけられるとよいのだが。文字通りに藁に縋る程度の期待を抱いて交流を深めている。

タイガーアイ :
『曰く。
 火の無いところに煙は立たぬ』

SYSTEM :
 概ね冗談を言う時の音のトーン。
 タイガーアイは、そのままテーブル席で軽く転がりながら、その音(人により雑音)を発している。

タイガーアイ :
『厳密に言うなれば、メモリとやらについての心当たりはあの男になかった。
 我の個人的欲求に足るものは幾らでも、というところだ』

タイガーアイ :
『あれなる男について頁をめくり終えた時の感想は、中々筆舌に尽くし難いところがある』

《朧の狩人》シホ :
「……良かったじゃないか。オマエは“収穫なし”でも無さそうだ。
 アレが、かの有名な《ディアボロス》だったとはワタシも予想外だった。こんなところでお見かけするとは」

 ……春日恭二、識別名《ディアボロス》。FHでは広く名の知れたエージェントの一人だ。
 FHにおいて“春日”という名前は一定の地位を築いている。ワタシの数少ない記憶にもその名は刻み付けられている。

《朧の狩人》シホ :
 伝え聴く話と記憶を照合するに、彼はFHでも秀でたエージェントの一人だ。重要任務にアサインされること幾多、UGNとの交戦回数はFHでも指折りの不死なる悪魔。
 幾度と倒れ伏してなお必ず帰還に成功する彼の突出した生残能力は特筆に値する。

《朧の狩人》シホ :
 それだけ、敗北の二文字に好かれてしまったエージェント……という意味でもある。21gを軽く扱う力を持ったあの組織で粛清の憂き目を免れていることもまた、彼の実力が高く評価されていることを示しているわけだ。
 あえて口にするのは野暮かもしれないが……

《朧の狩人》シホ :
「つまり、“また”敗北したのか。」
 彼、これで通算何度目の敗北だろうか。

タイガーアイ :
『いかにも。
 本人の理解と思考に何ら落ち度はないが、毎度のように想定外か不幸か裏切りに遭う男であった』

タイガーアイ :
『それ故に、ペットで喩えると“放し飼い”の使い方が適切な男と見える。今回も然りだ。

 何を輸送していたのか、何を探っていたのか、その是非について探ってみたが………。
    ・・・
 本当に運び屋であったようでな。荷物の詳細を聞かされてはおらぬようだった』

SYSTEM :
 ………しかし。
 勿体ぶって、彼は音の並びを続けてみせた。

タイガーアイ :
『ひとつ、気になるワードと座標を頭に入れていたようであった』

《朧の狩人》シホ :
「……“気になるワード”?
 今回の任務に関するものでも、いつもの有難い説教の類でもなく、か?」

タイガーアイ :『然り』

タイガーアイ :
『お主の受ける依頼と此度のソレは気色が少々違う。
 此度にて、我とお主は“プランナー”きっての御指名であったわけだが』

SYSTEM :
 あなたの普段のルーチンワークを思えば、ジャームとの関連性も極端にないような“輸送の妨害”など、珍しい分類に入る。
 利害の一致もあるかは微妙なところだ。

 …そのあなたが仕事を受けた/受けざるを得なかったのはどうしてだろうか。
 FHの行動を事前に阻止するというもののためか、あるいは、プランナーの指示によるところが強いのか。
 まあ、どちらでも構わない。これはあなたにとっての“過程”だ。
 ついでに、この気まぐれで尊大な『鉱物』の言葉が齎す“過程”は、若干聞き飽きるほどの付き合いがあった。

タイガーアイ :
『そしてこの“プランナー”の恃みには続きがある。
 厳密には、ついこの間、この“ディアボロス”の尋問の結果出来たとでも言おう』

SYSTEM :
 なお、話している最中にさりげなく。
 本当にさりげなく、彼は『尋問終了後に“ディアボロス”は脱走し姿を晦ました』とつぶやいていた。
 恐らく認めたくないのだろう。

タイガーアイ :
 ・・・・・・・
『リュウグウジマ、だそうだ』

《朧の狩人》シホ :
「……………………」
この際、もう慣れている。下手に言葉を与えることもない。用済みなら構わない。そういうことにしておこう。

《朧の狩人》シホ :
「……………いや、まぁ。『玉手箱に期待する』とは言ったが。
 ワタシを揶揄っているわけじゃないだろうな?」

 流石に指摘してやろうか。

タイガーアイ :
『残念ながら真実だ。
 我は自分の知的好奇心とその結果に対しては嘘を吐けぬ』

タイガーアイ :
『それ故に受ける誤解についても想定の範囲内であり、遺憾の意を表明する。

 揶揄などとても。我がそんなヒマと思うたか』

SYSTEM :
 リュウグウジマ………竜宮島。
 日本昔話に曰くの浦島太郎、海の底に広がるという件の“アレ”だが、
 そちらの場合は『竜宮城』である。

 分かっているだろう訂正をわざわざするおまけ付きだ。

《朧の狩人》シホ :
「まぁ、或いはオマエならとは。
 …そう易々と怜悧を誇れる単純な頭が羨ましいよ。」

《朧の狩人》シホ :
 つい先程受けた冗談をお返しなどしながら、思案を巡らせる。
 冗談なのか素面なのか何とも判断のつかない物言いをするこの賢い友人は、こういう言葉の選び方をするときは大方“真実”を語っている。

 ……そして、そういうときは大概の場合。
 “冗談の方がマシだった”とでも言いたくなる何かしらを掴んでいる。

タイガーアイ :
『事実に謙遜は不要である。
 故に訂正をしておくと、我のそれは“記録”であり経験ではない』

SYSTEM :
 故に好奇心は尽きぬし、故に怜悧などと誇りもしない(本人?的には)───と言いたいらしい。
 逐一の淡々とした音の波紋。彼は本題に戻ってなお、その調子であった。

タイガーアイ :
『その座標は太平洋方面、日本近海に存在し………。
 座標についてはさておくとして』

タイガーアイ :
『“ディアボロス”めの記憶野に結びついていたものは………レネゲイドビーイング。
 そしてその何もないはずの海上には、何事か知らぬが、強力なレネゲイドの反応が昨今から確認されておる。
 我にも聞き覚えがあるくらいだ』

タイガーアイ :
『その規模については文字通り、島一つを丸ごと覆う超弩級RBを想像しておった』

SYSTEM :
    ・・
 なお、想像である。
 ディアボロスは実際に知らず、誰かから聞かされたのかも定かではない。

《朧の狩人》シホ :
「それはまた……穏やかではなさそうな情報だ。
 しかし、それはあくまで“想像”なんだな? 晨星を頼りに星辰を紡ぐような真似だ。その気になれば亀でも水瓶でも竜宮城でも描けそうだが」

 それに、もしもその“超弩級”とやらが本当に存在するならUGNとゼノスのどちらかが黙ってはいなさそうなものだが……。

タイガーアイ :
『如何にもソレはただの想像である。
 そもそも“ディアボロス”は優れたエージェントであっても、適切な未来を描く戦略家ではなく、ましてや預言者ではない。

 人はこれを妄想と呼ぶであろう』

タイガーアイ :
『しかし“何事かの反応”があったことは事実のようでな。
 件の輸送計画の“本命”がそちらに繋がっていることについては疑うでもない。
 つまり、あるとは分かっている箱の中身だけが不明なのだ』

《朧の狩人》シホ :
 もしディアボロスが預言者だったならば“ああ”はなっていなかっただろう。と内心でひとつ相槌を打つ。
 もし目の前の球体がそれであったとしても、“ああ”はなっていなかっただろうし。

《朧の狩人》シホ :
 だが、それは《タイガーアイ》も承知の上のこと。『我のそれは“記録”であり経験ではない』───彼自身がそう口(?)にしたように、彼は己を預言者などと自惚れはしまい。

《朧の狩人》シホ :
 つまるところ。

 「続きを聞こう」

 先の徒労も、単なる骨折れでは終わらない目処が立ちそうだ。

SYSTEM :
 からん、と満足げに打ち鳴らす音。
 テーブルの上で、タイガーアイが縦にころころと転がった音だ。

タイガーアイ :
『いかにも。シホよ』

SYSTEM :
 そして改まって“タイガーアイ”がこんなふうにあなたの名前を呼ぶとき。
 それは概ね二つの可能性に分けられている。

SYSTEM :

 ご存じの通り、タイガーアイには足がない。腕もない。モラルは必要分のみある。
    オリジン・ミネラル
 そんな“鉱物生命体”に人一倍強い好奇心が備わっているとならば、
 奇怪な情報はその手で調べ上げねば気が済まぬし、あまつさえそれを口頭で満足する性質ではない。

タイガーアイ :

『現代的な言葉および解釈を以て、
 お主に我の要求を通達する………。
 ・・・・・・・・・・
「私をシマに連れてって」』

《朧の狩人》シホ :
「─────────」

《朧の狩人》シホ :
 前言撤回。
 あるいはこれ、別の骨を折りそうだ。

タイガーアイ :
『鳩が飛んできた豆鉄砲の打ち所も悪く息絶えたかのような、会話を拒むその顔はどうした』

《朧の狩人》シホ :
「いいか、《タイガーアイ》。
 ワタシはレネゲイドビーイングだが、ワタシはヒトでもある。
 つまりワタシの口はひとつしかない。」

《朧の狩人》シホ :
「よって同時に二種類以上の抗議はできない。
 まず一つ。その口調については厳重に抗議しよう。ワタシの数少ない記憶が拒否反応を起こしている。」

《朧の狩人》シホ :
「そしてもう一つ。ワタシがオマエを連れ歩けと?首にでも掛けてか?
 第一どういう所なのだ、その“リュウグウジマ”とかいう場所は」

タイガーアイ :
『なんと』

SYSTEM :
 タイガーアイはそのつぶらな瞳(本体)であなたを訴えている。
 何故断る? 我オルクスぞ? ナーブでジャックぞ? とばかりの視線である。

《朧の狩人》シホ :
(ワタシもオルクスだ、いう冷ややかな目)

タイガーアイ :つまりイーブンということになる

SYSTEM :
 しかしそれも割と彼なりの冗談だったのか………。
 雰囲気だけ居住まいを正すを正すと、冷ややかな視線をしめやかに弾きながら音を続けた。

タイガーアイ :
『まあ、待て待て。我とて己が欲求のみでお主に頼もうというのではない。
 動機を説明した。ならば根拠と対価の話であり、質疑応答に移行する時だ』

タイガーアイ :
『先んじて二つ目の抗議にのみ応答しておくと、前者は何時も通りだ。適当に“アテ”を作る。

 後者については、それが分かっておるならば我の食指は動かぬ。ただの無人島などであれば、探検家にでも漁らせておけばよい』

タイガーアイ :
『そしてこの情報については既に“プランナー”に通してある。
 
 我々の同胞か、あるいは同胞ではない理性なき怪物か………。それ以前にそもそも存在するのか………』

タイガーアイ :
『“プランナー”の反応は正直、我の期待通りではなかったのだが………。

 その日本近海のR反応について“無視”を決め込むことはしないという点で、見解の一致を得られたよ』

《朧の狩人》シホ :
「……流石、手も話も早いものだな。
 “プランナー”と見解が一致したとなれば、あとは誰が動くかの段階か」

 そも、ワタシが当った任務の依頼人も“プランナー”だった。今回の件がどこまで彼女の“プラン”とやらに組み込まれているのかは知る由も無いが……任務の成果物だった筈のものと“リュウグウジマ”とやらに何らかの接点があるのなら、放置はしないというのも道理だろうが。

《朧の狩人》シホ :
 ……正直なところ、ワタシにも動機が無いではないのだ。
 島全体を覆い尽くす神話のようなレネゲイドビーイングはまず実在しないと見ていいが、『島全体を覆うに足るほどの力量を備えた怪物』がその島に巣喰う可能性は否定できない。

 そして、理をも我が意に従わせる狂奔を抱えたモノは、得てして理性の枷から解き放たれた“死人”であるものだ。

《朧の狩人》シホ :
「───それでは、対価の方は?」
 ……とかく、今は話の続きを聞こう。

タイガーアイ :
『然り。そも、その場所自体、UGNとFHの双方において全くの無監視・無警戒ではないようだ。
 遅かれ早かれとも言えよう』

SYSTEM :
 そして彼は、対価について伺った彼女に、表情などはないからどんな感情を持ったのかは分からないが。
 また、水晶体がちかちかと明滅した後に、このように音を広げた。

タイガーアイ :
『ゼノス。来訪者。
 聞こえはいいが我らは所詮、人などと、幾らでも知らねば幾らも分からぬところにいる』

タイガーアイ :
『それ故に我々は人間を識る。
 内側の虚を覗くか、外側の“違う”ものを見るか。違いなどその程度』

タイガーアイ :
『………それ故に興味があるのだ。
 それだけ巨きなレネゲイド反応がもしも自我を持っていたのならば………。
           
 何を考え、何を求め、何と繋がり、
 ・・・・・・・・
 何のために生きるのか』

タイガーアイ :
『他者の答えなぞ他者の答えだ。
 しかし、お主にとってもつまらん話ではないはずだと推測している』

《朧の狩人》シホ :「…………………」

SYSTEM :
 要は、そういう欲求を持った生き物の本能的な話だ。
 あなたにとって全く意味のない探索結果にはならないだろう、という。高慢にも、思慮があるようにも聞こえる言葉選び。

《朧の狩人》シホ : …………賢い友人を持つと、苦労する。

《朧の狩人》シホ : 
 レネゲイドビーイングとは、時として、人にも獣にも成り切れぬ余所者のことを指す言葉だ。

《朧の狩人》シホ :
 ワタシがワタシ自身を認識したとき、既にこの力は備わっていた。どうすれば獲物を刈れるかを識っていたし、どのようにすればワタシはワタシを名乗れるのかの口上を識っていた。

 ワタシの身体は、かつて「水崎志穂」と呼ばれていたらしき人間の個体のものだ。幽かではあるが、それを身体が憶えている。

《朧の狩人》シホ : しかし同時に、その力には多くの欠落が存在した。

 『水崎志穂』は何を食べ、何を見て、何を想い生きたのか。
 ワタシの内側にあったのは、それを断片的に伝える“記録”ばかりだ。
 嗚呼、断じて“記憶”ではなかった。

《朧の狩人》シホ :
 ワタシに与えられたのは、朧な砂の器と記憶。
 ワタシには、己を定義するよすがもない。

“友人”の言葉 :
『ゼノス。来訪者。
 聞こえはいいが我らは所詮、人などと、幾らでも知らねば幾らも分からぬところにいる』

『それ故に我々は人間を識る。
 内側の虚を覗くか、外側の“違う”ものを見るか。違いなどその程度』

《朧の狩人》シホ :
「……本当に、羨ましいよ。怜悧を誇るのを、オマエは恐れないんだな」

《朧の狩人》シホ : 心が脳髄に宿るなら
 心が心臓に宿るなら
 心が脊髄に宿るなら
 心が身体に宿るなら───どれだけ、私は楽に生きられたものだろう。

 心は記憶にこそ宿り、記憶は関わりの内に在る。
 ゆえに人々は間に宿る関わりを尊び、関わりを喪った者たちは人を名乗る資格を喪う。
 ならば今の私はどちら側なのか───と、考えてしまうから。
 ワタシはそれを忘れたくて狩人になったのに。

《朧の狩人》シホ :
「ああ、分かったよ。報酬には十分だ。
 手を貸そう、《タイガーアイ》。怪物の気配を前に立ち竦むようでは《狩人》の名も廃れてしまう」

SYSTEM :
 事実に謙遜は不要である、という決まった言葉を彼は返さず。
 だがあなたの答えに、“タイガーアイ”は満足したのだろう。
 宿っているレッドタイガーアイの煌めきが、妖しく輝きを増したように思えた。

タイガーアイ :
       バディ
『成立だ、我が同業者』

SYSTEM :
 そこからの“さて”に全くラグがなかった辺りから察するに、
 高慢ゆえか確信ゆえか、タイガーアイには断られることが思考になかったようだ。

タイガーアイ :
『であれば一つするべきことがある。
 行き方だ。海向こうに身一つで放り出して生き抜ける人型など………。
 我の知る限りでは片手指で数えられる程度にしかおらぬ』

《朧の狩人》シホ :
 候補が複数いるのが恐ろしいところだな

タイガーアイ :
 ちなみに指など我の身にはない。
 そういうことだ。憶測で“知る”とは言えぬ。

タイガーアイ :
『そして我には間借りする器が要り、単純にお主を一人で放り出すには酷だ』

《朧の狩人》シホ : 
「ワタシもそれは御免だな。最低限のバックアップは欲しい」

タイガーアイ :
            バディ 
『然りだ。………そこでだ、同業者』

タイガーアイ :
『ゼノスにはひとつ、組織形態上の利点がある』

SYSTEM :
 時に。
 ゼノスと呼ばれるRBとそれに関わる人間の集まりは、人間の争いから表裏を問わず、一線を引いた位置にある。

 どちらにも着かず、どこにも傾かず。
 それ故に、どこの浅きにも潜り込める。

 言葉を掻い摘んで言うと、だ。

タイガーアイ :
『この太平洋、日本近海のポイント………。
 UGNもFHも、聊かに興味を向けている箇所のようだ。人の動きがある』

タイガーアイ :
『渡りに船、だ。どちらかにコンタクトを取り、潜り込み、無自覚に呉越同舟をやってもらう。
 そしてそこに我を運んでくれれば、あちらで間借りする器は“適当”に選ぶ』

《朧の狩人》シホ :

《朧の狩人》シホ :
「……まあ、薄々そう来ると思っていたところだ。
        ライセンス
 死蔵させていた登録情報 を引き摺り出してくる必要があるが……接触を図るならUGNが妥当だ、登録ほか諸々の手間が省ける」

 間借りする“器”に関しては心配するだけ無駄だ。どうせ単なる忠告は受け流されるし、そこで妙な下手を打つようなら彼は《タイガーアイ》の名を冠していない。

タイガーアイ :
『無論、ゼノスにも興味本位で食いつくものはいようが。
 足の用意から何までさせるとなると、少々手間がかかる』

タイガーアイ :
『学習内容を拝借。
 曰く、ただ乗りは知らぬ顔の人間に限るということだ』

SYSTEM :
 彼、タイガーアイの言葉はかいつまんで纏めるとこうだ。

 UGNもFHもそれぞれ何らかの理由で“その近海”に用があり、ゼノスはゼノスである限りどちらにだって潜り込める。

 あとはUGNの“残骸”として、またはFHの“朧の狩人”として。
 どちらの隠れ蓑を纏って、真偽を確かめに行くのかを択べという話だったのだろう。

 どちらだろうとメリットとデメリットがある。あなた自身が知っていることだ。

タイガーアイ :
『承った。近海へ潜り込み“姿を消した”というとあるFHセルの探索または追撃が、UGNの動機のようだ。
 時期の近さから、此方で一人二人と椅子を用意させることは造作もない』

SYSTEM :
 話だけ聞くと、どこぞの魔の海域だ。
 タイガーアイは何となしにそれを口にすると、水晶体の輝きがうすぼんやりとし始めた。

タイガーアイ :
『質疑応答の続きだ。       バディ
 何ぞ聞いておくことはあるか、我が同業者』

SYSTEM :
 その彼が手を回すのは何時も早い。
 特にプランナーは己のプランにおいて、タイガーアイなど目でない勢いで手を回すのが早い。見解が一致したとあらば、方針が決まり次第即座に“そうなる”ように傾くだろう。

SYSTEM :
 何か聞くにせよ、支度に必要なものを用立てるにせよ、今のうちだ。

《朧の狩人/残骸》シホ :
「では、作戦遂行前に一つ確認を。今作戦に於いては孤立した島で任務を実行することになるとのことだが……“リュウグウジマ”とやらにはUGN又はFHの拠点などは設営されていないのか?
 補給の面に不安が残るようであれば今のうちに用立てておきたい」

タイガーアイ :
『回答する。

 UGN、FHともに「海域の詳細」についての理解を行っていない。
 ありていに言って“実際に何があるのか”を解き明かす下準備の段階だ』

タイガーアイ :
『実際に“島”であるのかさえ定かでない、そもそも監視衛星等で海域の情報は“異常なし”だがレネゲイド反応においてのみ“異常あり”だ。

 よって以降の内容は推測となる。

 対象となるRBが若し………。
 特定のシンドロームを持っている場合、補給そのものへの不安は現実のものとなるだろう。長期戦は避けたい』

《朧の狩人/残骸》シホ :
「そうか……“リュウグウジマ”はそもそも島であるかすらも定かではないわけだ。
 衛星映像を誤魔化す何かが有るのか、或いは島という概念そのものがマヤカシの類か……とにかく補給には難儀しそうだな。
 ならば今のうちに応急処置が可能な備品の手配をしたい、頼めるか」

タイガーアイ :『如何にも』

SYSTEM :
 彼はその言葉に、好奇心をにじませた音で応じた。

 どの仮定も事実ではないが違うと分かっていない、文字通りのアンノウン。
 曰く『リュウグウジマ』というコードを名付けられたその場所は、超巨大レネゲイド反応があるという“だけ”だ。

 あるいはUGNが、それを見ても調査のために海域に乗り出さなかった理由でもあるのだろう。
 不安定で、奇妙で、予測不能であっても、一刻を争う内容では“ない”と判断されていたと考えられる。

タイガーアイ :
『そして、手配承った』

SYSTEM :
 とはいえ手配が間に合うかどうかは、
 彼女(あるいはタイガーアイ)の情報網と調達担当との繋がりがどれくらいあるかに左右されそうだ。
 そのことについて一節の音を加えて、タイガーアイは返答とした。

GM :
 ………念のため言及しておきますと、OPシーン中は概ね事前の調達判定が1度だけ可能です。

 その際は調達するアイテムについて宣言し、こちらが確認したのち判定を行ってください。

《朧の狩人/残骸》シホ :それでは、これより応急キットを調達したい。

SYSTEM :
【Check!】
 調達判定要求を確認しました。
 判定を行ってください。 

《朧の狩人/残骸》シホ :
 ああ、ところでアナタがたに先に言っておくことがある。

GM :

《朧の狩人/残骸》シホ :
 ワタシは調達が苦手だ!

GM :アオン(がんばりなさいの意)

《朧の狩人/残骸》シホ :1dx10+1 調達判定 (1DX10+1) > 9[9]+1 > 10

ほろうはんたぁ :フッ…………

GM :お見事!

SYSTEM :
【Check!】
 調達判定に成功しました。 

GM :調達完了したアイテムはキャラシートに加えて貰ってOKです。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 了解だ、後で備品申請に登録しておこう。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 手元のタブレットから数少ない“ツテ”に雑多な経過報告を兼ねつつ事前連絡などを入れながら、思考をさらに巡らせる。

「……しかし、まぁ、何と表現すればいいのか。
 オマエ自身そうだろうが、“リュウグウジマ”とやらの話は聞けば聞くほど謎が深まるばかりだな。何某かの追撃を行おうというUGNはともかく、そもそもFHは何のアテがあってその海域で姿を眩ましたのやら。
 強大なR反応が確認されたことも加味すると偶然とは考え難いが……何か情報は掴んでいないのか?その追撃されていたFHとやらに関するものは」

SYSTEM :
 タイガーアイはその曖昧模糊だというシホの言葉には同調するように音を発した。
 だから望ましいのかもしれないが、さておき。

タイガーアイ :
『回答する。
 追撃されていたセルについて、多少は存じている。
 セル名、過去の活動経歴………しかしこれらの情報は、UGNデータベースから得られるものと相違ない』

タイガーアイ :
『即ち我の言葉に以後の支障があったとして、その根本的原因はUGNにある。
 ゆめ忘れずに居て貰いたい』

SYSTEM :
 あまりにも周到かつ情けない予防線を張った後、変わらぬ淡々とした音色が続く。

タイガーアイ :
      ネスト
『セル名、【魔獣の巣】。
 活動圏域は不明かつ不定。勢力構成も定かではない』

タイガーアイ :
『組織構成員、不明。

 社会的繋がりなどはなく、キュマイラシンドロームを主としたレネゲイド因子の暴走個体の所属比率が高く、その構成員の損耗率と補充速度は両者において特筆事項あり』

『行動理念、不明。
 破壊的行動をとった比率は極めて高い』

タイガーアイ :
『セルリーダー。

 コードネームのみ検索に一致。
 “マンティコア”───以上』

《朧の狩人/残骸》シホ :
「ふむ…………まぁ、無いよりはマシな情報か。万が一“リュウグウジマ”本島での接敵があるとしても、敵勢力の大まかな推察には役立つ」

 セルリーダーの“マンティコア”とやらの情報は、生憎ワタシの記憶にない。頭の片隅にでも入れておこう。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 『社会的繋がりなどはなく、キュマイラシンドロームを主としたレネゲイド因子の暴走個体の所属比率が高く、その構成員の損耗率と補充速度は両者において特筆事項あり』───

     ネスト
───【魔獣の巣】とやらはFHとしてはありがちな、そして不快な種類のセルのようだ。
 或いは先刻頸部を撃ち砕いたあのジャームもそのセルの手合いだろうか。
 ……これは憶測に過ぎない情報だ、脳内のゴミ箱にでも入れておこう。

《朧の狩人/残骸》シホ :

《朧の狩人/残骸》シホ :
「ああ、それと一つ。強大なR反応が確認されたとなれば、普段の“プランナー”であれば嬉々として同胞の確認とでも洒落込みそうなものだが。先程、オマエは確かこう言ったな?」

タイガーアイ :『ふむ。なんと言ったのか』

追憶に曰く─── :
『“プランナー”の反応は正直、我の期待通りではなかったのだが……』──────

《朧の狩人/残骸》シホ :
「“期待通りでない”───というのは、“プランナー”は今回の調査に然程乗り気ではなかったのか?」

タイガーアイ :
『回答する。
 確かに我としてはもう少し“興味”寄りの反応を示すものだと思っていたが………。
 めずらしく冷淡であった』

SYSTEM :
 曰く。

 発言は“そうですか”の一言と共に、タイガーアイの発言に『プランの変更を受け入れましょう』としたのみ。

 決して否定的なニュアンスはないが、少なくとも………。

タイガーアイ :
『“プランナー”が同意した理由については与り知らぬことであり、聞くに及ばぬことである。

 だが、あれは興味や好奇心ではないと思える』

タイガーアイ :
『こういう時に便利な言葉がある。拝借させて貰おう。
 この回答は参考になっただろうか』

《朧の狩人/残骸》シホ :
「ああ、確かに便利だな。たった今、穏当に済ませようと思っていたワタシも拳を叩き込みたくなってきた」

タイガーアイ :
「誰も得をせぬ利巧ではない行動だ。
 お主は拳を痛め、我はこの水晶体を痛める」

《朧の狩人/残骸》シホ :
   バカ
 この賢者については放っておこう。これくらいはいつもの応酬の範疇だ。
 それはそれとして……

《朧の狩人/残骸》シホ :
 “プランナー”は文字通りに“人並外れた”存在だ。有意義な実験で結果的に時間と資材を無駄にすることこそあれ、単なる無駄な投資を行うことは決してないと言ってもいい。
 そのプランナーが『興味』や『好奇心』では無いにしろ、今回の調査に同意したとなると───他に挙げられる理由は『義務感』だとか『無関心』だろうか。……もしかすると『嫌悪』か?

 ……これも憶測に過ぎない。一度忘れよう。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 ……確認すべき事項は、今のところこれぐらいだろう。駒を次へ進めよう。

タイガーアイ :
『質疑応答は以上のようだな。
 であればこちらも用意を進める。件の捜索部隊に、UGNの“残骸(レムナント)”として潜り込み………』

タイガーアイ :
『リュウグウジマの正体および、件の“超巨大レネゲイド反応”の根幹についてを明かす。

 早ければ一週間とせぬうちに手配が終わるだろう。鬼が出るか蛇が出るかは、行った先で箱を開ければ分かることだ』

《朧の狩人/残骸》シホ :
        ガワ
「これでも大切な容貌だ。老婆にならないことを祈っておくか」

タイガーアイ :
『無自覚な善意を装った贈り物は、他人に開けさせるのが道理だ』

SYSTEM :
 朗々と音を発するタイガーアイは、ことオルクスの中でも意識制御に長けた個体であり。
 ゼノスは彼が語った通り、UGNにもFHにも、どちらにも深入りし過ぎない程度の伝手がある。

SYSTEM :
     ホロウハンター
 あなたは朧の狩人としてでなく、
 レムナント
 残骸のシホとして、日本近海某所へと繰り出す捜索部隊の末席に首尾よく顔を連ねることとなった。

 ───それが実際に行動に移されたのは、方針を決定して三日と経たぬうちのことである。

SYSTEM :

 ◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 UGNイリーガル、“残骸”。
 所属は▅█▂県の▅█▂市。
 各地を転々とし、ジャームによる被害拡大阻止のために活動を続けている。

SYSTEM :
 人手不足のUGNにとって、フットワークの軽さは貴重である。
 特にこの人手不足の傾向は、アルフレッド・J・コードウェルの離反からより強く、ない袖は振れぬ故に、せめて今あるものは使わねばならないのが現状だ。
 実際に齟齬や問題をやらかすようなものでもない限りは、後は殆ど現場判断ということでもある。

 ましてやプランナーはこの手の辻褄合わせにおいて、如何なる指導者でも勝る相手ではない。
 やろうと思えば本部のネットワークにすら潜り込み、干渉の一つや二つを造作もなく行えるヒトガタなどと、そんなものは彼女とFHの『ヘルタースケルター』以外に幾人いたか。

SYSTEM :
..レムナント
“残骸”が残滓をオリジンとするレネゲイドビーイングであることも。
 記憶喪失以前の当たり障りのないイリーガルの情報を都合よく統廃合して利用することも。
 都合よく行われた追撃と捜索任務に、イリーガルが一人か二人参加する動機付けをするなども。
 言うなれば朝飯前。

タイガーアイ :
『───欲を言えば生身が望ましかったが。
 しかしまあ、贅沢は言えまいな』

SYSTEM :

 日本ではこの標語が流行ったそうだ、などと………。
 語る大柄な全身義体を“間借り”のアテにしたらしいヤツについても同様。

SYSTEM :
 曰く、UGN宇宙衛星に存在したレネゲイド研究基地が生み出した人工レネゲイドビーイング。
            フルサイボーグ
 その器となる予定だった機械化兵パーツの横流し品なのだという。

SYSTEM :
 そう、予定だ。
 厳密に言えば計画は途中で襲撃に遭い頓挫。データの基部のみ持ち出され地上に脱出した。
 それ故に本来開発予定だった機体やプログラムが残っており、昨今の情勢からそれらの開発が行われることもそう珍しくない。

 となれば仮にレネゲイドビーイングです、とバレたところでも何ら支障はない。
 その判断でいわば“取り付いた”というわけだ。

SYSTEM :
 彼についてはこの程度の余談とするにしておいて。

 編成はスムーズに終わり、出航待ちだ。
 海域に出向く以上、夜間航行許可を取り付けた漁船という表向きのカヴァーと、それに伴う人員および装備。
 
 件のセルの警戒度がどの程度かは、概ねタイガーアイから聞いているような情報の通りだが、凡そ半信半疑なのだろう。
 面子としては、せいぜいが1チーム程度に過ぎない。

SYSTEM :
 その1チーム範囲内ではあるが、心もとない人員ではない。
 最終チェックの傍ら、シホ───“朧の狩人”ではなく”残骸”と仮のコードを名乗った彼女が何をしていたかは、彼女に委ねられる。

 チームの人員の確認か、出航予定時刻まで暇をつぶしていたか。それともタイガーアイが仮宿に択んだ、UGNの予定プロジェクトにあった曰く“ブラザーフッド”の手綱を握っているか、くらいだ。

《朧の狩人/残骸》シホ :
「よかったじゃないか、お誂え向きの外殻が見つかって。
 少なくともワタシは歓迎するぞ。生身でも侵してみろ、オマエの言行をどう誤魔化したものか数日前から悩みの種だったんだからな」

 願ってもいない“贅沢”を口に漏らす《タイガーアイ》……改め《ブラザーフッド》を横目に、先の簡易ブリーフィングで手渡された資料に目を通す。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 賢者が己の宿木に選んだ躯体は、どうやら宇宙からの贈り物。確か“ヤタガラス”と言ったか……もしくはまた別の技術体系なのか?
 狩人の舞台は地上が主だ。成層圏より上の事情には疎いし、なにより直近に迫る巨大なR反応の痕跡に比べればどちらでもいいことだ。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 閑話休題。UGNの潜入には1週間弱を見込むとの前情報だったが、想定よりも随分と事はスムーズに運んだようだ。
 それもそうだろう。ワタシが潜り込んだのは一旅団の中核でもなければ強大な遺産調査を行う“騎士”達の住処でもない。有り体に言えば、ごく一般的な精鋭を集めたごく一般的な先行調査部隊というところだ。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 腕に装着したデバイスを操作。先の資料と併せ、改めて調査チームの人員について確認をしておこう……。

タイガーアイ :
『なんとも痛烈な言いがかりだ。
 我とて生身の肉体とあらば言葉は択ぶ。行儀も択ぼう』

SYSTEM :
 しかし態度を択ぶほど彼は殊勝ではない。

 必要でない限り言葉を発しない/その必要がないという前提を伴ったのはある意味正解であった。

 ………さておき。

SYSTEM :
 調査チームの人員は8名1チーム。
 本格的な交戦をゴールに想定しているというよりは、強行偵察が前提というシホの推察は何ら間違っていない。

 そもそも衛星カメラでは何の変哲もなく、忽然と足取りを消したというFHセル『魔獣の巣』が向かった先である海域について判明している要素は殆どない。
 事前に聞く典型的なFHセルの始末として見れば、UGNが派遣できる人間の数を思うに十分とさえ言えた。

SYSTEM :
 その捜索のために編成された部隊については、前々から『魔獣の巣』の捜索と壊滅を長期の任務として任されていたエージェントが一人いるという。
 いわば彼女の任務に「ひとりでは手に余るから」と増員が施された、という観方の方が正しいだろう。

SYSTEM :
 コードネームは“イリュシデイター”。
 年齢、推定20代の女性。

 元北欧ストックホルム支部所属で、
 現職復帰はつい1年ほど前だった。

 あなたと顔を合わせた時の反応は………。

SYSTEM :
【Check!】

 判定が発生しました。

 判定:〈知覚〉
 目標:12
 Success:イベント進行
  Failed:イベント進行

《朧の狩人/残骸》シホ :
 ……さて。ここは速やかに駒を進めよう。
 少々不安は残るが。

SYSTEM :
【Check!】
 確認を完了しました。
 判定を行ってください。

《朧の狩人/残骸》シホ :7dx10+1 これでもワタシは空域把握が得意でな。 (7DX10+1) > 10[1,2,8,8,8,9,10]+2[2]+1 > 13

GM :本当に得意になることがあるか

GM :…本当に得意になることがあるか!

《朧の狩人/残骸》シホ :
 フッ…………。

SYSTEM :
 出会った当初の彼女───コードネーム“イリュシデイター”の反応と僅かな感情の起伏を、あなたは察しており、また記憶している。
 あなたが人の感情に機敏なのかは、あなたの客観的判断に委ねられるところであるが、ともかく。

SYSTEM :
                ・・ ・・・・・
 彼女があなたに向けた第一印象は驚愕、続いて疑いだった。
 そのあとはそれをおくびにも出さないような振る舞いだったが。一先ず回想しておく。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 Elucidator
 “解明者”の名を冠する女性 ───資料を閲覧し、また実際に邂逅を挟んでの印象から、彼女が本作戦の核であることは疑いようもない。ワタシたちは、要はそのオマケのようなものだろう。
 皮肉なものだ。ワタシたちは有能な“バックアップ”を求めて今の座に収まったのだから。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 …………。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 言語として紡ぎ出すには足りない、微かな違和感もあったが。
        ぼうれい
 ワタシの負った《残骸》の名が引き起こした錯覚だろうか。

タイガーアイ :
『“イリュシデイター”───フランスの言葉に曰く、解明者』

SYSTEM :

 タイガーアイの機体が、いつもの波紋ではなく、電子音声で応じる。
 曰く『魔獣の巣』を任務で追いかけて来たのは彼女だ。
 突然と姿を晦まし、その先が不確かだというから増員が測られ、あなたたちとたまたま利害が一致したが故の、無自覚の呉越同舟となったわけだが。

SYSTEM :
 そこに付きまとう微かな違和感。探ろうとしたのか、捨て置こうとしたのか。

 シホの思考より先に、

女の声 :
「その解明者は、足取りを掴めず数ヶ月です。
 端的に名前負けですね」

SYSTEM :
 最終調整中のため動いていたエージェント等の動きも、見れば収まったように思えた。

 声を掛けて来た人間は、あなたがいま頭の中で少なからず触れたエージェントだ。

“イリュシデイター” :
「出航予定までもう間もなくです。
 レムナント
 “残骸”。其方の調子は?」

《朧の狩人/残骸》シホ :
「……! え、ええ!こちらは大丈夫ですよ、お気遣いなく。
 あー……聞かれちゃいました? ワタシ達の話。」

“イリュシデイター” :
「さあ? どうでしょう。
 生憎耳の良い方ではありませんが、聞かれて困るような話でもなかったと思いたいですね」 

《朧の狩人/残骸》シホ :
「あ、あはは……。そんな後ろ暗いようなことしませんよ!
 同じ船の仲間じゃないですか!……多分。」

《朧の狩人/残骸》シホ :
 ……反応から察するに、前半の“聞かれて困るような話”の方は耳に届いていない様子だ。適当にやり過ごそう。

“イリュシデイター” :
「そこは言い切って欲しかったですね」

SYSTEM :
 くす、と笑う彼女に悪意ないし警戒の念は見られない。
 あるいは、ブリーフィングで顔を合わせ第一印象を受け取る一瞬だけが“例外”だったのか。

“イリュシデイター” :
「その船も長旅ではありません。第一目標は捜索で、第二目標は“出来れば”です。
 ………とはいえ、一人で彼方此方と異国を飛ぶよりは気が楽です」

“イリュシデイター” :
「そういう貴女は?
 事前にイリーガルとお聞きしましたし、日本支部から回って来たデータは拝見しましたが」

《朧の狩人/残骸》シホ :
「ああ、そうだった。直接のご挨拶はまだでしたね。
        コードネーム   レムナント
 ワタシはシホ、識別名 は《残骸》です。日本の各地を飛び回ってジャーム退治のお手伝いなんかをしています」

 ぺこりと一礼。日本流の礼儀作法。

《朧の狩人/残骸》シホ :
「ワタシの得意分野は高火力砲による超長距離狙撃です。
 ですから、今回は後方支援がメインというわけですね」

 “使う機会があるかは分かりませんが”───などと嘯きながら、愛銃を取り出して構えてみる。

“イリュシデイター” :
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。
 登録データとして見るものと、実際に顔を合わせるのでは違いますからね」

SYSTEM :
 ですがソレを船上で見せびらかすのは頂けませんね、と苦笑ひとつ交えて、彼女は続ける。

“イリュシデイター” :
「では改めて此方も。

 コードネームは“イリュシデイター”。
 名はノエルと申します。元は北欧が仕事場でしたが、色々と事情がありましてお役御免です」

SYSTEM :
 ブリーフィングでも言及していた通り、彼女は『魔獣の巣』と呼ばれたセルの追跡にあたって半年近い。
 足取りと情報を掴み、余剰被害を抑えてはいる一方で、その殲滅には至っておらず…此度の状況が続いているというわけらしい。

“イリュシデイター” :
「………。ところで。

 差し支えなければお聞きしますが、何故“ソレ”を?
 エージェントにせよイリーガルにせよ、それが積極的にジャーム討伐のため活動する事例には覚えがありますが」

《朧の狩人/残骸》シホ :
 “あっ、ごめんなさい!軽率でした!”───などと慌てた様子で愛銃を元のトランクへと適当に突っ込む。
 ……多かれ少なかれ、ヒトというものは自らの内面を幾つかの姿に偽るものだ。とりわけ、未熟者の《仮面》は被り易い。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 あとは世間話か何かで茶を濁せばそのうちポイントに到着する。そうとばかりに構えていた、が……

《朧の狩人/残骸》シホ :
「え、あ、ええーと。こ、“コレ”のことですか?」


 しまった。オマエのことを忘れてた。

《朧の狩人/残骸》シホ :
「えーと、その……こ、“この子”、狙撃するときのアシスタントなんです!
 狙撃には色々と雑多な計算が必要なんですが…その難しい計算をアシストしてくれたりして」

 ……応えているようで質問に答えていないのはワタシ自身でも判っているが……。これではぐらかされてはくれないか。

SYSTEM :
 あなたの横で、タイガーアイ改めブラザーフッドは沈黙を保っている。
 いるが、心なしかカメラアイが何度か明滅している。恐らくだが、面白がっているか興味のある出来事があるらしい。

“イリュシデイター” :
「いえ。
 其方の“ブラザーフッド”もそうですが」

《朧の狩人/残骸》シホ :
 そうなのか……。

“イリュシデイター” :
「………正直狙撃は門外漢ですが。
 観測手が必要な程度は分かっていますし、彼については構いません」

“イリュシデイター” :
「………いや。驚かせましたね、ごめんなさい。
 咎めようとか、問い詰めようとか、そういう類の言葉ではありません。

 すこし、不思議に思っただけです」

SYSTEM :
 彼女の態度はどちらかというと、

 あなたがその若さで、ジャームの鎮圧と撃破のため各地をめぐるオーヴァードだ………という部分の方に向けられているようだった。

SYSTEM :
 それが一旦“深入りしない”に変わったのは、その態度からの判断だろう。

タイガーアイ :『………………』

SYSTEM :彼に助け舟を出す気配はなかった。あるいは『まだ/この相手には必要ない』という判断なのか。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 ──────。

《朧の狩人/残骸》シホ : 
 ……多かれ少なかれ、ヒトというものは自らの内面を幾つかの姿に偽るものだ。とりわけ、未熟者の《仮面》は被り易い。
      メリット
 だが、その美点を享受できる以上は、
         デメリット
 如何ともしがたい不都合をも受け入れねばならない。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 ───未熟者の《仮面》は、剥がれ易いものだ。

《朧の狩人/残骸》シホ :
「………………………」

《朧の狩人/残骸》シホ :
「そこに、きっとワタシの欲望があるから。
 ───ワタシから言えるのはそれぐらいのことだけです。」

“イリュシデイター” :
   レムナント
「………“残骸”。貴女は、」

SYSTEM :
 あなたの微かな言葉選びの変化。
 剥がれそうになった仮面に、深入りすまいとしたらしい”イリュシデイター”の表情が僅かに揺らぐ。

SYSTEM :
 しかし彼女はそのコードネームを付けられる程度には、職務に忠実なオーヴァード/エージェントだ。

 まして、自分の言葉を忘れるような愚行はしない。即ち。

タイガーアイ :
「提言。間もなく出航予定時刻」

“イリュシデイター” :
「───と。そうですね。
 失礼しました。先の話は忘れてください、悪いクセです」

SYSTEM :
 その予め分かり切っていることを、UGNの人工RB(という肩書の存在)から口にされようものなら、引き下がるより他になく。一度任務に出るとあらば、彼女に追求しようという”ヒマ”はない。

 それが分かっているから黙っていたのか、それとも。

“イリュシデイター” :
「…ともかく。改めて、よろしくお願いします。
 先の武装を使う機会がないとも限りません。万一の時は当てにしていますよ」

SYSTEM :
 本心だろうが当たり障りのない挨拶。
 踵を返した彼女が、船内クルーの下へ向かい、見えなくなっていくのを見届ける。

《朧の狩人/残骸》シホ :「……あ、はい!よろしくお願いします!
 さ〜て、ワタシも最終調整に入らないと……」

《朧の狩人/残骸》シホ :
 わざとらしい伸び、わざとらしい大きな声。
 そこの違和感に気がつけるほど、ワタシはワタシに慣れていなかったらしい。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 遠くなってゆく背を眺めながら、少々先を思い遣る。
 …………大丈夫、彼女も言っていたじゃないか。どうせ直ぐに降りる船の仲間だ。

SYSTEM :
 呉越同舟は決して長続きしない。
 ならばぼろが出て船が泥船だとバレるより前に、船を降りることになるだろうというその判断は正確だ。

 一度仕事を終えれば、恐らく顔を合わせることもない。

SYSTEM :
 それ以外に何を思ったのかは定かでないが………。

 出航となってしまえば、彼女は隊の指揮官であり責任者だ。
 仔細を詰めるような暇も当然ない。

SYSTEM :
 数刻。
 予め定められていた海域の座標は、日本近海、太平洋方面。

 曰く監視衛星においては異常はなく、
 レネゲイドの反応のみを捉える術を用いてみれば、そこから導き出される結論は“異常あり”の一言に尽きたという。 

SYSTEM :
 波の音だけが聞こえる。エンジェルハイロゥの聴覚が、なんでもない海に住まう生物の鼓動のみを聞き捉える。
 海洋の先は夜色に呑まれて見通せず、言ってしまえば何の変哲もない。

SYSTEM :
 ………ただ。
 違和感だけはあった。

 海に近付くにつれての違和感を形にするならば。
 ほんの少し、ただの疲労や気の迷いで片付けられるかもしれない程度に。

SYSTEM :
 身体が───少しだけ重い。

《朧の狩人/残骸》シホ :

《朧の狩人/残骸》シホ :
「………………」

 永らく使っていなかった顔だからか、或いは───
 ……常に《残骸》でいるのは、どうもワタシの心を摩耗させるらしい。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 常に聞き耳を立てられるのを気にしていたのでは堪らない。
 船室の一区画に坐り、窓の外を眺めながら休養を取る。銃の整備もしてしまいたかった。
         あんぜんちたい
 人除け代わりの《不可視の領域》を微弱に展開した。妙な形で泥舟を壊すことは避けられたはずだ。

《朧の狩人/残骸》シホ :
「……聞こえるか、《タイガーアイ》?
 どうも先日からの疲労が祟っているらしい。多少任務に支障を来す恐れがある……。オマエの方はどうだ……?」

 心労など無縁の賢者に声を掛けたのは、ほとんど気付け代わりだった。

SYSTEM :
 文字通り自分の役目が来るまでは船室に籠る形を取った彼女の声。
 それに応じたのは、推定“ブラザーフッド”のスペア機体が持つソラリスタイプのR因子を間借りし、誰かに気取られる心配もないよう周到な形で発せられた音の波紋。
     声なき声
 ご存じの電子音声。

タイガーアイ :
『それを我に聞くか。
 いかにも躯体に異常はない。恐れもない。祟りもなければ気の迷いもない』

タイガーアイ :
『外部の様子も異常はない。
 “アレ”は名前通り勤勉である。部下共々の解析に勤しんでいるようだが、海域そのものにはおかしなところは見受けられない。
 エンジェルハイロゥ       オ ル ク ス
 幻覚効果でもなければ、領域操作の所業でもないようだ。リュウグウジマというのは』

SYSTEM :
 しかし、と。
 タイガーアイは一つ区切って、気付け代わりに触れて来たあなたの頭へ、2割増しくらいの音声出力を続ける。

タイガーアイ :
 ・・・
『違和感ならば検知した』

《朧の狩人/残骸》シホ :
「──────!」

タイガーアイ :
『然るにその違和感が真実であるならば………。
                ・・
 このボディに掛かっているものは重力なわけだが』

タイガーアイ :
『よいかシホ。
 我はレネゲイドビーイングでありヒトではない。
 しかしこのボディにおいて、我の口は一つだけある』

タイガーアイ :
『然るにこのまま結論を最優先で述べるとすると、だ』

SYSTEM :
 淡々と語る彼の口調には危機感というものがない。厳密には、危機感を乗せる抑揚が電子音声には“ない”のである。

 しかし………。
 あなたのそれは疲労でも気の迷いでも、ましてや情緒への損耗などでもない。

 あるいはそれがあったから、この紙一重の賢者よりも反応が遅れたのかも知れないが。

タイガーアイ :
『今すぐ甲板に出ろ』

SYSTEM :
 淡々と語る彼の口調。
 抑揚のない音が、きわめて珍しく“命令形”に変わった瞬間。

SYSTEM :

 視界のなにかが、揺らいだ。

 

SYSTEM :
【Check!】
 ???がEロイス『█▇▅▇▇▅』
 ならびにEエフェクト『█▇▅▇▇▅』を発動しました。

SYSTEM :
 瞬間のことである。

 視界が、バチリと揺らぐ。
 甲板に出る前か、船室かは定かでないが、
 圧し掛かる重みのようなものが強くなる。

SYSTEM :
 彼の言葉を借りるならば、これについて最も近しいのは重力。
.            グラビティ・エリア
 バロール・シンドロームの重力空間だ。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 賢者の指示に従わない愚昧は、無惨に命を散らすのは神話の時代から決まりきった結論だ。
 命令が飛んだのが速かったのか、それとも。全ての力と因子を脚部に集中させ、船室の壁を蹴り飛ばす。
 無惨に瓦礫と化す漁船の壁に陳謝を入れている暇はなく。空へと弾丸の如く飛び出したその肢体は、瞬時にその威力を増した重力の奔流に従って甲板に叩きつけられた。

《朧の狩人/残骸》シホ :
「ぐッ───ぅっ───ッ!!!」

 だから。 
 外界の異変に気がついたのは。船室を飛び出して数秒後のことだった。

《朧の狩人/残骸》シホ :
「な───なんだ、コレ、は───」

《朧の狩人/残骸》シホ :
 バロールによる干渉。それは即座に察知できた。
 恐らく強大なレネゲイドビーイング、もしくはジャームによる干渉であろうとも経験から算出はできた。

 だが、しかし、これは、あまりにも──────

《朧の狩人/残骸》シホ :
「………っ! 他の、船員は───!」

SYSTEM :
 ・・・・・・
 なんだコレは。
 それに応じてくれたのは、声ではなかった。

 あるいは甲板の外側、様変わりした荒れ切った海の色。

SYSTEM :
 いかにも船室の外から見ていた風景は、
 数秒前まで荒れとも嵐とも無縁であったのだ。
 これを“なんだ”と言わずしてなんと言うものか。

SYSTEM :
 圧し掛かるような、押し潰すような。
 足を掴んで引きずり降ろすようにも喩えられる重み。

 何処から来ているのか。

 はじめソレは上から来ているようにも思えたが、厳密にはそれも聊か異なるようにすら感じた。
 しかし驚愕するべきはそこではない。

SYSTEM :
 これより上の脅威など幾らでもいよう、これより恐るべきものなど幾らでも在ろう。
 
 だが、まるで初めから存在したかのように、蟻地獄めいて自分を引き摺り込むもの。
 その感情の質量が、

SYSTEM :
 あなたの頭を揺さぶる。

SYSTEM :
  
【Check!】
 ???が続けて
 Eロイス『█▇▅▇▇▅』『█▇▅▇▇▅』『█▇▅▇▇▅』を発動しました。

SYSTEM :
 先ず咆哮。
 続いて引き摺り込むもの───はじめ“重力”と錯覚したものについて、あなたは漸く微かだが「違い」を見出しかけていた。

SYSTEM :
 そうこうしている間にも、呼びかけに応じるべき内側の気配は、不気味なほどにない。
 しかし、

SYSTEM :“っく、───ゥ………!”

SYSTEM :
 そこから、よろめいて飛び出してきたエージェントは一人。

 イリュシデイターが、船室にぶつかるようにして、軽く呻いた後に、手をつきながら立っていて。

タイガーアイ :
「提言。
 バロール・シンドロームの干渉」

タイガーアイ :
『春日恭二は正しい。
 確かにこれは“巨大なレネゲイド反応”だ』

SYSTEM :
 それより見知った声を持つ、見慣れない姿の“ブラザーフッド”だけが甲板に立っていた。

 ご丁寧に表側では“ブラザーフッド”の真似をして、裏側の脳裏のみへの音声に対してだけ自分の見解を伝え振る舞う態度を変えずに。

《朧の狩人/残骸》シホ :
「………っ!無事か、イリュ……」

《朧の狩人/残骸》シホ :
「───大丈夫ですか!イリュシデイター!」

 嗚呼、バロールシンドロームによる干渉だと?そんなことは判っている!
 ……いや、有り難い“支援”だ。憎々しいまでに平静を保つ《タイガーアイ》……改め《ブラザーフッド》には此方の頭も一周回って冷えてくる。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 ……幾つか気になる点はあった。咆哮も然り、この重力干渉も然り。
 明らかにコレは“ただの重力”ではありえない。規模もそうだが、何より……。ああ、まだ少し頭の中が揺らいでいる。休養が足りなかったか。

《朧の狩人/残骸》シホ :
 「全く、流石は春日の知恵だ。肝心なところが役には立たん───!」

 だが、今はそれよりも甲板に現れたエージェントの援護が優先事項だ。標的が姿すら現さない以上、こちらも応戦の用意が要る。
 再び脚部に力を集め、今度はスライディングの要領でイリュシデイターに接近を試みる。

SYSTEM :
 シホが無理くりにでも接近してみせた彼女以外の姿はない。
 文字通り抑え付けられたか、あるいはここだけは“その規模”が弱いのか。 
 事実のみから判断するならば、文字通り先の数秒が分水嶺で。敵意を以て潰しに掛かって来たのであれば、先に室内を制圧しに掛かって来た、ということになる。

“イリュシデイター” :

「大、丈夫………! 問題ありません。
 ですがそれより、他のエージェントからの反応がない───」

“イリュシデイター” :
          ネスト
「………何よりコレは『魔獣の巣』の連中じゃない。
 彼らにバロールの適性者は存在しましたが、こんな、目視出来ない距離から、これだけのことをしでかせるほどの規模と適性では───、」

SYSTEM :
 その彼女に言わせれば、室内に“敵”はいなかった。
 あなたの知る限りでもそうだ。

 応戦するにしても、応戦の対象となるものが姿すら見せていない。

SYSTEM :
 ………あるいは。

タイガーアイ :
「状況把握───。
 船舶の圧壊まであと10秒。

 残存生命の保護のため、優先順位を変更する」

タイガーアイ :
『そういうわけだ。
 その場から下手に動かず、10秒で我の推測を聞いてもらおう』

SYSTEM :
 そして例の如く抑揚のない声、危機感を出力できない電子音声で、その二人に接近したタイガーアイ/ブラザーフッドが、カウントダウンを開始し始めた。

 下手に動かず、というのは、表向きの発言や“機体コード”から何となく察せるだろう。

《朧の狩人/残骸》シホ :
「──────!」

 予想はしていたが、もう……!

《朧の狩人/残骸》シホ :
「……イリュシデイター、話は後です!
 《ブラザーフッド》の元まで跳びます!合図と同時に跳躍の準備を!」

“イリュシデイター” :「………っ、了解!」

SYSTEM :
 異論を挟む余地なしと切り替えられるだけ平静だったのか、
 それとも想定外の中でも“するべき”が判断できる程度には場数があったか。
 彼女はその言葉には素早く応じた。

タイガーアイ :
『───虎穴に入らずんば虎子を得ずという。
 あの言葉を思い付いた古人に敬意を払うことをゼノスの万人に勧めたい。今がまさにその通りだ』

SYSTEM :
 一方でそれを待っている方は暢気な語り口だが、口調そのものは早い。
 自分の知的好奇心から来る性分と、脅威の伝達を可能な限り両立しようという無駄な心構えであり、
 同時にタイガーアイにとってもこれが“それなり”に予想外であることを示していた。

タイガーアイ :
『春日恭二の推測に我の推測を組み立て仮説とする。

 この海域自体が、推定ジャームのテリトリー。
 行方を断ったという件のセルについてはコレに呑み込まれたのであり、同時に重力などと評した先程の言葉を修正する』

タイガーアイ :
    ・・
『これは水圧だ。
 せめてもの悪運と、先人の技術の精度を祈る』

《朧の狩人/残骸》シホ :
 “憎々しいまでに平静を保つ”とは誰の判断だったか……オマエもらしくない真似を!

《朧の狩人/残骸》シホ :
「それでは、いきますよ!
 3、2、1──────!」

SYSTEM :
 ───0。
 それが到達する前に、1の合図で二人が跳躍ぶ。

 どちらも身体強化タイプのオーヴァードではないにせよ、幸いしたのはその距離。
 および“ブラザーフッド”の立っている間合いだ。

タイガーアイ :
「防衛対象の接近確認。

 E・シールド展開準備───」

SYSTEM :
 そして間合いに入ると同時に、“ブラザーフッド”の躯体から放出されたレネゲイドが電磁防壁に形を変える。 

SYSTEM :
 が。
 0のカウントと共に比肩しないレベルまで圧力を強め、船舶もろとも圧壊しに掛かって来る重力の波濤に対しては、力不足もいいところである。

 見えぬ死神が足を掴んで引き摺り続け、追いすがり続けてくる。
 あるいは、その思考が出来ること自体が、命を拾えた証なのか。

SYSTEM :
 圧壊───転覆。 

SYSTEM :
 水底に沈む間際に、何かの影を見る。

 巨きな、巨きな。
 怪物の影。

SYSTEM :
 意識の途切れる瞬間に頭に響く声。
 それは怪物の咆哮だったのか、あるいは。
 死者の断末魔だったのか。
 

SYSTEM :
 あなたがその答えを出すのは、

 今ではなかった───。

SYSTEM :

 ◇ ◆ ◇


【シーン2:道筋】

SYSTEM :
【シーン2:道筋】

 登場PC:久外境耶
 登場侵蝕:あり(特殊)

SYSTEM :
Tips-“黒き者”ヴィカラーラ
 カヴァー/ワークス:FHセルリーダー/リエゾンロード
 性別:女 年齢:31 侵蝕率:189%
 シンドローム:エンジェルハイロゥ/バロール

 FH設立当初からリエゾンロードの名を持ち、暗殺クラン“マーダーオヴブラック”を率いる。
 とはいえその名…ヴィカラーラは厳密には一人を指すものではなく、彼女は三代目のヴィカラーラであるとされる。

 その欲望は“最強のオーヴァードを生み出すこと”。
 ───手段、過程、一切問わず。動機も問われず。 

SYSTEM :
 登場侵蝕についてはOP中
「振っても振らずともどちらでもOK」という形態を取ります

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ファルスハーツには概ね二種類の人間がいる。

SYSTEM :
 自分の欲望の為に生きられる人間、
 他人の欲望の為に生きざるを得ない人間。

SYSTEM :
 そしてさらにそこから二種類。
 人の繋がりを必要とするか、しないか。
 己の命が陥穽に至っているのか、いないのか。

 両者を分けるものを、かつてある男は力とした。

 欲望を肯定し、倫理を撥ね退け。
 守られる秩序から脱した彼らは、その力の強弱で是非を決めることが赦される。

SYSTEM :
 久外境耶───”ラッキージンクス”。
 あなたはどちらなのか。

SYSTEM :
 命令を受けて、時には自らの意思で、死地へ趣き。
 いつのまにか生き延びて。
 所属を転々とした何度目かの行き先。
  ストレイ・キャット
 “迷い小路”などと銘打つ、分類としては戦闘用だが、そう規模の大きくない、どちらかというと「止まり木」代わりのセルが今の塒だ。

SYSTEM :
 今日この日、この時までは、
 大きな出来事などもそうはなく。

 何時も通りに戦って、いつも通りに生還したあなただが。

SYSTEM :
 今日は聊かに、いや相当に。
 いつもとは違っていた。

 セルリーダーからの呼び出しで向かった先。第一声は、知っている声ではなく。

“黒き力”ヴィカラーラ :
「───あなた、『リュウグウジマ』に向かいなさい」

SYSTEM :
 少なくとも今。
 あなたが、とある情報メモリの輸送を終えた3日ほど前の任務ののち、
 間髪入れずにセルへと連絡を寄越して来たこの女は、間違いなく自らの欲望に生きており。

 いつものセルリーダーとは違ったぎらつきと、あなたでも知っている“エライヒト”であった。

久外境耶 :
 かつて、笑わない男のもとにいた。

久外境耶 :
 "アメノオハバリ"千家楓──

 あの昏い瞳を前にしたとき、漠然と、おのれの死に時というものを理解した。

久外境耶 :
 真意を語られたことはない。
 彼はその必要がある相手とそうでない者とを選り分けていて、自分はどちらでもなかった。

 だが、

久外境耶 :
 ──自分が考えつきもしないようなことを実行できる人間が、目の前にいる。

 そう直感したとき、人生は捨てたものではないと思った。捨て鉢にできるものに、意味を与えてやろうという気になるほどには。

久外境耶 :
 だが実際に生き残ったのは自分で、雷霆は主と共に霧散した。

久外境耶 :
 …………。
 ………………。

久外境耶 :
 あれからいろいろあったけど。
 あったのかな。これが"いろいろ"の極点じゃねえかな。

「ッスー……」 

 命令にイエスしてゴーするだけの古巣では起きない異常が発生していた。

久外境耶 :リーダーいる? いるよな? 呼んだのあんただもんな。一回ツラ見るよおれ。

SYSTEM :
“ストレイ・キャット”のセルリーダーは、あなたの視線に気付いて肩を竦めた。中々アメリカンな仕草だ。

SYSTEM :
 そんな彼が口の動きで何かを伝えようとしている…。

FHセルリーダー :“がんばれ”

SYSTEM :終わったらケツは持つけどがんばって適当にかわせ、と言いたいらしい。それはさておき。

久外境耶 :止まり木が落ちた雛を見捨てていいのか?

FHセルリーダー :止まり木の方も嵐が自分からぶつかってくるとは思ってねえって

久外境耶 :
 うらめしい視線を送ってから、貴賓に向き直る。

久外境耶 :
 wilco
「了解」

 拒否権──あるはずもなし。
 嫌な予感──それしかなし。

久外境耶 :
「行けと言われたら、そうします。でもその」
 
 ……どこに行けって? 

“黒き力”ヴィカラーラ :
「あら。夢の無い回答と疑問ね、“ラッキージンクス”」

久外境耶 :おかしいな 悪夢なら見てるのに

“黒き力”ヴィカラーラ :せいぜいそのボヤキが堂々と言えるようになることね

“黒き力”ヴィカラーラ :
「夢を宝物のように担ぐのは、人間にとってのマジョリティではなくて?
 まあいいわ。もう一度言ってあげる」

“黒き力”ヴィカラーラ :
「『リュウグウジマ』に向かいなさいと言ったの」

SYSTEM :
 上司ではある。
 厳密に言うと、上司の、そのまた上司の、さらに上。
 セントラルドグマのリエゾンロードは、欲望を是とするFHの、ほんとうに数少ない『上下』であった。

SYSTEM :
 その余裕は紛れもなく、彼女がリエゾンロード…。
“黒き者”ヴィカラーラであることの所以だ。

SYSTEM :
 女はあなたの所属するその名も定かでない“ストレイ・キャット”にとっては決定的強者であり、気まぐれで通信してくることさえ有り得ないような相手だった。

 日本のFHセルは嘗てとは違う。最大手を除けば、各々が横の繋がりなど持たず無法を行う間柄だ。

 そしてこの女は、あえて言うと最大手では“ない”。
 コードウェル博士の活動を容認し、その派閥が前の日本FHにとって代わりつつある今。
 彼女とコードウェル博士を指して、どちらを外様とするのかもまた、時間をかけて変わりつつあった。

久外境耶 :
 上の上の、もっと上……とは言うが。
 べつにトップが足抜けしたオッサンだろうと由緒ある人殺しだろうと、下もここまで下なら関係ない。
 
 ……"タケミカヅチ"にいた頃ですら縁のない存在が、なんだってここで出てくる?

久外境耶 :「……カブンにして存じあげないですね」

“黒き力”ヴィカラーラ :
「ふうん。ソレは遜ってくれるじゃない。
 バステト
 “人喰い猫”は飼い犬の躾もお得意のようね」

SYSTEM :
 セルリーダーのコードネームを呼んだ彼女は、
 その反応自体は地味に面白くなさげにしながらも、全く表情と声色を動かすことはなかった。

“黒き力”ヴィカラーラ :
「ま、いいでしょう。
 餌のある方向も教えないんじゃあ、
 それはそれで面白くないわ」

“黒き力”ヴィカラーラ :
「三つ説明しましょう。
 なにも海底に潜って死ねとか、あなたの”ラッキー”がどのくらい続くのかとか、そういう話をしに来たわけじゃあないのよ?」

久外境耶 :そうなんだ

久外境耶 :そうなんだ……

久外境耶 :ちょっとうたがってました

“黒き力”ヴィカラーラ :あなた思ったより目でモノ言うわね

久外境耶 :「……ああ。ガチに仕事なんですね」

久外境耶 :「なんだっておれみたいな底辺に──って話は、いったん置かせてもらいます。聞かせてください」

“黒き力”ヴィカラーラ :
「一つ。私の駒に、そういうのの感知が出来る“オルクス持ち”が少なからずいる。
 彼女たちが、ニホンの海洋に巨大なレネゲイド反応を感知した。それが始まりよ」

SYSTEM :
 詳しい場所はあとで“コレ”から聞きなさい、と。あなたの上司を顎でくい、と指す。
 女の言葉を鵜呑みにするならば、日本近海、太平洋方面でレネゲイド反応があったという。

 しかし日本昔話にある“城”など、いま出てくれば無粋な観光地点か利権争いが関の山。
 海原にそのようなものがある話など聞いたこともない。況や、島さえも。

“黒き力”ヴィカラーラ :
「まあ、正直それだけなら知ったことじゃあないのだけど。
 肩で風切ってる裏切り者の縄張りで何が起きようが、始末はあっちにつけさせるのが筋ってものよね」

“黒き力”ヴィカラーラ :
「そこで二つ目。
 FHの知ってるエージェント………そいつが、どういうわけかそのポイントに動き出した。
 知らぬ名ではないの。戦えば私が勝つけど、行き先の共通性だけは確かだから」

久外境耶 :上司? けっこう聞かされてるね上司? おれなんも知らないよ?

FHセルリーダー :ハッハッハ オレもさっき聞いたんだって

久外境耶 :「玉手箱の横取りでもしろと? ……どこのどいつです、そのエージェントって」

“黒き力”ヴィカラーラ :
「中々察しがいいじゃない。
 ・・
 そうよ」

久外境耶 :グエ……

“黒き力”ヴィカラーラ :
「そのエージェントは…。
..    マンティコア
 そう。“喚楽の人喰い虎”とか言ったかしら。顔は知らないけど、昔ちょっと興味のあることをしててね。その名残」

“黒き力”ヴィカラーラ :
「そのエージェント、基本的に………。
 ・・・・・・・・
 自分と戦える相手のところに行きたがるのよ」

SYSTEM :
 そいつが引き寄せられる誘蛾灯とあらば、
 まあそれなりに面白いものはあるだろうという推測の話。これが二つ目らしい。

久外境耶 :
 ……少し見えてきた。リエゾンロードに名が知られるくらいには「やる」らしいバトルジャンキーの行き先に、最強とやらを人造したがってる女が興味を持つのは、合点のいく話だ。

 それより……

久外境耶 :
「──おもしろそうですね、それ」

 個人的な興味が顔を出した。

SYSTEM :
 今まではどこか嗜虐的な態度を取っていた彼女のソレが、より強く深まる。
 三つ目を聞く前から発した個人的衝動を伴う回答、ソレがなかなか興じさせたらしいと、人目で分かるような反応。

“黒き力”ヴィカラーラ :
「そうでなくちゃ」

“黒き力”ヴィカラーラ :
「正直に言うと、遊びで払った掛け金の回収もしたいのよ。
 勝負に勝って全取りは基本だもの」

“黒き力”ヴィカラーラ :
「何もなければそれでよし、殺風景な休暇とでも思いなさい。準備は一任するわ。
 手に入ったものは、私に教えてくれるなら、まあ好きにしていい。興味のないものならそのままあげる」

久外境耶 :
「……ガチ?」

 口を抑える。今のなし。

久外境耶 :
 ……ずいぶん気前がいい。リエゾンロードってやつはみんなこうなのか?

久外境耶 :
「わかりました。“喚楽の人喰い虎”についてもう少し伺っても?」

 とはいえ、手に入るのが"もの"ならさほど興味はない。目下の関心はこっちだ。

“黒き力”ヴィカラーラ :
「知っておくべきことなんて、ソレが強いか弱いかくらいね。
 顔は知らないわ。随分と派手にやるコなこと、それから………」

“黒き力”ヴィカラーラ :
「滅茶苦茶にやらかしてくれるクセ、自分の琴線に触れない相手のことは見向きもしない。

 別に同業でも構わず喧嘩を吹っ掛けるタイプみたいだから、出会って戦いたくないと思うようなら、適当に“しらけさせる”ことね」

SYSTEM :
 ヴィカラーラはあなたにも分かるほど明確に“知っていて言おうとしないこと”があるようだが、少なくとも目に見えて特徴的なシンドロームと、個人的感想だけは教えてくれた。

SYSTEM :
 曰く、世界各地を巡る神出鬼没のキュマイラ。
 これを語るヴィカラーラは、その“喚楽の人喰い虎”をどこか面白がっているようにも、別の感情を含ませているようにも見える。

久外境耶 :
 ……選り好みの激しい暴れん坊。
 目をかけられても厄介らしいが、歯牙にもかけられないのはプライドの問題だ。

久外境耶 :
「覚えておきます」

 返答は端的に。藪をつつく危うさは、求めているものと違う。

“黒き力”ヴィカラーラ :
「そうしなさい。
 しょせん負けて死ぬ方が悪い世界。気に入らなければ殺そうと思ったって別にいいわ」

SYSTEM :
 そう語る彼女。

 ここまで言えば気前の良い、気まぐれでやって来て気まぐれを押し付けてくるだけの、よくいてしまう変なFHだ。

SYSTEM :だが………彼女はリエゾンロードであり。

SYSTEM :
 リエゾンロードは典型的に、自分の欲望のためなら、ためらいなく他人を踏み躙る。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 自分の方が上と心の底から信じられる破綻者/怪物しか、それにはなれない。

“黒き力”ヴィカラーラ :
「そうそう。
 流石に一人で放り出すのも可哀そうだから、
 こっちの駒と………都合のついた人間もつけてあげる」

“黒き力”ヴィカラーラ :
   ・・・・・・・・・・・・
「………あなたが彼らを使いなさい?」

SYSTEM :
 それは、あなたの能力を見込んでのものか。
 あるいは───。

SYSTEM :
 ………どことなく嗜虐と興味を含んだ表情。
 それは、最初から最後まで誰に向けられていたのか。

SYSTEM :

 曰く幸運の徴とも言われるその称号は、生き残って来たということでもある。

 彼は知る由もない。
 タケミカヅチを壊滅させた件の戦闘に関わっていたとあるFHセルの所属から、彼女が当時の事件にわずかなりとも目を向けてはいたことを。
 彼は知る術もない。
 元々この女が口にするつもりだった三つ目の根拠、それが………。

SYSTEM :
         ・・・・・
 本人に言わせると猿山の大将に過ぎないコードウェルの寄越した依頼(ダミーの“ディアボロス”がしくじりながらあなたが成功させた仕事)に興味を示し、
 嫌がらせ目的のためだけに『ヘルタースケルター』に金を積み、正体を把握し、興味を懐いた“だけ”だったことを。

SYSTEM :
 つまりその本音と来たら、

 最初から嫌がらせとあわよくば排斥のために一手を打ったら面白いものが見つかったから、
 日本で起きた出来事の中で興味のあったFHチルドレンのうわさがどの程度か確かめてやろう、という───あまりにあまりな無茶振りなのだということを。

久外境耶 :
 ……クランの女主人の真意は分からないが、どうやら野良犬よりは価値を見出されているらしい。

 踏み躙るのも、弄ぶのも、まあ上におわす方々の特権だろう。
 好きにすればいい。おれもそうするだけだ。

久外境耶 :
「……おれが?」

 その。
 ありがたいであろう提案にだけは、さすがに面食らったが。

久外境耶 :
            ウチ
「捨て駒に使われる駒ね。FHらしい悪趣味だけど、貸してくれるならありがたく」

久外境耶 :
「ああでも、帰れるかはその人たちの運なんで。延滞料とかは言いっこナシですよ」

“黒き力”ヴィカラーラ :「あら、減らず口」

“黒き力”ヴィカラーラ :「その口に免じずとも赦すわ。せいぜい踏み台にしなさい」

SYSTEM :
 特に、面倒な方を………と。
 そう語る彼女は、どちらかというとあなたがソイツを踏み潰せる/使い潰せることを期待しているようにも聞こえたが、さておき。

“黒き力”ヴィカラーラ :
「場末のセルにも面白いコがいるのね。

 それじゃあね。聞きたいことがあるなら、そこの飼い猫に聞きなさい。
 上司の上司の恃みだもの、イヤとは言わせなくていいわよ」

SYSTEM :
 腹芸とは無縁の態度は、自らの揺るがぬ椅子の所以か。
 ともあれ仮に善意などがあったとして、それが純度100%のものではないことを何より明白に伝えるだけ伝えて、彼女は《ディメンジョンゲート》が作り出す無明のなかへ姿を消していった。 

SYSTEM :
 なお彼女の言葉尻と、心底嫌そうな顔をして「ちょっと待って聞いてねえことの方が多いんだけど?」とぼやいた”人喰い猫”らしい男の反応的に、どうも現在の塒の元締めは、彼女と元々ずいぶんな上下関係にいるらしいが。
 そこは余談だ。大した話ではない。

久外境耶 :
 闇に消えていく姿を頭を下げて見送ったあと、

「あれの下? ガチで? ここあんたが趣味でやってる人拾いセルじゃなくて?」

 余談のほうへ勢いよく突っ込んでいく。聞いてないかんね。

FHセルリーダー :
「フッフッフ、まるで1等の宝くじでも当てて信じられんと言わんばかりの顔だねキミ。オレも信じたくねえよユメにならねえかな」

FHセルリーダー :
「まあぶっちゃけると“オレが”そうってだけだよ?
 昔派手にやらかした後、砂かけて出てったんで、次機嫌損ねたくね〜の」

FHセルリーダー :
「まあでも言い訳はせんよ。
 オマエがご所望だったっぽいから紹介したの。オレのシュウカツごとブッ壊されたくないから。異議ある?」

久外境耶 :へえーーーー! とのけぞる。見えね〜 

久外境耶 :「んー……ないんじゃね、たぶん。けっこーおもしろそうだし」

FHセルリーダー :嬉しいなあ正直でクソガキがよォ

久外境耶 :「つかさ」

FHセルリーダー :「あん? どうしたの」

久外境耶 :「"喚楽の人喰い虎"だって。あんた二重に名前負けてんね」

FHセルリーダー :「ハハハ遠慮しないでくれて助かるなあオイ 微かに残っていたかもしれない罪悪感はいま翼を生やして飛んで行ったわ」

FHセルリーダー :
「てか、別にいンだよそれは。
 もしもその名前被って出て来た面がオマエくらいのガキだったら流石に考えちまうけど」

久外境耶 :「お、聞いたぜソレ。写真撮ってくるわじゃあ」

FHセルリーダー :
「なんだその行動力。
 いいけどなんだっけ、“しらけさせる”と牙収めるんじゃなかった?」

FHセルリーダー :
「てか、オマエ自体はそれなりにやる気なワケね。
 ガチでイヤなら逃げ道一つくらいは作ってやろうと思ったけど、そんならいいや」

久外境耶 :「そりゃあね。シュミで死ににいくのとあんま変わらんし、気軽にいってくるわ」

久外境耶 :「それよか、気が進まないのはお供サンなんだけど。部下的にどうなの? 心当たり」

FHセルリーダー :
「部下的なアドバイスしておくと、ガチで不甲斐ない真似すると背中からブッ刺してくるタイプが多数派だぜ」

FHセルリーダー :
「ほら、オマエさっきの態度見たろ?
 ・・・・・・
 弱いのが悪いみたいな態度してたじゃん。
 だいたいあのノリだから。シュミで死にに行く方法択ばんなら初手で命乞いしてみ」

久外境耶 :「見えてる1リザは虚無だろ!」ややウケ

久外境耶 :「そんなノリなら虎しらけさせるの余計ナシじゃんな。温情かと思ったら爆発首輪かよ」

FHセルリーダー :
「そりゃオマエ、たまたま目に留まったから無理難題吹っ掛けようレベルの人生ノリで生きているバケモンがさあ」

FHセルリーダー :
「自分がアクセル踏んでるんだから他人にアクセル以外を踏ませようとするわけないじゃん?」

FHセルリーダー :
「だいたいそういう感じ。
 てか何 見えてない1リザはいいの オマエもF1のスタートダッシュみたいな命の使い方するよね」

久外境耶 :「眩し〜っしょ」

FHセルリーダー :「眩しすぎて視線背けちまうわ」

FHセルリーダー :
「あ、そうそう。
 さっきの、誤解招きそうだったから一つ付け加えておくとだな」

久外境耶 :「おん」

FHセルリーダー :
「ヴィカラーラは自分の飼い犬飼い猫に“面倒”って言い方しない」

FHセルリーダー :
「たぶんなんだけどオマエの下につくこと自体が割とおかしいやつが来ると思うんで、あーアレだ。
 プレッシャーに負けんように頑張れ」

久外境耶 :「あー……」

久外境耶 :「うー……」

久外境耶 :「え〜……余計ヤなんだけど返品って効くとおもう?」

FHセルリーダー :
「機嫌悪い時に返品したやつの頭が場外ホームランになったトコは見たよオレ」

久外境耶 :「グエ……」

久外境耶 :「どーしよ、向いてねえって。上いないだけで落ち着かないのに」

SYSTEM :
 仮の塒、ひと時の家主。
 少なくとも敬意もへったくれもないが気安くはあるだろう曰く”人喰い猫”は、いつもの人を食ったような面で応じる。

FHセルリーダー :
「だからやったんだろ。
 それでも何とかなる、の方向に賭けてるんだ。だからまあ、」

FHセルリーダー :
「テキトーにやってこい。
 人生詰んだ、やること失くしたって感じじゃないなら、
 生きてるウチはあっちからやらなきゃいけないこともやっておいたらウケることも、呼んでないのに勝手にやってくる」

FHセルリーダー :
「選べるうちは、その中からテキトーに選べ。“落ち着かない”でなんやかんや出来るのなんか今の特権だぞ」

久外境耶 :「……リーダー」

FHセルリーダー :「どうした」

久外境耶 :「ジジくせ〜ね」

久外境耶 :
 実を言うと。

 古巣からこっち、ひとところに居付けないには持て余していたワケで。
 ここはけっこう長居してるのは、たぶん、このあたりが理由だ。

久外境耶 :
 ゼッテ言わね〜けど。

FHセルリーダー :「いまの発言全部撤回して”グー”にしていい?」

久外境耶 :「はいパーな、おれの勝ちで〜す。じゃ、準備あるんで」逃げの姿勢

FHセルリーダー :
「あっコノヤロ、だがもしもオレの手が今チョキだったらどうす───」

FHセルリーダー :
「…聞いてねえなアイツ!」

SYSTEM :
 しょうもない数分の逃走劇。
 これはまた、平凡なセルの平凡ではない出来事の後にあった余談である。

SYSTEM :
 ………その後のことは想像に任せるが、ともかく。

 “面倒な方は足が速いからすぐにでもやってくる”、という、ヴィカラーラが押し付けた数少ない伝言のとおり。

SYSTEM :
 この、なんでもないセルに。
 “そいつ”は来た。

 所要時間、1時間足らずのことである。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 今日は、お客様の多い日だ。

 だれかがボヤいた。
 あなただったのかもしれないし、それは意外な事情をお持ちのセルリーダーだったのかもしれない。

SYSTEM :
 顔合わせのために一足先にやって来たのは、そのエージェントのひとり。
 子飼いではない方。

 何を以て面倒、としているのか。
 その事実は、顔を見て、覚えがあるなら一瞬にして氷解しただろう。

“パラディン”的場啓吾 :

「“パラディン”だ。
 “ラッキージンクス”というのは?」

SYSTEM :
      ・・
 何故なら、それはヴィカラーラの意図する感情を示すには十分すぎる偉丈夫の二つ名───。
 ダブルクロス
 裏切り者にして、UGN日本支部“元”最強の男。
 今やその名も似つかわしくない、的場啓吾を指す称号であったからだ。

久外境耶 :
「うわ」

 面倒って言ってたけどさ。

 ……そういう方向性?

久外境耶 :
 これを使う? 冗談だろ? ……冗句のつもりではあるかもな。

 あちらさんでのトップクラスは、当然こっちでもマスター級。
 場末のチルドレンが指図できるような相手じゃない。

久外境耶 :
 人選は見たトコ性能より嫌がらせ。
 どっちに対してかは知ったこっちゃないが。

久外境耶 :「ン、おれっす。……」

久外境耶 :💡

久外境耶 :
「いいんですか。行き先、オモカゲじゃなくてリュウグウですけど」

 あんた用事あんの、と言外に。

久外境耶 :
 リーダーどんな顔してっかな。これ、おれ的には見えてない1リザ。

SYSTEM :
 あなたのその言葉に、”人喰い猫”がどんな表情を見せたのか。
 これを言葉に表すならばまさに“うわー言いやがった”とでも言いたげなゲンナリ表情だが、それ以上の危機感ではなかったところ、見解はあなたとそう変わらないらしい。

“パラディン”的場啓吾 :「成程な」

SYSTEM :
 そいつが、眼前のあなたを目当ての“ラッキージンクス”だと知ると同時に、視線が合う。
 恐らく壮年と呼ぶには早い年なのだろう彼の顔は、いくつもの戦場を潜り抜けた戦士の面構えであった。

“パラディン”的場啓吾 :
「さてな………だが、セントラルドグマのリエゾンロードきってのお願い事だ。
 自分でどれほど崇高なものと思ってるかは知らんが」

SYSTEM :
 言い換えるなら、せいぜい高い貸しにしてやると言わんばかりの涼し気な態度。
 その辺り、“パラディン”は特に深刻にも不機嫌にも思う素振りはなかった。

“パラディン”的場啓吾 :
「しかし物怖じしないガキだ。
 最初にソレを突っ込んで来たやつは何人目だったか」

久外境耶 :お、いい反応〜。ごりっぱで助かるね

久外境耶 :「ガキのうちは笑って流してもらえるんで」

“パラディン”的場啓吾 :「それはいいが、ガキの粗相を笑って流すのは真っ当な大人だけだぞ」

久外境耶 :「ええ、だから相手は選んでます」

“パラディン”的場啓吾 :「とんだ跳ね返りだ」

SYSTEM :
 殊更にマセているな、と。
 そう語る男の言葉は、極端に悪い印象を持っている素振りではなかった。

“パラディン”的場啓吾 :
「確かに動機なし、嫌がらせめいたつまらん遠征だが、不幸中の幸いだ。
 それだけ胆が据わって、目が濁ってない」

SYSTEM :
 そうだったなら、余計な手間が増えたところだ。
 肩をすくめて口にする男の表情は微かに笑っていたが、実際言わんとすることの意味は明快であった。

久外境耶 :「そりゃどうも。おれも組むのがあんたなら悪くないと思ってたトコです」

久外境耶 :
「ま、おれはおれで楽しむんで。ラクですよ、仕事と趣味がダブってるの」

 とはいえ。のんきしてられるのは、もう一人のお連れサンが顔出すまでかな。

“パラディン”的場啓吾 :
「なら、減らず口はせいぜい切らすなよ」

SYSTEM :
 ふん、と鼻を鳴らす。
 そしてあなたの懸念と見解を察しているのか、男の言葉はすぐに、もう一人の連れに関する話に回って来た。

 もっと正確に言うと、仕事の話か。

“パラディン”的場啓吾 :
「そのダブった仕事向きのオーヴァードが、彼方の寄越してくれる犬の内訳だ。
 ただ、そいつらが顔合わせに来る気はほぼないだろうから………作戦前の猶予期間は、どちらかというとおまえのためのものだな」

久外境耶 :へえ〜 ありがたくて涙も出ねえや

SYSTEM :男はあなたの軽口を軽く流した。

“パラディン”的場啓吾 :
「で、戦闘の可能性もある。UGNっていうよりかは………、同じハイエナとの喰い合いの方だな」

SYSTEM :
 そうして彼は、ぶっきらぼうに名簿を投げ渡す。

SYSTEM :
 名簿には複数人のオーヴァードの名が記録されていた。 
 もちろん、“パラディン”の名もだ。

 ブラックドッグとモルフェウスのクロスブリード───。
 かつてとはいえUGN日本支部最強の男として名を馳せたその力量は、何処かで錆び付いていない限り、伊達ではないのだろう。

久外境耶 :「ふうん。そんなに注目されてんですね、"喚楽の人喰い虎"……っと」

久外境耶 :
 キャッチした名簿を眺める。
 目ぼしい名前はやはり"パラディン"だ。

久外境耶 :
 ……聖騎士ねえ。

久外境耶 :
 真っ当な大人だったのは、意外と納得の半々。
 話せる相手が回ってきたのは、おれのツキ。

 だからまあ、元の所属はどうでもいいんだ。
 だってその経歴じゃあさ。

久外境耶 :
 日常の守護者なんて幻想はとっくに落としてきたろ。

久外境耶 :
「いーんじゃないすか、サハンジでしょそれ。
 しょっぱい相手なら、あんたのネームバリューでどうにかなりそうだし」

“パラディン”的場啓吾 :
「どうだかな」

SYSTEM :
 それはどれに向けた言葉か。
“喚楽の人喰い虎”に対しての話か、自分のネームバリューとやらに向けたものだったのか。

 少なくとも“虎は先約がいるな”という言葉については前者のようだった。

“パラディン”的場啓吾 :
「とはいえ、10年変わらずの暴れ馬だ。
 無軌道にやった間抜けが生き延びていける世界じゃない。
 それでやっているなら、運が強いか力が強いかの何方かだろう」

“パラディン”的場啓吾 :
「だからまあ。しくじれば死ぬだけ。
 シンプルで、“茶飯事”だな」

SYSTEM :
 そう軽口に軽口で返す最中。めぼしい名前の筆頭である彼以外については、だいたい見た覚えのない名前。
 そもそもヴィカラーラの私兵が全員名前を明かしているはずもないのだから、むべなるかなというところ。

 覚えようと思わなければ、特に覚えなくてもいいだろう。目立つ人間は勝手に目立ち、そのあとの進退はそいつ次第となりがちなのがFHだ。

久外境耶 :死んでなきゃ覚えてやるよ、はお互いサマ。頭に詰めるのは早々に諦めてリーダーに名簿をパス。

FHセルリーダー :それオレに渡されてもじゃない?

久外境耶 :捨てといて♡

FHセルリーダー :こちらのやる気は有料サービスとなっております

久外境耶 :ケチくせ〜

“パラディン”的場啓吾 :迷い小路のボスとはよく言ったもんだ。

FHセルリーダー :住めば都です。アー、ところで…。

GM :
 ………OPシーン1同様に言及しておきますと、OPシーン中は概ね事前の調達判定が1度だけ可能です。

 その際は調達するアイテムについて宣言し、こちらが確認したのち判定を行ってください。

久外境耶 :鎖帷子!着てくんで袋いらないです

GM :
【Check!】
 調達判定要求を確認しました。
 あたためますか?(判定を行ってください)

GM :あ すみませんSYSTEMと間違えました

久外境耶 :カッケ〜から気にすんな!

久外境耶 :2dx+6 (2DX10+6) > 6[4,6]+6 > 12

久外境耶 :よし!ややぬくもり

久外境耶 :夏だったわ あたためナシで

GM :アオン(残念げ)

SYSTEM :
【Check!】
 調達判定に成功しました。

GM :
 購入したアイテムはそのままキャラシートに記入しておいてくださいね。

久外境耶 :おう。ばっちりだ

久外境耶 :
「準備できたから行くわ」

 べつにイッテキマスとオカエリナサイの関係じゃないし、リーダーへの挨拶なんてそんなもん。

「仕事ついでのトラ観光だ。回したらバターになるんだろ、あいつら」

FHセルリーダー :「お土産よろしく」

SYSTEM :
 いってらっしゃいではない気安さ。

 いつ死ぬか分からず、途切れるかも定かでない。
 真っ当な陽の当たるところにいないオーヴァードの、真っ当なかたちでない社会での、まあ平凡な挨拶。

“パラディン”的場啓吾 :
「では行くか。
 存外、虎だけではないかもしれん」

SYSTEM :
 動機はそれぞれ。仕事は押し付け。
 海向こうに沈んだ宝くじの総取り。

 無自覚の呉越同舟とは違う、合意の上の呉越同舟がFHだった。

SYSTEM :
 ◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 さて。
 あとあと”人喰い猫”からも“パラディン”からもうかがっていた通り。

 曰く暴れん坊の虎が向かった先というのは、別に陸地などではない。
 ぐるぐる回るための木も地図の上にはありゃしない。いっそ溺れて死んでいるかもわからない。

SYSTEM :
 とどのつまり、海の上だ。

 調査はヴィカラーラがそれなりに面白がって揃えた人員のためか、範囲としては虱潰しに相当する。
 彼女が育てた私兵集団、マーダーオヴブラックのオルクスシンドロームたちは、適性の違いこそあれど、どいつも所謂生体レーダー。

 それと元々のレネゲイド反応を参考に、展開した領域によるカモフラージュを伴いつつの、数隻バラけた夜間行軍。

SYSTEM :
 うち1隻にはあなたと“パラディン”、彼女の持ち駒の中でも最も“行儀のよい”のが乗っている。あとは小粒か目立たないか、特筆するに値しない、どこにでもいる犠牲駒だ。

FHエージェント :
「しかし静かなモンだ………。
 おい“ミッドナイトアイ”。本当に座標、ここでいいのか?」

SYSTEM :
 そう呼ばれた女からの返事はない。
 正しく言うと、

“ミッドナイト・アイ” :
「………」

SYSTEM :
 くい、と顎を向けてあなたを指すだけ。
 自分の仕事じゃないからリーダーの方に聞いて、とばかりの放任。

 前者は比較的どうでもいい方で、後者がヴィカラーラのお目付け役。
 彼女の探知網にも、自分たちの意識にも、引っ掛かるものは何もない。

 穏やかな海というには妙な不透明さだけが残っている。

“パラディン”的場啓吾 :
「エンジェルハイロゥの類ではない、オルクスの類にも引っ掛からない。
 ………あとはなんだ。虎は溺れ死ぬと思うか、“ラッキージンクス”」

SYSTEM :
 こちらはこちらで半信半疑。
 半分の方には、少し引っ掛かるものを覚えているような口ぶりだった。

久外境耶 :
 どこにでもいる連中の枠よりかは上澄みになったと、
 まあ例のリエゾンロード様に目をつけられた以上は自惚れてもいいだろう。
 だいいち、古巣の上等さは自負するものがある。実力は卑下しない。

 だからって、急に上座に置かれたって困るワケで。

久外境耶 :
「グエ」

 おれだって聞かれても困る、と真顔にイヤ〜な顔で応じる。

久外境耶 :「さてねえ。メガロドンvs人喰い虎なんてアホな想像はしたくないですけど」

“ミッドナイト・アイ” :「………。だ、そうです」

FHエージェント :「おめえの頭で考えろってか?」

SYSTEM :
 口数少なくポツリと応じた方に食って掛かる下っ端をよそに、B級映画の取り合わせを話された方は少し顎に手を当てる。

“パラディン”的場啓吾 :
「アホな想像が行き着けば、鮫も虎も空中戦を始めそうだ」

“パラディン”的場啓吾 :
「とはいえ。ヴィカラーラは性根こそ“ああ”だが、高い金を払って嫌がらせだけをする女でもない…」

SYSTEM :
 むろんその目的の一部にサボタージュめいた嫌がらせを含むことは、
 平気かつ平然とやってくる、性根のロクでもない女なことに代わりはない。

 しかし何の意味もない殺風景なクルージングに、そういう面子を揃えて案内してハイ終わり、など。

“パラディン”的場啓吾 :
「そういうのはしない。するとしても“マスターマインド”とかだ。
 部下としてはどうなんだ、お前の御主人様は」

“ミッドナイト・アイ” :
「ええ………。いま振られても困る」

久外境耶 :オメーも困んのかよ!

“ミッドナイト・アイ” :仕事中の失言で変な失点つけられたくないし…

“ミッドナイト・アイ” :
「まあ………実際なんにもないわけじゃない。
 というか、足元になんかいる感じは凄い。近くにくると余計分かる」

久外境耶 :くそっ ぜんぜん分かる理由で納得しちまった………

久外境耶 :「足元ぉ?」

久外境耶 :モノは試しか。GM、《熱感知知覚》に反応は?

GM :あら? ふむ。

GM :しょうしょうお待ちください。

GM :確認しました。使用そのものは構いませんが、判定が発生しますね。

SYSTEM :
【Check!】
 判定が発生しました。
 
 判定:〈RC〉
 目標:7
 Success:イベント進行
  Failed:イベント進行

久外境耶 :素振りしかないな いくぜ

久外境耶 :1dx+1 (1DX10+1) > 3[3]+1 >4

久外境耶 :……

久外境耶 :ファンブらなかったのでラッキーと言える

“パラディン”的場啓吾 :ゼロより下はないと…ふむ ものは言いようだな

SYSTEM :
【Check!】
 判定に失敗しました。 

SYSTEM :
 真下。
 言われてみなければ全く気にもかけないが、
      ・・・
 要約すると海の底。
 水圧に押し込まれ、光の届かないはるか彼方だ。

SYSTEM :
 普通に考えて、そこに“何か”があるとは思わないし、思えない。
 回遊を続ける魚群の熱、ひときわ大きな魚類や話題に挙げた鮫らしき個体の熱。
 
 そういうありふれたものの多さから、とくべつ危険なものを捕まえようというのは、多少コツがいりクセのいる話。

SYSTEM :
 ………あるいは。
 ひょっとすると、無意識に辟易し、逸らしたのだろうか? その辺の機敏はまあ、あなたにしか分からないことだ。

久外境耶 :
 船べりに手をついて、凪いだ海面を覗きこむ。
 揺れる分厚い層の向こうに見える熱源の群れに、特異なものは見当たらない。

 ……いや。

久外境耶 :
「わかんね」

 シンプルにこれだ。

“ミッドナイト・アイ” :「…はあ」

SYSTEM :
 女は何らオブラートに包まず溜息を吐いたが、
 それは同時に『自分より上手くやられてもそれはそれで困る』の溜息だったようだ。

“ミッドナイト・アイ” :
「圧迫感っぽいやつね。足元にでかいのがずっといる。
 同じタイプのオルクスなら1発だけど、それじゃないからピンとは来ない………」

“ミッドナイト・アイ” :
「いっそその辺のやつでも突き落としてみる?」

久外境耶 :自然と視線が動く。たぶんこいつと同じ方向。

FHエージェント :「まっ………待ってくれ」 

SYSTEM :俺ぁハヌマーンじゃねえんだ…という命乞いの姿勢を言外に感じる…。

久外境耶 :「いけるいける、サッと浸かるだけ。な? 救命具だって積んで……ないわ」

“ミッドナイト・アイ” :
「大丈夫。オーヴァードって、1回潰れただけなら死なないよ」

久外境耶 :「そうそう。リスキル状態はしんねーけど」

FHエージェント :「落とすモンの話してんだよ俺ぁ…!」

SYSTEM :
 冗談なのか冗談じゃないのか絶妙に分からない言葉選び。
 しかし………その手持ち無沙汰の沈黙を破ったのは───。

“パラディン”的場啓吾 :
「───。
 見えている実験結果の前にだ、」

“パラディン”的場啓吾 :
 ・・・
「右手側からだ、避けろ」

SYSTEM :

 その言葉の意味が分かったのは、
 たまたまあなたが間の良いことに“真下”とやらに意識を向けていたから。

 その言葉に反応出来るとすれば、
 たまたまあなたがその身近な位置にはいなかったから。

SYSTEM :
 程なくして。

 魚群の熱をすり抜けて、とうとう“分かる”距離まで、意図をもって近づいてくる存在をあなたは察した。

SYSTEM :
 一本、二本、三本───。

 そう、本数。
 確かな生物の熱を持ちながらも、その中にある色は人間や真っ当な生命体の持つ色ではない。

 規模にして人ひとりまるごと押し潰せる質量なのだと察し、あなたが迎撃行動を取るのとほぼ同時に───。

SYSTEM :
【Check!】
 ???がEロイス『█▇▅▇▇▅』を発動しています。

SYSTEM :
【Check!】

 さらに???がEエフェクト『█▇▅▇▇▅』を使用しました。

久外境耶 :
「おい、ミッドナイト! 前髪!」

 他人の心配? まさか。無能な味方は困るってだけで──ああクソ、余計なことしてたらおれがそうなる!

SYSTEM :
 その、瞬間のこと。

『怪物の腕』 : 

SYSTEM :
 それが人間のものではないにせよ、
 ・
 腕であることだけは分かるものが、右手側から文字通り。
 こちらを押し潰しに来た。

SYSTEM :
 対処は様々。

 ブラックドッグ・シンドロームが持つ放電能力とその豪腕で、
 叩き付けられようとして来た腕ごと、顔色一つ変えずに捌いた者。

“ミッドナイト・アイ” :
「うわ、やば───、」

SYSTEM :
 声に反応を遅らせるほどではなかったのか、
 叩き付けられる本当に直前に、安全地帯に飛び込んで、襲撃を躱し命拾いした者。

SYSTEM :
 あなたに降りかかったそれはどうなるかは定かでないが………。

 そして、最後に。

FHエージェント :「えっ───」

SYSTEM :
 シンプルに対応出来る実力のない者。

SYSTEM :
 ばしん、と。
 間の抜けた音と共に、有り得ない方向に曲がった“前髪”呼ばわりされたエージェント───コードネーム、パープル・スパーク───が海底へ有言実行のダイブを披露する。

SYSTEM :
 あなたを押し潰さんと迫って来る腕の1本を、
 あなた自身が対応するのに合わせて───。

SYSTEM :
 ───瞬間。
 嵐が、押し寄せた。

久外境耶 :
 海水の層を突き破って、それは現れた。
 熱を帯びた幾つもの柱。かろうじて理解できるのは、その畸形が腕らしいというコトと、

「ハ──!」

 お待ちかねは、思ってたよりずっと早かったってハナシ。

久外境耶 :
 背筋も凍る死の気配。当たれば死ぬし、落ちても死ぬ。オーヴァードは死なずの病ってのは否定しないが、ヒトのカタチをしてる以上は簡単に死ぬ。見たばっかだろ、たった今!

「だからやってんだよなァ!」

 わざわざリセイなんて枷をつけて!

久外境耶 :
 足元を蹴りあげると、飛沫く海水が瞬時に凍りついていく。即席の盾。だが──

「ギア上がってないとこんなもんか!」

 これじゃ止められない。"パラディン"にあてられたカッコつけは早々に諦めて、素直に舟板を蹴りつける。
 飛びのいて着地するより、さっきまで自分がいた場所がメートル単位で抉られるほうが早い!

久外境耶 :
「ダハハ! やっべ死ぬかと思った!」

SYSTEM :
 蹴り上げた足元。
 コレを起点として奪われた熱が水分を固体に凝結させる、人間の築いて来た科学が匙を投げる超常現象。

 しかし衝突で分かることはある。
 伸縮自在ながら本質は剛性。腕の持ち主と呼べるものがいるならば、これは極めて直線的な白兵戦闘向けの異形/推定ジャーム。

SYSTEM :
 数秒もしないうちに命あっての物種と放り捨てられた弾きの真似事であるが、それが分水嶺となって“ラッキージンクス”の命を拾った。

 死ぬかと思った───とてもそうは見えぬ愉快な哄笑は、火が入ったことの裏返しか。

SYSTEM :
 さておき………。
 そうこうした一瞬だけで、まさに様変わりだ。

“ミッドナイト・アイ” :
「あ、ダメかもこれ。
 気付かれた」

SYSTEM :
 どこか他人事めいた達観/諦観気味の一言を零した“ミッドナイト・アイ”が、淡々と状況に言及する。

 それは先程のがあくまで“腕”。生物のものかも分からず、
 物理法則通りの機能をしているかも定かでないと直感しているからか。
 あるいは最初から真下にいるものの規模だけは何となくわかっているからか。

“ミッドナイト・アイ” :
「なんか癪に障ったみたい。逃がす気はないですって感じがスゴイする。
 ………本気で? 聞いてないんだけど。さっきまでノータッチだったじゃん」

『怪物の腕』 : 

SYSTEM :
 その通りだ、と肯定するかのように、真下の海底。
 もはや誰の何が探知をしなくても分かるほどに、膨れ上がるもの。

 可視化してイメージ出来るほどの圧力を伴うソレは、自らの█▅▇█を阻むものに向けた、純粋かつ暴力的な“殺意”と呼ぶべきだ。

“パラディン”的場啓吾 :
「コイツがか………。賭けは外れたな。
 人喰い虎がコイツなら、流石に名前の詐欺もいいところ。メガロドンでもなかったらしい」

“パラディン”的場啓吾 :
「………バロールのやつは?
 万一の退路役だ」

SYSTEM :
 なおあなたが知る限り、
 さっきので死んでいる。

久外境耶 :
「ツイスト状なって魚の餌! ありゃもうダメだな!」

久外境耶 :
「で──気づかれたって、デカブツか! 足場も終わり気味じゃやってらんねえなあ!」

久外境耶 :
「あれやってみるか? ホラあれ──」

久外境耶 :
「"沈む前に足出して海上ダッシュ"!」

“ミッドナイト・アイ” :「ヒモなしバンジーとか好きそう」

“パラディン”的場啓吾 :「やっても構わんが見えている実験結果だ」

久外境耶 :「じゃあどーすんだよ! イチかバチかならウケるほう取るぜ、おれは!」

“ミッドナイト・アイ” :
「それはもうイチバチどころかイチキューかジュー」

“ミッドナイト・アイ” :
「………あと気付いたっていうか、前提が違うのかなコイツ。
 寝起き? 気付けってやられた? ものすごいフキゲンで、」

SYSTEM :
 もはや自分の命を拾うのを軽く諦めているのか。
 死の危険性に対しても比較的他人事のように“ああでもない、こうでもない”とダウナー気味に喋る曰く「暗殺集団」のレーダー役に対して、建設的(?)な意見を返した方はというと。 

“パラディン”的場啓吾 :
「退路役が円満退職したんなら───」

“パラディン”的場啓吾 :
「これはもう前しかないだろう。
 イチジューで行くぞ。背を向けたら足元から船ごとヤられる」

“ミッドナイト・アイ” :
「ええ………………。このまま直進するの」

SYSTEM :
 海底に得物は届かない。
 足を止めて方向転換などしていようものならば、足元の膨れ上がる推定重力で船ごと飛ばされる。

 なんとも残念で沸騰した結論であるが、
 退路は思いつかない限りでは「前」だけのようだ。

久外境耶 :
「いけませんねえ癇癪は! つかオメー修羅場で口数増えるのな!」

久外境耶 :
「そうこなくっちゃ!」

 話の分かる仲間にリアルB級! 楽しまなきゃウソだろ。

“ミッドナイト・アイ” :「は?」

SYSTEM :
 口数少ない抗議はどこに向けたものか。
 口数増えた土壇場への陽気な茶々入れ。民主的判断で茹った結論へのゴーサイン。ひっくるめて、恐らく全部。

SYSTEM :
 しかし実際、それ以外に手立てはない。
 そうこうしている間にも、一度ひっこめた『腕』が、どうも近くに何かがいると悟ったのか、先程以上の勢いで迫る気配を強めているのが分かる。

“パラディン”的場啓吾 :
「よし。では最大船速で突っ込ますぞ。
 アレの『腕』は俺と“ラッキージンクス”で退かす。
 “ミッドナイト・アイ”はデカブツの中心までナビゲート」

“パラディン”的場啓吾 :
      バロール
「見たトコ、重力操作以外は脳筋御用達の適性持ったジャームだ。
 で、ジャームに限るが………この類はド真ん中に近付けば近づくほど、ほぼ確実に面を出す」

SYSTEM :
 あとは一発ブン殴ってから。

 少なくとも、理性的に背を向けて退くよりは勝算と生存の余地がある。

 そんなコトは真っ当な人間では考えないが、生憎ここのいきものはオーヴァード。しかもその中でも、真っ当でない方/真っ当から逸れ落ちた方の分類であった。

“ミッドナイト・アイ” :
「ええ………………。
 何もかもに勘弁してほしい………」

“ミッドナイト・アイ” :
「………まあ死ぬよりいいか。
 じゃあ真っ直ぐで。死んでも祟らないけど、死ぬよりひどい目に遭ったら末代まで祟る………」

SYSTEM :
【Check!】

 特別な判定が発生しました。

SYSTEM :
内容:強行軍/『怪物の腕』の攻撃を防げ!
詳細:下記の判定どちらかを「2回」行います。その時、どちらをどの回数やるかは問いません。

SYSTEM :
 判定:〈肉体〉
 目標:8
 Success:イベント進行
  Failed:イベント進行

 または、

 判定:攻撃ダメージから生存する
 目標:生存
 (攻撃力1d10+9)
 Success:イベント進行
  Failed:イベント進行

SYSTEM :
・判定失敗回数によって、
 以後の展開が変化します。

GM :
 わかりづらいので追記しておきますと、

・どちらかの判定を択ぶ→行う→またどちらかの判定を択ぶ→行う
 
 というプロセスで行われます。
 上を択んだから2回目も上、というわけではありません。

GM :その都度、自信のある判定を選択してください。

久外境耶 :もちろん生存だ。受けて立つぜ!

SYSTEM :
【Check!】

 判定選択を確認しました。
 攻撃力の算出判定を行いますが、
 2回目も同じ判定を行いますか?(その場合、2度続けてダイスを振ります)

久外境耶 :おー! 二回連続で頼むわ

SYSTEM :
【Check!】

 判定の連続選択を確認しました。
 改めて攻撃力の算出判定を行います。

『怪物の腕』 :1d10+9  (1D10+9) > 5[5]+9 > 14

『怪物の腕』 :1d10+9  (1D10+9) > 4[4]+9 > 13

久外境耶 :っしゃ、ガード値と装甲値を差っ引いてノーダメだ!

『怪物の腕』 : 

久外境耶 :げんきだせって ワハハ

『怪物の腕』 : 

SYSTEM :
【Check!】

 ダメージ判定の計算を終了、
 判定の成功を確認しました。

SYSTEM :
 振りかぶられる腕。
 船体と比較しても十分な大きさを持った、一本一本の畸形が群れを成して襲い掛かる───!

“パラディン”的場啓吾 :
「そら………殴りに来たぞ。
 殴り返してやれ───!」

SYSTEM :
 左手から来るものをあなたが、右手から来るものを“パラディン”が。

SYSTEM :

 受け止めに受け止めれば、分かって来ることもある。
 先の彼の言葉を借りるに曰く………。
 バロール・シンドローム以外は正に殴り合い御用達。剛性のキュマイラと、射程のエグザイル。誰が呼んだか、海底の怪物はデビルフィッシュめいた特性の持ち主だ。

SYSTEM :
 元より直撃と同時に引き寄せるような膂力と射程距離を持ちはするが、持っているだけ。
 それで死ぬ人間が、オーヴァードの看板で良いようには振る舞えまい。

SYSTEM :
 ───背後で大きな飛沫が上がる。
 重力波に押し潰され、拉げて歪んだ水面が津波を起こす。できの悪いスペクタクルが、リアルになって背後から来る。

 しかしそれだけだ。
 一度ももたつかなければ、自分たちの方が“まだ”早い。

久外境耶 :
「ハッハ! あんまノせんなよ、楽しすぎて手ェ滑るわ!」

 撓る畸形が嵐を引き裂いて迫る。
 こんだけアガると、かえって冷気はついてこない。

久外境耶 :
「そぉ──らッ!」

 昂ぶりに任せて振りかぶった拳は、しかし潰れも捩れもしない。
 轟音のさなか、劈くように甲高い響き。

 怪物の腕には、怪物の腕。
 射程のエグザイルには、防御のエグザイル。
         シフト
 金属質の外骨格に変化した片腕が、畸形を跳ね返す……!

久外境耶 :
 "パラディン"のほうは見なくてもわかる。
 見れねえのが残念ってだけで。

 だから。

 戦場だろうと、どこだろうと。
 勝敗を分けかねないほど不要なもの。
 それは無能な味方だっていうんなら──

「やれよ"ミッドナイト・アイ"! あとはオメーで勝ち確だ!」

SYSTEM :
 前者はこれを、徒手で応じ、弾き返す。
 目には目。歯には歯。異形の骨格には異形の骨格。
 変形した金属質が、獲物は其方だとばかりに寝ぼけた怪物の断片を喰らい潰す。

“パラディン”的場啓吾 :「ふん………!」

SYSTEM :
 後者はこれを、徒手で叩き潰し、時に得物の峰で焼き切り。
 事によってはその先端を蹴り返しながらも、必要以上に付き合わない。
 
 背丈を遥か越える異形に対しても、元よりオーヴァードは人間から片足外した連中揃いだ。
 それくらいが出来ずして何とする。見るに及ばずと言ったが、なるほどその通りだ。

SYSTEM :
 視線を向けず、声を発する。
 勝敗を分けかねないほどの不要があるとして、それを積んでいける余裕がこの船にはなく。

 そこを踏まえてヴィカラーラの名もない手駒は、少なくとも優等生ではあった。

“ミッドナイト・アイ” :
「響く。響くから。
 勝ち確も何も、そのまま直───」

“ミッドナイト・アイ” :
       ・・
「───待った。近い。
 5、4、3………」

SYSTEM :
 優等生であったので。

 ド真ん中と指した箇所、海底の怪物のレネゲイド反応、その中点を捕捉することまでは完璧にこなし。

SYSTEM :
 歴戦の士の予測通り。
 そこには確かに………“何か”がいた。

SYSTEM :
 揺らぐ影。
 バロールの重力の濃淡が織り成す幻。

 幻にしては、質量のある影。

SYSTEM :
 大きさにして、軽く視界をまるごと覆う島サイズだが。

 ここで『リュウグウジマ』の名を暢気に思い浮かべたのなら、それは脅威を前にした現実逃避か、よっぽど肝の据わった人間かだ。

『????』 :


『───█▅▇█▅▇▅▅████▅█』

SYSTEM :
 哭き声が、響く。
 理性を宿さないソレが恐らく“目”なのだと分かる時に、視線が重なった。

SYSTEM :
 反応の余地はなかった。
 
 ある意味怯える必要もない。
    ・
 これは幻だった。
 況や、ジャームの妄執が水面に映し出す影のようなもの。

SYSTEM :
 死の危険性など考えるまでもないが。
 しかし判断の術はない。

SYSTEM :
【Check!】

 ???の使用Eロイス『虚実▇▇▅』が判明しました。

SYSTEM :
 果たして、“パラディン”の判断はある意味で正解。
 立ち止まれば死ぬが、近づけば“ご案内”。

 面を出した。根っこを僅かでも覗かせた。
 その“成れの果て”が、一呼吸を始めた時。

 重力の井戸が、視界に広がって、こちらを呑み込みに掛かっていた───。

久外境耶 :
    マボロシ
 海上に陽炎を見る。
 圧迫する影。占領される視野。

「────あ?」

 その奥で、

 メ
 瞳が合った。

久外境耶 :
 ハイになった頭が一瞬で凍りついて、

「なん……」

 じゃそりゃ、なんて間の抜けた声は。
 身体ごと重力に吞み込まれていった。

SYSTEM :

 ◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ノイズ
 騒音が消えてゆく。
 纏わりつく重さを悟る暇もなく、
 目が遭ったものを識る間もなく、

 あなたの意識が、一度沈んだ底から引き戻される。

SYSTEM :
 聞き覚えのある喧騒は、
 聞き覚えのない潮騒に。
 
 安らかに眠るように終わるにしては、少々快適とは言い難い熱気が傍に寄り添っている。

 ………周囲の状況は朧げながら、この時点であなたが生死に聡い人間であるならば、まず命を拾ったことだけはハッキリした。

SYSTEM :
 目を───覚ます。

SYSTEM :
 その、命を拾った不幸中の幸いを迎えてくれたのは、なんだかんだ命を拾っていそうな“パラディン”の声でもなければ、気だるげな“ミッドナイト・アイ”なるコードを名乗った、ヴィカラーラの手駒の声でもなく。
 
 ただそこには………。

SYSTEM :
 端的に。
 砂浜と、海と、振り返れば、どこまで続くか定かでない木々と岩肌と。
 有体に言っても、蜃気楼すらなかった「島」のかたちだけが、あなたを迎え入れていた………。

SYSTEM :
 島───そう。
 島である。

 奇しくも目指す矛先となっていたのは、
 確かに『リュウグウジマ』であるから、
 結果だけ見るとそこに辿り着いたとも言えなくはないが。

 辺りを見ても、そこにいるのはあなただけであった。
 これをどう取るのかは、あなたの感覚に左右されるだろう。

久外境耶 :
 ……潮騒に目を覚ます。

「オエ……」

 砂浜に身を投げ出したまま、げんなりと息を吐く。

 砂でジャリついた口内とうだるような熱気。
 感覚があるのは、生きている証拠だ。死の感触はすべてに無関心で、無感動なものだから。感覚は早い段階で引き剥がされて、意味を持たなくなる。

久外境耶 :
「どこだし。……ってか、いねえし」

 ……無人島にでも流れ着いたか? それともここが"そう"なのか?

久外境耶 :
「……ま、いーや。とりあえず探すべ」

 "パラディン"は……まあ大丈夫として。

 "ミッドナイト・アイ"はどうだかな。運が良けりゃあ"パラディン"に拾われてるだろ。

SYSTEM :
 あなたの声に反応したのか元々生命活動の最中だったのか、砂浜を横断する小さないのちが音も立てずに横断の真っ最中であったところ、蜘蛛の子を散らすように岩場へと隠れていってしまった。

 無人島か、あるいは正にヴィカラーラお目当ての『リュウグウジマ』か。
 その答えの道標となるものを、ここで探すのは難しそうだ。 

SYSTEM :
 日差しが照り付ける中。
 少し離れた浜辺に、見るも無残なことに───文字通り押し潰されたかのように───なった船舶の残骸が散らばっていた。

久外境耶 :
「お〜〜〜〜いマジで言ってる?」

 そりゃあ……そうもなるだろうけど!

久外境耶 :
「ゲート死んだじゃん、帰りどうすんだよ。え〜これ修理とかじゃねえよなもう……」

久外境耶 :
「探すつってもアテねえし。《ワーディング》……は、なあ」

 誘われて来るのが"パラディン"ならいいが、この状況で人喰い虎はちょっとまずい。"ミッドナイト・アイ"はかえって避けそうだしな。

久外境耶 :しゃーなしだ、《熱感知知覚》したい。なんか見つかるか?

久外境耶 :……そのへんのかに的なやつ以外で!

GM :アオン…(その辺のとかげ)

GM :畏まりました。判定は不要です。

SYSTEM :
 サラマンダーが持てる熱感知能力を以てすれば、
 五感で手繰れない情報にもある程度の目星がつく。

 不要なノイズとして横に退けておくべき島の現生生物はさておくとして………。
 この船舶の残骸から、僅かな生物のものと思われる残熱の足跡が、どこか───島の内側へ───向かって続いているのが分かった。

 手繰ることはそう難しくない。
 来たばかりというわけではないが、時間が経っているわけでもない。

SYSTEM :
 ………それに………。

SYSTEM :
 その熱を手繰る最中、あなたは遥か遠くから木霊する何某の声を聞き取った。
 ここからずいぶんと遠くだが、その「遠く」から響く程度の声量ではあるらしい。

 ついでに言うと、まず人間の声ではなく、虎の声でもなく、当たり前だが鮫とかその辺は声を発して対話しないので論外だ。

SYSTEM :
 ………序でに言うと、その声の主が残熱の持ち主というわけではなさそうだ。

久外境耶 :
「あん? ……」

 目をこらして拾いあげた痕跡に眉をひそめる。
 ちょっと同行者のハクジョーを疑ったが、そうではないらしい。

久外境耶 :
 ……まあ、ほかにアテもないし。
        ・
 おまえちょっと逝ってこい、はよくあるコトだ。
 今回は自主的にやるってだけで。

久外境耶 :
「────」

 ……遠雷のような咆哮が響く。あれだけ目もでかければ、さぞ声も大きいコトでしょう。
 幻の正体を知りたがる好奇心と期待に唆された欲望が、そっちへ傾きかける。

久外境耶 :
 ……が。

「ま、さすがにこっちだろ。近いしな」

 さくさく砂踏んで痕跡を追っかけるぜ。
 とりあえずオシゴト第一で。

SYSTEM :
 砂浜の足跡は、潮の満ち引きからくる水面の動きで消えてはいたが、そこを訪れていたものの残滓まで消えはしなかった。

 声の主より遠くには行っていまい。
 傾きかけた好奇心という名の欲望を一時片隅に置き、砂浜から草むらへ、それを踏み分けていくいきものの体温の名残を追いかける。

SYSTEM :
 そして残熱の気配を手繰るにつれて、その熱の持ち主についても少なからず分かることがあった。

SYSTEM :
 そこに残る体温の残滓は成人男性のそれでも、
 10代後半の少女のものでもない。
 先ずお仲間ではない───というより、そもそも人間のソレではなかったわけだ。

SYSTEM :
 ………草むらを踏み分けた名残。
 抜け落ちて土にまぎれた、白い体毛。

 二足歩行の生物というよりは、四足歩行の生物であったらしい。

SYSTEM :

 ◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 砂浜から場所を移した先。
 木々の中を進む最中で、ちょうど熱の痕跡が途切れた。

SYSTEM :
 奥を緩やかに進み、草木を踏み分ける音が聞こえる。
 後ろ姿から、野次馬の正体が分かった。

白い獣 :
 のそ、のそ、と。
 毅然とした様子にも見えるようでいて、どことなく“ぶらつく”が正しくも見える足取り。

 凡そ犬か狼かその類であったが、その辺の街並みで見かける類のものとは聊かに違って見えた。

SYSTEM :
 その白い犬が、足を止める。
 散歩は終わり…というよりか、あなたに気付いたらしい。振り向かないが、立ち去ろうともしてはいなかった。

久外境耶 :
 熱の残滓を追いかけるうち、足は砂浜から草木へ。
 視界は海の蒼さよりも木々の青さに占められた先に落とし物の主はいた。

 ……白い獣。

 リードに繋がれたワンころとは違う、獣の顔つき。犬と狼の違いなんて分かりはしないが、そいつが適当に生まれた量産の安い命じゃないことは直感で分かる。

久外境耶 :
「……あほくさ」

 我に返ったつもりで、かぶりを振る。いったい何を感じ入ってるんだか。

久外境耶 :
「で、なにしにきたんだよワンコ。船がめずらしかったか?」

 で──言葉に詰まってる自分に気付いて、なかったコトにするみたいに声をかける。野良犬にするみたいに気軽に、何の期待も持たずに。

SYSTEM :
 振り返りもしない。人に懐くような目付きでもなかった。
 顔を見ずとも地面に伏せるようなしぐさは、敵意のなさの表れであったのかも知れないが。 

 それはそうだろう。
 獣に人の言葉は通じない。広義の意味ではなく、現実社会の話でもそう。

SYSTEM :
 だというのに、

響く声 :
『…誰がまぬけと? なめき小僧だ』

SYSTEM :
 すこし聞き慣れない発音がした。
 発された獣の遠吠えと脳裏に響く音。どちらを“これ”が発したのかは、定かではない。

 いいや。
 一度目は偶然で片付けられようが、
 二度続けばどうなるか。

白い獣 :
『其はわたしの言葉だ。
 何用ぞ、小僧』

SYSTEM :
 ここに至って漸く振り返る。
 真っ直ぐに向けられた視線は、まったくの無警戒が成すものでもなかった。

 先は獣の姿と言い、リードに繋がれた犬コロではないと述べたあなただったが、なるほど確かに。
 ・・
 これに、拠り所と呼べるものはなかったように思える。

SYSTEM :
 白い尾がゆらりと持ち上がったが、しかしこれは威嚇の所作ではないように思える。
 少なくとも、この音の持ち主は、質問に質問を返すという無作法をさておくならば、そんな何の期待もなく始まった対話に応じてくれるらしい。

久外境耶 :
「は……」

久外境耶 :
 勿体つけて振り返るしぐさには、明らかに知性が宿っていた。
 いや、それどころか。

 ……声が響く。発話という基礎的な手段ではなく、なにか理解しがたいカタチで。

久外境耶 :
 ……冷静になれば、まあそういうコトもあるだろうで片付く話ではあったのかもしれない。
 だが少なくとも、おれはレネゲイドってやつにそこまで興味はないし。
 何でも結びつけて分かった気になるほど、自惚れてはいなかった。

久外境耶 :「喋っ……れるのかよ」

久外境耶 :「何用って、……いや用はねえけど。追っかけてきただけだし」

SYSTEM :
 ………この場に“ソレ”がいれば理解もしよう。
 遡ること年単位。

 面影島の件を境に急速に拡大し、
 その存在を世界に知らしめ始めた、曰くレネゲイドが生物の形を取ったもの。
 あるいは彼(と呼ぶべき存在)も、その分類であった。 

SYSTEM :
 鼻を鳴らす音。
 向けられ、合わさっていた視線が口ほどにものを言う。

白い獣 :
『然りか。………。
 目覚めぬものだから、果てたのかと思うたわ』

SYSTEM :
 喋れる、に対する肯定の意は、どうも口を開かぬ音の反響で証明しているつもりのようだ。

 周囲の生物がこの音を聞いている素振りはない。そもそも、言葉を発せる生き物など、ここにはあなたとこの生き物くらいしかいないのだけど。

白い獣 :
『わたしにも、とくべつ用向きはない。
 いや………、なかったか?』

SYSTEM :
 そうかと思えばあなたを見つめるその獣は、軽く唸り声を上げ、見上げるような形でありながら、ちょっとの品定めじみたものを視線に乗せ始めているように思えた。

久外境耶 :
「ンだよ、もったいぶったヤツ」

 張り合うみたいに、上からじろじろ見まわしてやる。

久外境耶 :「見てたんなら分かるだろうけど、おれ遭難者な。タブン。おまえはここ住んでんの?」

白い獣 :『うぬ………』

SYSTEM :
 尾が一度垂れさがり───かと思えば持ち上がる。
 張り合うみたい、ではない。
 恐らく彼の所作は本当に“張り合い”であったようだが。それもすぐのこと。

白い獣 :
『然りか。
 ちかごろは稀人の押し寄せるさまにあけるところ………。
 そのようなことであろうとは思ったが』

白い獣 :
『住む…いる、とは言えぬ。わたしはこの島に取り残されたもの。
 目覚めていくつの月が経ったのかも、もう定かでない』

SYSTEM :
 ぺらぺらと食いつくように応じるのは、そいつがかれこれ暫く“何かと会話する”ことを忘れていたかのような所作にも見えた。

白い獣 :
『遭難と来たか。
 ..めんどうな
 げにうるさきことになっておるようだ、小僧』

久外境耶 : ……ガチで?

白い獣 :この聊か不遜で隙の多い獣は、あなたの驚く反応を前にしてそっぽを向いた。

久外境耶 :……取り残された、ねえ。誰にってのは、気になる話ではあるが。

久外境耶 :「や、さっきのナシ。おれの遭難は、おまえの返答次第ってトコ」

 こんなヘンピっぽい場所に立て続けに人が来てる。心当たりは当然ひとつしかない。

久外境耶 :「寝ぼけてっとこ悪いけどさ。ぶっちゃけ聞くけわ、ここってリュウグウジマ?」

SYSTEM :
 鼻を鳴らし、地に伏せ、ふい、という擬音の素振りつき。
 幾分か気難しさの持ち主でもあるようで、まさに“信じないならば好きにするがいい”とばかりに座り込みからの無視を決め込みそうな気配すらした───が、その耳が間もなくピンと立つ。 

SYSTEM :
 わざとならば食いついた。
 わざとでないならば、知らないというわけではない仕草であった。

白い獣 :
『小僧………。
 いやそうか。さ名付けられたるか、この島………』

白い獣 :
『稀人が、検怪の者めが、どう名付けたかなど与り知らぬこと。
 だが………この島はすがらに時に取り残されておる』

白い獣 :
『それを指して竜宮と呼ぶならば、そうなのであろうよ』

SYSTEM :
 嘆息。
 厳密には名前ではなく、その名の所以を知って、皮肉かなにかを覚えている最中の仕草にも思えた。

白い獣 :
『小僧、とぶらひものは物の怪か?』

久外境耶 :「時ぃ〜?」

久外境耶 :「……や、わり。今のナシ。わーったよ、おまえもなんか深刻っぽいのは」

久外境耶 :
「あ〜、バケモンに会いにきたかって? そうっちゃそうだが、違うっちゃ違うな。
 おれんとこで名の通るやつがタブンこっちで稀人サンしてるわけ。狙いがブツなら横取りしたろーって算段」

白い獣 :
『わたしに由あらば、それは醜聞のたぐいだ。
 さほどにも非ずとは言えぬが』

SYSTEM :
 幾度か全身を振る。
 語り明かすも億劫とばかりの本能的仕草で、首に掛かっている何かが幾度か揺れた。

白い獣 :
『………その通り。時だ。
         ・・・・・
 ここはな、小僧。物の怪の島なのだ』

SYSTEM :
 物の怪と呼ぶ何某の存在を繰り返し呼ぶ彼の所作は、畏れからくるものではない。
 少なくとも脳裏に響く音は、幾分かの事情があることを前提とした声色であり。その彼からすれば、あなたの状況説明はそれ相応に“難儀”にうつったらしい。

白い獣 :
『盗人の仕草とはな。
 だが、なんとも巡り合わせの悪い人間だ。小僧』

白い獣 :
『出会いに来たならばそうするべきではなかったし、そうでないならばただ不運よ。
 ………稀人がこの島に何を求めたかは与り知らぬことだが、誰の手にも災いにしかならぬわ』

久外境耶 :
「ハ──」

 思いがけず楽しくなって、笑みを深くする。

「そりゃあ逆ってもんだ。おれほど運のいい男はそういないぜ?」

久外境耶 :
「厄のひとつやふたつ、踏み倒さなくちゃ来た甲斐もない。
 聞かせろよ、物の怪の島ってやつのことも。ワケ知り顔のおまえの話も」

SYSTEM :
 どうやらこの気難しくも不遜な獣にとって、
 その反応はけっこうな予想外だったらしい。

 一瞬だけ佇まいを直した所作が入った辺り、
 警戒か信用かのどちらかで急速に揺れるものがあったようだ。

白い獣 :
『…………………………………』

白い獣 :
『明かすべきと思うはひとつ。

 ………この島は物の怪の妄執で作られておる。
 どう呼ぶかは、自由にせよ』

白い獣 :
『そしてわたしに何用があると言えば………。
 わたしの醜聞と“さふべき”に付き合う“ものずき”を探しておったのだ』

SYSTEM :
 そして彼の口ぶりからするに、物の怪という言葉で言い表すものに物怖じではなく興味と笑みが出て来たあなたは、分類として”そちら”に入ったようだ。

白い獣 :
『このまま微睡むのも、せむがたなしと思うたが。稀人たちが物の怪を起こそうと思うておるなら………』

白い獣 :
『物の怪が、海に、人に、災いを齎す前に………もう一度眠らせざらばならぬ』

SYSTEM :
 物の怪、と仕切りを作って呼ぶ何某について。彼の言葉を本当に信じるならばだが………それを放ったままにしておけば、大きな被害が起こるという。

 被害の規模は定かでないが、この獣は嘘を吐く面構えでもなかった。
 少なくとも、あなたが“ものずき”と分かると、元々極端な口数がさらに極端になったように思える。

久外境耶 :
「……で、それに付き合う物好きがおれかもって? じゃあちょい見当違いな」

久外境耶 :
「起こしたほうがおもしれーことになるんなら、おれは別にいいぜ。海とか人とかどーでもいいし」

久外境耶 :
「だから先に聞いとくわ。おまえの醜聞ってやつ、いま吐く気ある?」

 なくてもいーけど、と適当に。だって結論もう決まってっしな。なにせ──

久外境耶 :
「犬派なんだ、おれは」

久外境耶 :
「だから付き合ってやるよ。災いがどーのって心配はそっちで勝手にやりゃあいい」

SYSTEM :
 はじめ、あなたの“我関せず”を聞いたこの獣は、
 正直な性質なのか、ほんの一瞬だけその毛を逆立てたが───。
 その瞳を見て、すぐにもそれが収まる。
 どのみちそこで区切ろうにも、答えは決まっていたのだろうか。

 瞑目する。
 言葉を零そうにも、さえぎる若者の威勢に押され気味なこの獣が口を開くのは、最後になってだった。

白い獣 :
『その時が来ば。
 わたし自身、その術を探すところより始むのだ』

白い獣 :
『愉快か否かも………
 相見えば自ずと分かる』

SYSTEM :
 つまりは、それでいい。
 その言葉を示すように、一度吼えた。 

白い獣 :
『………小僧よ。敢えて聞く』

白い獣 :
『二つに一つだ。人間の小僧。
 汝に選択の権が残っているぞ』

『坐したまま時の巡りを待つか、さもなくば…』

SYSTEM :
 さもなくば、と。
 付き合ってやると口にしたあなたに対し、
 律儀というか悠長というか。

 生半可ではないぞとばかりに。
 改めて彼は聞き返す。

白い獣 :
『物の怪が愉快に非ずんば………。
 
 わたしと共に、その命を懸けられるか?』

SYSTEM :
 改めて聞くその問は。
 付き合う先が、物見遊山の類ではないと示すための釘であった。

 あなたの機敏を把握しているのかは定かでないが、それは曰く“醜聞”のけじめをつけたいらしい獣にとっての、最低限の礼儀だったのだろう。

久外境耶 :
「たりめーだろ。おまえに命くれてやるって言ってんだよ、おれは」

 死に挑む欲望はいつだって遂げられる。
 そいつを使わせていいと思った相手は、数えるほど。

久外境耶 :
 他人の理由だ事情だなんて些事は二の次でいい。
 人類の危機がどうこうも好きにやってろ。

久外境耶 :
 時に取り残された白い獣。
 出会いは劇的とは程遠く、どうでもよさそうな後ろ姿だったが。 

 見出すものがあった以上、久外境耶が命を懸けるには十分だ。

久外境耶 :
「……おい、言わせんなよ恥ずいだろうが!」

 カハハとまったく思っていない笑いが続く。

SYSTEM :
 この、聊か浮世離れした感性を持つ獣は、しかしあっけからんと命をくれてやると言い放った少年のそれに、一も二もなく頷くほどでも、単なる“ものずき”で片付けるほどにも浮世離れしていないらしい。

 ないが、彼の中にあるものを天秤にかけるのだろう数秒の沈黙の後………。
 尾が垂れ下がる。

 言葉を解する、知性あるこの獣の中で、その“なんとなく気に入ったから”レベルの結論に対する、何某かの結論がついたらしい。

『ホデリ』 :
『───我が名は、ホデリ』

『ホデリ』 :
『氏はもはやない。
 名のみがつきづきしく』

『ホデリ』 :
『………名も知らぬ者に命を賭そうなぞ、初めて聞きし試しだ。小僧』

SYSTEM :
 溜息。
 あまりにも、人間めいた溜息だった。

久外境耶 :
「そうかい。おれは二度目だ」

 一度目は、昏い瞳にひれ伏した。
 二度目は、白い姿に感じ入った。

 似ても似つかない過去と現在で、思うところもカテゴリ違い。
 共通点は直感ひとつで、それさえあれば十二分。

久外境耶 :
「おれは久外境耶。知ってるか? おれらみたいなのは、別にもう一個名がつくんだ。

 "ラッキージンクス"──その名も幸運の徴ってな。あいにく他人の分まで保証しちゃあいないが」

久外境耶 :
「うまく使えよ、ホデリ。そうすりゃあ少しはおまえにもツキが回るかもだ」

 やけに人間くさい獣に、獣じみて笑う人間。取り合わせとしては、まあ悪くないだろう。

『ホデリ』 :
『“らっきい”………』

SYSTEM :

 その時の彼の声は、ただでさえ聞き慣れない発音に、これまた聞き慣れないイントネーションが混ざっていた。
 “別にもう一つの名前が付く”…という、あなたにとっては当たり前になるかもしれないことについても、どうも頭の中で咀嚼し切っていない様子だった。比較的顔に出る性質だ。

 とはいえ、まるきり不理解というわけでもないらしい。

『ホデリ』 :
『使う前から多少の“ツキ”はあるようだが、呼び慣れぬ。
 …それと。気前が良いのはかたじけないが、分け過ぎでせいぜい躓かぬようにせよ』

『ホデリ』 :
『よろしく頼む、境耶。幸運の小僧。
 わたしの“さふべき”の伴となっておくれ』

SYSTEM :
 その行儀の良い、堅苦しい改めた言葉も、獣のなりで行えば大道芸よろしくの奇妙な構図だ。

 それを分かっているのかいないのか。少なくとも、ソレもなしに振り回そうという粗暴さ/気軽さの持ち主ではないことだけは確かだ。

久外境耶 :
「かしこまンなよ、むず痒いわ!」

 いまさらイエス以外とくに考えちゃいない。連れションくらいの雑さで地獄までついてってやるよ。

久外境耶 :
 バディ
「 伴 ってやつ? ま、不慣れもここまでくりゃ一興だな」

『ホデリ』 :
『そうか。………次よりは止めおく。
 汝、奉公するもさせるも一癖のある者と見えるな』

『ともあれ、興の乗る旅かは保障させられぬが………。
 その見込みでよかろう』

SYSTEM :
 バディとはよく言ったもの。
 この島限りの一期一会、あるいは死出となり得る旅路の伴だ。

 まさかあなたが、そこら辺の気安い”ちょっといかないか”くらいの感情で応じたことについては、この獣も最初に直感したところでにわかに悟っていようものだが、それを込みにしても、ああいう行儀が染みついているらしい。

『ホデリ』 :
『………それで』

久外境耶 :
「あん?」

SYSTEM :
 あなたとの伴を承知した彼は、
 ふむ、と小さく唸った。

 唸り声と全く同じタイミングで、二重に音が反響する。

『ホデリ』 :
『如何にするか。
 ………わたしはこの島を知っているが、この島に辿り着いた稀人どもについては別で。
 ましてや、物の怪を知れども、辿り着く糸口までは探らねばならぬ身の上よ』

『ホデリ』 :
『時に小僧、つい先程船がどうとか言うておったが。
 連れでも居るのか』

久外境耶 :
「ああ、それな。すっかり忘れてたわ!」

 "魔獣の巣"と"喚楽の人喰い虎"、"パラディン"と"ミッドナイト"について軽く共有。あとは他にもハイエナがいるかもってコトもだな。

久外境耶 :
「──で、」

「海ででっかい目ェ見て、意識はブツンと。本物じゃないっぽいが、おれにはよくわかんねー」

久外境耶 :
「起きたらさっき言ったツレがいなかったわけ。まあ探すのがブナンだわな。
 ミョーなハナシ、おれいま上司だからよっぽど無茶振りしなきゃ手伝ってくれるだろ」

 おれらのシゴトはこいつ手伝うついでで済みそうだし。

SYSTEM :
 あなたの物言いを全て聞いたホデリから、呆れたような声が響く。
 というのも主に前半の方であり、この口ぶりは呆れ半分の納得半分と言ったところか。

『ホデリ』 :
『何ともあやしきことよ。
 境耶───汝を上座に置こうなど、酔狂に程もあるわ』 

SYSTEM :
 どうやら部下がいるとまでは思っていなかったらしい。
 何事か考える素振りは、しかし今やって晴れる懸念ではないとも思い至ったようで………話題はすぐに変わった。

『ホデリ』 :
『口にし難きことだが、わたしは島の外を知らぬ。
 ………だが目。目か。よかろう、糸口となるや否やは分からぬが伝えておく』

久外境耶 :「ん」

『ホデリ』 :
『この島には稀人が飽くるほど来よる。
 小さなもの、巨きなもの。さまざまだ』

久外境耶 :
「……昨日今日のハナシじゃないわけか」

 で、戻ってきたやつもいなければ、島の名前が広がるでもないと。せいぜいワケ知りが外側から名付ける程度らしい。

SYSTEM :
 然り、と頷く。
 島の名前が広がった試しはない。ワケ知り顔で向かえと指示したヴィカラーラでさえ多くは口にしておらず、“パラディン”も現地についてからと考えていた節があった。

『ホデリ』 :
『………そしてわたしは、その者らと言葉を交わしたわけではない。汝と同じ切欠の持ち主がいくらいるかは知らぬことだが』

『ホデリ』 :
『汝を引き込んだものがそうであるならば、おそらくそれこそが物の怪よ。
 物の怪はゆめゆめ外の世を知らぬし、それは叶わぬ。
 島の外で見かけたものが本物でない、というのは確かであろう』

久外境耶 :「ふうん。おまえと一緒じゃね、出れねーし知らねーって」

久外境耶 :「物の怪っつうけど結局なんなんだ? 聞いたかんじフーインされてる系っぽいけど」

『ホデリ』 :
『………………醜聞だ。
 多くは、語れぬ』

久外境耶 :
「あっそ」

 まあいいんじゃね、と笑う。こっち大体そんなカンジだしな。

SYSTEM :
 醜聞、という言葉が、まず間違いなく彼にとってのなんとも言えない縁であることを、その“物の怪”には想像させたが。
 それでよしとしたあなたに、獣は軽く目を逸らした。

『ホデリ』 :
『が、然り。
 わたしも島の外を知らぬし、出る術はない。起きる術もなく、起きたとて島の内側以外に用向きはなかろうが………』

『ホデリ』 :
『………そのようには行かずだ。

 なにゆえか目覚めた。なかなか昔のことのようにも、昨日のことのようにも思える………』

『ホデリ』 :

『そして、目覚めたならば、
     ・・
 物の怪は必ず海を目指す。海の底だ。
 さなる前に、見つけ出さねばならぬが』

SYSTEM :
 しかし汝、食わす部下を抱え、敵なるものを抱えているのだろう、と。
 彼の関心と懸念はそちらにも向いた。そもそも、具体的に“どうやって見つけるのか”については、どうも彼自身さえすぐにとはいかないらしい。

久外境耶 :
「底ぉ? んなら行かせときゃいいだろ。海底にバケモンがいて誰が困るんだよ」

久外境耶 :
「それに部下つっても、おれよかデキるやつが嫌がらせで下置かれてるだけ。気に入らなきゃ向こうも好き勝手するだろ。おれんとこそんな感じなの」

『ホデリ』 :『賊のごときものならずや………』

SYSTEM :
 それは上司と部下の関係なのか?
 獣は僅かに首を傾げていた。というか耳がしぼむように垂れていた。

 人間的に表すと、想像して“げんなり”したのかもしれない。

『ホデリ』 :
『困らぬだろうな、まあ。
 ………海底に人は棲めぬ』

『ホデリ』 :
『しかし………あれは人ではなく、怪異だ。物の怪だ。

 あれだけ巨きな怪異が、底の底まで辿り着き、斯様に我儘に振る舞おうとした時。何がどう起きるか分からぬ』

SYSTEM :
 如何に口にしたものか分からぬが………と、言葉を択ぶ素振りは、話したくないことと、どうも価値観や常識の部分で、あなたの知っている、けれど人にとってはそうではない“当たり前”が頭の中に根付いていない振る舞いだ。

SYSTEM :
 ………それとすぐに照らし合わせられるか、思い出せるかは別のこと。

 少なくとも、彼と顔を付き合わせて“ぶらつく”ままでは行かないだろう。

久外境耶 :
「……?」

 なにか引っかかる感触と、すぐに浮かばないもどかしさ。
 記憶をほじくり返す手間を惜しんで、とりあえず現状に目を向ける。

久外境耶 :
「とりあえずやべーけどアテなしってか? 終わってんな〜おれら」

 なんかおもしろそうなんで横取りに来ました、が発端なのでガチお互い様。危機感あるだけホデリのがなんぼかマシ。そんなぐあいだ。

久外境耶 :
「ま、おれらで無理なら他のアテだな。死んでなきゃ歩くレーダー女もこの島来てっからそいつ探そうぜ」

 さっき言ったミッドナイトな、と補足しつつ。

『ホデリ』 :
『………ううむ』

SYSTEM :
 どうにかしてあなたの言葉に反論を持ち出そうとしたが、全く浮かぶ言葉がない、とばかりの仕草。
 事と次第であれば吼えていたかもしれない。

『ホデリ』 :
『宛てはない。遺憾ながら………。
 島の何処に物の怪が眠れるやも定かでない』

『ホデリ』 :
『そして稀人らのうち、汝の部下…部下…?
 部下が、生きておるかの保障もなしだが、立ち止まっていればやってくる由もない』

『ホデリ』 :
『………目立つ場所には心当たりがあるが、如何にする。
 いかがする?』

SYSTEM :
 その彼は、少なくとも“目立つ”に心当たりがあるらしい素振りだ。
 どこにも行く当てがなく、そこにいるとも限らない今、断ったとて問題はないが、あなたの判断次第と言えるだろう。

久外境耶 :
「行くっきゃねーだろ」

 即断即決、善かは知らんが急いどけってな。

『ホデリ』 :
『これほど定め疾しとは。
 とはいえ、他に宛てもなし。ゆくか』

SYSTEM :
 異議の余地なく決まった行き先へと、ホデリを名乗った白い獣が歩き出す。

 勝手知ったる、というほどではないが、明らかに道を知らぬ者の足取りではない歩み。
 草むらをかき分け、ざわざわと音立て。土を足蹴にするその仕草だが、あなたがもしも急かしたのならば四足のまま走り出していたかもしれない。

SYSTEM :

 ◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 木々の生い茂る道を行く。
 よもや軽口をあなたが叩いているならば、いちいち彼は応じたり、呆れたりしてくれただろう。

SYSTEM :
 ………だが。
 そのホデリの足が、ふと、目的地とは思えぬ林道のさなかで止まる。

 獣道にしては聊かに拓けた場所。
 わずか湿った土に残るものを見つけた彼は、小さく唸った。

『ホデリ』 :
『人か?』

SYSTEM :
 足を止めた理由は、あなたにもすぐわかる。まだ新しく───というよりは、すぐに茂みの向こう側にある、ひと一人くらいを隠せる岩陰に向かって、その足跡が伸びているからだ。

久外境耶 :
「だといいがねェ」

 コソつく理由もないし、このまんま歩いて見にいくぜ。

SYSTEM :
 ちゃんとした人だといいが、というぼやきなのか。
 それとも、この場の第一村人などに───特に、便宜上部下の二人は間違ってもこんな残念な隠れ方をしない───大した興味を持たないFH“らしさ”が見出した言葉なのか。

 どちらかは定かでないが、少なくとも二人はその露骨な足跡の先を見に行った。

SYSTEM :
 そう。
 素人目に見たのならばギリギリ隠せるかも分からないが、その第一村人、それはもう慌てていたのだろう。

SYSTEM :
 岩陰でばったり、彼と目が遭った。

 理性を宿したソレが人間の眼だと分かる時に、視線が重なった。

SYSTEM :
 反応の余地はなかった。

 ある意味怯える必要もない。
 その杜撰な隠れ人は、なんともまあ、境遇のみに絞って言えばあなたと同じであった。

 島の稀人、迷い人なのだ。

SYSTEM :
 彼は彼視点、ぬうっと出て来た5cmほど自分より身長の低いあなたを見て、 

SYSTEM :
 そして何者か分からぬとコミュニケーションをしようとして、軽く吼えたホデリを前に、このように述べた。 

??? :(第一村人の第一声)

??? :

「すみませんでしたあああああああああ!!!!!」

??? :
 眼の前にいたのは少年と、犬!
 見つかったァ……(逃走中BGM)(この辺で逃走中のBGMが流れる)。
 その時間は刹那の一瞬。
 イニシアティブを取られたら負けるという状況下で、超エキサイティングにスライディング土下座をする謎の男!

第一村人(?) :
「ちちちちがうんです。オレはただですね、あのですね、えーっとですね。
 密猟者とかでは断じて無いんです!!! ただ腹が減ったから適当に海に転がっていた貝やら魚やらを獲って食べていただけなんです!!!
 ほらあのえーーっと言うでしょう!? 獲ったどーー!!ってほらそういう感じのパッションで生きていたいだけなんですよやめてまだ死にたくなァーい!!」

第一村人(?) :
「ほら言うでしょう!? ギリギリでいつも生きていたいからアァ〜〜〜ッッッ!!!!↑↑↑って!!!」

第一村人(?) :
 白い髪に明らかに怯えきったような眼!
 超エキサイティングな命乞い!!!
 両手にはまだ海藻とかついてる貝やら魚やら!
 あとちょっと海の臭いがするしなんかびしょ濡れ!

 彼は知っている! これが初対面の相手に対する最上級の礼儀であるということを!

第一村人(?) :男 は 震えて いる!

SYSTEM :
 ………。
 あなたは遭難の折、
 第一の伴とともに、第一村人を発見した。

 まともかそうじゃないかで言えば、前者の気はするが後者にしておきたい男。
 心底微妙な顔をしたホデリが、あなたと顔を見合わせる。

『ホデリ』 :
『………………”ぱらでぃん”か?』

SYSTEM :
 絶対にそうであってほしくない過程を先に言った、獣の遠吠えは。
 顔以上にモノを言っていた。

SYSTEM :
 なお、ちなみにこれは、
 この第一村人にとってはこのように聞こえる。 

第一村人(?) :OK>遠吠え

SYSTEM :
 その遠吠えに第一村人(仮)が如何様に反応したのか、ホデリのそうであってほしくない声にあなたがなんと反応したのかは定かではない。

SYSTEM :
 ───男についての話をしよう(強制イベント)。

 あれは今から三十六万、
 いいや一万二千年前。
 彼には1d72通りの名前があるが、
 この時名乗った名前は何だったか。

SYSTEM :
 なにわ探偵木口龍。

 いつどこで正気に戻ってくれるか分からぬ男の経緯について、話をしよう。

SYSTEM :
 ◇ ◆ ◇ 

第一村人(?) :

 浪速の海に流れ着き、
 事件発生1d60分!
 今日もミステリスリルの嵐!
 見た目は大阪人、
 頭脳は大阪人!
 

第一村人(?) :

 真実はいつも1d100つ!

(この辺で流れるZARDのOP)

おだまき :1d100 (1D100) > 48

第一村人(?) :

 真実はいつも48つ!(訂正版)


【シーン3:依頼】

SYSTEM :

【シーン3:??】

 登場PC:木口龍
 登場侵蝕:あり(特殊)

SYSTEM :
 登場侵蝕についてはOP中
「振っても振らずともどちらでもOK」という形態を取ります

第一村人(?)→木口龍 :オレは振るぜ!!!!

SYSTEM :了解しました。

木口龍 :1d10 (1D10) >9

SYSTEM :
 この時、俺達は言いようのない不安を覚えていた……。
 それは「リュウグウジマ」を巡る欲望のぶつかり合い、というだけでは収まらない、もっと澱んだ何かを。
 このハンドアウトに感じ取っていたのかもしれない……。

木口龍 :頭が痛いぜ。呪いか?

system :[ 木口龍 ] 侵蝕率 : 32 → 41

SYSTEM :
 木口龍は探偵である。
 実績は多分まだない。

 どこでこんな流れになったかとんと見当がつかぬ。
 何でも世知辛いじめじめした暑い所で、事件に出くわしたことは覚えている───。

SYSTEM :
 ………事件は夕方、〇県×市の不〇動高校で起きていた!

SYSTEM :
 あなたはそこの先生に、とある事件の調査に協力してもらっている最中だった(気がする)が、
 探偵とはやってくると誰かが死ぬ死神である。身構えていない方が悪かった。

 あなたの目の前で、事件が起きた………。

SYSTEM :
 放課後、理科室で職員の一人が殺害されたのだ。

SYSTEM :
 死傷者は素行不良の教師で名高い折我・逸火。
 凶器はポスターを使って巧妙に隠されたボウガン。
 その日、放課後の理科室に用があると分かっていた犯人は、
 きっちりその時間に起動するように時限式のボウガンを用意。

 犯人の狂気が、折我先生を撃ち抜いたのだ………!

SYSTEM :
 ………容疑者は三人。
 これは凶悪な殺人事件である。

SYSTEM :
 あなたの前で、容疑者たちが神妙な顔をして立っているのを、あなたは顔もあんまり知らない警部と共に見ていた…。

SYSTEM :
 放課後も居残っていて、折我先生と仲が良く、
 この間も貸したものを返して貰っていなかったり、
 お茶を間違えて先生に向かって零していたりした、用務員のAさん………。

SYSTEM :
 発見した生徒。
 凶器がボウガンであることを執拗に否定し、今もなお早く帰ろうとし、今も目が泳いでいる………。班さん。

 犯人の班さんが決めゼリフだ。

SYSTEM :
 72通りの名前があるイーノック。

警部 :
「なんということだ………。
 アリバイのスキが全く見つからない………」

SYSTEM :
 警部は途方に暮れている!
 あなたが真犯人を見つけ出すしかないのだ!

 なにわ探偵木口龍の名に懸けて!

SYSTEM :
 ………犯人っぽいのを指差そう!

木口龍 :

 オレの名前は木口龍。探偵だ。

木口龍 :
 〇県×市の不〇動高校で教鞭をとっているMUR大先生こと三浦智将(みうらともまさ)氏に協力を仰ぎ、空手部ストーカー事件の手がかりを得るべく訪れていた。

木口龍 :
「智将(ともまさ)先生、このバッグに入っているのが犯人の手がかりなんですか?」
「そうだよ(肯定)。見たけりゃ見せてやるよ(この辺手がかりを探偵に見せる緊張からくる震え声)」

木口龍 :
 智将先生のバッグに入っていたものを見聞しようとした──その矢先だった。

木口龍 :

 ぐぁぁぁぁぁぁああああああ!!!(この辺絶命の台詞)

木口龍 :
「今のは折我先生の声だゾ!!」
「智将先生はここにいてください。オレが見てきます!」
「あっ、おい待てぃ!!!」

木口龍 :
 声は理科室からだ。
 現場に急行したオレと先生が見たものは、ボウガンによって射抜かれた無惨な死体だった!

木口龍 :
「死んでやがる……即死だ。先生は警察と、念のため救急車を呼んでください」
「当たり前だよなぁ?(常識)」

木口龍 :


 ──そうして、事件現場が改められる。

木口龍 :

(書いたら10分じゃ済まないので中略)

木口龍 :

「あなたは清掃担当であることを利用し、その日の内に蝋でカギの型を作った。
 それで理科室に出入りし、ボウガンを仕掛けた。折我先生を不可能密室で殺害するために。

木口龍 :


 ──そうですよね。班さん?」

犯人っぽさそうな班さん :
「面白い探偵ですねトリックさん。
 うちの新聞部のコラムでも任せてもらったらどうですか?」

SYSTEM :
 彼女の出だしは否定から始まった。

 だが………。
 あなたの問いかけをかわし切ることは出来なかったのだ。

SYSTEM :
 若くしてその手を血に染めた、未来あるはずの10代が。
 涙を零して、静かに告げた…。

犯人っぽさそうな班さん :
「折我先生は………煽って来たんです。
 打ちひしがれていた私に『俺は持ってる』って………!」

警部 :
「そんな下らん理由で、あんたは一人の人間の命を奪ったのか………!」

SYSTEM :
 このスマホを見て下さい。

 打ちひしがれていた班さんのスマホには───。
(エアプだからよく知らんけど)シヴァがなかった。

木口龍 :
「……アンタは早まりすぎたんだ。殺人に手を染める前に、聞くべきこと、やるべきことがあったはずだ。
 智将先生が言っていた」

犯人っぽさそうな班さん :「智将先生が………」

智将先生 :"折我先生はお前の頑張りをチラチラ見てたゾ(推定)"

犯人でしかないAさん :
 そうかな…そうかも…。

 犯人にしか見えなかったAさんは、のちにFHエージェントであることが発覚し、別の真面目な探偵に追い回されることとなったが…。

 彼はしみじみと頷いていた。

犯人っぽさそうな班さん :
「そんな………折我先生………。
 あなただったんですか………いつもログボをくれたのは………」

木口龍 :「アンタは焦りすぎたんだ。ログボが来る前に、ピックアップを回しすぎた。それを見かねて、用意してくれてたんだ」

木口龍 :「今後はもっと、落ち着いて考えるといい」

犯人っぽさそうな班さん :「私………やり直せますか?」

木口龍 :「やり直せるさ。新アカウントで、必ず」

犯人っぽさそうな班さん :「はい…RMT使います…必ず…!」

警部 :
「悲しい事件だった………。
 本来生徒を教え導くはずの先生と、生徒の間にすれ違いが起きるなんて………」

木口龍 :「教育者とは大変だと。オレはつくづく思いますよ」

智将先生 :「(今日の授業も)すっげえきつかったゾ〜」

警部 :「君もそう思うかね…」

SYSTEM :
 〇県×市の不〇動高校で起きた、密室殺人は………。
 関係者たちの心に消せない傷跡を残した。夕暮れは、間もなく夜を迎えようとしている。

 警部のやりきれなさを表すように………カエルのメメタァと潰れる音が響いていた───。

木口龍 :
「──では、オレも帰るとするか」

 大阪市西成区(プライバシー保護の為検閲)の木口探偵事務所へ・・・

SYSTEM :
 ◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 事件終了から間もなく。
 大阪市西成区某所の木口探偵事務所へ、あなたは事件の闇を引きずることなく戻って来ていた。

 探偵と言えばタイプライター。
 タイプライターと言えば探偵であるとは、たまに誰かが言っていた。

SYSTEM :
 あなたは突発的に巻き込まれた事件を一つ解決したが、三浦大先生の協力を得て辿り着くはずだった事件には未だ手が付いていない。

 本格的なこれからの調査を思い、暮れている夕日が、夜の訪れを引き連れてくるのを見ながらも、少しばかりの眠気と疲労の中で、するべきことをしていた。

GM :
 なんでとは言いませんがこの茶………。
 描写中、希望するならば他PC同様の「調達判定」を行えます。

木口龍 :OK

木口龍 :とはいえ応急手当キットだな。今真っ先にほしいものは。

GM :畏まりました。

GM :失敗した場合は不幸にも黒塗りの輸送車が大破します。

SYSTEM :
【Check!】
 確認を完了しました。
 判定を行ってください。

木口龍 :1dx10+1 8以上で成功。それ未満でエージェントTNOKがオイゴルァ! (1DX10+1) > 2[2]+1 >3

木口龍 :TNOK……お前のことは忘れない……

GM :残念! 

GM :ではIN-6号事件の闇に呑み込まれたTNOKエージェントの名誉が回復するのは、今から14年後、逆転がなんか蘇った時となります。

木口龍 :

木口龍 :
 じゃあオレは次の事件に取り掛からなければな、と、
 壁に物理の方程式やら何やらを書いているわけだ……だがTNOKは来ず、そのことすらもオレは忘れているわけだ。

SYSTEM :
 あなたの脳裏には、やがて待っているだろう事件の解明とそれに伴う戦闘の予測………そのために調達を恃んだエージェントの姿があったが、それも間もなく消えてしまったようだ。

SYSTEM :
 ついでに言うと、いつものノリならばおにぎり単位で留守番を恃んでいた知人の姿が珍しくなかったような気がしたが、あなたにそんなことを考える暇はなかった。

 今日はもう遅い。
 人の死など、探偵とて何度も見るものではない………。 

SYSTEM :
 ………緩やかな疲労と眠気と倦怠感がある。
 あなたが無理を押して何か行動を起こしているならば、その最中にこれらはあなたの意識を絶ってしまうだろうし、そうでないなら、今日はずいぶんと早く夢元に辿り着く気がする。

木口龍 :

「──ん? そういえば留守番を頼んだ──がいないな」

 っていうか多分疲れてるなオレ。
 おにぎりで頼んでくる知り合いなんているわけないだろ。常識でモノを考えろ。
 でもあれだ。確かになんか留守を頼んでるやつはいたな。
 家政婦だったか? やっべ名前忘れたら殺されそうだぜ・・・書類みとこ。

木口龍 :
「……まぁいいか。
 しかし、なんだか今日は疲れたな……だが智将先生への報告書を作らな──」

効果音 :

(ピシュン!)(時計型麻酔銃が発射される音)

木口龍 :
「うっ──」

木口龍 :

 ──オレはそのまま、安楽椅子に座り込む。
   そして、嫌が応にも、眼を閉じざるを得なかった……というわけだ。

SYSTEM :
 ───意外! それは麻酔銃ッ! 

SYSTEM :
 あなたの疲労ゆえの不覚か。
 別棟からあなたを見下ろしていた(ような気がする)黒ずくめの男が普段よりも敏腕だったのか。

 あなたはその凶弾に気が付かなかった………。

SYSTEM :
 ………そして、目を醒ましたその時………。

SYSTEM :
 ▂▅▇█▅▂▇▂▅▇▅▅▇▇▅▇█▇▂██▂▅

SYSTEM :
 ▅▅▇▇▇█▂▅▇█▅▂▇▅▅▇▂▅▇▅▅▇▇▅▇█▇▂██▂▅

SYSTEM :
 ▅▅▇▇▇█▂▅

 ▇▇▅▇█▇▂██

 ▂▅▇█▅▂▇▂

SYSTEM :
 ───▅▅▇▇▇▅▇█。

 ▇▅▇█▇▂██▇▅▇█▇▂██───。

SYSTEM :
 あなたの記憶の中で、目を醒ます前。

 夢を見た気がする。

SYSTEM :
 夢の中で………。

 あなたは何と言われたのだったっけ?

SYSTEM :

【Check!】
 トリガーハンドアウトが発生しました。
 開示条件:「?????」


木口龍 :

    ・・・・・
  ──オレは誰だ?

木口龍 :
>>
 ただのヘタレの探偵。それ以上でも、それ以下でも無い。
 死体を見ると叫ぶし、めんどくさい依頼には悪態をつく。ヘタレの探偵ゆえに。
 大阪のとある場所に事務所を構えている。日々仕事は募集中。最近の仕事は不倫調査。
 大のレッドブル好き。
 オーヴァード能力使うと体が痛むので使いたがらない。ヘタレ故に。
>>

木口龍 :
 そうだ。オレはしがない探偵だ。
 その日暮らしの銭だけ稼げればそれでいい。
 なんでこんなことになっている?
 

木口龍 :

 ▂▅▇▅▅▇▇▅▂▅▇▅▅▇▇▅

木口龍 :
 どこぞとも知れない島に流れ着き、

木口龍 :

 ▅▇▅▅▇▇▅▅▇▅▅▇▇▅

■■■ :
>>

 ──いいだろう。

>>

木口龍 :

 誰から受けたかも分からない依頼書だけがあって、

■■■ :
>>

   ・・・・・・・
……どれだけ出せる?

>>

木口龍 :
 ▅▇▇▅▂▅▇▅▅▇

木口龍 :
 だがよぉ、手帳に書いてるものを見るたびに、

木口龍 :
>>

 ──オレが忘れてしまったのは、大事なことなんじゃないかって思うことがあるんだ。思うだけだけどな!

>>

木口龍 :
 『俺は、俺を裏切らない。
  相手が魂を賭けて俺に託したのならば、俺はそれに応えるべきだ』

■■■ :


 ──いいだろう!

■■■ :
 その依頼、■■■が引き受けた! 交换契约/ここに契約は交わされた!
 今この時より、■の意志は、 ■■の総意であるものと見なす!

■■■ :
 オーシンリューイェー
 ■■■■、その■と■に、■は応えよう。
 それだけが、今、アンタと■の間で交わされた、たった一つの掟(ルール)だ。

木口龍 :

      ・・・・
 ……オレは、誰の依頼を受けて、なんでこんなことをしているんだ?

木口龍 :────

SYSTEM :
Tips-ホデリ
 カヴァー/ワークス:???/レネゲイドビーイング?
 性別:雄 年齢:成体の犬ないし狼くらい 侵蝕率:不明(40%〜?)
 シンドローム:Unknown...(少なくともバロールではある様子)

 久外境耶が、名も知れぬ島で最初に出会ったRB。
 白い犬ないし狼のような姿をしており、どこか古風な口調で喋る。
 どのような経緯で、どのようなオリジンを持ち、RBとして形を持ったのかは不明。

SYSTEM :
 ◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 最後のことを彼が話したのかは定かではないが。

 だいたいこんな感じのことを、
 境耶は駆け足で語られていた。

『ホデリ』 :
『小僧 なにゆえ耳を塞ぐ』

SYSTEM :
 彼は途中からその話を聞いていなかったのが、
 地味に不満だったようだ。

木口龍 :「っていうことがねぇ、ございましてですねぇ!!!
 オレは頑張って生き延びるために、あとなんか手帳に書いてあった"人助けをしろ"っていうアホみたいなメモに従って行動していたわけですよ!!!
 だから信じてくださいオレは密猟者じゃないんです!!!!」

 夢の内容なんか信じてもらえるとは思えないので、当然喋んない。
 だからオレが喋ったのは、自分の記憶を頼りにした話だけだ。
 それを土下座のまま喋ってる

久外境耶 :
「ッスー……」

 磯臭い男がズシャーッッッと土下座したかと思えば、命乞いと聞いてもない怪奇事件とオモシロ入眠事情について語られる。
 いったいおれは何を聞かされているんだろ。なんで最後まで聞いちゃったんだろ。

久外境耶 :
「いや、ないわー……」

 こいつが"パラディン"ではないという意味と。
 ヒト
 男としてこの無様はありえないという感情で。

久外境耶 :とりあえず耳このまんまな。まだやらかしそうだから。この……何? なんだろう……。

久外境耶 :「ああウン、そっかあ。いいんじゃない、必死で……」

久外境耶 :「とりあえず見苦しいから顔上げなよ。あんたが密漁してようが人助けしようが、おれ、興味ないしさ……」

久外境耶 :関わりたく……ないしさ……。

木口龍 :「エッ……あなた、この島の住民ではないんですか?」

久外境耶 :「遭難者ですゥ〜……」

久外境耶 :なんで律儀に会話してんだろな〜〜〜〜おれ〜〜〜〜〜……

『ホデリ』 :
『………境耶………』

『ホデリ』 :
『かの男は、何事を物語る者なり?』

SYSTEM :
 ………ここで一つ追記しておくと。
 ホデリの発する声は、龍にも届く。

 あくまでも同時に遠吠えするので、
 そっちの威圧感が強いだけである。

久外境耶 :「えっとですねえ 寝起きに聞かんでいい妄言」

『ホデリ』 :
『然りか………』

木口龍 :
「いやーーーーーそうだと思いましたよなんというかなんかインフラ設備も通ってないような場所に、ハイカラジャージな青年がいるわけないってえっおたくも遭難者?」

 あと横の犬怖いんだけど遠吠えさっきから繰り返してるんだけど。

SYSTEM :
 だが第一発見者ではないのか? という疑問と、パラディンではないのか? という疑問について解決したようなので、彼は敢えてこれ以上は聞くまいとした態度を取り始めた。

 嘘だ。何となく尾が動いている。
 境耶に軽く当たっている。

久外境耶 :気にすんな〜〜〜〜後悔するぞ〜〜〜〜〜

久外境耶 :おれとなりにいんのリーダーだったら意識とおくにトバして全投げしてたからねマジ そういう状況

『ホデリ』 :さほどの…それならば怪異ではないのか?

久外境耶 :「あんたは見るからに遭難者な。じゃハイおつかれ、お互いがんばりましょう」そそくさ

久外境耶 :怪異だよ!

久外境耶 :だから逃げてんだよ!

木口龍 :「まてまてまてまてまてまってくださいお願い止まってヘルプミィーーーー!!!!」

久外境耶 :「うわっ追ってきた」

久外境耶 :「あんた身体にいっぱい食糧つけてんじゃんそれでがんばれよアッちょっ触んなくっせえ!」

木口龍 :
「こんなところに置き去りにされても無人島脱出特番できるわけじゃないんですよ!!!
 ほらこうここはお互いに助け合って生きていきましょう!!!! ね!!!???」

 わかめだけで生きてけるほど人は強くないんですよ!!!

久外境耶 :肩に手を置……きたくない

久外境耶 :あんたなら大丈夫!

『ホデリ』 :鬼気迫る顔だが、まことに問題ないのか? と言いたげに顔を持ち上げている…

木口龍 :何の根拠ォ!?

木口龍 :
「ほらこうえーっと、オレ銃出せる!!!
 普段は秘匿されてるやつだけどもうなりふり構わねえ!! ほらオレ銃手から出せて、──」

木口龍 :GM、演出でハンドレッドガンズを宣言する。

GM :構いませんがいいんですか 侵蝕率…

GM :とはいえ…演出上の都合とするなら今回はOPですし、侵蝕率増加は見なかったことにしましょう

木口龍 :寛大な措置助かる

GM :それほどでもない

木口龍 :
「──ほら! これ! これ出せる!!! 水の中でも撃てる!!! オレの体すげー痛むけど!!」

「だからまってマジで待って少しこう、考えましょう取引しましょうオレが戦力になれるから!!!」

木口龍 :
で、超堂々とハンドレッドガンズで作った拳銃を見せる。
どう見ても男は銃を隠し持っている様子が無いことから、今作成したことは明らかだ。
その銃身を近くでよく見ると、醧忘台・孟婆湯のロゴが彫られている。

久外境耶 :「あ〜〜〜〜……?」

久外境耶 :「いらねえよ、しまっとけ。ここ同類の流れ着く島になってるから、キョドってたほうが安全だろ」知らんけど

久外境耶 :耳 う〜〜〜〜ん いいか 手外しとくわ

久外境耶 :「同業……はねえよな、あってたまるか嫌だわ。あっちさんもナシだろ。あんた、どこの人間? それチーム名かなんか?」

木口龍 :「えっ同類」 マジで? の顔をしたあと……

木口龍 :ち、チーム名、どこの人間、えーっと、えーっと、身分を証明出来るものは……あ、ポケットにあった。よかった……。

木口龍 :
「──こ、これでどうでしょうか……」

 差し出したのは、「木口探偵事務所 所長 木口龍」の名刺だ。
 住所と電話番号も書いてある。

久外境耶 :いや銃のロゴ……まあいいか。受け取──

久外境耶 :「……えぇ」

久外境耶 :探偵? これが?

『ホデリ』 :自由になった耳から断片的に入る音から、ホデリは何事かを考え込んでいる…。

久外境耶 :壊れるな〜夢……

『ホデリ』 :
『境耶………。
 ………探偵とは何ぞ?』

木口龍 :「所属はイリーガル……っていう体だと思います。ハイ」

『ホデリ』 :『“いりいがる”とは………』

久外境耶 :「少なくともこれではねえ何か」探偵もイリーガルも

SYSTEM :
 ホデリは首を傾げた。
 先もそうだったが、横文字の時は特に、彼は発声の仕方が、本当に知らないものに触れる時の心地になるようだ。

久外境耶 :「気にすんな。したほうがいいハナシのときは教えっけど、こいつ大半対象外くさいから」

『ホデリ』 :『フウム………』

木口龍 :「……あ!」 名刺を見て思い出す。

木口龍 :GM、携帯の電波はどうなっている?

GM :………

GM :いえ。残念というか当然というか、繋がりませんね。

久外境耶 :てか水濡れヤバそう

GM :(かわいそうなので)奇跡的に使用には問題ありません。

木口龍 :草。繋がらんだろうなと思ってはいたから壊れてたら壊れてたでもよかった。

木口龍 :
「そうだウチの事務所に電話をかけるかできれば──」

 携帯を開き、

木口龍 :

  圏 外 

木口龍 :「終わった・・・・・・」

久外境耶 :「終わっててくれ」

木口龍 :「唯一の希望が……」

久外境耶 :……ガチで言ってる? すーげえマジ遭難者みたいな反応してっけど。

久外境耶 :「あんたリュウグウジマってご存知?」

木口龍 :「リュウグウジマぁ……?」

木口龍 :「そりゃああなた、鯛や鮃が舞い踊り、オトヒメ様が出てくるアレのことでしょう……? さ、ささささすがにオレだって知ってますよ」

久外境耶 :あっだめそ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

木口龍 :「待ってくださいそしたらオレ帰ったら」

木口龍 :「ジジイになってるってことですか!?」

久外境耶 :「被害計算だけはえーなこいつ」

木口龍 :「リスク管理しなきゃ生きてけませんよ」

木口龍 :「まぁここに流れ着いたこと自体がリスクなんですけどね!!!!!」 どっ

SYSTEM :
 その様子に訝し気なところを持ったのか、木口の下に近付いた(何か言いたげな)ホデリが、小さく唸り声を上げながら周囲をくるくると回り始めた………。

木口龍 :じゃあオレはな、なんなんだよ……ってうろたえてる

久外境耶 :「やめろってなんか感染るぞ」アホとか

『ホデリ』 :
『しかし、いかにもあやしき男だ』

『ホデリ』 :
『だが境耶よ、この者………。
 検怪の者と同じきにおいがする』

久外境耶 :「……磯のにおいじゃね? ソレ」

『ホデリ』 :『………ぬう』

SYSTEM :
 それを特に否定はしなかったようだが。
 今もなお微妙に何かを探るように唸っていた彼は、自らの“違和感”の正体か形にならない抗議の正体がつかめぬのか、そっと距離を取り元鞘に戻って行った………。

木口龍 :「──っと、とにかく!!!」

久外境耶 :うるせ

木口龍 :
「オレは何か、誰かから依頼を受けていたんですよ。そして気づいたら流されてました!!!」

 っていうか今この狼人語喋りませんでした? 気のせい? 遠吠えがなんか人間の言葉に聞こえたような。ああ動物動画的なあれかぁ(思考停止)

木口龍 :
「とにかくなんか、
 ・・・・・
 人を助けろ──という凄まじく曖昧な"依頼"を!」

 オレはなぜだか、"依頼"という言葉だけはハッキリと口にした。

木口龍 :
「まぁそもそもそれが原因で海に突き落とされた可能性も否定できないんですがね……」

 orz

久外境耶 :「……ふうん。ま、訳アリなのは分かったわ」

久外境耶 :「つか人助けに来といて助け必要なってんのかよ!」ややウケ

久外境耶 :「しっかし何の説明にもなってねえのな。なに? キオクソーシツ?」

木口龍 :「いやマジでそれはそうなんすよ」 いやマジで

木口龍 :「──っていうかいい質問ですね。いやすみませんよくぞ聞いてくれましたマジでホント」

木口龍 :そう言いながら、オレは持っている古ぼけた手帳を見せる。
そこにはただ一文だけ、

久外境耶 :おれの律義さに感謝してほしい いま正気に戻ったら顔面に一発入れて立ち去ってる

木口龍 :
"契約は既に交わされている。
 その契約に従い、お前は己の仕事を果たせ"。

"ソレの望みに従い、お前はかの地でヒトを救え"。

木口龍 :「って書いてあるんですよ意味わかんなくないですか真面目に!?」

木口龍 :「誰ですかこんな気取った中二病みたいな文面! オレ書いたとしたら死にたくなりますよ!!!」

久外境耶 :「あんたより意味わかんねえモンそんなにないから大丈夫だよ」

木口龍 :「でもオーヴァードだから死にづらいですね。そしてそれもそうです!」

木口龍 :わっはっは

『ホデリ』 :『いつわりではなかろう』

SYSTEM :
 あって欲しかったところだが───嘘を零す理由がこの男から見えぬと、横槍が入った。
 尤も、文章の方は測りかねているのか、ホデリはそれきり、足についた土の汚れを軽く払う方に意識を向けていたが。

久外境耶 :「素でこれかよ。救えね〜」

久外境耶 :「……あーあ、どーすっかな。おれこいつ連れて顔見知りと会うのゼッテ嫌だよ」

木口龍 :「やめてください見捨てないでください! 肉盾にくらいはなれますから後生ですからぁ!!」

久外境耶 :「いま一番要らねえモン提供すんな」おれなんだわ肉盾

SYSTEM :
 いかにも境耶が拾ってしまった男は、
 何かこう………とても愉快な男だった。
 
 モルフェウスである。
 だからどうしたと言ってしまえばソレまでだが、
 オーヴァードである。

 本当に“だからどうした”である。
 元よりそれが土俵のスタートラインな世界で切った張ったをしているあなたに、なんでコレに値を付けて買うことが出来ようものか。

SYSTEM :
 
 その男を只者ではないと評するか、それとも心底から“しょうもない”流れ者と思うのかは境耶次第なので割愛する。

 ただ少なくとも拾い物というには胡乱すぎて、
 無視して捨てていくには気がかりなこともある。
 あらゆる意味で、眼前の男は“変なヤツ”だった。

SYSTEM :
 ………しかし境耶とて、流石にいつまでも彼に構ってはいられない。
 捨て置こうとしたか、捨て置こうとするのを龍が感知して命乞いをしたか。鬱蒼とした林道の中、動物や昆虫と木々のざわめきのみが聞こえる中で。

SYSTEM :
 ───ふと。
 ・・
 それが、木霊した。

咆哮 :
“La───Aa────” 

SYSTEM :
 頭が“きいん”となるような音量と共に、瞬きのうちに広がったワーディングエフェクト。

SYSTEM :
 小さく儚い、歯牙にもかけないようなものから。
 何処に隠れていたのかも分からないような、蛇だの鳥だの何だのと言った、有象無象の生物まで。

 その声に充てられたように、ざわめきは“ついで”のものではなくなっていく。

SYSTEM :
 声の主に”充てられた”のだ。
 先程まで“さえずり”だったものが、ざわめきとはばたきに代わり、森が揺れ始めた。

 人間物とは思えないその声量は、キュマイラがやったというにしてもちょっとばかりの度が過ぎている。
 島全体を揺るがすような何某の声が波紋のように広がる。

SYSTEM :
 ………聞いた感じやワーディングの気配は。

 とてもあからさまで、「ちょっと退け」とばかりの、そこで縄張り争いでもしているかのようなモノにも思えたが───。

『ホデリ』 :
『───』

 ホデリが、恐らく声のした向こう側をじ、と見つめる。

『ホデリ』 :
『………吼えたる獣に紛れて………なつかしき気影が、何処かに………。
 間違いない、彼方だ………しかし、何故───』

SYSTEM :咄嗟に歩き出そうとしたホデリだったが、どうも数歩進んだところで一旦足を止めて境耶の方を振り返ったところを見るに、あなたの意見を聞く気はあるようだった。

久外境耶 :
 いやな響き方をしやがるワーディングに顔を顰めたのも束の間。大物に充てられた有象無象のざわめきは、周辺を揺るがすに飽き足らず、島全体に伝播しかねない勢いを得る。
 ……ハ、と笑みが浮かぶ。わざわざ振り返った伴とやらは先に体が動くくらいノリ気で、えらく都合がいい。

「なに気にしてんだよ。ほんっと律儀な!」

久外境耶 :「行こうぜ。ドンパチやってんなら虎でも鮫でも大当たりだ! おまえの知り合いもいるみてーだしな!」

久外境耶 :……で、いつもならダッシュで行くわけだが今日はちょっと妙なのもいるワケで。

『ホデリ』 :
『汝は然る者であったな。
 では征こうぞ───と、したいが』

SYSTEM :
 ふ、という嘆息。
 悪い気はしていないのだろう声色が、獣の遠吠え混じりだというのに伝わって来る。

 それもすぐのこと。
 同じ思考に思い至ったようで、ホデリが遠吠えを意図的に抑えて、意識の矛先を龍に向けるのはすぐのことだった。

『ホデリ』 :
『この森に捨て置かれるか、ついて来やるか………。
 選択の権は二つぞ。そこな男よ』

SYSTEM :
 微かな獣の声と、あからさまな人の声。
 どうもこの生き物は、たとえ探し人でなくとも、龍に対して“そこに留まっていると、この島の人ひとりいない場所へ放っておくことになる”という部分に懸念を懐いているようだ。

木口龍 :えっまってこれマジで狼喋って──、

木口龍 :──い、いかんいかん。

木口龍 :
「そ、そりゃもうついていきますよオレ一人でこの場を生き延びられるとは思いませんもの!!!」

久外境耶 :「なんでついてきたらイケる想定なんだよ……」

久外境耶 :「ま、いーや。ついてくる分にはあんたの勝手だ」

木口龍 :「逆にオレがこの場に取り残されて死なないと思いますか?」

久外境耶 :「うん」

久外境耶 :そういう補正かかってそう

木口龍 :「 」

『ホデリ』 :『男であろうが』

『ホデリ』 :
『………イヤ。過ぎしコトか。
 では改めてだ。平穏無事は示せぬが、ここよりは“まし”であろうな』

SYSTEM :
 余談ながら。
 どちらかが、周囲の“歯牙にもかけないその辺の動物”なんぞに意識を向けていたのであれば。
 
 話を聞くなり駆け出し始めたホデリと共に、そのワーディングの広がる中点へ向かうこと以外に意識を向けるなどという余分を持っていたのならば。

SYSTEM :
 先の“咆哮”が齎した副次的意味を。

 突如として視界に散見され始めた虫、鳥たちの“威嚇”と、彼ら/彼女ら、言葉の通じぬ畜生どもがワーディング内でも平気に狂奔し始めたという事実から、なにかの特異性を悟ったのかも知れないが。

 まあ、せいぜい余談だ。

SYSTEM :
 ◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 獣道を駆け下り、踏みしめるものが土から岩肌に変わった頃。
 その遠吠えが、恐らく海辺から響いたのだろうことが、嫌でもわかる頃。

 すぐさま目に映るものがある。
 それにどの程度重きを置くのかは、あなたたち次第と言ったところだが。

SYSTEM :
 ・・
 朱色。

SYSTEM :
 砂浜に混ざる血の色と、そこに倒れ込み/横たわる、年頃十代後半の娘の姿。

SYSTEM :
 あるいは…。

SYSTEM :
 そして、それに背を向け、暢気に戦利品のひとつ/同じくらいの年頃の娘を担いで歩き出す方。

 ふたりと一匹。
 それと本質的には全く同じ。
 人間/常識に片足突っ込みながら、もう片方の足をバケモノとか夢物語とか、そういう言葉に思い切り突っ込んで、あろうことか踏み荒らしていける存在。

 オーヴァード。
 レネゲイドウイルスに“憑かれた”、越える者。

SYSTEM :
 白雪のように美しく、明星のように鮮やかで。
 鋼色のように煌いて、宵闇のように悍ましい。

SYSTEM :
 ───怜悧なそれは、一言。

“喚楽の人喰い虎”明夜白銀 :
「───」

SYSTEM :
 ───まともから一歩でも足を離した人間ならば。
       ・・
 誰でもわかる怪物であり。
          ・・・
 すぐにでも分かる、声の主であった。

久外境耶 :
      オンナ
「────いい怪物だなオイ! 名乗らなくていいぜ、目ぇ見りゃ分かる!」

木口龍 :
「う、ぉ──」

 なんだ、アレは。
 
 あの砂浜で転がってるの、
 どう見たって"死んでる"だろ。
 それになんだあの化け物は。見ただけで、震え上がる。魂までもが切り刻まれる。
 こんなの凡人にどうしろっていうんだ──。

■■■ :

 ──ふと、担がれているのに視線がいった。
  誰かが言った。オレの体を動かした。

■■■ :
 ・・
 アレだ。
 要救助対象を確認した。

■■■ :
 腕。それも間接を狙え。
 得物は不明。だが武道家であれど、剣術家であれど、なんであれど、間接は被害が大きい。

■■■ :
 隣のヤツに気づかれるリスク?
 問題は無い。お前は日常でぼんやりしているだけの、なにわ探偵でしかない。どちらも十分に分かっている。

■■■ :
 足を引け、

 銃を袖口に仕込め、

 引き金に指をかけろ、

■■■ :
 お前は間抜けな操り人形だ。
 それを崩すな。

木口龍 :で、

GM :はい?

木口龍 :ロールプレイ上だし引きなので撃ちはしないが、

木口龍 :
 啖呵を切った久外境耶の後ろでさっと機敏な動きで引きながら、
 あまりにも慣れた手付きで、その化物が娘を抱きかかえている間接に照準をあわせ、引き金に指をかけた。

木口龍 :

木口龍 :
    銃声
 ── BANG !!

木口龍 :
 一切の躊躇いも容赦も無い。
 それどころか照準を定めている眼光を除いて──一切の殺気も気配もない。
 何かに導かれるようにして、木口龍は弾丸を解き放つ。

SYSTEM :
 ───久外境耶の判断は正しい。

 あなた自身の目論見を考えるならば。
 命を喰らい合えるだろうそいつを口説くという判断は正確だ。
 
 実際に、そいつは振り返った。
 快活さに快活さで応じるように、にこやかに笑って。

SYSTEM :

 ───木口龍の見立ては正しい。

 鋭利な爪で引き裂かれたかのような年頃の少女は、手遅れだったか、あるいは即死だったか定かでないが。
 少なくともいま、呼吸という生命活動の象徴があるようには思えない。

 そして何より。
 何をするでもなく真っ先に仕掛けた判断は、ある主観において最善ではあったはずだった。

SYSTEM :
 実際に、そいつは振り返った。
 振り返って、もうひとりの、どこにでもいるのだろう少女を携えた腕関節部へ、きわめて無警戒に弾丸が当たり。

SYSTEM :
【Check!】
 エフェクトの所持を確認しました。

 Auto:『魔人の盾』

SYSTEM :
 ───当たり。
 ・・・
 ぱしん、と。
 冗談みたいに軽い音で、
 触れて来た弾丸の方が消し飛んだ。

SYSTEM :
 当の本人はそれを一切解することもなく。
      ラッキージンクス
 声をかけた幸運の徴を、
 四つ葉のクローバーでも偶然見つけたような喜びにも例えられそうな、まさに日常の素朴さに触れて笑う顔で目を向けて。

“喚楽の人喰い虎”明夜白銀 :
「───はじめまして!

“喚楽の人喰い虎”明夜白銀 :
 きみのこと、どうせ覚えないので、私が一方的にお話します!」

SYSTEM :
 朗らかに/隔絶し。

 嬉しそうに/歯牙にもかけず。

 控えめに言って傲岸とかそういう問題ではない獣の声が、
 あなた方の、『リュウグウジマ』で最初に虎を見た時の認識であった。

SYSTEM :
 ◇ ◆ ◇


【シーン4:追憶】

SYSTEM :
【シーン4:追憶】

 登場PC:荻野目旭
 登場侵蝕:あり(特殊)

SYSTEM :
Tips-幻想存在
 かつてブリテン、またはギリシア神話の時代に住んでいたとされる、
 妖精やドラゴン、巨人などの超常存在。
 現代においてその姿が確認されることはほぼ有り得ず、識る者も同様にいない。
 
 しかし過去の神話においてそのような存在が居たとして、
 それは当代におけるRBと一定の共通性を持つのではないか…と、
 FHやゼノスと言った、歴史の影に強く精通する場所で、議論の席を持たれたこともあった。

 最もこのような人外の者と巡り合う機会が多いのは、曰く北欧の地と言われ、
 過去数度、これと目される存在が致命的被害を齎しかけたこともある。

SYSTEM :-3年前-

SYSTEM :-北欧某国における作戦報告書-

SYSTEM :
 201X-XX-XX
 UGN北欧統括、ストックホルム支部
 作戦報告書 

 責任者:エージェント“イリュシデイター”

SYSTEM :
 北欧のノルウェー方面において出没し、
 不規則にワーディングエフェクトを放出する未確認の推定オーヴァードを複数発見。
 現地エージェントによる包囲網を形成し、下記のフェイズにより処置を行った

SYSTEM :
 
1:ジャームの兆候確認
2:ジャームである場合は捕縛、ジャームでない場合は沈静化
  いずれの場合においても無力化を第一目標とし、それが適わない場合は討伐を行う
3:討伐後、ワーディングエフェクトによるノルウェー国領への悪影響を調査

SYSTEM :
 なお人材不足を鑑みて、
 支部を訪れていたイリーガルおよびチルドレン等の遊撃戦力に対し、
 自由意思を介し承諾した者へ後方警戒を指示、依頼した

SYSTEM :
 …作戦結果について下記の通り記す。

SYSTEM :

・非人型のジャームを複数確認
..        レーレ・シュヴェア
 うち仮称コード「蝕みの君」により先遣部隊が接触。部隊は全滅

・このジャームが作戦領域として定めたエリアの後方へ移動
 後方警戒の部隊に接触したことにより、この部隊も壊滅

・責任者含めたエージェント到着時、該当ジャームは消滅
 生存者は有志のチルドレン1名(※1)
 本人の事情聴取に依り、作戦領域にUGNの認可していないエージェントの存在を確認(※2)

・ワーディングエフェクトによるノルウェー各地への悪影響は軽微
 複数名の体調不良、精神疾患を確認したものの、後遺症はない

SYSTEM :
※1:別項 
 
※2:所属不明のオーヴァード
   キュマイラシンドロームであることは判明したが、以後の消息不明

SYSTEM :
追記:なお、エージェント“イリュシデイター”はこの件以後
   心神喪失状態に陥り、長期のメンタルケアが必要と判断 

   北欧ストックホルム支部の判断で籍を維持しているものの
   以後の表立った活動は201X年まで確認されず、実質的な謹慎処分を兼ねた静養状態にあった

SYSTEM :
 ………。
 ………、………。

 …………………。

SYSTEM :
 ───難しい任務ではなかった。

SYSTEM :

 その発端はアクシデントだったが、アクシデントの自覚もなかった。
 北欧くんだりまでわざわざR因子パターンの、遺産との類似性を確認するためのものに赴いた先。

 そこで誰もが予想していなかったアクシデントに、当時なりたてのあなたは、自由意思(多少の誘導があったかは定かでない)の元、後詰めについていただけだったからだ。

SYSTEM :
 ………時のあなたが驕りを持っていたかどうかは、定かでない。
 足元を掬うほどの驕りではなかった。

SYSTEM :

 オーヴァードという世界の常識に染まらぬ、裏側の存在。
 その一端を担っているというプライドがあったからか。
 あるいは、積んで来た訓練、果たしてきた成功が、立て直したあなたの体験として土台になっているからか。

 まあ、どれでも良い。
 別にどれだろうと………あなたの現状において、それが意味を成したかの是非は明白である。今に限れば、コレはどうだって良い。

SYSTEM :
 ではなぜ、こうなったのか。
 日本とは異なる気候、異なる空気を浴びながら、あなたは地を駆けている───。

SYSTEM :
 10分ほど前まで眼前にいた脅威から、
 恐らくは背を向けて。

 あなたは逃げ出した。
 それは何故だろうか。

SYSTEM :
 ………人間ではないヤツを相手にすると聞いていた警戒を、
 最初に遭遇し、戦えてしまった“とるに足らないやつ”で油断したから?

SYSTEM :
   ・・・・・・・・・・
 ………その後に出てきたものに勇んで掛かったキュマイラの男が、
 あっさりと死ぬまでの数秒の間、適切な援けをしてやれなかったから?

SYSTEM :
 ………狂ってのたうち回りながら死んだブラム=ストーカーのイリーガルが、
 そいつに近付いたが故のことだと気付いた時には、もう手遅れだったから?

SYSTEM :

 ………あなたに応援の役を任せて逃がした、震えを隠して笑いかけたモルフェウス・シンドロームの女の言葉に甘えて。
 一緒に戦う/死ぬのではなく、逃げて生き延びることを択ぶという“判断”に依存したから?

SYSTEM :
 どれだって構わないのだ。

 少なくとも、あなたは戦う段階ですらなかった。
 そうするべきだとしか判断できない理由があった。

荻野目 旭 :

 ──────どこで間違えた?

 何度も何度も、数分前からずっと、その問いばかりがまとわりついていた。

荻野目 旭 :
「──は……ッ」

 足がもつれる。
 重たいコートが体にまとわりついて、いやになる。
 乱れ切った白い息が目障りで、全身汚れ切ったのがいまになって気になりだす。
 それは体が限界になってきたから脳みそが用意する逃げ口だ。
 ホワイトアウトする直前はそうなるって、訓練でしごかれたときに教官に怒られたっけ。

荻野目 旭 :

 ────違う。
    わかってる、そのぐらい。
    ぼくのこれは逃避だ。
    数分前に焼き付いた光景を頭から逃がすための、脳みその作用だ。

荻野目 旭 :

「────ぅう!」

 限界になった足がもつれて、思いっきりけつまづいた。
 そのままごろごろ数回転して、這いつくばりそうになるのを土を引っ掻いて我慢する。

 腕に咲いた花に、鉄臭い口で食らいつく。
 ひざの止血を確認して、また走り出すための活力をひり出す。

荻野目 旭 :
「ま、だ……」

 まだ遠い。
 まだまだ、ストックホルム支部の姿はどこにも。

 枯れ木の間をくぐりながら、
              《猫の道》
 僕を導くように開かれたつめくさの花の群れを必死に潜り抜ける。

荻野目 旭 :
 どうして、なんで、僕が、僕の?
 傷の痛みが抜けたら、今度はそれが頭をぐるぐるかけめぐる。

荻野目 旭 :
 ほとんど酸欠状態の頭で、もうそればかりしか残らなくなった。
 足と頭がずれて、もう確かなものは走っている自分と導く花の錯覚だけだ。

荻野目 旭 :
 ああ、でも、10分前からずっとだ。
 ずっと、あれを見た瞬間から、ずっと悪い夢の中にいるようで──

SYSTEM :
 ………十分前に遡る。
 悪い夢と言うなら、思考が並行して見せてくるそれは、
 酸欠状態の脳が見る走馬灯か?

SYSTEM :
 はじめは、何の変哲もないジャームだった。
 自分が出るまでもなく。
 しかも、自分の言葉通りに物事が運べる程度の、そういう“取りこぼし”が来ただけだった。

 ………その数十分後。
 引き受けなければ良かったかも、とあなたが思ったか。
 あなたの隣で近付きながら一線を置いて話しかけてくるイリーガルの多弁な女を、ちょっと鬱陶しく思ったか。

 そのころが、丁度10分前。

キュマイラのエージェント :
“なんだ、またお残しかよ!
 ストックホルムのヤツと来たら行儀が悪くて───”

キュマイラのエージェント :
  
“───。坊主、下がれ!”

SYSTEM :
 これで、
 あなたの指示通りに、彼より二倍か三倍の体躯を持っていた獣型のジャームを叩き潰した巨漢が。

 逆に、あっさり潰し返された。

SYSTEM :
 ………次の男が何を言ったかは覚えていない。
 少しあなたを煙たがっていたが、理路整然としていた男は、そいつの到着と、

SYSTEM :
 咆哮ひとつであっさり“おかしく”なった。

 自分で自分の喉をかきむしって、死んだ。

SYSTEM :
 それで残りは二人。
 あなたの反応を見たのか、一歩足を引いたはずの、その多弁だった女が、確かこんなことを言った。 

モルフェウスのイリーガル :
“援け呼んできて”

モルフェウスのイリーガル :
“───ナニ。どうしたのその顔。
 大丈夫大丈夫! おねーさん殺しても死なないから!
 もしかしたらトンデモないボロ勝ちするかもだからさ!”

モルフェウスのイリーガル :
”………アー、あと、さっき足やっちゃって。
 そういうことなの、私の代わりにお願いね”

モルフェウスのイリーガル :
“───ホラ、行った行った!”

SYSTEM :
 ………その後にあなたが何と答えたのかは定かでない。

 ただ現実として、あなたはその後ろで、銃声の木霊する中、駆け出し始めて。
 10分が経つ。

SYSTEM :
 銃声が、幾度か木霊する。
 渇いた空に響く鉄の咆哮。

 恐らくは決死であり、乾坤であり。
 当人は、他に誰も生きていなければ、足を怪我したなんてウソで、さっさと逃げてどこかに行けるような、”しぶとい”人だったワケだが。

 故にコレは勝利のためのものではなく、二文字で表すならば端的に『無謀』であった。

SYSTEM :
 銃声が、幾度か木霊する。
 渇いた空に響く鉄の咆哮。

 何時止むかも分からぬそれは、
 いまだに鳴り響いている。 

荻野目 旭 :
「……っ」

 音がまだ聞こえる。
 何度も、何度も。
 乾いた空に鉄の咆哮が響く。

荻野目 旭 :
『おねえさん』と呼べと言うから、『おねえさん』と呼んだ人だ。
 多分ここにいるのが僕じゃなかったら、自分が先に逃げ出しただろう。
 イリーガルなんだから、そうしてよかったはずだった。

荻野目 旭 :
 振り向きそうになるのを堪える。
 だめだだめだ。
 そしたら幻覚が消える。足が止まって間に合わなくなるだけだ!

SYSTEM :
 振り向いてはいけない。だってそうだ。
 何人で束になっていたところを、かかる前から壊滅させるようなものに。
 単身残って何が出来る。
 ひとり増えたところで何が変わる。 

SYSTEM :
 理性的に考えたならば、その行動に意味などない。
 当たり前が当たり前でない世界を知ったばかりの人間に、
 アレに立ち向かい続けられる理由などない。

 ………ただ生きるのが。
 あなたか彼女かの違いだけだった。

 あれはそういう状況であり、
 客観的に見たのならば何方にも非はない。

SYSTEM :
 しかし………。

 僅かな堪えと躊躇いの時。
 等間隔で伝わっていた、ずいぶんよく音の響く長物を使いこなしていた証である音が。

SYSTEM :
 その時に───
 ・・ ・・・
 音が、止んだ。

SYSTEM :

 ………施設のUGNチルドレンならば幾度かやっただろうか?

 いや、施設でなくとも子供ならば良くやるアレだ。
 かくれんぼとか、鬼ごっこ。

SYSTEM :

 逃げたり隠れたりした方が、暫く先に動くのを待ってから。
 ・・・・・
 もういいよ、で動き出す。
 それで、逃げた方を捕まえ、隠れた方を見つけ出す。詳細は全然違うけど、大筋としては、どっちもまあ、そんな具合。

SYSTEM :

 ナモナキオンナガシンダ
 銃声が止んだのは、まさにその合図だった。 

荻野目 旭 :
「────────うそ」

SYSTEM :
 羽音が聞こえる。
 鳥の飛ぶ音よりずっと力強く。

SYSTEM :
 ───▂▅▇█████████████▇▅▂... 

SYSTEM :
 遠吠えが聞こえる。
 狼の吼える声よりずっと悍ましく。

SYSTEM :
 逃げる足よりも速く。
 狩りの獲物を追い立てる冷酷な野生が。
 ・
 空を切り裂いて舞い降りる。

SYSTEM :
 どういうわけか、北欧は人間じゃないヤツを相手にすることが多い。
 ………あなたが此処に辿り着いた時、
 もう死んだブラム=ストーカーの男から伝え聞いたお話だ。

 なるほど。
 確かにコレは。人間に真似できるものではない。

“蝕みの君” :


『▂▅▇█████████████!!!!』



SYSTEM :

 あったかも知れない自負と、あったのだろう自信を。
 育ててきた細やかな土台を、意図的な悪意でもないただの力で砕くものは。

 あなたの世界を二度壊すもの。
 摂理に囚われぬレネゲイドが如何に理不尽で恐ろしいものかを、
 この時「最初に」教えるもの。

SYSTEM :

 端的に。             ファンタジー
 フィクションの世界の、最も代表的な幻想存在だった。

SYSTEM :
 雄叫びが心を揺らす。
 全高にして10m後半強の体躯が、着地と同時に無造作に巻き起こす振動は、
 文字通り何の配慮も容赦もなく。
 
 ずしん、と。大地が揺れる。
 蒼穹を我が物顔で暴れ回る絶対者に、空も陸も何もかもが。
 下敷きにされた何もかもが、磨り潰されて悲鳴を上げている。 

SYSTEM :
 だれの血かも分からぬ赤色に濡れた爪が、地面に食い込む。

 砕けた銃の破片と、切り裂かれた布。
 空を飛んで、まだ残る”真新しい”遺品または戦利品が爪と牙に引っ掛かっている。

 見せびらかす意図もないのは不幸だ。
 コイツに、あなたと会話する意思も、あざ笑ってやろうという意思もないということだから。

荻野目 旭 :

 ────あ、

    だめかも。

荻野目 旭 :
 頭を駆け巡っていた沢山の考えがすっぽり抜け落ちて──
 それだけが残った。

SYSTEM :
 目の前がまっしろになったあなたに、挑む勇気があったかは分からない。
 あったとしても、それを指して蟷螂の斧と呼ぶべきだろう。

SYSTEM :
 あなたは自分の衝動に逆らうように、自らその刃を振るわぬ戦い方を育ててきた。
 命運を預け、命運を委ねられる戦い方。
 手に命を奪うものを乗せずとも、責任を乗せる、オーヴァードという、気を抜けば“孤独”が付きまとう言葉に対しての向き合い方だった。

SYSTEM :
 なんたる皮肉か。
 あなたがもしも“そう”でないならば───。

 この状況でも、まだ悪あがきが出来たかもしれないのに。

SYSTEM :
 そして何たる不運か。
 あなたがもしも“そう”だろうがなんだろうが。

 そいつは、目に見えて分かりやすく赫怒を撒き散らしている。

SYSTEM :
 いや、それは本当に怒りの念だったのか?

 ………冷静な時ならまだしも。
 考える余地などあなたにあるものか。

荻野目 旭 :
 ぺしゃり、と泥濘に膝をついた。
 震える手で指先を噛んで、傷を突き破るように咲いた花から鳥が飛び立つ。
 その《ハンドリング》はチルドレンとしての義務意識がなんとかひり出した、その時の1パーセントの奇跡をつかむ行動だったが──

荻野目 旭 :
 たぶんだめだ。
 きっと死ぬ。絶対死ぬ。
 こんなの、おとぎ話で勇者が倒すものじゃないか。
 よしんば、ぼくがそういう才を伸ばしていたとして──たかが幻覚が、これに叶うわけない。

荻野目 旭 :
「ご、ごめ、ん、なさ──い」

 だってそれに、血に濡れたそいつの爪から目が離せない。
 それは10分前まで命運をともにしていたひとのものだ。
 誰も死なせないためにここに立ったのに、結局こんなことになって、護りきれなくて、僕だけが、ああ、僕だけが!

荻野目 旭 :
 誰に向けた『ごめんなさい』か定かでないまま、
 地面に縫い留められたように動かなくなった体は、猛るそいつの動きを目に焼き付けるように、ただ視線だけを動かす。

SYSTEM :
 幸いにも。

 あなたの最後の1パーセントに縋るような行いに、
 眼前のコイツは気が付かなかったらしい。
 それはチルドレンとしての幸いであって、
 別にあなたの生命に対しての幸いなんかではないが。

SYSTEM :

 ずしん、ずしんと。
 頭に響いて脳を揺らす、17m強の全高と体格を持つまさに“魔物”が。
 今までの余技ではない、実際にその爪を、牙も、あるいはもっと別のモノを振るおうとしている。

SYSTEM :
 強靭なキュマイラの体格。
                 ホカノシンドローム
 そしていくつかの、ないはずがない副次的要素───。
              フ ァ ン ブ ル
 それすら発覚しなかった、稀に見るほどの不運の産物。

SYSTEM :
 あなたの倍近い体格の大男さえ潰した剛腕か。

 あなたの倍近い場数を踏んだ熟練者すら予測できなかった、あの”風”か。

 それとも、更に知らぬ隠し玉か。
 どれかが、目に見える死神の鎌となって、襲い掛かれば。あなたの命がどうなるかは、客観的に見て誰もが同じ答えを返しただろう。

SYSTEM :
 ………だが。

 その不幸が訪れることはなかった。

嗤う女の声 :
「───は、」

嗤う女の声 :

「は、は、は───。
 あはははははははッ!」

嗤う女の声 :
「見ィ───つ、け、た、ぁッッッ!!!」

SYSTEM :
 頭が“きいん”となるような音量と共に、瞬きのうちに広がったワーディングエフェクト。
 その獣が展開していたものを、獣ごと真っ向から踏み潰し、引き裂くように。
         モノ
 月夜に、より剛い白雪が舞った。

SYSTEM :
 白雪のように美しく、明星のように鮮やかで。
 鋼色のように煌いて、宵闇のように悍ましい。

SYSTEM :
                ・・
 ───怜悧なそれは、のちに一言。怪物であった。 

怪物 :
《大禍津・天羽々斬》

Passive:侵蝕B4(Lv+2)
  Major:CRキュマイラL3/███L6/███L1/███L2/███L4
 Minor:ハンティングスタイルL2/███L6/███L6
  Auto:███L4
 Set Up:異形への変貌(済)

 判定:21dx7+10
 ダメージ:x+4d10+58

SYSTEM :
【Check!】
 エフェクト「巨獣の爪牙」が宣言されました。
 続けて二度目のメジャーアクションが発生します。

SYSTEM :
【Check!】
 二度目のメジャーアクションにおいて同名のコンボ宣言が行われました。

SYSTEM :
【Check!】
 エネミー専用エフェクト「加速する刻?」の効果により、
 イニシアチブプロセスにメインプロセスを宣言します。

SYSTEM :
【Check!】
 メジャーアクションにおいて同名のコンボ宣言が行われました。

SYSTEM :
【Check!】
 エネミー専用エフェクト───

SYSTEM :

“蝕みの君” :
『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 殴打。刺突。殴打。斬撃。

 咆哮。咆哮。咆哮。咆哮。

 咆哮───否。

怪物 :
「はっ、はは………あはははははッ!」

“蝕みの君” :
『█████………██████▇▅▂………!?』 

怪物 :
「ははははそうですかそうですか! 何言ってるか分かりません!
 知りません、忘れた、また明日! 殴ってよーし! 死ねェッッ!」

“蝕みの君” :
『▂▅▇████████████████▇▅▂───ッ!!!!??』 

SYSTEM :
 あなたの目の前で起きていることは、不幸にも夢ではなく。
 幸いにも、あなたの人生はそこで終わることはなかった。
 捨てる理不尽あらば拾う理不尽あり。
         しぜん
 あなたは北欧の弱肉強食にて前者であったが、後者と思われていて、事実そう“だった”ものにとっての後者が来た。それだけだった。

SYSTEM :
 それはあなたが識る世界の裏側、常識に馴染めない背徳者たちにとっても、
 さらに向こう側にある在り方だった。

 そしてそれは、あなたに離脱という思考を赦さなかった。
               シ
 背を向けて逃げ去った時、あの獣が自分に視線を向けるかもしれないという。
 当たり前の恐怖を思い出したからだ。

荻野目 旭 :
 2秒待って、3秒待って──まだ来ない。
 意識が落ちないどころか、幻聴まで聞こえてきた気がする。

荻野目 旭 :
 ──笑う女の声。
 場違いに楽しそう。
 なにか望外の楽しみでもあった?
 こんな……寒くて苦しくてしんどいだけの場所に、

荻野目 旭 :
「………!?」

 ちがう!
 幻聴でもなんでもない!
 意識を引き起こして……その先に信じられないものを見た。

荻野目 旭 :
 女の姿をしたものが……化け物と対等、いや、
 捕食するために牙を剝いていた。
 あれだけの死を振りまいたものを、いともたやすく……!

SYSTEM :
 獣───。
 そう、獣。

 眼前のソレを評するにふさわしい言葉が、
 これ以外の何処にあったものか。

SYSTEM :
 竜のあの爪を、腕ごと弾き飛ばした時も。

SYSTEM :
 死に物狂いの竜の牙に胴を食い千切られて、再生しながら流した血が雪に斑点を作る時も。 

SYSTEM :
 その口に腕を突っ込んで、なにかが爆ぜた時も。 

SYSTEM :
 17m強の個体がピクリとも動けないほどの、
 端的に言って有り得ない負荷をかけながら頭を踏みつけて捻じ伏せ。
 
 持っていた、恐らくは業物なのだろう得物を、心底乱暴に、配慮もなく振り回して───そいつの首を、引きちぎるように切り裂く時も。 

怪物 :
「は、は、は───。
 あはははははははははははッ!」

SYSTEM :
 そいつと来たら、ずっと。

 ずっと、ずっと、ずっと。

 呼吸するように笑っていた。

SYSTEM :
 ◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………ともすれば年が明けたのではないかと思うほど長い時間に錯覚した、
 たかが1分かそこらの戦いが終わった。

SYSTEM :
 いや、それは戦いではなかった。
 運が悪く巻き込まれたあなたを巻き込んだ“死”が。
 より強いものに、交通事故みたいに引き潰されただけだった。

怪物 :
「………………」

SYSTEM :
 雪景色と枯木の中を不自然に彩る紅色が、あなたの顔に幾度か飛び散って。
 あれだけに楽しそうにしていた方のバケモノが、嘘みたいに静かに、淡々と…影も形もなくなった方の獣の名残を確かめている。

 余談ながら乱暴に振り回していた得物は、主人のあまりにも暴君めいた使い方に耐え切れず、同じように拉げて転がっていた。

荻野目 旭 :「………う、そ……だぁ」

荻野目 旭 :声色はほとんど鳴き声だった。かすれきっていたけど、信じられないことにまだ言葉の体をなした。

荻野目 旭 :
 ほとんど反射でこぼれてしまった声と、その失態に、思わず口を両手で塞ぐ。
 ……びりびり肌を刺す緊張感は、一度も消えちゃいない。矛先が消え去っただけなんだから……!

怪物 :
「───。さて。と」

SYSTEM :
 応じたのか否か。

 そいつが振り返って。
 あなたの方を向いた。

荻野目 旭 :「うえ」

SYSTEM :
 応えない。
 一歩、一歩と距離を詰めてくる。

荻野目 旭 :「……………っ、〜〜〜〜っ」

SYSTEM :

 既に間合いだ。  ヨロコビ
 自分に向いていない殺意を見て来たからこそ、客観的に見て取れる。
 オルクス・シンドロームの領域処理能力が、理性が、淡々と告げる。

SYSTEM :
 そして。

怪物 :

「こいつじゃないですね………。
 困ったな、外れかな………」

SYSTEM :
 そいつは。
        ・・・・・
 あなたの横を、何もせずに素通りした。

荻野目 旭 :「────、──」

荻野目 旭 :「──は、あ?」

SYSTEM :
 すぐに分かる。

 呟いた独り言も、最初から最後まで。
 あなたを見ていたものではなかった。

SYSTEM :
 どこぞに向かって暢気に歩いていくその後姿。

 文字通り“袖”にされたあなたであるが。
 あるいは、真っ白になるほどの恐怖すら吹き飛ぶような───。

 それは、憮然とした感情だった。

荻野目 旭 :「……っ! ………ま、っ──」

荻野目 旭 :
 て、と。
 喉元まで出かかった言葉が突っかかる。
 自分のことを過信していたわけでもないはずで、力の差も歴然なのに。

     ひと
 僕はこの獣に路傍の石とすら見られてなかったことが、どうしようもなく嫌だったのだ。

荻野目 旭 :
 絶対勝てないのに!
 一矢報いる術すらないのに──

 一瞥すらなかった事実が、本当に、死ぬほど、信じられないぐらい、嫌で!
 それが、声を止めた。二律背反の感情に縫い止められるみたいに。

SYSTEM :
     ・・・
 それは、待って、なのか。
 ・・
 待て、だったのか。 

SYSTEM :

 あなたの言葉に、そいつが振り向いた。
 矛先を向けたとたんに。

 最初は少し驚いたような顔をして。
 それから、そう。とてもとても嬉しそうに、朗らかに笑って。

怪物 :
「───はい。はじめまして!

怪物 :
 ・・・・・ ・・・・・・・・・
 きみのこと、どうせ覚えないので、私が一方的にお話しますね!」

SYSTEM :
 続いて発された言葉は、これだった。

SYSTEM :
 あなたの疑問、怒り、安堵、対抗心。
 そういうものを分かっていないか、分かっていて無視する類の台詞だった。
 あなたに向けられる金眼は、生物的構造上は人のそれだったが、人のように見えなかった。

怪物 :
「名前は、えー………実は考え中なので………。
       . マンティコア
 呼びたかったら“喚楽の人喰い虎”でいいです」

SYSTEM :
 
 そう呼ばれたことがあるから、と。
 なんとも適当で、一方的な自己紹介。

 獣と呼んだが、それも厳密には違う。
 それを、何か生きているものに当てはめることそのものが悍ましい───。
 そういう、面構え。世界から浮いている自覚がある生き物にしかない、面構えの生き物だった。

荻野目 旭 :「──ぇ? え、あ、……っ」

荻野目 旭 :それは会話じゃなかった。ただ路傍の石が生き物とわかったので、とりあえず声をかけただけだ。

怪物 :
「えっとね。見ていました」

怪物 :
「探し物の最中、元気なのが居たから、あーこいつかな? と思って。
 どいつよりもまともじゃなかったし、一先ず殴ったんですが………」

SYSTEM :
 簡単に死んだんで、たぶん探し物じゃないですね、と。
 頼んでもいない動機説明も、概ね変わらない笑顔のままであった。

荻野目 旭 :
「じ、じゃあ………」
 ほとんど反射だ。とっさに口を開く。

荻野目 旭 :「……あれ、」

荻野目 旭 :「ただのざこだったって、いいたいんですか」

怪物 :
「で、んーと、そうだな。
 言う意味もないかナァと思っていたんですが………ええと。なんでしたっけ。
 行き掛けの駄賃、情けは人の為ならず、雉が鳴いたら帰りましょ───」

怪物 :
「───アレ、違ったっけ。
 どっちでもいいや」

SYSTEM :
 何処までもあなたの話を聞く気がないその女は、
 聞かれた言葉をよそに、会話を一方的に始め。

怪物 :
「こほん。
 多分そうですが、生きていてよかったですね」

SYSTEM :
 一泊遅れた追加の反応は、心底どうでも良かったのか。
 それとも今までと違って、応じようという意思だけはあるのか。

 受け取り手にとっては、どちらでもロクなもんじゃなかった。

荻野目 旭 :「……………っ」

荻野目 旭 :
「よかった、なんて……こんな、状況で!?
 言える、わけ! ないじゃないですか……!」

荻野目 旭 :向こうが僕のことなんて知ってるはずないのに、我慢できなくなって声を荒げる。

荻野目 旭 :「あなたもっ! 見たでしょ……あいつの体にくっついてた、やつ……!」

怪物 :
「きみは別に死ななかったのに?」

荻野目 旭 :「な」

怪物 :
「まあそれはいいんですけど。

 探してるんです。多分、もうちょっと巨きいやつ」

怪物 :
「そいつなら、多分大丈夫かなって思って来たんですけど。
 困ったな。こないだ話を聞きに行ったトコは………確か………」

SYSTEM :
 ………あなたの反応を待っているわけでもないのか。
 そもそも言いたいことを脊髄反射で言っているだけなのか。

 先程話の腰を折るどころかブン投げておきながら、
 そいつはあなたに視線を合わせ直した。

怪物 :
「別に覚えちゃいないと思うので。
 忘れてくれていいんですが」

怪物 :


 ・・・
「きみね。
 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・
 戦う人は向いてないから、やめた方がいいですよ」

SYSTEM :
 笑顔のまま。
 淡々としているが、先程と比較すると、どうも楽しそうではない声色で。
 一方的に話を打ち切った。

荻野目 旭 :「…………ッ!」

SYSTEM :
 それきり、合わせていた視線が何処かに行く。

 言葉を借りるならば。
 自分より巨きいものを探して、数十秒前の興奮と殺意が嘘のように、ふつうの調子で。その背中が、再び遠くに行き始める。

荻野目 旭 :「…むいて、ない、って」

荻野目 旭 :
 それがとどめで、体から今度こそ力が完全に抜けた。
 領域から獣が去っていくのを、それでも目は追い続けている。
 白いばけものの後ろ姿は、振り返るそぶりもなかった。

荻野目 旭 :
「───むいて、ない、って……」

 地面に手をついて、また土を引っ掻いた。
 ひどい音がして、血が垂れるのがわかる。だけどそれはわかるだけで、ひとつの実感もない。
 ぼくの頭を埋めていたのは、そのなんでもない言葉だけだ。

荻野目 旭 :
「……待って、よ」

 こぼれた声はたぶん聞こえないだろう。
 そういうふうなモノじゃないことぐらい、奇妙に冷やされた頭ならわかる。

荻野目 旭 :
「なん、で、そんなこと……」

 でも言わずにはいられなかったから、
 ほとんどうわ言みたいに。

荻野目 旭 :
 ・・・・・・・・・・・
 そんなこと知ってるのに、

 ・・・・・・ ・・・・・
 なんでそんな、ひどいこと。

荻野目 旭 :「う、わ、あ……あ、ああああ──あああ!」

荻野目 旭 :
 涙はこぼれなかった。
 あんなもの見せられて、そのあとにこれだ。血ぐらいしか出せるものはなかった。

荻野目 旭 :
 ただ──その背中を、災害みたいな生き物の背中を、消えるまで、視線は追い続けていた。
 あの──

荻野目 旭 :
 逆立ちしたってなれない、
 死ぬほどうらやましい、
 あれだけの暴力を持った生き物のことを。

SYSTEM :
             ファンブル
 それは、あなたにとっての致命的不運があった日。
 日本の海向こうで起きた、忘れようのないお話…。

SYSTEM :
 それから。
 あなたは、検査の結果を持ち帰った。

 着いた先で一部始終を耳にしたのだろう“リヴァイアサン”は、
 何も言わずあなたに休暇を与え、より過酷なスケジュールの中であなたの話を聞いて、あなたを一日、あなたにとって目を背けたくも拠り所でもあるところに帰して。それから、いつも通りに振る舞った。

SYSTEM :

 あるいは選択を選び直す時間を持たせようとした
      /に立ち直る時間を重んじようとしたのだろうが、定かでない。

SYSTEM :
Overed
 超人も、万能ではない。完璧ではない。
 完璧でないから失敗するし、失敗の代償が高くつくことはある。
 失うこと、間違えること。避けるのは、これがどうにも難しい。
 
 だが失っても、間違えても。困ったことに、次が来る。

SYSTEM :

 あなたにも色々とあった。
 N市と呼称される市のひとつに起きたとあるオーヴァード関係組織の事件が、
 あなたの姉と慕う少女に“危機”を招いたコト。

 同じくN市において、事件解決の為に奔走したわけではないが、
 何処にでもありふれた、日常の落伍者が生まれる事件に触れたコト…。

SYSTEM :
 少なくとも───あなたは三度目の喪失/敗北というものを、経験はしていなかった。

SYSTEM :
 ◇ ◆ ◇

荻野目 旭 :あの。シナリオロイスの“マンティコア”への感情、執着/○劣等感として取得していいですか?

GM :ふむ。

GM :畏まりました。問題はありませんよ。

荻野目 旭 :ありがとうございます! あと、できたら“蝕みの君”にへばりついていた遺品で形がありそうなものを「思い出の一品」としておきたいんですが……

荻野目 旭 :…だめそうです?

GM :………フウム。

GM :強いて言うなら………奇跡的に「ライフルの破片」が残っているのを期待する程度になりますが。

GM :ま、大丈夫ですね。なんとか拾えた、残っていた、そうしてもらってOKです。

荻野目 旭 :ありがとうございます! おとうさんからもらったお守り袋にしまっておこうっと

SYSTEM :
 ◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………それから月日を経たある日のこと。

SYSTEM :
 その男が日本の各支部を訪れることは、実を言うと珍しくはない。
 他国を管轄する支部毎の括りで見た場合、これがマイノリティであるかどうかは定かでないが………。

SYSTEM :
“リヴァイアサン”は、往々にして、エージェントやイリーガルへの依頼に赴く時、相応の事情───一度に複数の人間への要請、ないし支部長同士の会議───などでなければ、割と自ら足を運んでくるたちがある人間だった。
 あなたはそれを、恐らくは良く知っている。

 なにしろあなたの「色々とあったこと」の時には、たいてい、その男は分刻みのスケジュールを縫ってやってきていた。

SYSTEM :
 事前に伺うという連絡があり、
 用件があるというから、あなたのエージェント的側面から見た都合をN市支部長が確認した翌日のこと。

 会議用の一室に、ほぼ定刻通りの時間で彼の姿が見えた。
 噂ではない事実として、霧谷雄吾は分刻みのスケジュールを顔色一つ変えずこなし、
 それを補佐するための秘書が逆に持ち回りでなければ保たないという有様だという。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「お待たせしました。
 御無沙汰しております、旭くん」

SYSTEM :
 コードネームで呼ばなかったのは、本題に入る前の彼なりの友愛だろうか。
 男は激務による疲労をさほども感じさせぬ、平時の様子だった。

荻野目 旭 :いい子に座っていたので、ドアを開く音でぱぱっと立ち上がりますよ。そしてスマイル!

荻野目 旭 :
「お疲れ様です、霧谷さん!
 直接お会いするのはひさびさだあ、うれしいです!」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「はは。そう言って貰えてうれしい限りです。
 私もですよ。最後にN市に来たのは確か───」

SYSTEM :
 最後にお会いしたのは、と。
 彼が伝えた事件は、あるFHエージェントと、日本では珍しすぎない程度に“珍しい”バス事故を発端としたN市での出来事だったか。

 そこより前にあった一件や、些細な調整なども含めれば、彼もN市の会議室の椅子に腰かける機会は片手指では収まらない程度にはある。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「………アレから変わらず元気で良かった。
 林支部長にも会いましたよ。彼も相変わらずの調子でしたね」

荻野目 旭 :
「おかげさまで、つつがなくです。
 “シューラ・ヴァラ”の一件からあとは、それなりに落ち着いてますけどね」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「日本各地の現場ではいつ不測が起きるかも分からない。“落ち着いている”状況を保つのだって、われわれの仕事ですね」

SYSTEM :
 言外の“あなたを含めた支部の努力だ”、という意思表示もそこそこに。

荻野目 旭 :へへへ。そうですよ〜僕の努力なのですよ

荻野目 旭 :なでてくれてもいいんですよ? ね? ね? ほらほら

荻野目 旭 :まるいあたまを向けてここぞとばかりにすりよりますよ

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :ええ。では、私からの努力賞ということで。

SYSTEM :
 ちょっと苦笑いしながらも、あなたがエージェントであるのと同じくらいに、年頃の少年だと知っている男の対応はすぐだった。
 年齢32。若さの境界線をもう越え切って久しいような大人の手だ。

SYSTEM :
 蛇足ながら、それをインターセプトしていたかもしれない気難しい顔の同僚は、つい先日からここを空けていたところだった。

荻野目 旭 :ふふ〜〜〜ん

荻野目 旭 :
アベルサン
鬼のいぬ間に洗濯とはまさにこのことです
まあアベルさんあんまりいい顔しないんですけどね! 自分がうさんくさいからって素直じゃないんですから

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :噂をすれば影とも言いますよ。

荻野目 旭 :きょろきょろ

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :残念ながら、多忙の最中というところですね

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :彼、こういう時にはけっこう突然と現れ、忽然と姿を消す癖があるのですが…

荻野目 旭 :どこかにディメンジョンゲートとか開いてませんよね? よし? よし。

荻野目 旭 :とはいえ切り替えも大事! しばらくあこがれの大人の手を堪能してから、あらためて佇まいを直しますよ。

荻野目 旭 :
「……でも、こうやって僕の日頃の努力を褒めに来てくれただけじゃないですよね?
 僕向きのお仕事、なにかありました?」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「まあ、そうですね。
 あの一件とは違って、今度は私からきみのところに伺いに来ました」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「世間話でもして、夕食の誘いでも………。
 と、行けばよかったのですが」

荻野目 旭 :「お気遣いなく! 貴重なディナータイムは妹さんに使ってさしあげてください」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「はは。ソレも、すっかり知れ渡ってしまいましたね。
 …ではお言葉に甘えて。仕事に区切りが付けば、伊織にはメールのひとつでも送りますよ」

SYSTEM :
 
 当時の───。
 FHの枝葉から外れ、独自の方向に成長を遂げたさる組織の企てに、
 あなたの繋がりが関わっていたことを発端とした事件は、もう終わって久しい。

 パンドラの匣を開ける自覚はあるか、という問いかけに。
 引き下がるわけにはいかないと応じたあなたを「やるからには全力で」と送り出した彼については、当時はあなたの方から訪ねたものだ。

SYSTEM :
 しかし今回は事情が別。

 あなたの側に、この男が尋ねに来た。
 そして彼も、世間話や食事の誘いといった「ふつう」のために、各地を渡り歩いているわけでもなかった。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「はい。残念というべきか、何時も通りというべきか。そうではありません。
 するべきことがあって、きみのところに来ました」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「頼みたい仕事というのは、他でもありません。
 しばらく、千葉県K市在住の、この少女について護衛をして欲しいのです」

SYSTEM :
 ………渡された写真の年頃は、おそらく高校生ごろ。
 あなたよりは年齢を重ね、あなたの同僚よりは若い。成人と未成年の境目ごろ。
 名には、池田咲楽と記されていた。 

荻野目 旭 :「ああ、了解です! いつもの───」

荻野目 旭 :「──じゃない。高校生ぐらいの女の子ですね?」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「ええ。華の高校生ってやつです」

SYSTEM :
 市同士の距離は、そこまで遠いということではない。
 空いているエージェントがあなたしかいないのであれば、この仕事は不自然ではなかった。

SYSTEM :
 なかったが、問題は彼女の年齢。17とある。つまり、高校生だ。
 仮にあなたの持つオーヴァードとしての能力を恃みにするとしても、護衛/身辺警護というからには、その距離も遠くはしていられない。

SYSTEM :
 要は、

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :「すみません。きみには、少し背伸びを強いることになりそうです」

荻野目 旭 :写真を確認。霧谷さんの顔を確認。

荻野目 旭 :……つまり!

荻野目 旭 :「華のコウコウセイですね! やったあっ」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :「そういうことです。花形ですね」

SYSTEM :
 流石に“ずっと”ではないですけどね、とひとつ付け加えることはしなかった。
 さすがのリヴァイアサンも、脈絡なく頼みをしに来たわけではないから、その辺りの事情については順を追って説明するつもりなのだろうし、表向きは燥いだ彼に水を差す気はなかったのだろう。

荻野目 旭 :「楽しみです、コウコウセイ! この感じとこの制服……前みたいな『ごきげんよう』学校じゃなさそうなのもいいですねっ」

荻野目 旭 :「お仕事がてら青春を満喫させてもらっちゃおうかな! ──って思うんですけど」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :「はい」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「彼女自身は見たように、ふつうの高校生。
 学校も変わるところはありませんし、
 彼女の身の回りに変化があった様子は“まだ”ありません」

SYSTEM :
 ………つまり問題があるのはそこではないけれど、その間接的要因を以て、あなたに恃む必要性が出来たということだ。

荻野目 旭 :「あらら」

荻野目 旭 :「彼女自身が問題というよりも、それに関連するなにかが……ってことですか? 糸口がそのひとしかないとか?」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「何方かと言えば前者ですね。順を追って説明します」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「………先日、何らかのデータを輸送する“ディアボロス”を確保した、と。
 日本支部に登録されているUGNイリーガルから報告がありました」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「そしてそのメモリに登録されていたデータというのが………K市某高校の彼女でした」

SYSTEM :
 曰くの事の発端は“ソレ”だという。
 この時点では、詳細は不明だが、少なくともFHの何某にとって『用がある』らしいことだけは分かる程度。

荻野目 旭 :「わぁ」

荻野目 旭 :
「よくない名前ですね、“ディアボロス”……。
 本人はあんなですけど、嗅覚はとんでもないじゃないですか」

荻野目 旭 :「僕、ああいうタイプ好きですけど……関わりたくはないんですよねえ」

荻野目 旭 :厄介だし。だいたい、持ってるのは爆弾だし。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「まったくです。
 彼自体はいつも、どういう運の巡り合わせなのか失敗続きですが………。
 彼がやって来るのは、大きな出来事の前兆だったことが殆どでした」

SYSTEM :
 要は、彼女に関する話も“そう”だ。
 軽い説明として、ディアボロスが偶然関わったこと、ひとつだけ気付いた時には逃がしていたという輸送車両があったこと等、少なく見積もっても『先日』というには少し前の出来事についての話があった。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「この事態になるにあたって、私の伝手に恃んで、彼女のことを軽く調査しました」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「結論から。彼女は、彼女の家に伝わる何らかのEXレネゲイドを肌身離さず持ち歩いており………。
     ・・
 これが、遺産である可能性を持っていました」

SYSTEM :
 

荻野目 旭 :「………遺産!」

SYSTEM :
 遺産について、敢えて説明するならば。
 EXレネゲイドの極めて強力なもの───と、力の表面だけを見て語ればそうなる。

SYSTEM :
 実際はもっと別だ。
 それ自体が意思を持ち、長きにわたる信仰を積み重ね。
 遺産側が択んだ持ち主に絶大な力を与える代わりに、必ずや代償を伴う契約を交わす。

SYSTEM :
 ………K市の池田咲楽はオーヴァードではない。その兆候も、ない。

 ましてや「持ち歩いている」彼女に変調があったわけでもないが。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
      ・・
「───なにが理由なのか、と聞かれたならば。
 恐らくはコレでしょう」

荻野目 旭 :
 ……想像以上にスゴい話かも。
 とりあえず背筋をしゃんとして、耳を傾けます。

荻野目 旭 :いつもちゃんと気にしてますけどね! 3年前から! 常在戦場、常在戦場!

SYSTEM :
 あなたの襟を正した様子に、彼が軽く頷く。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「少なくとも、名高いものは日本支部ではなく、本部の“遺産管理局”が手をかけるものです。

 実際に害を出さず、用途も分からず、ただの“お守り”以上ではないとされていたことも、一先ずは分かっています」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「もちろんムリヤリに引き剥がす術もありますが、それは先ず、望ましいことではありません」

SYSTEM : 
 彼女や彼女の周囲に今は危害ないし特異性のある出来事を起こしていないが、それは“今”そうなだけで………。
 これを引き剥がした場合、このEXレネゲイドの傾向によっては、何らかの悪影響を及ぼす可能性がある。

SYSTEM :
 理屈そのものに嘘はないだろうし、あなたが気負うほど『巨きな』ものでもないから…でもあるそうだが。最も重要な部分はそこではないだろう。
                 カノジョノニチジョウヲカエテシマウコトダカラ
 悪影響を及ぼすということの結果が何を意味するのかを考えて、
 UGNはこれに対する実力行使的な手段を後回しにしていた。

荻野目 旭 :
 ……う〜ん。
 ホントに、“ディアボロス”が見つけて来ただけあって大ごとだ。
 一番やっかいなのが、その遺産とそのひとが適合しているのか、いないのか──もう遺産が彼女を選んでいるのかすらわからないこと。
 あとなにより、正体が調べられもしないってこと。

荻野目 旭 :
 ・・・ ・・・・・・・・・
 遺産は、人の生き方を歪める。
 かかわった人や、遺物管理局上がりの人から、なんどか聞いたことがある話だ。

荻野目 旭 :
 あまりに強力すぎるから、うっかりそいつが彼女を選んでしまったあとのことを、
    ・・・・・・・・・・・
 僕らはたかがオーヴァード覚醒以上に保障してあげられなくなる。

荻野目 旭 :「……だいたい事情はわかりました。僕がやるのは経過観察とか、平たく言えば監視ってワケですね」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「はい。
 遺産と思わしきEXレネゲイド体について、あるいはそうした結論のもとに動くべき可能性もありますが………」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「それをするとしても………我々の利だけでやるわけにはいきません」

SYSTEM :
 それは今ではなかった。
 
 霧谷雄吾は彼女を護衛対象と指したが、そこには監視も含まれているのだろう。
 穏便にこちら側の世界を切り離すにせよ、そうではない選択肢を取るにせよ。
 判明した事実に対して必要なものは、時間だったが。

 その「時間」のための問題がいくつかあったわけだ。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「この“ディアボロス”確保に前後して、幾つかのFHエージェントおよび、セルが日本に渡って来ています。
 ………うちひとつ、最も遠くから言えば、北欧のストックホルム支部から長いこと追われて来たものもいると聞いています」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「そして、そのエージェントおよび、エージェントを保有するセルが、
 千葉県K市の池田咲楽さんと、彼女が持っている“遺産”の所在を把握してしまったとあらば………。
 
 いつ、どこで、どのような出来事が起きてもおかしくない」

荻野目 旭 :「……ストックホルム支部」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :「はい。………」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :「念のため言っておきますが、“だから”、というわけではありませんよ」

荻野目 旭 :「……だいじょうぶです」

荻野目 旭 :「僕も、3年前とはちょっとは違うつもりなんですよ? まあ人によりますけど、仕事に穴は開けませんから」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :「その意気です。旭くん」

SYSTEM :
 あなたの三年前の、ただの検査以上ではないはずの旅行から帰って来た時の顔を知っている男は、多くを聞くことはしなかった。

SYSTEM :
 いつ、どこで、どのような形で混乱が引き起こされるかも定かではない。
 それを未然に防いでほしい………そうした言葉。

 あなた自身のオーヴァードとしての在り方と向き合い方を存じている彼にとっては、雪辱や“ケリ”のつもりで向けた“だから”ではないことも、また明白であった。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「きみに頼みたい話というのは、そういうことです。彼女とその周りに、昨日と同じ今日を送って貰うために………。
 
 いつか択ぶ権利を、彼女が手に取る可能性のために。
 引き受けてもらえますか、“ナイトホーク”」

SYSTEM :
 それは、あなたの支えとなってくれた霧谷雄吾である以上に、
 世の大海原の止まない荒波が、船や島に襲い掛かるよりも早く、コレを鎮めるために尽力してきた“リヴァイアサン”としての頼みだった。
 彼は、そういう男だ。

荻野目 旭 :
 はい、と大きく頷いた。

 僕は3年前から、結局のところ変わったわけじゃない。
 結局あの怪物みたいなことはできっこないし、耳にあの言葉だってこびりついている。
 だけど、ちょっとは前よりもましになったはずだ。
 おねえさんの体を抱きとめたときの達成感を、ちゃんと僕は覚えている。

荻野目 旭 :
「もちろんです、“リヴァイアサン”。
 まことのみんなのさいわいのために、僕のからだをおつかい下さい」

荻野目 旭 :
 僕にできるのは、たいしたことじゃない。
 できるかぎり、『その時』が、遅く──そして、かなうなら、できる限り穏やかに迎えられるように全力をつくす。
 僕が3年前から磨いてきたのは、そういう戦い方だ。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「───ありがとう。確かに、恃みましたよ」

SYSTEM :
 年齢にして30代前半の男が、まるで青年のような純粋さで微笑んだ。
 目線を合わせ、ひとりのエージェントとして───また同時に、この世界に望まず足を踏み入れた少年として、あなたに触れるその男は、きっとこの世界に来た者の誰に対しても、こうした対応で居るのだろう。 

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「概ねの手配は済んでいます。その段取りも。
 少なくとも“ディアボロス”の件で日本に渡航したFHの動向が沈静化するまでは、あなたは花の高校生ですね」

荻野目 旭 :
「了解です!
 潜入中は『いつも通り』みんなと仲良くなろうと思うんですが──」

荻野目 旭 :「そういう感じでいいですよね?」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「何時も通り、ですね。
 こちらも塩梅をきみに委ねます」

SYSTEM :
 それは釘を刺す必要性もないという、あなたがやって来たことに対する彼の判断から来る決定速度だ。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
.   N 市 
「きみ自身の日常を守る役は。
         モンテ・クリスト
 きみが留守の間、“巌窟王”に務めて貰います。バディ役として赴いて貰うつもりでしたが………」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「当人から、いつも以上に難色を示されまして」

荻野目 旭 :「えぇ〜」

SYSTEM :
 元より彼と来たら”にこり”ともする男ではない。
 笑わない男ではないが、それはどちらかというと侵蝕率の増大に伴う衝動的なもの、躁的なものであることが殆どだ。

SYSTEM :
 これも余談だが、なぜかあなたの頭には、霧谷のある程度察しを付けてはいるような顔を見るなり、脳裏に…。

“巌窟王” :
“その多忙の中で、適材適所という言葉について辞書を引く時間はなかったのか?”

SYSTEM :
 ………そんな不愛想な。
 ややもするといつもに増して不機嫌そうな男の声が響いたかもしれない。

 もはや聞くまでもないが、恐らく似たようなことを言ったのだろう。

荻野目 旭 :「えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

荻野目 旭 :「ぜったいおもしろいと思うんですけど アベルせんせい」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :「面倒見は良い方ですからね、アベルくん」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「………しかし断ったというなら仕方ありません。実際、彼は彼で任せておきたい仕事もありました。

 そういうところで、バディは他の方が必要になったのですが───」

荻野目 旭 :「……なったのですが?」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「件の“ディアボロス”捕縛に関与したイリーガルと連絡を付けるつもりが、どうも別の指示系統から先に相談および依頼を受けていたようで。

 ………序でに言うならば、その人物を含め、幾人かの連絡予定にあった、渡航予定のエージェントが、現在連絡の取れる状態ではないようなのです」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「もちろん、旭くん。きみが彼方に着いて任務を開始する頃には、アテを見繕いますが。

 到着直ぐに何事かある可能性も捨てがたい。じゅうぶん、気を付けて下さい」

荻野目 旭 :「わかりました。う〜ん、なんだか先の思いやられる状況ですねえ」

荻野目 旭 :
「別件に巻き込まれてるなら、それはそれでいいんですけど……
 僕、単品で送り込まれるのはちょっと不安だなあ。渡航予定のエージェントさんとか件のイリーガルさんとか、情報ありますか?」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「渡航予定のエージェントについては、元々都合をつける予定だった人物の殆どが何事かあったようです。

 ………ですが件のイリーガルについてならば、その任務込みで情報があります」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
       レムナント
「コードネーム“残骸”。
 ジャームの発生および活動阻止のため、日本各地を転々としているイリーガルです。

 ………彼女は日本に移動予定だったあるFHセルを追いかけるチームの編成段階から要請を受けていたようですが、現在は消息を絶っています」

荻野目 旭 :「なるほどぉ」

荻野目 旭 :「……うーん、了解です。どっちにせよ、現状は僕ができる範囲でうまくやってればいいみたいですしね」

荻野目 旭 :「またよそのエージェントが来るようなら、その時は現地のイリーガルを探すなり、その“残骸”さんを探すなりすればよさそうです」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「はい。とはいえ私は、きみのやり方について知らない身でもありません。
 空いた椅子もありますから、連絡の取れた者の中から、到着直後に何が起きても呼応出来る方と掛け合うつもりです」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「…ふむ。他に聞いておきたいことはありますか?」

荻野目 旭 :「ん〜、と」

荻野目 旭 :
     イサン
「彼女の『お守り』って、わりと普通の? こういうやつですかね」自分のお守りをひょいと取り出して。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「形状としては首飾りや勾玉のような分類のようですね。目立つようなものではないはずですが…」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「彼女、神社の跡取り娘のようですから。
 ご両親から、文字通り“厄除け”扱いでこれを手渡されているようです。いつもではありませんが、多くの場合は持ち歩くなり、首にかけるなりしてるとか」

荻野目 旭 :「う〜ん、霊験あらたかな土着の遺産って感じがぷんぷんします」

荻野目 旭 :
「わかりました。
 うっかり触って拒否反応でも出たらコトなので、なるだけ触らないでおきますね」

荻野目 旭 :
「件の『ストックホルム支部から追われてるやつ』っていうのも気になるんですけど。
 そっちは潜入しながら追々調べる方がよさそうですね。
 向こうも情報がある程度渡ってるなら、網を張ってる頃かも知れません」

荻野目 旭 :
            と り
 異性だし、夜間の監視は幻媒鳥を付けるほうがよさそうだ。
《ハンドリング》最大の利点は、こういう監視任務の間に自分が睡眠時間をきっちり確保できること。
 僕の場合使ってるのは自分から生み出したものだから、万が一吹っ飛ばされても罪悪感ないしね。エコだ、エコ。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「そちらについては………UGNのデータベースから検索可能なはずです。
 逆に言うと、UGNのデータベース以上の情報は、調べた時には出ませんでしたが」

SYSTEM :
..    ネスト
 曰く『魔獣の巣』なる名前を持つそのセルについて、霧谷は軽く概要だけに触れた。

 この隠密とは無縁ながらに神出鬼没なこのセルが、千葉県K市に所在を表したという情報は『今のところは』ないらしい。

荻野目 旭 :
  ネスト
「『魔獣の巣』……いかにもな名前」

荻野目 旭 :「了解です。気をつけておきます」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「ええ。なにかあれば、千葉県K市のUGN支部と連携を。
 私の名や伝手が必要であれば、現場の判断で構いません。いつでも呼んでください」

SYSTEM :
 彼のスケジュール表は時間にルーズな人間が見たら恐怖を通り越して即死する領域だが、アクシデントに見舞われたことなど一つや二つではない。

 でも。それで崩れたことがないから、男は“リヴァイアサン”なのだ。
 呼ぶ機会があり、実際に呼んだら、本当にやって来るかも知れない。

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「………ああ、そうだ。アベルくんの代わりを務めるエージェントについては………。
 元々彼の席は教員や職員の予定でしたから、アタリを付けるとして、概ねきみの年上です」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「概ね、先生役ですね。
 其方とも、到着次第、何かあればよく話し合って下さい」

荻野目 旭 :「了解です! どんな人か楽しみですねっ」

“リヴァイアサン”霧谷雄吾 :
「ええ。仲良くしてあげて下さい。もちろん、着いた先の学生さんたちとも。
 一時のものでも、一時と割り切るには、少しもったいないですから」

SYSTEM :
 聞くこと/伝えることについて概ねの責任と要求を相互に果たし終えたとみると、霧谷はあなたに“よろしくお願いします”と会釈し。

 かるい世間話の続きの後に、席を立った。もとより多忙の人である。アレで噂に聞く「1日1回必ず行う趣味の時間」をどうやって確保しているのかは永遠の謎だ。

SYSTEM :
 ………こうして。
 “リヴァイアサン”はあなたに、そんなかたちの任務を託した。
 人知れず、一時だけの付き合いになる少女を、少女の知らぬ理由でやってくる災難から護る。そう言う任務だ。

SYSTEM :
 いつも通りの延長線だ。
 だがそのいつも通りを続けて来たから、UGNは日常を護る最後の砦として、確かに存在する。たとえ、世界がどんな形で変貌しようとしても。

SYSTEM :
 ………あなたは三年前の過去で、こっぴどくしてやられたが。
 こうして、現在の一歩先にあるものを、少しでも良いものにしようとして来た。

 恐らくはコレだって、その一つ。

SYSTEM :
 ───後日、千葉県K市の某高校。
 ちょうどソレからひと月ほどの時間を過ごす学舎で、あなたがどんなファーストコンタクトを取ったのかは想像にお任せするが。

 この、世渡り上手な少年のことだ。本当に『仲良く』出来たのだろう。

荻野目 旭 :
「もちろん! めいっぱい楽しみますよ。
 最後には全部消しちゃいますけど、その間楽しんじゃいけない決まりなんてありませんからね」

荻野目 旭 :
 ……おとうさんとおかあさんに、また『行ってきます』を言わないとな。
 兄さんにも。真さん──おねえさんは出払っているから、とりあえずメールだけ。

荻野目 旭 :
 そういう任務はよく回ってくる。
 僕が別の苗字を名乗って、別のひとの子どもみたいに振舞って、別のひとにすり寄って情報を掠め取るチルドレンなことを、お父さんとお母さんはいつも微妙な顔をして見守っている。

荻野目 旭 :
 それが申し訳ないから、実はあんまり話したくないんだけど。
 霧谷さんにも約束しちゃったので仕方ない。
『行くときと帰るときは連絡する』。
 それが僕をずっと隠して守ってくれた父が、僕をUGNに差し出した時におとなたちへ約束させた、ゆいいつの契約だった。

荻野目 旭 :
 今回もうまくやらなきゃな。
 そうやって思いすぎたのが3年前だってわかってはいるけど、いつもそう思う。

荻野目 旭 :
 ストックホルム支部って名前と、そこから出てくる『魔獣』って不吉な呼び名に、思い出すのは白い姿。

 僕なんかよりよっぽどかいぶつで、
 僕なんかよりよっぽど綺麗で、
 おぞましい、
 あの姿が脳にちらつくのをかき消すのにも……もう慣れた。

 うまいことやるこまっしゃくれた旭くんには、そういうのいらないからだ。

SYSTEM :
 ◇ ◆ ◇


【シーン5:宿命】

ある男 :
 ───ひとつの頂に立った時。

ある男 :
 自分が空っぽであるのに気付いた。

ある男 :
 蕾のごとし童の頃。
 元服し花を咲かした後のこと。
 実り多き練磨の齢。
 己を見つめる長寿の参賀。

ある男 :
 はじまりを分かち合うべき者と分かち合えなかったその時から、
 己は全てを擲って、ただひとつに生涯を捧げて来た。
 一念を以て岩を穿ち、一心を乱すことなく。一所に魂を掲げた。 
 
 それそのものを恥じることはない。通り過ぎた道だ。
 出会いと別れを繰り返し、そうして己はやがて逝くのだろう。

ある男 :
 なれど、振り返るべきことはあった。
 否。
 この小人の身なれど、祖なる父母から何かを受け継いできた身。
 その己が生を振り返る時。ふとした拍子に気がついた。

ある男 :
 あの水面の向こうを只見つめた己に、
 ふつふつと沸いて来る想いがあった。

 波ひとつない水面の濁りは、己の心の濁りであった。
 それを見つめ、そして思う時。
 先の言の葉を翻さねばならぬ、己の中の想いに気が付く。

─── :

 明鏡の如き水面。波風ひとつなかった水面。
 ぽつり、と波紋が立った。

─── :
 ▇▇は、▇▇に▇▇のは。
 ただ。何も▇▇▇に死ぬのは。

─── :
   ・・
 ───イヤだ。

─── :
 
       ………然る小人の、過ちの始まりであった。

SYSTEM :
【シーン5:宿命】

 登場PC:三廻部颯、荻野目旭
 登場侵蝕:なし(特殊)

SYSTEM :
Tips-池田咲楽

 カヴァー/ワークス:高校生/高校生
 性別:女性 年齢:17 侵蝕率:0%
 シンドローム:なし

 三廻部 颯と同じ千葉県K市の某高校に通う高校生で、彼女とは幼馴染。
 古式ゆかしい家系の生まれで、どこぞの神社の跡取り娘だという。

 本人は良く言えば意志が強く流されにくい、
 悪く言うと傍若無人で取っつきにくい性格。
 クラス内では少し浮き気味で、はっきりと人付き合いの好悪が別れる。

SYSTEM :
 201X-09-XX
  都内 東京国際空港より

SYSTEM :

 三廻部颯は高校生である。
 エンジニアの父と専業主婦の母を両親に持ち、
 17年の人生を多少の起伏はあれど健やかに過ごしてきた。

 本人に特に変わったことがあるのかと言われたならば、
 習い事がちょっと女子高生にしてはアグレッシブなことくらい。
 他になにをば言うでもない。ありふれた女の子だった。

SYSTEM :
 ………そのためありふれた学生時代のイベントは、当然のように通過してきている。
 あるいは、これから通過するところである。

 一月以上前、中学の頃から少し早く終わるようになった夏休み明け。
 その時はもちきりになった転校生の話題もすっかり日常に溶け込んだころ。
 一定数の高校2年生にとって、だいたい残暑がしぶとく生き残るシーズンの前後は特別な意味を持っていた。

SYSTEM :
 それを曰く、修学旅行という。
 前半二文字は学生諸君にとって特に関係はないと評判のアレだ。

SYSTEM :
 空港に早くついたあなたが、それをどの程度重きを置いているかは定かでないが。
 少なくとも、隣にいる背丈のそう変わらない方の対応は決まっている。

池田咲楽 :
「東京、熱っつ…」

 あなたの幼馴染だ。

SYSTEM :
 このぼやいた、華の10代後半の名前は池田咲楽という。
 神社の跡取り娘で、歯に衣着せず、わりと口数は少ないが感情の動きが烈しく。基本的にちょっと”浮いている”高校生。

 そんなでも、あなたの朝の呼び出しに二言もなく付き合って、ちょっと眠い目擦りながらついて来てくれる程度には、付き合いのある友達であった。

池田咲楽 :
「早く来過ぎたじゃん、やっぱり。
 颯、沖縄そんなスキだった?」

三廻部 颯 :
 サマーシーズン! ……は過ぎ去った。

 友達が貸してくれた漫画のおじさんみたいにサングラスをかけて、
 アロハシャツを着てとはいかないのが現実だ。
 
 さてさて、今日は修学旅行の初日です。
 班を決めたり、計画を立てたり、なんだか色々とやることがいっぱいだったけれど。
 意外とあっという間に来てしまったものである。

「だって──行ったことないし!」

 ウキウキな私の横でぼやく友達に、大声で返事を飛ばした。
 沖縄、というより地方に行ったことがない。
 大抵のものはちょっと足を伸ばして東京に行けばなんとかなるのが都心近くの関東の事情だ。

三廻部 颯 :
「調理実習で作ってたお麩のチャンプルとかすごくおいしかったし!
 サーターアンダーギーなんてお土産フェアでしか食べたことないし!」

「現地で食べたらもっと美味しいかも!」

三廻部 颯 :
「って色々考えてたら早起きしちゃったの。
 5時だよ5時、新記録だよ」

池田咲楽 :
「ソウデスネ」

 その新記録の被害者になんか言うことないの?
 と言いたげな半目が向けられている

三廻部 颯 :
「えーいーじゃーん。
 早起きはナントカの徳だって現国の先生も言ってたよ」

三廻部 颯 :
「なんだっけ?」

池田咲楽 :
「三文。
 口にしてる本人も休みの日にはだらけたいって言ってるよ、きっと」

池田咲楽 :
「………まあ要はキブンの問題だし。颯の場合、夜更かししすぎて一睡もしませんでしたって言わなかっただけ幸いなんじゃない」

三廻部 颯 :
「またまたー。
 ビッグイベントの時に私が遅刻したことがあった?」

 あった。

池田咲楽 :
「ほー。そうですかそうですか。
 こないだ目覚ましで起きられなくて泣きついて『バス行っちゃうよ』って言っていたのが誰か忘れたらしいね」

三廻部 颯 :
「あれ……あれはぁ!
 あれは違うの!! だってぇ、だって!
 最終回だったんだもん! リアルタイムで見たいもん!」

三廻部 颯 :
「内容覚えるために録画見直してたら……あう」

池田咲楽 :
「目ぇ悪くするよ。
 …というか夏休みの時にもなんか最終回迎えましたとか言ってなかった? 何のアニメ?」

SYSTEM :
 なおその本人は『うちテレビの暴君いるから』の世知辛い一言故のことか、この辺には疎かったりする。

三廻部 颯 :
「ど○ろ……」

池田咲楽 :「あっマズい、いっぺんたりとも分かんない上に大して流行りでもなさそうな名前来た」

池田咲楽 :兄とか弟とかいる?

三廻部 颯 :
「そんなことないよぅ!
 ……漫研のあの子しか観てなかったけど……」

三廻部 颯 :
「あれ、言ってなかったっけ。
 弟ならいるよ。今小6の……」

池田咲楽 :
「家族構成の方だよねこれ
 うちの両親が身内付き合いは蔑ろにするなって言うから覚えてるよ」

 いま話飛んだ自覚はあるかな颯。

池田咲楽 :
「あと漫研のあいつを世間一般基準にしたげないで」

三廻部 颯 :
「なんてひどいことを!!」

池田咲楽 :
「むかし全部同じロボじゃんって言ったら、親戚の訃報に居合わせられなかった時みたいな無念の顔して去って行ったのが忘れられなくて」

三廻部 颯 :
「……」

三廻部 颯 :
「それはお寺で神社のお参り方されるのと同じくらい嫌だってことなんだよ……!!」

池田咲楽 :
「ウソだぁ、そんな地雷だったのアレ…!」

三廻部 颯 :
「核地雷だよ核地雷。
 ふんじゃったねえ……!!」

SYSTEM :
 ………などと、漫研の電助くんの『勇者●●とボト●ズには天地の差があってぇ…』『でもこれを指摘する早口くんにはなりたくなくてェ…』みたいな血の涙を弁解しながらも、辺りを見渡す。

 あなたたちが早い方なのは事実で、まだクラスメイトの数は少ない。キャリーバッグを手持ち無沙汰に転がしていたり、しおり開いて確認している几帳面な子がいたり、似たような形で来たのか既に眠たげに腰を下ろしてうたた寝しているのがいたりする。

SYSTEM :
 …そう。
 早い方ということはだ、それより早く来ているのもいるわけで。
 あなたたちの姿を見かけてか、クラスメイトの一人が声をかけて来た。

生徒D :
「おや。おはよっす、颯ちゃん。咲楽ちゃん」

池田咲楽 :
「ああ、おはよう。山田さん」

SYSTEM :
 そして池田咲楽について誤解を招く前にひとつ訂正しておくと、彼女の態度は誰に対しても颯と同じものではない。

 あなたへのそれは割と気を許しているからであって、ナチュラルに壁を作るタイプの人見知りだ。
 その曰く“山田さん”というクラスメイトは、間延びした声で『どっちか寝坊助じゃなかったっすか』とか冗談交じりで聞いて来る程度には、それを気にしていなかったけど。

SYSTEM :

三廻部 颯 :
「おはよー、山ちゃん!
 今日は寝坊しなかったよ私!」

 つい先ほど"ビッグイベントで寝坊したことはない"とかほざいていたツラである。

三廻部 颯 :
「むしろ私が咲楽を起こしてあげたくらいにね……!!!!!!!!!!」

 前代未聞の出来事だと言わんばかりの気迫がそこにあった。

生徒D :
「真実はいつもひとつ。どうなんすか咲楽ちゃん」

池田咲楽 :
「事実だけど寝坊助は普段こっち」

 幼馴染は容易くあなたの気迫をバックスタブした。

荻野目 旭 :じゃあ、このタイミングで僕も登場しちゃいたいです! 善は急げですよね

GM :了解しました。ああそうそう…登場侵蝕についてはOP中なので「事前に備えたければ振る」のスタンスは継続です。伝え損ねましたね。

GM :ともあれ、登場どうぞ!

荻野目 旭 :もちろん…振りません! ドカ食いホークの旭くんですからね

荻野目 旭 :「おはようございます! ……って、あれ? 一番乗りのつもりで来たんだけどなあ」

荻野目 旭 :キャリーバッグをころころ転がして登場します。

SYSTEM :
 噂をすれば影とは言うが、
 噂をするまでもなく影。

 ここ一ヶ月は何事もなく、件の遺産を事前の伝達通り持ち歩いている姿をそれなり以上に確認した“だけ”の池田咲楽や、そのクラスメイトの日常に変調があったこともなく。

 一足飛ばしどころか三段飛ばしの高校生活のオイシイトコに、旭は差し掛かっていた。

池田咲楽 :
「ン。おはよう。荻野目くん」

三廻部 颯 :
「おはよ! 旭くん!
 なんと私たちが一番乗りです!!」

 ──誰に対しても(空虚な)主張は変えない17歳であった。

荻野目 旭 :おお〜! ぱちぱちぱち

SYSTEM :この主張をした颯の後ろで“山田さん”が、ちょうど颯の角度から見ると鬼の角みたく見えるように人差し指を立てていた。

生徒D :なんと一番乗りはウチでした

三廻部 颯 :そういうことにしといてよ〜!!

荻野目 旭 :なるほどなあ

荻野目 旭 :「も〜、嘘はいけませんよ? 嘘をつくとですねえ」

荻野目 旭 :「なんと……現地のお天気がわるく!」

荻野目 旭 :「なるかもしれないし、ならないかもしれません」

三廻部 颯 :
「そんな……!!
 で、でも……わたし……早起きしたのに……5時……ごじ、ゴジ……」

池田咲楽 :「…それはもう無関係じゃん?」

池田咲楽 :
「あーあ、完全に袋小路に入っちゃった。
 …いつか変な詐欺とか引っ掛かりそうだなあ」

SYSTEM :
 などとぼやく彼女の首には、例年の高校生活の時も変わらない首飾りがあった。
 話の通りの勾玉。

 颯にとっても見覚えがあり、旭にとってはついこの間から覚えのある。曰く、お守りだとか。

荻野目 旭 :(今日も『お守り』は異常なし……と)

生徒D :
「それ、修学旅行の時も持って行くんすか?」

三廻部 颯 :
「無くしたら怒られない? 無くさないか」

池田咲楽 :
「無くさん無くさん。
 私の両親か颯は」

池田咲楽 :
「アレだよ。先祖代々ってやつ。
 古くさくって好きじゃあないけど」

荻野目 旭 :「先祖代々……! 池田さんのおうち、たしか神社さんなんでしたよね?」

荻野目 旭 :「あれですか? うーん、厄落としみたいな」

池田咲楽 :
「そうだけど。
 パッとした御利益あるトコじゃあないしさ」

池田咲楽 :
「そんなんだから、娘が跡継いでくれないと困るんじゃないの?」

三廻部 颯 :
「立派なとこなのに」

池田咲楽 :
「外面だけだよ。
 ウチの親の近所付き合い知っとるでしょうが」

三廻部 颯 :
「それでもだよそれでも!
 今度みんなで行けばわかってくれるかも」

池田咲楽 :
「やだよウチの親、男の方は口下手なんだから」

SYSTEM :
 実際のところは当人が言うほどではないが、口ぶりは反発というより割り切りの方が強い形だ。

 颯の知る限り、池田咲楽はわりあい達観してものを見る性質だった。良く言えば冷静で、悪く言うと引き籠り気質である。
 跡取り娘の立ち位置に反発するような節はなかった。

男の声 :

「やめとけやめとけ転校生!
 なんだかんだ言って、そいつママっ子なんだからよ」

SYSTEM :
 そうかと思えば、囃し立てながら入って来る男がひとり。

 同じクラスの生徒だったのは覚えている。後はつるんでいるグループには顔が利きがちなことと、それから。

生徒A :
「いつもの面じゃねえか。
 颯におんぶにだっこかい」

SYSTEM :
 それから。
 この赤都上樹(あかじ・かみき)とか言ったのは、よく護衛対象/池田咲楽に突っかかる男だったことも、特に必要もない割引情報くらいの重要度で覚えている。

 顔の利く男ということで、既に何人かのツレもいるようだ。

荻野目 旭 :「あ、赤都くん! おはようございますっ」

生徒A :
「おはよう。てか早ェな。
 なんつったか、親の事情? 転校してすぐ修学旅行って逆にレアだがどんなモンなの?」

池田咲楽 :
 一方の咲楽は軽く息ついてそのまま無反応。

 あなたたち二人の知っている限り、彼女のこの男への対応は基本的にコレだ。
 基本、苦手な相手は噛みつくのではなく避ける方らしい。

荻野目 旭 :(うーん、いつもどおり。いじめっこが気になる子にやるやつしてますね)

三廻部 颯 :
「こら!かみき君!またそんなこと言って!
 パパっ子かもしれないでしょ! それに私はママもパパも大好きだよ!」

 そして、いつも……やいのやいのと噛み付くのは颯の方だ。
 それはそれとして、転校して修学旅行というのは確かに珍しい。
 がみがみ言いながらも視線がちょっとだけ……ちょっと……ちょっとです、ちょっとだけ旭くんに向く。

荻野目 旭 :「はい! せっかく行事前の転校ですから、早めに来てみんなとおしゃべりしていたいなって思いまして」

荻野目 旭 :「お父さんもひどいんだよ? 前の学校だって課外研修前だったのに、突然転校だなんて」

三廻部 颯 :
「……ひえ、災難」

SYSTEM :
 通称カミキくんの反応は二極である。

生徒A :
「要はキブンの問題ってか。嫌いじゃねえよ。
 つーか文句の一つも言っとけって」

生徒A :
「………後お前のことじゃねえ上にそれどっちも変わんねえじゃねえか。
 パパママの跡継ぎで不貞腐れてますってポーズ取ってるコイツが悪ィんだ───」

生徒A :
「それともなんだオイ、デキてたか?
 囲い込みか?」

SYSTEM :
 ………それを“好きな子にやるちょっかい”と受け取るのか、本当に“なにか気に入らない”と受け取るのかは、人に依るだろう。

 ただ、旭の“竹馬の友”ありきなのか知らないが、男は転校事情を聞いてからは、そいつに性質の悪い茶々を入れることはなかったことも加えておく。

三廻部 颯 : 
 その間、颯はぎゃあぎゃあと抗議していた。

荻野目 旭 :(根はいいコなんですよね。ちょっと池田さんには当たり強いんだけど)

荻野目 旭 :と、年上にするものでもない感想をいだきつつ。

荻野目 旭 :「まーままま。せっかく修学旅行なんですし、今日ぐらいは言いっこなしでいいじゃないですかあ」

三廻部 颯 :
「……」

三廻部 颯 :
「それもそっか!」
 能天気であった。

生徒A :
            ハナ
「そうは言うがな転校生。最初からクラスにいて馴染もうともしねえ陰の者だぞコイツ。
 こっちが馴染ませてやってんだ、ありがたく思ってほしいね」

SYSTEM :
 どこ吹く風の上樹に、終始無反応の咲楽。少なくとも本心でそれを言っているわけではない前者の言葉に、

池田咲楽 :
「………そうそう。こんな時まで暇だね。
 鏡見て喋るの、そろそろ飽きないの?」

生徒A :
「───ンだと、テメ、」

SYSTEM :
 後者。
 咲楽が「きみ」呼ばわりをする時は、名前も呼びたくない相手の時が殆どなのを颯は知っている。
 こっちはこっちで、何事かあって“好きではない”らしい。

 ………沸点の低い方らしい同年代が、一歩、ずん、と踏み込もうとした時。

生徒B :
「………よしなカミキ。
 先生来るよ」

SYSTEM :
 さっきからずっと投げやりにあっち向いていた取り巻きの一人の声で、上樹と呼ばれた少年の動きが止まった。

SYSTEM :
 チ、と舌打ち一つして。
 旭への「じゃあ後でな転校生」という捨て台詞と共に、彼は踵を返す。

生徒B :
「いつも悪いね。
 今日は特に機嫌悪いらしいから、適当に忘れてやってくれる?」

荻野目 旭 :「はい、またあとで!」手を振って見送り。

三廻部 颯 :「べー、だ! ……あ」

荻野目 旭 :……ちょっと待ってから、生徒Bくんを見る。

荻野目 旭 :あっ、お名前わかりますか? 林くんとかですか?

SYSTEM :
 沖川才人で、おきがわ・さいとと読みます。
 重要ではないので「サイトくん」で十分です。

荻野目 旭 :はーい

荻野目 旭 :「おはようございます、サイトくん。……赤都くん、朝には弱いタイプだったりしましたっけ?」

生徒B :
「いや? 全然そんなことはない」

三廻部 颯 :
「おはよサイトくん。
 そうそう、いつにも増して機嫌悪く……え、違うの?」

生徒B :
「あとおはよう。
 僕は飛行機乗ったら寝るから、もう一回言う徒労を承知にしてもらうけど」

荻野目 旭 :それはおそようかもしれないなあ

生徒B :
「お家の事情とかじゃない?
 僕も知らないけど。首突っ込むと面倒だから」

SYSTEM :
 そう語る彼は、あなたの記憶の限りでいつもではないが大半上樹の近いところにいる。

 どちらかというとこっちが無茶振りをされる方。気に入られているとも言えるし、付き合いが長いのかも知れないが、ここもそこまで任務には関係のなさそうな話。

三廻部 颯 :
「ふーん。
 ……まあ、なんか話そうとしないもんね」

生徒B :
「なに、聞こうとしたの? いつもながらズケズケ行くなあ」

SYSTEM :
 あなたの記憶の限りでもし聞いたなら、
 あからさまに不機嫌になったことだけ覚えている。

荻野目 旭 :(特記事項にはなかったし、任務に関係はないんだろうケド……)

荻野目 旭 :(おうちのことかあ。他人ごとじゃないなあ)

生徒D :
「ところでいいんすか才人くん。
 遠くから『何やってんだ』ってジャイアンのオファーが来てるっすよ」

荻野目 旭 :仲良しさんですねっ

生徒B :「僕スネ夫かよ」

三廻部 颯 :「前髪伸ばさない?」

荻野目 旭 :「出来杉くんのほうが近いから大丈夫ですよ!」

生徒B :「重力に挑戦しろって?」

生徒B :「出木杉、ポジションが便利だよね。あのくらい蚊帳の外の方が僕も気楽だな…」

三廻部 颯 :
「それって目立たないってことじゃ……」

生徒B :
「目立つことがプラスでもないでしょ。
 目立たないことがいつもプラスではないけど」

生徒B :
「まあいいけど。呼んでるし戻るよ。
 迷惑かけたね、次突っ込んで来たら適当にあしらってくれる?」

三廻部 颯 :
「いつも授業で挙手して正解してるもんね!
 内申点すごそ〜……あ、うん。私はいつものことだし」

生徒B :
「どっちかというと池田さんか。
 事情知らない?」

池田咲楽 :
「…さあ? 別に、突っかかられるの馴れてるし。
 理由知っても知らなくても変わんないよ」

生徒B :
「じゃあいいや。あと颯、授業の挙手は居眠りしてる時の集中砲火されたくないからだよ」

生徒B :
「僕がそんな勤勉に見えたら、
 きみはアレだな。将来『必ず』って最初につけて来るタイプの勧誘は何も聞かず断った方がいいと思うな」

三廻部 颯 :
「……私そんなにぃ〜〜〜!?」

生徒B :「そんなに」

三廻部 颯 :
「がーん……」

生徒B :
「嘆いて変わるものは隣の目付きだけだよ」

生徒D :
「ウチが5年後路頭に迷ったら『必ず』って最初につけて連絡するっす」

荻野目 旭 :「も〜、だめですよ」

荻野目 旭 :「僕なら山田さんの勧誘を代わりに退けてあげてから『実は…』で連絡します!」

生徒D :「チッ、同業者か…」

三廻部 颯 :「私弄ばれてる!?」

生徒B :「敵の敵は味方みたいな連携するじゃん」

荻野目 旭 :「褒めないでくださいよぉ、照れちゃうから」

生徒B :「これ褒めている扱いか そっか」

三廻部 颯 :「しょうなの!?」

池田咲楽 :
「………あんまりからかわないであげて。
 本気で『必ず』付くたび首横に振り出すかもだから」

生徒B :
「じゃあしょうがない。
 それじゃ、僕はそろそろ」

三廻部 颯 :
「またねえ……」
 ぶつぶつ……。

SYSTEM :
 それと共に、彼は上樹のところに戻って行った。
 あとに残されたのは「どうして」と言い出す5秒前の颯と、幾人かのクラスメイトである。

荻野目 旭 :

荻野目 旭 :(………)

荻野目 旭 :(池田咲楽さん……やっぱり、ちょっと心配だな)

荻野目 旭 :(家族仲は問題無し、幼馴染との関係も良好、彼女のことは、やや心配しがち……ただ近所づきあいは薄くて、クラスメイトとの仲もあんまり)

三廻部 颯 :
「どぼじで……」
 心配されている幼馴染は、この有様。

荻野目 旭 :(こういう子、いるよね。いるけど……遺産なんて爆弾抱えてる女の子が『こう』なのは)

荻野目 旭 :(よくないかも)

SYSTEM :
 旭の心配をよそに、その咲楽と来たら、

生徒D :
「大丈夫! 冗句っす。ね、咲楽ちゃん」

池田咲楽 :
「ん。ホラ、どうもしないって。着いた後のことでも考えてたら」

三廻部 颯 :
「なあんだ冗句か〜」

池田咲楽 :「ごめん一瞬で不安になってきた」

三廻部 颯 :
「あうう」

荻野目 旭 :(……まあ、心配もする性格の子ですよね)

SYSTEM :
 あなたの………旭の知っている限り。

 その懸念は正しい。
 池田咲楽の表情がよく動く時は、
      ・・
 颯と話す時だけだ。

 昔からそうなのか、その付き合いがそうしているのかは定かでないが。 

SYSTEM :
 ………かれこれ早めに着いたあなた達に遅れて、少しずつクラスメイトがやってくる。

 ある者は自由行動前の興味ない人間にとっては本当にどうでもいい歴史観光をぼやいていたり、ある者は先生に見つからないのをいいことにこっそりスマホを弄る始末。

 宿泊先のことを早くも話しているようなのもいた。

SYSTEM :
 ………あなたたちは生徒の単位で見たら明らかに早い到着だったが、それより早いのは先生方だ。

 その中のひとりに、旭にとっては”ふたつ”名前に憶えを持つのがいる。
 転入の少し前、UGNの学校内に幾人か入り込んだバックアップの助力で、どうにか「このクラスの担任は最初から彼だった」と誤魔化す形で、一月前から先生をやっている大人役だ。

生徒C :
「───それじゃあ先生、また後で。よろしくお願いします」

『先生』 :
「ほどほどにな」

SYSTEM :
 先生の元の名前は割愛する。
 基本、表向きのパーソナリティはそこまで変わらない人だったらしいが。

 いま先生と呼ばれたのが、UGNのエージェントであることを知っているのは旭くらいのものだ。 

SYSTEM :
 堂馬頼家という。
 確か、ブラックドッグとハヌマーンのクロス。実直で、少し気難しい大人/まともなエージェントというのが初対面の印象だったが、そのぶん先生役はちゃんとやっているらしかった。

SYSTEM :
 先生が生徒のひとりから修学旅行中の予定について受けていた相談を終えるころ。
 颯か旭か。どちらかの前に、クラスメイトの一人が声を掛けた。

生徒D :
「おはよっす、先生。
 奈美ちゃんと何の話してたっすか」

『先生』 :
「おはよう山田さん。
 
 大したことじゃない。自由行動の時についてだ。
 まだ着いてないというのに」

三廻部 颯 :
「おはよぉせんせぇ……」

『先生』 :
「おはよう颯さん。
 ………だいぶ声が萎れているが、珍しいな。何かあったのか」

荻野目 旭 :「おはようございまぁす、堂馬せんせ。三廻部さんのこと、僕らがからかいすぎちゃいまして」

三廻部 颯 :「私騙されやすいんだって……」

『先生』 :
「おはよう、荻野目くん。転校して馴染めたのはいいことだが、あまり度を越してやるんじゃないぞ」

『先生』 :
「騙す方が悪いんだ。恥じることないさ。
 ………などと言いたいが、そこまで仲の良くないやつから突然変な連絡が来た時には気を付けろよ」

三廻部 颯 :
「……じゃあ山ちゃんなら大丈夫だね!!」

荻野目 旭 :「………僕、わりと心配になってきちゃいました」

生徒D :「じゃあ5年後になんて連絡するか決めとくっす」

生徒D :「………ちなみに先生のそれは実体験っすか?」

『先生』 :
「“奢るから”“久々に会わないか”の一言で行った先でしつこい勧誘には遭ったな」

荻野目 旭 :「…………先生、よく『いいひと』って言われません?」

三廻部 颯 :「それだめなんだ……」

『先生』 :
「大人の心だって傷付かないわけではないんだぞ、荻野目」

『先生』 :
「具体的には………いや。
 修学旅行の朝にする話ではないし止めておこう」

荻野目 旭 :「すっごく興味あるので修学旅行の夜に聞かせてほしいです♪」

『先生』 :
「聞いた30分ほどで後悔したくなるだろうがいいのか」

荻野目 旭 :「………」

荻野目 旭 :「…………」

荻野目 旭 :「先生、だめですよ? 知らない人についていっちゃ」

『先生』 :「大人の心だって傷付かないわけではないんだぞ」

荻野目 旭 :「怪しい勧誘があったら、ちゃんと僕とか連れて行ってくださいね」

三廻部 颯 :
「大人って大変なんだなあ」

『先生』 :
「怪しい勧誘に生徒を連れて行って頼る情けない大人のレッテルだけが俺に残ってしまうな…」

『先生』 :
「…時にそろそろ時間だな。
 飛行機、乗ったことあるか?」

荻野目 旭 :「お父さんの転勤の時に何度か! 楽しいですよね、離陸する時」

三廻部 颯 :
「ふっふっふ……実はないです!
 だって中学校の修学旅行は長野だったんで!」

 ……どや!

『先生』 :
「いいな、長野。やはり夏季休暇の時に行っておくんだったか」

『先生』 :
「先生も何度か飛行機に乗ったことはあるよ。色々巡ったこともある。
 どうしても地に足がついていないと落ち着かんのも知り合いにいるが、離陸の瞬間に空気が変わるのは確かに好きだな」

三廻部 颯 :
「なんかエレベーターみたいにガクンってするってお父さんが言ってました」

池田咲楽 :
「………ガクン、か」

池田咲楽 :
「あの大きいのが飛ぶイメージ、ないんですよね。初めてで」

『先生』 :
「池田さんも初か。
 思ってるほど怖がるものじゃない。人によっちゃ“こんなものか”で済むかもだ」

『先生』 :
「むしろ怖いのは飛行機の着いた先で………、」

三廻部 颯 :
「先? 沖縄が?」

三廻部 颯 :
 きょとん。

荻野目 旭 :「………」まさか……

『先生』 :
「知っているか三廻部さん。
 沖縄の人間は、見かけほど海に行かない」

三廻部 颯 :
「…………え、え〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!???」

三廻部 颯 :
「あんな綺麗で青い海に!?」

『先生』 :
「ああ。なんでかって聞いたら、逆に『なんでプールがあるのに海に行くんだ?』と言われた。

 それと同じくらいに、沖縄県民的には、海って案外おっかないらしいんだ」

三廻部 颯 :
「しょんな……。
 ……でもなんか本で……毒もった海のヘビがいるって」

三廻部 颯 :
「もしかしてそういう」

荻野目 旭 :よかった 僕じぶんのキャリーケースが届かないとかそんな話かとおもってました

『先生』 :それは沖縄ではなくもうちょっと別の国の方だが

荻野目 旭 :あるんだ……!?

『先生』 :旅行の時は気を付けような 観光客オーラは人によってカモだ

三廻部 颯 :「はええ……」

SYSTEM :
 ………などと話していた先生/エージェント、堂馬頼家だったが、そろそろ飛行機の出る時刻と、集合時間が近づきつつあるようだ。 

SYSTEM :
 遠くから別の先生に呼び止められた彼は、それに軽く受け答えしてから、これまた“また後で”の言葉と”そろそろ整列しておくようにな”の言葉を最後に踵を返した。

 彼の旅行経験がUGNとしてのものなのか、普通のカヴァーの体験談なのかは、旭の知る限りでは不明である。
 先生ではない時の堂馬は、わりと冗談と無縁の生真面目な男だったからだ。少なくとも嘘を堂々と突き通す器用さはなさそうだった。

荻野目 旭 :はーい、と元気なお返事をします。

三廻部 颯 :はぁーい……

荻野目 旭 :(……堂馬先生、やっぱり本当に30分ぐらいかけてその後悔する話教えてくれないかな)

SYSTEM :
 聞いて答えてくれるかは永遠の謎だ。
 少なくとも、N市であなたの居場所を護り、霧谷雄吾からも『任せたい仕事がひとつある』らしかった男よりは、そっけない台詞を吐かないだろう。 

SYSTEM :
 ところで。
 池田咲楽はと言えば、その先生の言葉が何かしら気に掛かったらしい。

 元より必要以上に喋らない/喋りたい時しか喋らない性質ではあるようだが、それを差し引いても。

池田咲楽 :
「海って案外おっかない………」

池田咲楽 :
「そんなもんなのかな」

SYSTEM :
 当人は別にそんなことなさそうな、“そこまで言う?”とでも言いたげな呟きであった。

 このあと誰が突っついたのかは、別に語らずとも想像のつくことだろう。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

機内放送 :
 ───皆さま、今日も日本航空JL900便、那覇行をご利用くださいましてありがとうございます 

機内放送 :
 この便の機長は安田××
 私は客室を担当いたします小池○○でございます

機内放送 :
 まもなく出発いたします
 シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締めください

 那覇空港までの飛行時間は約三時間を予定しております
 ご利用の際は、お気軽に乗務員に声をおかけください
 それでは、ごゆっくりおくつろぎください

機内放送 :
 Good morning, ladies and gentleman.
 Welcome aboard Japan Airlines flight 900 to Naha...

SYSTEM :
 ………。
 ………。………………。

SYSTEM :
 手短な事前の挨拶やら何やらやった後に、飛行機の中で颯と旭は機内放送を耳にしていた。
 元々夜更かししていたからなのか乗ったらすぐにうつらうつらとし始めた者、乗ってから隣のクラスメイトと何やかんやと燥ぎ出す者。座席のリクライニングを堂々と倒し、後ろのクラスメイトと早くも持ち込みのトランプの準備など始め───ようとしたら、離陸するまでは待ちなさいと、やんわり先生に注意された者。
 
 諸々いる中で、颯がどの分類に入るのかは定かでない。

池田咲楽 :
「乗ってるのほぼ学生なのに、後半要る?」

SYSTEM :
 そんな中。
 窓際の席でシートベルト着用を済ませ、ぼそっと呟いた咲楽であるが、
 あなたの記憶している限りでは、彼女が旅客機に乗ったという話はない。

 国内旅行なら幾度かの記憶はあるが、国外ともなると話は別。
 心なしか普段より落ち着きがなく見えることは、気のせいではなさそうだ。

SYSTEM :
 なお旭の方も、さすがに男子側の席ではあるが、幸いにも座席は颯らとそこまで距離が開けていない。
 様子を覗こうと思えば覗ける位置である。

 他の生徒たちは少し離れたところにいるが、特に上樹のものと思しき声が聞こえてくる辺り、彼方は元々悪くしていないか、機嫌を直したらしかった。

荻野目 旭 :じゃあ演出的に領域で様子確認していたいです! いいですか?

GM :かまいませんよ。具体的なエフェクトの使用希望はありますか?

荻野目 旭 :うーん……ぼくはまだこの飛行機が落ちることを知らないので使用しません。

GM :そんな 落ちるなんてまだ一言も…

三廻部 颯 :
私は!なんと……そわそわしております!
窓の外が見たくて!

池田咲楽 :まだ離陸前でしょうが

池田咲楽 :………というか席変わる?

三廻部 颯 :乗務員さんに怒られるからダメ

池田咲楽 :うわ いきなり声のトーン変えるじゃん

SYSTEM :
 なんてやり取りがあったかは定かでないが。

 そんな中で旭が探った中には、少なくともオルクスの領域内に不審な人物もいなければ、記憶している限りのオーヴァードしかいない。
 先生と、便に合わせてCAとして紛れ込んだ後詰めの後方支援役が何人かと、それからあなた。

荻野目 旭 :(うんうん、異常なし──)

荻野目 旭 :じゃあ周りのクラスメイトとお話しながらさりげなく周辺の警戒を続けますよ。問題ない……ヨシ!

SYSTEM :
 クラスメイトたちの反応は耳に入る限りではこれといって重要そうなものはない。

 中には旅行そっちのけでスマホを弄り出して『充電し忘れた』とか小声で隣に聞こえる程度に零していた愚か者がいたりいなかったりするが、本当にそのレベルの些細な会話。

SYSTEM :
 出発のアナウンスが流れるのも、それからすぐのことだ。

SYSTEM :
 離陸の瞬間の、ふっと持ち上がるような、それでいて“がくん”と来るような感覚。
 普段生活していては決して味わえない直前の浮遊感とも落ちる感覚とも言えるようなもの。

三廻部 颯 :「うぉー!」

池田咲楽 :「わ───」

SYSTEM :
 しかしそれも一瞬で、飛んでしまえば後は普段と変わらない。

 空の青に近付いたかと思えば、すぐに雲海が広がる。
 普段斜に構えがちな少女も、颯に引き摺られたのか、言っていないだけで実は少々“浮かれて”いるのか。窓に広がる真っ白の風景と、離陸直後の感覚に意識を奪われていたようだった。

池田咲楽 :
「………、」

池田咲楽 :
「………確かに“こんなもん”で済むくらい短かったけど、飛ぶんだねえ、あの大きさで」

三廻部 颯 :
「飛んだあ……!
 ほんとに飛ぶんだなあ!」

 一方横の友人も、概ね同じ事を言っていた。

池田咲楽 :
「私ら語彙力終わってるな…」

池田咲楽 :
「………さっきの空港もう見えなくなっちゃったな、けど。
 これで3時間でしょ? ずっと雲ってのもそうだけど、下見えなくてよかったな」

三廻部 颯 :
「いやあ、でも感動を前にしたらこんなもんだよ。
 ホームラン見たらわー!ってしか叫べないとの一緒だよ」

三廻部 颯 :
「街も小さい、というか豆粒みたい!
 これでちょっとしたらもう島がいっぱいなんでしょ?」

池田咲楽 :
「TV中継でしか見たことないし…。
 颯が言うんならそうなんだろうけど、何回か見ていたらあのノリ混ざれるのかな」

池田咲楽 :あ、でもオオタニサンは知ってる

荻野目 旭 :オオタニサンは知ってるんだ……

三廻部 颯 :そりゃもうオオタニサンだからね!

池田咲楽 :さすがに話題持ちきりの人だったから…

三廻部 颯 :
「ドームに行けばそんなもん!
 修学旅行終わったら試しに行ってみない?」

池田咲楽 :
「というか街豆粒って、それも良く見えるな、颯…。
 もう豆粒どころか存在を疑うレベルで───」

「………て。いいけどこないだテレビで見た時みたく、先発? の人がボロボロ打たれた時の慰め役は出来ないからね」

三廻部 颯 : 

三廻部 颯 :
 何やら早口で抗議していたが、
 あまりに早口なので内容はほぼ聞き取れなかった。
 中村奨吾がどうのというのだけ聞き取れたようだ……。

SYSTEM :
 ある日うちに遊びに来た時、たまたまTV中継を回した際の惨事である。
 その時の慰め役は彼女だったが、言葉選びが下手くそなので逆に傷を抉っていたことも記憶に新しい。

池田咲楽 :「漫研の電助みたいなテンションになっとる」 

三廻部 颯 :「(早口)」

池田咲楽 :
「しずまりたまえ しずまりたまえ」

池田咲楽 :
「何故そのように荒ぶられるのか」

三廻部 颯 :
「ZOZOの怨念ぅ〜ぁ……」

SYSTEM :
 いいじゃん10点も5点も1敗は1敗だよ、とか。
 なんかズレた擁護が刺さったあの日。

池田咲楽 :
「まあ、まあまあ。じゃあそれは修学旅行終わってからで………。
 目先のことでも考えようか」

三廻部 颯 :
 ふしゅ〜……とガスが抜けていく。

池田咲楽 :この子なんでこんなオモシロ反応するようになってしまったんだろう

荻野目 旭 :(のびのびと育てすぎたんじゃないかな…)

SYSTEM :
 なんだかんだ言って、修学旅行である。
 前半二文字とか、学校として行く分の節度云々とかは、よっぽど生真面目な生徒以外にとっては基本的に建前みたいなもんであり、着いてからの1日目でその建前が終わり次第、班行動という名の半自由行動が始まったり、2日目からは体験コースの選択が待っていたりする。

池田咲楽 :
「先生の話聞いてると、怖いもの見たさで海も見れるコース行けばよかったな。
 何がヤバいんだっけ、沖縄の海」

三廻部 颯 :
「うみへび?
 あとはサメとか?」

池田咲楽 :
「おのれは映画でもリアルでも鮫か」

池田咲楽 :
「忘れてないからね、サメの映画と称して竜巻でロングジャンプしてくる意味分からない映画の上映会始まった記憶」

SYSTEM :
 などと半笑いで言った彼女であるが、記憶の限りで初見で映画の内容が『サメ』と言われた時の彼女はたいへん乗り気ではなかった。

三廻部 颯 :
「あ、あれはお父さんのせいだもん!
 今度面白い映画やるからチケットとかビデオあげるなんて言ってさ!」

SYSTEM :
 最終的に見せたものがサメと呼ぶには冒涜的過ぎる何かだったせいか、「まあ………うん………」みたいな感じで収まったのである。

 元より体育の時も水泳では負けなしなのが、あなたの友達だ。基本水回りは妙に聡いが、それはそれとして鮫は苦手だったらしい。
 彼女の中では『映画のサメはなんか別の生き物』で落ち着いた様子。

池田咲楽 :
「それを確認せずに『きっと楽しいよ』で無理くり座らして、出て来たのが、」

池田咲楽 :
「三つ頭があるからサメベロスだったのは?」

三廻部 颯 :
「……」

三廻部 颯 :
「……………………」

三廻部 颯 :
「…………こ、今度別の見よう。
 アニメ……うん、アニメのやつ……あの……、有名な奴とか……」

SYSTEM :
 可視化される頭上の渦巻き。クラスではそんな様子のその字もないハキハキとした友達がたじろぐ様子に、咲楽の表情が綻ぶ。

池田咲楽 :
「ほら、早くそのテンパり一歩手前の顔治しなって。
 今度見るやつは、見たいやつでいーからさ」

三廻部 颯 :
「はぁ〜い……」

池田咲楽 :それで一発直しできるのも逆に才能だよ

池田咲楽 :「………到着、まだかな………」

SYSTEM :
 高校生活もあと1年と半分の折り返し。
 そのうち半分は、人によっては受験勉強。

 当たり前の高校生の行事として考えると、大きなものは基本これが最後だ。
 普段体裁も何も気にしないような/少なくともあなたと出会うまでは特にそのケが強かった彼女も、なんだかんだそれを愉しみにしているらしい。

SYSTEM :
 ………窓の風景が30分も1時間も変わり映えしなくなってきたころには、流石に見るたびじっと目を凝らしているようなことはなくなって。

 それを遠目に見ている旭の側も、何ら変わり映えするようなことはなかった。
 有体に言って、何事も起きない、当たり前の高校生の、当たり前に待っている“イベント”の始まりの待ち時間だった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………そんな当たり障りもない話。
 
 お土産誰に買うのか、とか。
 今日来る前のニュースがどうの、とか。
 話の種は尽きることもなく、周囲からもそういう何気ない会話がぽつりぽつりと増えたり減ったりする頃。

 旭の隣のクラスメイトなどは、元々夜更かししていた方だったのか、暢気に入眠して久しい、フライト一時間半ぐらいの海上でのことだった。

荻野目 旭 :目を伏せて体だけ休める体制です。領域は広げてるけど、他のエージェント陣と交替でちょこちょこと。

SYSTEM :
 …他のエージェント陣も、多少気を抜く程度には気楽なフライトだったように思える。
 カヴァーの仕事の方がよっぽど手間だ、とか。無事に終わったなら、そこらの年上の女性からはそういう愚痴が聞けるに違いない。

SYSTEM :
 ………5時起きの颯とそれに振り回された咲楽も、どちらが寝たのが先か。
 いまでは二人揃って瞼の重さに負け始めていたようだ。

SYSTEM :
 前者は当然のことだからさておき、
 後者も───。
   ・・・・・・・
 その古くさいお守りが、薄氷の下の世界にとって只ではすまないモノを持つ後者は。とても、その世界に関わる素振りなど見えないほど、少し交友関係の狭いだけの、ありふれた人物で。

SYSTEM :
 目を伏せて身体を休めていた旭も、油断とか、気を抜いていた素振りがあるわけではない。

 そもそもオーヴァードの気配は本当に知っている人数だけだ。
 このフライト中に干渉してくる手段など、決して多くない。空港の前後で確認もした以上、彼女の“お守り”を狙った者の気配もありはしなかった。

SYSTEM :
 ………その。
 ありふれた日常と、ありふれた薄氷の上の世界。

 薄氷の下に広がる水底に、
 上の人間は手を伸ばせないが。
 下からは、何時の日も容易く手が伸びる。

SYSTEM :
 あるいは、上にいる人間の方こそ、
 それを待っていたみたいに。

SYSTEM :
【Check!】
 ???がEロイス『█▇▅▇▇▅』
 ならびにEエフェクト『█▇▅▇▇▅』を発動しました。

SYSTEM :
   ・・・
 ───がくん。

 思いっきり身体を下に引っ張られるような重さは。
 ちょうど、旅客機が飛び立つ瞬間の、あの重さに似ている。

SYSTEM :
 違うのは。
 それが一瞬で過ぎ去って、こんなものか、で終わるような。
 珍しいが、現実に有り得るフライト直前のものなんかじゃあないことだった。

SYSTEM :
 本気の寝ぼけ瞼も、休めた頭も。
 どちらだろうと叩き起こすには、十分だったが。

SYSTEM :
『───………て、』

SYSTEM :
『───颯!』

SYSTEM :
 揺するにしては力ない腕と、
 懸命に起こすような声。

 なにより、足かなにかを引きずられるような重さ。

SYSTEM :
 それから───。
 
 悲鳴。

 颯は目を醒ましたが、
 今まで目覚まし時計の経験があるなら、これはその、どれよりも寝起きと寝覚めは悪そうなものだ。

池田咲楽 :
「………起きろ、………起きて!」

SYSTEM :
 やがて、がくがくと揺さぶられるような感覚が。
 別に、咲楽が揺すっているものではないことにも気が付く。

SYSTEM :
 左から、右から、上から、下から。
 あっちこっちから滅茶苦茶に揺られているような───。

 飛行機の中で体験するには、あまりにあまりな想像しか出来ない感覚が。
 あなたの夢見心地に待ったをかけた。

三廻部 颯 :
 声がする。

           声がする。
     声がする。
 声がする。
      声がする。       声がする。

   声がする。
声がする。
             声がする。

  声がする。

「───え、ぅ、ぁ」

 幻想に夢見た頭を、現実に叩き込むのは無数の声で。
 私を現実に引き戻した揺れは親友のものでもなくて。
 ただ、大きく揺れているものがなんなのか、ぼんやりとした頭でも理解できて───

三廻部 颯 :
「お───起きてる、起きてる、けど……、
 な、何これ……!? なに……なになに、どうなってるの!?」

三廻部 颯 :
「つっ、……着いた、わけじゃない、よね? 
 ね、ねぇ、もしかして──────」

荻野目 旭 :「────っ!」

池田咲楽 :
「知ら、ないよ、分からない…!
 さっきから、頭、ぐらぐらして…!」

SYSTEM :
 声はする。
 男女様々、聞き慣れた生徒の、聞き慣れない恐慌。

 だがそこから慌てて避難経路に行こうとする生徒の姿も、これを誘導するはずの先生の姿も、そこから見えない。

 厳密には、ある2名を除いて。
 あちこちからめちゃくちゃに揺られうねる感覚のせいで、立ち上がれない。
 もし立ち上がろうとしたならば、真っ先に機内の床に全身を打ち付けるのがオチだ。

SYSTEM :
 窓からの風景は、雲海ではない。
 空が見えたり、海が見えたり。少なくとも穏やかな風景ではなかった。

 ………颯には、これが何なのか分からない。起きてすぐの頭であることを差し引いても、纏まるべきものが纏まらない。

 そして、分かっても問題がないはずの旭にさえ………。

SYSTEM :
 これが、バロールのオーヴァードにしか出来ない所業だと分かっていいはずの旭にさえ。

 何があれば、この場にいない状況から、こんなめちゃくちゃな重力を作り出せるのかも分からなかった。

SYSTEM :
 ………あなたは動こうと思えば動くことが出来る。決して普段通りではなく、当然ながら“この中でひとり動いた”という事実を二人の眼前に晒すことになるが。

 数少ない自分以外のオーヴァードであるはずの、先生の様子を見に行くのであれば、それも吝かではないだろう。

荻野目 旭 :………

荻野目 旭 :GM、《ハンドリング》は使えますか? シーン登場時に使用するエフェクトなので、少々使い方は違うんですが……

GM :内容に依りますが…ハンドリングということは…

GM :いえ、憶測だけでモノを言うのもよくありませんね。聞いてから判断させてください。

荻野目 旭 :先生に状況確認をしにいきます! 先生ですし、たぶん寝てないですよね?

GM :まず寝てはいないでしょうな。

GM :そういう無責任と剛毅の紙一重を反復横跳びするような人物ではなさそうでした。

荻野目 旭 :可能ならそうさせてください! パイロットさんが普通の人なのに《ワーディング》で堂々と確認とはいきませんしね

GM :良いでしょう………

荻野目 旭 :ありがとうございます!

荻野目 旭 :
 隣の子を起こしながら、戸惑っているふりをして周囲を確認。
 動揺しているふうを装いながら、小指を噛み切った。

荻野目 旭 :
  ブラム=ストーカー
 僕は血使いじゃないけど、僕の幻覚は身体を突き破って生える花のイメージだ。
 だから、エフェクト使用のための引鉄としてこういう動作を経由する。

 落ち着いて落ち着いて〜。あっち向いて、ホイホイホイ。
 隣の子をなだめるみたいに手品めいて振る。
 右手の拳を開くと、ぷくりと膨れた血の玉が、ぽん、と音を立てて鳥になる。花びらで織られた鳥だ。

荻野目 旭 :
              と り
 それをそのまま飛ばして、『花幻鳥』は先生の姿を探す。
 混乱している社内でも目立つ、たぶん天然ものの金髪──どこだどこだ!

SYSTEM :
 隣の子はそこから起き上がれる状態ではなく、また今も滅茶苦茶に重力が続いている。
 あなたの宥めるための軽い手品も虚しく───あるいは、それのお蔭で比較的マシなパニック状態にあった。

 幸い、この状況だ。
 怒号と悲鳴にかき消されて、誰の何が聞こえるとも限るまい。 

SYSTEM :
 やがてすぐ、その男は見つかった。
 鳥を見つけると、ハヌマーン特有の音の周波が、あなただけに都合よく声を届ける。

『先生』 :
『───“ナイトホーク”!
 此方ではない、護衛対象の方を見ろ!』

『先生』 :
              バロール
『機内に。UGNの人間にすら、魔眼付きはいない………!
 外を当たるが───間に合わんかもしれん!』

荻野目 旭 :
 マジ
『真実ですかァ〜〜〜っ!? 了解ですう!』

『先生』 :
『大マジだ、この状況で余裕かますとは度胸あるヤツだよ!』

『先生』 :
『いざという時は機から───、』

SYSTEM :
 恐らくは本当に外を当たり、間に合わぬと悟れば何とか仮初の立場とはいえ“生徒”だった連中を逃がそうと思ったのだろう。
 男が「咲楽の方を見ろ」と口にし、自らやむを得ないと動き出そうとした時のことだ。

『????』 :
 ───█▇▅▇▇▅
 

『????』 :

 ───▅█▇█▇▇▅▇██▅▇▇▅!!

SYSTEM :
【Check!】
 ???が続けて
 Eロイス『█▇▅▇▇▅』『█▇▅▇▇▅』『█▇▅▇▇▅』を発動しています。

SYSTEM :
    ・・・
 また、がくんとした。
 滅茶苦茶な重力が、いま一方向だけに集中した。

SYSTEM :
 例えばそれは、目に見えない腕か何かを、外側から思いっきり叩き付けたような感覚でもあり。
 その、不可視の暴力が、およそ飛行機内では聞きたくもない“みしり”という音を勢いよく立てた。

 それは、『先生』/UGNエージェントの一人と、その周波もろとも、旭の意識をぐらり、と揺らすには十分すぎたが。

 ………近くにいた旭は、その発端となる重力のうねりが、どこから来ていたのか。

SYSTEM :
 あるいは、どこの何を狙ったものなのか。

 考えるまでもなく分かっていた。

SYSTEM :
 ───重力のうねりは、立ち上がれない颯と咲楽を狙っていた。

 さてこうなると。
 オーヴァード“だから”まだどうにでもなるあなたと、オーヴァードではない普通の人間である颯と咲楽には大きな差がある。

SYSTEM :
 文字通り、引き起こされた重力の中心に近かった颯が、飛行機内で窓にあわや叩き付けられる勢いで”ふわり”と浮く。

SYSTEM :
 いや、浮くのではなく、落ちようとしていたとも言うべきか。

 飛行機内で、落ちる、だ。
 錯覚などではない。
 みしりといやな音を立てて、拉げながら断面が広がって行くなんていう、生涯で経験しようのない光景の中にいるあなたは、掴むものがなければ、そのまま浮遊感に身を任せて何処かに行ってしまいそうになるほどに。

池田咲楽 :
「───颯!」

SYSTEM :
 ───無我夢中のあなたの視界に、掴めるものが飛び込んで来たなら。
 それを掴まない理由はないだろう。

 例えばそいつが落ちかけの状態で、あなたの方を心配しただけの、溺れる者が掴む藁に等しいようなものだったとしてもだ。

三廻部 颯 :
「えっ、え、あ、ヤダっ───」

 青ざめる。
 言葉にしたくない現実と、
 その中でに起きる現実的でない出来事。
 揺れに全身を殴られながら、浮くような、落ちるような。

 嫌だ。
 嫌だ───■■のなんて嫌だ。

 叫びたそうにした言葉が出ず、過呼吸になりかけて、

三廻部 颯 :
「───っ!」

 自分の頭を埋め尽くした■という言葉をかき消すように、
 手をまっすぐ伸ばした。
 それがなんであろうと、生きることに縋るように。

三廻部 颯 :

(かみさま───たすけて……!)

 ……居るのかどうかもわからないものに縋る。
 ちっぽけな、ただの一般人の少女は、そう心で叫んだ。

荻野目 旭 :
     ・・
(…………違う! これ、二人だ!!)

 池田咲楽だけじゃない──三廻部颯まで!?

荻野目 旭 :「ッッて、わ────」

荻野目 旭 :
 ぎ、と歯を食いしばって、動かない身体の代わりに『花幻鳥』を飛ばす!
 間に合え、間に合え、間に合え──!

SYSTEM :
 だから、その瞬間。

 行使していた能力ごと意識を持っていかれかけながらも、どうにか落ちかけの二人を援けようとした旭も。

 無我夢中で手を伸ばして掴んだ先が咲楽の腕だとも知らず、ただ恐慌のままに見えない何かに縋った颯も。

 どちらも、視界に入ったから気付いたことがある。

SYSTEM :
 落ちかけの颯をどうにか引き上げようと、自分も落ちかけながら必死に手を差し伸べる咲楽の首から下がった勾玉。
   ・・・・・・・
 曰く古くさいお守り。
 そいつが、海色の輝きを一層強く増していた。

池田咲楽 :「い───や………ッ!」

SYSTEM :
 颯にとっては次に起きる出来事もあって、ただの気のせいで済むだろうが。
 それがEXレネゲイドという、この世に非ざる理の存在だと知っていた旭にとって………。
 これはまったく別の意味を伴っていた。

SYSTEM :
 重力のうねりが、もしも故意に起きたものならば。
 この重力のうねりが、何を狙っているのかと考えるならば。

 その薄氷の底から伸びた腕の向かう先は、
 咲楽とそのお守りで。

SYSTEM :
 見えるはずのないものが、努力虚しく落ちようとしている咲楽と颯、そこにぎりぎり間に合った『花幻鳥』に触れた時。

『????』 :

 ───█▇▅▇▇▅

『????』 :

   やっと会える
 ───█▇▅▇▇▅

   

SYSTEM :
 ───海色の輝きがいっそう強まると同時。
 そのレネゲイド同士の共鳴が、文字通り落ちていく二人を中心に大きな”裂け目”を作った。

 一方通行の巨大な虚。
 その向こう側に何が覗くのかも定かでないそこに、揺らぐ赤色の点/目がひとつ、ぽつりと見える。

SYSTEM :
【Check!】
 ???のEエフェクトの正体を開示します。

メジャー:『時空の裂け目』

SYSTEM :
 そこに渦巻く、意識とレネゲイドと諸々の強いうねり。
 不可視の正体が僅かに顔を覗かせる時、当事者からやや外れていた旭をそこに留めていた数少ないものであるシートベルトが、あっさりとちぎれる音がした。

SYSTEM :
 ふわりと浮いたあなたや、たまたまその近くの席にいた生徒なんかが、何処に行こうとしているのかは言うまでもなく。

SYSTEM :
 ………当然ながら中心の二人に、逃げる余地も、その広がる不可視の渦が何なのかを理解する余地もなかった。

荻野目 旭 :「──な、ぁ……っ」

荻野目 旭 :
 共有した視界の先で輝きが強まる。
 要注意警護対象と、いま増えたふたりめをまるで出迎えるみたいに裂け目が開く。

荻野目 旭 :
 ────違う、焦るな、ちゃんと考えろ!

荻野目 旭 :
 動揺した自分を脳内で勢いよくぶん殴って、僕は慌てて優先順位をつける。
 決断を後押しするみたいに、ぶちりと。
 千切れたシートベルトが嫌な音を立てる。

 決めた、
  いち         に        さん    し
 渦中のふたり、クラスメイトのみんな、エージェントさん、僕!

荻野目 旭 :
 ……間に合うのは僕だけかもしれない!
 恐怖を振り切って、その渦に紛れ込むように身を躍らせる! 落とされるんじゃなくて、頭からダイブ!

荻野目 旭 :「───池田さんっ、三廻部さん……!!」

三廻部 颯 :
 どうして、とか。
 なんで、とか。
 そういう言葉を投げかける状況じゃないのに。
 私は落ちて、咲楽も落ちそうで、
 そんな私たちに向かって、手を伸ばしてくれた子がいて、
 それが旭くんだって気づくのに、少し遅れてしまって、
 ありがとうも言えなくて、ごめんも言えなくて、

 輝きに目をぎゅっと瞑ってしまった。

三廻部 颯 :
    落
    ち
    る。

      落
      ち
      て
      ゆ
      く。

 奈落の渦へ。
 死の落とし穴へ、
 この世じゃないどこかへ、
 
 旭くんが名前を呼ぶ。
 私は、それに、もう一度目を向けて──それでも……、

 わけのわからない、うしろに。
 わけのわからない、ましたに。

 落ちて、
  落ちて、
   落ちていき、

三廻部 颯 :
「っ、う、あぁぁあああ──────!」

 その顔はずっと、怯え続けていた。

池田咲楽 :
「荻野目くんッ───颯………、」

SYSTEM :
 一生に一度体験するかも分からない生死の境目への錯乱状態を起こしたのが颯なら。
 ・
 あ、という気の抜けた声と共に、墜落を実感し。ともだちの前で平静を保とうと必死にやっていた表情が凍り付いたのが咲楽だった。

SYSTEM :
 伸ばした手が、あと少しのところで。

 颯の手を掠め、咲楽の手を掠めた。

SYSTEM :
 ………引き込まれる身となれば分かることだが、発生した裂け目はバロール・シンドロームによって生じた重力場に等しい。

 いわば時空と時空、何処かの場所と何処かの場所。それを隔てる現実のテクスチャに孔をあけ、無理矢理にでも“招待”をかけるブラックホール。

 光さえ吸い込み、逃がさぬ小規模の重力崩壊現象において、常人が理解を挟む余地はない。

SYSTEM :
 ぱちり、と意識が途切れる。
 引っ張るような腕に揉みくちゃにされる感覚から、一瞬だけ水面を潜って海中に入るような錯覚がして。

SYSTEM :
 落ちながら、浮きながら、流されるような。

 昨日を振り返りながら、明日に時計の針を進めるような、全身の寄る辺を失った覚束なさ───。

 それが、最後の感覚であった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………重い瞼を、無意識に開く。

SYSTEM :
 引き摺り込まれるように墜落し、
 押し流されるように浮遊して。
 海底へ潜り込むように移転する。

 あなたの知らなかった、重力の井戸の底。
 地球の七割を占める海の底。
 一足早いダイビングの体験にしては、ずいぶんと現実離れした風景。

SYSTEM :
 溺れるような感覚もなければ、意識も朧げ。
 それでも、誰が隣にいて、何が傍にいて、何が遠ざかるのかもハッキリとはしない。
 夢だと言われた方がしっくり来るほど、ここには「自分がいる」という感覚も、自分以外に誰かがいる、という感覚も薄かった。

SYSTEM :
 纏わりつくようなものの中、誰かの声だけがする。
 海鳴りのように低く、また深く耳に響く音。

『????』 :

 ───█▇▅▇▇▅█▇▅▇▇▅

『????』 :
    
 ───█▇▇█▇▅▇▇▅▇▅█
 

SYSTEM :
 怒っているようにも、悲しんでいるようにも聞こえる。そんな男の声。

 あなたに向けられているようでいながら、それはあなたを重んじるようなものでもなかった。
 ………何を口にしているのかも定かでない。あるいは、それを理解していいのかもよく分からない。

SYSTEM :
 声のみするものが、まずあなたに触れる。
 海色の朧げな光に覆われて、定かではない者の姿は。
 幽鬼/幽霊めいて不確かで、彼の印象を決定づけるのは、泣いた跡にも、鬼のようにも思える、深紅の目くらいのものだ。

SYSTEM :
 意識と身体が“ふわり”と、引き上げられる。
 遠ざかって行くのは自分なのか、その声なのか………。
 この“海”の底から鳴り響き続けるものについて、きっとこれだけは事実だった。

『????』 :
.       厭 だ
 ───█▇▅▇▇▅█▇▅▇▇▅

『????』 :
 
      独りは転てし
 ───█▇▅▇▇▅█▇▅▇▇▅

SYSTEM :
 その男が、最後に訴えたものは………。
 きっと“寂しさ”だったように思える。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :


『───、───!』

SYSTEM :


『───────!』

SYSTEM :
 ………颯の耳にまず入って来た音は。
 反響するざわめきと喧騒であった。

SYSTEM :
 その音の響きは、知っている人間同士の、ささくれ立った声色で。
 とりあえず、数刻前の出来事が“夢”ではなかったことを伺わせること一つではあった。

SYSTEM :
 寝かされていた場所が悪いのか、背中からはゴツゴツとした感触が伝わって来ている。

 寝覚めの良くなさで言えば先のものに勝ることはないだろうが、現代人/あなたの眠りを妨げるにはわりと十分であった。

SYSTEM :
 ………陽射しが目に入る。
 ちょっと顔を横に向けると、海の水面と、砂浜が見える。
 あるいは、そこから地続きになった道に続く木々と岩肌が。

 ついさっきの出来事と比べると、十分に現実的なのが、性質の悪いところだ。

三廻部 颯 :
「…… …… …… ……!!」

 はっ、と強く息を吐いた。
 今自分が"見ていた"ものがなんだったのか、"聞こえた"ものがなんだったのか、
 それを確かめられないことを知らしめるように眼前に広がる砂浜と海。

「い、」

 陽射しでくらくらする、だけど。
 息もできるし、お腹もちょっと空いていて……

「いきてる」

 何よりの実感があった。

三廻部 颯 :
 ……ずっと声が聞こえていた。
 その声が、飛行機で起こったことが夢でないことを裏付けている。
 結局あの後──……海に落ちて、流されて、そのまま漂着した?
 
 そんなこと本当にあり得るのか、と思いたいが。
 自分は現に生きているし、今さっき寝てた場所はゴツゴツしてて痛かったし。

三廻部 颯 :
「ここって……無人島なのかな……」

 テレビで見たようなものとは絶対違う。
 ああやって人の手が入っていくものでもないのだから、もしものことを考えてゾッとした。
 先ゆきは絶望的だし、これからどうすればいいのかもわからない。

 颯は今この場の寂しさと、展望のない事への恐れに身を苛まれていた。

三廻部 颯 : 
 岩の上に座ったり、海の向こうを眺めたり、
 砂浜に小さく「SOS」なんて指で書いてみたり、
 全部意味のない行為だと悟って、大きくため息をついた。

「……誰かいないかな」

 出発前や機内での元気さなどかけらもなく、
 少女一人とぼとぼと歩き出す。
 さっき見えた砂浜から続く道には木々が生い茂っていた。
 そこに向かって、重い足を引きずるように歩く。

 ……道なんて整備されてるはずもないし、虫刺されとか、ひどいことになりそう、なんて考えた。
 
 そうやってどうでもいいことを考えていないと、やってられなかった。

SYSTEM :
 眺めた海の向こうに何がいるでもなく。
 岩の上にいた先客の小さなカニは、動かないと思っていたものが動いたことに驚いたのか、慌てて岩陰に引っ込み。

 砂浜に小さく描いたSOSは、あなたが背中を向けて少しする頃には、潮の満ち引きに紛れて消えて行った。 

SYSTEM :
 とぼとぼと歩き出すあなただが、その喧騒と声の持ち主が、整備されてもいないような土の道から聞こえることには気が付いた。

 というより、わりと近いところにいるらしい。

SYSTEM :
 聞き覚えのある声が、一つか二つ。
 よく顔を知る友達とクラスメイト。咲楽と上樹。
 耳が悪くなっていたりしなければ、多分、というか確実に、その二人だけにしておいた場合の空気が悪いことだけは確実だろうっていう声の取り合わせ。

 それが“誰かいないかな”へのアンサーだった。

SYSTEM :
 ………木々に紛れた先の声が、
 あなたの寂しさから生まれた幻でなければだけど。

三廻部 颯 :
 ぴた、と足が止まる。
 
 耳に入った声が聞き間違いでないのならば、
 よく知る"喧嘩"の声色だ。
 大体いつも、その時私とかサイト君が合間に入って仲裁していた覚えがある。
 
 ───いきてる?
 ───二人とも。

 そんな期待と希望を八割抱いて、止まった足が早歩きになった。
 声の聞こえる方へ、ずっと、ずっと、前へ前へ。
 
 不安は取り除かれない。
 起きる前に"見た"、不思議な出来事と、"聞いた"不思議な声。
 あれは……夢だったのだろうか、それとも、幻だったのだろうか。
 ……あんなことがあったせいで、今さっき聞こえたものもそうなんじゃないかと思って、身が強ばっていた。

SYSTEM :
 とりあえず、それがあなたの足を速めるには十分なものだったことは確かだ。

 近づいていけば、そのささくれ立った声が聞き間違いでないかも分かるかもしれない………と。
 無意識か、意識的にか。肩を落としていた足の動きが、だんだんと早くなっていった。

SYSTEM :
 道が道として整っていないから、踏みしめるものが背の低い叢に変わり始めた程度のことなど、たぶん颯/あなたには些細な話だったのだろう。

SYSTEM :
 ………近づいて行けば、段々と声の正体も分かる。
 問題は、その声のささくれ立った雰囲気は遠くからでも分かるってことだが。

生徒A :
「───兎に角! 俺は行くからな!」

生徒A :
「おんぶにだっこの颯が心配なんだろ!?
 だったらお前等そこで待ってりゃいい! いいな!」

SYSTEM :
 どうも口論の発端が何なのかは定かではないが、丁度あなたが着くころには、そのがなり声を上げた男は、肩を怒らせ踵を返してしまったところだった。

 お前等、という辺り、会話の相手は一人ではなかったらしい。
 そこにじっとその背を見て、何も口にするではない咲楽と………あと一人がいた。

 ただ、あと一人は別に、あなたを助けようとしてくれた男の子ではなかったようだ。

生徒D :
「行っちゃった。
 ダメっすよ咲楽ちゃん、あんな言いぐさしちゃあ」

池田咲楽 :
「………突っかかって来るの、いつもあっち。
 私のせいじゃな───」

SYSTEM :
 ………眉を下げて、口元を固く結んで。
 如何にも不服ですとばかりの顔をした幼馴染に、そのあと一人こと山田さんの言葉は、多少以上の意味はなく。

 意味があったのは、叢をかき分けてやってきたあなたの顔だったようだ。
 ぴたりと動きが止まり、颯が二人を視界に入れるのと同じくらいの速度で、声を発する。

池田咲楽 :「───颯!」

三廻部 颯 :
「い、」

 張り詰めた心が、そこで一時的に解けた。
 毎日聞いてきたものが、現実の外にあるような場所で聞こえている。
 涙の一つでも出したかったが、きっと海に流されてる時に潮でパサパサになっちゃったのかもしれない。
 
「いきてる」

 自分に言ったような言葉を、三人(一人は行ってしまったが)に口にした。

三廻部 颯 :
「いきてる……」

 へなへなとその場に座り込む。
 葉っぱがチクチクするとかそんな事は関係ない。
 一人でいることの寂しさがよっぽど堪えていたのかもしれない。

「よかった……」

池田咲楽 :
「こ───コラ、そんなトコ座らない
 生きてますから 足ついてるから」
 

SYSTEM :
 などと言いながら………慌てて駆けよって来た咲楽の反応を見るに、こちらが平静を保っていたということもなさそうだ。

SYSTEM :
 一歩遅れて、軽く息を吐いた山田さんが、もう遠くに行った背中を見る。
 口論の中心人物は、一度振り返ったようにも見えたが、その顰め面をさらに深めて、歩き出していくだけだった。

三廻部 颯 :
「あ、わ、ごめ……」

 その辺の木を頼りに立ち上がって。
 遠くに映った一度振り返った少年の顔を見て、名前を呼びかけた。
 だが歩き出すのを見て、伸ばしかけた手をおろしてしまった。
 
「行っちゃった」

三廻部 颯 :
「咲楽に……山ちゃん、かみき君も、
 みんな無事でよかった……」

 ……無事と言えるかどうかは疑問だが。
 少なくとも生きている点という意味では無事だ。
 あとはサイト君や、旭くん、先生や他のみんなが見つかればいいのだが……。

三廻部 颯 :
「……みんなも砂浜でおきたの?」

池田咲楽 :
「って、あ………そうだ、けど」

SYSTEM :
 ばつが悪そうに眼を逸らす。
 どうも起きないあなたを一人転がしていたことと、口論の原因に心当たりがあるが故の/あるいは何かしら言い出しづらいことのある反応らしかった。

 あなたの友達は、わりとこういう時の居た堪れなさを顔に出す。

生徒D :
「うーん………、無事って言えるならいいんすけどねー」

生徒D :
「とりあえず上樹くんと咲楽ちゃんと…たぶん? 颯ちゃんが同じトコだったみたいで、うちはついさっき顔見て巡り会いましたってトコっす」

三廻部 颯 :
(……私だけ長く寝ちゃってたのか)

 咲楽の反応を見てなんとなく思った。
 ふと少し考え込んだが、今は答えが出なさそうなので手放した。

三廻部 颯 :
「山ちゃんは一人だった……のかな。
 でも良かった、知ってる人に出会えて……」

「……ちなみに会ったときにもう喧嘩してた?」

 多分本人に聞いても堪えてくれるか怪しいので、
 矛先を変えた。

池田咲楽 :あなたの横顔に何か言いたげなともだちの視線が抗議の色を帯びかけた…

生徒D :「言い方からして、」

生徒D :
「この場にいなかったコ探そうって上樹くんと、此処から起きるまでは待ちましょって咲楽ちゃんがぶつかっちゃった感じっすよね」

三廻部 颯 :
「あ〜……」
 納得した。

池田咲楽 :「───え。ああ、うん。そう」

三廻部 颯 :
「……なんてゆうか」

三廻部 颯 :
「びっくりするくらい、いつもの感じがしたね」

生徒D :「でしょお。言い出したら聞かない方なんですから」

池田咲楽 :「うぐ」

池田咲楽 :
「………ぐぬ。
 私が悪い、とこ、も………なくはないけど、いつも突っかかるのはあっちだし」

三廻部 颯 :
「どっちもどっちだよ。
 ……今回はほんとにそう」

三廻部 颯 :
「まあ、私が寝ぼけてたのがよくない……んだけどね!」
 から元気。

池田咲楽 :「………………」

SYSTEM :
 どうもあなたの言葉を正面から受け止められるほど非がないとは思っていないらしい彼女だが、さすがにともだちの空元気には気付いたらしい。

池田咲楽 :
「あとで謝る。
 勢いで、割と言うこと言ったし」

生徒D :
「その謝る相手ならもう影も形もないんすけど。どうしましょっか」

三廻部 颯 :
「それが一番! ……んだけど」

三廻部 颯 :
「うーん、そうだね。
 追っかけた方がいいとは……思う」

三廻部 颯 :
「あんまり動くのも良くないけど、
 一人で動く方がよっぽど危険だし……」

三廻部 颯 :
「私も動いてたらみんなに会えたしね。
 旭くんとかサイトくんとか、見つかるかも……先生が見つかるのが一番いいんだけど」

生徒D :
「ま、どうしましょうもこうしましょうもないっすね」

SYSTEM :
 さすがの彼女も此処で「いよいよとなったら〜」といった笑えない冗談を仕掛ける気はないらしい。軽く顎に手を当て、うーんと唸ってから、消極的に”出来ることと言ったらそれくらい”の意味であなたの言葉を受け止めたようだ。

SYSTEM :
 しかしあなたの言葉と結論を受けてなお、咲楽の表情はあまり晴れなかった。
 それは口論の中心だったことへの罪悪感なのか、単にあの瞬間の旭がどこにもいないことへの感情なのか。

池田咲楽 :
「追いかけよっか。赤都」

三廻部 颯 :
「嫌?」
 表情を見てふと思った。
 "そういうことではない"と分かって。

池田咲楽 :「そうじゃない。流石にほっぽり出すのは」

池田咲楽 :「あんまりよくないし」

池田咲楽 :「………颯さ。起きる時………」

三廻部 颯 :
「? ……もしかして」

SYSTEM :
 あなたの言葉を遮るように、彼女は“なんでもない”と区切ってしまった。
 どうも「ばつの悪さ」には色んなものが混じっているようだが、何より、つい先ほどに起きた出来事から現在進行形の荒唐無稽さを、まだ信じ切れていないのが一番あるのかもしれない。

生徒D :「どうかしたっすか?」

三廻部 颯 :
(……咲楽も?)
 多分、当たっているのかもしれない。
 だがここでは話せない、のかもしれない。
 ……だって、飛行機が堕ちる直前起きたことを思い出せばそうだ。

「あ、ううん、なんでも……ない。行こ!」

三廻部 颯 :
 山ちゃんにそう言って、咲楽の手を引いて歩き出す。
 そしてふと、その視線を首元に向けた。

 そういえば、あの"お守り"は──……。

SYSTEM :
 あなたに手を引っ張られたことに気付いた咲楽が、最初小走りで歩幅を合わせ、それから歩き出す。
 特に何かを言うことはなかった。

SYSTEM :
 ………お守りは、まだ彼女の首にかかったまま残っている。
 あの時のおかしな輝きや、それに伴う反応は何もなく。咲楽は不定期にそれに触れたり離したりをするだけで、そこまで強く意識を向けている素振りはなかった。

SYSTEM :
 木々の生い茂った先を見落とすことは難しいが、それは颯にとっての現状もそうだった。
 映画かなにかの遭難に似ているが、そういうアニメやドラマのような都合の良さもない。

 ………かといって、歩いて行けば普通に追い付くはずの上樹の背中が見えることもなかった。

SYSTEM :
 ………ずっと続くかと思われた獣道が、急に開ける。
 だが、それならば見つかっていいはずの上樹の姿も足跡もなかった。

三廻部 颯 :
「……」

三廻部 颯 :
「あ、あれ? 足跡とか……ない?」

池田咲楽 :「あいつ………ずいぶん足早いな」

池田咲楽 :「なわけない、とは思うけど………」

三廻部 颯 :
「なくなあい……?
 足跡ってそんな早く消えるものだっけ……」

三廻部 颯 :
「こんな開けてるのに背中も見えないなんて。
 かみき君、結構身長大きいのに」

SYSTEM :
 辺りで彼が踵を返したような痕跡もない。
 間違えるも何も、道を知らない。
 このまま真っ直ぐ進んでもいいが、“まだ”一本道だった獣道と違い、ここは文字通りの平原だ。彼がどこに道を逸らしたかも定かではないし、流石にここで足を止めないほど豪胆には思えない。

池田咲楽 :
「だいたいコレ見てもずっと真っ直ぐなんてヤツじゃない。………困ったな」

SYSTEM :
 そうして。
 引かれている方の手を握りながら、第三者に意見を仰ごうとして、

池田咲楽 :
「───。颯」

三廻部 颯 :
「? なに?」

池田咲楽 :
  ・・・・・
「…山田さんは?」

三廻部 颯 :
「え」

SYSTEM :
 木々をかき分けて、開けた風景になってからどうも反応のない彼女の姿が、今度は忽然と消えていたことに気付いたのは。
 そこからすぐのことだった。

三廻部 颯 :
「え、えっ、ちょ───あれ!?」
 
 手は離さずあたりを見回す。
 いつの間に? でもそんな音も気配も……、

「て、手、握っておけばよかった……じゃなくって!」

三廻部 颯 :
「うそっ、どこにもいない! 神隠し!?」

三廻部 颯 :
 颯の身が強張る。
 滲み出た手汗が、その緊張を物語っている。

SYSTEM :
 強張った声と言外の緊張。
 普段ならば割と『ドッキリ大成功』くらいのテンションで顔を出してくることもザラではなかったと記憶していた山田さんであるが、今回はそんなジョークではなさそうだった。

池田咲楽 :
「………と、にかく!」

池田咲楽 :
「探そう! ………居なくなったのがすぐなら、単にはぐれただけかも───」

SYSTEM :
 そんな簡単に見落とす距離にはいなかったことを分かっていながら、やや無理矢理再開を提案した彼女の声は、颯の不安を少しでも和らげようという、大した意味のない気遣いだったのかもしれない。

三廻部 颯 :
「あっ、う、うん、そうだね!」

SYSTEM : 
 いなくなったならさっきの林道ではないかと、踵を返す。
 だが、林道のどこを見ても彼女は見つからない。

SYSTEM :
 ましてや、来た道を戻っている時の足跡はちゃんと4人分残っていたにも関わらず、草原には見間違えではないと分かるほどに、人の痕跡はなかった。

 ………もしも徒労と言う言葉を使おうと思ったのなら、それはこの時に違いない。

SYSTEM :
 見知らぬ島で出会った二人とは、顔を見るなりまたはぐれ。
 意味があったのかはさておき、飛び込んで来てくれたはずの少年の姿もなく。

SYSTEM :
 ならば砂浜には誰ぞまた来ていないかと、希望を込めてやって来てみれば、そんな希望的観測に意味はない。

 島自体が、あの現実感の無い出来事から地続きであることを、これ以上ないほど証明していた。

SYSTEM :
 時間だけが過ぎていく。

 颯と咲楽がそれでも足を止めなかったのは、きっと此処でふと我に返ると、不安で押し潰されて、一歩も先にも後にも行けなくなるからだ。
 なまじ普段が快活なだけに、その反動も大きかった颯を落ち込ませまいと、珍しく咲楽はそんな表情を表に出し切ろうとはしなかったが。

SYSTEM :
 それでも。
 時間が何かを解決してくれることは、なかった。
 

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………“歩き疲れた”が表に出る頃。

SYSTEM :
 浜辺沿いに歩いていた二人は、人の影には出会わなかった。
 もしかしたら同じことを考えている人がいるかも、叢より見つけやすいかも、なんて言い出したのは何方だったか。

 けっきょくそれは徒労だった。
 まだ日は沈んでいなかったけど、そこに誰かの気配はないままだ。

三廻部 颯 :
「…… …… …… ……」

三廻部 颯 :
「…… …… …… ……
 …… …… …… ……」

三廻部 颯 :
 誰もいない。
 なにもない。
 
 颯の頭の中に、もう二文字ほど言葉が浮かびかけてきた。
 だが彼女は、そこで滲みかけた涙を無理に引っ込めた。
 それは咲楽が表情を変えずにいたのと同じで。

三廻部 颯 :
「……どうしよっか」

三廻部 颯 :
「叫んでみる……?」

池田咲楽 :
「叫ぶって」

池田咲楽 :
「………どうかな。
 案外聞こえたりするのかな」

三廻部 颯 :
「かも……」

SYSTEM :
 これが沖縄の海前でやるものなら、案外勢いだけでやるものだから楽しかったかもしれないが。
 今はそういうものでもない。
 少なくとも、起きた時の期待やら何やらが残っている状況ではなかった。

SYSTEM :
 ………しかし他にすることもない。咲楽は少し考えたのち、その結論を覆すものが見つからなかったらしい。

池田咲楽 :
「やるだけやって、ダメなら………。
 ちょっと休んでから、またいこ」

三廻部 颯 :
「……だね」

池田咲楽 :
「大丈夫。大丈夫だから………。
 根拠ないけど。普段これ言うの、颯の方じゃん」

三廻部 颯 :
「……うん」
 言い訳はしなかった。
 いや、出来なかった。

三廻部 颯 :
 颯は一旦手を離して、
 自分の両頬を叩いた。
 気合を入れ直して、気持ちを入れ替えるつもりで。

 心が乱れていたら、なにをするにしても失敗する。
 お爺ちゃんは、そんなことを言ってた。
 手を繋ぎ直して、息を大きく吸う。

三廻部 颯 :

「お──────い!!!

 山ちゃーん! かみき君ー! 旭く──ん!!」

「誰か───! いませんか───!!」

 サイト君でも先生でもいい!
 めいっぱい声を張り上げた、5月ごろの体育祭を思い出すように。

SYSTEM :
 海に声が木霊する。
 めいっぱい張り上げて、色々なものを込めて、内側から外側に押し出された、年頃の少女ひとり分の声───。

池田咲楽 :
「………誰かいませんか───!!」

SYSTEM :
 正確には二人分。
 カラオケに引っ張って行った時の、途中から案外満更でもなかったあの日のような例外しか声を張り上げない少女/咲楽が、有言を実行するように、なりふり構わない、あなたよりちょっと小さいくらいの援けを求める声を響かせた。

 文字通りの、等身大のSOS。

 何が返って来てもいい───。
 そう思っていたわけでは、流石にないだろうが。
 少なくとも二人ぼっちになって暫くした颯と咲楽について、その渾身に込めたものは間違いなく一致を見ていた。

SYSTEM :
 誰でもいい。

 誰かいないのか。
 取り残さないで。

 ひとりでないことは、二人にとってか細い希望のようなものだったが。
 二人でしかないことは、それを紛らわせても、根本的な不安の解決に進むものではなかった。

SYSTEM :
 まして二人は、ふつうの少女だ。

 ちょっと習い事の方向性が男の子顔負けな方と、すこし家の言い伝えが古い方ってだけで、それは等身大の少女と何ら変わるところはなかった。

SYSTEM :
 ………二人に非はない。

 さらに付け加えて言うなら、
 この時二人が何をしないでも、間は等しく悪かった。

SYSTEM :
 大きな、獣の遠吠えが聞こえて。
 ずしん、と足音が幾度か響いた。

 そもそも声を張り上げる前から、
 わりあい近くにいたらしい。

池田咲楽 :「───、え」

SYSTEM :
 その足音が、ふっ………と。
 消えた。

SYSTEM :
 ひときわ大きな、着地の音。
 ずしん、と響いて、砂をかき分ける音。

 結論から言えば、それは誰かだった。

SYSTEM :
 確かに誰かがやって来たが。
 その姿は、少なくとも人ではなかった。

SYSTEM :
 ………砂煙が吹き上がる。

三廻部 颯 :
「───、あ」

 反応は、ほぼ同じだった。
 ……何かくる。それも人ではない何か。
 いつの日か、咲楽の実家の周りに現れた野犬なんてものじゃない、なにかが。

 ……なにかが、くる。

SYSTEM :
 むかし───。

 あなたがまだ小学生くらいだった時のこと。
 幼馴染が幼馴染になるまでの頃。

SYSTEM :
 きほん、昔から今も変わらないあの神社で過ごしていた咲楽を、
 あなたは毎日ではないにせよ、遊びに誘っていた。
 一礼して…とか、居留守です…とか、適当言ってごまかしていた当時の咲楽だが、暫くして折れてくれたのか、咲楽はあなたの手に引かれて歩き出して。
 丁度、間の悪く野良犬に出くわしたことがある。

SYSTEM :
 野良犬をあなたは夢中になって追い払った。

 その時のことが切欠だったのかは定かでないが。
 あなたは空手やら何やらと習っていたわけだ。
 あるいは、習っていたから追い払えたのかも知れない。

SYSTEM :
 ………一週間後、図工のなんでもない授業の小刀でけがをしたあなたを。咲楽は誰が何をするより早く保健室に連れて行って、ハンカチを貸して、保健室の先生に『もう大丈夫』と言われるまで付き添った。

 それから、彼女はあなたを切欠に、今くらいには他人になじんだ。
 あるいは、幼馴染と呼べる間柄になるまでの出来事だ。

SYSTEM :
 咄嗟にその日の出来事を思い出したあなたであるが、それは正しい。
             ・・・
 確かに目の前に現れたのは野良犬だ。

 体毛があって、四足歩行で。
 遠吠えをする生き物なら、きっとそうだ。

SYSTEM :
 ………だが。

SYSTEM :
 だが。

 凍り付いたように動かず、そっと颯と距離を庇うように詰める咲楽同様に。
 あなた自身が、思い切り何かをしようとは思わなかっただろう。

SYSTEM :
 あの日の勇気は───。

怪物 : 

SYSTEM :
 思うに。

 自分より一回り二回りも大きく、禍々しく、遠くからでもわかるほどに“熱い”ものを纏った野良犬/狼などに振るうものではなかったからだ。

三廻部 颯 :
「───」

 言葉が出ない。
 野良犬は、"面倒だ"と思ったらそこで深追いはしてこない。
 それは相手が手こずると判断するからだ。

 ……通常なら。

「っ、あ……、」

 目の前のは、果たしてそうだろうか。
 いいや───違う、断じて違う。

三廻部 颯 :
 "やめろ"とか、
 "あっちいけ"とか、
 そんなことが通じるような、大きさでもなく。
 ……それに、野良犬とは思えない、何か。
 自分の目を疑いたい何か。
 漫画とかアニメでしかなさそうな、何か。

 それがなんなのかなんて知りっこない、そう言わざるを得ない。
 
 颯の頭の中に、つい先刻浮かびかけた文字が、もう一度浮かび上がってくる。
 それで埋め尽くされると、彼女はパニックになる。
 それもそうだ、颯は、ただの少女だから。

三廻部 颯 :
「やだ───いやだよ……」

 引き攣った声が漏れ出る。
 一体どうしてこうなってしまったんだろう。
 ただ、楽しい修学旅行に行くだけだったのに。
 朝、お父さんにおはようを言って、朝、お母さんに行ってきますを言って。
 弟を、叩き起こして、それでドアを開けて、出て、
 歩いて、咲楽を起こして、眠たげな幼馴染を連れて、電車に乗って、それから、それで、それで、そうして、空港に、着いて、飛行機に、乗って、それから、それから、それから、それから、それから……、

「ぁ、───っ、あ……」

 颯は、咲楽の手を握ったままだった。
 そして、その手を少し引こうとした。
 無駄だと分かっている。頭がそれを信じている。心もそれを理解している。
 けど、
 けど、

「にげ───な、きゃ……」

SYSTEM :
 陽炎のようにその躯体を揺らめかせながら。
 そいつが、砂地を“じゅわ”と焦がし。
 ばちり、ばちりと。火花を散らしながら、歩いて来る。
 
 アニメかドラマのように都合の良い事はないとつい先程言ったが。
 目の前のそれは、そういう世界の生き物だ。
 そして………自分たちに都合の良いものを齎してくれるとは思えなかった。

SYSTEM :
 そしてここから、更ににわかに信じがたいことなのだが。

怪物 :
   ・・・・
『───どっちだ?』

SYSTEM :
 その。
 空想の生き物としか思えないヤツが、
 遠吠えではなく明確に、クチを利いた。

池田咲楽 :「なに、を───」

三廻部 颯 :
「───……は……?」

怪物 :
『背丈も同じ………。
 あァ………めんどくせェなァ』

SYSTEM :
 あなたたちの驚きに全く取り合う素振りもなく。
 ただそいつは、二人を見比べて何かに気付いたらしい。

 赤いまなざしが、喜びに細められる。

怪物 :
 ・・・
『こっちか。よしよし。
 じゃ───』

SYSTEM :
【Check!】
 ???は『ヒューマンズネイバー』を所持しています。
(フレーバー宣言)

三廻部 颯 :
 ───やばい。
 なにがおこるのかもわからないけど。

 ……とにかくやばい───!!

怪物 :
『───よいせ。
 じゃ、俺様が一番乗りだ。そっちのガキ寄越せや』

SYSTEM :
 その言葉と共に。

 ぐにゃり、と姿が歪む。 

SYSTEM :
 四足歩行の狼が、二足歩行に。
 バキバキと音を立てて、狼の姿でも大きかったそいつが、全長にして大の大人すら子ども扱い出来るほどの長身に変貌する。

 流暢かつ、粗野に。
 なれど言葉を択ばず会話もせず。

SYSTEM :
 そいつの腕が、乱暴に伸ばされる。
 最初からあなたに見向きもせず、掴もうとしたのは───。

池田咲楽 :「んな、───」

SYSTEM :
 がしり、と。
 咲楽を片方の巨きな腕で鷲掴みにする。
 足元から立ち上る熱はそれを掴むときに収まったが、この生き物の目当ては幸いにも/不幸にもあなたではなかったらしい。

怪物 :
『───お〜よしよし暴れんじゃありませんよガキ。
 うっかりすると潰しちまいそうだ。ギャハハ!』

SYSTEM :
 くつくつと、人狼が低い声であざ笑う。
 抵抗をからかうような素振りに、此方への配慮などあろうはずもなく。

 口ぶりには、何をされても揺らがないという優越感だけがあった。

池田咲楽 :
「っ、の、………や………ッ!
 な、して………離せ………!」

三廻部 颯 :
「───咲楽!!」

 もはや悲鳴に等しい声が上がった。
 巨大な狼が現れて、しゃべって、立ち上がって?
 それでその大きな手で咲楽を掴んで───何をするっていうの?
 
 わからない。なにもかもわからない。
 けれど、けれど……、

三廻部 颯 :
 けれど、ここで、
 何もしないで、いられるのか。
 
 思い出とか、記憶とか、そういうの全部が、私の中でリプレイされていく。
 もし、ここで何もしなくても、何かが起こるかもしれない。
 そういうのに縋ってもいいのかもしれない。

 けれど、

 けれど──、

:
 あの日の勇気は、
 あの日の恐怖から生まれた。

 ならば、

 この日の勇気もまた、
 この日の恐怖から生まれるものだ。

三廻部 颯 :
「───、このっ!!
 咲楽を離しなさいっ!!」

 効くのかとか効かないとかもはやどうでもよく。
 それを振るうべき相手が人でないこともわかっている。
 けど体が勝手に動いた。頭も勝手に判断した。心も勝手に導いた。
 
 大凡年頃の少女とは思えぬ身体能力は、日頃の"らしくない"習い事のおかげで、
 恐怖よりも、蛮勇が勝った少女の体は跳び、その蹴りを獣人に叩き込もうとしていた。

SYSTEM :
 後々を思えば。
 その行動に決定的な意味はあったのだが。

 この時点、この瞬間に関して。
 その勇気に意味があったのか。

SYSTEM :
 蹴る音が響く。
 ビクともしないばかりか、ばちり、と何かが走るような感覚は、手応えではない別の何かを颯に伝えていた。

 だがそんなことに意味はない。
 理解する暇もあったかは怪しい。
 青褪めた咲楽の顔と、嘘みたいに平然とした人狼の反応が全てだった。

怪物 :
『───んあ?
 テメェなんだその………足?』

池田咲楽 :「っ………やめて、早く逃げ、」

SYSTEM :
 その咲楽が何かに気付くより前に。
 ・・・
 そいつの激発の方が遥かに早かった。

怪物 :

『クソカスが………。

怪物 :
 ブリテン シケ
 英国の湿気た拝み屋どもの、
. アメコウ
 合衆国のトチった化物どもの、
 ジャップ
 日本の意味分からん理不尽野郎どもの、
 
 千倍も万倍も億倍も弱っちいプチプチの分際で………』

怪物 :
 ・・・
『なんだって聞いてんだその態度はァァァァァ!!!』

SYSTEM :
 そいつにとって蚊に刺されたようなものでもない痛みであるが、
 この人狼は”それ”に耐えられる気長な生き物ではなかったらしい。

SYSTEM :
 文字通り。

 激発と同時に、あなたの視界が真っ赤に染まった。

 そいつの腕が。
 触れるだけで砂を焼いた熱の塊、その先端の爪が。
 障子紙でも切り裂くように、あなたの勇気を蹂躙した。

:
 そう、勇気とは恐怖から生まれるもの。
 だがそれが、いつも正しいものとは限らない。

 勇気とは、それそのものが爆弾なのだ。
 人を死へと追いやる、蛮勇という名前の爆弾。

三廻部 颯 :
「───あ」

 そこで「え」とか「なんで」とか、「どうして」とかは出なかった。
 そこの疑問を挟む余地のないものだったからだ。
 彼女にとってこの勇気は、何もかもを振り絞ったもので、
 半ば破れかぶれだったのはいうまでもない。

 まだ、恐れていた時の方が……マシだったのかもしれないなんて。
 少女に思いつくはずもない。

三廻部 颯 :
 最後に言葉が出なかった。

三廻部 颯 :
 なんだ、って?
 なんだって、そんなの決まってる。

 許さない、それだけ……、だ。

三廻部 颯 :
 ……、……、…………………………。

池田咲楽 :
「はや、て」

SYSTEM :
 その様を見た彼女の、蚊の鳴くような。
 呆気にとられた声だけが、耳に残った。

池田咲楽 :
「………ねえ。冗談でしょ。やめてよ。
 ねえ、タチ悪いよ。怒るよ。起きてってば───」

池田咲楽 :
「………嫌だよ、起きてってば、颯───!」

SYSTEM :
 その譫言とも駄々ともとれる声に、我を忘れて伸ばされた手。
 耳元でやられたことが気に障ったのか。
 元々気の長い方ではないらしい人狼が、軽く力を強めたらしい。

 その嘆願を塗りつぶすように。
 小さく、少女の呻き声が走る。

SYSTEM :
【Check!】
 判定が発生しました。

 判定:〈意思〉
 目標:10
 Success:イベント進行
  Failed:イベント進行

 備考:成否を問わずシナリオ進行

三廻部 颯 :

三廻部 颯 :1dx <精神:意志> (1DX10) > 6[6] > 6

SYSTEM :
【Check!】
 判定に失敗しました。
 イベントを進行します。

SYSTEM :
 途切れていく意識。
 ありふれた範囲を出ない生き方をしてきた、
 なんてことない幸せと一緒にいた少女への、
 あまりにも有り得るはずがない終わりがソレだったが。

 たった一つだけ、その勇気に意味を見出すならば。

SYSTEM :
 それは少なくとも、このあとすぐ。
 数秒の境目が何かを分けていたことだけは確かだ。

 ………しかし、それが何なのか。
 これを見届けるには、あなたの意識はいっぱいで、繋ぎとめる余力などなかった。

SYSTEM :
 ただ、ともだちの。

 あなたを呼び、援けを呼ぶ、呻くような声だけが。
 ずいぶんと小さい音のはずなのに、鮮明に聞こえた。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………重い瞼を、無意識に開く。

SYSTEM :
 引き摺り込まれるように墜落し、
 押し流されるように浮遊して。
 海底へ潜り込むように移転する。

 あなたの知らなかった、重力の井戸の底。
 地球の七割を占める海の底。
 一足早いダイビングの体験にしては、ずいぶんと現実離れした風景。

SYSTEM :
 あなたを切り裂いた痛みも、流れ出す血の痕跡もない。
 ふわふわと浮いたような感覚は、水の中にいるような感覚によく似ていたけど。
 呼吸にも、歩くことにも、なんら支障はない。

 あなたが次に目を醒ます時は。
 そういう、よくわからないところにいた。

SYSTEM :
 あなたは先程、確かに。
 あれを夢だと逃避するには無理な程度には鮮明に。

 あなたは、人生ではじめて。
 身体が冷たくなる感覚といっしょに、眠りに着いたはずだったのにも関わらず、だ。

三廻部 颯 :
「…… …… …… ……!!」

 はっ、と強く息を吐いた。
 今自分が"見ていた"ものがなんだったのか、"聞こえた"ものがなんだったのか、
 自分が受けたものがなんだったのか、
 それを確かめられないことを知らしめるように眼前に広がる海の底、一面の青。

「い、」

 ふと体を見る──怪我はどこにもない。
 息もできるし、血も出ていない、あるけもする。

「いきてる……?」

 けど、実感はなかった。

三廻部 颯 :
「って───ここ、どこ!?」

 海の底。
 ばっ、とあたりを見回す。
 青、青、青、青──どこを見ても青青青青青。
 青しかない、海の底。

 息もできるし、圧力で潰れる感じもしない、浮かぶ感じもしない。
 ここって本当に海の底? そんな疑問すら湧いてくる。
 

三廻部 颯 :
「どっ…………、
 どど、どうして? もしかしてまた流されちゃったのかな、ポイ捨てされちゃった?」

 ……から元気を振りまく相手もいないのに、から元気を出した。

SYSTEM :
 ………つい先ほどまでならば、あなたの空元気を察した友達が付き合ってくれたかもしれない台詞だが、生憎とその友達はここにいない。

三廻部 颯 :
「あう……」

三廻部 颯 :
「こ……ここ、声通るのかな……えっと、……あ、でも……」

 ふと「叫んだら誰かいないかな」とか思った。
 ……それをやった結果が、さっきのアレなのだから。
 颯は身を硬らせた。

SYSTEM :
 確かに言葉を発することは出来たが、ついさきほどはその言葉が人狼を招いていた。

 結果を鮮明に覚えている。
 あれは、夢ではなかった。

SYSTEM :
 ………今日の5時に飛び起きたあなたを見るや否や、
 困り笑いしながらもやさしく「おはよう」を伝えてくれた、あなたの父。

SYSTEM :
 ………いざ出かける瞬間に忘れ物をしていたことに気付いて、
 向かう前に引き留めてくれた、元おっちょこちょいらしいあなたの母。

SYSTEM :
 ………叩き起こされた直前の、ちょっと生意気な口聞き出すようになった弟。

SYSTEM :
 ………意識を失う直前に、あの狼に連れ去られそうになっていた、
 ああやって普通に笑うまでずいぶん時間のかかった、あなたの友達。

 ………その他、数えきれない繋がり。

SYSTEM :
 色んなものを遺して。
 いま、あなたは独りだ。

三廻部 颯 :
「…… …… …… ……
 …… …… …… ……」

三廻部 颯 :
「…… …… …… …… …… …… ……」

三廻部 颯 :

「──────…… ……あ」

三廻部 颯 :
 少女はそこで、ようやく現実に気が付いた。
 ここには誰もいない。
 私一人しかいない。

 一人から、三人になって、
 三人から、二人になって、
 二人から、一人に戻った。

 誰もいない、海の底。
 

三廻部 颯 :
「…… …… …… ……ここ、あの世なのかな?」

 困った。
 ああ、本当に、困った。
 そうだったとしたら、それじゃあだめだ。
 帰れない。家にも、学校にも、友達のところにも。
 頭の中から、文字は消えていた。
 だって、文字を浮かぶ理由がないのだから。

「…… ……そっか…… ……」

 死んじゃって、その後目覚めた場所なんて。
 ふつう、そういうところだろうし。

三廻部 颯 :
「………… …………そっか、しょうがない、よね」

 死にたくない、と思ったのは。
 それはまだ生きているからで。
 死にたくないと思えないのは。
 もう死んでいるからなのかもしれない。

「……」

三廻部 颯 :
「……、でも」

 ……少女は、つぶやいた。

三廻部 颯 :

「…… …… ……独りは、いやだな───」

SYSTEM :
 ………独りはイヤだ。
 吐露した感情には、奇妙な既知感があった。

 あなた自身のものではない。
 この海鳴りが運ぶものであり。
 あるいは───。 

SYSTEM :
 ………そのあなたの眼前に、ぼうっとした光が見える。

SYSTEM :
 はじめ錯覚と思うような小さな光。
 少なくとも、飛行機であの”裂けた”ような瞬間に覗いた赤いものではなく。
 海底で、今なお鳴り響く、孤独な男の言葉ではなかった。

三廻部 颯 :
 独りは嫌だ。
 物心がついて、友達を作って、いろんな人と仲良くなって、
 それが全部、泡のように消えていくのが、嫌だった。
 私だけが置いていかれるようで、独りになっちゃう気がして、嫌だった。

 ……座り込んで、塞ぎ込もうとしたとき。

三廻部 颯 :
「…… ……?」

 自分の目の前に、光が見える。
 とても小さくて、幻覚だと思ったくらいの。
 でもそれは、初めて会うものだった。

三廻部 颯 :
  ・・
「……誰か、いるの……?」

SYSTEM :
 答えは言葉ではなかったが。
 微かにその光が近づいてくる。

SYSTEM :
 あるいは、近づこうとすれば勝手に自分から触れられるだろうが。
 近づこうとしなくても、その声を皮切りに、少しずつ仄かな光が大きくなっていく気がした。

三廻部 颯 :
「わ、わぁ……」
 手を伸ばしかけて、大きくなっていくそれにちょっと身じろぎする。

SYSTEM :
 ………それが大きくなるにつれて。
 少なくともこれが、先程の人狼のような、ひと目で見てわかる恐ろしさ/怖さを伴わないものだけは分かった。

SYSTEM :
 海鳴りの声が、やがて少しずつ強まって行く。
 あなたのもとに近付いて来る光の正体が何か、図ろうとしたときには、既にそれが大きくなって………。

SYSTEM :
 ………一瞬。

 ぱちり、と目を何かが覆った時。
 次にあなたは、海の底とは違うどこかにいた。

SYSTEM :
 鳥居───。
 
 昔、遠慮なく潜ったら、咲楽に「一礼…」と半目つきで言われたアレに、よく似た鳥居。
 記憶の何処かにある、池田咲楽の家には似ても似つかないけど。ただ、何処かそういうところに雰囲気が似ていた。

SYSTEM :
 後ろを振り返っても、そこには石段があるだけで。
 あなたの記憶している限り、ついさきほどまで広がっていた海の蒼はない。

SYSTEM :
 ………鳥居の向こうには、誰かがいた。
 ・・・・・・・
 誰かいませんか、に対する。
 あるいは、そのぼうっと点灯した光側からの答えだったのかもしれない。

三廻部 颯 :
「え」

三廻部 颯 :
「あ……あれ?」

三廻部 颯 :
 視界を何かが覆って、
 瞬きをしたら、別の場所にいた。
 ……目の前には鳥居がある。
 颯は首をかしげた、かしげざるをえまい。

三廻部 颯 :
「!」

 ……鳥居の向こうに誰かがいることに気がつくのは、ほんのすぐのことだった。
 慌てて駆け寄ろうとして──はっ、と気がつき。
 踏み越える前に、一礼をした。

(……かみさま。
 私は、……私はみんなで、帰りたいです。
 みんな生きて、帰りたいんです)

(だから……だからお願いします。
 私たちを、見捨てないでください)

 一礼の時に、少女は願った。
 その神頼みは、泡のように消えていく。

(そのためなら私──なんでもがんばるから……)

三廻部 颯 :
 そうして一礼を終えた少女は、そろり足で鳥居を越える。
 その誰かを頼りにするために。

SYSTEM :
 果たして神頼みに意味があったのかは定かでない。
 だが「一礼してから潜る」を何度も執拗に口にした友達の言葉を、あなたが忘れることはなかったようだ。

 ………そしてその誰かは。
 少なくとも出会い頭に、あなたに悪意を振りまくような人間ではなかった。

SYSTEM :
 何もかも覚束ない、夢か現かも定かでない中。
 あなたのお祈りの言葉を透かしたかのように、男の声が響いた。
 

SYSTEM :
   ・・・・・・・・
 ───俺は神様ではない。

SYSTEM :
 鳥居の奥から、ゆらりと現れた男は。
 それはまあ見事な仏頂面で。
 しかし潜って来たあなたには、はっきりとその姿が分かった。

 高校ごろの教科書に乗っているかは微妙だが、少なくとも現代日本で見かけることのないような和装に身を包んだ男だった。

『青年』 :
「俺は█▇▅▇▇▅█だ」

SYSTEM :
 名乗り名だけは定かでなかった。

三廻部 颯 :
「えっ!!!」

 鳥居があるから神社だと思って神頼みしたのに。
 神様じゃないと言われた。

三廻部 颯 :
「えっと……じゃあ……仏様?」

 そういえば鳥居のあるお寺もあるとかいう。
 ふと思ったそれを口にしたが、多分違う気がする。
 仏様といえばあのぶつぶつ頭に長い耳だ。
 
 目の前の人は……そうみえない。
 むしろ昔の人の格好、って感じだった。

三廻部 颯 :
「え、えっと……」

 名前聞き取れなかった……。

「あ、えっと……三廻部颯って、い、いいまあす!」

『青年』 :
「もっと違う」

 仏様、は更に認識として違ったらしい。

三廻部 颯 :「違った」

『青年』 :「………何処から来た?」

三廻部 颯 :「え? どこからって……」

三廻部 颯 :
「……し、質問を質問で返しちゃだめですか?」

『青年』 :
「俺に知り合いはいない。
 ずっと此処にいて、ずっと探し物をしている………」

『青年』 :
「そういう愚か者だ」

SYSTEM :
 何処からと言われたら、ずっと此処としか言えない。
 彼の言葉は極めて不足していたが、
 何が言いたいかだけは何となく口振りから察せられた。

三廻部 颯 :
「は、はぁ……」
 
 ……なんというか。
 行間が抜けている気がする。
 ここがどこなのかはわからないが、この人はここで一人で何かを探しているらしい。

「……えっと、……なんていうか……島、的なところからここに……」

三廻部 颯 :
「……何を探してるんですか……?」

 なんというか、
 頑張って国語力が求めらている気がする……助けて現国の佐藤先生!

SYSTEM :
 何を探している。
 その言葉に、青年は聊かに目を細めた。

 続いて思案するかのように瞑目し。
 代わらぬ淡々とした声色で呟いた。

『青年』 :
「海の底だ」

『青年』 :
「そこならば………会える。
 ………だが、そんなことはいい。いまさら、俺が何を思ったとて変わらない」

SYSTEM :
 男の口振りは諦観と、それでもあきらめきれないものに対する感情が渦巻いていたが。
 少なくとも、顔色一つ変えないわりには、あなたの言葉に応えようという意思はあるらしかった。

『青年』 :
「………」

SYSTEM :
 沈黙のまま。青年があなたの近くに、何を思ったか歩み寄って来る。
 その眼を見て、そっと手を翳すと。
 何事かに気付いたのか、嘆息した。
     ・
 あなたの島という言葉に、どうも思うところがあったらしい。
 何事かしようとしたが、それが“出来ない”と勘付いたようだ。

『青年』 :
「俺に他人を援ける資格はない」

『青年』 :
「そして俺がおまえを援ける術もない」

三廻部 颯 :
 海の底。
 ……ここは海の底ではない?
 とか考える余裕が生まれるほど、ちょっと気持ちが和らいできた。
 何より困惑の方が強かった。

 行間をすっ飛ばされて答えが出てくるので理解に少し時間がかかった。
 つまり、彼には私を助けることはできない、その方法がない……ということらしい。

 目を見るだけで分かったのか……という驚きもありつつ、

「そ、そうですかぁ……」

三廻部 颯 :
 見事にまた肩を落とした。

『青年』 :
「だが………、おまえがおまえを援ける術なら教えられる」

『青年』 :
「………おまえは死んでいる。
 島に流れ着いたものは、ひとしく海へ独りで還る。
 俺の居場所に辿り着いたということは、そういうことだ」

SYSTEM :
 極めて言葉の不足する男だが、そこだけは暈すことなく正しく伝えた。

 先の話は、己は何をあってもここを動かないが、あなたがもう一度『島』に戻る方法なら、用意できないこともない………という意味合いらしい。

『青年』 :
「………楽じゃあない。
 あるいは、此処にいた方が、痛みはない」

SYSTEM :
 そして。
 此処から元の所に戻ることが、ともすればここにいるより楽ではないことも。
 彼は端的に口数の少なすぎる人間だ。

三廻部 颯 :
「……」

 もしかしたらあの世かもしれないと思った。
 もしかしたら死んでいるのかとも思った。
 だが、いざ「死んでいます」と言われると、ショックは大きいものがあった。

 ここはつまり、本当にあの世らしい。
 ……じゃあ目の前の人も───と思いはしたが、

三廻部 颯 :
「……」

 返事が少し止んだ。
 痛みを伴う方法。
 その痛みがどれくらいのものなのか、想像するのは難しい。
 ここにいた方が───即ち、死んだままの方が楽でいられるという。

:
 ……ふと、少し前の記憶が蘇った。

:
<………ねえ。冗談でしょ。やめてよ。
 ねえ、タチ悪いよ。怒るよ。起きてってば───>

<………嫌だよ、起きてってば、颯───!>

三廻部 颯 :
(……怒ってるんだろうな───)

三廻部 颯 :
「……!!」

 だったら尚のこと死んでいられない。
 咲楽はあの獣人に捕まったままなのだ。
 このまま楽でいていいはずがない……なにより……!

三廻部 颯 :
(……家族のみんなも心配させたままだし、
 咲楽はああ見えて危なっかしいし、
 かみき君だって勝手に行動するし、山ちゃんの行方だってわからないんだし──)

(私一人だけ楽にゴロゴロしてていいはずがないじゃん……!)

三廻部 颯 :
「……お願いします!
 楽じゃなくても、死んでられないです!!」

三廻部 颯 :
「だって私、まだ生きていたいから!!
 17(ジューシチ)で死ぬなんて嫌です! 許さないもん!!」

SYSTEM :
 なに、なぜ、なんでを聞くことのない即決に。
 青年が何を思ったのかは定かでない。

 だが彼の心境と動機を思えば、その即決を責められるようなものではなかった。

『青年』 :
「………俺のところに、もとより誰かが辿り着くことはなかった。
 俺はいつも独り………」

『青年』 :
「いや。此処にいる時から、独りになった。
 独りで死んでいくものを、見て来た」

SYSTEM :
 男は淡々とした口ぶりで、あなたの言葉を聞いていた。
 ───手にした刀を地面に置く。

 その仕草の時、見知った海色の輝きが、彼の首に掛かっているものに垣間見えた。

SYSTEM :
 男の首飾り/勾玉は。
 咲楽の持っていた御守りと同じだった。

『青年』 :
「その刀は………。
 おまえを、隣の人間と“同じ”ではなくする。

 俺が嘗てそうであったように、おまえもそうなる」

『青年』 :
「………おまえは十七…成人したてでは死なぬとも。おまえ自身の命に、苦難が付き纏う」

『青年』 :
「俺はおまえを援けない。
 おまえがこれを手に執ることを俺は強要しない」

SYSTEM :
 ………一瞬で増えた口数は、彼なりの「本当にいいのか?」の確認だった。

 男が置いた刀は、何の変哲もない日本刀である。触れたところで使い方も定かではない。
 ましてや、それを握ったから此処から出られる、というのも確かでない。

 ただ、眼前の男は。
 致命的に嘘とは無縁の人間だったこと。
 それだけが、根拠だ。

三廻部 颯 :
 首飾りを見た時、颯の視線は僅かに揺らいだ。
 あの勾玉は──あのお守りと同じものだった。
 ……そう思うと、私が落ちた時に、どうしてあのお守りが光っていたのか。
 そもそもどうして、私たちが流れ着いたのか、なんとなく、本当になんとなくだけれど。
 
 偶然じゃないような、錯覚を覚えた。

三廻部 颯 :
 ……すごく気になることだ。
 けど、考えても仕方がないことかもしれない。
 聞きたいことなんていくらでもある……けど、

三廻部 颯 :
(……時間がない、かも)

 ……楽じゃない手段を取るということは、
 自分がこれまで享受してきたものを捨てるということらしい。
 咲楽のことを思い出す。家族のことを思い出す。かみき君たちのことを思い出す。
 ……、私は、同じじゃなくなる。

 ずっと、苦しいことが続くって。

三廻部 颯 :
 ……。

三廻部 颯 :
 とても怖い。

 正直にいえば、そうだ。

三廻部 颯 : 
 これからずっと苦難の道を行くことは、
 死んでいた方がマシだったと思うようなことなのかもしれない。
 それがどういうものかなんて、私の頭では想像もしきれない。
 
 だけど……、

三廻部 颯 :
 だけど。

三廻部 颯 :
 それでも私は、生きていたい。
 死んでも死にきれない。
 やりたいことだって、何にもできていない。

 それに。
 友達が──咲楽が、みんなが今、大変な目に遭っているのに。
 私一人で楽なんてしていられない。

三廻部 颯 :
 颯は頷いた。
 名の聞き取れない青年の言葉に、
 確かに感じた誠実さを信じて。

三廻部 颯 :
「……私」

三廻部 颯 :
   ・・・ ・・・・・・・・・・・
「……私まだ、恋だってしてないんです。
 ……生き返ったら、それも難しくなるのかもしれないけど……それでも」

三廻部 颯 :
「それでも私は……こっちを、選びます」

 少女は、
 その右手を伸ばした。

 己の運命分岐点、
 その片方の道を斬る、刀に。

『青年』 :
「──────」

SYSTEM :
 見守るままだった男は、あなたの言葉のどこかに思うことがあったらしい。
 何か考えてから、口を開いた。

『青年』 :
「俺は最後の最後で出来なかった」

『青年』 :
「ただおまえがそうとは限らない。
 試してみることに間違いはない」

SYSTEM :
 それはあなたの、他愛もない未練に対する激励のような台詞だったのかもしれないし。

 人とは“違う”ものの恋という言葉に、少なくとも多少の悔恨と、それを上回る郷愁を懐く人間の台詞にも思えた。

SYSTEM :
 ………あなたの手が刀に伸びる。
 鞘に仕舞われたそれは、見た目上、何の変哲もない日本刀。

 なれども。

『青年』 :
「───刀の形はおまえが決める。
 それは俺のものだ。
 俺が、俺の理由のために振るったものだ」

『青年』 :
「思うといい。
 おまえは、おまえの理由のために振るえる形をだ」

「………それがある限り。
 おまえは人から“違い過ぎる”ことはないだろう」

SYSTEM :
【Check!】
 █▇▅▇▇▅█がエネミーエフェクト「異能の継承」の所持を開示し、
 同時に█▇▅▇▇▅を宣言しました。(特殊裁定)

 内容:Dロイス『▇▅▇▇▅█』の継承

『青年』 :
「恨んでも構わない。
 だが───」

『青年』 :
「どうせなら役立つことを願う。
  
 ───はじめて、人に何かを遺した」

SYSTEM :
 ………男の言葉が。
 何の意味を持っていたのかは分からない。

 ただ大事なのは、刀は触れた瞬間に。
 ばらばらに/ぼろぼろに砕けた光になって、あなたのもとに吸い込まれていったこと。

 ………それを境目に、あなた自身の身体が、最初の夢の時のように、ふわりと引き上げられていく感覚がしたことだけだ。

SYSTEM :
 ………言葉の意味が本当ならば。
   ・
 その刀は、あなたが必要な時。
 あなたの思う形となるだろう。

三廻部 颯 :
「わっ」

 刀は触れた瞬間──小さな無数の光になって、私の中に入っていく。
 それが奇妙で、でもどこか、暖かいような感じがして、嫌じゃなかった。
 それと同時に──私の体が、浮かぶような感覚。
 これがもし夢だとして……覚める合図。

 刀は、私の思うままに、私の心の導くままに。
 ……背中を押すような言葉だと、颯は思った。

三廻部 颯 :
「やっ、」

三廻部 颯 :
「役立ちますっ──役立たせますっ!
 私……私、忘れませんっ。あなたが遺してくれたこれも、あなたのことも!」

 名前も聞こえなかったのに。
 けど、顔も声も覚えた。もう忘れるものか。
 それだけは忘れちゃいけない気がしたから。

「私っ、頑張ります、私っ、やってみます!
 だからっ、だから───……だから……」

三廻部 颯 :
 だから、

「───……ありがとう、ございます! お元気で!」

三廻部 颯 :
 なんて。
 ここは、死人が流れ着く場所だと言っていたのに。
 ここにいる者がどうであるかを、彼は口にしていたのに。
 颯はそれでも、そう言いたかった。そう信じたかった。

 お礼と、「お元気で」の間には。
 「探し物が見つかりますように」の祈りでも挟まっていたのかもしれない。

SYSTEM :
 男の仏頂面は変わらなかったが。
 それに対する返答は、短くとも確かなものだった。

 どこかに引っ張られていく自分は、まるで本当に島にいる「あなた」の身体が、ここにいる「あなた」の魂を呼び出すかのよう。
 沈んでいた何かが、浮き上がる最中。目があった。

『青年』 :
「それがいい。息災で」

『青年』 :
       ・・・・・・・・・・・・・
「………そしていずれ会う時があったならば、
 ・・・・
 その時は───」

SYSTEM :
 夢と現のどちらなのか定かではない今日の中で、
 ひときわ現実感のなかった出来事は、その言葉を最後に終わった。

SYSTEM :
 浮いた自分が、何処かへと向かっていくのが分かる。

 ………男が何者なのか、何の意味を持っていたのか。
   チカラ
 その刀に何の意味を持たせるのか。
 何ら明瞭なことはないままに、ただそれでも、あなたには実感があった。

SYSTEM :
 三廻部颯が、それを切欠にして、一度越えた生死の境界線を引き返したこと。

 これだけが。良くも悪くも、受け止めなくてはならない現実だった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇


【シーン6:一遇】

SYSTEM :
【シーン6:一遇】

 登場PC:全員
 登場侵蝕:あり(特殊)

SYSTEM :
   イリュシデイター
Tips-“薄氷を繕い裁つ”ノエル=ド=ヴィルフォール
 カヴァー/ワークス:名家の娘/UGNエージェント
 性別:女 年齢:21 侵蝕率:34%
 シンドローム:ソラリス/ハヌマーン

 パリ支部に籍を置くUGNエージェントの一人。
 同じくフランスに祖を持つ、さる貴族の分家の出であるとされるが、
 それを鼻にかける様子はない。
 過去一度、北欧支部に出向し、とある調査に加わった経歴があるが、
 その同時期に知人・親族の死亡が重なったことで心神喪失状態に陥り、長期に活動を停止していた。

SYSTEM :
Tips-“パラディン”的場啓吾
 カヴァー/ワークス:FHエージェント/FHエージェント
 性別:男 年齢:27 侵蝕率:160%(※最高値)
 シンドローム:ブラックドッグ/モルフェウス
 
 かつてのUGN日本支部で、最強の名を欲しいままにしたエージェント。
 常に前線に立ち、戦友を一人も欠けることなく生還させた男であるが、
 しかし前線にないものを護ることは決して出来なかった。

 ありふれた悲劇。それこそ、日常の裏側の何処にでも転がっている話であるが………。
 現実ならば、そんな悲劇にも続きがある。
 彼は悲劇を捲り返す続きを求め。夢を択んで道を外れた。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 目を開く。
 あなたの意識が、沈んだ底から引き戻される。

 重力の井戸の底に飛び込んだあなたは、
 一度寸断された意識を復旧した時には、既にそこに辿り着いていたらしい。

SYSTEM :
 直前の喧騒と恐慌は、聞き覚えの無いさざめきに変わっていて。
 横たえた身体を出迎えたクッションは、草か土か、あるいはその両方か。

SYSTEM :
 目を───覚ます。

SYSTEM :
 木漏れ日が僅かに顔を照らし。
 鳥の声が目覚まし代わり。

 つい数分前までの惨状とは打って変わったのどかな風景であるかもしれないが、そこに咲楽や颯はおろか、あなたの知っている他のエージェントの顔もない。

SYSTEM :
 ………漂着した、と語るにも。
 その近くに、凄惨な墜落の痕跡も見当たらないようだった。

system :[ 荻野目 旭 ] 侵蝕率 : 33 → 34

荻野目 旭 :「ん、んぐ……」

荻野目 旭 :「──は!」がば! と起き上がって周囲を確認!

荻野目 旭 :全身をがさがさ包んでいた葉っぱからもごもご抜け出して、自分の体を確認。次いで周囲を確認。

荻野目 旭 :
「ここは……」
 裂け目に飛び込んで見る光景にしては、ちょっとのどかすぎるかもしれない。
 何人か一般人も巻き込まれたはずなのに、耳が危険の音を捉えないし。穏やかすぎるかも。だからって警戒を怠っていいわけじゃないんだけど。

荻野目 旭 :
「──池田さん、三廻部さん!!」
 一番探さなきゃいけない人の名前を大声で呼びます!
 あと、《ハンドリング》で飛ばした鳥は……たぶんもう繋がってませんよね。いちおう、行方を確認だけしておきます。

GM :なるほど、そちらについてですが…

GM :せっかくお支払いしたのです。記載しておきましょう。

荻野目 旭 :やった!

SYSTEM :
 あなた自身がソラリス・シンドロームの見せる幻覚や、オルクス・シンドロームの持つ領域に引っ掛かった、なんてことはないだろう。

 なぜならあなた自身がそうである以上、本当に”そう”なら違和感に気付いていいはずで。
 なにより、あれはバロールの持つ重力崩壊から来る乱暴な時空転移だ。
 あなたの意識が重圧の渦にかき乱される直前に、ハンドリングの小鳥は限界まで、その裂け目が膨れ上がりつつも、幾人かを故意に吸い込むような瞬間を目撃し、それきり反応は途絶えた。

 尤もその小鳥の目線から、重力場の起きた飛行機の外側がどうなっていたのかを知る術はなかったが………。
 ともかく。

SYSTEM :
 声は木々の中を貫通して、空に届いたが、むなしく反響するだけだった。
 小さな動物たちが反応の一つや二つを起こしたかもしれないが、それ以上のことはない。

荻野目 旭 :「……やっぱり途絶えてる」

荻野目 旭 :物理的現象とは少し離れたものによる、『幻媒鳥』との寸断──エフェクト干渉の可能性が高い。予測が正しければ、多分バロールシンドロームの引き起こしたものだろう。

荻野目 旭 :「……みんないないし」悲しいことにエージェントさんたちの気配も無し。こうなると足で探すしかないかと、あたりを警戒しながら歩き出す。

荻野目 旭 :ひ弱なので、あんまり奥には行きすぎずに。とりあえず目視で飛行機とか、大きなものが見えないか確認しながらあたりを探していきましょう。

SYSTEM :
 警戒と共に歩き出すあなたの視界には、変わらず何度か木々だけが入る。
 少なくともこの周囲に墜落した飛行機の痕跡は見つからなかった───。

SYSTEM :
 ………そんなあなたが大きく足を進めていないのであれば、ある程度進んだところで、このおだやかな自然の中には決して似つかわしくない、あるものを見つけるだろう。

 通信機器だ。誰かの落とし物らしいが、緑の中に鉛色が紛れていれば誰だって気付く。

荻野目 旭 :「!」

荻野目 旭 :「これ──通信機器?」

SYSTEM :何の変哲もない通信機器だが、少なくとも日常の生徒や社会人が持つ端末の類ではない。どちらかというとエージェント向けだ。

荻野目 旭 :UGNのものではなさそうかな……拾い上げずに様子を見ます。すぐに音が鳴る気配はありますか?

SYSTEM :
 音が出る気配はなかったが、壊れているというわけでもない。

 使えるかどうかはともかくとするが、もしもあなたがこれを見て自分の携帯電話を見れば、それは残酷なことに『圏外』の二文字を出してくれるだろう。

荻野目 旭 :「う〜ん……」

荻野目 旭 :通信機器を拾い上げます。携帯を取り出して、両方の様子を確認してからがっくり。

SYSTEM :
 特に繋がるわけでもないという悲しい事実を前にしたあなただったが、問題はそこから先のこと。
 とりあえず使えるが、この場で意味がない以上、ただ電源が付くだけでしかない(あとついでに、持ち主が間抜けたエージェントだったなら今は不要かもしれない履歴なんかが残っている可能性がある)端末の液晶には、丁寧に時刻が表示されていたのだが………。

SYSTEM :
 あなたの持っていた携帯と、表示時刻は明らかに違っていた。

 どうやら何年か前だ。

荻野目 旭 :「── ………え?」

荻野目 旭 :ひととおりがっくりしきったあとに、ん? と眉を寄せます。……ん〜?

荻野目 旭 :「故障の様子……ナシ。電池が何年も残ってるなんてことも……たぶんナシ……」

荻野目 旭 :(バロール能力者に『時使い』がいるって噂は聞いたことあるけど……こんな大規模なこと、あるもの?)

荻野目 旭 :他に何か気になるものはありますか? なければ、また警戒しながら先に進みます。

SYSTEM :
 もう少し先に進んでみると、少しずつ視界を覆った木々が減って行き、それに比例して、足場にはゴツゴツとした岩の感触が増えていく。

 その中で見つかったものは、足跡や、ここを誰かが通りすがったらしいような痕跡だった。

SYSTEM :
 痕跡は先に伸びているものと、ここからやや離れたところ、森の方に逆戻りとなる方向に、どちらも全く同じ時期についたものではないと分かる程度の違いを持ってつけられている。

SYSTEM :
 なお、土についた痕跡は少なくとも二本脚だ。
 実はただの動物でした、なんて虚しいことにはならないだろう。

荻野目 旭 :「……足跡が残ってる」

荻野目 旭 :靴の大きさに見当はつきますか?

GM :
 ふむ。少なくとも「森の中に戻った方の足跡」は、このまま先に進んだ方よりは小さいですが、どちらも極端な違いはありません。

GM :
 極端な違いがない、ということは、あって精々「成人男性」と「10代後半の少年」くらいの違いだ…と分かっても問題はないでしょう。判定はいりません。

荻野目 旭 :了解です。探索判定していいですか? ……じゃなくて

荻野目 旭 :とりあえず、小さなほうの足跡がちょっと心配です。ひとりぶんなようなら、そちらを追ってみようと思います。

GM :畏まりました。

SYSTEM :
 小さな方の足跡は、そのまますぐに森を越えて行った。
 あちこちうろうろと動き回るようなものではないが、一直線に目指す先がある、といった人間の動き方でもなさそうだ。

SYSTEM :
 ………ごくごく自然なかたちで形作られていた樹林を越えた先には、急なつながりという不自然さこそあるものの、切り立った岩場だった。
 ここで足跡は途絶えている………というより、ここに留まったか、そもそも岩場だから足跡が付くまでもないのか。その判別はし難いといったところだ。

 その切り立った岩場はそれなりに高いところにあるのか、風景が一望できるが、これを見て趣を感じるほど余裕のある状況かは別だ。

SYSTEM :
 一面に広がっていた海には、少なくとも飛行機はなかった。
 軽く一望する限り、どうもここは何かの島であるらしい。

 ………あるらしいが、羽田から那覇までのフライト経路にこんな島があったのかは定かではない。
 “常識的に見て有り得ない”を否定する材料が、オーヴァードの身近には幾らでもあるという。少なくとも、何も知らない子供よりは、状況の不自然さに動転することはないだろう。

荻野目 旭 :「────う、わ……」

荻野目 旭 :さすがに絶句してしまう。びっくりするほど、絶海の孤島を絵に描いたような光景!

荻野目 旭 :(わかっていたけど、やっぱりこの様子じゃあ『流されてきた』じゃない。……意図的かどうかはともかく、間違いなく吸い込まれてきたんだ。あの中に)

荻野目 旭 :しゃべるねこ、いぬ、鳥、……あとドラゴン。そういうのが現実にいるのは知っていたけど、こういう超自然現象を絵に描いたような状況へ実際に置かれてみると……感じるのは「すごい」より「どうしよう」だ。

荻野目 旭 :「……いやいやいや」

荻野目 旭 :首を振って気を取り直す。そういうことなら、まず一番「どうしよう」になりそうな生徒とか、池田さん三廻部さんを発見・保護をなお急がなきゃいけない!

荻野目 旭 :とりあえず、他に少年(仮)の気配を示すようなものがないか確認します! きょろきょろ

SYSTEM :
 どうも少年(仮)の気配を示すものはこれ以上見つからないが、
 少なくともその人物がこの風景を見たことは間違いないだろう。

荻野目 旭 :「……こういうところ、赤都君が見たら……大変かもなあ」

荻野目 旭 :
サイト
出木杉くんのほうなことを祈る。……彼は単独行動とかしなさそうだけど。

荻野目 旭 :ちょっとだけ周囲を探して、見つからなさそうならいったん少年(仮)の捜索は中断することも考えておきます。《猫の道》で来た道を戻って、男性(仮)のほうを探しに行こうかな

GM :畏まりました。

SYSTEM :
 岩場はずいぶんと起伏が激しく───その辺の地図にない孤島の規模とは思えない程度に───、あるいはあなたとて、その周囲の全てを探し回ったとはとても言えない状況だ。

 中断せざるを得ないと出した結論が、早いか遅いかは定かでない。

SYSTEM :
 やむを得ない、と来た道を覚えながらも戻ったあなたは、今度は彼より少し大きな足跡を探すことにした。

SYSTEM :
 元の樹林に戻ってから、踵を返してまた歩き出す。
 そしてあなたは確かに、少年のものと比べたならば“まだ”新しい方だった足跡に目星をつけ、そちらを辿り………。

 比較的短い時間で、そこに辿り着いた。

SYSTEM :
 丁度、ぽっかりと空の雲が見えるような穴が空いたこと以外は、緑の枝葉が天井のように広がった森の中。

 その中心に足跡の主はいた。
 ………尤も、あなたにとってそれが“手がかり”と呼べるものなのかは、心底首を傾げたいところである。

SYSTEM :
 なぜならば───。

 足跡の主は、うつ伏せに倒れ込み、文字通り何かに引き裂かれ、食い千切られたようにして転がっていたからである。
  
 既に死んでいる。一瞬だ。

荻野目 旭 :「………!」

荻野目 旭 :咄嗟に息を確認してから、顔を確かめる。……知った顔じゃない。

荻野目 旭 :「……死んでる」

SYSTEM :
 駆け寄って、近付く。
 そこまでしたあなたは、駆けよらなければ気付かないものに気付く。

SYSTEM :
 ………この足跡の主は、確かに息を引き取っていた。
 死体である。出血もしたことは、土に染み込み始めている赤色が示していることだ。

 だが。
 近づいてみて、漸く分かることなのだが。
 その死体には、血でも爪跡でも牙の跡でもない、下手人を示すものがくっついていた。

SYSTEM :
 忘れようはない。

 紫黒の鱗粉。
 微かにこびりつく、ソラリスのレネゲイド因子に偏向した───。

SYSTEM :
 とある死した怪物の因子が、
 あわれっぽい鳴き声で哭いて死んだのだろうエージェントの死を招いた下手人の証拠として、くっついていたのだ。

SYSTEM :

 それに気付いた時に。
 ぽっかりと空いた自然の天幕のような穴から、
 ひときわ大きな影が射して。

 忘れようのない鳴き声が、反響した。

 

荻野目 旭 :「……────────」

荻野目 旭 :
 こびりついた気配……覚えのあるレネゲイド因子。
 天にかかる影……響く唸り声。

荻野目 旭 :ひゅ、と息を呑む音が自分でもわかった。

SYSTEM :
 羽音が聞こえる。
 鳥の飛ぶ音よりずっと力強く。

SYSTEM :
     ・
 空を切る翼の音。
 大きく揺らめく影。
 聞き覚えのある唸り声。 

SYSTEM :
 ………思うにこの被害者は、迂闊にも彼の目に留まり。

 どういう理由だったのかは定かでないが、そのまま爪牙に掛かって死んだのだろう。
 そういうことが、容易に想像できた。

 問題は、死んだはずのそいつがなんで平気な顔をして。
 なんでこのような場所にいるのか、ということだが。

SYSTEM :
 考える頭より迅く。
 まぼろしとかりそめの住人の上に君臨するものが、空を切って舞い降りる。

“蝕みの君” :

『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 ずしん、と。
 忘れようのない10m後半級の巨体が、地面を文字通りめり込むように陥没させる。

 咆哮と共に翼をはためかせ、紫黒の鱗粉を振りまいた、あの日の怪物。

SYSTEM :
 まぼろしとかりそめの島、
 何からも切り離された孤独の大地に住み着くには───。

 気味が悪いほど適役だった。

荻野目 旭 :「────嘘でしょお……!?」

荻野目 旭 :
 覚えのある毒のにおい、黒く焼け爛れたような色をした鱗粉。
 それだけで心臓はばくばく跳ね上がっていたのに、とどめがこれだ。
 なにもかも、三年前のあれの焼き直しみたいに。
 犠牲者の血で爪を飾って、怪物が咆哮する。

荻野目 旭 :
 真っ白になりかける頭が、高速であの日を再現した。
 死んでもいないのに走馬灯が駆け巡るみたいだ。
 途切れた声、先に行けと無理な笑い顔、途絶えた銃声、震える手で拾いあげた銃の欠片。

荻野目 旭 :どうしよう! どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう────白みかける意識を叱咤して、胸元をぎゅっと握った。御守りの中に放り込んだあの日の後悔。

荻野目 旭 :
 思い出して、どうにかこうにか、気を取り直す。まだなにも奪われてない!

 そもそもなんでこいつがいるのかを、いまは考える余裕なんてなかった。
 頭の中のこいつが描かれたホワイトボード、『保留』の欄に付箋をバチンと貼り付ける。
 死んだ人のことも同じく! 知ってる顔じゃないってわかっただけでも、この際十分だ!

荻野目 旭 :……だけどやることはなんにも変わりませ〜ん!!! 《ワーディング》を展開しながら元気にケツまくって逃亡します!!!

SYSTEM :
 すぐさま逃亡を択んだ判断は正しい。

 このいきものがあの時と同じならば───。
 あなた単独で、あの強靭な外皮も、身に纏う風圧も、接近したオーヴァードが等しく”おかしくなった”あの不可解な現象も。全てを対処することは出来ない。

SYSTEM :
 ただ困ったことに。
 真っ先の判断で逃げたあなたの顔を、
 ・・・
 そいつは何も忘れていなかったらしく。

“蝕みの君” :

『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 過去と何ら変わらぬ。
 いや、それどころか………。

 過去以上の発奮を以て、その四肢は一切惑うことなくあなた目掛けて駆け出した。
 別に空腹でも、敵対的な素振りでもなく、縄張りの主張というわけでもないだろうにも関わらずだ。

SYSTEM :
 まさに───。
 ・・・    
 あの日の繋がりをこそ探していたかのように!

荻野目 旭 :
「う──っそ、だぁ……!!」

荻野目 旭 :だ……だって、あんなにぐちゃぐちゃに裂かれたのに!?

荻野目 旭 :
 どう考えても僕のことを認識している反応なのに!
 死んだはずのやつが明らかに僕をまっすぐ目指してバッタバッタと歩いてきているのに、全身からまたもや血の気が引く。

荻野目 旭 :「こ……こんな時にどこほっつき歩いてるんですか、先生ぇ〜……!!!」

荻野目 旭 :
 三年分の鍛え上げた逃げ足で、怖くて仕方ないのに軽口と恨み言を無理矢理絞り出しながら足を早める!
 薬指を噛み切って花を咲かせて、《猫の道》を作成──

荻野目 旭 :
「お願いだから……誰か引っかかってくれますように〜っ!!」
 ワーディングを展開しながら、誰か来て一緒に死んでくれるか、僕が死ぬかの、絶望の追いかけっこが始まるってわけだ!

荻野目 旭 :さすがに……三年分の鍛えた逃げ足は、あのときほど無様じゃないはずだと信じたい!

SYSTEM :
 幸いだったことを、強いて一つ挙げるとするならば。
 この強靭無比な生き物の速度は常軌を逸しているというわけではないこと。
 即ち、あの時即座に追いついたのは、
 単なるあなたの歩幅と、空と陸という間合いの違いだったと言うだけの話。

 むべなるかな。
 何故なら持てる適性を振り返る限り、
 この生き物の中核をなすものは即ちキュマイラの剛性である。

 状況が陸上と陸上。
 自らは近道、抜け道、回り道となれば、あの時ほど容赦なく、残酷な結果にはならない。

SYSTEM :
 ………………だが。
 だがそれも、いつまで保つか。

 ワーディングの領域を援けと見做してやって来てくれる仲間か。
 あるいは「誘い」と見做してやって来る、あの日のような怪物か。

 過去よりは、遥かにマシでも。
             エンカウント
 先を見通すには程遠い、不慮の事故だった。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 その、逃走劇が起こる聊か前。
 時を遡る。

SYSTEM :
 曰く『リュウグウジマ』と呼ばれた地で消息を絶ったFHセルを追って向かったUGNチームが、これまた弩級の不慮の事故に遭い、転覆し。

 目を覚まし、起きた直後について。

SYSTEM :
 電磁防壁のフィルターもろとも沈む間際に響いた声。
 それと共に途切れた意識が戻って来た後のことは単純だ。

 あなたが───シホが、まず行うべきは確認だった。
 目を覚まし、何を確認するのかは、その者の優先順位によって異なるだろうが。

SYSTEM :
 自分の装備に異常や破損がないことを確認しようとしたか、周囲に敵対的な存在がいないことを確認しようとしたか、最後に周辺に先の出来事の生存者がいるか否かを確認しようとしたかは定かではない。

 ただ、周辺に転がる鉄の塊と。

タイガーアイ :
「──────」

タイガーアイ :
『───目覚めたか。
 では単純に我の状況を、
 適切かつ簡潔に説明する』

タイガーアイ :
『(機体を)やったかもしれん』

SYSTEM :
 その鉄の塊の頭部コアに収まっているタイガーアイの、淡々とした状況報告。
 いわば『直前の衝撃』において、三人分のダメージから身を護った分の名誉の負傷(本体は無傷)と同時に、

“イリュシデイター” :
         レムナント
「………無事ですか、“残骸”?」

“イリュシデイター” :
「”ブラザーフッド”の反応といい、周囲の状況といい、どうも、手放しで喜べる到着ではなかったようですが」

SYSTEM :
 同じようにそれに身を守られていた、つい先程身を起こしたばかりらしいエージェントの、手荒い歓迎への一言感想が、あなたの目覚まし代わりと状況確認の手がかりであるようだった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………………暗い、暗い、水の底。

 瞼を閉じていたのは、果たしていつのことだったのか。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 “動くだけの骸にも、防衛反応は働くものなのか”……だとか。
 そういう無駄を思考に挟むだけの時間が、果たしてあの瞬間にあったのか。

 それについては、さておくとして。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 灼けた脳内に走ったノイズが、重たい瞼を抉じ開ける。
 見下ろす見慣れない鉄塊に、ほんの一瞬思考がフリーズを挟んだのち。つい先ほどまでの体験がようやく一条の記憶となって像を結んだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───! イリュシデイターは……!」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……! ぶ、じ……でしたか!
 ワタシは大丈夫です、貴女は……?」

 危うく《タイガーアイ》などと余計な名前を口走りかけた。難局を乗り越えた直後に余計な危機を迎えてどうする。

“イリュシデイター” :
「ごらんの通り。
 守られた上で残る傷など訴えては、彼に立つ瀬がありませんしね」

SYSTEM :
 特に誇るでもなく、事実としてさほど重要でもない話。
 最後に何があったかは定かでもないが、少なくとも直前の圧壊については、その“彼”の直前の防御行動がダメージを引き受ける形となっていた。

SYSTEM :
 ………問題と、重要な話は。
 安否諸々の確認であると同時に、もっと根本的なところにあるとも言えるが。そこにつく前に。

“イリュシデイター” :
「其方も無事でよかった。最悪とは言わずに済みます。
 ………問題は二つ。一つは此処が何処なのか、そしてもう一つは───」

SYSTEM :
 第二の問題はそこで鎮座していた。
 見たところ、着地か着水か、水圧によるダメージか、基本的に“やった”部分は四肢の駆動パーツであるらしい。
 
 不幸なことに、その場の二人はブラックドッグではなかった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「あ……《ブラザーフッド》…………」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……彼の身体は換えが効きます。あとで直せばいい。
 でも、ここで今すぐとなると……」

 ……正直なところを云えば、今すぐにでもこの良き隣人の頭を捥ぎ取って首にでもぶら下げれば問題ない話なのだが。
 生憎というか、幸いというか、ワタシの隣にはイリュシデイターがいる。確かにこれは深刻な問題だった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「そうだ、今からUGNに連絡を取って補給物資か人員を派遣してもらうというのは……」

“イリュシデイター” :
「考えはしましたが………。
 通信圏外です。仮に起きた場合のソレを打開するブラックドッグが《ブラザーフッド》だった、というのもありますが」

“イリュシデイター” :
「また仮にそうだとしても、状況の類似性に覚えはありませんが………。
 周囲状況の不可解さから、素直にここが“洞窟”の類だと思うのも難しい」

SYSTEM :
 つまりは通信途絶状態/加えてブラックドッグ・シンドロームのメンバーの一人が彼であったため替えを用意するのも難しく、仮に出来ていたとて、これがオーヴァードの能力によるものならば通信遮断を前提に見ても有り得ないことはない。

 ………そう口にした表とは裏腹に、裏ではあなたの直前の葛藤と、五分の一だけ聖徳太子になることを強いられることを承知の上で、あなたのバディが言葉を投げかけて来た。

タイガーアイ :
『さしもの我とて、快く借りたボディを同朋ごと乗り捨ては気が引けるが。
 この状況でお主にブラックドッグのエージェント探しというタスクを追加させるのも問題がある………』

タイガーアイ :
『ふむ』

タイガーアイ :
「確認:機体状況整理………」

タイガーアイ :
「提言:機体重要部の損傷は軽微なれど、駆動パーツの損壊あり
    修復にはタイプ・ブラックドッグの助力が最低条件と認むる」

タイガーアイ :
「提案:重度損傷に伴い、コア部分の分離に移行
    修復可能条件が整うまでの運搬を希望する」

SYSTEM :
 彼の言いたいことは『暫くコアと言い張るのでそのつもりで運んでもらう』であった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「通信圏外……。それでは、ブラックドッグの能力を持つエージェントの派遣には期待できそうにないですね……」

 念のため、腕部に備え付けてある通信端末を起動してみる。
 幸いにも機器は無事だった……が、確かに通信は圏外らしい。

回想する、曰く─── :
『提言。
 バロール・シンドロームの干渉』

『春日恭二は正しい。
 確かにこれは“巨大なレネゲイド反応”だ』

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……現段階では憶測の域を出ないが。
 提言が正しいのなら、“そういう”可能性も考慮に入れる必要がある。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 しかしどうしたものか。目前でヒョイと首を外してやれれば話は早い、が……………

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ───“ワタシがオマエを連れ歩けと?首にでも掛けてか?”

 いつか放った自らの言葉を思い返す。まさか本当にやるのか? ワタシ?

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………背に腹はかえられん、か。

「え、ええっと……。この子の“コア部分”っていうのは、機体頭部のことで……。
 そこがこの子の本体なんです。だから、つまり、その……。」

タイガーアイ :▼タイガーアイは何か嫌な予感を覚えた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「仕方ありません。ここで切り離しちゃいましょう。えいって。
 外した頭部パーツはワタシが首にでも掛けて持ち運びます。頭部だけでも会話や一部機能の使用には問題ありませんから。」

SYSTEM :
 タイガーアイの嫌な予感は杞憂だったようだ。
 一瞬激しくなったライトの自己主張が普段通りに戻って来る………。

“イリュシデイター” :
「………………当人………当機………当人にしておきましょう。
 当人が、それで問題ないのであれば」

タイガーアイ :
「了承:遺憾ながら最善と認むる」

SYSTEM :
 その言葉を皮切りに、彼の頭部コアを覆っていた装甲パーツが解除される。
 見ればずいぶんと拉げた箇所もあったが、内部には確かに大した傷もない。

 展開された頭部には、隠れ潜み管轄を代行していたタイガーアイを覆い隠す、小型の電子パーツが入っていた。

SYSTEM :
 軽い排熱の後、分離準備が完了する。
 ───ぱしん、と音を立てて。あなたの元へとそいつが飛んで来た。 

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……多少面食らう。そんな機能あったかオマエ?

”朧の狩人/残骸” シホ :
 まぁ、どちらにせよオーヴァードにとってみれば止まって見えるような速度だ。
 いかにも知ってました風を装いながら片手でキャッチし、適当に用意した紐っぽいものを括り付ける。即席の、少々趣味の悪いペンダントの完成だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「これで、よしと。
 ……ところでイリュシデイター、先ほど口にしかけていた此処が何処なのかわからない……というのは?」

 些事が傷を広げた大事はこれで片付いた。であれば、元より大事である問題を確認する。
 ……“ここが何処か”、それは薄々予想は出来ている。問題はおそらく、その先の話だ。

タイガーアイ :
『よもや本当にぶら下がる形となろうとは
 努々後継機開発の暁には、自己管理機能の搭載を進言するよう、現在同居中の自我形成段階にあるRBに強く提案しておく』

SYSTEM :
 普段より3割増しの戯言は、この景観的に首級めいた状況になることへの不服であるようだった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………まあ、その節は済まなかった。もう少しスマートに解決できる方法があればよかったが。
 ………………なんで謝らなきゃならないんだワタシが。取り消すぞ

タイガーアイ :謝罪と社会に折り合いを持つ心はニホンの美徳だという

タイガーアイ :我はニホン発祥のRBではないが

SYSTEM :
 そんなタイガーアイはさておいて、
 あなたに疑問を振られた彼女は、思案ののち、言葉を紡ぎ出した。

“イリュシデイター” :
「………順を追って説明します。
 我々は『リュウグウジマ』に向かう最中に、あの推定バロールのオーヴァードからの迎撃を受けました」

“イリュシデイター” :
「記憶の限り、私が追っていたセルを構成すると”思われる”有力個体にバロールは1名いました。実際の交戦は避けざるを得ませんでしたが。

 その者には、少なくともバロール部分においては広範囲への行使適性がなかったことを加味すると………」

SYSTEM :
 少なくとも、あなたが知っているように。
 UGNでも、朧げに海域内に探知されていたように。

“イリュシデイター” :
「我々はそのレネゲイド反応が作った何らかの領域内にいるのか、
 それともあの後流される形で、監視衛星にも世界の表側にも見つからないような島に来たのか………」

「状況は推測できますが、まあ、推測だけです。
 ………ですので“まだ”何処なのかはハッキリしない、と言わざるを得ませんね」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………展開は予想通り。いやまあ、想定外に次ぐ想定外で辿り着いた今があるわけだが、それはそれとして。

 “変数にアンノウンが多すぎる以上、分からないと回答せざるを得ない”……それが彼女の言葉の真意だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 “リュウグウジマ”、“超弩級レネゲイドビーイング”、“バロールの反応”……
 こういった類推の仕方は時として致命的な誤謬を招くが……

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……或いはここが、私たちの目指していた『リュウグウジマ』本島である可能性もあると」

 変数の導く解としては、これがよく合致する。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「…………しかし、そうだとして……
 いや、そうでないにしろ……。ワタシたち、何故こんな洞窟に?」

“イリュシデイター” :
「そうなります。
 その場合、我々は本来の任務タスクに『脱出』をプラスしなくてはいけませんし、」

“イリュシデイター” :
「それについても、そのオーヴァード、ないしレネゲイド反応がジャームであるならば………。

 彼らは時に、理屈では説明出来ない現象を起こして来たはずです」

SYSTEM :
 何故、に対する答えは、少し言葉を択ぶ素振りが見えたことから、彼女の中でも確信がついていないらしい。
 こほん、と軽く咳払い。

“イリュシデイター” :
「少なくとも此処は…一度洞窟内から出ましょうか。
 生存者の確認もそうですが、まず『リュウグウジマ』の仮説について当たりたいところです」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「…………たしかに、ここで考え込んでいても仕方ありませんね。
 武器も無事なようですし、“この子”も本体は問題なさそうだし…。ひとまず調査と行きましょう!」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───と、その前に。少々お時間を頂いてもいいですか?
 《ブラザーフッド》の機体から何かデータが取り出せないか試みます。時間は掛からないので、差し支えなければ先に行っていてください!」

“イリュシデイター” :
「分かりました。
 出口の探索および周囲警戒は此方でやっておきましょう」

SYSTEM :
 あなたの言葉に彼女は軽く思案したが、少なくともその場ではあまり躊躇いを持たずに了承の運びとなった。

 ここから踵を返してあなたの行動を覗くようなこともないだろう。そういう出歯亀根性の持ち主である可能性は、わずかな会話や立ち振る舞いからは感じられなかった。

SYSTEM :
 ………あとに二人だけが残る。
 あなたが実際にブラザーフッドの修理をするかは問題ではない。
 タイガーアイと会話をするなら今ということだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
……。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……随分と厄介ごとに巻き込んでくれたな、《タイガーアイ》。なるべく豪勢に追加の報酬も請求したいところだ」

タイガーアイ :
『このような時、我が言うべき言葉は二つある。
 ひとつは「お手元の契約書をご確認ください」であるが』

タイガーアイ :
『もうひとつ。お主にとっての見返りと目当ては………。

 そこまで悲観したものではないだろう。
 “イリュシデイター”はあのように口にしたが、実際に我等を引き摺り込んだものは、件の「大型レネゲイド」で相違ない』

タイガーアイ :
『………が。
 同時に厄介事であることも否定はすまいな。感情的な破壊活動でなければ希望と抗議を聞くものとしよう』

”朧の狩人/残骸” シホ :
「感情的、か。たとえば今からオマエをあの機体の頭部に押し込んで挿し直すとかか?」

タイガーアイ :
『我と我が現在同居中のブラザーフッド(本物)が可哀そうだと思わぬのか?』

 タイガーアイはおもむろに自我形成中の乗っ取り被害者を盾にした。
 彼はもともと直接的打撃には弱い。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───まあいい。仮にも《同胞》だ、手荒な真似はよそう。
 オマエに確認しておきたいのは二点だ。オマエは性質上、人体に意識を依存するワタシなどとは異なり、あの手の衝撃などによる意識の混濁なども起こりにくいものと類推する。」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「そこでまず一つ、オマエが“此処”に至るまでに見聞きしたもの、分かる範囲で聞いておきたい」

タイガーアイ :
『要請を受諾する。
 結論から語るならば、我々の身に起きたものは漂流などではなく“転移”であった。

 バロール・シンドロームには普遍的かつ、利便性の高い空間移動能力があるのは存じているか?』

タイガーアイ :
『あれを、時として『他者の合意なく使用できる個体』が存在する。
 件の超大型レネゲイド反応が如何なる意図でそれを行ったのかは定かでないが、こちらはそれに引き摺り込まれたものと考えて良い』

タイガーアイ :
『また、同時に可能性の高い情報として、これだけ肥大化したレネゲイド体は、レネゲイドビーイングであろうと、そうでなかろうと、精神的均衡を保つことが困難だと推察される。

 断言して構わん。このシマ………失礼、島に我々を招致したものはジャームだ』

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……なるほど。となれば……恐らくこの島から脱出するには、その推定ジャームを斃すのが必要条件となりそうだ。
 まさかこんな任務に就いても仕事が変わらないとはな。ワタシの日常も捨てたものではないらしい」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ひとまず今ので情報は十分だ、が……。
 そこまで判別できるなら、改めてもう一つ確認したいことがある」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───いま、どれぐらい時間が経ってる?」

タイガーアイ :
 ・・・・
『解答不能だ』

タイガーアイ :
『我に時間の判別機能がないことを差し引いても、時間経過を判別できるものは洞窟内部に存在しない』

タイガーアイ :
『………それを気にするようならば………。

 対話にこぎつけられる可能性は薄いと考えるが、今後、UGNのエージェント・チーム以外と遭遇した際に試してみることだ』

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ………………。当然の回答だ。
 可笑しなところはない。

”朧の狩人/残骸” シホ :
    ・・・・・・・・・・・・・・
 ならばワタシの通信端末が示した時間も、アテにはならないということだ。
 潮に呑まれて故障した可能性もあるのだし、圏外なら電波時計も機能してはいないだろうから。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「…………一先ずはこんなところか。これで大方聞いておきたい情報は揃った。
 あまり先方を待たせても不審がられる、そろそろワタシたちも外に向かおう」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 先ほど起動した電子端末に映る、無機質な圏外の表示を眺める。

 出航前に渡され、表示したままだったブリーフィングの資料。表示された作戦目標、太平洋の座標、強行偵察に選ばれたエージェントたちの仔細。
 これから確かめねばならない、生存者の顔写真。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……あるいは、これが彼らの最期を示す唯一の墓標になる。確認しなければ顔も燦然としない6人の。

タイガーアイ :
『承諾した。………』

SYSTEM :
 タイガーアイは、性質上、鉱物を起源としたレネゲイドビーイングだ。
 人体に意識を依存するあなたとは違う。

 タイガーアイはそれ故に、賢者のように振る舞う一方で、倫理観や人間性というものにおいては、凡そ酷薄なところがある。

SYSTEM :
 彼はあなたの仕草について何ら口にすることなく、揶揄するような態度も取らなかったが。
 一方で、先行したイリュシデイターが戻ってくるまでの微かな間、凡そあなたに返答を挟みこませない僅かな時間で、いつものように波紋のような音を生じさせた。

タイガーアイ :
『今後の迷惑料代わりに、一つ蛇足を付けておく』

タイガーアイ :
『“イリュシデイター”などと名乗ったな、あの小娘。
 お主に抱いている見当違いを教えておく』

SYSTEM :
 だから彼が、何を思ってそれを発したのかは定かでない。

 『有効に使え』という無神経さかもしれない、もしかしたら本当に今後の想定外への先払いとして過払いをしただけの感覚かもしれない。
 あるいは───もっと短絡的な理由かもしれない。

 エンジェルハイロゥ───使い方によっては、人間の心さえ暴き立てる、万人に平等なる光のシンドローム。
 その持ち主であるタイガーアイが、洞窟を進み、“イリュシデイター”と出会う前のあなたに、このように告げた。

タイガーアイ :
『あの小娘が、あの時お主に確信した感情は───』

曰く── :
 ・・
 悔恨だ

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 仄かな、次第に大きくなっていく日の灯りだけを便りに道を行く。
 洞窟の内部は何処かから水音だけが反響し。
 立ち去る間際に、どうやら此処に住み着いていたらしい蝙蝠の鳴き声が背を送る。

 生物が何ら存在しない環境、というわけではないようだ。奇妙なコトに。

SYSTEM :
 ………灯りが広がって行く。

 照りつける陽は、まやかしの類にしては真に迫り過ぎていたし、
 周囲から聞こえる虫や鳥の声もまた、まともな生物の鳴き声だ。

SYSTEM :
 もしも、あなたがエンジェルハイロゥの視覚で、木々に覆われた先を見通そうものなら………。
 そこに海が広がることも、遺憾ながら認めざるを得まい。

“イリュシデイター” :
「………コレは、」

SYSTEM :
 少なくとも、時刻は地続きではないらしい。

 太陽が我が物顔で空を彩っている。
 夜間の航行だったはずの先日を思えば、
 なるほどコレこそ、時間への問いに対する答えかもしれない。

“イリュシデイター” :
「どうやら本当に………我々の漂流先はガリバーよろしく無人島かもしれません」

SYSTEM :
 屋外の様子は、いまのところ「ここが『リュウグウジマ』である」という仮説を補強するものでしかなさそうだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………………。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……違うのは、流れ着いたワタシたちは小人側ということでしょうか。
 視覚野で確認する限り、この光景はエンジェルハィロゥによる欺瞞の類でもないようです。」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「見渡す限り100%、島から繋がるのは海だけ。
 『絶海の孤島』……二重の意味でそういうことのようです。少なくとも船があればどうこうというものでもない」

SYSTEM :
        レムナント
 あなたが粛々と“残骸”のシホとして見解を述べている間にも、あなたが(不本意に)引っ提げている首飾りはチカチカと明滅を繰り返していた。

タイガーアイ :
「調査結果:周辺スキャン進行中
      オルクス・シンドロームとの類似パターンなし」

タイガーアイ :
「調査結果:反対意見ナシ」

“イリュシデイター” :
「そもそもこの様子で、探査船が生きていると期待するのも楽観的ですね。
 ………であれば、採れる行動は三つです」

“イリュシデイター” :
「この島がオーヴァードによる何らかの能力と仮定した上で行使者を探すか、
 その前に他の生存者について捜索するか。
 あるいは小人側だというあなたの指摘を忘れて、脱出の準備に耽るか………」

SYSTEM :
 ちなみに彼女の声色からは、三つ目を択ぶ気のなさが厭が応にも感じられた。

 ………実際のところ、船があったとして、想像できる光景は、つい先ほどの焼き直しだろう。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「それについて一点、補足を。先ほど《ブラザーフッド》の胴体からデータの抽出を試みたところ、この島に我々が漂着する直前───即ち、件の“巨人”による干渉以後のログが確認できました。
 曰く、この島に我々が辿り着いたとき、我々はどうやらバロールに近似する何らかの異能により空間転移の類で引き摺り込まれていたとか」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「同様の行為ならばワタシたちオーヴァードにも行使可能でしょうが……他者の同意なくそれを可能とする、となれば話は別です。
 この島…推定“リュウグウジマ”は強大なジャームの支配下にあると見るのが妥当だ。となれば、ワタシたち二人のみで接敵するのはあまり賢い選択とは言えない」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「然るにワタシたちの当座の目標は、交戦するに足るだけの戦力を集めること……。
 つまり生残者の確認と定めるのが妥当と思われる。異論はあるだろうか?」

“イリュシデイター” :
「………」

“イリュシデイター” :
「実際にそのような光景を映像ログとして残していたのならば、尚のことですね。
 まさか本当に、とは思いましたが………」

SYSTEM :
 先程の話ではないが、
 ジャームの中には時として、理屈にならない理屈を現実に反映させる個体がいるという。

 オルクスの領域も、エンジェルハイロゥの幻覚も、モルフェウスの物理的錬成も抜きにして、何かを成すようなカラクリがあるのならば。
 それがジャームだという仮定も、いよいよ”仮定”レベルではなくなるだろう。

 彼女はあなたの様子に僅かな沈黙を伴い、
 それから見解を述べるかたちで肯定的に応じた。

タイガーアイ :
「応答:異論なし
    自己判断で周辺スキャンを継続…」

SYSTEM :
 タイガーアイ/ブラザーフッドの僅かな明滅と応答を以て、“イリュシデイター”も概ね同意と至ったらしい。
 残る6名のエージェントとの合流のち、推定ジャームの撃破のための活動を再開する………撃破後どうなるかは定かでないにせよ、ここが絶海の孤島であると分かれば、そのようにする他なかった。

SYSTEM :
 ………ならば、そのあなたたちにとって。
 響く声は、願ってもないものだったのか。あるいは、御呼びではないお客様のものだったのか。

 洞窟から出て、方針を定め、少し歩き出そうとしたその時に、木々を貫き、吹き抜けるように、“ソレ”が響いた。

SYSTEM :
 遠巻きに響く音の波紋と、
 そこからやや遅れた───。

“イリュシデイター” :
「………《ワーディング》」

“イリュシデイター” :
「それも移動しながら………?」

SYSTEM :
 自身の居場所を知らせる信号代わりでもあり、
 同時にオーヴァードでないものを退ける、レネゲイド因子の散布。オーヴァードならばシンドロームの是非など問わずに誰しもが使える(使えねばおかしい)、初歩の初歩だ。

 欠点は言わずもがな、非オーヴァードでないならば───同じ超人ならば、速やかに居場所が露呈する点にある。

SYSTEM :
 なりふり構わぬと見るよりは、
 その反応が危機的状況所以のものと思う方が正しいだろう。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「…………同意いただけたようで、なによりです」

”朧の狩人/残骸” シホ :   
             レムナント
 …………ワタシは今、未熟な仮面を保てていただろうか?
 冗談めかして笑いたいときに限って、笑い方は思い出せなくなってしまう。
 賢者の声が脳裏に響いて、それがこびりついているときは、いつも決まってそうだった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 “悔恨”───その一言を振り払いたかった。
 そうでないと、軽率さの《仮面》を被っているうちは、目の前にいる彼女に向かって軽率に口を開きたくなってしまうから。

「それでは早速、調査に───」
                    エンカウント
 だから、多分それは、ワタシにとって幸運な事故だった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「──────!」

 響き渡った、ガリバーなど比にならぬ巨きなものの“声”。
 そして、今まさにその巨きなものに踏み潰されまいと足掻く、ワタシと同じ小さなものの“声”。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「10時の方向、敵影あり!推定ジャームと思われる巨大な個体に何者かが追われている!
 生残者の可能性がある!救援に向かうぞ、“イリュシデイター”!」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 念の為視認もしておくか……?
 GM、視覚強化のEE【真昼の星】を行使しワーディングが放たれた方向を確認したい。可能か?

GM :………ほう? 可能は可能ですが………

GM :判定を要求する、ようなものではありませんね。視認から入るということなら問題なく。

SYSTEM :
 高速で移動しながらの《ワーディング》展開。
 どの観点から見ても救援要請か、逃亡中か───。
 追いかけながらの使用だとしても、ここに何某の生存者がいることは明白。

 ………あなたの微かな気の緩みと惑い。
 本懐であるとも言えよう(推定)ジャーム狩りに、意識が傾く瞬間………。
 あなた自身にとっては臨戦態勢という建前で、意図ある石により心に広がった波紋に蓋を出来た時。
 
 果たしてその仮面に覗くものに、彼女が気付いたのかどうかは定かでない。

“イリュシデイター” :
    コピー
「───。了解。移動開始しましょう。
 移動経路の割り出しをお願いできますか、ブラザーフッド」

タイガーアイ :
「応答:スキャン継続…ルート提示…」

SYSTEM :
 そしてあなたにとっての隣人が、表向きの顔で猫を被る最中。

 自覚してか無自覚か、意識を“朧の狩人”に預けたシホが、抜かりなく目を彼方にやっていた。

SYSTEM :
 ………オルクス・シンドロームが作り出す逃亡の花道。
 これを踏みしめ、逃げ延びるのは、あなたが記憶している誰でもない少年の姿だった。

 それは、いい。
 少年の姿だが、何かに追われている最中のオーヴァードだ。
 実際に、追って来ているものは人型ではない。樹林を抜けて何処かに辿り着こうというその姿は、徐々に追い付かれており、すぐではないにせよ、接敵は時間の問題とさえ言えた。

SYSTEM :
 それはいい。
 それは重要だが、重要なはずのことが、果たしてあなたの頭に入っただろうか?

 何故なら追い掛けているものを見た時………。

SYSTEM :
 あなたは言葉にならない胸騒ぎがした。

 嵌らないジグソーパズルのピースを無理矢理はめ込む時のような不一致感、または不協和音。
 そうとしか言いようのないものが───。

 その少年を追いかける、黒い巨影が“ちら”と目に入った瞬間、頭を過ったからだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 視認した方角。なるほど確かに、そこには生存者がいた。
 ワタシの記憶にはない顔だった……はずだ。多分、ワタシと共に島に渡った同行者ではなかった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 視認した方角。なるほど確かに、そこには巨きなものがいた。
 百獣の王をも喰らい潰す、およそ生命の頂に君臨する者たちの顔だ。少なくともワタシにとっては、そう見えていたハズだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
           ホロウハンタ-
 視認するワタシは……“朧の狩人”だ。少なくとも今はそうで、
 レムナント
 “残骸”はそれを覆い隠す出来の悪い蓑に過ぎなかった。ワタシは多くのジャームを狩ってきた。少なくとも任務に於いては、ワタシは怯えを知らなかった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
        ・・・・・・・・
 …………ならば、この震えはなんだ?

”朧の狩人/残骸” シホ :
 怯えではなかった。それはワタシの記録にもある情報だ。これは、強者を前にして感じる恐怖ではない。
 それよりも、なにか……そうだ、なにか…………

”朧の狩人/残骸” シホ : 
 なにか、たいせつな、ものを、みおとした、ような。

SYSTEM :シークレットダイス

SYSTEM :
 あなたに見えたものは、なるほど確かに、真っ当な常識の範疇に存在しない生物だ。

 だがあなたがそれに動揺する理由はない。大きさ、形態、性質、人型の是非を問わず………ジャームならば討ち果たして来たシホにとって、それに何かの感情を持つことはない。あっても薄く、焦燥が関の山だろう。

SYSTEM :
 だが、あなたの脳裏に去来したものは断じて焦燥ではなかった。

 そうだったとしても、見知らぬ推定チルドレンが接敵するのも時間の問題という、客観的視点への焦燥ではなかった。

 空白になる思考に───。

タイガーアイ :
「確認:報告せよ」

タイガーアイ :
        レムナント
「確認:報告せよ“残骸”」

SYSTEM :
 普段ならばこれと同時にタイガーアイとして茶化しの一つを入れてくるだろう賢者が、敢えて表の部分だけで振動を伴う電子音を発し。
 それにひとつ遅れて、一歩を踏み出しかけた”イリュシデイター”が振り返る。

“イリュシデイター” :
   レムナント
「………“残骸”?」

SYSTEM :
 僅かな疑問と/気付いた瞬間に足を止める挙動の正確さで、曰く復帰したばかりのエージェントの、エージェントではない部分を僅かに込めた視線があなたに向いた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「────────────」

 果たして、私に去来した感情は何だったのか。
 ワタシはそれを説明するための変数を持っていなかったらしい。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 だから、問題を処理しきれなくなった、
      ホロウハンタ-
 出来の悪い隠蓑では答えを出せないのも当然のことだったのだろう。

”朧の狩人/残骸” シホ : 
 ならば応えるべきは何だ。賢者の言葉が反響し、フリーズした脳を冷やす。
 いま考えるべきことを考えろ。お前の使命は何だ。それを答えるべき顔はどれだ?
 賢者のもたらす命題がワタシに答えを導いた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───失礼。状況を報告します!
 推定チルドレンらしき少年が追われています!ワタシたちの知る顔ではありませんが、時間はあまり無いようです、いち早く助けなければ!」

 悩む前に手を動かせ。頭を回すならそのために回せ。
 目の前のチルドレンを救うんだ。手遅れになる前に。

SYSTEM :
        フリーズ
 あなたの微かな誤作動も、
            コマンド
 外部からの再起動を促す所作が功を奏したらしい。
 それは致命的手遅れを齎すこともない、ただのごくわずかなラグの形をとるだけに終わった。

 誰かの“残骸”という未熟者の役割の中に灯る感情が、あなたの語調を、恐らくは普段より荒げさせて。
 その言葉に、“解明者”などと銘打たれたエージェントが応じる。

“イリュシデイター” :
「了解───ならば尚のこと、急ぎましょう」

SYSTEM :
 あなたの停滞と言葉を疑う素振りもなく、それと同時に走り出す身体は、白兵向けの適性であろうがなかろうが、そもそもオーヴァードだ。

 そこには普通の人間とは相応の差がある。距離にしてそう近くはない場所で起きている出来事もまた、その『相応の差がある身体性能の持ち主』同士がデッドヒートを繰り広げている最中にあった。

SYSTEM :
 駆け出して数分。
 ワーディングの反応が途絶えていないか、何処に辿り着いたかを逐一確認しながら、あなたたちは最終的に辿り着く地点へ、回り込むようにして向かい、程なくしてそこに辿り着く。
 

SYSTEM :
 海の見える岩場。
 少年にとっては、少なくとも“もしも”の可能性を加味して避けるべきだった岩場よりは遠いが、不本意ながら通らざるを得なかった1ルート。

SYSTEM :
 そしてシホらにとっては、幸いというべきか定かでないが………。
 遠方からでも、既に射線が通り。

 また、巨きな影の姿が、よく見える立地だった。

SYSTEM :
 それ故に───。

“蝕みの君” :『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 聞き覚えのある、二度目の咆哮。

 これに足を止めたのは、
 シホだけではなかった。

 ちょうど彼らの死角となる位置で、

“イリュシデイター” :「──────」

SYSTEM :
 努めてか、自然にか。
 怜悧に振る舞っていたはずの女の、息を呑むような、硬直するような声を聴くことが出来ただろうか。

 あなたには、何が見えていただろうか?

SYSTEM :
 あなたに見えているものは、

 竜型としか言いようのない、現実の存在ではない大型レネゲイドビーイング/またはジャームが、チルドレンを追いかけている、一刻を争う窮地への光景だろうか?

SYSTEM :
 それとも。

SYSTEM :

 間に合わないと承知の上の発言をして、
 
         震えた身体に影響を受けた声を平静のように誤魔化すために、
 まるで「だいじょうぶです」と長々説明するための台詞を上ずった声で話して、

 それに気づかれる前に「はやくいけ」で遠ざけて───、

SYSTEM :
 ………そんな。
 逃げられたはずなのに見栄を張り、
 その対価としてたやすく死んだ愚か者の姿。

 あなたの記憶にも記録にもないような、
 現実感のない白昼夢でも見たのか?

 あなたの視界にどちらが映っていたのかなんて、
 そんなことは些細なコトだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ワタシの視界に映るのは、ワタシが援うべき子供であり。
 ワタシの視界に映るのは、ワタシが斃すべき巨軀だった。
 二度とは違えることはない。私の為すべきを為さねばならない。

”朧の狩人/残骸” シホ : …………ならば、なぜ震えは止まらないのか。
 それを応える術は知らない。これも先に確認したことだった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……なぜ、こんな顔が脳裏に浮かぶ?
 ワタシはこんな顔を知らなかった。

”朧の狩人/残骸” シホ :

”朧の狩人/残骸” シホ :
 「───“残骸”、務めを果たせ!」
 何をしている。子供が危ない。
 焦燥。憤怒。恐怖。忸怩。在るべき未熟者に掛けた自らの言葉が、名前に媚びりつく別の感情を呼び起こし、映像を押し流す。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 その感情を更に上から塗り潰すのが、“朧の狩人”の役目なら。
 自らが恐ろしいほど滑らかに、ワタシはスムーズに銃口を擡げていた。

 その代償に何かを見落としてしまうのも、多分、この顔の役割だった。

SYSTEM :
 脳裏を過る思考ごと、あなたの冷徹な部分が上から押し潰す。
 ・・・・・・・・・
 それどころではない、という判断がそうさせたのか。
 あるいは誰のものかも定かでない、自らにぴたりとあてはまるものではない記憶の“残骸”こそが、そうさせたのか。

 滑らかに動いた動作、擡げた銃口が、呼吸に等しい所作で無我のうちに火を噴き、大型のRB/推定ジャームに対し、機械的に『狙撃』というプロセスを実行した。

SYSTEM :
 ………あなた自身の視線は確かに向くべきところに向いており、よって弾丸が不慮の事故で、護るべき少年を掠めるなんてことはない。

 あなた自身の意識は、この状況への処置にこそ向いており。隣も真下も、“残骸”の仲間も/“朧の狩人”の口やかましく利己的なバディの声も、発されていたとて聞こえていたかは定かでない。

SYSTEM :
 大型のキュマイラタイプさえ一撃で撃ち抜いた弾丸は、死角から大型のRB/推定ジャームにまさに直撃の様相を醸し出し。

 そして、不自然に“爆ぜた”。

SYSTEM :
 ───追われている旭からしてみれば、弾丸と同時に、そいつが突然と爆発したような有り様だ。

 文字通り、援けが届いたということでいいらしいが、少なくとも弾丸を“蝕みの君”へと届けた向こう側の表情は、余裕綽綽というかは怪しかっただろう。

SYSTEM :
 そしてシホも。

 自分の弾丸が、着弾と同時に爆ぜるようなタイプではないことは承知していただろう。
 
 ならば何故? どこの誰が?
 ───そんなことは明白だ。

SYSTEM :
 発されたわずかなエフェクトの残滓からしても、それはソラリスによる化学反応が起こした連鎖爆発。

 あなた/シホの隣の人間が、らしくもなく、真っ先に“撃った”あなたとほぼ同じタイミングの空白を撃ち抜いたこと以外の答えはなく───。

“蝕みの君” :『▂▅▇█████████████!!!!』

SYSTEM :
 その頭部銃弾の直撃と爆風で、一時旭が距離を取れるほんのわずかな時間を作ること───すらなく。
 なるほど確かに疵は負いながらも、狂戦士さながらの有様で追走を続行している姿/身体機能には一切影響を及ぼさない頑強さの証明のみが、奇襲に対する答えであった。

SYSTEM :
【Check!】
 エフェクトの所持を確認しました。

 Auto:『竜鱗』

“イリュシデイター” :
. レーレ・シュヴェア
「《蝕みの君》───」

SYSTEM :
 譫言めいて、ぽつりと。
 無意識のうちに口をついて出たような、音の響き。

 それが遅れて聞こえて来たのは、大型のキュマイラ系列を軸としたジャームさえ一撃で屠ったその弾丸が、竜の体皮を完全には貫かなかったという結果を目の当たりにした直後のことだった。

SYSTEM :
 指向性を持たせたソラリス・エフェクトによる可燃性物質の爆発。

 元より事前の打診など取る暇もなかった状況である点を差し引いても唐突だが、これを込みとしても歩みは止めず。無傷ではなかれども、不意討ちは致命打になり得ない。

 ───そして当然のことながら、二度目はない。予知するまでもなく、楽観することも適わず、ただ本能的に誰もがその結論に帰結する。

SYSTEM :
 自らの命を狙われた、という状況───。
 あるいは別の何かに対する反応の過敏さ故か、一切走行を止めなかった“蝕みの君”の視線が。
  
 一時、彼方からの狙撃手へも向けられたからだ。
 それは追われている少年にとっても狙撃手らを認識する機会でもあった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
  .          シルバーバレット
 王さえも討ち沈めた狩人の銀の弾丸は、しかし。目前の暴君を殺めるには能わない。
 鋼鉄さえも砕け散る弾丸は、その鱗を貫徹するにも至らなかった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ・・・・・・・・・・・
 そんなことは知っている。
 それでも銃を手に取ったのは、かの君が放つ狂奔に当てられたわけではなく……

”朧の狩人/残骸” シホ :
「イリュシデイター………!?」

 多分、彼女と理由はそう違わないはずだった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 だから、だろう。
 “アナタは何か知っているのか”、などという通り一遍な/聞かねばならない質問が、口を衝くよりも速く。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 身体が、竦む。
 ヒトとしての畏怖ではなく、
             ・・・・・
 生物として持って然るべき根源的恐怖。
 視線に射抜かれただけで、呼吸さえ震えるまでに。

荻野目 旭 :花に導かれて走る足を緩めないまま、一度だけ。

荻野目 旭 :顔をあげて、弾丸の主を探す──

荻野目 旭 :(ここは僕の《ワーディング》の中! ……オーヴァードだ!)

荻野目 旭 :「────ふ」

荻野目 旭 :こういう時には……相手がどうだったって、やることは決まってる!

荻野目 旭 :「復活怪獣にッ、追われてッ、まあす!!!! UGN、のっ、“ナイトホーク”ですうっ!!!!」

荻野目 旭 :「戦闘……あんまり得意じゃないですうーっ!!! たすけてくださあーーーーい……っ!!!」

SYSTEM :
 恥も臆面もへったくれもない全力の救援要請。
 射線の通る範疇であるならば、姿が見えずとも、10代半ばの声量だろうとも、当然響きはする。届きもする。

“イリュシデイター” :
「───」

SYSTEM :
 ・
 ぁ、という、間の抜けた小さな呟き。
 まさに咄嗟の、そして我を忘れた判断故の事であり、その直後に概ねシホが懐いたものと同じ感想を持っていたのだろうことは想像に難くないが。 
 少なくとも、半分は人間を辞めた者/オーヴァードにとって、“コードネーム”の他称は気付け代わりだ。

“イリュシデイター” :
「───そのまま走って! 振り向かずに!」 

SYSTEM :
 彼、ないし彼女はきわめて過敏な性質だった。

 銃弾か、爆発か。
 あるいはそのどちらもか。それに対して“何もしない”というほど、暢気でも、鈍感でもなかったらしい。

 エージェント”イリュシデイター”の言葉と共に、彼女が少年の元へ駆け出そうとするより早く。

“蝕みの君” :
『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 爆ぜるような音の広がり。
 耳を劈く竜の嘶きと共に、あの時、北欧に舞い散った黒き死の粉雪が渦巻いて広がる。

SYSTEM :
 吸い込んだブラム=ストーカーの男が狂乱のちエフェクトの暴走で自害したことも。
 翼のはためきが引き起こした因子の風に操られ、付着したものを辿る“目”の役割を果たしたことも。
 
 時間にしては3年以上前だろうが、覚えているものは、昨日のことのように覚えているだろう。

SYSTEM :
 つまり「やる気」であった。

 本懐ではないにせよ、ハヌマーンの持てる機動力で以て、狙撃ポイントから飛び降りる直前の“イリュシデイター”が、恐らくはシホに向けてを強く意識した言葉を残す。

“イリュシデイター” :
「アレに近付こうとはしないで!
 レムナント
 “残骸”は一撃、足を止めるだけで構いません!」

SYSTEM :
 そう口にした当人が旭のもとに降りていこうとするのと、活性化したそいつが、自分の“目”変わりの鱗粉をはばたきで撒き散らしつつ行軍を再開するのはほぼ同時だった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 耳に届く救助要請の声は、内包した情けない響きさえも情報を過不足なく伝えていた。
 いま逃げているのはUGNのチルドレン、推定は後衛担当。猶予はないが辛うじて声を挙げる程度の余裕はある。そういう響きの声だった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 その声が、或いはその幼さが。幾度となく凍りついた頭に再び火を放つ。

 標的の目が此方に向けられたのは寧ろ好機。
              レンジ
 ダメージを与えられ、推定有効射程も此方が上回るなら、次の一手で恐らく狙いは此方に逸れる。
       ・・・・・・
 たとえそこに二度目はないのだとしても───

”朧の狩人/残骸” シホ : 
      Copy
「──────了解!
 そちらもどうか細心の注意を!」
 

”朧の狩人/残骸” シホ :
 もはや粟立つことすら忘れた肌が、それでも妙にひりつく感覚。恐らくはあの“死の豪雪”が原因であり───

 たとえそれが本懐でないとしても、たとえ彼女が救護対象と同じく肉体頼りの行動が得手ではないと知っていても。
 いまワタシが為すべきが何かを示していた。

荻野目 旭 :「──な」んで知ってるんですか!? って声が出るのを紙一重で堪える!

荻野目 旭 :……そもそもホントに、「アレ」の圏内に入れば二の舞、三の舞だ! 一秒で切り替えて、まだこんな反応をしていられるうちに全力でダッシュ!

SYSTEM :
 旭が取った行動は極めてシンプルかつ素直なもので、そのまま逃亡という選択を執ったことに間違いはない。
 振り向いて、足を止めたらどうなるかは、過去の彼らが良く教えてくれている。

SYSTEM :
 
 ───しかし後方のソレを前にしては。
 いま再び、直面するべき別の問題が姿を現す。
    ・・・
 即ち、倒せるのか。
 ………あるいは倒せずとて、如何にして逃げるのか。

SYSTEM :
       ・・・・・
 倒そうとしてどうなるかは、たったいま見た通りだ。 
 であれば、逃げるより他にないが………。

 彼ないし彼女は縄張りから外敵を追い立てる…と言った生易しい対応をしていない。
 即ち完全に“見失う”までは、文字通り地の底、果てまで追いかけ回すに違いない。

SYSTEM :
 ひとり逃げること自体はある意味容易い。
 ふたり逃げること自体も同様である。
 ただし。この場の三人逃げるとなると───話は別だ。

 未だ岩場は、この現実離れしたモンスターが何の支障もなく飛翔ぶことを赦しはしないけど。
 近道、抜け道、回り道で撒いて来た旭の足で見出された結果は“いずれ追い付かれる”だったことを思えば、迂闊な欲と躊躇いは、ミイラ取りをミイラにするに違いなかった。

SYSTEM :
 走り出す旭のすぐ横を通り過ぎるように、狙撃手では”ない”方/“イリュシデイター”の足が岩場のひとつを踏みしめてすれ違う。

 彼女はあなたの「なぜ“あれ”を知っている」という質問に答えてはくれなかったが、その代わりに。

“イリュシデイター” :
「───そのまま真っ直ぐ。
 あの向こうに仲間がいます」

SYSTEM :
 あっけからんとした様子にも、まるで巡り合わせへのセンチメンタルでもあるかのような様子にも聞こえた、比較的平常の声。

 彼女は旭に対して、狙撃手/シホの居場所を指し示すと同時に、無手の銃口を構え、同時にソラリスの持つ幻覚伝達物質を媒介とした情報伝達を他でもないシホに飛ばしていた。

“イリュシデイター” :
. レムナント
『“残骸”』

“イリュシデイター” :
『合図後に一撃。
 ・・・
 二度目があればアレは間違いなく其方に飛びますが、それは此方が抑えます。

“イリュシデイター” :
 その後、少年………“ナイトホーク”を連れて、射程圏内から離脱して下さい』

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………分かっていたことだ。
 およそ肉体の操縦に優れた資質を持つとは言えない彼女を、引き留めずに送り出したのだから。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……ならば悲嘆に暮れるなんて、自己欺瞞に過ぎない。諦めるにも早すぎる。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 銃座を固定し、地に這った狙撃姿勢のままでスコープを光で明滅させて幻に応え、ただその時を待つ。
 ワタシの返すべき言葉は、“訣れ”ではなく“諒解”だ。

荻野目 旭 :「えっ、な、あ」

“イリュシデイター” :
「言葉のままです。もうちょっと走れますね?
 仲良く袋小路になっては、せっかく“ワーディング”で呼んだ意味も、呼ばれた意味もありません」

SYSTEM :
 そして狙撃手の無言の諒解に、彼女/”イリュシデイター”もまた多くの応答を返さなかった。
 厳密にはただ一言だけ。

 たぶんその女にしてはらしくない茶目っ気つきの“だいじょうぶ”。

“イリュシデイター” :
「………“ナイトホーク”というのはあなたのことだったのですね」

“イリュシデイター” :
「話したいこともありますが、それは後で。向こうの仲間のこと、少しお願いします」

荻野目 旭 :「…………ッ」

荻野目 旭 :言いたいことは山ほどあって、さすがに文句も言いたいところだけど──

荻野目 旭 :なんとか、これだけ言い切る!

荻野目 旭 :
 ・・・・・・
「同じ事したら──絶対、絶対絶対祟りますからね!」

荻野目 旭 :それだけ言って、あとはもう振り返らずに走る!

SYSTEM :
 あなたのいろいろなものを呑み込んだ一言に、彼女は何を思ったのか。
 ほんのわずかな沈黙のあとに、しかしすぐ口元を困り気味にだが緩める。

“イリュシデイター” :
「御心配なく。
 それをやったら、世話焼きの友達にガッカリされてしまいます」

SYSTEM :
 知る由があったかどうか。

 彼女のその“ご心配なく”が。
 いま並行して狙撃手に贈られた“だいじょうぶ”と同じトーン、および受け売りの前向きさであることなど。

SYSTEM :
 ………振り返らず走った少年の背を見送る隙間もなく、ソラリスの幻覚伝達物質が、はるか彼方のあなたに合図代わりのカウントを伝える。

“蝕みの君” :
『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 彼ないし彼女にとっては、前方に現れた新手/有象無象などよりも。
 ・・・・
 逃げる旭の方が遥かに重要だった。
 それが逃げる勢いを増すのならば、当然、そちらに少なからず目が行く。

SYSTEM :

 だが
               ・・・・・・
 あなた自身が結論したように、二度目はない。
 そんなことをしたならば、ノイマン・シンドロームの有無など関係なく、
 陽が登り沈む所作ほどには当たり前の帰結として、どうなるかも分かる。

 彼ないし彼女が、死角からの“ちょっかい”に励起したのならば。
 二度目の弾丸を以て場所を特定したのならば、そいつの行動は明白だった。

SYSTEM :
 ………そうであるにも関わらず。
 合図は、岩場の中でも際立って入り組んだ場所/その細道を越えたならば、道なりにシホの下に合流できる箇所で行われた。

SYSTEM :
 3、
 2、
 1───。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 呼吸を止め、精神を研ぎ澄ます。
 自ら負う名の通り、朧のように透明になる。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「Renegade Smith Hearth
 抗レネゲイド弾薬精製機構の起動を確認」
 

”朧の狩人/残骸” シホ :
 だが、この銃は今、獲物を仕留める狩人の得物ではなく。
 仮初の同胞の勇を無駄にしないため、砕かれた記憶の残骸が唯一つ遺した武器。

”朧の狩人/残骸” シホ : 
「構成弾薬を焼夷擲弾に変更。姿勢制御機能を解除……
   All set
 全行程完了。合図を待つ───」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 『ほんの一瞬でも足を留める』───そのオーダーを完遂する為に狙うのは、奴の息の根を止めうる心の臓ではなく……

”朧の狩人/残骸” シホ : 
 敵を捉える機能の最奥、妖光を曳く睨眼だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「どうか、幸運を!」

SYSTEM :
 文字通り超人はおろか、人世にあってはならぬ化外さえ屠る葬送の一矢であるが。
 果たして───此度のそれは、その頑強な体皮を最初から貫くためのものではない。

 どんな生物とて、視覚を潰されたならば惑う。
 もとよりそいつに視覚の意味があったのかはまた別として、シホが択んだのは生命を削るのではなく、まさに相手の意識を止めるためのもの。

 目晦まし───はたまた、宣戦布告。

SYSTEM :
 ゼロ
 合図───。

 それと共に、銃弾が肥大化・活性化した角に隠れた、機能も定かでない目へと届く。 

SYSTEM :
 命中、直撃。
 異形の生物のわりには紛れもなく赤かった血飛沫が炎と共に舞って、足を止めるも。
 その焼け爛れた傍から再生していくのであればそれを瑕と呼んでよいものか。

“蝕みの君” :
『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 ・・・・・・・・
 見つけるべきものを見つけた、と。
 歓喜にも似た赫怒の念が渦を巻く。

SYSTEM :
 爆ぜるように飛び散った死のかけらが、翼のはためきと共に“蝕みの君”を天高く飛翔させた。
 その瞬間、彼ないし彼女の視線は旭ではなく、弾丸を二度届けた、自らの死神候補に名乗り名を上げた“らしい”ものへと決定的に向く。

SYSTEM :
 その膂力はキュマイラ・シンドロームが持つ獣性の成せるものでありながら、彼ないし彼女の翼が生み出す推進力はハヌマーンのものが近い。

 であれば、飛翔と共に生み出されんとした風の流れは、そいつにとって無形の凶器だ。
 事と次第によっては、近づき“始めた”その段階で、シホに害意が形となって襲い掛かる。

SYSTEM :
 だが。

 岩場の中を縫うようにして、
 飛び立とうとした───その出掛かり。

SYSTEM :
 そこで、出鼻を挫くように岩場が爆ぜて。
 彼ないし彼女の纏う鱗粉ごと吹き飛ばし、

 その場と周囲を、ほんの僅か遮断するように粉塵が巻き上がる。 

“蝕みの君” :
『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 即ち、獲物を見つけて飛び立とうとした瞬間を挫く嫌がらせ。

 落石と粉塵で視界を絶たれ、攻撃に使用するつもりか、あるいは別の用途があったのだろう彼ないし彼女の鱗粉が一度飛び散る。

SYSTEM :
 落石から少し離れた範囲にいた旭が、その一部始終を見ていたシホが視線を向けたところで、そこに何がいたのかも定かではない。
 
 ───いや。
 言葉を発さずとも、咆哮が感情を伝えている。

 いまのは怒気だった。
 何に妨害されたのか分かったから、そいつに狙いを定めたが故の怒気だった。

SYSTEM :
 文字通り、僅かだが。
 本来、見失わない限りは地の果てまで追い回すつもりだったのだろうことが想像に難くない“蝕みの君”の視線は、これであなた方以外の誰かに向いた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
  Hit
 命中。レネゲイド製の火薬を詰め込んだ擲弾は、狙い通りに標的の眼を灼き尽くす。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……否、少々訂正。灼き“尽くす”ことが出来たなら苦労は無い。
 狙い通りに放たれた弾丸は、これも狙い通りに怒りを誘うだけだった。

 向けられる視線。俄かに死の薫りが立ち罩めるその最中───

”朧の狩人/残骸” シホ :
 再びの爆発。同僚がいたはずであった竜の足下で、またレネゲイドが炸裂した。
 死線のボーダーが微かに動く。ほんの僅か、彼女がいるべき方向に。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「さぁ、急いで! 間に合わなくなる前に───!」

荻野目 旭 :「は……ッ、はあッ──!」

荻野目 旭 :爆音が鳴りやむか、鳴りやまないか、その間に、ほとんど滑り込むようにもうひとりの救援者の足元へ滑り込む!

荻野目 旭 :ずしゃあ、とすごい音。ちょっと擦りむいた気がするけど、もう痛みすら感じない──後ろのものに気を取られすぎているから!

荻野目 旭 :女の人を見上げる。彼女と──“イリュシデイター”と一緒にいたなら、最低でも悪い人じゃない筈だ!

荻野目 旭 :「救援っ……ありがとうございます! はい……!」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 もうロクに銃を仕舞う暇もない!
 滑り込んできた少年の手を奪うように掴んで引き上げ、駆け出す。なるべく遠くへ……!

荻野目 旭 :手を引かれながら、空いた片手で指を噛んだ。咲いた花をばらまいて、もう一度道を拓く!

SYSTEM :
 文字通りの遁走。
 巻き上がった土煙の内側にいた彼女が何を思い、
 何を口にして見送ったのかは定かではなかった。

 ただ、その迅速な行動が功を奏したか───。
 土煙を突き破って/土煙が晴れてもおかしくない頃とて、その二人の背を追い掛けてくるものの姿はなく。

SYSTEM :
 ───首飾りというには少々大きな“バディ”が、その背に遠ざかって行く気配へ、ちかちかと明滅する。

SYSTEM :
 ………何事かはさておき、少なくとも視認した事象に対して無関心と無反応ではない時の彼の反応を、少年の手を引いて駆けたシホに見るいとまがあったかは定かではない。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………撤退は思いのほか素早く済んだ。
 岩場を抜け、木々へ身を隠し。
 旭にとっては“ふりだし”で、シホにとっては知らない場所。

SYSTEM :
 つい先ほどまでの逃走劇など露知らずの鳥や虫の声。
 追って来るものの気配がないことは、何よりあなた方が分かっている。気になるならば、シホの首に提げた“彼”が答えてくれるだろう。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「はァ、はァッ──────
 どうやら……撒いた、ようですね……」

 岩陰に滑り込むように身を隠し、そこに座り込んで…どれくらい経ったのだろうか。1秒にも満たないようにも、1時間は経ったようにも感じられた。
 湿り気を僅かに含んだ土が、嫌にひんやりとした感覚を伝えてくる。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 念のため展開している秘匿領域は、そこらで歌う鳥獣から姿を隠すには十分だが……
 果たしてこれがあの竜に通用するかは、“不可”寄りのアンノウンであった。

「アナタは…大きな、怪我など、ありませんか……?」

荻野目 旭 :「ぜ……ぜえっ、ぜえっ、ぜえっ、ぜえ……」

荻野目 旭 :
 花の道を解いて、三角座りで息を整える。
 神経をとがらせて周囲を確認していたけれど、どれだけ真面目に探ってもとりあえずあの羽音は聞こえない。
 膝に顔を埋めて、体の震えを落ち着かせる。いち、に、さん。

荻野目 旭 :「ぎ……ぎりぎり、怪我もしてないですし、鱗粉にも当たってないです……めちゃくちゃ、疲れましたけど」

荻野目 旭 :「どうにか……僕らはあの場を凌げたみたいですね。あの、本当にありがとうございます」

荻野目 旭 :名前を呼びかけようとして、知らない上に僕も名乗ってないことに気づいた。今日はなんだか、いろいろと段取りが悪すぎるかも。

荻野目 旭 :「……ええと。“イリュシデイター”さんと一緒ということは、多分UGNともかかわりがある方だと思うので、簡潔に」

荻野目 旭 :「UGNチルドレンの、コードネーム“ナイトホーク”、荻野目旭と言います。あの、あなたは?」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……いいえ、ワタシなど、礼には。
 職務として、当然のことを果たしたまでですから」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 “僕らは”あの場を凌げた……その言葉に含意されたものが判らないほど、人の情緒を喪ったつもりはなかった。
 ……ここでは、その意味には触れないでおこう。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「“ナイトホーク”さん、ですね。
 そのお名前を伺ったことはないので、恐らく初対面だと思いますが…ええと……」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 そして、決めあぐねているといえば……目の前の彼、“ナイトホーク”に対する態度をどのようにするかという点も、いまいち決めかねているところだった。
 彼はUGNの立場にはあるが、チルドレンでもあり。この特異な状況を利用すれば、狩人の顔を晒したとしても誤魔化しは効くだろうが……

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ワタシはUGNイリーガルのシホ。
 コードネーム レムナント
 識別名は“残骸”です。こんな状況ですが…しばらくよろしくお願いしますね」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ああそれと。こっちの首飾りっぽいものはワタシの相棒です。
 “ブラザーフッド”といいます。寡黙な子だけど、仲良くしてあげてくださいね」

 ……“イリュシデイター”の件もある。此方の顔を用いる方が、今は良いだろう。

荻野目 旭 :「シホさんと、“ブラザーフッド”さん……ですね」

荻野目 旭 :ぐっと気を取り直して、いつもの顔をつくる。明らかに顔は青ざめているけど、笑顔は作り得。

SYSTEM :
 首飾りっぽいもの、と呼称された方が、その言葉に呼応してちかちかと明滅する。

タイガーアイ :
「参照:識別個体番号《ブラザーフッドG03》
    当機は漂着の際に駆動部を著しく損傷」

タイガーアイ :
「参照:コア部位の牽引を要請 現在に至る
    戦闘能力の喪失を認むる点を繰り返し留意」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……まぁ、概ねこういう経緯でして。
 UGNからの要請を受け、海上のある特定ポイントへ先行調査に向かった際、推定ジャームと思われる個体の攻撃に遭い…気がついたらこの島に、という具合です。
 ───ところで、アナタはどうしてこの島に?」

荻野目 旭 :「…………。…………なるほど」

荻野目 旭 :「実は……僕、よその任務中だったんです。護衛任務の。乗っていた飛行機から放り出されたかと思えばこんな場所で──」

荻野目 旭 :「その護衛対象とも、目覚めたときにははぐれていました。彼女はオーヴァードじゃないから急いで見つけなければいけないんですが」

荻野目 旭 :「……そんな矢先に、あれと遭遇したわけですね」がっくり。

タイガーアイ :
   ・・・
『………飛行機と来たか。
 少なくとも我々の活動時間は夜間だったはずだが』

SYSTEM :
 タイガーアイの波紋は時として、狡い時に狡い形であなた/シホだけの耳に響く。
 返答を期待していない、独り言のようなものだが。それを除いて考えるまでもなく、二人の任務は別物で、関連性を持ち得るものではなかった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「飛行機から、ですか───」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………強大なジャームの干渉であるとは我々も想定していたが、まさか飛行機の高度まで射程圏内に収めるとは。
 無差別的にあの海域周辺を訪れた者を連れ込んでいるのか、或いは何らかの標的に関する基準でフィルターでも設けているのか……どちらにせよ厄介な情報だ。

荻野目 旭 :「確認できていないのでなんとも言えないんですが、明らかに……なんというか、『襲撃を受けた』と感じました」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……つい先ほどまで“イリュシデイター”と共にこの島の調査に当たっていたのですが、
 “ブラザーフッド”の観測ログから推察するに、この島には推定ジャームの能力により『転移』していると思われるようです。『漂流』ではなく。
 襲撃を受けたという感覚も、恐らく大きくは外れていないはずです」

荻野目 旭 :浅く頷く。

荻野目 旭 :「同感です。と、いうか──文字どおり『呑み込まれた』という感じでここに来たので」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 やはり、タイガーアイの観測データに誤りはなかったか……。

荻野目 旭 :「僕はバロール・シンドロームの干渉であると感じました──それも、すごく大規模なやつ。ジャームだと言われると納得です。それに……」

荻野目 旭 :「道中で拾った通信機器も、スゴく変で」取り出してみせます。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「これは……ワタシたちもよく扱う類の通信機材のようですが……。」

 確かに、この類の機材は“日常で”見かけることは殆どない類の代物だ。
 だが言ってしまえばそれだけの、我々にしてみれば凡庸なアイテムだが……

”朧の狩人/残骸” シホ :
「…………。数年前からこの島はあの海域を通過した人を招び込んでいる、ということでしょうか……?」

荻野目 旭 :「かもしれません。……こんなものが充電も電池も切れないまま見つかってるのが、そもそもおかしいですよね?」

荻野目 旭 :「……。………」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ブラックドッグシンドロームを応用した技術が用いられていれば、半永久的に稼働する機材というのも恐らくは実現可能です、が…………」

 …………この反応。恐らくは、“それだけでは済まないもの”を見ている人間の顔だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───アナタがこれを拾ったときの状況を教えていただけますか?」

荻野目 旭 :「……まさしく落とし物という感じです。森の中に、ぽとっと」

荻野目 旭 :「落とし物に電力供給ができるようなオーヴァードのことも見かけてません。あなた方にお会いするまで、ここで見つけたのはこれと遺体だけです」

荻野目 旭 :
 オ ル ガ
遺体の身体特徴も念の為伝えておきます。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「─────────」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……『推定オーヴァードの遺体を見つけた』、その情報も重要極まりない。
 ないが、つい先ほどの脅威の存在を鑑みれば、ありえない話ではない。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 問題はそのあとだ。
     ・・・・・・・・
 彼は今、遺体の身体的特徴を伝えてくれた。
 通信機材の持ち主がその遺体であるならば…そして表示された年月が本当に経過しているならば。そんなことは不可能だ。
 この島の特異性、オーヴァードの特異性を加味しても、性別不明の遺体になっているのがまだマシな状況なのだから。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「…………。確かに奇妙ですね。
       ・・・・
 この通信機はつい最近落とし物になっていないとおかしな状況なのに」

荻野目 旭 :浅く頷く。

荻野目 旭 :「その人とは離れた場所にありましたから、断定はできないんですけど。……。……」

荻野目 旭 :
「なによりおかしいのは、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 日本国外で死んだはずの超大型ジャームが、ああやって生きてることです」

荻野目 旭 :ちらりと、彼女が握る銃を見る。……奇妙な既視感があるそれを。

回想する、曰く─── :
. レーレ・シュヴェア
「《蝕みの君》───」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……あの飛竜のことでしょうか。
レーレ・シュヴェア
《蝕みの君》……“イリュシデイター”が先ほどそう呟いていました。アナタも、何かアレについて知っているのですか?」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 問いかけながら、気取られぬように軽く首飾りを小突いて合図を送る。
 『オマエは何か知らないのか』、という無言のメッセージ。こういう“言葉”を汲み取るのは、この賢者の得意分野だったはずだ。

SYSTEM :

 軽い小突きに、タイガーアイは普段のような“明滅”では応えなかった。
 ブラザーフッドとしての応答は面白みもない、あくまでもUGNの人工RBというパーソナリティの範囲での“つまらない”回答に過ぎない。

 作戦報告書がおいそれと、その辺のオーヴァードや支部に伝わっているわけもない。
Leere schwer
“蝕みの君”………直訳で『空虚な(重)病』などと呼称されたこのコードネーム、そしてあの個体を知っている人間がいるとすれば、それは、彼ないし彼女の出没したあの日を存じている人間に限られる。

SYSTEM :
 旭のような、あるいは───。
 その場におらずとも、
 当時の作戦へ、間接的に関与していたような。

タイガーアイ :
『それを最も存じているだろう者は先程までいた』

タイガーアイ :
『そして我がお主に伝えられることは………

 死んだはずの者が生きて現れるということは、それが本当に生前と同一なのかを差し引いても、有り得ない話ではないという事実だけだ』

SYSTEM :
 面影島事件───。
 死者の黄泉帰りを異変の発端とし、同時にレネゲイドビーイングの知性進化を促した件の出来事よろしく。

 死者が同一かを抜きにして蘇るということは不可能ではなく、珍しくても珍しすぎる話ではない。

 シホにだけ広がる波紋が伝えた事柄を当たり障りのない結論とするか、重きを置くのかは彼女次第だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 “死んだはずの者が生きて現れるということは、それが本当に生前と同一なのかを差し引いても、有り得ない話ではない”───

 ───それを最もよく知る者のひとりがワタシであると、オマエは果たして意識していただろうか?

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……その意図するところがどちらであれ、結論は変わらない。
 “それを最も存じているだろう者”を先程見送ってしまった以上、今のワタシにできることは“次にそれを存じているだろう”目の前の少年に黙して耳を傾けることだけだ。

荻野目 旭 :「……はい」

荻野目 旭 :
「海外で──ストックホルムで遭遇したジャームなんです。
 当時は、対応に当たって前線に出たエージェントのうち、僕以外の全員が殉職しました」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「全員──────」

荻野目 旭 :……小さく頷く。

荻野目 旭 :「……だけど、間違いなく死んだはずなんです」

荻野目 旭 :「……ひどい死に方でした。とどめを刺されたのは間違いないんです」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「そう、だったんですか………」

 言葉少なに語るこの少年が、どれほどの修羅を経験したのか。想像には難くないことだった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……ワタシが感じた限り、彼は聡明な子どもだ。
 その彼が、敢えて核心を避けるように言葉を紡ぎ出す様子を見ては、言葉を重ねるのも少々憚られる気もしたが……
 その配慮が彼の傷を救うわけでもない。今は必要なことを聞かねばならない。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「確実に止めを刺された、というのは間違いないんですね?
 或いは、かの飛竜が同一個体のジャームであるというのも……何かしらの判断事由が?」

荻野目 旭 :「実は生きてた、とは考えにくいです。粉々でしたから」

荻野目 旭 :きっぱりと言い切る。それは多分間違いない。

荻野目 旭 :「同一個体かどうかは、正直自信がないですが──身体特徴と戦い方がほとんど同じでした。それに……」

荻野目 旭 :「……明らかに『僕』を認識していました」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 確かに、あの怪物が少年に襲い掛かる様子は尋常ではなかった。
 その執着の度合いという意味でもそうだが……たとえ彼/彼女にとっては擦り傷程度であれ、負傷の危険性を及ぼす推定脅威存在───つまりワタシたちのことだ───を無視してまで少年に迫っていた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 たとえば熊は一たび掴んだ獲物には執拗なまでの執着を見せると聞くが、アレがその類の反応だとすれば納得できる。
 彼が同一のジャームと判断したのは相応の筋が通っている。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「では、あれをそのジャーム……《蝕みの君》と同一個体であると仮定しましょう。
 この島のバロールシンドロームによると思われる特異性と、通信機の状況。奇妙な点は多いですが、符合する点もまた多い」

荻野目 旭 :「それがいいと思います。万が一出来の悪い偽物だとしても、撒き散らす鱗粉がそのまま同じでした」

荻野目 旭 :「あれは──すごく危ないです。振りまかれただけで、ひとり……死にましたから」

回想する、曰く─── :
『実は……僕、よその任務中だったんです。護衛任務の。乗っていた飛行機から放り出されたかと思えばこんな場所で──』

『その護衛対象とも、目覚めたときにははぐれていました。彼女はオーヴァードじゃないから急いで見つけなければいけないんですが───』

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……それならば、我々も島内での捜索を急ぐ必要があるかもしれませんね。
 過去に殺害されたジャームが何を基準に甦っているのかは判りませんが、ワタシも職務のうえで何体かジャームを葬っています。或いはそれらの個体も出現している可能性がある」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「それに、少なくともワタシが知るUGNやゼノスのエージェントには、アナタが発見した遺体のように特徴的な前髪を持つ職員はいませんでした。
 ワタシたちとはまた別のエージェントが巻き込まれている可能性も否定できない」

荻野目 旭 :「………第2、ないし第3勢力がいる可能性がありますよね」

荻野目 旭 :考えるだけで気が重いけど、悲しいことに事実だ。……ほぼ間違いなく。

荻野目 旭 :「……どちらにせよ急がないと。どうにか彼女たちを見つけないと──手遅れになるかも」

SYSTEM :
 少なくともUGNとそれ以外と言ったシンプルな括りで、この島を括ることには問題がある。

 ………そう判断した旭の気の重さの筆頭たるものは、やはりというべきか、オーヴァードではない───こんなところに身を守る術もなく放り出された、自分より年上の無力な“子供たち”にあった。

SYSTEM :
 ………島からの脱出も然ることながら、互いにはぐれた仲間や護衛対象の捜索という意味で意見を着地させられる。
 意見が割れるようなこともなかったのは、不幸中の幸いと言えよう。

SYSTEM :
 であるならば、さて。
 次の指針が彼方からやって来ることについては、不幸中の幸いと呼んでいいものだろうか。 

SYSTEM :

 ───ふと。
 ・・
 それが、木霊した。

咆哮 :

“La───Aa────” 

SYSTEM :
 頭が“きいん”となるような音量と共に、
 瞬きのうちに広がったワーディングエフェクト。

 小さく儚い、歯牙にもかけないようなものから。
 何処に隠れていたのかも分からないような、蛇だの鳥だの何だのと言った、有象無象の生物まで。
 その声に充てられたように、ざわめきは“ついで”のものではなくなっていく。

SYSTEM :
 声の主に”充てられた”のだ。
 先程まで“さえずり”だったものが、ざわめきとはばたきに代わり、森が揺れ始めた。

 人間物とは思えないその声量は、キュマイラがやったというにしてもちょっとばかりの度が過ぎている。
 島全体を揺るがすような何某の声が波紋のように広がる───。


 と。
 ・・・・
 ここまでは、コレを聞いたものが誰しも思う共通反応。

SYSTEM :
 別に自らの存在を誇示するでもない、ごく自然な挨拶でもするような態度のくせ、“ちょっと退け”と言いながら刃物を向ける。
 そんな剣呑さと快活さの入り混じったような、珍しくても珍しすぎはしない“バケモノ”の声。

 ………こういうモノを、忘れたくても忘れられない人間にとってだけは。

 声は違った意味を持つ。

SYSTEM :
 だってこれは───。
 ・・・
 笑い声だ。

 そうとはとても思えないし、思いたくもないが。
 
 その場にいたらしい何かに“こんにちは”と笑いかけて───。
 事と次第によっては、あの時あの日のように襲い掛かる寸前の、笑い声だった。

SYSTEM :
 ………そして参考までに付け加えておくと。
 遠くから響いたそのワーディングに充てられないものはいない。
 島にいて、気付かないものなどいない。そう確信できる規模の生き物が“そいつ”だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「それでは、早速捜索に────」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───っ!?
 敵襲……いえ、これは…………!?」

 なんだ、この異様なワーディングは……!
 先ほどのジャームのものとはまた違う、いや寧ろ、それよりも巨きいものが…………!?

荻野目 旭 :「────!」

荻野目 旭 :「………ッ」

荻野目 旭 :条件反射みたいに全身に奔った怖気を、必死に抑えつける。

荻野目 旭 :
 ・・・・・
 たぶん違う。

 あの人とはちょっと違う。

 だけど──嘘みたいに似てる、これは絶対に化け物だ。

荻野目 旭 :
「他の誰かが襲われているのかも!
 急ぎましょうっ──手伝ってくれますか、“残骸”!」

 声は明らかに震えていたけど、今はそんな場合じゃない!
 自分のほっぺたを勢い良く叩いて気合を入れ直す!

”朧の狩人/残骸” シホ :
 声が震えている……

”朧の狩人/残骸” シホ :
 だが今は、その声に躊躇っていられる状況ではない……!

「ええ、急ぎましょう “ナイトホーク”!
 なるべくワタシから離れないでください、捕捉されぬよう秘匿領域を展開して移動します!」

SYSTEM :
 おそらく違う。
 それは分かっていての言い聞かせか。

 そのような都合の悪いことなんてないと、分かっていて目を逸らしたのか。
 それとも、そう思う事で、押し寄せる感情をスムーズに“あとまわし”にしたのか。

SYSTEM :
 ………距離は遠いが、遠すぎるほどではない。
 捕捉を厭い展開された秘匿領域の中、オーヴァードだけの時間となったワーディング空間を、ひとりのイリーガルとチルドレンが駆けていく。

 ………部品/装置に過ぎぬ立ち位置に留まったものが、密やかに瞬いていた。

タイガーアイ :
『なるほど』

タイガーアイ :
『我の提案に乗り気でなかったくせ………。
 我が提案する前から予測を付けていた理由はコレか………』

SYSTEM :
 やはり迷惑料を払っておいて正解だった、と。

 丁度、自分の“バディ”が旭に意識を向けていた時、何事もないかのようにひとり合点したこの人ならざる賢者が───あるいは“察せた”であろうバディの反応に、何を思ったのかは定かでない。

SYSTEM :
 ………そして辿り着いた先に送った感情が、いざ事実を前にした時どうなるかも。
 また、定かではない。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ………そして。
 声の主が辿り着く直前の空白に目を瞑り、
 今また時計の針を先刻に戻す。

 声の主の下に、真っ先に辿り着いた二人の話だ。

SYSTEM :
 何ら隙も緩みも見せず放たれた弾丸を、
 巡り会った刹那に隠しもせず向けられた高揚を。

 悉く打ち消し踏み潰し、歯牙にもかけず。
 そんなものが、朗らかに眼前で笑っている。

 血濡れの子供を一人置き去りにし、担ぎ上げた子供を一人、得物を持たぬ腕で持ち上げ。

“喚楽の人喰い虎” :
「───私の名前は明夜白銀(あかしや・しろがね)!
 コードネームは“喚楽の人喰い虎”! 呼びたい方をご自由に!」

“喚楽の人喰い虎” :
「年は五月の半ばから、数え年で20とちょっと。
 生まれた意味は覚えていないのでどうでもいいですが………生きたい理由も死にたい理由も考え中なので多分ありません!」

SYSTEM :
 そいつと来たら、
 聞かれてもいない/名乗らなくていいと言われた自己紹介を、
 まるで持っているカンペでも読み上げるように口にし始めた。

 これが、ついさっき奇妙なものを二つも拾い上げた“幸運の徴”の下にやってきた、奇妙なものの三つ目だったわけだ。

久外境耶 :
「……あぁ?」

 背後に消える推定モルフェウス、触れる直前で霧散する弾丸。ハ、と笑みがこぼれる。野郎、フカシやがったな──

久外境耶 :
 ・・・・・・・・・
 じゃあ最初に死ねよ、と変化させた片手で動脈に狙いを定めてザックリいく直前。
『いつわりではなかろう』
 伴ってやつの言葉を思い出した。

久外境耶 :
 ……はなから真偽はどうでもいい。単純な話こいつに手を出せば、おれがホデリの言葉を信用していないコトになる。

「はっ。イロ男、命拾いしたな」

 意識を切り替えて、上物に専念する。

久外境耶 :
「そりゃあ贅沢でけっこう! 誇れよオネーサン、選び放題ってのは強者の特権だぜ?」

木口龍 :
「…………」

 外した?
 いや、違う。
 アレが通常の尺度で測れるオーヴァードでないことくらい、知って──。

木口龍 :

「────う、ウオォォォォアアアアアア!!!!」


 ──いや問題はそこじゃなくてですね。

木口龍 :
 世の中手を出してはいけない人間とか、そもそも目をつけられちゃいけない人間とかいっぱいいるわけですよ。
 つまり目をつけられたら死ぬわけ。おわかり?

 ……ああああああやってしまったやってしまったやってしまったやってしまった。
 いやなんか目の前の同行者のギラついた視線も一瞬こっち向いたんですけど?
 マジでオレ死ぬんとちゃいますか?

木口龍 :
 いやマジでそんなつもりないんですよ。
 こう、体が自然にといいますか、あなた様の腕を撃ってしまっただけなんです。

木口龍 :
「──っこれぞぉぉぉぉぉ最上級の謝罪!!!!」

 で、土下座スタイルに移行しようとします。綺麗に。流れるように。

“喚楽の人喰い虎” :
「ええ。強い弱いは、まあどうでもいいんですが………。
 そう呼ばれること自体は、私みたいなのにとってはいいことらしいので、そうしときましょう」

“喚楽の人喰い虎” :
        ・・
「だからここにも択びに来たんです。

 ───なるほど。贅沢!
 これ、贅沢なんですね! 忘れるまで覚えておきましょう」

SYSTEM :
 その後、言葉を交わす”暇”があると見たのか、彼女の視線がまず隣に連れた白狗へ。
 ………微かな唸り声を挙げるホデリの視線は、彼女の担いでいたものに向けられていたような気がするが、さておき。

“喚楽の人喰い虎” :
「………ところでそこのユカイなの、きみの知り合いですか?」

久外境耶 :「嫌ですゥ」イエスとかノーとかじゃねえの。わかる? 

“喚楽の人喰い虎” :「あはははははは!」

SYSTEM :
 彼女は良く分からない生き物に“基本的突っ込み”を全く入れないタイプではなかったらしい。

 ウケているのかどうかは定かでもない。
 彼女、先程からずっと“笑っている”からだ。

木口龍 :
「すみませんでした見逃してくださいわざとじゃないんです」

土下座スタイルで許しを請うている!

SYSTEM :
 序でに言うとあなたの全霊の命乞いには言葉を返す素振りもない。
 
 ………境耶は記憶しているはずだ。
 彼女は“しらけさせる”相手には矛を向けない。

久外境耶 :
 ……おーおー愉しそうなコトで。
 どこまで本気かは分かったもんじゃないが。

久外境耶 :
「よかったな、イロ男。腑抜けかましてる間はキョーミねえってよ」

 で、こっちは前情報通り。仮にも一発入れられて"こう"なら、土壇場で萎え落ちしていただくのも手なワケか。

久外境耶 :
 ホデリの唸り声にいくらか理性を呼び戻される。ハイになった頭を仕事に切り替えて、転がってるソレと担がれてるアレに意識を向ける──と。

「……あん?」

 学生服? ……なんでまた。

久外境耶 :GMぅ〜 転がってるほうに熱感知するわ、そいつ生きてる?

GM :ふむ? ふうむ…

GM :畏まりました。判定は不要です。

SYSTEM :
 あなたの目に転がっている“学生服の子供”がどう映ったかは定かでない。
 しくじった間抜けか、巻き込まれた“不幸なエキストラ”か。であればそれは、単なる興味本位以上ではなかったのかもしれない。

 生命の熱は微かな残り香のみを遺し、それも消えゆく手前であった。
 誰ぞが処置を施さねばそのまま“くたばる”しかない。

 ………あなた/境耶にそんな義理もなければ、横の記憶喪失/龍にそんな技能があるという保障もない。

『ホデリ』 :
「この者ならず………だが………。
 ………やりしは貴様か?」

SYSTEM :
 そしてホデリにもコレをどうこうする術はなく、彼が唸っていた根本の原因は“そこ”にあるようだった。

 どうも『なつかしき気影』とは掠りもしないその少女であるが、血だまりに沈んだ死の秒読みを前にして、下手人に憤る気概というのがあるらしい。

木口龍 :
「マジですか……あーーーーー良かったーーーー……生きてるぅ……」

 一方でオレはへたりこんでいる。
 いや絶讃眼の前血みどろなんですけども。
 オレは青年(境耶)と、やべーやつの両方を見つつ様子を伺う。

木口龍 :
「って、いうかあのぉ」

 おずおずと手をあげて、下手人様に質問しよう。

“喚楽の人喰い虎” :
「え? これ私答えないとダメですか?」

木口龍 :
「どうしてこう、あの、なんか血みどろにされてるんですか……?
 もうこの三下の探偵の質問に興味がなければ答えなくていいですのでハイ……」

 抱えているのを指さします。

木口龍 :「いやもうマジで、常識で考えておかしいでしょうよ。ね? 話し合いは万国共通、相互理解。つまり聞く権利はあると思うんですよぉ」

久外境耶 :「常識だっておまえにだきゃあ説かれたくねーだろーよ」

木口龍 :「血みどろの人間抱えてるのが常識って時点でおかしいでしょうがよ!!!!」

木口龍 :(悲鳴)

“喚楽の人喰い虎” :
「常識の話するなら、私的にはきみの登場の仕方が一番不可解なんですが………」

“喚楽の人喰い虎” :
「まあいいでしょ」

木口龍 :「オレと比べればなん、なにこ、ナニコレって言いたいんですけど!? あ、オレは流されてきただけなんであしからず」

木口龍 :ちなみに深い意味はないよね流石に>登場の仕方〜云々

GM :どうでしょう。ですが逆に考えて下さい

GM :初手でいきなり銃撃してきた後に土下座をかけて平気で質問してくる人間の登場の仕方が『不可解』でないことはありますか?

木口龍 :……

木口龍 :そうだな!(続けてくれの意)

GM :よろしい。

久外境耶 :
「……ンー」

 ちきちきとナイ頭を回して、まあ結局やることは変わんねえなと着地。
 仕事に移る前に、転がってるソレに目を向ける。

(ま、せいぜい頑張んな)

 ここで命拾えるツキがあるんなら、
 死にぞこないのよしみくらいは持ってやるからよ。

久外境耶 :
             ハイエナ
「ま、いいや。オネーサン、強盗ってご存知?」

久外境耶 :
「おれがそうだわ。そのガキ置いてきな!」

 勝算? さてね。

SYSTEM :
 彼女の反応は極めて淡泊───。
 というよりは、各自に向けて明確に起こすリアクションが違っていた。

SYSTEM :
 少し話せばわかることだが………。

 自称にせよ他称にせよ“合成獣”の名を欲しいままにしたこのイキモノは、それなりに話し好きであるらしい。
 少なくとも戦う相手としてはほぼ興味を失っているものに対して、わりと律儀に言葉を交わしているのがいい例だ。

 元に、境耶が“それ”を吹っ掛ける直前にて、

“喚楽の人喰い虎” :
「や、別に? 知りませんね。
 というか私、自分と遊んでくれないヤツに手ぇ出すほど人生ヒマじゃないですし………」

SYSTEM :
 そういうの1回やって、性に合わなかったので………と。
 得物と少女をそれぞれ持つその腕で、地味に器用な軽い伸びなどしてから、下手人の濡れ衣を否定する所作から入る暢気ぶりだ。

 やられること等最初から思っていない傲岸不遜さか、あるいはその手の危機感がごっそり抜けているのか。

“喚楽の人喰い虎” :
「あとついでに言うなら………人生有限でして。
   ・・・・・・
 私、覚えたいもの以外は特に覚えないようにしてるんです」

SYSTEM :
 ………その話好きが、気のすむまで言葉に付き合っていたのも、にこやかにはしていたがどこまで本気で楽しんでいたのかは定かでない。

 対話という行動を好んでやっているだけで、それにどの程度の意味を見出しているのかさえ。

“喚楽の人喰い虎” :
「………………。
 そしてその覚えたいものを思い出す限り、この子? この子の持っているモノ? について、私、それなりの用がありまして」

“喚楽の人喰い虎” :
「さっき言いましたがね。私、ここには遊び相手を探しに来てるトコなんです。
 その遊び相手探しにこの子が必要で………具体的には………まあいいや後で思い出します。

 ───そんなワケですが、その最中に押しかけのハイエナなど来てしまったら、ああどうしましょう」

SYSTEM :
 勝算なぞ定かではない。
 何を思って吹っ掛けた喧嘩かは境耶だけが知っている。

 ただ何れにしたって、この生き物は。

 自分に向けて真っ直ぐ目を向けて来た/一山幾らの鉄砲玉に対して、

“喚楽の人喰い虎” :
「───どうしましょう、どうしましょう!
 は、は、は! あははははははははは!」

“喚楽の人喰い虎” :
「結構! 
 吹っ掛けられるのは、吹っ掛ける次に好きです!」

SYSTEM :
 ………事前の情報通りだ。

 誰より“戦える”を示したあなたに、彼女の視線はあまりにも素直に向いた。

木口龍 :
「あっな〜〜るほどそうでございましたか……ヘヘヘ……。
 いやでもちょっと待ってあなたココでおっぱじめるとあれでしょう、興味無い者達の死体がいーっぱい出来て、邪魔になるのでは……?」

 ……もの? もの、ねえ……。

木口龍 :
探偵の性分故に、その担がれてる少女をちらっと見る。
GM、目立つようなものはつけてたりするか?

GM :………ふむ?

木口龍 :彼女自身というか、彼女のもの?に用がある、と言っていたんでな。
何かつけてるのがあるか、オレの位置から見えたりするか?

GM :畏まりました。これも大して判定は要りません………

GM :と言いたいところなのですが………

GM :………悩みましたが、無条件で渡す情報か少々考えてしまいますね。判定一つお付けさせてください。

SYSTEM :
【Check!】
 判定が発生しました。

 判定:〈知覚〉
 目標:7
 Success:イベント進行
  Failed:イベント進行

木口龍 :知覚か

木口龍 :もう振っていいのか?

GM :問題ありません。

木口龍 :OK

木口龍 :4dx 唸れ (4DX10) > 9[1,1,2,9] > 9

GM :どんな乱数?

木口龍 :つかこれ

木口龍 :9じゃねぇかよ!!!!

GM :憑りつかれておるようですな…

GM :“““九十九神”””に

木口龍 :1,1,2のあとに9はもう言い逃れできない

SYSTEM :
 担がれている/目立った外傷のない方の少女について………。

 龍が見る限り、特に目に映るものは一つくらいしかない。
 彼女の首に掛かっている勾玉のような首飾りだけだ。

 これだけならば、ただの風変わりな首飾りで話も付こうものだが───。

SYSTEM :
 あなたの振る舞いが本当に注意深く“それ”を観察していたのか。
 あるいはたまたまだったのか定かでないけど。

 少なくとも龍は、彼女の首飾りによく似たものに心当たりがあった。

SYSTEM :
 境耶の隣で周囲を伺う、白い狗。
 こいつの首に提げられている“古ぼけた何か/首飾り”が───。

 よく、似ている。

木口龍 :
 ンッ、ん、ん〜〜……?
 勾玉、勾玉ねえ。日本に由来するには素晴らしいくらい独特な形状のそれ。
 ふと頭に過るのは、──そーいえば吠えてる狗? 狼? の首にも似たようなものが……。

木口龍 :

久外境耶 :「ハッハハハ! なんて目しやがんだ笑えねえ! 見られただけで逝くかと思ったわ!」

久外境耶 :なあGM、《捨て駒》で担がれてるガキ引っこ抜けるか?

GM :む………

GM :………担がれた方ならば、効果としては《エキストラ》である以上確かに適用できるでしょう。

GM :しかし『それを担いでいる相手』にちょっとばかり問題があります。これが『同じエンゲージ範囲内』であれば流石に認めておきたいところとはいえ、今回は申し訳ないのですが“No”とさせてください。

久外境耶 :オーライ、じゃあ言及だけさせて貰うわ

久外境耶 :

久外境耶 :
 最悪ブツだけかっぱらって逃げの一手──はよくやる手だが、今回ばかりは無理筋だ。

「じゃ、いつも通り楽しくやりますかねえ!」

 来るかも分からん増援待ちの足止めだ。一桁で済めば御の字か?

SYSTEM :
 両者の行動は対極であった。
 担いだ少女と下手人(本人は否定)の言葉から冷静(?)に動機を探ろうとする龍。

 その担いだ少女を“ブツ”と見做して無理筋と見込みつつもかっぱらいに掛かろうとする境耶。

『ホデリ』 :「───いかん、止まれッ!」

SYSTEM :
 その無謀/刹那的な思考の意味するところを、僅かなりとも同行した彼には伝わったのか。
 口とは裏腹に、持ち得るレネゲイドの因子/バロールのものと思わしき重力場が、足止めに掛かろうとしたあなたの護りに上乗せされようとしていた。

 しかし1と1を足していくらか上等にしたとて、眼前のそいつが“2”で済むのかは話が別。

“喚楽の人喰い虎” :
「───ええ、ええ! そういうわけです。

 死なれても確かに邪魔なので、そこのきみは早いとこ尻尾撒いて下さいね!」

SYSTEM :
 笑っているという表情こそ変わらないものの、どうも向かって来ることそのものが“それなり”にお気に召したようで、その守りごと突き破ろうとしていることだけは明白な彼女。

 一桁、が時間なのか『リザレクト』を要する回数なのかは、境耶の思考だけが知っていることだが。
 どちらとて、その答えは予想の範囲で正解と言わざるを得なかった。

SYSTEM :
 ………そんな彼女の動向と感情が、担いだ少女に“多少”の配慮を込みとして、それなりの業物らしい得物/長矛を介して放たれようとするのと───。

SYSTEM :
 砂浜を蹴る音、草木をかき分ける音。
 それが聞こえるのは、解き放たれるまさに直前だった。

 つい先ほどの、何かを退けるための傲岸不遜な咆哮は、島全体に轟き響き渡っていた。
 であればこれを聞いていたのは、境耶と龍だけではなかったということだ。

SYSTEM :
 ………しかし聞いた本人であるところの二人が───。

 旭とシホが、この状況に巡り合わせたことをどう思うかはまた別の話である。
 見知った顔は確かにいたが、その状況を“合流した”というにはほど遠いし、そもそも半分以上は知らない顔。

 加えて、いまにもやり合おうという片割れは───。

“喚楽の人喰い虎” :
「───は、」

“喚楽の人喰い虎” :
「は、は、は!
 あははははははははははははは───!」

SYSTEM :
【Check!】
 エフェクトの所持を確認しました。

 Major:獣王の力
 Minor:一角鬼

SYSTEM :
 喜悦なのか咆哮なのか、それ以外の何かなのかさえ定かではない笑い声と一緒に。
 今まさにその矛に込められた暴力を、振りかぶると共に解き放ち───空気諸共、重力場諸共、眼前を文字通り、ごっそりと“削り取る”ように、得物の悲鳴もお構いなしに、一触即発の片割れ/境耶へと投げ擲ってみせたその姿は。

SYSTEM :
 あの日、あの時とまるで変わらない。
 笑う姿も、
 振り抜いた暴力も。

 旭の振り返ればいつでも鮮明に思い出せる過去の姿と、変わらないモノだったからだ。 

荻野目 旭 :
 視界が開ける。
 いいや開けるよりも前に──

荻野目 旭 :「な、ぁッ────」

荻野目 旭 :
 忘れもしない笑い声がする。
 笑うという行為は本来攻撃的なものであり獣が牙を剥く行為が原点である──そんなことを描いてあるフィクションを読んだことがある。

荻野目 旭 :
 その声は、およそ旭が知る中でもっとも『それ』に近いものだった。

荻野目 旭 :
 なんで! どうして!
 どうしてその声がする──そういう叫びは、開けた視界で見えたものの前にもう一度千切れ飛んだ。

荻野目 旭 :
 投げ放たれる槍と、その正面にいた少年。

    ゼッタイニマトモジャナイ
 どちらも笑っているけれど、それは問題じゃなかった。

荻野目 旭 :
「だめ、だ────ッ!」
 叫びながら、高台から渾身の力で跳躍。
 同時に手を振り払って、舞った花を即席のスライダーにして滑り降りる。

荻野目 旭 :
 彼が力量差に気付いていない並のオーヴァード/当たり前だけどその公算のほうが高い/ってだけなら、受けきれるわけがないのに。
 僕の力はあくまで『死にかけ』をなんとかするものであって、不可逆のものはどうにもならないのに──
 そう知りながら、着弾した槍、もうもうと立つ土埃の先に一目散に駆け寄る!

”朧の狩人/残骸” シホ :
 獣を喰らう獣の残響を頼りに駆け抜けた先。
 鬱蒼とした森林を抜けた先、小高い丘の上に出る。季節の割に照りつける太陽が眩しさを増す辺り。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「砂浜……ではここが島の端ということに───」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 そしてその陽光が照りつけ、影を落とす先。
 喜悦と、さきほど遠ざけたはずの死の薫り。それに呑まれただろう人影と、およそ呑まれかけている一人、死に対峙する二人。
 あとは、その香りを振り撒く獣の声。

”朧の狩人/残骸” シホ :

”朧の狩人/残骸” シホ :
「一触即発……
 ───ッ、ダメです、“ナイトホーク”!ここは様子見を……!」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 名も顔も知らないが、少なくともワーディングの影響下にあってなお意識も保つ二人の男はエージェントに違いない。
 ならば救援の優先順位としては───


 ───あるいは、視界の端に映った斃れ伏す少女の背が判断を鈍らせたのか。
 飛び降りる小年の背中に咄嗟に手を伸ばしたが、とても間に合わない!
 姿の秘匿に回した因子を解除し、銃身へと込め直す。いつでも援護射撃に回れなければ……!

久外境耶 :
 砂塵の向こうで影が揺れ──

 逆巻く冷気が、砂の帳を吹き散らした。

久外境耶 :
「痛ッッッ……てえ〜〜〜〜! カンペキ防いだのにクッソ痛え! おいホデリ見たかよ、おめーの力場ペラ紙みてーに抜かれてんぞ!」

 とびきり上機嫌で品のない笑みは、無貌から。眇める双眸も、歪める口唇も持たないものが、喜悦を発している。

久外境耶 :
 振り抜かれた矛は擲弾に似て。火力ではなく暴力による推進をもって、阻むものすべてを抉り抜いた。

 そう、すべて。重力の護りすらも破り、確かに穂先は到達していた。金属質の外骨格に覆われた──いや、そのものに変質した肉体へ。

久外境耶 :
 現に、形状変化させた腕からは白い冷気が噴き上がり、放射状の罅を修復している最中だ。

 ホデリの防護がなければ、あるいは構えを取るのが遅れていたら……
 一桁チャレンジの記念すべき一回目がカウントされていたことだろう。

木口龍 :
「う、ォ──ッ!!! あ、アンタ、ヤバいって!!
 死にてえのかバカ! いやマジで死にたくないならケンカうんない方がいいですって──」

 ・・
 アレはヤバい。女が構えをとった瞬間、龍の背筋には怖気が走った。
 幾千もの戦場を経てきた故の経験が、ガンガンと警鐘を鳴らしている。
 あの化物が振るう得物。あれから放たれるものにブチ当たれば、末路は安売りのミンチだ。

木口龍 :
「ヤバ──お、おわああああああ!?」

 その衝撃たるや、腕でガードしていてもふっとばされるほどだ。
 情けない勢いで砂浜を転がされる。だが目を開ける勇気はない。
 誰が好き好んで列車が轢いた肉片を見に行こうだなどと思える?

木口龍 :

 煙が晴れる。

木口龍 :

 ・・・
 少年の、喜悦を滲ませた声が聞こえる。

木口龍 :

「……マジかよ……」

 あいつは、生きている。異形となりて、その肉体で穂先を受け止めていた。

SYSTEM :
 貼られた力場に意味などあったかも怪しい。
 バロールの重力障壁は確かに境耶が命拾いする遠因であったのは確かだが、此度ばかりはぶつけられたものに問題がある。

 投げ擲った得物は名もないがそれなりの業物であり、しかしそれ以上ではない───。
 先の真空も、投擲直前に悲鳴を上げるように軋んだ空間も。掠めすらせず、大の男ひとり、ガードごと砂浜に“転がす”暴力も。
 丸ごと彼女自身に巣食うレネゲイドの成せる技。

 有体に言うならば、そういう“壊しかた”の才能だ。

SYSTEM :しかし。

『ホデリ』 :
「ぬかせ、わたしが在らずや死の間際ではないか…!
 懲りば程々に───」

『ホデリ』 :
「………まあよい! 生きておるな!」

SYSTEM :
 命を拾った間際でさえもげらげらと響く声。
 なるほど龍の見立てた通り九死に一生を得る望外であるが、それを“当然”とする少年の振る舞いを度胸と取るか傲慢と取るべきか。
 少なくともこの現状を以て“無事”を思い知ったホデリの言葉は叱咤にも軽口にも取れた。

SYSTEM :
 そしてこれを。

 消し飛ぶより他にないと見ていただろう大多数の一人であったはずの旭がどう捉えたか。

 いや───。

“喚楽の人喰い虎” :
「───死なずで結構!
   ・
 では次行きましょう!」

SYSTEM :
 ───その様子一切変えずとも、
 語調を強めてなお楽しいと喚ぶ獣のさま。

 それを前に、冷静に分析などしたかどうか。

荻野目 旭 :
 一縷の望みをかけて目を凝らした先、感覚器官に届いたのは声のほうが早かった。
 一瞬遅れて土埃が晴れる。
 その先──立っている異形の姿。

荻野目 旭 :
「ぃ……」
 生きてる。
 モゴモゴそう呟く。

荻野目 旭 :
 再現されなかった光景に、膝から崩れかけた。
 ぎりぎりで堪える。
 胡乱に揺れた視界が、怪物を捉える。
 白い髪、整った造作、無邪気な獣の笑顔、渇いた笑い──あの人生2番目に最悪の日のリフレイン。

荻野目 旭 :
 体はするべきことを知っていたけど、心はそうじゃなかった。
 正気になって見渡した視界に、倒れ付した三廻部さんの姿があったからだ。

 アノヒト
 怪物が担いだ池田さんのこともそう──あの少年より前に彼女たちが仕留められていた?
 最悪の予感に血の気が引いた。

荻野目 旭 :
 だけど──それよりもっと早く対処しなければいけないことがあったから。
 僕は最悪で最善の札を切る。

荻野目 旭 :
 異形のかたちをした元少年に駆け寄った。
 もう一度が来る前に大音量で叫ぶ。

「お兄さんっ……まだ耐えられますか!?
 イエスだと……信じますからね!」

荻野目 旭 :
 答えを聞かずに腕のヒビに手を当てた。
 僕の手のひらに咲いた花が舞い散って、花びらが傷らしきものを高速で塞ぐ。

荻野目 旭 :「治療一回分、で、どうですか! あの肩の子助けてください!!」

久外境耶 :
「おォよ、生きてりゃ次があるのは当然だわな!」

 窮地に弾む声は、
 軽口にも似た叱咤と、間断も容赦もない宣言へ。

久外境耶 :
 より過激に、なお過剰に。死へ挑みかかるように、一歩──

「……あん?」

 ──踏み込みかけた足が、いつの間にか増えていた気配に止まる。

久外境耶 :
「ご同業……ってツラじゃあねえな、僕ちゃん」

 人の鉄火場に血相変えて突っ込んでくるようなのは連中しかいない。値踏みするようにお上品な顔をじろじろ見下ろしていると、冷気の漏れる腕に小さな手指が伸ばされた。

「テメ、勝手に……」

久外境耶 :
  クソカス
「……FH相手に押し売りとは良い度胸だな! おもしれえ、手付金で勘弁してやるよ!」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ───激突。
 冷え切って久しい銃口の先、鋼鉄と、暴力と、折重ねられた時間が相剋する。
熱波にも似た炸裂を成すものが対極の冷気だったらしいことを、頬元を吹き抜けた大気の流れが教えてくれた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「愉快げなものだな、“タイガーアイ”。
 slaughter laughter
  虐殺 は 笑い声無しには綴れない───オマエから聞いた言葉遊びだったか?」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……エンジェルハィロゥに特有の鋭敏な聴覚野が、高台までも彼らの言葉を拾ってくる。“ナイトホーク”が飛び降りる直前にワタシが微かに感じ取った気配は恐らく正しいモノだった。
 あの眼鏡の男はともかく、犬を連れている方の片割れはUGNの手合いではないだろう。ゼノスでもないことはワタシ自身が識っている。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……そして、彼の持つ異能の強度は今まさに目前で証明されたところだ。攻勢に出て優位に立つことは厳しかろうが、相応の援護を受ければあと二、三の衝突になら耐えうるだろう……“ナイトホーク”の大まかな見立てもまた、恐らく正しい。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 だが、だとしても……

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……“タイガーアイ”。射程が届いているならば、あの少女たちを睨んでおけ。
 ワタシは奇襲を想定して動く。隙があれば、彼女たちの奪取に少しでも援護を入れてやるんだ」

 銃口に詰めていた因子の一部を、再び隠密へと回す。
 たかが火力任せの一発や二発が貫けるような暴力ではない。力押しの一辺倒では喉元には届くまい。

SYSTEM :
 シホの零した言葉を受け取ったタイガーアイの応答は、
 ブラザーフッドという仮初の立場ではなく、
 ゼノス
 お客様の一員に過ぎない、あなたのバディとしての言葉だった。

タイガーアイ :
『如何にも。いつかの薫陶であったな。
 想起に相槌止まりとするのも芸がない…』

タイガーアイ :
『では、ふたつ片隅にでもしまい込んでおくが良い。
 ひとつ、笑いとは地球上で一番苦しんだ動物の発明だ』

タイガーアイ :
『そしてもうひとつ。

 自覚がないならば言っておくが、
 入れ込んでおるぞ』

SYSTEM :
 人を識りながら、己は何処までも人ならざるものとするその起源。
 無機物から生まれた生命の、俯瞰的な一言。

 なお、自覚があるなら好きにせよ、という遠回しの了承以上の言葉を、そこからそいつは吐かなかった。

SYSTEM :
 ………そして平然と第二射を用意していた方にも、目に映るものに変化があったことに気付いて、動きが止まる。
. テキトニンシキシタ
 たのしそうな時の笑顔から、
  フダンドオリ
 うれしそうな時の笑顔へと。

“喚楽の人喰い虎” :
「………おや?」

“喚楽の人喰い虎” :
「すみません、取り込み中なのですけど。
 そっちのユカイなのにもそう言ったはずなんですが、そこにいると巻き込みますよ」

SYSTEM :
 全く変わらない容貌に、弾む声。

 白雪のように美しく、明星のように鮮やかで。
 鋼色のように煌いて、宵闇のように悍ましい。

 瞬間的に、予測不可能なオンオフの切り替えを起こしたものは。
 あの時と変わらない怪物だったけど。

SYSTEM :
 ………あなた/旭を見て“お久しぶり”とか“まだ続けていたのか”とか、そういう台詞を吐くことはなかった。

荻野目 旭 :
       UGN
 ……やっぱりお仲間じゃあないか!
 薄々わかっていたとおりの言葉が来るけれど、返事は最悪の想定より色よいものだった。
 頼れる人ならヤクザでもマフィアでも暴走族でも元ヤンでもFHでも使おうがモットーの僕は1も2もなく頷いて──

荻野目 旭 :
       ヒト
 ──退治する怪物が、
 あの日みたいに予測不可能な瞬間鎮火をして、
 初対面みたいなくちを聞くのを呆然と眺める。

荻野目 旭 :
 最悪だ。
 まるきりアウトオブ眼中じゃないか。
 ホントに、ホントに最悪──

荻野目 旭 :
「あなたこそ……その子を下ろしてから言ってくださいよ、“喚楽の人喰い虎”」

 コードネームを呼ぶときに声が震えかけたのを、ぎりぎりで堪えた。
 名前を呼ぶことでその怪物がホントに眼前にいるのを認めちゃうのも最悪だったけど、
 たぶん、一番最悪なのは──その先に待ってる。
 無意識下で、それを……なんとなく予感しながら。

SYSTEM :
 あなた/旭は次に来る言葉をいくら予想していただろうか。
 そして、それはノイマン・シンドロームの有無などという残酷な区別も要らぬほど、明確に予想のつく答えであり現実なことを、どの程度覚悟していただろうか。

 彼女はあなたが自分のコードネームを呼んだことで、とてもとても嬉しそうに、そうはもう朗らかに笑ってこう言ったのだ。

“喚楽の人喰い虎” :
「ご丁寧にどうも!
 このコがちょっと必要なのでソレは頷けませんが、ところで………」

“喚楽の人喰い虎” :
 ・・・・ ・・・・・・・・・
「ところで、きみは誰でしたっけ?」

“喚楽の人喰い虎” :
「最近、それなりの頻度で“何処かで会いましたよ”って顔をする人と出会っている気がするんですが………。
              ジャンル
 ひょっとしてきみ、その辺の分類ですか? 私の名前呼んだし」

“喚楽の人喰い虎” :
「でしたらゴメンなさい。
 
 私、覚えたいもの以外は覚えないようにしてるんです。
 人生有限なので」

SYSTEM :
      キメラ
 人食い虎の合成獣、その名を冠した女は。
 あなたを嘗て、路傍の石のように、何の興味もなく退けていった。
 そして、今も。

 文字通り、そいつの今の興味は、口振り以上に、担いだ“このコ”にあって。
 次点、“強盗をしに来ました”と堂々宣誓しに来た/面と向かって攻撃を仕掛けられていた方を、多少なりとも認識している………それが分かるくらいだったわけだ。

久外境耶 :「ぶはっ……」

久外境耶 :
「言われてんぞ〜僕ぅ!」

 横合いからげらげらとからかいの声を投げる。嘲りではなく、期待を込めて。ここまで虚仮にされて、おまえはどうするんだ──と。

荻野目 旭 :「─────」

荻野目 旭 :
 たぶん、人生4番目ぐらいの最悪を更新される。
 たぶん、僕だってうっすら分かっていたことだったけど。
 路傍の岩を退けるみたいにアイツを惨殺して去ったあとに残った僕は、そのへんの浜辺の砂以下だったってこと。
 本当のことを突きつけられて、お腹が重たく冷える。その直後に燃えたのは、たぶん──

荻野目 旭 :
「…………」
 首をぶんぶん振る。ぐるぐる回る頭を蹴っ飛ばして正気に戻すイメージ。
 冷水をぶっかけるみたいにからかう異形の少年の言葉は、かえって救いだった。

荻野目 旭 :
 大丈夫、やれる、大丈夫。
『自分で戦う』に届かないまま、こんなものと向き合わされても──大丈夫だ。
 それが最悪を更新し続ける日のトドメに立ち向かうための最後の虚勢だって知りながら、僕は動かない体を叱咤した。

荻野目 旭 :
「そ……う、ですか! だったら……」

 異形の背中に回り込んでぐいぐいと押しながら、いつかのやけくそ度胸をひり出す。

荻野目 旭 :
「ぜったい……忘れてたこと後悔させますよ!
 僕がいる限り……この人、あなたが飽きるまで、ぜったい死にませんからね!」

久外境耶 :
「そう来るかよ! 他人使ってゾンビアタックとはツラのわりに気合いが入ってんな!」

久外境耶 :
「でも、ま──今のは悪くなかった。ちゃんと男の子できんじゃねえか! 
 ほら名乗れよ、有限に刻んでやろうぜ!」

荻野目 旭 :「人に馬車馬みたく働いてもらうのが、いちばん得意ですんで……!」

荻野目 旭 :
「旭です……“ナイトホーク”! あの人は忘れてもっ、あなたにはすぐ覚えてもらいますからね!
 しばらく働いてもらいますよ、おにいさんにも!」

久外境耶 :
「いいねえ、やりやすくって結構! うまく使えよ、"ナイトホーク"の旭クン」

久外境耶 :
「おれは"ラッキージンクス"──運が良けりゃあ、おまえにもツキが回ってくるだろうさ」

SYSTEM :

 ぜったいに後悔させる───言われた当の本人の様子は変わらない。
 ずっと笑っているだけだ。
 視界の外側で転がっていた龍に時間の猶予が与えられ、
 それに伴って、彼が何かをしようとしていたとしても。

 視界の更に外側で奇襲前提の場所に陣取っていたシホが、
 動き出す直前で停止し、今また再起動しようという獣に何をしようとしていても。

SYSTEM :
 ………ただ。

“喚楽の人喰い虎” :
「───。あさひ。アサヒ………。
 朝日………じゃ、ないな。ええと、」

“喚楽の人喰い虎” :
「旭? ───よし」

“喚楽の人喰い虎” :
「そっちのが”ラッキージンクス”で………。
 忘れるまでは覚えておきましょう」

SYSTEM :
 そうであることが自然であり、そうであること以外を知らぬように。
 にこやかに、朗らかに。何より強い、生き物としての隔たりで以て。

 ずっと笑っていた生き物は、
 名乗り名をごく当たり前のように、丁寧に印象付けるように呟いた。

 それだけだ。
 別に、それで何が変わるってわけではない。

“喚楽の人喰い虎” :
「はい。
 私、本命の遊び相手を寝てるトコから起こす準備中なんで………。
 あんまり、今大はしゃぎしたいワケじゃあないんですけど───」

“喚楽の人喰い虎” :
「───けど挑まれたら仕方がない!
 ああ、仕方がない、仕方がない!

 どうかきみが、1秒でも長く私の遊び相手でいられますように!」

SYSTEM :
 本当に。
 それで何がどう変わるってわけではない。

 担いでいる“このコ”をそれなりに気遣っているのか、単なる気まぐれか。
 あの時のように乱暴に踏み込む仕草ことしなかったけど。

 再びぐるんぐるんと腕を回して、その手にいつの間にか握られた、いつも通りにぞんざいに扱われる得物を振りかぶるまであと数秒のところまで来ていたのだから。
.     死ぬ
 本当に、飽きるまでそれをやろうっていう態度に代わりはない。

SYSTEM :
 ………………さて。
 もはや再三の繰り返しとなるのだが、
 改めて。

SYSTEM :
 つい先ほどの、何かを退けるための傲岸不遜な咆哮は、島全体に轟き響き渡っていた。

 そして、一度でも巡り会ったものであるならば、その声の主がどういうものなのかを覚えていられるほど、声の主は特徴的なヤツだった。

 旭の此処に来るまでの反応がいい例だ。

SYSTEM :
   ・・
 旭がソレに心当たりを持っていたように。
 この爆ぜるように吼えた獣を、一度見て“忘れました”と宣うのは、よっぽど肝が太いやつくらいであるから。

SYSTEM :


『───▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 思うにソイツは。
 誰よりもその声を知っていて当然の生き物だった。

SYSTEM :
 ───当然だ。
 一度見かけたものを死ぬまで追いかける/手を伸ばすような執念深さ/切実さの持ち主が。
    ・・・・・・
 よもや自分を殺した生き物に無反応なワケがない。 

SYSTEM :
 爆ぜるような咆哮に僅か遅れて、空に巨きな影が舞う。
 

SYSTEM :
 ───いつかどこかで、境耶は此処に来ることをトラ観光だとか言って。
 そこにいた男は“存外トラだけではないかもしれん”などと嘯いた。

 ………だからって“コレ”は想像していまい。

“蝕みの君” :『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 探していたものを見つけました、とばかりに。
 ばさばさ、と。
 歓喜か赫怒か分からぬものを原動力にして、翼の音をはためかせながら………。

 土煙を巻き上げて、そいつが降りて来た。

SYSTEM :
 照り付ける陽射しが、煤けた甲殻を露とする。
 薄らと紅色に濡れた爪が浜辺の砂を、風に合わせてかき散らす。
 剥がれ落ちた鱗粉が風に乗れば、風を黒く染め上げる。

 ………何をも置いて真っ先に声の主を手繰ってきたのだろうそいつは、そこでようやく───。

 先程逃したもの“も”居合わせている事実に気付いたらしい。

荻野目 旭 :「え、ぁッ……うっ」

荻野目 旭 :
「う、嘘ぉ……!」
 最悪の上塗りって騒ぎじゃない……!
 思わず数歩後ずさりかけて、いいや多分今の場所がいちばん安全だとなんとか踏みとどまる。

荻野目 旭 :
 “イリュシデイター”……彼女は!?
 うまく凌いでいてくれることを心の底から祈って、あの日みたいに爪先か、牙か、どこかになにかを探そうとする本能を押さえつけた。
 とにかく今は、共闘とか、あそこで倒れている三廻部さんをどうにか安全な物陰にとか、そういうのが優先なはずだけど──

荻野目 旭 :まず『あいつ』の矛先はどっちだ……! 目を凝らす!

久外境耶 :
 あまりに大きすぎる羽搏きと、
 獣とは系統からして異なる咆哮。

 陽光に照りだされる威容は──

久外境耶 :
「ウハハハハ、おいやべーってマジかそれ! この島ギャグセン高すぎだろ!」

 たまらず手を打って笑う。サメだのトラだの適当こいたオチがドラゴンなんて、次はナチスか宇宙人か分かったもんじゃない!

『ホデリ』 :
『………念のため言うが』

『ホデリ』 :
『物の怪とはあれならぬぞ かかるものはわたしも知らぬ!
 ………しかし迷惑なことだ あの声に招かれたか!』

久外境耶 :
「こんなとこで真打ち登場とはいかねーってか!」

 そりゃ残念、と思ってなさそうに肩をすくめる。熱に浮かされたテンションとは対照に、背筋は氷柱のように凍えていた。

久外境耶 :
 降りたつだけで地を抉り、
 ただ在るだけで大気を汚染する化け物。
 
 得体が知れないまでも脅威の程は膚で感じとれる。フツーに考えれば回れ右で、シュミ的には笑ってゴーする局面だが。

 流石に盤面が変わりすぎた。"ナイトホーク"同様、いちばん話通じなそうなヤツの出方を伺う。

久外境耶 :
「つか、あれどーっすかな」

 あの転がってるやつ。人喰い虎だけなら、うっかり踏まれることもなかったろうが。

 ……ま、いーけど。

木口龍 :GM、RPの都合で聞きたいんだが、実際のところ、血溜まりに転がってる子に接近って出来るのか?

GM :可能ですが………そうですね、そこに触れるのであればちょっとお待ちください。

木口龍 :もしかして:メタ的にはイベント?

SYSTEM :
 ・・・・・・・
 転がってるやつ───かわいそうなエキストラ/命の灯が消える直前の少女。
 境耶がチラと見た限りで、その懸念は概ね常識的に考えて正しくなりそうとしか言いようがない。

SYSTEM :
 なぜなら───。

 よりによって“そいつ”が降りて来た場所と来たら、
       ・・・
 倒れた少女の目の前だ。

木口龍 :
「──な、ななな、なんだあああああああ!?」

 卑怯で臆病で姑息な三下探偵には、砂浜に尻餅をつき、後退りすることしか許されていない。
 それくらい、目の前に降り立った怪物というのは規格外だ。なにせ、身長の桁からして違う。
 咆哮を発する、竜(ドラゴン)か何かとしか呼べない存在。

木口龍 :
 吐息が空を侵し、両足が地を穢す。
 拳銃でどうにかなる類のものではない。

 ……その中で、口から出たのは情けない悲鳴だ。

木口龍 :
「ど、どどど、どーすんだよコレぇ!!!
 なん、なん、なんで俺は今モンハンやってんだ……。
 ああああなんでこんな目に……」

 頭を抑えて震えつつも、今出来る最善のことを考える。そのことに脳を回すことだけは忘れない。
 この場で上手いことトンズラこくためには、
 あの抱えられてる少女をどうにかして、
 血まみれの子もとりあえずは消し炭になる前に──。

木口龍 :

 ……ぽく、ぽく、ぽく、

木口龍 :
「……うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 まずは転がってるのをどうにかして安全圏まで引き剥がすしかねえ!

 俺は卑怯で臆病で姑息で"神頼み"しか出来ねえ三下探偵だが、ここでビビって逃げ出すようでは人以下のなんかに成り下がっちまう!

木口龍 :
 いや思ったわけですよ。銃撃ってこっちに注意向いたら引き付けて逃げるとかもっとその方がリスク低いと。
 でもよく考えてみて。神話に出てきそうな化物に現代物理銃火器戦記が効くと思いますかあなた。
 目狙ったところでなんかブレスされたら終わるし……。

木口龍 :っていうわけで、転がってる子にまずはダッシュしたい。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「あ、アレ……は……」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 珍しく、見覚えのある翳が地に落ちる。
 珍しく、その気配に同じく肌が粟立ち。
 珍しく、その紫黒に同じ戦慄を憶える。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 島中へ響いた叫声に向け、安易に動くことを赦したワタシの判断を呪う。この飛竜の狙うものが不明瞭であったなら、それを引き寄せうる可能性を持った因子からは距離を置かねばならなかったのだ。
 思い出せ、そもそもワタシの目的に己の身を賭して人命救助を行う意味など───

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……いや、違う。それは結果論だ。
 あの時点ではアレが最適解だったはず。人員の救命も“リュウグウジマ”からの脱出に必要と判断したのはワタシ自身だ。過去など呪い飽いただろう?

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ───ここでどこまで考えを巡らせても、横たわるのは昏い現実だ。
 どうあれ他所の他人の援護など考えていられる状況ではなく。もはや自身の命を拾えるか否かを考えねばならない。

過る声 :
『そしてもうひとつ。

 自覚がないならば言っておくが、
 入れ込んでおるぞ』

”朧の狩人/残骸” シホ :
 “退くべきか───?”

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………何か、私の中に遺される強迫めいた感情の残り滓が。
 背後の木々へと身を隠そうとする、ワタシの脚を留めていた。

SYSTEM :
 死地において、あからさまな「危険地帯」に足を踏み込んだ龍に、
 如何程の思考と発想があったのか。
 死よりも恐ろしい何かを失うのだと奮い立ったようにも見えた男に、
 どれほどの冒険が生まれていたのか。
 
 なにもかも、定かではない。

 龍にとって、逃げておけばいいものを、逆に踏み込むその姿勢。正しく死中に活を求める態度であったのかもしれないが………。

 何を隠そう、男/龍に意識を向けていたもの。そして向けていたとしても重要な意味を占めると思っていた者などは、その瞬間まで誰もいなかった。

“喚楽の人喰い虎” :
「どちら様ですか? ああでも、困ったな………。
 このままやると“このコ”が死んじゃいますね───」

SYSTEM :
 にこやかに、かつ本当に自然に矛先を変えて“焼き直し”をしようとしたが、
 その瞬間、自分の“荷物”に意識を向ける程度の余地があった女/序でに言うなら忘れようのないその姿さえ「知らぬ」で通した怪物も。

SYSTEM :
 この場において最も俯瞰的に状況を見ることが出来ても、
 この場において“そいつ”から目を離しようのないイリーガル/RBも。
 

タイガーアイ :
『半端を取ったな。
 あるいは何ぞ残っていたか…お主も我も、一手遅れたぞ』

SYSTEM :
 状況の変化に追いつくべく、もっとも話の通じないモノが何を見ているのかを探ろうとした、本来不倶戴天であるはずの組織のチルドレンたちも。

SYSTEM :
 少なくとも誰にとっても。
 目の前に転がった死にかけの“エキストラ”に手を伸ばそうとした男の行動は、意味の薄い想定外だった。

SYSTEM :が。

“蝕みの君” :『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 少なくともその瞬間の行動は、
 激発と共に池田咲楽諸共“喚楽の人喰い虎”に襲い掛かろうとしたものにとって。
 ・・・・・・・
 何となく目障り程度のものではあったらしい。

SYSTEM :

 つまりこの瞬間の狙いは、幸運にも彼女からは逸れた。
 更に言うなら、走行を始めた位置はたまたま、地に伏せた少女からは外れている。
 その勇気/是非もない蛮行には少なくとも、本当に僅かな時間、そいつの攻撃範囲から“二人”を逃がす価値はあったわけだ。

 ………問題は。

SYSTEM :
 その二人からたまさか狙いが逸れたことは良いとしても。

 その結果として、ファンタジーの世界からの住人たるこの竜は、木口龍のなんてことない無難な空想に中らずとも遠からずの攻撃を仕掛けようとしていた。

SYSTEM :
 微か身に纏う穢れた風の鉾先が“ズレ”る。

 目視だけで意識が揺らぐウイルスの鱗粉。それが、面を上げたそいつの口元で渦を巻いていた。
 なるほどこれは確かに、その空想/ゲームの世界のドラゴンの標準装備だろう。
 ブレス
 吐息を吹きかけて、目障りなものを射線上ごと薙ぎ払うなど───空想の中の“ドラゴン”がよくやる行為ではないか。

SYSTEM :
 付け加えるならば、これの狙いはいま確実に。

 向きと攻撃範囲の広さから、絶対に”とばっちり”を受ける者たちが存在していた。

『ホデリ』 :
『彼の者、逸ったか………!
 下がっておれ、先の二の舞にはせぬ───』

SYSTEM :
 つまるところ、浜辺の側の三人(二人と一匹)だった。

 真っ先に飛び出そうとしたこのホデリが、二発目を境耶/そして、その隣にいる名も知らぬ小童に食らわせまいとしたのか、それともソイツの危険性を本能で察知したのか。

SYSTEM :
 ………そんな一触即発の状況の中で、行動を定めようとする貴方達に”それ”を赦さないものもあった。

SYSTEM :
 さて、吼えた獣の声は“そこにいたものを退ける”ための声であった。
 遠くから聞いても尚分かる「人払い」の声だったわけだ。

SYSTEM :
 つまり元々、そこには“遠ざけられる相手”がいたのである。

 ・・・
 そいつは遠ざかったのではない。
 喉元過ぎれば熱さを忘れるとかいう言葉があるように、一度は遁走したが………。
 その追い立てられたモノは、やはり惜しいとばかりに舞い戻って来ていた。

 ───加えて言うならソレは目敏く、狡猾で、小心者で、残忍だった。

 ホデリと、あの娘の首飾りが“似ている”ことに気付いたのは、目敏く、小心者の『木口龍』であったが、彼と同じくらいに。

SYSTEM :
 そしてそいつは、

 なんだかよく分からない不確定要素があるうちに、

怪物 :

『───イヤッハァァァァァァ!』 

怪物 :
『ツキが回った! 
 オラ行くぜオラ行くぜオラ行くぜ───そこのワンコロ、手前の命とお飾り頂戴よォ!!!』

SYSTEM :
        ・・・・・
 本当の意味での火事場泥棒をしに。

 木々をかき分け、跳躍し。
 たまさか足元にいるだろう龍の存在など、お構いなしに踏み潰そうという勢いで、誰の思考の外側からも分からぬ勢いでやって来たのだ。

SYSTEM :
 ───その刹那。

 踏み潰される位置に“運悪く”滑り込んでいた龍も、
 特に繋がりのない二匹から一斉に狙われたホデリとその周りも、

 等しく死線であった。

久外境耶 :
 対岸の火事が燃え移りそうになるや否や、飛び出していく白い影に瞠目する。
 
「ば──」

 ──かは、おれか! おれだな! そういうのはおれの役目だなんて、思い返せば一言も言ってやしねえ!

久外境耶 :
 一手先も死、一歩先も死。死線はもはや織物のように複雑に絡み合っている。いかにもな予備動作に、お次は火事場泥棒ときた。

「──ああ!? お犬様だろォが、口に気をつけなワンちゃん!」

 だが、おかげで優先順位はついた。突っ込んでくる黒い獣とホデリの間に身を躍らせて、あとはどうにでもなれ──だ! 

”朧の狩人/残骸” シホ :
 迷いが脚を鈍らせるとも、授けられ磨き上げた狩人の素養だけは鈍らなかったらしい。
 目前に展開される修羅の中、耳が遙か遠方に四脚の獣の息遣いを捉える。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 しかし……
 どうやら頭の方は回転が追いついていないらしかった。捉えた獲物の躍動とその牙の向かう先が修羅の只中にあり、それがどうやら我々に害を為すらしいものと見抜いたまでは良かったが。
     ・・・・
 肝心の、その標的を読み違えた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 跳梁する者の牙がどうやら、よく似て全く異なる者に向けられていることを識り、偏差で銃口の向く先を修正。トリガーに指を掛け、気付く。

 拙い、いま装填しているのは足留めに重きを置く広域を焼き払う焼夷擲弾だ。いま撃てば巻き込む、だが弾を造り直しては間に合わない───!

木口龍 :

 ──あ、

 やべ、これ死んだ?
 死んだわ。もうなんか邪魔だからこの場からとっとと消えろっていう意志が感じられるわ。
 外の状況もすごい動いてるけど、もうそれどころじゃねえわ。

木口龍 :
 ──南無阿弥陀仏!

 よくわからん三下探偵のオレの命一つで、未来ある若者が救われるならそれでいいわ!
 もはやヤケといっても過言ではない動きで、オレは止まらず、救うことだけに命を賭ける!

荻野目 旭 :
 目まぐるしく変わる状況に目が回りそう!
 ただ飛び出した人たちと同様、僕にも保護しなきゃいけない命があって──
 背に張り付いていた異形が走り出すのと、僕が手に咲いた花を振り払い、白い髪の怪しいお兄さんの脱出を助けようと導きのレネゲイドを吐き出そうとするのもほとんど同時だった。

怪物 :
『テメェコラ、周回百千万遅れのどこの小僧がいったい誰様に向かってクチ利いてやがる………!』

怪物 :
『───いや良いぜェ、丁度気分がいいトコなんだ、お目当てが手に入る! コレでなにからも追われねえで済む!

 前祝いだ、牙どころか指先一つでダウンにしてやらァボケども………!』

“蝕みの君” :
『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 ───燃え滾る獣がその脚で蹂躙して。
 ───穢れを纏う竜が死の吐息を放つ、その間際。

SYSTEM :
 紛れもなく、誰かの死線は避けられぬその瀬戸際。

SYSTEM :
 誰かが、何かが。

 あと一つでも手があれば話は違っても。
 そんな都合の良いものなどは何処にもない。
 現実はそこまで優しくない。
 こんな、現実のげの字もないような夢物語の寄せ集めでも。

 オーヴァードとは、現実から片足を離しているからこそ知っている。
 そこにどんなニュアンスを懐いているかは人によりけりだろうけど。

SYSTEM :
 絡み合った不発弾の群れの中。
 刹那のうちに出た適解は、
 
 立ち向かおうとした境耶のものであり、
 不発を痛感していたシホのものであり
 保護しなくてはならないものに手を伸ばした旭のものであり、
 死の可能性に一周回って変な方向に冷静になった龍のものでもあったが。

 それが正解であると保障するものはなく。
 5名と3匹のどれかが、いままさに爆ぜる瞬間にあった───。

SYSTEM :
 ………なれど。
 龍がたまさか、血濡れの少女の下に辿り着いた時。

 同時に吐息が/衝撃が、この場に拡散して、Xの変数に当てはまるだけの命を奪い去ろうとした時。

SYSTEM :
 絡み合った不発弾の群れの中を駆け抜けたものが一つ、否、二つあった。

『ホデリ』 :

『む───!』

“喚楽の人喰い虎” :

「おや───」

SYSTEM :
 なれど、その答えの出所は、
 
 立ち向かおうとした境耶ではなく、
 不発を痛感していたシホでもなく、
 保護しなくてはならないものに手を伸ばした旭でもなく、
 死の可能性に一周回って変な方向に冷静になった龍でもない。

SYSTEM :
 飛び掛かろうとした瞬間の“怪物”が怪訝に動きを鈍らせ、
 吐息を放とうとした瞬間の“蝕みの君”が何事か分からぬものにひととき手を緩めた。

SYSTEM :
 近くにいたものならば分かる。

 その駆け抜けたものの答えは光だった。
 まばゆく、眩しい、海色の光。

SYSTEM :
 ホデリの首に提げられた首飾りと、担がれた池田咲楽の“御守り”から飛び出し───否。

 その光は、放たれたのではなく。
 中心点に“いる”ものを切欠とし、そこに向けて収束したものだった。

SYSTEM :
 光は、ちょうど血濡れの少女のもとへと伸びて。
 そこに立っていた龍を素通りし/あるいは介するような挙動で、彼女の下に入って行く。

 起こるべくして、起きてはならぬこと。
 いわゆる“不幸なエキストラ”に過ぎなかったもの、決して目覚めるはずのないものに“お目覚め”を促す何かが、眼前で起きようとしていた。 

SYSTEM :
 誰が知ろう。
 否、近場に居たものにしか届くまい。

 その輝きの意味を知るものの、唖然とした声。

『ホデリ』 :
『───』

『ホデリ』 :
 ・・・
『ホオリ───』

SYSTEM :
 なぜだ、とも。
 ばかな、とも。

 そのどちらかの言葉を繋げて零したその文字の羅列に、意味を見出すものなど誰がいよう。
 爆ぜるような光の中、誰もが一時“手を止める”瞬間の中で、そいつだけが全く違うものを見ていた。

SYSTEM :
◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 水の中に深く潜った身体が、ふわりと浮き上がって行くような感覚。

 瞼を閉じている時に見た朧げな風景に“夢だ”と気付いて。
 それならそろそろ目を覚ます時だろうと、何となしに考えるような、目覚め前。

SYSTEM :
 来た道を遡って行く。
 あなたの知らなかった、重力の井戸の底。
 地球の七割を占める海の底。
 一足早いダイビングの体験にしては、ずいぶんと現実離れした風景。

 その逆回しを、颯は手繰っていた。

SYSTEM :
 水面も見えないけど、勝手に浮き上がって行く自分/ただ帰る理由のあるところに帰ろうと思うあなたは、直感的に向かう場所を悟っていた。

SYSTEM :
“ その刀は………。
 おまえを、隣の人間と“同じ”ではなくする

 俺が嘗てそうであったように、おまえもそうなる”

SYSTEM :
 ………実感さえあった。
 水面も見えない、この海底から浮き上がった時。

 あなたは、たぶん何かが………。
 此処に来る前とは違ってしまうのだろうという、実感だ。

SYSTEM :
 そしてあの、錯覚と思うような小さな光は、もうなかった。
 遠ざかって行くのではない。
 はじめから、存在しないもののように、消えていた。

三廻部 颯 :
 ──後悔をしたのかどうかと言われれば、していたのだ。

 生か死かの二者択一。
 "みんな"と同じで居られなくなるか、"みんな"と同じもののまま朽ち果てるか。
 十七の少女に選ばせるには、酷な選択肢。

 生きるか死ぬか。
 それだけなら、答えは「生きたい」と決まっている。
 けれど……、

三廻部 颯 :
 けれど、それが今までの自分でなくなるものならば?
 誰とも違うものになってしまうとしても?

三廻部 颯 :
 そう問われて、少女がすぐに答えを出せるわけがない。
 だから颯はあの時、結論を先延ばしにした。
 それでも生きたいと思ったから。
 それでも生きたかったから。
 それでも生きるのを諦めたくなかったから。

 だって、恋だってしてない。
 だって、大人にだってなってない。

三廻部 颯 :
 ほのかな大人への憧れと、
 なりたい自分への憧れ。
 これから成っていく自分への不安と期待、
 無限に描く将来を、こんな不運で潰されることに、どうしようもなく怒りたかったから。

三廻部 颯 :
 そういう理不尽への怒りが、きっとその選択をさせたのだ。

三廻部 颯 :
 海の底は見えない。
 真っ暗闇で、何がいるかもわからない。
 私の体は浮き上がっていって、闇から光へのぼっていく。

 ──海というのは、こんなにも広いのだ。
 ただ広く、そして生きるには苦しい空間。
 世界そのものと言われても、頷けるくらい。

三廻部 颯 :
 実感が怖かった。
 でも、怖いままではいられなかった。

三廻部 颯 :
 無数の可能性の泡に包まれながら、私はずっとずっと上へ。
 高く高く、もっと高く上へと。
 高鳴る鼓動とともに、ずっと強く。

三廻部 颯 :
(わたしは───いくよ)

 泡沫の夢から、苦しい現実へ。

SYSTEM :
 ………始まりは怒りだった。
 あなたがそれ以外の感情を抱えていられることを、あなたの知らないことを知っている誰かは、きっとこの瞬間、心から安堵するだろう。

SYSTEM :
 そんな、あなたの選択が若気の至りだったのかは定かでない。
 そもそもの偶然と不幸の坂を転げ落ちた上で、あまりに少ない選択肢を、
 それでも『択んだ』と言うことのなんと酷な事か。

 その何かしらを“間違っていない”と諭すような人間も、そこにはいなかった。
 ならば、怖いままではいられないと思っていながらも、奮い立つ勇気を持ち続けられるような人生の場にいなかった少女にとって。その選択は、まさに悩みの付きまとう選択だったに違いない。

SYSTEM :
 ………あまりにも広く、あまりにも寂しい、独りの海から。
 行かなくてはならない現実へと起き上がる。

 ………その覚悟の合間を通り抜けるように、あなたの耳に声が響く。

▇▇▇▇▇▇▇ :
“そう”

▇▇▇▇▇▇▇ :
“彼………そんなことしちゃったのね”

SYSTEM :
 海鳴りが、声を響かせる。
 聞いたことのない声色が、聞いたことのない口調で。
 だけど、会ったことのあるような雰囲気の持ち主。

 それは語り掛けだったのか。
 あるいは、あなたが自分自身に向けて呟いたような“確認”であったのか。

▇▇▇▇▇▇▇ :
“まあ。あげちゃったならしょうがない。
 その刀は、あなたの護りたいもの、譲れないもののために使って”

▇▇▇▇▇▇▇ :
“………巻き込んでしまってごめんなさい。
 許してくれるなら、使うついでに、彼のこと、お願いね”

SYSTEM :
 その声/声の響きも語り方も似ていないのに、きっと身近にいた誰かを思い出させるものは。あなたに託されたものごと、それを見送るように、ぽつりぽつりと言葉を反響させる。

 振り返る暇はないけど。
 隣か、あの海の底か。そこから聞こえたその声が示す“彼”が、あの青年であることだけを、なぜかあなたは気付くことが出来た。

SYSTEM :
 それは理不尽に見舞われた子供へ、この上なにかを託す言葉だったのか。
 それとも………あなたの思うどんな道を進んでも、託した側がそう言うのだから大丈夫、という後押しだったのか。

 遠くて近い言葉が、海向こうからの手向けだった。

青年の言葉 :
 ───刀の形はおまえが決める。
 それは俺のものだ。
 俺が、俺の理由のために振るったものだ

青年の言葉 :
 思うといい。
 おまえは、おまえの理由のために振るえる形をだ

SYSTEM :
 見えぬはずの水面から、光が差し込んでくる。

 海の中でもなお蒼く輝く、海色の光。
 あなたを引っ張り上げようとする手/命綱のようにも、これからあなたが振るうべき刀/ものを示してくれるようにも見えた。

SYSTEM :
 ………だが。
 あの時の言葉を覚えているだろうか。

 夢から覚めて、現実に戻った時。
 あなたの理由のために振るうべきものは、
 あなたが形を決めて良いのだ。

 握り方も知らないような、展示されているのを見たかどうかも怪しく。
 ましてや包丁以上の刃物など持った経験すらないあなたに、きっとその形に拘る意味はなかった。

SYSTEM :
 ───浮上する。

 行くよ、に対して。
 言外の”いきなさい”が門出の言葉。

SYSTEM :
 あなたは、その光を掴み取り/あるいは導かれるように。

 ばしゃり、と。
 真っ暗で、独りだけの海の底から飛び出した。

SYSTEM :◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ───その違和感、その異変。
 その出来事に真っ先に気付いたのは、まさに“身近”な当事者のみであった。

 眩い光の中点に最も近かった二人。
 訂正、一人と一匹。
 当事者を除けば、何が起きたのか。

 降り立ち、諸共踏み潰そうとしたあの“狼”と、たまさか颯の近くに辿り着いていた龍だけが。

SYSTEM :
 颯自身の身に起きた“何か”に気付いた。
 厳密には───

 一匹は、身を以てそれを体感した。

三廻部 颯 :
 はじめに光があった。
 
 海とはすなわち生命の源。
 海色の光が満ちる時、海神の声が鳴り響く。

 少女の体に宿しモノ、それが如何なるものか少女には分からない。

三廻部 颯 :
 だが、少女に分かることがあるとすれば。
 それは確かに、自分が知らなかった世界への扉であり。
 ここから先、一歩でも踏み込めば──自分は後戻りできないこと。

 それでも少女は、選ばざるを得ない状況で、選んだ。
 選ばされたのでもなく、選ばざるを得なかったのでもなく──自分の意志で。

三廻部 颯 :
 光は一つの形となり、少女は海を纏う。
 純粋なる白と、それを彩る”砂”の綺羅星。
 深層意識を形作るように、海桜を島へと咲き誇らせた。

「──」

三廻部 颯 :

 ただのちっぽけな少女は、一筋の流星へと成った。
 何がどうしてこう成ったのかなんて、わかるはずもない。
 自分の姿を見るまでもなく、少女の体は動き、少女の意識は”今するべきこと”を伝え、
 その手に勇気という名の武器を持たせ、その足に意志という鎧を纏わせた。

三廻部 颯 :「ふッ───!」



 砂浜をめり込ませ、あたかもクレーターを生んだかのような衝撃が発せられる。
 颯はその場で強く踏み込み、島そのものを蹴るかの勢いで前へと跳んだ。

 彼女の視界には邪気に溢れた黒犬と───それが狙っている者たちが映る。

三廻部 颯 :
 光の先へ浮かぼうとしていた自分へ……、
 激励とも取れるような言葉を心中で送った者。

 颯にそれは分かりようもない。
 けど、その"強運"は間違いなく、少女の元にも星を届かせた。

 それに黒犬が狙っている以上、それを見過ごすことなどできない。

三廻部 颯 : 
 そして何より颯にとっては、

 自分に理不尽な死をくれたアイツに、
 一泡吹かせてやらねば気が済まなかった───!
 

三廻部 颯 :
「なにしてんのよ、このバカ犬──ッ!!」

 効くのかとか効かないとかもはやどうでもよく。
 それを振るうべき相手が人でないこともわかっている。

 けど体が勝手に動いた。
 頭も勝手に判断した。
 心も勝手に導いた。
 

三廻部 颯 : 
 ただのちっぽけな少女とは思えぬ、超絶した身体能力。
 それを可能にした少女の、超人を超えた脚力。
 心が願いし時、
 海色の光は怒りの赤へと転じ───少女の足を、一振りの剣へと変じさせ。

 その勢いのまま、その怒りのまま、

 インフィニティウェポン
 無限の可能性を秘めた武器が振われる!

SYSTEM :
 そう。
 誰がそんなものを警戒するものか。
 
 彼の言葉を借りるならば、降り立った先にいるものは───何処で知ったのかは定かでもないが───意味もなく潰し、意味もなく捨てられる“プチプチ”に過ぎない。
 それと精々が、オーヴァードらしいが“外野”に過ぎないような男一人だけだ。

 百歩譲って警戒していたとすれば後者だけだ。

SYSTEM :
 この瞬間、狡猾で小心な魔狼の意識にあったものは。まさに“千載一遇”の好機であった探し物を持つ白い狗と、その横に立つ威勢の良い小僧一人だった。
 何を持っていようが、手古摺ろうが。
 ここが正念場であると知っている以上は捻じ伏せて終わりに過ぎない。

 つまり着地後の突撃が本題であるのだから………。

 その本題に殴りかかるその直前までの予備動作中に、
 何かをされるなど思っておらず───。

怪物 :
『な、に、

怪物 :
 ィ───ィイイイイイーーーーッ!?』

SYSTEM :

 人間的に言うならば。
 それは“ないと思っていたところにあった石の切っ先を思い切り踏んづけた”だ。
 しかもそれがただの石でなかったというおまけがつく。

SYSTEM :
  
 意識の死角、警戒の向こう側。
 絶対に“ない”だろうと思っていた部分から向けられた一刺しである。

SYSTEM :
 図体にして人間の2倍から3倍、全長ではそれ以上の巨体を誇る狼が、
 まさに「ふわり」という勢いで吹き飛び、シホのいる側ではない岩場へと見事にめり込む。 

SYSTEM :
 殴り抜いたあなた/颯の足に微かに伝わる、燃えるような感触。

 その感触があるのに、あなたの足は焦げもせず。我武者羅に、教わった“構え”から教わったことをしたその腕に一切の支障はなかった。

 さっきは、あんなに意味のない行いだったのに。

SYSTEM :
 そいつの巨体はこけおどしではない。
 それで死ななかったのが良い証拠。
 
 しかし意識の死角からの一撃で“そうなる”程度の軽い身ではなかった。

SYSTEM :
 ………木口龍には隠し持った/自覚があるかも定かでない強みがある。
 まさに象をも殺す猛毒の如き隠し刃だ。

 しかしそれは、このような膂力を出すものではない。
 当人が何より思い知っており、何なら攻撃を仕掛けた瞬間を見ている境耶も“そういう適性”の是非など、ひと目で何となく悟ろうというもの。

SYSTEM :
 ならば何が起きたのか?
 誰もがそれを悟るに時間はかかるまいが。
 
 殴り飛ばされ激突し、岩場にクレーターなど作った“被害者”と。
 間近でその瞬間を見た木口龍が、真っ先にコレを悟った。

SYSTEM :
 ───厳密には。
 彼の、彼ではない部分が。

久外境耶 :
 突如として視界を埋めた海色の光に、瞬間、判断が鈍る。光はホデリの首飾りと担がれた女の二方向から、死に体めがげて収束するように。

 その瞬間、伴の声を聞いた。
 唖然とした呟きは、名を呼ぶのにも似て。

 それが担がれていた女を気にしていた理由なのか、トザマのおれにはちっとも分かりやしないが──

久外境耶 :
「な、ぁ……ッ!?」

 海色の輝きとは対照的な、星色の煌めきが飛び込んできた。

 一体そいつはどんな速度してんだか、反応する暇なんてありゃしない。寸前まで迫っていた巨体が、死角からフルスイングされて吹っ飛んでいく。

久外境耶 :
「横取りかテメーーーーっっっっ!!!!」

 衝突のインパクトから庇った腕を下げながら、瞬発的な怒りに吼える!

三廻部 颯 :
「──うぇ、っ」

 にっくき黒犬をぶっ飛ばしたのも束の間。
 それが狙っていた人……人? から怒号が飛んできた!

「え──っ!!?」

 ナンデ!!?と叫ばなかったのは少女の成長だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 トリガーに掛けたまま躊躇いに強張った指に、もはや手遅れだとしても力を込めようとした矢先。
 それは、スコープの覗く先、眩いばかりの光輝を纏って。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ・・
 激発。

 狂狼が、弾かれるように視界から消える。
 標的にし損ねたその肢体が、凡そ予測の範疇を逸脱して空へと躍り出た。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……否、違う。奴の随意では有り得ない!
 何かに吹き飛ばされたのだ、得体も底も知れない何かに!

”朧の狩人/残骸” シホ :
 見た限り、あの場にそんな無法を可能とする異能の担い手はいなかった筈なのに!
 慌ててスコープから眼を外す。乱れ飛ぶ砂塵と烈光に隠されて、この高台からでは微かな輪郭しか捉えられないが……

”朧の狩人/残骸” シホ :
 間違いない……

 スコープの示した先で、明らかにレネゲイドの共鳴が増えている……!
 それも誤差の範疇では済まない、いや、誤差というにはあまりにも強大な……!

”朧の狩人/残骸” シホ :
「“タイガーアイ”、報告しろ!
 いったい何が起きている───!?」

タイガーアイ :
『その前に仮面の紐はきちんと締め直しておくことだ』

タイガーアイ :
『まあいい、結論から言う───』

  めざ
『お覚醒めだ。
 倒れていた“不幸なエキストラ”だが、
 ・・・・・・
 不幸中の幸いにのみ恵まれたようであるな』

SYSTEM :
 そいつに人という種への好奇心があっても、隣人でもない個人それぞれへの感情があったのかは定かでない。
 ・・・
 だから淡々としていられる。
 隣人の様子へ真っ先に触れた上で、だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「覚、醒──────」

荻野目 旭 :
 光があけて──
 その先に見たものに、自分の目を疑った。

「う……っそぉ……!」

荻野目 旭 :
 姿は大きく異なっていたけれど、顔立ちは間違いなく三廻部さんだ。
 あそこで血に濡れて倒れ付していたはずの!

 間違いなく三廻部さんなのが、今日で一番の最悪を更新する。
 白と砂色のヒカリ──

荻野目 旭 :
 覚醒した──

 肉体の瀕死を引き金に、
 一番ありがちで、
 一番最悪な覚醒の仕方で!

荻野目 旭 :
 纏うものは絶対に絶対に彼女当人だけのレネゲイドで編まれたものじゃない、
 そうだとしたらもっともっともっと最悪で……
 今回は始末書ものかも、っていろんなものを飛び越えて3周半の思考が現実逃避。
 それをなんとかコンマ1秒で乗り越えて、

荻野目 旭 :
   ・・・・・・・・
 まず二分の一の超最悪を切り抜けてくれた彼女にかけるのがこれだってことに、
 あとで、ううん、いつか、できれば謝ろうと決めながら、渾身の力で叫ぶ。

荻野目 旭 :
「────三廻部さんッッ、池田さんを!!
 そこの……白いやつ!!!」

荻野目 旭 :
 ドサクサ狙いで怪物にけしかけるなんて──
 最悪なことをして、本当に本当にごめんなさいって!

木口龍 :
「──あ、あ……は?」

 ……道端で飢えていたクソガキの頃。
 ヒーロー、というものに憧れたことがある。
 それも、掃き溜めのような場所にいても尚、だ。
 だが現実というのは、どうもままならないものであるらしい。

木口龍 :
 なぜなら、目の前で光に包まれまるで別人のように変身を遂げた少女は、
 つい先程までその生命の灯火を消されかけていた、屍めいたものだったから。

木口龍 :
 冴えない三下の三流が、命がけで突っ走ったのも、
 我武者羅しか考えず、そこらで日銭だけ稼いでりゃあいいものをあんな下手に満ちた真似になったことも。
 どれもこれも、"脚本めいた"出来すぎた事象によって何もかも無意味だったかもしれないということに──、

木口龍 :
 気づいちまった。
 気づいちまった。
 気づいちまった。気づいちまった。気づいちまった。

 ありゃあ偶然には偶然だろうが、"奇跡って呼んでいいもんじゃねえ"。
 オレの中のカンめいたものが、そう告げてきやがる!

木口龍 :
「……クソったれ……クソったれ!」

 誰にも聞こえないように、小さく吐き捨てた。

木口龍 :
 あの少女の中にも、あったんだ。オーパーツだか、"遺産"だかってのが。
 そして、そいつらを巡るカミサマとしか呼べないやつらが、ここぞとばかりに意図も読めねえその手を伸ばしやがった。

木口龍 :
    ・・・・
 だからカミサマは嫌いなんだ。
 人間界のことなんだと思ってやがる。

 どこまで分かってやっているかなど、分かりきったもんじゃねえ。
 この世にソイツがいるとして、上から糸垂らしてなんかやってるとしたら、真っ先に射殺してやりたい。
 ああ、なんか、手帳にも、その手の失敗が書いてあったっけか──。

SYSTEM :
 颯からしてみれば、本当に咄嗟の行動だ。
 無我夢中で振った蹴りが、
 あの狼/呼び方的には悲しきかな犬コロを吹っ飛ばしたことだって、本人としては驚きかもしれないのに。

 ここに二つ、なぜか“横取り”に憤る少年の声と、聞き慣れているが故に“此処”では聞きようのない声が響き渡り、その後者が大事なことを言ったのだからどうしようもない。

『ホデリ』 :
『刀───
 では、ないのか───』

SYSTEM :
 ───と。放心したかのように、ホデリが遠吠えと共に呟く。

 間近なオーヴァードのみに伝わるほど小さな音の波長は、困惑を通り越し、まさに“呆気にとられた”ものの響きだった。

 ………たとえ獣が吼えようと竜が降り立とうと、多少は動じたが、見ず知らずの/出会ってすぐの少年のために即座に行動を択んだものの様子ではなかった。

 それはまさに、天地がひっくり返っても有り得ないものを見る時の反応だったからだ。

“喚楽の人喰い虎” :
「───わ」

SYSTEM :
 一方で、何があっても暢気に自分の選択以外を取っていなかったヤツと来たら。
 この瞬間、起きたことには流石に“軽く”意識を向けた。

 颯にとっては、いま旭が向けた言葉と、実際に担がれた“トモダチ”のこと以外、彼女など知ったことではなかろうから………。
 たったいま向けられ、恐らく振り返ったと同時に交差して突き刺さった視線が、何の意味を持っていたか、彼女を識るもの以外は分かるまい。

SYSTEM :
 ───そいつが一瞬だけ向けた視線が。
      ・・・・・・・
   たぶん縋るような期待であったこと。

SYSTEM :
 ───しかし一瞬で平時の視線に/他の生き物に向ける視線と、大して変わらなくなったこと。

SYSTEM :
 そいつからのそれ/路傍の石以外の認識が欲しい人間以外には。
 そいつが普段している視線が脳裏に焼き付いている人間以外には、絶対に分かるまい。

三廻部 颯 :
「わっ、えっ、旭くん───!?」

 怒られて戸惑い、
 そしてクラスメイトがいてまた戸惑う。
 覚悟は決めても少女は少女。
 けれども右往左往していた頃とは違う──その視線はいうままに、"白いやつ"に向かった。

三廻部 颯 :
「───!
 ……咲楽を離して!」

 むき出しの怒りが海色を光らせる。
 その足に纏った無限の剣が、腕へと移動し。
 その手をそっくりそのまま、鋭利な剣へと変じさせる。

「離してくれないと……な、殴っちゃいます!!」

荻野目 旭 :「────ッ」

荻野目 旭 :
 ……人生三番目は超えたかもな!
 本気でお腹の底に燃えた最悪な感情を潰して、もう一度声を張り上げる。

荻野目 旭 :
    ・・・・・ ・・・・・・
「────迷わないで、今すぐ殴って!」

 ありふれて優しい彼女の、あたりまえの迷いを振り払わせるような──切羽詰まった叫び声を作って。

久外境耶 :「……へェ」

久外境耶 :
             ・
「それはちっとねーよなぁ、僕」

 誰に聞かせるでもなく、低い声で呟く。

荻野目 旭 :「……ひどいなあっ」

荻野目 旭 :そんなの、誰よりも一番、僕が、僕が一番わかってるから、最悪なんじゃないか!

SYSTEM :
 そのわずかな言葉の邂逅など構うことなく。
 殴っちゃいますよと言われた本人と来たら、
 まさにどこ吹く風。

 等身大の怒りに触れることはないが、
 その意識と“名前”だけは伝わったらしい。

“喚楽の人喰い虎” :
「さくら」

“喚楽の人喰い虎” :
「さくラ。サクラ………桜?
 ───あ。咲楽か。よし」

“喚楽の人喰い虎” :
「“このコ”そんな名前なんですね。
 ………それで、ええ、ハイ」

“喚楽の人喰い虎” :
「きみが誰かは知りませんし、どうせ覚えないと思うんで一方的に話しますね。
 覚えられる子だと嬉しいですが」

“喚楽の人喰い虎” :
「───えーなんだったかな。そうだ。
 
 スミマセン! イヤです!
 わたし、このコに恃みたいことがあるので、用事が済むまでは離せませんし………」

“喚楽の人喰い虎” :
「殴られても死んだことないので。
 ソレ、大して困りませんからね!」

SYSTEM :
 朗らかで、無邪気で、それ故の隔たり。

 端的に言葉を纏めると、
 ・・・・・・・・・・・・
 悪いと思っているが厭ですを、意思の疎通を始めたばかりの人の形をしたモンスターが、形だけ整えて投げつけたようなものだ。

SYSTEM :
 皮肉なことに、
 誰かが最悪な想いをこらえて口にした言葉と合わせたならば、
 目覚めたばかりで、その意味を知らぬが故の無自覚の躊躇いと足踏みを吹き消し押し込むには、たぶん十分だ。

三廻部 颯 :
「えっ───」

 "迷うな"。
 クラスメイト/友達の、必死な声が少女の耳に届く。
 時間にして1秒、少女の体が静止する。
 深く落とした構えは解かれずとも、少女は"揺れた"。

三廻部 颯 :
 同時に、
 "イヤです"と突っぱねた女の方へ、次に視線が泳ぐ。
 誰か知らないし覚えるつもりもない、
 殴られても死んだことがないし困らない、
 用事が済むまで解放するわけにはいかない、

 どれも───
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 どれも言っていることが何一つ理解できない。

「なに言って───」

三廻部 颯 :
 効力のない脅しは脅しと言わない。
 人を意識的に殴ったことのない少女の、貧相な敵意など"そんなもの"だ。
 加えて、三廻部颯という少女は、暴力というものをとても嫌っている。
 それゆえに1秒、その体が止まった。

三廻部 颯 :
、   、  、  、 ・
 ……だが、少女の意識は非現実へ戻る。
 
 少女の甘い幻想など、息で吹き飛ぶような塵だ。
 三廻部颯は如何なる感情で覚醒したのだったか。
 如何なる願いをその刀/遺物に込めたのだったか。
 

三廻部 颯 :
 ……いきなり出てきて、いきなり知らない理屈を押し付けて、いきなり私を殺した犬。
 ……起き上がってみれば、知らない理屈で、知らない我儘を言って、勝手なことを言ってる知らない誰か。
 
 ───少女の起源は"怒り"だ、理不尽というものへの。

「───」

 颯の善意を繋ぎ止めていたものは、そこで容赦なく断ち切れた。

三廻部 颯 :

「……私はその子の親友なの。
 "イヤです"なんて勝手なこと言うんだったら……!」

 颯の腕が赤く変色する。
 少女の血を吸った砂が少女の体を循環し、その右手に"敵意"を形にさせる。
 拳を覆う装甲は研ぎ澄まされたナイフのようであり、意識と無意識の怒りをダイレクトに反映させていた。


「私だって、そんなのイヤだッ!!」

 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・
 お前が勝手にするのなら、私も勝手にする。
 すなわち、エゴに対するエゴ。
 暴力という手段を振るうにあたって、最も効率的で、最も合理的なものだ。

三廻部 颯 :
 跳ぶ。
 躍動する。
 颯の体は滑るように、弾丸のように一直線に向かう。

 大きな踏み込みとともに拳を握りしめ、下から払うように"鳩尾"を狙った一撃を繰り出す。
 意識的には"急所"を狙うことによる一点突破。
 無意識的には抱えられた"親友"への影響を考慮した、一撃必殺の手。

 虎の牙を恐れていないわけではない。
 けれど小さな怒り一つは、少女を窮鼠に変えるのには充分だった。

久外境耶 :
 刀ではないのか──ねえ。

 あっちではイヤとイヤの応酬。勢いよく殴りかかりに行った"なりたて"の剣/拳を眺めて、ホデリの呟きを思い返す。
 ワケを話したがらないワケ知りの、想定外に理外を重ねた事態。理性の部分は一旦退いて様子見を検討しているが、さて。

久外境耶 :
「ホデリ」

SYSTEM :
 ぱち、と。
 まるで弾かれたように、止まった時を動かすように、ホデリの頭が軽く身動ぎによって跳ねた。

 激発する少女の様子に呆気に取られていた、というわけではない。何しろそれは最初の「お覚醒め」から変わらなかったものだ。

『ホデリ』 :
『………如何にした』

久外境耶 :
「命じろ、それが嫌なら頼れ。
 おめーの"さふべき"のために、おれは今何すりゃいい」

『ホデリ』 :
『わたしは………』

SYSTEM :
 あまりに清々しい「おまえのやりたいことのために俺は何をすればいい」という言葉。

 彼の所属を識るものからしてみれば噴飯もので、彼の動機を(有り得ぬことだが)識るものがいれば頷くやもしれない正面突破。
 そもそも所属の括りで見るならば尚のこと。FHなど十人十色に過ぎぬ。

 ホデリはその言葉に、喉に何かが引っ掛かったような様子も、項垂れるような様も見せることはなかったが………。

『ホデリ』 :
『………わたしは、伴に、と恃んだ。
 いまを行くものに命ずるなどはできぬ』

『ホデリ』 :
『………恃む。
 あの娘を、厭気が差すまでは護れ』

SYSTEM :
 それ故に、これはこの生き物の葛藤を一歩越えた折り合い。
 誠意に誠意で応じようとする言葉だ。

 この島の物の怪を“眠らせねばならぬ”と宣う生き物の。
 しかし、物の怪とは一切関係ないものへの“護れ”の願い。
 
 おそらくは私情だ。
 私情で動く人間にしか分からない。

 そして………。

『ホデリ』 :
   ・・・
『………あの者がなぜ、いま、あの娘に力を貸せたのか………。
 わからずともいたづらにはできぬ』

SYSTEM :
 あなた/境耶には分かる。

 このホデリというのは、確かに“覚醒めた”少女の理由において、“力を貸した”といったものを識るためとは言ったが。

 護れという言葉が何を指しているのかは、少女の話だ。
 自分の目的とかけ離れたものでも、なり立てたまま突き動かされたものを、土壇場においては放っておけないという愚かさと面倒さを抱えていた。

久外境耶 :
「おうよ、やったらあ」

 土壇場、無計画、行き当たりばったり──上等だ。
 ホデリはどうも不得意らしいが、こっちはそうやって生きてる。それこそ出会ったばかりの相手を命の使い途にするくらいには。

 誰が何とか一旦そっちのけ。イエスしてゴーするだけの猟犬根性は、別にどこにいたってなくなるもんじゃない。

久外境耶 :
 砂を蹴って、虎に突っ込んでいった小鼠を追う。

「お」

 考えなしに、考えが追いついてくる。
 ……そういや狙いのガキはあいつが持ってたわ。
 ドサマギで拾えたらラッキーだが、流石に厳しいか?

SYSTEM :
 無計画、無軌道。
 とりあえず『見出すもの見出した』以上でも以下でもないものの恃みで、幸運を独り占めしてきた無貌の兎に火が入る。

 考え無しの疾走は、ラグなし故に状況にも置き去りにされない。

 そして、その状況は───。

“喚楽の人喰い虎” :
「───シンユウ、」

SYSTEM :
 この手で人を殴ったことも、その脚で蹴ったことも、あったとて喧嘩の範疇に過ぎない少女が。

 怒りと言葉をバネに振るった、人生はじめての渾身を。彼女は、どうしようもなく笑って受け止める。 

SYSTEM :
 身を捩って振るわれた黒い鉾が、それを受け止めた。
 衝撃と共に、小さく身動ぎして呻いた咲楽/あなたの友達に目を覚ます気配はない。
 ・・
 当然だ。獣の咆哮は《ワーディング》。
 颯の与り知らぬことだが、超人とそれ以外を隔てる絶対の仕切り。

SYSTEM :
 先程の魔狼を吹き飛ばしたあなた/颯の拳は、しかしそこから先に動かない。
 押しても押し込み切ることは出来ないから、よけいに、その衝突と共に目が合うのを自覚する。

“喚楽の人喰い虎” :
「───ダメですよ」

SYSTEM :
 心の底から嬉しそうに笑う女は。
 ただ衝突の瞬間、やはり颯をじっと見つめた。

 はじめに向けた視線の意味を、颯には分かるまいが。
 その人というには躊躇われる、鮮やかな金色の瞳が、
 その鈴を鳴らすような声と、晴れやかに振る舞う者が、どこかに”歯止め”を効かせたあなたに向けたものは………。

“喚楽の人喰い虎” :
   ・・
「私、厭だくらいの気持ちじゃ………。
 痣もついてあげられません」

“喚楽の人喰い虎” :
「だって私。
.      オーヴァード
 ふつうの普通じゃない人達より、強いですからね」

SYSTEM :
 ・・・・・・・・・・・・・
 すこし声のトーンを落として、楽しそうに笑う女の戯言。
 鍔競り合いのように見えても、これは鍔競り合いにすらなっていない。

 退けば見逃し、押し続ければどうなるか。
 彼女は「片腕がふさがっている」というハンデすらものともしない。
 颯に、親友を傷つけられないというハンデがあることを差し引いても。

SYSTEM :
 ………そして残酷にも状況が動いた。

 動いたのは───。

怪物  :
「───この、」

怪物 :
「───このクソガキャァ!
 テメェ、この俺様の年代物超絶完璧ボディに………」 

怪物 :
「成り立てのクソカスがァ! 
 
 よくも土やりやがったな死ねやァ!」

SYSTEM :
 ───咆哮と声にならない罵倒。

 場末の破落戸でも口にしないような言葉のラッシュと共に、
 先程岩場に叩きつけられ、砂埃と僅かな赤い血に濡れた狼が吼える。

 何処で姿を変えたか、あの二足歩行の姿。
 怒号と共に、二人の下に影の帳が降りる。

SYSTEM :
 そして動いたのは、もう一つ。

SYSTEM :
【Check!】

 ???がエフェクトを宣言しました。

 Major:血の絆×3
 Auto:血色の蛇×3

SYSTEM :
 その衝突の直前。
 颯と武器を衝突させていた獣の背後から、彼女を諫めるように、土から何かが這い出した。

SYSTEM :
 博物館か何かで見るのがせいぜいの、東洋鎧の骸骨武者。
 いち、に、さんと並んだそいつの気配に気付いた“人喰い虎”の反応たるや、にこやかに笑って。

“喚楽の人喰い虎” :
「あ」

“喚楽の人喰い虎” :
「───あーそうでした。
 折角のお誘いですが、私、遊び相手探しにこのコを連れて行かないといけなくって…」

“喚楽の人喰い虎” :
「そういうわけで私………。
 いま『さっさと来い』って愚痴られたので帰りますね」

SYSTEM :
 どうもその骸骨武者を『呼出』と受け取った彼女の反応たるや単純明快。
 これまで鍔競り合いをして、会話を交わしていたそいつは、諸共踏み潰しに掛かった狼の攻撃などどこ吹く風。

 届く前に、さっと飛び退いて、骸武者を飛び越えて森の中に消えて行ってしまう。

SYSTEM :
 こうなれば残るのは、
 向こう側に消えた彼女の代わりにずらりと並ぶ骸武者の群れと、

 いきなり梯子を外された颯の下に“二度”も迫り、滾る高熱と陽炎を纏って、その拳を叩きつけんとする狼。そして。

“蝕みの君” :『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 完全に一時期蚊帳の外にされ、未知のレネゲイドに様子を見るだけの“分別”こそあったが。

 本当に狙っていた獲物がいきなり気が変わったとばかりに雲隠れなどかましたせいで、再度激発し暴れ出した“蝕みの君”であった。

荻野目 旭 :…………。

荻野目 旭 :GM、三廻部颯さんにロイスを取得します。感情は〇庇護/嫉妬です。

GM :ふむ。

GM :よろしい! キャラシートに書き加えておいてくださいね。

荻野目 旭 :ありがとうございます!

荻野目 旭 :
「待────ッ」

 手を伸ばしかけて引っ込める。
 どう考えても、この状況で“蝕みの君”と仮称超絶完璧ボディくんと、生えてきたやつらを振り切ってヤツに出せる手はない……。

荻野目 旭 :
 頭の中の優先順位、一番上に大きくバッテンをつけた。
 二方向から聞こえた咆哮と怒りの叫び、まず対処しなければいけないのは……!

荻野目 旭 :「──攻撃来ます! 援護……お願いします!」

久外境耶 :
「あ〜あ、持ってかれちまった」

 ハイエナ失敗。あいにく追手の相手をしても、やるのは不向きな性分だ。加えてキャンキャン元気なワンちゃんが迫っている。

久外境耶 :
「おいガ──デッ」

 ……ッッッケ!

久外境耶 :
「じゃねえわ危ねえ────!」

 重量と熱量が纏めて落ちてくるのを、直下で受けとめる。間一髪でドタマかち割られずに済んだ。

 過重に砂に沈む足は、兎の脚だ。限界まで受けて、しゃがんで──跳ぶように弾く!

SYSTEM :
 炎を纏い、照り付ける太陽の何十倍もの熱量で墜落したこの魔狼は、そこいらの有象無象など一息で吹き飛ばす。
 技術も、機運も、何も読まない無造作な拳は、逆に“これ”一本で片端から吹き飛ばして来たことの証左だ。 

 しかし先程のものとぶつかり合った後ならば話は違う。
 それを受け止め切ったあなた/境耶が、ホデリの咄嗟の防御なぞ受けずとも、なんでこれを弾けぬものか。

SYSTEM :
 激突の瞬間。
 叩き潰してやろうとしたものとは全く違う感触が。
 剛を弾く柔と共に、砂さえバネに跳躍ぶ者の貌なき不敵な面構えを見据えた魔狼の口振りたるや、不可解の重ね合わせ故にまたしても/変わらず激昂に染まった。

怪物 :
「あァ───!? クソガキ2号がァ!」

怪物 :
「手前、一度図に乗るだけなら犬のち一殺しで勘弁してやろうと思ったが………。
 この俺様は仏様よりもさらに顔を見る限界が低いぞ………!」

SYSTEM :
 衝突と共に、視線が交差。
 どうもこの沸点の低く、小心で狡猾な生き物は、優先順位をホデリの持つ何某に切り替えたが故なのか。
 少なくともこの瞬間で、どこのだれを“敵”として見るかを完全に定めたらしい。

 乱戦の乱暴な形が、少しずつ収束していく。

SYSTEM :
 着地と共に、砂の上に火花が走る。
 高熱を纏い、発する紅蓮の人狼。

 唸り声を挙げると共に、がちりと拳を鳴らす。

怪物 :
「しかもあのバケモノ女………“ミコサン”連れてどっかに行きやがった。
 クソ、どさくさに紛れて一石二鳥が夢になっちまったじゃねえか」

怪物 :
「───もういい! いっぺんブッ殺す!
 そこのも、そこのも、そこのも、そこのも!」

怪物 :
           パク
「そして犬の御命と飾り強奪ったら………!」

SYSTEM :
 興奮状態の人狼が
 まず自分に一撃入れた颯を指差し、
 それから二度も上等くれた境耶を指差し、
 その後ろにいたから“敵”認識らしい旭を指差し、
 そして特に何もしていない筈なのに龍を指差した。

 その様子から、彼が高台のあなた/シホに気付いた素振りはなく。
 これは彼が『感知』においてはさほどでないことを示していたが。

 しかし同時に、その短絡さの持ち主が、視界に入ったものを逃がす選択肢を択ぶわけがないのは明白だった。

SYSTEM :
 加えて………。
 一度“お目当て”を逃がした方は、今なおあの黒い鱗粉を撒き散らしながらも、再び旭に目を向けた。

 こちらはこちらで、元より『自分に旧縁がある』ものを追いかけているような素振りが見えたが、イレギュラーな颯でも、喚いた獣でもなく、何より先にあなたを見たことでハッキリした。

 これが追いかけているのは。
 ・・・
 あの日の関係者だ。

SYSTEM :
 何も連帯のない獣たちが、

 暗黙の了解と利害の一致か、お互いに構うことなく同じ方向を向く。

タイガーアイ :
『───で。如何にする、シホ』

タイガーアイ :
           マンティコア
『ついでに、あの推定“喚楽の人喰い虎”のお知り合いたちは………。
 連中の力沿えをするらしい。
 
 このまま立ち止まっているならば、巻き添えを食い、割りを食わされるのは。
 ゼノス
 我々であるな』

タイガーアイ :
『端的に手間だが。
    ・・・
 今なら択べるぞ』

SYSTEM :
 あなたは知っている。

 明滅したそいつの挙動と淡々とした音の波紋。

 いま部外者のシホに選択を促した言葉と裏腹のその態度と来たら、
 いったいどちらを択ぶのか予想がついている時のものだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 高台の下で起こる混迷と、それが巻き起こした攻防を、ワタシはただ静観していた。
 それは目的にとって最も合理的な選択であり、或いはただの成り行きだった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 “何もできなかった”───そうとも言えた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 森の奥へと消えてゆく影を片目で追う。単騎なら追跡できるだろう……が、それだけだ。
 たとえ彼女を追い掛けた果てに奇襲を成功させたとしても、命が果てるまでに擦り傷の一つ与えられれば御の字の結末が見えている。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ここで踵を返し、彼らを見捨てて森へと戻る選択は?
 ……無いと言えば、嘘になる。そもUGNによる強固な体制に裏付けられたバックアップなど望めない以上、もはや出来合いの仮面を被り、身を晒す危険を冒してまであの少年に協力する理由もない。
 彼らをここで見捨てても、もしかすれば生き残れることもあるだろう。覚醒めたばかりの彼女が何故アレほどの出力を持つのかは疑問だったが、ともあれ彼らは皆、形は違えどワタシと同程度の実力は備えているようだったから。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ──────だけど、私の望みは。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……それに応える前に、ワタシからも改めて聞いておくが。
 “タイガーアイ”、いまワタシたちが最終的に果たすべき目標はなんだ?」

タイガーアイ :
『ワタシたちという言葉で括った大目標は小目標を揺らがせる。我の目標とお主の目標とするべきだ』

タイガーアイ :
『その我の目標とお主の目標の最終到達地点とは。

 この島に眠るらしい“巨大レネゲイド”の顔を拝んだ先であるな』

”朧の狩人/残骸” シホ :
「そう、その通りだ。この島に眠るらしい“巨大レネゲイド”の顔───恐らくワタシたちが既に拝んでいるか、或いはまた別の脅威なのか。
 ともあれ目標は強大だ。“イリュシデイター”にも伝えたように、当面行動を共にする仲間でも集めなければ太刀打ちできそうもない」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ならば、話は最初から決まっている。
                バディ
 ───獲物は定まったぞ、賢しい同業者。これより彼らを援護する。
 なに、改めて、ワタシたちの仕事を始めようじゃないか」

SYSTEM :
 ずらりと並べ用立てた理屈と正当性は、自覚せぬものか、それとも心底からのものか。
 過程が何方であろうとも、その実行プロセスにおいて変わることはない。

タイガーアイ :
『是非もない。
         バディ
 始めよ、無鉄砲な同業者。
 あれらはジャームではなく、弱きを喰らい強きから逃げおおせる獣だ』

タイガーアイ :
『不利を悟れば命を惜しもうな』

SYSTEM :
 過程がどちらだろうと、分かっていた結論を前に。
 心なしか波紋の音は大きく広がっていた。

 撃てば気付かれるだろう。
 特に、“蝕みの君”などと銘打たれた方は、あなたの存在にも意識を示している節があった。

 それでも、獲物を定め。
 照準に入れ撃鉄を上げたら、後は撃つだけ。

SYSTEM :
 何時間も息をひそめ、
 たった一瞬に命を懸ける。
 スナイパー
 狙撃手のサガだ。

SYSTEM :
 じりじりと、獣が太陽の中で吠え猛る。
 声高に語る目的の是非も知れず、
 そもそも関連性もない烏合の衆。

 後者については、あなた方においても目的の窺い知れなさは同意義であろうが。
 この二匹と、そこを取り巻く骸骨武者どもの駆り手はもっとそうだ。

SYSTEM :
 ───何をするにも定めるにも。
 ひとりに限って、お覚醒め直後の運動というには酷だとしても。

 誰しもここで、こんなものに“理不尽”にやられるわけにはいかない。

“蝕みの君” :
『▂▅▇█████████████!!!!』 

怪物 :
「………クソガキ1号、クソガキ2号!
 そしてその他の有象無象!」

怪物 :  
 ブリテン シケ
「英国の湿気た拝み屋どもにも、
. アメコウ
 合衆国のトチった化物どもにも、
 ジャップ
 日本の意味分からん理不尽野郎どもにも!

 俺ァずっと………ずうううっと殺られやしなかった………」

“渇望喰い” :

        マーナガルム
「俺ァ不死身の…“渇望喰い”様だぞォ!」 

SYSTEM :
◇ ◆ ◇


【戦闘:“渇望喰い”&“蝕みの君”】

SYSTEM :
【Check!】
 戦闘が発生します。

[Enemy]
・“渇望喰い”
・“蝕みの君”
・骸武者(従者)×3

[備考]
・”渇望喰い”もしくは“蝕みの君”のHP0でシーンが進行します。

SYSTEM :
【Engage】

※エンゲージは左上から右下の順に
「A」〜「C」の番号を振ります

[A]
1:“渇望喰い”
2:“蝕みの君”
3〜5:鎧武者(従者)

       -5m-

[B]
6:三廻部 颯
7:“ラッキージンクス”九外 境耶
8:“ナイトホーク”荻野目 旭
9:“■■■■”木口 龍

       -5m-

[C]
10:“朧の狩人/残骸”シホ

SYSTEM :

【-Round 1-】

SYSTEM :
【Round 1 -Set Up Process-】

SYSTEM :
■セットアップ
 タイミング:セットアップのエフェクトを宣言出来ます。

荻野目 旭 :……悩みますが宣言なしです! 温存温存……!

久外境耶 :おれもナシ

木口龍 :オレは該当エフェクトがまだ使えない。よって無しだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :ワタシはエフェクトを持っていないな。

三廻部 颯 :ないです!

“渇望喰い” :
■セットアップ:ソル・デリング
《雷神の降臨L4》
・ラウンド中、自身の行動値を[0]にする
・ラウンド中、自身の攻撃力を[Lv*5]増加させる

“蝕みの君” :
■セットアップ:哭キ落ツ黎明
《レネゲイドキラーL2》
・このエネミー以外の対象がエフェクトを使用するごとにHPを[Lv]点失う
・(※組み合わせて使用した場合はそれぞれ毎に効果を受ける)

鎧武者A :
■セットアップ:宣言なし

鎧武者B :(無言で以下同文の構えを取っている)

鎧武者C :(無言で以下同文の構えを取っている)

SYSTEM :
■セットアッププロセス
 宣言結果が確認されました。

“渇望喰い”:行動値変更[6]⇒[0]

SYSTEM :
【Round 1 -Main Process-】

SYSTEM :
■手番処理
 シホが行動を宣言します。

SYSTEM :
■イニシアチブ
 宣言可能なエフェクトがありませんでした。
 他宣言を確認後、メインプロセスに移行します。

SYSTEM :
■メインプロセス
 任意の宣言を行ってください。

”朧の狩人/残骸” シホ :……少々待たせたな。

SYSTEM :(ゲールの世代に伝わる渾身の「激励」を示す指の所作)

”朧の狩人/残骸” シホ :
□判定宣言
     Low Cyhyraeth
▼Combo:《災告:兆》

Minor:《陽炎の衣》▼
Major:《コンセントレイト:オルクス[Lv.3]》+《形なき剣[Lv.1]》+《要の陣形》【未知なる陣形】▼

 Atk : 7dx7+9
 Damage : xd10+1d+22
 Cost : 3+7 HP:-(1D+8)

効果:最大[5]体捕捉
   同一エンゲージ攻撃不可
   メインプロセス終了まで隠密状態
   この攻撃に対するドッジD:—[《形なき剣》のLv ]
Loading……

SYSTEM :
■リアクション
 リアクションを確認しています...

“蝕みの君” :
■リアクション
《竜鱗L3》

“渇望喰い” :
■リアクション:ソル・ドランク
《灼熱の結界L5》

鎧武者A :
■リアクション
《ドッジ》

鎧武者B :(「俺達は全員同じです」の顔)

SYSTEM :
■メインプロセス:判定
 リアクションを確認しました。
 判定を行ってください。

”朧の狩人/残骸” シホ :7dx7+9 (7DX7+9) > 10[1,3,4,6,9,9,10]+5[3,4,5]+9 > 24

鎧武者A :10dx 〈ドッジ〉 (10DX10) > 10[4,4,4,6,6,6,8,8,9,10]+7[7] > 17

鎧武者B :10dx 〈ドッジ〉 (10DX10) > 10[2,2,2,3,5,5,6,7,7,10]+10[10]+8[8] > 28

鎧武者C :10dx 〈ドッジ〉 (10DX10) > 10[2,3,4,4,6,7,8,9,10,10]+9[7,9] > 19

SYSTEM :

SYSTEM :
 ※判定結果に『形なき剣』分の誤差修正の誤りがありました。
  再度判定を行います。申し訳ございません。

鎧武者A :9dx ドッジ (9DX10) > 8[1,1,1,2,3,6,6,7,8] > 8

鎧武者B :9dx ドッジ (9DX10) > 9[1,3,3,3,4,4,5,8,9] > 9

鎧武者C :9dx ドッジ (9DX10) > 10[2,3,4,4,6,7,9,10,10]+10[7,10]+5[5] > 25

SYSTEM :
■リアクション
 リアクション結果を確認します。

”蝕みの君”:《竜鱗》/命中
”渇望喰い”:ガード/命中
鎧武者A、B:ドッジ/命中
鎧武者C:ドッジ/回避

”朧の狩人/残骸” シホ :よく避ける!

鎧武者C :(何者の従者か知らぬ鎧武者の一匹が、唯一迫る殺気に勘付いた!)

system :[ ”朧の狩人/残骸” シホ ] 要の陣形 : 2 → 1

system :[ ”朧の狩人/残骸” シホ ] 陽炎の衣/Scene : 1 → 0

SYSTEM :
■メインプロセス:ダメージ
 ダメージ判定を行います。

”朧の狩人/残骸” シホ :3d10+1d+22 (3D10+1D10+22) > 15[6,2,7]+9[9]+22 > 46

SYSTEM :
■ダメージ結果
 ダメージ結果を確認しています…。

SYSTEM :
■ダメージ結果

鎧武者A、B:撃破!

GM :
2体沈黙、2体命中! 惜しくも1体回避!
…となったわけですが…

GM :判定終了ということで、侵蝕率や《レネゲイドキラー》等でHPが減少する場合は基本この辺でコストお支払いをお願いします。せちがらい。

”朧の狩人/残骸” シホ :致命には至らんだけマシだと考えよう…

”朧の狩人/残骸” シホ :1d10+8 反動ダメージ (1D10+8) > 5[5]+8 > 13

system :[ ”朧の狩人/残骸” シホ ] HP : 23 → 10

タイガーアイ :初弾命中。取りこぼしは狙いが“ぶれ”たか、はたまた。

”朧の狩人/残骸” シホ :言ってくれるな。まだ本調子ではなくてな……!

タイガーアイ :では二射目以降は経験で修正しておくことだ

SYSTEM :
■手番処理
 ■■■■の従者/”鎧武者”が行動を宣言します。

SYSTEM :
■イニシアチブ
 宣言可能なエフェクトがありませんでした。
 他宣言を確認後、メインプロセスに移行します。

SYSTEM :
■メインプロセス
 任意の宣言を行ってください。

鎧武者C :

鎧武者C :
■メインプロセス:戦闘移動(マイナーアクション)
 エンゲージ移動(A⇒B)

鎧武者C :
■メイン:妖ノ太刀
 Passive:《愚者の兵装L4》
 Major:《かりそめの剣士L4》
 Minor:なし
 Auto:なし
 
 判定:13dx+2
攻撃力:xd+8
・命中時、相手のダイス-2個/ラウンド

鎧武者C :choice[颯,境耶,旭,龍]  (choice[颯,境耶,旭,龍]) > 境耶

久外境耶 :ッシャオラーーーー来いよぉ!

鎧武者C :(鎧武者は“狙い”に最も近しき境耶に狙いを定めた…)

鎧武者C :13dx+2  (13DX10+2) > 10[1,1,2,2,3,3,7,7,8,9,9,10,10]+9[6,9]+2 > 21

SYSTEM :
■リアクション
 リアクション宣言を確認しています…。

久外境耶 :《氷盾》使っとくぜー

SYSTEM :
■リアクション
 リアクション結果を確認しました。

久外境耶 :ガード(《氷盾》)/命中

system :[ "ラッキージンクス"久外境耶 ] 侵蝕率 : 36 → 38

SYSTEM :
■メインプロセス:ダメージ
 ダメージ判定を行います。

鎧武者C :3d10+8 《妖ノ太刀》 (3D10+8) > 21[9,9,3]+8 > 29

久外境耶 :お、なんとか凌げたか。……

system :[ "ラッキージンクス"久外境耶 ] HP : 131 → 129

久外境耶 :よっし、イケるイケる

荻野目 旭 :(2度見)

三廻部 颯 :(すごっ……)

『ホデリ』 :………掠り傷のほか無いではないか

”朧の狩人/残骸” シホ :いかん、見間違えか……?

久外境耶 :おう今のうちに見惚れとけ! 死んでからが本番だぜおれはよ!

木口龍 :掠り傷しかねえな……

『ホデリ』 :つくづく汝という男は命の見立てが安いな 幸運とはよくも言うもの

『ホデリ』 :しかしあの者らの太刀筋………うぬ………時の落伍者はわたしだけだと思うていたが………

SYSTEM :
■ダメージ結果
 ダメージ結果を確認しました。

SYSTEM :
■手番処理
 複数のキャラクターが同じ行動値となっています。
 先に行動する方を宣言してください。

・三廻部 颯
・木口 龍

木口龍 :オレはこの近づいてきたゾンビ兵もとい鎧武者に、反射的に銃をぶっぱする……といった体で、先に動く。いいか?

GM :(無言でBGMを「激闘の中、それぞれの約束」に切り替えようとする)

GM :畏まりました。

SYSTEM :
■手番処理
 木口 龍が行動を宣言します。

SYSTEM :
■イニシアチブ
 宣言可能なエフェクトがありませんでした。
 他宣言を確認後、メインプロセスに移行します。

SYSTEM :
■メインプロセス
 任意の宣言を行ってください。

木口龍 :一応処理順は従っておきたいし、聞いておこう。レネゲイドキラーは宣言する度に支払い、だな?

GM :はい。問題ありません。

木口龍 :OK、ならそれに従って進めていこうか。

木口龍 :
【マイナーアクション】
宣言:《ハンドレッドガンズ》(Lv3)
結果:武器作成
影響:レネゲイドキラー1回分

system :[ 木口龍 ] HP : 27 → 25

木口龍 :【メジャーアクション】
宣言:《コンセントレイト:モルフェウス》(Lv2)+《雷の残滓》(Lv5)
→追加:オート《砂の加護》(Lv2)

判定値
6/d/x@8+6

影響:レネゲイドキラー3回分

system :[ 木口龍 ] HP : 25 → 19

木口龍 :6dx@8+6 オレに近づくんじゃねえ! (6DX8+6) > 10[2,6,6,8,9,10]+10[6,6,8]+4[4]+6 > 30

SYSTEM :
■リアクション
 リアクションを確認しています…。

鎧武者C :
■リアクション:ドッジ

鎧武者C :10dx ドッジ (10DX10) > 9[2,2,5,5,6,6,6,6,8,9] > 9

鎧武者C :(鎧武者は無念とばかりに膝を突いた…)

木口龍 :よっしゃヒットォ! そしてテメーはオーヴァードだな! 
Dロイス《対抗種》で上乗せ確定だ!

鎧武者C :(鎧武者は潔く座して死を待とうとしている)

SYSTEM :
■リアクション
 リアクション結果を確認します。

鎧武者C:ドッジ/命中

SYSTEM :
■メインプロセス:ダメージ
 ダメージ判定を行います。

木口龍 :4d10+2d10 あ、当たりゃあなんてことはねぇ……!!! 所詮はヒトガタ、ヒトガタだッ……!! (4D10+2D10) > 24[10,4,6,4]+15[5,10] > 39

SYSTEM :
■ダメージ結果
 ダメージ結果を確認しています…。

木口龍 :

木口龍 :固定値13乗っけてない。そこに+13です。

GM :了解しました。ですが…。

SYSTEM :
■ダメージ結果

鎧武者C:撃破!

木口龍 :しゃあ、どうだ、ざまあみやがれオレのかt……あがああああ!!?(対抗種支払います)

system :[ 木口龍 ] HP : 19 → 16

GM :愚かなる弟よ…(了解しました)

system :[ 木口龍 ] 侵蝕率 : 41 → 49

“渇望喰い” :ケ…! わらわら集まるだけ集まって死にやがった! 弾除けにでもなりゃァいいものを!

“渇望喰い” :序でに言やぁさっき弾丸くれた野郎は何処だ! いや言わなくてもいい、俺様天才だから何処にいてもお礼参りは即日配達だからよォ…!

SYSTEM :
■手番処理
 三廻部 颯が行動を宣言します。

SYSTEM :
■イニシアチブ
 宣言可能なエフェクトがありませんでした。
 他宣言を確認後、メインプロセスに移行します。

SYSTEM :
■メインプロセス
 任意の宣言を行ってください。

三廻部 颯 :
……待機します!
(まだちょっと──脚が震えてる……!)

SYSTEM :
■メインプロセス
『待機』宣言を確認しました。
 R中の行動値を[0]として扱います。

 行動値の調整と確認をお願いします。

SYSTEM :
■手番処理
“蝕みの君”が行動を宣言します。

SYSTEM :
■イニシアチブ
 宣言可能なエフェクトがありませんでした。
 他宣言を確認後、メインプロセスに移行します。

SYSTEM :
■メインプロセス
 任意の宣言を行ってください。

“蝕みの君” :………!

“蝕みの君” :
■メイン:掻キ毟ル慟哭
 Passive:????
 Major:《CRソラリスL3》《狂乱の一声L5》《恐怖の一言L2》《風の渡し手L2》《抗い難き言葉L4》《絶対の恐怖L1》
 Minor:《鷹の翼L1》《破壊の爪L5》
 Auto:宣言なし

 判定:9dx7+5
攻撃力:xd+9
・攻撃対象を[3]体に拡大
・命中した相手を4m強制後退
・命中した相手の判定ダイス-4個/ラウンド
・攻撃対象に[憎悪]付与

SYSTEM :
■メインプロセス
 “蝕みの君”が攻撃対象を選択しています…。

“蝕みの君” :choice[颯,境耶,龍]  (choice[颯,境耶,龍]) > 龍

“蝕みの君” :攻撃対象決定:颯、境耶、旭

“蝕みの君” :9dx7+5 命中判定 (9DX7+5) > 6[2,3,3,4,4,5,5,6,6]+5 > 11

“蝕みの君” :…?

“蝕みの君” :(小さく首を傾げた…)

SYSTEM :
■リアクション
 リアクションを確認しています…。

久外境耶 :行動放棄して"ナイトホーク"を庇う、使うエフェクトは《氷盾》だ

荻野目 旭 :フォロー助かります! 何もできなくなっちゃうので!

久外境耶 :バーカ、オシゴト査定だ! 気抜くなよ!

system :[ "ラッキージンクス"久外境耶 ] 侵蝕率 : 38 → 43

荻野目 旭 :ハイハイ!

三廻部 颯 :ドッジ!します!

system :[ ”朧の狩人/残骸” シホ ] 侵蝕率 : 45 → 55

GM :了解しました。そのまま判定をどうぞ。

三廻部 颯 :3dx+1 <肉体:回避> (3DX10+1) > 9[4,6,9]+1 > 10

荻野目 旭 :────大丈夫!

荻野目 旭 :エンブレム『バディムーヴ』使用します! 達成値を+3してください!

“蝕みの君” :▂▅▇█████████████!!!! 

三廻部 颯 :わ! ってことは、12だ!

GM :その通り 回避に成功となりまして…

SYSTEM :
■リアクション
 リアクション結果を確認します。

颯:ドッジ/回避
境耶:ガード(氷盾)/カバーリング/命中
旭:被カバーリング(境耶)

SYSTEM :
■メインプロセス:ダメージ
 ダメージ判定を行います。

“蝕みの君” :2d10+9 《掻キ毟ル慟哭》 (2D10+9) > 10[4,6]+9 > 19

“蝕みの君” :〈憎悪〉対象指定:“蝕みの君”

久外境耶 :いいぜ次おぼえとけよ4ダメの怨み晴らしてやらァ!

system :[ "ラッキージンクス"久外境耶 ] HP : 129 → 127

“蝕みの君” :(唸り声)

三廻部 颯 :こ、怖かったあ……! 旭くんありがとー……!

荻野目 旭 :おやすい御用です! 三廻部さんのがんばりの結果ですしね!

SYSTEM :
■ダメージ結果
 ダメージ結果を確認しました。

“蝕みの君” :
『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 絶え間なく嘶きが響き渡る。
 当たり前の世の中に、当たり前のように在ってはならない者の声。
 本の世界、空想の向こう側。
.                 ファンタジー
 そうした場所にだけ存在を許される幻想存在が、
 赫怒に喉を掻き毟るようにして咆哮を轟かせた。

SYSTEM :
 それは本当に咆哮だったのか。
 苦痛と癇癪を織り交ぜ、のたうち回るように爪を浜辺に食い込ませたものの、
 腹の底から響く熱を伴う声。

SYSTEM :

 ああだが、しかし。
 その是非など測る暇はない。
.     キュマイラ
 三年前、前衛担当の大男を捻り潰した直後、
               ブラム=ストーカー
 冷静に頭を切り替えて近付いた顰め面の男が“どう”なったかを。
 死という結果を込みで見つけて来たものは特に忘れてはいまい。

SYSTEM :
 頻繁に剥がれ落ち、翼の微かな羽搏きの振動が引き起こす運動エネルギーがこれを細分化し。
 そうして空気中に散布された『鱗粉』は、ソラリスシンドロームの形質に近くありながら、その意味するところは、極めて性質の悪い特性を有していた。

SYSTEM :
 実際に居座り、戦いの場に赴き。
             ・・・・
 今は分からずとも、これを戦闘態勢にした時点で。
 迎撃のためにレネゲイドを介した現象を引き起こした時にこそ、コレの“意味”が分かる。

 発動そのものを拒絶するのではなく、発動と共にアレルギー反応めいて対象の中で爆ぜる彼/彼女の因子は、他に在る幻想を容認しない。
 初めから、彼/彼女の飛ぶ空に、他のオーヴァードという生き物は並び立てない。

“渇望喰い” :
「チ! このボケナストカゲが………こいつ何処産の除けモンだ?」

SYSTEM :
 それに真っ先に気付いた生き物とて、コレをわざわざ説明する義理などない。
 耳の良いものなら直後に「まあいいか」「なんか殴ると面倒そうだし…」とぼやいたのを聞き取れる程度で、それは彼の振りまく紫黒の死粉について危機を悟らせるものではない。

 何より。

 そいつの生き汚さは性根に起因するものでない。
 元より自称の不死身は伊達でなく。
 レネゲイドの高まる反応において内部で起きるダメージなど、こいつからしてみたら“蚊に刺された”ようなものだった。 

SYSTEM :
 轟音。

 雷が鳴り響くように、烈しい音と光が走る。同時に昂る熱が、黒い外皮を少しずつ深紅に染め上げ、振動で浜辺の砂を巻き上げていく。

 中心となるのは、あの灼熱を纏っていた魔人狼。
         マーナガルム
 遠吠えと共に、太陽を嘲るものが鳴動する───。

“渇望喰い” :
「よおし。よォ〜く見てろよ、覚悟しろよクソガキ1号ついでに2号………。
 テメェがこの俺様に土つけてくれちゃったのが所謂ラッキーパンチだってこと………」

“渇望喰い” :
   ソク ワカ
「───速攻で理解らせてやんぜェ!」

久外境耶 :「誰がついでだ、誰が! おいガキ! おまえも1号だからって調子乗んなよ!」

『ホデリ』 :『…逆ならば良しと?』

久外境耶 :「おう!」

三廻部 颯 :「なんでぇ……」

『ホデリ』 :『うぬ…ある種清々しい…だが序列で憤ってばかりはおられぬぞ』

荻野目 旭 :「お犬様の言うとおりですよ、もうっ! ……お犬様ですよね!?」

『ホデリ』 :『小僧………』 何やら地味に物を言いたげだ!

『ホデリ』 :『いや構わぬ………』

三廻部 颯 :「こっちの子は頭良さそう!」
あっちはバカ犬!と指を差す

久外境耶 :「そうだぜ、頭下げて敬え」ゲラゲラ

“渇望喰い” :「ア〜ンテメェらコラそういう態度取るのか? 取っちゃうのかァ!?」

木口龍 :
「──げほっ、ごほっ、げぇーーっほげっほっ……ぜぇー、ぜぇー……」

 じゃあ若いのがやってるところで、犬と全員を見やって言おう。お前らなんでそんな元気なんだと。
 俺はさっきから咳が止まらない。あやべ血出てきた。肺やったかこれ。

荻野目 旭 :「…………………………………」

三廻部 颯 :「旭くん?」

荻野目 旭 :「う、うわあーーーー!!!!!!! 吸わないで吸わないでお兄さん!!!!!! お口抑えて!!!!」

久外境耶 :「なんだ混ざりたくなったか? 寂しがんじゃねえよ、"待て"だ"待て"! ……あ?」

木口龍 :「おいそれを先に言え!!!!!」(叫んだせいでまた吸った)

木口龍 :「げーーっほげほ!?」

荻野目 旭 :「バカぁ!」

久外境耶 :そいつはそうですね。

荻野目 旭 :そこで同意しないでくれますかぁ〜!?

久外境耶 :「で、おまえもワケ知りか」

荻野目 旭 :「残念ながら! あいつのことなら、この場で僕が一番わかります! ……たぶんですけどね!」

荻野目 旭 :
「あの鱗粉は吸ったらだめなんじゃなくて……
 あいつのそばで力を使いすぎたら駄目なんです!」

 そこの眼鏡の人は『出しっぱなし』のタイプの可能性もある。
 苦しんだのならたぶんそれが原因だ……楽観はできないのだけど!

荻野目 旭 :「ただ……」

荻野目 旭 :「細かいことは気にしないでくださいっ、痛いのと苦しいのだけは我慢して!」

三廻部 颯 :「そうなの!?」

木口龍 :
「クソッオイマジかよオレ生きてるだけであなたは死にかけですって言われたことあるのによォ……!!!」

 どうも話を聞いた感じ直接害はないようだが……そこら辺は特異体質の関係もあるのかもしれない。

SYSTEM :
 一方で“袖”にされた方は、それくらいで怒り心頭となるわけではないのか。
 あるいはもう怒り心頭だから追加で憤るというわけではないのか。

“渇望喰い” :
「グァハハハハ………いいこと聞いたぜェ。

 長引けば勝手にコロっと逝ってくれるってか?」

“渇望喰い” :
「だが仏様の顔は三度だが俺は二度!
      チャージ
 そして拳は充填完了で一度と言わずにエンドレスだ………!
 特にそっちのテメェ! それで済ましゃしねえ、泣いて亡くなるまで原型留めずボコボコのボコ太郎にしてくれるぜェ!」

荻野目 旭 :「ふんだ! 残念ながらっ、苦しいままなのはあなただけですよワンちゃんさん!」

“渇望喰い” :
. マーナガルム
「“渇望喰い”だボケが!
 聞いた名前が右から左に飛び出て一斉スタートか砂利が!」

荻野目 旭 :「では“マーナガルム”さん! 自己紹介してくれて嬉しいですけど、僕にお渡しする名前はありませんので聞くだけでけっこうですっ!」

“渇望喰い” :
「ハンッ! 殊勝じゃねェか砂利が!
 命乞いなら300秒前に締切だ!」

“渇望喰い” :
「辞世の句だけ受け付けてやるぜ!
 言いたきゃ言ってみなァ」

荻野目 旭 :「300秒前の僕なら、本当にあなたの後脚を舐めて命乞いしていたかもしれません! 残念です!」

荻野目 旭 :「……三廻部さんは無理をしないで! あいつらに絡まれないことにだけ気を配ってください!」

荻野目 旭 :「ほかの皆さんは、痛くても戦えるなら遠慮なく! アテにしちゃいますからね! いいですかっ……」

荻野目 旭 :息を吸う。この言葉を使うために、3年分ぐらいの勇気を使い切る。

荻野目 旭 :
「死ななければ、絶対、ぜったい治しますから……!」

“渇望喰い” :
「───あ〜そうか手前。
 そういう系列か………」

SYSTEM :
 あなたが颯に声を掛けたことに、
 彼は彼なりに得心が言ったらしい。

 その叫びの横で、ふんふんと頷いて───獰猛に犬歯を光らせる。

“渇望喰い” :

「グァハハハハ………!
 なら残念なこったなァ! クソガキ1号のオーヴァード人生は、生後600秒以内でデッドエンドよ。

 ───精々悔しがれ。あのバケモノ女のお知り合いもテメェらが狙いだとよ………!」

SYSTEM :
 言葉に呼応するわけではなかろうが、
 “喚楽の人喰い虎”を呼びつけ、そしてそのまま此方に踏み込んで来た鎧武者。都合三体。

 カタカタ音を鳴らした骸骨が、はくぶつかんで見るような意匠の日本鎧に身を包んで、砂を踏みしめ歩き出す。

 死ななければ治す。
 その宣誓はオーヴァードの戦いを識るものにとっては“ありがたい”かもしれないが。

鎧武者A :「───」

SYSTEM :
 生と死の瀬戸際など知らない人間にとって、それを自覚させられることがどう映るか。
 あるいは───今遠ざかった繋がりの所為で、自覚して尚も向き合わねばならぬこととなるのか。

 刃物を光らせた個体が、骨の振動で鬨の声を代替し。
 その刻は今ぞと踏み出そうとしていた。

久外境耶 :
「繰り上げで1号チャンスじゃねーか、上等だ。……んだよ、冗談だって」

久外境耶 :
「終わったらこっちのお犬様に感謝しとけよ」

 雑に言い捨てて、敵へ意識を向ける。

三廻部 颯 :
「──……っ、うん!」

 二重の意味で、「うん」と返事が出る。
 少女の声は震えている、だが……後ろを向いた声でもなかった。

「……601秒後に生きてれば私の勝ちだし!」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 地獄の釜にて仲良く繰り広げられる、暴論と正論の侃侃諤諤。
 こと戦場において、世にも死にも見捨てられた超人たちには華とも言える光景だ。

 ……ところで。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 その言葉飛び交う華の園からも見捨てられた者が、ここにはもう一人いる。
 正確には、一人と一個。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───聞いたか、タイガーアイ。
 “死ななければ治してくれる”……だそうだ。護らねばとばかり思っていたが、随分と頼もしい限りじゃないか」

タイガーアイ :
『よくもまあ。オーヴァードの死など六銭も無用なものであろうに。
 死ななければ安いものとはよく言ったが、我々は“成り果てねば安い”が正しい言葉であろうな』

タイガーアイ :
『まあ偽りはあるまいな。
 あの小僧が正気を煮詰めて揮発させぬ限り、反故にする理由はない。

 信を置く以上、命と敵意の秤は見誤るなよ』

”朧の狩人/残骸” シホ :
「或いはな。死も能わず成り果てたなら、相応の死を馳走するのもワタシの仕事だとも。

 それはさておき…承った。存分に頼らせてもらうとしようか」

”朧の狩人/残骸” シホ :

”朧の狩人/残骸” シホ :
 改めて眼下に広がる光景は……なるほど、死で済むなら安いものというのも頷ける。
 いまさら手放した現実/ありえた未来に未練はないが、
 しかし現実を嘲笑うにも程がある。背筋が凍りそうな光景だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……標的、都合5つ。
 反動を考慮して、一度の射撃で仕留めうる最大捕捉数。

”朧の狩人/残骸” シホ :
《Renegade Smith Hearth
 抗レネゲイド弾薬精製機構の起動を確認。
     EML
 仮想電磁加速砲モジュール構築。エネルギー充填開始…》

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……此処からでは角度が拙い。
 跳躍と同時に狙撃する。備えておけ。」

タイガーアイ :
 Copy
『了解。
 気に留めるな、是非もない』

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……そろそろ彼も待ちかねている頃合いだろう。
 鼻っ面にご機嫌な挨拶と参ろうか。」

タイガーアイ :
『如何にも。
 幸いと呼ぶべきか、あやつの矛先はお主ではない』

タイガーアイ :
『あるいは不幸と呼ぶべきか?

 治す者が先に死ぬなどファルスだ。
 希望に沿うものを見たければ励んで射殺せ』

”朧の狩人/残骸” シホ : Copy
「了解」

”朧の狩人/残骸” シホ :
《レネゲイド:オルクス/エンジェルハィロゥの入力を確認しました。
 銃身の適応を開始します…………》

”朧の狩人/残骸” シホ :

 モルフェウスシンドローム───物質精製能力の最大の長所は。
        ・・・・・・・・
 とどのつまり、得物に替えが利くことだ。
 幾十の刃を折られても、幾百の剣を造ればいい。
 幾千の弾を弾かれても、幾万の銃を撃てばいい。

”朧の狩人/残骸” シホ :
  Complete
《……完了。 ステータス:高度光学迷彩を確認。
 銃身及びRSH関連兵装に量子真空状態を付与。レートリデューサー機能を解除します》

”朧の狩人/残骸” シホ :
 しかし、ワタシの宿痾はそうではない。
 ワタシの全ては借り物だ。異能も、銃も、或いはこの感情すらも。

”朧の狩人/残骸” シホ :
《射手保護機能を一時的に凍結。
 警告。Taxus Protocol
   “擬似対抗種弾精製”を限定解放。
 周囲との安全距離を確保してください。繰り返します───》

”朧の狩人/残骸” シホ :
 だからイメージする。ワタシを手放していく感覚を。
 借り物の身体を手放し、ワタシ自身を透明に還す。
 遠く、遠く、幽かに揺らぎ───

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ───ただひとつ遺された、拭えぬ痛みを自覚する。

”朧の狩人/残骸” シホ :

 生命を運ぶ血潮が唸る。生命を奪えと囁く声に、己を溶かし同化する。
 ・・・・・
 成り果てた者を安らげる、実体無き死の声と化す。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 銃口を擡げ、照星を掲げ、照準を合せ、引鉄を引く。
 ただそれだけの行程ならば敢えて大仰な名を附す理由もない。
 だが、その手に握られた物理法則の檻に囚われず、無尽蔵の連射を可能とし、
 毒を込めたその矢を番えるなら話は別。
 それは死の儀礼ではなく、万人にとって備えなど敵わない死神の鎌になる。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 地を蹴り上げ、空へと舞い上がる。
 反転する天と地に標的の影を照星に捉え……

”朧の狩人/残骸” シホ :
 象無き災いの弾が音を立てずに空を切る。
 予測不能、回避不能、中れば命を蝕む魔の弾丸。
 それは当然の起結を導くために放たれた───

”朧の狩人/残骸” シホ :
───はずだったが。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「──────っつ!!!」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 許容量を超えた反動───!
 恐らくあの紫黒の災が原因の──────全身が激痛を─────いやダメだ、はやく集中を戻さないと────


───まずい、僅かに秘匿の因子コントロールが乱れた!

SYSTEM :
 なれば一歩を踏み出す黄泉の国の者共も、
 この世ならざる理を纏う幻想の国の者共も。

 視界に相見えぬ彼方より足音鳴らす死神の靴音に、気付いたのはどれだけいたものか。

 身構える余地などあろうはずもない。
 黒死の鱗粉は己以外を等しく蝕み殺す拒絶と孤独の波濤なれど、同時に視界を遮る黒のカーテン。皮肉にもコレを利用せんと思い立った“渇望喰い”こそが、まさに迫る死の可能性に身構えることを忘れていた。脅威を体感する暇もなかった。

SYSTEM :
 あるいは。
 ・・・・・
 本来ならば、の話だ。
 
 黒死の鱗粉の効果を、耳に入れる間もなかったことが。
 そのわずかな一瞬。

 射線を視認出来たことが、少なくとも都合3体。これより踏み出す不死の修羅どもにとっては意味を成した。

“渇望喰い” :
「───ボケがァ!」

“蝕みの君” :
『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 が。
 初動で致命的な遅れをとった両者の対応は奇しくも一貫している。

SYSTEM :
 死角外からの、予測不可能な攻撃。
 前者は『構え』の不可抗力として、
 後者は生物としての危機感の差異が、そのわずかなブレによる結果の変動をそもそも許していなかった。

 射線から敵を割り出すとか、それを手繰って反撃するとかではない。
 その余地がそもそもないとあらば、座して死を待ち仕切り直すがオーヴァードの常。
 彼らにとっての死とはかりそめだ。
 いや、そもそもオーヴァードにとって「再生の余地がある」状況は死などと呼ばない。
 ・・・・・・・・・
 生物の死は安くない。如何程紙屑のように使い切れるとしてもだ。

SYSTEM :
 しかしどちらも対処の内容としては、能動的か受動的か以外の違いはなかった。

SYSTEM :
 前者───。
 元より攻撃の姿勢に入ること最優先、目の前の“クソガキ1号/2号”を我が手で屠ることのみ意識を傾けていた自称“渇望喰い”は、その最中に横槍が入ること前提の姿勢を取っていた。

 つまり何が来るかは眼前含めて予測不可能だろうが、
 ・・・・・
 何が来ても共通した対応は可能だったということ。

SYSTEM :
                     ファンタジー
 稲光走り、炎熱が共鳴する、負けじ劣らじの幻想存在。
 人を喰らい、太陽を嘲る焔の魔獣が、
 拳の構えを維持したまま、地面を思い切り踏み躙った。 

SYSTEM :
    ・・
 瞬間、雷霆が壁となる。 
 地から昇るそれは、まさにこの世の常道を嘲笑うもの。 

SYSTEM :
  ソル・ドランク
“太陽を飲み喰らう”───天へと架かる雷光のカーテンはその具現か。
 実体を持つものを遮断し、あわよくばその手で焼き殺す電熱防壁だ。

“渇望喰い” :
「───あァ!? ガキじゃねェ! ボケでもねェ!」

SYSTEM :
 それ故に本能で防御を取ったため、

 雷霆を潜り抜けた死の雨が、己を構築するレネゲイド体に触れ穿った瞬間に漸く“射手”を自覚する体たらく。
 彼の咆哮は事此処に至って漸く狙撃手/死神の存在を感じ取る言葉であった。

 なれどそいつは死神を欺いて来た魔人狼。
 不測の対応然るもの。無駄な宣誓もまた同様。

“渇望喰い” :
「ポコポコ何処の彼方から湧いて来やがったテメェコラ………!
 不意討ちたァいい度胸、そして狙撃とはふてェ野郎よ!」

“渇望喰い” :
「こりゃァ殺すまで眠れねェ! 
 ───聞こえてっかァ! 殺されるまで明日の朝日は拝ませねェェェぞ!」

SYSTEM :
 後者───。
 元より視覚でも聴覚でも獲物を捉えること叶わず、
 翼の振動と共に広がる鱗粉こそが“触覚”となる“蝕みの君”。

SYSTEM :
 脅威を認識するよりも早く着弾した弾丸。
 先の光景を思えば貫通など不可能と諦めるより他なき徹底的な生体装甲。

 甲殻は剛腕を弾き、弾丸に瑕一つつかず。
    バラ
 物質を分解したところで傍から再生する、キュマイラ特有の生命力にモノを言わせた超防御だ。

 こちらはもはや気付く気付かないの問題ではない。
     ・・・・
 そもそも食らった事実を意に介していない。元より赫怒に塗れ、のたうち回るもの。今更その総量が変動したところで意にも介さない。

 槍に刺されている時に針で刺されても気にしないようなもの。
 それ故に、針が蝕むものを蝕み返す死毒であることなど気付きようがない。

 それは無傷ではないのだという事実を、彼/彼女は意に介せない。
 する必要がないからだ。少なくとも“暫く”は。

“蝕みの君” :『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 だが。
 それと共に、秘匿の因子が乱れた瞬間のシホの矮躯を、黒死の鱗粉が確かに捉えた。

 そいつが痛みに反応しなかったのは、先の理由以上に。
 逃がした獲物を“もう一匹”見つけたからだ。

“蝕みの君” :
   
 ───よくもそこにいた

   ■■らせてくれ

   望みはただそれだけだ

SYSTEM :
 足掻く腕が虚空を彷徨う。
 吼える口は、同時に今もなお旭と、僅かなブレを起こした方角の相互をゆらゆらと彷徨っていた。
 
 決めかねる、とでも言うべきか。

SYSTEM :
 ………これらはあくまでも一瞬の苦痛と想定外が分水嶺にならなかった方。

 では当然。
 それが分水嶺となった方がいる。

 別たれた死の雨。
 速射の順番の違い故に、たまたま後回しとなった紛い物の不死ども/雑兵ども。

SYSTEM :
 仇となったのは其方だ。

 死毒を携えた鉄の包み。
 火と音で彩られたソレらを、この不死どもは知らない。
 知ることのできる時代にいない。
 初めて見るものには反応が遅れるともいうが、故に彼らは初めて見たという自覚さえなく消し飛ぶが常だ。

           ・・・・・
 なれども武士は須らく殺意に聡い。
 姿を曝し、殺意を覆えなかった射手について、攻撃の正体を気取らずとも“死が迫る”ことを、骸たちはどうも適切に汲んだらしい。

鎧武者C :「───」

SYSTEM :
 一体が真ん中から風穴空けて消し飛んだ。
 刀で迎撃しようとした末路である。

 一体の頭部が吹き飛び砂浜に飛び散った。
 空洞を晒したそれは、跳躍/迂回など賢しき真似をした末路である。

 それらの個体が飛び散ったことを示す存在の痕跡は、黒い甲冑が解れ、どす黒い血の塊と、その中に沈む一枚の御札のみ。

SYSTEM :
 ならば一体。

 死を悟り、構わず踏み込む。
 迷いも侮りもせぬ。
 本能の赴くままに、去ねと猛る顔も見せぬ何某の傀儡/骸武者一騎が、死神の鎌に胴体を泣き別れにされる絶死の空間を潜り抜けた。

タイガーアイ :
『着弾2、撃破2。───未撃破1』

タイガーアイ :
『狙いはアレか。
 いや、あの“ホデリ”とかいうのだな』

SYSTEM :
 茶化しともとれる淡々とした状況報告をよそに、間合いを越えた骸武者は、わき目も振らず白狗の下へと走る。

 鞘を離れて煌めくひと振りは、
 誰ぞを切る前より血に濡れていた。切らねば切られる血みどろの世の名残。
 亡者の太刀、妖怪百鬼夜行の馴れ果ての一振りなぞ、このような血染めこそが相応しい。

鎧武者C :「───!」

SYSTEM :
 その間合いに入る前に、たまたま視界に入った“邪魔なもの”に。
 骸武者の本能から来る判断は、“今すぐ斬るべし”と屍躯に勅命を下したらしい。

 咆哮代わりに骨の躯を鳴らし、鎧を鳴らし。
 両の腕で携えた刀を、大上段から振り翳す。

 血に濡れた一振りは怨念と執念にも塗れる。生者の足を引く毒だ。

荻野目 旭 :
 後方から破裂音。
 眼前の鎧武者が消し飛ぶ、頭を吹っ飛ばされる。
 誰かと一緒に戦っている/僕にとってのベスト状態を取り戻したことで帰ってきた冷静さが、あっと声を出すことを堪えさせた。

 ……“残骸”、シホさんの援護射撃だ。

荻野目 旭 :
 振り向けばいてくれるだろう姿を、領域を広げて観じることだけにとどめる。
 ありがとうございますとか、そういうのはいろいろと後回し。

 ……いまは殺意と敵意が四方八方で交差するこの戦場を把握して、適切な橋渡しに集中しないと!

久外境耶 :
 新手──いや、伏兵か? おしゃべりの坊ちゃんが動揺しないのを横目に、当座の敵ではないとアタリをつける。
 背中の心配がいらないのは結構! なにせこっちは運良く死に損なったやつが一目散に向かってくる最中だ。

久外境耶 :
「人気者はつらいな、ホデリ?」

 にやついた声を投げて、白い姿を背に庇う。

 ・・・
「剥がしは任せろ。ああ、知らねえか──」

久外境耶 :
 エグザイルの形状変化。だが金属質の外骨格は敵を穿つための剛ではなく、しなやかなフォルムは衝撃を削ぐための柔でもない。
 ヒトのままでは耐え難いもの。ヒトでなければ想わないもの。
 そう──

久外境耶 :
 肉薄する鎧武者。死を免れ、死を齎すもの。
 逃れようのない凶兆が、すぐ傍まで迫っている。

「ちゃんとコッチ見たな? 良い子だ、来いよ来いよ──!」

 逆関節と化した脚を、今度は跳ぶためではなく重心を据えるために砂地へ埋める。
 引き、振りかぶるは無手。対するは大上段からの兜割り。

久外境耶 :
 スライサーに手を伸ばすのにも似た自滅行為は、だからこそ喚起させる。頸椎に這うざわめき……死の跫、呼び聲を。

 血のように全身を巡りながら、冷たく凍りついた気配。
 骨と肉の隙間を貫き、感覚と情動を終わらせる一体感。

 ──そう。これが……これこそが!

久外境耶 : 
 血と妄念を塗り重ねた刃が落とされる、その瞬間。
 前腕の外骨格を突き破って現れた氷の杭が、血濡れの刃を受けとめた。

久外境耶 :
 サラマンダーの真髄は熱量操作とは言ったものだが、死に憑かれたレネゲイドに残されたのは、この一芸だけ。
 あえて名付けるのなら、熱情変換。蓄積した死の冷気を、実体に換えて排出することが"ラッキージンクス"に唯一許された護りのすべだ。

久外境耶 :
             アナザー
 故に、この姿は形状変化:異──
 死の間際で踊るのに、最も適したカタチというワケだ。

「──オラァ下がりやがれ!」

 爆ぜるように噴き上がった冷気が、鍔迫り合う刀めがけて杭を射出する!

SYSTEM :

 その目論見を阻むものを前にして、六銭も持たない不届きものを切り裂かんとした不死の修羅。
             シェイプシフター
 化外に相対するのは、人が化けた外れ者。
 なれども根幹が人であるなら斬れるものに違いはない。
 不死の修羅に考える頭脳などない。ただそこにあるのは、傀儡にしてなお残る本能のみ。

 誇りと執念と妄想で、人を斬り殺すが生業の武者行。
 亡者の何もない空洞の瞳が、言外かつ雄弁に告げている。
 ………その素っ首叩き切って息の根止めてくれる───と。

『ホデリ』 :
『素直には喜べぬな。
 忘れ去られたものとばかり思へが………』

SYSTEM :
 用心せよ、と白い狗が叫ぶよりも。
 ・・・
 剥がしの意味に、む、と眉を顰めども。

 そこが鉄火場と悟って黙する方が早い。

SYSTEM :
 誰が識るかはさておいて。
 人気者に群がり留まる“追っかけ”を追い立てる役の名乗りとしては、
 なるほど適任と言えば適任だろう。

SYSTEM :
 兜を叩き割り、脳髄諸共ぶちまけようとした腕の動きが不意に止まる。
 激突の感触。/郷愁の理解。
 血に塗れた凶刃が空で止まり、望む光景を映し出さぬわけは勢い不足か。
 己の怠慢か、と。不死の武者が刀を握る腕に力を籠め、初めて気付いた。

SYSTEM :
 否、違う。
 止まっているのは己ではない。
 ・・・・・・
 止まっているのは、目の前の世界だ。 

SYSTEM :
 生き物の熱など無縁となって久しい武者が、たった今感じた郷愁。
 温かみの対極にある、二度と起き上がることのないものにのみ許される停止った世界。

 死体は熱を失うものが常なれば。
 己の刀を食い止めていたその得物。熱を宿さぬソレは、死の発露。
 死を追い求めるその熱を、最も適切で普遍的な死の理に変えて顕現させる。

鎧武者C :「───!」

SYSTEM :
 死を顕現させておきながら、化外に死する様子はない。
 なるほどそれは化物だ。
 形が違えど人と侮り、人と信じて斬りかかったこの生き物の落ち度だ。

 メメント・モリ
 死の結末を想う───。

 普通に嘯くだけならばまだしも、オーヴァードの世界でこれを嘯いたものが、平気で生命活動を持続させるその矛盾。
 存じておくべきだったのだ。そもそもオーヴァードにとっての死はヤスいが。
 化物にとって、死は遠いものでしかないのだと。遠いが故に、凍て付くのではなく焦がれるのだと。
 

SYSTEM :
 死者にとっては何より普遍に等しき、
 決して動き出さぬ停止の世界。

 その形がどてっぱらに振るわれようものならば、鎧武者は思わず“たたら”を踏む。
 ───踏めども即座に狙いを変えた。本丸が堅牢堅固なれば、狙うは外堀。噛みつき返された直後の理性的な反応は、死に恐れず傷を厭わず、なりふりも構わず踏み込む鎧武者のものにしては矛盾している。

 ───なれば今までの動きは骸の動き。
   その狙いを変える動作は従者の動きだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
───空中で辛うじて体勢を整え直し、腹から地に叩きつけられる憂き目をなんとか避けて着地したのは、怪物が死人と得物を交えたのとほぼ同時のことだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 全身が痛む。銃を支えていた右腕、死毒の影響を最も受けたらしい肺、着地で擦れた膝頭。
 戦闘続行にはさしたる問題ない。……しかし、先のような秘匿による奇襲をもう一度実行する余裕があるかは怪しいところだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……そんな些事よりも深刻なのは、まさにタイガーアイが指摘したところ。
 死は、それを受け容れた者からかえって遠ざかっていくものらしい。
 成り果てるとも本懐は不滅か、武者は去る日の境地を忘れてはいなかった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……言ってくれるな。状況は此方も把握している。
 鱗粉の毒性を見誤ったのが原因だ。」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……しかし、侮られたものだ。あの忠犬はよほど眠れぬ夜を過ごしたいらしい」

タイガーアイ :
『先の邂逅ではヤツの射程圏内ではなかった。
 ・・ ・・
 追跡と戦闘は感覚が違うということだ』

タイガーアイ :
『以上。落ち度も損壊も軽微であるに、二の轍は踏むなよ。

 以降分かっていて踏むならば、踏む甲斐というものを見出してから踏み抜け。
 しょせん、オーヴァードにおいて肉体に限った死は易く安いもの』

SYSTEM :
 オーヴァードにとっての死は別のものを指すのが“自然”だ、と。
 あなたの相棒はいけしゃあしゃあと波紋を広げ、小さく明滅した。

 此方に視線を向けた“竜”になんとも思うところがあるらしいが、それを口にすることもなく。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───死神も楽ではないものだな」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……タイガーアイの分析通り、この“失敗”による落ち度も損壊も軽微に留まっている。
 前衛の彼らは能力面において優秀だ、たとえ鋭利を喪っていない武者が相手とて、肉体の死など踏み越えた超人たる彼らが遅れを取ることはあるまい。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 遥か前方、2体の怪物どもについても同様。その威を大幅に削がれながらも、ワタシの放った銃弾は傷を創るに至っている。元より牽制が主目的だ、そちらも及第点といったところ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ただ、少々問題があるとすれば──────

木口龍 :
「……ぁー……畜生……」

 咳込みが酷い。体の内側から、肺を抉られているような感覚。
 それに加えて全身に立ってられないほどの衝撃が走る。──全神経がその痛覚でもって訴えている。

木口龍 :

 ──呵呵呵々ッッ!! コイツはいてぇ、いてぇよなぁ……我が代行者、獄卒の槍よ!

 生存本能を。あるいはこれを行うコイツを殺し尽くし、死後裁判に引き摺り出せと。

木口龍 :
 嗚呼、肺が痛ぇ、喉も痛ぇ、というか主に全身が痛ぇ……。
 畜生どうしてこんな目に。
 こっちに一目散に向かってくる甲冑どもが次々とぶっ倒れていく。
 レンズ越しに辛うじて見えたものは、弾痕だ。いや、何でもありの世界だ。レーザーの可能性だってある。

木口龍 :
 とはいえ今現状、把握出来る範囲内に、自分以外に得物を持っている者はいない。
 警戒はしなくていい。
 問題は、一匹撃ち漏らしが出ているってことだ。……オレはソイツに照準を合わせ、一切の躊躇なく引き金を引いた。

木口龍 :
「邪魔くせぇんだよ……!
 クッソいてえんだよ。
 コイツが当たったら速やかに死んでくれ……!」

 ……内臓がぐっちゃぐちゃに掻き混ぜられるような痛みも、もう慣れている。
 いや、慣れている……? こんな痛み、いつ経験したって慣れないものだろうよ。

 だからオレが感じてる激痛をくれてやるし、それこそが地獄で獄卒によって齎されるものであるとも知るがいい。
 意志のない人形のようだから、そんなものがあるかは知らんが──。

木口龍 :
 ──弾丸がみえるとか言い出す化物でもなきゃ、……とりあえず命中(あた)りはするだろうよ。

SYSTEM :
 なれば、武者の思考から従者の思考に代わり。
 たたらを踏んだ直後に矛先を変えたその鎧武者。

 彼の目に映ったものは、最もこの中で隙を晒していた個体。
 隙だらけな素人ではなく”彼”を狙ったことに理由があるのかと言われれば、定かでないが。

 外堀を埋めるにあたって、簡単に倒せるだろうと踏んだ龍の下に、鎧武者がその気勢を上げようとしていた。

SYSTEM :
    ・・・・
 そう、していた、だ。
 矛先/銃口はほぼ同時、あるいは”その男”が僅かに先回りして向けられていた。

 鎧武者が駆け出し、男が八つ当たりめいた未知/既知の理由を得物に込めて狙いを定める。
 まさに西部劇よろしく、得物を抜いて撃つ/斬る速さ比べというやつだ。

SYSTEM :
 刀は引き抜き、踏み込み、斬る。
 その三工程で人を殺す。

 だが銃は引金を引いて撃つだけ。
 工程数が一つ違う。
 然るに鎧武者は間合いに近付く前に“先”を取られる。

 未知ではなく既知となった、人を殺せるだけの、人が持てる程度の火器で、果たして死から遠ざかったこの武者が屠られるのか。
 残るはその、先に抜いて倒せるのかという、光景だけ見れば不安しか残らない一点だが───。

鎧武者C :「───、」

SYSTEM :
 外部破壊力では甲冑の一部を射貫くだけ。骸骨の四肢を飛ばすでもなく、阿修羅を動かす頭部と胴体を消し去るでもない。
 威力の話をしてしまえば、それは控えめに言って“チンケ”としか言いようがない。

SYSTEM :
 もちろん外面の話だ。

 木口龍が知っているはずの/知らない苦痛は形となって彼を襲い、それを押し付けようという弾丸が叩き込まれた時に、等しく鎧武者さえも襲う。
 唯一、先の死の雨を逃れたこの従者が、同じ末路を仰せつかった者共と同じ弾丸に、ないはずの心の臓を狙い撃たれた時………。

SYSTEM :
 ・・
 ソレは起きた。 

SYSTEM :
        ・
 内側で不可視の死が爆ぜた。
 オーヴァードである限りは避けられない一つの共通項。

 どんな怪物であっても血液に等しく流れるもの。
 生き物に等しくある死を裁く夜摩の大公めいて、その弾丸が捻じ込まれたオーヴァードは等しく身に持つ罪業を測られる。

SYSTEM :
 そんなことを今は毛ほども知らない“なにわ探偵”が、まさかそこまで考えて射撃したのかは知らないが。

 骸武者も、骸武者を操る者も。
 その点で言えば、裁かれて有り余る罪業の権化なれば。
 鎧武者は、その重みある甲冑も刀も、黒い砂のように内側から紐解かれ、爆ぜて消えるより他にない。

SYSTEM :
 ………唯一遺したものもまた変わらぬ。

 血に濡れた一枚の札だけ。
 少なくともそれを中心に象られ構成していた骨の体躯も甲冑も、悉く、罪業喰らいの弾丸に撃ち抜かれた。
 ・・      ・
 超人の持つ銃が、人を殺すだけで終わるはずがない。
 そこのところの読み違え、一度たりとて許される場所ではなかったということだ。

『ホデリ』 :
『面妖な道具よ………。
 あれで人や死ぬるか』

『ホデリ』 :
『………そしてあの札………』

SYSTEM :何をば思うところありと言わんばかりの、しかし少なくとも戦闘中に気を紛らわすものではないと口を閉ざしたホデリとは一方で、“問題”を片付けたのを目撃したタイガーアイの反応は簡潔。

タイガーアイ :
『シホよ』

タイガーアイ :
『あの男、しばし目を離すな。
          ・・・・
 どうもおかしいのは振る舞いだけではない』

”朧の狩人/残骸” シホ :
「──────」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 去来した胸騒ぎは、果たして空想の竜に見初められたことへの武者震いだったのか、或いは。

 今は判別のしようがない。賢者の忠言に応える気の利いた言葉も、今は持ち合わせていない。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 Copy
「了解。そのようにするが───」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …現状に於ける最大の問題は、
 ・・・・・・・
 曲がりなりにも交戦能力を見せた胡乱な男ではない。
 それよりも、いま問題とすべき方は───!

タイガーアイ :
    ・・・・
『そう。ちぐはぐなのだ』

SYSTEM :
 曲がりなりにも、とは言うが。

 あんな尻餅ついて無様に倒れ、恐慌状態に陥り挙句の果てには自滅まで行く男の射撃としては、あまりに動作に躊躇いがない。

 タイガーアイとてコレがノイマン・シンドロームを始めとしたデータ上の完全なる模倣から来る“演技/擬態”である可能性を捨ててはいない。
 彼の疾患/特質がなんであるか、触れただけで見抜けるほど、この賢者はオーヴァードという二足の草鞋を履いた者どもの“実例”を識ってはいない。そもそも9割9分のオーヴァードどもがそうだ。

SYSTEM :
 ………そしてコレは当然のことながら、今、論議するべき問題ではない。

 それを暢気に論議している理由は単純だ。

タイガーアイ :
『そして初志貫徹と言ったところか。

 あの小僧、今宵は大凶方ではないか?』

SYSTEM :
 ・・・・・・・・・・・・・・
 自分/シホに死線が来ないからだ。

“蝕みの君” :

『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 大きく、息を吸い込む。
 紫黒の鱗粉うごめく中、ただ一人、呼吸と力の行使に害のない生き物が、
 赫怒か喜悦かも定かでない、尾を振り回す動きと共に、空気を戦慄かせた。

SYSTEM :
 猛る咆哮と共に、面を上げた“蝕みの君”の口元でウイルスの鱗粉が渦を巻く。
 途方もない肺活量、振動と共に形成される風の“球”。
 色のないはずの空気が、どす黒く変色して形をとっている。

 それは颯のお覚醒めに伴い一時中断されていた、ファンタジーにおける『ドラゴン』の共通攻撃手段であり標準装備。
 これがそこいらの生物と比較して、あまりに隔絶することを、これ以上分かりやすく示す、喉を通り解き放たれ、あらゆるものを焼き焦がして破壊する殺戮の吐息。

 ………だが解放の間際を待つソレは、分かりやすい高熱などではない。
 なんでもない空気を、そこに漂う自分の鱗粉ごと偏向・収束させ。超高密度の『空気弾』に変える。

SYSTEM :
 そしてソレを───。

SYSTEM :
 解き放つ。
 ソニックブーム
 真空波を伴った波濤球が、爆音と共に砂煙を巻き上げ、狙う先に叩きつけられた。

SYSTEM :
 ・・・・
 たまたま、先程鎧武者を処理する勢いで射線から遠ざかっていた龍だけは、
 その投射された空気弾/空気砲、形無き殺意のかたまりからも難を逃れる。

 そしてそいつはシホに気付きこそしたものの、
 射程が足りぬと見做したか、単に近くにいたものを目障りと見做したか。
 首をあれこれ左右に傾けていた時点で、攻撃優先順位を従来に戻したらしい。言い換えると、その程度には攻撃の初動は緩慢で、予測のつけようがあったが………。

SYSTEM :
    ・・・・・
 即ち、旭かシホか。
 無自覚に己を蝕み返す、穢れを爆ぜさせしイチイの魔弾の持ち主か、
 今の今まで追いかけに追い掛けて来た“もう一人”か。

 その中で彼/彼女は前者を択び、そいつの排除に意識を割いた。

SYSTEM :
 だが実際、直撃したとて傷はさほどではない。
 圧縮された空気の大砲は人体さえ軽く浮かせて弾き飛ばして貫くだろうが、
 それは即座のリザレクトを要するほどのものではない。
 オーヴァードにそれをさせたいのならば、もう少しは殺す気概が必要になる。

SYSTEM :
 しかし、その射線上をまるごと貫き引き裂く咆哮弾に“充てられた”のならば、その瞬間悟りもしよう。

 “蝕みの君”───世界に溶け込むことの適わぬ紫黒の穴。

 それが世界に溶け込めない理由を。
 このものの死黒の鱗粉は、世界に蔓延るレネゲイドと共存できない以上に、人体を撃ち抜いた時、ある作用を起こす。

SYSTEM :
   ・・
 ───殺意だ。

SYSTEM :

 死への、孤独への、あるいはもっと“つまらない”ことへの。
 ・・
 恐れから、コレを向けるべき対象に向けさせる。

SYSTEM :
 事と次第により、それは自らに。
 あるいは、世界の“あるがまま”に馴染めぬこの魔竜に。
 
 意図したものではなく。
 ただ、そいつの“あるがまま”がそうというだけ。残酷で理不尽な、自然のカタチだ。

 音を切り裂く暴風の波濤。
 直撃は即ち、“あるがまま”を蝕む狂奔への御招待。

荻野目 旭 :
(──いけない、来る……三廻部さんが近い!)

荻野目 旭 :
 視線/死線がこちらに大きく開いた顎を向けた。
 あの最悪の日に見た、破滅を巻き起こす風の唸り声。
 漫画の中でしかお目にかかれないような/だけど実際にいまこうやって起こってしまっている、
 冗談みたいな存在質量がもたらす、効率なんて投げ捨てた圧倒的な大破砕!

荻野目 旭 :
 僕は絶対に間に合わないと直感する。
 悲しいかな、死ぬほど頑張って鍛錬してもフィジカルはまったくもって伸びなかった、

    諜報活動向きすぎる
 このか細くてなまっちろい体じゃあ無理だ!

荻野目 旭 :とっさに視線を向ける──あの直撃を受けきった少年へ。

荻野目 旭 :
 そのまま数歩すり足で後ずさり、指先をまた噛んで裂く。
 三廻部さんへそれを向けながら、ただ“ラッキージンクス”へ視線で示す──

荻野目 旭 :
 ──彼女のフォローに回ってる間、僕のことをよろしくお願いします!

久外境耶 :
 毒の息吹が爆ぜる。……そう、息吹に過ぎない。死毒を帯びていようが、高密度に圧縮されていようが、空気の塊だ。
 そして、解き放つというたった一工程だけで、遍くものを蹴散らしていくだろう。嵐が、何物にも阻めないように。

久外境耶 :
 生まれ持った性能が、有象無象とは桁からして違うのだ。だから息を吸って吐くなんていう、当たり前の生命活動が破壊に結びつく。

 ああ、また──凍えていく。

久外境耶 :
 計算づくのアイコンタクトをせせら笑う。

「はん、もう仲間面か。いや……」

久外境耶 :
 ──こいつ、分かってやってるな。

 おれが成り立てのケツ持ちしてるのも、
 こいつらを見捨てるつもりがないのも。

久外境耶 :
 気に食わねえ──気に入った! 顎で1号を指して"はよいけ"で返す。

荻野目 旭 :(おあいにくさま……使えるものは親でも使うのが信条です!)

荻野目 旭 :
 ぐっと歯を食いしばって全力の不敵な笑み!
 絶対やらないことを脳内で口走って自分で笑いながら、三廻部さんに手を差し出した──彼女の間合いに風が入り込んだ瞬間が勝負!

三廻部 颯 :
「う、わ───っ!?」

 一方、その1号は圧倒されていた。

三廻部 颯 :
 それもそのはずだ。
 ついぞ先ほど"目醒めた"少女にとって、目にする全ての非現実は初見なのだ。
 無我夢中で蹴り飛ばしたマ……"マ何とか"はともかく、あっちのドラゴンのことなんて分からないまま。
 
 とにかくそれが非常識の存在であることは事実だ。
 受け入れるしかないのは頭でわかっている。

三廻部 颯 :
「どっ」

 "どうしよう!?"なんて声を出そうとして振り向く。
 少女の視線は二度泳いだ。
 一つは"はよいけ"と顎で示す、"守ってくれたひと"……そういえば、名前を聞いていない。
 もう一つは友達で、クラスメイト"だった"旭くんが差し伸べた手。

三廻部 颯 :
 ───私の体に起きた変化。

 私を私でなくしたモノ。
 それは"稀なる現象"ではなく、日常という光によって見えなくなった影なのだろう。
 彼はその影に身を置いていることを、ようやく理解して、実感した。

 ……最もそれは、
 今までの印象が裏返るようなものではなかった。

三廻部 颯 :
(───っ……、
 なにがなんだか、わからないけど……!)

 颯が、どんな姿になっても颯であるように。

(……旭くんは旭くんなんだ、きっと!)

三廻部 颯 :
「いっ、1号いきまーっす!!」

 エンジンのように唸り声をあげる心臓を押さえつける。
 それを可能とするのは小さな勇気一つ。
 気持ちが和らいだ言葉を口にすれば、落ち着いて周りも見えてくる! 多分!

 差し出された手に──自分の手を伸ばす。
 "刀"だったものを、繋ぐ"手"にかえたそれで掴みにいく。
 ぐっと足に力を入れて……いつでも動けるように!

 ・・・・・・
(なんとかなる!
 ・・・・・・・・・
 なんとかしてくれる!!
 ・・・・・・
 なんとかする!!!)

荻野目 旭 :
 強いていつもどおり/学校でおはようございますと笑う時の笑顔をつくりなおす。
 こわばっていても笑いは笑いだ。

「──その調子です!」

 剣に変わった彼女の手のひらが拳になり、そして開かれる。
 つないだ手をぐっと握りしめて、同時に領域に干渉して僕自身の足元を思い切り固定。
 渾身の力で──僕の後ろに引っ張り入れる!

荻野目 旭 :「お願いします……“ラッキージンクス”! 幸運おすそ分けしてくれるって話でしたよね!?」

久外境耶 :
「かもなァ!」

 お手手つないで仲良しこよしのガキどもを後目に、波濤の前へ。砂を捲って押し寄せる暴威に身を晒す。

久外境耶 :
 迫る暴風へ、拳を向けるように手の甲を突き出す。限界まで引き寄せる/待ち構える。
 直撃の瞬間、杭打ちで開いた穴からジェットのように冷気が噴き上がった。足りない出力を瞬発力で補い、真向かう威力を殺しにかかる……!

久外境耶 :
 死にはしないが、それだけだ。オーヴァードの靭性を削り、死の淵の傍へ追い立てる威力はある。相殺には至らない。
 
「ち……!」

 大きく弾かれた身体を空中で反転させて、関節の発条で落下の衝撃を和らげる。距離にして数メートル。

久外境耶 :
(……やられた。"手"は届くが、そう何度も切れる札じゃない──)

 面倒なコトになったとぼやくよりも先に、ダントツの厄介はやってきた。

 ──理性を超える感情が、精神の奥底から湧き上がる。

久外境耶 :
「が……ァ」 

 真正面から鱗粉を浴びた額を抱えて、揺れる身体を垂直に引き留める。だが、直に揺さぶられているのは中身のほうだ。

 頭蓋の中を蝕み、胸郭の内を搔き毟る情動。
 その正体は殺意、その源流は恐怖。あるがままの己を蹂躙される屈辱に、内心、たまらず牙剥く笑みが浮かんだ。

久外境耶 :
「ハ──ハ、ハ……! くだらねえ誘いくれやがって、いいぜ乗ってやるよドラ公ォ!」

『ホデリ』 :
『ぬ………境耶!』

SYSTEM :
 そう。

 これのまことに脅威となるものは、破壊力ではない。
 瑕一つ付かぬとて、黒死の鱗粉が齎すものとは、即ち感情の励起。
 持ち主の持つ衝動そのものに近しき因子が、大気に混ざって砲弾と化している。

 印象通りの行いに極めて近いが、
 決定的に異なる喜悦/敵意の牙剥く笑みに発される声は二つ。

“蝕みの君” :『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :
 乗ってやるよ、の声。
 
 孤独を喚き散らす竜が、己を矛先に定めたものの態度を認めると、見えるかも定かでない目を向け、口を開き、猛り吼えた。
 嘲りではない。戦意でもない。さりとて本心でもないが。

SYSTEM :
 ・・・・・・ ・・・・・・・
 近付いて来い/己はここにいる、が。

 あるがままを蝕む狂奔の正体だ。

荻野目 旭 :(いけない──僕があれに巻かれなかったのは正解だけど、彼は!?)

荻野目 旭 :「見たところ……怪我はなさそうですけど! まだ仕事してもらいますよ……!」

三廻部 颯 :
「二号さ───わっ!」

 引っ張り入れられながら視線は境耶と呼ばれた人──の方へ。

三廻部 颯 :
「あ、旭くん! なにあれっ!」

 境耶さんに起こった変化がどういうものなのかをいまいち把握しきれなかったのか、思わず旭の方へ聞いてしまう。
 "仕事してもらいます"って言ってるけど、あれ大丈夫なのかなあ?!
 ……鱗粉に触れるとああなっちゃうのかな? もしかして、私もああなってた可能性?

荻野目 旭 :
               ・・・・
「……たぶん、あいつが吹き出してたボワボワの影響です。
 あれに巻かれると、あいつを視界に入れたくなっちゃうんでしょうね!」

荻野目 旭 :「できれば、三廻部さんもあれに巻かれないことが一番です! あの眼鏡のおじさんみたいにならないとも限りませんしねっ」

三廻部 颯 :
「すっごい目立ちたがり屋!」

 冷や汗を垂らしながら拳をぐっと握る。
 "あの眼鏡のおじさん"──と振り返り、「あ、あいう……」と追加で口から漏れる。

久外境耶 :
「誰にナマ言ってやがる。次はおまえの番だぜ、僕ちゃん」

 衝動を飼いならすのは慣れている。
 欲望を手綱に、衝動を満たすべく理性を用いる我流のRC。
 この"あるがまま"を向こうのカタチで上塗りするってんなら、やることは決まっている。
               や
 乗ってやるよ──ただし、おれの闘り方でな!

SYSTEM :
■手番処理
 荻野目 旭が行動を宣言します。

SYSTEM :
■イニシアチブ
 宣言可能なエフェクトがありませんでした。
 他宣言を確認後、メインプロセスに移行します。

SYSTEM :
■メインプロセス
 任意の宣言を行ってください。

荻野目 旭 :僕ですね! マイナーアクションで戦闘移動しますっ、“ラッキージンクス”のいる[C]に!

荻野目 旭 :それで……!

荻野目 旭 :
メジャーアクション:
 うずのしゅげ
▼幻媒花/《タブレットLv3》+《多重生成Lv3》+《癒しの水Lv4》+《戦乙女の導きLv1》
 対象:“ラッキージンクス”、“残骸”、三廻部さん、眼鏡のヘンな人
 効果:HPを[4D10+2]点回復。
    対象の次のメジャーアクションD+[1]。
    そのメジャーアクションが攻撃の場合、攻撃力を[+5]。

荻野目 旭 :戦闘支援します! 振りますよ振りますよ!

荻野目 旭 :4d10+2 (4D10+2) > 26[9,1,9,7]+2 > 28

system :[ "ラッキージンクス"久外境耶 ] HP : 127 → 131

system :[ 荻野目 旭 ] 侵蝕率 : 34 → 43

荻野目 旭 :
(戦況は……たぶん悪くない)

(だけど──“ラッキージンクス”は吹き飛ばされたまま。
 このまま三廻部さんのフォローにだけ回っていたら、機能不全を起こすのは僕のほうだ)

system :[ ”朧の狩人/残骸” シホ ] HP : 10 → 23

荻野目 旭 :あの鱗粉は僕と相性が悪すぎる。貴重なリソースを僕のよわよわパンチになんて使っていられない。……くやしいけど。

荻野目 旭 :
「……わかってますよ。僕も僕の仕事をします」

 呟いて、三廻部さんの手を軽く握る。
 ほんの数分前ふつうの女の子だった子にこの死線は早すぎる。わかってはいるから、
 ・・・
 だけどまだ踏ん張って、と勝手な願いを込めて。

荻野目 旭 :
 手を離して、後方に下がる。
 “蝕みの君”が僕とシホさんに惹かれるのなら、その範囲が三廻部さんに届かない場所へ行けばいいだけだ。
 そうしながら、自分の手のひらに噛み付く仕草。

荻野目 旭 :
           ・・・・・・・・・・・・・・・
 かみ切った指先から、皮膚を突き破るように花が咲いた。    ウズノシュゲ
 黒朱子でこしらえた変わり型のコップのような、その花の名前は翁草という。

荻野目 旭 :
 僕が痛いって錯覚した思い込みから咲く、幻媒花。

荻野目 旭 :

「“さよなら、ひばりさん、さよなら、みなさん。
  お日さん、ありがとうございました──”」

荻野目 旭 :
 花に祈りのようなおとぎ話を灯した偉大な詩人の物語を諳んじる僕の、傷口と認識した場所から花が咲く。
 現実に現れたドラゴンほどじゃないけれど非現実的な、タネもシカケもある奇跡。

荻野目 旭 :
     《戦乙女の導きLv1》              《癒しの水Lv4》
 用意された微弱な昂奮材の塊に包帯なんてメじゃないキツめの自己回復促進剤を混ぜる。
 体内工場から生産された特製のお薬を、
                  《多重生成Lv3》
 花という僕の中で一番明確なイメージとして固形化。
 僕という体内工場から生産された薬だ。メイドイン旭、出力低めお薬。

荻野目 旭 :
 手のひらを突き破るように咲いた、
 赤く、柳のように枝垂れた花へふうっと吐息。
                    《タブレットLv3》
 花が背負うように生やした銀毛、その果実をそっと飛ばす。

荻野目 旭 :
 まだ吹き荒れる風の残滓すら利用して舞う薬の果実は、いま死線をともにするひとたちの体にぽつりと落ちる。
 生体部分に宿って、瞬時に皮膚から染み入り、全身を充たす癒しの果実。
 それが……あの敗走の日から必死に構築を試みてきた、非効率極まりない、殺さず活かすための戦法だ!

system :[ 荻野目 旭 ] HP : 24 → 16

久外境耶 :
 まだ塞がっていない杭打ちの穴から、靄のように冷気が漏れていた。死を湛える空洞へ、御伽の果実が落ちていく。
 すると修復の遅れていた形状が、あるべきカタチを取り戻した。物珍しがるよう、内心で目を眇める。

「……ほォ」

 死毒の鱗粉は直接浴びるまでもなく、既に一帯を蝕んでいた。力を振るう──オーヴァードとしての"あるがまま"を実践するだけで、損なわれていくように。

久外境耶 :
「治したぶんだけ失うとは報われないな。それとも釣り合いが取れて安心したか?」

三廻部 颯 :
 手を握ることは幾らでもあった。
 友達と繋いで歩く時、体操をするときとか、色々と。
 でも──こんなに緊張した"手繋ぎ”は初めてだ。
 それは多分、いい意味でも緊張じゃない……本当ならしなくて良かったはずの緊張だ。

三廻部 颯 :
(……がんばるっ!)

 颯は別に心が読めるわけではない。
 だから旭の”勝手な願い”だってわかりようがない。
 だけど──手を通じて感じるものは、颯にしっかりと意志を伝えたような気がした。
 その手が離れて、颯は一度後ろを振り向いて──ちいさく頷いた。

三廻部 颯 : 
 ぎょっと驚かなかったのはそういう覚悟を決めていたからだ。
 

(……だんだん分かってきた。
 たぶん、”あの人がくれた”ものは……ここにいる人たちが使っている力の一つなんだ。
 2……境耶さんも旭くんも、後ろのメガネのおじさんも、遠くから飛んできた何かも)

三廻部 颯 :
(……お荷物にならないようにしないと!)

 花。
 砂の花を咲き誇らせた少女は──体を満たす力を、たしかに感じつつあった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 転化した毒は薬になり、薬も過ぎれば毒となる。
 毒を携えた裏切りの名の持つ花を、
 “ナイトホーク”の心象が撰び採った意味については、さておき。

 レネゲイドに課せられた命令が、ワタシをあるべき容へと押し戻す。
        いやし
 疵口に染み入る毒薬が、ワタシを戦場へと引き留める。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 現状で最も懸念された事項は問題なくクリアされた。相手が御伽話の竜ならば、主人公は騎士か友達のいずれかに救われる。およそ当然の帰結というものだ。
 ……どうやら連携は問題ない。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 その帰結を導いた立役者の一人とも言える“ナイトホーク”が、連携を手放し死線に少女……と、件の怪しげな男を残してでも後退を選択した意図は解る。
 危険な選択ではあるが、変数にアンノウンが多い現状において、見えている変数に限れば最もリスクを減らす選択に違いない。なにせワタシの近辺、或いはワタシ自身が敵の狙いなのだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………。
 この期に及んでなお、戦場に明らかでない変数は多い。その変数が、或いは、彼女に…………

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………今は次に備えよう。
 受け取った薬の一部を銃身に付与する。これが敵を撃ち払う相乗毒となればいいが、さて。

木口龍 :
 咽る度に、肺が切り裂かれていく。
 肉体を動かす度に筋繊維が千切れ噴血してゆく。
 眼は充血し、涙袋よりは血涙が流れてゆく。

木口龍 :

 ──だが、ある時からそれはゆるりと収まった。

木口龍 :
 体が楽になった。薬をもらったとき、風邪の倦怠感が楽になった、そんな感覚だ。
 見れば、少年が"花"となっていた。その身を呈し、自分も辛いだろうにそれを咲かせていた。
 俺たちはその果実の恩恵を預かったのだ。

木口龍 :
「す、すまねぇ……助かった。ありがとう。恩に着る。
 だけど、アンタは大丈夫なのか。──その、アンタも、猛毒にやられてんだろ。
 こんな捨て身の三下に、身を削ってくれてやらんでもいいだろうに」

木口龍 :
 オレたちはソイツに"活かされている"と感じてならなかった。
 ならば報いるべきだろうと、背景(ガラ)にもないままに奮起するしかないのだ。

木口龍 :
「なら、……早いとこ、やらないと。
 今目覚めた子も、負担、デケぇんだろ……げっほごっほ」

 ──自らを蝕む閻魔の魂に誓うのだ。

木口龍 :
「……げほぁっ」 盛大に吐血しながら。

木口龍 :つーか回復してねえ。回復させる。

system :[ 木口龍 ] HP : 16 → 25

『ホデリ』 :『しまらず…だな…』 あらゆる意味で。

system :[ 木口龍 ] HP : 25 → 27

久外境耶 :こいつさぁ

久外境耶 :いやいいわ

荻野目 旭 :まったくです

タイガーアイ :
『見るがいいシホ。
 あれが世にも奇妙な“三枚目”だ』

 現実にいると良くも悪くも計算が狂う

荻野目 旭 :

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……或いは、最大の変数かもな。アレは。」

 賽の目が凶を出さなければいいが。

荻野目 旭 :
「まったくです……っ、たぶん身は半分ぐらい削れたんじゃないですか! かよわいので、僕っ」
 揶揄の言葉に、きっぱりと答える。
 全身を締め付けるレネゲイド殺しの毒は僕の体も蝕んでいた。

荻野目 旭 :「だけどこれが僕の仕事ですんで、お気遣いなくっ。……おじさんもね!」

荻野目 旭 :「それに……僕が痛い思いしてまで治したぶん、あなたたちが仕事してくれるんですから! 報いってのはそっちのほうにしてくださいっ」

久外境耶 :「安い男だな」好きにしろ、の意地の悪い言い替え

木口龍 :「あ、ああ、すまない……そうだな。そうさせてもらおう。精々最初に死なないようにはするさ。なにせ、オレは死線でも生き延びた」

木口龍 :
「──浪速の大金星だからな……」

 喋ると最後には締まらないことを言う男。

荻野目 旭 :なにそれ

久外境耶 :こいつと同じ空間で話したくないな、おれ

荻野目 旭 :……。………。

荻野目 旭 :もしかしてコードネーム!?

”朧の狩人/残骸” シホ :狙撃手は遠方からの仕事で助かるな

木口龍 :……コードネーム????オレのコードネームは……忘れた……今は通り名の男……。

荻野目 旭 :あっ 違いますねこれ 自称名探偵みたいなやつだ

三廻部 颯 :……?

荻野目 旭 :……ごほん!

“渇望喰い” :
「………ほォォォ?
 そうかガキ………テメェ、何すんのかも分からねェ虚弱っ子だと思ったら………!」

“渇望喰い” :
 ・・・・
「治すヤツか!」

SYSTEM :
 唸り声/混じる雷の音。
 バチバチと散る火花、高まり昂る熱気纏うものが、
 それ越しにくぐもった“感心”の声を洩らしている。

 それは敵意ではない。
 これは拙いと言う危険な相手を見る目ではない。

 むしろ。

“渇望喰い” :
「ようし! ちょっと気が変わった」

“渇望喰い” :

「此処のヤツ全員ブチ転がして、このボケナストカゲへし折り…追っ払い…まあ、なんやかんやした後によォ………。
 跪いて詫びて俺様の傷を治したら、そうだ。命だけは助けてやってもいい」

“渇望喰い” :
「嗚呼、それまで精々死ぬなよォ? うっかり庇われたらテメェみてえなチビガキ………。
 リザ
 蘇生出来なくなるくらいのミンチにしちまうからなァ?」

荻野目 旭 :「お断りでーす! ひざまずいておわびしたらおうち返してくれてお仕事させてくれるなら検討しまーす!!」

“渇望喰い” :
「グァハハハハハハ!
 ………ならしょうがねェ! 死体でお家返してやらァ!」

SYSTEM :
■手番処理
 久外 境耶が行動を宣言します。

SYSTEM :
■イニシアチブ
 宣言可能なエフェクトがありませんでした。
 他宣言を確認後、メインプロセスに移行します。

SYSTEM :

SYSTEM :
■メインプロセス
 メインプロセスの「行動済み」を確認しました。
 メインプロセスを終了します。

SYSTEM :
■手番処理
 “渇望喰い”が行動を宣言します。

“渇望喰い” :

“渇望喰い” :シークレットダイス

SYSTEM :
■イニシアチブ
 宣言可能なエフェクトがありませんでした。
 他宣言を確認後、メインプロセスに移行します。

SYSTEM :
■メインプロセス
 任意の宣言を行ってください。

“渇望喰い” :此処はだなァ…。

“渇望喰い” :「待機」する。

SYSTEM :

■メインプロセス
『待機』宣言を確認しました。
 R中の行動値を[0]として扱います。

 行動値の調整と確認をお願いします。

SYSTEM :
■手番処理
 三廻部 颯が行動を宣言します。

SYSTEM :
■イニシアチブ
 宣言可能なエフェクトがありませんでした。
 他宣言を確認後、メインプロセスに移行します。

SYSTEM :
■メインプロセス
 任意の宣言を行ってください。

三廻部 颯 :
《ハヤテスマッシュ(仮称)》

マイナー:
 【インフィニティウェポン 】→武器作成(攻撃力16/G値3)
 【スーパーランナー】→戦闘移動(19m)

メジャー:
 【カスタマイズ】+【ペネトレイト】+【咎人の剣】+【C:モルフェウス】

ダイス:
(3+5)dx8+6

攻撃力:

 nd10+46

対象:
 “蝕みの君”
 

“蝕みの君” :………!

“蝕みの君” :(“蝕みの君”は敵意の矛先となると分かると即座に身構えた!)

三廻部 颯 :ドラゴンのところに走るよ!

三廻部 颯 :(3+5)dx8+6 <肉体:白兵> (8DX8+6) > 10[1,2,2,2,2,3,3,9]+3[3]+6 > 19

“蝕みの君” :

SYSTEM :
■リアクション
 リアクションを確認しています…。

“蝕みの君” :
■リアクション:ガード
 エフェクト宣言なし

SYSTEM :
■メインプロセス:ダメージ
 ダメージ判定を行います。

GM :…と言いたいところですが失礼しました! 剣精の手があるのですね

GM :使用しますか? また、周囲の方々は何らかのエフェクトを発動しますか?

三廻部 颯 :うん、えーっと 使い……ます!

GM :よろしい! では二つ目のダイスを[10]に変え、再度の宣言をどうぞ。

三廻部 颯 :10、10、+6、でもう一度ダイスだから……っと

三廻部 颯 :1dx8 (1DX8) > 6[6] > 6

GM :こういう時は直前の合計値(今回は26)を+し「1dx8+26」などとすると分かりやすくてオススメです。

GM :ともかくこれで「32」となりますね。…余計なお世話でしたら失礼。以上、北欧からお送りしました。

SYSTEM :
■メインプロセス:ダメージ
 ダメージ判定を行います。

三廻部 颯 :(3+1)d10+46 <ダメージ> (4D10+46) > 27[1,7,10,9]+46 > 73

“蝕みの君” : 

SYSTEM :
■ダメージ結果
 ダメージを確認しています…。

SYSTEM :
■ダメージ結果
 撃破を確認したエネミーはありませんでした。

system :[ 三廻部 颯 ] 侵蝕値 : 35 → 52

三廻部 颯 :た……おれてないっ!

“蝕みの君” :(“蝕みの君”は生命の危機と見紛う痛打に、赫怒とも悲嘆とも分からぬ咆哮をあげた!)

system :[ 三廻部 颯 ] HP : 27 → 20

SYSTEM :
■手番処理
 “渇望喰い”が行動を宣言します。

SYSTEM :
 時に。
 終始威勢よく喚き散らかしておきながら、いざ実弾が来た時の迎撃態勢も忘れていない、
               マーナガルム
 慎重で狡猾で臆病なこの自称“渇望喰い”。
 コレが、戦いの空気と自分の熱で物理的に熱されていく戦場の高ぶりで何をしていたのかと言うと───。

“渇望喰い” :

「充填………90、91、92………」

SYSTEM :
 曰く。

“渇望喰い” :
「97、98、99………───」

“渇望喰い” :

「───100! 御待ちかねのMAXパワー!
 チャージ
 充填完了だ。ボコす怒りと喜びがフルスロットルであの世に御招待!」
 

“渇望喰い” :
「分かるか、ええオイ、そうだよ………」

“渇望喰い” :
  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「 死 ん だ ぜ テ メ ェ ッ ! 」

SYSTEM :
■イニシアチブ
 “渇望喰い”が《加速する刻I》を宣言します。

(変則処理につき2回行動を行います)

“渇望喰い” :
■メイン1:ソル・グレイヴ
 Passive:????
 Major:《CRブラックドッグL3》《炎神の怒りL3》《雷の牙L3》《炎の刃L6》《MAXボルテージL4》
 Minor:《オリジン:アニマルLV5》《白熱L4》
 Auto:宣言なし

 判定:13dx7+5
攻撃力:xd+68
・攻撃対象のドッジダイス-2個
・HPを[3+(エフェクト使用数*2)]点消費する

“渇望喰い” :
■メイン2:ソル・グレイヴ
 Passive:????
 Major:《CRブラックドッグL3》《炎神の怒りL3》《雷の牙L3》《炎の刃L6》《MAXボルテージL4》
 Minor:《オリジン:アニマルLV5》《白熱L4》
 Auto:宣言なし

 判定:14dx7+5
攻撃力:xd+58
・攻撃対象のドッジダイス-2個
・HPを[3+(エフェクト使用数*2)]点消費する

“渇望喰い” :
 ボルテージ充填完了までご放置ありがとよォ!(喰らったけど)

 ………ちなみに俺様〜。
 実は「動ける」んだけど〜…。

“渇望喰い” :
 さっき上等くれちゃってええテメェコラ、
 接近ご苦労ォ! 2回とも「クソガキ1号」だ!

“渇望喰い” :13dx7+5 メイン1 (13DX7+5) > 10[2,2,2,3,5,5,5,5,5,6,7,7,9]+4[3,4,4]+5 > 19

“渇望喰い” :14dx7+5 メイン2 (14DX7+5) > 10[1,1,4,5,6,6,7,7,7,9,9,9,9,9]+10[2,3,4,6,6,8,9,10]+5[1,4,5]+5 > 30

SYSTEM :
■リアクション
 リアクションを確認しています…。

三廻部 颯 :わぁ〜ん!

久外境耶 :喚くな! 2発目に《崩れずの群れ》《命のカーテン》《氷盾》だ

“渇望喰い” :グァハハハハ…! 上等上等、殴らせてくれるワケ!

三廻部 颯 :ありがとぉ!!

三廻部 颯 :ドッジ! 1回目はドッジします!

system :[ "ラッキージンクス"久外境耶 ] 侵蝕率 : 43 → 51

“渇望喰い” :グァハハハ…! 良くはねェがいいぜェ!?

“渇望喰い” :抵抗されんのは嫌いだが!
抵抗されんのを潰すのは好きでよォ!

system :[ "ラッキージンクス"久外境耶 ] HP : 131 → 125

三廻部 颯 :(3-2)dx+1 <肉体:回避> (1DX10+1) > 2[2]+1 > 3

“渇望喰い” :………ククク………!

“渇望喰い” :俺様ねえ………持っちゃってるのォ、『雷の牙』………!

SYSTEM :
■リアクション
 結果を確認します。

メイン1/颯:ドッジ/命中
メイン2/颯:カバーリング(境耶)
→《崩れずの群れ》《命のカーテン》《氷の盾》

SYSTEM :
■メインプロセス:ダメージ
 ダメージ判定を行います。

“渇望喰い” :2d10+68 メイン1/ソル・グレイヴ (2D10+68) > 6[4,2]+68 > 74

“渇望喰い” :4d10+58 メイン2/ソル・グレイヴ (4D10+58) > 26[6,8,4,8]+58 > 84

“渇望喰い” :オラ行くぜ…オラ行くぜ、オラ行くぜェッ!

SYSTEM :
■ダメージ結果
 ダメージ結果を確認しています…。

system :[ "ラッキージンクス"久外境耶 ] HP : 125 → 76

system :[ 三廻部 颯 ] HP : 20 → -54

久外境耶 :いま何か当たったかァ!?

“渇望喰い” :あァァァァテメェ………! 上等なやせ我慢かましてくれるじゃねェか!

荻野目 旭 :当たってますう〜! 僕の癒し二枚分ですう〜!!

久外境耶 :るせーぞエキストラ!

荻野目 旭 :きゃいんきゃいん

“渇望喰い” :だがァ………!

“渇望喰い” :お堅いテメェーはそうでもォ………

三廻部 颯 :ひい〜ん

“渇望喰い” :ガキファーストの方はそうじゃねえよなァ!? 通ったぜ………完全にブッ抹殺した音!

三廻部 颯 :なんのなんの!リザレクト!しまあす!

“渇望喰い” :クソが成り立ての癖に本能で覚えてやがる!

久外境耶 :チュートリアル先輩になった気分はどうだ、え?

“渇望喰い” :上等だよ 辞世の句は「世界初の負け確チュートリアルとかクソゲーだろ」にしてやっからよォ!

三廻部 颯 :1d10 (1D10) > 5

system :[ 三廻部 颯 ] HP : -54 → 5

“渇望喰い” :チッ! 必要経費で立ち直りやがる…

“渇望喰い” :ま、いい。お望みとありゃ2発目3発目だ…

“渇望喰い” :その時はせいぜい今より嬉し涙流しなァ!

system :[ 三廻部 颯 ] 侵蝕値 : 52 → 57

SYSTEM :
■ダメージ結果
 ダメージ結果を確認しました。

SYSTEM :
【Round 1 -Clean up Process-】

SYSTEM :
■クリンナップ
 任意の宣言を行ってください。

“渇望喰い” :
■クリンナップ:ソル・ワーグ
《フェニックスの翼L3》
・HPを[Lv*5]点回復する

“蝕みの君” :
■クリンナップ:宣言なし

久外境耶 :ナシだ 治せるモンもないしな

三廻部 颯 :ない!

荻野目 旭 :同じくなしです。ここで回復出来たらいいんですけどわがままは言いません!

”朧の狩人/残骸” シホ :ワタシも同じく。

SYSTEM :

【-Round 1 End-】


SYSTEM :
【Engage】

[A]
1:“蝕みの君”
2:“渇望喰い”
3:三廻部 颯

       -5m-

[B]
6:“■■■■”木口 龍

       -4m-

[C]
4:“ラッキージンクス”九外 境耶
5:“ナイトホーク”荻野目 旭

       -1m-

[D]
7:“朧の狩人/残骸”シホ

三廻部 颯 :
 だんだん分かってきた。
 私が今するべきこと、倒すべき相手は、あのにっくき犬コロじゃない。

 さっきの"自称探偵"さんの事と、境耶さんに起きた"変化"……、
 それを起こさせたのが、あの"ドラゴン"がばら撒いている鱗粉。

 つまり、今この場ではやく倒さなきゃいけないのはむしろ"ドラゴン"の方。
 鱗粉を吸わないようになんとかするなんてどだい無理な話(できる人もいるのかもしれない!)だし、
 そんなものが撒かれてる状況で"バカ犬"相手だってキツいはず。

三廻部 颯 :
 私は普段からドジでおっちょこちょいだから、指針がないとなにもできない。

 自分でそれを決めるのはすごく苦手だけど──今、それをしなきゃどうにもならないこともまた分かったつもり。

三廻部 颯 :
 だから決めた。
 まず"ぶっ飛ばす"のはあのドラゴンの方。
 本当は嫌だし、礼儀もへったくれもないようなことだってしたくないけど。

 言葉が通じる気がしないし、何より無抵抗だと殺されそうだし──現に一回、横のヤツに殺されたし。
 ……生きるための戦いだって、割り切るっ。

三廻部 颯 :
(さっきのでやり方はなんとなく分かった……)

 あの"海の底"──鳥居の先で見聞きしたことをそのまま実践する。
 思うままに形になるもの、言い換えればそれは夢や空想を形にできるもの。
 
 今この時の私は知らないけれど、この力には夢の神様の名前が付いている。
 ・・・・・・・・・
 夢はなんでもありだ。
 思うだけなら人はなんだってできる。
 それを形にできるのなら……。

三廻部 颯 :
 深呼吸をする。

 心臓を抑える。
 大丈夫───なんとかするって決めたから。

三廻部 颯 :
「せ───ぇのっ……!!」

 私はまだ目覚めたばかり。
 だから普段私がやっていることの"延長線"を意識して動く。
、   、   、  、・
 両手を地面につけた発射体勢──クラウチングスタートの要領で、一気に駆け出す。

「たぁっ!!」

▄█▀██ :
 砂が舞う。
 砂が躍る。
 砂が翔ぶ。
 
 自らが一度沈めたこの島の砂を、少女は自分のもののように掴んだ。
 生まれた時、その手が剣のように鋭くなったように。
 けれど次の形は鋭くなく、しかしより残酷な形。

▄█▀██ :
 砂は舞い、砂に夢を描く。
 砂は歌い、砂に空を描く。

 夢は常に"なんでもあり"で、
 夢は無限にバリエーションを増やしていく。
 少女の手にした武器の、そういう形。

三廻部 颯 :

 一目散に“蝕みの君” の元へと走っていった少女の腕に無数の砂がまとわりつく。
 やがて砂が七つの光を伴うとともに、少女の胸元にあった輝きが色を変える。
 
 呼応するように砂が凝固し、夢と空想を形にし、その腕を強固な──そう、少女が得るには不釣り合いな腕を武器として生み出させた。

三廻部 颯 :
 少女は暴力が嫌いだ。
 だが少女には元から"人を傷つける力"があった。
 物騒な世の中だからとかそういう理由で習い始めたものも、使い方を間違えれば人を殺す凶器になりうる。
 自戒の意味も込めたのだろうその巨大な"腕"は、超人となった少女の力をダイレクトに伝える形をしていた。

 加速と共に“蝕みの君” の眼前に迫った颯は、暴力装置そのものな両腕を目一杯突き出した。
 右腕を上に、左腕を下に。
 上下から正拳突きを繰り出す"諸手突き"の構えだが、人が人に向けてやるものとはあまりに違う。

「──やぁあっ!!」

 そもそも目覚めたての瞬間に自分の何倍もあった“渇望喰い”を蹴りで吹っ飛ばしている。
 それほどのパワーを持ち、かつ少女の思うままの暴力として出力された武器を伴えば、破壊力は未知数レベルだ。

 粒子の如く、あるいは炎のように噴き出る砂がそれを後押しする。
 拳は“蝕みの君”の顔面下部に向かって一直線。
 生物としての急所──すなわち"顎"を狙いにいった。

“蝕みの君” :
『▂▅▇█████████████!!!!』 

SYSTEM :

 当然の帰結として。

 敵意の矛先である竜の行動は決まっている。

SYSTEM :
 自らに死の恐怖を運ぶと、見れば/見ずとも分かるものに対し、
 そいつは四肢を地面に突き立て、いつものようにその爪牙を振り上げた。
   ・  ・
 己を脅かす威力を持つもの。
 そうと分かっていたのかは定かではないが、そいつはむしろ積極的に踏み込んだ。
 紫黒を切り裂く太陽のほむら、その陽炎を伴にして一直線に向かって来るものを前にして、まさに脇目も振らない反応だ。
 思うにそいつの迎撃反応とはまさに恐怖から来る受動的なもの。

 ・・・・・・・・
 怖いので先に潰す、だ。

SYSTEM :
 全力疾走で間合いに近付いて来たものに、キュマイラの大男さえ叩き潰したその腕が、モルフェウスの銃弾さえ貫けなかった躯体が。

 赫怒を伴った唸りの駆動音をあげ、そして………。

SYSTEM :
   ・・・
 ───爆ぜる。

 迎撃の剛爪から、腕ごと。
            ばら
 より強いレネゲイドに、分解けて砕かれた。 

“蝕みの君” :『▇█████████████▇▅▂………!』 

SYSTEM :
 キュマイラの大男さえ蟻のように踏み潰した剛爪が。
 たかが少女の矮躯ひとつすら止めることが出来ない。

 モルフェウスのイリーガルが何発撃っても弾痕を残すのが精々だった、
 その堅牢な体皮/甲殻が、まるで嘘のように穿ち貫かれてなおも突き進む。

SYSTEM :

 見るものが見れば信じがたい光景だろう。
 体格差は何倍になるか。その世界に足を踏み入れて“いくつ”になるか。
 その間合いの白兵戦で、恃みとしたのは瞬発力と『得物』であるはずの颯が。
 得物抜きで、その手合いを悉く踏み潰し、弾いて来た『怪物』であるはずの“蝕みの君”を───。
 
 突き出した腕が、片端から押し退け、吹き飛ばし、分解し。
 喧嘩の延長線みたいなやり方で、文字通り吹っ飛ばそうとしている。

『ホデリ』 :
『なんと、さほどの…!』

SYSTEM :
 世界に産声を上げて間もないオーヴァードが、百戦錬磨のオーヴァードを圧倒する。
 実を言うと、決してないわけではない。

 残酷なことであるが、オーヴァードの強さは生まれた順番では決まらない。

SYSTEM :
 等しく与えられたものは、世界の理を嘲笑うレネゲイドの因子であり。
                        さ き
 後はそれにどれだけ適性を持ち、どれだけ見えない可能性を与えられるかの違いだ。
 自分の想像を信じられる才能の有無こそがまず方向を決定づける。

 そして、自分の想像を信じられないものは、
 同時に他人の想像をどうやって否定するか。
 理に足もつけない空飛ぶ愚者を愚者のままにして、どう叩き落とすかが肝要になる。

SYSTEM :
 端的に言ってしまえば………。
 オーヴァード同士が存在の証をぶつけた時。
 ・・・・・・  ・・・・・・
 使い方の才能か、巧く使う経験のどちらかを持ち、長けたものが生き残る。

SYSTEM :
 そして彼我の衝突者はどちらも前者だ。
 後者に縁がない。

 なり立てで暴力を振るった経験もなく、 .インストラクション
 ただ怒りと成り行きを骨子とした少女。使い方の説明書もないのだ、何処に“使い方”など分かろうか。

 参考例など精々が先達の言葉のみ。
 そこから“ソレ”を作り出す/一度信じたものを信じきれる純真さは本人の人柄でもあるが、あるいはそれこそ、レネゲイドを遣う者の才能だった。

SYSTEM :
 対する後者にもまた経験などはない。
 攻撃を見た時に行ったことは、構わず叩き落とすか、目的に向けて疾走するだけ。

 持て余すほどの力があるから、それを外側に押し出して暴れ回っているだけだ。
 そして基本、ソレで何とかなってきた。
 銘を“蝕みの君”───蝕む病そのものを冠したものが、あの時まで死ななかった理由だ。

SYSTEM :
 ………圧倒的な個体の大きさ。レネゲイドへの親和性。
    
 それで何故この竜の甲殻がブチ抜かれ、断末魔の如き悲鳴を上げ、事と次第によっては顎ごと頭を持っていかれようとしているのか………。

 答えは単純だ。

タイガーアイ :
『攻撃手段、近接攻撃………。
.      モルフェウス
 攻撃性質、物質精製タイプを起点とした、超高精度の武器生成と強化。
 .              ガントレット
 形成したのは接触の衝撃に備えた腕甲………』

タイガーアイ :
『副次性質、レネゲイドを素とする物質の分解………。
  ぶっとばす
 衝撃力を伝える前の障害となるものを無意識に判断、
 因子構築プロセスを逆行することによる分解と破壊………』

タイガーアイ :
『一先ずシホ、お主にだけは言われたくなかろうが』

タイガーアイ :
 ・・・
『バテるぞ、あの娘。
 怒りでエンジンをかけたのはやり過ぎたな』

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ああ、それに──────」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 レネゲイドは使い方の才能か、巧く使う経験のどちらかを持ち、それに長けたものが生き残る。
 そして、より遣い手を生かしうる/欠ければ致命をもたらすものがどちらかといえば───

SYSTEM :
 そう───結論。
 一度の攻撃に向けて、自分の体内で駆動させたレネゲイドが。
 自分を侵蝕させるスピード/続けて戦うという思考が一切ない。

SYSTEM :
 文字通りその一撃に全力が載っている。
 というより、そもそもの話だ。

 天井知らずで更新されていく『全力』の言葉であるが、それ以上に。
 無我夢中で初めて「人を撫でただけで殺せる力」を振るうにまさか制御とか力の配分とか、そんなものはあっていいはずがない。
     Do    or   Die
 一撃必殺を果たすか、反撃でやられるか。そうなってしまったというよりは、そうなって“当然”なのだ。

SYSTEM :
 しかし今回は………。

 寸評通りに/懸念と裏腹に、それが上向きに働いた。

SYSTEM :
 蝕みの君の堅牢さがまったく意味を為さない最大の理由は、その特質にある。
                   ガード
 竜の体皮/甲殻は相手の攻撃に合わせた防御ではない。
             Renegade Being
 元々生物として、“レネゲイドより生まれたもの”が編み上げた生体構造。
. ペネトレイト
 装甲を貫く一撃に対して、それに適切な防御形態をとるような器用が赦されるものでも……。
 その機能を分かった上で捻じ伏せるような、アベレージ以上の性能が赦されるものでもない。

SYSTEM :

 端的に───。
            ・・ 
 近付かれたのであれば、それは彼/彼女の天敵だったのだ。

“蝕みの君” :『▇█████████████▇▅▂………!』 

SYSTEM :
 紫黒の鱗粉がはじめ爆ぜるように飛び散ったかと思えば、その勢いを急速に弱めていく。
 ・・・・・・・・・・・
 そこまで脆くはなかったはずだが、あるいは彼女の振るったものの度が過ぎていたのか。

 砕かれ分解された腕が再生するよりも早く、オーヴァードである限りは最重要とも言える頭部/思考の中枢に、その敵意が牙を剥く。
 すぐに紫黒の持ち主が動きを止めるだろう光景は、彼我の状況を見ていたものならば誰もが予想出来たはずだ。

SYSTEM :
 だが。

SYSTEM :
 だがそれは………。
 ・・・・・・
 一対一ならばの話。

“渇望喰い” :

「───バカが、後ろだァ!」 

SYSTEM :
 こと漁夫の利と言う言葉がある。

 獲物同士の争いをじっくり眺めてから、
 事が終わった後に堂々と踏み込み纏めて喰らう行いを指すものだ。

 よく言えば利巧、悪く言えば姑息。
 結論から言って、そいつはそれを恥じるものではない。

 何故ならそいつの紫黒の鱗粉は己にも害を及ぼすものだが───。
 単純計算として、そいつが死ねば次は自分だ、と思い知っていたからだ。

SYSTEM :
 よって、敵だろうが邪魔だろうが関係なし。

 寄らば大樹の何とやら。
 己を護る傘の死に、いけしゃあしゃあと颯爽登場。
       エントリー
 無粋な横槍の乱入だ。

“渇望喰い” :
「オラ行くぜ、オラ行くぜ、オラ行くぜ───」

“渇望喰い” :
「オラオラオラオラオラァッ!!」

SYSTEM :
 つまり彼のやったことは単純である。

 全力全霊で“自分に意識が向いていない時”をじっと待ちながらその時のためだけに己の力を充填し、
..     アクション
 その時に全力攻勢をかける。
 彼は残忍で、狡猾で、短気で小心な生き物だが、何より執念深い。

 受けた怨みは忘れない。
 そいつがまさか、まさかとは思うが。

SYSTEM :
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 横槍を入れられて吹っ飛ばされた怨みを、
 ・・・・・・・・・
 忘れないわけがない。

SYSTEM :
 吶喊と共に、雷鳴が唸る。
 充填に充填を重ねたスロースタートの本領発揮。
  ソル・デリング
 “太陽すら繋ぎ喰らう”を豪語する、“渇望喰い”の必殺パワー。
 それをただ一人だけにぶつけるMAXボルテージのフルスロットル。
  
 魔犬ブラックドッグの名を冠したシンドロームが赦した発電細胞。
 それをフルに活動させた副次産物として燃え上がる紅蓮の拳が、雷霆を纏い、レネゲイドが仮想で編み上げた神経も筋肉も極限まで加速させる。

 瞬きすら許さぬ電光石火。
 予め意識しておいた行動のみを仕掛ける徹底ぶり。
     ・・・・
 それ故にあと一歩で間に合う。

 あと一歩、ちょいと己が触れれば竜が殺せるほどに傷付き、更にその横をつけば………。
 名前に曰く“クソガキ1号”を、意趣返しとばかりに吹き飛ばせる状況に辿り着く。

“渇望喰い” :

「───シャアッ!!!!!!」 

SYSTEM :
.. 右ストレート
 意識外から雷霆。
 型も礼儀もへったくれもない、必殺必中の無粋が炸裂する。

 堂々とその躯体を吹き飛ばしに掛かったそれは、オーヴァードだろうと容赦なく肉体を叩きのめし………人生初の”リザレクト”の危機に陥らせ、そして。

“渇望喰い” :
「そしてェ!

 間髪入れず最後の攻撃だァ!」

SYSTEM :
 よほど根に持っていたのか、
 無理矢理トドメの間合いから吹き飛ばして離脱させた颯目掛けて、赤雷が軌跡を残して走る。

 リザレクト直後、復活した瞬間を狙い撃つ拳だ。オーヴァードの再生能力にも限界があるが、それよりも先に『再生が間に合わずに跡形もなく消し飛んで死ぬ』という事態は珍しくない。

SYSTEM :
 彼は一発目で『自己修復が起きる』と踏み───。

“渇望喰い” :
「グァハハハハ!

 生きられなかったなあ! 600秒はァァァァァ!」

SYSTEM :
 左ストレート
 容赦なき雷霆の構えで空を飛ぶ。

 オーヴァードが本能的に/そして初めて行うが故に処理が追いつかないリザレクトの発生を見越し。
 ・・・・・・・・・・・
 吹き飛ばした先の二発目、リザレクトの瞬間の無防備と意識の死角を狙って、追撃で跡形もなく消滅させる。これはそんな手練れたハイエナの闘法、漁夫の利拾って一撃必殺だ。 

荻野目 旭 :「……うそ」

荻野目 旭 :歴戦のオーヴァードを正面から叩き潰してきた化け物の牙城が、容易く崩れ去った。

荻野目 旭 :どうして、が頭を駆け巡る。普段なら簡単に潰していた私情は、気付いていないだけで限界ギリギリのキャパシティを簡単に飛び越す。

荻野目 旭 :

 あんなに簡単に壊れてしまうなら、

 僕たちはいったい何だったんだ?

荻野目 旭 :
 ──だめだ、そんなこと考えてる場合じゃない! 

   細心の注意を払って表情を作り直す。

荻野目 旭 :言い訳を作って気を取り直す──あいつはあんなに臆病じゃなかった。

荻野目 旭 :
 領域を広げて視界を引き感情を『僕』から引き剥がす──

 確かに彼女の出力は規格外だけど、あれと同じだけのものを、
 何度も、何度も、何度も何度も、
 ぶち当てられてやっと沈黙したはずの獣が“蝕みの君”だったはずだ。

荻野目 旭 :そうやって自分のどうしようもなさを戒めてる間も時間は進む。視界を引けば見える、吼える獣の姿!

荻野目 旭 :「───三廻部さんッ!!」

三廻部 颯 :
「───っ、やっば……」

 そんな現実感に欠ける反応が、少女の意識を強く表していた。
 倒しきれなかったのもそうだけれど、私はやれるだけのことをやった。
 それでなんとかならなかったのだからお笑い草だ。

三廻部 颯 :
 腕を上げる。
 いや、間に合わない。
 苦し紛れのステップ──最低限の足捌きによる回避運動。
 それも間に合わなさそう。

 死ぬ? ───三度目の?

三廻部 颯 :
 ……。

三廻部 颯 :
「──……死ぬもんかっっ!!!」

 苦し紛れに最期の宣言。
 少女の命の輝きはまだ、絶えそうにない。
 また起きれたんだ、今度だって!
 何度でも……!死に損なってやるんだから!!

久外境耶 :               チップ
「初めてにしちゃあ、いいパンチだ。延長くれてやるよ」

 届かせる気もなく呟く。

 伸ばした腕が、内から爆ぜるように自壊した。砕け剥がれ落ちた外殻の下、晒される中身はない。

久外境耶 :
 虚と化した掌が向く先、巨狼の眼前へと彼方より氷塊が飛来した。
                ヘキサ
 立て続けに落ち、連なり、天仰ぐ合弁花を象る。その砥がれた刃のような氷の奥に、無貌が映り込んだ。

久外境耶 :
「おれとも遊べよ、なあ──!」

 氷塊が、自ずから砕け散る。散華する氷片が、万華鏡のように彼我を映した。即ち、雷霆の赤と──

 非ざる鋼に転じた青の手が、真っ向から拳を克ち合わせる。

久外境耶 :
 強度と練度を底上げした剛腕に、鋼の氷は押しも押されもしない。拮抗は、長く続くかに思えたが……

「──くそ、」

 留まる限界を迎えた体が蒸散する。歯噛みを含んだ声は、悔しさではなく欲深さから。まだ楽しめたと惜しむように。

“渇望喰い” :


「ほざけテメェは………」

   ・・・・・・
 ───ちゃんと死ぬんだよ!


SYSTEM :
 
 勝ち誇りの咆哮。
 ゲームセットまで秒読みの鉄拳私刑が、
 神鳴る音と共に空を舞う。

 一撃目で吹き飛び、意識の間隙が生まれ。
 それを立て直した“直後”を狙い撃つ、超人狩りの必殺連携。
 
 数多のオーヴァードから逃げ、
 数多のオーヴァードを屠って来たこの魔人狼が、
 いつしか己を渇望喰いと自称するようになったころからの十八番。

SYSTEM :
 防御、回避、いずれも不能。
 そもそも出来ないタイミングに狙って牙を研ぎ、
 一発目は二発目を確実に当てるためのコンビネーション。

 人間めいた狡賢さを、人間じゃ出来ないパワーで成し遂げる。
 これも“渇望喰い”と互いを向いていればもっと対処のしようもあったろうが、それは彼方も同じこと。彼は、意識の死角からやられたからあんな簡単に吹っ飛んだのだ。
 然るに───意識の死角から同じことをされた彼女が、危機感以上に“危険”なのは明白。

SYSTEM :

 勝利を前に舌なめずり。

 渾身の左ストレート
 勝鬨を挙げる雷霆が、
 宙を舞って即死のラインを辿り………。

“渇望喰い” :
「───は!?」

SYSTEM :
 まず何か。
 打ち砕くべき光彩の腕甲でも、纏った装束でもないものが花開くそのさまに、
 彼は怪訝にも目を細めた。

“渇望喰い” :
「………はあァ!?」

SYSTEM :

 次いで、その腕と衝突し、類似しながら相反する藍色を撒き散らすもの。
 サラマンダー・シンドローム特有の急激な温度変化を以て、
 火花を散らし、草木を燃やしながら凍り付かせる相互の激突の中。
 その見た目鮮やかなる万華鏡より出でし青の手。鋼の如き堅牢なる零の塊、その実態が。少なくとも殴ろうとして殴ったものではない実体が………。

“渇望喰い” :

「はあああああああァァァァァァッッッ!?」

SYSTEM :
 滾り続け燃え盛り、嘶き続ける高熱/高圧電流とは対極の、
                          ダイヤモンドダスト
 停滞りながらも燻らず、滾り続ける、何にも食らえぬ最高硬度の残り滓と気付いた。

SYSTEM :
 ───そして最後。
 .     フィニッシュブロー
 狙いすました必殺拳打の無様な不発!

SYSTEM :
 手応えあっても砕けない。
 割り込んだもので帳尻を合わせようにも、留め置く零へ火を入れるほど彼の熱は重くない。

    がのつよさ
 一言、己への信頼の違い。
 その原因と思わしきものに、あまりにも口汚く吠え散らかした。

“渇望喰い” :

「テメェ何様だコラ、ええコラ、クソガキ2号がァ!!!!!
 カモネギ
 成り立て庇ってヒーローショー気分かテメェらどいつもこいつもよォォ!!!!!」

“渇望喰い” :

「───クソがよォ!!!」 

SYSTEM :
 そして罵倒から。

 本来殺すために使うつもりだった、
         フルブラスト
 そのエネルギーを即刻解放。
 爆ぜるように稲光が走る。熱を帯びた電流、マーナガルムの名を冠するにふさわしい怪物の赫怒が凍て付く障害を打ち砕く。

 零を零のままに、力技で。
 だがその代償、決して軽くない。

 颯に態勢を立て直す暇が与えられ、踏み込めば反撃のリスクが生まれた。
 0.1%かもしれない“死”だ。

“渇望喰い” :
「あああアァァァクソが、クソがクソがクソが………!
 テメェどの了見と何様気分だァ!」

“渇望喰い” :
「───フー、決めた。
 次はテメェだ。そんなに死にてえなら次はガチのをくれてやる………!」 

SYSTEM :
 怒りと共に、着地。
 地面から炎が吹き上がり、纏わりついて、よく見ると煤けた体皮を修復する。

 これだけ怒り狂う理由は単純。
 何故なら。
   ・・       アベレージ
 彼のソレもレネゲイドの平均値を無視した確実な“トドメ”の一手だ。
 代償は安くない。
 ジャームなら歯牙にもかけない話だが、そうである以上に………。

SYSTEM :
 紫黒の鱗粉は、他者のレネゲイドの内部に侵入すると、励起をトリガーとして毒性に変貌する。
 いわばアレルギー反応めいて内部を崩壊させる特性を有しているわけだが。
 それは当然、彼にも適用されている。
    リザ
 二撃で再生諸共撃ち抜いて殺しに掛かる構えだ。そのために燃やしたものは易くない。

 特に、この状況においては。

久外境耶 :

久外境耶 :
 十メートル近く離れた地点で、砂に膝をつく。反動で形状変化が解けた身体は、内で結晶した氷に貫かれていた。
 滴るはずの血は、疵から漏れた冷気によって瞬時に凍結していく。漂う死毒ごと蓋をして閉ざすように。

久外境耶 :
「あァァ……気持ちいいねえクソ犬の遠吠えは!」

 ……鼻をつく焦げた臭気。残熱に耐えかねた氷が罅割れ、剥がれ落ちた。電熱に焼け爛れた片腕が露わになる。

久外境耶 :
「かかってこいよ──おれは誰にも殺されねえ!」

“渇望喰い” :
             ・・・
「上等だ………この俺様を前に不死身の自己主張かァ!?」

“渇望喰い” :
「ふざけろ年季が違ェんだクソガキャア!

 お望み通り死ぬまで殺してよォ!
 ガキの遠吠えで鬱憤晴らさせて貰うぜェ………!」

SYSTEM :
 不死身の“渇望喰い”。
 太陽を喰らう魔犬の名を自称したこの怪物が、素顔を露にした無貌の城壁を前に、思う存分を露にする。

 吼える前に掛かって来いよ、に。
 応よ頸洗って待っていろ、と来た。
 これでは破落戸と破落戸だ。

三廻部 颯 :
 命の花弁一片、むざむざと摘み取られた時。
 少女は自身を焼いた"赤"と真逆の──凍てつく"青"を視界に収めた。
 そして何が起こったのかをすぐに理解して、自分がこれからどうなるのかをよく理解した。

 その青の輝きの元へ、少女はぐっと親指を立てて「礼」を示した。

三廻部 颯 :
 二撃によって確実に殺す。
 その手段は一発目か二発目のどちらかが不発になれば機能しない。
 生まれる隙は十二分にもほどがあり、未熟で未完成な少女にも利用できるほどのもの。

 少女はただそこで"生きる"と願い──その願いを受けるように、無数の砂が意志を持って少女を覆い隠す。

三廻部 颯 :
 自らの体内を熱く駆け巡るものを感じながら、颯は死ぬのを拒んだ。
 まだ何もできていない、二度目の生を得て、何も。
 というか──二度もこんなのにやられてたまるか、と叫びたいくらいに。

三廻部 颯 :
 やがて砂が晴れた時、少女は全身から煙を上げながらも生き残っていた。
 肉体が、ではない。
 少女の魂が死を拒絶した。

「……どうだっ、生きてるぞっ!!
、  、・・・・・・・・・
 そんなヘナチョコなパンチで……倒せると思ったかーっ!!」

“渇望喰い” :
「おうおうおうおうテメェ、そのヘナチョコで一発バキバキのノックアウトになっておいてほざきやがるわ!」

“渇望喰い” :
「だが上等だァ! どいつもこいつもこの俺様をコケにし散らかしやがって………。
 ソク
 速攻で『死んでるぞ』にしてやるぜェ!」

三廻部 颯 :
「──喋れてるし体も動くし頭も働く!
 KOになってなければ私たちの負けじゃない!!」
 

三廻部 颯 :
「やってみろっ!!」

久外境耶 :
 ・・
「たちて」つーか元気だな

『ホデリ』 :
『昂りたるのかもしれぬ。
 検怪の者の見習いは皆そうと聞き及んだ』

『ホデリ』 :
『………だが境耶よ、汝こそ健やかよな。
 あやつは完全に憤った。大事ないのか?』

木口龍 :(若いな……)

久外境耶 :「あ? あー」

久外境耶 :「半分ちょい削れたわ。あれ以上トバされたら危ないかもな」

『ホデリ』 :『………小僧………………………』

SYSTEM :ホデリの目はこの瞬間明らかに“言葉と態度の一致していないもの”を見るものの目であり、声はそれに対する基本的突っ込みの声であった。

久外境耶 :「ンだよ〜、わかれよ〜」

久外境耶 :「やべー相手じゃなきゃ闘う甲斐もねーだろ」

 こいつのやりたいコトに絡んでるってんなら話は別だが。

『ホデリ』 :『汝のことは分かって来たつもりだが………さてもまあ』

『ホデリ』 :『幸運の徴とはよく言ったものよな』

SYSTEM :
 呆れか関心か。
 呟いて、くいと顎で向こうを指す。

 御待ちかねの二匹が、片や唸って片や臨戦態勢だ。

 しかし最初から最高速で九死に飛び込んで一生を掴み続ける生き物を、
 幸運の徴と呼んだものはさぞ皮肉屋なことだったろう。

荻野目 旭 :「幸運じゃなくって悪運だってことはよぉ〜くわかりました……!」

荻野目 旭 :「いまはそれに大助かりですけどね! 元気に死なずに死んでください!」

久外境耶 :「言いやがって砂利が、見とけよ隣でモツ撒き散らしてやる」

荻野目 旭 :「嫌で〜す! 勘弁してくださ〜い!!」

荻野目 旭 :目を閉じる

SYSTEM :

【-Round 2-】


SYSTEM :

【Round 1 -Set Up Process-】


SYSTEM :
■セットアップ
 タイミング:セットアップのエフェクトを宣言出来ます。

“渇望喰い” :
■セットアップ:ソル・デリング
《雷神の降臨L4》
・ラウンド中、自身の行動値を[0]にする
・ラウンド中、自身の攻撃力を[Lv*5]増加させる

荻野目 旭 :……使用しません! 温存です!

GM :他の方は以前宣言可能エフェクトなしと伺っていました。よって…。

SYSTEM :

■セットアップ:結果
 宣言結果が確認されました。

“渇望喰い”:行動値変更[6]⇒[0]

SYSTEM :
【Round 1 -Main Process-】

SYSTEM :
■手番処理
 シホが行動を宣言します。

SYSTEM :
■イニシアチブ
 宣言可能なエフェクトがありませんでした。
 他宣言を確認後、メインプロセスに移行します。

SYSTEM :
■メインプロセス
 任意の宣言を行ってください。

”朧の狩人/残骸” シホ :
さて、そろそろワタシの出番か。

”朧の狩人/残骸” シホ :
□判定宣言
     Nemain
▼Combo:《葬送》

Minor: 戦闘移動 25m後退▼
Major:《コンセントレイト:オルクス[Lv.3]》+《形なき剣[Lv.1]》▼

 Atk : 8dx7+9
 Damage : xd10+1d+22+5
 Cost : 5 HP:-1D
 Range:300m

効果:同一エンゲージ攻撃不可
   この攻撃に対するドッジD:—[《形なき剣》のLv ]
Loading……

“渇望喰い” :あのアマ遠慮なく引きやがった………!

“蝕みの君” : 

”朧の狩人/残骸” シホ :
無粋ではあるが、わざわざオマエたちの間合いに付き合ってやる義理もない。

”朧の狩人/残骸” シホ :
さて、となれば残るのは「どちらを標的とするか」という点に尽きるが……

”朧の狩人/残骸” シホ :
無粋を重ねるようだが……討たせてもらおう。竜の君よ。

タイガーアイ :もとより躊躇う理由もあるまいな。だが、精々巧く狙うことだ。

タイガーアイ :お主はあの娘ではない。竜を倒して姫を救う勇者ではないということなら、無粋で結構よ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
狩人は狩人らしくか。悪くない。

”朧の狩人/残骸” シホ :8dx7+9 (8DX7+9) > 6[1,2,3,4,4,5,6,6]+9 > 15

タイガーアイ :勇者志望だったか?

”朧の狩人/残骸” シホ :
…………まぁ、こういうこともあるさ。

system :[ ”朧の狩人/残骸” シホ ] HP : 23 → 18

荻野目 旭 :ま……ってください、《妖精の手》です! そこの6を10に変えて振り直してくださ〜い!

GM :む! よろしい。

”朧の狩人/残骸” シホ :1dx7+19 すまない、恩に着る! (1DX7+19) > 4[4]+19 > 23

タイガーアイ :勇者志望か?(二度目)

system :[ 荻野目 旭 ] 侵蝕率 : 43 → 47

system :[ 荻野目 旭 ] 妖精の手 : 2 → 1

SYSTEM :
■リアクション
 リアクションを確認しています…。

“蝕みの君” :
■リアクション
《竜鱗L3》

SYSTEM :

■リアクション
 リアクション結果を確認します。

”蝕みの君”:《竜鱗》/命中

SYSTEM :
■メインプロセス:ダメージ
 ダメージ判定を行います。 

”朧の狩人/残骸” シホ :
……せめてこちらの結果で応えねばならないな!

”朧の狩人/残骸” シホ :

”朧の狩人/残骸” シホ :3d10+1d+22+5 (3D10+1D10+22+5) > 14[9,2,3]+1[1]+22+5 > 42

SYSTEM :
■ダメージ結果
 ダメージ結果を確認しています…。

SYSTEM :
■ダメージ結果

“蝕みの君”:撃破!

”朧の狩人/残骸” シホ :1d10 反動ダメージ (1D10) > 9

system :[ ”朧の狩人/残骸” シホ ] HP : 18 → 9

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……ところで。
 狙撃手というヤツは戦場でもなかなかに特別な役割を担うものだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 戦場での赫怒や喜悦などワタシには無用だ。
 冷酷に、正確に、獲物を射抜くのが狙撃手の使命/狩人の作法。これを違えれば、死の薫陶を受けるのは銃を持つワタシ自身となるだろう。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 秘匿の因子は死に蝕まれ、今はその意味を為していない。事実、あの猛狼にもこの姿には気付かれた。
 死を振り撒く者にはそもそも因子による欺瞞などどれほどの意味があったのか。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……だが、誰が気付く。
 戦場に否応なく立ち込めて裂帛を待つばかりの熱量に紛れ、その狙撃手が静かに脚音を鳴らして次の死を装填したことなど?

”朧の狩人/残骸” シホ :
「何様のつもり、か……。
 あまり呼称に拘りはない方でな、神様、仏様、どれで呼んでもらっても構わないが……
 ……ああいや、仏様はやめてもらおうか。それはオマエの方が相応しい。なあ、そうだろう“タイガーアイ”?」

タイガーアイ :
『悟りなぞとても。誤りの道など正そうと思ったこともない。
 我を連れ歩いたお主が浄土を謳えばそうもなろうが、総じて適任に非ずよ』

タイガーアイ :
『だからそうだな、その通り。仏様には彼方になって貰うがいい。
              ・・
 死を前に、人は悟りを開く。我々はどうかな』

”朧の狩人/残骸” シホ :
「それをワタシに聞くか。いい根性だよ」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 何度目かも分からない言葉を返し、何度目かも分からない装填は終わったらしい。
 熱砂と冷気の入り乱れた目前の戦場を改めて見据える。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 あの太陽公……おそらく、竜など独力で斃せるという言葉はフカシではない。
 御自慢の不死性とやらも、死を超えたワタシたちに声高に主張するのだから、その自信が伺えるというもの。

”朧の狩人/残骸” シホ :
         ・・・・・
 だが、ならばこそ底は見えた。
 奴は強靭だが、無比ではない。事実、ワタシの弾丸は防がれつつも届いていたし、奴の致死の一撃は前方の“ラッキージンクス”では死に損なう程度の威力。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……奴も理解しているはずだ。もしもあの御伽話から飛び出してきたような竜が先に斃れてしまえば、死なないまでもワタシたちに勝てる可能性は大幅に低減する。
 とても信じ難い話だが、あの幻想種を斃す方が我々に勝機を齎らすということだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……かつ、件の竜はどうだ。
 死は、それを受け容れた者からかえって遠ざかっていくもの。今の奴は、その真逆。身構えなど正面から打ち砕いてきたその可能性を目前に怯えさえ見せている。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ───。
 そうだ、あの少女が覚醒したことで───。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ───銃を構える。
 照星を合わせる。
 少女の命が散らされた残像を振り払う。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 狙いは一点。少女がその拳で穿った鱗の隙間へと───!

荻野目 旭 :
 高く口笛を吹いて、指を突きつける。
 領域で感じ取る後方のシホさんの射撃──致命的な場所にほんの数ミリだけ遠い。
 

荻野目 旭 :
「“オリオンは高くうたい──つゆとしもとを落とす”」

 輝く三つら星、狩人の王様に願いをかけるように。
 僕のイメージが具現した幻想の氷の粒が、シホさんの覗き込むスコープ越し、やつの急所たる的確な位置を教えるように瞬いた!

SYSTEM :
 この瞬間、あれほど殺すと息巻いた殺意の気が多い魔人狼の目は、
 安っぽい上にプライドかも定かでない感情を載せて二人に向けられていた。

 よって、狙撃手の存在に気付いていた………。
 あるいは“標的”が去ったその瞬間から今に至るまで、其方と少年に対して常に強い意識を向けていたものは一匹だけ。

SYSTEM :
 それは自らの脅威となる未知の存在ふたりが、無視してよい存在にかかりきりになったことで、いよいよ明確に“其方”に意識を向けていた。

SYSTEM :
 目にたいした意味はない。鼻にも耳にも、さほどの重きは置かれていない。
 その生き物の目であり鼻であり耳は、他者には毒となり、己には呼吸と生命活動に過ぎない死黒の鱗粉。それが遠距離の殺意さえ感じ取り、恐怖の色を塗り、対処するべき殺意の形として頭の中に叩き込む。

 それ故に、向けられた殺意に気付き、健常な片腕/翼が掲げられる。

 だが知っていよう。
 その怪物が怪物たる所以などは。

SYSTEM :
 その目が、その腕が、その記憶が。

 ならば狩人は死を識るべき獣を撃ち滅ぼすが、死など超越えて然るべき幻想を殺せるほど都合がよくはない。
 初撃が、そしてこの混戦の二撃目が無為に終わった現実を解しているならば、必然、ただ撃つだけでは二の舞に終わる。

SYSTEM :
 ………ただそれは。
 ただ撃つだけならば、の話。

SYSTEM :
          おく
 吸い込まれるように葬送られた死。
 紫黒の風を切り裂いて、一度は天も射落とし手を焼かせるオリオンの流れ星が逆さに煌めいた。 

SYSTEM :
 即ち天から地へ。
 幻想には幻想を。

 氷の粒が、一点に定めた狙いの、まさに辿り着くべき先を享受する。
 そしてその狙いこそが、ある意味、彼/彼女にとっての致命だった。

SYSTEM :
 
 そもそもだ、そいつにしてみれば、遠方から飛んでくる銃弾などは、何十、何百と弾いて来たものに過ぎなかった。
 着弾した後に漸く“それ”を認識する有り様。言い換えるならば、これを受けたところで内外ともに意味はないと割り切っている。

 唯一、いま例外となった部分には、己を護って来た生物としての盾が働かず。
 欠片たりとも脅威を介していなかった、遍く穢れを爆ぜ殺すイチイの死毒が巡っていることに気付かず。

 それは───。

SYSTEM :
 いま再び。
 己の振りまく死毒よりも濃密に、死を浴び爆ぜた。 

“蝕みの君” :『▇█████████████▇▅▂………!』 

SYSTEM :
 咆哮が血に阻害され。

 がりがりと爪が音を立て。
 近付いた死の音に、そいつは喚き散らすように咆哮した。

SYSTEM :
 なれど忘れてはならない。
 ・・・・・
 怪物の条件だ。

 怪物は死なず、言葉を交わさず、強くなければならない。
 そしてこの生き物は、その“怪物”と呼ぶのも烏滸がましく、哀れになるような動機の下、その翼をはためかせていた。

SYSTEM :
 死の危険に───。

 それは、何より獰猛に吼えた。

“蝕みの君” :
■オート:還リ来ル輪廻
《魔獣の証L1》

SYSTEM :◇ ◆ ◇

SYSTEM :

【-Battle Finish-】


SYSTEM :

【Check!】
 シーン移行/バトル終了条件を満たしました。

・“蝕みの君”のHP0
 

SYSTEM :◇ ◆ ◇

system :[ ”朧の狩人/残骸” シホ ] 侵蝕率 : 55 → 60

SYSTEM :
 前提から話す。
 レーレ・シュヴェア  トライブリード
 “蝕みの君”………三種混合種の特質を持ったこの大型生命体は、
 レネゲイドで編まれていた生物である。

SYSTEM :
 どこかの誰かの言葉を借りると“同朋”だ。
 これを同朋と読んで胸襟広げるには、いささか以上に問題があるが、
 ともかくコレは『人』に近付いても、決して埋められない隔たりを持つ生物だ。

 そいつの躯体を占めるレネゲイドの割合は人の比にはならない。
 なぜならば生まれた時から、衝動を刺激する背教者の意志と共にある生物だ。
 だからこそ、レネゲイドから生まれた者が操るオーヴァードとしての現象は、総じて自覚があるほど人のそれより奇怪で、強靭で、凶悪なものになることが多い。

SYSTEM :
 人の比にはならぬ割合をレネゲイドが占め、構築したもの。
 誰ぞが言うには病が服を着て歩くも同然の生命体において。
       ・・・
 つまりそれは致命的だった。

SYSTEM :
 世を蝕む毒の象徴たる吸血鬼、人の獣心たる人狼を殺すものと言えば、基本的に何かと魔祓いの銀の弾丸が使われる。


 彼/彼女に撃ち込まれた銀の弾丸は二発。
 いずれも穢れを爆ぜさせるものだった。
 もちろん、それが悪かったというわけではない。

 彼/彼女を含めたそのものにとって、構造そのものから蝕む一撃は致命的だ。
     レネゲイドキラー
 疑似とて背教者殺しの対抗種弾。
 奇しくもこの戦闘においては、それに当該するものが片端からバラ撒かれていたが、なればこそソイツには“それ”に耐性があり、蝕むものさえも蝕む毒が致命的な段階になるまで気付かなかった。

 それこそ、物理的な生命力の喪失───火を見るよりも明らかな攻防における相性の悪さ、発動値の高さから繰り出された乾坤一擲であわや致命傷と相成った躯体で、初めて二発目の弾丸は強く効いた。

SYSTEM :
 端的に───。

タイガーアイ :
『効き過ぎたな』

SYSTEM :
 薄れていた死毒の鱗粉が───。
 再生しかけていた片腕/片翼が───。
              リザレクト
 生命の危機に、これでもかと再生を早めた。

“蝕みの君” :『▂▅▇...▇████████████████...!』 

SYSTEM :
 爆ぜる咆哮。
 受けたダメージによって分解され、
 しかし再生しかけていた片腕/片翼に起きる過剰な修復反応が、
 勢いを弱めていた“はず”の紫黒色にはためく風の勢いを強めた。
 
 言うなれば傷口をそのままにして血を垂れ流したようなもの。
 溢れ出すものは彼/彼女の生命力であり、
 凄まじい勢いの消耗と再生を続けている。

SYSTEM :
 ・・
 死期はそう遠くない。
 何故ならばいまのは致命傷だ。
     ・・・・・・・・・・・
 コレは、放っておいても死亡する。

SYSTEM :
 ───ただ。

タイガーアイ :
『シホよ。
 悪い知らせと良い知らせ、どちらから先に聞く』

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───気休めが効くうちに、良い方を聞いておこう」

タイガーアイ :
『けっこうだ。
 気休めを欲しがる弱気を、射殺す前に出し切るのは賢明と言える』

タイガーアイ :
『アレは致命傷だ。よほど今まで死が遠かったか、危機感というのが鈍いらしい。

 放っておいても、延命になろうが回復することは有り得ない』

タイガーアイ :
『………それでだ、悪い話だ。
     
 あやつの修復能力はキュマイラシンドロームから来る獣の生命力だけではない。
 この距離で漸く分かった』

SYSTEM :
 この生き物は。
 

SYSTEM :
 簡単に人を踏み潰しながら、赫怒で追いかけながら、
 死の間際となるとそれに怯え………。

 あるいはそもそも、最初から怯えを宿していたこの生き物は。

タイガーアイ :
 ・・・・・・
『たった今まで、此方側だったようだ』


【シーン7:去就】

SYSTEM :
【シーン7:去就】

 登場PC:全員
 登場侵蝕:なし

SYSTEM :
Tips-ロイス
 オーヴァードによっての命綱。
 自ら以外の隣人。転じて、その者の心が帰って来るところを指す。
 レネゲイドに肉体を侵蝕され、衝動を刺激され、生死の境目に精神にヒビが入っても。
 やがて人間の側に突っ込んだ足を離してしまわないように、彼らは「人間の側」にこれを置く。

 ………理性を確かめ合う他人との繋がりがあるオーヴァードと、
 それがないオーヴァードでは、ジャームになり果てる確率は著しく違う。
 例えば前者の方が、心を揺り動かされる機会が多いのだとしても。

SYSTEM :◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 ───直感的に、だれしも悪寒する。

SYSTEM :
 この生き物を駆け巡っていた血肉は、 
 この生き物から剥がれ落ちた鱗粉は、
 等しく他のオーヴァードにとって毒であった。

 死の間際の再生と出血。
 死を実感した生き物の、死への忌避が、
 爆発的なレネゲイド出力と深度を増幅させて行き着く先など、まずロクなものではない。

 元から箍の外れたモノなら別だが………。

SYSTEM :
 彼/彼女はそうではなかった。

 タイガーアイが、淡々と波紋を伝える。
 黒い風が、辺りを覆う。

SYSTEM :
 死をばらまき、蝕む。

 病が服を着て歩く生き物ならぬ、
 空飛び何もかもを飲み干す虚無の業病。

 その生き物がこうなったのは偶然だ。
 あるいは嘗て死んだときは、
 その危機感を覚える前に“理不尽”に襲われたが故に実感さえ持たなかったのか。
 それとも、一度“そう”なったから、今からこのように形を変えたのか。

“蝕みの君” :『▂▅▇...▇███████████████████▇▅ッッッ!!!!』 

SYSTEM :
【Check!】
“蝕みの君”がジャームに変化しました。 

 ロイス『????』『????』を破棄し、
 Eロイス『????』『????』を獲得します。

“蝕みの君” :『▂▅▇...▇███████████████████▇▅ッッッ!!!!』 

SYSTEM :
 死の間際に、真実。

 この世に存在してはならないたった独つの生き物になった。

SYSTEM :
【Check!】
 エフェクトおよびコンボの所持を確認しました。
(※今回は演出のみとなり、実際に使用は行われません)

 Major:治らずの病、怒れる心

SYSTEM :
■メジャー:底ヲ喪ス絶望
《CRソラリスL3》+《治らずの病L1》+《怒れる心L1》
 対象者すべてが特定条件下である時に使用できる。『邪毒Lv5』『憎悪:蝕みの君』を発生させる。
 なお、対象者が『非オーヴァード』の場合▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇。

・『蝕みの君』がシーン内に登場している
・自身以外の▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇

SYSTEM :
うめきごえ
 咆哮が何度も反響する。
 死の間際の断末魔と分かったそれは、振り返ってみればそもそも最初から“そう”だった。

 それと同時に溢れ出すものが、致死量/影響を及ぼすものに変わるのは、すぐではない。
 ただ、際限なく回復と崩壊を繰り返しながら死に至るだけのこの生き物の螺旋を止めるほどの時間はない。

SYSTEM :
 これを前にした、つい先ほどまで怒りを渦巻かせていたものの反応は単純だ。

“渇望喰い” :

「───」

SYSTEM :

 本能的に彼は次のように判断した。

“渇望喰い” :
 ・・・・・
 死ぬわコレ

“渇望喰い” :
■オート
《瞬間退場IIIL3》

SYSTEM :

 そしてこの生き物の行動たるや何より素早く、もはや一瞬でも”死の危機”を悟ったが故の迅速な行動だった。

 何なら本人すら自覚していない。

 生物の本能として、あるいは何かの条件付けとして。
 コレは「留まると死ぬ」を感じ取った瞬間、何より素早く、このような行動をとった。 

 つまり。

SYSTEM :
 攻撃に使う予定だった電撃エネルギー。
 ───ですらない。充填最中だったもので、ここまでのふざけた速度は出ない。

 無意識的に割いていた余剰部分の全てを用いた、脇目も振らない、脅威から離れること“だけ”に全意識を割いた全力逃亡である。

SYSTEM :

 ───誰が知ろう。
     ・・・
 そいつの不死身の理由。
 生き延びて来た本当の理由は、
 物理的頑強さなどではなかった。

SYSTEM :
 
 単に。
 死ぬほど逃げ足が早く、
 死ぬほど「死」に敏感なだけだ。

SYSTEM :
【Check!】
 エフェクトの所持を確認しました。

 Auto:瞬間退場L3、瞬間退場IIL1、瞬間退場IIIL3

荻野目 旭 :「────!」

荻野目 旭 :
 まさかと思うけど──
 これまでずっと違う形なりに正気で、
 それがいまの死で『戻れなくなった』っていうこと!?

荻野目 旭 :
「……うそ、だぁ!」
 何度目かの泣き言がこぼれた。
 もうどうとでもしてくれ! ってそりゃあひとりなら思っていたけど、助けられた命を抱えて護衛対象がいる今言っていられることじゃなくって。

荻野目 旭 :
 あの『ワンちゃん』の判断はかぎりなく正しい──
 自分を生かすすべに貪欲な獣が逃亡を選択したのなら、絶対にやるべきは逃げの一手だけれど……!

久外境耶 :「情けねえ声出すな。ンなだから、あのオンナに見向きされねーんだろ」

久外境耶 :
           ハラ
 死が迫る、死が凝る。肝の底から凍えていくのを自覚する。欲望と一連なりになった衝動が、火種のように燻った。

(……、)

「お開きだ。行くぞホデリ」

久外境耶 :「おれはあのガキ拾ってくる」

荻野目 旭 :「ぐぅ」ぐうの音だけは出る!

久外境耶 :
 それを後目に、いっとう死の濃い地点めがけて駆ける。

「下がれ1号! さっきの焼き直しだ」

 つまり、うしろに引っこ抜いてやるから手伸ばせ──だ。

三廻部 颯 :
 砂が舞う。
 時間切れを迎えた手甲が崩れ、砂へ還っていく。
 今目の前で何が起こっているのか、少女には一切わからない。
 目の前のドラゴンを倒した、それからどうなった?
 何もわからない。
 
 ただ──このままだとヤバいというのは、嫌ってくらい伝わってくる。

三廻部 颯 :
 僅かにその心に不安が滲み出たとき、少女の体勢が崩れる。
 最初に目覚めたときとは反対に、か細い光に包まれ──

三廻部 颯 :
「……!」

 一度殺される前の姿にそこで戻る。
 最悪のタイミングだが──それを維持するために必要な心構えというものに、僅かなブレが出た。
 頭の中がいっぱいになる。まずい。どうしよう。やばい。
 具体性のない言葉が自分を苛もうとしてきた、そんなときに……

三廻部 颯 :
「あ──は、はいっ!」

 下がれ、と後ろから聞こえてきた声。
 それが意味するところをなんとなく理解して、少女はきちんと想定通りの判断をした。

「お、おねがいします!」

 半ば涙目になりながらも必死にその手を伸ばした。

久外境耶 :
「あ!? おま、先言え──!」

 成り立てが、成る前の姿に戻る。モルフェウスの武装が解けたのだと理解し、コンマ一秒だけ躊躇って、出した結論は「なんとかなるだろ」。

久外境耶 :
 掴んで、引いて──ぶん投げる! 

 着地の心配は他のやつがすりゃあいい。生きてりゃヨシのエスコートで殿を交換したら、あとは逃げの一手だ。

三廻部 颯 :
「わーーーーっ!」

荻野目 旭 :「覚醒したての子に無茶させないでくださ〜〜〜〜い!!!!!!!」悲鳴!

久外境耶 :おめーにだきゃあ言われたかねえよ!

『ホデリ』 :かかるものを前に諍いなぞするでない!

『ホデリ』 :…それはそれとしてあの小娘…いずこに?

荻野目 旭 :戦力計算の結果で〜〜〜す!! 不可抗力で〜〜〜〜〜す

久外境耶 :あ? ……あっ

荻野目 旭 :……………

三廻部 颯 :どこーーーーっ!?

荻野目 旭 :………………いえ、大丈夫です!

荻野目 旭 :「あとよろしくお願いしま〜すっ……メガネのおじさん!」

三廻部 颯 :何が大丈夫なの〜〜〜〜〜っ!!?

木口龍 :
 あ終わった。
 直感した。

木口龍 :
 オレぁ聞いたことがある。
 暴れ回ってるのは別にジャームじゃなくてもなることはあると。
 引き金を引いたのはオレたちだったんや。
 手を触れないでそっとしておくべきだったんや。
 知らずのうちに自爆スイッチに手をかけたんや。
 あとは北野武よろしくドンパチでドガンよ──。

木口龍 :
「──つかとどまってたらホントに死ぬな……ゲホッ……」

 冗談はさておいて。
 アレは今、自壊しながら暴れまわる一個の星(ブラックホール)だ。
 逃げるにしたって、少しくらいは情報を稼いでおきたい──。

木口龍 :
(……意味もなく、アレがこんな島にいるわけねえだろ……なんだ。やつは、何を狙いで出てきやがった……)

 ──で、当然、観察するとなればドラゴンを注視するわけで。

木口龍 :
>>「あとよろしくお願いしま〜すっ……メガネのおじさん!」

「えっ何が──」

木口龍 :

「──グホァッ……!!??」

荻野目 旭 :ナイスキャッチ!

木口龍 :
 完全に死角から飛んできた人間砲弾が、木口龍の鳩尾にクリーンヒット……!
 その肉体、クッションにするにはやや硬いが、少女への衝撃は和らいだッ!
 かわりに速度からくる衝撃の効果は、木口龍へと伝わる!

木口龍 :
 ズザァァァァッ……哀れ! なにわ探偵の体が、砂浜へふっとばされていく!

SYSTEM :無言で境耶の所作に同意し、馴染みもしない重力の波長ではじめ死の淵に突撃した境耶に襲い掛かる死の空気を隔てていたホデリは、遺憾の唸り声をあげた…。

SYSTEM :“救助者が増えておるではないか”というこの一刻を争う状況への、別に大丈夫ではなかった心の叫びであった…。

三廻部 颯 :
「ぷえっ」
 
 一方1号、衝撃を成人男性で殺し砂浜に無事(?)着地。

木口龍 :
「──」

 血反吐を吐いてその場でぶっ倒れている……!!!

久外境耶 :ナイスキル!

木口龍 :ナイスキルも何も下手人テメーじゃねーーーーか!!!

久外境耶 :ワッハッハ

久外境耶 :「止まんな止まんな」追いついて1号の首根っこ掴んで持ってく!

三廻部 颯 :
「わ、わー……ダイジョウブデsんぎゃあっ」
 1号揺られます!

久外境耶 :ワリィ進行方向だから踏んじまうな〜!

『ホデリ』 :『安穏ならずや!』 何もかもが!

木口龍 :あ、GM、それはそれとして本来書こうと思ってた部分も果たしたい。蝕みの君は、オレたちを追うような素振りは見せてるか?

GM :………(何かを言いたげに別の窓を指差している!)

木口龍 :「ゲホァッ!!!」(ダボォキル!)(それはそれとして踏まれる)

木口龍 :
という回答があったので……じゃあちょっと分析の方向変えておくか。
◯明確な変化はあるか。
◯というかヤツのタゲは誰だ。
っていう感じで見ながら……、

木口龍 :「オレの伊達メガネがああああああああ!!!!」と叫びながら這うように逃げる。

荻野目 旭 :伊達眼鏡さ〜ん……! 伊達ならいっか!

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……さて、その頃。彼らの退路と思われ、それに向かう中途にも波瀾を伴い行く方向には。

木口龍 :(そっと替えを装着しながら)

”朧の狩人/残骸” シホ :
 或いは、この戦禍を招いた下手人の一人が茫然と立っていた。

 思いもしなかった、悪夢ですら見なかった状況。
 狩人として上塗りしてきた経験が、かえって酷く喧しく本能に警鐘を打ち鳴らす。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 “やってはならぬことをした”───結果だけを見れば、そう結論さえできてしまうような光景。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 最悪さえも飛び越えた先の現象を前にして、足の血が全て抜けたように立っている感覚がない。
 伽藍堂になった頭蓋骨を引っ張られたように頭が詰まり、
 視界が一気に霞みがかる。
 身体を蝕む死毒の痛みに、際の際で意識だけ繋ぎ止められている。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 幾度となく揺さぶられた感情が、いまどこに属しているのかすら分からないまま。
 ただひとつ、やっと口に出せたことは───

”朧の狩人/残骸” シホ :
 「─────────そんな。」

 あまりに通り一遍な、安い使い捨ての感情だけ。

SYSTEM :
 安い使い捨ての感情に応えるものはいなかった。
    バカ           ノイズ
 普段、賢者が軽口代わりに垂れ流す雑音の数百倍も煩わしく、悍ましいものの奔流の中で。
 眼前に見たものに、狩人の残骸が何を思ったかは定かでない。

 ただソレは死に瀕しながら、辿り着いてはならないところに辿り着いた。

SYSTEM :
 それだけの事実であるから、
 それだけの事実として。

 無情なものが無情に判断を下す。
 いや、それは判断だったのか。

タイガーアイ :
『藪をつついて蛇を出したのはどちらか。
 プランナーめが、知っておったな』

タイガーアイ :
『アレは北欧の迷い仔であったのか。
 道理で………』

SYSTEM :
 ………その呟きは、あなたに寄り添うものではない。
 否、仮にそれを発していたとて、あなたがコレに気付いたかどうか。
       
 痛覚と経験が同時に反響させる危険信号。
.        デュエット
 レッドアラートの合奏中に、賢者の助言は意味を為さぬ。為したかも知れないが、そいつはそいつで、烈しく興味と別の何かで明滅を繰り返していた。

SYSTEM :
 ………そして散々ばら眼鏡を犠牲にし、既に犠牲にした気がしてならない尊厳を踏み台にした男の、なぜか明確に働く理性。

 ひょっとするとこの場の誰より冷静だったかもしれないものの視線は、きっと最悪の結果を捉えた。

SYSTEM :
 明確な変化は言うに及ばない。

 先程颯の攻撃で“や”られた片翼を起点とした部分は、レネゲイドが肉体と形作っては崩壊するプロセスを秒単位で繰り返している。
 血が固まる直前でなぜかバラけるのを繰り返すようあんものだ。痛みが修復されず、ずっと喚きながら、侵蝕を続けている。
   ・・・・・
 だがそんなことはどうでもいい。
 これが死ぬ生き物なのは明白だ。何時かは知らないが、島にいて、しばらく時が経てば、この災害になってしまったものは簡単に死ぬだろう。

SYSTEM :
 そう。
       ・・・・・
 繰り返すが、そんなことはどうでも良かった。

 重要なのは死の間際にコレが何をするか。
 変貌した生き物が何を考えているかだ。

『ホデリ』 :
『………しまった!』

SYSTEM :
 
 瞬間。
 
 その生き物の予兆を見たホデリが、間髪入れずまたもやエフェクトを形成した。
 馴染みもしない重力の波長は、空気の割合に侵蝕する極小の死の鱗粉を隔てる不可視の壁。それは空気への防御というより、来るものへの備えだ。

 当然ながら己はその範囲ではない。
 ・・
 それを良しともしていないのか、前足も後ろ足も、守ろうとしながら一歩引くという、
 よく言えば己の生命にも頓着した、悪く言えば中途半端な所作だ。

SYSTEM :
 だが本当に「しまった」と叫んだ理由はそれではない。
 ついでに言うならば、
 今の今まで戦っていたが、魂胆はふつうの少女だったものの気の緩みでもない。
 それをある意味尊重しある意味乱暴に命を扶けたはいいが、同時に一名が笑いごとでは収まらない危機に陥った一連の出来事などでもない。

SYSTEM :
 其方を見たことの驚きがなかったわけではないが、それよりも。
 それよりも。

 衝動をむき出しにしたこの生き物が。
     ・・
 常に死の恐怖と隣り合わせになったこの生き物が。
 兎に角自分の感知範囲にいる動くものに、どんな対応をするかを、この白狗と、そして同時にあなた/龍の不自然なほど冷静な部分が悟った。

SYSTEM :
 もはや助からぬことなど、常識の話だ。
 自分の命を測るものは本能であるが、命を脅かす危機を拭分けるものとは須らく理性である。
       ・・・・
 これを捨てたなれはてに、いま自分が苦しんでいる理由何ぞが分かろうはずがない。

SYSTEM :
 即ち、この生き物の行動はこうだ。

“蝕みの君” :

『▇███████████████████▇▅ッッッ!!!!』 

SYSTEM :
 生き残るために、動くものを殺す。

 もはや何のために咆哮し、彷徨したのか分からず。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 何のために己の古き縁を追いかけていたのかすら、定かでないモノへと変貌しながら。
 
 コレを動かすモノは、
 そもそも最初の最初から恐怖だった。

 三年前はそうではない。
 三年前はもっと堅牢だった。

SYSTEM :

 絶海に佇む孤島。波風ひとつなかった浜辺。
 ごうごう、と音を立てた。

“蝕みの君” :

 独りは ▇▇に▇▇のは
 ただ 何も▇▇▇に死ぬのは

“蝕みの君” :



   ・・
 ───イヤだ





SYSTEM :

 二度と望みを果たせぬ怪物。

 あるいは颯が最初に識る/あまりにも例外の過ぎる、
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 オーヴァードという生き物が辿り着く最悪がコレだ。

 文字通り。
 死ぬまで目に映るものを殺し、やがてくたばるだけの暴力装置でしかないものが。

 先程までとは比較にならない勢いの黒風を束ねた。
 威力の話ではない。威力で言えば、死に掛けの個体が偏向すらさせないそのレネゲイドは、傷すら与えるか怪しい。

SYSTEM :
 ただし傷すら与えるか怪しい代わりに、それは攻性を持たせる前の、彼/彼女の血であり因子であり毒性であった。

 ある意味今までより性質が悪い。
 無差別に吐き散らすだけで、恐怖は伝播し、毒はレネゲイドに羅患した生物を崩壊させて殺害する。

SYSTEM :
 木口龍に分かる事実はソレだけだが、射線上の狙いはもはや区別もつけられておらず、また範囲からしていちいち一人二人と狙い定める必要性もない。

 そもそもその空気はこの個体が征く先に舞っているのだ。
 遠からず死ぬ代わりに、攻撃どころか呼吸だけで人を殺せる。

SYSTEM :
 そしてそうなった生き物/竜が、背を向けたものに容赦なく咆哮を解き放つ。

 もとい、本能の儘に解き放とうとした。

SYSTEM :
 ………だが。

 ジャームとは本能で動く生き物だ。
 衝動が、時として、非効率で不可解な行動さえも、順序を無視して最優先させる。

SYSTEM :
 その生き物の衝動は恐怖。
 向けられているものとは自らを死に追い込むものへの恐怖/その根底にあるものはまた別の恐怖だった。

 つまりだ。

SYSTEM :
 つまり、正しいのは。

 なんでもいいから一撃怯ませることだった。 

SYSTEM :
 彼の顔面で、小さく何かが爆ぜる。

 誰がやったか、何をやったか。
 定かでないが、装甲/甲殻の健在な、まだ痛覚を認識している部位に。
 漂い彷徨う鱗粉を触媒にした発火現象が起きる。

 意味はさほどない。傷かも怪しい。

SYSTEM :
 ただしその生き物は“それ”に驚いて───。

“蝕みの君” :
■オート:瞬間退場I
《瞬間退場I.L1》

“蝕みの君” :『▂▅▇...▇████████████████...!』 

SYSTEM :
 何の傷もないが、とにかく“どこかから迫るもの”に、その生き物は臆することも恥じることも意味も知らず、翼をはためかせた。

 羽音を轟かせ、無様な背姿で、そのくせ信じられない速度と力強さで、あべこべに飛んでいく。

SYSTEM :
 それと共に、残っていた鱗粉が少しずつ晴れていく。
 厳密には、そいつの近くでしか、そいつの一部は存在できない。
.. レネゲイド
 世界の背教者さえ殺す猛毒を宿して生まれた生き物は、世界のはぐれものにさえ嫌われているからだ。

SYSTEM :
 嘘のように音が止む。

 ………いや。
 どこかから、音がする。
 不確かで、均一ではないが、草木を踏む足取りの音。

SYSTEM :
 そう言えば。

 先程の爆発。
 ソラリスエフェクトを基底とした、触媒となる発火物質による遠隔爆破は、二名ほどにとっては全くの未知ではなかった。

荻野目 旭 :
(ソラリスシンドロームによる、
 《エクスプロージョン》
 体内工場での火薬生成──)

荻野目 旭 :自ずから炎を精製するサラマンダーではなく、同種のシンドロームが生んだ薬を逆手に取った見事な不意打ちだ。

荻野目 旭 :知ってる──この熟練した薬の使い方は彼女だ!

荻野目 旭 :「……“イリュシデイター”! 僕です、“ナイトホーク”です!」

荻野目 旭 :
 推定される使い手のコードネームを正確に発音。
  フ ァ ル ス ハ ー ツ
 一般的に敵勢力とされる相手がいるけれど、この際構いはしない。
 大切なのはこの状況で、手を組む相手を間違えないことだ。
 ……それから、迷子になったときに大声でおともだちの名前を呼ぶことの偉大さなんかも、ついでに噛みしめる。

久外境耶 :
 ホデリは真っ先に気付けるヤツだから、行動も早い。あいつを内に置かない護りの壁に「しまった」はこっちの台詞だと言いたくなる。

久外境耶 :
 死は、既に実体を持とうとしていた。恐怖を推進剤に、本能を起爆剤に。膨れあがった毒の因子が解放される、その瞬間──

 爆ぜるように火が燃えあがり、恐怖に支配された"成れの果て"は何処ぞへと逃げ出していった。

久外境耶 :
 狙撃じゃ、ああはならない。狙い撃ちに相違はないが、どう見たってカテゴリ違いだ。

「三人目かよ」

 "イリュシデイター"とわざわざ喧伝するのが、どういうつもりかは知らないが。

三廻部 颯 :
(ぽかーん……)

久外境耶 :ステイ。

三廻部 颯 :は、はひ……。

SYSTEM :
 草と土を踏み分ける音が、不規則に聞こえていたが。
          コードネーム
 あなた/旭が自らの識別符号を口にすると、その足取りはふと止まる。
 ………あるいは、口にした時が丁度“着く”頃だったのかもしれない。

SYSTEM :
 一度顔を見ただけ。それも土壇場だ。
 だが、同じようにコードネームだけは知っている。
 そんなものだから、一先ず足を止めたその音は、あるいは安堵の音だった。

 やがて、音の主が姿を曝す。
 五分の三には初めての顔だが、それはやってきた側にも同じだったのだろう。

SYSTEM :
 そうして草と土を踏み分け、歩く音が砂を踏む音に変わり。
 現れた、つい先程飛び去ったものがまだ“まし”だった頃の足止めを買って出ていた、比較的年若い女の姿。

 オーヴァードの死は精神の死であるからして、肉体の傷の治りなどは、例外はあっても、須らく常人など比較にならないもの。
 治っていない傷跡が僅かに顔を覗かせる/リザレクトの痕跡が確かに見える───それでも、無事は無事であった。

SYSTEM :
 彼女の視線ははじめ旭とシホの位置を確認しようというものになり。
 それから、そこにいる三人/お互い顔も見知っていない者を目にやる。

 明らかに事情を知らぬ者とは言い切れない佇まいと振る舞いをした少年/境耶を一瞥し、
 それから身の着のままとも言える二人を見た。
 後者の方が識別時間はわずかに長く、それから彼女は顔を出してから数秒ほどの時間を経過させ、漸くと言った様子で口を開いた。

“イリュシデイター” :
 レムナント
「“残骸”は、」

SYSTEM :
 恐らくは衝動的に口を衝いて出た一言だったようにも思えるソレを、彼女は一瞬で仕舞った。
 すぐに表情と態度が、ついさっき、逃げる直前に見せていた、推定“普段”のものに戻る。

“イリュシデイター” :
「───いえ。今はあなたの方からですね。
 無事でいてくれて良かった、“ナイトホーク”」

“イリュシデイター” :
「………そちらの御三方は?」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 目前まで迫る死を、空に爆ぜる火が灼き祓う。
 見覚えのある火だ。もう見ることも叶わないと思っていた、あの火。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 聴き覚えのある靴音。
 次いで現れた、見覚えのある顔。声。

 ……ひんやりとした実感が、穴だらけになった名前を被り直す為の冷静さを戻してくれた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……。ワタシは無事です。
 戻っていたのですね、“イリュシデイター”」

 知らず知らず出来てしまった距離を埋めるように、皆の方へ歩み寄る。
 いまのワタシには、こちらの仮面が似合っているだろう。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「彼らについて話すには少々長くなります。
 もう少しこちらへ。積もるほどではないとしても、お互い話もあるでしょう?」

SYSTEM :
 狙撃手という立場上、距離の遠く、この位置では死角だったあなた/シホの姿を見つけると、彼女はふっと面を上げた。
 面と向かって分かる喜ぶ様子はない。少なくとも、見つけて漸く、あの後の二人の顛末を確認出来て一安心………という体に見える。

“イリュシデイター” :
「どうにか。
 まあ、祟られずには済んだようです」

SYSTEM :
 などと、直前に言われた言葉を掘り返しながら、距離を近づけてくる。
 少なくとも全員の顔が見える位置だ。過剰にシホひとりに近付く、と言った様子ではなかった。

荻野目 旭 :「…………よかったぁ」

荻野目 旭 :
 心底から安堵のため息が出て、どっと色んなものが押し寄せそうになるのを堪えた。
          カンジョウ
 よかった、の一言に余分を押し込んで、冷静なチルドレンの“ナイトホーク”を引っ張り出す。

荻野目 旭 :「……とりあえず、合流はできてよかったです。……。……」

荻野目 旭 :
「……本当に、積もる話だらけですね。
 池田さんの捜索は急がないといけませんけど──」

荻野目 旭 :「推奨はできませんね。こんな状況ですから」

荻野目 旭 :三廻部さんのこともある。同じぐらい、“ラッキージンクス”のことも。急いて情報共有をおさぼりでもしようものなら、のちほどややこしくなりそう。

荻野目 旭 :少し悩んでから、話が進む前に“ラッキージンクス”を見る。いっとき共闘関係を築いたけれど、彼の動静はわからない。彼の所属と今後について、彼が話すまでは素知らぬ顔をする程度の『お返し』はして然るべきだ。

久外境耶 :
 いかにも処世術の巧いやつらしい返報。いい子ちゃんのナリとフリして、やってることはまるきり不良だ。

 いいのかねぇと揶揄おうとして、
 よかねえからその態度かと納得。
 
 ……話が通じるのが一人いるなら、アテなしよりかはマシだろう。

久外境耶 :
「ホデリ、ついでに1号。……あー、うーん、あとで説明するわ」

 たぶん。

 FHとUGNがどうのこうのは、世間知らずには関係のないハナシだ。おれだってキョーミねえし、それを理由にするつもりは別にない。

久外境耶 :
「──で、おれが"ラッキージンクス"。混ぜろよUGN、タスケアイはおたくらの分野なんだろ」

 二人をその場に残して、談合に乱入。背後から旭クンにむりやり肩組んで、お堅そうな二人へご挨拶。

“イリュシデイター” :
「ホデリ」

 彼女はおそらくそれが“意識の外側”にいた白い狗なのだと察した。 

“イリュシデイター” :
「…1号」

 彼女はそれが一先ず『学生服の少女』を差したものだと、僅かな時間をかけて呑み込んだ。

“イリュシデイター” :「………」

三廻部 颯 :
「ミ゛ッ…………………………………」
 とうの学生服の少女は身振り手振りで何かを訴えようとしていた。
 ……が、何かを察したのかそれ以上は口にしなかった。鳴き声かもしれない。

SYSTEM :
 ………彼だけ扱いが雑ですね。

 こっそり呟いた一言は、どこに届いたやら。
 名を挙げられた当人(当匹)は、小さくうなずき、そのまま面を上げた。ひとまず“異議なし”だ。

“イリュシデイター” :
「それで………。
 別に考えていなかったワケではありませんが、やはりですか」

“イリュシデイター” :
「ですが構わない、というには。
 私はちょっと後出しが過ぎますね」

SYSTEM :
 さらっと口にした一言は、この場に”彼”がいて、特に旭の様子が(いまの表情は不明だが)手を出そうとか、そういう分類ではないことを察したからだろう。

 察したが、積極的に頷くかは別物。
   ・・
 ───人柄を知っているあなたの判断を聞きたい、が、恐らく彼女の言いたいことだった。

“イリュシデイター” :
「それとあなた。そちらの学生服の子。
 ………お名前は?」 

荻野目 旭 :うぉわあ! 肩組まれてびっくりするけど、よろけながらギリセーフです! ぴし

三廻部 颯 :
「わ、え、えっと……、
 三廻部……颯と言います! じゅーしちです!」

 変な身振り手振りが通じたのか、1号はようやく名乗った。
 1号で通してても別に問題はな……かったとはおもうが、大人の人に出会うのは貴重なので。

「何が何だかわかりませんけど………げ、元気です!」

久外境耶 :「タメかよ」うそだろ

“イリュシデイター” :この状況が一番ウソだと言いたいところですが

荻野目 旭 :ホントにね

”朧の狩人/残骸” シホ :同感ですね。

三廻部 颯 :
「そーなの!?」そうなの!?

“イリュシデイター” :
「ミクルベさん…三廻部さんですか。
 日本の名前にはあまり詳しくありませんが、一先ず元気でよろしい」

三廻部 颯 :
(あええ外人さん……!?)
 心中は穏やかではなかった。割としょうもない理由で。

“イリュシデイター” :
「ご心配なく。一応、そっちの言葉は分かりますよ」

三廻部 颯 :
ほっ……。

“イリュシデイター” :
「ええ。どこから説明したものか分かりませんが、こちらも名前を。ノエルと言います」

SYSTEM :
 さっきの呼び名と言い、身の回りの人と言ったところは、いろいろひと段落してから、と付け加えつつ。
 一先ず、もっともオーヴァード社会に無縁だろうことだけ分かる彼女の仕草に目を向けている一方で………。

 こっそりと、境耶のもとに白狗が近づく。

『ホデリ』 :
『友ならずといったようだな』

SYSTEM :
 少なくとも言葉の意味───特に彼は横文字が伝わっていないらしい───を解し切っていないようだが、そのある意味変わらぬ態度から、それだけを受取ったようだ。
 それを口にすると、何かを振るまで、彼は両足を砂場につけ、押し黙った。

久外境耶 :「おー、なんなら敵だぜ敵。つってもお互いのお偉いさんがな?」

久外境耶 :
「ま、ちょい待ってろ。最悪こいつらの情報だけもらってトンズラこく手もあるからよ」

 手組むのもぶっちゃけ目的はソレ。アテなし物の怪退治の旅だ、連中が役に立ってくれりゃいいが。

荻野目 旭 :ひとりと一匹の話聞いて、ちょっと肩をすくめます。

”朧の狩人/残骸” シホ :

”朧の狩人/残骸” シホ :
「あんなことの後なのに随分と元気ですね……。
 その方が心配ないですけど」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 さて……。推定FHに、覚醒したての少女に、謎多き変な眼鏡。思えば、ワタシが一方的に彼らの様子を識っている状況だ。
 彼らに対してワタシが“残骸”を名乗る理由も、ないといえばないのだが。
 残る二人の前だ、話が余計に拗れるのは避けたいところ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ああ、そういえば皆さんへの名乗りはまだでしたね。
              レムナント
 ワタシはUGNイリーガルの“残骸”、名をシホと言います。この島にはこちらの“イリュシデイター”と共に来訪しました。
 後方からの狙撃による支援が得意なんです。こんな状況ですが、これからよろしくお願いしますね!」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 構え直して見せた銃は、単なるその武力の誇示と映ったか。
 或いは、引金から解放されていない指先を
 おまえをしんようしていない
いつでも発砲に移る準備があるという無言のサインと取ったか。
 ……恐らくは、彼らの思いたいように受け取るだろう。ワタシもそれが望みだ。

SYSTEM :
 性能の誇示とも、威嚇行為ともとれる銃口をどう受け取ったのか。
 少なくとも………。

『ホデリ』 :
『先に言いおく』

『ホデリ』 :
『わたしはこの小僧との先約がある。
 ………そのてつはう、罷り間違って向けぬよう恃もう』

SYSTEM :
 少なくともこの生き物は、どうにも無条件で人を信じるほど善性の持ち主ではない。

 見ればわかることだ。概ね、行動から思われるほど善意の生き物でなく、悪意の生き物というにはもっと及ばないこの白狗が、心配か警戒か、どちらでこの台詞を吐いたのかは定かではなかった。

三廻部 颯 :
「? ?? ???」

 一方御年17歳のクソガキ1号は、
 おそらく名を名乗ったということだけ認識し、
 その他全ての固有名詞に対して「なんすかそれ……」と困惑の表情を続けていた。

荻野目 旭 :

荻野目 旭 :

久外境耶 :
 いかにも朗らかなツラで武威を示す"残骸"に、口角が吊り上がる。牽制か? そりゃあ逆効果ってもんだろう!

「ああ、よく知ってるぜ。二度もドラ公ブチ抜いてたよなァ……」

 今は向いてない銃口を掴んで、心臓に導いてやってもいい。目の前でミンチになってゲラゲラ笑う姿を見せてやろう──と楽しくなったあたりで。

久外境耶 :
 ……もっと楽しくなったので路線変更。そうさな、おれの暫定使い途はそっちだ。

「そういうコト。おたくらも、おれの理由がこいつって言やあ多少は安心できるだろ」

 逆に言えば、ホデリが連中とやってけないと感じた時が縁の切れ目。テンプレートな関係を築くことになる。

荻野目 旭 :「……あ、あ〜っ、と」

荻野目 旭 :
「おたがいの気持ちもよ〜くわかるんですが、
 三廻部さんとわんちゃんとおじさんからしたら、シホさんもまだ『突然出てきたひと』ですから──とりあえず、そっちからにしましょ」

荻野目 旭 :“ラッキージンクス”に肩を組み返すには身長が足りないので、肩をぺしぺし。

荻野目 旭 :
「わんちゃんの先約がどういうことなのかはわからないんですが、彼らもとりあえずは僕らと足並み合わせてくれるみたいですしね。
 遭難中に陣営気にして牽制しあってるのも効率悪いですし、」

荻野目 旭 :
 ・・・
「一般人いますし? 僕ら英語言ってるみたいでしょうから」

荻野目 旭 :
 三廻部さんと……たぶん眼鏡のおじさんもそうかな。
 僕が『一般人』とか持ち出したのは、三廻部さんにもわかるように僕が『一般人じゃないです』のアピールだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……この牽制そのものにはさほど意味がないとは、承知の上だ。この自己紹介も、約1名と1匹には半分届いていたかどうかも怪しい。
 つまりは……

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……まぁ、概ね“見ての通り”です。
 個人の信頼の可否を計るのは難しいですが、ひとまず彼らの関係は信頼できる」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「それに、“ナイトホーク”の言ももっともですしね。
 話すには長くなると言ったでしょう、“イリュシデイター”」

久外境耶 :
「あいつ、おまえをフったオンナに最初に手付けたぜ」
 『一般人』にイロモノ含まれてるのを察してささやく。
 曲がりなりにもオーヴァード、保護の必要ナシ。流石にイリーガルくらいの素性はあるだろう。

荻野目 旭 :眼鏡のおじさんを二度見します。

荻野目 旭 :そもそもあのヒトとの関係誤解されてる気がしますけど…!? いま反論するとややこしいですし…!?

『ホデリ』 :小僧…

『ホデリ』 :焦がれたる相手は択べよ…

久外境耶 :ややウケ

荻野目 旭 :違いますゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

木口龍 :
 目まぐるしく変わっていく状況。
 UGNやらなんやら、仕事の上でしか聞いたことのないようなワードが次々飛び交っていくのにぼうっとしてて──。

「な、なんだ。オレが何かしたのか」

 何かしているが服着て歩いている反応をした。

三廻部 颯 :?(?)

久外境耶 :「何かしたっつうか……」

久外境耶 :「どうかしてる」これだろ

木口龍 :「ふっ……」

荻野目 旭 :「ぜったい褒めてないですけど」

三廻部 颯 :大丈夫かなこの人

”朧の狩人/残骸” シホ :ただでさえこじれた話がさらに拗れる音がする…

SYSTEM :
 所感………。

 信用の是非はともかくとして後回しが一人、警戒が一人。
 それでも即座の喧嘩腰とならない程度の小突き合い───厳密には売られた喧嘩を品定めしているだけに過ぎない状況と、その横で状況を呑み込めていない二者を前に、彼女は小さく頷く。

“イリュシデイター” :
「尤もです。
 彼女の様子からして………正直あまり考えたくなかったケースですが。説明しないといけないこともあります」

SYSTEM :
 あと、そちらの彼も、と。
 少なくともオーヴァードではあるようだし、イリーガルの線はあるが、何故か年齢的に遥か年下と概ね同リアクションの青年にも目を向けた。

 何かしていないかと言えば何もしていないが、周囲の反応がどう見ても何もしなかった男に向けるものではなかったからだ。

タイガーアイ :
『………戦闘中の態度とやはり違う………。
 ふむ。どうかしているか。強ち間違いでも………』

タイガーアイ :
『まあ良い。暫く観察する。
 手っ取り早く中身を見せて貰えば早いが、そんな暇はお主になかろう』

SYSTEM :
 好き放題言うだけ言った…“出来るなら自分が直接記憶に触れる”宣言をしたタイガーアイをよそに、彼女は話を続ける。

“イリュシデイター” :
「それに、私よりかは彼を見たのでしょう。
 責任まで預けっぱなしとは言わずとも、判断は後押ししますよ。
 呉越同舟でけっこう。其方が私の訪ね人という顔でもありませんしね」 

“イリュシデイター” :
「後は………。
 其方の二人に首を傾げさせっぱなしとも行かない。積もる話もひとつずつ整理したいところですが」

SYSTEM :
 流石に此処ではよろしくない。

 件の生き物の執念深さと恥知らず振りを覚えているものならば、誰しもがすぐ、その可能性───つまりは数十分程度したら、平然と引き返し、何事もなかったかのように“ツケ”を払わせようとする光景を想像するだろう。

 あるいは文字通り、一発仕掛けてから脱兎のごとく逃げ去るものの繰り返しか。
 此処に留まって話を整理する、というには、少しよろしくない環境なのである。

SYSTEM :
 問題は………。
 そんな都合よい場所の心当たりなど、未知と未開で形作られた非常識なこの島にあるのかどうか、だが。

『ホデリ』 :
『その前に、此処では何かと不便だ。
 先の物の怪が来やらぬとも限らぬ』

『ホデリ』 :
『………隠れ家には心当たりがある。少なくとも、外様のものに見つかりはせぬ。
 如何すや?』

 その如何するか、には。
 1名に対してはともかく、出会ったばかりの己を信用するか? も含まれているように見えた。

久外境耶 :「そいつはいい」

久外境耶 :「おれら手組むんだろ? ここで尻込みしねーよなあ」

荻野目 旭 :「僕はその反応見て、逆に君たちのその信頼関係はどこから? のほうが気になってきたんですが……」

荻野目 旭 :まあいいでしょう。頷いてからシホさんを見ます。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ワタシとしても特に異論はありません。
 ワタシも申し訳程度の安全圏なら構築できますが、それでは少々心許ないところですし」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……それに、実のところ珍しく純粋な好奇心というやつも動いている。
 外様には見つからないという『隠れ家』とはどんな代物だろうか。

三廻部 颯 :
こくこくこく。
はずれのほうで1号は無難に頷きまくっていた。
……半分は嘘だ。本当は虎をとっとと見つけてしまいたい。

木口龍 :
オレが異論を出せる立場にいると思うか?
すみません置いてかないでください死んでしまいます。

“イリュシデイター” :
「こちらからも異論はありません。
 そもそも………」

“イリュシデイター” :
「異論以前の方、いらっしゃいますしね。
 乗りますよ。どうも此の島については、彼…の方が詳しそうですし」

SYSTEM :
 彼/ホデリは軽く鼻を鳴らした。
 それは後者の言葉か、信頼関係云々の方か。出会ってすぐのものであり、その出会いは別に劇的なものでもなかったが、性根については互いに図ろうと思えば測れる間合いである。

『ホデリ』 :
『参れ。さほ遠くはない』

SYSTEM :
 言うが早いか、はじめ出会った時と変わらず、のそのそと四足で歩き出す。
 どうも口振りからして、はじめに境耶を招こうとした行き先が“それ”なのだろう。

荻野目 旭 :「了解です。……と」

荻野目 旭 :「“ラッキージンクス”、ちょっと待ってください。まだ治ってないでしょ」

『ホデリ』 :『………ぬ』 ぴた、と立ち止まった彼はあなた/境耶の方に首だけを向けた。

久外境耶 :
 振り返る姿に、平気だと手を振って示す。懸念が傷にしろ、こっちの坊ちゃんにしろ。

「あ? 何、治してくれるって? サービスいいねェ」

荻野目 旭 :「一蓮托生でしょ。残念ながらとっても相性が良さそうなので、たくさんこき使ってあげます」

荻野目 旭 :“ラッキージンクス”へ《癒しの水》を使用します。いいですか?

GM :問題ありません! コストのお支払いは忘れずに。

荻野目 旭 :ハイハーイ

system :[ 荻野目 旭 ] 侵蝕率 : 47 → 49

荻野目 旭 :4d10+2 (4D10+2) > 14[7,4,2,1]+2 > 16

荻野目 旭 :あ、あんまり調子よくなーい

system :[ "ラッキージンクス"久外境耶 ] HP : 76 → 92

久外境耶 :
「そりゃお互い様だ。成り立ての見てる前で殺し合いなんてコトにならないよう、せいぜい頑張れよ旭クン」

 どーも、と回復を受けつつ。

荻野目 旭 :「それだけは避けたいなァ」ため息。

荻野目 旭 :あと。ちょっとだけ悩んでから、三廻部さんたちに声だけかけておきます。

荻野目 旭 :
「ごめんなさい、なりゆきで。
 どうも安全な場所に行かせてもらえるみたいだから、そこで色々説明させてください。……池田さんと同じぐらいあなたも大ごとなんです、三廻部さん」

SYSTEM :
 成り行きに成り行きを重ねた後の“ごめんなさい”には、ちゃんと最初の悔恨が込められていたのか。
 それは定かでないが………歩き出していった少年の背に颯が答えた前か後か、“イリュシデイター”もその背をやや思案の顔で見ていた。

“イリュシデイター” :「………」

“イリュシデイター” :「歩けますか? 三廻部さん」

三廻部 颯 :
「………」
 少女は、どちらの言葉にもすぐに返事ができなかった。
 

三廻部 颯 :
「あ、う、うん……えっと、はい」

 一拍置いて「うん」と「はい」の二重返事を口にした。
 自分は自分なりに死にたくなくて、友達のピンチをどうにかしたくて、手を伸ばした結果が今の私だ。

 けれどそれが""大ごと""だと言われると、悪いことをしたのではないかと少し思ってしまう。
 子供のどうしようもない純真ゆえのもやつき。

三廻部 颯 :
「ある……けます。
 歩かなきゃ………」

SYSTEM :
 ………彼女はそこで何があったのかは知らないが、最後の光景から何があったを想像することは出来た。

 若くして此方に転げ落ちた前任の、目覚めたてで昂った心が冷えて戻って来るものは、たいていが不安だからだ。

“イリュシデイター” :
「大丈夫。
 あなたのせいではありませんし」

“イリュシデイター” :
「あの子は、だれかに大ごとが起きても、そのだれかがどうにか“いつも”に帰って来れるお手伝いをする仕事の人です。
 あなたに、強めの心配をしたのだと思ってあげてください」

SYSTEM :要約すると、楽に出来ずとも気を楽に、だ。今は多く言えなかったのかもしれない少年の言葉代わりとでも言うか。

三廻部 颯 :
「……分かってるはずなんです、私だって」

三廻部 颯 :
「さっき手を握った時も、目を合わせた時も、そんなふうに言う人じゃないって……」

 頷きながら、ただ自分が今は混乱しているだけなことをゆっくり噛み砕いて伝える。
 まあ、クラスメイトが秘密のエージェントだった!なんていうのをやいのやいのできるのは、本当にフィクションの中の話なのだ。
 現実と理想のすり合わせの真っ最中ゆえに、曖昧な言葉が出ることを反省したい……と少女は思った。

三廻部 颯 :
「……うんっ、元気出します」

 自分の両頬をぱん、と叩いて歩みをちょっと早める。

“イリュシデイター” :
「はい。
 その気持ちを分かって貰ったあとで、分かってあげてください」

SYSTEM :
 彼女は、颯の空元気とも強がりとも本心ともとれる行いを、空元気と諫めようとはしなかった。
 ………そして一般人上がりと断定した方が、歩みを早めたのを目で入れつつ、視線を他に動かす。

“イリュシデイター” :「それと、そこのあなた───」

“イリュシデイター” :
「………失礼、名前。伺っていませんでしたね。
 其方の眼鏡の、恐らく年上のあなたは」 

木口龍 :「あ、あー、えーっと」(ごそごそと名刺を漁るも、全て海水で駄目になっていると落胆しながら)

木口龍 :「木口探偵事務所所長の、木口龍といいます……」

“イリュシデイター” :(このタイミングで名刺を探す辺り、実は余裕があるのか、まだ動転しているのか…)

荻野目 旭 :やっぱり思ったより心配しないでよさそ〜

木口龍 :
「一応イリーガルです……大阪のX市に名前は登録されているハズデス……ハイ……」

 いやだってあなためちゃくちゃなんか立場ありそうな人ですよ。しっかり挨拶しなきゃ駄目じゃないですか。

”朧の狩人/残骸” シホ :なんというか……言葉もない。

三廻部 颯 :
 (たん……てい……………?)

 たった今、から元気を出した1号のいろいろな理想は音を立てて崩れていった。

久外境耶 :わかるわ〜

木口龍 :現実の探偵なんてお前不倫調査と素性調査専門だぞ。

久外境耶 :そこじゃないんですよね

“イリュシデイター” :
「分かりました。木口探偵事務所所長の木口龍さん、ですね。
 と言っても、照会する暇と術はありませんが………」

木口龍 :「アッハイ。ほんとは名刺が生きていればよかったんですが……」

SYSTEM :
 嘘を吐く暇と術も、またないだろう。
 そもそも、この立ち振る舞いで全てが嘘だったケースなど後で考えていいもの。

 序でにこの期に及んで名刺に未練を向ける男について、彼女はその辺りの疑問点をしまい込んだらしい。

“イリュシデイター” :
「何時か縁があった時に伺いますよ。
 ………それで其方も、此処に放り出されたままというわけには行かないでしょう。歩けますか?」

木口龍 :「あ、はい、オレは大丈夫です……全然歩けますので」

木口龍 :「いやもう一刻も早く出たいといいますかなんといいますか」

荻野目 旭 :それはみんなの総意なんですよねえ

荻野目 旭 :う〜ん 前途多難だあ

”朧の狩人/残骸” シホ :慣れたものでしょう、そういうの

荻野目 旭 :そうなんですけどお

荻野目 旭 :僕は愚痴大好きなので言っちゃいま〜す あ〜あ疲れたな〜あ

三廻部 颯 :
(ぼのぼのみたいな目で見つめる)

“イリュシデイター” :
「それは我々も同じことです。
 であれば………なおのことですね」

SYSTEM :
 大丈夫、の反応に嘘がないことを軽く確かめると、“暫くよろしくお願いします”の言葉と共に彼女もまた歩いていった。
 と言っても、のそのそ歩くホデリの後ろから逸れるものがいないか分かる位置を、それとなく保ちながらだ。

SYSTEM :
 戦いの跡と熱を遺した浜辺から、人の気配が消えていく。
 嵐の過ぎ去った跡のようだが、嵐は消えていない。

 誰が言ったか、前途多難である。

SYSTEM :◇ ◆ ◇

SYSTEM :
 徒歩にして三十分未満。
 まだ陽の落ちぬころ───浜辺を越え、木々を越え。見知った場所から見知らぬ場所に歩いて数刻。

 島について、分からぬことが九分を占めよう状況であるとて、その未知を既知に変えるための下準備でいちいち襲われてはたまったものではない。
 そう考えて進んだ道は、幸いというべきか、必然というべきか、誰ぞに襲われることもなく。すぐに風景が変わる。

SYSTEM :
 視界が拓ける。

 既に察していたものもいるだろうが、ここに現代の消費文明の趣はない。
 あったかも知れないが、見つかっていない。あるいはその視界に広がるものも”そう”だった。

SYSTEM :
 島の外周を行く先。
 不自然にぽつりと、廃れた村が見える。

 形は保たれているが、人の気配はない。
 現実感と生活感において、そもそもこの島で前者を言い出せば終わりだが、ここにはない。

 案内人の面も、隣行く境耶が精々、どこか思うところありげに細められた白狗のまなこを目にする程度だ。

SYSTEM :
 何なら案内人は、その村の路を歩きながらも、形としては使われていない無人の家屋を堂々素通りしながら、恐らく同じように使われていないのだろう神社らしきものの入り口/それを出迎える石段の方へと“のそのそ”歩いて行くほどだ。

久外境耶 :
 ──まるでもぬけの殻だ。

 素通りされていく家屋は、廃墟と呼ぶには小綺麗だが、人里と言うには生活感がない。ワケ知り筆頭の横顔をときおり盗み見つつ、おとなしく後を追う。

「……神社ねえ。そいつはまた」

 浚われたガキが"ミコサン"なんて呼ばれていたのを思い返せば、多少因果を感じるチョイスだが。

SYSTEM :
 この現代で似たようなものを探そうと思えば、
 身も蓋もないことだが片田舎にあるかないか。

 人の気配ないと言ったが、もともと外側に交流があったかも定かでない。
 海辺からそう遠くもなく、不自然に続く森と山に覆われたここはそういう場所だ。

 ………その瞳に微か覗いたものは郷愁か。あるいは。軽口に、目を向けず歩いたまま、軽く鳴らした鼻音と共に、案内の主は応じた。

『ホデリ』 :
『左様。だが、そことてもぬけの殻よ』

『ホデリ』 :
『………だが馴染みの場所だ。
 そことあらば………』

SYSTEM :
 同じような外様に曰く、連れ去られた片方は”ミコサン”───“巫女さん”だったというが。
 とりあえず、何かの当てがありますという態度で石段に前足をかけ、尾を垂れさせながら登って行く彼の足取りに代わりはなかった。

SYSTEM :
 ………それで。

 かつかつと足を進めて、鳥居の前までやってくる。
 ………誰にとってもご無沙汰か、あるいはたまに見かける程度の。神の社の入り口だ。

SYSTEM :
 鳥居の形も細部が違う。

 違うが、目撃した颯がふっと思い浮かべたものは───。

SYSTEM :
   ・・・・・・・・
 ───俺は神様ではない

SYSTEM :

 俺は█▇▅▇▇▅█だ

SYSTEM :
 あの鳥居だ。
 あの向こう側から歩いて来た、口数少なく、見て分かるほど器用では“ない”けど、実直だった青年と出会った。
 光の向こう側の、あの鳥居。

三廻部 颯 :
 歩みが止まる。
 鳥居も違うし、よく見たら細かいところがちがうけれど。
 ずっと感じてたデジャヴは、確かなものだった。

三廻部 颯 :
「……なんか、そっくり……」

『ホデリ』 :
『ここならば───………。
 如何にした、童よ』

SYSTEM :
 そいつが鳥居を見上げ、すっと口を開きかけたその時。
 聞こえて来た音に集中を削がれたように、尻尾が立ち上がると、その白狗の首が此方を向いた。

三廻部 颯 :
「あっ、ううん、なんでも……なくはないけど、なんでもない。
 ちょっと、デジャヴっていうか……」

 話すと長いから、と。
 ただ颯はそこでこの光景そのものへの既視感をはじめて口にした。

『ホデリ』 :『でじゃぶ』

SYSTEM :なんだそれは? と彼は境耶を見た。

三廻部 颯 :
「(……カタカナダメ系!)」

久外境耶 :「既視感? 的な?」どうかね旭クン

荻野目 旭 :「まあ合ってます」

荻野目 旭 :「見たことあるな〜っていう話ですね。……う〜ん」

三廻部 颯 :「あ、う、うん、そんなかんじ」

三廻部 颯 :「形とかは全然違うんだけど……」

久外境耶 :「鳥居なんて全部同じだろ」

久外境耶 :違うことあんの?

木口龍 :
「……ふーむ。
 まぁここいらでオレが探偵だっていう証明をしてやろうじゃないか。疑われてるしな!」

 GM、一般ピーポーのオレからして、鳥居を見て何かわかることはあるか? 歴史とか、築何年とか。

GM :ほう?

GM :…ふむ…。

木口龍 :「まぁ見てろ、このオレの探偵アイがな……」

木口龍 :判定いるなら出してくれれば対応しよう

荻野目 旭 :「探偵アイってそんな、少年探偵じゃないんですから」

久外境耶 :おまえが疑われてるのは正気だけどな

三廻部 颯 :トテツモナクフアンナカオダ。

GM :いいでしょう。「何も判定なく分かりそう」な話ではありませんが、そこまで難しそうではない気がします。

木口龍 :オレのSAN値はまだあるぜ。
それはさておいて、何で振ればいい? こっちで指定する形か?

GM :そうですね…そこまで難しそうではないので、下記の二つのどちらかです。

GM :…そうですね、『鳥居』だけを見てなのですから、ここは…。

GM :「知識」もしくは「情報:ウェブ」辺りとしましょう。知識分野については恐らく『建造物』とかです。

GM :判定目標は…少し待っていてください

SYSTEM :

【Check!】
 判定が発生しました。

 判定:〈知識:建造物〉or〈情報:ウェブ〉
 目標:7
 Success:イベント進行
  Failed:イベント進行

 備考:成否を問わずシナリオ進行
   希望し、許可が下りたならば他判定でも代替可能

木口龍 :
振る前に一応確認だ。
(今鳥居の構造リアルで見てきた)
その鳥居、額束はあるというか、読めるか?
〇〇神社とか、そんな感じのことが書かれてる鳥居の真ん中についてるものだ。

GM :いえ…残念ながら。読めませんね。

木口龍 :OK。じゃあ、〈知識:建造物〉で振ろうか。

GM :畏まりました。どうぞ!

木口龍 :っていうところで、宣言、《砂の加護》。

木口龍 :ダイスを2個増やすが、まぁ、欲しいのは侵蝕だな。素面で振るときの事故率減らしたいし、50には乗せておきたい。

GM :構いませんが、なかなか飛ばしますね

GM :OKです。改めてどうぞ!

木口龍 :1/10の博打なんて何回もやってられっか! まずは侵蝕から。

system :[ 木口龍 ] 侵蝕率 : 49 → 52

木口龍 :で、振る。

木口龍 :データブレイン効果で、<知識><情報>判定に+6のボーナス。その対象内だ。

木口龍 :3dx+6 (3DX10+6) > 9[6,7,9]+6 > 15

SYSTEM :
【Check!】
 判定に成功しました。
 イベントを進行します。

SYSTEM :
 数十秒フライングして
 木口龍の探偵アイに電流走る───。

SYSTEM :
 かは、さておき。
 あなたがたまたま神社に造詣が深いのか、本当にたまたまなのか。
 どちらにせよ、一目見た限りの感想はこうだ。

 少なくとも名のあるものではない。歴史の何処かにひっそりと埋もれたか、神の名ごと廃れたか………。

SYSTEM :
 ただ、いつのものかは分かる。

 鳥居の材質や此処に来るまでの建築などから、歴史の「いつ」なのかは決着がついた。

 この鳥居、この廃村───。
 日本で言う、平安時代のものだった。

木口龍 :ちなみにこれは判定関係無くRPの都合で聞きたいんだが、鳥居の材質って石か?

GM :ちょっと待ってください…

GM :木ですね。

木口龍 :了解。感謝する。

木口龍 :


>>>ニュータイプの音<<<

木口龍 :


 ──は、さておいて。

木口龍 :
「……。材質、それから塩害による劣化具合……。
 使われてる塗料は漆。その剥げ具合と、……材質は檜か……?」

 なんとか生きていた携帯電話のカメラで撮りながら、照合していく。
 本来ならば特殊な機器を使わなければ調べられないようなことも、オレはなんとかわかる……らしい。

木口龍 :
「──ふーむ」

 ……最後に神社の名前を確認しようとしたが、そっちは劣化が進んでしまっているせいで判別出来なかった。
 むしろ、推測にあたる決め手はそれだった。金属すら擦り切れて、読めなくなるくらいの年月──。

木口龍 :
「これは、今から逆算すると1000年前から、最も古くて1300年前……平安時代のどっかで建てられたもんだな……」

木口龍 :あ! これ確認しないと駄目か。

木口龍 :中に祀られてるものってぶっ壊されたり、無くなったりしてるか?

GM :いえ。「そこまで」確認できません、この位置では。

木口龍 :ありがとう(歴史見返して整合性合わせてきた)

木口龍 :
「実際に中に入って調べるまでは、ここに根付いていた信仰がどういったものだったのかは分からない。
 そもそもレネゲイド関連の事案が起きていなかったにせよ、神社であれば神仏分離の波は来ているだろう。
 それが、この島でどうだったのか。そこさえ分かれば、外との交流があったかも結び付けられる……ってトコロか」

木口龍 :(木口はキメ顔でこう言った・・・)

『ホデリ』 :『れねげいど』

三廻部 颯 :
「(どの辺が探偵なのかよくわからなかった……)」

SYSTEM :
 いつも通り聞き慣れない響きを鸚鵡返しにして、彼はすぐに次の言葉を紡いだ。

SYSTEM :それも、どこか感慨と寂寥を込めた、小さな声で。

『ホデリ』 :
『京の名が、のちに継がれる時代の名………か』

SYSTEM :
 しかしそれもすぐのこと………。
 彼は探偵の渾身の解説に、一点こう返した。

『ホデリ』 :
『非事を言わば………。
 この島に、外の繋がりなど無きものよ』

SYSTEM :
 それ以外は、何をば言うこともないのだろう。
 感心なのか、そうでないのか分からない顔で、彼は再び空/鳥居を見上げていた。

久外境耶 :
 時に取り残された島──か。
 道理で、古臭いわけだ。どいつもこいつも。

 滞っているのか、留まっているのか。おかげで黴は生えちゃいないが、すっかり埃を被っている。 

(まさか千年物とはな)

 聞きたいことは山ほどあるが、ほじくり返すかどうかは別のハナシ。他の連中がこいつの語りたがらない部分に土足かけたときこそ、おれの出番だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 およそ千年の歳月。
 男の分析が正しいのであれば、人の気配が消え去るには十分過ぎる時間だ。あの人里も、恐らくは。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ただし彼の分析結果は、あくまで『この島の成り立ちが真っ当である』という前提に立っている。

 あの自称探偵がどのようにこの島へ辿り着いたのかは知らないが、そもこの島───推定“リュウグウジマ”は、強大なRBによる干渉により成り立っている可能性が高いことは我々が確認している。
 旧き時代を切り取ってきたスナップショットがいま目の前に展開された光景だとしても不思議ではない。

 ともあれ……

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……では、先に進みましょうか。
 あれこれ確認したいこともできたところです」

 ……………………。
 わざわざ銃まで道具に遣い、彼女の認識が日常から切り離されたことを確認したのだ。
 その颯の反応は、単に『見覚えがある』という様子でもなかった。それも含めて確認すべきところだ。

三廻部 颯 :
「(……そんなに昔だったのかな……)」

 ふと思い出す青年の姿は、そんなに昔という印象がない。
 もうその頃から"刀"はあったみたいだけれど。
 ……でも、探偵(……?)さんの見立てが本当なら───。

「(……あのお犬様は何か知ってるのかも)」

 直感。
 ……根拠はない。

SYSTEM :
 実際のところ、それは正しい。
 この島が真っ当な造りだったならば、彼の言葉には概ねの説得力が出る。
 形を保ちながらも、時の流れから此処は隔てられていた───少なくとも”そう”と分かる程度には。

 ただ。
 シホの辿り/流れ着き方は、どう考えても真っ当な島に対するものではなかった。

タイガーアイ :
『あの犬、どうやら島のことは幾分ご存じと見える』

SYSTEM :
 ついでに言うならば。
 誰かが根拠ない直感を出したのと同じタイミングで、一人にしか聞こえない音の波紋を広げていたのは、ここしばらくはずっと首飾り気分で何も音を発さず、”ブラザーフッド”の立ち位置は『スリープモード』を言い張るかのように灯りを落としていたタイガーアイだった。

 外との繋がりはない───そう言って退けたのは物理的な意味か、果たして。

『ホデリ』 :
『いや、その先にあらずよ。
 奥にあるものは小さき社が精々………』

SYSTEM :
 なるほどこの廃村自体を隠れ家と呼ぶことは可能だが、彼の言う「外様のものに見つかりはしない」というほど確実なものでもない。
 此処は当座の話に使える場所という程度だ。が………。

『ホデリ』 :
『しばし、待て』

SYSTEM :
 …鳥居の前で、獣が吼える。

 吼えたというより、それは鳥居を潜る前の一礼の仕草にも見えたし。
    ・・・・
 鳥居の向こう側、誰もいないはずのところに、誰ぞがいるかの如く呼び掛けるようなものにも見えた。

 そして昔からそれを知るような所作にも見えたが、行うには初めてとも言えるぎこちなさを伴っていた。

SYSTEM :
【Check!】
“ホデリ”がEエフェクト『時空の裂け目』を発動しました。

 また、効果使用時に█▅▇█▅▇▅▅████▅█▇██▅▇▇█▇██▅▇。

SYSTEM :
 遠吠えと共に、鳥居の向こう側がねじれる。
 石段しかなかった先の道が───。
 石段ではない、何処か彼方へと繋がる。

 重力で、ひずみ、ねじれる音。
 到着の仕方によっては“覚え”のあるものだろうが、力の差は歴然にも思えた。

SYSTEM :
 ひょい、と、そこを潜ろうとする前に、一度ホデリと境耶に名乗っていたものが振り返る。

『ホデリ』 :
『信ずれども構わぬ。が』

『ホデリ』 :
『この先に、物の怪も、外の者も………。
 ………わたしが”決めた”もの以外は入れぬ。そこで、害成そうとも思わぬ』

『ホデリ』 :
『疑へども、どうか今のみは来やれ。
 では………行こう、境耶』

SYSTEM :
 わざわざ呼びかけたのは、其方については“先約”のことを忘れる気はないという意志表示だろう。
 伴をし、自分が伴をする。一時であって永遠ではない一蓮托生の。

 何かと非凡ならざる仕草を見せる彼だが、ここでもそうだ。不言実行という性質ではないらしい。

久外境耶 :
「おう」

 律儀な呼びかけに、ごく自然に応じて着いていく。連れ回されるのも、追いかけ続けるのも、さほど違いはない。

 実を言えば。対等の立場ってやつは、むず痒くはあったが。

三廻部 颯 :

 少女の胸は、ずっと騒ついていた。
 今でも頭の中では、あの時の"みんな"の声が録音テープのように再生される。
 少女にとって、まだ誰を本当に信用していいのかは確かなものとなっていない。
 
 あの"お犬様"は何かを知っていて──何か大きな関わりがある。
 その直感は多分、間違ってない。

三廻部 颯 : だって……、
 だって今起きた"ねじれ"る光景は。 
 あの時のものと同じだった。
 大きさとか、細かいところは違うけれど。

「(───……)」

 自分では何もできない。
 行動の指針を他人に委ねることに───こんなに不安を抱いたのは初めてだった。

「(ダメダメ……挫けちゃダメ。私より他のみんなの方が、怖い目にあってるかもしれないんだし……!)」

荻野目 旭 :……

荻野目 旭 :
「大丈夫ですよ」
 小さくつぶやくように、三廻部さんに声をかけます。

荻野目 旭 :「彼が本当に『最初のやつ』とおなじなら、ああはなりません。……僕ら、あれに呑み込まれたって彼に言ってないでしょ」

三廻部 颯 :
「あ……」

三廻部 颯 :
「……っ、ご……ごめん。
 どうしても、思い出しちゃって……そ、そうだよね、言ってないし……」

荻野目 旭 :「ごめんって、もう」

荻野目 旭 :「なんとかなりますよ。こういうときはね、知らないおじさんについていくより知らないお犬様についていくほうがたいてい安全です」

荻野目 旭 :「僕らが正直なおじいさんおばあさんならねっ」

久外境耶 :「おっせーぞガキども、おれが最後尾ケツキックのルール課す前にはよ来い」

SYSTEM :遠くで横文字に首を傾げる者の定期反応が返って来た…。

荻野目 旭 :「はいは〜い、行きます行きま〜す」唇をとがらせる。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……こういう場面で声を掛けるのは、一定の信頼を築いた後の方が効果的だろう。ワタシはなにせ“よく分からないところのいきなり出てきた人”から更新されていない。

木口龍 :
じゃあそんな調子のシホに追いついて、

「まだ行かないのか? オレは見るもん見たし、もう行くぞ」

と声をかけよう。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……いまさらかも知れませんが、抵抗感はないんですか?
 アナタは少なくとも訳知りには見えませんけど」

木口龍 :
「そりゃお前、怖いうえに、おたくらUGNだって、その……FHだって、オレとは間接的にしか関わりはないし、なんだって島だぞ。未知の島。
 これが怖くない風にみえるか?」

木口龍 :
「でも知らなきゃ出られないし、事件も解決できんだろ。だからオレはビビりを押し殺して、調べる。
 孤島で起きる神隠し、これぞ探偵のロマン! って言い訳しながらな……」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 それ以前の問題に見える、というツッコミは胸にしまっておく。

タイガーアイ :『なかなかの余裕だが………』

木口龍 :

タイガーアイ :
『未知の島と来た。
 ひとりだけ経緯を把握していないという欠落は、吹かしではないらしい』

三廻部 颯 :
 ……確かにあのおじさんについてくのはちょっと怖いな……。

 なんてことで和らいだ気分を心に留める。

 "あの子は、だれかに大ごとが起きても、そのだれかがどうにか“いつも”に帰って来れるお手伝いをする仕事の人です。"

 旭くんの"知り合い"らしいお姉さんの言葉を思い出す。
 本当なら彼だってずっと冷静ってわけじゃないかもしれないのに。

「……うん、そうだねっ」

 ちょっと気を取り直したのか、境耶の捲し立てに「ガキじゃないです!」と低反発しながら歩みを進める。

木口龍 :

”朧の狩人/残骸” シホ :
 なにかあの少女と絆のような何かが深まりそうな気配を感じる……

木口龍 :「でもよぉ」 気を取り直して

木口龍 :
「そういう風に言うアンタだって、
 オレからすれば随分落ち着いてるように見えるぜ?
 下手すりゃ遭難だぞ遭難。しかもレネゲイドとあっちゃあ、フィラデルフィアも真っ青な事態なのに」

木口龍 :
 ・・・・・・・・
「死ぬかもしれないって思うだけで、オレは体の震えが止まらんね。オーヴァードになってから……そこそこ経つのに」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ──────。

木口龍 :あやべなんか踏んだか? オレはこの手の気配は感じ取れる・・・

”朧の狩人/残骸” シホ :
「これも任務ですからね。
 慣れてしまいました───と開き直るわけにもいきませんが」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ・・・・・・・・・・・
「死ぬことは怖いことです。
 ……ですが、ワタシよりそれをもっと怖いと思う人がいるなら。その顔は見せられません」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───なんて、カッコつけすぎましたかね?」

タイガーアイ :
『板に着いている。
 誰の受け売りなのやらな』

SYSTEM :
 見えづらい範囲で、小さく明滅。
 それを最も口にするべき人間の立場ではあるが、あるべき正しさを示したあなたのそれは、未熟者の仮面だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……オマエは知っているだろうに。
 この言葉も、ワタシを成す“残骸”の寄せ集めに過ぎないのだし。

SYSTEM :
 ・・・・・・・
 当然知っている。

 明滅したそいつの挙動と淡々とした音の波紋は、だいたい答えを分かり切っていながら問いを渡すもの。
 そういう諧謔、または意思確認、または後押しだった。

木口龍 :
「……そうかい。
 そりゃあ、確かにそうだな。
 UGNとかどうとか以前に、オトナがビビり散らかしてちゃあ世話ないってハナシだ」

 ただでさえついてくことすら躊躇われる系オジさんだもんな!!!!

木口龍 :
「オレは素直にいいと思うぜ。
 それでも、怖いと思ってるオレがビビりすぎてるだけだしな」

 木口龍は一般人だ。
 死ぬことは怖い。常に恐怖し続けるから、万全の対策がないと橋すら渡れない軟弱者だ。

木口龍 :
「まぁオレが宴会芸やりまくれば場は和むってことにしといて──。
 よしそろそろいこうなんかタイキックされそうな気配がする。やべえってあの耐久力でタイキックとかケツが2つに割れちまう」

木口龍 :


 ──ああ、そうそう。

木口龍 :
 "死ぬことは怖いこと"──って、

   ・・・
 随分他人事みたいに語るんだな、アンタ、とは言わなかった。
 というか、言えるわけがない。オレはビビリの卑怯者の、三下探偵だからだ。
 事件と関係ない部分で、波風立てるつもりは、なかった。

SYSTEM :
 ………あるいはその言葉の交わし合いを。
 大人として、恐怖を前提にして振る舞おうとする青年の仕草を、死ぬことへの恐怖を前提として歩こうとする者の行動を、どう思っていたのか。
 とっくに足を運んだはずだった/待っていたのだろうか、UGNのエージェントのひとりが、入り口前から声をかける。

“イリュシデイター” :
 ・・
「怖い、を忘れない独り身ほど長生きするそうですよ」 

“イリュシデイター” :
「───ほら。あまり待たせると、さっきの推定レネゲイドビーイングと…彼と面識のある少年が戻って来るかも知れませんし。
 オトナ、やってくれるんでしょう? 木口さん。少年少女先に行かせるのもよくありませんね」

木口龍 :
「あれまってオレが手本見せるみたいなハナシになってますってか、
 さりげなくオレ独身言われた? 
 あ、いやなんでもないですハイ。
 生先短い分早く合流して若い者の礎になってきます・・・・」

“イリュシデイター” :「“友達”の受け売りです」 

“イリュシデイター” :「“残骸”と“ブラザーフッド”も。待ちぼうけさせるのも難ですからね」

木口龍 :
「死なないビビリの独身が長生きするという経験談、複雑っすね……」

 それだけ言い残して、ケツが3つに割られる前にオレも合流しにいこう。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ああ、ごめんなさい。ついうっかり。
 ……フフ、当分は“友達”に倣って『いいひと』には燕の子安貝でも探してきてもらいましょう」

“イリュシデイター” :「それはまた、骨折る遠い道のりになりそうです」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 言いつつ歩みを進める先は、時空の捻れた門の中。
 まるで神にでも成る道だ───と内心呟いた言葉は“賢者”に聞こえただろうか。

SYSTEM :
 彼は“賢者”だ。
 神ではないから、内心の言葉を聞けるほど白ける才能はない。
 だが神ではなく、全てを一目瞭然としないからこそ、噛み合わぬ一言を零す猶予はある。

タイガーアイ :
『逆立ちしたとて人は神になれぬ。
 成るなどとても』

『だが、神なるものがいるならば、このように“隔て”を作らねば世に触れられぬものなのだろう』

タイガーアイ :
『なんとも。つまらぬことだ』

SYSTEM :
 …ひずみの中に足を運ぶ。
 重力の井戸が、視界に広がっている。

SYSTEM :
 発生した裂け目はバロール・シンドロームによって生じた重力場に等しい。

 いわば時空と時空、何処かの場所と何処かの場所。
 それを隔てる現実のテクスチャに孔をあけるもの。

 水面を潜るような感覚と一緒に、視界が切り替わる、その点まで全く同じ………。 

SYSTEM :
 ………踏みしめる感覚が、石段から全く別のものに代わる。

 如何なる道理と原理なのか。
 レネゲイドは時に容易く、人間の常識を嘲笑う。
 社を潜った先にあるのは………。

SYSTEM :
 ………中の薄明りと、襖向こうの太陽が灯り代わりの屋敷。
 もし誰ぞが襖を開けたなら、実際にそれを確認出来よう。

『ホデリ』 :
『外には………出ても過ぎるでないぞ。
 保障はつかぬ』

『ホデリ』 :
『戻る時は言へ』

SYSTEM :
 出たのならば、本当に襖向こうに太陽が照り付けて、広がる光景は旧き時代の御屋敷だ。
 遠くには街も見えるが、念を押したような物言いから、其方に行けるとは思えない。

 とまあ。そもそもこの空間が何を指すのかを、彼は特に語らず………。

SYSTEM :
 ホデリはそのまま、この場の全員がいても十分空きのある広間の灯り近くまで行くと、どこぞの石像めいて座すように佇むのみだった。

 口下手にも気難しげにも見える所作である。

SYSTEM :
 それを訪れた二者の反応も対照的。

 流石にそういう光景は想像していなかったのか、「これは」と口にするや否や暫く言葉を澱ませた様子の”イリュシデイター”と。

SYSTEM :
 珍しく、明滅の勢いの弱いタイガーアイ。

 シホの知る限り、食いついてもおかしくない話題に食いつかない時は、何か考え事がある時だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「──────」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 トンネルを抜けたらそこは───などというくだりが脳裏を掠めていく。
 端的に言って、予想外の光景。燕の云々と言った手前、ひと時代遡るはずの竹取の時代なども一緒に脳裏を過っていた。

 ───黙りこくった様子の“賢者”に対してという意味でも、それはそれで予想外の光景だ。

荻野目 旭 :「これって──」

荻野目 旭 :「……《ポケットディメンジョン》? それとももっと別の──、……」

荻野目 旭 :
「……いえ……やめますか。
 ここが『安全な場所』って判断していいんですよね?」

『ホデリ』 :『偽りあらず。さりとて…』

『ホデリ』 :『保障は軒先越えて堀を越えねばの話ぞ』

SYSTEM :其方には終ぞ行っておらぬと言い切れば、口数少なげに押し黙った。

荻野目 旭 :謎が増殖した…

荻野目 旭 :「つまり……ここから見える外は、ただ絵が貼り付けられているようなものってことなんですね。島とは──実質的に違う場所なのかな」

SYSTEM :ホデリはその問いに一度頷く。

『ホデリ』 :『ここを探せるものは今やわたしだけだ』

SYSTEM :一先ず”聞けば応じる”ではあるようだし、あなたの疑問に否を突き付けて謎の群れをしっちゃかめっちゃかにすることはなかった。

久外境耶 :
「聞きたがるねェ。当然そっちの情報も吐くんだろうな」

 胡坐をかいた膝に片肘をついて、下方から視線を飛ばす。

荻野目 旭 :「番犬しますね、”ラッキージンクス”? お互い様ですよぉ」

久外境耶 :「そりゃな。言ったろ、いまんトコおれの理由はこいつだって」

荻野目 旭 :「言いましたけど……」

荻野目 旭 :「そもそもこの仔のことをホントに信用してないなら、バロールの作った裂け目になんて飛び込みませんよ。僕も命はかわいいので」

荻野目 旭 :でしょう? と首を傾ける。バロールのつくった裂け目って、ようは向こうのテリトリーで食い殺される可能性が高まるところでもあるわけで。

久外境耶 :「そうかい。じゃあ憶えときな、虎穴に飛び込むのが好きなやつもいるんだぜ」

荻野目 旭 :「個人のシュミの領域はわかりませ〜ん! も〜、混ぜ返さないでくださ〜い」

久外境耶 :
クソカス
FHに一般ジョーシキで語らないでくださ〜い

荻野目 旭 :僕いま 小学校に潜り込んだときの「しずかにしてくださ〜い!」を思い出しちゃった

荻野目 旭 :「……ま、いいです。必要な事は訊けたんで」

荻野目 旭 :「僕らの話の前に、『僕らの話』がわからない人たちのほうからにしますか。あなたがご執心のホデリくんもそうでしょ」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「まぁ、それに───」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「せっかく追手を気にせず、お互い腰を落ち着けて話せるようになったところですしね。
 立ち話続きもなんです。とりあえず一息吐きましょうか」

“イリュシデイター” :
「尤もです。いざ一息ついたとなると………」

“イリュシデイター” :
「お互い“なぜ”も出る頃でしょう。
 ………正直に言えば私もですが。特に三廻部さんの方、“なぜ”の一つも出したいころのはず」

木口龍 :「そうだぜ。オレは疲れちまって難しいハナシもたまらねえや……」 さらっと会話にまざり、どが、っと座る。

“イリュシデイター” :…(仕草が青年ではないんですが)あなた、外見から見て二十の半ばですよね?

”朧の狩人/残骸” シホ :……オーヴァードならその辺のズレあっても不思議じゃないですからね どうだろう

木口龍 :持病の腰痛と肺炎と肩のだるみが……は冗談だが、さっきの紫色のアレのせいで変に痛いんだよまだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :ワタシも“イリュシデイター”もそうかもしれません
……その点では颯ちゃんも深刻そうですが。

“イリュシデイター” :その辺りは追々ということで。…後者は追々にはしていられませんがね。

三廻部 颯 :さっきから驚きっぱなしです……。

“イリュシデイター” :私もです。後で振り返ったら、いま自分で何を考えていたか分からないかもですね。

“イリュシデイター” :
「整理しないとならないことも多い頃合いですが………。

 私は其方の、ホデリというあなたのことも、あなたと知り合っている少年のことも存じませんし」

“イリュシデイター” :
「当然のことながら、三廻部さんと木口さんは名前しか知りません。逆も然りですね」

SYSTEM :
 さらに言えば三廻部さん、オーヴァードと名前を出されても首を傾げる立場でしょう、と。
 彼女は水を向けた。

 お互いの名前と動機だけ教えるのか、まず彼女も前提だけ教えるのか。
 一息つけば生まれる“なぜ”と“このあとどうする”に対する、そこが最初の一歩だと言いたいらしい。あくまでも彼女は、だ。

荻野目 旭 :何度もうなずきます。そこそこ!

三廻部 颯 :
なにもわかりません!

“イリュシデイター” :素直でよろしい…いえ、先生面するにはまだ若輩ですが

久外境耶 :「いいぜ、好きにやれよ──と言いたいところだが」

久外境耶 :
「おまえが決めろよ1号。UGNとFHに囲まれてお勉強なんて、生きて返れりゃ良い話の種になるぜ」

 する相手がいるかはしらねーけど。

三廻部 颯 :
「──……」

三廻部 颯 :
「……お願いします。
 私がこの先、どうなるかは、まだわからないけど──」

三廻部 颯 :
「力のことを、何も知らないままだと……友達を、助けられないと思います、から」

久外境耶 :ダチ? ……ああ、あの持ってかれたヤツ。

『ホデリ』 :
『あの娘か。
 今すぐには在らねど、無事を保障するわけでなし。確かめたいということか』

SYSTEM :
 何も知らぬままでは居られない。
 それは、尤もな話だ。

 どのみち遅かれ早かれ、いつの間にか畳みかけて来た未知は、あなたの日常の一部となってしまっている。
 あるいは………それは元々あったものなのかもしれないが。

“イリュシデイター” :
「分かりました。
 説明すると長くなりますが………」

「長々と講義する暇もありませんね。
 あなたが恐らく見たのだろう力のこと、我々のこと。先ずはその辺りに絞りましょうか」

久外境耶 :
「ホデリも聞いとけよ。検怪の者だっけか? おまえの言うソレが、外じゃどうなってるか知るいい機会だ」

 横のホデリに小声で。

『ホデリ』 :『うぬ。………』

『ホデリ』 :
『千年。あの男の言葉を正しきとするならば、取り残された月日は然程にある。
 変じもしような………』

SYSTEM :
 同じように小声で応じた彼については、どうも先の社を見た時の見解が頭に残っていたらしい。
 一度引き合いに出すと、それから黙して様子を見るに徹した。第一、知識の度合いでは下手をすると颯とどっこいだ。

 何故ならこの生き物は、一度も───。

 短い間ながら、一度も。レネゲイド、という言葉を使おうとしなかった。

荻野目 旭 :「……ですね。まずやらなきゃいけない話なんで」

荻野目 旭 :たたみに正座しながら切り出す。“イリュシデイター”の話ももっともだし、可能なかぎり手短に。

荻野目 旭 :
「えっとですね。
 三廻部さんも、自分がヘンな力をみょわわ〜んとできたこと、それであのゲームに出てきそうなバケモノをぶっとばせたことはおわかりだと思うんですが」

荻野目 旭 :
「それと同じで、あなたが見るアニメやゲームの中の出来事は、
 僕らにとってほとんど全部現実に起こっている私事なんです。
 もちろん、それは僕自身も含めてのコトですね」

荻野目 旭 :
「あなたの砂を武器にして変身する力や、そこの“ラッキージンクス”の氷を出す力。
            ・・・・・・
 僕ら、あなたよりも先になっちゃった人間たちは、
 そういうのを引き起こすモノを『レネゲイドウイルス』と言って、その力でスーパーマンになってしまった生き物のことを『オーヴァード』と呼んでいます」

荻野目 旭 :「なっちゃうと何ができて、どうなっちゃうかとかは──まあ、さっき一通り見たとおりってワケですね」

『ホデリ』 :『(“すうぱあまん”)』

久外境耶 :『(アー、なに、急に空飛ぶ怪力男になった元一般人? みたいな? いきなり力手に入れちまったヤツの例えとして定番っつうか……)』おれもよく知んねえけど。

『ホデリ』 :『(…要は…衆らからの、逸れものか)』

三廻部 颯 :
「『オーヴァード』──……」

 それが、成ってしまった私や、
 目の前にいる人たち、そしてあの狼に、竜に、虎の正体。
 
 スーパーマンのことはイメージでしか知らないけど、スパイダーマンでなんとなく補完した。

荻野目 旭 :
「僕と金髪のお姉さん──ノエルさんと言うんですが、は、『ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク』という組織で働いています。
 後ろから援護をしてくれたお姉さんは、うーん……」

荻野目 旭 :「アルバイトって言えばいいんですかね? イリーガルって」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……まぁ、訂正はしませんが。
 お手伝いさん、とでも言った方が適切でしょうか」

三廻部 颯 :
「ほえ〜……」
 アルバイト。お手伝いさん。なんとなくイメージがついた。

“イリュシデイター” :先程、知り合い面させてもらった理由ですね。

荻野目 旭 :「僕らはざっくり言うと『こんな力があるってバレたら大変なので、根回しがすむまではみんなに黙っていてもらおう!』という感じで働いてるんです」

荻野目 旭 :「で。あとですね。先に言っておきますね」

荻野目 旭 :
「僕、いくつに見えます?」

 ──彼女にかけていた《竹馬の友》は、一般人にかけたほう。
  つまりオーヴァードになった彼女に、僕が高校生って言うにはおかしい年齢の姿かたちだとバレるわけだ。

三廻部 颯 :「えっ」

三廻部 颯 :「同い年じゃ───アレ?」

荻野目 旭 :「実は14歳です。クラスメイトのみんな、だーれもおかしく思わなかったでしょ? 季節外れの転校生とか、妙になじんでるとかね」

久外境耶 :「涙ぐましいねエ」

三廻部 颯 :
「えっ……えぇ───っ!?!?」

三廻部 颯 :
「うそぉ! 私より大人びてるのに!!」
 よりにもよってそこ。

木口龍 :若い……という目線

『ホデリ』 :『(ああいうのは“常”ならざるか。しかし…)』

SYSTEM :…変わらぬこともあるようだ。小さな呟きと郷愁は、誰に聞かせるでもなかった。

荻野目 旭 :「そうです。涙ぐましいんですよ! 年上の学校に入り込んでみんなが危ない目遭わないように目を……」

荻野目 旭 :「目を光らせてたんですけどぉ……」がっくし

”朧の狩人/残骸” シホ :
こちらがわ
我々の世界に限らず、世に出れば齢の3つや4つなど誤差に含まれてしまうものというが───彼女くらいの年代にとっては一大事なのだろう。軽く肩を竦める。

“イリュシデイター” :
「そこはそれ。
 これまでよりこれからの方に目を向けるということで、努力賞の一つでも指示元に強請りましょうか」

荻野目 旭 :ひ〜ん

荻野目 旭 :始末書ものですよね……大丈夫……わかってます……わかってますよ

“イリュシデイター” :どうでしょう。この場合、責任は誰のものやら。

三廻部 颯 :
「だ、大丈夫だよ、生きて帰れば儲けもん!」
 ……っていうわけにいかないのは、見てるとよくわかる。

久外境耶 :いや責任取ってケジメだろケジメ

久外境耶 :どうせ生えるだろ

荻野目 旭 :ヤダ! この白魚の手がかわいそうじゃないんですか!

『ホデリ』 :(自分より名乗るか この小僧…)

久外境耶 :自分で言うなよ……

“イリュシデイター” :とまあ、それはそれとして。(力技で押し流す)

“イリュシデイター” :
「こういうことも、得意苦手がありますが…出来る人は出来ます。
 三廻部さんが思い付くようなことの殆どは、ひょっとするとね」

三廻部 颯 :
「ほええ……、あ、だからか」

 あの時ドラゴンに向けて放った拳を思い出す。

荻野目 旭 :「そそ。逆に僕は、三廻部さんみたいなパンチはできません」

三廻部 颯 :
「そっか……色々あるんだね!」
 理解

三廻部 颯 :
「ウイルス、って言ってたし……インフルエンザみたいな……何型とか。
 そういうね。なるほどね。うんうん」

 わかってい、る。

久外境耶 :ホントかよ

タイガーアイ :
『感慨はあるな。この不理解を呑み込む仕草。
 ゼノス
 逸れ者どもでは滅多に見ない、迷い人の初見だ』

SYSTEM :
 そのころ特に講義に加わる気は一切ない、本当の意味での蚊帳の外/囃し立て役が、イリーガルの立場を被ったものに好き勝手物を申していた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……これはオーヴァードに成る者は多かれ少なかれ経ることになる、言わば通過儀礼のようなものだ。
 確かにゼノスの門を叩く者に、そういう儀礼も受けていない新参者はあまり多くない。新参者がいたとして、そいつは大凡レネゲイドそのものの申し子だ。

 それだけに……ある種、外様という立場だから見えるものもあるだろう。
 或いは───彼女に果たすべきワタシの役目も、恐らくはそういうもの。

木口龍 :
 ……オレも、把握しきれていない部分はあるかもしれんな。
 改めて勉強だ。

荻野目 旭 :「まあ、そんなわけです。ただ忘れちゃいけないのは、好き放題にこの力を使えるわけじゃないってこと」

荻野目 旭 :「レネゲイドウイルスって『ウイルス』なので、好き放題に使っているとどんどん自分を侵蝕していくんです」

荻野目 旭 :「使えば使うだけ、ウイルスは僕らの体を埋め尽くします。……それを僕らが抑えきれなくなると、ウイルスは僕らの心を奪って、好き放題暴れ出します」

荻野目 旭 :
                    病原菌
「だからそうなってしまった人のことを、ジャームって呼びます」

三廻部 颯 :
「……!」
 ふと思い出す。
 私たちが戦った化け物2体のうち──ドラゴンの方。
 ……倒したように見えて、まるで苦しむように、起き上がってきて……

久外境耶 :「そいつがそっちのテンプレか? お行儀のいいコトで」

久外境耶 :
「おれらの間じゃウイルスから力をどれだけ引き出せるかがモノを言う。
 つうか、病人ぶるなよ。どこの世界に手前の患部ふりかざして気に入らないモン吹っ飛ばす患者がいんだ」

久外境耶 :
「せっかく得た力を抑圧してどうする。力はな、使うもんだ。
 1号、おまえだって実感しただろ。ダチ助けてえっていう望み……ドラ公ぶん殴ったときの馬力がありゃあ不可能じゃないって」

三廻部 颯 :
 ぐ、ぱと手を握る。

三廻部 颯 :
 ・・・
 事実だ。
 私はあのばか狼から、友達を守りたいと思った。
 人間のままでは出来なかったそれが、生き返ったら出来るようになった。

三廻部 颯 :
「使いすぎると──ダメになって……、
 でも……抑えすぎてもダメになる……」

 ……むむ、と腕を組んで悩んで。

「むずかしいね……」

久外境耶 :「ダメになって悪いのかよ。望みを叶えた結果なら、おまえは満足してるはずだぜ──」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───はい、そこまで。
 付随するデメリットの話、まだ終わっていませんよ」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「確かに彼の───“ラッキージンクス”の言葉にも一理あります。
 アナタは自らの力で自らの欲するところを為した。それはレネゲイドの力を解放せねば不可能だったでしょう」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「颯さん。実際アナタは先の戦闘の最中に、得体の知れない昂揚感、多幸感、全能感、解放感……或いはどこか身体に力が漲っていくような錯覚を覚えませんでしたか?」

三廻部 颯 :
「……ありました。
 わたし、空手とか柔道習ってて、……技をかけた時のような感じの嬉しさというか。
 ……暴力は好きじゃない、はずなのに」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「その感覚は、確かにアナタを強くしています。アナタを『ただの人間』から、ひとつ上へと押し上げる。押しつけられる理不尽に抗う力です。
 そしてその動機が友の為であるならば、力を振るうことも悪くはない」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「でも覚えておいて。
 アナタが解放した力に身を委ねるとき、同時にアナタは死の分水嶺にも近づいている。
                   ・
 ジャームになるということは、ひとつの死を意味します。ただ力に溺れて狂ってしまう、という精神論とは訳が違う」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「こちらがわ
  非日常 に長く染まるほど、アナタはアナタ自身の理性を手放していくことになる。そしてそれが閾値を超えてしまえば、アナタは二度と日常へは帰れない。
 歪んだ欲望だけを抱え、それ以外の全てを取り零した理性なき怪物となってしまう。
 それこそ、我々がレネゲイドウイルスを『病』と呼称する理由です。
  ・ ・
 ……人を超えた存在は、日常には馴染みませんから」

三廻部 颯 :
 ジャーム。
 旭くんが言っていたことと合わせて考えて、"使いすぎた末路"を物語っている。
 ・・・・・・・
 日常に戻れない。

 その時脳裏に映ったのは、両親と、弟と、祖父と、友達たちの顔。
 

三廻部 颯 :
 ──ゾッとした。
 ・・・・
 今でさえ普通の日常に戻れるかどうかもわからないのに。
 "ダメになったら"それは確実なものになってしまう。

三廻部 颯 :
「……確かに"満足"する感じがあった。
 嫌いな奴を、思いっきり殴っちゃうこと。
 一回死ぬ前の、願いが叶って、スカっとした」

「けど……」

三廻部 颯 :
    ジャーム   ・
「──……"ソレ"は、嫌だな」

三廻部 颯 :
「正しいことのために力を使って、それで満足しちゃうのは、体が覚えることだから、否定しちゃいけない……、
 けど……その満足に、身を委ねすぎてもダメなんですね」

「……じゃないと、こうして話すこともできないんですよね? 
 コントロールが、だいじ!」

久外境耶 :
 こいつ気付いてるのかね。
 その理屈じゃあ、欲望の否定にはならない。

久外境耶 :「納得したトコで話戻すぞ」

久外境耶 :
「さっき"ナイトホーク"が言ってたろ。おまえがフツーにガッコ行ってる裏で、レネゲイドなんて愉快なモンが当たり前にあるってコトを隠すのが仕事だって」

久外境耶 :
「ファルスハーツ……おれの側はざっくり言やあ逆だ。コソつく意味もあるモン使わねえ理由もわかんねーってやつの集まり」

久外境耶 :
「つっても、べつに大差ねえよ。おたくさんの元トップがおれらんとこ移るくらいだしな?」

 なあ、とUGN連中に牙を見せる。

久外境耶 :「結局……お互い手前の見てえ世界のために力使ってんだよ」

荻野目 旭 :「痛いトコつきますねぇ」

荻野目 旭 :「彼の反応見てれば分かるとおりなんですが、僕らと彼らはあんまり仲良くないんです。会ったらだいたい……角突きあったり、睨み合ったり、角突きあったり」

荻野目 旭 :
「言ってることも、ま〜間違いはないですよ。
 僕だってそうです。
 ジュウヨンが学校まともに行かないで仕事してるのを黙認してる組織が、後暗くないわけないですからね」

荻野目 旭 :僕個人は彼のことたいして嫌いじゃないけど、そういうのは置いといて。彼も似たようなものなんじゃないかな。

荻野目 旭 :「ただ“ラッキージンクス”の話は極論ですからね! その『コソつく理由もない』から、力使ってやりたいことやっちゃう集団なワケですよ」

荻野目 旭 :「朝起きて、寝坊しかけて、家族とゴハン食べて、学校行って、部活やって、ゴハン食べてお話して寝る──そういう『当たり前』にしがみついてるのが、僕らUGNです」

荻野目 旭 :
「そんなハナシして何が言いたいかって言うと、僕はそういう仕事してる人間なので、あなたが『疲れた〜』っておうち帰ってぐっすり寝るまで支援しますよってコトですよ。
 こうやってさんざん脅してるのは、あなたも力との付き合い方を覚えて、なるだけ普通の女の子に戻れるようにがんばりましょ! ってハナシでもあるんです」

荻野目 旭 :「ただそれもこれも、こんな状況なんで──この島の外では、そういう話をしてる面倒な2つの組織が、毎日余計なことしてて」

荻野目 旭 :「いまはとりあえず敵はやりませんからね! とあっかんべーしてるって覚えててください」

久外境耶 :
 朝起きて、家族と飯食って……泣けるねえ。

(でもな旭クンよ)

 そこから蹴落とされたやつが二人、この島に来てるんだぜ。

久外境耶 :
 が、そいつは"ナイトホーク"には関係のないことだ。
 だいいち、おれはこいつ嫌いじゃないし。

 当たり前にしがみつきたいハナシが嘘じゃないのも、ツラ見りゃわかる。手前の"したい"と正しい判断を別のトコに置けるから、こいつはおれらの側じゃないし。

 そんなだから、怪物に嗾けておきながら"フツーのオンナノコに戻れるように"なんて話が出来ちまいやがる。

(ま──) 

 その正しさに胸を張れないマセガキの旭クンでいるうちは、うまくやっていけるだろう。

久外境耶 :
「そーそー、上は上、下は下ってな」

 でも売られた喧嘩は二束三文で買います、のスマイル。

三廻部 颯 :
「…………」

三廻部 颯 :
「……むずかしいね」

 二つの組織の傾向を聞いて、答えにならない答えがでた。
 本人の考えの範疇を超えている。
 

三廻部 颯 :
 日常に戻る手伝い。
 けど、それをする組織自体に透明性がない。
 言葉と行動を信じていいけど、身を預けていいかはまた別なのだろう。

 欲望を抑えない方針。
 それはある意味では「自由」かもしれないが、一度踏み入れば戻れない世界なのだろう。

タイガーアイ :
『めんどうな組織と来たか。
 だが…それならばひとつ忘れているものがあるな』

タイガーアイ :
 レネゲイド
『病原体の意志も耳を欹てて欲しいものだ。
 利用する分は、いずれな』

SYSTEM :
 尤もそれを識るのは、囃し立てている人の心知らずの賢者と。
 その囃し立てを聞いているあなた/シホくらい。

 この場においては、ただ成り立ちから手を結べない/結びにくい者達が二つに別れるという話に済ませておいた方が拗れまい。

久外境耶 :「……こいつ、マジでただのガキかよ。何でこんなトコ来たんだ?」

三廻部 颯 :
「その、事故で……」

“イリュシデイター” :
「口にした当人が一番聞きたそうな顔をしていますね」

SYSTEM :
 オーヴァードの覚醒に事故はつきものである。

 誰もが知っていよう。
 日常の崩壊の最も身近な形は、だいたいがそういう系列にカテゴライズされる。が…。

“イリュシデイター” :「………事故、ですか」

荻野目 旭 :「そのへん、僕から話します」

荻野目 旭 :……正直、怪しいの上塗りなんだけど。話さないとやっていけないよなあ。

荻野目 旭 :「……日常に戻る援けをします、とか言っておきながらあやしい話なんで、そこは申し訳ないんですけどね」

荻野目 旭 :「前提として、たぶん三廻部さんがここに来たのは事故じゃありません」

荻野目 旭 :「先ほど攫われた『池田咲楽』さんが、まあ多分この島に呼ばれた理由で──僕がコウコウセイごっこしてる理由でもありまして」

三廻部 颯 :「咲楽が……?」

『ホデリ』 :『………攫われた………かような物言い、あの小娘か………』

久外境耶 :
「ヘエ」

 "喚楽の人喰い虎"の狙いも、これで少しは分かるか?

木口龍 :(……攫われた、か)

荻野目 旭 :
     ・・・・・・・・
「彼女は、とても危険なものと日常的に触れていました。
 この際隠しても無駄なので話しておきますけど、『遺産』と呼ばれる物体です。実際はさておいて、僕らはそうじゃないかと推測したモノです」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 遺産──────!

荻野目 旭 :「僕はそれを持ち歩いている彼女が、三廻部さんと同じようにオーヴァードになる、もしくは知らず知らずのうちに遺産と結びついている可能性を警戒して、彼女の護衛のために三廻部さんのいる学校に転校してきてます」

荻野目 旭 :
「──といっても、この島に流れ着いたのはほとんど事故みたいなものってことも、確かだと思いますけどね。
 飛行機に乗ってる間に突然次元の裂け目が開いて、ぼくを含む数人のクラスメイトごと……ここにぱっくりいかれちゃったんですから」

“イリュシデイター” :
「次元の裂け目………。
          バロール
 カテゴリとしては、重力操作のものですが」

“イリュシデイター” :
「………無作為で起きるものではありませんね、確かに」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「それに、裂け目が発生したというのは移動中の飛行機です。
 偶発的に起こったと片付けるにも、そんな事象は有り得ませんね」

荻野目 旭 :
「……はい。
              こっち  あっち
 ホデリさんがやったように『始点』と『終点』を結ぶものが、偶然開きましたなんてオカシイですし」

荻野目 旭 :「そもそも飛行機を壊したのは裂け目じゃなくて、なんだか別の……グワッとした衝撃だったんですよね」

荻野目 旭 :「『目』を飛ばしても確認が間に合わなかったんで、その『なにか』の正体は不明ですけど」

三廻部 颯 :「あの、落ちる感覚……」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……。その推定『遺産』が起点になっているとしても、そうでないとしても……。
 それだけの事象を引き起こせるものが、明らかな意図を以てこの島に我々を引き摺り込んでいる。脅威には違いありませんね」

久外境耶 :「……」

木口龍 :
「……」

 ……何か? 衝撃? ン? 何の話だ──。

荻野目 旭 :「あの白い髪の女を含めた複数人が彼女を狙ってることも不穏ですけど、そっちとは完全に別物でしょうからね。……気が重いですう」

SYSTEM :
 落ちる感覚、と零した言葉に心当たりのあるものは少なくない。
 それが飛行機からか、船上の重力/水圧の波濤かという違いがある程度だ。

久外境耶 :「もっと重くしてやろうか」

久外境耶 :
    ・・
「おれの仕事は、あのオンナが狙ってるモンの横取り。それが済めば自分の懐に入れていいってオマケ付きよ」

荻野目 旭 :………………。

荻野目 旭 :「ぐええ……」

荻野目 旭 :気がおもそ〜〜なためいき

三廻部 颯 :「……!!」

“イリュシデイター” :「(口で“ぐええ”と言うのは始めて…いや久々? に聞きましたね)」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……“ラッキージンクス”は他の任務中の『事故』ではなく、『仕事』としてあの海域を訪れたのか?
 確かにあの“何もない海域”を偶然訪れるなど考え難いことではあるが。しかし、だとしたら……

“イリュシデイター” :「………ですが」 

“イリュシデイター” :
「その仕事の内容からして、白い髪の女性………“彼女”とは手を繋いでやって来たわけではないのですね、あなたは」

久外境耶 :
「おうよ。"黒き者"は巣穴から出た虎の狙いがご所望でね、おれは使い走りその一」

久外境耶 :
「つまり"喚楽の人喰い虎"だけは、この島に用事があって来たワケだ。戦いたがりのくせして、ガキに頼み事あるってのはよく分からんが」

荻野目 旭 :「…………。…………」

荻野目 旭 :「──あ、あの」

荻野目 旭 :「もう一回あなたの雇い主の名前を訊いても?」

久外境耶 :「"黒き者"」

“イリュシデイター” :顔を見合わせる。

荻野目 旭 :「くッッッッッッッッッッッ」

荻野目 旭 :顔を見合わせます 二度見

久外境耶 :おっいいリアクション いや〜報われるねえ

荻野目 旭 :いえ三度見します

”朧の狩人/残骸” シホ :
……片手で顔を覆う。どうしてくれよう。

“イリュシデイター” :
「………それと、今聞き捨てならない台詞も出ましたね」

三廻部 颯 :「?」

“イリュシデイター” :
 ・・・
「その一、ですか」

久外境耶 :「おう。四以下は死んだけどな」

荻野目 旭 :…………。…………

“イリュシデイター” :
「………………………分かりました。
 色々と言いたいことがありますが、要点以外はすべて仕舞い込みます」 

荻野目 旭 :三廻部さんの前で遺体の話なんて言うのはナニなので、僕が道々見かけた遺体の身体情報をスマホにぽちぽち打ち込んで、こっそり“ラッキージンクス”に見せます 横でちょろちょろと

”朧の狩人/残骸” シホ :
……。ほんの少しだけ話は読めた気がする。画面を見せた“ナイトホーク”に恐らく返るだろうリアクションも。

SYSTEM :
 その四以下は死んだ───軽すぎる同朋の投げ捨て方。
 その三以上は生きている───ことと次第によっては其方と顔を合わせて目的の齟齬をすり合わせる必要がある。

 いやそもそもなんで黒き者がそんなことに乗り気なのか───。
 
 一斉に生じた疑問のせいか、20代成り立てのエージェントの表情に、表面化した困惑が出る。
 ………ともすれば、横で疑問符を浮かべた少女の様子に応じる暇もないくらいに。

久外境耶 :あ〜うん ソレだわ

荻野目 旭 :ああ〜〜ん

荻野目 旭 :頭を抱えますう

”朧の狩人/残骸” シホ :やっぱり……。

木口龍 :……。

久外境耶 :「1号」

荻野目 旭 :そろそろ三廻部さんとか颯さんとか呼んであげたらどうですかあ……?

“イリュシデイター” :そもそも何故1号…

”朧の狩人/残骸” シホ :まぁ、本人が受け入れているのなら……

三廻部 颯 :「え、は、はい」

久外境耶 :「トラ女の狙いは遺産だけじゃない。たぶん攫われたガキとセットだろ」

久外境耶 :
「話聞いてたよな? おれの狙いは横取りで、おまえはダチ取り戻したい……」

久外境耶 :
 ・
「嫌だなんて、いつまでも言ってられると思うなよ」

 ──味方だと思ってたんならご愁傷さま。おれは"喚楽の人喰い虎"や"渇望喰い"と変わらない、おまえの敵ってコトだ。

三廻部 颯 :「──」

三廻部 颯 :
 頭が痛い。
 目の前で突きつけられた現実の全てが受け入れられない。
 いずれは受け入れなくてはならないものかもしれない。
 それが私に与えられた試練であるのかもしれない。

 鳥居の下で、青年が言った言葉が頭を響かせる。

三廻部 颯 :
 ……。

 ……、……。

三廻部 颯 :
 ──いいや。

 私がそれでも二度目の命を選んだ理由を思い出せ。
 自分の未来、自分の将来、自分の人生、自分の夢、
 それをどうしようもない理不尽で奪われることが、本当に嫌だ。
 嫌だから、命を掴んだ。

三廻部 颯 :
 ……現実を飲み込めない少女は、現実を受け入れる努力をする前に。
 現実を受け入れる覚悟をした。

 それは明確に──言葉となって。
 反射的なものではない、確かな言葉として口にされた。

三廻部 颯 :
「……話は聞きました。
 咲楽のことも、あの子を取り囲んでるものも」

 聞いた上で。

三廻部 颯 :
、 、・・・・・・
「──それも嫌です。
 私の友達は誰にも渡しません」

 少女はそこで、自分のエゴを貫くことを知った。
 だからこそ少女はあの時、自分の拳を敵に向かって振るった。
 それだけはきっと、譲ってはならないことだ。

「その時は……その時は、死ぬ気で取り返します」

三廻部 颯 :
「あの狼も、あの虎の人も、あなたも、
 みんなそんな勝手なことを言うなら、私だって勝手を言います」

「……そのために私、死ぬのやめたんだから!」

『ホデリ』 :『(死ぬのを………やめた、か)』

SYSTEM :
 その時、そいつの視線が僅か向き。
 何か口を開きかけて止まった。

久外境耶 :「おォおォ、良いじゃねえの。そうしろ、誰だってそうしてらァ」

久外境耶 :
「期待してるぜ、ミクルベハヤテちゃんよ」

 で──合ってたか?

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……彼女の決意は、きっと肯定されるべきものなのだろう。
 だろうが、しかし…………

”朧の狩人/残骸” シホ :
 この世は少年と少女の一問一答が解決するほど単純なつくりをしていない。
    かれら そしき
 それが FH に FH という徒党を組ませる理由なのだ。

 …………いずれ彼女もそれを識るときが来るのだろうか?
 いまワタシが考えても、仕方のないことだけれど。

SYSTEM :
 少女の一足早く、一足勇んだ反抗心の宣誓を聞いていたものの反応は三者三様。
 
 ひとり、いや一匹は既に記した通りだ。
 何かを言いかけて、口にしなかった。

SYSTEM :
 そしてもうひとり、いや“一体”はそもそもそこに興味を持っている様子はなかった。
 彼が遅ればせながら考えを巡らせていた部分は、そこというよりは。

タイガーアイ :
『遺産か。………。
 ………シホよ。頭の片隅にでも置いておけ』

タイガーアイ :
『あのホデリとかいう生物。
      レネゲイドビーイング
 どうもただの我々の同朋というわけではないな』

タイガーアイ :
『頃合いを見て接触させろ。
 ・・・
 不都合と思わば我を遣え。以上だ』

SYSTEM :
 ………そして最後の一人は。
 その決意と、囃し立てる方を交互に見て。暫く沈黙を保っていたが。

“イリュシデイター” :
「急がずに」

“イリュシデイター” :
「私はあなたの友達の事情を知りませんし、
 あなたの覚醒めの経緯も知りません」

“イリュシデイター” :
「………怒る理由の正しさも、詳しく分かってあげられません。ですのでこれだけ言いますね。
 どうか、急がずに。

 そのひとが大切、の気持ちを持たずに転げ落ちた人も………。
 そのひとが大切、を逸らせて、道を踏み外した人も知っています」

“イリュシデイター” :
「“ナイトホーク”が言ったでしょう。
    ・・・・・・・・・・・
 我々、日常に戻る援けをしますって主張した組織にいると」 

“イリュシデイター” :
「………で、私はそれ好きでやっているので。
 あなたがソレを振るうことを止めはしませんが、一人で走り過ぎないように、と。お節介は焼きます」

SYSTEM :
 否定しないが、きもちだけ逸って道を踏み外さないように───。
 
 確認直後の宣誓を“どう”思ったのか、少しでも聡い人間なら分かる反応をして、彼女は一旦それへの言及を止めた。

三廻部 颯 :
「……、…………」

三廻部 颯 :
 その時“イリュシデイター” にだけ見えるように、
 わずかに目を伏せた表情が、少女の覚悟を物語っていた。
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 本当はそんなことしたくないのだ。
 それがただの"やせ我慢"だってことは誰の目にも明らかだった。
 けど少女はそれを口にしなかった。
 口にしたら、鈍ってしまう気がしていたからだ。

三廻部 颯 :
「……はい。
 別に私一人で全部なんとかできるなんて、思ってません」

「その時は頼りにします。
 それに……例えその、任務?のための潜入だったとしても……」

三廻部 颯 :
「旭くんは、私の友達だと、私は思ってます。
 友達のこと、信じたいし、頼りにしたいですから」

三廻部 颯 :
「以上1号……じゃなくて三廻部颯の宣誓です!」
 ふんす、と境耶にいばる。名前は合ってます!

“イリュシデイター” :
「良くできました。
 ………ですが少し困らせましたね。そこはごめんなさい」

荻野目 旭 :苦笑い。

久外境耶 :「そうかい。じゃ、もしもの時は全員でかかってこいよ1号」

久外境耶 :「勝つのはおれだけどな」

SYSTEM :ホデリが軽く視線を向けて吼えた。“もしもの時の全員”に自分は該当せんぞという意志表示らしい。

“イリュシデイター” :
「………その時がないことを願いますよ。
 話を戻して正直に言えば、今までの言動はともかく、先の回答でひとつ安心しました」

“イリュシデイター” :
          ・・ 
「もし其方のあなたがそうだったなら………。
 前提に頷いていいかを悩むところでしたので」

SYSTEM :
 ・・
 そうとはつまり。

 白い髪の女性とあなた/境耶がグルだった場合の話だ。
 こうなってくると、彼女らの呉越同舟の土台は前提から転覆する。

 ………何故なら。

“イリュシデイター” :
「戦いたがりで、常に笑っていて。
 コードネーム   マ ン テ ィ コ ア
 識別符号が“喚楽の人喰い虎”………」

“イリュシデイター” :
「此方の仕事の標的です。
.      ネスト
 FHセル『魔獣の巣』………そのセルリーダー。
 厳密には彼女が、というよりは、そのセルを追う最中でした」

荻野目 旭 :「………」

“イリュシデイター” :
「ですので…そうと頷かれたら、私は『事故です』と言い切らねばならなかったわけですね」 

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……まさか“黒き者”の名前が出てくるとは思わなかったが、聞いた話が真実ならば“ラッキージンクス”が“喚楽の人喰い虎”のお仲間でないというのも恐らくは真実だ。
 これはあくまで予測に過ぎないが、“タイガーアイ”が捉えていたというFHの活動の兆候はつまりそういうことであった可能性が高い。

 恐らく、彼は“ディアボロス”と同じようなものなのだろう。具体的な話は聞かされず、ただ“リュウグウジマ”と“喚楽の人喰い虎”について大雑把に聞かされた……といったところか。或いは彼も件の輸送任務に関わっていたのかもしれない。

荻野目 旭 :「ノエルさんの場合、合流するまでの経緯も全然でしたしね。情報共有が追々になってごめんなさい」

“イリュシデイター” :
「そこはまあイーブンですね。
 状況が状況でしたので、悠長に話してる暇もありませんでした」

“イリュシデイター” :
        イリュシデイター
「コードネーム“薄氷を繕い裁つ”───。
 名前は名乗りましたし、呼ばれましたね。ノエルです」

“イリュシデイター” :
「私とそちらの彼女と………。
 そちらの彼女が首に提げている子は、そういう理由で此方に来ています」

SYSTEM :シホの方を軽く促す。

荻野目 旭 :
(“ストックホルム支部から追われているエージェント”
 “FHセル”……その正体が、『彼女』のセルだったとはなあ)

荻野目 旭 :(……霧谷さんがセルリーダーのコードネームに触れなかったのも納得だ。気遣わせちゃってるなあ)

荻野目 旭 :表情に出さずに、内心でため息。”残骸”というイリーガル──つまりシホさんが消息を絶った件も、これであらためて点と線が繋がったってわけだ。

久外境耶 :「おたくらはヤツ自身が、うちはヤツの目当てが狙いってワケか。で、そっちのが……」

久外境耶 :……あ? 首に提げてる子?

”朧の狩人/残骸” シホ :
……自分で蒔いた種だが、他人に言われると中々シュールだな…………

タイガーアイ :
 如何にも首に提げた子である
. ワレモノ
 貴重品だ 丁重に扱って貰おう

”朧の狩人/残骸” シホ :可愛い子には旅でもさせろというな。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 まぁ、戯言は適当に海へでも流すして……
 今は“この子”がワタシの隠し持つ最大の切札になりうる。これがワタシともどもRBであることは敢えて触れる必要もないだろう……

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ああ、そうそう。
 先ほどは慌ただしくて詳しいことはお話しできていませんでしたね。特に颯さんには分からないことの方が多かったでしょうし……改めて自己紹介させていただきます」

”朧の狩人/残骸” シホ :
        コ-ドネ-ム レムナント
「ワタシはシホ。識別名は“残骸”と言います。
 普段はUGNイリーガル……つまり日常を守るお手伝いさんとして全国を回っています。
 主な仕事は、さきほどお話に出たようなジャームが現れたとき、一般の方々へ悪さをする前に退治することです」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 我ながら、少々夢想的な表現。
 厳密に言えば……ワタシが派遣されるような案件では、ジャームは基本的に殺害という形で無力化される。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 特に“朧の狩人”として行動する場合は……
 UGNエージェントや民間人も例外ではない。

SYSTEM :
 ひとしきりの自己紹介をあなたが終えると、反応を見るより先に、ぱちり、と首飾りと呼ぶには大きな球体が明滅する。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……………………………」

……まぁ、うん。
当然これのことも説明しなければならないわけだ。

タイガーアイ :「[System standby...]」 

三廻部 颯 :「わっ」

タイガーアイ :
「当機はUGN所属の人工AI
 個体名:ブラザーフッドG03 」

... ネスト
「“魔獣の巣”の摘発において徴用され現在に至る」

タイガーアイ :
「補足:漂着時の衝撃でコア部分以外を破損
    元々このような姿でないことを留意」

SYSTEM :
 本物の起動音と最低限の嘘ではない説明、そして人工RBというややこしくなる部分を意図的に省いた音の波長が広がる。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ああ、えーと……すみません、驚かせてしまいましたか?」

久外境耶 :
「ゴミ掃除屋とスクラップ? ま、お似合い──」

 とくに悪気のなさそうな声色が、はた、と途切れる。

久外境耶 :「あ? イリーガルが何でUGNのロボ持ってんだよ」

”朧の狩人/残骸” シホ :ワタシが聞きたい。いや経緯は知ってるが。

タイガーアイ :「再掲:漂着時の衝撃でコア部分以外を破損」

“イリュシデイター” :「単身では移動も儘ならない損傷状態だったので、今は彼女にああして持ち運んでもらっています───」

“イリュシデイター” :「と、言いたいのではないかと」

三廻部 颯 :「ロボットだー!?」

タイガーアイ :電子音声が鳴った。

久外境耶 :「フーン」

久外境耶 :「へいパス」ちょっと貸してみ、のジェスチャー

木口龍 :「……流石に時代はそこまで進歩してないよな……よな……? もしかして、AIか……いや、AIでもこんな流暢には(ぶつぶつ」

”朧の狩人/残骸” シホ :
…………どうする? オマエの姿はカバーされてる、多少手渡しても問題はないだろうが……

SYSTEM :彼の返事がない時は基本”わりとどっちでもいい”時である。

”朧の狩人/残骸” シホ :
軽く小突く。問題ないなら渡すぞ?

タイガーアイ :好きにせよ。正直を言えば…

タイガーアイ :手の内に拘りたいとしてもいま支障は起きぬ お主の仮面に従えばいい話だ

”朧の狩人/残骸” シホ :
…………まぁ、いいか。ここで渋っても確かにあまり利点はないし。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……はい、どうぞ。
 頭部ユニット以外は損壊してしまったので、機能の大部分は喪失しています。あまり見ても面白くはないと思いますが……」

 括っていた縄を一旦解いて“ラッキージンクス”に手渡す。

”朧の狩人/残骸” シホ :颯とそこの眼鏡にも少し促してみる。興味があるなら見てもいいですよ?

三廻部 颯 :落としたら怖いしなあ〜

”朧の狩人/残骸” シホ :大丈夫大丈夫、多少雑に扱っても怒られません

荻野目 旭 :「…………。…………」

タイガーアイ :恐らくは抗議と思しき電子音声が鳴った。

木口龍 :まじなのですか? ちょっと見てみたいな〜〜〜俺もな〜〜〜

久外境耶 :
「お、話分かるねえ」

 サンキュー、と受け取りつつ。

「十分十分。ブラドの知り合い少ないから間近でロボ見ることもなくてさ」

久外境耶 :
「これがモノ考えたり喋ったりすんだけど、わかるか? からくり的な」

 小突けば光るか? 指でこんこんノックしながらホデリに見せる。

『ホデリ』 :『からくり………』

『ホデリ』 :
『我は識らねど………。
 このような鉄作りは、島に幾度か流れ着いたことがある』

SYSTEM :
 軽く首を傾げた彼に「からくり」の意味は伝わっていなかったようだが、
 少なくとも『知らない鉄細工』については覚えがあるらしい。目覚めてから見たものと考えるのが妥当だろう。

タイガーアイ :
「警告:コア部位は当機のシステム中枢を兼ねる
    丁重に扱うことを希望する      」

『ホデリ』 :
『………外ではこのようなものまで作らるか。
 時のうつろいを確かむようだ』

久外境耶 :「お、喋った喋った」

”朧の狩人/残骸” シホ :……そういえば訊いたことはなかったかもな。その『中身』が何年モノなのかについては。

久外境耶 :
「にしても、漂流物ね。探せばどっかでボディも手に入るか?」

 互換性あるかは知んねえけど。

久外境耶 :
 満足したから、自称探偵に投げ……

 ……キャッチできんのか? 転がす。

久外境耶 :ころころ〜

”朧の狩人/残骸” シホ :ああ……転がってる……

荻野目 旭 :「その話がホントならうちの備品みたいなので、丁重に扱ってくださ〜〜〜い……」

荻野目 旭 :切実な声を出す。

タイガーアイ :
「当機の損傷したボディを修復できるブラックドッグ・シンドロームの持ち主がいれば可能」 ごろごろ

木口龍 :おいバカにしすぎだろ、と内心思いながらボールころがしの容量で受け取る。

タイガーアイ :「可能…」 エコーが掛かっている

タイガーアイ :
『………』

木口龍 :「……」

SYSTEM :
 敢えてタイガーアイの内心を語るならば、
 図らずとも間合いに入ったな………という葛藤であったことだけを記載しておく。

 そして彼は数秒の葛藤のち、ナーブでジャックのちゃぶ台返しではなく沈黙を選択した。

”朧の狩人/残骸” シホ :
……不幸中の幸いというか、塞翁が馬というか。この場合は棚から牡丹餅か?
“まぁいい、任せたぞ”───と(見えているかは不明だが)無言のアイコンタクト。

久外境耶 :「ケーヒで落とせよ、ケーヒで」

三廻部 颯 :「けーひ?」

久外境耶 :「魔法の言葉」

三廻部 颯 :「へえ〜」

“イリュシデイター” :「経費と言えば資金が降りる魔法の言葉ではありませんよ」

荻野目 旭 :「う〜ん お仕事の依頼先次第ですねぇ」

木口龍 :
「ほうほう、これは……AI……いや、AIにしてはなんっていうか情緒はある──」

 何気無しに、何かこう……調べている。

「ときに、ボディはヒトガタだったのか?」

“イリュシデイター” :ですのでそこ 大真面目に不真面目な話を伝えない

”朧の狩人/残骸” シホ :「UGNでもイリーガルですと通りにくいですからねぇ……その手の申請」

タイガーアイ :「肯定」

タイガーアイ :
「但しコア部分のみでも長距離通信と探査は可能
 この空間内で可能かどうか、暫し後に確認を希望」

荻野目 旭 :……“ブラザーフッド”のことはさておき、シホさんには気になることがあるんだけど、まあそれはそれだ。顔には出さないでおく。

木口龍 :
「ヒトガタか。つまりア◯アンマンとかその類、と……」

 少なくともサイボーグの心臓を引っこ抜きました、みたいな展開ではなさそうだ。一安心。

「──だ、そうだが……」

木口龍 :持ち主に返そう。

”朧の狩人/残骸” シホ :あっ。

久外境耶 :あ?

木口龍 :

”朧の狩人/残骸” シホ :ああいや、暫くそっちで持っててもいいですよ……?

木口龍 :いや本人長距離通信確認したいって言ってるし……

SYSTEM :ブラザーフッド/タイガーアイは何をば言わず手元からすり抜け転がって行った。

木口龍 :あっほら自律的に戻っていった。オレ見たことあるこれ。ル◯バだ

荻野目 旭 :おむすびころりんみたいにこのまま外の確認してくれないかなあ

タイガーアイ :
「確認:遺憾ながら所有の意志はない様子
    引き続きの保有を希望する」

 その台詞にはシホに対してのみ、『少なくとも今この小僧の頭を覗く気はない』という副音声が含まれていたように思える…。

三廻部 颯 :ころころだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………。
 転がってくる“同胞”の頭を手に取り、元のように首元へと括り直す。この後の動向を考えれば、これが一番都合がいい。

荻野目 旭 :「………。………」

木口龍 :
「すごいな。最近のコアは自律駆動出来るのか」

 よく考えたらそうじゃないと逃げられんわな、ボディから。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……ええと、話が逸れましたね。
 いま“この子”がお話ししたように、元はと言えば“ブラザーフッド”は人型のサポートデバイスでした。ワタシの狙撃を補助してくれたり、通信をしてくれたり、いろいろと」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「その“ブラザーフッド”が人型を喪った経緯について、順を追ってお伝えします」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「先程“イリュシデイター”が説明したように、ワタシたちはひとつのFHセルの調査と掃討を目的として派遣されたUGNの部隊です。

 セル名、【魔獣の巣】。
 活動圏域は不明かつ不定。勢力構成も定かではない。組織構成員も脅威度も不明。分かっているのは、セルリーダーが件の彼女であるということぐらい。」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「放置すれば、民間人へ与える被害もUGNに与える損害も無視できないことは確かだった。
 ……その【魔獣の巣】がある海域上で姿を眩ましたとの情報を元に、そのセルの討伐を長期任務としてきた“イリュシデイター”を軸にした調査チームが編成されました」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「目標となる海域には極めて強大なレネゲイドの反応が確認されていましたが……それ以外に特段の異変はなく。エンジェルハィロゥの光子操作による欺瞞や、オルクスの因子操作による秘匿も確認されなかった。
 実際我々の調査船が当該座標に着くまでの道中も、特に際立った異変は確認されませんでした───」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「───ところが目標地点に着いた途端、海域全体に異変が生じました。
 具体的には引力……いや、或いは圧力のようなものでしょうか……。
 とにかく“バロール”の重力操作に似た力場の変異が我々の調査船に襲いかかったんです」

SYSTEM :
 バロールの重力操作に似た力場の変異/偏移。
 水底に引きずり込むような、重力の井戸の底。

 その言葉にあなた/境耶は既知感があった。

 仔細を詰めていけば一部に違いはあるかもしれないが、恐らく………“火事場泥棒”に来たあなたたちと、彼女/シホらが見舞われたものの本質は、全く同じものだろう。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「脅威対象が出現した───そうワタシは判断し海面を睨みましたが、目視での確認は叶いませんでした。
 時間を経るにつれて引力は強まり、這う這うの身体でなんとかワタシと“イリュシデイター”は抵抗できましたが……。
 “ブラザーフッド”が身を挺して衝撃から守ってくれなければ、今頃ワタシたちは船と運命を共にしていたかもしれません」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「とかくワタシたちは辛くも衝撃からは逃れましたが、船が大破したことで海に投げ出されてしまい……。
 気がつくと、何故かワタシたちは島内の“洞窟”にいたようです。身体の崩壊した“ブラザーフッド”と共に」

久外境耶 :「へエ。やるじゃん、ブラザーボール」だっけか。

久外境耶 :「ま、こっちも大体そんなカンジ。お互いに後追い航路だ、違ってもヘンだろ」

久外境耶 :「強いて言やあ、おれは砂浜で船のジャンクと一緒に目覚ましたくらいか」

タイガーアイ :「訂正:ブラザーフッド」

”朧の狩人/残骸” シホ :(どちらでもいい気はするが……)

“イリュシデイター” :
「その説明に不足もありません。
         .ネスト
 強いて言うなら『魔獣の巣』について、もう少しだけ補足出来る程度で…」

“イリュシデイター” :
「ともあれその島内の洞窟から出た直後、“ナイトホーク”の救援要請と思しきワーディングを探知。
 向かった先で大型RB………。
                    レーレ・シュヴェア
 かつて北欧で発見され、死亡したはずの”蝕みの君”と遭遇しました」

荻野目 旭 :(……直後)

“イリュシデイター” :
「状況の都合、こちらが撤退の時間稼ぎを引き受けましたが………。
            マ ン テ ィ コ ア
 アレは中央………推定“喚楽の人喰い虎”が引き起こしたものと思わしい『ワーディング』反応を感知した段階で、此方にも目もくれず移動を開始しました」

“イリュシデイター” :「………それで追ってみればこの様子、というわけです」

SYSTEM :
 推定というわりには、彼女の言葉には澱みがなかった。
 むしろ確信に近い言い草で、発生したワーディングの出所がだいたい「そう」だとアタリをつけている素振りもある。

久外境耶 :「北欧で死んだやつが日本の離島に来んのかよ。何の冗談だソレ」

久外境耶 :
「おれはホデリに会って、この場所に向かう途中だったか? そこのイロ男拾って、頭のおかしい話を聞かされたあとに件のワーディングが飛んできたんだけどよ……」

木口龍 :「頭のおかしい話とはなんだ頭のおかしいとは」

荻野目 旭 :「そもそも拾ったって」

“イリュシデイター” :「個人的には冗談でも言いたくないですね。それで…」

荻野目 旭 :捨て猫じゃないんですから

“イリュシデイター” :「飛んで来た後は?」

久外境耶 :ああ、そうだな 訂正する させてください

久外境耶 :見つけただけだ 断じて拾ってはいない

久外境耶 :あっちが勝手についてきました

木口龍 :ふっ

“イリュシデイター” :………木口さん?

”朧の狩人/残骸” シホ :捨てられた飼い猫だな……。

“イリュシデイター” :いえ、良いです、話を続けて、戻して

久外境耶 :
「あてられたみてーに森中の生き物が騒ぎ出しやがった。今にして思えば、ヘンな話だろ。なんだってワーディング下で動きやがるんだってな」

久外境耶 :
「気付いたの、さっきだけど。おれ現場直行テンションなってたからさ。行ったらマジで大当たりだし」

”朧の狩人/残骸” シホ :

荻野目 旭 :「………。…………」顔がどんどん曇っていく。

荻野目 旭 :「……。……疑問が増殖していきますね」

荻野目 旭 :「……イロ男さんも『拾った』って言ってましたけど、彼はどこで? なんだか……三廻部さん程度に巻き込まれですよね」

荻野目 旭 :雰囲気が……

久外境耶 :いいか

久外境耶 :拾ってない

久外境耶 :勝手についてきた

荻野目 旭 :えっと じゃあ…

木口龍 :「オレはな、なんと」

荻野目 旭 :なかまになりたそうなめでそちらをみていたんですね

木口龍 :
 そうなん
「 遭難 です」

久外境耶 :「殺していいか?」

荻野目 旭 :「じゃあ次行きましょうか」

木口龍 :「すみませんでした」

”朧の狩人/残骸” シホ :そうなんですか。

“イリュシデイター” :「遭難………」

三廻部 颯 :「そ、そうですか」打ち切った

“イリュシデイター” :「………………いえ、正直聞きたいことはあるにはあるのですが、その前に」

“イリュシデイター” :咳払い。

“イリュシデイター” :「ワーディングの反応についてだけ補足を。構いませんか?」

久外境耶 :「……なあ、センコーってこんな感じ?」1号に

三廻部 颯 :「……」

三廻部 颯 :「すごいこんな感じです」

久外境耶 :「ウケんなー。じゃあ頼むわセンセ」

“イリュシデイター” :
「先生と呼ぶのは、あと3年くらい後か、非行少年を卒業した後にしてほしかったですね」

SYSTEM :などと軽口に軽口で応じてから、彼女は言葉を続ける。

“イリュシデイター” :
「まず前提として、件のセルリーダーが活動する範囲について。

 彼女の活動が確認された前後においては、それ相応の数、レネゲイドを暴走させた個体が出現し、破壊活動を行います。
 魔獣の巣は、その個体数の補充速度、および発生と所属比率についてが問題視されたセルでしたが………」

SYSTEM :
 歪んだ欲望だけを抱え、それ以外の全てを取り零した理性なき怪物───。
 それがジャームだという言葉を借りるならば、
    フ ァ ル ス ハ ー ツ ラ シ イ
 ここはその言葉とそれなりに縁の深いセルだという話。

“イリュシデイター” :
「………これでも長期で追って来た身です。
 指折る範囲ですが、居合わせたこともあります。

 彼女が活動する時。
 概ね似たような大音量の発声を伴うワーディング反応がありました」

“イリュシデイター” :
「三廻部さんに分かりやすく言うと。
 ・・・・・・・・・
 自分はここにいます、とオーヴァードがオーヴァードに伝えるため………。

 もしくはオーヴァードが、そうでない方の動きを一方的に止めたり、そこに近付けないための意思表明が『ワーディング』ですね」

“イリュシデイター” :
「………ですので。
 その話から考えられることは二つです」

SYSTEM :
 この島の生物が最初からレネゲイドに適応しているものだから───にわかに信じがたい可能性。
 あるいはそのワーディングと同時にAオーヴァード/ジャーム化した───“これも”にわかに信じがたい可能性。

 そのふたつ、特に後者については、専門用語の増加で颯の頭がこんがらがるのを嫌ってか、少しばかりのぼかした表現として、一通り“イリュシデイター”が話を終えた。

荻野目 旭 :──あのオトを思い出して、背中に悪寒が走る。

荻野目 旭 :もとから悪い冗談みたいな悪めのケースだけど、ここまで最悪を更新してくるとちょっと泣けてくるよね、と、現実逃避みたいに改めて思う。

荻野目 旭 :泣かないけど。……はあ。とため息。

荻野目 旭 :「……どっちだとしても最悪ですね」

久外境耶 :「最悪? 最高の間違いだろ」

久外境耶 :「ますます良いオンナだ。次にツラぁ拝める時が待ち遠しいね」

荻野目 旭 :「僕は金輪際会いたくないです〜う……会わなきゃいけないんですけど」

三廻部 颯 :「……怖いけど」

三廻部 颯 :「──私も会わなきゃ…」

 自分はここにいます、という使い方。
 それを発した意味──どこか……既視感を感じるような。

”朧の狩人/残骸” シホ :「彼女が何を目的に行動しているのかも掴めませんが……会わないことには始まりませんからね」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 “イリュシデイター”が語った二つの可能性───どちらも「ありえない」推測ではあるが。
 そも、道理を無理で捻じ曲げるのがレネゲイドの特性というものだ。可能性の外すらも考慮に入れる必要はある。

木口龍 :「い、行くならオレも行くぜ……こええけど……」

荻野目 旭 :「実際問題、あなたも立派な遭難者ですし……基本的には保護対象ですからね。頼りにさせてもらっちゃいますけど」

『ホデリ』 :『それを差し引いても向こう見ずだな…件の臆病さは如何にした』

木口龍 :「出来ることはやらねえとなぁ……よくわかんないが、仕事もあるし……」

荻野目 旭 :……。………。

荻野目 旭 :「しごと?」おうむ返し。

木口龍 :「いやなんかあれなんですよ」 しどろもどろ

木口龍 :
「人助けしろってこのメモに。
 だからビビり散らかしたまんま帰るとぉ、オレの生活に関わるお金が入ってこないかもしれないんですよねぇ」

 手帳を見せるぞ。
 そこには"人助けをしろ"、それが今回の仕事だ、と書いてある。

荻野目 旭 :「……。…………。…………」

荻野目 旭 :まあ、たしかに書いてるけど

『ホデリ』 :『………若造………』

久外境耶 :おまえそのラクガキ帳会うヤツみんなに見せて回んの?

”朧の狩人/残骸” シホ :
「な、なんというか……ザックリですね。すごく。」

三廻部 颯 :なんじゃそりゃ、と言いたげな顔。

『ホデリ』 :『謀られたか?』

SYSTEM :彼の声はとてもやさしかった。

木口龍 :「これ確かに"依頼"として受けちゃったっぽいんですよ!!! えっマジで謀られた?」

”朧の狩人/残骸” シホ :もはや謀られたかどうか以前の問題というか……

木口龍 :「……そういやさっきから言ってるバケモンってなんなんだ……? ってなってたし、え、オレマジでハメられてんの?」

“イリュシデイター” :
「………いい加減基本的な突っ込みを入れようと思っていたのですが………構いませんか、木口さん」

木口龍 :「あ、はいすみませんでした」 正座

“イリュシデイター” :
「………先程までの口振りから“もしや”と思っていたのですが………。
 島に来た前後について、ご存じでない?」

木口龍 :「いやあ、お恥ずかしながら、あのぉ……」

木口龍 :
「オレ、皆さんが言ってるバケモノ、"見てもいないし"、"影響とか云々言われても分かんない"っていうか"……。
 ああいや、頭打った時に記憶トンだだけかもしれないので気にしなくていいっすよマジで!」

”朧の狩人/残骸” シホ :ん……?

久外境耶 :「………………………………」

三廻部 颯 :……違和感。

久外境耶 :おれのときと随分違うなおい

荻野目 旭 :「………………………」

“イリュシデイター” :「………」

“イリュシデイター” :「(分かるわけには行きませんが)分かりました」

SYSTEM :
 人の感情の機敏に聡いものならば、いや聡くなくとも。
 どうにも例外と例外を続けられた弱冠20歳、成人を越えて1年足らずのエージェントの副音声が、確かに聞こえたに違いない。 

久外境耶 :「あの頭オカシイ話言えよ、なあ。おれには長々語ったくせして女の前ではできないってか? あ?」

久外境耶 :出るか? 表?

荻野目 旭 :どんな話きかされたんだろう

”朧の狩人/残骸” シホ :聞きたいような聞き逃したいような。

木口龍 :「あれは仕事を受ける経緯であって、そもそもこの島に流れ着いた直接的な原因でなくてだなぁ……仕方ない、話してやろうじゃないか──」

三廻部 颯 :「……お願いします、じゃないと」
 なんだか違和感。

タイガーアイ :1d100 興味 (1D100) > 96

久外境耶 :そっとホデリの耳を塞ぐ

木口龍 :止めないと同じ話するんだが、確実に進行の邪魔なのでカットでいいぞ(無慈悲)

タイガーアイ :
『ふむ………。
 この男の身の上話か。矛盾を突き止める手がかりになるやもしれぬ』

SYSTEM :
 これで下らぬ話であればナーブぞ。

 そう冗談めかして口にした彼の明滅は興味を示していたが、開始数秒、数節ほどでその明滅が一気に薄らとしたものに変わって行った………。

”朧の狩人/残骸” シホ :………どうする?ナブるか?

SYSTEM :
 具体的に言うとタイガーアイは途中から白け、一度だけ『麻酔針とは何ぞ』という一言だけをシホに伝えて、完全にセルフでやる気のない音楽を波紋として口ずさみ始めた…。

タイガーアイ :慌てるな 眼鏡を割る程度で許してやれ

”朧の狩人/残骸” シホ :生憎それをすると仮面が割れそうでな

木口龍 :
「では始めよう。
 あれは昔々、広島組と諸武意組の抗争が勃発していた頃、オレは高校で起きたある事件に立ち向かって──」

 ──同じ話なのとシーン一個分まるまる書くと時間取るので省略。

「──そしてオレは時計型麻酔銃で撃たれ、眠っていたと思ったら海水塗れで流れ着いたというわけだ」

三廻部 颯 :「すみません」

三廻部 颯 :「意味がわからないです」

木口龍 :
「なのでマジな話、皆さんの言ってる引きずり込んだモノがオレには分からん」

 結論。
 ここだけ覚えてればいいです。

『ホデリ』 :『境耶』 彼の者は何を言っている?

SYSTEM :ホデリは再び耳を塞がれ、その話題を聞き逃したが、周囲の表情の絶妙な脱力具合と真顔振りに、何かを察し始めたようだ…。

久外境耶 :間違っても人生で二回も聞くべきではねえ話かな……

久外境耶 :グエ 体調悪くなってきた

“イリュシデイター” :
「(分かるわけには行きませんが)分かりました」

三廻部 颯 :
 重要かもしれない
 全然わからない
▶︎忘れよう、思い出のシミになる

”朧の狩人/残骸” シホ :
「……………………」
一種のアルカイックスマイル。

SYSTEM :弱冠20歳を越えた程度のエージェントに出せる言葉はそれだけだった。

三廻部 颯 :
「(聞かなかったことにしよう……)

木口龍 :
「そう! そこには被害者達の憎悪と感情渦巻く世界であったのだ! 
 そうしてオレは次の事件である、湯けむり温泉地獄空手部の集団昏睡事件の調査をすべく安楽椅子に座っていたのが最後の記憶──」

 まだ喋っている。

“イリュシデイター” :「木口さん」

“イリュシデイター” :「話を戻して構いませんか?」

木口龍 :「すみませんでした」

三廻部 颯 :
「許可を得ずに戻していいと思います」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「自覚、あるんですね」
謝罪に関して。

久外境耶 :センセーこいつ任すわ

久外境耶 :あんたの話なら聞くし……

三廻部 颯 :
「(頭おかしくなりそう……)」

“イリュシデイター” :「そうもいきません。先程見た名刺の限り、彼が一番の年長者ですので」 

SYSTEM :………咳払い。

三廻部 颯 :うそだあ……。

久外境耶 :うそだあ〜〜

”朧の狩人/残骸” シホ :嘘だろ……

“イリュシデイター” :残念ながら本当ですよ 彼、4歳年上です

荻野目 旭 :僕が最年少なんですケド……交換しますか?

木口龍 :そうだぞ、大体25歳なんだ

三廻部 颯 :先生帰ってきてえ……

荻野目 旭 :「それで、大阪市西成区(プライバシー保護の為検閲)在住の木口さんはどうやら偶然ここに流れ着いてしまったようなんですけど」

“イリュシデイター” :
「ええ。………その経緯が唯一例外となっている部分については、当人が分からず、推察に過ぎぬ以上、ここで唸っても仕方のないことですね」

“イリュシデイター” :
「………時としてオーヴァードの中には、
                 エフェクト
 対象者の記憶や精神状態に干渉する能力の所有者がいます。
 また同様に、彼が単独で此処にいるならば、漂着の衝撃で記憶障害を起こした………なんて荒唐無稽が罷り通ることもなくはない」

SYSTEM :
 あるいはこの話が本当とか、もっと別の眉唾物の話だらけになってくるのが関の山だ。

 木口龍は一人だけ、漂着の経緯に心当たりがない。ただそこから先を突き詰めて出るものは、精々胡乱なトリックの話かうまいラーメン屋の屋台の情報だけである。
 聞かされた日にはタイガーアイの明滅がいよいよ皆無になることだろう。

“イリュシデイター” :
「話がそれました。
 実際………“喚楽の人喰い虎”については、このまま関与せずというわけにも行きません」

“イリュシデイター” :
「私にとっては追っているFHセルのリーダーですし、其方のあなた(※境耶)にとっても我関せずとはいかないでしょう。それに───」

『ホデリ』 :
『………何よりこの小娘の伴を連れて、島へ発った。
 その理由は───』

SYSTEM :
 ホデリは何事か考える仕草の後、境耶を一度見た。
 そして………彼と出会った時の言葉を反芻するように、こう述べる。

『ホデリ』 :
『ここは然る物の怪の妄執で生まれし、
 化外の眠る島………。

 あの笑う娘が、小娘連れて発った理由………
 そして、あの娘を迎えに来た者の理由………』

三廻部 颯 :「───っ」

『ホデリ』 :
『………あの小娘は、わたしと同じものを携えておった。
 ならばわかる。この島の“物の怪”を起こそうとしておるのだ』

SYSTEM :
 自分でも実感が薄いのか、どうも慎重に言葉を択んだホデリは、首に提げていた、“旧い御守り”を、見せるように、その首ごと軽く振る。

 ………見覚えがあるかどうかと言われれば、これは咲楽の持っていたものと同じだ。

SYSTEM :
 何より、あの青年のものとも似ていた。

SYSTEM :
 ひとしきり喋ったが、“何故起こす”のか、“物の怪とは何か”という部分について口にすることはなかった。
 理由は、前者は本当に知らないからかもしれないが、後者は一名を除いて心当たりなどあるまい。その一名も、心当たりと言っていいのかは怪しい。

SYSTEM :
 彼にとっての物の怪とは。
      ・・
 間違いなく醜聞なのだ。
 そいつとの縁が齎したものか、あるいは己自身の。

久外境耶 :
 首の飾りは、御守りだったらしい。あの狼野郎も欲しがっていたそれを、お許しが出たのをいいことに、しげしげと眺める。

「……勾玉? ああ」

 ……そういやこいつが最初に反応してたのは担がれてるほうのガキにだったか? 道理で、と頷く。

久外境耶 :
「あのオンナ、自分と戦える相手のところに行きたがるって話だからな。
 怪物が物の怪叩き起こしてノンフィクション怪獣映画やろうってんなら、むしろ合点がいく」

 それがどうして、恃みゴトになるのかは分からないが。ホデリにキョーミ示さなかった件もそうだ。狼と虎で何が違う?

久外境耶 :
 穴だらけの言葉に、内心で肩をすくめる。

「…………」

 不器用なヤツ。
 言いたくないなら、知らん顔してればいいだろうに。

三廻部 颯 :
、   ・・・・・
 ───なんだそれ。

 苦しくなって、胸を抑えた。

三廻部 颯 :
 同じ首飾り。
 それはこの島に眠る怪物を起こせるもの。
 咲楽が首にかけていたものと同じで。
 あの鳥居の下で見たものに似ているそれ。
 ・・・・・
 なんだそれ、と。

 それなら、まるで……

三廻部 颯 :
 それならまるで、
    ・・・・・・・・・・・
 ここに来ることは決まっていたようなものじゃないか。

 咲楽も、山ちゃんも、かみき君も、サイト君も、わたしも。
 そんなことなんて、知らないまま、ただ人生の一ページに青春の思い出とかを書こうとしていただけなのに。

 ……なんだ、それ。

▄█▀██ :
    ・・・
 ───理不尽だ。

三廻部 颯 :
「で、っ、でも……なんで咲楽のお守りが?
 ここ、咲楽の家からずっと遠い……はずでしょ?」

 ふと思い出す、色んな人が口々に言っていた"遺産"。
 ……何も知らなかったはずの世界に、咲楽の家は、関わりがあった。
 頭が痛い。混乱する。

三廻部 颯 :
「なんでよ……そんなのって、ないじゃん……」

荻野目 旭 :「………………」

久外境耶 :
          ・・   ・・・
「寝ぼけてんのか? あるから、あったんだろうが」

荻野目 旭 :「……。……三廻部さんは……ゲームをやる人ですよね?」

三廻部 颯 :「……っ───え、……あ、……う、うん」

 少女の、苦し紛れの"睨み"が境耶の方へ向く。
 けどそれ以上のことが言えず、しどろもどろになったところで、旭の言葉に辿々しく返事をする。

荻野目 旭 :「池田さんは、お家に受け継がれる伝説の剣を持っています」

荻野目 旭 :「伝説の剣を持ってる人は、なぜか村が焼かれたり、ひょんなことから不思議な出来事に遭遇したりするでしょう」

荻野目 旭 :
   ・・・・・
「──これがそれなんです。嘘だって思うでしょ?
 でも、“ラッキージンクス”が言うのも間違いじゃありません」

SYSTEM :
 …“なんで”。
 言葉にならないものへ、ホデリの返答は何のこともない。

 沈黙。首を横に振ってそれきり。
 知らぬ。または、明かせぬ、だ。が。

『ホデリ』 :
『然り。
 あれが何故、外にあったのかは存ぜぬ………
 まして、何故、それの所以を稀人が知っているかも存ぜぬが………』

『ホデリ』 :
『あったのだ。
 小娘。………なりゆきを恨んで構わぬ。だが、恨むだけで終わろうとはしてくれるでないぞ』

SYSTEM :
 僅か睨みの視線が其方に向いた時の、せめてもの擁護か、あるいは肯定だった。
 それきり、再び口を閉ざす。

久外境耶 :
ハ、と笑いを残す。恨むだけで終わらないためのブツはもう持ってるだろ──と言葉にする代わりに。

三廻部 颯 :
 旭くんの説明を受けて、そこで言葉を失って……、
 それで……縮こまって、お犬様(ホデリ)の言葉に頭を振るう。

 恨んでるわけじゃない、と言いたげだった。
 それだけの素振りを見せて、颯は黙った。

荻野目 旭 :「……。……三廻部さん」

荻野目 旭 :「さっきはああ言ってくれましたけど、僕からもう一度確認をしますね。いまは、聞くだけでいいですから」

荻野目 旭 :「あなたは多分これから、今あなたが苦しんでる『なんで』を、何度も味わうと思います」

荻野目 旭 :
「それは僕らにどうしようもできないことで、
 頑張ろう! と思うたびに何度もふりかかると思います」

 ──僕らもそうだから。
   それとまともじゃない手段で折り合うことにしたのがファルスハーツで、
   まともじゃない手段を全てにしたくないと思ったのがUGNだと、僕は思ってる。

荻野目 旭 :
 ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・
「だけどそれと、必ずしも戦う必要はないです。
 僕らUGNは、『なんで』でぱんぱんになったあなたを、それ以上ぱんぱんになっちゃう場所へ連れ出す意思はありません。
 この島をなんとかしたら、今回の『つらい』を全部帳消しにしてもいいんです。僕らはそれができますから」

 ……今回、人数もいるからね。

荻野目 旭 :
 ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・
「池田さんを助けるのは、あなたの義務じゃありません」

荻野目 旭 :「それは僕の仕事ですから」

荻野目 旭 :「幸いここはそれなりに安全のようですから、なんとかなるまでここにいたっていいんですよ」

荻野目 旭 :
「いま、ここにいるか、彼女を探しに行くか決めろって話じゃないです。
 だけど覚えていてください。
 あなたには退路があって、いつでもそれを選択してもいいってことをです。
 誰かを殴るの、つらかったでしょ」

荻野目 旭 :「ごめんなさい」

荻野目 旭 :
 顔を上げることなく、静かに謝罪の言葉を言い切る。
 僕はあなたと違う世界の人間なんです、という、明確な線引き。

久外境耶 :
 あてつけがま
「 甲斐甲斐 しいねェ。けどソレ言うんならよ、手前の『なんで』はもっと上手にしまっておかなきゃなあ?」

久外境耶 :
「誰かを慰めるのは気持ちいいかい、僕ちゃん」

荻野目 旭 :にっこり笑う。

荻野目 旭 :「気持ちいいですよ」

久外境耶 :「クソガキが、いいツラしやがる」

久外境耶 :「程度考えろよ。ここで手切れはお互い面倒だろ」

荻野目 旭 :
 にっこり。
 微笑みながら、内心でこの悩み薄そうな顔をひっぱたくイメージ。
 好きでやってるワケないこと、絶対わかってるから腹立つなあ。

荻野目 旭 :僕だって余裕あるわけじゃないんだって! とか絶対言えないけど。も〜、困るな。

三廻部 颯 :
 ……少女は、何も答えなかった。
 愕然としていたわけでも、呆然としていたわけでもない。
 ただ、答えに足りうるだけの言葉を持っていなかった。

 いや。
 持っているのだ、けれどその言葉を口にするには……
 少女には足りないものが多すぎた。

三廻部 颯 :
 ただ───義務じゃないと言われた時に。
 ぎゅっと、強く拳を握りしめていた。

荻野目 旭 :苦笑い。

荻野目 旭 :「この話、いったんやめときましょっか。まだ確認しなきゃいけないこと、いろいろありますしね」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……一連の話に、特に異論を挟むつもりもなかった。沈黙を破るほどの理由もなかった。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 末恐ろしいものだ。解っていてやっているのかいないのか。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 オマエがこの子に示してみせたのは心優しい選択肢なんかじゃない。
      ・・・・・
 ……そいつは悪魔の契約だろうに。

木口龍 :
「──そ、そうだぜ! ここはこのオレの慧眼に免じてだな……ってそうじゃない。
 だいたいやることも分かってないし、そもそも脱出までの準備整えないと始まんないだろぉ?
 仮に助け出しても、船すら漕げないんじゃ意味無いワケで……」

 ……なんかやべー、バチバチしてるし、ここは華麗に割って入りつつ──。

木口龍 :
「まず、ちょいと確認したいんだが……ホデリ、だっけか……。
 その首飾り、もーちょっと近くで見ていいか?」

久外境耶 : 

荻野目 旭 :ステイステイ

『ホデリ』 :『構わぬ。渋るものでもない』

『ホデリ』 :『ないが、値打ちものならぬぞ』

久外境耶 :触んなよ? いいか、爪の先ミリ掠りもアウトだからな?

木口龍 :
「すまない、助かるよ……ちょっと、確認したいことがあってだな。
 待ってオレそんな金に困ってるように見えるってかこんな状況で冗談言えねーよ!!!」

木口龍 :つーわけで近くで観察するとして(続く)

木口龍 :GM、咲良の持っていたペンダントと、寸分違わず同じかどうかをまず知ることは出来るか?
この同じかどうか、っていうのは、何ていうか劣化してた場合はその具合も含めてだ。

木口龍 :判定は必要になるだろうが、必要ならば準備は出来ている。

GM :おっと。判定は…そうですね…

GM :ええ。其方がやる分には必要なしでいいでしょう。詳細は少しお待ちください。

木口龍 :おっと、助かるな。

SYSTEM :
 あなた/龍が池田咲楽の持っていた御守り/勾玉を詳しく見ていたかどうか………僅かな時間で形を記憶できるほど、あなたのレネゲイドは適切な性質を有していない。

 ないが、よくよく凝視してみればわかることはある。
 ホデリを名乗る白狗が首に提げたものは、咲楽の持っていた遺産とは別の形だ。非常に近く、あの時同じような光を放ち………。

SYSTEM :
 確実に同種のものであると分かるが、
             ・・
 極めて近く、限りなく遠い別物だ。

SYSTEM :
 ………ついでに言うと年月の経過による劣化などは見受けられない。
 使い古された様子も、あるとすれば勾玉以外の紐だの何だので、目立つようなものでもない。

SYSTEM :
 あるいは同じ効果を持つのかもしれないが、それは「ホデリの御守り」と「咲楽の御守り」が同じであることを意味はしないだろう…。

木口龍 :

木口龍 :

木口龍 :
「──……ふむ……」

 千年前、平安時代、なんて気の遠くなるような話が出てきた部分から、
 時でも巻き戻ったんじゃないかと疑っていたが、どうやらそうじゃないらしい。
 ならば、あと一つ考えられることは──。

木口龍 :
「……結論を言う前に一個だけ確認したいんだが、
 ホデリ……あいやホデリさん、あなたは、ずっとこの島にいて、ずっと肌身離さずそれをつけていた。
 今現時点では、そこに間違いはないな?」

『ホデリ』 :『………然り。だが、如何にした』

木口龍 :
「なるほど。
 ……うん、まぁ、今のでなんとなくだが分かった」

荻野目 旭 :わかったんだ…

木口龍 :
「コイツは、片割れ、だ」

 勾玉から視線を外して。

「限りなく同じ、その……なんだ、さっきから言ってる遺産と同じだろうっていうのもオレが過去に関わった(だろう)事件からなんとなく分かる」

木口龍 :
「だが、何かの理由があってソイツは分かたれたんだ。
 その内の一個が島の外にいって、内一個が島にある。……そんなところだろうが──」

木口龍 :
「コイツが組み合わさると、何かが起きる。
 大抵の場合、2つ考えられ、
 一つはそれが組み合わさるとなにかの封印が解けて、良くないものが呼び出される。
 もう一つは、何か守っておきたいものがあったため、敵対者の狙いを分散するために、封印の鍵を2つに分けた……」

木口龍 :
「最後に語ったのはオレの想像にしかすぎないんだが、ホデリさん、今言った話で何か心当たりがありそうなものはあるか?」

荻野目 旭 :さっきまでからは信じられないほどまともな考察してる…

木口龍 :「島外に片割れがあるとすれば、事故で飛んでったとかでもないかぎりはそんな理由だろう」

久外境耶 :「────」ホデリを一瞥する

『ホデリ』 :
けがいしのすけ
『検怪異使佐に似たり物言いをする。
 先程までの臆病者はどこぞに行った?』

SYSTEM :
 一瞥に軽く応じたそいつが、低く唸る。
 感嘆なのか呆れなのかは定かでないが、敵意の類を持った唸り声ではなかった。

『ホデリ』 :
『………どちらでもない。封とはよくも言ったものだが、そこの詳しきは存ぜぬ。
 なにより、これはわたしには正しく扱えぬ』

『ホデリ』 :
『………肝要なことは。物の怪を“起こせる”こと。そして、その逆も』

SYSTEM :
 組み合わせるものでも、二つに別れた封印の鍵でもない。
 明かせぬのか知らぬのか。そいつの言葉選びから手繰れることは………。

 自分では“正しく使って”起こすことも眠らすことも出来ないということだけだ。

SYSTEM :
 辿り着く糸口までは探らねばならぬ身の上───いつぞやの言葉を反芻する。

 終着点は分かっていても、具体的にそれをどう使うか、どこで使うかまでは、分かっていない、あるいは己が出来ることではない。

 境耶に対しては、概ねそういう意味として伝わる。

木口龍 :
「なるほど、なるほど」

 ……メモを取る。そういえば、いつもこんな感じで事件を調べていた気がする。

「ホデリさんのものと、あの咲楽さんって子が持っていたものは、確かに別だ。それは間違いない。
 だが、レネゲイドは性質は同じだし、発生する効果は多分同じだ。なんとなくだが、それは分かる。
 そして、ソイツが片割れだっていうなら──」

木口龍 :
「一つの魂を二つに割って、それぞれ別の器に収めた……というのがオレの考えだ。
 そして、あの目がイッてる女武者の話、と、今のホデリさんの話からして……"扱う"、となればだ。
 鍵を回すことが出来る人間が、あの子なんだろうとオレは思う」

木口龍 :
 これが仮に正しいとして、

「今隠さなくちゃいけないのは、その勾玉だ。
 あの目がイッてる女がこれを知れば、"おはようございます! ところでそれすごそうなのでもらいますね!"ってくるだろう。
 奪われたら今度こそ何が起きるか分からん。

 そうなる前になんとかしてこいつを解き明かして、脱出の際に邪魔されないようにしなくちゃあな……」

久外境耶 :
 …… ……。

久外境耶 :
「気は済んだか、名探偵。仮定に仮定を重ねれば、そりゃあ与太ってもんだぜ」

 ホデリとイロ男の間に身体で割り入って、胡散くさそうに溜息をつく。実際どうなのかなんて知りやしないし興味もない。
 必要なのは確かな道筋で、不必要なのは余計な詮索だ。

「ご高説は謎解いてからするもんだろ。それになア……」

久外境耶 :
「奪われるだの隠すだの、誰に物言ってやがる。おれがいンだろが」

SYSTEM :
 それは単純な力量の自信から来るものだったのか。
 あるいは、少年の欲望に由来するものだったのか。
.       ファルスハーツ
 この場に同じロクでなしがいたのならば、
 概ね後者としただろう。

 奪われる前に隠す───。
 その姿勢は仮定を重ねた上とはいえ慎重を期するものだが、言い換えると、相対すれば奪われるという前提だ。
 挑み、優劣を決する前からの逃げ腰を嫌ったものと、似た衝動の持ち主が居たら口にしたかもしれない。

SYSTEM :
 ───ホデリは少なくともそれを解するものではなかったが。

 少年が望んで無謀に臨む性質なのは分かっていた。 
 故、これについては口を挟まず、代わりに。

『ホデリ』 :
『島から出る行いを謎解きと呼ぶか。
 …いつぞや言うたが、わたしは島の外を知らぬし、出ようとした覚えもない』

『ホデリ』 :
 ・・
『此処はわたしが手がけられる数少ない場所だ………。
 出入りは自由に得る、使いたくば自由に使って構わぬが………此処から島の外に出ようというのは先ず強ちであろう』

『ホデリ』 :
『………この島は物の怪の妄執で作られておる。
 出よう、と思ふならば。その物の怪を眠らすより他になかろうな』

SYSTEM :
【Check!】
『?????』について、
 Eロイスの所持を確認しました。

Eロイス『虚実崩壊』
・エネミーエフェクト『時空の裂け目』の効果を変更する(詳細不明)
・?????(詳細不明。第二効果)

荻野目 旭 :「まあ……正論と言えば正論ですね」考え込む。

木口龍 :
「オレは仮定の話をしただけであってだなぁ……」

 うぐ、と言葉に詰まる。こう言われると弱いのだ、オレは。
 証拠も何も無いんじゃそれこそあれだ。小説を書くのが随分上手いですね(笑)なのだ。
 しかしまぁ、最近の若い奴らはどうしてこうも血気盛んというかなんというか。

 ……そういうのが羨ましくもあるのは確かだが。
 あーあ、オレにも石橋をぶっ壊して必ずやるっていう執念と、それに見合う力があったらなぁと思わないわけはない。

木口龍 :
「……はぁ、まぁいいや。アンタの堅さは、さっきの竜との戦闘でよぉーっく知ってる。
 その時はオレは後ろから撃ってるからアテにしよう──」

木口龍 :

「──つーわけで、そう、それなんだ。
 オレ達の最優先は、島から出ること。んでもって、その島から出る為に、物の怪とやらをなんとかしなきゃいけない。

 だが、物の怪を利用しようとする頭の螺子が外れたバカとか、赤黒いやべーやつがいる。
 そして何より、オレはこんな真似が出来る物の怪を、人間の力だけで始末出来るとは思えない。
 それこそ、コイツはなんていうか神話めいてる展開なんだ。八岐大蛇をはじめとする、怪物退治の神話っぽい状況」

木口龍 :
「連中に先を越される前に、
 どうしてその物の怪とやらがこの島を創ったのか、
 ソイツの望みは何で、なんで無辜の一般市民も含め全員揃って巻き添え食らってるのか。
 そいつを解き明かした上で、弱点を探すべきだ……と、オレは思う」

木口龍 :

 ……そう思います。思うだけです。いやマジで死の危険性あるから普通に大人しくして解除されるのを待つという手もあってですね」

 言葉の一番最後でしどろもどろになるうえに小さくなる。

三廻部 颯 :
「(──……妄執……)」

『ホデリ』 :『二つの己がひとつの躯に住み着けりや、汝は?』

”朧の狩人/残骸” シホ :
……探偵だ、というとても信じがたい名乗りはどうやらフカシでもなさそうだ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 しかし……どうするべきかな。
 いろいろと整理したいことは多い、疑問も尽きない……
 眼鏡の彼が語った言葉が真実かどうかはともかく、最早『訊くのは野暮』とその核心を避けている場合でもなさそうだが………それは果たしてワタシの負うべき役目だろうか?

『ホデリ』 :
『わたしは物の怪が未だ眠っていることは分かれども、それが島の何処なのかは定かでない………』

『ホデリ』 :
『そしてわたしの“さふべきこと”は、これを眠らすることだ………。
 汝らにも、島の内側で探すものはあろう』

SYSTEM :
 それは、自分は島を作り出した(と主張する)『物の怪』を、言葉通りかはともかく眠らせる義務と使命があり───。

 つい先ほど巡り会った、あなたたち………とくに颯の様子を見て、“探しているものもいるからこのまま島を探さないわけにはいかない”と判断したが故の言葉だ。

 言い換えると、そう目的の前提が食い違うことはないという改めての話でもある。

久外境耶 :
「こいつがおれの理由って言ったのは、そういうワケ」

久外境耶 :
「あのオンナと狙いが真逆ってんなら、ついでに仕事も済みそうだしな」

荻野目 旭 :「…………」

荻野目 旭 :「うっすらそんな気はしてましたけど、やっぱり私情のほうなんですね?」

久外境耶 :「まあな」

荻野目 旭 :わ〜、たのしそ〜

荻野目 旭 :「そういうことなら、しばらくの間はいらない心配しなくてよさそうで安心しました。…………」

荻野目 旭 :「とりあえず、今さらなんですけど」

荻野目 旭 :「それなら、ずっと“ラッキージンクス”と呼ぶのも困るので。名前教えてください。僕は荻野目旭です」

荻野目 旭 :協力関係を築くならそういうことですよね、のアピール。手とかは過剰だろうから出さない。

久外境耶 :「は……」ぽかん、となる

久外境耶 :
「名前って、おまえなあ。わっかんねーわ、そのカンジ」

 おたくらみんなそうなの? 知らんけど。

久外境耶 :
「……境耶。久外境耶」

荻野目 旭 :「あのですねえ、大事なんですよ。ほっと一息! って時にコードネーム呼ぶと気分がピシっとしちゃうからです。僕が」

荻野目 旭 :指をぴっと立てる。

久外境耶 :「おまえかよ」

荻野目 旭 :
「僕がです! とにかく、よろしくお願いします。
 とりあえず、これで協力体制ということで」

『ホデリ』 :…コードネーム…

SYSTEM :ホデリは疑問を仕舞い込んだ。

久外境耶 :ラッキージンクスとかナイトホークとかああいうのな

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ああ、えーっと颯さん……と『ホデリ』さんには念の為補足しますと」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ワタシたちのような“超人”たちは、その殆どが何らかの組織に所属しています。先ほど“ナイトホーク”が説明してくれたUGNや、“ラッキージンクス”が説明してくれたFHなど、他にもいろいろです」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「そういった組織に属する“超人”たちには、“二つ名”……つまり超人として活動する際に名乗る、その人を象徴するような別の名がつけられるんです。」
自称のことも他称のこともありますが。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「“二つ名”が割り振られる理由は様々ですが───特にUGNでは、日常と非日常とを切り分ける為の精神的なスイッチとして機能しています。参考までに覚えておいてくださいね」

SYSTEM :
 ホデリは境耶の補足のち、シホから両名に向けられた言葉に、それぞれ一度だけ頷くと、何事か考え込むように瞑目した…。
 それは『スイッチ』の意味を測りかねたとか、そういうものではないのだろうが、口を開いて胸中を明かそうというつもりもないように思えた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……まぁ、説明はこんなものでいいだろう。
 『ホデリ』と名乗る彼の道に関わるかどうかは知らないが……
 少なくとも彼女が“選ぶ”ことになれば、いずれは避けて通れぬ道だ。己の信を何処に置くかという話は。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……そう。問題はその『ホデリ』だ。
 この庵───と言うかは不勉強ゆえ識らないが。此処に来る以前から、彼の物言いは『ただの現地民』と片付けられないニュアンスを多分に含んでいた。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 彼はこの島について識っている。或いは、その成り立ちの時点から……
 いや、重要なのは寧ろそれよりも……

”朧の狩人/残骸” シホ :
「さて、とにかくこれで親睦も深まったところですが。
 ホデリさん。ワタシからもっと『今さら』かもしれないこと、伺ってもよろしいですか?」

『ホデリ』 :『………。述べよ』

”朧の狩人/残骸” シホ :
「では、遠慮なく。
 アナタにはこの島についていろいろと教えていただきました。勾玉の持つ意味とか、この島に眠る『怪物』の話とか。
 素敵な隠れ場所も用意していただけましたね。改めて感謝します」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「…………しかし、まだ我々には大きな疑問が残っています。無視できない疑問です。
 『そもそもこの島は何なのか?』という疑問。それと───」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「────アナタ、いったい何者ですか?」

久外境耶 :
「ソッチはもう話したろうが。ジャームの産物だ、分かってどうなるモンじゃねえ」

久外境耶 :
「で……ソレは答える義理がねえよ。呉越同舟したきゃ引っ込みな」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
「それはアナタにも応える義理はない」

久外境耶 :「ある。押し問答続けるか?」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「まさか。その必要はありません。
 どちらにせよ、決めるのは『ホデリ』さんご自身のみの意志ですから」

久外境耶 :
「理屈で話してやってるうちにやめとけよ。おれぁここでやりあったって構わないんだぜ──」

『ホデリ』 :『………………』

SYSTEM :
 嘆息。

SYSTEM :
 それは予期していない質問などではなく、
 
 来ることを承知していた質問なのだろう。

 わずかな間、その視線はまず二人に、そして颯に向いたが。
 しかしそこから何をば言うでもなく…。
 戻った視線と、その喉笛から送り出される音は、躊躇を乗せたものではなかった。

『ホデリ』 :
 ・・・
『言えぬ』

SYSTEM :
     ・・・・ ・・・・
 または、明かせぬ。わからぬ。
 どちらともとれる文字数にして三文字。

『ホデリ』 :
『わたしは“さふべきこと”を遂げて眠るもの。
 そこに………ホデリという名前以上のものはない』

SYSTEM :
 出会ってすぐの気難し気な素振りを顔に出したその口調が「すまぬが頷けども分かってもらいたい」と口にするまでかけた時間は、そこから数秒ほど。
 ・・
 醜聞という言葉すら口にしなかった。

久外境耶 :「……」舌打ち

久外境耶 :「満足したかよ。二度はねえぞ」

”朧の狩人/残骸” シホ :
「ありがとうございます、ホデリ、“ラッキージンクス”。今はそれさえ伺えれば」

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 聞いたか、“タイガーアイ”?
  ・・・・       ・・・・
 “言えない”だそうだ。“知らない”ではなく……。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 …………。だから、そうだな。

”朧の狩人/残骸” シホ :
      ・・
 今のうちに易い方を決めておけ。
 必要ならばオマエを遣うことになる。

タイガーアイ :
『ずいぶん機嫌を損ねたな。
 ………尚もそこで我に委ねる度胸、命が惜しくないと見える』

タイガーアイ :
『では承知の上だろうが、
 ひとつ肝に銘じるがいい』

タイガーアイ :
『レネゲイドを伴にすることを義務付けられた生き物は………。
 ・・・・・・・・・
 孤独ではいられない。
 ・・・・・・・・ ・・・・・・・
 孤独でいるものは、必ず捻じ曲がる』

タイガーアイ :
『それはヒトであるか否かを問わぬ。
 この生き物の理由も。そうである限り、必ず己以外のどこかだ』

SYSTEM :
 心の内側を読んだか読まずか、タイガーアイは好き勝手、シホに語り掛ける。
 おまえもそうだろう/おまえに、己であって己でないものが心の片隅にあるように、と。

 要約───。

 つつく方が易い。
 人の中身を知りたければ、腹を捌いて臓物の色を見るのが早いように。横暴だが、最も近い通り道。

 己はそれを問わないが、
    ・・
 それは続くものではない。

タイガーアイ :
『ハチの巣をつつき、二度刺しをあおる度胸が出来たならば、我とこの生き物、そしてお主だけの場を持て』

タイガーアイ :
        ・・
『それがもっとも易い。よいな』

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……いいとも。当座のところワタシにとってもそれが一番都合がいい。善処はするとも。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ……只が一番安いけど、な。

荻野目 旭 :「……要は、『僕らで探せばいい』ってことでしょ? 境耶くん」肩をすくめる。

荻野目 旭 :「正直、そこは無視できなさそうですしね。とりあえず色々ハッキリさせるためにも、今後のこと考えませんか」

久外境耶 :「……好きにしろ」

SYSTEM :
 当座はそこがひくべき一線………。
 納得と理解は別であり、優先順位は概ね前者であるものだが、いまはそれが逆転する。

 即ち、一先ず置いておく、だ。
 今後のことに意識を傾けるとあれば、それこそ木口龍の言葉は、先走ったが正しいものである。

 つまり………。

“イリュシデイター” :
「………はい。

 探さねばならないことはいくつもあります」

“イリュシデイター” :
  ネスト
「『魔獣の巣』セルリーダーの動向………。
 先程木口さんや“残骸”、『ホデリ』さんが言うような、この島について解明すること………。

 わずかしか姿を認識できませんでしたが、
.レーレ・シュヴェア
“蝕みの君”においては危険な兆候も見て取れた………」

SYSTEM :
 なにより。と。
 前置きを入れて、続ける。

“イリュシデイター” :
「………先程の口振りからして、三廻部さん。
 貴女の友達以外にも、遭難した子がいますね」

“イリュシデイター” :
「当座、細やかな疑問を呑み込んででも、それは捨て置けない。

 ………そしてそうである以上、島の全貌について逐一明かす必要があり、それも一朝一夕で“終わりました”と行くものではないでしょう」

“イリュシデイター” :
「それを踏まえると、『ホデリ』さんと”ラッキージンクス”………久外くんには、暫く呉越同舟というのに付き合ってもらわねばならないというのは、“ナイトホーク”が先程言った通りです」

SYSTEM :
 それがどの程度続くのかの是非は置きながらも、一先ず………。

 此処は出入り自由の、尚且つ、どういうわけかホデリ曰く「自分の認めた者しか入れない」場所だ。
 そういう意味でも、協力体制をやめた、とは出来ない。
 ………言い聞かせるのか、宥めるのか、歩み寄るのか。どうとも取れる言葉選びをして、彼女は次のように続けた。

“イリュシデイター” :
「“残骸”には、あとで“ブラザーフッド”と通信状況の確認をお願いします。
 ………それに区切りがつき次第、幾人かに分けて、島の調査と行方不明者の捜索を行う形を取りましょう」

SYSTEM :
 前者は望み薄だが、ここの空間はホデリの言葉を鵜呑みにするならば島とは少し違う“彼が手を出せる”場所だ。

 そして、出入りの自由も、いちいち此処に戻って来る必要があるのかもしれないが………ホデリはバロールシンドロームを有した個体である。

 彼が真っ先に異議を申し立てなかった辺り、凡そ、移動距離という言葉と概念に不自由することはないだろう。

SYSTEM :
 一度彼女が此処で締め切ったのは、自分が忘れていることはないか、口にしておきたいことはないか、それを確認するもののようだ。

三廻部 颯 :
「──……はい」

 どうしてこんなことになったのだろう。
 理解も追いつかなければ、納得もいかない。
 私だけじゃない、あの時、あの場所で、いつものようにはしゃいでた皆んなが。

 ……"なんで"は何度も起こるって言ってた。
 ……それが一番の理不尽だ。

「……分かってるだけでも、私以外で、3人です」

荻野目 旭 :「……“蝕みの君”があの状態のままなら、本当に危険です。僕は、彼らの捜索を最優先にしたいですね」

三廻部 颯 :
 わからない事はいっぱいある。
 それを知っていそうなのは、言えないの一点張り。
 ……聞き出したい気持ちはあった。
 でも、多分、聞けない気がした──それをする前に、みんなを探さなきゃいけないし。
 ……きっと、二人きりになれないだろうし。

「……みんなは私みたいになってないから……」

荻野目 旭 :「……ええ」

荻野目 旭 :
 それ以上の話をするのは、いまの三廻部さんの精神状態的に避ける。
 ……肉体的に死ぬのも精神的に死ぬのも、いまの状況じゃあそう変わらない。
 両方あぶないってことだけわかってれば十分だ。

”朧の狩人/残骸” シホ :
「こちらも異論はありません。最優先事項はそちらの安全確保でしょうし……
 まだ合流出来ていない他のUGN隊員もいるかもしれませんから」

 ……あの状況だ。望みは薄いかもしれないが。

久外境耶 :……パラディンとミッドナイトとも合流しねえとな。そん時こいつらとどうなるかは後で考えりゃいい。

木口龍 :(やべえよやべえよ……情報収集の仕事きっちりやらないと両陣営に背中から消されるかもしれん……(発動:石橋ビビリ出川))

荻野目 旭 :やだな〜しませんよ ただお給料はあげられないカナって思うだけで〜す

木口龍 :駄目ッ、それは、死活問題ッ……!

SYSTEM :
 水底で隔てた向こう側。
 時の流れに取り残された孤島の、
 その中でさえ別たれた古屋敷で。

 本来なら交わることさえなかったものの道が。
 本来なら世に交わることさえなかった独つの点で交わった。

SYSTEM :
 あるものは見舞われた理不尽/なんでを振り払うべく。
 あるものは見出した理由/私情を果たすべく。
 あるものは理不尽に見舞われた子供を帰す/ひとりの女を■■■べく。
 あるものは己の宿痾に近付くべく。
 あるものはただ記された依頼を果たす(※恐らく詐欺)べく………。

SYSTEM :
 ………引き込むような、重力の井戸の底で。

 男の妄執は。
 今も届かぬ幻を見続けている………。

SYSTEM :◇ ◆ ◇

GM :
 これより次シーンにおいて、ミドルフェイズの解説に移行します。

GM :
   おまえたち
 …つまりOPはここでおしまいというわけだ…くっくっく…

 さておきOPが終わると始まるものはPC間ロイスです。

GM :
 よって、ひとまずここでPC間ロイスの取得をお願いします。

 1⇒2⇒3⇒4⇒5⇒1の、ふるきよき右隣方式です。

GM :
 PC1、颯ちゃんから。
 決まり次第どうぞ。

三廻部 颯 :え……あ、はい。

三廻部 颯 :
 久外境耶……さんですね。
 えっと……、
 P誠意/○N嫌悪、です。

GM :ほう。

GM :本当に、日曜の1号2号のファーストコンタクトになりましたね。平成ごろでしょうか?

GM :キャラシートに記載しておいてくださいね。また、理由等…なにか言っておくことはございますか?

三廻部 颯 :え、……

三廻部 颯 :……嫌いなだけです。それだけ。

久外境耶 :言ってくれるねエ

久外境耶 :おれはそうでもないぜ、よろしくなチビ

三廻部 颯 :ち、ちびじゃないって──……う、はい……

GM :
 ではそっぽ向かれたようで向かれきっていないPC2の境耶くん。
 あなたのPC間ロイス先は旭くんです。

久外境耶 :〇有為/隔意だな

久外境耶 :こん中じゃ一番ハナシの分かるやつではあるからな

荻野目 旭 :ふふん

GM :
 ほうほう。
 あれほどつついて牽制していたのに。

 いえ、だからこそ、ということですね。

GM :十分確かめてみての有為というわけですか。健全なトコでしょう。

GM :
 ではその評価を貰ったPC3の旭くん。
 PC間ロイスの対象はシホちゃんです。どうぞ。

荻野目 旭 :“残骸”……シホさんへ、○感服/不信感ですね。僕、まだ彼女のライフルと、“蝕みの君”から狙われていたワケを聞いてないんで。

”朧の狩人/残骸” シホ :…………。

GM :
 気になることは尽きませんね。
 それでも表の感情は感服です。あとはまあ、機会と共に確かめてみるのがよろしいかと。

荻野目 旭 :ですね。ま、僕がうまくやれば問題ない話なんで

GM :なかなかの自信。

GM :
 というわけで、そのワケを聞かれるHO4。
 名前はいくつもありますが、シホちゃん。

 そのPC間ロイスは龍さんです。

”朧の狩人/残骸” シホ :
 ワタシの番か。
 ワタシ自身、アレに対する感情をどのように括っていいものか判らないが……

”朧の狩人/残骸” シホ :
◯有為/劣等感
だ。敢えて括るならば。

GM :………? 劣等感?

木口龍 :劣等感?

GM :いえ、敢えてと言った以上多くは聞きませんが。

GM :
 ではその呼び名がアレだったあなた。
 そうですPC5の木口龍さん(フルネーム)

GM :
 PC間ロイスは颯ちゃんとなります
 デッキからカードの剣を引いたのち宣言をどうぞ

木口龍 :
◯尽力/隔意

巻き込まれてこんな目に遭わせてばっかというのもオトナとして情けないと思うのが1つ目だ。
そして隔意の部分は、前にもこんなようなことがあって、そしてロクな結末にならなかったというのがあったような……気がするという部分で、一歩引いた目線で見てしまっている。

木口龍 :気がするだけだけどな!(どっ)

GM :
 はい。
 なんか取り返しのつかない呪いだけが残ったような気がしますが、
 気のせいというならきっとそうですね。 

木口龍 :多分気の所為だろう! 手帳にはなんか書いてあるけど!

GM :
 はい。気のせいにして進めます。
 尽力が正しく尽力として伝わるといいですね。

GM :
 それはさておきデッキからカードの剣を引かなかったので乱入ペナルティです。

木口龍 :ぐああああああああ!!!!(-2000)

三廻部 颯 :……。

GM :どうなるかはお互い次第ですね。

GM :
 さて………PC間ロイスの確認を終了しました。
 それでは、引き続きシーンを展開します。

SYSTEM :◇ ◆ ◇